デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

2章 交通
2節 鉄道
11款 北越鉄道株式会社
■綱文

第9巻 p.51-70(DK090006k) ページ画像

明治31年2月3日(1898年)

栄一当会社ノ資金調達ニ尽力シ来リシガ、是日兜町ノ私邸ニ開カレタル取締役会ニ於テ、直江津・沼垂間工費ニ充ツル資金調達ノ為ノ社債募集ヲ協議シ、ソノ募集要領ヲ決ス。爾来数次ニ亘リ取締役会ニ出席シテ、地方ニオケル応募促進ニ力ヲ致ス。


■資料

(北越鉄道株式会社) 取締役会決議録(DK090006k-0001)
第9巻 p.51-59 ページ画像

(北鉄鉄道株式会社) 取締役会決議録 (渋沢子爵家所蔵)
明治三十年七月十日午後二時、当会社東京派出所ニ於テ取締役会開会
        出席者
           専務取締役 渡辺嘉一  (印)
           取締役   前島密
           同     原六郎
           同     末延道成
           同     今村清之助
本月決議ノ事項左ノ如シ
一原六郎・今村清之助・末延道成三取締役ノ斡旋ヲ以テ、約金五拾万円ヲ目的トシテ借入金ヲ為ス事
一第七回株金払込一株ニ付金五円宛、本年十月十五日限リ払込ヲ為サシムル事

明治三十年九月十四日午前十時、東京市麹町区八重洲町壱丁目壱番地北越鉄道株式会社ニ於テ取締役会開会
        出席者
           専務取締役 渡辺嘉一 (印)
           取締役   前島密
           同     原六郎
 - 第9巻 p.52 -ページ画像 
           同     今村清之助
           同     末延道成
本日決議ノ事項左ノ如シ
○中略
一本年七月以来一時借入金ヲ為シタルコト別紙○略スノ通リ金七拾四万千百五拾五円弐拾六銭四厘トナレリ、然ルニ目下ノ状況ヲ見ルニ来月十五日ノ払込迄ニハ尚金拾五万円ノ不足ヲ告ケントス、依テ該金額ノ支途ハ第一銀行・今村銀行・帝国商業銀行ヘ借入方ヲ協議セントス
○中略
一当会社資本金ノ不足ナルコトハ、起業ノ当初ヨリ予期セシモノヽ如ク、廿九年二月臨時総会ニ於テ四拾万円ノ増額ヲ決議シ、尋テ同年十二月当時建築課長ヨリ時ノ専務取締役ニ提出シタル資本不足額調査書ヲ見ルニ、現ニ百弐拾参万円余ノ不足アルヲ見ル、然ルニ右調査ハ未タ正確ト認メ難キヲ察シ、本年四月初旬ヨリ右調査ニ従事セントセシモ、同月廿五日取締役会ノ紛擾ヨリ引続キ株主ノ臨時総会請求トナリ、会社ノ根拠ハ暴徒ノ囲繞中ニ在リ、旧重役トノ訴訟ノ裡ニ本社ヲ東京ニ移転スル等、本年八月初旬迄ハ内外ノ混雑ニ時日ヲ費消シ、右等取調ノ余日ナカリキ、八月以降ニ至リ始メテ従来ノ資本収支等ノ調査ニ着手セシモ、従来施行ノ事務頗ル繁雑ヲ究メ、整理上容易ニ効果ヲ奏セザルモ、不取敢直江津・沼垂間八拾五哩ノ線路ヲ完成セシムル為ニ必要ナル残工事費ヲ調査セシメシニ、概算金百五拾四万弐千余円ノ多額ヲ要スル見込ナリ、乍併右ハ未タ充分ナル調査ニアラザルヲ以テ、整理ノ進行ニ従ヒ実地ニ付精細ノ調査ヲ遂ケ、其不足額ノ予算ヲ定メ、追テ之ガ支出方法ヲ協議決定セントス

明治三十年十二月一日、東京市麹町区八重洲町壱丁目壱番地北越鉄道株式会社ニ於テ取締役会開会
                出席者
                  前島密
                  今村清之助
                  末延道成
                  渡辺嘉一 (印)
本日決議ノ事項左ノ如シ
○中略
一元来当会社資本金ハ不足ナルカ上ニ、起工ノ順序ト工事進行ノ程度ハ株金払込ノ度ト相伴ハス、既ニ一時借入金ト手形発行高トヲ合スレハ金八拾三万七千余円ニ達スルモ、資本金不足額補充方法決定スル迄ノ間ニ要スル工事費其他ノ支払ハ、一時約束手形ヲ振出シ、又ハ銀行ヨリ借入金ヲナシテ之レヲ支弁シ、成ルヘク工事速成ノ方針ヲ取リ、会社ノ利益ヲ計ラントス
一本年九月十四日取締役会ノ協議ニ付セシ当会社直江津・沼垂間線路ニ要スル工費不足額調査ノ件ハ、大ニ其歩ヲ進メシヲ以テ、不日予
 - 第9巻 p.53 -ページ画像 
算ヲ定メ、更ラニ取締役会ヲ開キ審議スヘキモ、曩ニ報道セシ概算額金百五拾四万円余ニテハ到底不充分ニシテ、尚多額ヲ要スル見込ナリ、本件ハ会社ニ取リ最モ重大ノ件ニ付、次回重役会ニハ監査役ノ臨席ヲ求メ、大ニ審議スル所アラントス

