デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

2章 交通
2節 鉄道
17款 函樽鉄道株式会社(北海道鉄道株式会社)
■綱文

第9巻 p.159-192(DK090019k) ページ画像

明治32年10月27日(1899年)

是ヨリ先、北垣国道等函樽鉄道株式会社ノ再興ヲ企ツルヤ、栄一之ニ与リ、是日会社創立総会ニ臨ミ重役ヲ指名推薦シ、相談役ニ推サル。


■資料

渋沢栄一 日記 明治三二年(DK090019k-0001)
第9巻 p.159-160 ページ画像

渋沢栄一 日記 明治三二年
三月十六日 暴風雨
○上略午後北垣国道氏来リテ函樽鉄道ノコトヲ話ス○下略
六月廿二日 雨
此日モ病気ノ為終日褥中ニ在テ読書又ハ書類ヲ調査ス、函樽鉄道会社集会ノ約アリシモ病ノ為ニ出席ヲ拒絶ス
六月廿六日 曇
○上略北垣国道来リ函樽鉄道会社ノコトヲ談ス○下略
七月八日 曇
○上略四時帝国ホテルニ抵リ函樽鉄道会社創立ニ関スル集会ニ列ス、芳
 - 第9巻 p.160 -ページ画像 
川逓信、桂陸軍両大臣、榎本子爵、北垣男爵其他数十人来会ス、席上此会社創立ノ必要ヲ説テ一場ノ演説ヲ為ス、夜九時過深川邸ニ帰宿ス
十月十六日 晴
朝北垣国道氏来リ函館鉄道会社重役ノコトヲ依頼セラル、依テ之ヲ謝絶ス○下略
十月十八日 曇
○上略北垣国道氏来リ函樽鉄道重役ノコトヲ再話セラル、堅ク之ヲ謝絶ス○下略
十月十九日 晴
○上略園田実徳・阪本則美二氏来リ、函樽鉄道重役ノコトヲ依頼セラル依テ北垣氏ニ答ヘタル趣旨ヲ以テ謝絶ス○下略
十月二十二日 晴
○上略北垣国道氏来リ、函樽鉄道会社重役ノコトヲ談ス○下略
十月廿五日 晴
朝北垣国道氏来ル、函樽鉄道ノコトヲ話ス○下略
十月廿七日
○上略午前八時台湾協会ニ於テ催ス処ノ函樽鉄道会社創業総会ニ出席ス議事終了ノ後第一銀行ニ出勤ス○下略
十月二十九日 午前晴午後雷雨
○上略北垣国道来ル、函樽鉄道ノコトヲ談ス○下略
十月三十日 晴
○上略午後宮内省ニ出頭シ、函樽鉄道ノコトニ関シテ大臣及内蔵頭ニ面話ス○下略


