デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

1章 金融
1節 銀行
6款 択善会・東京銀行集会所
■綱文

第5巻 p.453-464(DK050102k) ページ画像

明治10年11月5日(1877年)

是ヨリ先、択善会ハ銀行敗裂紙幣交換方法ニ関シテ連署稟候シタルガ、本月二日銀行課ノ内示アリ、依ツテ是日第五回合同ニ於イテ栄一衆議ニ諮リ、第一銀行・第十五銀行・三井銀行ノ三行ヲ理事委員トシ、方案ノ草創ヲ第一銀行ニ委嘱ス。尋イデ十二月三日ソノ銀行敗裂紙幣交換規則並ニ例則図
 - 第5巻 p.454 -ページ画像 
式等示シテ会議ニ附ス。


■資料

択善会録事 第五回・第三七―四七頁(DK050102k-0001)
第5巻 p.454-456 ページ画像

択善会録事 第五回・第三七―四七頁
○上略
○渋沢栄一ハ又一議題ノ旨ヲ演説ス、曰、銀行敗裂紙幣交換方法ハ曩日連署稟八月十一日ニ在リ其文第二回追録ニ出ツシ、未タ其裁批アラス、然ルニ本月二日銀行課ノ内示アリ、其旨ニ云、前稟ノ方案ハ其効用同盟上ニ止リ、一般ノ便ヲ尽スモノニアラサレハ之ヲ措キ、更ニ一般銀行ニ施行スヘキ一律率通ノ法ヲ撰定スルヲ要ス、因テ之ヲ会同ノ衆議ニ掛ケ、以テ其回陳稟議アルヲ俟ツト、小子対ヘテ云、其方案ノ如キハ此会議ニ於テ実際適切ナル方法ヲ撰定スヘシ、其施行スルニ至テハ大蔵省ヨリ之ヲ公布スヘシ、而シテ地方ニ銀行ナキモノハ該地方官ニ在ツテ其方法ヲ持行シ、以テ一律率通ノ効用ニ妨ケナキコトヲ要スト、次ニ其下問書及ヒ附属ノ書ヲ展示ス、其文左ノ如シ
   銀行損壊紙幣引換方ニ付会議ニ附スヘキ廉書
一現今開業ノ国立銀行ハ、銀行紙幣流通上ノ障碍ヲ生シ、人民日用ノ不便ヲ来サヽランガ為メ、損壊銀行紙幣引換方ニ付、総テ協議聯合スヘキ件
一引換ノ現金ハ各銀行ノ有合金ヲ以テ充ツヘキ件
一各地方設立ノ銀行(東京ニ支店又ハ出張所ナキモノヲ云フ)ハ必ス東京ニ於テ一ノ「コルレスポンテンス」銀行損壊紙幣引換方ノ事務ノミヲ負担スルマテニシテ、一般ノ「コルレスポンテンス」ニアラスヲ設ケ、損壊紙幣トノ交換ヲ始メ、其他右ニ関係ノ諸事務ヲ委托スヘキ件
一故ニ東京各銀行ニ於テ引換タル各地方銀行損壊紙幣ハ勿論、各地方ニ於テ他ノ地方ノ紙幣ヲ引換タルトキハ、之ヲ右紙幣発行店ノ東京「コルレスポンテンス」マテ逓送シ、其受取書ヲ添ヘ、其趣ヲ発行店ヘ通知シテ、代リ紙幣ヲ受取ルヘキ事
  但若シ其発行店接近スルカ、若シクハ運搬ノ便宜都テ其地方ヘ逓送スルノ便利ナルトキハ此限ニアラス
一紙幣ノ毀損或ハ泥染等ノ模様ニ拠リ、全額又ハ半額等ヲ以テ引換ヘキ件
一若シ真贋ノ鑑定ヲ誤リ、贋札ヲ引換タル場合ニ於テハ、其弁償ノ責メ如何ノ件
一今般聯合ノ銀行ハ引換手数料逓送費其他ノ件々ハ、凡テ先般各銀行連名出願ノ条ニ拠ルヘキ件
 以上
右第四条ノ下ニ於テ浮箋《(マヽ)》アリ、其文左ノ如シ
 国立銀行成規第二十四条ニ拠レハ、敗裂汚染ノ銀行紙幣ハ、其紙片ノ全備セサルモノト雖トモ、大蔵卿ノ印章アルニ於テハ、之ヲ引換ヘキ云々明文有之候得共、此条ニ拘泥セス、実際上不都合無之様、更ニ御評議アランコトヲ希望ス、尤是迄官省札等ノ交換方ニ着手シ実地経験シタル廉アラハ、適宜折衷御評議有之度候也
又右案条ニ添ヘテ銀行課長岩崎小二郎君ヨリ渋沢栄一ニ与フル一書アリ、左ニ其要領ヲ提載ス
 - 第5巻 p.455 -ページ画像 