明治三十年十二月十一日、東京市麹町区八重洲町壱丁目壱番地北越鉄道株式会社ニ於テ取締役会開会
                出席者
                  前島密
                  末延道成
                  今村清之助
                  渡辺嘉一 (印)
本日決議ノ事項左ノ如シ
○中略
五本年九月十四日取締役会ニ於テ審議シタル当会社鉄道直江津・沼垂間八十五哩ニ対スル工費不足額ノ件ハ、爾来再調査ノ結果、同線路ヲ成功開通セシメン為メ、別紙予算書諸表ノ通リ、現在資本金参百七拾万円ノ外尚金百八拾五万円ヲ要スルモノト算定ス、依テ此資本不足額ハ、一時借入金若クハ社債ヲ募集シテ之ヲ補充シ、同線路ヲ成功開通セシメントス
六前項ノ件ヲ株主ニ協議スル為メ、三十一年一月二十日株主通常総会ニ引続キ同臨時総会ヲ開会セントス
明治三十年十二月廿五日、東京市麹町区八重洲町壱丁目壱番地北越鉄道株式会社ニ於テ取締役会開会
                出席者
                  前島密
                  原六郎
                  末延道成
                  今村清之助
                  渡辺嘉一 (印)
本日決議ノ事項左ノ如シ
○中略
六本月十一日取締役会ニ於テ審議シタル直江津・沼垂間八十五哩ヲ成功セシムル為メ、当会社現在株金参百七拾万円ノ外更ラニ必要ナル不足金百八拾五万円補充ノ件、明治廿九年二月廿五日株主臨時総会ニ於テ決議セル金四拾万円増資取消ノ件、及延長線路布設本免状下付請願ニ必要ナル定款附則追加ノ件ハ、左ノ通三十一年一月二十日ノ株主臨時総会議按トシテ之ヲ株主ニ通知セントス
  明治三十一年一月二十日株主臨時総会議按
第一号
一当会社鉄道線路ノ内直江津・沼垂間八拾五哩ノ線路ヲ成功セシメン為メ、現在ノ資本金ノ外尚ホ金百八拾五万円ヲ要スルヲ以テ、此際当会社ノ鉄道線路其他一切ノ財産ヲ抵当トシ、一時借入金ヲナスカ
 - 第9巻 p.54 -ページ画像 
又ハ債券ヲ発行シ社債ヲ募集シテ之ヲ補充シ、以テ直江津・沼垂間ノ線路ヲ開通セシメントス
二前項ノ一時借入金ヲ為スカ、又ハ社債ヲ募集スルカ、若クハ一部ヲ一時借入金トシ一部ヲ社債トスルカハ、之ヲ取締役会ニ一任シ、時期ヲ見計ヒ便宜之ヲ処理スルモノトス
三一時借入金利子、貸借契約、又ハ社債ノ利子、募集手続、期日、償還ノ方法、債券取扱規程等ハ総テ取締役会ニ一任シ、之ヲ処理スルモノトス
第二号
一当会社鉄道新津・新発田間ノ線路建設ニ要スル工費補充ニ対シテハ、追テ時機ヲ見計ヒ増株ヲ募集シ、而シテ其工事ニ著手スルモノトス
第三号
一明治廿九年二月廿五日株主臨時総会ニ於テ決議セル直江津・新発田間及新津・沼垂間ノ線路建設資金参百七拾万円ニ対シ、金四拾万円増資ノ件ハ此際之ヲ取消スモノトス
  但本按決議ノ結果、同臨時総会ニ於テ決議セシ定款改正及株式割付等ニ関スル条項ニ異動ヲ生スルヲ以テ、右ハ取締役ニ一任シ之ヲ処弁スルモノトス
第四号
一当会社鉄道延長線路布設本免状下付請願ニ付必要アルヲ以テ、定款ニ左ノ附則ヲ追加セントス
    附則
一延長線路建設費及増資金百九拾万円ハ之ヲ参万八千株ニ分チ、定款改正認可ノ日ヨリ五ケ月以内ニ於テ、壱株ニ付金五円以上ヲ第一回株金払込額トシテ払込マシメ、残額ハ定款第十六条ニヨリ漸次之ヲ払込マシムルモノトス
第五号
一定款改正請願ニ際シ、前按附則其他条文及字句ノ修正ハ之ヲ取締役会ノ決議ニ一任スルモノトス

明治三十一年一月廿九日、京橋区内山下町帝国「ホテル」ニ於テ取締役会開会
                出席者
                  前島密
                  原六郎
                  今村清之助
                  末延道成
                  渋沢栄一
                  大倉喜八郎
                  渡辺嘉一 (印)
本日決議ノ事項左ノ如シ
一本会社工事費不足分ハ別紙月割額ノ通リニ付、更ニ相当ノ方法ヲ設ケテ借入ルヘキ事
 - 第9巻 p.55 -ページ画像 
一右借入ノ方法ヲ立ル迄、差向入用ノ金額凡金弐拾万円ハ第一銀行及今村銀行ニ依頼シ、一時融通ヲ謀ル事
○中略
  建設費不足額借入月別調
一金五百五拾五万円        建設費予算総額
      内
  金参百七拾万円        現在資本株金
  差引
 金百八拾五万円         借入ヲ要スル資本金不足額
    内
  金六拾壱万六千八百五拾円   仕払約束手形発行高
  金弐拾万円          当坐借入金
  差引
  金百参万参千百五拾円     今後借入ヲ要スル高
    内
   金弐拾七万千百五拾円    二月分
   外ニ金参拾壱万千八百五拾円 手形可書換高
   金拾万九千円        三月分
   外ニ金参拾万五千円     手形可書換高
   金九万八千円        四月分
   金拾五万九千円       五月分
   金拾弐万円         六月分
   金六万円          七月分
   金六万円          八月分
   金九万四千円        九月分
   金参万七千円        十月分
   金弐万五千円        十一月分

明治三十一年二月三日、東京市日本橋区兜町渋沢邸ニ於テ取締役会開会
                出席者
                  原六郎
                  末延道成
                  今村清之助
                  渋沢栄一
                  大倉喜八郎
                  渡辺嘉一 (印)
本日決議ノ事項左ノ如シ
  北越鉄道株式会社社債募集ニ関スル要領
    社債ノ目的及金額並ニ利子
一本社工費予算不足額ニ対シテハ債券ヲ発行シ、金百八拾万円ヲ限リ社債ヲ募集スル事
一社債券ハ百円、五百円、及千円ノ三種トス
一売出価格ハ額面百円ニ付九拾七円以上トス
 - 第9巻 p.56 -ページ画像 
一申込保証金ハ額面百円ニ付金五円トス
一利子ハ一ケ年一割即チ百分ノ十トス
    元金償還
一社債ノ元金ハ明治三十三年一月以後十ケ年以内ニ於テ、時々金額ヲ定メ、之ヲ償還スルモノトス
    利子支払
一毎年一月及七月十五日以内ノ両度ニ於テ、利子ヲ支払フモノトス
    社債払込
一社債金払込ハ申込金額ヲ折半シ、両度ニ払込マシメ、其都度半額ニ対スル額面全額払込済債券ヲ渡スモノトス
    取扱銀行
一東京・大坂・京都・名古屋・新潟・三条・長岡・柏崎・直江津ニ於テ定ムヘシ
    雑件
一債券取扱規程・募集手続其他ノ細則ハ追テ編成シ、重役会ノ決議ヲ経テ実行スル事

