デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

1章 金融
1節 銀行
7款 金融関係諸団体 2. 関東銀行会
■綱文

第7巻 p.142-149(DK070019k) ページ画像

明治26年10月23日(1893年)

是日、東京銀行集会所同盟銀行ノ首唱ニヨリ組織セラレタル関東銀行会第一回会同ヲ開ク。栄一会長トシテ規定草案ヲ議シ、尋イデ銀行条例ノ改正貯蓄銀行条例廃止案、国立銀行営業年限延期請願ノ件等ヲ審議ス。


■資料

銀行通信録 第九五号・第二六頁〔明治二六年一〇月一〇日〕 関東銀行会第一期会同(DK070019k-0001)
第7巻 p.142 ページ画像

銀行通信録  第九五号・第二六頁〔明治二六年一〇月一〇日〕
○関東銀行会第一期会同 東京銀行集会所同盟銀行ノ首唱ニヨリ組織シタル関東銀行会ハ、愈来ル廿三日東京ニ於テ開会スヘキ事ニ決シ其規程草案ヲ添ヘ組合銀行ヘ通知セリ


銀行通信録 第九六号・第二六―四四頁〔明治二六年一一月一〇日〕 関東銀行会第一回会議記事要略(DK070019k-0002)
第7巻 p.142-149 ページ画像

銀行通信録  第九六号・第二六―四四頁〔明治二六年一一月一〇日〕
    ○関東銀行会第一回会議記事要略
明治二十六年十月廿三日(午後一時)ヨリ東京日本橋区坂本町東京銀行集会所ニ於テ本会第一回ノ会同ヲ開キ同廿五日ヲ以テ閉会セリ、当日来会シタルモノハ総テ四十七行ニシテ其人員七十一名又事故アリテ参会セサルモノ四行ナリ、而シテ其会議ノ要領ヲ録スルコト左ノ如シ
      出席員
  東京第一国立銀行        頭取       渋沢栄一
  同               支配人      佐々木勇之助
  横浜第二国立銀行        副頭取      樋口登久次郎
  同               東京支店支配人  早川録造
  東京第三国立銀行        頭取       安田善四郎
 - 第7巻 p.143 -ページ画像 
  東京第六国立銀行        支配人      神谷吉積
  甲府第十国立銀行        取締役      風間伊七
  同               支配人      堤江助
  松本第十四国立銀行       取締役      小平久平
  東京第十五国立銀行       支配人      山本直成
  同               副支配人     三輪信次郎
  上田第十九国立銀行       頭取       黒沢鷹次郎
  同               東京支店支配人  小林真太郎
  東京第二十国立銀行       頭取       穂積重頴
  同               取締役兼支配人  佐々木慎思郎
  東京第二十七国立銀行      取締役兼支配人  安藤三男