文書類纂 農工商・鉄道会社第五明治三一年第一種(DK090019k-0002)
第9巻 p.160-167 ページ画像

文書類纂 農工商・鉄道会社第五明治三一年第一種 (東京府庁所蔵)
      ○
私外百弐拾四名名発起人ト相成、去ル明治廿八年二月十五日ヨリ引続キ本年四月十六日付ヲ以テ、北海道函館小樽間鉄道敷設及補助金御下付之義併セテ請願仕候処、補助金下付之義ハ難聞届、尚鉄道敷設之義モ之ニ関聯スル趣ニテ両願書共却下相成候ニ付テハ、爾来発起人共ニ於テ熟議ヲ遂ケ、更ニ前願ニ引続キ鉄道敷設之義不日出願方準備中ニ候間、予メ御聞置相成度此段奉願候也
             東京市芝区巴町廿九番地
  明治廿九年六月廿日          園田実徳(印)
    拓殖務大臣 子爵 高島鞆之助殿
    逓信大臣     白根専一殿
      ○
 内三丙五〇二九号
本月廿日付ヲ以テ北海道函館ヨリ小樽間鉄道敷設之義前願ニ引続キ出願可仕旨予テ上申仕置候処、今般別紙之通申請仕候間、何卒其筋ヘ御進達相成下度此段奉願候也
            函樽鉄道株式会社発起人総代
  明治廿九年六月廿五日         園田実徳(印)
    東京府知事 侯爵 久我通久殿
 - 第9巻 p.161 -ページ画像 
      ○
    函樽鉄道株式会社創立認可願
今般私共発起ヲ以テ函樽鉄道株式会社ヲ創立シ、北海道渡島国函館及後志国小樽ノ間ニ鉄道ヲ布設シ、運輸ノ業相営ミ度候間、何卒右御認可仮免状御下付被成下、規ニ依リ別紙起業目論見書並仮定款図面等相添ヘ、発起人一同連署ヲ以テ此段奉願候也
  明治廿九年六月廿五日
            函樽鉄道株式会社発起人
              北海道函館区末広町十一番地
                    平田文右衛門(印)
              北海道函館区元町四十一番地
                    阿部興人(印)
              東京市町麹区元園町一丁目六番地
                    久米弘行(印)
              東京市芝区巴町廿九番地
                    園田実徳(印)
              同市神田区今川小路二丁目十二番地
                    小川為治郎(印)
              京都市上京区寺町通石薬師下ル染殿町二番地
                    坂本則美(印)
                  (外百拾八名連署略)
    拓殖務大臣 子爵 高島鞆之助殿
    逓信大臣 白根専一殿
(別紙)
    函館鉄道株式会社起業目論見書
第一 本会社ハ株式組織トス
第二 本会社ハ鉄道運輸営業ヲ以テ目的トス
第三 本会社ハ函樽鉄道株式会社ト称シ、本社ヲ東京府下東京市ニ設置ス
第四 本会社線路ハ、北海道後志国小樽ヨリ忍路及余市ヲ経テ稲穂峠ヲ越ヘ、胆振国長万部及渡島国森ヲ経テ同国函館ニ達スル、延長凡ソ百五拾哩ニシテ、軌道幅員三呎六吋トス
第五 本会社ハ資本総額ヲ金八百万円トシ、之レヲ株式拾六万株ニ分チ、壱株金額五拾円トス
第六 本会社鉄道布設ニ係ル費用及営業収支概算左ノ如シ
    興業費予算
一金八百万円          興業資本金
    内訳
  金四拾五万円           用地費
  金百九拾五万円          土功費
  金弐拾七万円           橋梁費
  金参拾参万七千五百円       コルベルト費
  金五万弐千五百円         伏樋費
  金百八拾七万五千円        隧道費
 - 第9巻 p.162 -ページ画像 
  金百五拾万円           軌道費
  金拾四万七千円          停車場費
  金四拾万円            車輛費
  金拾五万円            運送費
  金四万五千円           諸建物費
  金参万円             電信架設費
  金四万五千円           建築用滊車費
  金参万七千五百円         建築用具費
  金七千五百円           柵垣費
  金七万五千円           避雪費
  金拾五万円            測量並工事監督費
  金拾万円             小樽函館波止場費
  金拾弐万円            総係費
  金弐拾五万八千円         予備費
    営業収入予算
一金五拾五万弐千七百壱円弐拾五銭   営業収入金
    内訳
  金四拾弐万四百八拾円       乗客賃金
  金拾参万弐千弐百弐拾壱円弐拾五銭 貨物賃金
    営業支出予算
一金弐拾七万三千七百五拾円      営業支出金
内訳
  金三万弐千円           総係費
  金六万弐千円           運輸費
  金七万五千円           滊車費
  金拾万四千七百五拾円       線路保存費
 収支差引金弐拾七万八千九百五拾壱円弐拾五銭
                  純益金
  但シ資本総額金八百万円ニ配当スルトキハ三朱四厘八毛強ニ当ル
第七 本会社発起人ノ氏名住所各自引受株数左ノ如シ
   (省略)
   (発起人連署省略)
    運輸営業収支説明
一建築費ハ線路中稲穂峠ノ険アリ、此隧道凡ソ壱千百間余、其他二三ノ小隧道及橋梁等ノ為メ多額ノ工費ヲ要スルモ、鉄道用枕木及敷地買収ノ価格ハ内地ニ比シ大ヒニ低廉ナルヲ以テ是レト相殺スルトキハ内地ト大差ナケレハ、壱哩金五万三千三百三拾三円三拾三銭余ヲ以テ成功ノ見込
一旅客ノ来往貨物輸出入ノ状況ハ後日営業開始ノ暁ニ至ラサレハ固ヨリ確然タル成績ヲ見ル能ハスト雖トモ、本会社カ調査ノ結果予定セル別表運輸営業収支一覧表ニ掲載セル処ノモノハ予定ノ収入ヨリ猶其七歩ヲ見積リタルモノニシテ、既往ニ於ケル管外農業者即チ移住農民ト見ルヘキモノ、漁業者即チ出稼人ト見ルヘキモノ及通常旅客則チ官吏商工業者ト見ルヘキモノヲ見積リ、其実歴ヲ参酌シテ函館
 - 第9巻 p.163 -ページ画像 
ヨリ小樽迄全線百五拾哩ヲ直行スルモノヲ一日平均弐百弐拾人トシ往復四百四拾人、一ケ年拾六万六百人、此乗客哩弐千四百九万哩、中間駅間ヲ往復スルモノ一日弐百人、往復四百人トシ、壱ケ年拾四万六千人、一人平均全線路ノ半ヲ行クモノトシ、即チ七拾五哩、此乗客哩壱千〇九拾五万哩、合計三千五百四万哩、一人一哩ノ賃金壱銭弐厘ノ積算ナリ、又貨物ノ如キモ従来滊船其他風帆船ニ依リ輸出入ノ実例アリ、其数量ヲ斟酌シ、以テ本線路ニ吸集スルモノヲ予定セルモノニシテ、函館ヨリ直チニ小樽ニ輸入スルモノ及小樽ヨリ函館ニ輸出スルモノ一日合計五拾噸〔貨物壱個ヲ平均八十四斤ト定、弐拾個ヲ以テ壱噸トシ五十噸ノ個数壱千トス〕一ケ年壱万八千弐百五拾噸〔此個数三十六万三千個〕此噸哩弐百七拾参万七千五百噸哩、而シテ、中間駅間相互輸出入ノモノモ亦同シク一日五拾噸〔此個数壱千個〕一ケ年壱万八千弐百五十噸〔此個数三十六万三千個〕平均全線路ノ半ヲ拾載スルモノトシ、此噸哩百三拾六万八千七百七拾噸哩、合計四百拾万六千弐百五拾噸哩、一噸壱哩弐銭三厘ノ積算トス
以上ハ北海道既往ノ統計ニ依リ算出セルモノニシテ、本線路布設ノ後ハ旅客ノ来往貨物輸出入ノ度ハ更ニ其多キヲ加フルヤ言ヲ俟タスト雖トモ、姑ク既往ノ統計ヲ標準トシ算出セルモノナリ
      ○
明治廿九年拾月七日     内務部第三課主任属堀田一衛(印)
知事(印) 参事官(印)
 内務部長(印) 第三課長代(印) 農商掛
(朱書)
内三丙五〇二九号ノ十八
    函樽鉄道起業上ノ義ニ付副申案
曩ニ及進達候北海道函館区末広町十一番地平田文右衛門外百弐拾参名発起ニ掛ル函樽鉄道起業上ノ義、遂調査候処意見大略左記ノ通ニ有之候条、此段副申候也
 年 月 日                  知事
   拓殖務大臣宛
一起業ノ確否
  発起人各自ノ職業ハ会社役員・織物商ハ《(マヽ)》証人・生糸商・砂糖商・肥料商・洋物雑貨商・古道具商・染工・農業等ニシテ、企業ノ目途正確而テ各相当ノ資産ト信用ヲ有シ其程度ハ起業ニ適スト認ム
一起業ノ効用
  小樽ヨリ忍路余市ヲ経テ稲穂峠ヲ越ヘ夫ヨリ又長万部森ヲ過テ函館ニ達スル鉄道ヲ布設セントスルハ、重ニ右両地間ノ貨物旅客ヲ運送セントスルノ目的ニ出テタルモノナラシ《(マヽ)》、右両地間ハ陸地道路ノ貫通ナキニアラスト雖トモ、運輸交通之レニ依ラントスレハ道路ノ狭悪里程ノ延長数日ヲ要スルモ尚其用ヲ弁セサルヲ恐ル、故ニ従来両地間ヲ往来シ、又ハ貨物ヲ運送セントスルモノハ本道東西両海岸ノ内何レカ一方ニ出テ海運ノ便ニ依ルヲ常トス、然ルニ本道ノ沿海ハ風浪高ク、動モスレハ海運ノ便ヲ欠キ、或ハ日数ヲ重ヌルノ不便アリ、又長万部小樽間ニハ耕スヘキノ地多シト雖トモ、通路不便ノ為メ耕耘ニ従事スルモノ多ラス、長万部函館間ハ稍通スト雖トモ中間峠下村ノ峡アリ、人馬ノ交通貨物運搬又容
 - 第9巻 p.164 -ページ画像 
易ニアラス、故ニ此間鉄道ノ貫通スルニ於テハ拓地殖民ノ事業ヲ進ムルハ勿論、沿道ノ村落ハ漸次生産力ヲ増加シ、其他海上不便ノ交通ヲ避ケ、農商業ニ与フルノ利益鮮ナカラス、依テ本鉄道ノ企業ハ良好ノ結果ヲ得ヘキモノト認ム
一起業ノ公益上ノ関係
  鉄道布設ノ為メ旧来ノ道路河川等何レヲ変更スルヤハ詳ナラサルモ、交通上ノ利害ニ付テ大ナル関係ヲ有セス、又地方人民ノ生計営業等困難ヲ感スルモノハ車夫馬丁ノ類ナルモ、是等ノ専業者少ナク、為メニ影響ヲ被ムルモノ稀ナリ、又交通経済上ニ付テハ概シテ利害ヲ享受スルモノナラン
 (理由)北海道居住ノ発起人有之ノ義ハ何レモ中人以上ノ動産不動産ヲ所持シ相当ノ名望ヲ有スル趣概略シテ詳細ノ義ハ追テ回答アルヘキ旨同庁ヨリ回報有之候処、別紙ノ通拓殖務省北口局長ヨリ照会有之ニ付本文ノ如ク取計フ
    但申請書類ハ別牋ノ通既ニ進達済ニ有之
      ○
(朱書)
訓第一四七号
                       東京府
函樽鉄道株式会社発起人平田文右衛門外弐百名ヘ鉄道敷設仮免状下附候条、同人等ヘ交付シ、該仮免状指定期限内ニ成規ノ図面書類ヲ差出サシムヘシ
右訓令ス
  明治三十年四月二十九日
        拓殖務大臣 子爵高島鞆之助(印)
(朱書)
府乙第四号
    仮免状
              函樽鉄道株式会社発起人
                      平田文右衛門
                          外弐百名
右出願ニ係ル函樽鉄道株式会社ノ発起ヲ認可シ、北海道後志国小樽ヨリ同道渡島国函館区ニ至ル鉄道敷設ノ為メ、同線路ヲ実地測量スルコトヲ許可ス
 但此仮免状下附ノ日ヨリ起算シ、満十八ケ月以内ニ私設鉄道条例第三条ノ書類図書及商法第百六拾六条ノ書類ヲ差出シ、免許状ノ下付ヲ申請セサルトキハ、此仮免状ハ無効タルヘシ
  明治三十年四月廿九日
         拓殖務大臣 子爵高島鞆之助
      ○
巳第五一一号
             函樽鉄道株式会社発起人
                     平田文右衛門
                         外二百名
本年十一月三日付上申函樽鉄道株式会社発起人追加ノ件聞置ク
 - 第9巻 p.165 -ページ画像 
  明治三十年十一月廿五日
           内務大臣 伯爵樺山資紀
      ○
    函樽鉄道株式会社発起人追加上申
客年六月二十五日附ヲ以テ函樽鉄道株式会社創立ノ義出願仕リ、爾後本年四月二十九日仮免状御下附相成候処、今般右発起人中ヘ下記北垣国道ヲ追加仕、且其引受株別紙ノ通リニ有之候条、御聞済被成下度、発起人及追加発起人連署ヲ以テ此段上申仕候也
  明治三十年十一月三日
             函樽鉄道株式会社発起人
             平田文右衛門代理
              東京市芝区巴町廿九番地
                    園田実徳(印)
             同発起人辻忠郎兵衛外百九十五名代理
              同市麹町区元園町一丁目六番地
                    坂本則美(印)
             同追加発起人
              京都市上京区土手町通丸太町下ル末丸町二番戸
                    北垣国道(印)
              東京市神田区今川小路二丁目十二番地
             同発起人   小川為次郎(印)
              同市麹町区富士見町六丁目七番地
             同発起人   久米弘行(印)
    内務大臣 伯爵樺山資紀殿
 (別紙)
    函樽鉄道株式会社追加発起人住所氏名並其引受株数
引受株数   住所                    氏名
壱千株   京都市上京区土手町通丸太町下ル末丸町二番戸  北垣国道
右目論見書第七項ニ追加ス
      ○
(朱書)
第一六号
    御届
当会社創立事務所ヲ東京市京橋区日吉町八番地ニ設置仕候間、此段及御届候也
  明治三十一年三月廿一日
              函樽鉄道株式会社
              創立委員長 北垣国道(印)
    東京府知事 子爵岡部長職殿
      ○
    函樽鉄道株式会社設立仮免状延期ノ義ニ付願
当函樽鉄道株式会社ハ客年四月二十九日ヲ以テ御下附相蒙候仮免状ノ御趣旨ニ基キ、実測ニ係ル準備ノ完整ト共ニ線路測量ニ着手シ、目下専ラ進功中ニ有之候処、本線路ハ総テ内地ト其趣ヲ異ニシ、概シテ無人ノ山河ヲ貫通スルヲ以テ測量上ノ困難素ヨリ枚挙ニ遑アラス、今其
 - 第9巻 p.166 -ページ画像 
一二ヲ挙クレハ、例ヘハ河川ノ如キ未タ曾テ治水ノ功ヲ加ヘス天然其放流ニ任セタルモノナレハ、平常ハ河水僅カニ通スルヲ見ルモ、洪水ノ時又ハ春期融雪ノ時ニ至レハ水量頓ニ増層シ、水勢汎濫常ニ其河身ヲ変シ、且内地諸川ノ如ク平素看測ノ設ナク、且本来無人ノ境ナレハ徴スヘキ口碑ノ存スルナキヲ以テ、洪水点ノ在ル所容易ニ測定スヘカラス、加之本線路ノ一問題タル雪害ノ如キ、夫ノ既設炭坑鉄道カ年々一二月ノ交積雪ノ為メ運輸渋滞シ、或ハ全ク半途ニ停頓シ、卒カニ多数ノ工夫ヲ督シテ排雪ノ事ヲ為シ、僅々数哩間ノ進行ニ半日以上ヲモ費スカ如キノ実事アルニ照スモ、本線路ハ炭鉱鉄道ニ比シテ地勢遥カニ高ク、其積雪実ニ七八尺ノ深キニ及フモノナレハ、除害ノ設備殊ニ一層ノ考究ヲ要ス、此考究ト前陳洪水点ノ観測トハ本線路ニ容易ノ撰定ヲ許サス、一朝若之ヲ誤ルトキハ独リ本会社ノ不幸ノミナラス、実ニ国家百年ノ損害ヲ遺スモノナリ、故ニ詳ニ洪水点ノ在ル所ヲ察シ、其汎濫ヲ避ケ、防雪ノ設備ヲ全クシテ雪中運転阻止ノ害ヲ蒙ルナキノ設計ヲ立ル等、是皆積雪融雪ノ現状ニ徴シテ以テ其宜シキヲ制セントスル次第ニ有之候間、既ニ測量ヲ了セシ箇所モ尚積雪融雪ノ実況ニ照スニアラサレハ之ヲ確定スル能ハサルハ已ムヲ得サルモノアリ、御指定ノ期限内ニ在テ完了ノ見込殆ント難相立、発起人等ノ深ク憂慮罷在候処ニ有之候、又玆ニ株式募集ニ対シ経済社界ノ情態ヲ顧ミ候得者、資金欠乏利率昂騰時甚時否運ニ遭遇シ、殊ニ本鉄道ハ其経過スル処山河ヲ横断シ、工事ノ困難ナル、北海全道第一トス、従テ全線開通ニ至ル迄ノ間ハ少クモ四五ケ年間ノ長年月ヲ要シ候ニ付テハ、目下経済界利率ノ上ヨリ打算スレハ此際強テ株式ヲ募集センハ到底做ス能ハサルノ形勢タルヲ免レス、況ンヤ民間実業界経済ノ趨勢ハ漸次愈困難ノ程度ヲ増シ、日ニ益逼迫ノ一方ニ沈淪致候ニ於テオヤ、既ニ各私設鉄道ノ状態ヲ観ルモ、現ニ工事着手中ノモノト雖トモ株金払込ノ困難ヲ察シ暫ク工事ヲ中止スルモノアリ、斯ク既ニ成立セル会社スラ尚且一時中止ノ已ムヘカラサルモノアルノ時ニ当リ、仮令本鉄道線路ハ前途ノ利益多望ニシテ而モ且拓殖防備上殊ニ須急ノモノタリト雖トモ、時勢又奈何トモスル能ハス、近ク其一例ヲ挙クレハ、彼ノ台湾鉄道ノ如キ其筋ニ於テハ之ニ約スルニ六朱利子ノ保証ヲ以テシ、既設ノ軌道滊関車其他ノ器械ヲ付与セラルヽノ特典アルモ、尚且期限ヲ延長スルコト前後四回ノ多キニ及ヘリ、保護ノ特典アル台湾鉄道ニシテ既ニ如此、本鉄道ノ如キ毫モ国庫ノ恩典ニ浴セサルモノニ在テハ殊ニ諒察ヲ冀フノ情ナキ能ハス、惟フニ本鉄道ノ如キ或ハ前者ト其情ヲ異ニスルモノアルヘシト雖トモ、国家ノ財源ヲ啓発シ、拓殖運輸ノ便ヲ与ヘ、又他日風雲ノ警アルノ時ニ当リ緩急事ニ応スルノ利用ヲ国家ニ供スルニ於テハ更ニ異ナル処ナシ、而シテ本鉄道ニ係ル仮免状ノ期限ハ、来ル十月廿八日ヲ以テ満了可致候処、此時勢ニ当リ右期間ニ於テ全額ノ株式ヲ募集シ、本免許状下附ノ申請ヲナサンコトハ発起人一同甚当惑仕候処ニ御座候、就テハ右具陳仕候目下経済界ノ否運実ニ不得止ノ時勢ナルト、地理上線路ノ撰定方甚タ困難仕候ノ事情等深ク御洞察被成下、特別ノ御詮議ヲ以テ本鉄道仮免状ニ対シ、更ニ向フ満一ケ年ノ延期御許可被成下度、此段奉願上候
 - 第9巻 p.167 -ページ画像 
   追申、本文中ニ具申仕候株式募集ノ事ハ只前途ニ見込ナク懸空ニ上申致候ニハ無之、世ニ信用アリ有力ナル富豪家ニシテ大株主トナリ、賛助ヲ与フヘキノ予約アルモノ不尠モ、今日経済界ノ大勢ニ逆シ之ヲ実行スヘキモノニアラサレハ、姑ク時勢ノ緩和ヲ竢ツニ如カサル旨ノ勧告ヲ受クルノ事情ニ有之、是等ノ事情ヲモ御洞察被成下度、併テ副申仕候
  明治三十一年七月二十五日
            函樽鉄道株式会社創立委員長
                   男爵 北垣国道(印)
    内務大臣 伯爵板垣退助殿
      ○
(朱書)
内務省指令甲第五〇四号
                函樽鉄道株式会社
                創立委員長
                   男爵 北垣国道
本年七月二十五日付願函樽鉄道株式会社設立仮免状有効期限延期ノ件明治三十二年十月二十七日迄延期ヲ認許ス
  明治三十一年八月二日
                  内務大臣印


第四課文書 商工会社十四巻明治三十二年(DK090019k-0003)
第9巻 p.167 ページ画像

第四課文書 商工会社十四巻明治三十二年   (東京府庁所蔵)
    御届
当会社創立事務所ヲ京橋区木挽町五丁目三番地ヘ移転致候間、此段御届仕リ候也
  明治三十二年八月一日
            函樽鉄道株式会社
            創立委員長 男爵北垣国道
    東京府知事 男爵千家尊福殿


函樽鉄道株式会社第壱回報告 (明治三十三年)(DK090019k-0004)
第9巻 p.167-168 ページ画像

函樽鉄道株式会社第壱回報告    (明治三十三年)
  社務総況
創業総会 三十二年十月廿七日、東京市麹町区内山下町一丁目一番地台湾協会ニ於テ創業総会ヲ開キ、創立委員長北垣国道ヨリ創業事務ノ報告ヲナシ、定款ノ確定、創業費ノ認定ヲ了ヘ、重役ノ選挙ヲナセシニ出席株主ノ一致ヲ以テ、渋沢栄一氏ニ其氏名ヲ一任スル事ニ決シ、於是渋沢氏ハ取締役ニ北垣国道・高島嘉右衛門・近藤廉平・園田実徳・坂本則美・阿部興人・高野源之助・片岡直輝・稲垣貞次郎、監査役ニ対島嘉三郎・竹村藤兵衛・平田文右衛門ノ十二名ヲ指名シ、次テ重役ノ報酬及創立委員ノ報酬ヲ決議セリ
取締役互選 三十二年十一月四日取締役互選会ヲ開キ、専務取締役ニ北垣国道・園田実徳・坂本則美ノ三名当選シ、更ニ専務取締役ノ互選ヲ以テ社長に北垣国道、理事ニ園田実徳・坂本則美当選セリ
取締役辞任 取締役近藤廉平氏一身上ノ都合ヲ以テ三十二年十一月十七日辞任セリ
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技術顧問嘱托 三十二年十一月廿五日工学博士南清氏ニ本会社技術顧問ヲ嘱托セリ
免許状下附 三十二年十一月廿日ヲ以テ本免状下附ノ請願ヲナセシニ本年五月十六日ヲ以テ逓信大臣ヨリ左ノ免許状ヲ下附セラレタリ
  第百三十四号
    免許状
                函樽鉄道株式会社発起人
                   男爵北垣国道
                        外百七十三名
  右申請ニ係ル函樽鉄道株式会社ノ設立並渡島国函館ヨリ同国森・胆振国長万部・後志国余市ヲ経テ同国小樽ニ至ル鉄道ヲ敷設シ運輸ノ業ヲ営ムコトヲ免許ス、依テ会社設立登記ノ日ヨリ起算シ満八ケ年以内ニ敷設工事ヲ竣工スヘシ
    明治三十三年五月十六日
             逓信大臣 子爵芳川顕正