明治三十一年三月五日、東京市麹町区八重洲町壱丁目壱番地北越鉄道株式会社ニ於テ取締役会開会
                出席者
                  前島密
                  末延道成
                  今村清之助
                  大倉喜八郎
                  渋沢栄一
                  渡辺嘉一 (印)
本日決議ノ事項左ノ如シ
一債券ハ五百円ノ一種トスル事
一債券募集広告ノ件
  但広告按別紙ノ通 ○略ス。後掲中外商業新報所載広告参照。
一募集締切期日ハ広告ノ日ヨリ二十日目ト定ム
  但募集締切期日ヨリ十日以内ニ応募者ヘ通知書ヲ発スルコト
一募集締切期日ヨリ廿五日目ヲ以テ第一回払込期日トシ、第二回払込期日ハ第一回払込期日ヨリ満六ケ月目トス
一取扱銀行数左ノ如シ
  東京  第一銀行     同   今村銀行
  同   第廿七銀行    同   帝国商業銀行
  横浜  第二銀行     京都  第一銀行支店
  大阪  第一銀行支店   名古屋 第一銀行支店
  新潟  第一銀行支店   三条  三条銀行
  同   新潟銀行     見附  見附銀行
  柏崎  柏崎銀行     直江津 柏崎銀行支店
  同   第百卅九銀行支店 長岡  第六十九銀行
  新発田 新発田銀行    東京  三菱銀行
 - 第9巻 p.57 -ページ画像 
一社債募集前三月及四月中旬迄ニ要スル工費ハ、申込保証金ヲ引当、不足ノ分ハ第一銀行及第二銀行ヘ協議ヲ遂ケ融通ヲ計ル事

明治三十一年三月廿一日、東京市麹町区八重洲町一丁目一番地北越鉄道株式会社ニ於テ取締役会開会
                出席者
                  渋沢栄一
                  大倉喜八郎
                  末延道成
                  今村清之助
                  原六郎
                  渡辺嘉一 (印)
本日決議ノ事項左ノ如シ
一債券取扱規定第拾七条・第拾八条・第拾九条・第廿条・第廿五条・第廿六条・第廿七条及第廿八条ヲ修正シ、第廿九条・第三十条ハ刪除ス
一本年三月五日重役会決議第四項社債取扱規程第廿五条社債払込期日ヲ取消シ、第一回払込期日ヲ本年五月一日ヨリ同十日迄、第二回払込期日ヲ本年八月一日ヨリ同十日迄ト改ム

明治三十一年四月四日、東京市麹町区内幸町東京倶楽部ニ於テ取締役会開会
                出席者
                  渋沢栄一
                  前島密
                  末延道成
                  渡辺嘉一 (印)
本日決議ノ事項左ノ如シ
一社債募集ニ付応募勧誘方法ヲ協定ス
一取締役前島密氏ニ左案ノ書状ヲ送ルコト
 拝啓、陳者本年一月廿日当会社株主臨時総会ニ於テ決議シタル社債又ハ一時借入金ノ儀ハ、二月三日取締役会ニ於テ社債募集ノ事ニ一決候処、右実行ノ上社債払込金ヲ得ルニ至ル迄一時工費支払ニ差支候間、其金ノ融通ヲ計ル為メ、当会社ノ名義ヲ以テ約束手形ヲ発行可致事ニ取締役会ニ於テ協定致候ニ付テハ、取締役協議の上貴所ヘ其裏書人タルコトヲ御依頼申上候、右金員ハ元ヨリ会社ノ諸支払ニ宛ツル者ニ有之、其ノ債務ハ当会社之レカ一切ノ責ニ任スヘキハ勿論ノ義ニ有之、決シテ貴所ヘ御迷惑相掛候筋合ニ無之候間、為後日右御承知置被下度 早々敬具
              北越鉄道株式会社
  明治三十一年四月二日     専務取締役 渡辺嘉一
    前島密殿

明治三十一年四月廿六日、麹町区内幸町東京倶楽部ニ於テ取締役会開
 - 第9巻 p.58 -ページ画像 

                出席者
                  前島密
                  末延道成
                  原六郎
                  渡辺嘉一 (印)
一本日左ノ議案ヲ提出審議セシ処、出席取締役ニ於テハ原案ニ異議ナキモ、取締役今村清之助氏欠席ニ付、次回ノ重役会ニ於テ更ニ之ヲ再議ニ付シ、審議協定スルコトニ決ス
    議案
 今回当会社々債募集ノ結果ハ、第一回募集金九拾万円ニ対シ、額面金参拾参万九千円、此金参拾弐万八千九百弐拾四円九拾銭、第二回同九拾万円ニ対シ額面金拾九万六千円、此金拾九万〇弐百拾円〇壱銭ニシテ、此内既借金ヲ以テ差引クヘキ分第一回ニ於テ金弐拾万円第二回ニ於テ金五万円ナリ、依テ此際社債トシテ新タニ払込ヲ受クヘキ金額ハ、第一回ニ於テ金拾三万四千九百弐拾四円九拾銭、第二回ニ於テ金拾四万千七百拾円〇壱銭、二口ノ合計金弐拾七万六千六百三拾四円九拾壱銭ニ過キスシテ、尚不足額ハ第一回ニ金五拾六万壱千円、第二回ニ金七拾万〇四千円、合計金百弐拾六万六千円《(五)》ナリトス、如斯結果ナルヲ以テ、此募集金ヲ既借金償還ニ宛ツル時ハ、直ニ工費其他ノ諸支払ニ差支ヲ生シ、現在ノ儘工事ノ進行ヲ計ルコト得テ望ムヘカラス、今日ニ於テ既ニ工事ノ準備上予定ヨリハ一ケ月余ノ遅延ヲ来シタルヲ以テ、此際充分ニ善後ノ策ヲ講究スルハ焦眉ノ急務ニシテ、一日モ猶予スヘカラサルニ至レリ、果シテ救済ノ途ナキカ、勢ヒ全工事ヲ中止スルノ不得止不幸ニ陥ルヘシ、依リテ今仮リニ此後二三ケ月ノ間ニ百方勧誘此不足額ヲ募集シ得ルモノト見込ムヲ得ハ、玆ニ左ノ条項ヲ執行シ工事ノ進行ヲ計ラントス
一別紙現在ノ借入金及約束手形発行高金百弐拾弐万七千九百余円ノ内社債ニ引換フヘキ分ヲ除キ、残額ハ総テ各銀行ニ熟議ヲ遂ケ、引続キ手形ヲ以テ融通ヲ計ル事
一今回払込ノ社債募集金弐拾六万千八百五拾壱円四拾壱銭ハ総テ工事費ニ引当ル事
  但本文金額ノ内第二回ニ払込ムヘキ社債金拾四万〇弐百拾弐円〇壱銭ヲ引当トシ、其払込期日前ニ於テ多少ノ融通ヲ為スコトヲ銀行ヘ協議承諾ヲ得ル事
一前項各銀行ヘ協議ヲ遂クルニ付テハ、各重役協同尽力ヲ要スル事
一此際東京ニ於ケル事務ハ在京ノ一取締役ニ於テ担任シ、渡辺嘉一ハ至急線路工事現場ヘ出張スル事