  東京第三十国立銀行       取締役      原代九郎
  静岡第三十五国立銀行      頭取       小林年保
  八王子第三十六国立銀行     副頭取      吉田忠右衛門
  同               取締役兼支配人  柴田弥市
  前橋第三十九国立銀行      取締役兼支配人  松田孝
  同               東京支店     長尾三十郎
  館林第四十国立銀行       頭取       南条新六郎
  同               取締役       笠原円蔵
  同               東京支店支配人心得 坂本恒次郎
  栃木第四十一国立銀行      頭取        滝沢喜平治
  同               取締役       三沢七郎平
  同               東京支店支配人   奥田卯三郎
  東京第四十五国立銀行      頭取        太田弥五郎
  同               支配人       牧田銑郎
  土浦第五十国立銀行       取締役       広瀬以健
  同               取締役兼支配人   古谷道章
  水戸第六十二国立銀行      頭取        妹尾万寿吉
  同               支配人       山田忠八郎
  長岡第六十九国立銀行      頭取        岸宇吉
  横浜第七十四国立銀行      頭取        茂木保平
  同               取締役兼支配人   森謙吾
  八王子第七十八国立銀行     頭取        西川敬治
  同               取締役兼支配人   鈴木新七郎
  同               東京支店支配人   松尾謹次
  東京第八十二国立銀行      頭取        宮島信吉
  同               副支配人      中根虎四郎
  東京第八十四国立銀行      頭取        中沢彦吉
  同               支配人       山田丈太郎
  川越第八十五国立銀行      取締役       小川五郎右衛門
  同               同         綾部峯太郎
  同               支配人       前野真太郎
  東京第九十五国立銀行      支配人       小林近一
  千葉第九十八国立銀行      頭取        近藤勘助
 - 第7巻 p.144 -ページ画像 
  同               取締役       永田籌
  同                         細田権次郎
  東京第百国立銀行        取締役兼支配人   池田謙三
  水戸第百四国立銀行       頭取        尾崎為貴
  同               支配人       矢田登
