デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

1章 金融
4節 保険
2款 明治火災保険株式会社
■綱文

第7巻 p.674-683(DK070085k) ページ画像

明治24年1月6日(1891年)

是ヨリ先、火災保険会ノ組織ヲ改メテ株式会社ニナサントスルノ議アリ、是日発起人ヨリ明治火災保険株式会社目論見書及ヒ会社定款ヲ添テ会社設立願書ヲ東京府知事ニ提出ス。栄一発起人ノ一人
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タリ。設立後栄一株主トナル。


■資料

明治火災保険株式会社定款(DK070085k-0001)
第7巻 p.675-682 ページ画像

明治火災保険株式会社定款(明治火災保険株式会社所蔵)
    明治火災保険株式会社設立願
私共儀、今般別紙目論見書並ニ定款ニ依リ、資本金六十万円ヲ以テ東京市日本橋区坂本町四拾参番地ニ於テ明治火災保険株式会社ヲ設立シ火災保険ノ営業仕度候ニ付、御許可相成度、此段奉願候也
  明治二十四年一月六日
        発起人
            東京市麻布区飯倉町三丁目拾五番地
               東京府士族 阿部泰蔵
            東京市下谷金杉村四百拾弐番地
               東京府平民 益田克徳
            東京市深川区福住町四番地
               東京府平民 渋沢栄一
            東京市麹町飯田町三丁目十三番地
               鹿児島県士族 奈良原繁
            東京府下荏原郡北品川町三百十二番地
               平民 益田孝
            東京市芝区松本町四十四番地
               東京府士族 高田小次郎
            東京市神田区駿河台東紅梅町十三番地
               東京府士族 内田耕作
            東京市芝区芝公園百五番地
               高知県平民 末延道成
            東京市本所横網町二丁目十八番地
               和歌山県平民 吉川泰二郎
            東京市小石川区原町百廿五番地
               徳島県平民 近藤廉平
            東京市芝区桜川町十三番地
               東京府士族 浅田正文
            東京市小石川区金富町四拾弐番地
               三重県平民 田中直次郎
            東京市京橋区日吉町廿一番地
               東京府士族 増島六一郎
            東京牛込区新小川町二丁目十番地
               高知県士族 川田小一郎
            芝区白金村四百八十二番地
               東京府平民 与倉守人
            深川区西大工町十八番地
               平民 三野村利助
            日本橋区小網町四丁目八番地
               平民 安田善次郎
            京橋区銀座四丁目一番地
