デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

2章 交通
2節 鉄道
1款 東京鉄道組合
■綱文

第8巻 p.525-529(DK080041k) ページ画像

明治10年8月18日(1877年)

是日、第三十七回会議ニ於テ栄一過般来第十五国立銀行ニ対シ上納金連季貸借約定ニ付交渉ヲ為セドモ之ニ応ゼズ、而シテ毎季殊別ヲ以テ之ヲ約定
 - 第8巻 p.526 -ページ画像 
スベシト云フヲ告ゲ、斯ノ如クナレバ同組合ノ存廃ヲ決スベキ極ニ到リタルヲ以テ須ラク討議アランコトヲ求ム。仍テ衆議先ヅ華族督部長岩倉具視ニ内稟シテ其善処方ヲ請フニ決ス。


■資料

鉄道組合会議要件録 第三巻(DK080041k-0001)
第8巻 p.526-529 ページ画像

鉄道組合会議要件録 第三巻 (株式会社第一銀行所蔵)
    第三十七回定式会議 明治十年八月十八日於第一国立銀行閣内開之
                 出席人名
                     毛利元敏代理
                      難波舟平
                     大村純熙代理
                      山川前耀
                     伊達宗徳代理
                      西園寺公成
                     九条道孝代理
                      朝山常順
                     久松定謨久松勝成代理
                      池内久親
                     榊原政敬代理
                      塩谷正直
                     井伊直憲井伊直安代理
                      金田師行
                     松平頼聡代理
                      辻盛令
                     徳川慶勝代理
                      井上喬
                     亀井玆監代理
                      清水格亮
                     池田茂政池田章政代理
                      三谷峻
                     蜂須賀茂韶代理
                      林厚徳
                      伊達宗城
                     毛利元徳代理
                      笠原昌吉
                     前田利嗣代理
                      北川亥之作
                     前田利同代理
                      浅野長雄
                     毛利元忠代理
                      柏村信
                 総理代人 渋沢栄一
                 欠席   松平茂昭
                 同    松平慶永
                 同    山内豊範
                 同    池田輝知
                 同    池田徳潤