函樽鉄道株式会社考課状(DK090019k-0005)
第9巻 p.168-169 ページ画像

函樽鉄道株式会社考課状
    創業総会決議事項追加
本会社創業総会ニ於テ本会社相談役及出席株主ノ発議ニ依リ創立委員ニ報酬給与ノ件左ノ通決議ス
 一出席株主ノ一致ヲ以テ渋沢栄一氏ニ相談役ヲ嘱托スル事ニ決シ、同氏ノ承諾ヲ得タリ
 一創立委員十二名ニ対シ報酬トシテ金参千円乃至五千円ノ範囲ニ於テ取締役会ノ決議ヲ以テ支給スルモノトス
    ○株主姓名簿
        株数      居住地  姓名
       一、〇〇〇    東京  内蔵頭
       三、〇〇〇    大阪  大阪貯蓄銀行副頭取 外山修造
       二、七〇〇    大阪  日本生命保険株式会社々長 鴻池善右衛門
       二、〇〇〇    東京  尚秦
       一、五〇〇    愛知  徳川義礼
       一、二〇〇    東京  川田竜吉
       一、〇〇〇    愛知  天埜伊左衛門
       一、〇〇〇    三重  吉田伊兵衛
       一、〇〇〇    東京  帝国生命保険株式会社々長 福原有信
       一、〇〇〇    三重  三輪猶作
       一、〇〇〇    東京  田健次郎
       一、〇〇〇    愛知  滝兵右衛門
       一、〇〇〇    東京  原六郎
       一、〇〇〇    東京  岩倉具定
       一、〇〇〇    大阪  住友吉左衛門
       一、〇〇〇    東京  井伊直憲
       一、〇〇〇    東京  池田仲博
       一、〇〇〇    大阪  鴻池善右衛門
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       一、〇〇〇    東京  合名会社三井銀行社長 三井高保
       一、〇〇〇    東京  岩倉久弥
       一、〇〇〇    東京  大倉喜八郎
       一、〇〇〇    東京  安田善次郎
       一、〇〇〇    京都  稲垣合名会社業務担当社員 稲垣貞治郎
       一、〇〇〇    京都  辻忠郎兵衛
       一、〇〇〇    京都  津田栄太郎
       一、〇〇〇    京都  稲垣貞治郎
       一、〇〇〇    京都  中村新治郎
       一、〇〇〇    京都  藤川源兵衛
            ○中略
         五〇〇    東京  渋沢栄一
            ○下略


東京経済雑誌 第四〇巻一〇〇三号・第九九六―九九七頁〔明治三二年一一月四日〕 ○函樽鉄道創業総会(DK090019k-0006)
第9巻 p.169-170 ページ画像

東京経済雑誌  第四〇巻一〇〇三号・第九九六―九九七頁〔明治三二年一一月四日〕
    ○函樽鉄道創業総会
函樽鉄道創業総会は去二十七日台湾協会に於て開会せしに、出席株主は渋沢栄一、安田善次郎、大倉喜八郎の諸氏外三十余名にして、北垣委員長より創業事務の報告を為し、次に定款の確定を求めしに一二字句修正の外原案に決し、創業費認定案亦可決し、次に重役の選挙に移しに同選挙は便宜の為め渋沢栄一氏の指名に任ずることゝなり、同氏より左の如く指名し満場一致にて之を可認し、終て散会したりといふ
    取締役
 北垣国道 坂本則美  高島嘉右衛門 近藤廉平
 片岡直輝 稲垣貞次郎 園田実徳  高野源之助
 阿部与人《(阿部興人)》
    監査役
 竹村藤兵衛 対馬喜三郎 平田文右衛門
因に記す、同鉄道は小樽を起点として忍路及余市を経、稲穂峠を越へ胆振国長万部及渡島国森を経て函館に達する延長凡五百十哩《(百五)》の敷設するものにして、資本金八百万円なるが、其内訳は左の如し
                            円
 用地費                  四五〇、〇〇〇
 土工費                一、九五〇、〇〇〇
 橋梁費                  二七〇、〇〇〇
 コルベルト費               二三七、五〇〇
 隧道費                一、八七五、〇〇〇
 軌道費                一、五〇〇、〇〇〇
 停車場費                 一四七、〇〇〇
 車輛費                  四〇〇、〇〇〇
 運送費諸建物電信架設及予備費等    一、一七〇、五〇〇
  合計                八、〇〇〇、〇〇〇
尚ほ同鉄道敷設に就き北海道庁にては同線路敷地幅員三十間並に防雪林用地として線路の両側に左右各四十五間宛の地積並停車場地積を下渡し、且建築用材並に軌道用枕木、隧道用支持材、橋梁用材等に充る
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為め、線路附近の官有林野内に於て立木五十万尺〆石材九十万切を払下ぐる筈なりといふ
  ○竜門雑誌第一三八号(明治三二年一一月)ニ右ト同文ノ記事ヲ掲グ。
  ○同会社ハ三十三年五月十六日本免状ヲ得テ工事ニ着手シ、十一月社名ヲ改メテ北海道鉄道株式会社トス。三十七年十月十五日函館小樽間百五十七哩全通、明治四十年七月一日鉄道国有法ノ規定ニヨリ買収サル。
  ○北垣国道ハ元北海道長官ニシテ、ソノ在官中明治二十六年三月北海道開拓意見書ヲ政府ニ上リ、鉄道敷設ノ最急務ナルヲ力説セルコトアリ。


函樽鉄道株式会社定款(DK090019k-0007)
第9巻 p.170-173 ページ画像

函樽鉄道株式会社定款
    第壱章 総則
第一条 本会社ハ函樽鉄道株式会社ト称ス
第二条 本会社ハ北海道渡島国函館ヨリ同国森、胆振国長万部及倶知安原野及後志国余市ヲ経テ同国小樽迄鉄道ヲ敷設シ、運輸ノ業ヲ営ムヲ以テ目的トス
第三条 本会社ハ本社ヲ東京市ニ設置ス
第四条 本会社ノ資本総額ハ金八百万円トス
第五条 本会社カ法令及定款ノ規定ニ依リ為スヘキ公告ハ新聞紙ヲ以テ公示スルモノトス
第弐章 株式及株券
第六条 本会社ノ株式ハ壱株金五拾円トシ、其総額ヲ拾六万株トス
第七条 本会社ノ株主タルノ資格ハ株主名簿ニ記載ヲ経タル後ニアラサレハ之レヲ有セサルモノトス
第八条 会社若クハ組合ニ於テ本会社ノ株式ヲ所有スルトキハ、其代表者壱名ヲ定メ、前条ノ記載ヲ受ク可シ
第九条 本会社ノ株主ニハ記名株券ヲ交付スルモノトス
  但株金全額ノ払込以前ニ於テハ仮株券ヲ交付スヘシ
第十条 本会社ノ株券ニハ其株数・金額・発行年月日・番号・会社名株主ノ住所氏名ヲ記載シ、会社印ヲ押捺シ、社長記名捺印スヘシ
第十一条 本会社ノ株券ハ左ノ三種トス
  一 壱株券
  一 拾株券
  一 五拾株券
    第三章 株金払込
第十二条 本会社株金ノ払込ハ、壱株ニ付一回金五円以上金拾円以下ノ金額ヲ、工事竣功期限迄ニ数回ニ分チ漸次払込ムモノトス
 株金ノ払込ハ毎回少ナクモ三十日ヲ隔テ、其払込期限及金額ハ十四日以前ニ各株主ヘ通知スヘシ
 前項ノ払込金額期日ハ取締役会議ニ於テ之ヲ定ム
第十三条 株主株金払込ノ期日ニ其払込ヲ怠リタル時ハ、遅延利息トシテ元金百円ニ付一日金四銭ノ割合ニ当ル金額、及ヒ遅延ノ為メ生シタル費用ヲ支払フヘシ
第十四条 株主カ株金払込ノ期日迄ニ払込ヲナサヽルトキハ、本会社ハ更ニ二週間ヨリ少ナカラサル期日ヲ指定シ、其期間内ニ払込ムヘキコトヲ催告スヘシ、此催告ノ場合ニ於テハ、第十三条ノ遅延利息
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並ニ遅延ノ為メ生シタル費用ヲ併セテ仕払フヘキ旨ヲモ通告スルコトヲ要ス、以上ノ催告ヲナスモ尚払込ヲ為サヽルトキハ、本会社ハ其株主ニ通知シテ其株式ヲ公売ニ付スヘシ
第十五条 公売ニ付シタル株式ノ代金カ従前所有者ノ催告ヲ受ケタル払込金額ニ満タサルトキハ、其不足金及ヒ第十三条ノ遅延利息並ニ遅延ヨリ生シタル費用ハ更ニ従前ノ所有者ニ対シ追徴スヘシ、若以上ノ金額ヲ引去リ余剰アルトキハ之ヲ従前ノ所有者ニ還付ス
    第四章 株式売買譲与
第十六条 本会社ノ株式ヲ売買譲受渡セントスルトキハ、其株券ノ裏面ニ売買譲受渡人記名捺印シ、会社所定書式ノ証書ヲ添ヘ、買譲受人ヨリ本会社ヘ差出シ、第七条ノ記載ヲ請フヘシ
 相続遺贈其他ノ行為又ハ法律ノ結果ニ依リ記名書換ヲ請求セントスル者ハ、本会社ノ満足スル二名以上ノ保証人連署ノ上、其株式ヲ取得シタル事実ヲ証明スヘシ
第十七条 株券ノ毀損又ハ株券ノ分合ニ依リ書替ヲ請求スルトキハ、本会社ハ相当ノ手続ヲ経、前株券ト引替ニ更ニ新券ヲ交付ス
 株券ノ亡失及焼失等ニ依リ更ニ株券ノ交付ヲ請求セントスル者アル時ハ、本会社ノ満足スル二名以上ノ保証人連署ノ上其株券ノ番号・枚数・及亡失焼失シタル理由ヲ申出ツヘシ、本会社ハ直チニ其旨ヲ一週間新聞紙ニ公告シ一ケ月ヲ経テ尚発見セサルトキハ更ニ新券ヲ交付スヘシ、其公告料ハ本人ノ負担トシ之ヲ前納セシムルモノトス
 氏名ノ変更ニ依リ株券ノ記名更正ヲ請求スルトキハ、該変更ニ関スル官庁ノ認可書謄本ヲ添付シ差出スヘシ
第十八条 本会社ノ株券再渡ヲナストキハ、手数料トシテ新券壱枚ニ付金弐拾銭、売買譲受渡ノ記載ハ壱枚ニ付金拾銭ヲ納ムヘシ
    第五章 重役
第十九条 本会社ノ重役ハ取締役九名監査役三名トス
第二十条 本会社ノ取締役ハ互選ヲ以テ、主トシテ業務ヲ取扱フヘキ専務取締役三名ヲ置キ、内一名ヲ社長トシ、他ノ二名ヲ理事トス
第二十一条 本会社ノ重役ニハ報酬ヲ給ス、其金額ハ株主総会ノ決議ヲ以テ之ヲ定ム
第二十二条 本会社ノ取締役及ヒ監査役ハ、本会株ノ株式百株以上ヲ所有スル株主中ヨリ、株主総会ニ於テ之ヲ選挙スルモノトス
第二十三条 本会社取締役ノ任期ヲ三年トシ、監査役ノ任期ヲ壱年トシ、満期再選スルコトヲ得
第二十四条 本会社ノ取締役ハ在任中、自己所有ノ株券百株ヲ職分上責務ノ担保トシテ本会社ヘ預ケ置、本人在任中ハ之ヲ還附セス
第二十五条 本会社ノ社長ハ法律・命令・定款及株主総会ノ議決並ニ取締役会ノ議決ニ準拠シ、本会社全般ノ事務ヲ統理スヘシ
第二十六条 本会社ノ社長ハ役員ノ任免黜陟賞罰ヲナスノ権アルモノトス
第二十七条 本会社ノ社長ハ外部ニ対シテ本会社ノ代表者トナルヘキモノトス
第二十八条 本会社ノ理事ハ社長ヲ補佐シ、業務ノ整理ヲナシ、社長
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事故アルトキハ 其代理ヲナスヘシ
第二十九条 本会社監査役ハ取締役ノ業務執行カ法律・命令・定款及ヒ株主総会ノ決議ニ適合スルヤ否ヤヲ監視シ、取締役カ株主総会ニ提出セントスル財産目録・貸借対照表・営業報告書・損益計算書・利息又ハ利益ノ配当ニ関スル書類ヲ調査シ、株主総会ニ其意見ヲ報告スヘキモノトス
第三十条 本会社ノ取締役及監査役中欠員ヲ生シタルトキハ、次会ノ総会ヲ待チ補欠員ノ選任ヲナスヘキモノトス、但シ法定ノ数ニ充タサル時ハ直チニ臨時総会ヲ開キ之ヲ選任ス
    第六章 株主総会
第三十一条 本会社ノ株主総会ハ之ヲ別ツテ通常総会臨時総会ノ二種トス
第三十二条 本会社ノ通常総会ハ毎年二月及ヒ八月ニ開会シ、取締役ヨリ提出スル財産目録・貸借対照表・営業報告書・損益計算書及利息又ハ利益ノ配当ヲ決議ス
第三十三条 本会社ノ臨時総会ハ特ニ議決ヲ要スル事項アル場合ニ於テ之ヲ開クモノトス
第三十四条 本会社株主総会招集ノ通知ハ其日時場所及会議ノ目的事項ヲ記載シ、開会ノ日ヨリ二週間以前株主ニ通告スルモノトス
第三十五条 本会社ノ株主総会ノ会長ハ社長之ニ任ス
第三十六条 本会社ノ株主総会ハ株総金四分ノ一以上ノ株主出席スルニアラサレハ議決ヲナスコトヲ得ス
  但定款ノ変更任意ノ解散ニ就テハ総株主ノ半数以上ニシテ総株金ノ半額以上ニ当ル株主出席アルヲ要ス
 出席株主定数ニ充タサルトキハ、其総会ニ於テ仮リニ決議ヲナシ、之ヲ株主ニ通知シ再度総会ヲ開クヘシ、其通告ニハ、次会ノ総会ニ於テ出席株主議決権過半数ヲ以テ前総会ノ決議ヲ認定シタルトキハ之ヲ有効トナスコトヲ明告スヘシ
第三十七条 本会社株主総会ノ議事ハ出席株主議決権ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス、可否同数ナルトキハ会長之ヲ決ス
第三十八条 本会社株主総会ノ議事録ニハ、議決ノ要領、出席株主ノ氏名ヲ記載シ、会長之レニ記名捺印シテ保存スヘシ
第三十九条 本会社株主総会ニ於テ重役ヨリ提出シタル勘定書・報告書並ニ当日決議ノ件々ハ便宜ノ方法ヲ以テ各株主ニ通知スヘシ
    第七章 議決権
第四十条 本会社株主ノ議決権ハ毎一株一個トス
第四十一条 本会社ノ株主自ラ総会ニ出席シ能ハサルトキハ、本会社ノ株主ニ委任状ヲ交付シ、議決権ヲ代理セシムルコトヲ得
第四十二条 本会社株主中未丁年又ハ風癲白痴ニシテ自ラ議決権ヲ行フコトヲ得サルモノハ、其後見人又ハ財産管理人ニ於テ之ヲ行フコトヲ得
    第八章 計算
第四十三条 本会社ノ事業年度ハ二期ニ分チ、毎年一月ヨリ六月マテヲ前半期、七月ヨリ十二月マテヲ後半期トシ、毎期ノ末日ニ於テ総
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勘定決算ヲナスヘシ
第四十四条 本会社毎期ノ決算ハ、其期間ニ於テ収入シタル総金額ノ内ヨリ諸税金諸経費損失金ヲ引去リタルモノヲ利益金トシ、利益金ノ内ヨリ準備積立金(純益金百分ノ五以上二十以下)及役員賞与金(純益金百分ノ二ケ半以上拾以下)ヲ扣除シ、其残額ヲ株主ニ配当スヘシ
  但便宜利益金ノ内幾部ヲ別途積立テ、又ハ次期ヘ繰越トナスヲ得ヘシ


