デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

1章 金融
1節 銀行
6款 択善会・東京銀行集会所
■綱文

第5巻 p.637-640(DK050139k) ページ画像

明治12年10月13日(1879年)

是ヨリ先栄一手形割引ノ商工ニ必要ナルコトヲ述ベテ割引手形不渡ノ際ニ於ケル処分法設置ノコトヲ議ス。衆ノ賛同ヲ得タルニヨリ第一国立銀行ニ於テ修正原案ヲ作リ各行ノ輪議ニ付ス。是日栄一原案ヲ上読シ衆議ニ付ス。衆異議ナク之ヲ可決ス。


■資料

東京経済雑誌 ○第九号・第三〇九―三一〇頁〔明治一二年八月三〇日〕 択善会第廿五回録事(DK050139k-0001)
第5巻 p.638 ページ画像

東京経済雑誌
 ○第九号・第三〇九―三一〇頁〔明治一二年八月三〇日〕
    ○択善会第廿五回録事
○中略
第四次、同氏○渋沢栄一ハ仮ニ会頭ヲ遜リ本会諸位ニ向テ建言センコトヲ乞ヒテ割引手形ノ取扱方ヲ説明ス、其大意ハ割引ノ法ハ実ニ商工ノ為メニ大ニ利益アツテ銀行ノ為メニモ甚タ重ンスベキ営業ナレハ、欧米ノ諸銀行ハ皆以テ利ヲ興スノ溯源トナシ、此ノ盛ンナルニアラザレバ商業ノ振起スルヲ期スヘカラズ、敝行ノ如キハ曾テ此業ノ充分ニ行ハレンコトヲ希望シテ常ニ之カ誘導ニ懈ラサリシカ、初テ近日ニ至テ漸次売買ノ間ニ行ハレ、東京・西京・大阪等ニ於テハ所云送為替若シクハ純粋ナル割引ヲ以テ敝行ニ要求スル者アリテ、稍商家ノ方針ヲ発達シタル証候アルカ如シ、然ルニ凡ソ事ノ利アル者ハ弊モ亦随テ生スルヲ免カレサレハ、今ヤ此業ノ盛ンナルヲ希ヒ、此業ノ行ハルヽヲ図ルトキハ預メ其防害ノ方法ヲ講セサルヘカラス、因テ今ヨリ同盟相約シテ割引手形ノ取付ニ於テ不渡アルトキハ、互ニ其商人ノ姓名ヲ告ケ、其不信実ヲ鳴ラシテ以テ以後決シテ此ノ如キ商人ト取引セサルトキハ一ハ以テ銀行ノ被害ヲ防キ、一ハ以テ商業上ノ約束ヲ堅固ニスルノ実効アラン、諸君此建言ノ旨ヲ採用セハ更ニ議シテ同盟ノ約束ヲ設立スルヲ要スト、辻金五郎君・原六郎君等ハ緊要ナル考案ト認メ、速ニ其方法ノ決定ヲ要スト答ヘ、肥田昭作君ハ之ヲ賛成シテ曰ク、諸君実際ノ見解ヨリシテ皆其建案ノ旨ヲ良策ナリト称スルヲ信ス、小子ハ未タ実際ヲ知ラスト雖トモ理論上ヨリ考フルニ割引ノ業興ラサレハ商工ノ盛ンナルヲ得ヘカラス、若シ商工ニシテ之ヲ重ンセス銀行ニ与フルニ不信義ヲ以テスルノ弊アラハ厳ニ防害ノ方法ヲ立テサルヘカラス、要スルニ衆論ニ従テ決行センヲ望ムト、杉本正徳君・辻金五郎君等ハ其規則ハ已ニ設ケタルヤ否ヲ問フ、渋沢君曰ク未タ之ヲ設ケスト雖トモ到底極簡略ナル規則ヲ設クルカ或ハ只其要旨ヲ記シテ同盟相共ニ之ヲ確守スルカノ二法ニ帰スルノミ、而シテ諸君今建案ノ旨ヲ一読スルヲ聴テ熟領スルヲ得スト雖トモ、其目的ノ大要ニ至テハ之ヲ可ナリトスルカ如キヲ以テ、其実際ニ施行スル要旨即チ手続書ヲ作ツテ此建案ニ添ヘ、不日輪議ヲ以テ決定スル者ハ如何ト、衆皆此議ニ同意セリ

東京経済雑誌 ○第一一号・第三八九頁〔明治一二年九月三〇日〕 択善会事務報告(DK050139k-0002)
第5巻 p.638 ページ画像

 ○第一一号・第三八九頁〔明治一二年九月三〇日〕
    ○択善会事務報告
○中略
一前会渋沢氏建言スル所ノ割引不渡ノ節処分方法ハ当下速ニ議案ニ充テ以テ決議ヲ得ルニ因リ、後原案者ニ於テ訂正ヲ加ヘ前ノ通知状文案ト一同輪議ニ付シ、諸行異議ナクシテ但タ第百銀行ノ修整説アルニ因リ、後会ヲ俟テ再議スヘキコトヲ報道セリ 以上