明治三十一年五月四日、東京市麹町区内幸町東京倶楽部ニ於テ取締役会開会
                出席者
                  今村清之助
                  末延道成
 - 第9巻 p.59 -ページ画像 
                  原六郎
                  渡辺嘉一 (印)
一客月廿六日ノ重役会ニ提出セシ議案ニ就キ、再審議ヲ遂ケタル処、此際工事ヲ中止スルハ営業上不得策ニ付、社債募集不足額ハ向後二三ケ月ノ間ニ於テ更ニ募集スル事ニ決シ、議案第一項以下四項ノ方法ニ依リ工事ノ進行ヲ計ルコトニ決定ス


文書類纂 農工商・鉄道会社第五明治三一年第一種(DK090006k-0002)
第9巻 p.59-61 ページ画像

文書類纂 農工商・鉄道会社第五明治三一年第一種 (東京府庁所蔵)
北第五七七号
    債券発行ノ儀ニ付申請
当会社鉄道直江津・沼垂間及新津・新発田間凡百壱哩ノ線路ヲ成効セシメ候ニハ、現在資本金ノ外尚多額ノ増資ヲ要シ候予算ニ付、本年一月二十日当会社株主臨時総会ノ決議ニ基キ、此際債券ヲ発行シ、社債金百八拾万円ヲ募集シ、之ヲ以テ先ツ直江津・沼垂間ノ線路ヲ開通セシメ度候間、右債券発行ノ儀御認許被成下度、別紙株主総会決議・債券取扱規程・新旧予算対照表・同説明書等相添此段申請候也
              北越鉄道株式会社
                専務取締役 渡辺嘉一
  明治三十一年二月十九日
    逓信大臣 文学博士 男爵 末松謙澄殿

(別紙)
    北越鉄道株式会社株主臨時総会議事録
明治三十一年一月二十日、東京市日本橋区阪本町銀行集会所ニ於テ株主臨時総会ヲ開ク、当会社現在株主千七百五拾弐人、株数七万四千株ノ内、当日出席株主(委任状併算)八百九拾五人(現在株主人員ニ対シ五割一分一厘)、株数四万八百六株(総株数ニ対シ五割五分一厘)、株金弐百〇四万三百円(現在資本金三百七拾万円ニ対シ五割五分一厘)専務取締役渡辺嘉一会頭トナリ、左記議案ニ就キ審議ノ末、全会一致ヲ以テ之ヲ可決セリ
一 当会社鉄道直江津・沼垂間及新津・新発田間凡ソ百壱哩ノ線路ヲ成功セシメン為メ、現在資本金ノ外尚ホ金弐百五拾五万円ヲ要スル予算ナルヲ以テ、此際当会社ノ鉄道線路其他一切ノ財産ヲ抵当トシ、金百八拾五万円ヲ限リ一時借入金ヲナスカ、又ハ債券ヲ発行シ社債ヲ募集シ之ヲ以テ先ツ直江津沼垂間ノ線路ヲ開通セシメントス
二 前項ノ一時借入金ヲ為スカ、又ハ社債ヲ募集スルカ、若クハ一部ヲ一時借入金トシテ一部ヲ社債トスルカハ之ヲ取締役会ニ一任シ、時機ヲ見計ヒ便宜之ヲ処理スルモノトス
三 一時借入金利子、貸借契約又ハ社債ノ利子、募集手続、償還ノ方法、債券取扱規程等ハ総テ取締役会ニ一任シ之ヲ処理スルモノトス
右之通ニ候也
             北越鉄道株式会社専務取締役
                   会頭 渡辺嘉一
  明治三十一年一月二十日

 - 第9巻 p.60 -ページ画像 
鉄第一五三号
                     北越鉄道株式会社
明治三十一年二月十九日附出願ニ係ル其社之債券発行ノ件認可ス
  明治三十一年三月廿二日
           逓信大臣 男爵 末松謙澄
鉄第一五三号
    命令書
                     北越鉄道株式会社
明治三十一年二月十九日附出願ニ係ル其社之債券発行ノ件認可候ニ付テハ、左ノ通心得ヘシ
  明治三十一年三月廿二日
             逓信大臣 男爵 末松謙澄
第一条 社債券規程中ノ事項ヲ変更セントスルトキハ、其認可ヲ受クヘシ
第二条 債権者募集時日・募集価格及債券払込ノ期日・方法ヲ定メ若クハ変更セントスルトキハ、予メ之ヲ届出ヘシ
第三条 債権者ノ募集ヲ終リタルトキハ、三十日以内ニ左ノ事項ヲ届出ヘシ
 一募集締切ノ年月日
 二募集金額
 三応募金額
 四申込価格ノ最高最低及平均
 五募集契約締結ノ最低価格及会社ノ実収スヘキ金額
第四条 毎年債券ニ関スル左ノ事項ヲ調査シ、翌年二月末日迄ニ之ヲ届出ヘシ
 一其年債券払込高・既往累年払込総高及未払込高
 二其年債券償還高・既往累年償還総高及未償還高
 三利子仕払高
 四債券譲渡・譲受ノ人員及債金高
 五其年末現在債権者ノ員数
本文ニ依リ提出スル願届ハ総テ地方長官ヲ経由スヘシ
      ○
    御届
当会社々債券発行ノ伴御認可相成候《(件)》ニ付、御命令書第二条ニ依リ、債権者募集時日・募集価格及債券払込ノ期日・方法相定候間、此段及御届候也
              北越鉄道株式会社
  明治三十一年三月廿六日   専務取締役 渡辺嘉一
    逓信大臣 文学博士 男爵 末松謙澄殿

(別紙)
  債権者募集時日
一明治三十一年三月廿七日ヨリ同年四月十四日迄トス
  社債募集価格
 - 第9巻 p.61 -ページ画像 
一社債募集価格ハ百円ニ付金九拾七円以上トス
  債券払込期日・方法
一第一回払込期日 明治三十一年五月一日ヨリ同年五月十日迄
一第二回払込期日 明治三十一年八月一日ヨリ同年八月十日迄
一債券ハ総額金百八十万円ハ第一回及第二回募集金ノ二様ニ分チ、九拾万円宛両度ニ払込マシムルモノトス
一応募申込書ハ第一回及第二回ノ二通ニ認メ、各別ニ保証金ヲ添ヘ、同時ニ差出サシム
一債券ハ左記ノ銀行ヘ払込マシムルモノトス
  東京  第一銀行     東京  今村銀行
  同   第廿七銀行    同   帝国商業銀行
  横浜  第二銀行     大阪  第一銀行支店
  京都  第一銀行支店   名古屋 第一銀行支店
  新潟  第一銀行支店   新潟  新潟銀行
  見付  見付銀行     三条  三条銀行
  柏崎  第百卅九銀行支店 柏崎  柏崎銀行
  直江津 柏崎銀行支店   長岡  第六十九銀行
  新発田 新発田銀行
右之通リ候也
      ○
北第一六八九号
    社債募集ノ結果御届
本年三月廿二日付ヲ以テ御認可ヲ得候当会社々債募集ノ結果、御命令書第三条ニ依リ、左記ノ事項及御届候也
一募集締切ノ年月日     明治三十一年四月十四日
一募集金額         金百八拾万円也
一応募金額         金五拾四万九千円也
一申込最高価格       金九拾九円也
一同 最低価格       金九拾七円也
一同 平均価格       金九拾七円参銭参厘強
一募集契約締結ノ最低価格  金九拾七円也
一会社ノ実収スヘキ金額   金五拾参万弐千七百拾四円九拾壱銭也
右之通リ
              北越鉄道株式会社
  明治三十一年五月廿四日   専務取締役 渡辺嘉一
    逓信大臣 男爵 末松謙澄殿


