公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15
第11巻 p.180-198（DK110037k） ページ画像
明治28年12月22日（1895年）
精糖事業調査会ニ於テ日本精糖株式会社ヲ設立スルニ決シ、是日創業総会ヲ開催ス。尋イデ是月二十六日設立免許申請書ヲ提出シ、翌二十九年一月十五日免許セラル。栄一取締役タリ。当会社ハ英国ヨリ精糖用諸機械ヲ購入シ、明治三十一年六月十五日操業ヲ開始ス。
日本精糖株式会社第一回報告書 （自創業至明治二九年六月三〇日）（DK110037k-0001）
第11巻 p.180-181 ページ画像
日本精糖株式会社第一回報告書 （自創業至明治二九年六月三〇日）
資本金
一当会社現在資本金壱百五拾万円株式参万株壱株金五拾円トス、其内既ニ払込ミタル金額三拾七万五千円、未募集金額壱百拾弐万五千円トス
○下略
- 第11巻 p.181 -ページ画像
株主総会
一明治廿八年十二月廿二日ノ創業総会ニ於テ本年七月ニ開クヘキ通常総会ヲ省略シ、唯々事業報告ヲ為スコトニ議決シタリ
処務要件
一明治廿八年十二月廿七日府庁ヲ経由シ、設立免許申請書ヲ主務省ニ呈出シテ廿九年一月十五日其免許ヲ得タリ
○下略
諸会社設立関係書綴 自明治二十八年至明治三十二年（DK110037k-0002）
第11巻 p.181-188 ページ画像
諸会社設立関係書綴 自明治二十八年至明治三十二年
（大阪市経済研究所所蔵）
明治廿八年十二月廿六日起案 係主任
内務部長 第五課長 商工係
会社設立ノ願ノ件
案 五第四二三二号
日本精糖株式会社設立願進達
曩ニ発起認可相成候日本精糖株式会社発起人ヨリ、会社設立認可申請書差出候ニ付及進達候也
年 月 日 府知事
農商務大臣宛
進達願
私共
今般日本精糖株式会社設立免許之義、申請致候間、別紙御進達被成下度、此段奉願候也
明治廿八年十二月廿六日
右発起人総代
佐賀県佐賀市水ケ江町字片田江小路弐百四番戸
当時大阪市北区中之島二丁目百七拾六番屋敷寄留
佐野常樹(印)
大阪府知事 内海忠勝殿
日本精糖株式会社設立免許申請書
私共
今般協議之上日本精糖株式会社設立仕度候ニ付、御免許被成下度、別紙目論見書定款株式申込簿及発起御認可証写相添、此段申請候也
明治廿八年十二月廿六日
右発起人
大阪市北区堂島浜通二丁目拾六番屋敷
松本重太郎(印)
大阪市北区堂島浜通二丁目拾五番屋敷
阿部彦太郎(印)
大阪市東区高麗橋通五丁目百四十一番屋敷
野田吉兵衛(印)
佐賀県佐賀市水ケ江町字片田江小路二百四番戸
当時大阪市北区中之島二丁目百七十六番屋敷寄留
佐野常樹(印)
大阪市北区堂島北町六拾九番屋敷
- 第11巻 p.182 -ページ画像
本山彦一(印)
神戸市山本通リ五丁目九拾五番屋敷
小川䤡吉
代 佐野常樹(印)
東京市日本橋区兜町二番地
渋沢栄一
代 佐野常樹(印)
大阪市東区内平野町二丁目八十一番屋敷
関澄蔵(印)
大阪市東区高麗橋通三丁目六十六番地
岩下清周
代 佐野常樹(印)
大阪市東区北浜二丁目百十八番屋敷
井上保次郎
代 佐野常樹(印)
大阪市南区安堂寺橋通二丁目百弐拾四番屋敷
岩崎利兵衛
代 佐野常樹(印)
神戸市元町四丁目四十九番屋敷
浜田篤三郎
代 佐野常樹(印)
名古屋市南鍛冶屋町百拾九番戸
西川宇吉郎
代 佐野常樹(印)
堺市甲斐町西二丁目拾番屋敷
鳥井駒吉
代 佐野常樹(印)
東京市京橋区八丁堀仲町八番地
鳥海清左衛門
代 佐野常樹(印)
東京市日本橋区伊勢町三番地
殿木善兵衛
代 佐野常樹(印)
名古屋市葵町甲六番戸
奥田正香
代 佐野常樹(印)
神戸市山本通五丁目八十四番屋敷
渡辺尚
代 佐野常樹(印)
名古屋市下長者町七拾五番戸
加藤平兵衛
代 佐野常樹(印)
大阪市東区平野町二丁目九番地
川村利兵衛
代 佐野常樹(印)
大阪市西区靱北通四丁目壱番屋敷
金沢仁兵衛
代 佐野常樹(印)
大阪市北区老松町一丁目五十八番屋敷
香野ナカ
代 佐野常樹(印)
大阪市区靱北通壱丁目三十四番屋敷
- 第11巻 p.183 -ページ画像
田中市兵衛
代 佐野常樹(印)
大阪市北区中之嶋五丁目四十五番屋敷
田辺貞吉
代 佐野常樹(印)
堺市九間町西壱丁拾九番屋敷
宅徳平
代 佐野常樹(印)
大阪市東区豊後町九十七番屋敷
中橋和之
代 佐野常樹(印)
東京市日本橋区南茅場町四十三番地
中川民七
代 佐野常樹(印)
大阪市南区安堂寺橋通四丁目弐百四十五番屋敷
浮田桂造
代 佐野常樹(印)
横浜市本町四丁目六拾八番地
増田増蔵
代 佐野常樹(印)
滋賀県近江国坂田郡長浜町字錦三十番地
松本藤十郎
代 佐野常樹(印)
大阪市北区堂島北町百八十番屋敷
藤田鹿太郎
代 佐野常樹(印)
大阪市北区富島町三百弐十一番屋敷
藤田助七
代 佐野常樹(印)
大阪市西区土佐堀通一丁目十一番屋敷
藤本清兵衛
代 佐野常樹(印)
大阪市東区淡路町壱丁目三十番屋敷
越野嘉助
代 佐野常樹(印)
堺市能野町西壱丁拾六番屋敷
肥塚与八郎
代 佐野常樹(印)
大阪市東区南本町二丁目百弐拾番屋敷
阿部市郎兵衛
代 佐野常樹(印)
滋賀県神崎郡能登川六十四番地
阿部市太郎
代 佐野常樹(印)
横浜市南仲通三丁目五拾番地
安部幸兵衛
代 佐野常樹(印)
東京市芝区西久保桜川町二番地
坂田春雄
代 佐野常樹(印)
三重県三重郡四日市町大字北条町四十番地
斎藤恒三
- 第11巻 p.184 -ページ画像
代 佐野常樹(印)
愛知県中島郡一ノ宮町五百十四番戸
佐分慎一郎
代 佐野常樹(印)
名古屋市袋町二丁目二百三十九番戸
笹田伝左衛門
代 佐野常樹(印)
大阪市東区高麗橋通二丁目六十六番屋敷