東京経済雑誌 ○第一三号・第四四五―四四九頁〔明治一二年一〇月三〇日〕 択善会第廿六回録事(DK050139k-0003)
第5巻 p.638-640 ページ画像

 ○第一三号・第四四五―四四九頁〔明治一二年一〇月三〇日〕
    ○択善会第廿六回録事
○中略
第一次、同氏○渋沢栄一ハ前会ニ当リ発議シタル割引手形不渡ノ節処分方
 - 第5巻 p.639 -ページ画像 
法ハ爾後原案者ニ於テ其議案ヲ修整シ、更ニ輪議ニ付シテ諸行異議ナク、但タ第百銀行ノ修整説アリシ次第ヲ報道シ、而シテ原案ヲ把テ上読シ畢リ、乃チ発議シテ曰ク、第百銀行ノ修整説タル者ハ其方法即チ原案ヲ新聞紙ニ掲ケテ公衆ニ知悉セシメント欲ス、是其厳酷ニ属スルヲ以テ之ヲ止ムルハ如何、而シテ今已ニ読明スル所ノ原案第二項第二節ノ但書ハ則其修整説ニ因テ加補セシ者ナリ、請フ諸君其新聞紙ニ掲載スルノ可否ヲ議定セヨト、原六郎君曰ク、既ニ其処分方法ヲ設クル以上ハ又之ヲ新聞紙上ニ掲載セント欲セリ、然ルニ今中止ニ従フトスレハ則掲載セサルコソ可ナリ、因テ此説ヲ廃センコトヲ望ムト、諸位モ亦掲載セサルヲ要セリ(本文方法全文下ニ載ス)
○中略
    ○割引手形取付不渡ノ者処分方法
夫レ手形ノ割引ヲナスハ欧米諸国ノ銀行ニ在テ利益ヲ興スノ淵源トナシ、此業ノ振起スルニアラサレハ商業ノ盛ンナルヲ得ルヘカラサル者トナス、本邦ノ如キモ近日ニ至リ漸次此業ノ商業上ニ行ハルヽハ商家ノ信用稍々発達スルノ徴候ニシテ且将来其振起スルヲ卜スルニ足レリ然而シテ凡ソ事ハ利アルニ随テ弊モ亦生スルナキヲ免カレサルヲ以テ預メ其防範ヲ講セサルヘカラス、蓋割引ヲ施行スルハ全ク信用ニ基クヲ以テ能ク注意ノ上ニモ注意ヲ加ヘテ、其要求者身代ノ確実ナルヤ否其人物ノ正直ナルヤ否ヲ審ニスルト雖トモ、決シテ普通貸借ノ如キ厳密ナル方法ヲ以テ之ヲ処スヘカラサル者ナリ、況ヤ逆為替手形ヲ割引シテ其代リ金ヲ隔地ニ於テ取立ツルカ如キハ、其便利ヲ荷為替ト同フシテ、而シテ之ト安危ヲ殊ニセリ、何ントナレハ荷為替ハ現ニ抵当ノ物品ヲ我ニ収メ、其代リ金ハ物品ト交換セリ、而シテ割引ノ如キハ之ニ対スル物品アルモ、商賈ノ自由ニ任スヲ以テ、商賈ノ為メニスレハ極メテ便利ナリト雖トモ、銀行ノ為メニスレハ大ニ復タ掛念ナキ能ハサル者ナレハ、何レノ銀行ヲ論セス多クノ得意先中ニ於テハ時トシテ違滞ノ変ナキヲ保チ難シ、此時ニ当テ銀行ハ其名宛人ニ要求シテ仕払ハサレハ則振出人ヨリ取戻シ得ヘキハ西洋諸国共ニ大率ネ其法ヲ同フスル所ナリ、我国ニ於テハ未タ此事ニ関シテ成文律アルヲ見スト雖トモ、其裁判ニ至テハ蓋西洋諸国ト大同小異ナルヘキノミ、果シテ然ラハ銀行ハ決シテ損失ナキカ、曰ク否、彼ノ名宛人ニシテ之ヲ仕払ハス振出人モ亦容易ニ之ヲ返弁セサルコトアレハ、其間或ハ大坂ニ要求スルモノアリ、或ハ東京ニ催促スル者アリ、或ハ一応掛合ノ上返弁スル等ノ遁辞ヲ設ケテ一時ヲ遷延スル者アルニ至ラン、而シテ紛紜ノ末遂ニ又公裁ヲ仰クニ至レハ其間ノ利息及ヒ入費ニ於テモ是亦少ナキニアラス、而シテ其公裁ハ銀行ノ直理全勝ヲ得ルニ於テ論ヲ須タサル所ナリト雖トモ、到底損失タルヲ免レサルナリ、況又其間彼レ身代限リナキヲ保ツヘカラサルニ於テオヤ、故ニ荷為替ノ如キハ銀行ノ為メニ紛雑ナル者ト雖トモ、其抵当ノ収留スヘキアルヲ以テ迥カニ割引ヨリ安全ナル者ト謂フヘシ
