デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

1章 金融
1節 銀行
6款 択善会・東京銀行集会所
■綱文

第6巻 p.439-451(DK060132k) ページ画像

明治31年10月15日(1898年)

是ヨリ先、政府ハ第十二議会ニ印紙税法案ヲ提出シタルモ成立セズ。是日同法案修正意見書ヲ提出スルコトヲ決議ス。後三十二年三月十日法律第五十四号ヲ以テ印紙税法公布セラレタリ。


■資料

集会録事 自明治二十六年一月(DK060132k-0001)
第6巻 p.439-440 ページ画像

集会録事 自明治二十六年一月  (東京銀行集会所所蔵)
    ○第百七十五回定式集会録事
明治三十年九月十五日午後五時ヨリ組合銀行第百七十五回定式集会ヲ
 - 第6巻 p.440 -ページ画像 
開キ、来会シタルモノ三十四名ナリ
○中略
右議事畢リ渋沢会長ハ昨年十月大蔵大臣ヘ稟請シタル印税規則改正ノ件ニ付、頃日其筋ニ就キ意向ヲ叩キタルニ、其後当局者ハ唯リ銀行ニ関係ノ事項ノミナラス一般ニ渉リテ之カ調査ヲ為シ、今回ノ帝国議会ニハ政府案トシテ必ス提出スヘキ準備已ニ成リタル趣ニ承知シタレハ今回ハ蓋シ宿志ヲ達スルニ至ルヘシト告ケ、晩餐ノ後八時散会セリ
     当日出席者
           第一銀行 渋沢栄一○外三三名氏名略
    ○第百七十七回定式集会録事
明治三十年十一月十五日午後五時ヨリ銀行集会所組合銀行定式集会ヲ開キ、来会シタルモノ四十一名ナリ
○中略
次ニ三井銀行支配人波多野承五郎氏建議シテ曰ク、現行証券印税規則不完全ニ付、去二十八年一月当銀行集会所ヨリ改正意見ヲ具シテ大蔵大臣ヘ稟請シ、爾来注意シツヽアリシモ未タ其機ヲ得サリシカ、先般来仄聞スル処ニヨレハ、大蔵省ニ於テ既ニ該規則改正法案ノ稿成リ而シテ該法案中ニハ約束手形為替手形等ハ総テ一銭、当坐小切手ハ無税タルベシト、果シテ聞ク処ノ如クンハ極メテ簡易ニシテ、又当銀行集会所ノ改正案ニ優レリト雖、愈事実ナルヤ否又或ハ成案ニ至ラサルモ目下調査中ニシテ、第十一議会ヘ政府案トシテ提出サルヽ都合ナルヤ否等ノ意向問合ノ為メ、副会長豊川良平氏ニ托シ大蔵省ニ交渉セラレンコトヲ望ムト述ヘシニ、皆之ニ賛同シテ豊川副会長ヲ煩ハサンコトヲ希望セシニ付、豊川氏ハ之ヲ肯諾シ、早々其模様ヲ承合スベシト述ヘタリ
右議了リ八時散会セリ
     当日出席者
           第一銀行   佐々木勇之助○外四〇名氏名略