函樽鉄道株式会社経画之要略(DK090019k-0008)
第9巻 p.173-178 ページ画像

函樽鉄道株式会社経画之要略
〔表紙裏貼紙〕
    株式申込ニ係ル参考
 一株式申込ノ期限ハ別ニ之ヲ定メス、満株ニ至ルト共ニ募集ヲ止ム
 一第一回払込ハ本年中ニハ請求セス、尤モ証拠金ハ壱株ニ付五拾銭乃至壱円迄ヲ請求スル事アル可シ
    凡例
一旅客収入ノ調査ハ去ル明治二十七年中函館小樽札幌室蘭等ノ旅客宿泊簿並ニ同上ニ関スル警察署ノ調査数ニ依リ、且日本郵船株式会社及社外船々客切符数等ニ参照シ之ヲ計算シタルモノナリ
一貨物収入ノ調査ハ沿道各村ニ於ケル諸穀薪炭木材鉱物水産物及諸需要品ノ輸出入、並ニ小樽函館両港ニ於ケル諸般ノ輸出入貨物ニシテ本線路ニ由リ出入スヘキモノヲ区別計算シタルモノナリ
     目次
  一 線路両極端及経過地
  二 線路延長
  三 成功年限
  四 興業費
  五 営業収支予算
  六 株金払込ノ緩急
  七 函館小樽間従来ノ交通ト本鉄道開通後ト交通旅客旅費ノ比較
  八 同上時間ノ比較
  九 本鉄道ノ利益トナルヘキ聯絡鉄道
  十 本鉄道前途利益増進予算
  十一 北海道進歩事情概要
       其一 人口ノ増加
       其二 輸出入金額ノ増加
       其三 耕地作付反別ノ増加
       其四 炭礦鉄道旅客貨物賃金ノ増加
  十二 北海道庁ヨリ許可ノ事項
  十三 本鉄道附近産出鉱物
    函樽鉄道株式会社経画ノ要略
一線路両極端及経過地
  渡島国函館ヨリ同国森胆振国長万部及倶知安原野ヲ経テ後志国小樽ニ至リ炭礦鉄道線ニ聯絡ス
 - 第9巻 p.174 -ページ画像 
一線路延長
  百五十哩
一成功年限
  凡五ケ年
   但資金供給ノ都合ニ依リ急成ノ方針ヲ執ル時ハ、函館森間ハ凡一ケ年、全線路ハ凡三ケ年ヲ以テ竣功開業スルコトヲ得ヘシ
一興業費
  金八百円            興業費総額
   内訳
   金四拾五万円          用地費
   金百九拾五万円         土功費
   金弐拾七万円          橋梁費
   金参拾参万七千五百円      コルベルト費
   金五万弐千五百円        伏樋費
   金百八拾七万五千円       隧道費
   金百五拾万円          軌道費
   金拾四万七千円         停車場費
   金四拾万円           車輛費
   金拾五万円           運送費
   金四万五千円          諸建物費
   金参万円            電信架設費
   金四万五千円          建築用滊車費
   金参万七千五百円        建築用具費
   金七千五百円          柵垣費
   金七万五千円          避雪費
   金拾五万円           測量並工事監督費
   金拾万円            桟橋費
   金拾弐万円           総係費
   金弐拾五万八千円        予備費
一営業収支予算
  金百拾四万七千参百八拾円    営業収入総額
   内訳
   金七拾四万五千〇八拾円     旅客収入
    但別冊函樽鉄道営業収支調査参考書旅客人員ノ部参観
   金参拾四万八千四百九拾七円   輸出貨物収入
    但同上貨物輸出ノ部参観
   金五万千八百〇参円       輸入貨物収入
    但同上貨物輸入ノ部参観
   金五拾四万七千五百円      営業支出総額
   内訳
   金五拾四万七千五百円      営業費
    但一日一哩拾円ノ割
   収支差引残
   金五拾九万九千八百八拾円    純益金
 - 第9巻 p.175 -ページ画像 
   是ヲ資本金高八百万円ニ配当スルトキハ七朱四厘余トナル、然レトモ北海道ノ進歩ト倶ニ年々利益ノ増進スルコト必然ニシテ其収入ハ年々壱割五歩以上ノ増加アル見込ナリ(下文北海道進歩事情概要参観)
一株金払込ノ緩急
  起功ヨリ向凡五ケ年ニ除々払込ムモノトス
一函館小樽間従来ノ交通ト本鉄道開通後ト交通旅費ノ比較
  従来普通ノ交通ニテハ函館ヨリ室蘭迄海路七十九海里
    此下等賃金壱円弐拾銭
   室蘭ヨリ小樽迄鉄道百三十一哩
    此下等賃金壱円八拾五銭
   右合計金参円五銭ヲ要ス
  鉄道開通後ハ
   函館ヨリ小樽迄百五十哩
    此下等賃金弐円弐拾五銭
   右比較金八拾銭ノ減額トナル
一同上時間ノ比較
  従来普通ノ交通ニテハ
   函館ヨリ室蘭迄航海八時間ヲ要ス
   室蘭滊車接続滞在四時間ヲ要ス
   室蘭ヨリ小樽迄滊車九時間ヲ要ス
   合計二十一時間ヲ要ス
 本鉄道開通後ハ
   函館ヨリ小樽迄八時間ヲ要ス
 右比較十三時間ヲ短縮スルコトヲ得、故ニ従来ノ交通ニ比スレハ函館ヨリ室蘭ニ渡航スルノ時間ヲ以テ小樽ニ達スルコトヲ得ヘシ
 本文室蘭経由線ノ外函館小樽間ニ定期航海ノ滊船アリト雖トモ、其発船ハ毎三日一発ノモノニシテ日発ニアラス、且其毎三日一発ノ定期モ時ニ日延等アリテ一般旅客ハ此海路ニ由ルヲ便トセス室蘭経由ノ線路ニ由ルヲ常トス、故ニ本鉄道運賃及時間ノ比較計算ハ室蘭経由ノ線路ヲ以テセリ、且仮リニ函館小樽間ニ日発ノ定期船アリトスルモ其航海ニハ二十時間ヲ費シ、下等賃金二円五拾銭ヲ要スルヲ以テ、旅客ハ必ス本鉄道ニ由ルモノト認メタルナリ
一本鉄道ノ利益トナルヘキ聯絡鉄道
  炭礦鉄道線
   小樽ヨリ空知太迄七十三哩(既成)
  官設鉄道線
   空知太ヨリ上川ニ至ル三十五哩(既成)
   上川ヨリ十勝太釧路厚岸ヲ経テ根室迄弐百九拾弐哩
   厚岸ヨリ網走迄九十哩
   上川ヨリ宗谷迄百八十哩
   利別太ヨリ相ノ内迄八十九哩
   奈与呂ヨリ網走迄百六十七哩
   雨竜原野ヨリ増毛迄四十哩
    小計八百九十三哩
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  以上官設線炭礦線 合計九百六十六哩
  此九百六十六哩ノ官設線及炭礦線ハ倶ニ我函樽鉄道ノ為ニ旅客荷物ヲ送迎シテ前途永遠ニ本鉄道ノ利益ヲ増進スヘキ培養線ナリ
  而シテ右官設線ハ明治三十年度ヨリ年々凡四五十哩ヲ進功スルノ割合ナレハ、我函樽鉄道成功ノ暁ニ至レハ官線ノ成功ハ既ニ三百哩以上ノ開業トナリ、之ニ炭礦線路中小樽空知太間七十三哩ヲ合スレハ殆ント四百哩ノ培養線ヲ有スルニ至ルヘシ
一函樽鉄道前途利益増進予算表

図表を画像で表示一函樽鉄道前途利益増進予算表

 営業年次  旅客賃金        貨物賃金     旅客貨物賃金合計     営業費       差引利益金     資本金八百万円ニ対スル配当歩合              円         円           円          円          円  割 歩 厘 開業当年   七四五、〇八〇   四〇二、三〇〇   一、一四七、三八〇    五四七、五〇〇    五九九、八八〇    七 四強 同二年    八六六、五二八   四七七、五三〇   一、三四四、〇五八    五九一、三八五    七五二、六七三    九 四〃 同三年  一、〇〇七、七七二   五六六、八二八   一、五七四、六〇〇    六九二、八二四    八八一、七七六  一 一 〇〃 同四年  一、一七二、〇三八   六七二、八一五   一、八四四、八五三    八一一、七三五  一、〇三三、一一八  一 二 九〃 同五年  一、三六三、〇八〇   七九八、六三一   二、一六一、七一一    九五一、一五二  一、二一〇、五五九  一 五 一〃 同六年  一、五八五、二六二   九四七、九七四   二、五二三、二三六  一、一一四、六二三  一、四一八、六一三  一 七 七〃 同七年  一、八四三、六五九  一、一二五、二四五  二、九六八、九〇四  一、三〇六、三一七  一、六六二、五八七  二 〇 七〃 同八年  二、一四四、一七五  一、三三五、六六五  三、四七九、八四〇  一、五三一、一二九  一、九四八、七一一  二 四 三〃 同九年  二、四九三、六七五  一、五八五、四三四  四、〇七九、一〇九  一、七九四、八〇七  二、二八四、三〇二  二 八 五〃 同十年  二、九〇〇、一四四  一、八八一、九一〇  四、七八二、〇五四  二、一〇四、一〇三  二、六七七、九五一  三 三 四〃 



  備考
   収入増加ノ標準 炭礦鉄道株式会社明治二十五年ヨリ同二十九年迄五ケ年間ニ於ケル収入増加ノ割合、即チ旅客賃金ニ壱割六分三厘、貨物賃金ニ壱割八分七厘ノ増加割合ヲ標準トセリ
   営業費 各鉄道ノ実況ニ参酌シ初年ハ一日一哩金拾円ヲ要スルモノトシ、二年目ヨリハ収入ノ増加ト共ニ営業費営逐年増加スルモノトシ、官設鉄道ノ例ニ依リ収入金高四割四歩則チ百円ニ付四拾四円ヲ支出スルモノトシ算出セリ
一北海道進歩事情概要
   其一 人口ノ増加

