デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

1章 金融
2節 手形
2款 東京手形交換所
■綱文

第7巻 p.324-327(DK070042k) ページ画像

明治24年7月8日(1891年)

是ヨリ先、六日日本銀行総裁川田小一郎、東京交換所組合銀行頭取・支配人等ヲ招キテ、相互ニ信義ヲ厚フシ団結ヲ鞏固ニスルノ必要ナル旨ヲ告ゲタルヲ以テ、是日栄一外十行ノ頭取・支配人等会同シ協議ノ末、川田総裁ノ諭旨ヲ敬承シ益々其団結ヲ完クシ互ニ救援スベキ事ヲ約ス。降テ同年十月十二日、東京交換所組合銀行規約ヲ結ブ。


■資料

日本銀行往復書類(DK070042k-0001)
第7巻 p.324 ページ画像

日本銀行往復書類 (東京手形交換所所蔵)
 (罫外)
  明治廿四年七月六日
拝啓、陳ハ理財上ニ関シ至急御協議申上度義有之候ニ付、交換同盟各銀行頭取・支配人ノ内御繰合セ本日午後一時本行ヘ御足労相煩シ度、此段御照会申上候 敬具
                 日本銀行総裁
                    川田小一郎(印)
  交換同盟会
   委員長 渋沢栄一殿
 追テ本文ハ可成頭取ノ御来臨ヲ希望仕候也


会議録 第一号 従明治廿四年二月至同卅五年十二月(DK070042k-0002)
第7巻 p.324-326 ページ画像

会議録 第一号 従明治廿四年二月至同卅五年十二月 (東京手形交換所所蔵)
明治二十四年七月六日午後一時、日本銀行総裁川田小一郎氏ハ東京交換所組合銀行第一・第三・第十五・第二十・第二十七・第百・第百十九・三井・安田・第十三支店・第三十二支店ノ頭取、支配人等ヲ招集シテ曰、近来頻ニ銀行事業ニ就キ種々ノ風説ヲ流布シテ甚タ穏カナラサルモノアルカ如シ、若シ此儘ニシテ荏苒経過スルトキハ徒ラニ平地ニ風波ヲ起シ、遂ニ金融社会ヲ紊乱スルニ至ランモ図リ難シ、是レ誠ニ憂フヘキ事ナリトス、殊ニ銀行事業ノ如キハ他ノ運輸工業諸会社等ノ事業ト異ニシテ、一方ニ於テハ可成的多額ノ預金ヲ為シテ之ヲ運用シ、彼此相調和シテ金融市場ノ便利ヲ謀ルヘキモノニテ、其間唯一ノ
 - 第7巻 p.325 -ページ画像 
信用ニヨリ機関ノ運転スルモノナレハ、風声鶴唳ト雖トモ其影響スル所極メテ敏ニ且ツ大ナリ、左レハ銀行家タル者ハ常ニ此辺ニ注意シ、変ニ処スルノ備ナカルヘカラス、今ヤ我東京ニハ、幸ヒ各位ノ尽力ニ依リ同盟銀行中有志ノ十一銀行相図リテ手形交換所ヲ組織セラレ、日尚浅シト雖トモ已ニ好結果ヲ奏スルニ至リタルハ実ニ理財上ノ一進歩ト云フテ不可ナカルベシ、故ニ此組合銀行ハ平素互ニ相匡救シテ金融社会ノ便利ヲ謀ル重大ナル地位ニ立テル者ナリ、故ニ今日ノ如ク人心疑懼ノ場合ニ於テハ、尚更互ニ相協力シ、機ニ臨ミ変ニ応シテ緩急相救ヒ、此団体ノ利益ヲ防護スルノ策ヲ講セサルヘカラス、是唯ニ此団体ノ利益ヲ全フスル為メニ必要ナルノミナラス、金融全般ノ便利ヲ進ムルニハ是非トモ此機関ノ基礎ヲ一層鞏固ニスルノ必要アレハナリ、要スルニ各位ニ於テモ此際充分熟議ヲ遂ケ、益相協力シテ万一ノ変ニ処スルノ策ヲ立テ、以テ平素其覚悟ヲ定ムルコト肝要ナルベシ、尤モ日本銀行ニ於テモ此組合銀行ノ団体ニ対シテハ、機ニ臨ミ変ニ応シ力ヲ奮テ充分ノ援助ヲ与フヘシ、斯ノ如ク彼此互ニ相協力シ、緩急相応スルノ途開クレハ、縦令如何ナル事変アルモ決シテ憂フルニ足ラス、トノ趣意ナリシカ、組合銀行重役諸氏モ直ニ賛成ノ意ヲ表シ、且明後八日当集会所ニ於テ会同ノ上、充分協議ヲ遂ケ、其次第ヲ答申スヘキ旨ヲ述ヘ退出セリ