銀行通信録 第一五一号・第九二七―九二八頁〔明治三一年六月一五日〕 印紙税法案(DK060132k-0002)
第6巻 p.440-442 ページ画像

銀行通信録  第一五一号・第九二七―九二八頁〔明治三一年六月一五日〕
    ○印紙税法案
従来我国に行はれたる証券印税規則に対しては之か改正を希望者多く当集会所又数回協議調査の上当局官庁に稟請する処ありしか、政府は今回印紙税法案として当期帝国議会へ提出され、議会は之を九名の特別委員に附托し審査せしめたり、未た其結果に就て報告を聞くを得さるを以て、玆には唯政府提出に係る法案を録し参考に資せん
     印紙税法
 第一条 財産権の創設、移転、変更若は消滅を証明すへき証書帳簿及財産権に関する追認、若は承認を証明すへき証書を作成する者は此の法律に依り印紙税を納むへし
 第二条 証書に関しては一通毎に其の記載金高五円以上のものに限り記載金高一万分の五の割合を以て印紙税を納むへし、但し印紙税額五十円となるときは五十円に止め、一銭未満となり又は一銭未満の端数を生ずるときは一銭に切上ぐるものとす
 - 第6巻 p.441 -ページ画像 
金高記載なきも証書面に標記しある価額の単位又は其の他の記載事項に依り其の金高を算出することを得るものは、其の総金額を以て記載金高と看做す
 第三条 左に掲ぐる証書帳簿に関しては、証書は一通毎に、帳簿は一冊一年以内の附込に対し下に定むる所の印紙税を納むへし
  一委任状印紙税             一銭 一小切手                        同上
  一為替手形印紙税            二銭 一約束手形                       同上
  一船荷証券               同上 一運送貨物引換証                    同上
  一倉荷預証券              同上 一倉荷質入証券                     同上
  一保険証券               同上 一株券                         同上
  一債券                 同上 一株式申込証                      同上
  一地上権、永小作権、地役権に関する証書 同上 一使用貸借、賃貸借、雇傭、寄宅、定期金に関する契約証書 同上
  一定款及組合契約書           同上 一権利の変更に関する証書                同上
  一追認承認に関する証書         同上 一物品切手                       同上
  一売買仕切証              同上 一送状                         同上
  一受取書                同上 一金高記載なき証書                   同上
  一通帳                 同上 一判取帳                    印紙税二十銭
 第四条 左に掲ぐる証書帳簿に関しては印紙税を納むることを要せず
  一官庁又は公署より発する証書帳簿 一官庁又は公署に職を奉ずる者の職務上発する証書帳簿 一国庫金の取扱に関し発する証書
  一慈善又は公共事業の為にする全員物件の寄附に関し人民より官庁若は公署に提出する証書 一官庁又は公署より支給する俸給、歳費、手当金、賞与金、年金、恩給金、扶助料、旅費及救恤金の受取書 一金高五円未満若は金高記載なき送状又は受取書 一主たる債務の証書に併記したる担保契約 一証券の裏書及手形小切手の裏面に記載したる受取書 一株券債券の譲渡を証明すべき裏面記載 一手形の引受保証 一小切手の線引 一手形及証券の拒絶証書 一手形及証券の複本謄本
 第五条 印紙税は証書帳簿に印紙を貼用して納むるものとす、但し小切手、為替手形、約束手形、船荷証券、運送貨物引換証、倉荷預証券、倉荷質入証券、保険証券、株券、債券は印紙税額に相当する現金を政府に納付して税印の押捺を受け、印紙貼用に代ふることを得
 第六条 一冊の帳簿を一年以上使用するときは別帳簿を調製したるものと看做す
 第七条 証書に外国貨幣を以て員数を記載するときは、内国貨幣に換算したる金高に相当する印紙を貼用すべし
 第八条 印紙を貼用するときは、証書又は帳簿の紙面と印紙の彩紋とにかけて判明に消印すべし
 第九条 印紙を貼用すべき帳簿、仕切書、送状は当該官吏之を検査することあるべし
 第十条 証書、帳簿に相当印紙を貼用せず、又は第五条但書に依り税印の押捺を受けざる者は脱税高二十倍の科料又は罰金に処す
 - 第6巻 p.442 -ページ画像 
 第十一条 第九条の検査を拒みたる者は二十円以下の罰金に処す
 第十二条 第八条に依 貼用印紙に消印を為さゞる者は一円九十五銭以下の科料に処す
 第十三条 此の法律を犯したる者には、刑の不論罪、減軽、再犯加重、数罪倶発の例を用ひず
     附則
 第十四条 此の法律の施行期日は勅令を以て之を定む
 第十五条 明治十七年第十一号布告証券印税規則は此の法律施行の日より廃止す
 第十六条 明治十七年第十一号布告証券印税規則に依る手形用紙及税印押捺ある当座預り金引出小切手にして、此の法律施行の際自用者の所持に係るものは、此の法律施行後に於ても仍之を使用することを得


