デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

1章 金融
1節 銀行
6款 択善会・東京銀行集会所
■綱文

第6巻 p.511-516(DK060144k) ページ画像

明治34年3月16日(1901年)

是ヨリ先、政府第十五議会ニ銀行条例改正法律案及貯蓄銀行条例改正法律案ヲ提出スベシトノ議アリ、即チ大野清敬等右ニ付キ建議ス。ヨツテ委員ヲ選ビ調査セシム。後臨時総会ヲ開キテ委員会報告ヲ協議可決シ、是日意見書ヲ大蔵省ニ申達ス。後政府ハ右法案ノ提出ヲ中止シタリ。又翌三十五年ニ至リ政府再度第十六議会ニ提出スベシトノ議アリシモ終ニ提出セズシテ已ミタリ。


■資料

銀行通信録 第三一巻第一八四号・第四五五頁〔明治三四年三月一五日〕 東京銀行集会所組合銀行臨時総会(DK060144k-0001)
第6巻 p.511-512 ページ画像

銀行通信録 第三一巻第一八四号・第四五五頁〔明治三四年三月一五日〕
    ○東京銀行集会所組合銀行臨時総会
東京銀行集会所にては二月二十七日株式会社七十七銀行取締役大野清敬、株式会社三十九銀行取締役長尾三十郎、株式会社百十三銀行取締役鈴木重恒、株式会社八王子第七十八銀行東京支店支配人松尾謹次、
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株式会社八十九銀行取締役森一馬五君より銀行条例改正法律案及貯蓄銀行条例改正法律案に関する決議案及委員設定の件を提出して臨時総会召集の請求ありしを以て、本月四日午後五時より臨時総会を開会せり、当日出席銀行四十六、会員数五十二名にして、会長男爵渋沢栄一君議長席に着き、先づ当日までに領したる組合銀行其他の通知を報告して夫より議事に移り、提出者の一人大野清敬君より提出理由の説明あり、会員中の質問に対しては提出者の一人長尾三十郎君より夫々答弁する所ありし末、左の決議を為したり
 一、政府は当期の議会に銀行条例改正法律案及貯蓄銀行条例改正法律案を提出せらるべしと聞く、其改正の条項は未だ之を詳にするを得ずと雖、銀行営業上頗る重大の関係ありと思惟す、依て当集会所は委員十二名を設け、正副会長と共に十分の調査を為さしめんとす
 一、右委員は議長の指名を以て之を定むる事
依て議長は左の十二名(イロハ順)を委員に指名せり
  池田謙三君   池田成彬君  原田虎太郎君
  伴野乙弥君  大野清敬君   吉田幸作君
  長尾三十郎君  松尾謹次君  安藤浩君
  佐々木勇之助君 三村君平君  島甲子二君
右にて議事を終り、午後七時閉会せり


渋沢栄一 日記 明治三四年(DK060144k-0002)
第6巻 p.512 ページ画像

渋沢栄一 日記 明治三四年
三月四日
銀行集会所ニ抵リ臨時会ニ列ス、銀行法貯蓄銀行法案修正ニ関スル建議アリシニヨリ委員十二名ヲ撰テ調査セシムルコトニ決ス


銀行通信録 第三一巻第一八五号・第六一〇―六一一頁〔明治三四年四月一五日〕 東京銀行集会所組合銀行臨時総会(DK060144k-0003)
第6巻 p.512-513 ページ画像