  東京第百十二国立銀行      取締役兼支配人   池上伴造
  飯田第百十七国立銀行                石田新内
  東京第百十九国立銀行      支配人       三村君平
  古河第百二十国立銀行      頭取        片山駒之丞
  同               取締役       小杉春三郎
  東京第百三十二国立銀行     頭取        加東徳三
  二俣第百三十八国立銀行     頭取        坪井源三郎
  東京第百五十二国立銀行     取締役       小池太代二
  横浜正金銀行          頭取        園田孝吉
  東京三井銀行          支配人       斎藤専蔵
  東京安田銀行          監事        安田善次郎
  同               支配人       若葉福朗《(若菜福朗)》
  東京川崎銀行          支配人       安藤浩
  新潟第四国立銀行東京支店    支配人       大泉遵誼
  富山第十二国立銀行東京支店   支配人       松岡文吉
  大坂第十三国立銀行東京支店   支配人       芦田順三郎
  大坂第三十二国立銀行東京支店   取締役支店主任   山中隣之助
  仙台第七十七国立銀行東京支店   支配人       大野清敬
  函館第百十三国立銀行東京支店   支配人       鈴木重恒
  鹿児島第百四十七国立銀行東京支店 支配人       宮ノ原軍吉
    事故アリテ参会セサルモノ
  東京第五国立銀行・長野第六十三国立銀行・徳島第八十九国立銀行東京支店・信濃信濃銀行東京支店
廿三日午後二時開会ヲ報シ一同着席スルヤ第一国立銀行頭取渋沢栄一氏ハ立テ曰ク、抑同一ナル条例ノ下ニ存立スル同業者相会シテ互ニ業務ノ利害ヲ協議シ其親睦ヲ需ムルハ甚タ必要ノ事ニシテ、又多年ノ宿望タリシカ好機ニ会セサリシ為メ未タ其設ケアラサリシカ、今回幸ニ各位ノ賛同ヲ得五十有余ノ銀行此一堂ノ下ニ相会スルヲ得タルハ実ニ満足ノ至ニ不堪ナリ、就テハ是ヨリ本会規程ヲ議定シテ後幹事銀行ノ選挙ヲ行フヘキ順序ナレトモ、先ツ此規程ヲ議スルニ当リ仮会長ヲ選挙セラレンコトヲ述ヘシニ、満場一致同氏ヲ推シテ仮会長タランコトヲ望ミタルヲ以テ同氏之ヲ承諾セリ
渋沢氏ハ会長席ニ着キ其規程ヲ会議ニ付シ、且曰、本会組合銀行ハ重ニ関東所在ノモノナリト雖、中ニハ駿遠若クハ信越等アリテ其名称妥当ナラスト雖、差向簡明ニシテ適当ノ名称ヲ案出セサリシヲ以テ、仮ニ関東銀行会トナセシナリ、就テハ諸君ニ於テモ適当ノ名称ヲ案出セラレンコトヲ望ム
小林年保氏曰ク、東京ハ輦轂ノ下ニシテ且我国ノ中央ニ位スルヲ以テ中央銀行会ト云フモ敢テ不遜ノ嫌アラサルヘケレハ中央銀行会ト称ス
 - 第7巻 p.145 -ページ画像 
ヘシ