 前略、銀行敗幣兌換手続ノ儀ニ付曾テ御申出之趣モ有之居候処、現今右兌換方ニ付、頻ニ地方官ヨリ伺出候次第モ有之候間、不取敢別紙箇条書ニ準シ、例月銀行会議ニ於テ一種簡便ナル良法御撰定被下全国ノ諸銀行之ニ依テ従事致シ候様仕度、果シテ然ルトキハ其挙極メテ実際ニ適シ、大蔵省ヨリ其規則ヲ制定頒布スルヨリ遥ニ相勝リ可申存候間、可然御考案被下度云々、委細ハ遠藤敬止ニ申含メ置候云々
右案条ニ因ツテ討論決定スル所左ノ如シ
 渋沢発議ス、各位此題案ヲ以テ異議ナクンハ、同盟中ニ於テ理事委員ヲ撰ヒ、此委員ニ於テ方案ヲ裁シ、上稟ヲ弁シ、而シテ各銀行ニ之ヲ報告シ、及ヒ将来新立ノ銀行ニ之ヲ通知スヘキ等、該務一切ヲ担当整理スヘキコトヲ要ス
 岩橋答議ス、本案ノ如キハ自行最其責任アツテ曾テ恐謝スル所ナリ因ツテ願クハ、渋沢氏ヲ以テ適当ノ方法ヲ確設シ、吾人以テ其煩累ヲ免カレンコトヲ
 渋沢謂フ、本議ハ第十五銀行ニ在ツテ大関係アリト云ハ固ニ然リ、因テ其立案モ亦同行ヲ以テ専ハラ撰択アランコトヲ要ス
 岩橋辞シテ曰、敢テ請フ、第一国立銀行肯ンシテ其立《(マヽ)》アランコトヲ
 辻金五郎曰、頃日自行ハ静岡ノ為替方ヨリ交換法ヲ以テ照会セラルルモノアリ、今本案ニ関係アルヲ以テ之ヲ開スト、乃チ其翰牘ヲ展テ渋沢ニ示ス、其文左ノ如シ
   以手紙得貴意候、然者貴行ヨリ御発行之紙幣損壊ノ分、往々引替方申出候者有之候処、過般御布告之旨趣ニテハ、銀行成規第二十四条ニヨリ、紙片全備セサルモノト雖モ、大蔵卿ノ印章アルモノハ無故障可引換筈之処、右ハ卿印ノ周囲小欠欠等ノ分ニテモ、全ク其形ヲ不失モノハ前条ノ通ト相心得候得共、為念一応御照合ニ及ヒ候間、乍御面倒御細報被成下度、右間不顧当突申上候也
   十一月二日              静岡県為替方
     第四国立銀行御中
 渋沢ハ此書翰ヲ一読シテ更ニ議ス、今本議ノ方法ヲ設クルヲ以テ又注意スヘキモノアリ、蓋聞ク銀行課ハ成規第二十四条交換ノ旨ヲ以テ完壁トセス、良法ヲ得テ改正スルヲ要ス、並ニ政府紙幣ノ交換法ニ至テモ亦之ニ準スト云、抑交換ノ法ハ極メテ実的ニ処シ、人民ノ信安ヲ厚フスルヲ要ス、今辻氏開示ノ項ハ之ヲ後ニシ、先ツ本案ノ大法ヲ撰定スヘシ
 辻答フ、小子亦已ニ之ヲ意ヘリ、因テ静岡為替方ニ回答シテ言ハントス、今将ニ一律率通ノ交換法ヲ撰定ス、目下宜シク依旧弁理スヘシト
 渋沢問フ、各位ハ此回答案ヲ以テ異議アリヤ
 各答フルニ異議ナキコトヲ以テス
 渋沢曰、請フ各位理事委員ヲ撰挙スヘシ
 岩橋答フ、敢テ請フ、第一国立銀行其理事ヲ承ケンコトヲ
 渋沢議ス、各位謙譲ス、請フ敢テ自ラ撰ハン、第十五銀行及ヒ自行
 - 第5巻 p.456 -ページ画像 
之ヲ承クヘシ、而シテ三井銀行ニシテ紙幣アラハ之ニ預カルコト論ヲ俟タス、然レトモ又宜シク参預スヘシ、各位此ヲ以テ異議ナシトセハ、則此三行商議シテ其方案ヲ草立シ、更ニ衆議ヲ尽サンコトヲ要ス
 各位答フ、此三委員ヲ以テ異議スル所ナシ、並ニ其草案ヲ裁スルヲ要ス
右ノ如ク決議スルニ因ツテ、此理事ヲ承ケタル三行ハ、更ニ協議シテ其方案ハ第一銀行之ヲ草創シ、三行ノ討論ヲ定メテ、各行ノ回議ニ付シ、其決議ヲ以テ銀行課ニ復陳スヘキコトニ決定シ、各行皆此議ヲ領悉セリ
   ○敗裂銀行紙幣交換ノ事ハ「国立銀行成規」ニ簡単ナル規定アリト雖モ、ソノ手続ハ頗ル繁雑ナル手数ヲ要シ、且ツ各国立銀行ニテ同一ノ規定ニ従フ必要アリ、ヨツテ大蔵省銀行課ヨリ択善会ニ交換規則ノ議定ヲ下命シタリ
   ○本巻第四八二頁「択善会」明治十一年三月十一日ノ項ヲ参照スベシ。