中外商業新報 第四八三六号〔明治三一年三月二七日〕 社債募集広告(DK090006k-0003)
第9巻 p.61-62 ページ画像

中外商業新報 第四八三六号〔明治三一年三月二七日〕
    社債募集広告
今般当会社に於て政府の認可を得、社債金百八十万円を募集致候間、応募御望の方は、左の条項並に債券取扱規程御熟覧の上、本年四月十四日迄に、末項社債取扱銀行へ御申込被下度、此段広告す
一社債券は記名にして額面金五百円とす
一社債応募価格は券面額百円に付九十七円以上とす
 - 第9巻 p.62 -ページ画像 
一社債の利子は、払込の翌日より償還の当日迄、一ケ年百分の十即ち年一割の割合を以て、毎年一月及七月の両度に之を支払ふものとす
一社債の元金は、明治三十三年一月より向十ケ年以内に、当会社の都合に依り、金額を定め、抽籤を以て之を償還すへし
一社債総額金百八十万円は、第一回及第二回募集金の二様に分ち、左記の期日に於て、九十万円つゝ両度に払込ましむるに依り、応募申込書は第一回及第二回の二通に認め、各別に保証金を添へ同時に差出さるへし
  但第二回募集申込保証金に対しては、第一回募集金払込期日の翌日より、元金と同様の利子を付すへし
   第一回募集金払込期日明治三十一年五月一日より同五月十日迄
   第二回募集金払込期日明治三十一年八月一日より同八月十日迄
一社債応募申込保証金は、券面額百円に付金五円つゝとす
一債券取扱規程及申込書用紙は、社債取扱銀行又は本社に於て受取らるべし
一社債取扱銀行は左の如し
  東京  第一銀行     東京  今村銀行
  東京  第二十七銀行   東京  帝国商業銀行
  横浜  第二銀行     大坂  第一銀行支店
  京都  第一銀行支店   名古屋 第一銀行支店
  新潟  第一銀行支店   新潟  新潟銀行
  見付  見付銀行     三条  三条銀行
  柏崎  第百卅九銀行支店 柏崎  柏崎銀行
  直江津 柏崎銀行支店   長岡  第六十九銀行
  新発田 新発田銀行
    明治三十一年三月
          東京市麹町区八重洲町一丁目一番地
                 北越鉄道株式会社


中外商業新報 第四八八四号〔明治三一年五月二二日〕 北越鉄道会社社債の不結果(DK090006k-0004)
第9巻 p.62 ページ画像

中外商業新報 第四八八四号〔明治三一年五月二二日〕
    北越鉄道会社社債の不結果
此程募集済となれる北越鉄道会社の社債応募額は、僅に二十五万円《(マヽ)》に過ぎざりし由なるが、其募集額は百八十五万円なれば、不足額は実に百二十万円《(マヽ)》にして、尤も百万円丈は府下一二の有力家にて借入の周旋を為すべき筈なれども、斯ても尚六十万円の不足なれば、已むなく工費を減ずるの外あるべからずといふ


(北越鉄道株式会社)取締役会決議録(DK090006k-0005)
第9巻 p.62-63 ページ画像

(北越鉄道株式会社)取締役会決議録 (渋沢子爵家所蔵)
明治三十一年六月八日、東京市麹町区八重洲町壱丁目一番地北越鉄道株式会社ニ於テ重役会開会
                出席者
                  前島密
                  今村清之助
                  末延道成
                  渋沢栄一
 - 第9巻 p.63 -ページ画像 
本日決議ノ事項左ノ如シ
一当会社々債募集価格百円ニ付九拾七円以上トアルヲ九拾五円以上ニ変更減額スルコト
    理由
 当会社ニ於テ社債募集価格ヲ百円ニ付九拾七円以上ト定メ、社債募集ノ広告ヲナシタル後、間モナク阪鶴鉄道会社ニ於テ九拾五円以上ヲ以テ社債ノ募集ヲ為シタル為メ、大ニ其影響ヲ受ケ、本社々債募集上困難ニシテ、其結果不充分ニ付、此際募集価格ノ範囲ヲ拡メ、百円ニ付九拾五円以上ニ変更減額スルコトヽセハ、多少応募者可有之ニ付、此際社債募集価格変更ノ件ヲ其筋ニ請願シ、時機ヲ見計ラヒ社債残額ヲ募集セントス
 右原案ニ就キ逐審議シタル末、此際社債募集価格変更ヲ請願シ、公然募集スルトモ到底良好ノ結果ヲ期シ難ク、反テ不得策ニ付之ヲ見合セ、去五月九日ノ決議ニ係ル銀行ニ委嘱発売セシ手段ヲ取リ、尚ホ拾万円ヲ限リ臨機債券ヲ発売シ、以テ金融ノ途ヲ立テ工費ノ不足ヲ補成スル事
前記之通リ修正スルコトニ決シ、午後一時散会ス