佐伯勢一郎
代 佐野常樹(印)
大阪市東区伏見町四丁目四十八番屋敷
芝川又右衛門
代 佐野常樹(印)
大阪市西区靱南通三丁目三番屋敷
志方勢七
代 佐野常樹(印)
名古屋市玉屋町九拾五番戸
白石半助
代 佐野常樹(印)
神戸市山本通四丁目百番屋敷
広瀬満正
代 佐野常樹(印)
名古屋市玉屋町九十八番戸
平子徳右衛門
代 佐野常樹(印)
神戸市栄町四丁目四十五番屋敷
鈴木岩次郎
代 佐野常樹(印)
三重県三重郡四郷村大字室山二十三番屋敷
伊藤伝七
代 佐野常樹(印)
富山市総曲輪三百七十九番地
大海原尚義
代 佐野常樹(印)
東京市下谷区茅町二丁目拾六番地
浅田正文
代 佐野常樹(印)
農商務大臣 子爵榎本武揚殿
日本精糖株式会社目論見書
（一）会社ノ組織
当会社ハ株式組織トス
（二）会社ノ目的
当会社ノ目的ハ内外産砂糖ヲ購求精製販売スルニアリ
（三）会社ノ名称及事務所ノ位置
当会社ハ日本精糖株式会社ト称シ、事務所ヲ大阪市東区高麗橋通五丁目第九拾四番屋敷ニ置ク
（四）会社ノ資本金株数及一株ノ金額
当会社ノ資本金ヲ壱百五拾万円ト定メ、之ヲ参万株ニ分ケ壱株ヲ金五拾円トス
- 第11巻 p.185 -ページ画像
（五）資本金使用ノ概算
一金六拾四万五千五百弐拾七円 機械代
一金八万四千百円 土地家屋代
一金拾七万〇参百七拾参円 予備費
一金六拾万円 営業費
計金壱百五拾万円
（六）発起人ノ氏名住所及引受株数
当会社ノ発起人ハ総株数ノ内、壱万四千六百株ヲ引受ケ余ハ公衆ヨリ募集スルモノトス
但会社発起人ノ氏名住所及各自ノ引受株数左ノ如シ
株数 金額 住所 氏名
円
三〇〇 一五〇〇〇 大阪市北区堂島浜通二丁目拾六番屋敷 松本重太郎
三〇〇 一五〇〇〇 大阪市北区堂島浜通二丁目拾五番屋敷 阿部彦太郎
三〇〇 一五〇〇〇 大阪市東区高麗橋通五丁目百四十一番屋敷 野田吉兵衛
三〇〇 一五〇〇〇 佐賀県佐賀市水ケ江町字片田江小路二百四番戸 佐野常樹
当時大阪市北区中之島二丁目百七十六番屋敷寄留
三〇〇 一五〇〇〇 大阪市北区堂島北町六拾九番屋敷 本山彦一
二〇〇 一〇〇〇〇 神戸市山本通リ五丁目九拾五番屋敷 小川䤡吉
三〇〇 一五〇〇〇 東京市日本橋区兜町二番地 渋沢栄一
二〇〇 一〇〇〇〇 大阪市東区内平野町二丁目八十一番屋敷 関澄蔵
二五〇 一二五〇〇 大阪市東区高麗橋通三丁目六十六番地 岩下清周
三〇〇 一五〇〇〇 大阪市東区北浜二丁目十八番地屋敷 井上保次郎
三〇〇 一五〇〇〇 大阪市南区安堂寺橋通二丁目百弐拾四番屋敷 岩崎利兵衛
三〇〇 一五〇〇〇 神戸市元町四丁目四十九番屋敷 浜田篤三郎
三〇〇 一五〇〇〇 名古屋市南鍛冶屋町百拾九番戸 西川宇吉郎
三〇〇 一五〇〇〇 堺市甲斐町西二丁拾番屋敷 鳥井駒吉
一〇〇 五〇〇〇 東京市京橋区八丁堀仲町八番地 鳥海清左衛門
一〇〇 五〇〇〇 東京市日本橋区伊勢町三番地 殿木善兵衛
三〇〇 一五〇〇〇 名古屋市葵町甲六番戸 奥田正香
三〇〇 一五〇〇〇 神戸市山本通五丁目八十四番屋敷 渡辺尚
三〇〇 一五〇〇〇 名古屋市下長者町七拾五番戸 加藤平兵衛
一五〇 七五〇〇 大阪市東区平野町二丁目九番地 川村利兵衛
《（川村利兵衛）》
三〇〇 一五〇〇〇 大阪市西区靱北通四丁目壱番屋敷 金沢仁兵衛
三〇〇 一五〇〇〇 大阪市北区老松町一丁目五十八番屋敷 香野ナカ
三〇〇 一五〇〇〇 大阪市西区靱北通壱丁目三十四番屋敷 田中市兵衛
三〇〇 一五〇〇〇 大阪市北区中之嶋五丁目四十五番屋敷 田辺貞吉
三〇〇 一五〇〇〇 堺市九間町西壱丁拾九番屋敷 宅徳平
三〇〇 一五〇〇〇 大阪市東区豊後町九十七番屋敷 中橋和之
一〇〇 五〇〇〇 東京市日本橋区南茅場町四十三番地 中川民七
三〇〇 一五〇〇〇 大阪市南区安堂寺橋通四丁目弐百四十五番屋敷 浮田桂造
三〇〇 一五〇〇〇 横浜市本町四丁目六拾八番地 増田増蔵
三〇〇 一五〇〇〇 滋賀県近江国坂田郡長浜町字錦三十番地 松本藤十郎
三〇〇 一五〇〇〇 大阪市北区堂島北町百八十番屋敷 藤田鹿太郎
三〇〇 一五〇〇〇 大阪市北区富島町三百弐十一番屋敷 藤田助七
- 第11巻 p.186 -ページ画像
三〇〇 一五〇〇〇 大阪市西区土佐堀通一丁目十一番屋敷 藤本清兵衛
三〇〇 一五〇〇〇 大阪市東区淡路町壱丁目三十番屋敷 越野嘉助
三〇〇 一五〇〇〇 堺市能野町西壱丁拾六番屋敷 肥塚与八郎
三〇〇 一五〇〇〇 大阪市東区南本町二丁目百弐拾番屋敷 阿部市郎兵衛
三〇〇 一五〇〇〇 滋賀県神崎郡能登川六十四番地 阿部市太郎
三〇〇 一五〇〇〇 横浜市南仲通三丁目五拾番地 安部幸兵衛
三〇〇 一五〇〇〇 東京市芝区西久保桜川町二番地 坂田春雄
三〇〇 一五〇〇〇 三重県三重郡四日市町大字北条町四十番地 斎藤恒三
三〇〇 一五〇〇〇 愛知県中島郡一ノ宮町五百十四番戸 佐分慎一郎
三〇〇 一五〇〇〇 名古屋市袋町二丁目二百三十九番戸 笹田伝左衛門
三〇〇 一五〇〇〇 大阪市東区高麗橋通二丁目六十六番屋敷 佐伯勢一郎
三〇〇 一五〇〇〇 大阪市東区伏見町四丁目四十八番屋敷 芝川又右衛門
三〇〇 一五〇〇〇 大阪市西区靱南通三丁目拾三番屋敷 志方勢七
三〇〇 一五〇〇〇 名古屋市玉屋町九拾五番戸 白石半助
三〇〇 一五〇〇〇 神戸市山本通四丁目百番屋敷 広瀬満正
三〇〇 一五〇〇〇 名古屋市玉屋町九十八番戸 平子徳左衛門
三〇〇 一五〇〇〇 神戸市栄町四丁目四十五番屋敷 鈴木岩次郎
三〇〇 一五〇〇〇 三重県三重郡四郷村大字室山二十三番屋敷 伊藤伝七
三〇〇 一五〇〇〇 富山市総曲輪三百七十九番地 大海原尚義
三〇〇 一五〇〇〇 東京市下谷区茅町二丁目拾六番地 浅田正文