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               平民 森村市太郎
            東京府北豊島郡南千住町元地方橋場町千三百八十番地
               高知県士族 小野義真
            東京神田三崎町弐丁目九番地
               大分県士族 荘田平五郎
            東京本郷区竜岡町六番地
               東京府平民 豊川良平
            東京京橋区築地壱丁目十六番地
               岩手県士族 二橋元長
    東京府知事 侯爵 蜂須賀茂韶殿
右出願ニ付奥印候也
              東京市日本橋区長 伊藤正信
(別紙)
    明治火災保険株式会社目論見書
第一 会社ハ株式会社ナリ
第二 会社ノ目的ハ住宅、倉庫其他ノ建物、商品、家具ノ火災保険及ヒ一般火災保険ノ業ヲ営ムニ在リ
第三 会社ハ明治火災保険株式会社ト号シ本店ヲ東京ニ置ク
第四 会社株金ノ総額ハ金六拾万円ニシテ之ヲ三千株ニ分チ一株二百円トス
第五 会社株金ノ内凡壱万円ハ創業費ニ充テ其余ハ火災損害賠償ノ準備金トス
右ノ旨趣ニ従テ会社ヲ設立スル為メ発起人一同左ニ署名捺印ス
  ○署名捺印略ス。
(別紙)
  明治火災保険株式会社定款
    第一章 総則
第一条 此定款中ニ用ヒタル字義ハ左ノ如ク解釈ス可シ
 会社トハ明治火災保険株式会社ヲ謂フ
 株主トハ明治火災保険株式会社ノ株主名簿ニ現ニ株主トシテ其姓名ヲ記載セル者ヲ謂フ
 総会トハ会社株主ノ総会ヲ謂フ
 通常総会トハ会社株主ノ通常総会及ヒ其延期会ヲ謂フ
 臨時総会トハ会社株主ノ臨時総会及ヒ其延期会ヲ謂フ
第二条 会社ハ明治火災保険株式会社ト号ス
第三条 会社ノ本店ハ東京ニ設置ス
第四条 会社ノ目的ハ住宅、倉庫其他ノ建物、商品、家具ノ火災保険及ヒ一般火災保険ノ業ヲ営ムニ在リ
    第二章 株金及ヒ責任ノ事
第五条 会社ノ株金ハ六拾万円ニシテ、之ヲ参千株ニ分チ、一株ヲ弐百円トシ、其責任ハ株金限リトス
    第三章 株式ノ事
第六条 株主タラント欲スル者自身ニ若クハ代人ヲ以テ株式申込書ニ記名捺印シ、一株ニ付金五円ノ証拠金ヲ添ヘテ之ヲ会社ニ差出シ、
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其申込ミタル株数ノ全部若クハ一部ノ配付ヲ受クルトキハ、此定款ニ従ヒ株主タルコトヲ約諾シタルモノトス
第七条 会社ノ株主タル者ハ一株毎ニ株券一通ヲ無料ニテ受領スルノ権利アリ
第八条 右ノ株券磨耗スルカ或ハ紛失スルノ故ヲ以テ新株券ノ交付ヲ申出ツルトキハ会社ハ其事実ノ証明ヲ得タル後、書換料金五拾銭ヲ受取リ新株券ヲ交付ス可シ、但シ株券紛失ノ場合ニハ会社ハ三日以上其旨ヲ新聞紙ニ公告シ、書換料ノ外ニ新聞公告料ヲ受取ル可シ
第九条 株主其住所若クハ姓名ヲ変更シ又ハ婦人ニシテ婚姻スルトキハ必ス会社ニ届出ヘシ、此届出ニ依リテ株主名簿ニ其旨ヲ記載シタル後ニ非サレハ利益配当ヲ受ケ又ハ総会ニ於テ投票スルヲ得ス
    第四章 株金払込ノ事
第十条 株主ハ会社設立ノ時ヨリ三十日以内ニ第一回払込金トシテ一株ニ付証拠金ト合セテ五十円ヲ払込ム可シ、若シ此払込ヲ為ササレハ証拠金ハ会社ニ没収ス可シ