集会録事 自明治二十六年一月(DK060132k-0003)
第6巻 p.442-444 ページ画像

集会録事 自明治二十六年一月  (東京銀行集会所所蔵)
    ○第百八十五回定式集会録事○明治三一年一〇月一五日
次ニ前項ノ調査○民法第三百四十九条外二条修正ノ件ト共ニ委員ニ付托シタル印紙税法案ニ係ル委員会ノ報告ヲ朗読セシメ、種種協議スル所アリシニ大体ニ於テハ更ニ異議ナキモ、預金証書ノ項ニ少シク修正ヲ加ヘ、其他総テ原案ニ可決シタルヲ以テ、会長ヨリ其筋ニ右意見書ヲ提出シ、之カ修正ヲ請フヘキコトヽ為セリ
    調査委員会決議録
    印紙税法案修正意見
 印紙税法改正案ハ政府ニ於テ第十二議会ヘ提出セラレタル者ト同一ノ法案ヲ本年ノ第十三議会ヘ提出セラルヽヤニ聞知セリ、依テ該法案ヲ審査スルニ第二条金高記載ノ証書ニ対スル最低税率五円ハ現時ノ取引ニ対シ少シク権衡ヲ失スルカ如クナレハ之ヲ十円ト修正シ、又其率ヲ記載金高一万分ノ五ノ割合ト改メ現行規則ノ最高税率ハ一円ナルニモ関ラス俄ニ其最高税率五円《(十脱)》トセラレタルハ、頗ル急激ノ増税ナルヲ以テ、啻ニ穏当ナラサルノミナラス遂ニ脱税違犯者ノ多キニ至ルヘシ、故ニ一万分ノ五ノ割合トアルヲ一万分ノ二ノ割合ト修正シ、且其最高税率五十円トアルヲ五円ト修正シ、而シテ本条ニ規定スル所ノ証書ヲ通帳ト為ス場合ニ於テハ第三条ノ通帳ニ対シ疑団ヲ生スルヲ以テ、本条及ヒ第三条ヲ左ノ如ク修正シテ其区別ヲ明カニスルコト
 第二条 本法ニ特別ノ規定アルモノヽ外、凡テ証書ハ一通毎ニ帳簿ハ一冊一年以内ノ附込ニ対シ其記載ノ金高十円以上ノモノニ限リ記載金高一万分ノ二ノ割合ヲ以テ印紙税ヲ納ムヘシ、但シ印紙税額五円トナルトキハ五円ニ止メ、一銭未満トナリ又ハ一銭未満ノ端数ヲ生スルトキハ一銭ニ切リ上クルモノトス
  二項原文ノマヽ
 第三条 本条中小切手ノ項ヲ削除シ、又通帳トアルヲ諸物品通帳トシ、判取帳トアルヲ金銭諸物品判取帳ト改メ、而シテ其第二項トシテ左ノ規定ヲ増補スヘキコト
 - 第6巻 p.443 -ページ画像 
前二帳簿ノ外本条ノ証書ヲ通帳トナストキハ其相当税率倍額ノ印紙税ヲ納ムヘシ
  又本条中ニハ預リ金証書又ハ担保品差入証ノ如キモノニ適用スヘキ条項ナキカ為メ疑団ヲ生スルヲ以テ左ノ項目ヲ追加スルコト
  一預金証書(約束手形ノ次ヘ)
  一担保品差入証(倉荷質入証券ノ次ヘ)
 第四条 本条第五項ニ官庁又ハ公署ヨリ支給スル俸給、歳費、手当金、賞与金云々トアリテ銀行会社等ヨリ支給スルモノニ在テハ印税ヲ要スルカ如シ、均シク是レ個人ニアリテ俸給等ヲ受領スル場合ニ官庁ト他ノ団体ト異ルヘキ道理ナケレハ「官庁又ハ公署ヨリ支給スル」ノ十二字ヲ刪除シ、一般ニ無税トスヘキコト
  又第六項金高五円未満トアルハ第二条修正ノ結果トシテ十円未満ト修正スヘキコト
  第三条中小切手ノ項ヲ刪除シ無税トシタルヲ以テ本条第七項ノ次ヘ左ノ一項ヲ追加スヘキコト
  一小切手
 第五条中ノ小切手ノ三字ハ第三条ニ於テ小切手ヲ刪除シタル結果トシテ刪除スヘキコト
    以上
  参照
   印紙税法案
 第二条 証書ニ関シテハ一通毎ニ其ノ記載金高五円以上ノモノニ限リ記載金高一万分ノ五ノ割合ヲ以テ印紙税ヲ納ムヘシ、但シ印紙税額五十円トナルトキハ五十円ニ止メ、一銭未満トナリ又ハ一銭未満ノ端数ヲ生スルトキハ一銭ニ切上クルモノトス
  金高記載ナキモ証書面ニ標記シアル価額ノ単位又ハ其ノ他ノ記載事項ニ依リ其ノ金高ヲ算出スルコトヲ得ルモノハ其ノ総金額ヲ以テ記載金高ト看做ス
 第三条 左ニ掲クル証書帳簿ニ関シテハ、証書ハ一通毎ニ帳簿ハ一冊一年以内ノ附込ニ対シ下ニ定ムル所ノ印紙税ヲ納ムヘシ
  一委任状印紙税                     一銭
  一為替手形印紙税                    二銭
  一船荷証券                       同上
  一倉荷預証券                      同上
  一保険証券                       同上
  一債券                         同上
  一地上権、永小作権、地役権ニ関スル証書         同上
  一使用貸借、賃貸借、雇傭、寄托、定期金ニ関スル契約証書 同上
  一定款及組合契約書                   同上
  一追認、承認ニ関スル証書                同上
  一売買仕切証                      同上
  一受取書                        同上
  一通帳                         同上
  一小切手                        同上
 - 第6巻 p.444 -ページ画像 
  一約束手形                       同上
  一運送貨物引換証                    同上
  一倉荷質入証券                     同上
  一株券                         同上
  一株式申込証                      同上
  一権利ノ変更ニ関スル証書                同上
  一物品切手                       同上
  一送状                         同上
  一金高記載ナキ証書                   同上
  一判取証                    印紙税二十銭
 第四条 左ニ掲クル証書帳簿ニ関シテハ印紙税ヲ納ムルコトヲ要セス
  一官庁又ハ公署ヨリ発スル証書帳簿
  一官庁又ハ公署ニ職ヲ奉スル者ノ職務上発スル証書帳簿
  一国庫金ノ取扱ニ関シ発スル証書
  一慈善又ハ公共事業ノ為ニスル金員物件ノ寄附ニ関シ人民ヨリ官庁若ハ公署ニ提スル証書
  一官庁又ハ公署ヨリ支給スル俸給、歳費、手当金、賞与金、年金恩給金、扶助料、旅費及救恤金ノ受取書
  一金高五円未満若ハ金高記載ナキ送状又ハ受取書
  一主タル債務ノ証書ニ併記シタル担保契約
  一証券ノ裏書及手形小切手ノ裏面ニ記載シタル受取書
  一株券、債券ノ譲渡ヲ証明スヘキ裏面記載
  一手形ノ引受保証
  一小切手ノ線引
  一手形及証券ノ拒絶証書
  一手形及証券ノ複本、謄本
 第五条 印紙税ハ証書証簿ニ印紙ヲ貼用シテ納ムルモノトス、但シ小切手、為替手形、約束手形、船荷証券、運送貨物引換証、倉荷預証券、倉荷質入証券、保険証券、株券、債券ハ印紙税額ニ相当スル現金ヲ政府ニ納付シテ税印ノ押捺ヲ受ケ、印紙貼用ニ代フルコトヲ得
  ○第十三期帝国議会ニ提出セラレタル法案ノ第十二期帝国議会ニ提出セラレタルモノトノ相違点ハ次ノ如シ。
   一、第三条中ヨリ「小切手」ノ項ヲ刪除シ「銀行預金証書印紙税二銭」ノ項ヲ加フ。
   二、第四条第五項ヨリ「官庁又ハ公署ヨリ支給スル」ヲ除キ、「俸給」ノ次ニ「給料」ヲ加フ、又第十一項「小切手ノ線引」ヲ「小切手」トシテ第六項ニ入ル。
   三、第九条「仕切書」ヲ「売買仕切書」トス。
   四、第十二条「第八条ニ依 貼用印紙ニ消印ヲ為サヽル者ハ」ヲ「第八条ニ違背シタル者ハ」ニ変更ス。