（七）会社存立時期
当会社ハ別ニ存立時期ヲ定メス
右発起人
松本重太郎(印)
阿部彦太郎(印)
野田吉兵衛(印)
佐野常樹(印)
本山彦一(印)
小川䤡吉
代 佐野常樹(印)
渋沢栄一
代 佐野常樹(印)
○以下氏名略
日本精糖株式会社定款
第一章 総則
第一条 当会社ハ日本精糖株式会社ト称ス
第二条 当会社ハ大阪市東区高麗橋通五丁目第九拾四番屋敷ニ設置ス
第三条 当会社ハ内外産砂糖ヲ購入精製及ヒ販売スルヲ以テ営業ノ目的トス
第四条 当会社ハ株式会社ニシテ其義務ニ対シテハ会社財産ノミ責任ヲ負フモノトス
第五条 当会社ノ資本金額ハ壱百五拾万円トス
第六条 業務ノ都合ニ因リ前条ニ掲クル資本金額ヲ増加シ他府県下ニ
- 第11巻 p.187 -ページ画像
支工場ヲ設置スルコトアルヘシ
○中略
日本精糖株式会社
発起人○氏名略
発起御認可証写
農商務省指令商第一三〇二八号
大阪府大阪市東区平野町四丁目二十五番邸
松本重太郎 外五十一名
明治廿八年十一月四日付申請日本精糖株式会社発起ノ件認可ス
明治廿八年十一月十六日
農商大臣 子爵榎本武揚印
目論見書変更ニ付副申書
目論見書第六項発起人ニ於テ引受クル株数及発起人ノ員数変更シタル理由左ノ如シ
株数ノ変更シタルハ株式引受ノ申込太タ多ク、公衆ヨリ募集スヘキ見込ノ株数不足ヲ告ケ、発起人引受ノ分ヲ繰替タルニ由ル
発起人ノ員数変更シタルハ吉川泰次郎ノ死去シタルニ由ル
右副申候也
明治廿八年十二月廿六日
発起人○氏名略
農商務大臣 子爵榎本武揚殿
農商務省指令商第一五三六八号
大阪府大阪市北見堂島浜通二丁目十六番屋敷
松本重太郎 外五十一名
明治廿八年十二月廿六日付申請日本精糖株式会社設立ノ件免許ス
明治廿九年一月十五日
農商務大臣 子爵榎本武揚
右正ニ領収候也
明治廿九年一月十七日
日本精糖株式会社
社員 小林謙吉(印)
登記事項御届
当会社明治廿九年三月三十一日大阪区裁判所ニ於テ別紙之通登記相受候間此段御届申上候也
明治廿九年四月八日
大阪市東区高麗橋通五丁目九拾四番屋敷
日本精糖株式会社
社長 松本重太郎(印)
農商務大臣 子爵 榎本武揚殿
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一株式会社本店
一会社ノ目的 内外産砂糖ヲ購入精製及販売スルヲ以テ目的トス
一社名、営業所 日本精糖株式会社ト称ス、営業所ヲ大阪市東区高麗橋場通五丁目第九拾四番屋敷ニ設置ス
一資本総額 壱百五拾万円
株式総数 参万株
壱株ノ金額 五拾円
一払込金額 各株式ニ付払込タル金額拾弐円五拾銭
一取締役氏名住所
大阪市北区堂島浜通二丁目拾六番屋敷
専務取締役社長 松本重太郎
佐賀県佐賀市水ケ江町字片田江小路二百四番戸
当時大阪市北区中之島二丁目百七十六番屋敷寄留
取締役常務 佐野常樹
東京市日本橋区兜町二番地
取締役 渋沢栄一
大阪市東区高麗橋通五丁目百四十一番屋敷
取締役 野田吉兵衛
大阪市北区堂島北町六拾九番屋敷
取締役 本山彦一
一設立免許ノ年月日 明治廿九年一月十五日
一存立時期ハ之ヲ予定セス
一開業ノ年月日 明治三十年十月十五日
一松本重太郎ヲ専務取締役トス
以上
青淵先生六十年史 （再版） 第二巻・第二五六―二五九頁 〔明治三三年六月〕（DK110037k-0003）
第11巻 p.188-189 ページ画像
青淵先生六十年史（再版） 第二巻・第二五六―二五九頁〔明治三三年六月〕
○第四十三章 製糖業
第三節 日本精糖会社
日本精糖株式会社ハ青淵先生及松本重太郎等ノ発企ニ係リ明治二十九年一月ヲ以テ設立シタルモノニシテ其資本金ハ百五拾万円ナリトス
同社設立趣意書ニ曰ク
砂糖ハ人生需要品ノ一大宗ナリ、本邦従来砂糖ヲ産スルコト尠ナカラスト雖モ未タ以テ内国ノ需要ニ応スルニ足ラス、是ヲ以テ外品ノ輸入スルモノ一年ハ一年ヨリ愈々多ク、其元価既ニ壱千壱百万円ヲ超ユルニ至ル、而シテ其荐ニ増加ヲ告クルハ白糖即精製ヲ加ヘタルモノニシテ、昨廿六年度ノ輸入価格ヲ以テ之ヲ十年度ニ比スレハ、無慮十一倍余ノ多キニ達シタリ
人文愈々開ケ国富益々進ムニ従ヒ砂糖ノ需要多キヲ加フルハ、古今ノ通観内外ノ実相ナリ、試ニ統計書ヲ按スルニ宇内各国砂糖ノ産額ハ毎年無慮壱百拾億弐千万封度余ニシテ、一人ニ付平均六封度六分一厘ニ当ル、而シテ宇内尚ホ未タ砂糖ノ何物タルヲ知ラサル国民亦蓋尠カラス、今姑ク之ヲ措キ唯々文明諸国ニ徴スルニ、其千八百九十二年ノ消費高ハ千八百五十年ノモノニ四倍シ、英国ハ一人別大凡六拾九封度、独国ハ拾五封度、仏国ハ弐拾三封度、米国ハ五拾三封
- 第11巻 p.189 -ページ画像
度ノ割合ヲナス、顧テ我国ヲ見ルニ消費高一人別僅ニ六封度壱分五厘ニ過キスシテ、文野各国ノ平均額ニタモ及ハス、豈ニ此ニシテ止マルノ理アランヤ、是ニ於テ糖業ノ拡張ヲ唱道スル者、近来漸ク起リ、或ハ栽植ヲ増スヲ以テ最要務トナスカ如シ
然ルニ内国砂糖増殖ノ事タル、惟フニ遽ニ其目的ヲ達スヘカラス、従来甘蔗ニ甜菜ニ若クハ蘆粟ニ之カ振作ヲ試ミタル者尠カラスト雖モ、未タ較然タル成功ヲ看ス、且今蔗糖ニ就キテ之ヲ稽フルニ、鹿児島県大島郡ニ於テ黒糖百斤ヲ産スルノ経費ハ四円七拾銭（或ハ曰ク七円三拾銭）、沖縄県ハ弐円八拾弐銭（或ハ曰ク四円参拾壱銭）ナルニ、比律賓島「ネグロ」地方ニ於テハ僅ニ壱円六拾七銭七厘五毛ニ過キス、夫レ大島ト云ヒ沖縄ト云ヒ、共ニ本邦内ニ於テ最モ甘蔗ノ栽培ニ適当スルノ地タリ而シテ経費ヲ要スルコト斯ノ如ク太タ多ク、更ニ之ニ改良ヲ加フルモ尚ホ熱帯地方ニ及フヘカラサルヤ必セリ、況ンヤ其砂糖ノ含有スル結晶分較々少クシテ、白糖トナスニ適セサルニ於テオヤ、今ノ時ニ方リ内国ノ生産ヲ以テ外国ノ輸入ヲ防止センコトヲ望ムハ、蓋百年河清ヲ待ツニ似タリ
