デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

2章 交通
2節 鉄道
1款 東京鉄道組合
■綱文

第8巻 p.513-525(DK080040k) ページ画像

明治10年7月1日(1877年)

前議ヲ以テ栄一林厚徳ト共ニ第十五国立銀行(華族銀行)創立事務所ニ抵リ、同行ヨリ毎季ノ上納金ヲ借継ギ、満期完納ノ上ハ払下鉄道ヲ衆華族一般ノ所有ト為スベキ約定取結ニ付交渉ヲ開始セシガ、同行ノ拒否スル所トナリ、其後屡次折衝ヲ重ヌ。然ルニ上納期近迫セルヲ以テ、是日第三季上納金二十一万四千円ノ借款ノミ成立ス。同月五日此上納ヲ了ス。


■資料

鉄道組合会議要件録 第三巻(DK080040k-0001)
第8巻 p.513-523 ページ画像

鉄道組合会議要件録 第三巻 (株式会社第一銀行所蔵)
    第卅三回臨時会議 十年五月十六日於第一国立銀行閣内開之
                 出席人名
                     伊達宗城伊達宗徳代理
                      西園寺公成
                     毛利元徳代理
                      笠原昌吉
                     池田慶徳池田輝知代理
                      吉田恭敬
                     亀井玆監代理
                      清水格亮
                     池田茂政池田章政代理
                      水原久雄
                     井伊直憲井伊直安代理
                      金田師行
                     榊原政敬代理
                      加藤直栗
 - 第8巻 p.514 -ページ画像 
                     大村純熙代理
                      山川前耀
                     久松定謨久松勝成代理
                      池内久親
                     毛利元敏代理
                      難波舟平
                     蜂須賀茂韶代理
                      林厚徳
                     前出利同代理
                      佐々高柯
                     徳川慶勝代理
                      井上喬
                     前田利嗣代理
                      北川亥之作
                     毛利元忠代理
                      柏村信
                     松平頼聡代理
                      三宅十郎
                 総理代人 渋沢栄一
                 傍聴   松平頼聡内辻盛令
                 欠席   松平慶永
                 同    松平茂昭
                 同    九条道孝
                 同    山内豊範
                 同    池田徳潤