択善会録事 第六回・第五―四二頁(DK050102k-0002)
第5巻 p.456-459 ページ画像

択善会録事 第六回・第五―四二頁
○上略
○渋沢栄一ハ前会ノ決議ニ由テ立案起稿スル銀行敗裂紙幣交換規則並例則図式等ノ書類ヲ示シテ謂テ曰、交換規則ハ敢テ難旨ナク起稿スルヲ得タリ、例則ニ至ツテ敗裂ノ形様千状万態ニ出テ、其法準ヲ設クル頗ル煩ハシク、近日纔カニ脱稿シ、未タ委員ニ照議スルニ遑《(ア脱)》ラスシテ今日初テ発案トナスヲ得タリ、而シテ前会陳述ノ如ク此方法ハ私約ニシテ施行シ難ク、必ス政府ヨリ之ヲ頒布セラレンコトヲ要スレハ、其意ニ基テ起草スル所ナリト、是ニ於テ各位ハ其草案ヲ順次ニ看了ス、因テ同氏ハ規則ノ全文ヲ展読シ旁ハラ文義ヲ解キ、又例則ノ大要ヲ陳略シ、敗裂形様図ノ法準ヲ説了シ、而シテ本案書類ハ第十五銀行・三井銀行ニ交付シ、更ニ各位ニ告テ曰、此委員等カ回議ヲ経テ更ニ各位ノ公議ヲ要スヘキナリト、衆之ヲ領諾ス(本文規則及ヒ例則ハ之ヲ下ニ掲載ス、但タ敗裂図ハ之ヲ載セス、他日決定ヲ待チ後巻ニ於テ掲録スヘシ)
○中略
  敗裂銀行紙幣交換規則
   第一条
凡ソ国立銀行ヨリ発行シタル紙幣ノ敗裂シテ流通ニ不便ノモノハ、其発行本店ノ何レノ地タルヲ論セス各府県下ニ設立シタル国立銀行及三井銀行ノ本店(国立銀行及三井銀行ノ本支店ナキ地方ニ於テハ府県庁)ニ於テ之レヲ交換スヘシ
   第二条
然リト雖モ、同地方ニ於テ其紙幣ヲ発行シタル銀行ノ本支店アル者ニ限リ、他ノ銀行ハ更ニ其中間ニ介スル事ナク、所持人ヲシテ直チニ其本支店ニ就テ交換ヲ為サシム可シ
 但得意先ノ依托ニヨリ銀行ニ於テ其交換ヲ引受タルコトアルトキハ其銀行ハ更ニ発行店ニ対テ交換ヲ請求スヘシ
   第三条
敗裂紙幣引換ノ元金ハ、予テ政府ヨリ交附セラレタル政府ノ損壊紙幣引換元金或銀行ノ準備金(府県庁ナレハ其予備金)ノ内ヲ以テ之レニ充
 - 第5巻 p.457 -ページ画像 
ツヘシ
   第四条
此敗裂紙幣引替ノ手数料ハ千分ノ二ト定メ、其紙幣発行ノ店ヨリ引替ヲ為シタル店ヱ仕払フ可シ
   第五条
各銀行ニ於テ引替タル敗裂紙幣ハ必ス東京ノ大蔵省ニ送致シテ新紙幣ト引替ヲ要スルモノタルニ付、其発行ノ本店ハ何レノ地タルヲ論セス引替ヲ為シタル銀行ハ其「コルレスポンデンス」ヲ結約シタル在東京ノ銀行ニ向ケ、各銀行毎ニ区別シタル種類枚数金額ノ明細表ヲ添テ之レヲ郵送ス可シ
 但其発行店東京ニアルカ、又ハ東京接近ノ地方ニ在リテ大蔵省ヘ運搬ノ便宜アリ《(ル)》分ハ、直チニ該店即チ発行店ニニ送致スルコトアルヘシ
   第六条
引替ヲ為シタル銀行ヨリ敗裂紙幣ヲ逓送スルニハ、成ルヘク其度数ヲ合スルノ方法ヲ用ヒ、□《(欠)》メテ逓送費ノ節減ニ注意スヘシ
   第七条
第五条ノ事故アルニヨリ各地方設立シタル銀行(東京ニ本支店ナキモノヲ云フ)ハ此敗裂紙幣交換ノ件ニ限リ必ス在東京ノ銀行ト「コルレスポンデント」ノ約束ヲ結ヒ、都テ該事ニ関スル庶務ヲ委托スヘシ
 但既ニ在東京ノ銀行ト普通ノ「コルレスポンデント」ヲ取結ヒタル分ハ、其約束中ニ於テ此敗裂交換ノ件ヲ取扱モ妨ナシ
   第八条
在東京ノ銀行ニシテ地方ノ銀行ヨリ前条ノ委托ヲ受ケタル者ハ、則チ其発行店地方銀行ノ代理人トナリ、敗幣ノ交換ヲ始メ代幣ノ受取方及其発行店ヨリ引替店ヘ仕払フヘキ手数料及逓送費ノ渡方ニ至ルマテ一切之ヲ弁理スヘシ
   第九条
此代理店ニ於テ交換シタル敗裂紙幣各地方ヨリ逓送シ来ルモノテ交換シタルモノトモ及其店ニハ条例制限ノ金高ニ至ルマテ之ヲ賄有《(貯カ)》シ、制限ノ金高ニ満レハ其発行店代理人トナリテ之レヲ大蔵省ニ納メ、代リ紙幣ヲ受取リ、押印其他ノノ手続ヲ為シテ之レヲ其本店代理ヲ托シタル地方ノ銀行エ送達スヘシ
 但該代理店ニ於テ交換シタル敗裂紙幣ハ、毎月両度其種類枚数金額ノ明細表ヲ製シ、之レニ手数料逓送費ノ計算書ヲ添ヘテ其発行店エ送致スヘシ
   第十条
在東京ノ銀行本支店ハ其「コルレスポンデント」ヲ取結ヒタル引替店ヨリ各社ノ敗裂紙幣ヲ送致シ来ル時ハ各銀行毎ニ之ヲ区別シテ其精算ヲ為シ、之レヲ発行店(東京ニ本支店アルモノヲ云フ)或ハ其代理店ニ送達シ、敗幣ノ代リ金引替ノ手数料及逓送費ヲ受取リ、之レヲ其引換店ニ送附スヘシ
 但普通ノ「コルレスポンデント」ノ約定アル分ハ直チニ其貸借勘定中ニ組込ムヘシ
   第十一条
前条ノ引替店ヨリ発達シタル敗幣中ニ該店(代理ヲ托サレタル地方銀
 - 第5巻 p.458 -ページ画像 
行)発行ノ分及送達ヲ受ケタル本店(代理ニ任スル東京銀行ノ本支店)ノ分アラハ之レヲ引去リ、混淆セサル様区別シ、条例制限ノ金高ニ満ルマテ之レヲ貯有シ置ク可シ