銀行通信録 ○第一五七号・第一八一一頁〔明治三一年一二月一五日〕 中国四国同盟銀行の証券印税規則改正建議案提出(DK060132k-0004)
第6巻 p.444-445 ページ画像

銀行通信録
 ○第一五七号・第一八一一頁〔明治三一年一二月一五日〕
 - 第6巻 p.445 -ページ画像 
    ○中国四国同盟銀行の証券印税規則改正建議案提出
東京組合銀行に於ては曩に証券印税規則法案に対し修正の議を提出したるが、今回中国四国銀行同盟会幹事たる松山五十二銀行よりの通知に依れば、同地に於ても同盟銀行協議の結果東京組合銀行の議に賛成し去る十一月廿九日を以て大蔵大臣へ該修正の儀を稟請に及びたる由

銀行通信録 ○第一五九号・第二八〇―二八一頁〔明治三二年二月一五日〕 印紙税法案(DK060132k-0005)
第6巻 p.445 ページ画像

 ○第一五九号・第二八〇―二八一頁〔明治三二年二月一五日〕
    ○印紙税法案
政府より衆議院に提出されたる印紙税法案は昨年十二月の銀行通信録(一八五一頁)に、右に対する衆議院委員会修正案は本年一月の銀行通信録(一一六頁)に掲けしが、同案は一月十六日同院にて第一読会を通過し、去る六日第二読会を開き、法案第二条は原案に、其他は委員会の修正案に可決し、田口卯吉氏か極力手形の階級税を排斥したるも、遂に原案の記載金高に拘らす為替手形、約束手形とも総て印紙税二銭とせられたる規定は否決せられたり


