デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治29年6月29日（1896年）

是ヨリ先、小野光景外数人ニヨリテ横浜火災保険株式会社ノ設立発起サレ、是日東京銀行集会所ニ於テ発起人勧誘ニ関スル集会開カル。栄一出席シ、発起人タルコトヲ承諾ス。後、創立専務委員ニ推挙サレ、又株主トナル。

（横浜火災海上保険株式会社）記録
　　　　　　　　　　　　　　（横浜火災海上保険株式会社所蔵）
明治二十九年六月二十九日午後二時ヨリ、東京銀行集会所ニ於テ、曩ニ案内状ヲ発シタル（五十六人）有力者ノ集会ヲ開ク、出席員九名ニシテ其氏名左ノ如シ
　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一君　　　　小林吟右衛門君
　　　　　　　　　　　　　前川太郎兵衛君　　杉村甚兵衛君
　　　　　　　　　　　　　堀越角次郎君　　　永井利兵衛君
　　　　　　　　　　　　　阿部孝助君　　　　渋沢喜作君
　　　　　　　　　　　　　服部源三郎君
横浜ヨリハ小野氏、若尾民、原氏、鈴木氏ノ四氏出席シ、小野氏議長席ニ着キ、横浜火災保険株式会社設立ノ趣旨及今日迄ノ経過ヲ演述シ其ノ賛成ヲ求ム、出席者中渋沢喜作氏（渋沢氏ハ令息作太郎氏横浜ノ発起人中ニ加入セラレアルヲ以テ賛成株主トナル）ヲ除クノ外ハ尽ク発起人タルコトヲ承諾セラレ、次ニ左ノ事項ヲ決定シ午後五時散会セリ
一東京ニ創立専務委員三名ヲ設クルコト、但シ其ノ選定ハ横浜専務委員ノ指名ヲ以テスルコト
一本日欠席者多数ナルヲ以テ、今一応書面ヲ以テ其ノ諾否ヲ照会シタル上、重ネテ集会ヲ催スコト
　　　　○
　　　　専務委員会決議録
明治二十九年七月八日午後六時ヨリ、創立専務委員会ヲ開キ、出席委員五名ニシテ、其ノ決議事項左ノ如シ
一東京発起人中ヨリ創立専務委員三名ヲ選ヒ、其中二名ハ渋沢栄一君、富田鉄之助ヲ指名シ、他ノ一名ハ渋沢君ヘ協議ノ上指名スルコト（後日杉村甚兵衛君ニ決セリ）

横浜火災保険株式会社目論見書及仮定款
　　　　　　　　　　　　　　（横浜火災海上保険株式会社所蔵）
　　謹啓、益御清栄被為渉奉恭賀候、陳ハ、今般拙者等横浜火災保険株式会社と称へ候ものを設立発起仕候に附き、玆に該目論見書及
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び仮定款一部差上候間、御一読の上御賛助の程企望仕候、偖火災保険の儀ハ、諸君に於ても予て御承知の通り、欧米各国に於ては夙に経済社会の一機関として他の商工業と共に併行発達致し居候儀に有之、又我国に於ても輓近大に斯業の必要を感じ、続々新設会社の起り候も亦此故と存候、然るに横浜、神戸等に於てハ、尚外国保険会社の代理店数十ケ所有之、而して本邦人の右等代理店と保険契約致し居候者多分に有之、其保険金額総計に於ては実に莫大の高に有之由に承り居候、是畢竟我国に於て未だ斯業の十分に発達せざる所以にして、吾人の常に憂慮罷在候儀に御座候、是に於て此度私共一同申合せ、玆に一大会社を設立し、以て我経済社会に十分の利便を与へ度と存候次第に御坐候、殊に当港の如きハ常に蚕糸其他織物等の貴重品堆積致し候のみならず、輸出入の貨物ハ年々歳々多きを加へ候勢ひに付き、我会社ハ将来他の会社と相提携して、斯業の事復遺憾なしと謂ふべき盛域に至らむことを期するの目的に有之候間、御賛同被成下、当会社株式御引受相願度奉存候、依て此段以書面奉得貴意度、匆々如此に御坐候也