   第十二条
敗裂紙幣交換ノ為メ各地方ノ銀行ト在東京ノ銀行ト取結ヒタル「コルレスポンデンス」ト聯合ノ区分ハ一覧表ニ製シテ各国立銀行・三井銀行ノ本支店及地方官庁ヘモ悉ク通知シ置クヘシ
 但シ追テ創立スル銀行モ都テ此例ニ傚ツテ此約束ヲ為シ、且之レヲ通知スヘシ
   第十三条
敗裂紙幣交換ノ代リ金、其手数料(第四条ノ定額)及之レヲ東京ヘ送致シタル逓送費等ハ都テ其紙幣ノ発行店ヨリ引替ヲ為シタル店ヘ仕払フヘキモノタルニ付、其発行店ト東京ノ代理店トノ間ニ於テ普通又ハ此敗幣交換ノ為メ取結ヒタル「コルレスポンデント」ノ貸借勘定中ニ組込ムヘシ
   第十四条
在東京ノ銀行本支店ハ此代理ノ委托ヲ受ケテ地方ノ銀行ト「コルレスポンデント」ヲ取結フニ付テハ、多少ノ手数料ヲ要スヘキニ付、結約ノ時々双方協議ノ上敗裂紙幣ノ多寡又ハ其他ノ方法ニヨリテ其割合ヲ定メ置ヘシ
   第十五条
此敗裂紙幣ノ交換ハ別冊ノ規条ニ従ツテ周密ニ之レヲ取扱フ可シ
   第十六条
別冊ノ規条ニ準拠シテ交換シ難キ程ノ敗裂紙幣ハ之レヲ其発行店ニ送附シ、発行店ヨリ大蔵省ヘ伺ノ上之レヲ処置ス可シ
   第十七条
万一別冊ノ引換方規条ヲ誤リタル時ハ其引換ヲ為シタル店ノ損失ニ帰シ、発行店ヨリハ之ヲ償ハサルヘシ
   第十八条
贋造紙幣ト見極メタルモノハ之レヲ所持人ノ眼前ニ於テ裁断シ、政府ノ贋造紙幣ト同様ノ手続ヲ運フ可シ
   第十九条
敗裂紙幣真贋ノ鑑定ヲ誤リ、贋札ヲ引換タル時モ其引替ヲ為シタル店ノ損失タルヘシ
   第弐十条
此交換規則ハ東京及各地方ニ於テ現今営業スル所ノ国立銀行及三井銀行協議ノ上、大蔵省ノ允許ヲ得テ取極メタル者ニ付、自今各地ニ設立スル国立銀行モ此規則ヲ履行シテ交換ニ従事ス可シ
   第弐十一条
此交換規則中他日更正増補ヲ要スルコトアレハ、在東京ノ国立銀行本支店及三井銀行ノ間ニ行ハルヽ毎月定例ノ集会ニ於テ其得失ヲ討議シ定論ノ上各地ノ銀行ニ協議シテ、大蔵省ノ裁可ヲ得テ後之ヲ行フ可シ
 但其節ハ各地ノ国立銀行・三井銀行ノ本支店及地方官庁ヘモ其由ヲ通知ス可シ
 - 第5巻 p.459 -ページ画像 
右之通決定候モノ也
  年 月 日             各銀行連署
  敗裂銀行紙幣交換例則
   紙幣敗裂之形態千状万様、交換スヘキモノアリ、又スベカラザルモノアリ、一言隻行ヲ以テ之レヲ判定スル甚難シト為ス、故ニ巻末ニ十箇ノ例図ヲ掲示シ、玆ニ第一図ヨリ第十図ノ交換或ハ不換ヲ記述スル左ノ如シ
第一図 其左右両片ハ僅カニ頭取支配人姓氏ノ一端ヲ認メ得ルモ、大蔵卿ノ印章及ヒ頭取支配人之印存在セサルモノニ付、交換ニ附シ難シ中央ノ一片ハ大蔵卿印全存シ、頭取支配人之名印ヲ確認シ得ルヲ以テ全額ノ交換ヲ為スヘシ
第二図 其左右両片図ノ如ク截断セルモノハ仮令頭取又ハ支配人ノ名印存在スルモ交換セサルベシ、然レトモ此図ノ如クナラス其下部ニ於テ毫カ接続シテ地模様等符合スルモノト確認スルトキハ半額ノ交換ヲ為ス、又中央ノ一片ハ大蔵卿印全存スト雖トモ、頭取支配人ノ名印欠損スルヲ以テ半額ノ交換ト為スヘシ
第三図 両片共ニ半額ノ交換ニ充ツヘシ
第四図 第一第二ノ一片ヲ以テハ交換ヲ為スヘカラス、然レトモ此両片ヲ合一シテ地模様等符合スルト確認スルモノハ半額ノ交換ヲ為ス、又第三ノ一片ハ大蔵卿印半存シ、頭取支配人ノ名印モ半存スルヲ以テ半額ノ交換ト為スヘシ
第五図 此ノ如ク寸断セル一片ヲ以テハ交換ヲ為スベカラス、然レトモ第三四又ハ二三ノ両片アリテ其模様符合スルモノハ何レモ半額ヲ以テ交換スヘシ
第六図 一二ノ両片ハ何レモ大蔵卿印頭取支配人名印半存スルヲ以テ半額ノ交換ニ充テ、三ノ一片ハ交換ス可カラサルモノトス
第七図 上片ハ大蔵卿印全存スト雖トモ頭取支配人ノ印欠損シ、下片頭取支配人ノ印全存スレトモ大蔵卿印欠損スルヲ以テ上下両片共ニ半額ノ交換ニ充ツヘシ
第八図 第一片ハ大蔵卿印半存スト雖トモ某銀行ノ紙幣タルヤヲ認メ難タケレハ交換ヲ為シ難シ、二三ノ両片ハ頭取又ハ支配人ノ名印全存スルヲ以テ共ニ半額ノ交換ニ充ツヘシ、故ニ此両片ヲ合有シ其模様符合スルモノハ全額ヲ以テ交換スヘシ
第九図 前条ニ同シ
第十図 第一片ハ大蔵卿頭取支配人ノ三印全ク欠損セルニヨリ交換スヘカラス、二三ノ両片ハ頭取又ハ支配人之名印全存セルヲ以テ共ニ半額ノ交換ニ充ツヘシ、若シ此両片ヲ合併セハ全額ヲ以テ交換スヘシ
此例図ニ恰適セサル敗裂紙幣発見セル時ハ、上文十図ノ解釈ニ参照準拠シテ其交換ニ従事スヘシ、然レトモ其参照準拠ヲ確定シ難キ程ノモノアル時ハ規則第十六条ノ手続ヲ運フヘシ