集会録事 自明治二十六年一月(DK060132k-0006)
第6巻 p.445 ページ画像

集会録事 自明治二十六年一月  (東京銀行集会所所蔵)
    ○第百八十九回定式集会録事
明治三十二年二月十五日午後五時ヨリ東京銀行集会所組合銀行第百八十九回定式集会ヲ開キ、来会者三十八名、副会長豊川良平氏会長席ニ着キ、先ヅ左ノ報告ヲ為セリ
○中略
夫ヨリ会議ニ移リ
 一印紙税法案ニ関スル件
ハ先ツ山中書記長ヨリ本案ニ関シ、政府当局者並衆議院特別委員其他ニ交渉ノ事、及該案ハ衆議院ニテ修正議決ノ上、貴族院ヘ送付セラレシ顛末ヲ報告シ、右衆議院ノ修正議決ハ当集会所ノ希望ニ反スル条項アルヲ以テ、第三条中ニ担保品差入証書ヲ加ヘ其印税ヲ二銭トシ、又為替手形及約束手形ハ原案ノ如ク記載金高ニ拘ハラス印税二銭トシ、帝国商業銀行取締役会長成川尚義氏ガ貴族院特別委員タルヲ幸ヒ氏ニ尽力ヲ請フヘキコトニ決シ○下略


銀行通信録 第一六〇号・第四六五頁〔明治三二年三月一五日〕 印紙税法案(DK060132k-0007)
第6巻 p.445 ページ画像

銀行通信録  第一六〇号・第四六五頁〔明治三二年三月一五日〕
    ○印紙税法案
印紙税法案の二月六日衆議院に於て修正議決(委員会の第二条修正原案に復活せられし外総て委員会修正案に可決)せられしことは前号に記せしが、貴族院にては衆議院送付案第三条を削除し、同第四条は原案復活せられしのみならず、同条に列記せる証書帳簿の内に担保品差入証書、及担保品預証書を加へ、其印紙税を二銭とするの決議を為して衆議院に回付せるに、同院は之に同意せざることに決議し、両院協議会を開くことを請求し、遂に協議会を開きたるに為替手形、約束手形は一通毎に其記載金高五円以上の者に限り二千円未満は二銭、二千円以上は十銭とし、其他は貴族院修正通となり、而して衆議院は二月廿八日該成案を可決して貴族院に提出し、本月一日同院亦之を可決して去る十日法律第五十四号を以て公布せられたり
 - 第6巻 p.446 -ページ画像 