　　　　明治二十九年　月　日
　　　　　　　　横浜火災保険株式会社発起人惣代
　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一　　　　原善三郎
　　　　　　　　　　　　　富田鉄之助　　　小野光景
　　　　　　　　　　　　　堀越角次郎　　　若尾林平
　　　　　　　　　　　　　今村清之助　　　茂木惣兵衛
　　　　　　　　　　　　　益田孝　　　　　渋沢作太郎
　　　　　　　　　　　　　奥三郎兵衛　　　渡辺福三郎
　　　　　　　　　　　　　渡辺治右衛門　　大谷嘉兵衛
　　　　　　　　　　　　　牟田口元学　　　平沼専蔵
　　　　　　　　　　　　　中野武営　　　　樋口登久次郎
　　　　　　　　　　　　　浅野総一郎　　　左右田金作
　　　　　　　　　　　　　加東徳三　　　　西村喜三郎
　　　　　　　　　　　　　阿部孝助　　　　安部幸兵衛
　　　　　　　　　　　　　薩摩治兵衛　　　箕田長三郎
　　　　　　　　　　　　　小林吟右衛門　　椎野正兵衛
　　　　　　　　　　　　　柿沼谷蔵　　　　大浜忠三郎
　　　　　　　　　　　　　前川太郎兵衛　　鈴木宇右衛門
　　　　　　　　　　　　　杉村甚兵衛　　　石川徳右衛門
　　　　　　　　　　　　　斎藤修一郎　　　来栖惣兵衛
　　　　　　　　　　　　　小室信夫　　　　安西徳兵衛
　　　　　　　　　　　　　長井利兵衛　　　柏木彦太郎
　　　　　　　　　　　　　服部源三郎　　　飯島勇造
　　　　　　　　　　　　　長谷川一彦　　　金子政造
　　　　　　　　　　　　　友田嘉兵衛　　　中山沖右衛門
　　　　　　　　　　　　　松浦嘉兵衛　　　松浦吉松
　　　　　　　　　　　　　山田駒吉
　　　　　　　　殿
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　　　　　　　　追申
　　一別紙予約申込書に御引受株数御記入の上、来る九月廿一日限り横浜市本町一丁目五番地当会社創立事務所迄御送付被成下度候御引受株数ハ場合に依り相減じ候やも難計候間、予め此段御承引置被下度候
　　一当会社払込金の儀ハ株金四分の一（拾弐円五拾銭）に止め置く見込に付、其詳細ハ仮定款第十一条を御一覧被下度候

　　横浜火災保険株式会社目論見書
第一　本社ハ株式会社トス
第二　本社ノ目的ハ動産及不動産ノ火災保険業ヲ営ムモノトス
第三　株式及諸積立金ハ各種ノ有価証券並ニ確実ナル会社ノ株式ヲ所有シ、及ヒ銀行ニ利附預ケ金ヲ為シ、利益ノ増殖ヲ計ルモノトス
第四　本社ハ横浜火災保険株式会社ト称シ、本店ヲ横浜市ニ置ク
第五　本社ノ資本金ハ総額壱千万円トシ、之ヲ弐拾万株ニ分チ、一株ノ金額ヲ五拾円トス
第六　本社資本金ノ内凡ソ壱万五千円ヲ創業費ニ充テ、其余ハ火災保険賠償準備金トナス