第一国立銀行第九回半季実際考課状 第二―三頁〔明治一一年一月一三日〕(DK050102k-0003)
第5巻 p.459-460 ページ画像

第一国立銀行第九回半季実際考課状 第二―三頁〔明治一一年一月一三日〕
一各国立銀行発行紙幣ノ敗裂汚染ニ係リ通用ス可ラサル者各行相互ニ交換スヘキ方法ヲ択善会即チ銀行月次集会ニ於テ立案セリ、此時ニ
 - 第5巻 p.460 -ページ画像 
当リ三井銀行宮城県下支店ヨリ其交換方ヲ同県ニ稟候シ、又同県ヨリ大蔵省ヘ転稟シ、乃チ之ニ指令セラレテ其旨ヲ八月七日同省ヨリ告示セラレタリ、因テ其概案交換法ヲ以テ各行協議ヲ尽シ、同月十一日之ヲ同省ニ稟候ス、然ルニ銀行課ヨリ当行ニ内示アツテ右稟候ノ旨ハ特リ会盟ノ銀行ニ限ルヲ以テ其用普ネカラス、尚一般銀行上ニ施行スヘキ方法ヲ択善会ニ於テ撰定シ、以テ再申スルコトヲ要求セラレタリ、此ニ於テ更ニ集会ヲ以テ之ヲ協議シ、当行及第十五銀行三井銀行等其理事ノ委員ト為リ、而シテ其草案ヲ定メ即今専ラ撰議スル所タリ