法令全書 明治三二年 法律第五十四号(官報三月十日) 印紙税法(DK060132k-0008)
第6巻 p.446-447 ページ画像

法令全書 明治三二年
法律第五十四号(官報三月十日)
  印紙税法
第一条 財産権ノ創設、移転、変更若ハ消滅ヲ証明スヘキ証書、帳簿及財産権ニ関スル追認若ハ承認ヲ証明スヘキ証書ヲ作成スル者ハ此ノ法律ニ依リ印紙税ヲ納ムヘシ
第二条 証書ニ関シテハ一通毎ニ其ノ記載金高五円以上ノモノニ限リ記載金高一万分ノ五ノ割合ヲ以テ印紙税ヲ納ムヘシ、但シ印紙税額五十円トナルトキハ五十円ニ止メ、一銭未満トナリ又ハ一銭未満ノ端数ヲ生スルトキハ一銭ニ切上クルモノトス
 金高記載ナキモ証書面ニ標記シアル価額ノ単位又ハ其ノ他ノ記載事項ニ依リ其金高ヲ算出スルコトヲ得ルモノハ其ノ総金額ヲ以テ記載金高ト看做ス
第三条 為替手形、約束手形ハ一通毎ニ其ノ記載金高五円以上ノモノニ限リ左ノ割合ヲ以テ印紙税ヲ納ムヘシ
  金高二千円未満 印紙税二銭
  金高二千円以上 印紙税十銭
第四条 左ニ掲クル証書、帳簿ニ関シテハ証書ハ一通毎ニ、帳簿ハ一冊一年以内ノ附込ニ対シ下ニ定ムル所ノ印紙税ヲ納ムヘシ
 一委任状                        印紙税一銭
 一銀行預金証書                     印紙税二銭
 一船荷証券                       印紙税二銭
 一運送貨物引換証                    印紙税二銭
 一倉荷預証券                      印紙税二銭
 一倉荷質入証券                     印紙税二銭
 一保険証券                       印紙税二銭
 一株券                         印紙税二銭
 一債券                         印紙税二銭
 一株式申込証                      印紙税二銭
 一地上権、永小作権、地役権ニ関スル証書         印紙税二銭
 一使用貸借、賃貸借、雇傭、寄託、定期金ニ関スル契約証書 印紙税二銭
 一定款及組合契約書                   印紙税二銭
 一権利ノ変更ニ関スル証書                印紙税二銭
 一追認、承認ニ関スル証書                印紙税二銭
 一物品切手                       印紙税二銭
 一売買仕切書                      印紙税二銭
 一送状                         印紙税二銭
 一受取書                        印紙税二銭
 一金高記載ナキ証書                   印紙税二銭
 一担保品差入証書、担保品預証書             印紙税二銭
 一通帳                         印紙税二銭
 一判取帳                        印紙税二十銭
第五条 左ニ掲クル証書帳簿ニ関シテハ印紙税ヲ納ムルコトヲ要セス
 一官庁又ハ公署ヨリ発スル証書、帳簿
 - 第6巻 p.447 -ページ画像 
 一官庁又ハ公署ニ職ヲ奉スル者ノ職務上発スル証書、帳簿
 一国庫金ノ取扱ニ関シ発スル証書
 一慈善又ハ公共事業ノ為ニスル金員物件ノ寄附ニ関シ人民ヨリ官庁若ハ公署ニ提出スル証書
 一俸給、給料、歳費、手当金、賞与金、年金、恩給金、扶助料、旅費及救恤金ノ受取書
 一小切手
 一金高五円未満ノ為替手形、約束手形
 一営業ニ関セサル受取書
 一金高五円未満若ハ金高記載ナキ送状、受取書又ハ売買仕切書
 一主タル債務ノ証書ニ併記シタル担保契約
 一証券ノ裏書及手形ノ裏面ニ記載シタル受取書
 一株券、債券ノ譲渡ヲ証明スヘキ裏面記載
 一手形ノ引受、保証
 一手形及証券ノ拒絶証書
 一手形及証券ノ複本、謄本
第六条 印紙税ハ証書、帳簿ニ印紙ヲ貼用シテ納ムルモノトス、但シ為替手形、約束手形、船荷証券、運送貨物引換証、倉荷預証券、倉荷質入証券、保険証券、株券、債券ハ印紙税額ニ相当スル現金ヲ政府ニ納付シテ税印ノ押捺ヲ受ケ、印紙貼用ニ代フルコトヲ得
第七条 一冊ノ帳簿ヲ一年以上使用スルトキハ別帳簿ヲ調製シタルモノト看做ス
第八条 証書ニ外国貨幣ヲ以テ員数ヲ記載スルトキハ内国貨幣ニ換算シタル金高ニ相当スル印紙ヲ貼用スヘシ
第九条 印紙ヲ貼用スルトキハ証書又ハ帳簿ノ紙面ト印紙ノ彩紋トニカケテ証書又ハ帳簿作成者ノ印章又ハ署名ヲ以テ判明ニ之ヲ消スヘシ
第十条 印紙ヲ貼用スヘキ帳簿、売買仕切書、送状ハ当該官吏之ヲ検査スルコトアルヘシ
第十一条 証書、帳簿ニ相当印紙ヲ貼用セス又ハ第六条但書ニ依リ税印ノ押捺ヲ受ケサル者ハ脱税高二十倍ノ科料又ハ罰金ニ処ス
第十二条 第十条ノ検査ヲ拒ミタル者ハ二十円以下ノ罰金ニ処ス
第十三条 第九条ニ違背シタル者ハ一円九十五銭以下ノ科料ニ処ス
第十四条 此ノ法律ヲ犯シタル者ニハ刑法ノ不論罪、減軽、再犯加重数罪倶発ノ例ヲ用ヰス
    附則
第十五条 此ノ法律ハ明治三十二年四月一日ヨリ施行ス
第十六条 明治十七年第十一号布告証券印税規則ハ此ノ法律施行ノ日ヨリ廃止ス
第十七条 明治十七年第十一号布告証券印税規則ニ依ル手形用紙ニシテ此ノ法律施行ノ際自用者ノ所持ニ係ルモノハ此ノ法律施行後ニ於テモ仍之ヲ使用スルコトヲ得但シ手形用紙記載ノ税金高以上ニ之ヲ使用セムトスルトキハ其ノ不足額ハ印紙ヲ貼用シテ之ヲ補足スヘシ
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集会録事 自明治二十六年一月(DK060132k-0009)
第6巻 p.448 ページ画像

集会録事 自明治二十六年一月  (東京銀行集会所所蔵)
    ○第百九十回定式集会録事○明治三二年三月一五日
   印紙税法実施ニ関スル件
ハ従来為替手形、約束手形用紙ハ政府ニ於テ発売セシカ、今回ノ改正ト共ニ各自随意ニ作成スヘキ事トナリシモ、其用紙区々ナルトキハ取扱上不便尠ナカラサルヲ以テ其形状、色合及式様等ヲ一定シタシト協議シタルニ皆同意ヲ表シ、是迄政府カ発売シタルモノニ則リ当銀行集会所ニ於テ印刷ノ上、組合銀行ヘ配布スヘキコトニ決シ、而シテ右用紙ハ成ルヘク全国一定ヲ要スルニ付、此決議ノ旨趣並用紙雛形ヲ各地銀行団体ヘ照会シ、各地便宜ニ調製センコトヲ希望セリ
右手形用紙ノ外印紙税法実施ニ伴フ諸般ノ調査ハ委員ヲ設ケ至急調査スヘキコトニ決シ、其委員ハ会長ノ指名ヲ以テ左ノ五氏ヘ委托セリ
   安藤浩 山口荘吉 橋本正彰 松尾謹次
   大野清敬
是ニテ会議ヲ了リ晩餐ノ後同九時散会セリ
      当日出席者
           第一銀行   佐々木勇之助○外四七名氏名略