図表を画像で表示北海道進歩事情概要 其一 人口ノ増加

  年次      人員        前年比較増加               人 明治十九年   三〇三、七四六 同二十年    三二一、一一八   一七、三七二人増 同二十一年   三五四、八二一   三三、七〇三増 同二十二年   三八八、一四二   三三、三二一増 同二十三年   四二七、一二八   三八、九八六増 同二十四年   四六九、〇八八   四一、九六〇増 同二十五年   五〇九、六〇九   四〇、五二一増 同二十六年   五五九、九五九   五〇、三五〇増 同二十七年   六一六、六五〇   五六、六九一増 同二十八年   六七八、二一五   六一、五六五増 同二十九年   七二八、九〇九   五〇、六九四増 同三十年    七八七、八八三   五八、九七四増 



   其二 輸出入金額ノ増加

 - 第9巻 p.177 -ページ画像 

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  年次       輸出        前年比較増加       輸入          前年比較増加                 円           円           円            円 明治十九年   五、六八〇、八五三               五、六四一、七七九 同二十年    六、四〇八、五三〇    七二七、六七七増   六、五二四、四一〇     八八二、六三一増 同二十一年   七、七〇五、八七五  一、二九七、三四五増   七、七七五、八八〇   一、二五一、四七〇増 同二十二年   八、八六五、九三三  一、一六〇、〇五八増   八、六三四、八三九     八五八、九五九増 同二十三年  一四、〇九四、七八四  五、二二八、八五一増  一六、九四二、四一六   八、三〇七、五七七増 同二十四年  一三、六五四、二二四    四四〇、五六〇減  一五、一二七、三四五   一、八一五、〇七一減 同二十五年  一三、五二一、四〇七    一三二、八一七   一四、四三二、一一九     六九五、二二六減 同二十六年  一八、一二五、四六五  四、六〇四、〇五八増  一九、四九九、五五七   五、〇六七、四三八増 同二十七年  一八、八一八、五七三    六九三、一〇八増  二一、九四五、九六二   二、四四六、四〇五増 同二十八年  一九、六一五、七三一    七九七、一五八増  二一、四六六、八〇三     四七九、一五九減 同二十九年  二七、七四七、九三一  八、一三二、二〇〇増  三六、〇三六、〇一五  一四、五六九、二一二増 同三十年   三六、一一〇、二一四  八、三六二、二七九増  四三、〇九〇、三三三   七、〇五四、三一八増 




   其三 耕地作附反別ノ増加

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 年次      反別      前年比較増加             町        町 明治十九年  一七、〇五三 同二十年   二一、三三八   四、二八五増 同二十一年  二二、〇二三     六八五増 同二十二年  二三、六二一   一、五九八増 同二十三年  二三、九五一     三三〇増 同二十四年  二八、六五一   四、七〇〇増 同二十五年  三八、八七二  一〇、二二一増 同二十六年  四〇、一〇五   一、二三三増 同二十七年  五五、一二四  一五、〇一九増 同二十八年  七〇、〇九一  一四、九六七増 同二十九年  九七、〇四二  二六、九五一増 同三十年  一〇四、一四三   七、一〇一増 



   其四 炭礦鉄道旅客荷物賃金ノ増加

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  年次      旅客賃金     前年比較増加     貨物賃金      前年比較増加               円        円          円         円 明治十九年    三〇、九六六              四八、〇八五 同二十年     三三、一〇三    二、一三七増    五六、三三六     八、二五一増 同二十一年    三九、四二〇    六、三一七増    六〇、三一一     三、九七五増 同二十二年    五一、七六五   一二、三四五増    七五、四七五    一五、一六四増 同二十三年    七一、〇六四   一九、二九九増    九一、九七八    一六、五〇三増 同二十四年   一〇六、四五九   三五、三九五増   一二四、三三九    三二、三六一増 同二十五年   一二〇、四一五   一三、九五六増   一三一、二二六     六、八八七増 同二十六年   一二二、九五三    二、五三八増   一四一、五二三    一〇、二九七増 同二十七年   一四八、二〇六   二五、二五三増   一八六、一六三    四四、六四〇増 同二十八年   一八四、五六五   三六、三五九増   二三二、三六九    四六、二〇六増 同二十九年   二三〇、六四二   四六、〇七七増   三一九、二〇六    八六、八三七増 同三十年    三一五、〇一四   八四、三七二増   四五三、〇一八   一三三、八一二増 



 - 第9巻 p.178 -ページ画像 
 右荷物運賃ハ石炭ヲ除キ通常運賃ノミナリ
 又二十八年ノ金額ハ会社ニ於テ会計年度ヲ改正セシニ付、九ケ月間ノ金額ヲ九ニ除シ十二月ヲ乗シ算出シタルモノナリ
一北海道庁ヨリ許可ノ事項
  下渡許可ノ鉄道用地(線路該当ノ官有地)
   線路用地        幅員百弐十間
      内
    線路敷地        幅員三十間
    防雪林用地       幅員九十間
   停車場地        一等四ケ所各弐十四万坪
   同           二等五ケ所各八万坪
   同           三等廿八ケ所各五万坪
  払下許可ノ木材並ニ石材
   木材          五十万尺締
   石材          九十万切
一本鉄道附近産出鉱物
  本鉄道経過ノ地ハ北海全道ニ在テ最モ鉱物ニ富ム渡島、胆振、後志ノ三ケ国ヲ貫通スルモノニシテ其主要鉱物ノ種類ヲ挙クレハ左ノ如シ
   金 砂金 銀 銅 亜鉛 鉛 鉄 砂鉄
   硫化鉄 満俺 硫黄 石炭 石油
  而シテ本鉄道線路ノ附近ニ於テ既ニ採掘並ニ試掘中ニ属スル種類及個所ハ左ノ如シ
   渡島国 亀田郡 硫黄三ケ所 鉛一ケ所 鉄一ケ所
   同 茅部郡   石油十ケ所 砂鉄一ケ所 硫黄三ケ所
           満俺一ケ所
   胆振国 山越郡 石炭一ケ所
   同 虻田郡   硫黄四ケ所
   後志国 岩内郡 石炭六ケ所 金銀鉛六ケ所 硫黄三ケ所
   同 磯谷郡   石炭八ケ所
   同 余市郡   金銀鉛二十三ケ所 石炭二ケ所
    合計七十三ケ所
其他関係地方ニ於ケル鉱物ノ調査ハ未了ナルヲ以テ今之ヲ略ス


函樽鉄道株式会社創業事務報告書(DK090019k-0009)
第9巻 p.178-189 ページ画像

函樽鉄道株式会社創業事務報告書
当函樽鉄道株式会社創立ノ事ハ明治二十七年十月其調査ニ着手シ、同二十八年二月十五日ヲ以テ初メテ逓信大臣ニ申請ヲナシタルニ始マリ爾来歳ヲ重ヌルコト爰ニ六ケ年、其間経済社界ノ恐慌其他種々不幸ノ事故ニ遭遇シ、経過甚タ困難容易ニ其成立ヲ許サヽリシカ、今ヤ漸ク其目的ヲ達シ本日ヲ以テ其創業総会ヲ開設スルニ至レリ、依テ玆ニ其始末ヲ叙述シ、以テ株主諸君ニ報告スルコト左ノ如シ
明治二十七年十月本線路ノ調査ニ着手ス
明治二十八年二月十五日始メテ左ノ本会社創立発起願書ヲ逓信大臣ニ上呈セリ
 - 第9巻 p.179 -ページ画像 
   鉄道布設ノ義ニ付願
方今我国鉄道布設ノ経画歳ニ月ニ多ク既設未設ノモノヲ併セテ其線路ヲ挙クレバ全国各地殆ント遺ス所ナシ、或ハ一社寺ノ為メ特ニ一線ヲ布設セントスルモノアルニ到ル、鉄道布設ノ経画洵トニ多シトス、然レトモ是レ一ニ内地ノ事ニ属ス、一タヒ眼ヲ転シテ北海道ヲ顧ミレハ五千方里ノ沃土ハ今尚ホ榛莾荒蕪ノ郷ニ委ス、是レ実ニ陸地運輸ノ利器タル鉄道ノ未タ発達セサルニ職由ス、経済上ノ観察ニ於テ固ヨリ一日モ忽諸ニ付スヘカラズ、殊ニ兵要上ノ関係ニ至テハ下名等ノ知ル能ハサル事ニ属スト雖モ、姑ク普通ノ観念ニ依テ之ヲ察スルニ世界ノ形勢今ヤ方ニ我東洋ニ傾注シ、西伯里亜鉄道モ亦駸々乎トシテ其功ヲ進ムルノ今日ニ於テハ、北海全道ノ守備ノ為メニ第七師管ト第二師管トヲ聯絡セシムルノ一事ハ、特ニ急要ニシテ一日モ漫然ニ経過スヘカラサルハ論ヲ待タサル事ト奉存候、就テハ下名等同志相謀リ一私設鉄道会社ヲ創立シ、北海道中最須急ノモノタルヘキ函館小樽間ニ於ケル鉄道線路ヲ布設致度希図仕候、然ルニ此線路ハ里程凡百五十哩ニシテ、其間多ク山脈ヲ断チ河川ヲ横キルヲ以テ、隧道橋梁ノ設亦固ヨリ多ク北海道中至難ノ線路ニ属ス、試ニ其一二ヲ挙クレバ隧道ノ数ハ凡十五ケ処、橋梁凡十三ケ所ニシテ此線路中其工事ノ最モ困難ナルモノハ稲穂峠ノ隧道ニシテ其延長壱千間ノ長キニ渉ル、如此工事至難ノ線路ナルヲ以テ其興業費ハ実ニ八百万円ノ巨額ヲ要ス、故ニ尋常一線ナル営業鉄道会社ノ挙トシテハ容易ニ起業シ得ヘカラサルモノタリ、然レトモ北海道拓殖事業ノ駸々進歩シ戸口日ニ増シ産物月ニ饒キノ形勢、及ヒ本線路ノ性質タル、北海道ノ都会タリ市場タル札幌及小樽ト一葦帯水ヲ以テ内地ニ相対スル函館トノ間ニ聯続スルモノ即チ北海全道ト内地トニ脈通スル唯一線路ナルノ事情トヲ以テ、前途本鉄道運輸業ノ利否如何ヲ察セハ、全通ノ後ハ予想外饒多ノ収益ヲ得ルニ至ランコト亦固ヨリ下名等ノ信スル所ナリ、唯奈何トモシ難キハ此全線路ヲ落成セシムルニハ、其年期短キハ三年長キハ五年ヲ要スヘク、而シテ此年間巨万ノ資金ヲシテ無利息ニ死在セシムルハ民間資本家ノ到底堪ユル能ハサル所ナリ、且該鉄道落成ノ暁ニ達スルモ、運輸ノ業態タル、仮令前途ハ有望ノ線路ナルニモセヨ、直チニ収支相償ヒ幾分ノ利益ヲ得ル迄ノ発達ハ到底望ミ得ヘキモノニ非ス、於是奉願候ハ前陳成功ノ年期ヲ仮リニ五ケ年ト見込、営業上収支相償ヒ幾分ノ利益アルノ発達ニ到ル迄ノ間ヲ仮リニ三ケ年ト見込ミ、都合八ケ年間、別紙目論見書ニ掲クル興業費各区毎ニ一ケ年ニ付五銖ニ満ル迄ノ補足利子御下付被成下、右鉄道布設仮免許状御下付被成下度此段奉願候也
 明治二十八年二月十五日
 北海道鉄道株式会社発起人
   大野嘉助  山中仙太郎 高橋弥七
   岩井八兵衛 膳平兵衛  堤弥兵衛
   竹上正之助 辻重義   山脇善助
   天野仙輔
  逓信大臣 伯爵黒田清隆殿
 - 第9巻 p.180 -ページ画像 
 (起業目論見書ハ明治廿九年六月廿五日出願ニ係ル分ト略ボ同一ナルヲ以テ之ヲ略ス)
其後左ノ発起人ヲ追加セリ
    朝尾春直    小谷政一    田原三蔵
    坂本則美    高野源之助   高橋直治
    渡辺兵四郎   倉橋大介    田口梅太郎
    金子元三郎   対馬嘉三郎   谷七太郎
    杉浦嘉七    渡辺熊四郎   田口正右衛門
    相馬哲平    谷津菊右衛門  服部半左衛門
    遠藤吉平    林宇三郎    金沢彦作
    伊藤鋳之助   小川幸兵衛   広谷源治
    新田太平    石坂嘉蔵    伊予田徳次郎
    深瀬鴻堂    伊藤佐次兵衛  小西八郎兵衛
    脇坂平吉    菅原次郎吉   菊池治郎右衛門
    泉藤兵衛    相馬理三郎   種田金十郎
    村田マサ    武富平作    筑前善次郎
    菊池直     金子利吉    岡田篤治
    木下喜久之丞  高橋文之助   加藤政之助
    石館兵右衛門  佐野定七    和田惟一
           今井市右衛門後見人
    平田文右衛門  今井富三郎   平出喜三郎
    常野正義    皆川善六    園田実徳
   辻忠郎兵衛後見人 合資会社藤原商社業務担当社員
    辻信次郎    藤原忠兵衛   竹村藤兵衛
    大橋忠七    福田市十郎   片山茂十郎
    稲垣藤兵衛   西川幸兵衛   下村忠兵衛
    津田栄太郎   竹花嘉兵衛   上田勘兵衛
    安盛善兵衛   上田リウ    吉田三右衛門
    芝原嘉兵衛   池田長兵衛   杉本新左衛門
    宮本儀助    竹村弥兵衛   小泉新七
    稲垣貞治郎   松木安次郎   弘世助三郎
    岡橋治助    木原忠兵衛   片岡直温
    泉清助     竹田忠作    竹尾治右衛門
    豊田善右衛門  和田半兵衛   阪上新次郎
    渋沢栄一    近藤廉平    森岡昌純
    加藤正義    森村市左衛門  原六郎
    今村清之助   安田善次郎   浅田正文
    荘田平五郎   渡辺佐助    工藤惣左衛門
    大坂金助    淡谷清蔵    長谷川茂吉
    武田甚左衛門  逸見小右衛門  藤野四郎兵衛
    小川為次郎   阿部興人    清水くら
    久住九平    左納権一    藤本安兵衛
    小林吟右衛門  阿部市郎兵衛  久米弘行
    徳橋駒

