デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

1章 金融
1節 銀行
6款 択善会・東京銀行集会所
■綱文

第6巻 p.87-89(DK060023k) ページ画像

明治18年6月6日(1885年)

大蔵卿松方正義京浜間ノ各銀行頭取ヲ招集シ、太政官第十四号ヲ以テ布告セラレタル紙幣兌換制度ニ付キ内諭ス。


■資料

集会録事 従明治十五年第一月(DK060023k-0001)
第6巻 p.87 ページ画像

集会録事 従明治十五年第一月 (東京銀行集会所所蔵)
    ○第五十四回定式集会録事
明治十八年六月十八日、月番第二十銀行及第九十三銀行支店盟主トナリ、同盟第五拾四回ノ定式集会ヲ当集会所ニ於テ開設ス、詳録左ノ如シ
     会員 第一国立銀行 渋沢栄一 ○外二六名氏名略
    但三十三・百十二・百三十二・第六ノ四行ハ参会セス
右列席ノ上委員第一国立銀行頭取渋沢栄一氏ハ、去六日松方大蔵卿閣下ヨリ東京横浜各銀行頭取ヲ大蔵省ヘ招集セラレ、今般太政官第十四号ヲ以テ紙幣兌換ノ制布告ニ拠リ親敷内諭アリシ旨ヲ陳ヘ、其演舌ノ主意書及答辞ヲ朗読シ、我々同業者ニ於テハ之レヲ服膺スヘキ事ヲ約シ、且此ノ主意書草按ハ一応加藤銀行局長ノ検閲ニ供シ而シテ後印刷ニ付シ、全国各国立銀行ヘ通知スヘキ旨ヲ協議セシニ、一同異議ナク之ニ決ス


東京経済雑誌 第一二巻第二七四号・第九三三―九三四頁〔明治一八年七月一八日〕 松方大蔵卿の演説(DK060023k-0002)
第6巻 p.87-89 ページ画像