内国ノ糖業ハ急ニ振作ヲ期スヘカラサルコト斯ノ如シ、而シテ外国白糖ノ輸入ハ駸々トシテ増進シ、殆ント其底止スル所ヲ知ラス、顧フニ是レ皆香港ニ於テ精製輸来スルモノナリ、夫レ香港ノ地タル石炭貴クシテ工銀モ又廉ナラス、唯々海上四通ノ要区ニ居リ、且原糖ノ産ニ接近シテ運輸ノ利アリト雖モ、一旦陸揚ヲナシ又舶載シテ我国ニ輸致スルノ経費ハ、原産地ヨリ直ニ我国ニ運致スルノ廉ナルニ如カス、且我国白糖ニ対シテハ壱割ノ輸入税アリ、畢竟内地ニ於テ精製ヲナスニ利アルコト多言ヲ俟タスシテ明ナリ
以上列記スル所ニ拠リテ之ヲ観レハ、砂糖精製ノ業ヲ起スハ寔ニ目下ノ急務ニシテ且利益アルコト亦疑ヲ容ルヘカラス、仍テ玆ニ一株式会社ヲ組織シ、次ニ掲クル目論見要領ニ依リ以テ此ノ業ヲ経営セント欲ス、其原料ニ至リテハ姑ク外国ノ産ヲ取ラサルヘカラスト雖モ、本邦南島ノ糖業他日幸ニ発達セハ、是レ亦必ス精製ノ施設ヲ須ツモノナリ、故ニ此ノ業ニシテ就テハ、啻ニ精製加工ノ利益ヲ回収シ、且白糖ノ価値ヲ低廉ニスルノミナラス、又内国ノ糖業ヲ誘起スルニ足リ、庶幾クハ以テ国家ノ経済ニ裨補セン云々ト
夫レ斯ノ如ク同社ハ糖業ヲ営ムノ目的ヲ以テ会社ヲ大阪府東成区都島村大字善源寺ニ建設シ、設計技師トシテ蘇格蘭グリノック市ノ「ブレークバークレー」商会ヨリロバート、ハウイ、スマアトノ三人ヲ雇聘シ、又技師松井元治郎ヲ欧州ニ派遣シ機械製作ノ監督及ヒ精糖技術ノ実習ヲナサシメタリ
○下略
日本精糖株式会社第七回報告書 （自明治三二年一月一日至同年六月三〇日）（DK110037k-0004）
第11巻 p.189-190 ページ画像
日本精糖株式会社第七回報告書 （自明治三二年一月一日至同年六月三〇日）
株主総会
一一月二十七日通常総会ヲ開キ前季間ノ計算書・財産目録・貸借対照表・事業報告書ヲ議決シ、取締役満期ニ付引続キ臨時総会ヲ開キ改選セシ所、取締役松本重太郎・渋沢栄一・野田吉兵衛・本山彦一ハ
- 第11巻 p.190 -ページ画像
重任ニ決シ、一名補欠選挙ハ必要ノ時マデ欠員トナスコトニ決議シタリ
日本精糖株式会社第一三回報告書 （自明治三五年一月一日至同年六月三〇日）（DK110037k-0005）
第11巻 p.190 ページ画像
日本精糖株式会社第一三回報告書 （自明治三五年一月一日至同年六月三〇日）
株主総会
一一月十八日定時総会ヲ開キ、前期間ノ計算書・財産目録・貸借対照表・事業報告書ヲ議決シ、引続キ臨時総会ヲ開キ、取締役五名ノ満期改撰ニ取締役松本重太郎・渋沢栄一・野口吉兵衛・本山彦一・不二樹熊次郎、監査役三名ノ満期改撰ニ監査役井上保次郎・阿部市郎兵衛・浅田正文孰モ重任ニ決セリ
日本精糖株式会社第一九回報告書 （自明治三八年一月一日至同年六月三〇日）（DK110037k-0006）
第11巻 p.190 ページ画像
日本精糖株式会社第一九回報告書 （自明治三八年一月一日至同年六月三〇日）
株主総会
一一月十八日定時総会ヲ開キ、前期間ノ財産目録・貸借対照表・営業報告書・損益決算書並ニ積立金及利益配当ノ諸件ヲ議決シ、引続キ臨時総会ヲ開キ取締役五名ノ満期改撰ニ取締役松本重太郎・渋沢栄一・野田吉兵衛・本山彦一・不二樹熊次郎、監査役三名ノ満期改撰ニ監査役井上保次郎・浅田正文・宗像祐太郎孰レモ重任ニ決シ、糖業調査同志会出金者及委員ヘ謝意ヲ表スル為メ物品贈呈ノ件ヲ議決シタリ
処務要件
一本年一月十八日臨時総会ノ決議ニ基キ糖業調査同志会出金者及委員参拾四名ヘ、夫々物品ヲ贈呈シ謝意ヲ表シタリ
日本精糖株式会社第一回報告書 （自創業至明治二九年六月三〇日）（DK110037k-0007）
第11巻 p.190-191 ページ画像
日本精糖株式会社第一回報告書 （自創業至明治二九年六月三〇日）
処務要件
○上略
一工学士築山鏘太郎、理学士松井元治郎ヲ技師ニ採任セリ
一本年一月廿一日本社工場敷地トシテ府下東成郡都島村大字善源寺及友淵ニ於テ参町余ノ土地ヲ購求シタリ
一一月二十日第壱回株金払込ノ金額壱株ニ付金拾弐円五拾銭時日及場所ヲ各株主ニ通知シ二月五日略ホ領収ヲ了セリ、残余ノ不払込株式三百四拾七株ヲ三月廿七日公売ニ付シ壱株金拾壱円五拾銭ニテ売払ヒタリ
一三月三十日大阪区裁判所ニ就キ会社登記公告ヲ受ケタリ
一四月八日右登記事項及其年月日ヲ明記シ府庁ヲ経テ農商務大臣ニ報告シタリ
一二月十八日技師築山鏘太郎・松井元治郎ヲ欧洲ニ派遣シ、精糖事業及精糖ニ関スル諸機械製造場ノ実況ヲ視察セシム、両技師ハ現ニ英仏独諸工場巡視中ニアリ、是ヨリ先機械供給ノ註文ニ応スヘキ望アル三井物産会社外拾弐商会ニ見積書提供者心得書ヲ配布シタリ
一二月十八日常務取締役佐野常樹ハ精糖原料ノ生産地タル南洋糖業ノ景況ヲ視察シ、原糖取引ノ方法ヲ画定スルノ目的ヲ以テ其途ニ上リ香港・新嘉坡・爪哇・海峡殖民地及比律賓諸島ヲ巡歴シ、五月廿七日ヲ以テ帰社シタリ
- 第11巻 p.191 -ページ画像
一常務取締役不在中、取締役野田吉兵衛其代理ニ任シ日常ノ事務ヲ整理シタリ
一四月十八日工場建設願認可セラレタルヲ以テ、註文機械確定次第建築ニ着手スルノ見込ナリ、一方ニ於テハ地上及井路付換等地盤ノ調理大ニ進捗シタルニ拠リ、先ツ仮事務所及附属建物ヲ設置シ、今ヤ略ホ落成シタルヲ以テ近日事務所ヲ移サントス
日本精糖株式会社第二回報告書 （自明治二九年七月一日至同年一二月三一日）（DK110037k-0008）
第11巻 p.191 ページ画像
日本精糖株式会社第二回報告書 （自明治二九年七月一日至同年一二月三一日）
処務要件
一大阪府下東成郡都島村大字善源寺及友淵ニ於ケル当会社工場敷地内ニ建設シタル仮事務所及附属建物逐次落成ヲ告ケ、七月廿六日ヨリ其所東成郡都島村大字善源寺百拾弐番屋敷ニ於テ事務ヲ取扱フコトヽナシタリ