黒沢鷹次郎氏曰ク、旧幕府ノ当時富士見十三州ノ称アリテ略ホ此組合銀行ノ地方ヲ概括シタルモノアリト雖モ、余リニ冗長ニ過クレハ関東銀行会ニテ可ナリ
妹尾万寿吉氏曰ク、中央銀行会ト称スルハ稍尊大ノ嫌アリ且本会ノ関東ニ起ルヲ以テ、之ヲ関東銀行会ト云フハ決シテ不当ノ名称ニアラサレハ原案ヲ賛成ス
爰ニ於テ種々討議スル処アリシカ多数ヲ以テ遂ニ原案ニ可決シ、夫ヨリ本文ヲ逐条審議ニ付セシニ、大躰ニ付議定スヘシトノ説多数ナルニヨリ第一条ヨリ第二十二条迄ヲ通シテ之ヲ討議スヘキコトト為セリ
小林年保氏曰ク、第十条ニ定式会議ハ毎年四月十月ノ両度トアリ臨時会議ヲ仮ニ年一度ト見做ストキハ都合三回ナリ、此繁劇ナル営業ニ従事スルモノニシテ年三回上京ヲ為スハ少シク煩多ニ過キ遂ニハ之ヲ嫌厭スルノ事情ヲ来シ、結局参会者少数ナルカ如キ事アラハ甚タ遺憾ナラン、故ニ定式会議ヲ毎年一回即十月ト改メタシ
黒沢鷹次郎氏曰ク、定式会議ヲ毎年一回トスルハ賛成ナレトモ、十月ハ一般ノ銀行繁忙ノ時季ナレハ四月ニ改メタシ
右ニ付討議スル処アリシガ、又国立銀行営業満期ニ接近シ協議スヘキ事項モ多カルヘケレハ年二回ハ必要ナルヘシトノ説多数ヲ占メ、遂ニ原案ニ可決セリ
小林年保氏曰ク、第十九条本会ノ経費ハ各行平等云々トアレトモ、資本金多額ノモノハ其利害モ亦随テ大ナレハ之ヲ資本金高ニ割合フヘシ又経費ト会議費ヲ区別シアレトモ会議費ハ弁当料位ナルヘケレハ之ヲ区別スルニ及ハス、共ニ経費ノ中ニ組入レタル方然ルヘシ
会長答ヘテ曰ク、小林君ノ意見ノ如クスルトキハ小銀行ハ大銀行ノ恩恵ニ依ルノ嫌アリ、資本ニ多寡ノ別アリト雖其利害ハ均一ナルヘシト信ス、且ツ之ヲ資本金高ニ割合フトキハ自カラ議決権ニモ関係ヲ及ホスニ至ルヘシ、又会議費ヲ区別セシ理由ハ其出席者一行一人ノモノアリ又ハ三人ノモノアリ、之ヲ同一ニスルハ反テ公平ヲ失ハンコトヲ恐レ特ニ之ヲ区別シタルモノナリト告ケ、其他一二ノ質疑アリシカ、終ニ第一条ヨリ第廿二条迄総テ原案ノ如ク確定セリ
会長曰ク、此規程ニヨリ殊更会議ヲ開ク程ノ重要ナラサル事項ハ幹事銀行ノ見込ヲ以テ廻文会議ニテ各位ノ意見ヲ照問スル事ト為シ置タシ或ハ規程中ニ其個条ヲ設クヘキヤ否ヲ協議セシニ、皆規程中ニ別段ノ条項ヲ設ケス臨時幹事ノ見込ニ一任スヘキコトニ議決セリ
爰ニ於テ会長ハ、規程第四条ニ拠リ投票ヲ以テ幹事銀行ヲ撰挙セシメシニ多数ヲ以テ左ノ三行当選シ各承諾セリ
    四十三点    東京 第一国立銀行
    十五点     東京 第三国立銀行
    二十四点    東京 第十五国立銀行
次ニ静岡県下大宮銀行本会ヘ加入申込ニ付、之ヲ衆議ニ諮ヒシニ多数ヲ以テ異議ナク加入セシムヘキ事ニ議決セリ
次ニ組合銀行懇親会開催ノ件ヲ協議シ、明日(廿四日)午後四時ヨリ芝紅葉館ニ於テ開宴スヘキ事ニ決定セリ
 - 第7巻 p.146 -ページ画像 