択善会録事 第七回・第二一―三二頁(DK050102k-0004)
第5巻 p.460-462 ページ画像

択善会録事 第七回・第二一―三二頁
○上略
○第一銀行須藤時一郎、第十五銀行肥田昭作ハ銀行敗裂紙幣交換規程ノ議案ヲ以テ互ニ答弁審議ヲ尽セシガ猶決定ヲ得ス、因テ第十五銀行ハ更ニ再考ヲ要スルガ為メニ本議ヲ止メタリ、蓋此議ハ第五回ノ会議ニ於テ議ヲ開キ、当下第十五銀行・第一銀行・三井銀行等其理事委員ノ任ヲ受ケ、而後第一銀行ハ委員中ノ委員トシテ其議案書類ヲ撰述シ第六回ノ会議ニ於テ之ヲ開報セシコトハ当日ノ録事ニ詳カナリ、而シテ三井銀行ハ十二月十二日ヲ以テ原案ニ異議ナキコトヲ第一銀行ニ回報セリ、因テ第一銀行ハ即日之ヲ第十五銀行ニ報道シ、且其決議アランコトヲ要促セリ、其翌日第十五銀行ハ第一銀行ニ答議案ヲ(此全文下ニ載ス)開付ス、然ルニ第一銀行ハ之ヲ適当ナル答議トナサスシテ復タ其答弁書(全文下ニ載ス)ヲ裁シテ之ヲ討議シ、第十五銀行再考ノ為メニ歇議スル所ナリ
(第十五銀行答議)
  敗裂紙幣交換例則
   紙幣敗裂之形態千状万様、交換スヘキ者アリ、又スヘカラサル者アリ、一言隻行以テ之レヲ判定スル甚難シトナス、故ニ巻末ニ十箇ノ例図ヲ掲示シ、玆ニ第一図ヨリ第十図ノ交換或ハ不換ヲ記述スル左ノ如シ
第一図 其左右両片ハ僅カニ頭取支配人姓氏ノ一端ヲ認メ得ルモ、大蔵卿ノ印章及ヒ頭取支配人印存在セサルモノニ付、交換ニ附シ難シ中央ノ一片ハ大蔵卿印全存シ頭取支配人ノ名印亦確認シ得ルヲ以テ全額ノ交換ヲ為スヘシ
第二図 其左右両片図ノ如ク截断セルモノハ仮令頭取又ハ支配人ノ名印存在スルモ交換セサルヘシ、又此図ノ如クナラス其下部ニ於テ毫カ接続シテ地模様等符合スル者ト雖トモ交換ヲ為スヘカラス、而シテ中央ノ一片ハ大蔵卿印全存スヲ以テ全額ノ交換ニ付スヘシ
第三図 両片共ニ半額ノ交換ニ充ツヘシ、若右片大蔵卿ノ印ヲ欠クトキハ交換セスシテ左片ニ全額ヲ付シ、又左片ニ大蔵卿ノ印ヲ欠時ハ右片ニ全額ヲ付シ、左片ハ交換セサルヘシ
第四図 第一第二ノ一片ヲ以テハ交換ヲ為スヘカラス、然レトモ此両片ヲ合一シテ地模様等符合スルト確認スルモノハ半額ノ交換ヲ為ス、又第三ノ一片ハ大蔵卿印半存シ、頭取支配人ノ名印亦半存スルヲ以テ
 - 第5巻 p.461 -ページ画像 
半額ノ交換ト為スヘシ
第五図 此ノ如ク寸断セル各片中第三ノ一片ヲ除クノ外交換ヲ為スヘカラス、然レトモ第三四又ハ二三ノ両片アリテ其模様符合スルモノハ何レモ全額ヲ以テ交換シ、第三ノ一片ノミニテモ大蔵卿ノ印全存スルニヨリテ全額ヲ以テ交換スヘシ、但シ数位欠損セハ裏面ノ模様ヲ推シテ其金位ヲ決ムヘシ
第六図 一二ノ両片ハ何レモ大蔵卿印頭取支配人名印半存スルヲ以テ半額ノ交換ニ充テ、三ノ一片ハ交換ス可ラサルモノトス
第七図 上片ハ大蔵卿印全存スルヲ以テ全額ノ交換ヲ為シ且下片頭取支配人ノ印全存スレトモ大蔵卿印欠損スルヲ以テ交換ニ充ツヘカラス
第八図 第一片ハ大蔵卿印半存スト雖トモ、某銀行ノ紙幣タルヤヲ認メ難ケレバ交換ヲナシ難シ、第二片ハ半額ヲ以テ交換スヘシ、而シテ第一第二ト合有スルトキハ全額ノ交換トナシ、第三ノ一片ノミニテハ交換スヘカラス、又第一第三ナレハ半額、第二第三ト合有スル時ハ全額ノ交換トナスヘシ
第九図 前条ニ同シ
第十図 第一片ハ大蔵卿頭取支配人ノ三印全ク欠損セルニヨリ、交換スヘカラス、二三ノ両片ハ頭取又ハ支配人ノ名印全存セルヲ以テ共ニ半額ノ交換ニ充ツヘシ、若シ此両片ヲ合併セハ全額ヲ以テ交換スヘシ此例図ニ恰適セサル敗裂紙幣発見セル時ハ、上文十図ノ解釈ニ参照準拠シテ其交換ニ従事スヘシ、然レトモ其参照準拠ヲ確定シ難キ程ノモノアル時ハ規則第十六条ノ手続ヲ運フヘシ