    第一節
右各位午後第三時前議席ニ着キ、総理代人ハ衆位ニ告ルニ、第卅弐回ノ協議ニ由リ組合金索ノ案ヲ華族銀行ニ諮議シ、其回答ハ未タ確定ニ抵ラスト雖トモ、到底我カ望ミ充足スヘカラサルヲ以テ、其問醻ノ大要ヲ述ルコト左ノ如シ
四月二日総理代人ハ林厚徳ト与ニ岩倉公邸内ノ華族銀行創立事務取調所ニ之キ、該経《(マヽ)》ノ肥田浜五郎・岩橋徹輔・熊谷武五郎・奈良原繁・中村清行・間嶋冬道等ニ面接シ(柏村信・勝部静男モ参席)此組合ノ歴由現情ヲ概述シ、而シテ前日内示セラルヽ方案ニ聊カ不便利アル所ヲ弁シ、更ニ我カ反案ノ条旨即第卅弐回ノ協議ノ要望ヲ説着ス、彼等答ルニ横浜間鉄道ノ業ハ敢テ衆華族ノ一併共有ヲ計ラントセハ自カラ牽掣ニ渉ルヲ恐レテ未タ其挙ノ確定セサルコトヲ以テス、小生復タ衆華族鉄道共有ノコトハ已ニ其方案ニ明条有ルコトヲ再弁シ、更ニ此組合ノ歴情ヲ述ヘテ結局此鉄道ハ衆華族共有ノ有無ヲ問ハス我要望スル貸借ニ至ツテハ特別之妥議ニ出テンコトヲ請求ス、復タ答ルニ已ニ組合ノ情由ヲ諒セリ、因テ華族銀行ニ其貸借ノ挙ヲ周旋シ他日之ヲ回報スヘシ雖トモ、若シ鉄道ヲ一般ノ所有トセスシテ特リ組合ノ有ト為レハ其貸借ノ利子ハ組合ニ於テ政府ヨリ受クル鉄道ノ利息ヲ転納シ以テ出入差ナキ計算ヲ得ルヘカラス、必ス幾許カ補足スルニ至ラント云コトヲ以テセリ、此時林厚徳及柏村信等ハ幸ニ此鉄道ノ既定約款ヲ改メスシテ上納金額ノ借款ヲ訂修スルヲ得ハ、聊其利足ヲ補足スルモ厭フ所ニアラサルコトヲ述ヘタリ
爾後肥田等ノ回報ヲ遅ツコト殆ント三旬、猶未タ之ヲ得ス、将ニ第三季上納ノ期ニ向ヒ窘迫センコトヲ恐レ、去ル十二日林厚徳ニ告ケテ速ニ其回答ヲ促スヘキコトヲ求メ、同氏モ亦曾テ其緩放曠日タルヲ憂レハ、同氏其翌十三日彼レヲ再訪シ、又幸ニ岩倉公ヘモ面稟シ指示ヲ領
 - 第8巻 p.515 -ページ画像 
スル所アリ、林氏今之ヲ説述スヘシト
右演説畢テ総理代人ハ本日大蔵卿ノ帰京ニ際シ、緊急ノ事件アルヲ以テ同卿ニ趨謁ノ為メ玆ニ於テ退席セリ
    第二節
林厚徳ハ華族銀行及ヒ岩倉公ニ対シ問醻シタル事情ヲ演述スルコト左ノ如シ
去ル九日華族銀行ニ肥田浜五郎ト面談ス(勝部静男其席ニアリ)、彼レ猶前言ノ如ク横浜間鉄道ノ営業ハ将来此組合会合ニテ保持スヘキコトヲ唱ルノミ、而シテ貸借之事ハ稍前案ニ反シ、恐クハ上納ノ期ニ至リ障碍アラントスヘキ形情タリ、因テ尚討議ヲ為シ、遂ニ彼レ尚熟算シテ自他ノ便ヲ図ラント答ヘタリ
翌十日勝部静男来訪シ、告クルニ、同氏岩倉公ニ謁シ我カ要求ノ事情ヲ陳ヘ、公ノ答フル所ハ、組合ノ事情ハ之ヲ領解セハ其貸借ノ如キハ彼我ノ両便ヲ陳考シ、更ニ之ヲ具陳セヨト云コトヲ以テス
因テ小生ハ十三日岩公ニ趨謁ス、時ニ公謂テ曰ク、彼ノ鉄道ノ事業ハ現今衆華族ノ共有物トナサンヨリ寧ロ従前ノ結盟ヲ将テ保存スルニ如カス、何ントナレハ当初メ蜂須賀茂韶ノ首唱ニシテ其美挙タルハ論ヲ待タス、況ヤ既ニ政府ト其約ヲ修メ、以テ未曾有ノ栄利ヲ享ケ、各自恒産ノ堅固ナルコトヲ得ル、誰カ欽慕セサル者アランヤ、吾輩モ衆族ト之ヲ共ニセント欲シ未タ好機ヲ得サリシカ、今幸ニ衆華族戮力シテ銀行ヲ創起スルニ至リ、更ニ以為ラク、轍道《(鉄)》ノ偉業ハ曾テ我輩ノ嘉ミスル所、今ヤ宜シク両全ノ策ヲ設ケ、我銀行内ニ於テ更ニ鉄道会社ヲ開キ衆族ト之ヲ与ニシ、銀行ト会社ト並立セハ必ス不朽ノ鴻業ヲ有スヘシ、蓋是レ上ハ朝旨ノ在ル所ニ適シ、下ハ各家自主ノ権利ヲ得ヘキ者ナリト
玆ニ於テ小生ハ予テ此組合悃請ノ借款ノ成否ヲ稟シ、且近ク第三季ニ迫レハ其帰結ヲ聴問セリ、公答ルニ、其借款ハ嘗テ第三季ノ後ニ係ル者ト聞キ、今子ガ言ト逕庭スレハ目下其成否ヲ確答シ難シ、尚精計ヲ経テ回示スヘシト云
謁畢テ肥田氏ニ接シ、岩公答ヘラルヽ所ノ事情ヲ問フ、肥田氏ハ借款ノ案ハ充分労力スト雖トモ、銀行ノ準備未定ナルヲ以テ其難情アルヲ云ヒ、語気頗ル算盤上ニ艱ムモノヽ如シ、因テ兼約第三季分ノ貸金有無ヲ再問セシガ、目下即答スルヲ得ス、尚再考スヘシト云、以上条陳ハ第卅弐回ニ於テ各位ノ協議シテ委托セラルヽヲ領シ、総理代人ト与ニ据拮スル所ナリ、乞フ各位其事情ヲ諒悉セラレンコトヲ
    第三節
柏村信ハ更ニ各位ニ告ル所アリ、左ノ如シ
二氏前開ノ景状ハ小子銀行同氏ハ華族銀行事務ニ関スニ在テ親ク目セリ、而シテ彼ノ内情タル現今創業ノ際ニ会シ未タ緊要ナル準備金ノ額モ定マラス、又金貨運用ノ活法モ目途ナク、実ニ望洋ノ景情タルハ、我希望ノ金額モ其完全ヲ得ヘカラサラン耶、衆問テ曰ク、然レハ向来毎半季ニ要スル全額ハ以テ調ハサルカ、曰ク小子思想アリ、毎季上納ノ半額ナレハ之ヲ必ス要借スルヲ得ヘシト、玆ニ於テ各位其望ヲ虧損シ、盛業ノ存亡ニ関スルヲ以テ皆同慨ヲ起サヽルハナク、而シテ皆謂フ、勢如此ナ
 - 第8巻 p.516 -ページ画像 
リト雖トモ、如今鋭意ヲ挫折セハ恐ラクハ此偉業ヲ貫徹スヘカラス、果シテ其要借スル所ノ半額ヲ減セハ尚戮力シテ別ニ半額ヲ調達シ、以テ大業ヲ竣成スヘシト、混話数刻各雄志ヲ激言セリ
林厚徳ハ更ニ各位ニ告ルニ、我カ案款ノコトハ頼ルニ総理代人ノ良考練策アレハ猶能ク之ト詢リ、且彼ノ復報ヲ待チ、而後再訪協議ノ為メ臨時会議ヲ開クヘキコトヲ以テス、於此テ本日ノ議ヲ竣リ、各位退場ス、時ニ午後五時下

    第三十四回臨時会議 明治十年六月十一日於第一国立銀行閣内開之
                 出席人名
                     榊原政敬代理
                      加藤直栗
                     毛利元敏代理
                      難波舟平
                     久松定謨久松勝成代理
                      池内久親
                     亀井玆監代理
                      清水格亮
                     大村純熙代理
                      山川前耀
                     蜂須賀茂韶代理
                      林厚徳
                     伊達宗城伊達宗徳代理
                      西園寺公成
                     前田利同代理
                      佐々高柯
                     井伊直憲井伊直安代理
                      金田師行
                     山内豊範代理
                      横田広太郎
                     池田章政代理
                      三谷峻
                     毛利元徳毛利元忠代理
                      柏村信
                     九条道孝代理
                      朝山常順
                     松平頼聡代理
                      辻盛令
                     池田慶徳池田輝知代理
                      吉田恭敬
                     徳川慶勝代理
                      井上喬
                 総理代人 渋沢栄一
                 傍聴   九条道孝内伊藤可宗
                 欠席   松平茂昭
                 同    松平慶永
                 同    池田茂政
                 同    池田徳潤
                 同    前田利嗣

