デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

1章 金融
1節 銀行
3款 特殊銀行 5. 北海道拓殖銀行
■綱文

第5巻 p.238-246(DK050056k) ページ画像

明治32年5月20日(1899年)

大蔵省ヨリ北海道拓殖銀行設立委員ヲ命ゼラル。

同三十三年二月免ゼラル。


■資料

官報 第四七六五号〔明治三二年五月二三日〕 辞令(DK050056k-0001)
第5巻 p.238-239 ページ画像

官報 第四七六五号〔明治三二年五月二三日〕
    辞令
              大蔵省理財局長  松尾臣善
             農商務省農務局長  和田彦次郎
 - 第5巻 p.239 -ページ画像 
                内務書記官  白仁武
                大蔵書記官  下坂藤太郎
                従三位男爵  鈴木大亮
                  従四位  渋沢栄一
                  従四位  曾根静夫
                  従五位  高島嘉右衛門
                  正六位  大倉喜八郎
                  従六位  安田善次郎
                  従六位  渡辺治右衛門
                       田中源太郎
                       早川竜介
                       田中平八
                       谷七太郎
                       高野源之助
                       対馬嘉三郎
                       倉橋大助
                       柳田藤吉
                       松本誠直
                       広海二三郎
                       平田文右衛門
                       平出喜三郎
  北海道拓殖銀行設立委員ヲ命ス(各通)(五月二十日大蔵省)


渋沢栄一 日記 明治三二年(DK050056k-0002)
第5巻 p.239 ページ画像

渋沢栄一日記 明治三二年
六月廿六日
此日拓殖銀行設立委員会ヲ大蔵省ニ開クニヨリ出席ノコトヲ通知セラレシモ多忙ヲ以テ謝絶ス
六月廿八日
午後一時大蔵省ニ開会スル拓殖銀行設立委員会ニ列席ス定款ノ逐条ヲ議決ス


銀行通信録 第一六四号・第一〇四〇頁〔明治三二年七月一五日〕 北海道拓殖銀行創立委員会(DK050056k-0003)
第5巻 p.239-240 ページ画像

銀行通信録 第一六四号・第一〇四〇頁〔明治三二年七月一五日〕
    北海道拓殖銀行創立委員会
北海道拓殖銀行創立委員会は六月二十六日を以て第一回を大蔵省に開き、先づ委員長及幹事の選挙を行ひしに委員長には曾根静夫氏、幹事には斎藤恂氏当選し、夫より同月廿八日・廿九日及本月五日に開会せしが、本年三月法律第七十六号北海道拓殖銀行法第二十五条には『政府は百万円を限度とし北海道拓殖銀行の株式を引受くへし』とあるも明に其金額を明定せず、而して大蔵大臣も亦引受株数を明言せざりしも、定款を議定したる上政府引受株の申請を為すに於ては政府は第二予備金中より支出すべしとの意を漏せしに依り、本月五日まで毎回定款を議し同日に至り之を議定したり。
   ○定款概記略ス。
然るに右政府引受株数のことは兎に角其株金支出に付ては第二予備金
 - 第5巻 p.240 -ページ画像 
より直に支出すべきや、又は明治三十二年度追加予算として議会の協賛を経たる上之を支出すべきやに就きては、委員中に於ても議論ありしか、大蔵省に於ても第二予備金支出の件に付ては異論を生じ、追加予算として議会に提出する事となりたるを以て、委員会は一先会議を中止し、本年の議会に於て追加予算の通過するを待て更に開会することゝなりたり


銀行通信録 第一六八号・第一五一五―一五一六頁〔明治三二年一一月一五日〕 北海道拓殖銀行の株主募集(DK050056k-0004)
第5巻 p.240 ページ画像