銀行通信録 第三一巻第一八五号・第六一〇―六一一頁〔明治三四年四月一五日〕
    ○東京銀行集会所組合銀行臨時総会
明治三十四年三月四日開会臨時総会に於て選定せられたる銀行条例中改正法律案審査委員の報告(別項参照)ありたるを以て之を議決する為め同月十五日午後五時三十分より組合銀行臨時総会を開く、当日出席銀行四十二、会員数四十五名にして会長男爵渋沢栄一君議長席に着き、委員会報告を議に付せしに一二の質問ありしが結局報告の如く可決し、字句修正及大蔵省其他に交渉の事は正副会長に一任することに決し、午後六時十分閉会せり
    ○銀行条例中改正法律案及貯蓄銀行法案審査委員会
明治三十四年三月四日開会臨時総会に於て選定せられたる銀行条例中改正法律案及貯蓄銀行法案審査委員会は同月四日、七日及十二日の三回委員会を開きて両案の審査を終り、大体の意見を定め、更に十五日を以て協議会を開き、別項に掲げたる意見書案を決議して同日之を会長に報告せり
    ○銀行条例中改正法律案に対する意見書
銀行条例中改正法律案に関する審査委員の報告に係り、当集会所組合銀行臨時総会の決議を経たる意見書左の如し
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    銀行条例中改正法律案に対する意見
 政府は現行銀行条例及貯蓄銀行条例に改正を加へんとし、其改正案を当期の議会に提出せらるへしと云ふ改正の条項は未た之を詳にするを得すと雖、今日の実況に照し我銀行業の利害に関する重且つ大なるもの少なからさるか如し、依て当集会所組合銀行は審議討究の末、希望の在る所を開陳すること左の如し
    第一、銀行の定義及業目の規定は之を除かれたき事
 改正案は現行銀行条例第一条に掲けたる銀行の定義に修正を加へ、且銀行の営むことを得べき業目を列記せりと云ふ、然れとも銀行の事業たる其性質自ら明瞭なるのみならず、改正案中には銀行の業目を定款に記載し、大蔵大臣の認可を受くへき旨の規定ありと云へは復た法律に於て銀行の定義及業目等の規定を掲くるの必要なかるへし、若し夫れ強て其規定を設けんか、則ち広義に過くれは漠然として限涯を失し、狭義に過くれは之に反して窮屈に陥るの弊あるを免かるへからす、特に列記の法を取るときは、其他に於て当然銀行の営むことを得へき事業あるも、先つ法律を改正するにあらすんは之を営むことを得さるへし、故に銀行の定義及業目の如きは法律中に掲けさらんことを望む
    第二、役員若くは使用人と取引を為すの禁止は之れを除かれたき事
 改正案に於て其銀行の役員若くは使用人たるものと直接又は間接を問はす貸附割引等の取引を為すことを得さる旨の規定ありと云ふ、然れとも株式会社の取締役が監査役の承認を得ずして自己又は第三者の為めに会社と取引を為すことを得さることは商法に於て既に其規定(商法第一七六条)あり、今銀行に限りて役員は勿論使用人に至るまて絶対的に之を禁止せんとするも他人の名義を用ひて取引を為すときは復た之を如何ともすへからす、加之資産あり、名望ある商工業者は取引を開くを得さるの不便を蒙むらんよりは寧ろ銀行の役員たることを避けんとし、之が為め地方に依りては勢ひ適当の役員を得ること能はさるの弊を生すへし、故に斯る規定は之を除かれんことを望む
    第三、取引停止の規定は之を除かれたき事
 改正案に於ては大蔵大臣は銀行の業務又は財産の状況に依り必要なりと認むるときは銀行の新に取引を開始することを停止し、又は債権者の権利を保護するに必要なる命令を為すことを得るの規定ありと云ふ、然れとも検査の結果債権者の権利を保護するに必要なる命令を為すことを得るの規定あれは特に取引停止の如き制裁を設くるの必要なかるへきを以て、之を除かれんことを望む
    ○銀行条例中改正法律案に対する意見書提出
三月十五日開会当集会所組合銀行条例《(総会)》に於て決議したる銀行条例中改正法律案に対する意見書は翌十六日松尾理財局長を経て大蔵大臣に進達せり


渋沢栄一 日記 明治三四年(DK060144k-0004)
第6巻 p.513-514 ページ画像

渋沢栄一 日記 明治三四年
 - 第6巻 p.514 -ページ画像 
三月十五日
午後四時銀行集会所臨時会ニ出席ス
三月十六日
此日ハ歯痛甚キヲ以テ書状ヲ以テ大蔵省松尾氏ヘ銀行条例改正法案ノコトヲ申通ス