    第一節
右一同午後三時ニ於テ議席ニ着シ、総理代人ハ去ル八日第十五国立銀行ノ答翰アルヲ以テ貸借案件ノ議ヲ開クニ先チ左ノ演述ヲ為シタリ
前日小子林氏ト与ニ貸借ノ案件ヲ以テ第十五国立銀行ノ開業前該経管者《(マヽ)》ニ面議応答セシ事情ハ各位已ニ領知セラルヽ如シ、爾後久シク彼レノ確答ヲ得スト雖トモ、其実ハ此組合ノ要求スル所ハ必ス達セサルナキニ幾カシ、因テ其成効ニ臨ミテ結約スヘキ条款ヲ草作シ以テ該銀行
 - 第8巻 p.517 -ページ画像 
ノ内議考引ニ附シ、猶数日ニシテ初メテ去ル八日其回答書ヲ得タリ
此回答書ハ既ニ其写ヲ以テ乾第十号ノ輪札ニ付シ、各位之ヲ領知セラルヽカ如ク、其旨意ハ我要求全額ノ内目下一期分(第三季上納分)貸付スヘシ、因テ利足定限及年期等約款ノ事項ヲ商議センカ為メニ、組合中担任ノ者該銀行ニ之ヲ面議アランコトヲ要スト云、此ヲ以テ推測スレハ、該銀行ハ此組合ノ第三季公納ニ阻碍ナカランコトヲ希図スルノ好誼アルハ已ニ之ヲ信スルニ足レハ、先ヅ目下第三季分ノ金額ヲ借弁シ、而後要求ノ全体ノ議ニ及ホスヘキヲ以テ、今日適当ノ計ト謂フヘキナリ
    第二節
右順次演述ヲ了シ畢リ、更ニ其借項ノ一案ヲ以テ議目ト為シ、之ヲ四節ニ分解シテ逐節問議決定シ、其帰結スル所左ノ如シ
一第三季上納ノ金額ハ、第十五国立銀行ノ回答ニ応シテ之ヲ借用スヘキカ
  衆議之ヲ借用スヘキコトニ決定ス
一右借用金ノ利息ハ年六朱ヨリ越ユヘカラサル所ヲ要スヘキカ
  衆議其六朱ヨリ越ユヘカラサルコトニ決定ス、其意蓋鉄道払下約款上ニ於テ政府ヨリ此組合ニ下附セラルヽ利足モ年六朱ナルヲ以テ、今組合ヨリ第十五国立銀行ヘ付スヘキ利子モ亦之レト同額タランコトヲ欲スルニ在リ
一右借用金還清ノ期限ハ即今之ヲ判定シ難シト雖トモ、先ツ六ケ月ヲ以テ期限トスル者ハ如何、是蓋借項全体ノ成効アルニ於テハ論ナシト雖トモ、若シ成効ヲ得サルトキハ則政府約款上ノ三策ニ就テ処分セサルヲ得ス、然ルトキハ全ク前約ヲ履ムヘカラスシテ、究竟此一期分借項ノ如キハ厳然期限ヲ立テ難キ者ナリ、因テ要スルニ自他ノ情実信憑ニ就テ我全体ノ要求スル所ト彼レノ好誼アル所トヲ以テ、右六ケ月ノ期限ヲ設ケ、而後万一政府トノ約款三項中ノ処分ヲ受クルニ至ラハ、此一季ノ借項モ其処分ニヨルヘキコトヲ該銀行ニ於テ予メ承諾アランコトヲ乞フヘシ

  衆議之ヲ可トシ、六ケ月ヲ以テ期限トナスコトニ決定ス
一担任者ヲ撰挙スヘシ
  衆議総理代人及林厚徳ノ両氏ニ其当任ヲ請フ、両人之ヲ諾シ、且明十二日該銀行ニ抵リ照議ヲ為シ、其事情ニ随テ更ニ会議ヲ開クヘキコトヲ約ス
    第三節
総理代人ハ借款草案ノコトヲ告テ曰、該草案ハ已ニ本日各位ノ一覧ニ供スト雖トモ未タ公然タル文案ニアラスシテ、前日該銀行ノ経管者ニ組合ノ要求ヲ商議スルニ当リ、其点度ヲ知ラシムヘキカ為メニ彼レノ参閲マテニ示ス者ナリ、因テ此際第三季分ノ貸借ヲ了シ尋テ要求全案ノ議ニ至ルトキハ更ニ該草作ヲ議案ト為シ、以テ各位ノ討論ヲ要スヘク、其間当面有要ノ文書ニアラサルナリ、各位此情由ヲ諒セラレヨ
右会議畢ツテ一同退場ス、時午後六時