明治二十四年七月八日午後五時ヨリ、定式委員会ヲ開キ、本年上半季当集会所収支決算ヲ閲了シ、並ニ後半季収支予算ヲ調査ノ上、来ル十五日同盟銀行定式会議ヘ提出スヘキ事ニ決シ、次テ去ル六日日本銀行総裁ヨリノ談話ニ基キ、東京交換所組合銀行第一外十行ノ頭取・支配人等ノ諸氏会同シテ種々協議スル所アリシカ、此組合銀行タルモノハ恰モ親族ノ如キ関係アルヲ以テ、彼此相救ヒ緩急相応スルノ徳義ヲ守ルヘキハ曾テ希望スル処ナリシカ、今回日本銀行総裁ヨリノ注意モアレハ此好機ニ拠リ益々団結力ヲ鞏固ニシ、自今此組合十一行堅ク申合セ、相互ニ救援スヘキ事ヲ約セリ、而シテ其趣ハ明九日組合銀行総代トシテ第一国立銀行頭取渋沢栄一・第十五国立銀行支配人山本直成ノ両氏ヨリ川田総裁ヘ答申スヘキ事ニ決シ、午後八時退散セリ
      当日出席員
         第一銀行頭取     渋沢栄一
         三井銀行副長     西邑乕四郎
         安田銀行監事     安田善次郎
         第三十二銀行取締役  山中隣之助
         第三銀行頭取     安田善四郎
         第二十七銀行頭取   渡辺治右衛門
         第百銀行頭取     高田小次郎
         第十五銀行支配人   山本直成
         第二十銀行支配人   佐々木慎思郎
         第百十九銀行支配人  三村君平
         第十三銀行支店支配人 蘆田順三郎
          以上十一名
 - 第7巻 p.326 -ページ画像 
   ○本文ト同趣旨ノ記事銀行通信録(明治二四年七月二八日、第六八号・第二九―三一頁)ニ掲載。


交換所委員廻議 第一号 自明治廿四年至同廿八年(DK070042k-0003)
第7巻 p.326 ページ画像

交換所委員廻議 第一号 自明治廿四年至同廿八年 (東京手形交換所所蔵)
明治二十四年十月十三日         交換所監事(印)
 委員長(印)
 委員(印)(印)
  昨十二日東京交換所組合銀行協議ニ依リ日本銀行総裁ヘ照会案
一翰啓上仕候、秋冷相増候処益御清暢可被為渉奉大賀候、陳者本年七月六日東京交換所組合銀行ヘ御懇話被下候組合中一致協力之議ハ、御示諭ニ従ヒ其際一同集会いたし堅ク申合居候処、右ハ自今永久ニ渉リ候事柄ニ付、規約書ヲ作リ之ニ調印致置候方可然トノ事ニ相成、去ル十二日組合銀行打寛協議之上、別紙之通規約取結ひ、各記名調印致候右者畢竟御懇諭ニ起因仕候義ニ付、御参考迄ニ規約書写壱本差出申候間、宜敷御聞置可被下、此段敬具仕候也
                東京交換所
  年 月 日          委員長 渋沢栄一
    日本銀行総裁 川田小一郎殿


東京交換所組合銀行規約(DK070042k-0004)
第7巻 p.326-327 ページ画像

東京交換所組合銀行規約      (東京手形交換所所蔵)
我組合銀行ハ緩急相救フノ徳義ヲ固守シ交誼ヲ重スヘシ、其規約ヲ設クル事左ノ如シ
   第一条
組合銀行中甲銀行カ一時ノ浮説等ニヨリ急遽ニ多額ノ金員ヲ要スル場合ニ於テ、乙丙其他ノ銀行ハ甲銀行ノ請求有ルトキハ、各行内規ノ許ス限リ之カ救護ヲ為ス事ヲ怠ラサル可シ
   第二条
組合銀行ハ互ニ他銀行ノ不良事件ヲ知リタルトキハ、之ヲ外ニ向ツテ公言セス、必ス先ツ該銀行ニ忠告シテ之ヲ改正セシムル事ヲ務ムヘシ
   第三条
前条ノ事件ニシテ事稍重大ナリト思考スルトキハ、組合銀行中ノ数銀行ト協議ノ上、該銀行ニ忠告スルモ妨無シ
   第四条
前三ケ条ニ係ル一切ノ談話ハ極メテ秘密ヲ旨トシ、各組合銀行重役ノ外ニ漏泄ス可カラス
   第五条
組合銀行中若シ此ノ規約ニ違ヒタルトキ、又ハ第二条・第三条ノ忠告ヲ容レサル者アルトキハ、組合一同ノ決議ヲ以テ組合ヲ除名スヘシ
右規約取結ヲ証セン為メ各自署名捺印スル者也
  明治二十四年十月十二日
                 第一国立銀行
                 第三国立銀行
                 第十五国立銀行
                 第二十国立銀行
 - 第7巻 p.327 -ページ画像 
                 第二十七国立銀行
                 第百国立銀行
                 第百十九国立銀行
                 三井銀行
                 安田銀行
                 第十三国立銀行東京支店
                 第三十二国立銀行東京支店