デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

2章 交通
2節 鉄道
14款 岩越鉄道株式会社
■綱文

第9巻 p.129-138(DK090013k) ページ画像

明治29年8月4日(1896年)

是日、当会社創業総会開カレ、栄一会長ニ推サレテ議事ヲ主宰シ、取締役ニ選バル。尋イデ九月八日会社設立免許ヲ申請シ、翌三十年五月二十六日免許状下付セラル。


■資料

第六課文書類別 農商・鉄道ニ関スル書類五明治三〇年第一種(DK090013k-0001)
第9巻 p.129-137 ページ画像

第六課文書類別 農商・鉄道ニ関スル書類五明治三〇年第一種 (東京府庁所蔵)
      ○
 明治廿九年八月四日
 神田区美土代町三丁目青年会館ニ於テ開会
    創業総会決議録
 - 第9巻 p.130 -ページ画像 
○中略
 人員四千百二十九名
    出席人員 百八十名
  内
    委任者人員 参千九百四十九名
 株数七万八千参百六十五株
    出席人株数 壱万四千六百九拾壱株
  内
    委任者株数 六万参千六百七拾四株

岩越鉄道株式会社創業総会速記録
 明治二十九年八月四日午前十時三十分開会
○説明委員(佐治幸平君) 私ヨリ創立委員ヲ代表致シマシテ事務ノ報告ヲ致シマス
(報告書朗読)