    第卅五回臨時会議 明治十年六月十五日於第一国立銀行閣内開之
 - 第8巻 p.518 -ページ画像 
                  出席人名
                     毛利元敏代理
                      難波舟平
                     榊原政敬代理
                      塩谷正直
                     池田慶徳池田輝知代理
                      吉田恭敬
                     伊達宗城伊達宗徳代理
                      西園寺公成
                     大村純熙代理
                      佐藤甚兵衛
                     九条道孝代理
                      朝山常順
                     亀井玆監代理
                      清水格亮
                     井伊直憲井伊直安代理
                      金田師行
                     久松勝成久松定謨代理
                      池内久親
                     池田茂政池田章政代理
                      三谷峻
                     蜂須賀茂韶代理
                      林厚徳
                     松平頼聡代理
                      辻盛令
                     山内豊範代理
                      横田広太郎
                     徳川慶勝代理
                      井上喬
                     前田利嗣代理
                      北川亥之作
                     前田利同代理
                      中島定恒
                     毛利元徳代理
                      笠原昌吉
                     松平慶永松平茂昭代理
                      武田正規
                 総理代人 渋沢栄一
                 欠席   毛利元忠
                 同    池田徳潤
右一同午後三時ニ於テ着席シ、総理代人ハ各位ニ対シ第一ニ第十五国立銀行照会ノ事由ヲ演述シ、第二ニ此照会ニ因リ自ラ見解アル所ヲ説明シ、第三ニ其照会ト見解ニ因テ此組合廃存ノ情勢ヲ審案シテ該銀行ニ回答ヲ裁スヘキコトヲ以テ議目ト為シ、而シテ各位ノ討論決議ヲ求メテ結局ヲ了ス、其順序ハ左ノ如シ
    第一節
総理代人ハ去ル十三日第十五国立銀行ノ回答有ツテ借換証書ノ文式ヲ示ス、因ツテ前会約言ノ如ク此回答ニ対シ各位ノ可否スル所ヲ決定スヘキコトヲ告ケテ、其回答柬並証書文案ヲ上読ス、其文如左
 昨日ハ御高来被下鉄道組合衆江当銀行ヨリ貸渡金之儀年六朱ノ利足ニテ異議無之ニ相決シ候間、左様御承知被下度、大蔵省ヘ御差出金請取書ヲ抵当御差入之事ハ止メ、別紙草稿面之趣ニ御承知希候、尤御思召モ御座候ハヽ又御相談可被下候、金員御引渡之儀ハ敝店繰リ合之都合モ御座候間、後日ニ可申上候也
   六月十三日              肥田昭作
                      中村清行
    林厚徳様
    渋沢栄一様
 - 第8巻 p.519 -ページ画像 
   借用金証書
 一金弐拾壱万四千円也 利足壱ケ年金壱百円ニ付金六円ノ賦、但シ一ケ年六朱ノ割
 前書ノ金額借用申処実正也、返済ノ儀ハ明治十年六月 日ヨリ向フ満六ケ月ト相定メ、明治十年十二月 日迄ニ元利取揃無相違返済可致、若シ此期ニ至リ返金相滞リ候節ハ鉄道組合何名ノ各家ニ所有スル貴店株券江対シ、配当純益金ノ内ヲ以テ元利共御引取可被下候、為後日借用証書如件
    月 日        東京横浜間既成鉄道組合
                 社中総代
                     渋沢栄一印
                 同
                     林厚徳印
    第十五国立銀行
      頭取
      支配人
        御中