然ルニ銀行ハ商業ノ振起ヲ図リ、得意先ノ便利ヲ計リ、敢テ此ノ如キ危険ヲモ冒シテ其割引ヲ施行スルカ如キハ宜シク得意先モ亦少シク之ヲ領意セザルヘカラス、幸ニ少シク領意セハ復タ必ズ不信実ノ点ニ陥
 - 第5巻 p.640 -ページ画像 
ラサルヘキナリ、然レトモ此ハ是其人々思慮ノ厚薄ニ在テ銀行ニ於テハ之ヲ左右スルノ権ナキヲ以テ、我儕銀行ニ任スル者ハ特ニ宜シク一法ヲ設ケテ得意先商人ヲシテ其信用ヲ重ンスルノ気風ヲ感興セシム@キナリ、即チ本会同盟ノ銀行ハ皆契約シテ以テ若シ一タヒ得意先ノ商人割引手形ノ仕払ヲ怠ル者アレハ、各其姓名ヲ照知シ、自後此ノ如キ輩ノ為メニ欺騙ヲ免カルヽヲ要スルニアリ、顧ミルニ本邦商賈ノ気風ハ往々約束ヲ等閑ニ看做シ、仕払ノ義務ヲ負フト雖トモ其期日ニ迫テ備ヘヲナサス、数々ノ催促ヲ喫シ両三日ヲ過キテ初テ仕払ヲナスモノ看テ以テ常套トナス、是実ニ為替不渡ノ弊ヲナス原因ナリ、今ヤ割引ノ盛ンナルヲ希図スルニ於テ務メテ其弊風ヲ矯正セサルヘカラス、之ヲ聞ク西洋諸国ノ例ハ為替手形ノ仕払ヲ請求スルニ懈リテ期限ヲ過チ其間名宛人ノ破産スル時ハ振出人ハ償弁ノ義務ヲ免カルヽヲ得ルト、期日ヲ重ンスルノ厳ナル此ノ如シ、故ニ今其防範ノ方法ヲ設クルハ豈一大時務ト謂ハサランヤ、則其手続ヲ条立スルコト左ノ如シ
 一択善会同盟諸銀行中割引手形ノ取付ヲナスニ於テ其手形不渡ニ帰スル者アレハ、能ク之カ事由ヲ明カニシテ本会幹事銀行ニ報告スルヲ要ス
 一右不渡ニ帰スル原由ハ、凡ソ左ニ開列スル三個ノ事情ニ係レリトナス
  第一 名宛人其引受ヲ為サヽルニ付之ヲ振出人ニ報シ、振出人其返金ヲ怠ル時
  第二 名宛人仕払ヲ引受ケテ後期日ニ至リテ之ヲ仕払ハサル時
      但期日ニ至リ仕払ハスト雖トモ其名宛人ノ確実ナルヲ信シ示談ヲ以テ延期ヲ承諾スル者ハ本文ノ限ニアラス
  第三 名宛人既ニ其仕払ヲ怠ルニ付、之ヲ振出人ニ報シテ其返金ヲ促カセシニ、振出人ニ於テモ亦之ヲ怠ルトキ
 此外尚許多ノ事情ニ因ル者アリト雖トモ、右三個ノ例ヲ推セハ皆以テ其不信者タルヲ指定スルヲ得ヘシ
一右不信者タルヲ本会幹事銀行ニ報告スルニ於テハ、其姓名居処属籍及ヒ手形面ノ金額ヲ記載シテ以テ通知スルヲ要ス
一幹事銀行ニ於テ右被損銀行ノ報告ヲ得ルトキハ、之ヲ謄写シ、郵便ヲ以テ同盟諸行ニ転報シ、同盟相共ニ該不信者ニ向テ割引又ハ貸付金等ヲ取扱ハサルヘシ
一然リト雖トモ同盟銀行ハ該不信者ヨリシテ通常本為替及ヒ預ケ金等ノ依頼アレハ之ヲ引受ケテ取扱ヒ、而シテ其金額及手続等速ニ該銀行ニ密報スヘシ
一一旦不信者ノ通知ヲナシテ後復タ其義務ヲ遂クルニ於テハ、其関係ノ銀行ハ更ニ其趣ヲ幹事銀行ニ通達シ幹事銀行ヨリ速ニ之ヲ同盟銀行ニ報告スヘシ 以上