(第一銀行答弁)
  敗裂銀行紙幣交換ノ本旨
銀行紙幣ノ流通ヲシテ凝滞ナカラシメンコトヲ務ムルハ、尤以テ銀行者ノ急トスル所タリ、故ニ其敗幣モ成ルヘク丈ケ之ヲ交換シテ人民ノ信憑ヲ増サンコトヲ要ス、若シ之レニ反シテ其交換ニ偏頗アラシメハ或ハ其害完全ナル紙幣ニ波及スルノ恐アリ、勉メテ其交換ヲ公平ニ行フヘシ、然レトモ其交換ヲ為スニ当リ一片ノ紙幣ヲ二重ニ交換スルノ損害ヲ防カサルヲ得ス、因テ全額又ハ半額交換、或ハ不換ノ例則ヲ設クル所以ナリ、又銀行紙幣中ノ簡要ナル点ハ番記号及大蔵卿印、頭取支配人ノ名印ナリトス、然リ而シテ第十五国立銀行ニ於テハ大蔵卿ノ印章ヲ最一ノモノト認メ、頭取支配人ニ名印ノ有無ヲ顧ミサルカ如ク交換例則ヲ編成セラレタリト不公平《(マヽ)》ト又ハ一片ヲ二重ニ交換スルノ損害アリト為ス、其故如何ヲ左ニ陳説ス
 第二図中央一片ノ如キモ若シ下部ノ「一」ノ字ヲ欠損スレハ素ヨリ不換ノモノタルヘシ、僅カニ「一」字ノ存在スルモノト左右ノ両辺下部接続シテ頭取支配人ノ名印判然タルモノト其効用同一ナルヘシ然ルニ一片ハ全額、両辺ハ不換ト為スカ如キハ偏頗ナル交換法ニシテ、公平ト称シ難シ
 第三図大蔵卿印ノ聊カ存スルト存セサルトニヨリテ交換ノ別ヲ立ルハ不穏当ナリトス、若シ此法ニヨレハ両片具備シテ大蔵卿印ノミ存セサルモノハ不換ト為サルヽ《(ヽル)》ヲ得ス、所持人ニ於テ夫レ之ヲ何トカ謂ハン
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 第五図第三片ノ如キハ銀行ニトリテ肝要ナリトスル所ノ頭取支配人ノ名印及番記号ノ認ムヘキナシ、然ルニ之レヲ全額ノ交換ト定ムルコトナラハ、銀行紙幣ニハ番記号ハ勿論頭取支配人ノ名印ヲ押捺スルニ及ハサル可シ
 第七図ノ如キモ特リ大蔵卿印ノミヲ目的トスルノ交換法ナリ
 第八図第二片ト第三片トハ同等ノ能力ヲ有スルモノナリ、然ルニ換不換ノ別アルハ解シ難シ、又此交換法ヲ通観スルニ到底大蔵卿印ヲ主トスルニ似タリ、然ルニ此条ニ至ツテ第二第三ヲ合有スレハ全額ノ交換ト為ス、第二図ノ交換法ト矛盾セリ
 第九図第一ト第二ト合有スルモ全額第二第三ト合有スルモ全額トアリテ 第二ノ一片ハ半額トナリ第三ハ不換ニ編ス、怪シムヘキナリ此他別号第一図ノ如キモノアランニ、第一国立銀行ノ交換法ニヨレハ左右ノ一片ハ共ニ半額ノ交換ニ充テ、中央ノ一片ハ不換ノモノト為ス、然レトモ本書第十五銀行ノ交換法ニヨレハ三片共ニ半額交換ノモノタルヘシ、之レヲ二重ノ交換ト指称シテ其弊害ヲ恐ルヘキコトナリトス
 若シ前条ノ恐レヲ防ク為メニ左右一片二片ヲ半額ノ交換ニ附シ、三片ヲ不換ト定メハ後条ノ差支ヲ生ス可シ
 第二図ノ二片モ不換ニ附シ、第一図モ素ヨリ大蔵卿ノ印章ナケレハ不換ノモノト為サハ、所持人ヲシテ交換ヲ拒ムノ疑心ヲ生セシメ、大ニ紙幣ノ信憑ヲ失フニ至ラン、若シ第二片ヲ交換ニ附セハ第三図ノ一片ハ不換ノモノニ帰シ、又第二片モ不換ニ帰セン第二片ハ大蔵卿印存スルト雖トモ何銀行ノ紙幣タルヲ認メ難キ故到底世人ノ嘖々ヲ免レ難シ、又第四図第二片ノ如キハ大蔵卿印ヲ主唱スルノ論ニヨレハ不換ノモノナリ、併シ此ノ如キモノハ全額ノ交換ヲナスト定メル時ニハ、第二図第三図ノ第一片モ交換ニ附セザルヲ得ス、然ルトキハ大蔵卿印ヲ主唱スルノ論根拠ナキニ似タリ
 単ニ大蔵卿印ノミヲ主本ト定ムル時ハ名称数字欠損ノ情状ニヨリ換不換ノ議論ヲ生シ、大ニ世人ノ嫌忌スル所トナルノ恐レアル可シ
 要スルニ大蔵卿ノ一印ヲ根拠トナシ、交換法ヲ立定スル時ニハ前陳件々ノ如キ不都合ヲ醸生スヘシ、故ニ大蔵卿印頭取支配人ノ名印ヲ以テ交換ノ方法ヲ定ムルヲ以テ得策ナリト思考ス