又去ル十三日林厚徳《(二)》ト与ニ該銀行ニ抵リ支配人中村清行貸付掛肥田昭作等ニ会シ要求セシ説話ノコトニ泝リテ其概旨ヲ演述ス如左当日ノ日記ヲ録ス
 総理代人渋沢栄一肝煎林厚徳ノ両人ハ第十五国立銀行ニ抵リ、中村清行・肥田昭作等ニ面会シ、昨十一日第三十四回臨時会議ニ於テ決議之通リ組合第三季上納金額ヲ該銀行ヨリ借用スヘキニ付テハ、其利息ハ政府ヘ上納金ノ利子ト同シク年六朱ト定メタク、又期限之儀ハ要求全体ノ妥議ニ至ルトキハ其約款中ニ籠ルヘキモノナレトモ、差向キ一季分別途ノ借用タレハ先ツ六ケ月ヲ以テ期限ト為シ、其中借項ノ全体結約ニ至レハ論ナシト雖トモ、若シ不然トキハ其六ケ月ニ際シ此組合ニ於テ還清ノ他策無之、究竟政府ト約款上ノ第十二条ニ基キ其三項ニ依テ政府ノ処分ヲ受クヘキニ付、該銀行ニ於テハ其終極ヲ承諾之上協議有之度旨及頼談候処、右利息ヲ六朱トスル時ハ格外ノ低度ニテ他ノ貸借ニモ関響スヘキニ付七朱ヲ以テ肯諾スヘキ旨答弁有之ニ付、其答弁ハ通常至当ニハ可有之候得共、一体此借項ノ儀ハ計ラスシテ同盟一同其禄券ヲ銀行ノ資本ニ供セシヨリ忽チ前志ヲ失シ、爾来組合ノ存亡ヲ以テ苦慮致シ居、且政府ヘノ上納金ニ対シ下付セラルヽ利息モ亦六朱ナレハ、若シ今七朱ノ利息ヲ払フトキハ其一朱ノ差額ヲ償フノ計ナシ、夫是ノ情実ニ付、要求ノ通六朱ニテ借用致度旨再議致シ候処、中村・肥田ノ両子ハ右要求ノ情由ヲ以テ即刻頭取ヘモ陳告致シ候趣ニテ、当方要求ノ事情ハ深ク之ヲ諒シ甚タ無理ナラサルニ付、今一応懇議ノ上可及回答旨申聞候間、猶懇辞ヲ留メ厚ク依頼シテ両人共相去リ候事
    第二節
総理代人ハ其見解ヲ述テ曰、今該銀行ノ示ス証書文案ハ去ル十二日我カ要求説話ノ意ヲ聴カサルモノヽ如シ、他日要求全体ノ案成ラサルトキハ此文案ノ如ク各位カ該銀行ニ有スル株高ニ生スヘキ純益金ヲ以テ償賠セラルヽモ妨ケナシトセンカ、蓋其局算ニ於テハ自他得失ナキカ如シト雖トモ到底其償還ノ方法ニ於テハ我カ望ム所ノ方途ヲ失フ者ト
 - 第8巻 p.520 -ページ画像 
謂フヘシ、且其償還ノ算計ハ此組合ノ担保金額ニ依ルヘキナレハ、其彼レニ多クシ此ニ少キハ稀ニ有ルヘク、槩ネ此ニ多クシテ彼ニ少ケレハ則少キモノヲ以テ多キモノニ償フ、豈一期限ニ於テ其株高ノ純益ヲ以テ還清スルヲ得ヘケンヤ、故ニ各位ハ今日該文案ニ対シテハ詳密ノ見解ヲ下タシ之ヲ肯ンシ或ハ之ヲ拒マントスルコトヲ決スヘシ、若シ夫レ之ヲ拒マンカ現ニ当季ノ上納期限ヲ誤リ政府トノ約束ニ背クヲ如何セン、於此テ本日ノ会議ハ実ニ組合ノ存廃ニ関シテ決シテ一文案ノ議ニアラサルナリ、因テ請フ、各位能ク現情ヲ察シ将来ヲ測リ組合廃存ノ点ヨリシテ見解ヲ立テ、而シテ該文案ノ議ヲ決セラレンコトヲ於玆テ其意見ヲ述ル者数名アリ、今其要旨ヲ記シテ左ニ開列ス
林厚徳曰、彼文案ハ意外ニ出テタリ、若シ上納ノ後更ニ全体ノ借款ヲ遂クルヲ得スシテ此鉄道ノ約款ヲ政府約定ノ三策ニ就テ処分ヲ受クルトセハ、鉄道既納金ノ利息ハ猶途ヲ換ヘテ之ヲ損セサルモ、該銀行ニ有スル株高ノ利益ハ第三季ノ借項ニ償ヒ、其間殆ント資ルヘキモノナシ、諸君以テ如何トナス
井上喬曰、要スルニ此借項還清ノ算ハ既納ノ年賦金ヲ以テセハ之ヲ弁シ得サルヤ明ナリ、今之ヲシテ家禄即銀行株高ニ及フハ甚タ厭フヘシ故ニ此借項文案ハ到底肯領スルヲ得ス
西園寺公成曰ク、文案抵当ノ如キハ之ヲ拒ム、而シテ若シ此鉄道ヲシテ全ク我組合ノ所有トシテ此借款ノ議ニ及フモノナレハ其利息ハ或ハ七朱ニ至ルモ厭フヘカラス、又公ニハ其文案ヲ存スルモ究竟政府ノ処分ニ従フヘキ私約ヲ訂セハ妨ケスト為ス、諸君此議案ヲ採用セハ敢テ請フ再ヒ該銀行ニ照議セラレンコトヲ
北川亥之作曰、嘗テ聞ク、該銀行ハ先キニ一千八百万円許ノ紙幣ヲ発行セント欲シ、後故アツテ其額ヲ減少スト雖トモ其政府ニ貸出スヘキ額ハ猶之ヲ減セス、此ニ因テ我ニ対スル借項モ十分ノ妥議ニ出テサルナランカ、又其抵当ノ如キハ始メ我カ要望ニ応シテ証書ノ文案ヲ草スルニ際シ以為ラク、我上納金ノ証書ハ大蔵省ノ領収票ニシテ抵当ノ性質ヲ具ヘサル者ナリ、而シテ其修約ヲ照査シ、以テ信憑ヲ徴セントセハ関係ノ官省ニ照稟スヘキノ煩アリ、寧ロ簡ニ就キ到底違約ニ出テサル者タレハ則株高ニ対スル利益ヲ以テ抵当トスルモ妨ケナシト、遂ニ其文案ニ転作セシモノナリ、乃チ謂ラク、彼レ一タヒ領収票ノ理由ヲ信セハ更ニ之ヲ聴用センカ、願クハ再ヒ其弁解アランコトヲ欲ス
林厚徳又曰、究竟此証文案ノ如キハ結リ我カ情実ヲ諒セサル者ノ如シ然レトモ彼レ又其改案ヲ肯ンスルヤ之ヲ今日ニ期スヘカラス、且夫レ既納金ノ如キハ素ヨリ大蔵ノ領収票ニ外ナラスシテ、別ニ之ヲ改作シテ彼レノ需ニ応スルノ便ヲ得ス、由之観是、第三季ノ上納ハ或ハ了スルヲ得スシテ又他索モアルヘカラス、然レトモ其上納期限ニ及ヒ尚若干日ノ延期ヲ乞フハ難キニアラス、因テ暫ク無効ヲ期シテ尚一回彼レニ商議ヲ試ミントスルハ聊以テ異議ナシト為ス
辻盛令曰、如シ我カ望ミヲ得サルトキハ組合ノ瓦解アルモ奈何スヘカラス
池内久親曰、彼文案ハ之ヲ拒ム、然レトモ倘シ其金額ヲ以テ年賦還清ト為シ、或ハ銀行株利益ノ内年々十分一以内ヲ以テ償却スヘキ計ヲ得
 - 第8巻 p.521 -ページ画像 
レハ、更ニ之ヲ肯諾スヘシ
    第三節
右数氏ノ意見ニ於テ其本議ノ範囲外ニ奔ル者アリ、或ハ要旨ニ適切セサルモノアリテ、総理代人ハ一々之ヲ弁説シ以テ本議ノ要点ニ達シ、西園寺公成ハ更ニ答議ヲ立テヽ曰ク、第十五国立銀行ノ証書文案ハ須ラク之ヲ斥クヘシ、而シテ尚前志ヲ要求スヘシト、玆ニ於テ各位皆此議案ニ同ス、即チ総理代人ハ本議ノ決定ヲ告示シテ曰、証書文案ハ之ヲ斥ケ再ヒ前案ヲ要求スヘシ
右定議ニ因テ総理代人及ヒ林厚徳ハ明十六日該銀行ニ抵ツテ此決議ノ情由ヲ答弁シ、再ヒ前案ヲ要求シ、而シテ妥議ニ至ラサルトキハ更ニ会議ヲ設ケ、以テ此組合存廃ノ議ヲ決スヘキコトヲ約ス
又来ル十八日ノ定式会議ハ之ヲ廃スヘキコトヲ議定ス
右会議畢ツテ一同退場ス、時五時下

