デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治25年（1892年）

日本熟皮会社解散後、伊藤長次郎・三宅忠三等有志株主ハ同社ノ財産ヲ引受ケ熟皮株式会社ヲ設立ス。栄一株主タリ。当会社ハ三十一年ニ至リ解散ス。

青淵先生六十年史　（再版）　第二巻・第二八六頁〔明治三三年六月〕
　○第四十六章　熟皮業
　　　　第二節　熟皮会社
日本熟皮会社ハ解散シタリト雖モ、当時伊藤長次郎・三宅忠三等株主中ノ有志ハ尚将来ニ望ヲ属シ、四万五千余円ヲ以テ一切ノ財産ヲ引受ケ、更ニ熟皮株式会社ノ名ニヨリテ資本金拾万円ヲ以テ之カ再興ヲ計リ、先生亦株主ニ加入セシカ其製品ハ果シテ時運ノ進歩ト共ニ一般需要家ノ歓迎スル所トナリ、漸次隆昌ノ域ニ進ミツヽアリシカ廿七八年戦役ノ際、一時需要増加ノ好況ニ乗シ俄然資金ヲ三倍シ事業ノ軽進ヲ計リシヲ以テ忽チニシテ大蹉跌ヲ生シ、殆ント回復ノ途ナキニ至リ　ニ三十一年中解散ノ決議ヲナセリ
　　　○熟皮株式会社ノ創立年月ヲ詳ニセズ。但シ日本熟皮会社解散ノ後ヲ受ケテ創立シタルモノナレバ、同社解散後遠カラズシテ創立セラレタルモノナラン。依ツテココニハ日本熟皮解散ノ年ヲ以テ当社創立ノ年トセリ。

西村勝三翁伝　（西村翁伝記編纂会編）　第一〇三―一〇四頁〔大正一〇年一月〕
　　　　第九章　製靴及製革業の成功
○上略
日本熟皮会社解散の後、其株主たりし伊藤長次郎・三宅忠三等はなほ望を将来に属し、四万五千余円を以て一切の財産を譲り受け、更に資本金十万円の日本熟皮株式会社を設立し、漸次盛大に赴きしが、日清戦役の際、需要増加の好況に乗じ俄に資本を三倍せしかば、幾もなく蹉跌を生じて再び起つ能はず、三十一年遂に解散の決議を為せり。