択善会録事 第八回・第九―一三頁(DK050102k-0005)
第5巻 p.462-463 ページ画像

択善会録事 第八回・第九―一三頁
○上略
○又同氏○渋沢栄一ハ銀行敗裂紙幣交換方法委員討議ノ事情ヲ演説シテ云向ニ第六回会同ニ於テ議案書類ヲ各位ノ瀏覧ニ供スルノ後、委員之ヲ議シテ三井銀行ハ原案ニ異議ナシ、第十五銀行ハ交換規則ニ於テ異議ナク、惟タ交換例則ニ於テ別ニ主論アルニ由リ、数次之ヲ討議シ其決定スル所ヲ以テ更ニ各位ノ公議ヲ求メント欲シテ竟ニ今日ニ及フト雖トモ、未タ以テ一定ニ出テサルモノハ、蓋紙幣敗裂ノ形状鑑定取捨ノ一点ニ於テ彼此準縄ヲ異ニスルノミ、其他ハ悉ク同見タレハ今ハ宜シク此両議ヲ以テ各位ノ公議ヲ聴キ、其帰向スル所ニ従テ銀行課ノ詢間《(問)》ニ答酬スヘシ、此ニ因テ不日其書類ヲ整頓シ、各位輪議ノ為メニ之ヲ
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移送スヘシト、次ニ原案交換規則ノ本条ヲ展読解明シテ各位ニ領会セシメ、又交換例則ノ冒頭一章ヲモ講読シテ全条ノ概旨ヲ指発セリ、次ニ又曰、各位此議案書ヲ輪議スルニ当ツテハ左ノ順序ヲ明弁スルヲ要ス、蓋其原案ト称スルハ委員中ノ主任トシテ当銀行ノ立案スル規則例則図解ノ書類是ナリ、第十五銀行ノ議案ト称スルハ即此原案ニ対スルノ動議書ナリ、又当行ノ再議書アリ、此ハ其動議ニ対シテ原案ノ旨ヲ再述スルモノ即チ答弁書是ナリ、然而シテ前ニ陳ルカ如ク交換規則ハ両行ノ論聊庭経ナク、惟タ敗裂ノ形状ヲ鑑定スルニ於テ其取捨スル所ヲ異ニスルノミナレハ、殊ニ之ヲ異論反議トナサスシテ惟タ議案ニ甲乙アルモノト謂テ可ナリ、各位此意ヲ諒シテ以テ審案熟議アルヲ要ス而シテ第十五銀行ノ趣旨ハ尚其主任者ノ陳明アラン、各位又宜シク之ヲ領知スヘシ
次ニ肥田昭作演述シテ曰、交換規則ニ於テハ当行以テ異議スル所ナシ惟タ敗裂形状鑑定取捨ノ一点ニ於テ其「スタンダルト」ヲ異ニスルノミ、蓋当行ノ主議ハ敢テ紙幣ノ性質ヲ極論スルヲ須ヒス、只其従前ノ形式ヲ以テ判定スレハ自カラ原案ト反体セリ、而シテ凡ソ議論ノ両別スルモノハ其実孰レカ非ナラサルヲ得サレハ、各位其是非ヲ推究明発セラレンコトヲ希望ス
渋沢又曰、各位ハ今弊行ト第十五銀行トノ演述ニヨリテ此交換例則ニ於テ聊見解ヲ異ニスル所以ヲ諒知セラルヘシ、而シテ小子ハ更ニ一言ノ各位ニ告知スヘキモノアリ、聞クカ如キハ現今紙幣局ニ於テハ銀行紙幣ノ新製ニ従事シ、而シテ其新製ノ形状ハ聊旧様ニ異ナリテ大蔵卿印モ亦中央ノ地位ニアラスト云、果シテ然ラハ他日此新様紙幣ハ旧様紙幣ト並ヒ通用シテ均シク是レ銀行紙幣タルヲ得ヘシ、故ニ今其交換法ヲ設クルニ当ツテ、或ハ旧様ニ因依シ、又ハ新様ニ拘泥セハ与ニ錯雑ノ弊ナキヲ免カレス、弊行ハ此両情ヲ酌量シテ至理至当ナル「スタンダルト」ヲ設ケ、以テ原案ノ知《(如)》ク起草スル所テレハ各位之ヲ諒明シテ可ナリ


銀行集会 理財新報 第三号・第五―六丁〔明治一一年七月八日〕 銀行集会第十二回録事(DK050102k-0006)
第5巻 p.463 ページ画像

銀行集会 理財新報 第三号・第五―六丁〔明治一一年七月八日〕
    ○銀行集会第十二回録事
○中略
一肥田昭作ハ前会嘗テ第七回録事上敗裂銀行紙幣交換ノ議案ニ於テ同子ト須藤時一郎トノ論談ヲ筆スルニ其実ヲ失フノ文アルコトヲ告ゲシガ、本回尚又之ヲ推問ス、由テ須藤時一郎ハ之ヲ弁解シテ一時ノ速了ニ出デタル失誤ナルコトヲ了解シテ自他ノ情状初テ氷釈ス、而シテ其第七回録事ノ第二十二丁裏面五六行ニ渉ル第一国立銀行裁スル所ノ答弁書ナルモノハ、当日(第七回会日)ニ於テ肥田昭作ノ親閲セザルコト明白セリ


青淵先生六十年史 (再版) 第一巻・第五八四―五八五頁 〔明治三三年六月〕(DK050102k-0007)
第5巻 p.463-464 ページ画像

青淵先生六十年史 (再版) 第一巻・第五八四―五八五頁〔明治三三年六月〕
  第二 敗裂銀行紙幣交換ノ整理
敗裂汚染ノ銀行紙幣交換手続ニ就テハ国立銀行成規第二十四条ニ其規定アリト雖モ、其損傷ノ形態タル千種万様ニシテ実際之カ鑑別ニ困難
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ナルノミナラス、其引換店ハ全国各地ニ散在セル為メ人民ノ不便ヲ感シ、同業者ノ煩雑ヲ蒙レルコト尠ナカラス、従テ銀行紙幣ノ流通上ノ障碍ヲ来スヲ以テ、其交換ノ方法ヲ完全ナラシムルコトハ実ニ当時ノ急務ナリキ
サレハ此事ニ関シテハ先生モ夙ニ考慮ヲ費ヤス所アリ、択善会起ルヤ同会ニ於テ先生ハ同盟ト謀リテ其交換方案ヲ協定シ、審議攻究再三ノ修正ヲ加ヘテ之カ例則例図ヲ作リ、其結果明治十三年八月ニ至リ完全ナル交換方法ヲ全国ニ普及スルコトヽナリ、始メテ銀行紙幣ノ流通ヲシテ安全ニ且便利ヲ得セシメタリ
既ニシテ明治十六年ニ至リ国立銀行条例ノ改正アリ、国立銀行紙幣ハ悉皆其営業年限内ニ消却スヘキコトニ定リ、所謂合同消却法ヲ実行スルコトヽナリシヲ以テ、国立銀行紙幣ノ敗裂汚染等ノ為メ通用シ難キモノハ之ヲ日本銀行ニ送致シ、通貨ト交換スルノ便法ヲ立案シテ之ヲ日本銀行ニ稟議シ、其允諾ヲ得、明治十九年十月ヨリ全国各国立銀行ニ照会シテ同一ノ処理ヲ為スコトヽナレリ