銀行通信録 第一六八号・第一五一五―一五一六頁〔明治三二年一一月一五日〕
    北海道拓殖銀行の株主募集
北海道拓殖銀行設立委員会は十月二十五日大蔵省に開会し、松方大蔵大臣も臨席し左の論件を議定したり
  一、政府の引受くべき二万株(百万円)の第一回払込金二十五万円(四分の一)は明治三十二年度追加予算として第十四議会へ提出せらるゝ様請願する事
  二、皇室へ株式御所有のことを請願する事
  三、委員中方面を分ち株式引受の勧誘を為す事
  四、株式申込期限は十一月十日より同三十日限りとし申込書共に一株に付証拠金五円を払込ましめ明治三十三年一月二十五日限第一回払込金十二円五十銭を払込ましむる事
斯くて認可申請中なりし定款は十月二十七日大蔵大臣の認可を得、翌二十八日設立委員長曾根静夫氏は左の如く株主募集の公告をなしたり
○中略
而して同銀行資本金三百万円、株式総数六万株の内二万株(百万円)は政府之を引受け、二万株(百万円)は帝室に御引受を請願し、残二万株(百万円)の内七十万円は東京の安田善次郎、大倉喜八郎、田中平八、渋沢栄一、横浜の高島嘉右衛門、大阪の広海仁三郎、田中市兵衛、京都の田中源太郎、名古屋の奥田正香等諸氏の手にて引受くる筈にて、残額三十万円は北海道有力家之を引受くる筈なりといふ


銀行通信録 第一七〇号・第六一頁〔明治三三年一月一五日〕 北海道拓殖銀行の設立認可(DK050056k-0005)
第5巻 p.240-241 ページ画像

銀行通信録 第一七〇号・第六一頁〔明治三三年一月一五日〕
    北海道拓殖銀行の設立認可
北海道拓殖銀行設立委員は愈々株主の募集を終りしが其結果は

  第一銀行  八〇、七五三株  第三銀行 二一一、九九一株
  廿七銀行  二〇、五六六   愛知銀行 一三〇、五三二
  京都商工  二五、九九七   百卅銀行 一〇六、九五四
  屯田銀行  一〇、八〇六   小樽銀行   一、三八六
  百十三銀行  四、七二六    計   五九三、七一一

にして募集株数四万株に対し十四倍八余の多数に上り、百株の申込に対し六株七三の割合に当れり、而して設立委員は取扱銀行をして十二月二十日より募入外れとなりし株式に対する証拠金の払戻に着手せしめ、同月三十一日までに払戻を終りしが、之に先ちて株式募集結了と同時に銀行法第三十二条に依り設立認可を申請せしに、同月二十五日以をて認可ありしに付き、予期の如く来る二十五日を以て第一回の株金払込を為さしめ、創立総会を開く筈なりと云ふ、今同銀行の大株主を掲ぐれば左の如し
 - 第5巻 p.241 -ページ画像 

  申込株数    割当株数         姓名
  一〇、〇〇〇  六七三   津市    松本恒之助
   六、六〇〇  四四四   大阪    木村静幽
   六、〇〇〇  四〇三   桑名    中村豊次郎
   五、〇〇〇  三三六   愛知県   津島銀行
   三、〇〇〇  二〇一   東京    大倉喜八郎
   三、〇〇〇  二〇一   桑名    貝塚卯兵衛
   三、〇〇〇  二〇一   東京    帝国商業銀行
   三、〇〇〇  二〇一   大阪    藤村文兵衛
   三、〇〇〇  二〇一   同     藤本清兵衛
   二、七〇〇  一八一   同     松本重太郎