右一同午後二時下ニ於テ議席ニ着ス
    第一節
総理代人ハ、去ル十三日組合中ノ数名ト第十五国立銀行ノ数員ト懇会ヲ開キ晤談セシ情由ヲ左ニ略陳ス、曰、頃日林厚徳等ト商量シ、嘗テ第十五銀行ニ要求セシ借項ノ為メニ一懇会ヲ設ケ、彼ノ熊谷武五郎・岩橋轍輔等ト吾数氏ト対遇シ、我要求スル所ハ彼レ到底肯諾スルヤ否ヲ詢問ス、彼等答テ目的アリト云、因テ将来此借項ハ毎季欠乏ナク弁貸スルヤ、或ハ幾分ヲ弁スルヤヲ問フ、彼レ却テ問フ、我組合ノ目的ハ曩ニ青森軌道新築ノ挙ヲ転シテ既ニ今日ノ方向アルハ、鋭意屈セス
 - 第8巻 p.527 -ページ画像 
シテ然ルモノカ、抑又情勢ニ順ヒ已ムニ愈レリトスルモノカ、答曰、何ソ已ムニ勝レリトセンヤ、然レトモ禄制ニ会ヒテ前志ヲ奪ハレ竟ニ今日ノ借項アルニ至リシナリ、彼等曰、今専マニ諾スヘカラスト雖トモ到底其求メニ応スルヲ得ヘシ、但聴キ難キ所ハ該銀行創立前岩公ニ係ル情由ノ如キハ今日ノ銀行ヲ以テ談スヘカラス、惟ニ今日銀行ノ為シ得ヘキ所ハ毎季特談ヲ以テ其借項ヲ要スヘクシテ尽期連借ノ条約ヲ設クルヲ得ス、且其利息モ六朱ニシテ肯ンスヘカラス、以テ多少増加スルヲ要スト、我尚岩公ニ係ル情由ヲ切論ス、彼曰、前日何等ノ談アルモ今日之ヲ庸フヘカラスシテ倘其紛論ニ至ルトキハ、縦令訟庭ニ臨ムモ該銀行ハ能ク条理ヲ述ヘテ組合ノ要求ヲ攘フコトヲ得ヘシト、彼我問答已ニ此極ニ至レリ、之ニ因テ緊要ナル一議目ヲ起セリ、須ラク本会ニ於テ之ヲ決定スルヲ要ス
    第二節
総理代人ハ左ノ議目ヲ発言セリ
第十五銀行ノ内情ハ到底我要求ニ応スル所アリト雖トモ、上納金連期貸項ノ条約ハ修メ難ク、毎季殊別ヲ以テ之ヲ約定スヘシト云、因テ此組合ハ彼ノ内情ニ従ヒ毎季借項ヲ求ムヘキカ、或ハ之ヲ謝絶スヘキカ且夫彼ノ内情ニ従フトセハ毎季借項ノ金額ハ其弁アルニ任セテ若不足ヲ生スルトキハ各家ノ嚢裡ヨリ之ヲ補ヒ、其利息モ亦彼ノ望ミニ従フトスルカ、或ハ其謝絶ト与ニ組合ノ存廃ヲ決スヘキカ、今日実ニ一断存廃ニ迫レリ、各位須ラク討議アルヘシ
玆ニ於テ各位ノ答議スル所数派ニ出テタリ、左ニ其概要ヲ開列ス
柏村信、到底我要求ハ達スヘカラス、若シ其達スルモ尚返璧ニ至テ目的ナシ、因テ要スル所ハ荏苒トシテ困難ノ極ニ到ルナキヲ希望ス林厚徳、既定ノ計算ヲ以テ要求ノ全キヲ得ルモ、七年ノ後八朱ノ目的ナル純益ヲ以テ借項ノ原利ヲ清償スルコトヲ計レハ尚以テ険筭タリ、然レトモ決シテ之ヲ辞スヘカラスト雖トモ、若其借項減額ノ為メ再ヒ増額ヲ募リ、或ハ利息ヲ増加セントスルニ至テハ断シテ之ニ応シ難シ
西園寺公成、既ニ家計ニ革渝アリテ、今日又担保額ヲ維持スヘカラス、然レトモ若シ借項全キヲ得レハ固ヨリ之ヲ要セント欲ス、此外又策ノ出ツヘキナシト云、此議ニ同スル者五名、即チ松平頼聡代理辻盛令、久松両家代理池内久親、池田茂政・池田章政代理三谷峻、亀井玆監代理清水格亮等ナリ
井上喬、借項ヲ得サレハ外ニ妙計ナシ、況利息増加ノ如キハ其計筭ヲ得ス、雖然目下断議シ得ス、主公ニ詢リテ回答スヘシ、此議ニ同スル者一名、毛利元敏代理難波舟平ナリ
塩谷正直、更ニ各位ノ担保シ得ヘキ金額ヲ糾合シ、其足ラサル所ヲ以テ更ニ借案ヲ計策スルヲ要ス(後ニ金田師行ノ議ニ同ス)
北川亥之作、縦令要求借項ヲ得サルモ、自家担保金額ハ之ヲ維持スヘシ
金田師行、担保金ノ幾分之ヲ維持スル目的アリ、然レトモ借項ノ全キヲ得サルトキハ又目的ヲ失スルニ帰セン、此説ニ同スル者四名、前田利同代理浅野長雄、大村純熙代理山川前耀、榊原政敬代理塩谷