第十一条 第一回払込金ノ外払込金ヲ要スル場合ニハ取締役会議ノ決議ヲ以テ必要ノ金額ヲ定メ、少ナクトモ十四日以前各株主ニ通知シテ払込ヲ為サシムルコトヲ得可シ
第十二条 会社ハ前条ノ通知ヲ発シ且二箇以上ノ新聞紙ニテ少ナクトモ三日間其旨ヲ公告ス可シ、株主ハ通知ヲ受ケス又ハ公告ヲ見サルヲ理由トシテ払込ヲ拒ムヲ得ス
第十三条 株主払込ノ期日マテニ払込ヲ為ササレハ、年百分ノ七ノ遅延利息ト之ト同額ノ違約金ヲ払フヘキモノトス
    第五章 株式売渡及ヒ譲渡ノ事
第十四条 会社ハ株主名簿ヲ備ヘ置キ、株式ノ売渡及ヒ譲渡ヲ一々明瞭ニ登記ス可シ
第十五条 株式ヲ売渡シ若クハ譲渡サント欲スル者ハ、会社ニ於テ定ムル所ノ書式ニ依リ買受人若クハ譲受人並ニ証人ト連署シタル書面ヲ会社ニ差出ス可シ、会社ハ相当ノ手続ヲ為シタル上株券ノ裏面ニ取締役、支配人記名捺印シ、且社印ヲ以テ株券ト株主名簿ニ割印シ会社ニ於テ定ムル所ノ手数料ヲ受取リ、株券ハ買受人若クハ譲受人ニ交付ス可シ
第十六条 株式ノ売渡及ヒ譲渡ノ登記ハ通常総会ノ前二十一日間之ヲ停止ス
第十七条 株式ノ売渡及ヒ譲渡人一己ニテ若クハ他人ト連帯シテ会社ニ負債アレハ、会社ハ其負債ノ何タルヲ問ハス、其株式ノ売渡及ヒ譲渡ノ登記ヲ拒ムノ権利アリ
第十八条 会社ハ必要ト認ムルトキハ株式ノ売渡及ヒ譲渡ノ登記ヲ拒ムコトヲ得
第十九条 株主死去スレハ其相続人、遺言執行者若クハ遺産管理人ヲ以テ株式ノ所有者ト認ム
第二十条 株主ノ死去、破産、婚姻ニ因リ又ハ其他ニ法律ノ作用ニ因リ其株式ノ所有権ヲ得ル者、其事実ヲ証明スレハ株主トシテ之ヲ登記ス可シ
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第二十一条 売渡譲渡若クハ其他ノ方法ヲ以テ株式ヲ取得シタル者ハ売買登記ノ了リタル時ヨリ従前ノ株主ト同一ノ権利ヲ有シ義務ヲ負フ可シ
    第六章 株金払込遅延ノ事
第二十二条 株主払込ノ期日マテニ株金ヲ払込サレハ、会社ハ更ニ其株主ニ株金ト遅延利息及ヒ違約金ヲ払込ムヘキ催告ヲ為ス可シ
第二十三条 前条ノ催告ニハ催告ノ日附ヨリ十四日ヨリ少ナカラサル期日ヲ指定シ、指定シタル期日マテニ払込ヲ為ササレハ株式ハ会社ノ所有ニ帰スヘキ旨ヲ明示ス可シ
第二十四条 右ノ催告ヲ為スモ株主猶払込ヲ為ササレハ其株式ヲ会社ノ所有トナシ之レヲ公売ニ付ス可シ、若シ売得代金其時マテニ払込ムヘキ金額ニ満タザレハ、不足金ト其時マテノ遅延利息及ヒ違約金ハ所有権ヲ失ヒタル先株主ヨリ取立ツルヲ得
    第七章 株主総会ノ事
第二十五条 毎年五月中ニ取締役ノ定ムル日時、場処ニ於テ株主総会ヲ開ク可シ之ヲ通常総会ト称ス
第二十六条 通常総会ノ通知ハ開会ノ日ヨリ少ナクトモ十四日以前ニ之ヲ発ス可シ
第二十七条 通常総会ニ於テハ総株金ノ少ナクトモ五分一ヲ有スル株主(代理ヲ委任シタル株主ノ株金共)出席セサレハ何事モ決議スルヲ得ス
第二十八条 取締役ハ取締会ノ決議ニ依リ緊要ト思考スル事件ヲ議スル為メ何時ニテモ臨時総会ヲ召集スルノ権アリ
第二十九条 取締役ハ何時ニテモ総株金ノ五分一以上ヲ有スル株主ノ請求ニ応シ臨時総会ヲ召集ス可シ
第三十条 株主ヨリ臨時総会ノ召集ヲ請求スルトキハ総会ヲ召集スル目的ヲ明記シテ会社ニ差出ス可シ