第七　発起人ノ氏名・住所及ヒ各自引受クヘキ株数左ノ如シ
　　○氏名・住所・引受株数略ス。
　　横浜火災保険株式会社仮定款
　　　　第一章　総則
第一条　本社ハ資本金壱千万円ニシテ株式会社トス
第二条　本社ノ諸積立金ハ資本金ノ半額マテヲ積立ルモノトス
第三条　本社ノ目的ハ動産及不動産ノ火災保険ヲ営ムモノトス
第四条　株金及諸積立金ハ各種ノ有価証券並ニ確実ナル会社ノ株式ヲ所有シ、及ヒ銀行ニ利附預ケ金ヲ為シ、利益ノ増殖ヲ計ルモノトス
第五条　本社ハ横浜火災保険株式会社ト称ス
第六条　本社ハ本店ヲ横浜市ニ設置シ、支店・出張所・代理店ハ必要アルニ従ヒ各地便宜ノ場所ニ設クルモノトス
第七条　本社ノ火災保険規則及処務規程等ハ定款ニ遵拠シ、取締役ニ於テ議定シ、監査役及評議員ノ協賛ヲ経テ之ヲ施行ス
　　　　第二章　株式
第八条　本社ノ資本金ハ弐拾万株ニ分チ、一株ノ金額ヲ五拾円トス
第九条　本社ノ株主タラント欲スル者ハ、自身若クハ代人ヲ以テ本社ノ定メタル株式申込書ニ記名捺印シ、一株ニ付証拠金三円ヲ添ヘテ之ヲ本社ニ差出スベシ
　但シ代人ヲ以テスル時ハ委任状ヲ添フベシ
第十条　株券ハ一株毎ニ一通ヲ作リ、社名ヲ署シ社印ヲ押シ、社長之ニ記名捺印シ、株主ノ氏名ヲ記載ス
　但シ株金全額払込ニ至ルマテハ仮株券ヲ渡シ置キ、完納後本株券ト交換スルモノトス
第十一条　株金ノ払込ハ会社設立ノ免許ヲ得タル日ヨリ二週間以内ニ
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第一回ヲ払込ムモノトス
　　但第二回以後ハ明治五十年マテニ払込ムモノトシ、其期日ハ株主臨時総会ノ決議ヲ経テ之ヲ定ム
第十二条　払込期日ハ三ケ月以前ニ通知ス
第十三条　株主若シ株金払込ヲ怠リタル時ハ、其払込金額ニ対シ金百円ニ付一日金三銭ノ割ヲ以テ遅延利息ヲ支払フベシ
　滞納日数十日以上ニ及ブ時ハ、利息ノ外違約金トシテ遅延利息ト同額ノ金員ヲ支払フベシ
第十四条　株金払込期日ヨリ十日ヲ経過シテ猶払込ヲナサヾル時ハ、更ニ十日以上ノ期日ヲ定メ株式ヲ公売ニ附スベキコトヲ通知ス
　公売代金ハ払込ムベキ総テノ金額其他ノ入費ニ充テ仍ホ不足アルトキハ更ニ之ヲ償ハシメ、剰余アル時ハ之ヲ前株主ニ還付ス
第十五条　株式ヲ売買譲与セントスル者ハ本社ノ定メタル書式ニ従ヒ書面ヲ差出スベシ
　又遺産相続ノ為メ記名換ヲ請求スル時ハ、戸籍簿ノ写ヲ添ヘ、証人二名以上ノ連署ヲ要スルモノトス
　本社ハ株主名簿ニ登記シ株主ノ名義ヲ書換ヘ、其株券ニ社長署名捺印ノ上之ヲ交付ス
　　但株券一枚毎ニ手数料金五銭ヲ支払フベシ
第十六条　株券損傷又ハ紛失セシ時ハ、其事実ヲ詳記シ証人二名以上ノ連署ヲ以テ、新株券ノ交付ヲ請求スベシ
　紛失ノ場合ニ於テハ、二種以上ノ新聞紙ヲ以テ三日間広告シ、三十日以上経過スルモ発見セザル時ハ、新株券ヲ交付ス
　　但シ新株券ヲ交付スルトキハ一枚ニ付金拾銭及広告料其他実費ヲ支弁スベシ
第十七条　通常総会前三週間ハ株式ノ売買譲与ノ書替ヲ停止ス
　　　　第三章　役員選挙及使用人任免
第十八条　本社ニ左ノ役員及使用人ヲ置ク
　　　　　　役員
　　　　専務取締役　　壱名
　　　　取締役　　　　六名
　　　　監査役　　　　三名