銀行通信録 第一七二号・第四〇二頁〔明治三三年三月一五日〕 北海道拓殖銀行創立総会(DK050056k-0006)
第5巻 p.241-242 ページ画像

銀行通信録 第一七二号・第四〇二頁〔明治三三年三月一五日〕
    北海道拓殖銀行創立総会
北海道拓殖銀行にては二月十六日午後一時より市内内山下町日本勧業銀行に於て創立総会を開き、設立委員長曾根静夫氏会長席に着き、同行設立に関する従来の経過を報告し、終て第一号議案、即ち同行創立諸費三千四百八十五円の承認を請ひたるに、株主中より設立委員に総額一千五百円に限り慰労金贈与の件を発議せるものありて右金額を創立諸費の内に追加することに決し、次に第二号議案取締役及監査役報酬の件は左の原案を可決したり
 頭取  年額金参千五百円以上四千円以下
 取締役 年額金千五百円以上弐千円以下
 監査役 年額金参百円以上五百円以下
 但取締役にして支店長を兼ねたるものは年額百円以下の手当を給することを得
 右報酬の金額は重役会に於て決議し監査役の承認を経て之を定むること
次て第三号議案取締役及監査役選挙の件に移り、先づ取締役五名、監査役三名の原案を可決して選挙に移りしに、左の如く当選せり
  取締役
 曾根静夫 阪本俊健 磯谷熊之助 赤羽唯一 宇佐美敬三郎
  監査役
 田中源太郎 小阪善之助 谷七太郎
是に於て曾根氏は直に就任承諾の挨拶を為すと共に、更に余は銀行事業には無経験なるのみならず、本行は将来最も東京と金融上の連絡をも要する故、安田善次郎、大倉喜八郎の両氏を相談役若くは顧問とし以て二氏の助勢を得たしと述べ、其承認を得、夫より重役被選諸氏を別室に招きて承諾を経、直に互選会を開きて其結果自分頭取に当選したること、並に商法第百三十四号《(条)》に依り株式総数の引受ありたること、及各株に付規定の払込ありたることを報告し、爾後三時散会せり
斯の如く創立総会終結したるに付設立委員は同月十九日其事務を取締役に引渡したり、而して午後同行の事務は日本勧業銀行の一部を借受けて取扱ひ居れるも、本店は札幌に置く筈なるを以て同区大通東一丁
 - 第5巻 p.242 -ページ画像 
目二番地なる大倉組支店の地所、家屋、倉庫、社宅等一切を七千五百円にて買受け、不日重役一名と行員数名とを同地に派して諸般の準備に取掛らしむる筈なりといふ
   ○北海道拓殖銀行設立委員免ゼラレタル資料ナシ。即チ官報ニモ新聞ニモ記載ナシ。然レドモ明治三十三年二月十六日創立総会ヲ開キテ後、同月十九日設委員ハ其事務ヲ取締役ニ引渡シタルコト上掲資料ニ見ユ。故ニ被免ノ日ハ二月十九日ナルベシ。


雨夜譚会談話筆記 上巻・第三〇二―三一二頁〔大正一五年一〇月―昭和二年一一月〕(DK050056k-0007)
第5巻 p.242 ページ画像

雨夜譚会談話筆記 上巻・第三〇二―三一二頁〔大正一五年一〇月―昭和二年一一月〕
    第十一回雨夜譚会
  昭和二年七月廿七日午後五時より飛鳥山邸にて雨夜譚会を開く。出席者は青淵先生、敬三氏、増田氏、渡辺氏、白石氏、小畑氏、高田氏、岡田、泉。
○中略
敬「北海道拓殖銀行に就ては如何でせう」
先生「やはり創立委員として顔を出した位である」
   ○栄一北海道拓殖銀行ノ株主ト為レルヤ否ヤ不明ナリ。又同行ニ問合セタルモ株主ト為サレタル記録ナシトノ回答ナリ。但前掲銀行通信録(第一六八号)ニハ株式引受ノ筈ナリト云フ。



〔参考〕銀行便覧 第四八九―四九〇頁〔大正七年三月〕(DK050056k-0008)
第5巻 p.242-243 ページ画像

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〔参考〕銀行通信録 第一六〇号・第三二二―三二四頁〔明治三二年三月〕 北海道拓殖銀行(DK050056k-0009)
第5巻 p.243-245 ページ画像