   報告書
本社鉄道線路ハ、明治廿五年法律第五号鉄道敷設法中第二期線ニ属スルモノニシテ、福島県会津地方ノ有志者ハ夙ニ本線ノ速成ヲ希望シ、関係各郡ノ有志者ト謀リ岩越鉄道期成同盟会ヲ組織シ、政府及帝国議会ニ向ヒ、第一期線ニ繰上ノ請願ヲ為シ、第五回帝国議会ニ於テハ衆議院特別委員会ノ議ヲ通過セシモ、不幸ニシテ衆議院解散ノ為メ目的ヲ達セス、第六回帝国議会ノ召集セラルヽヤ、関係各郡ヨリ委員ヲ出京セシメ、専ラ請願ノ目的ヲ達スルノ運動中ニ際シ、新潟鉄道株式会社ノ名義ヲ以テ本線ヲ私設事業ニ移ス出願ノ計画ヲ試ムルモノアルヲ探知スルヤ、請願委員佐知幸平《(佐治幸平)》・安瀬敬蔵・秋山清八・土屋重郎・八田吉多・飯野庄三・佐藤佐中ハ議ヲ決シ、在京同志者宮内盛高・都筑兼吉・藤田重道・宮崎有敬ト共ニ、明治廿七年五月九日岩越鉄道株式会社ノ名称ヲ以テ、資本金額ヲ七百万円トシ、起業目論見書及仮定款ヲ具シ、逓信大臣ニ向ヒ、本線ノ発起認可ノ出願ヲ為シ、爾来岩越・新潟ノ両鉄道株式会社発起人ハ互ニ競争ノ勢ヲ為セシヲ以テ、之レカ中間ニ立チ合併ノ勧誘ニ斡旋ヲ試ミタルノ人アリシモ、本社発起人ハ前途ノ進行上深ク慮ル処アリ、断然之ヲ拒絶セリ
明治廿七年八月下旬、発起人佐知幸平ハ、日本鉄道株式会社長小野義真君及国沢技師ノ新潟県下出張ノ際、同行シテ線路ヲ実視シ、其結果発起人協議ノ上、同年十月廿九日ヲ以テ新津ヨリ酒屋マテ四哩間ノ延長ヲ追願セリ
明治廿八年五月廿五日発起人会ヲ開ラキ、其決議ニ依リ、本社ノ創立ニ関シ日本鉄道株式会社ノ助力ヲ依頼シ度旨ヲ、日下前福島県知事ノ紹介ヲ経、該会社ニ申込ミ、且ツ同日佐知幸平ヲ委員ニ、安瀬敬蔵ヲ補員ニ選定シ、六月一日附ヲ以テ小野社長ヨリ本社ノ依頼ニ応シ応分ノ尽力可致回答アリタル旨、日下前福島県知事ヨリ六月五日通知ニ接シタリ
明治廿八年六月十八日、本社発起人ハ他日ノ行違ヲ避ケ、兼テ発起人ノ精神ト希望ヲ表明スルノ必要ヲ認メ、日本鉄道株式会社ニ対シ左ノ甲乙両号ノ書状ヲ送致セリ、然レトモ未タ同会社ヨリ承諾ノ回答ヲ得
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ルニ至ラス
(甲号)
 一土地買収ニ係ル一切ノ件ヲ除ク外、全線落成ニ至ル迄ノ工事及之ニ要スル諸般ノ事項ハ、一切貴社ニ於テ御処弁被下度事
 一運輸営業ハ当分ノ間貴社ニ於テ其事務御取扱被下度事
 一前各項ノ為メニ要スル諸般ノ経費ハ、当方ヨリ貴社ヘ御払渡可申事、尤モ貴社ノ御指示ニ依リテハ当方ニ於テ便宜直接ノ支払ヲ為スヘキ事
  一岩越鉄道株式会社ノ重役候補者ハ、貴社理事委員会ノ御意見ヲ承ケ、選挙可致事
(乙号)
 一拙者共ニ於テ岩越鉄道株式会社ヲ発起仕候ハ、運輸交通上至大ノ公益ヲ認メ、兼テ地方ノ便益ヲ計リ候主意ニ有之候ニ付、右発起人ノ為メ従来既ニ消費シタル諸般ノ経費ハ、関係地方有志者ノ特志醵金ヲ以テ之ヲ支弁シ、該社設立後創業費等ノ名義ヲ以テ該資本中ヨリ償却ヲ受クヘキ金額一切無之候事
 一拙者共発起ノ主意ハ、前項記載ノ通リノ次第ニ付、岩越鉄道株式会社ト他会社ト合併スルヲ以テ該鉄道成立上利益必要アリト貴社ニ於テ御認メ相成候上ハ、貴社ノ御指示ニ従ヒ、拙者共ニ於テ其処弁致スヘキハ勿論、貴社ニ於テ御処弁被下候共、拙者共ニ於テ異存無之候事