　　　　　　使用人
　　　　支配人　　　　若干名
　　　　手代　　　　　若干名
第十九条　取締役ハ株式百株以上所有シ六ケ月ヲ経過シタル株主中ヨリ総会ニ於テ選挙シ、該当選者ノ互撰ヲ以テ専務取締役ヲ定ム
　専務取締役ハ之ヲ社長ト称ス
第二十条　取締役ハ在任中其所有株券百株ヲ封印シテ本社ニ預ケ置クベシ
第二十一条　監査役ハ株式百株以上ヲ所有シ六ケ月ヲ経過シタル株主中ヨリ総会ニ於テ選挙スルモノトス
第二十二条　取締役ノ任期ハ満三ケ年トシ、監査役ノ任期ハ満二ケ年トス
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　　但シ各再選スルコトヲ得
第二十三条　取締役・監査役中欠員ヲ生シタル時ハ、臨時総会ヲ招集シテ補欠選挙ヲ行フ、其任期ハ前任者ノ任期ヲ越ユルヲ得ズ
　　但シ業務執行上ニ差支ヲ生ゼザル限リハ次回ノ通常総会マデ補欠選挙ヲ延期スルコトヲ得
第二十四条　評議員ハ取締役ノ協議ヲ以テ株式百株以上ヲ所有スル株主中ヨリ三名ヲ選挙スルモノトス
第二十五条　支配人ハ取締役ノ協議ヲ以テ任免シ手代ハ社長之ヲ任免ス
第二十六条　社長・取締役ハ一定ノ給料ヲ受ク、監査役ニハ相当ノ報酬ヲナス
　　但シ其金額ハ株主総会ニ於テ之ヲ定ム
　評議員ハ名誉職トス
第二十七条　使用人ノ給料ハ取締役ニ於テ之ヲ定ム
　　　　第四章　役員及使用人ノ職務権限
第二十八条　社長ハ本社ヲ代表シ会社ノ事務ヲ総理ス
第二十九条　社長・取締役ハ法律定款諸規則及総会ノ議決ヲ遵守シ其事務ヲ整理ス
第三十条　社長事故アルトキハ取締役之ヲ代理ス
第三十一条　社長ハ取締役ト協議ノ上業務ノ都合ニ依リ支店出張所又ハ代理店ヲ配置スルコトヲ得
第三十二条　社長・取締役ニ於テ株金・諸積立金・保険料等ヲ運転使用スルニハ、予メ其方法ヲ定メ評議員ノ協賛ヲ受クベシ
第三十三条　取締役ハ社長ヲ翼賛シ、社長ト連帯シテ総テ其責ニ任ス
第三十四条　取締役ハ支店・出張所又ハ代理店所在地ニ於テ株主若クハ重ナル被保険者中ヨリ相談員ヲ置クコトヲ得
第三十五条　監査役ハ法律ニ定メラレタルモノヽ外左ノ事項ヲ監査ス
　第一　社長・取締役ニ於テ株金其他ノ金員ヲ第三十二条ノ規定ニ従テ運用スルヤ否ヤノ事
　第二　本社ノ諸規則ヲ実行スルヤ否ヤノ事
第三十六条　評議員ハ社長・取締役ノ諮問ニ対シ意見ヲ述ベ、又ハ第三十二条及其他本社ノ利害ニ関シ社長・取締役ニ対シテ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第三十七条　支配人ハ社長・取締役ノ指揮ヲ受ケ、営業上諸般ノ事務ヲ担当シ、手代以下ヲ督励スベシ
第三十八条　手代ハ社長、取締役及支配人ノ指揮ヲ受ケ、各分掌ノ事務ヲ担任スベシ
　　　　第五章　業務準則
第三十九条　本社ハ日曜日・大祭日・祝日・其他一般ノ休日ヲ除キ、毎日午前九時ヨリ午後四時マデ業務ノ取扱ヲナス
　　但シ取扱時間ハ業務ノ都合ニ依リ伸縮スルコトアルベシ
第四十条　保険規則ハ第七条・第四十一条・第四十二条・第四十三条ニ憑リ製定ス
第四十一条　動産ノ保険ハ蚕糸其他ノ商品及諸器械、不動産ノ保険ハ
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諸建物トス