銀行通信録 第一六〇号・第三二二―三二四頁〔明治三二年三月〕
    ○北海道拓殖銀行
北海道の産業年々進歩せると同時に金融機関の如きも之に伴ふて漸く備はらんとし、今や同道に本店を有する銀行七、貯蓄銀行三、資本額三百二十一万円にして、内払込高百九十五万三千九百三十三円に及び其他猶日本銀行北海道支店を始め東京其他の銀行が設置せる支店十八出張所三あり、然れども同地方の金融は兎角円滑ならすして金利亦頗る高位にあるは事実なり
此故に低利の資本を北海道に注入して同地の商工其他の事業家に之を供給するは同道にありて高利に苦めるものゝ年来希望せる所なるも、斯る事は到底自然に此に至るを俟たざるべからずして容易に望み得べきことにあらざるなり、明治二十九年四月十八日法律第八十三号農工銀行法と共に制定せられたる法律第八十四号農工銀行補助法に於ては特に北海道に設立する農工銀行に対し創立初季より十ケ年を限り毎年二万五千円以内を交付(農工銀行補助法第二条)するの規定を設けたるも、同銀行の如きは到底北海道に成立するの望なくして遂に其創立を見るに至らざりき
然るに明治三十年秋頃に至り、内務省中に北海道拓殖銀行設立の議あり、同年十月二十七日同省にては法案を立てゝ之を大蔵省に送付し、之を第十一議会に提出すべしとの説あり、其理由なりとて当時伝はりし所によれば北海道に於ける現今の資本は多く年二割五分乃至三割の間に運転せられつゝあり、而も同道に於ける農工業の振興は寧ろ内地よりも急務なるものあるに当ては是よりも猶低利の資本を注入せざるべからざるの必要あり、而して現行の農工銀行法は正に此目的に適合したるものなれとも、同法第四条によれば農工銀行の営業区域内に原
 - 第5巻 p.244 -ページ画像 
籍及住所を有する者にあらされは其株主となることを得すとありて北海道以外のものは其株主たることを得す、さりとて其株主を北海道内に求めんか同道の資本は前陳の如き高利なるを以て是等の資本を更に低利なるべき農工銀行株に向はしめんことは殆んど望み難きことなるべきにより、此際更に北海道銀行なるものを設置し、広く株主を全国に募集し得ることゝし、其方法及営業を大略左の如くすると云ふにありき
 一、資本金を五百万円とする事
 一、右の内百万円は政府の持株とし其持株に対する配当は十年間政府に収容せさるべき事
 一、払込金額の十倍迄債券を発行し得る事
 一、営業の目的は普通農工銀行と同じき営業の外更に範囲を広めて農工業に関する荷為替若くは農工業者の為替に対し融通の便を与ふる事
然るに第十一議会は解散となりて此法案は遂に同議会に顕はるゝに至らず、第十二議会も亦空しく経過し、憲政党内閣に於ても前来の方針を継承して該法案を第十三議会に提出するの議ありしが、内閣瓦解の為之を果さず、尋で山県内閣となり第十三議会を召集するや、内務省は該法案に関し大蔵省と協議して其同意を得、明治三十一年一月二十一日を以て之を法制局に送付し、議会に提出することゝせり