銀行通信録 第一六一号・第五七七―五七九頁〔明治三二年四月一五日〕 印紙税法に関する調査委員会(DK060132k-0010)
第6巻 p.448-451 ページ画像

銀行通信録  第一六一号・第五七七―五七九頁〔明治三二年四月一五日〕
    ○印紙税法に関する調査委員会
前記定式会の決議に依り設置せられし印紙税法調査委員は、三月十六日午後一時より銀行集会所に会合し、協議の末左の如く意見を定め、其結果を会長に報告し、会長は直に之を組合銀行に通知したり
 (一)為替取引相互間に使用致来り候送金手形は印紙税法実施当日より廃止に付、四月一日より右送金手形を使用したる一覧払の場合には小切手を用ひ、期日払依頼の向に限り為替手形を使用可然と信じ候に付為替取引先への照会書並副約定証書案相添参考に供す
 (二)本支店間取引に小切手を使用するものは如何として種々評議致候得共、之を使用するは穏当ならざるに付、結局為替手形を使用すれば敢て論なきことなれとも、或は左の雛形の如き預金証を使用しては如何との説之あり候に付参考に供す(雛形略之)
 (三)担保品に附属せる委任状は取引当時の年月日を記入せしめ置かば印紙税法実施即ち四月一日以後と雖其効力に影響なきものと認む故に取引の期限毎に漸次交換して然るへし
 (四)又右印紙税実施後諸証書類に修正を要すへき廉左の通決定候
   「為替取引約定書」第四条「送金手形」とある手形の二字を刪除する事
   「荷為替手形副証書」は「担保品差入証」と改め同末文「荷為換手形副証書仍て如件」とあるを「担保品差入証仍て如件」と改むる事
   又勘定科目中「仕払送金手形」の科目を廃して「支払手形」と改称、随て「支払送金手形記入帳」は「支払手形記入帳」と改め、又「送金手形記入帳」を「仕向手形記入帳」と改むる方穏当なるべしと信せしを以て参考に供す     以上
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    為替取引先への照会書案
   拝啓、貴行愈々御隆昌奉慶賀候、陳者今般法律第五十四号を以て印紙税法発表相成候、該法に依れば、従来の送金手形は全然廃せられ候間、来る四月一日より期日払依頼の向に限り為換手形を使用し、一覧払に対しては小切手を使用致候は相互の便益不尠と存候間、別紙副約定書相添、此段御協議申上候、右御承諾に候はゝ記名御調印之上、壱通は御留置、壱通は御返送被下度、此段得貴意候     拝具
    年月日                  何銀行
              御中
    追て小切手用紙御互に御取為替致候義は不便に付、仕出銀行にて適宜調製、見本御交換致置候様致度、此段申添候
     但見本は甲号之通
    副約定証
   明治 年 月 日付を以て締約したる為換取引約定第四条中送金の下手形の二字を削り、更に同条へ左の二項を追加す、右訂結の証として此約定書弐通を作り、各壱通を領収するもの也
   一送金に関しては為換手形小切手及仕向銀行取引先の振出したる小切手と仕払保証を為したるものを用ふ
   一前項の小切手は商法に明示ある呈示期間を経過するものと雖とも異義なく仕払を為すへし
              何銀行
    年月日          頭取………………
                 支配人………………
然るに其後引続印紙税法中に疑問起りたるを以て、同月二十四日更に委員会を開き協議する所あり、新法実施後貸附金を通帳と為すへき事は該法中明文なきを以て其筋へ質問することに決し、猶其他左の各項を議決せり
 (一)新法実施以前貸附金通帳を調製し取引を継続しあるものは仮令新法実施後に渉るも其附込期限中は之を使用するに差支なかるへし
 (二)新法実施前に交付しある当座預金通帳及貯蓄預金通帳の如き、或は附込見積金額を以して、或は使用年限を以て其期限を指定しあり、右は新法実施前の行為に係るを以て、其期間即満了までは印紙税を増貼せす当然効力を有すへし
 (三)新法に拠り通帳を新調するとき、数年間の印紙税を一時に貼用するに於ては、其印紙税に相当の年限内効力を有すへし
 (四)新法実施前に貸附たる金あり、実施後期限となりたるも返金せす其儘延期せんとするときは、従来の延期証書にて差支なかるへし