第三十一条 取締役カ株主ヨリ臨時総会召集ノ請求ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ召集ノ手続ヲ為ササレハ、株主ハ自カラ之ヲ召集スルコトヲ得
第三十二条 臨時総会ハ総株金ノ半額ヲ有スル株主ノ出席ヲ要ス
第三十三条 臨時総会ニ於テ出席株主前条ニ掲ケタル定数ニ満タサレハ仮ニ決議ヲ為シ、再ヒ総会ヲ召集ス可シ、其通知ニハ第一総会ノ決議ヲ明記シ、且第二ノ総会ニ於テ出席株主ノ多数ヲ以テ第一総会ノ議決ヲ認可シタルトキハ之レヲ有効ト為スヘキ旨ヲ明告ス可シ
第三十四条 臨時総会ハ会日ヨリ少ナクトモ二十一日前ニ召集ノ通知書ヲ発シ、之ニ総会ノ日時、場所及ヒ目的ヲ明記ス可シ
第三十五条 総会ノ議長ハ取締役会長之ニ任ス可シ、若シ取締役会長出席セサレハ取締役ノ一名代テ議長トナル可シ、若シ又取締役一名モ出席セサレハ株主中ノ一名ヲ推シテ議長ト為ス可シ
第三十六条 議長ハ会議ヲ延期シ会場ヲ転スルヲ得、但延期会ニ於テハ最初ノ総会ニ於テ議了セサリシ事件ノ外他ノ事件ヲ議スルヲ得ス
第三十七条 株主自ラ召集シタル臨時総会ニ於テハ、開会ノ時刻ヨリ一時間ヲ過ルモ定数ノ株主出席セサレハ総会ヲ解散シ、其議案ヲ廃
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案ト為ス可シ
第三十八条 総会ノ議事ハ多数説ニ依テ決ス、若シ数説同数ナレハ議長ハ自説ノ外ニ決票ヲ為スヲ得
第三十九条 総会ニ於テ可否ノ数ヲ知ルニハ起立、挙手、発声等ノ方法ヲ用フルヲ得レトモ、出席株主二名以上投票ノ方法ヲ用ヒント欲スレハ議長ハ之ニ従フ可シ
第四十条 総会ニ於ケル議事ノ要領ハ総会議事録ニ記録シ、議長之ニ検印シテ会社ニ保存ス可シ、若シ議長事故アリテ検印スルコト能ハサレハ取締役代テ検印ス可シ
第四十一条 監査役ハ法律ニ依リ臨時総会ヲ召集スルノ権アリ
    第八章 株主投票ノ事
第四十二条 株主ハ総会ニ於テ其所有株数十株マテハ毎一株ニ一個宛ノ投票ヲナシ十一株以上ハ毎五株ニ一票ヲ増加ス可シ、起立、発声等ノ数ヲ算スルモ亦之ニ準ス
第四十三条 若シ株主未丁年ナルカ若クハ瘋癲白痴ナレハ後見人又ハ其他ノ正当ナル代理人之ニ代テ投票スルヲ得
第四十四条 株金払込ノ期日ヲ過ルモ未タ払込ヲ為ササル株主ハ総会ニ於テ投票スルヲ得ス
第四十五条 株主自カラ総会ニ出席スルコト能ハサルトキハ、会社ニ於テ定ムル所ノ書式ニ依テ委任状ヲ作リ、株主中ノ一人ヲシテ代理セシムルヲ得
    第九章 取締役及ヒ監査役ノ事
第四十六条 会社ハ三十株以上ヲ所有スル株主中ヨリ四名ヨリ少ナカラス八名ヨリ多カラサル取締役ト、三名ノ監査役ヲ選挙ス可シ
第四十七条 毎年五月ノ通常総会ニ於テ取締役ノ半数ヲ改選ス可シ、但シ初度ノ改選ニハ抽籤ヲ以テ退任者ヲ定ム可シ
第四十八条 監査役ハ毎年五月ノ通常総会ニ於テ其全数ヲ改選ス可シ
第四十九条 取締役及ヒ監査役ハ再選セラルルヲ得
第五十条 取締役又ハ監査役中不時ニ欠員ヲ生スルトキハ、取締役ハ取締役ニ於テ監査役ハ監査役ニ於テ仮リニ相当ノ人ヲ選挙シ、次回ノ総会ニ於テ其認許ヲ受ク可シ、但其認許ヲ得タル者ト雖モ先任者ノ在職期限ヲ越テ其職ヲ保ツコトヲ得ス
第五十一条 左ニ掲クル所ノ者ハ取締役又ハ監査役ノ職ヲ保ツヲ得ス
 一 所有株式三十株ヨリ減スル者
 二 破産スル者
 三 瘋癲若クハ其他ノ事故ニ因リ職務ヲ行ヒ難キ者