一工場敷地ノ地上工事ハ風雨及洪水ニ妨碍セラレテ稍遅延シタルモ、今ハ幾ント竣成シ、井路ノ付換及地盤ノ整理等亦関係者ト交渉シ、且相当ノ手続ヲ経テ既ニ全ク結了シタリ
一精糖用諸機械ハ本邦尚ホ未タ類例アラス、其採択ニ慎重ヲ加ヘ、審問明弁最適切ノモノヲ執ルヘキハ論ヲ俟タス、曩ニ三井物産会社外拾弐商会ニ機械見積書類ノ提出ヲ求メ、又築山鏘太郎及松井元治郎ノ両技師ヲ欧洲ニ派遣シヽ《（セシ）》ハ、第壱回報告書ニ記載セシ所ノ如シ、爾来内外八商会ヨリ提出スル機械及建築設計見積書類無慮拾参通附属書類数拾葉ノ多キニ及ヒタルヲ以テ、派遣技師ヲシテ右諸工場ニ就キ逐一実況ヲ撿査報告セシメ、且桑原政工業事務所ニ嘱托シテ其書類ヲ点撿シ意見ヲ申具セシメタリ、然ルニ機械ノ方式建築ノ図案一長一短遽ニ其得失ヲ判明スヘカラス、代価ニ至リテモ亦大ニ逕庭アリ、其当否ヲ弁スル固容易ノ業ニアラス、其調査ニ幾多ノ日子ヲ費セシハ寔ニ止ムヲ得サル所ナリ、既ニシテ反覆審按ヲ悉シ、遂ニ英国「ブレイク、バークレー」会社ノ提出ニ係ルモノヲ採ルニ決シ十二月十九日横浜磯野商会ヲ経テ註文ヲ了シタリ
一建築ノ図案ハ亦其審議ヲ要シタル所ニシテ、其重ナル建物ハ鉄骨煉瓦造トナスノ可ナルヲ察シ、其材料ヲ機械ト共ニ註文シタリ
一機械及建築材ノ製造ハ其着手後、六ケ月余ヲ要スルハ自然ノ勢ニシテ、松井技師ハ暫ク彼地ニ留テ之ヲ監督シ、且精糖ノ術ヲ実習シ、築山技師ハ不日帰朝シテ工場建築ノ準備ヲナサントス
一十二月廿六日砂糖ニ対スル輸入税ノ事ニ関シ其筋ニ上申スルノ必要ヲ見、乃チ書ヲ外務・大蔵及農商務三大臣ニ呈シ、且常務取締役東上シテ当会社ノ意思ヲ縷述シタリ
日本精糖株式会社第三回報告書 （自明治三〇年一月一日至同年六月三〇日）（DK110037k-0009）
第11巻 p.191-192 ページ画像
日本精糖株式会社第三回報告書 （自明治三〇年一月一日至同年六月三〇日）
処務要件
一曩年欧洲ニ派遣シタル技師築山鏘太郎ハ精糖用諸機械註文ノ事ヲ了シ、二月十八日ヲ以テ帰朝シタリ
一工場建築図面漸ク機械製造者ヨリ送致セラルヽニ従ヒ桑原工業事務所ニ嘱付シテ建築ノ設計ヲナサシメ、五月初ニ至リ略ホ之ヲ了セリ
一四月三十日建築技師英人モツフアー氏来ル、氏ハ機械製造者ヨリ派
- 第11巻 p.192 -ページ画像
遣スル所ニシテ、建築及機械据付ノ事ヲ指導スヘキモノトス、尋テ双方ノ便宜ヲ謀リ社宅ノ一舎ヲ修理シ、其筋ノ許可ヲ経テ玆ニ居ラシム
一五月十二日工場建築模様替願ヲ其筋ニ差出シ、越テ廿九日其認可ヲ得直ニ工事ニ着手シタリ
一機械類第一次積出シノモノ五月十三日神戸ニ到ル、爾後時ニ随ヒ相続テ入港セントス
○中略
一砂糖輸入税免除ノ事ニ関シ二・三月ノ交、常務取締役佐野常樹再上京シテ其筋ニ陳情シタリ
日本精糖株式会社第四回報告書 （自明治三〇年七月一日至同年一二月三一日）（DK110037k-0010）
第11巻 p.192 ページ画像
日本精糖株式会社第四回報告書 （自明治三〇年七月一日至同年一二月三一日）
処務要件
○上略
一同三十一日○八月技師松井元治郎欧洲ヨリ帰朝セリ、氏ハ昨年来欧洲ニ於テ機械製作ノ監督及精糖技術ノ実習ヲナシ、且欧米諸精糖場ノ視察ヲ遂ケリ
○中略
一十一月三日汽鑵室、機械修繕室、水槽台落成ヲ告ケ、本工場鉄骨ノ組立モ亦略了リタルヲ以テ上棟略式ヲ挙ケリ
○中略
一同月○一二月二十三日雇外国技師ロバアート、ハウイ、スマアト来着セリ、尚他ノ三名外国技手ハ三十一年一月中旬来着セントス
一工場ノ建築ハ本年上半季ノ終末ニ於テ之ニ着手シ、爾来精励工事ヲ督シ定式ノ休暇ヲ廃スルハ勿論、或ハ夜業ヲナシテ其速成ヲ勉メタリト雖、地形ノ作成ニ数多ノ時日ヲ要シ、且鉄骨ノ組立機械ノ据付等皆我カ慣熟セサル所ニシテ運行敏ナルヲ得ス、又用材機会ノ未タ海外ヨリ達セサルモノアリ、漸クニシテ工場ノ大部ヲ落成シ機械ノ据付モ亦其大半ヲ了セリ
日本精糖株式会社第五回報告書 （自明治三一年一月一日至同年六月三〇日）（DK110037k-0011）
第11巻 p.192 ページ画像
日本精糖株式会社第五回報告書 （自明治三一年一月一日至同年六月三〇日）
処務要件
○上略
一一月二十二日雇外国技手三名来着セリ
業務ノ状況
一工場機械据付ハ前季ニ次キ速成ヲ努メ、漸クニシテ其工ヲ竣ヘ六月十五日始メテ精糖操業ニ着手シ、其結果良好ニシテ期望ノ製品ヲ得タリト雖、日尚浅クシテ未タ損益勘定ヲナスニ至ラス、是レ特ニ遺憾トスル所ナリ
一三月七日工場構内機械修繕場ヨリ出火、壱棟焼失シ其損害壱千参百円ナリ
日本精糖株式会社第六回報告書 （自明治三一年七月一日至同年一二月三一日）（DK110037k-0012）
第11巻 p.192-193 ページ画像
日本精糖株式会社第六回報告書 （自明治三一年七月一日至同年一二月三一日）
処務
- 第11巻 p.193 -ページ画像
○上略
一八月三十一日雇外国技師一名雇入継続届ヲ其筋ヘ呈出セリ
○中略
一十月十日雇外国技師一名解傭セリ
○下略
業務ノ状況
一当期間ニ於テ精製シタル砂糖ハ九万八千俵ニシテ、漸次機械運転ノ整ヒタルト職工操業ノ熟シタルトニヨリ日ヲ遂フテ製額ヲ増シ、十一月十二月ニ至リテハ予定以上ノ精糖ヲ出シ、其品質佳良ニシテ優ニ輸入白糖ヲ圧シ、随テ販路モ亦拡張シ当期間製出品ハ大抵售売スルヲ得タリ、之ヲ要スルニ諸般ノ施設能力機宜ニ適シ初回ノ営業報告ヲ為スニ方リ幾分ノ利益ヲ示スヲ得タルハ当会社ノ慶福ト云フヘシ、惟フニ当季ニ在リテハ全ク工場精製ニ関スル設備ヲ整ヘタルヲ以テ次期ヨリ専ラ力ヲ営業ノ部面ニ尽スヲ得ントス
日本精糖株式会社第七回報告書 （自明治三二年一月一日至同年六月三〇日）（DK110037k-0013）
