デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

3章 商工業
21節 瓦斯
2款 東京府瓦斯局
■綱文

第12巻 p.449-475(DK120057k) ページ画像

明治12年10月24日(1879年)

府下十五区一般ニ係ル共有財産処分ニツキテハ、自今十五区ヨリ選出セル府会議員ノ会議ニ附シ議定セシムベキ布達アリテ、是日初メテ東京十五区会議開カレ、明治十二年度東京瓦斯局収支予算ニツキ議ス。栄一出席シ、十五区共有金及ビ瓦斯局ノ沿革ヲ説明ス。


■資料

官省伺会議 明治十一年自十月十二年至四月 改正委員(DK120057k-0001)
第12巻 p.449-450 ページ画像

官省伺会議  明治十一年自十月十二年至四月 改正委員
                    (東京府文庫所蔵)
明治十二年 月 日受 五月十五日出     改正委員(印)
 (楠本)   (印) 
 (印)知事   書記官      (印)庶務課
                 (印)会計課
十五区共有物取扱ノ儀ニ付左案之通内務省ヘ御届書並御布達相成可然哉、此段相伺候也
    内務卿 伊藤博文殿            長官

    府下十五区共有物取扱之儀ニ付御届
府下十五区ノ儀ハ、旧幕時代ヨリ積金致シ町会所ニ於テ管理致シ居候処、維新後府庁ニ於テ之ヲ管理シ、明治五年八月旧東京会議所ノ管理ト為シ、明治九年五月再ヒ府庁ノ管理ニ帰シ、現今数拾万円ノ金額有之、且従前右金ノ利子或ハ元金支消シテ興立セル共有物及ヒ十五区限ノ共有財産数多有之候間、右取扱等自今十五区ヨリ撰挙スル府会議員ノ会議ニ附シ議決為致候条、此段及御届候也
 追テ本文之通処分致シ、万一不穏当ノ廉モ候ハヽ何分ノ御指揮相成度候也

    御布達案
甲第五十四号
 - 第12巻 p.450 -ページ画像 
府下十五区一般ニ係ル共有財産処分之儀ハ、自今十五区ヨリ撰挙スル府会議員ノ会議ニ附シ議定セシメ候条、此旨布達候事


東京府布達全書 明治十二年(DK120057k-0002)
第12巻 p.450 ページ画像

東京府布達全書  明治十二年       (東京府文庫所蔵)
○甲第五十四号 五月三十日
府下十五区一般ニ係ル共有財産処分ノ儀ハ、自今十五区ヨリ撰挙スル府会議員ノ会議ニ附シ議定セシメ候条、此旨布達候事
  ○右布達ニ依リ、自今東京瓦斯局ノ増築及ビ百般ノ処分決議事項ハ東京府ヨリ東京府会ニ承継セラレテ処理サル。而シテ明治十四年五月廿六日附東京府布達甲第七拾壱号ニ依リ、十五区一般ニ係ル共有財産ノ処分ハ、自今区部会ノ議ニ付サルル旨布達アリタリ。


東京府布達全書 明治十二年(DK120057k-0003)
第12巻 p.450 ページ画像

東京府布達全書  明治十二年     (東京府文庫所蔵)
○甲第百号 十月十一日
本年当庁甲第五十四号ヲ以テ、十五区共有財産処分之義十五区ヨリ撰挙セル府会議員ノ会議ニ付シ候旨布達候ニ付テハ、本月廿四日ヨリ当府議事堂ニ於テ右会議相開候、此旨布達候事