第五十二条 取締役及ヒ監査役ハ其所有ノ株式三十株ヲ会社ニ預ケ、在職中ハ之ヲ引出スコトヲ得ス
第五十三条 取締役ハ会社ノ事務ヲ総理シ役員ノ任免黜陟ヲ掌ル可シ
第五十四条 取締役ハ法律若クハ定款ニ明示スル権力ヲ有スルノ外、総会ノ決議ヲ要セサル一切ノ業務ヲ施行スルノ権力ヲ有ス、然レトモ法律、命令、定款及ヒ総会ノ決議ヲ遵守スルヲ要ス
第五十五条 左ノ件々ハ株主ノ許可ヲ待タス取締役ニ於テ適宜処分スルヲ得
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 一 会社ノ株金、準備積立金及保険料ヲ確実ノ方法ヲ以テ運転使用スル事
 二 会社ニ関スル争訟ニ於テ其原告若クハ被告トナリ、又ハ之ヲ仲裁ニ附シ、又ハ之ヲ棄却シ、又ハ之ヲ願下クル事
 三 各地ニ支店ヲ設ケ、代弁店ヲ置キ、役員ヲ派出シ、又ハ評価人ヲ傭入ル事
第五十六条 取締役ハ帳簿ヲ備ヘ計算ヲ明ニシ及ヒ社印ヲ管守ス可シ
第五十七条 取締役ノ其職務ヲ行フヨリ生シタル損失ハ故意ニ出タルニ非レハ取締役自己ニ其責任ヲ負ハス
第五十八条 監査役ハ取締役ノ業務施行カ法律、命令、定款及ヒ総会ノ決議ニ適合スルヤ否ヤヲ監視ス可シ
第五十九条 監査役ハ計算書、財産目録、貸借対照表、事業報告書、利息又ハ配当金ノ分配案ヲ検査ス可シ
第六十条 取締役及ヒ監査役ニハ総会ノ決議ヲ以テ報酬ヲ交付ス可シ
第六十一条 取締役ハ同僚中ノ一名ヲ選ヒテ会長ト為ス可シ
第六十二条 会長ハ取締役会議ノ議長トナリ、自己ニ投票権ヲ有スルノ外、両説相半スルトキハ其可否ヲ決スルヲ得
第六十三条 取締役ハ緊要ナル地方ニ於テ株主若クハ重ナル被保人ノ中ヨリ相談委員ヲ置クコトヲ得
    第十章 会社業務ノ事
第六十四条 会社ハ日曜日、大祭日、祝日、其他一般ノ休日ヲ除キ、毎日午前第九時ヨリ午後第四時迄業務ノ取扱ヲ為ス可シ
第六十五条 一箇ノ建物若クハ一箇ノ建物中ニ貯蔵スル物品等ノ被保険金額ハ、株金及ヒ準備積立金ノ十二分一ヲ限リトシ、若シ此額ニ超過スレハ会社ハ其超過ノ部分ヲ他ノ火災保険会社ニ再保険ヲ為ス可シ
第六十六条 損害賠償金ハ左ノ順序ニ依リ其ノ支払ヲ負担スルモノトス
 第一 損害ノ起リタル会計年度ニ属スル保険料
 第二 準備積立金
 第三 諸利子
 第四 株金
    第十一章 積立金及ヒ配当金ノ事
第六十七条 保険料ノ内ヨリ損害賠償金及ヒ営業費用ヲ支払ヒタル残金ヲ純益トス
第六十八条 純益ノ十分ノ六ヲ準備積立金トス
第六十九条 純益ノ十分ノ四ヲ被保人ヘ割戻金トス
第七十条 株金、準備積立金及ヒ保険料ヨリ生スル利子ハ之ヲ株主ニ配当ス可シ
    第十二章 計算ノ事
第七十一条 会社ハ四月一日ヨリ三月三十一日マテヲ会計年度ト定メ毎年度ノ末ニ決算ヲ為ス可シ
第七十二条 通常総会ヘ計算書、財産目録、貸借対照表、事業報告書及ヒ配当金ノ分配案ヲ提出シ、其認定ヲ受ク可シ
 - 第7巻 p.681 -ページ画像 
    第十三章 報告ノ事
第七十三条 会社ヨリ株主ヘ報告セントスルトキハ、其ノ報告書ヲ本人ヘ直達スルモ回状若クハ郵便ヲ以テ本人ノ宿所ヘ送達スルモ、総テ会社ノ便宜ニ任ス可シ
第七十四条 法律ノ作用又ハ売渡若クハ譲渡ニ由テ株式所有ノ権ヲ得ル者ハ、会社ヨリ先株主ヘ達シタル報告書及其他ノ書類ヲ悉皆引受ケ、以テ其責ニ任ス可シ