銀行通信録 第三一巻第一八五号・第六一二頁〔明治三四年四月一五日〕 銀行条例中改正法律案及貯蓄銀行法案(DK060144k-0005)
第6巻 p.514 ページ画像

銀行通信録 第三一巻第一八五号・第六一二頁〔明治三四年四月一五日〕
    ○銀行条例中改正法律案及貯蓄銀行法案
大蔵省にては曾て記せる如く現行銀行条例貯蓄銀行条例に改正を加へんとし、第十五議会に其改正案を提出する筈(銀行通信録一八一号八七六頁参照)にて案成て之を内閣法制局に送付せしが、貯蓄銀行当業者は先づ右に対し希望のあるところを陳情し、有楽会は右に対し委員に調査を附托し(銀行通信録第一八四号四六〇頁)又我東京銀行集会所組合銀行は右に対し意見書を其筋に提出し、大蔵省に於ても右等の意見に就ては夫々之を詮議する所ありしも、両法案とも第十五議会会期切迫せし為め遂に之が提出を見合はすことゝなりたり


東京経済雑誌 第四五巻第一一一六号・第二三頁〔明治三五年一月二五日〕 銀行条例改正と渋沢男(DK060144k-0006)
第6巻 p.514 ページ画像

東京経済雑誌 第四五巻第一一一六号・第二三頁〔明治三五年一月二五日〕
    ○銀行条例改正と渋沢男
銀行条例改正に付ては当局者は改正案を予じめ渋沢男に示めし、男の意見を問ふ所あり、男は他の同業者とも熟議の末、去十六日曾禰蔵相を官邸に訪問し、単に渋沢一己の意見とせず一部同業者の意見として諮問に対し陳述する所ありたる由、其の要旨は左の如くなりと云ふ
 一、改正案中より銀行の業務に関し規定せる条項を削除する事
 一、資本金制限に関する条項を削除する事
 一、銀行の兼業禁止に関する条項を削除する事
 一、大蔵大臣の監督権中より営業停止に関する条項を削除する事


銀行通信録 第三三巻第一九六号・第三〇八―三〇九頁〔明治三五年二月一五日〕 東京銀行集会所組合銀行定時総会(DK060144k-0007)
第6巻 p.514-515 ページ画像

銀行通信録 第三三巻第一九六号・第三〇八―三〇九頁〔明治三五年二月一五日〕
    ○東京銀行集会所組合銀行定時総会
明治三十五年一月二十三日(木曜日)午後六時二十分より当集会所に於て開会、出席銀行四十二、会員四十五名にして、会長渋沢男爵議長席に着き
○中略
 一銀行法案に対し組合銀行の意見発表の件
を議に附し、議長より当期議会に提出せらるべき銀行法案に就ては改正の要点既に新聞紙上にも散見し、銀行業務上利害の関係ある条項少なからざるを以て審議講究の上右法案に対する当集会所の意見を一定するの必要を唱ふるもの少からず、仍て本日の集会を機とし玆に本件を議に附すべしと述べしに、茂木操君(日本通商銀行)は特別委員を設けて審査せしめたる上、建議若くは請願すべしとの議を提出し、之に対し豊川良平君(三菱会社銀行部)は現行銀行条例は之を改正するの必要なきを以て当組合銀行は直に其旨を決議して之を発表すべし、但し特に建議若くは請願等を為すの必要なしと述べたり、是に於て議長は
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現行法改正の必要ありや否やに就き採決したるに、満場一致を以て豊川君発議の如く改正の必要なしと決し、次で高羽惣兵衛君(商栄銀行)の発議にて右決議に関する文案起草及発表其他に関する全権を委任する為め議長の指名に依り委員五名を選定し、正副会長と共に其事を処理せしむることに決し、議長は該委員に池田謙三、波多野承五郎、豊川良平、佐々木勇之助及三崎亀之助の五君を指名し、右にて議事を終り、午後七時三十五分閉会せり
    ○銀行法案に関する特別委員会
明治三十五年一月二十五日(金曜日)午後五時より前記組合銀行総会の決議に基づき銀行法案に関する特別委員会を開く、当日は正副会長及各委員とも悉皆出席、一同協議の末左の如く決議文を起草議決せり
    決議
 東京銀行集会所組合銀行は我銀行業の実況に照し目下現行銀行条例を改正するの必要なしと認め、玆に之を決議す
右了りて
 一建議請願等は一切之を為さゞる事
の決議を為し、午後五時三十分閉会せり