第四十二条　一個ノ建物若クハ一個ノ建物中ニ貯蔵スル商品等ノ保険金額ハ株金及諸積立金ノ総額二十分一ヲ限リトス、若シ此額ニ超過スル時ハ本社ハ其超過ノ部分ヲ他ノ火災保険会社ニ再保険ヲ為スモノトス
第四十三条　本店所在地ニ於ケル蚕糸保険ノ契約ハ、本社資本金及諸積立金総額ノ三分一ヲ超過スル時ハ、其超過ノ部分ヲ他ノ火災保険会社ニ再保険ヲナスモノトス
　　　　第六章　株主総会
第四十四条　株主総会ヲ分チ通常総会・臨時総会ノ二種トス
第四十五条　通常総会ハ毎年五月之ヲ開ク、臨時総会ハ取締役、監査役ニ於テ必要ト認ムルトキ、又ハ総株式五分一以上ヲ所有スル株主ヨリ会議ノ目的事項ヲ示シ請求スル時ハ、之ヲ招集スルモノトス
第四十六条　株主ノ議決権ハ一株毎ニ一個トス
第四十七条　通常総会ハ総株式四分一以上ヲ所有スル株主（代理ヲ委任シタル株主ノ株式トモ）出席シ、其議決権ノ過半数ヲ得ルニ非ラザレバ議決ヲナスコトヲ得ズ
　臨時総会ハ総株式ノ半数以上ヲ所有スル株主（代理ヲ委任シタル株主ノ株式トモ）出席シ、其議決権ノ過半数ヲ得ルニ非ラザレバ議決ヲナスコトヲ得ズ
　　但シ可否同数ナル時ハ議長之ヲ決ス
第四十八条　出席株主議決権ノ定数ニ満タザルトキハ其総会ニ於テ仮議決ヲナシ、七日以内ニ其議決ヲ総株主ニ通知シテ再ビ総会ヲ招集ス、此総会ニ於テハ出席株主ノ議決権定数ニ満タザルモ其多数ヲ以テ仮議決ヲ認可シタル時ハ之ヲ有効トナスベキコトヲ明告ス
第四十九条　凡テ総会ハ場所・日時及会議ノ目的事項ヲ明記シ、二週日以前ニ株主ヘ通知スルモノトス
　　但シ至急ヲ要スル場合ハ此限ニアラス
第五十条　取締役ハ株主ヨリ会議ノ目的ヲ示シ臨時総会ノ招集ヲ請求シタルトキハ必ズ一週日以内ニ其手続ヲナスベシ
第五十一条　凡テ総会ノ議長ハ社長之ニ任ズ、若シ社長差支アルトキハ他ノ取締役、他ノ取締役モ亦差支アル時ハ株主中ノ一名ヲ推シテ議長トス
第五十二条　株金払込遅延中ノ株主ハ議決ノ数ニ加ハル事ヲ得ズ
第五十三条　株主自ラ出席スルコト能ハザル時ハ、本社ノ定ムル書式ニ従ヒ委任状ヲ製シ、株主中ノ者ヲシテ代理セシムルコトヲ得
　　但役員及使用人ハ株主ノ代理ヲナスコトヲ得ズ
第五十四条　凡テ総会ニ於ケル議事ノ要領ハ議事録ニ登記シ、議長・書記及監査役二名以上之ニ署名捺印シ、本社ニ保存スルモノトス
第五十五条　通常総会ニ於テハ左ノ事項ヲ議決スルモノトス
　第一　計算書　財産目録　貸借対照表　事業報告書
　第二　利益金ノ分配案
　第三　社長・取締役ノ給料及監査役ノ報酬
　第四　次年度ノ経費予算
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　第五　取締役及監査役ヨリ提出セル議案
　第六　株主ヨリ提出セル議案
　第七　役員ノ選挙
第五十六条　臨時総会ハ臨時ノ事項ヲ議ス
第五十七条　凡テ総会ノ議事ハ予メ株主ニ通知シタル目的事項ノ外ニ渉ルコトヲ得ス
　　　　第七章　計算及配当
第五十八条　営業年度ヲ毎年四月一日ヨリ翌年三月三十一日マテトス
第五十九条　保険賠償金支払ハ左ノ順序ニ拠ル
　第一　損害ノ起リタル営業年度ニ属スル保険料