東京十五区会議事録 第一号 明治一二年一〇月(DK120057k-0004)
第12巻 p.450-459 ページ画像

東京十五区会議事録 第一号 明治一二年一〇月  (東京府文庫所蔵)
東京十五区会議事録第壱号
 明治十二年十月廿四日、十五区共有財産処分会議ヲ開クヲ以テ、諸議員午後第二時ヲ期シテ東京府庁議事堂ニ参集セリ
     出席議員二十六名
     欠席六名○氏名略
     不参一名○氏名略
議員抽籖ヲ以テ其番号ヲ定ムル左ノ如シ
 一番   守田治兵衛   二番   堀越角次郎
 三番   辻純市     四番   大倉喜八郎
 五番   轟道賢     六番   笠井庄兵衛
 七番   鹿嶋清左衛門  八番   比留間安五郎
 九番   多羅尾光応   十番   丸山伝右衛門
 十一番  川島喜三郎   十二番  藤本精一
 十三番  山中市兵衛   十四番  酒井忠彰
 十五番  永井直哉    十六番  青地四郎左衛門
 十七番  福地源一郎   十八番  荒木政樹
 十九番  鹿島清四郎   二十番  芳野世経
 二十一番 大槻東陽    二十二番 酒井忠道
 二十三番 福沢諭吉    二十四番 奥山長右衛門
 二十五番 山中松五郎   二十六番 小木曾富蔵
 二十七番 安田善次郎   二十八番 渡辺治右衛門
 二十九番 西村勝三    三十番  堀田正養
 三十一番 吉川長兵衛   三十二番 太田次郎
 三十三番 馬場半助
 番外一番  東京府一等属 銀林綱男
 - 第12巻 p.451 -ページ画像 
  書記            ○三名略
 午後第三時開場、衆議ニヨリ府会議長十七番福地源一郎ヲ本日ノ仮議長ト定メタリ
○仮議長福地源一郎曰 衆議員ノ依頼ニヨリ、仮リニ議長席ニ就キタリ、此会ハ府会トハ異ナリ、十五区共有財産ノ取扱ヲ議定スルモノニシテ、乃チ十五区共有財産処分会議トモ云フヘキモノナリ、此議事ニ取掛ル前ニ本会議長ヲ選挙アルヘシ、若シ又緊要ナラハ副議長ヲモ選挙アルヘシ
  ○議長堀田正養、副議長荒木政樹ノ選挙議事略ス。
○仮議長曰 議長副議長ハ右ノ通リナレハ、直ニ知事公ニ報道シ臨場ヲ乞フヘシ、依テ三十番ニ交代ヲ乞フ、然シ其前ニ申述ルコトアリ抑モ此共有金ハ乃チ其報告ニ見ヘタル如ク、曾テ旧幕府江戸ノ折寛政年中松平越中守天災救助ノ為メニ備ヘタルモノニシテ、地主中ヨリ町会所ヘ積立タル七分金是ナリ、維新ノ際一旦官吏ノ手ニ落チ鎮将府ニテ取扱ヒシ其顛末ハ得テ聞ク可カラス、明治五年八月ニ至リ東京府ヨリ人民ノ手ニ復シ、旧会議所ニテ取扱ヒ、道路修繕等ノ費用トナシ、其議員ハ東京府ヨリ命セラレタルモノナリ、夫ヨリ明治九年十二月マテ会議所ニアリテ此月ニ会議所ヲ鎖シタリ、恰モ今ノ知事公赴任ノ際ニテ、当時行務ト議事トヲ分課シ、理事ハヤガテ府庁ニ托シ、人民ハ只此金ヲ以テ一般ノ利益トナルヤ否ノ番ヲナシ居ルニ止マレリ、旧会議所職員ノ中、当議場ノ三番四番三十一番等ノ如キハ其時分ヨリ関係セラレタレハ乃チ詳カニ心得タルコトナルヘシ、先ツ此議案ヲ見ル以前ニ共有金ノ顛末ヲ知ルハ緊要ナルベシト考フレトモ、始ヨリ関係アルコトナレバ拙者ノ口ヨリ発センコトハ大ニ嫌忌ヲ恐ルヽコトナリ、ヨシンバ十七番ニ是非演説セヨト云ルレバトテ、或ハ為メニ議決ノ助ケニナル様ニテモ不都合ナレハ素ヨリ之ヲ固辞スベシ、右ニ付手廻シノ為メニ渋沢栄一氏ニ照会シ出席ヲ倚頼シタレハ、其演述ヲ聞クコト最モ緊要ナルベシ、且ツ其顛末明カニ分リシ後、此金ノ収支ニ付、旧会議所ニ不正ノ取扱アレバ、其節ノ人ヲ喚出シ急度糺スベシ、若シ又与リテ大ニ力有レバ府民ニ代リテ深ク謝スベキコトナリ、咎アレバ責メ、労アレハ謝スルハ唯今人民ノ代議者タルモノヽ敢テ所置シテ至当ナルコトト云フベシ、右ハ拙者仮議長中ニ予メ述ヘ置ク所ナリ