第七十五条 会社ヨリ発スル所ノ報告、通知及ヒ其他営業上ノ事ヲ記載シタル諸文書類ハ、或ハ筆記シ或ハ印刷シ或ハ一部ヲ筆記シテ一部ヲ印刷スルトモ、総テ会社ノ便宜ニ任ス可シ
    第十四章 任意解散ノ事
第七十六条 会社ハ臨時総会ノ決議ニ依リ任意解散スルコトヲ得可シ
第七十七条 任意解散ハ決議ノ日ヲ以テ其初日トス可シ
第七十八条 会社ハ任意解散ノ初日ヨリ、解散ニ付テ必要ノ事務ヲ取扱フノ外、一切ノ業務ヲ停止シ、株式売渡及譲渡ノ登記ヲ拒ムヘシ
第七十九条 任意解散ヲ為ス時ハ其次第ヲ二種以上ノ新聞紙ニ公告ス可シ
第八十条 会社ハ任意解散ノ決議ヲ為ストキハ直チニ臨時総会ヲ開キ株主或ハ役員中ヨリ二名以上ノ適当ナル人ヲ選挙シ、之ヲ清算人ニ任シ、且其給料ヲ定ム可シ
第八十一条 清算人選任ノ手数相済ムトキハ取締役及ヒ監査役ノ職務ヲ解ク可シ
第八十二条 清算人ハ会社ノ所有財産ヲ収集シ之ヲ以テ解散費用ヲ払ヒ、而シテ各種ノ負債ヲ弁償シ、其残余ノ金額ヲ株主ノ株高ニ応シテ配当ス可シ
第八十三条 解散ノ手数中清算人ハ便宜ニ従ヒ総会ノ召集ヲナスコトヲ得可シ
第八十四条 会社解散ノ事務落着スルトキハ清算人ハ直チニ其事務ノ顛末ヲ記載シタル報告書ヲ製シ、総会ノ召集ヲナシテ其検閲ヲ受ク可シ
    第十五章 仲裁ノ事
第八十五条 定款ノ趣意若クハ其文面ノ意味又ハ定款ニ遵テ履行スル所ノ事件ニ付キ、会社ト株主或ハ其代理人若クハ破産管財人或ハ其後見人トノ間ニ意見ヲ異ニシ紛議ヲ生スルトキハ、之ヲ仲裁ニ附スヘシ
第八十六条 右ノ如ク仲裁ヲ仰クニ付キ双方ノ間ニ別段ノ約定アルニ非サレハ、一名ノ仲裁人ヲ会社ニテ選挙シ、一名ヲ相手ノ株主ニ於テ選挙シ、合セテ二名ノ仲裁人ニ其裁断ヲ托ス可シ、仲裁人ハ予メ一名ノ審判人ヲ定メ置キ、仲裁人ノ意見一致セサルトキハ審判人ノ判定ニ委ヌ可シ
第八十七条 相手方双方ノ内一方ノ相手ヨリ他ノ一方ヘ書面ヲ以テ仲裁人ヲ選挙スヘキ旨ヲ懸合ニ及ヒタル後、十日ヲ過キテ尚ホ右書面ヲ受取リタル一方右選挙ヲ為ササルトキハ、其之ヲ懸合ヒタル一方ニ於テ双方ノ仲裁人ヲ選挙シ、其裁断ヲ受クルコトヲ得可シ
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第八十八条 仲裁人ハ仲裁ヲ委托シタル双方ノ相手及ヒ其証人ヲ推問スルノ権アル可シ
第八十九条 仲裁人ハ紛議ノ事件ニ付裁断ヲ為スヘキ旨ヲ双方ノ相手ヘ通知シ、双方共不在ナルモ或ハ一方ノ者不在ナルモ、之ヲ裁断スルノ権アル可シ
第九十条 仲裁人ハ紛議ノ事件ヲ委托セラレテヨリ三十日内ニ裁断シテ之ヲ書面ニ認メ、記名調印シテ双方ノ相手ニ渡ス可シ、而シテ双方ノ相手ハ此裁断ニ異議セス都テ履行ス可シ
第九十一条 仲裁ノ為メニ支消シタル諸費用ハ都テ仲裁人ノ指図ニ従テ之ヲ払フ可シ
    第十六章 定款変更
第九十二条 此定款ハ臨時総会ニ於テ株主過半ノ説ニ依リ之ヲ変更スルヲ得
 但此定款ヲ変更スルトキハ管轄庁ノ承認ヲ経タル上実施ス可シ
   ○右定款ハ明治二三年一二月二二日ノ築地精養軒ニ於ケル設立相談会ニ於テ逐条審議ノ上確定セラレタル最初ノ定款ナリ。


明治火災保険株式会社第一回年報 会社創立記事(DK070085k-0002)
第7巻 p.682-683 ページ画像

明治火災保険株式会社第一回年報
             (明治火災保険株式会社所蔵)
    会社創立記事