　第二　保険金支出予備金
　第三　別途積立金
　第四　諸利子及雑収入
　第五　準備積立金
　第六　株金及其他ノ財産
第六十条　純益金ハ総収入金ノ内ヨリ保険賠償金・保険料・営業上一切ノ費用及保険支出予備金ヲ控除シタル残額トス
第六十一条　純益金ハ左ノ如ク分配スルモノトス
　第一　準備積立金ハ純益金ノ十分一ヲ下ラサル金額トス
　第二　役員及使用人ノ賞与金ハ純益金ノ百分五ヨリ十マテトス
　第三　株主配当金ハ株金及保険料諸積立金等ヨリ生スル利子及雑収入ノ範囲内トス
　第四　別途積立金ハ前三項ノ金額ヲ引去リタル残余トス
　　　　第八章　任意解散
第六十二条　本社ハ総会ノ決議ニ依リ任意解散スルコトヲ得
第六十三条　解散ハ任意決議ノ日ヲ以テ初日トシ、法律ニ定メラレタル凡テノ手続ヲ為シ、且二種以上ノ新聞紙ヲ以テ広告ス
第六十四条　解散ノ決議ヲ為シタル時ハ清算人三名ヲ選挙シ、併セテ清散人《（マヽ）》ノ給料ヲ定ム
　　　　第九章　印章
第六十五条　本社ノ権利義務ニ関スル一切ノ書類ニハ左ノ社印ヲ用ユ
　　　　　　横浜火災保険株式会社之印方一寸一分
　　　　第十章　定款変更
第六十六条　此定款ノ条項ハ株主総会ノ決議ヲ以テ更正加除スルコトヲ得
　　　　第十一章　補則
第六十七条　此定款ニ基キ始メテ取締役監査役ヲ選挙スル場合ニ限リ第十九条第二十一条ノ規定中六ケ月以上ノ資格ハ要セザルモノトス
第六十八条　総会其他株主一般ニ通知スル事項ハ其大要ヲ二種以上ノ新聞紙ヲ以テ之ヲ広告ス
　　但シ株主ハ通知書ヲ受取ラズ又広告ヲ見ザルヲ理由トシテ其責ヲ免ルヽヲ得ス

 - 第7巻 p.691 -ページ画像 

（横浜火災海上保険株式会社）記録
　　　　　　　　　　　　　　（横浜火災海上保険株式会社所蔵）
拝啓、愈々御清栄被為渉奉慶賀候、陳ば横浜火災保険株式会社株式申込証拠金之義は予て仮定款に於て三円と規定有之候処、本日創立専務委員会に於て壱円と修正候事に協議仕り、猶又右払込期日を来る四月三十日と相定め申度と存候間、一応御高見奉相伺候為め八巻氏参上仕候に付、何卒御勘考の上同氏へ御申聞被成度、此段奉得貴意候
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　匆々敬具
　　二月廿七日○明治三〇年　　　　　　　　　小野光景
　富田鉄之助殿
　渋沢栄一殿
　　　　　　○
　　　　公衆募集広告文案
拙者共発起ニ係ル横浜火災保険株式会社ノ儀本年二月二十五日農商務大臣ヨリ発起許可ヲ得タルニツキ、株式希望ノ方ハ左ノ手続ニ依リ来ル　月　日限リ創立事務所ニ申出デラルベシ
横浜市本町一丁目
　　　　　　　　　　　　　横浜火災保険株式会社
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　創立事務所
　　明治三十年　月　日
　　　　　　　　発起人
　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一　　　　原善三郎
　　　　　　　　　　　　　富田鉄之助　　　小野光景
　　　　　　　　　　　　　堀越角次郎　　　若尾幾造
　　　　　　　　　　　　　今村清之助　　　茂木惣兵衛