    第卅六回臨時会議 明治十年六月十八日於第一国立銀行閣内開之
                 出席人名
                     毛利元敏代理
                      難波舟平
                     大村純熙代理
                      山川前耀
                     榊原政敬代理
                      塩谷正直
                     徳川慶勝代理
                      井上喬
                     伊達宗城伊達宗徳代理
                      西園寺公成
                     蜂須賀茂韶代理
                      林厚徳
                     井伊直憲井伊直安代理
                      金田師行
                     久松勝成久松定謨代理
                      池内久親
                     亀井玆監代理
                      清水格亮
                     池田慶徳池田輝知代理
                      小倉穀豊
                     松平頼聡代理
                      辻盛令
                     前田利同代理
                      佐々高柯
                     池田茂政池田章政代理
                      水原久雄
                     九条道孝代理
                      藤井祐澄
                     毛利元敏代理
                      笠原昌吉
                     山内豊範代理
                      横田広太郎
                     松平茂昭松平慶永代理
                      武田正規
                     毛利元忠代理
                      柏村信
                     前田利嗣代理
                      北川亥之作
                 総理代人 渋沢栄一
                 欠席   池田徳潤
右一同午後三時ニ於テ議席ニ着ス
    第一節
総理代人ハ本月十五日第三十五回臨時会議ニ於テ決定セシ第三季分上
 - 第8巻 p.522 -ページ画像 
納金額借用証書ハ第十五国立銀行ノ文案ニ応スヘカラ《(衍)》ラスシテ今一応我前案ヲ要望スヘキコトヲ以テ、一昨十六日林厚徳ト与ニ該銀行ニ抵リ、中村清行・岩橋徹輔ニ面会シ、其応答結局セシ所ヲ左ニ報述ス
 渋沢栄一曰、今回示サレシ証書文案ハ之ヲ拒ム、何ントナレハ今如此文案ノ証書ヲ以テ一季分ヲ要借シ、而シテ第三季ノ後ニ要求全体ノ成ラサルトキハ、究竟政府ニ対シテハ其約款十二条ニ従ツテ処分ヲ受ケ、其既納ノ金額ヲ還璧スルヲ得スシテ右借項ノ期限ニ際セハ約ノ如ク株高純益ヲ以テ徴繳セラレ、而シテ此組合同盟ハ槩ネ鉄道ノ資多クシテ銀行ノ資少ナク蜂須賀氏ノ如キハ其㝡タルモノナリ、此ヲ以テ其一二季ニシテ還清スルヲ得サルヘシ、是甚タ計算上ノ難累ト為シ以テ被示ノ文案ヲ拒ム所ナリ
 又曰、窃カニ聴ク、貴行ハ我上納金ノ証書ヲ以テ大蔵省ノ領収票ニ過スシテ抵当タルヘキ性質ヲ有セサル者ト為スト、愚以為ラク、決シテ然ラス、其固ヨリ領収票ナリ、而シテ其上納ノ金ハ政府ノ者ニアラス、結リ此組合カ鉄道ニ有スル資本ニ帰ス、今之ヲ以テ泰西諸邦ニ行ハルヽボントノ例ニ比論スルモ蓋誣捏ニアラサルヘシ、借案已ニ破レ無要ノ弁ト雖トモ聊卑見ヲ述ルノミ
 彼曰、鉄道事業ノ目的ハ今日已ニ前図ヲ失シ、今也情実ヲ以テ協議スルヲ得ス、因テ借項全体ノ議モ未タ其判定ニ至ラサル所ナリ、又抵当件ノ如キハ到底其領収票ヲ容ルヽヲ得ス、何ントナレハ借項全体ノ妥議ニ出スシテ目下若シ領収票ヲ以テ第三季ノ貸借ヲ了シ、而シテ竟ニ政府約款上ノ処分ヲ受クルトセハ、其三策上何項ニ出ツルヲ計ルヘカラス、是領収票ヲ斥クル所以ナリ
 右応答ノ極ニ至リ、彼レ借項ヲ以テ年賦還清ノ説ヲ立ツ、因ツテ答ルニ、已ニ年賦ノ如キハ昨日我会議中ニ於テ立説スル者アリ、然レトモ其説本議ニ外ツルヽト為シ敢テ之ヲ抑止セリ、而シテ今此同案アリ、焉ソ知ラン、目下救護ノ策自他玆ニ暗遇セントハ、而シテ是亦今日覆議ノ要点ニアラス、然リト雖トモ倘シ同盟之ヲ望メハ再ヒ商議スヘキコトヲ以テス
    第二節
総理代人ハ右ノ演述ヲ了シ、更ニ議案ヲ設ケテ之ヲ立説ス、曰、夫レ年賦ノ説ヲ以テ一ノ談抦トセハ則如今、此組合ノ要務ハ目下第三季上納金ノ延期ヲ請ヒ、而後組合存廃ノ議ヲ決スヘキニ在リ、然而シテ若シ年賦ノ説ヲ以テ意外ノ幸慶トナシ、更ニ之ヲ議目トナシテ其決定ヲ求メントナラハ、則各位ノ望ミニ従ツテ之ヲ処理スヘシ
 林厚徳曰、今試ニ自家ノ意見ヲ以テ問説ニ対ヘン、夫レ前案ヲ要求スル再三終ニ十全ヲ得ス、事ニ玆ニ敗レントシテ負任甚タ重ク、季限幾ント薄リ又術策ナシ、此際年賦ノ説ニ従フトキハ聊家計ニ妨ケスト謂フヘカラサルモ、自家該銀行ニ有スル株高ノ純益ヲ予計セハ其幾分ヲ減スルモ猶能ク家計ヲ支持スルヲ得ヘシ、此ヲ以テ五ケ年賦ノ借案ヲ修メ、而シテ第三季後ニ至リ要求全体ノ妥議ニ出ルハ期スヘカラサレハ、十二月ニ迄ル六ケ月間ニ於テ、丁寧反覆、此組合ノ変案ヲ協議センコトヲ要スヘシ
 西園寺公成曰、如シ五ケ年賦ノ借案ヲ得ハ啻家計ニ難ナキノミナラ
 - 第8巻 p.523 -ページ画像 
ス、庶幾クハ他日主人寧家ノ日親シク組合存廃ノ議ヲ討究スルヲ得ヘシ、此ヲ以テ其年賦借項ノ案ヲ要望ス
 於玆テ各位皆等シク年賦ノ説ヲ可トナシテ、衆議一定ニ帰ス
因テ総理代人ハ、此借項ヲ以テ本議ノ要点ヨリ論スレハ則分岐ニ随フモノト雖トモ、実ハ前会ノ情勢ニ尋テ変行転処シ、別ニ間然スヘカラサル者ト為シ、乃チ該案決定ノコトヲ告明ス
又総理代人ハ、該案已ニ定ルヲ以テ其証書文案ハ旧文案ニ於テ唯タ其年度ヲ補入シ以テ可ナランヤト問フ
 衆議其可ニ決ス
又総理代人ハ、右本証書ノ外別本副証書ヲ要スヘキコトヲ該銀行ノ望ミアリテ今柏村氏其文案ヲ伝致スルコトヲ報告シ、乃チ其文案ヲ上読シテ各位ニ異議ノ有無ヲ問フ、蓋副証書ハ組合処分ノ際倘シ政府ヨリ金円還付アレハ則之ヲ以テ一時ニ償却ノ約ヲ要スルニ在リ
 衆位其文案ヲ以テ異議ナキニ決ス
又総理代人ハ、右文案ノ記月ハ六月ナリト雖トモ、上納ノ期七月五日ニ在レハ、須ラク七月一日ヨリ向キ六ケ月ニシテ、十二月卅一日ト定ムヘシ、然ルトキハ聊利息ニ於テ損スル所ナキヲ以テ、其記月更定ノ如何ヲ問フ
 衆議皆更定ヲ以テ異議ナシト為ス
総理代人又曰、已ニ借案要項ノ議ヲ決セハ速ニ其事由ヲ該銀行ニ照知スヘシ、而シテ其七月一日貸借ノ事務ヲ了スルニ於テハ敢テ会議ヲ設ケス、三季上納ノ日、輪札ヲ以テ報告スヘシ
衆位皆之ヲ肯諾ス
右会議畢テ一同退場ス、時午後四時
   ○東京鉄道組合ハ右六月十八日決議ニ基キ七月一日第十五国立銀行ヨリ金二十一万四千円ヲ借用シ、第三季上納金ノ不足額ヲ補ヒ、七月五日上納ス。後明治十一年八月二十日右借用元金ヲ返済ス。後掲「参考」記事参照。
   ○政府約款上ノ三策トハ東京横浜間鉄道払下条約第十二条ノ三項ヲ云フ。明治九年八月五日ノ項(本巻第四六〇頁)参照。