第11巻 p.193 ページ画像
日本精糖株式会社第七回報告書 （自明治三二年一月一日至同年六月三〇日）
業務ノ状況
一当期間ニ於ケル製造ノ状況ハ前期ニ継キテ弥ヨ職工操業ノ習熟シタルト、機械運転ノ支障ナキトニヨリ予定以上ノ製額ヲ増シ、之ニ加フルニ品質優良ニシテ尠カラス声価ヲ博シタルヲ以テ、更ニ進ミテ販路ノ拡張ヲ講シ、従来当市ニ於テ行ヒタル競売ノ外愛知県下名古屋市ニ第二競売場ヲ設ケ、四月七日其第一回ノ競売ヲ開始シ、爾来益々好況ニ赴ケリ、而シテ本年一月新関税率ノ実施ヲ見越シ巨額ノ精糖輸入セラレタルモ、内地ノ需用ハ之ニ随伴セス、為ニ市況沈静ニシテ価格モ亦甚タ低落シ、漸クニシテ四月中旬以後稍々気配ヲ挽回シタリト雖モ、其間原糖ハ遂次騰貴シ精糖ト原糖トハ価格ノ点ニ付キテ反対ノ奇状ヲ呈シタルニモ拘ハラス、当会社ニ於ケル原糖ノ仕入其機ヲ誤ラサリシノミナラス、内製造ノ倍加ヲ努メ其工費ヲシテ割合ニ低廉ナラシメ、外大ニ販売ノ拡張ヲ規画シ拮据業務ニ当リシヲ以テ幸ニシテ好果ヲ収ムルヲ得タリ、顧ミレハ当上半期ノ如ク一般糖業者カ悲運ニ際会セシ時ニ方リ、前期ヨリモ好良ナル成蹟ヲ爰ニ株主各位ニ報告スルノ栄ヲ得タルハ、実ニ当会社施設ノ方法能ク其当ヲ失サリシ所以ナランカ、次期ニ於テハ倍々奮励シテ事業ニ従ハンコトヲ期ス
日本精糖株式会社第八回報告書 （自明治三二年七月一日至同年一二月三一日）（DK110037k-0014）
第11巻 p.193-194 ページ画像
日本精糖株式会社第八回報告書 （自明治三二年七月一日至同年一二月三一日）
業務ノ状況
一当季間ニ於ケル営業ノ状況ハ前季ニ継キテ、漸次工業上ノ熟練ヲ加ヘ、且ツ大ニ改良ヲ施シタルヲ以テ弥ヨ顧客ノ好評ヲ博シ一層販路ヲ拡張シタリ、然ルニ阪神間ニ黒死病発生シ一時販路縮蹙スルノ虞アリシヲ以テ、包装品ニ充分ノ消毒法ヲ行ヒ毫モ病毒伝播ノ懸念ナカラシメ、然ル後之ヲ諸新聞紙ニ広告シタルハ勿論、全国ノ糖業者及各要部ヘ通知ヲ為シタルノ結果、年末ニ至リ殆ト当会社ノ製品ノミヲ以テ需用ヲ充スノ好況ヲ見ルニ至レリ、之ヲ要スルニ当季ニ於
- 第11巻 p.194 -ページ画像
テハ幸ニ前季ニ劣ラサルノ成蹟ヲ収メタリト雖、次季ニ入リテハ低価ノ甜菜糖輸入セラレントスルモノアリ、頗ル注意スヘキノ時機ト察シ戒心以テ業務ニ従ハントス
日本精糖株式会社第九回報告書 （自明治三三年一月一日至同年六月三〇日）（DK110037k-0015）
第11巻 p.194 ページ画像
日本精糖株式会社第九回報告書 （自明治三三年一月一日至同年六月三〇日）
業務ノ状況
一当季間ニ於ケル営業ノ状況ハ工業上少シモ支障ナク販路ハ次第ニ拡張シ、益々品質の声価ヲ博シ需用ヲ増進シタルノ結果、時々製品ノ不足ヲ感ズルニ至リ、前季ニ於テ予想シタル如ク低価ノ甜菜糖多量ニ輸入セラレタルニモ拘ラス、当社製品ノ価格ヲ昇進セシメテ却テ当社三温類ト甜菜白糖ト同等ノ価格ヲ見ルニ至リ、随テ前季ニ劣ラサル利益ヲ収メ爰ニ其成蹟ヲ株主各位ニ報告スルノ幸ヲ得タリ、而シテ昨今幾分ノ増設工事ニ着手シタレハ、完成ノ暁ニハ顧客ノ需用ヲ充シ尚好成蹟ヲ得ンコトヲ期ス
日本精糖株式会社第拾回報告書 （自明治三三年七月一日至同年一二月三一日）（DK110037k-0016）
第11巻 p.194 ページ画像
日本精糖株式会社第拾回報告書 （自明治三三年七月一日至同年一二月三一日）
処務要件
○上略
一八月十四日工場増築願ヲ大阪府ヘ呈出シ、同月二十二日許可ヲ受ケタリ
○下略
業務ノ状況
当季間ニ於ケル業務ノ状況ハ工業上益好良ノ製品ヲ出シ、且ツ販路拡張ノ結果常ニ供給不足ヲ告ゲ、為ニ屡々休日ヲ廃シテ製造ヲ勗メ随テ価格モ上進シ、爰ニ前期ニ優ルノ成蹟ヲ報告シ得ルニ至リタルハ、実ニ当会社ノ幸福ト云フ可シ、而シテ今ヤ工場増設工事将ニ竣工セントスルヲ以テ今後倍々顧客ノ需用ヲ充シ、尚好成蹟ヲ得ンコトヲ期ス
日本精糖株式会社第拾壱回報告書 （自明治三四年一月一日至同年六月三〇日）（DK110037k-0017）
第11巻 p.194 ページ画像
日本精糖株式会社第拾壱回報告書 （自明治三四年一月一日至同年六月三〇日）
業務ノ状況
当季間ニ於ケル製品ハ益々優良ノモノヲ出シ世評亦之ニ適ヘリ、而シテ一般砂糖商況ハ彼ノ課税問題ノ為メ市価ノ変動常ナク、糖業者間ニ甚シキ恐慌ヲ与ヘタレトモ、当会社ハ終始慎重業務ニ従事シタルヲ以テ相当ノ利益ヲ得ルニ至リタルハ至幸ナリト謂フベシ、尋テ経済社界ノ不況ニ際シ且ツ増築工場ノ製品モ多額トナリシニヨリ、官線山陽関西阪鶴ノ諸鉄道郵船商船ノ各会社ニ特約ヲ結ヒ、大ニ海陸運輸ノ便ヲ開キシニ、其成蹟良好ニシテ頓ニ販路ノ拡張ヲ見ルニ至リ、一般商況ノ萎靡セルニモ拘ラズ、著シク出荷ノ数ヲ増シ製品ハ大低之《（抵）》ヲ販売シ得ルニ至レリ、只一時地方ノ為替取組ニ困難ヲ感ジ幾分ノ販路ヲ妨ゲラレタルハ遺憾ナリシト雖、玆ニ前季ニ劣ラザルノ営業成蹟ヲ株主各位ヘ報告スルヲ得タルハ幸慶ノ至リナリトス
日本精糖株式会社第拾弐回報告書 （自明治三四年七月一日至同年一二月三一日）（DK110037k-0018）
第11巻 p.194-195 ページ画像
日本精糖株式会社第拾弐回報告書 （自明治三四年七月一日至同年一二月三一日）
業務ノ状況
- 第11巻 p.195 -ページ画像
当半季間営業ノ状況ハ前季ニ引続キ製品ハ弥善良ニ販路ハ倍拡張シ、特ニ課税期ノ迫ルニ従ヒ需用瀕ニ至レリ、此時ニ際シ当会社ハ休日ヲ廃シ大ニ製造ヲ励ミ、糖業者ヲシテ見越輸入ニ代ルニ当社製品ヲ以テセシムルコトヲ勉メタリ、依テ増築工場ト共ニ全力ヲ注テ多額ノ製造ヲナシタルニモ不拘、大低販売《（抵）》シ得タリ、為ニ当半季間ハ創業以来ノ収益ヲ得テ玆ニ株主各位ヘ報告スルハ誠ニ幸慶ノ至リナリトス、而シテ次季ニ至リテハ未タ見越輸入品ノ市場ニ停滞スルモノアリ、且一般ノ商況不景気ノ為メ出荷ノ減少ハ勢ヒ免ル可ラスト雖モ、慎重業務ニ従事シ時期相当ノ成蹟ヲ収メンコトヲ希望ス