 - 第8巻 p.528 -ページ画像 
正直、毛利元忠代理柏村信等ナリ
右数派ノ答議ヲ以テ総理代人ハ、其強半ハ縦令借項ナルモ却テ清債ノ難キヲ慮リテ到底維持スヘカラストナスノ思意ナリト認メ、此ヲ以テ更ニ組合存廃ノ極点ニ迫リ、各位以テ対議アランコトヲ求ム
伊達宗城云、既ニ今日ニ至テ廃業セハ外ニ体面ヲ失シ内ニ遺憾ヲ抱キ誠ニ忍フヘカラサル所ニシテ、且尚第十五銀行ニ向ヒ敢為要求ノ権利アリト雖トモ、恐クハ労シテ功ナキニ帰センカ、林厚徳云、此事業ハ到底衆華族ノ全力ヲ以テ其終局ヲ担ハサルヨリハ他策ナシトス、願クハ第十五銀行ニ対シ更ニ借項ヲ十分ニ議スヘシ、柏村信ハ衆論ニ殿シテ左ニ記載スル議案二項ヲ開示セリ、因テ総理代人ハ之ヲ展読シ、其第一項ヲ以テ各位ノ討議アランコトヲ求ム、各位皆此意案ニ協同セリ
    柏村信議案之一
 鉄道買収代価年賦上納担保金ノ儀ハ、各自家計精算ノ上将来ノ目的相立、出金ノ結約確守スヘキハ勿論ノ処、豈計ランヤ昨九年八月家禄ハ公債証書ヲ以テ一時下渡サルヽノ方法ヲ設ケラルヽニ付テハ、其担保金前約ノ如ク履行相成リ兼候向モ不尠ニ付、種々協議ヲ遂ケ候、夫華族銀行設立ノ儀督部長ヨリ示諭ニ付、此鉄道組合ニ於テハ各家禄券ヲ以テ方法ヲ立、其年賦上納金ヲ完納シ、一不動産ヲ領収シテ家産ヲ維持致シ度、就テハ禄券悉皆銀行ヘ差入レ難ク事由ヲ具陳シ反復及答弁候処、各家ノ禄券分割ノ儀ハ難聞届ニ付悉皆銀行ヘ差入ルヘク、銀行設立ノ後ハ既成鉄道ハ華族一般ノ所有ニ致シ候トモ其他如何様ノ処分モ可相成ニ付、兎ニ角禄券不残銀行ヘ差入ル可クトノ懇諭ニ付、各家其意ニ任セ候次第ニ付、毎季ノ上納金額ヘ年利六朱ヲ加ヘテ借用ノ上政府ト此鉄道組合トノ成約ヲ完了シ、鉄道ヲ此組合ヘ受取、就業ノ際ニ至テハ衆華族一般ノ所有ニ被成下度旨ヲ銀行ヘ依頼シ、若シ銀行ノ都合ニ依リ示談不行届トキハ、不得止解約ノ儀ヲ大蔵省ヘ稟請シテハ如何
    同議案之二
 前条解約ニ至ラハ既納ノ金額六拾万弐千円ハ現金ヲ以テ下付セラレンコトヲ大蔵省ニ請願シ、是ヲ准サルヽキハ第十五銀行ノ借財ヲ仕払ヒ、残リ金額ヲ各家出金高ヘ割戻スハ当然ナレトモ、此金額ヲ資本トシテ鉄道一分部ノ裨補ニ相成ルヤウノ会社法ヲ設立シ置カハ、亦鉄道再興ノ好機会モ之レ有ルヘキカ、諸公閣下請フ、熟慮アランコトヲ
   但シ本条御同意ナラハ惣理代人ヘ依頼有之度候
    第三節
各位已ニ柏村信ノ議案ニ協同シ、其要求ノ途ニ至ツテ一派ハ岩公ニ具陳スヘキト為シ、一派ハ該銀行ニ要求スヘシト為ス、総理代人ハ両説ヲ斟酌推明シ、以テ岩公ニ具陳スヘキ者ト定メ、而シテ此要求アルモノハ、蓋該銀行ノ創立前右府公ノ勧誘説着アルニ係ルヲ以テ、今其本原ノ地位ニ溯リ、我カ要求ニ十全ノ権理アルコトヲ愬ル所ナリト為シ而シテ其具牒ノ体裁ハ、此組合ノ由来変遷ヨリ以テ今日ノ難累ヲ取ルニ至リシ情状ヲ提記シ、輪議規則ニ照ラシテ之ヲ決定シ、而後組合ノ総代人ヲ撰ヒ、之ニ該稟扣ヲ具申セシムヘキヲ以テス、乃チ衆評シテ
 - 第8巻 p.529 -ページ画像 
肝煎ニ委托シ肝煎之ヲ肯諾セリ
    第四節
総理代人ハ各位ニ問フ、柏村信議案ノ第一項ハ已ニ決議シ了ス、其第二項モ本日之ヲ議定センカ、又ハ後会ニ付スヘキカ、衆皆後会ヲ以テ議定センコトヲ望ム、因テ本会ノ議事ヲ竣ル
右畢テ各位退場ス、時五時下
   ○岩倉具視ニ宛テタル稟牒ハ後十一月七日上申、同二十七日容レラレスシテ附箋回附アリ、次掲明治十年十一月二十九日ノ項参照。