明治廿一年五月十五日、東京市日本橋区南茅場町二十番地明治生命保険会社ニ於テ、川田小一郎・荘田平五郎・増島六一郎・阿部泰蔵・末延道成・小泉信吉・浅田正文・肥田昭作・二橋元長・萩友五郎・藤本寿吉ノ諸氏相会シ、始テ火災保険会社設立ノ事ヲ議シ、荘田平五郎氏其起草スル所ノ火災保険会規則ヲ提出ス、其主旨ハ、本邦ニハ既ニ生命及ヒ海上ノ保険会社アレトモ火災保険会社ナキハ一大欠典ナリ、然レトモ火災統計ノ詳カナラサル今日ニ当リ俄カニ火災保険会社ヲ設立スルハ極メテ難事ナルヲ以テ、姑ク朋友間火災ノ危険ヲ共担シ、患難相済フノ目的ヲ以テ一ノ協会ヲ組織シ、他日火災保険会社設立ノ基ヲ開カントスルニ在リ、諸氏皆之ヲ賛成シ、更ニ荘田平五郎・増島六一郎・小泉信吉・末延道成、阿部泰蔵ノ五氏ヲ推シテ委員トス、九月廿八日明治生命保険会社ニ於テ再ヒ集会ヲ開キ、委員ヨリ提出セル会則及ヒ保険規則ヲ議決シ、阿部泰蔵氏ニ幹事ノ任ヲ托シ、十月一日ヨリ明治生命保険会社ノ内ニ火災保険会事務所ヲ置キ、会友ノ家屋ヲ保険セリ
明治廿三年四月十七日、東京市麹町区星岡ニ於テ火災保険会々友定期総会ヲ開キタル時、会友ノ評議ヲ以テ火災保険会ノ組織ヲ改メテ株式会社ト為シ、広ク火災保険ノ業ヲ営ムコトニ決シ、本会幹事阿部泰蔵氏ニ火災統計及ヒ会社設立ニ関スル一切ノ調査ヲ委托セリ
同年十二月九日、東京市日本橋区南茅場町四十四番地東京海上保険会社ニ会シ、阿部泰蔵氏ノ起草セル火災保険会社規則及ヒ定款ニ付キ評議ノ上、更ニ末延道成・小泉信吉・益田克徳・荘田平五郎・阿部泰蔵ノ五氏ヲ規則及ヒ定款ノ修正委員トシ、其後二回ノ会議ヲ開キ規則及ヒ定款ヲ決定セリ
明治廿四年一月六日、発起人ヨリ明治火災保険株式会社目論見書及ヒ
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会社定款ヲ添テ会社設立願書ヲ東京府知事ニ差出セリ、発起人姓名左ノ如シ
 阿部泰蔵  益田克徳  渋沢栄一  奈良原繁  益田孝
 高田小次郎 内田耕作  末延道成  吉川泰二郎 近藤廉平
 浅田正文  田中直次郎 増島六一郎 川田小一郎 与倉守人
 三野村利助 安田善次郎 森村市太郎 小野義真  荘田平五郎
 豊川良平  二橋元長
一月十九日東京府知事ヨリ右願書ニ対シ左ノ指令アリ
            明治火災保険株式会社発起人
              麻布区飯倉町三丁目十五番地
                      阿部泰蔵
                        外廿一名
明治廿四年一月六日附明治火災保険株式会社設立ノ件ハ商法施行ノ期迄人民ノ相対ニ任ス
 但シ他管下ニ支店等ヲ設クルトキハ其管庁ノ指揮ニ従フヘシ
  明治廿四年一月十九日
              東京府知事 侯爵 蜂須賀茂韶
同日、日本橋区坂本町四拾三番地明治生命保険会社ノ新築家屋ニ於テ創業総会ヲ開キ、役員ヲ選挙シ、右四拾三番地ニ本店ヲ置クコトニ決議シ、一月三十一日第一回払込金一株ニ付五拾円合金拾五万円ノ払込ヲ了シ、二月二日ヨリ火災保険ノ業ヲ開ケリ
    明治火災保険株式会社株主姓名表

図表を画像で表示明治火災保険株式会社株主姓名表

 姓 名     住 所             株 数   金 額                                   円 渋沢栄一   同○東京市深川区福住町四番地   一五〇   七、六五〇