渋沢栄一 書翰 松井吉太郎宛(明治三一年)七月一二日(DK090006k-0006)
第9巻 p.63-64 ページ画像

渋沢栄一 書翰 松井吉太郎宛(明治三一年)七月一二日
                      (松井三郎氏所蔵)
○上略 貴方県債之義ニ付而ハ、先頃来勝間田知事より依頼も有之候ニ付、貴支店ニても少くとも五万円位引受候方と、過般佐々木とも打合、其段御打合申上候筈ニ候、然処其後貴方之模様ハ、公債証書買上之為自然県債ニも余勢を生し、或は予定価格より相増可申有様之由、就而玆ニ一事御心配相願候ハ、例之北越鉄道会社債券之義ハ、先頃東京ニ於て募集せしも、何分金融必迫之為三分一ニも足らさる申込ニて、如何とも致方無之候、去迚今日之処途中ニ中止候ハヽ株主ニ利益配当出来兼候のミならず、現在之債務ニ対する利足之仕払も出来不申候ハ必然之道理ニ付、免も角も此鉄道ハ直江津より新潟迄貫通を謀候外他策無之次第ニ候、然ルニ今日之場合、東京ニてハ最早金融之道も尽果候姿ニ相成、真ニ困却仕候、弊行も貯蓄銀行とも合算致候ハヽ五拾万円以上之融通ニ相成、此上如何とも繰廻し工夫相付不申候、依而玆ニ心附候ハ貴方県債募集之模様幸ニ募集額ニ超過候様なれハ、其分を説得して此鉄道債券ニ振替之工夫ハ無之哉、就而ハ兎も角も鍵富・浜・岸宇吉之三氏へ小生より一書申遣候方と存し、別紙写之通懇々申通候ニ付、貴兄よりも篤と御協議被下、是非とも尽力せられ、相応之高出来候様御取扱可被下候
右之段至急申上度如此御座候 不一
  七月十二日
                      渋沢栄一
    松井吉太郎様
(別紙)(別筆)
    写シ
  明治卅一年七月十三日
 - 第9巻 p.64 -ページ画像 
拝啓、炎暑之候益々御清適御坐可被成大賀之至リニ候、然者北越鉄道之義ニ付ては其後得御意候機会モ無之、乍思御無音ニ打過き不本意之到ニ御座候、偖同鉄道義爾来布設モ追々相捗リ、株金全額払込済ニ相成候得共、当初ノ予算ニ照して大ニ不足相立チ、概算百八拾五万円計之資金ヲ得ザレバ、全線路完成致兼候義ニ御坐候、然ルニ目下経済界之状況不振ヲ極メ、到底増株之見込モ無之、去リ迚全線路完通セザル時ハ折角之目的ヲ阻遮シ、当初企画之利益ヲ挙ケ候事モ相叶不申ニ付寧ロ此際拮据奮励資金ヲ得ルノ策ヲ講シ、即チ社債募集之事ニ決定仕候義ニ御坐候、元来小生ニ於テハ直接業務担当ノ任アル次第ニハ無之候得共、前陳之事情ニ付傍観モ仕兼、百方奔走シテ応募之勧誘ニ勉メ且ツ弊銀行ニ於テハ実ニ巨額之融通ヲナシ候都合ニ御座候、然ルニ何分目下金融不如意ノ際、社債之申込ハ募集高之三分一ニモ相充チ不申向後資金之供給ニ苦慮罷在候義ニ御坐候、然ル処此頃伝聞仕候ニハ、貴県ニ於テ御募集之県債ハ非常之好況ニシテ、定額以外之申込モ有之哉之趣、就テハ此際特別之御尽力ヲ以テ、貴台之錦地有力家諸君ニ於右県債之応募ニ外ツレ候金額ヲ以テ、当社々債御引受被成下候様御高配ハ相叶申間敷哉、御承知之如ク、此鉄道は全線貫通之上ハ十分之好望有之候次第ニテ、殊ニ此度之社債ニ付てハ、利率及応募価額共申込人ニ取リ利益多き規定ニモ相成居候次第ニ候ヘハ、幸ヒ錦地県債応募之好況ヲ、其一分タリトモ当方ヘ御振向ケ被下様御心配ニ預リ度と、切ニ企望仕候、或ハ昨年来之行懸リモ有之、彼是御不満之事共モ可有之候得共、願クハ此般之事ハ一場ノ旧夢ニ付シ、国家之交通機関完成と申点ニ御注目被下、特ニ御配算有之度候、尚委細は松井吉太郎ヨリ為申上候様可仕候ヘ雖、書中右之段得貴意度如此御坐候 敬具
                       渋沢栄一
  岸宇吉様
  浜政弘様 (各通)
  鍵富三作様


渋沢栄一 日記 明治三二年(DK090006k-0007)
第9巻 p.64-65 ページ画像

渋沢栄一 日記 明治三二年
一月廿七日 晴
○上略 午後北越鉄道会社ニ於テ帳簿ヲ監査シ渡辺社長ト廿九日株主総会ノコトヲ談話ス ○下略
一月廿九日 晴
昨夜寒風ニ夜行セシ為メ、朝来感冒ノ気味ニテ平臥ス、此日北越鉄道会社株主総会アリシモ出席スルヲ得サルヲ以テ、社長渡辺氏ニ書ヲ送リテ之ヲ通ス ○下略
五月十二日 雨
○上略 午後築地香雪軒ニ於テ催シタル北越鉄道会社ノ宴会ニ出席ス、古市公威・勝間田稔・増田・平井ノ諸氏及会社重役一同ト会談ス ○下略
七月廿八日 晴
午前十時台湾協会ニ於テ開会スル北越鉄道会社株主総会ニ列ス ○下略
九月二日 曇
○上略 午前○中略十時過キ北越鉄道会社ニテ帳簿ヲ点検ス、西田敬止来ル
 - 第9巻 p.65 -ページ画像 
○下略
十月廿六日 晴
○上略 午後一時第一銀行ニ抵リ重役会ヲ開ク、岡部広来リテ京坂鉄道ノコトヲ談ス、渡辺嘉一来リテ北越鉄道ノ営業景況ヲ話ス ○下略
十二月八日 曇
○上略 午前十一時北越鉄道会社重役会ニ列ス ○下略


(北越鉄道株式会社) 取締役会決議録(DK090006k-0008)
第9巻 p.65-67 ページ画像

(北越鉄道株式会社) 取締役会決議録 (渋沢子爵家所蔵)
明治三十二年一月十日、麹町区八重洲町本社ニ於テ、重役会開会
                出席者
                  前島密
                  今村清之助
                  末延道成
                  渡辺嘉一 (印)
本日報告及決議ノ事項左ノ如シ
○中略
決議ノ件
一当会社々債募集残額金四拾弐万百円也ハ此際既定ノ価格ヲ以テ銀行ニ托シ、募集若クハ売却シ、社債全部ヲ整理セントス
  但手数料ハ百円ニ付壱円以下トス
    理由
 当会社々債総額百八拾万円ハ、昨年四月以来進工上工費ノ必要ニ迫ラレ百方尽瘁スルモ募集済ニ至ラス、一時借入金若クハ約束手形ヲ以テ融通、応急ノ処弁ヲ為シ、十二月廿七日ニ至リ辛フシテ春日新田・沼垂間ノ開通ヲ見ルニ至リシモ、目下社債募集ノ有様ハ、総額ノ内募集済百弐拾六万七千五百円、証拠金ヲ差入レ申込高参万四千円、此外追テ百円券発行ノ見込ヲ以テ予約申込高七万八千四百円ニシテ、合計百参拾七万九千九百円ナリトス、依テ残額四十弐万百円ハ此際之ヲ募集若クハ売却シ、一方約束手形消却ニ宛テ、一方工費支払残額ノ支弁ニ宛テ、之ヲ整理セントス
本案ハ左ノ通リ修正ス
一社債残額ハ現金必要ノ場合ニ於テ凡拾万円迄ヲ既定ノ価格ヲ以テ売却スルコトトシ、他ハ追テ時機ヲ見計ラヒ募集若クハ売却ノ上整理スル事