次ニ会長ハ東京銀行集会所同盟銀行ノ提出ニ係ル銀行条例第五条刪除ノ件ヲ提出シテ曰ク、国立銀行ノ営業年限モ最早数年ヲ出スシテ満期ニ至リ継続シテ私立銀行トナルトキハ、本条例ノ下ニ其業務ヲ経営セサルヘカラサルニ依リ、曾テ東京銀行集会所同盟銀行ハ之カ修正ヲ望ミ審案熟議ノ末修正案ヲ草シ大蔵大臣ニ呈シ、併セテ昨年帝国議会ヘ建議セシニ、提出ノ場合宜シカラサリシト修正ノ細密ニ過キシトニ由リ否決セラレタルヲ以テ、今回ハ単ニ第五条ノ「一人又ハ一会社ニ対シ資本金十分ノ一ヲ超過スル金額ヲ貸付又ハ割引ノ為メニ使用スルコトヲ得ス」トノ個条丈ケヲ削除センコトヲ切望セリ、而シテ其理由ハ取引上ノ都合若クハ地方ノ情況ニヨリ他ニ融通ヲ求ムヘキ途ナキ場合ニハ大ニ困難ヲ来シ、之カ為メ商機ヲ誤ルコト尠シトセス、斯ル場合ニハ止ムヲ得ス親戚朋友若クハ番頭手代等ノ名義ヲ仮用シテ急需ヲ弁スルモノアリテ遂ニ本条ヲシテ徒法ニ属セシムルノ形跡ヲ呈シ、是レヨリ種々ノ情弊ヲ生センコト憂慮ニ耐ヘサルナリ、且又割引手形ノ如キハ貸付金ト其性質ヲ異ニシ其運転最モ便利ナレハ、仮令幾多ノ手形ヲ割引《(ス)》ルモ資金ヲ要スルトキハ、随時之ヲ他ニ再割引シテ元資ヲ得ヘキモノナレハ之ニ制限ヲ加フルハス頗ル至難ノ事柄ニシテ殆ント為シ能ハサルナリ、是本条ヲ削除セントスル所以ノ大要ナリト陳ヘ討議ニ付セシニ、更ニ異議ナク全会一致ヲ以テ原案ニ可決セリ
次ニ会長ハ又東京銀行集会所同盟銀行ノ提出ニ係ル貯蓄銀行条例廃止案ヲ会議ニ付シ且曰ク、抑本条例タル極メテ不完全ノモノタルコトハ今更喋々セサルモ既ニ諸君ノ諒知セラルヽ処ナルヘシ、曩ニ東京銀行集会所ニ於テモ之カ修正案ヲ草シ以テ大蔵大臣ニ稟請シタル処アリシニ、加藤監査局長之ヲ視テ、名ハ修正ナレトモ其実殆ント廃止案ニ均シキモノナレハ同意シ難キ旨ヲ告ケラレタレトモ実ニ其言ノ如ク、若シ本条例ニ修正セントセハ勢ヒ廃止案ト均シキニ至ルハ事実上必然ノ事ト信セリ、且其第五条及第六条ニ資金運転ノ制限ヲ定メラレタレトモ、其区域狭隘ニシテ到底其事業ヲ営ムヲ得ス、故ニ寧ロ本条例ヲ廃棄シ従来ノ慣行ニ任セ普通銀行業務ノ一部トシテ取扱ハシメタル方双方ノ便宜ニシテ何等ノ障碍ナカルヘシ、依テ諸君ノ賛同ヲ得以テ其旨趣ヲ徹底センコトヲ希望スルナリ
小林年保氏曰ク、凡物一利アレバ一害ヲ生スルハ数ノ免レサル処ナリ殊ニ細民貯蓄金取扱ノ如キハ最モ安全鞏固ヲ計ラサルヘカラス、本条例ノ如キハ細民ノ貯蓄金ヲ保護スルニハ実ニ適当ノ法律ト認メ居レハ多少ノ不便ハ忍ハサルヘカラス、現ニ我静岡県下ノ如キハ本条例実施以来貯蓄預金ノ事業大ニ発達シ益便宜ヲ覚ユルノ傾向アリシハ、偏ニ本条例ノ効用ニシテ真ニ慶ブヘキノ現像ト謂フヘシ、故ニ今日之ヲ廃止スルカ如キコトアラハ無数ノ小銀行貯蓄預金ノ事業ヲ営ミ遂ニハ破産ノ不幸ヲ来シ、是迄ノ進歩ヲ逆退セシムルコトナキヲ保スヘカラサレハ、真ニ不完全ノ個条ハ修正ヲ加フルトモ之ヲ廃止スルハ穏当ナラサルヘシ
大野清敬氏曰ク、仙台地方モ小林氏ノ説ノ如ク貯蓄事業ハ余程増進セシト雖、夫ト同時ニ非常ノ困難ヲ感スルハ即第五条及第六条ノ預金運転法ニシテ、地方ニ於テハ迚モ公債証書ノ如キ抵当品ハ殆ト絶無ナル
 - 第7巻 p.147 -ページ画像 