明治廿八年五月廿八日以来、日本鉄道株式会社ト岩越鉄道期成同盟会トニ依頼シ、株主ノ募集ニ着手シ、八月廿九日ヲ以テ之ヲ締切リ、其期日経過後ノ申込ハ一切之ヲ謝絶シ、且ツ岩越鉄道期成同盟会ノ募集ニ係ルモノハ其申込高ノ十分ノ二ヲ削減シテ之ヲ結了セリ、其結果右ノ如シ
    株主 三千五百八十九人
    株数 三万五千九拾九株     岩越鉄道期成同盟会募集ノ分
    株金 百七拾五万九千九百五拾円
    株主 千七百四十三人
    株数 八万四千八百一株     日本鉄道株式会社募集ノ分
    株金 四百弐十四万五拾円
    株主 五千三百三十二人
 合計 株数 十二万株
    株金 六百万円
明治廿八年十月十二日発起人宮崎有敬死亡ニ付除名届ヲ為ス
明治廿八年十月十九日本社資本金額ヲ六百万円ニ減シ、起業目論見書並ニ仮定款ノ訂正ト共ニ、渋沢栄一外三百二十五名ノ発起人ヲ追加出願シ、本年一月二十日逓信大臣ヨリ仮免状ノ下附ヲ受ケタリ
本年一月廿二日発起人協議ノ上、渋沢栄一・二橋元長・山本直哉・白杉政愛・佐治幸平・安瀬敬蔵ノ六名ヲ創立委員ニ推選シ、其互選ヲ以テ佐治幸平・安瀬敬蔵ヲ常務委員ニ選定セリ、同日線路ノ測量ヲ日本鉄道株式会社ニ依頼シ、即日承諾ヲ得タルヲ以テ、同月廿八日線路測量ニ要スル諸経費ハ、同会社会計課長ノ請求ニ応シ其時々可支払旨申
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入タリ
本年二月一日ヲ以テ日本鉄道株式会社内ノ一室ヲ借受ケ、本社創立事務所ヲ創設セリ
右同日ヲ以テ、日本鉄道株式会社ノ重役諸君及関係社員諸氏ヲ事務所ニ招待シ、聊カ祝意ヲ表シ、且ツ株主募集ニ際シ庶務ニ従事セル同会社員諸氏及小使給仕等十二名ニ対シ、金員又ハ物品ヲ寄贈セリ
本年二月一日ヲ以テ、株式申込者ニ対シ株式保証金(一株金五拾銭)ヲ二月十五日ヨリ同月二十九日迄ニ払込ミノコトヲ通知シ、福島県下北会津・耶麻・河沼・大沼・安積五郡ノ申込人ハ岩越鉄道期成同盟会ノ助ケヲ受ケ、其他ノ申込人ハ日本鉄道株式会社株式係ノ力ヲ藉リ、之ヲ取纏メ、金員ハ之ヲ第十五・第一及安田ノ三銀行ニ預入レノ手続ヲ為セリ
線路ノ実測ハ、本年四月一日ヲ以テ、日本鉄道株式会社ニ於テ全線ヲ五区ニ分チ、各主任者ヲ定メ、実地ノ測量ニ着手シ、其既ニ結了セシ部分ハ目下郡山ニ於テ製図中ナリ
本社鉄道線路ニ係ル敷地ハ、岩越鉄道期成同盟会ノ尽力ニ依リ、福島県下ニ係ル部分ハ、安達郡ヲ除クノ外相当ノ価格ヲ定メ、発起人ト各地主間ノ契約ハ大略成立シ居レリ
本社事務所創設以来七月三十一日迄取扱ヒタル件数及事務費ハ左ノ如シ
  発件一万二千八百五十七件
  受件五千七百四十八件
   合計一万八千六百五件
  金壱千弐百九拾七円四拾銭四厘 事務所費
以上ハ本社ノ発起以来経過ノ概略ナリトス、然リ而シテ、玆ニ株主各位ノ注意ヲ仰クハ、本社ノ発起成立ニ関シテハ、日本鉄道株式会社長小野義真君ヲ首トシテ、同会社重役諸君、前福島県知事日下義雄君、及福島県北会津郡長松本時正君ハ岩越鉄道期成同盟会本部長トシテ、遠山千里・小池友謙・桐原彦吉・岩附博信・成田直忠ノ五君ハ耶麻・河沼・大沼・安積ノ四郡長トシテ同会支部長トナリ、直接間接ニ保護尽力セラレタルノ功労ハ、永ク記憶ニ存セラレンコト深ク希望スル所ナリ
右報告ス
                 岩越鉄道株式会社
  明治二十九年八月四日            創立委員