明治三十二年五月十二日、麹町区八重洲町本社ニ於テ、重役会開会
                出席者
                  原六郎
                  今村清之助
                  末延道成
                  渋沢栄一
                  大倉喜八郎
                  渡辺嘉一 (印)
本日報告決議及協議ノ事項左ノ如シ
 - 第9巻 p.66 -ページ画像 
○中略
協議ノ件
一社債及借入金整理並万代橋線工費調達方法

明治三十二年七月廿日、麹町区八重洲町本社ニ於テ、重役会開会
                出席者
                  前島密
                  原六郎
                  今村清之助
                  末延道成
                  大倉喜八郎
                  渡辺嘉一 (印)
本日決議ノ事項左ノ如シ
○中略
一社債及借入金整理ノ件
 当会社ハ目下社債金百四拾参万四千円及借入金七拾五万円ノ負債アルモ、社債ハ来三十三年一月ヨリ追次返還シ得ルノミナラズ、昨今金融ノ情況ハ緩慢ニ赴キ、金利モ追々低落ノ傾キアルヲ以テ、前記負債金ノ外ニ、此際新発田線並ニ万代橋線ノ建設費及ヒ線路補修改良ノ工費ヲ調査シ、之ト併セテ本年末ヨリ来春ノ金融情況ヲ見計ヒ一層低利ナル社債ヲ募集シ、負債ヲ整理スルト同時ニ、未成線路ノ建設ヲ計ルヲ以テ方針トスル事
  但本件ニ付テハ調査ノ上更ニ重役会ヲ開キ決定セントス

明治三十二年十二月八日、本社ニ於テ、重役会開会
                出席者
                  前島密
                  原六郎
                  末延道成
                  渋沢栄一
                  大倉喜八郎
                  渡辺嘉一 (印)
決議ノ件
○中略
二此際金拾九万七千円ヲ借入レ、機関車四台・貨車百輛ヲ新調シ、昨今ノ如ク全線ニ貨物停滞ノ患ナカラシメントス
○中略
三来三十三年度ヨリ、凡ソ二ケ年継続ノ経営ヲ以テ、金拾四万三千円(本予算ハ金弐拾万弐千円ナルモ、目下貯蔵ノ建築材代並ニ駅長及運転手等ノ役宅建築ヲ見合セ其工費ヲ差引キ本項ノ通リ)ノ予算ヲ以テ、長岡・柏崎其他各駅ヲ拡張シ、且線路ヲ完成又ハ改良シ、列車運転ヲ敏捷ナラシメントス
○中略
四前項同様ノ経営ヲ以テ、金拾五万円(本予算ハ金拾七万円ナルモ、
 - 第9巻 p.67 -ページ画像 
現在貯蔵ノ建築用材ヲ使用スルヲ以テ、概算金弐万円ヲ除キタルモノナリ)ノ予算ヲ以テ、現在仮工事ナル橋梁十一ケ所、カルバアト二十六ケ所及同増設七ケ所ヲ改築又ハ修築セントス
○中略
五現在ノ沼垂仮停車場ハ新潟ニ至ル乗客ニ対シ実際不便ナルヲ以テ、沼垂仮線ヲ永久本線ト為スト同時ニ、別紙図面○略スノ如ク之ヲ延長シ、万代橋附近ニ停車場ヲ設置セントス
  但工費予算ハ金拾六円トス
六新津・新発田間十六哩十八鎖五二ノ線路予算ヲ金百万円ト定ムル事
○中略
七第二号ヨリ第六号ニ至ル工費合計百六拾五万円、及現在ノ社債並ニ借入金合計金弐百弐拾八万四千円、外ニ既決残四万七千円、総計参百九拾八万壱千円ハ、追テ時期ヲ見計ヒ増株ヲ発行シ、資本ヲ増加スルコトトシ、此際応急処分トシテ左ノ通リ処弁スル事
 一第二号ヨリ第五号ニ至ル金員ハ必要ニ応シ一時借入金ヲ以テ処弁シ置ク事
 一第六号新発田線ハ低利社債又ハ増株ヲ募集シ得ル時機ニ於テ着手スル事
 一現在ノ社債ハ一割以下ノ利子ニテ一時借入金ヲ為シ得ルニ応シ漸次返却シ置キ、低利社債又ハ増株ヲ発行シ、資本金ヲ募集シ得ル時機ニ於テ、全部弁済ノ方法ヲ定ムル事
    第五号乃至第七号共原案ニ決ス
八第二号乃至第五号ハ来一月総会ニ提出スヘキ事


文書類纂 農工商明治卅三年(DK090006k-0009)
第9巻 p.67 ページ画像

文書類纂 農工商明治卅三年 (東京府庁所蔵)
北第九三号
    社債募集額変更之義ニ付願
明治三十一年三月廿二日付ヲ以テ当会社々債金百八拾万円募集之義御認可ヲ得候処、金融必迫之秋ニ際シ、全額之応募者ヲ得ス、募集額金百四拾三万四千円ニ有之候間、当時右減額之義直ニ出願可致筈ニ候処爾来引続キ応募者勧誘等之都合上今日ニ至リタル次第ニ有之候、就テハ此際右募集額ヲ金百四拾三万四千円ニ減額致度候ニ付、特別之御詮議ヲ以テ御認可被成下度、此段奉願候也
              北越鉄道株式会社
  明治三十三年二月十三日   専務取締役 渡辺嘉一
    逓信大臣 子爵 芳川顕正殿
      ○
(欄外)
四丙四四六号
鉄第一九五号
                     北越鉄道株式会社
明治三十三年二月十三日附ノ願其社々債募集額減少ノ件認可ス
  明治三十三年二月廿二日
             逓信大臣 子爵 芳川顕正