翌二十九年一月十五日、発起人会ヲ東京市京橋区築地柳花苑ニ開キ、
 - 第9巻 p.181 -ページ画像 
左ノ決議ヲナス
 一本会社設立及鉄道敷設免許状並ニ補助金下付ノ請願ヨリ創業総会招集ニ至ル迄、本会社創立一切ノ事務ヲ付托処理スル為メ、委員拾七名ヲ発起人中ヨリ選定スルコト、委員上任者左ノ如シ
     委員長 森岡昌純   委員 渋沢栄一
     委員  荘田平五郎  同  近藤廉平
     同   原六郎    同  今村清之助
     同   浅田正文   同  園田実徳
     同   坂本則美   同  阿部興人
     同   平田文右衛門 同  小川為次郎
     同   対馬嘉三郎  同  高野源之助
     同   竹村藤兵衛  同  朝尾春直
     同   片岡直温
一客年二月十五日大野嘉助外九名ヨリ差出シタル願書中、社名及補助金下付ノ方法年限ヲ左記ノ通リ変更シ訂正願書ヲ差出スコト
   社名    函樽鉄道株式会社
   補助年限  資本金払込ノ翌月ヨリ満十ケ年間年利五朱ニ相当スル補助金ヲ請願スルコト
一創立事務所ヲ仮リニ東京市日本橋区新右衛門町十六番地ニ設置スルコト
一会社創立ニ要スル経費支弁ニ充ツル為メ発起人ヨリ金弐拾円宛ヲ出金スルコト
右決議ノ結果トシテ、同二十九年二月十四日前願書ト引換ヘ更ニ左ノ願書ヲ逓信大臣ニ、同二十九年四月十六日拓殖務大臣ニ上呈セリ
    函樽鉄道株式会社創立発起認可願
 私共今般北海道渡島国函館ヲ起点トナシ、同国森村及胆振国長万部ヲ経後志国小樽ニ達スル、大約百五拾哩ノ間ニ鉄道ヲ敷設シ、運輸営業ノ目的ヲ以テ函樽鉄道株式会社ヲ創立仕度存候間、何卒御認可被成下度、依テ明治二十年勅令第十二号私設鉄道条例第一条第二条ニ拠リ、別紙書類相添ヘ発起人一同連署ヲ以テ此段奉願候也
  追申本文函館小樽間私設鉄道布設ノ義ハ、客年二月二十五日ヲ以テ大野嘉助外九名ヨリ北海道鉄道株式会社ノ名称ヲ以テ発起出願仕リ、爾後発起人追加ノ義ヲモ上申仕置候処、今般本願書上呈仕候上ハ前願書ハ本願書ト御引換ニ御下戻被成下度此段願添候也
  明治二十九年二月十四日      (発起出願人名略ス)
    逓信大臣 白根専一殿
    函樽鉄道株式会社補助金下付願
今般私共発起人ト相成、函樽鉄道株式会社ヲ創立シ、函館ヲ起点トナシ小樽ニ達スルノ鉄道ヲ敷設シ運輸ノ業相営申度、其創立申請願書・起業目論見書及ヒ仮定款別冊写之通ニ御座候、抑北海道現時ノ状勢ヲ視ルニ拓地殖民ノ事業未タ成功ニ至ラズ、警守防備ノ施設猶未タ完全ヲ欠ク者アルハ其原因固ヨリ一二ニ止ラズト雖トモ、要スルニ陸地運輸交通ノ最大利器タル鉄道ノ未タ発達セサルニ職由仕ル義ト奉存候、曩ニ炭礦鉄道会社創設以来其拓殖上ニ於ケル効果ノ速カナル、亦以テ
 - 第9巻 p.182 -ページ画像 
之ヲ証スルニ足ル義ト奉存候、然ルニ該鉄道ハ自家営業ノ石炭ヲ運搬スルヲ主眼トシ、広ク一般ノ需要ニ応スルノ目的ニアラサルヲ以テ、其線路一部ニ偏在シ、未タ北海道ノ咽喉タル函館ヨリ直チニ進ンテ其肺胃タル札幌小樽ノ如キ主要地ニ貫通スル者アラサルヲ以テ、内外交通上ノ不便不利毫モ往時ト異ル所無之、日本鉄道線ニ由リ青森ニ到リ一葦シテ直チニ函館ニ達スルモ、更ニ航シテ室蘭若クハ小樽ニ往カサルヲ得ス、此航程一日乃至二日ヲ要シ、其間風浪常ニ険悪ニシテ行旅ノ尤モ難ミ尤モ憚ル所ニ有之、殊ニ深霧烈風大雪ノ為メニ其間ノ交通ヲ阻絶スルコト毎月少クモ両三回ニ下ラズ、其困難不便苟モ足跡北海道ニ及フ者皆稔知シテ慨歎スル所ニ御座候、之ヲ譬フルニ今日北海道ノ拓殖ハ未タ門径ヲ闢カスシテ堂奥ノ経営ヲ謀ルカ如シ、其事功ノ遅遅タル固ヨリ怪ムニ足ラズ、況ンヤ又他日風魚ノ警アルニ方リ何ヲ以テ能ク其緩急ニ応スルコトヲ得ンヤ、故ニ函館小樽間ノ鉄道ヲ敷設シ以テ辺彊守備ノ完全ヲ期シ、兼テ全道拓殖ノ成功ヲ促スハ実ニ国家目今ノ急務ト確信仕候、然ルニ本鉄道線路ハ概シテ山豁荒野ニ亘リ人烟ノ存セサル所多ク、其成功ノ年所ヲ費シ工事ニ巨資ヲ要スルノミナラズ、全線開通スルモ直ニ相当ノ収利ヲ希望スルハ期シ難キ次第ニ付、只管利益ヲ永遠ニ期シ以テ之ヲ大成スルノ外無之義ト奉存候、就テハ国費御多端ノ折抦何共恐縮ノ至ニ御座候得共、特別ノ御詮議ヲ以テ本事業ニ対シ左記ノ御保護被成下候様仕度、此段奉願上候也
 一本会社資本金八百万円ニ対シ、株金払込ノ翌月ヨリ向満拾ケ年間年利五朱ニ相当スル金額ヲ補助金トシテ御下付被成下度候事
  明治二十九年四月十六日      (発起出願人名略ス)
    拓殖務大臣 子爵高島鞆之助殿
次テ同年四月二日ニ至リ逓信大臣ヨリ鉄道布設ノ義難聞届旨指令アリ更ニ同年五月八日拓殖務大臣ヨリ補助金下附ノ義同シク不認可ヲ以テ願書却下セラル、即チ左ノ如シ
  鉄第三四七号       北海道鉄道株式会社発起人
                      大野嘉助
                       外百二十四名
  明治二十八年二月十五日出願北海道鉄道敷設ノ件難聞届依テ願書ヲ却下ス
   明治二十九年四月二日
               逓信大臣 白根専一
  拓殖務省指令戊第二号
               東京市芝区巴町二十九番地
                      園田実徳
                       外百二十四名
  本年四月十六日付北海道鉄道株式会社補助金下附願ノ件聞届難シ
   明治二十九年五月八日
          拓殖務大臣 子爵高島鞆之助

於此創立委員ハ前願ニ引続キ鉄道布設ノ義ヲ出願可致ニ付聞置カレ度
 - 第9巻 p.183 -ページ画像 
旨六月二十日附ヲ以テ其筋ニ上申ヲナシ置キ、同月二十五日将来ノ方針ヲ確定スル為メ帝国ホテルニ於テ発起人会ヲ開キ左ノ事項ヲ決議ス
 一従前ノ願書ニ対シ補助金下付ノ詮議ニ難相成旨ヲ以テ、其筋ヨリ願書却下セラレタルヲ以テ更ニ無補助ニテ再願スルコト
 一従前ノ発起人中其引受株ヲ増減セントスル者ハ其希望ニ任セ、又脱盟ヲ申込ム者及新ニ発起人ニ加入セントスル者ニ対シテハ之ヲ承諾スルコト
 一従前ノ創業費ハ各自同一ノ出金ナリシモ、其引受株ニ対シ創業費ヲ負担セシムルヲ正当ト認ムルヲ以テ、此際従前ノ創業費ヲ精算シ一旦之レヲ割戻シ更ニ其引受株数ニ応シ徴収スルコト
 一定款其他改正ヲ要スル廉々ハ修正ヲ加フルコト
 一本会社線路ハ此際予定線トシテ其経過ノ線路ヲ左ノ通リ定ムルコト
 一本線函館ヲ起点トシ森・長万部ヲ経テ稲穂峠ヲ越ヘ余市・忍路ニ出テ小樽ニ至ル
 一予定線
   一岩内ヨリ倶知安原野ヲ経テ洞爺湖ノ西岸ヲ過キ虻田紋鼈ニ出テ室蘭ニ至ル線路
   二函館ヨリ江差ニ至ル線路
 一発起人引受株数ハ壱名百株以上壱千株以下ト定ムルコト
右ノ決議ニ基キ直チニ其手続ヲ了シ、同日更ニ鉄道布設ノ義ヲ逓信大臣及拓殖務大臣ニ出願セリ
    函樽鉄道株式会社創立認可願
今般私共発起ヲ以テ函樽鉄道株式会社ヲ創立シ、北海道渡島国函館及後志国小樽ノ間ニ鉄道ヲ布設シ、運輸ノ業相営ミ度候間、何卒右御認可仮免状御下付被成下度、成規ニ依リ別紙起業目論見書並仮定款図面等相添ヘ発起人一同連署ヲ以テ此段奉願候也
  明治二十九年六月二十五日
  函樽鉄道株式会社発起人
    平田文右衛門 阿部興人    久米弘行
    園田実徳   小川為次郎   坂本則美
    北村繁猪   徳橋駒     天野仙輔
    山脇善助   染谷浜七    黒岩成存
    大浜忠三郎  田中力蔵    大野嘉助
    稲垣藤兵衛  山中仙太郎   高橋弥七
    辻重義    竹上正之助   朝尾春直
    藤川源兵衛  西村嘉一郎   野橋作兵衛
    深瀬孝太郎  中村新治郎   松木安次郎
    高谷宗兵衛  石田五兵衛   小西治郎右衛門
    竹上藤兵衛  中村忠兵衛   市田弥一郎
    山田茂助   井上吉兵衛   山下弥兵衛
    青山長祐   吉村伊兵衛   黒岩直方
   辻忠郎兵衛後見人
    辻信次郎   竹村藤兵衛   竹村弥兵衛
    稲垣貞治郎  津田栄太郎   津田寅吉
    安盛善兵衛  竹花嘉兵衛   上田勘兵衛
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    上田リウ   福田市十郎   池田長兵衛
    膳平兵衛   加納作之助   田中源次郎
    西村吉右衛門 藤井善七    堀川新三郎
    平井仁兵衛  大橋忠七    津田常七
    宮本儀助   川畑マキ    広岡伊兵衛
    松居庄七   吉村太助    遠藤九右衛門
    西川幸兵衛  下村忠兵衛   山田定兵衛
    芝原嘉兵衛  杉本新左衛門  堤弥兵衛
    熊谷佐兵衛  吉田直次郎   内藤徳兵衛
    西川幸助    吉田利助   今井弁次郎
    熊谷セイ    岩井八兵衛  林新助
    小谷政一    高山弥助   片山茂十郎
    田原三蔵    辰馬タキ   高橋直治
    田口梅太郎   板谷宮吉   町野清平
    松樹武平    遠藤又兵衛  藤山要吉
    三木七郎右衛門 田中武左衛門 堀井音次郎
    早川両三    榎幾太郎   山口宗次郎
    塩田安蔵    増谷平吉   板谷吉在門
    横山彦市    倉橋大介   金上新吉
    赤羽親芳    林清一    吉田重次郎
    渡辺兵四郎   角谷甚太郎  金子元三郎
    増田又七郎   竹村権六   広谷順吉
    大塚賀久治   寺田省帰   小林恒雄
    辰野宗城    鈴木市次郎  花井畠三郎
    山口仲介    町村金弥   高野源之助
    伊藤源三郎
  拓殖務大臣 子爵高島鞆之助殿
  逓信大臣    白根専一殿