○説明委員(佐治幸平君)諸君ニ御協議申上ケマス、本日ノ創業総会ニ就キマシテ、玆ニ会頭ヲ定メテ会議スルコトニ致シタイト思ヒマス、御異存ガゴザイマセネバ渋沢栄一君ニ会頭ヲ願ヒタイト思ヒマスガ如何デゴザイマスカ、
  (賛成々々ト呼ブ者アリ)
○説明委員(佐治幸平君)ソレデハ渋沢サン、御迷惑デゴザイマセウカ………
  (渋沢栄一君会長席ニ着ク)
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○会長(渋沢栄一君) 皆サン、唯今佐治幸平君ノ御指名ニ依リマシテ、今日ノ会長席ヲ私ニ務メルヤウニト云フコトデゴザイマス、満場ノ御賛成ガゴザイマシテ已ムヲ得マセヌ此席ヲ汚シマス、甚タ失礼デゴザイマスケレドモ、御免ヲ蒙リマス、予テ御通知ヲ申上ケテ置キマシタ通リ、岩越鉄道株式会社ハ今日創業総会ヲ開クノ時期ニ進ンデ参リマシテゴザイマス、創業事務ノ報告ハ創立委員ヲ代表シテ今佐知君《(佐治)》カラ御報道申上ケマシタ通リデゴザイマスガ、続イテ此会議ニ於テ定款ヲ確定シテ、其他ノ件々ヲ御議シヲ願ヒマス、先ツ順序ヲ持チマシテ、定款ノ確定ヨリ御議シヲ願フヤウニ致シタウゴザイマス、議案ハ御手許ニ差上ケテゴザイマス、此処ニ一寸申上ケマスノハ、議決ノコトデゴザイマスカ、議決ノ採リ方ハ商法ノ百六十三条若クハ二百四条ニ依リマス積リデゴザイマスカラ、左様御承知下サイ、又此逐条修正ノゴザイマス箇条ヲ朗読致シマシテ、長イ箇条ハ一章ヲ二度ニ切リマシテ、短イ章ハ一章ヲ一ツニ纏メテ議ニ付スルヤウニ致シタ方ガ議事ノ進行ガ宜シカラウト思ヒマス、別ニ御異議ガゴザイマセネバ、サウ云フ順序ニ致シタウゴザイマス
  (賛成々々ト呼ブ者アリ)
   ○定款ニ関スル項略ス。
○会長(渋沢栄一君) 夫レデハ創業費千二百九十七円四拾銭四厘ガ此創業総会ニ於テ御承認ニナリマシテゴザイマス、続イテ取締役及監査役ノ報酬額ノ御議定ガ願ヒ上ゲタイノデゴザイマス、玆ニ持参致シマシタ案ハ、取締役社長、此社長ニ対スル年俸ガ弐千四百円、即チ月額ニ直スト弐百円ツヽノ見込デゴザイマス、他ノ取締役即チ平取締役、監査役ハ年俸四百円ツヽ、此会社ノ人員ハ取締役ガ七名監査役ガ三名ト云フニ定メラレテ居リマス、是等ノ報酬ガ適当デアラウト思ヒマシテ、玆ニ御決議ヲ願ヒマスル
○百六十五番(林賢蔵君) 少シ伺ヒマスガ、取締役ヤ監査役ノ報酬ハ世間一般差ガアルダラウト思ヒマスガ、同額ト云フノハドウ云フ意味デスカ
○会長(渋沢栄一君) ドウ云フ訳ト云ツテ斯様ナ訳ト申スコトハゴザイマセヌガ、同様デ相当ダラウト考ヘマシタ
○百六十五番(林賢蔵君) 取締役ガ取扱フ役ト監査役カ扱フ事務ト同ジヤウニアルノデスカ
○会長(渋沢栄一君) 計算書ナド細カニ見テ置クト云フコトハ、監査役ノ方ガ却ツテ勤務ガ重イノデアリマス、果シテドチラガ余計デアルカト云フコトハ、マダ比較致シテ見マセヌガ、取締役ト監査役ハ相当ナルモノデアラウト考ヘマシタ、差ヲ付ケタ例モアリマスシ付ケヌ例モ沢山アリマス、即チ差ヲ付ケヌ方ガ適当デアラウト此会社ハ認メマシタ
  (原案賛成ト呼ブ者アリ)