ヲ以テ預金ハ次第ニ増加スルモ之ヲ使用スル能ハサルヲ以テ、其利息ノ支払ダニ困却スルノ情態ナレハ、現条例ニテハ到底営業ト為スコトヲ得ス故ニ原案ノ如ク全廃ヲ望ム
山中隣之助氏曰ク、本条例ノ不完全タル事ハ今更贅言セサレトモ、畢竟此廃案説ノ出テシハ貯蓄其者ノ悪シキニアラスシテ全ク条例ノ不完全ニ帰スル者ナレハ、其欠点ハ充分ニ之ヲ改メ、以テ本条例ヲ存セシメンコトヲ希望スルナリ、蓋シ此貯蓄事業タル細民ノ貯蓄心ヲ奨励シ且其預金ノ管理増殖ヲ計ル所謂慈善的トモ云フヘキ事業ナレハ安全鞏固ヲ要スルハ固ヨリ論ヲ俟タスト雖、又現条例ノ如ク営業ノ便否ヲ問ハサルハ不都合ナレハ、現条例中最モ不便ヲ感スル資金運転区域ヲ拡張シテ、其第六条国債証券地方債証券ノ下ニ「地所及既設鉄道会社株券」ノ十一字ヲ加ヘ、且其第八条ハ往々世人ノ疑惑ヲ生スル贅文蛇足ナレハ之ヲ削除シ、以テ本条例ヲ維持スヘシ
黒沢鷹次郎氏曰ク、本条例ヲ修正セントスルトキハ恰モ破壊シタル家屋ヲ修補スルカ如キモノニシテ、一方ニ修正ヲ加フレハ他ニ不便ヲ生シ、到底共修正ハ望ナキモノト思考スレハ、寧ロ之ヲ全廃シテ其営業ヲ自由ニ任スヘシ
加藤徳三氏曰ク、是迄種々ノ説アリシト雖要之、貯蓄銀行其者ハ必要ト認メ居ルモノナレトモ、条例不完全ノ故ヲ以テ全廃スト云フハ少シク穏当ナラサルニヨリ、爰ニ数名ノ調査委員ヲ撰ヒ、不完全ノ個条ニ修正ヲ加ヘ以テ本案ノ存在センコトヲ望ム
妹尾万寿吉氏曰ク、条例ノ不完全ナルヲ以テ之ヲ廃止セント云フハ甚タ其当ヲ得ス、貯蓄銀行ハ決シテ不必要ノモノニアラサレハ修正スヘキノ点ハ之ヲ修正スヘシ
安田善次郎氏曰ク、東京銀行集会所ニ於テモ貯蓄銀行ハ決シテ悪シト云フニアラスシテ益誘導奨励ヲ務ムルノ精神ナリト雖、現在ノ条例ハ極メテ不便不利ニシテ到底営業ヲナス能ス、若シ之ニ充分ノ修正ヲ加ヘン歟殆ト白紙ノ如キモノトナルヘシ、且今日地所及鉄道会社株券等ヲ抵当ニ組入ルトキハ現条例ノ精神ヲ失ヒ普通銀行同様ニ帰一スヘケレハ全廃スルニ如カサルヘシ、以上ノ趣旨ニヨリ駁論対議殆ント三日ニ渉リタリト雖帰着スル処ハ、本条例ニ修正ヲ加フト原案即全廃ノ二途ニアリ
会長曰ク、本案ノ論旨数派ニ別レタルカ如シト雖、之ヲ大別スレハ現条例ニ修正ヲ加フルト、原案即全廃説トノ二途ニ帰スヘシ、依テ先ツ修正説ヨリ採決スヘシト修正説ニ同意ノ者ヲ起立ニ問ヒシニ、十二名ノ少数ニテ消滅シ遂ニ多数ヲ以テ原案ニ可決セリ
是ニ於テ会長ハ、銀行条例第五条削除並貯蓄銀行条例廃止案ヲ主務大巨並貴衆両院ヘ提出ノ手続ヲ協議セシカ、請願トシテ貴衆両院ヘ提出スルトキハ遠隔ノ地方各自調印ニ不便ニシテ非常ノ日子ヲ要シ自然遅延ノ恐アルヲ以テ、適当ノ議員ニ托シ之ヲ議場建議トナスヘキ事トナシ、而シテ主務大臣ヘノ稟請及全国各同盟銀行団躰ヘ本案議決ノ要領ヲ通牒シ其同意ヲ求ムヘキ事等ハ、総テ幹事銀行ヘ嘱托スヘキコトニ議決セリ
次ニ会長ハ銀行紙幣消却一件ニ付協議スルニ先タチ、明治廿二年以来
 - 第7巻 p.148 -ページ画像 