    起業目論見書○略ス
    興業費予算○略ス

    営業収入予算 (明治卅二年七月廿一日訂正)
一金百拾四万七千参百八拾円     営業収入金
    内訳
  金七拾四万五千〇八拾円      乗客賃金
  金四拾万弐千参百円        貨物賃金
    営業支出予算
一金五拾四万七千五百円       営業支出金
  但営業費一日壱哩金拾円ノ積算
  収支差引金五拾九万九千八百八拾円   純益金
   但資本総額金八百万円ニ配当スルトキハ七朱四厘強ニ当ル
   (発起人ノ氏名住所及各自引受株数略ス)
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其後左ノ発起人ヲ追加ス
    今井市右衛門 菊池治郎右衛門 逸見小右衛門
    新田太平   渡辺熊四郎   武富平作
    小川幸兵衛  水野源右衛門  沢木梅次郎
    平田藤助   種勘七     清水くら
    菊池直    遠藤吉平    砂沢正俊
    金沢彦作   広谷源治    伊藤鋳之助
    石坂嘉蔵   松居音五郎   伊藤佐次兵衛
    常野正義   小野秀次郎   皆月常次郎
    菅原治郎吉  相馬理三郎   谷津菊右衛門
    益城速雄   脇坂平吉   小西八郎兵衛
    林宇三郎   相馬哲平   伊予田徳次郎
    藤野四郎兵衛 和田惟一   石垣隈太郎
    加藤政之助  深瀬鴻堂   平出喜三郎
    荘司平吉   木下喜久之丞 吉田万助
    杉浦豊太郎  村田まさ   泉孝三
    岡田篤治   筑前善次郎  辻快三
    田中正右衛門 永野栄太郎  内野高吉
    国領平七   上野国次郎  種田金十郎
    佐野定七   松原勘左衛門 対馬嘉三郎
    山本壮之助  本郷嘉之助  石田篤三郎
    谷七太郎   高田良八   水野義郎
    尾越蕃輔   岡本忠蔵   左納権一
    藤本安兵衛  武田甚左衛門 渡辺佐助
    工藤惣左衛門 大坂金助   長谷川茂吉
    淡谷清蔵   久住九平   最上広胖
    小林吟右衛門 坂井正義
明治三十年四月二十九日拓殖務大臣ヨリ左ノ仮免状ヲ下附セラル
 府乙第四号
      仮免状
                函樽鉄道株式会社発起人
                      平田文右衛門
                        外弐百名
 右出願ニ係ル函樽鉄道株式会社ノ発起ヲ認可シ北海道後志国小樽ヨリ同道渡島国函館区ニ至ル鉄道敷設ノ為メ同線路ヲ実地測量スルコトヲ許可ス
  但此仮免状下付ノ日ヨリ起算シ満拾八箇月以内ニ私設鉄道条例第三条ノ書類図面及商法第百六拾六条ノ書類ヲ差出シ免許状ノ下付ヲ申請セサルトキハ此仮免状ハ無効タルヘシ
   明治三十年四月二十九日
          拓殖務大臣 子爵高島鞆之助

於是発起人等ハ本会社ヲ代表スベキ創立委員長嘱托ノ事ヲ協議シ、其
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人ヲ得ンコトニ務メタルコト数閲月、遂ニ容易ニ得ヘカラザルヲ以テ当時京都ニ静養中ナル北垣国道氏ニ依嘱スベキノ議ヲ決シ、而シテ発起当時ヨリ北海道協会々頭トシテ本会社ノ事業ヲ熱心ニ賛襄セラレタル近衛公爵モ亦此議ヲ賛セラレ、発起人等ノ請ヲ容レ、北垣氏ヲシテ承諾セシメンガ為メ明治三十年九月二十二日京都ニ赴キ親シク懇請セラルヽニ至レリ、於是北垣氏ハ已ムコトヲ得ス委員長就任ノ承諾ヲナスニ至レリ、依テ同年十一月三日同氏ヲ本会社発起人中ニ追加シ、同月二十日発起人総会ヲ東京京橋区築地柳花苑ニ開キ、左ノ決議ヲナシ爰ニ始メテ本会社創業事務ノ進行ヲ計ルニ至レリ、此ノ近衛公爵斡旋ノ労ハ本会社ノ永ク記シテ諼ル可カラサルノ一事ナリトス
右明治三十年十一月二十日発起人総会決議事項左ノ如シ
 一本会社創業事務一切ノ事ヲ附托スル為メ創立委員十二名ヲ選挙シ委員ノ互選ヲ以テ委員長一名ヲ選挙ス
 一本会社創立委員ニ附托スル事項左ノ如シ
  一線路実測、株式募集並ニ創業費、証拠金ノ徴収及創業総会招集本免状下附出願、発起人追加及除名ノ許否、其他会社成立ニ至ル迄ノ創業事務及之ニ附随スル一切ノ事務ヲ処理スル事
  一創業費募集ニ代ヘ金拾万円ヲ限リ日歩金弐銭五厘乃至参銭以下ノ利子ヲ以テ借入金ヲナスヲ得ル事
 一委員長ハ委員会ノ議決ニ依リ発起人総会ノ附托ニ係ル諸般ノ事務及之ニ附随スル一切ノ事務ヲ執行シ、他ニ対シテ発起人ヲ代表ス
 一創立委員ハ渡辺兵四郎氏ノ推選ニヨリ左ノ十二名ニ決定ス
    北垣国道   園田実徳    坂本則美
    阿部興人   平田文右衛門  高野源之助
    対馬嘉三郎  久米弘行    小川為次郎
    朝尾春直   竹村藤兵衛   稲垣藤兵衛
翌二十一日創立委員会ヲ開キ左ノ事項ヲ決議ス
 一委員長ハ北垣国道氏ヲ推選ス
 一明治三十年十一月二十日発起人総会ニ於テ委員ニ附托サレタル事項処理ノ為メ、委員長ノ外ニ常務委員三名ヲ置キ、委員長ハ常務委員ニ議リ総テノ事務ヲ執行ス可シ
 一常務委員ノ選定ハ委員長ノ指名ニ依ル
依テ北垣委員長ハ左ノ三氏ヲ常務委員ニ指名ス
    園田実徳  坂本則美  阿部興人
前記ノ決議ニ基キ創業事務ノ順序トシテ、直チニ株式募集及線路測量ニ着手スヘキモノナリト雖トモ、経済界恐慌ノ時ニ属シ株式募集ノ事到底実行シ得ヘカラザルヲ以テ姑ク之ヲ中止シ、線路測量ノ一事ニ止ムルコトトナシタリ、然ルニ各発起人ヨリハ未タ創業費ヲ徴収セサルヲ以テ之ニ充ツヘキノ資金ナシ、依テ之ヲ徴収セントスルモ経済界ノ事情之ヲ許サス、然レドモ測量ノ予定ハ凡一ケ年ヲ要スル見込ナルヲ以テ測量着手ノ時期亦到底遷延スヘカラズ、依テ創業費徴収ニ代ヘ借入金ヲ以テ創業事務ノ進捗ヲ計ラント欲シ、其借入ノ道ヲ啓カントセシモ容易ニ其目的ヲ達スヘキ見込ナキヲ以テ、之ヲ京都ノ銀行者ニ協議セシニ京都銀行・第四十九銀行・中京銀行・平安銀行・西陣銀行ノ
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五銀行ハ本会社ノ事業ヲ賛助スルノ目的ヲ以テ、右五銀行ニ於テ金高拾万円ヲ限リ本会社ノ必要ニ応シ無担保当座貸越ヲ以テ立替金ヲナシ其利子金ハ日本銀行カ他銀行ニ対スル担保品附貸出金歩合ト同一タルヘキ契約ヲ締結セリ、爾来本会社カ各発起人ヨリ未タ創業費ヲ徴収セサル今日ニ於テ、測量費並ニ創業事務費ヲ弁給シ得タルモノハ即チ此立替金ヲ以テ支出スルヲ得タルニ依ルモノナリ、之レ亦本会社ノ永ク記シテ諼ルヘカラサルモノナリトス

    契約書
函樽鉄道株式会社創立委員長男爵北垣国道ニ於テ該鉄道株式会社創立ノ費途ニ充ルタメ金拾万円以内ノ需要アリ、株式会社四十九銀行株式会社京都銀行株式会社西陣銀行株式会社平安銀行株式会社中京銀行ノ五銀行ニ於テハ、右鉄道事業ノ北海道ノ拓殖上ニ洪益ヲ与フヘキ美挙タルコトヲ賛成シ、共同シテ右金員ヲ貸渡スヘキ事ヲ肯諾シタリ、依テ右委員長男爵北垣国道ヲ甲トシ、右株式会社四十九銀行株式会社京都銀行株式会社西陣銀行株式会社平安銀行株式会社中京銀行ノ五銀行ヲ乙トシ、玆ニ此ノ契約ヲ締結ス
第一
 甲ニ於テ需要スル金額ハ、其入用ニ応シ極度額即チ拾万円ヲ限リ乙ニ於テ貸渡スヘシ、然レトモ壱ケ月ノ貸渡シ金額ハ壱万円ヲ超過スルコトナシ
第二
 甲ニ於テ借受ヲ要スル金員ハ壱週間以前ニ乙ニ予報スヘシ、乙ハ其金高ヲ分チ各銀行平分ニ之ヲ貸渡スヘシ
第三
 貸借ノ取引ハ無担保品当座貸越ノ取扱ト為シ、甲ニ於テ小切手ヲ振出シ、引出シノ手続キヲナスヘシ、但之ニ要スル印鑑手鑑様式等ハ予メ之ヲ定メ甲ヨリ乙ニ通知シ置クヘシ
第四
 利子ハ日歩勘定トシ、日本銀行カ一般銀行ニ対スル担保品付貸出金歩合ト同一タルヘシ、故ニ今日ノ場合百円ニ付日歩金弐銭五厘トス而シテ日本銀行カ今後右貸出日歩ヲ上下シタルトキハ随テ之ヲ変更シ、毎ニ日本銀行ノ右貸出日歩ト同一ナルヘシ
第五
 返済期限ハ元金ハ明治三十一年十二月三十一日限リ、利子金ハ銀行営業年度毎半期末日ニ仕切リ皆済スベシ
右各条合意契約シ本証書六通ヲ作リ各自記名調印シ甲及乙ノ各銀行ニ各一通ヲ領《(頒)》ツモノナリ
  明治三十年十二月五日
            函樽鉄道株式会社
             創立委員長 男爵北垣国道
            株式会社四十九銀行
               頭取    下村忠兵衛
            株式会社京都銀行
               頭取    飯田新兵衛
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            株式会社西陣銀行
               頭取    矢野長兵衛
            株式会社平安銀行
               頭取    阿部彦太郎
            株式会社中京銀行
               頭取    塚本忠行