日本精糖株式会社第一三回報告書 （自明治三五年一月一日至同年六月三〇日）（DK110037k-0019）
第11巻 p.195 ページ画像
日本精糖株式会社第一三回報告書 （自明治三五年一月一日至同年六月三〇日）
業務ノ状況
当半季間業務ノ状況ハ昨年十月砂糖消費税法実施ノ後ヲ享ケ、見越輸入糖堆積シ本年ニ入リ荷主ハ競フテ投ケ売リノ姿ヲ呈シ来リ、尠カラス市場ヲ攪乱シ市価ハ益々沈滞ノ状況ヲ持続シ、加之ナラス世界糖価ノ下落ト一般商況ノ不振トハ次第ニ暴落ヲ促シ、我糖業界一般未曾有ノ不況ヲ見ルニ至レリ、此時ニ方リ当会社ハ機宜ニ従ヒ、製造ヲ休止シ、或ハ製額ヲ減少シ慎重以テ営業ニ勗メタリト雖モ大勢如何トモナシ難ク、為ニ当季ニ於テハ好成蹟ヲ報告スルノ栄ヲ得サリシハ深ク遺憾トスル所ナレトモ、斯ノ如ク一般糖業者カ損失ヲ蒙ラサルモノナキ時ニ際シ、当会社カ欠損ヲ免レタリシハ不幸中ノ幸ト謂フヘシ、尚次季ニ至リテハ原糖戻税法ノ実施セラルヽアリ、細心業務ニ従事シ時期相当ノ成蹟ヲ得ンコトヲ期ス
日本精糖株式会社第一四回報告書 （自明治三五年七月一日至同年一二月三一日）（DK110037k-0020）
第11巻 p.195 ページ画像
日本精糖株式会社第一四回報告書 （自明治三五年七月一日至同年一二月三一日）
業務ノ状況
当季間ニ於ケル業務ノ状況ハ上三ケ月間ニ於テハ前期糖業界不振ノ後ヲ享ケ、市価ハ益々沈滞ノ姿ヲ持続シタリ、此時ニ方リ当会社ハ慎重時機ヲ察シ業務ヲ処シタリト雖、大勢如何トモスルコト能ハス、為ニ利益ヲ見ル能ハサリシハ遺憾ナリキ、尋テ下三ケ月間ハ機宜ニ従ヒ大ニ奮励以テ営業セシニ、漸次市場ノ活気ヲ呈スルト共ニ相当ノ利益ヲ収ムルヲ得テ、玆ニ其成蹟ヲ報告スルヲ得タルハ誠ニ幸慶ノ至リナリトス、尚次季ニ至リテハ今期ニ優ルノ成蹟ヲ株主各位ニ報告センコトヲ期ス
日本精糖株式会社第一五回報告書 （自明治三六年一月一日至同年六月三〇日）（DK110037k-0021）
第11巻 p.195 ページ画像
日本精糖株式会社第一五回報告書 （自明治三六年一月一日至同年六月三〇日）
業務ノ状況
当季間ニ於ケル業務ノ状況ハ初メ一二月ノ交ニ於テ一般糖価不振ノ状態ナリシト雖、漸次好況ヲ呈シ来リタルヲ以テ機宜ニ従ヒ業務ヲ処理シ、工場亦整備セルカ故ニ需用ニ応シ多額ノ製造ヲ図リ大ニ販路ノ拡張ヲ勉メ、玆ニ相当ノ利益ヲ収メ前季ニ於テ予期シタル好成蹟ヲ株主各位ヘ報スルヲ得タルハ誠ニ幸慶ノ至リナリトス
日本精糖株式会社第一六回報告書 （自明治三六年七月一日至同年一二月三一日）（DK110037k-0022）
第11巻 p.195-196 ページ画像
日本精糖株式会社第一六回報告書 （自明治三六年七月一日至同年一二月三一日）
- 第11巻 p.196 -ページ画像
業務ノ状況
当半期間ノ状況ハ前期末ヨリノ好気配ヲ受ケ、引続キ砂糖市況倍々活溌ニテ需用頻リニ至リ糖価次第ニ上進セリ、此時ニ方リ当会社ハ昼夜全力ヲ注キ之レカ供給ヲ勉メタリト雖、尚不足ヲ感ジ需用者ニ満足ヲ与フルコト能ハサルノ景況ナリキ、而シテ此間幸ニ工業上及販売上一ノ支障ヲ生セス、為ニ当半期ニ於テハ大ニ収益ヲ得、玆ニ株主各位ニ好成蹟ヲ報告スルヲ得タルハ誠ニ当会社ノ幸慶ナリトス、尚次季ニ至リテハ露国糖ノ輸入セラルヽモノアルヘシト雖、細心業務ニ従事シ相当ノ利益ヲ収メンコトヲ希望ス
日本精糖株式会社第一七回報告書 （自明治三七年一月一日至同年六月三〇日）（DK110037k-0023）
第11巻 p.196 ページ画像
日本精糖株式会社第一七回報告書 （自明治三七年一月一日至同年六月三〇日）
業務ノ状況
一当半季間営業ノ状況ハ当初糖業界ハ前期ニ引続キ好況ヲ持続シタルヲ以テ細心業務ヲ処理シ、只管工商業上共支障ナカランコトヲ期シタリ、然ルニ非常特別税法ハ四月一日ヨリ施行セラレ砂糖消費税ハ一層重税ヲ課セラレントスルヤ、一時ハ業務上大ニ憂慮セシモ奮励以テ営業ニ従事シ今日ノ成果ヲ得ルニ至レリ、即チ増税以前ニ在リテハ昼夜全力ヲ注キ専ラ製造ヲ努メ、増税以後ニ至リテハ暫時製造休止ノ得策タルヲ認メ、約二箇月間工場操業ヲ廃シ此間機械其他ニ大修理ヲ施シ後日ノ製造力ヲ遺憾ナカランコトヲ図レリ、此前後ニ方リ商業上ノ計劃予期ノ如ク進行シ好成蹟ヲ以テ株主各位ニ報告スルヲ得タルハ幸栄ナリト云フベシ、尚次期ニ至リテハ業務上期図スル所アリ必ス好結果ヲ収メテ各位ニ見ヘンコトヲ期ス
日本精糖株式会社第一八回報告書 （自明治三七年七月一日至同年一二月三一日）（DK110037k-0024）
第11巻 p.196 ページ画像
日本精糖株式会社第一八回報告書 （自明治三七年七月一日至同年一二月三一日）
業務ノ状況
一当季間営業ノ状況ハ、工商業共一ノ支障ナク総テ予定ノ期劃ヲ愆ラス、前期ニ於テ予報セシ通リ好結果ヲ得テ玆ニ未曾有ノ収益ヲ株主各位ヘ報告スルノ光栄ヲ得タリ、抑モ当半期間世界ニ於ケル糖価ハ希有ノ昇進ヲ示シ一般ノ需用ハ時局ノ為メ著シク減少セリ、而シテ当会社ハ此間ニ処シ原料糖ノ仕入ハ時機ヲ失セス、又市況ハ外国精糖ノ輸入ヲ許サヽルノ状態ナリシヲ以テ当会社製品ニ対シテハ、前陳需用減少ノ影響ヲ受ケス于時注文ヲ謝絶スルノ止ムヲ得サル場合モアリタリキ、殊ニ製造工場ヲ経スシテ原料ノ儘直ニ売捌キタルモノモ亦尠カラス、為ニ好成蹟ヲ収ムルヲ得タリ、尚次期ニ於ケル業務上ノ期図進行ハ良好ニ向ヒツヽアルヲ以テ、必ス時期相当の好果ヲ得ヘシト信ス
日本精糖株式会社第一九回報告書 （自明治三八年一月一日至同年六月三〇日）（DK110037k-0025）