本件ニ関シテハ東京銀行集会所モ非常ニ苦慮奔走シ屡々会同協議ノ末主務大臣(松方伯並渡辺氏)ヲ首メ歴代ノ主任局長(加藤済、上床熙載、大野直輔、田尻稲次郎、加藤高明、鈴木利亨、添田寿一)諸氏ニ対シ陳情シタル事由及沿革ノ要領ヲ述ヘテ曰ク、抑此紙幣消却法ニ違算ヲ生シタルハ明治十九年以来政府カ公債整理ノ方法ヲ施行セラレ、高利ノ公債ヲ回収セラレ随テ低利公債ノ市価漸次騰上シ、之レカ為メ十六年大蔵省ヨリ各国立銀行ヘ示サレタル予算書ニ差違ヲ生シタルモノニシテ、畢竟財政整理ニ起因シタルコトナレトモ其差額即国立銀行営業満期ノ節損失ニ帰スヘキ高ハ無慮七百七十余万円ノ巨額ニ上リタルヲ以テ、仮令十六年ノ予算ノ如クナラサルモ右ニ近似シタル適宜ノ方法ヲ設ケ之ヲ処理セラレンコトヲ去ル廿三年九月中田尻銀行局長迄稟請シタルニ、其意思ハ大抵聴容セラレ稍其運ヒモ成ラントスルニ際シテ田尻氏転任セラレ加藤高明氏其任ヲ襲カレタルモ、同氏ハ田尻氏ト其意見ヲ異ニセラレシヲ以テ大ニ躊躇シタリシカ、間モナク同氏モ亦転任爾来鈴木氏ヨリ添田氏ニ移リタリト雖悉ク之ヲ歴問シテ詳カニ最前ノ意思ヲ陳情シ孜々トシテ之ヲ徹底センコトヲ務メ且昨廿五年松方伯辞職シテ渡辺氏其任ヲ襲カレシ節モ旧大臣ヨリ新大臣ヘ本件ノ処分方法ノ意思ヲ引継カレ其処理ノ迅速ナランコトヲ望ミ、併セテ新大臣並田尻次官ヘモ屡々稟請シタリシニ其回示ノ趣ハ最前ノ意思ニ渝ルコトナク頻リニ調査中ナレハ遠カラス其方案ヲ示スヘシトノ事ナリシ前陳大蔵省ヘ対スル請願ハ二十三年来ノコトニテ、曠日弥久了局ノ期ヲ見ル能ハサルニ付、本年六月十一日東京同盟銀行中数行申合営業年限延期ノ協議ヲ為シ小子ニモ之ニ同意スヘシトノ勧誘ヲ受ケタリシカ小子ハ是迄請願談話等ノ行掛リモアレハ俄ニ其思想ヲ翻スヲ欲セス、然シ大蔵省ノ事モ亦測知スヘカラサレハ、若シ此延期運動中最前ノ企望達スル場合ニ至リタルトキハ之ニ拠ルヘシトノ条件ヲ附シテ其勧誘ニ同意シ、同月十五日同盟銀行定式会議ニ於テ遂ニ営業延期請願運動ノ順序ヲ議決シタリ
然レトモ右ハ畢竟小子ノ本意ニアラサルヲ以テ、渡辺大蔵大臣、田尻同次官並川田日本銀行総裁ヲ訪問シ、爾来ノ事情ヲ縷陳シ請願ノ旨趣速ニ貫徹センコトヲ要望シタリシカ、遂ニ七月廿二日田尻大蔵次官ヨリ右消却方法ヲ小子迄内示アリタリ、右ノ方法ニ拠レハ国立銀行営業満期ニ至リ私立銀行トナリテ其営業ヲ継続スルトキハ、兼テ日本銀行ニ預ケ置キタル準備金積立金ヲ以テ買入タル公債証書ヲ売却シ、其内ヨリ最初預ケ入タル準備金ハ通貨ニテ返却シ、其余ヲ以テ紙幣消却ノ基金ニ充テ不足ノ分ハ日本銀行ヨリ無利息ノ貸付金ト為シ、而シテ其貸付金ハ従前ノ如ク毎半季発行紙幣ノ一分二厘五毛ニ相当スル金額ヲ以テ結了スルノ手続ナリ、爰ニ於テ東京銀行集会所同盟銀行ハ臨時会同ヲ開キ種々討議ノ末通貨ニテ交付スヘシトアル準備金ヲ、公債証書額面ニテ交付セラルヽ事ニ相成ラハ同意スヘキコトニ一決シ、其旨田尻大蔵次官ヘ復申ニ及ヒタリシニ、日本銀行ニテ不同意ノ為メ此相談モ一時破裂セントスル有様ナリシカ、再三ノ協議ヲ以テ漸ク行届タルヲ以テ已ニ其筋ニ於テ日本銀行ト各国立銀行間ニ訂結スヘキ追加約定書案ノ取調ヲ為シ不日其書案ヲ示サルヘキ都合ナリ