於是明治卅年十二月始メテ事業着手ノ端緒ヲ開キ、先ツ実地測量ニ係ル準備ヲナシ、翌卅一年一月五日愈実測着手ヲ見ルニ至レリ
明治三十一年一月三十一日北海道庁ニ対シ、官有地ニシテ本鉄道線路敷地ニ該当スヘキ箇所線路敷地トシテ幅員三十間防雪林用地トシテ線路左右各四拾五間、合計百弐拾間ノ幅員下渡シノ義、及各建築用材並ニ軌道用枕木隧道用支保材及橋梁用材等ニ充ツル為メ、本線路附近ノ官有林野内ニ於テ立木五十万尺締石材九十万切払下ノ義ヲ併テ出願セシニ各其許可ヲ得タリ
明治三十一年二月二日、北海道庁ニ対シ停車場敷地トシテ官有地官林ニシテ本鉄道停車場ニ該当スル箇所各其面積下渡之儀出願セシニ、是亦許可ノ指令ヲ得タリ
明治卅一年七月廿五日ヲ以テ経済界不振ノ為メ仮免状期間ニ在テ株式募集ヲ為ス能ハス、及線路実測亦内地ト其状ヲ異ニスルカ為メ其測量上困難ナル事情トヲ具シ、仮免状有効期限一ケ年延期ノ義ヲ内務大臣ニ出願シ、八月二日延期認許ノ指令ヲ得タリ即チ左ノ如シ
    函樽鉄道株式会社設立仮免状延期ノ義ニ付願○略ス
 内務省指令甲第五〇四号
            函樽鉄道株式会社創立委員長
                   男爵 北垣国道
 本年七月二十五日付願函樽鉄道株式会社設立仮免状有効期限延期ノ件、明治三十二年十月二十七日迄延期ヲ認許ス
  明治三十一年八月二日
             内務大臣 伯爵板垣退助
右仮免状ノ期限延期以来線路測量上未測ノ分及再査ヲ要スル箇所ニ付夫々之ヲ精測シ、又本年ニ至リ経済界稍順潮ニ復セントスルヲ以テ六月廿二日東京府下ノ実業大家ヲ帝国ホテルニ会シ其賛助ヲ求メシニ一致賛襄ノ議ヲ決セラレ、此ニ初メテ本会社ノ成立ノ基礎ヲ固クシ世人ノ賛意ヲ喚起スルニ至レリ、依テ更ニ七月八日ヲ以テ広ク東京府下ノ資産家ヲ招キ其賛助ヲ求メタルニ又一致ノ賛成ヲ得タリ、爾来書ヲ寄セテ各地方ノ資産家ヲ促シ、又八月二十一日横浜ニ九月二十六日大坂ニ同月二十九日名古屋ニ各同地ノ有力資産家ヲ招キ、同シク其賛助ヲ求メタルニ孰レモ十分ノ賛意ヲ表セラレ、其結果トシテ応募株式ハ募集高ノ二倍以上ニ超過シ、削減ヲ加ヘテ漸ク之レヲ整頓スルヲ得ルノ好成績ヲ見、玆ニ本日ノ創業総会ヲ招集スルニ至レリ
本会社株式ハ前記ノ如ク完備シ、創業総会亦本日ヲ以テ開設セラルヽニ至ルト雖トモ、本会社ノ仮免状有効期限ハ本日限リ尽了スヘキヲ以テ、本免状下付願書上呈及之ニ附帯スル事務ノ整頓ヲナスカ為メ猶若
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干ノ余日ヲ要シ、本月十六日ヲ以テ左ノ延期願書ヲ逓信大臣ニ上呈セリ
    函樽鉄道株式会社仮免状延期之義ニ付願
 当函樽鉄道株式会社ハ仮免状ノ御下附以来実地測量ノ困難ナルハ経済界ノ否運ニ遭遇セルカ為メ到底最初御許可ノ仮免状期間ニ於テ其成立ヲ許サス、故ニ当時ノ事情ヲ具シ昨三十一年七月二十五日仮免状延期出願仕候処、同年八月二日ヲ以テ本年十月二十七日迄延期認可相成リ、爾来玆ニ実地ノ測量ヲ完結シ株式募集モ亦全株数ノ満了ヲ見ルニ至リ候、故ニ本月二十七日創業総会ヲ招集シ、直チニ本免状ノ下附出願可仕経画ニ有之候、然ルニ株式募集ノ関係ヨリ已ヲ得ス期限切迫シ、漸ク免状期限ノ当日創業総会ヲ招集致候次第ニ御坐候間、本免状出願ニ係ル手続上多少ノ時間ヲ要シ候義モ有之、或ハ仮定款ノ規定ニ基キ万一出席株主其数ニ充タス、更ニ開会ヲ要スル等ノ場合有之、為メニ出願ノ時期ヲ誤リ候ニ於テハ実ニ本会社ノ不幸不過之候間、現時ノ状況ト以上ノ事情トヲ御洞察被成下、特別ノ御詮議ヲ以テ何卒更ニ本年十一月中迄、延期御許可被成下度此段奉願候也
  明治三十二年十月十六日
        函樽鉄道株式会社創立委員長 北垣国道
    逓信大臣 子爵芳川顕正殿
右願書ニ対シ本月廿一日逓信大臣ヨリ左ノ認可ヲ得タリ
  鉄第八四九号
        函樽鉄道株式会社創立委員長
                   男爵北垣国道
 明治三十二年十月十六日附出願仮免状有効期限明治三十二年十一月三十日迄延長ノ件許可ス
  明治三十二年十月二十一日
              逓信大臣 子爵芳川顕正
終ニ臨ンテ尚ホ玆ニ一言スヘキモノアリ、本会社ハ前述ノ如ク明治二十七年以来今日ニ至ル迄種々ノ困難ヲ経テ初メテ玆ニ好結果ヲ収メタルモノニシテ、其間朝野ノ有志諸大家本鉄道ノ性質タル営業上利益ノ饒多ナルト同時ニ北門ノ警備ト国家財源ノ啓発ニ於テ一日モ忽諸ニ付スヘカラサルヲ認メ、賛助ノ労ヲ執ラレタルモノ素ヨリ尠カラス、就中渋沢栄一氏ノ如キハ当初以来相談役トシテ毎ニ賛助ノ力ヲ添ヘラレタルモノニシテ、本会社今日ノ結果ヲ得タルハ同氏ノ賛助与テ大ニ力アルモノナリ、此亦本会社ノ永ク記シテ諼ルヘカラサルノ事ナリトス以上掲載スル処ノモノハ其経歴ノ大要ニシテ、当初発起出願以来五ケ年間ニ於ケル会社ノ変遷ト及之レニ伴フ創業事務ノ細密ナル事項ニ至テハ、頗ル錯雑ニシテ枚挙ニ遑アラサルヲ以テ玆ニ其大綱ヲ掲ケ及報告候也
  明治三十二年十月廿七日
                 函樽鉄道株式会社
                 創立委員長 北垣国道
 - 第9巻 p.190 -ページ画像 



〔参考〕中外商業新報 第五二二九号〔明治三二年七月一一日〕 函樽鉄道の相談会(DK090019k-0010)
第9巻 p.190 ページ画像

中外商業新報  第五二二九号〔明治三二年七月一一日〕
    函樽鉄道の相談会
函樽鉄道会社にては去八日朝野の貴紳並に実業家諸氏を帝国ホテルに招き、同鉄道賛助に関し相談会を開きたるが、参会者は華族豪商等数十名にして、其外芳川逓信大臣・桂陸軍大臣・曾禰農商務大臣等来賓として出席し、北垣委員長の挨拶に引続き渋沢栄一・大倉喜八郎・安田善次郎氏の演説ありて後、芳川子は交通上より、桂子は軍事上より同鉄道の必要を説き、来会者は孰れも賛成調印を為し、九時二十分散会したりと


〔参考〕中外商業新報 第五五六八号〔明治三三年八月二一日〕 函樽鉄道速成の議(DK090019k-0011)
第9巻 p.190-191 ページ画像

中外商業新報  第五五六八号〔明治三三年八月二一日〕
    函樽鉄道速成の議
  函館商業会議所にては函樽鉄道速成の議に関し、左の如き建議書を総理大臣其他三大臣に提出し、尚ほ函樽鉄道会社に対しても同鉄道速成の観誘《(勧)》を発送したりといふ
    函樽鉄道速成の義に付建議
某等謹て(内閣総理、農商務、大蔵、逓信)大臣に啓す、之を軍事上より見れは則ち旭川の兵鎮と函館要塞とを聯絡して動員及兵站輸送を自由にし、以て北門の鎖鑰を堅め、津軽海峡交通の死命を制する所以の道なり、之を経済上より察すれば鉄道本来の功果として敷設地方に於ける一般商工業の発達を催し進歩を助長するは勿論、本道の要枢に中る幾百万里の荒蕪を拓き、其の人口を増加し其産業を作興し延ひて日本北半部の生産力を倍蓰し、経済を豊富にし文明を進暢するの方法たり、函樽鉄道の敷設をして一日も其完成を緩ふすへからさるなり
函樽鉄道は其干繋上固と是れ国家自ら経営すへき事業に属す、蓋し此業を以て私立会社に任したるは国家の財政一時緊迫して急施の余裕なく之を私立会社に委するの却て速成し得へきを見たるか為めのみ、若し同鉄道の敷設にして甚た遅々たるか如きことあらば国家亦之を対岸の火災視すべからさるなり
函樽鉄道会社の組織以来当事者に於ても無論其速成を希図せるか如きも、尚ほ工事着手の今日の如く遅延するは同会社か当初以来に非運に触着し既定の計画序を追ふて進む能はさるか為めのみ、会々本年五月に至り業務漸く緒につき第一回の株式払込金を徴せんとするや復た亦た清国事件の勃興に遭ひ、一般経済社会金融逼迫の為め更に其期限を延ばさゞるを得ざるの悲境に陥れり、実に会社の為めに其不幸を歎すべきは勿論併せて本道の為め亦た国家の為め長大息に堪えざるなり、固より会社の当事者は払込期の来る必ず遠からざるべきを云ふも、現下の趨勢に依つて察すれば頗る疑ふ可きものあり、仮令へ第一回の払込を近く終了するも更に其後の計画進行甚だ憂ふべく、全線の完成何れの日に在るや殆んと知る可からず
翻つて東洋に於ける国際関係の趨向を察すれは同鉄道の必要を感する実に日一日より切なるを覚ゆ、若し函樽鉄道なき今日に於て一朝杆格
 - 第9巻 p.191 -ページ画像 
を生せんか直に函館なく終に北海道なきに至らん、而して其事必しも明日に起らざるを保せざるなり、夫れ函樽鉄道の速成を要とするの事由は此の如く切にして会社事業の進行は此の如く遅々たり、之を自然に放任せんか到底其速成を見るを得す公利国益を失ふ事実に至大なるものあり、惟ふに国家は本鉄道との関係上義必す之を傍観し去るへからす、因て某等は此際政府に於ても具に同鉄道の干繋を察して相当の助力を与へ以て同会社をして一日も速かに其事業を完成せしむるの手段を取られんことを切望す、仰き希くは閣下幸に本会議所の言に聴き何分の詮議を加へられんことを
右謹て及建議候也
  明治三十三年八月十五日
                函館商業会議所
                  会頭 平出喜三郎


〔参考〕竜門雑誌 第一七八号・第四〇頁〔明治三六年三月二五日〕 ○北海道鉄道会社総会(不払株整理)(DK090019k-0012)
第9巻 p.191 ページ画像

竜門雑誌  第一七八号・第四〇頁〔明治三六年三月二五日〕
○北海道鉄道会社総会(不払株整理) 同社に於ては去二月二十七日株主総会を開き資本金八百万円、株数十六万株の中整理組合の名義に係る不払株三万三千二百株を切捨て、之に対する株金百六十六万円を減少して資本総額を六百三十四万円とし、右切捨株に対する第一回の払込金十六万六千円は別途積立金に編入し、更に資本金三百六十六万円を増加して総額千万円とすることゝなりたるが、同日青淵先生も出席せられ右整理案に賛成の演説を為し且つ其通過に助勢せられたり

〔参考〕竜門雑誌 第一八四号・第二七頁〔明治三六年九月二五日〕 ○北海道鉄道会社々債募集(DK090019k-0013)
第9巻 p.191 ページ画像

竜門雑誌 第一八四号・第二七頁〔明治三六年九月二五日〕
○北海道鉄道会社々債募集 北海道鉄道会社にては、本年二月二十七日の臨時総会に於て資本金六百三十四万円に三百六十六万円を増加し総額一千万円と為すことに決議せしも、今日は株式募集の時機にあらざるを以て差向二百五十万円の社債を募集することゝなり、八月二十九日の臨時総会に於て左の如く社債募集及償還方法を決議せり
    社債募集及償還方法
 第一条 本会社資本補充の為め社債二百五十万円を募集す、但し時宜により二回以上に分ち募集することを得
 第二条 社債償還の期限及方法は発行の時より二ケ年据置き向十三ケ年以内に抽籤法により償還す
 第三条 社債の償還は新株を募集して之に充つ、但時宜により収益金又は一時借入金を以て償還することを得
 第四条 第一乃至第三条を除くの外社債の利率其他社債に関する件は取締会の決議に一任す


〔参考〕竜門雑誌 第一八五号・第三五頁〔明治三六年十月二五日〕 ○北海道鉄道社債募集の結果(DK090019k-0014)
第9巻 p.191-192 ページ画像

竜門雑誌  第一八五号・第三五頁〔明治三六年十月二五日〕
○北海道鉄道社債募集の結果 同鉄道社債募集の事は前号(二十七頁)に記せしが其結果を聞くに左の如く五十九万余円の応募超過となれり
               円              円
   東京  一、五五〇、五〇〇  大阪    三三六、七〇〇
 - 第9巻 p.192 -ページ画像 
   北海道   二〇〇、〇〇〇  京都     九八、〇〇〇
   愛知     九〇、〇〇〇  神奈川    五一、一〇〇
   山口     五〇、〇〇〇  福島     三五、〇〇〇
   岡山     二五、〇〇〇  岐阜     二〇、〇〇〇
   其他    六三四、二〇〇  合計  三、〇九〇、五〇〇


〔参考〕竜門雑誌 第二五三号・第四〇頁〔明治四二年六月二五日〕 ○北海道鉄道総会(DK090019k-0015)
第9巻 p.192 ページ画像

竜門雑誌 第二五三号・第四〇頁〔明治四二年六月二五日〕
○北海道鉄道総会 北海道鉄道は五月二十六日午後一時より南紺屋町の地学協会に於て総会を開く、出席株主は内蔵頭代理を始め渋沢、前島両男、大倉喜八郎、富田鉄之助、来栖壮兵衛諸氏以下委任状の分を合せ五百五名此株数六万七千株にして、先づ坂本専務清算人より前半期の決算を報告し、次で買収価格決定に至りし迄の経過を報告したるに株主一同孰れも清算人の尽力を多とし、青淵先生株主を代表して当局者に対し鄭重なる謝辞を陳べ次で報酬問題に移り、青淵先生の指名にかゝる十一名の委員に於て一応の協議を尽したる末専務清算人に対し報酬として金十四万二千円を贈与すべしと報告し満場異議なく之を是認し、尚ほ監査役一名の欠員に対しては補欠を行はざることに決して散会したり、同会社の本期収出は支出諸費及び利子二万三千五十一円九銭二厘、収入二百三十六円三十三銭之に政府より受けたる清算人職務費五千円を加へ差引一万七千八百十五銭五十七銭二厘《(円)》の損失となり、繰越高は損失九万二百十九円四銭七厘、収入四万九千五百九十七円八十二銭なり。