デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

1章 金融
4節 保険
1款 東京海上保険株式会社
■綱文

第7巻 p.654-656(DK070081k) ページ画像

明治30年7月30日(1897年)

是日株主総会ニ於テ栄一議長ト為リ議事ヲ処理ス。会社資本金百二十万円ヲ三百万円ニ増加スルニ決ス。


■資料

(東京海上保険株式会社)総会議事録 一(DK070081k-0001)
第7巻 p.654-656 ページ画像

(東京海上保険株式会社)総会議事録 一
  東京海上保険株式会社通常総会臨時総会議事速記録
    七月三十日午前十一時開議
○会長(渋沢栄一君) 皆様御苦労様……同僚中荘田平五郎氏ガ互選ニ依テ会長ニ相成ツテ居リマスガ、旅行中デゴザイマスノデ我ガ今日ノ会長席ヲ汚シマス、御通知申上ケテゴザイマス通リノ各項ノ議決ハ総会ニ於テ御願シタイノデゴザイマス、即チ当半期決算ノ御承認取締役末延氏監査役水原氏ノ辞任ヲ承認シテ其補欠選挙ヲ行フコトソレカラ取締役ノ報酬ヲ定ムルコト、続イテ定款変更ノ件、是ハ別紙議案ヲ差上ケテゴザイマスノデ斯様ナ廉々ニ就テ御議決ヲ請ヒマスノデ、其前ニ一応此会社ノ営業ノ景況現在ノ模様ヲ申上ケ置キマスヤウニ仕リマス、即チ此第三十六季ノ事業報告及第三十五季ノ決算ノ報告ヲ皆様ニ御報道スルニ当ツテ営業ノ景況ヲ述ヘテ此会社ノ前途ヲ予想スルノ資ニ供スルヤウニ致シタイト考ヘマス、此会社ハ数年以前ニ在テハ大ニ営業ガ盛ンデアツタト云フ有様デ、利益ノ配当モ相当ニアツタノデゴザイマシタケレドモ、明治二十八年以来海外ノ営業ニ引続イテ損害ヲ生シマシテ、第三十二季ノ決算ヨリ毎季会社ガ積立テヽアル金額ヲ以テ其季ニ生シタ損失ヲ支払ヒ、三十年一月ノ総会ニ於ケル第三十四季ノ決算ト云フモノハ金八万二千七百円ノ損金トナツテ、其外ニ三十五季ノ未決算営業勘定ガ十八万八千円以上ノ損失トナル計算ガ見ヘテ居ツテ尚ホ其上ニモ損ガ来リハセヌカ、其損ハ随分多クアリハセヌカト恐レル程ノ有様デアツタ、故ニ此三十五季ノ決算ヲ今日御報道スルトキニハ積立金ヲ竭シテ仕舞ツテ資本金ニ切込ムト云フヤウナ不幸ヲ生シハセヌカト心配致シマシタ、故ニ此会社ノ払込資本ヲ三十万円丈ケ切捨テサウシテ此会社ノ計算ヲ整理スル外ナカラウト云フ想像ヲ起シマシテ、其事ハ皆様ニモ寄々御相談ヲ致スト云フ程ノ不幸デゴザイマシタ、定メテ其時御相談申上タ諸君ハ御記憶ニ相成居ルコトヽ思ヒマス、然ルニ今日ノ其決算ハ矢張リ予期シタ通リ二十一万三千三百余円ノ損失ニナリマシタガ、幸ニ三十六季即チ此一月一日カラ今日マデノ資本収益ト前ニ申シタ所ノ積立金ヲ以テ今ノ損失ヲ補塡シマシタ為メニ、資本金ニ切込ムト云フコトナシニ仮令少々ナカラモイクラカ差引残ルト云フ計算ニ相成リマシタ、○中略之ヲ要スルニ当会社ハ累年巨額ノ損
 - 第7巻 p.655 -ページ画像 
失ヲ生シマシテ、即チ決算季四度ノ間ニ毎期ノ資本収益ト準備繰越金二十一万余円及ヒ積立金ノ三十万円ヲ失ヒマシタカラ、其総計ハ大約金六十余万円ト申シテ宜イ、去リナカラ其六十余万円ノ中三十一万百六十三円八十七銭ト云フモノハ、丁度外国カラ保険料ヲ受取ツテ、ソレヲ日本ノ貨幣ニ直シテ収入ニ立テマシタノヲ後ニ又外国ノ貨幣ニ引直シテ支払フト云フ為メニ、金銀比価ノ損失ガ三十一万百六十三円八十七銭ニナツテ居ル、若シ斯様ナ為換相場ノ損失ガナカツタラバ幾何ノ損デアツタカト云フト、詰マリ三十万円ニ上ラナイ所ノ営業上ノ損デアツタト云フコトハ玆ニ算盤ニ現ルヽノデアリマス、即チ今申シマス三十一万円イクラト云フ為換相場カラ生シタ損ヲ引キマスト営業上ノ実際ノ損失ハ三十万円以内デアツタト申上ケラレルノデス、サウシテ今申ス種々ナル損失―巨額ノ金ハ差支ナク支払ヲシマシタ為メニ、外国ニ於テ会社ノ信用ハ毫モ毀損スルコトナク、先ツ立派ニ保全シ得ラレテ居ツテ、外国ノ保険ヲ頼ム被保人ニハ充分ナ満足ヲ与ヘテ今日幸ニ資本金ヲ傷ケルニ至ラナカツタノハ、亦固ヨリ不幸デゴザイマス、利益配当モ出来ヌノデスカラ決シテ会社ハ仕合ナ位地ニアルト申上ケルコトハ出来マセヌ、如何ニモ不幸デゴザイマシタガ、マダシモ併シ之ガ不幸中ノ仕合ト申シテ宜カラウト思フノデゴザイマス