東京横浜間既成鉄道組合ヨリ第十五国立銀行ヘ差入タル副証書(DK080040k-0002)
第8巻 p.523-524 ページ画像

東京横浜間既成鉄道組合ヨリ第十五国立銀行ヘ差入タル副証書 (株式会社第一銀行所蔵)
    副証書
這回借用之金弐拾壱万四千円ハ年賦返済之旨証書ニ明文スト雖トモ其実京浜鉄道代価年賦上納金ノ調否組合ニ於テ速ニ熟議ヲ遂ケ本年十月中必ス之ヲ一決シ、若シ政府ニ請フテ其成約ヲ解クニ至ルトキハ政府エ既納ノ金員ハ可成現貨ヲ以テ下附セラルヘキヲ懇願シ、其許可ヲ得ルニ於テハ貴店ヨリ借用金全額利子共一時ニ返済可致候、因テ副証書如件
  明治十年七日一日
               東京横浜間既成鉄道組合
                    社中総代
                      渋沢栄一(印)
                    同
                      林厚徳(印)
 - 第8巻 p.524 -ページ画像 
    第十五国立銀行
        頭取
        支配人 御中
   ○本証書ハ今之ヲ得ズ。蓋シ前掲案文ノ期日ヲ七月一日ヨリ向フ六ケ月ニ改メシモノカ。



〔参考〕鉄道組合残事務書類(DK080040k-0003)
第8巻 p.524 ページ画像

鉄道組合残事務書類 (株式会社第一銀行所蔵)
    記
一金弐十壱万四千円也         本金之分
一金千七百五十八円九十銭四リ也    七月一日より八月十九日迄日数五十日年六朱之割日歩利息之分
合金二十一万五千七百五十八円九拾銭四リ
右者昨年七月借用致シ候金弐十一万四千円之儀此程旧鉄道組合既納金御還付相成候ニ付、書面之通元金利息共一同御引渡申候間、金円御査収、券書御返却、利息御請取書御遣し有之度候也
  明治十一年八月廿日        旧鉄道組合総代
    第十五国立銀行御中         渋沢栄一