　　　　　　　　　　　　　益田孝　　　　　渋沢作太郎
　　　　　　　　　　　　　奥三郎兵衛　　　渡辺福三郎
　　　　　　　　　　　　　渡辺治右衛門　　大谷嘉兵衛
　　　　　　　　　　　　　牟田口元学　　　平沼専蔵
　　　　　　　　　　　　　中野武営　　　　樋口登久次郎
　　　　　　　　　　　　　浅野総一郎　　　左右田金作
　　　　　　　　　　　　　加東徳三　　　　西村喜三郎
　　　　　　　　　　　　　阿部孝助　　　　阿部幸兵衛
　　　　　　　　　　　　　薩摩治兵衛　　　箕田長三郎
　　　　　　　　　　　　　小林吟右衛門　　椎野正兵衛
　　　　　　　　　　　　　柿沼谷蔵　　　　大浜忠三郎
　　　　　　　　　　　　　前川太郎兵衛　　鈴木宇右衛門
　　　　　　　　　　　　　杉村甚兵衛　　　中山沖兵衛門
　　　　　　　　　　　　　斎藤修一郎　　　石川徳右衛門
　　　　　　　　　　　　　小室信夫　　　　来栖壮兵衛
　　　　　　　　　　　　　長井利兵衛　　　安西徳兵衛
　　　　　　　　　　　　　服部源三郎　　　柏木彦太郎
　　　　　　　　　　　　　長谷川一彦　　　飯島勇造
 - 第7巻 p.692 -ページ画像 
　　　　　　　　　　　　　友田喜兵衛　　　金子政吉
　　　　　　　　　　　　　松浦嘉兵衛　　　松浦吉松
　　　　　　　　　　　　　山田駒吉

中外商業新報　第四六〇四号〔明治三〇年六月二二日〕
　　　　横浜火災保険会社発起人会
横浜火災保険会社にては、去る十九日午後三時より資本金半減の件に就き発起人会を催ふし、愈々従来の千万円を五百万円に減することに決し、直に株主に通知したるが、来六月三十日迄に同事務所に向け異議申出されは賛成と見做し確決することゝなりたりといふ、尤額面は従前通り五十円券（十万株）とし四分一を払込みて営業を開始する筈なりといふ

青淵先生六十年史（再版）　第二巻・第二四―二五頁〔明治三三年六月〕
　　　　第三節　横浜火災保険会社
横浜火災保険株式会社ハ明治三十年八月ヲ以テ横浜市ニ設立シタルモノニシテ、其目的ハ専ラ動産・不動産ノ火災保険業ヲ営ムニアリテ、其資本金ハ五百万円ナリ、先生ハ同会社ノ株主ナリ
同会社ノ目論見書ハ左ノ如シ
　　　　　　横浜火災保険株式会社目論見書
　第一　本社ハ株式会社トス
　第二　本社ノ目的ハ動産及不動産ノ火災保険業ヲ営ムモノトス
　第三　株金及積立金ハ各種ノ有価証券並ニ確実ナル会社ノ株式ヲ所有シ、及ヒ銀行ニ利附預ケ金ヲ為シ利益ノ増殖ヲ計ルモノトス
　第四　本社ハ横浜火災保険株式会社ト称シ、横浜市ニ置ク
　第五　本社ノ資本金ハ総額一千万円トシ、之ヲ二十万株ニ分チ、一株ノ金額ヲ五十円トナス
　第六　本社資本金ノ内凡ソ一万五千円ヲ創業費ニ充テ、其余ハ火災保険賠償準備金トナス
明治三十一年七月一日ヨリ同三十二年六月三十日ニ至ル一箇年間ニ於ケル保険契約金高ハ十八億五千〇〇五万四千四百五十八円ナリト云フ
　　　○同社株主名簿ニヨレバ栄一ノ持株数ハ三百株ナリ。

著作権保護期間中、著者没年不詳、および著作権調査中の著作物は、ウェブでの全文公開対象としておりません。
冊子版の『渋沢栄一伝記資料』をご参照ください。