然るに貴族院議員男爵小沢武雄氏外二名より二月二十日左の建議案を同院に提出せり
  北海道拓殖銀行設立に関する建議
 北海道の拓殖を迅速ならしむるには資本と労力との注入を務むるに如くはなし、近年移民の数漸次増加し労力の供給大に望を属するに足ると雖、独り金融の機関未だ完からさるを以て資本の欠乏実に言ふに忍ひさるものあり、而して現行農工銀行法は其規程該道の事情に適せさるもの蓋し尠なからす、故に政府は当期議会に適当の銀行法案を提出し、拓殖資本供給の途を設けられむことを
右の建議は同月二十三日同院を通過して直に政府に提出せられたり、而して衆議院に於ても亦議員恒松隆慶、井上角五郎、杉田定一、門脇重雄四氏より同月二十日を以て同一建議案の提出あり、三月一日の議に上りしが、之に先ちて貴族院に於ける前記建議を提出せると同日、即ち二月二十三日を以て、政府は北海道拓殖銀行法案を貴族院に提出せり
政府が提出せる北海道拓殖銀行法案は銀行通信録本号の内外銀行要報欄内に掲載せるを以て玆に其全文を録せず、唯其要項を記するに止むべし、即ち其要領左の如し
 一、北海道拓殖銀行の資本金は三百万円とし本店を札幌に置く
 一、北海道拓殖銀行は左の事業を営むものとす
  (一)三十ケ年以内に於て年賦償還の方法に依り不動産を抵当とする貸附
  (二)五ケ年以内に於て定期償還の方法に依り不動産を抵当とする貸附
 - 第5巻 p.245 -ページ画像 
  (三)北海道拓殖を目的とする株式会社株券債券の質貸付及其社債券の応募引受
  (四)北海道の農産物を担保とする貸付及荷為替
  (五)預り金及保護預り
       (三)の事業に使用すべき金額は(一)(二)の貸付金総高五分の一を超過するを得ず
 一、区町村制を施行せる区町村及其他法律を以て組織せる公共団体に対しては無担保にて年賦若くは定期償還法に依り貸付を為すことを得
 一、払込資本金の五倍を限り債券を発行することを得
   但し(一)の貸付金総高を超過するを得ず
 一、債券の償還は(一)の貸付金の償還高に応じ毎年二回以上抽籤を以てす
 一、資本欠損準備金は毎営業年度利益金百分八以上配当平均準備金は同百分二以上を積立つべし
 一、第一項の貸附利子は毎営業年度の初に於て主務大臣の認可を経て其最高歩合を定むべし、同年度内に於て之を変更せんとする時亦た同じ
 一、政府は百万円を限り本行の株式を引受くべし、之に対しては創立後十ケ年間は利益配当を要せず
即ち政府が百万円の株式を引受け、創立後十ケ年間利益配当を受けざることは農工銀行等になき特典にして、且つ其営業に於ても北海道拓殖を目的とする株式会社株券債券の質貸付及某社債券の応募引受、北海道の農産物を担保とする貸付及荷為替の如きは農工銀行には許されざる所にして、同行は農工銀行の如き純然たる不動産抵当銀行にあらざるなり
右の法案は二月二十七日を以て貴族院を通過し、衆議院亦三月七日を以て之を可決せり、其裁可を得て法律となり公布せらるゝ不日にあるべきなり