第11巻 p.196-197 ページ画像
日本精糖株式会社第一九回報告書 （自明治三八年一月一日至同年六月三〇日）
業務ノ状況
一当季間営業ノ状況ハ工業上ニ於テハ予定ノ企図ヲ進行シ、其間後日製造増加ノ必要且ツ修理ヲ要スル点アリシヲ以テ製品ノ需用状態ニ鑑ミ二ケ月間休業セリ、商業上ニ於テハ初期ヨリ沈静ノ一方ニテ需用大ニ減少シ、随テ製品ハ常ニ停滞ヲ免レサリシト雖トモ当会社ハ
- 第11巻 p.197 -ページ画像
此間ニ処シ大ニ之レカ振興ノ動機ヲ与フルニ苦心シ進テ決行スル所アリシニ、其後需用大ニ興リ価格亦次第ニ昇進シ遂ニ当半期間製造ノ全部ヲ売約スルコトヲ得、爰ニ時期相当ノ結果ヲ報告スルニ至リタルハ誠ニ当会社ノ幸福ナリトス
日本精糖株式会社第二〇回報告書 （自明治三八年七月一日至同年一二月三一日）（DK110037k-0026）
第11巻 p.197 ページ画像
日本精糖株式会社第二〇回報告書 （自明治三八年七月一日至同年一二月三一日）
業務ノ状況
一前季以来沈静セル糖況ハ海外ニ於ケル糖価三割以上ノ暴落ニ伴ヒ益益不振ヲ極メ、之レカ打撃ヲ蒙リシモノ、独リ海外市場ノミニ止ラス、内地糖業者ノ困難云ハン方ナク一般損失ヲ受ケサルモノナキニ立到レリ、当会社ハ其間ニ処シ斯ル景況ノ下ニ危険ヲ冒シテ多大ノ利益ヲ収メントスルノ方針ヲ採ルヨリハ、寧ロ損失ヲ招カサルノ措置ヲ施スノ得策ナルヲ認メテ業務ノ進行ヲ計レリ、加之ナラス偶々工場用品ノ騰貴運輸費用及職工賃銀ノ増出ハ時勢ノ趣ク処ニシテ如何トモスヘカラス、為メニ好成蹟ヲ報告スル能ハサリシハ止ムヲ得サル所ニシテ亦深ク遺憾トスル所以ナリ、株主各位幸ニ之ヲ諒セラレンコトヲ請フ
〔参考〕大阪市主要工業会社沿革調 明治三六年（DK110037k-0027）
第11巻 p.197-198 ページ画像
大阪市主要工業会社沿革調 明治三六年
（大阪市経済研究所所蔵）
本書は明治三十六年明治天皇大阪行幸の際、畏くも勅使を御差遣あらせられたる各工業会社より、勅使へ伝献せる説明書を編録せるものである。
日本精糖株式会社
一会社所在地 東成郡城北村大字友淵百廿壱番屋敷
一工場所在地 右同所
一設立年月日 明治二十九年一月十五日
一資本金 壱百五拾万円 払込金百五万円
一開業年月日 明治卅一年八月十六日
一配当 明治卅一年下半季 年六分
同 卅二年上半季 年一割
同 同 年下半季 年一割強
同 卅三年上半季 年一割二分
同 同 年下半季 年一割五分
同 卅四年上半季 年一割五分強
同 同 年下半季 年二割
同 卅五年上半季 年一割
明治卅五年下半季 年一割二分
一地所 一万六百四十二坪
一建物 煙突一基、工場本館五棟、汽鑵室一棟、倉庫六棟、其他建物廿四棟、此坪数二千七百九十四坪
一機械 汽鑵、汽機、喞筒、発電機並ニ諸付属品、溶糖器、袋濾器骨炭濾器、同再焼炉器、結晶鑵及精製機械一式
- 第11巻 p.198 -ページ画像
一沿革 曩ニ明治二十五・六年ノ交、有志者相謀リ海外精糖ノ輸入年ニ増加スルヲ憂ヒ、其加工費丈ケニテモ本邦ニ留ラシメン事ヲ期シ精糖事業調査会ナルモノヲ設置シ、尋テ株式組織ノ一会社トナシ当初経験ト技能ニ暁通セルモノ甚タ乏シキヲ以テ特ニ技師二名ヲ欧洲ニ派遣シ、機械ノ買入及事業練習ニ従事セシメ尚精糖技師トシテ英国人三名ヲ傭聘シ、専ラ技術ノ伝習ニ従事セシメ其目的ヲ了シタルヲ以、外国技師ハ総テ解雇シ今中本邦人《（マヽ）》ノミノ経営スル所トナレリ
一原料 原料ハ重ニ南洋殊ニ蘭領爪哇産阿蘭標本色相第十号以上第十四号以下ノモノヲ使用ス
一製造方法 先ツ昇揚機ニ依リ原糖ヲ溶糖鑵ニ致シ、除ロニ水ヲ加ヘ蛇管ニ蒸汽ヲ通シテ攪拌溶解シ、温度ハ華氏百七八十度、稠度ハ和黒氏二十六七度ナル糖液ト為シ「テーロル」式袋濾器ヲ以テ濾過シ、挟雑物ヲ去リ此濾液ヲシテ更ニ骨炭濾器ヲ通過セシメ、而シテ此清澄液ヲ無汽鑵中ニ送リ煎煉結晶セシメ、其適度ニ達スルヲ待チ混和槽ニ墜シテ攪拌シ離心機ヲ以テ蜜分ヲ除去シ、冷却シタル後結晶糖ハ「アンペラ」ニ包装シ糖蜜ハ樽詰トシテ製造ヲ了ス
一製品及販路 当工場ニ於ケル製造高ハ創業以来年々増加シ、当初ニアリテハ毎日約七百八十六俵（七万八千六百斤）ヲ製出シタリシモ、漸次製品ニ改良ヲ加ヘ販路次第ニ拡張シタルヲ以テ本年ニ入リテハ一日約二千五百俵（二十五万斤）ヲ製出スルニ至レリ、当会社創業以来外国糖殊ニ香港精糖ノ輸入ヲ減殺シタル事多大ナリシハ窃ニ光栄トスル所ニシテ、試ニ近ク神戸港ニ於ケル輸入統計ヲ挙クレバ左ノ如シ（因ニ記ス当会社ノ精糖ハ香港製精糖ト同種ノモノナリ）
年次 白糖 神戸ヘ輸入シタル数量 当会社製造高
斤 斤
明治三十一年 九二、九七五、五九八 一一、八〇二、七〇〇
当会社創業ノ年
明治卅五年 二〇、四四三、八〇〇 五四、二三九、四〇〇
販路ハ主トシテ内地各地方ナリト雖モ、製額ノ約一割ハ北清・朝鮮・サカレーン島等ヘ輸出ス
○明治三十六年以後ニ於ケル当会社利益配当率左ノ如シ。
割
三十六年上半期 一・七強
同 年下半期―三十七年下半期 二・〇
三十八年上半期 三・四強
同 年下半期―三十九年上半期 二・〇強
三十九年下半期 無配
○当会社ノ資本金及積立金増減ノ大要左ノ如シ。
年月 公称資本金 払込資本金 積立金
円 円
明治二十八年十二月 一、五〇〇、〇〇〇 三七五、〇〇〇 無
明治三十一年六月 一、五〇〇、〇〇〇 七五〇、〇〇〇 八、〇〇〇
明治三十二年十二月 一、五〇〇、〇〇〇 九〇〇、〇〇〇 三三、〇〇〇
明治三十四年六月 一、五〇〇、〇〇〇 一、〇五〇、〇〇〇 一七五、〇〇〇
明治三十八年六月 一、五〇〇、〇〇〇 一、五〇〇、〇〇〇 七五〇、〇〇〇
明治三十九年六月 二、〇〇〇、〇〇〇 二、〇〇〇、〇〇〇 五六〇、〇〇〇