東京経済雑誌 第一二巻第二七四号・第九三三―九三四頁〔明治一八年七月一八日〕
    ○松方大蔵卿の演説
過日我大蔵卿松方伯が府下各銀行者を集め紙幣兌換の事に就て演説せられしが、今其演説筆記の写を得たれば左に其大要を掲げて看官の瀏
 - 第6巻 p.88 -ページ画像 
覧に供す
  今日余カ諸君ヲ召集セシハ太政官第拾四号布告紙幣兌換ノ事ニ関シ諸君ニ一言スル所アラント欲スルカ為メナリ、蓋シ本邦ノ紙幣ヲ発行シタルハ明治維新ニ方リ国用貲ラサルカ為メニシテ原トヨリ正貨兌換ヲ期セラレタルコトハ当時ノ布告ヲ以テ明カナリト謂フヘシ、然ルニ百事創運ニ会スルヲ以テ之ヲ遂グル能ハス、延テ明治十年ニ至リ西南ノ兵乱ニ遭遇シ勢已ムヲ得スシテ更ニ又二千七百万余円ノ紙幣ヲ増発シ、且ツ是ヨリ先キ明治九年国立銀行条例ヲ改正シテ其発行紙幣ハ政府ノ紙幣ヲ以テ交換スヘキ者ト定メタルニ付、紙幣流通ノ高益々其多キヲ加ヘ即チ明治十二年度ニ在リテハ政府発行ノ紙幣ニ銀行紙幣ヲ加フル時ハ其額実ニ一億七八千万円ニ達シタルハ又巨大ト謂フヘシ、蓋シ通貨ノ物品ニ於ケル俄ニ其額ヲ増セハ百貨随テ其価ヲ加フルハ経済上ノ通理ナルヲ以テ、乃チ明治十二三年ノ交ニ至リテハ諸物価頻リニ価格ヲ増シテ銀紙ノ差一円ニシテ七八拾銭ナリシモ亦数ノ免カレサル所ナリシト謂フヘシ、此時ニ当リテハ銀行ノ如キ物貨ニ由ラサルノ資本ヲ有スル者ハ大ニ虧損ヲ被ムルノミナラス、売買ノ秩序紊乱スルカ為メニ融通取引ノ途甚タシク錯乱スルモノ此時ヨリ甚タシキモノナカリシ、是ニ於テ政府ハ断然紙幣兌換ノ制ヲ設ケント欲シ鋭意紙幣ヲ減殺シテ正貨ヲ蓄積スルニ従事シ、明治十四年十一月余カ現職ヲ奉スルヨリ自来其効ヲ致サント欲スル者孜々怠ラズ、既ニ今日ニ至リテハ現ニ流通スル所ノ政府ノ紙幣ハ八千五百万円ニ止マリ、之ニ銀行紙幣ヲ加フルモ一億一千六百万円ニ過ス、而シテ準備ノ正貨ハ殆ント四千万円ヲ超ヘントス、故ニ此準備金ハ政府ノ紙幣ニ対シテ十分ノ五弱ニ当リ、政府ノ紙幣ト銀行ノ紙幣トヲ合計スル高ニ対スルモ尚能ク三分一強ニ当レリ、準備ノ数既ニ此ノ如キヲ以テ則チ明年ヨリ漸次其兌換ヲ始ムベキ旨ヲ布告セラレタル所以ナリ、或ハ曰ハン現今物価低落商況衰頽ノ秋ニ際シテ兌換ノ制ヲ設クルハ、商情ヲシテ愈々萎靡シ生産者共々更ニ困難ヲ被ムラシムベキナリト、是レ則チ皮相ノ見ナリ、試ニ思ヘ、通貨ハ其ノ国ノ物貨ニ対シテ標準タルノ性質ヲ有スル者トセバ奚ソ其標準ニシテ常ニ動揺スヘキ者ニ任スルノ理アランヤ、況ンヤ明治ノ初ヨリ今玆十八年ニ至ル迄実験徴証ニ於テ明々争フヘカラザルノ跡アルニ於テオヤ、政府ノ断シテ疑ハサル所也、然レバ則チ或者ノ曰フ所ハ経済ノ原則ニ背違スルノ妄言ト謂フヘキノミ、然リト雖トモ此兌換ノ事タル決シテ軽々ノ業タラザルヲ以テ、政府ハ明治ノ初ヨリ既ニ期スル所アリト雖トモ敢テ又軽挙セス、延テ今日ニ至リ昉メテ将ニ実施スル所アラントス、重大ノ挙当サニ此ノ如クナラサルヘカラス、是ニ於テ其施為ニ従事スル者宜ク熟案審思シテ完全無欠ノ方法ヲ講究セサルヘカラス、是今日余カ特ニ諸君ヲ召集シテ既往ヲ告ゲ将来ヲ説キ翕然一致シテ以テ此美挙ヲ翼賛スル所アランヲ欲スルカ為メナリ、曾テ聞ク、千八百七十九年米国政府ニ於テ其発行紙幣兌換ノ制ヲ設クルニ当リ、大蔵卿「セルマン」氏ハ紐育府ノ各銀行ヲ召集シテ其兌換方法ノ為メニ特ニ
 - 第6巻 p.89 -ページ画像 
条款ヲ設ケテ其兌換法ヲ幇助スヘキコトヲ約束セシコトアリト、然リト雖トモ余ハ今日敢テ諸君ト特約スルヲ要セズ、是レ余カ用意ノ「セルマン」氏ニ減スルニアラスシテ諸君愛国ノ情米国ノ各銀行ニ増ス所アルヲ信スレバナリ、諸君其レ焉ヲ勉メヨ
  余ハ今是ノ言ヲ畢ルニ臨ミテ更ニ一言ノ諸君ニ告クヘキモノアリ是レ其兌換スヘキ正貨ハ銀ヲ以テスルノ一事ナリ、夫レ我邦ノ貨幣ハ曩ニ金貨ヲ以テ本位ト定メ、後明治十一年五月第十二号ノ布告ヲ以テ銀貨モ亦本位タルヲ得タリ、故ニ今日ハ則チ金銀両本位ト言フモ不可ナキナリ、而シテ今此兌換ニ於テ銀貨ヲ以テスルモノハ他ナシ東洋諸邦ノ実況ニ従テ其便利ヲ主トスルカ為メナリ、固トヨリ此兌換法ニ因リテ金貨本位ヲ廃止シタルニアラズ、諸君又能ク焉ヲ諒セヨ