 景況ハ右ノ通リデゴザイマスガ、将来当会社ノ営業ノ鞏固ヲ図ル日ニハ決シテ之ヲ以テ安ンジテ居ラレマイト考ヘル、何故ナレバ現ニ積立金ハナクナツテ仕舞ヒ、資本ハスレスレト云フ有様デ海外ニ向ツテ是丈ノ資本ニ依テヤラウト思フト、海外ノ保険事業ニ較ヘルト殆ド九牛ノ一毛ト申ス如キ程ノ資本額デ、斯様ナ金デ此事業ヲ益々拡張シテ行クト云フコトハ甚タ力足ラヌ訳デゴザイマス、依テ玆ニ会社資本金増加ノ一案ヲ提出シテ是非諸君ノ御賛助ヲ請ヒタイト考ヘマス次第デゴザイマス
 以上ノ実況ヲ一応玆ニ申述ヘマシテサウシテ当季ノ計算ヲ御報道致スヤウニ仕リマス○第三十六季報告略
 右ノ通ノ仕合テゴザイマスカラ、十八万円ヲ繰入レテヤツト当半季ノ計算ガ出合ハウト云フコトデ誠ニ毎季面目次第モゴザイマセヌガ当季モ株主諸君ニ対スル配当金ト云フモノモゴザイマセヌノデ決算ノ実況ハ右申上ケマス通リデゴザイマス、ドウゾ御承認ヲ請フ外仕方アリマセヌ、私モ顔ヲ赤クシテ申上ケルノデアリマス、ドウゾ宜シク御諒察ヲ願ヒマス
○池内久親君 段々ノ御配慮デ追々都合好クナリマスノデ誠ニ満足デアリマス、計算上ニ就テハ私ハ異議ハアリマセヌ
○会長(渋沢栄一君)御質問等ガゴザイマスレバ細カイ計算ハ取扱ヒマスモノヽ方カラ御答シマス――別ニ御異議ガゴザイマセネバ此計算表ハ総会ニ於テ御承認ニ相成ツタモノト致シマス
             (異議ゴザイマセヌト呼フ者アリ)
    (暫時休憩)
○会長(渋沢栄一君)ソレデハ臨時総会ニ移リマス、是ハ大分箇条ガゴザイマスノデ逐条ノ朗読致シテ、順ヲ逐フテ各条ニ議決ヲ進ンデ
 - 第7巻 p.656 -ページ画像 
行キタイト思ヒマス
   ○逐条審議ノ議事略ス。
○会長(渋沢栄一君)是デ通常総会臨時総会トモ議シ了リマシタ、増株ニ関スル御通知ハ早速日ヲ定メテ申上ルヤウニ仕リマス、書式ヲ認メテ差上ケマス、ドウゾ是非御引受下サルコトヲ請ヒマス、議決デハドウニデモナルノデゴザイマスケレドモ、今日ノ場合ニハ皆様ガ御引受ガアリマセズ他ニ処分スル――公売ニスルト云フコトハ甚タ面白カラヌト考ヘマス、後トヲ引受ケルト云フ高ハ至ツテ僅カデス、故ニ諸君ドウカ此御持株ニ相応スル丈――此事ヲ一応申上ゲテ置キマス、誠ニ御待タセ申上マシタ是レデ相済ミマシタ
  午後一時散会


東京海上保険株式会社報告 第三七季明治三一年二月(DK070081k-0002)
第7巻 p.656 ページ画像

東京海上保険株式会社報告 第三七季明治三一年二月
  明治三十年七月一日ヨリ十二月三十一日ニ至ル
    事業報告
   株主総会ノ事
一七月三十日当会社ニ於テ通常総会ヲ開キ、明治三十年一月一日ヨリ六月三十日ニ至ル事業ノ成績及諸計算ヲ報告シ其承認ヲ得、次ニ取締役役監査各一名ノ補欠撰挙ヲ行ヒ取締役ニ末延道成、監督役《(査)》ニ水原久雄当選セリ
 又同日引続キ臨時総会ヲ開キ、当会社資本金ヲ三百万円ニ増加シ、株式総数ヲ六万株壱株払込金ヲ十二円五十銭ニ改定スルコト及定款変更ノ件ヲ決議セリ
   新株払込ノ事
一当会社新株壱万弐千株ハ十二月二十日ヲ以テ悉皆其払込ヲ結了セリ
   ○明治三〇年一月二九日ノ項参照。