右委員会の決議に基き、貸附金通帳の件に付き、三月二十七日左の質問書を東京税務管理局長に提出せり
    貸附金通帳の件に付質問書
 本年三月九日法律第五十四号《(マヽ)》を以て御発布相成候印紙税法中疑義の点左に相伺候間、至急御明示被成下度候也
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 一従来金銭借用の場合に於て便宜の為め之れを通帳と致し其附込見積金高に随ひ印紙を貼用したるもの多々有之候処、今般御発布の印紙税法には確たる明文無之候得共、慣例に随ひ通帳と為すも妨げなきや、果して然りとせば第四条通帳と看做し差支無之や、又は第二条に拠り予め其附込見積金高を定め、之れに相当の印紙を貼用すべきものなるや
   明治三十二年三月二十七日       東京銀行集会所
    税務管理局長 吉井友兄殿
然るに税務管理局長は同月三十日召喚の上右質問書を却下し、且つ法律上の解釈は指令の限にあらずと雖、貸附金を通帳となす場合には二銭印紙貼用にて差支なかるべしとの旨趣を口頭にて指示せられたり、又該法施行に関し大蔵省の意見なりと云ふ左の書を接手したるに付き参考の為め之を掲ぐ
 一代理人の氏名及日付を記入せざる委任状を交付し置き、委任せられたる行為の実行を要するに至りたるとき、之に代理人の氏名及日付を記入して使用するものあり、此の如き委任状は代理人の氏名及日付を記入したる時、即ち委任状作成の時なるを以て其の日付本年三月三十一日以前なるものは五厘の印紙を貼用すれば可なりと雖も、其の日附本年四月一日以後に係るものは交付の日の如何に拘らず一銭の印紙を貼用すべきものとす
 二貸借の証書に定むる弁済期限に至り当事者の間に履行期限を延長することを契約し、其の証拠として延期証書なるものを作成することあり、該証書は印紙税法第四条中権利の変更に関する証書なるを以て、二銭の印紙を貼用すべきものとす
 三契約の申込を為すも未だ権利創設なきを以て、申込書は印紙税法に依り印紙を貼用すべき限に在らず、随て保険申込書の如きは印紙を貼用するに及ばず、但し株式申込証、債券申込書の如く名義は申込書とあるも其の実承諾書なるものは権利創設の証拠となるを以て、法律の定むる所に依り印紙を貼用すべきは勿論なりとす
 四証券印税規則に於て送金手形と称したるものは為替手形の一種なるを以て、印紙税法施行後に於ては為替手形を以て送金のことを行ふときは、無論同法第三条の税額に相当する印紙を貼用すべきものなりと雖も、一種送金手形なるものを作成し、為替手形と形式を異にする時は契約証書とし、印紙税法第二条に依り相当印紙を貼用す、為替手形に非ざるを以て普通のべき《(マヽ)》ものとす
 五印紙税法第四条の通帳とは、甲乙両人の間に於て連続して取引を為す必要ある場合に於て帳簿を交付し置き、取引の度毎に之に記入して其の証拠と為すものを指すものなるを以て、当座預金通帳貸付金通帳、借用金通帳の如きものも亦該条の所謂通帳なりとす
 六帳簿に関しては一冊一年内の附込に対し二銭の印紙税を納むべきものなりと雖も、数年間に渉りて使用する帳簿に在ては、便宜帳簿の初葉に数年分相当の印紙を貼用し、其の間継続使用するは妨げなきものとす
 七証券印税規則第二条第二類に属する諸証書を通帳とし、印紙税法
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実施の際使用中にあるものは、其使用期限又は附込見積金高に達せざる以上は、印紙税法実施後一年内は其の儘之を使用することを得べしと雖ども、一年後継続して之を使用するときは別帳簿を調製したるものと看做さるべきに依り、更に相当印紙を貼用せざるべからず


集会録事 自明治二十六年一月(DK060132k-0011)
第6巻 p.451 ページ画像

集会録事 自明治二十六年一月  (東京銀行集会所所蔵)
    ○第百九十一回定式集会録事○明治三二年四月一五日
 一印紙税法実施後取扱上ノ諸件打合ノ件
ニ移リ本件ハ税法ノ解釈区々ニ亘リ、従テ実際ノ取扱相異ナルヲ以テ其取扱ノ一定センコトヲ希望シタルモ、到底之ヲ一途ニ出テシムルコト能ハサルヘキヲ以テ、本件ハ見合スルコトヽナリ○下略