渋沢栄一 日記 明治三五年(DK060144k-0008)
第6巻 p.515 ページ画像

渋沢栄一 日記 明治三五年
一月廿三日 晴
○上略午後五時銀行集会所ニ抵リ総会ヲ開ク、事務計算ノ報告ヲ畢リ本季ノ予算ヲ決議シ、役員ノ改選ヲ為ス、更ニ銀行法ニ関スル問題ヲ議シ○下略
一月廿五日 晴
午前十時大蔵省ニ抵リ、斎藤銀行局長ニ面会シテ銀行法ニ関スルコトヲ話ス○下略
一月廿八日 晴
○上略桂総理ノ官舎ヲ訪ヒ曾禰大蔵大臣ニ面会シテ銀行法ノコトヲ談話ス○下略


銀行通信録 第三三巻第一九七号・第四二一頁〔明治三五年三月一五日〕 銀行条例改正問題(DK060144k-0009)
第6巻 p.515-516 ページ画像

銀行通信録 第三三巻第一九七号・第四二一頁〔明治三五年三月一五日〕
  銀行条例改正問題
銀行条例改正問題に関しては東京を始め大阪神戸其他の銀行団体は皆反対を表せること前号(三一〇頁)に記する如く、而して其後新聞雑誌に見はれし議論も多くは反対なりき、今前号に記せる以後新聞雑誌に散見せる議論の一二を摘出せんに、東京朝日新聞(二月五日)の如きは銀行家が之に反対せるを以て一応の道理ありと云ふと同時に『近来銀行の内部に謂ふ可らざる弊害の多きは事実にして、単に銀行の役員たる肩書を贏ち得んが為め無用の銀行を濫設し、而も其株金の払込には約束手形を用ゐ、甚しきは払込と同時に借入金を為し、以て帳簿上誤魔化し置くが如き詐偽的悪事を働くもの往々之れ有り、故に政府が是等の弊害を除かんが為め銀行条例を改正せんと欲するは是亦至当の希望なりと謂はざる可らず』と説き『要するに吾人は銀行者が不完全なる政府案を打破するのみにては満足せず進んで自己の弱点を矯正せん
 - 第6巻 p.516 -ページ画像 
ことを希望するものなり』と論せり、又大阪朝日新聞(二月七日)は貯蓄銀行法案に対し、預金者に与ふる保護及普通銀行の営業に比して必ず之あるべき特定の制限の二点より観察して、資本金の制限、供托の廃止及資金運用の方法に関する規定に反対を表し、又国民新聞は前号に記したる続稿に於て兼業に関しては之を許すと否とを大蔵大臣の権に任すべしと云ひ、三十円以下の普通銀行預金無利子に就ては政府案に賛成し、最後に
 要するに吾人は改正案の精神に対しては全然賛成を表するものにして、若し夫れ各条項を仔細に点撿するに於ては多少反対すべき点なきにあらずと雖も、此等の反対すべき点存在するか為めに、若し其の全部が否決せらるゝが如きことあらんか、吾人は我が経済界の為めに実に遺憾とせざるを得ず、道路伝ふるものあり、当局者は世論の反対を恐れ其の提出を躊躇しつゝありと、然れども吾人は必らず其斉東野人の語に過ぎざるを信せんと欲す、何となれば吾人は当局者か当業者の意見発表せられたるのみにして真正の世論は尚ほ未だ審明せられず、加之当業者中にも尚ほ潜かに賛成を表するものある今日、水禽の響を聞て宿昔の目的を抛つが如き薄志弱行の徒にあらざるを信ずるを以てなり
と論じたりしが、政府は遂に法案を議会に提出せずして已めり