○会長(渋沢栄一君)別ニ御異議ガゴザイマセネバ、原案ニ確定致シマス
  (異議ナシト呼ブ者アリ)
○会長(渋沢栄一君) 然ラバ報酬額ハ是デ定リマシタ、又玆ニ御協
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議ヲ致サネバナラヌコトガゴザイマス、即チ此創業ニ対シテ種々ナル支出ニ掛ルコトデゴザイマス、元新潟鉄道株式会社ノ発起人ニ対シテ金参千円ヲ補助シタイト云フ考デゴザイマス、夫カラ岩越鉄道期成同盟会ト云フモノガゴザイマス、是ハ創業報告ニ御報道申シタ通リノ成立チノモノデゴザイマスガ、之ニ対シテ金参千円ノ報酬ヲ差上ゲタイト云フ考デゴザイマス、サウシテ尚ホ岩越鉄道ノ期成同盟会以外ニ、本会社ノ創立主唱者ガアツテ、之ニ対シテ金千円ヲ報酬ニ差上ゲタイト云フ考デゴザイマス、モウ一ツハ創立委員ノ中報告書ニモ申シマシタ通リ佐治・安瀬ノ両君、是ハ常務委員トシテ昨年六月ヨリ今年ノ七月マデズツト通シテ其労ヲ取ラレマシタ、他ノ日本鉄道株式会社カラ勤務致シタ創立委員ニ対シテハ別ニ報酬ノ必要ハ無カラウト考ヘマシタガ、此両君ニ対シテハ相当ノ報酬ガアツテ然ルベキト存ジマス、是ハ御一名ニ五百円ツヽ、両名デ千円デゴザイマス、合計八千円ヲ支出シタイト云フ考案デ、此案ニ対シテ御同意ヲ蒙リタウゴザイマス
○百六十八番(秋山清八君) 此期成同盟会以外ニ千円ト云フコトハ一人デ千円デザイマスカ、総額デ千円デアリマスカ
○会長(渋沢栄一君) 総額デ千円デゴザイマス=別ニ御異議ガゴザイマセネバ、是ケ丈ノ支出ヲ致シマスルコトニ取極メマスル
  (「賛成々々」「異議ナシ」ト呼ブ者アリ)
○会長(渋沢栄一君) 夫デハ御報道致シタ通リニ支出ヲ取計ヒマス
  (「モウ一遍御読ミヲ願ヒマス」ト呼ブ者アリ)
  (会長再ビ金額ヲ朗読ス)
○百六十八番(秋山清八君) 此期成同盟会以外ノ報酬ト云フノハ幾人分デスカ
○説明員(佐治幸平君) 名義ニ現シタ方ハ四人、名義ニ現レナイ方ハ外ニ数名ゴザイマス
○百六十八番(秋山清八君) 私ハヤルト云フコトニハ不同意デハゴザイマセヌ、常務ヲ執ツテ居ラレタ人ハ実ニ私ハ五百円ノ報酬ト云フコトハ大変少ナカラウト思ヒマス、成程東京ニ居ルモノガヤルノナラバ宜シウゴザイマセウガ、ワザワザ地方カラ来テ労ヲ取ラレテ五百円ノ報酬デハ甚ダ少キニ失スト思フ、私ハ佐治君ナリ安瀬君ナリ敢テ知ラナイ御人デゴザイマセヌカラ、知己ノタメニ斯ノ如キコトヲ申スノデハゴザイマセヌ、期成同盟以外ノ者ニ千円ヤルト云フノハ、功労トシテ金デ計ツテハ計リ切レヌモノデスガ、其人ノ境遇トシテ社会ニ力ヲ尽スベキ位置ニ居ツテ、地方カラ総代トナツテ出テ居ツテ刻苦経営シテサウシテ事玆ニ至ツタト云フコトニ比シテハ私ハトウモ与フルニ軽キニ失スルト思ヒマスガ、是等ハ宜シク会長ハ御斟酌アツテモ宜カラウト思ヒマスガ、併シ別ニ沢山報酬ヲオヤリナサルノナラ格別、サウナイ以上ハ私ハ快ク思ヒマセヌ、私ハ之ヲ弐千円トシタイノデアリマス
○百六十五番(林賢蔵君) 是マテ日本鉄道会社ノ一室ヲ借リテ事務ヲ取計ヒ事玆ニ至ツタノデアリマスガ、日本鉄道会社ニ謝礼ト云フコトハナイノデアリマスカ