 - 第9巻 p.68 -ページ画像 

渋沢栄一 日記 明治三三年(DK090006k-0010)
第9巻 p.68 ページ画像

渋沢栄一 日記 明治三三年
一月十四日 晴 大風
○上略 午後○中略渡辺嘉一氏来ル、北越鉄道会社沼垂ヨリ万代橋マテノ線路延長ノコトヲ談ス ○下略
一月十七日 晴
朝新潟支店松井吉太郎及浜政弘両氏ヘ、北越鉄道会社ニ於テ本月ノ株主総会ニ沼垂線路変換ノコト、万代橋附近マテ延長ノコト、及車輛増加ノ議案提出ニ関シ、委細事情申遣ス ○下略
一月二十九日 昨夜ヨリ雨及雪トナリテ朝来積ルコト三四寸ナリ ○中略
午後二時台湾協会ニ於テ北越鉄道株式会社ノ株主総会ニ列ス ○下略
六月六日 曇
○上略 三時日本郵船会社重役会ニ列ス、畢テ帝国ホテルニ抵リ、北越鉄道会社重役会ニ列ス、渡辺嘉一・末延道成・前島密・原六郎氏等来会ス、社務整理方法及増株手続等ノコトヲ協議ス ○下略
七月三十日 曇
○上略 午前○中略十時北越鉄道会社株主総会ニ出席ス ○下略
九月六日 晴
○上略 十二時、北越鉄道会社重役会ニ列ス、渡辺嘉一・原六郎・末延道成・前島密・久住秀三郎氏等来会ス ○下略


(八十島親徳) 日録 明治三三年(DK090006k-0011)
第9巻 p.68 ページ画像

(八十島親徳) 日録 明治三三年 (八十島親義氏所蔵)
一月卅一日 曇
後二時過ヨリ主人公(監査役)代トシテ北越鉄道会社ニ至リ、帳簿ノ監査ヲナシ、折柄滊車製造合資会社(同棟ニアリ)ノ総会臨席中ノ主人公ニ其結果ヲ報告シ、五時帰宅


渋沢栄一 書翰 松井吉太郎宛 ○(明治三三年)二月二六日(DK090006k-0012)
第9巻 p.68 ページ画像

渋沢栄一 書翰 松井吉太郎宛 (松井三郎氏所蔵)
 ○(明治三三年)二月二六日
○上略 北越鉄道日々之収入ニ付而ハ拙生も心配仕候、此間も長岡岸宇吉氏出京ニ付、右等話合候義ニ御坐候、併四月以後ニ相成候ハヽ、今一段旅客貨物とも相増可申と存候
貴方も金融閑慢之由、当方も同情ニ御坐候、併今日之処本店ハいまた利足引下と申事も不仕候
右拝答旁可得御意如此御坐候 匆々不一
  二月廿六日
                     渋沢栄一
    松井吉太郎様

渋沢栄一 書翰 松井吉太郎宛 ○(明治三三年)四月二五日(DK090006k-0013)
第9巻 p.68-69 ページ画像

 ○(明治三三年)四月二五日
○上略 北越鉄道会社之義ニ付而ハ、先日来渡辺嘉一氏ヘ再三書通いたし同人も大ニ痛心致居候様子ニ御坐候、其中出京候ハヽ詳細ニ相談いたし改良之方法充分打合可申と存候、右御返事旁一書申上候 匆々不一
  四月廿五日
                     渋沢栄一
 - 第9巻 p.69 -ページ画像 
    松井吉太郎様



〔参考〕中外商業新報 第四八二一号 〔明治三一年三月一〇日〕 北越鉄道会社の社債(DK090006k-0014)
第9巻 p.69-70 ページ画像

中外商業新報 第四八二一号 〔明治三一年三月一〇日〕
    北越鉄道会社の社債
大資本家・大財産家・大金満家等の資金を吸収し、以て之を経済界実業界に投するは勿論必要なりと雖も、亦彼小資本家・小財産家・小金満家等の資金を吸収し、以て之を経済界実業界に投するも最も必要を感ぜずんばあらず、前者の資金は之を吸収するに面倒少なく、後者の資金は之を吸収するに頗る面倒多しと雖ども、前者は狭く後者は広し積麈山を為し江河細川を撰まず、是れ以て後者の資金と雖も決して軽視すへからず、其用を為すの大なるに至つて、敢て前者に譲らざるもの之あるべし、唯之を甘く吸収すると否らさるとは、事業当局者の手腕方法如何と顧みるのみ
北越鉄道会社は其社債百八十万円を募集せんと欲し、曩には銀行家・大資本家・大財産家・大金満家等に謀る所あらんとせしが、此頃其方針を改め、重に小資本家・小財産家・小金満家の資金をして其社債に応せしめんと決したりと云ふ、蓋し戦後経済世界の変動より、米価騰貴の関係より、都鄙に小資金を抱いて之が用を待つもの幾十万人あるを知らざるなり、今之を聚合して実業界の資金と為さば、優に大事業を起すべき大資本たるに足るや必せり、且夫れ此等小資金は聚合して以て事業界に投せざれば、幾と烟散霧消して事業界の資本と為る能はざるを以て、是等小資金を聚合するは、啻に事業資本を得るに必要なるのみならず、小資本の所有者をして大に勤倹貯蓄の気風を生せしむるに於て必要たらずんばあらず、小資本聚合策は豈所謂一挙にして両得なるものに非る歟
北越鉄道は玆に見る所あり、其社債を募るに、重に小資本所有者を目的としたるは、誠に善く時機に協ひ、経済上の時宜を得たるものと謂ふべし、銀行預金利子は七分なり、然るに北越鉄道の募集額は百円に付九十七円にして、利子は一割なりと云ふ、小資本所有者の銀行に預金を為し居る者は、之れを引出して社債に転するもの之れあるべく、又預金せずして自ら握るものは、之を以て社債に応するもの之あるべし、於是か、所謂彼の臍繰金と称するもの、死金と称するものも、一躍して社会大有用の資本たること、決して鮮少にあらざるを信ずるなり、北越鉄道の社債たる、其れ斯くの如く善し、然れども独り惜む、其債券を五十円・百円・二百円の如き額面に分割せずして、唯五百円のみの債券とせしは、果して何の意そ、是れ小資本を聚合せんとする方針に牴触することなきか、単に五百円のみの額面とするは、取扱上便利なるに相違無しと雖、之を分割して、五十円・百円の如き小額面の債券を発せさるは、豈小資本応募者の為めに不便利ならざるを得んや、是れ我輩の北越鉄道の為め甚た取らさる所とす、然れとも、要するに北越鉄道の社債方針は我輩の賛成する所なり、若し夫れ他日山陽の如き、九州の如き諸鉄道にして、線路拡張等の為めに社債を起すの必要之ありとせんか、我輩は北越の如く重に小資本家・小財産家・小
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金満家の資金を目的とし、以て其方針を立んことを希望するものなり北越の社債に付殊に一言する所以のものは、世の鉄道の如き事業の為めに資本を吸収せんとするものに向て、之に鑑むる所あらんことを欲するを以てなり