〔参考〕第十五国立銀行創立ニ付願請条件 第五号明治一〇年五月(DK080040k-0004)
第8巻 p.524 ページ画像

第十五国立銀行創立ニ付願請条件 第五号明治一〇年五月
先般華族一同協議ノ上国立銀行ヲ創立シ、其資本ヲ大蔵省ヘ貸シ上、右金額ヲ以テ鉄道建築又外債支消ノ両款ニ御費用相成度、就テハ追テ御下渡シ可相成公債証書ノ仮証書速ニ御下渡被下度段懇願仕候処、仮証ノ儀ハ特別ノ訳ヲ以テ可下渡ニ付、銀行創立ノ儀ハ一般ノ手続ヲ以テ更ニ願出可受許可其他外債償却鉄道建築云々ト御指令相成奉拝承候右ニ付一般ノ手続ヲ以テ銀行創立初願差出候処、願之趣聞届候間創立証書並ニ銀行定款可差出旨被仰渡奉敬承候、然処初願指令書ニ付シ御下相成候御達書ニ掲載セル条款ノ趣当銀行ニ於テ異儀無之候ハヽ請書可差出旨是亦敬承、右ハ至重ノ命令将来経営上尤関係ヲ有スル要件ト奉存候間、猶留心協議仕候処、一体当銀行設立ノ主旨ハ明治九年十二月三十一日付ヲ以テ督部長岩倉具視ヨリ致開申候通、今回華族一同ヘ下賜ノ公債証書ノ金員ヲ以テ之ヲ四百八十有余人ニ分配シ、各自適宜其家事ニ充テ専用セシムルトキハ恐クハ雲散霧消ノ憂ナキヲ保タス、況ヤ国家経済ノ一端ヲ裨補スルニ由ナシ、然ルトキハ則上王室奉護ノ実ヲ失ヒ、下一家保全ノ路ヲ絶ツニ至ル、故ニ下賜ノ公債証書ヲ悉皆集合シテ資本トシ銀行ヲ創立シ、其通用紙幣ノ借上ヲ大蔵省ニ請ヒ、以テ聊 皇恩ニ奉答シ、兼テ家産永久ノ策モ亦樹ツ所アラントスルノ素志タル儀ハ縷々御洞察被為在候事ト奉存候、吾等ノ衷情御洞察被成下、今回御下付相成候御達書及銀行例条款ノ内左ニ記載致候条々特別之御詮議ヲ以御許可被成下度、此段奉懇願候也
○中略
              第十五国立銀行発起人総代
  明治十年四月廿五日          徳川慶勝
    大蔵卿大隈重信殿代理
      大蔵大輔 松方正義殿
 - 第8巻 p.525 -ページ画像 


〔参考〕第十五国立銀行創立ニ付願請条件 第五号明治一〇年五月(DK080040k-0005)
第8巻 p.525 ページ画像

第十五国立銀行創立ニ付願請条件 第五号明治一〇年五月
○上略
開計
一金三千〇弐拾七万九千〇〇五円 華族一同受領ノ禄券総高
    内訳
  金三千〇拾壱万千弐百九拾五円 五朱利付ノ分
  金拾六万三千七百三拾円    六朱利付ノ分
  金三千九百八拾円       七朱利付ノ分
外ニ
  金千〇四拾八円廿二銭五厘
   是ハ明治九年太政官第百八号布告中第五条ニ掲クル所ノ成規ニ拠リ各家受領金禄高ノ内五円未満ニシテ現金渡ノ総計ナリ
右之禄券ヲ以テ銀行ニ加入スルニ方リ、先ツ其実価ヲ算出シ、該実価丈ケノ銀行紙幣ヲ大蔵省ヨリ銀行ニ受取ル者トス
 客歳ノ稟議ヲ以テ預定ノ実価則銀行紙幣ノ総高
  一金千八百拾八万四千五百七拾二円
    但シ禄券百円ニ付、五朱利ハ六拾円、六朱利ハ七拾円、七朱利ハ八拾円ノ賦
     (下ゲ紙)
     客歳預定ノ実価ト本年確定ノ実価ト差引比較ノ差
   金百五拾壱万七千三百八拾四円五銭
   本年再三稟議ノ上確定ノ実価則銀行紙幣ノ総高
  一金千六百六拾六万七千百八拾七円九拾五銭
   但シ禄券百円ニ付、五朱利ハ五拾五円、六朱利ハ六十三円、七朱利ハ七拾一円ノ賦
   内
  金千五百万円 大蔵省へ貸上
  金百六拾六万七千百八拾七円九拾五銭 余金
右余金ノ処分ハ、客歳諸君ヘ協議ノ如ク、諸省使府県ヘ貸上スルカ又ハ京浜間鉄道ノ資金等ニ充ルノ見込ナリ
○中略
  明治十年五月 督部長 岩倉具視
   ○明治九年十二月三十一日第一号則チ外債償却鉄道築造銀行設立ノ願書ヲ大蔵卿ニ呈出セシニ十年二月三日指令下ル。
   ○明治十年三月七日第二号則チ銀行創立願書ヲ大蔵卿ニ呈出セリ。三月二十一日許可セラル。
   ○明治十年三月二十一日許可令ト併セテ大蔵卿ヨリ第三号則特許ノ条款及銀行紙幣貸借ノ案款ヲ指示シ来リ、異議ナキヲ以テ四月二十五日第四号則請願書ヲ差出セリ。