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○会長(渋沢栄一君) 日本鉄道会社ニ謝礼ノ考案ハ別ニナイノデゴザイマス
○百六十五番(林賢蔵君) 私ハ之ニ向ツテ相当ノ報酬ヲヤリタイト思フノデスガ
○会長(渋沢栄一君) 併シマダ日本鉄道会社ニ測量モ御頼ミシテアルシ、工事モ御頼ミシテアル、後ニ日本鉄道会社ニ対シテ有リ難イト云フコトデアツタナラバ、参百円上ゲル、五百円上ゲルト云フコトハ、他日心持ヲ以テ酬ユルト云フコトガアルダラウト思ヒマスカラ、玆ニ其案ヲ出サヌノデゴザイマス、秋山サンノ権衡ヲ失スルト云フコトデアリマスカ、或ハ我々ノ考案ガ悪ルカツタカ知ラヌカ、四五名ノ期成同盟会以外ノ主唱者モ補翼スル所ガアツテ、為ニ会社カ報酬ヲ送ルト云フコトニナツタノデゴザイマス、或ハ一分ノ報酬ヲスルハ此会社ノ已ムヲ得ヌト考ヘテ此金額ヲ提出シタノデアリマス、又佐治・安瀬両君ニ対シテノ報酬ハ或ハ少ナイカト考ヘマスガマダ創業ノ間デゴザイマスカラ、事務ガ毎日アツタト云フコトデハ無カツタノデアルカラ、即チ五百円ノ報酬ヲ呈スルト云フコトニ立案サレタノデゴザイマス、私ハ適当ト考ヘテ出シタ案デゴザイマスカラ、然ルベク御承知ヲ願ヒマス
  (「異議ナシ」ト呼ブ者アリ)
○会長(渋沢栄一君) 別ニ御異議ナイト認メマシテ此ノ通リ決定致シマス、マダ役員ノ選挙ヲセネバナラヌノデゴザイマスガ、時間デゴザイマスカラ是デ御弁当ヲ御仕舞ニナツテ、直ク続イテ役員ノ選挙ヲ――御投票ヲ願ヒタウゴザイマス
    午後零時二十五分 休憩
    午後一時十五分 開会
○会長(渋沢栄一君) 先刻申上ゲマシタ通リ、投票ガ済ミマセヌカラ、此所ニ投票箱ガゴザイマスカラ、マダ済ミマセヌ御方ハ御手早ク御入レ願ヒマス
  (投票ヲ行フ)
○会長(渋沢栄一君) マダ一二投票ガ御残リニナツテ居ルカハ知リマセヌカ、数ヘマス間ガゴザイマスカラ、一方カラ開キマスカラ左様御承知ヲ願ヒマス、即チ開票致シマス
   (開票シ氏名ヲ読上グ)
○会長(渋沢栄一君) 投票ノ結果ヲ御報道致シマス、大分多数デゴザイマスカラ閑取リマシテゴザイマス、総体ノ投票点数ガ七万四千八百七十八点デアリマス
  七万参千九百四十一点 二橋元長君
  七万参千九百参十四点 渋沢栄一君
  七万参千八百四十二点 山本直哉君
  七万弐千八百二十四点 浜政弘君
  七万弐千六百三十一点 本多衛政養君
  七万千八百九十三点 永戸直之介君
  七万〇三百四十六点 佐治幸平君
 此七名ガ御当選ニナリマシタ、次ニ監査役ノ結果ヲ申上ゲマス
 - 第9巻 p.136 -ページ画像 
  七万三千二百二十三点 林賢徳君
  七万二千四百九十六点 安瀬敬蔵君
  七万〇八百六十九点 川崎八右衛門君
 此三名ガ御当選ニナリマシタ、左様御承知ヲ願ヒマス、夫デハ是ニテ閉会ヲ告ゲマスル、御苦労デゴザイマシタ
    午後二時三十分閉会
右之通リ決議候也
                   創業総会々長
                     渋沢栄一