〔参考〕北海道金融史 第八二―八五頁〔大正一一年七月〕(DK050056k-0010)
第5巻 p.245-246 ページ画像

北海道金融史 第八二―八五頁〔大正一一年七月〕
  北海道拓殖銀行ノ設立及沿革
    第一節 設立
      第一項 設立ノ由来
北海道拓殖銀行ハ明治三十二年法律第七十六号北海道拓殖銀行法ニ基キ同三十三年二月ヲ以テ創立セラレタルモノニシテ、其目的ハ北海道及樺太ノ拓殖事業ニ資本ヲ供給スルニアリ、蓋シ同行設立ノ当時ニ於ケル北海道ノ拓殖事業タル已ニ幾多ノ歳月ヲ経過シ、其成績頗ル顕著ナルモノアリト雖モ、而カモ之ヲ本道全体ヨリ観察スル時ハ僅ニ其一部分ニ過キスシテ前途尚ホ開発スヘキモノ甚タ多キニ拘ハラス、之ニ対スル資金ノ供給円滑ナラス、常ニ資本ノ欠乏ニ苦ミ、事業為メニ遅遅トシテ進歩セサルノ憾アリ、就中長期ニ亘り固定スヘキ拓殖資金ヲ供給スル金融機関ノ設置ハ最モ緊急ノ事項トシテ要望セラレタリ、此
 - 第5巻 p.246 -ページ画像 
秋ニ当リ政府ハ明治二十九年四月日本勧業銀行法並ニ農工銀行法ヲ公布シ、次テ其補助法ヲ発布シ、其第二条ニ於テ特ニ本道ニ設立セラルヘキ農工銀行ニ関スル規定ヲ設ケタリト雖モ、而カモ本道ノ事情自ラ内地府県ト等シカラサルモノアルヲ以テ、更ニ特殊ノ機関ヲ設ケ拓殖資金供給ノ途ヲ開カント企図セラルルニ当リ、一部有志ニ於テモ別ニ有力ナル一大金融機関ヲ設置シテ資金ノ充実ヲ図ルノ急務ナルコトヲ提唱シ、明治三十二年二月二十日第十三議会ノ開会ニ際シ貴族院議員男爵小沢武雄外二名ハ同院議員公爵二条基弘外三十八名ノ賛成ヲ以テ北海道拓殖銀行設立ニ関スル建議案ヲ同院ニ提出シ、直ニ其採択スル所トナレリ、而シテ政府モ亦右建議案ノ提出ニ後ルルコト三日、即チ二月二十二日ヲ以テ北海道拓殖銀行案ヲ帝国議会ニ提出シタリ、左ニ其提出ノ理由書ヲ掲ケテ以テ同行設立ノ趣旨ヲ明ニス
 北海道拓殖事業タル経営既ニ久シカラサルニアラスト雖モ前途尚開発スヘキモノ甚タ多シ、然ルニ金融円滑ナラスシテ資本ノ欠乏ニ苦シミ事業遅々トシテ進歩セサルハ大ニ遺憾トスル所ナリ、依テ玆ニ適当ノ金融機関ヲ設ケテ以テ其資本ヲ供給シ、富源ノ開発ヲ図ラントス是レ本案ヲ提出スル所以ナリ
同法案ハ直ニ帝国議会ノ協賛ヲ得、三十二年三月法律第七十六号ヲ以テ公布セラレタリ、之レ実ニ現行北海道拓殖銀行法ノ基本ナリトス
○中略
    第二節 政府ノ保護及監督
政府ハ同行ヲシテ其所期ノ目的ヲ達セシメンカ為メニ一面ニ於テ特別ノ補助ヲ与フルト共ニ一面ニ於テ又之ニ厳重ナル監督ヲ加フルヲ必要トシ、即チ先ツ其補助ノ方法トシテ拓殖銀行法第三十五条ニ於テ百万円ヲ限度トシテ其株式ヲ引受クヘキコトヲ規定シ、次ニ第二十六条ニ於テ該株式ニ対シテ其創立初期ノ末日ヨリ十箇年間ハ利益ノ配当ヲ為スコトヲ要セサル旨ヲ規定セリ、此規定ニ依リ同行ハ爾来政府ノ持株ニ対シ配当ヲ要セサルノ特典ヲ享ケ、明治四十二年ニ至リタルカ、同年ヲ以テ同行ハ創立後十週年ニ達シ、即チ法律ニ規定シタル特別保護ノ期間満了ノ時期ニ到リタリ、然レトモ是レヨリ先キ政府ハ将来一層其基礎ヲ鞏固ナラシメンカ為メ、明治四十二年三月法律二十三号ヲ以テ法ノ一部ヲ改正シ、十箇年ノ期間経過後尚五箇年間ハ政府ノ引受株式ニ対スル配当金ヲ挙ケテ準備金ニ繰入ルルコトヲ規定シタリ、此規定ニヨリ爾来大正四年六月ニ至ル迄特別保護ノ利益ヲ享受スルヲ得タリ
同行ニ対スル政府ノ監督ニ付テハ拓殖銀行法第十六条以下数条ニ亘り特ニ規定セラルル所アリ、即チ同行ハ其定款ノ変更利益金ノ分配及貸付金ノ最高利子歩合等ニ付キ主務大臣ノ認可ヲ経ルコトヲ要シ、且ツ定時及臨時ニ営業ノ状況ニ関スル諸般ノ報告並ニ精細ナル計算書ヲ主務大臣ニ提出シテ其監査ヲ受ケサルヘカラス、加フルニ政府ハ特ニ同行ノ為メ監理官ヲ置キ、常時同行ノ業務ヲ監視セシメ、若シ同行ノ営業カ法律命令又ハ定款ニ背戻シ若クハ公益ニ害アリト認メタル時ハ主務大臣ニ於テ之ヲ制止スルコトヲ得ルモノトス