 - 第7巻 p.149 -ページ画像 
右ノ報告ヲ了セシ後、会員中ノ二三者ハ本件ニ付テハ此程奥羽北海同盟銀行会同ニ於テ決議ノ次第モ有之、已ニ前日(廿四日)大野清敬氏ヨリ営業年限延期ノコトヲ発言シタレハ、先ツ本問題ニ付討議ヲ開クヘシトノ説アリタレトモ、本日(廿五日)ハ大野氏所労ニテ本会議ヲ開クノ順序ヲ得サレハ、協議会ト為シタル方可然トノ動議ニ一決シ種種協議ニ及ヒタル処、或ハ国立銀行第十二条ニ満期トナリタル節私立銀行トシテ其事業ヲ継続セシムトアレトモ、万一一二株主中継続ニ不同意ヲ述ヘタルトキハ其銀行ハ法律ニヨリ一旦解散ノ手続ヲ履行セサルヘカラサルノ不幸ニ陥リ、之レカ為メ国家ノ経済ヲ紊乱スルニ至ルノ恐レアレハ、断然営業年限ノ延期ヲ請フニ如カサルヘシトノ説多数ヲ占メ将ニ本問題ヲ決セントスルノ意向ナリシ
会長曰ク、今諸君カ懸念スルカ如ク満期ニ至リ私立銀行トシテ其営業ヲ継続セントスルニ当リ、一二株主不同意ナルカ為メ、其銀行ヲ解散スルカ如キコトアリテハ経世上実ニ容易ナラサル大事件ナリ、是等ノ事ハ小子モ大ニ苦慮セシカ已ニ主務省ニ於テモ之ニ注意シ、私立銀行トナリテ営業ヲ継続スルニハ株主多数決議ヲ以テ履行シ得ラルヽ様特別ナル法律ヲ設ケ以テ円滑ニ処理セシムル考案ニテ、目下該法律ノ取調ニ着手シ議会ノ協賛ヲ経テ之ヲ実施セラルヽ見込ナリト云ヘリ、依テ本会ハ暫ク其成行ヲ視テ時期ヲ待タレンコトヲ希望ス、若シ諸君ニシテ前議ヲ主張セハ小子ハ是迄ノ行掛モアリ且其成績、将ニ挙ラントスルノ今日ニ至リ之ヲ顧ミサルカ如キコトハ為シ能ハサレハ止ヲ得ス不同意ヲ主張セサルヲ得ス
小林年保氏等ハ渋沢氏ノ意見ニ同意シ、先ツ暫ク其成行ヲ視察シ其間尚熟考ヲ加ヘ次会ニ於テ協議スルモ未タ遅シト為スヘカラストノ動議モ起リ、種々討議ノ末其時期ヲ待ツコトニ決定セリ
就テハ奥羽北海同盟銀行幹事ヨリ組合各国立銀行ヘノ照会ニ対シ、銘銘ヨリ同一ノ回答ヲ為スハ双方ノ繁雑ニ渉レハ前陳ノ次第ヲ以テ幹事銀行ヨリ回答アリ度トノ事ヲ協議シ之ニ決定セリ
次ニ渋沢氏ハ本年六月監査局長ヨリ各国立銀行ヘ通知アリシ登記並株式会社ノ文字ヲ冠スルノ件ハ、当時東京銀行集会所同盟銀行ニ於テ協議スル処アリシカ、右二件共全然反対ノ意見ナルヲ以テ其旨渡辺大蔵大臣ヘ上申シ爾来屡々其模様ヲ問合セ尚又今朝(廿五日)モ渡辺大臣ニ面会シテ其後ノ模様ヲ問ヒシニ未タ確定セサレトモ、或ハ株式会社ノ文字ヲ冠スルニ及ハサルコトハ集会所意見ノ如クナルヘケレトモ、登記丈ケハ普通会社ノ例ニ従ハサル可カラサルカ如キ模様ナリ、尚追追時季モ切迫シアレハ十一月中旬迄ニハ必ス判明スヘシト答ヘラレタルニ付、御注意ノ為メ之ヲ報道スルナリト述ヘタリ
右畢テ会長ハ閉会ヲ告ケ午後六時一同退散セリ
  ○本篇第一章第一節東京銀行集会所明治二十六年十月十四日及ビ二十三日ノ項(第六巻三三〇頁)参照。