   ○起業目論見書・株式申込書略ス。定款ハ創業総会ニ於テ前掲(本巻第一一九頁)仮定款ヲ修正シ左ノ如ク確定セリ。(修正個条ノミ掲グ)
    第二条 本会社は岩越鉄道株式会社ト称シ、本社ヲ東京府ニ置ク
    第三条 本会社ハ、福島県安積郡郡山ヨリ新潟県中蒲原郡酒屋附近ニ至ル鉄道ヲ布設シ、旅客及貨物運輸ノ業ヲ営ムヲ目的トス
        (仮第五条削除、後条逐条繰上グ)
    第七条 本会社ノ株主ハ、其株式ヲ引受ケ、株主名簿ニ登記ヲ受ケタル者ニ限ルモノトス(仮第八条)
    第八条 本会社ノ株券ハ、左ノ六種トス
        一株券 二株券 五株券 十株券 五十株券 百株券
        株金全額払込以前ニ於テハ、仮株券ヲ発行スベシ(仮第九条)
    第九条 本会社ノ株券ニハ、其金額、発行ノ年月日、番号、社名、社印、社長ノ氏名・印、及株主ノ氏名ヲ載ス(仮第十条)
    第十条 本会社ノ株式ヲ売買譲受渡セントスルトキハ、其株券裏面ニ売買譲受渡人記名調印シ、之ニ双方連印ノ株式売買譲受渡登記請求書ヲ添ヘ、本会社ニ差出スベシ、本会社ハ相当ノ検査ヲ遂ケ、株主名簿ニ登記シ、株券裏面ニ社長記名捺印シテ、其所有権利ノ移転ヲ証スヘシ、若シ株主死亡シ其相続人又ハ受遺贈者ヨリ名義書換ヲ請求スルトキハ、本会社ニ於テ適当ト認メタル二名以上ノ保証人ヲ立ツヘシ
         但本会社ニ於テ必要ト認メタルトキハ、市区町村長ノ証名書又ハ其権利移転ノ確証ヲ差出サシムルコトアルヘシ(仮第十一条)
    第十一条 (仮第十二条中ノ「理由」ヲ「事由」ト改メ「尚発見セサルトキハ」ヲ削ル)
    第十二条 (仮第十三条中ノ)「族籍」ヲ削ル
    第十三条 本会社株券ノ書換又ハ再渡ヲ請求スル者ハ、本会社ニ於テ定ムル所ノ手続ヲ履行シ、且其費用ヲ仕払フヘシ(仮第十四条)
    第十四条 (仮第十五条中ノ「事業年度毎ニ」ヲ「半期毎ニ」ニ改ム)
         (仮第十六条削除シテ附則ニ廻シ、後条逐条繰上グ)
    第十五条 本会社ノ株金払込ハ之ヲ数回ニ分チ、第一回ハ一株ニ付金五円以上拾円以内トシ、第二回以後ハ取締役会議ノ決スル所ニヨリ、漸次払込ムモノトス
        但株金払込期日及金額ハ少クモ三週間前ニ各株主ニ通知スベシ(仮第十七条)
    第二十一条 (仮第二十三条中ノ「間」ヲ削ル)
    第二十二条 (仮第二十四条中ノ「本会社」ヲ削除、「預ケ」ヲ「預リ」ニ改ム
    第二十八条 (仮第三十条中ノ「招集ノ手続ヲナスベシ」ヲ「招集状ヲ発スヘシ」ト改ム)
    第三十二条 定款各条ニ規定アルモノヽ外仍ホ左ニ掲クル事項ハ総会ノ決議ヲ要スルモノトス
 - 第9巻 p.137 -ページ画像 
       一任意解散ノ事
       一定款変更ノ事
       一鉄道線路ヲ伸縮スル事
       一債券ヲ発行シテ負債ヲ起ス事
       一重役ノ報酬ヲ定ムル事
    第三十四条 (仮第三十五条中ノ「其総会ニ於テ決議ヲ」ヲ「其総会ニ於テ仮決議ヲ」ニ、「株主ニ通シテ」を「株主ニ通知シテ」ニ、「招集シ」ヲ「招集ス」ニ改ム)
    第三十五条 (仮第三十六条ノ但書ヲ削除)
    第三十七条 本会社ノ株主自ラ株主総会ニ出席シ難キトキハ出席株主ニ代理ノ委任状ヲ交附シ議決権ヲ行ハシムルコトヲ得(仮第三十八条)
    第六章(章名「計算」ヲ「会計」ニ改ム)
    第三十八条 本会社ノ勘定ハ、一ケ年ヲ分チテ一月ヨリ六月迄ヲ前半期トシ、七月ヨリ十二月迄ヲ後半期トシ、各半期毎ニ計算ヲ閉鎖シ、計算書・財産目録・貸借対照表・事業報告書・配当金分配案ヲ作ルヘシ(仮第三十九条)
    第三十九条 役員賞与金ハ、配当金分配案ニ於テ、通常総会ノ決議ニ依リ之ヲ定ムルモノトス
    第四十条 準備金ハ、取締役会ノ決議ニ依リ、公債証書、確実ナル会社ノ株券又ハ債券ヲ以テ積立置クコトヲ得ヘシ
    第四十一条 各半期ノ配当金ハ、其半期末日現在ノ株主ニ割賦スルモノトス(以上前三条ハ仮第四十条)
        (第七章 全部削除)
    附則 第四十二条 本会社ノ株式ヲ引受ケタルモノヽ払込ミタル株式一株ニ付金五拾銭ノ保証金ハ、第一回株金払込ノ時其払込金ニ差継クヘシト雖トモ、若シ其払込ヲ怠リ定款第十七条ノ処分ヲ受ケタル時ハ、之ヲ本会社ニ没収スヘシ(仮第十六条)


第八回鉄道会議議事速記録 第三号 明治二九年一二月一九日(DK090013k-0002)
第9巻 p.137 ページ画像

第八回鉄道会議議事速記録 第三号 明治二九年一二月一九日
    岩越鉄道株式会社設立免許申請書
明治二十九年一月二十日第五十四号ヲ以テ発起ノ御認可ヲ得候岩越鉄道株式会社ノ義、爾後適法ノ手続ヲ為シ、明治二十九年八月四日創業総会相開キ、定款其他諸般ノ事項ヲ議決シ、取締役並ニ監査役ノ選挙ヲ終リ候ニ付、鉄道ノ布設並ニ会社ノ設立ノ御免許被成下度、別紙目論見書・線路図面・工事方法書・工費予算書・定款・株式申込簿・発起御認可書相添ヘ、此段申請仕候也
             岩越鉄道株式会社発起人
  明治二十九年九月八日   東京市日本橋区兜町二番地
                       渋沢栄一
                           ○外三百三十六名
    逓信大臣 白根専一殿
   ○第六課文書類別、農商・鉄道ニ関スル書類五(明治三〇年第一種)ニモ同一文ノ申請書収載シアリ。


第六課文書類別 農商・鉄道ニ関スル書類五明治三〇年第一種(DK090013k-0003)
第9巻 p.137-138 ページ画像

第六課文書類別 農商・鉄道ニ関スル書類五明治三〇年第一種 (東京府庁所蔵)
鉄第一二四四号
                       東京府知事
岩越鉄道株式会社発起人渋沢栄一外三百三十六名ヘ別紙免許状下附候
 - 第9巻 p.138 -ページ画像 
条、同人等ニ交付シ、請書ヲ差出サシムヘシ
  明治三十年五月二十六日
            逓信大臣 子爵 野村靖

(別紙)
第七拾号
    免許状
                岩越鉄道株式会社発起人
                      渋沢栄一
                      ○外参百参拾六名
右申請ニ係ル岩越鉄道株式会社ノ設立、並ニ日本鉄道株式会社既成線郡山停車場ヨリ同県下北会津郡若松・新潟県下中蒲原郡新津ヲ経テ同郡酒屋ニ至ル鉄道ヲ敷設シ運輸ノ業ヲ営ムコトヲ免許ス、依テ会社設立登記ノ日ヨリ起算シ満七ケ年以内ニ敷設工事ヲ竣工スヘシ
  明治三十年五月二十六日
            逓信大臣 子爵 野村靖


青淵先生公私履歴台帳 明治三十三年五月十日調(DK090013k-0004)
第9巻 p.138 ページ画像

青淵先生公私履歴台帳 明治三十三年五月十日調
                    (渋沢子爵家所蔵)
明治三十年
一岩越鉄道株式会社ノ設立ヲ賛成シ取締役トナリ、現ニ其職ニアリ
  本会社ハ新潟・郡山間ノ鉄道ヲ布設スルヲ以テ目的トスルモノニシテ、創立委員ニ加ハリ、其設立ニ尽力シ、成立後取締役ニ選ハレ、引続キ其職ニアリ