 於是三十番堀田正養ハ十七番ニ代リテ議長席ニ着ク、時ニ東京府知事ハ渋沢栄一ヲ従ヘ臨席アリテ、預テ配布セシ議案ノ通リ、第一ハ共有金第二ハ恩賜金、共有金ハ嘗テ旧町会所ヨリ府庁ニ転シ、夫ヨリ営繕会議所トナリ、又、東京会議所トナリ、府知事赴任ノ時ニ当リ、其建議ニヨリ理事ヲ府庁ニ引受ケタリ、此間ノ事ハ事務錯綜シテ聞取リ悪クキコトアルベク、殊ニ瓦斯ノ如キハ番外ノ説明ノミニテハ詳カニ行届カヌコトモアルベクト知事ノ婆心ヨリ、瓦斯局長渋沢氏ニ照会シ、具サニ其沿革ヲ説明スル様ニ命シタレハ、諸議員ニ於テモ篤ト聞キ取ベキ旨演説アリ
○議長曰 唯今知事公ノ演説、又先刻仮議長モ申述ヘシ通リナレハ、渋沢氏ヲ議席ニ臨マシムベキヤ
 - 第12巻 p.452 -ページ画像 
○十八番荒木政樹曰 深ク希望スル所ナリ
 於是渋沢栄一番外二番ノ席ニ着ケリ
○番外二番渋沢栄一曰 諸君唯今知事公ノ御達シノ通リ、共有金ニ関シ瓦斯局ノ有様且ツ沿革ヲモ申述ブル様ニトノ仰セヲ蒙リタレハ、心ニ覚エタルコト又留メ置キタルコトヲ集メテ玆ニ陳述スヘシ、然シ程過キタルコト、殊ニ随分錯綜致シタルコトナレハ、申出スモ前後スルコトモアルベシ、又不明瞭ノコトハ後ニ質問アルべシ、唯今モ申ス如ク順序ヲ言ヘハ事業ハ後ノコト、沿革ニ付テ説ケハ、瓦斯局ノ設立ハ共有金ニ仰キタレバ、此次第ヲ申サ子ハ解シ兼ヌべシ、依テ共有金ヲ先ニシ、続テ瓦斯局ノコトニ及ホスヘシ、諸君左様心得ラルヘシ
 抑此共有金ノ起リハ已ニ府庁ノ報告ニ掲ケラレタル如ク、旧幕時代寛政以来江戸市中ノ地主ガ蓄積スル所ノ金額ニ係リ、所謂七歩金ト唱ヘ、当時ノ老中松平定信ガ仕法ニヨリ、市中ノ費用ヲ節減セシ高ノ七分ヲ積立タルモノニシテ、其残リガ乃チ共有金ノ原素ナリ、明治維新ノ後モ尚此法ヲ沿襲シ、町会所ヲモ存シ置キシガ、明治三年十二月ニ至リテ、官ヨリ沙汰アリテ其取立ヲ停止セリ、此停止ノ際ニ於テ幾許ノ金額ヲ存セシカ、之ヲ明言シ得サルハ甚タ遺憾ナレトモ、当時ノ計算ヲ知ルニ由ナキヲ以テ玆ニ叙述スル能ハス、併シナカラ其知リ得タル所ヨリ説キ起サンニハ、先ツ東京会議所ノ沿革ヲ挿ミテ併セ述ヘサルヲ得ス、諸君幸ニ余ガ演説ノ他岐ニ渉ルヲ怪マザレ、扨此会議所ハ旧町会所ヨリ胚胎シ来リ、明治五年五月中府庁ヨリ積金ノ使用ヲ議シ、且之ヲ管理処弁セシムル為メ、府下有名ノ商人若干ヲ官撰シ、其始メハ営繕会議所ノ名ニテ建設シタルモノナリ、而シテ其後更ニ相詢リ、営繕会議所ハ名称ノ妥カナラサルヲ以テ、改メテ東京会議所ト称スルコトヲ請ヒ、広ク府下公共ニ関スル事務ヲ調理シタリ、其際府庁ヨリ交付セラレシ現金高ハ六拾七万円余ニテ、此金ハ第一ニ道路橋梁ノ修繕ニ供シ、其折遇々魯公子ノ来ルニ際シ、市中ニ乞児ノ多キハ見苦シトテ、養育院ヲ設ケテ之ヲ駆リ入レ、又ハ墓地ノ開墾瓦斯灯鉱油灯、或ハ現華灯ト云ヘルモノヲ作ル等、追々会議ヲ以テ其費途ヲ定メ、府庁ニ具申シテ其支給ヲ弁スルノ手続ナリ、又或ハ府庁ヨリ下問アレハ之ニ答弁スルコトモアリシナリ、但此時ニ於テ共有金ノ総額ハ実ニ幾許ノ高ニシテ、維新前ヨリノ計算ハ何等ノ都合ナリシヤヲ詳知スルニ由ナカリシハ、余ガ此演説ヲ為スニ於テ深ク遺憾トスル所ナリ、余ガ会議所ノ取締ヲ任セラレシハ、明治七年十一月ニアリテ、其十七日始メテ新場橋ノ傍、即チ今ノ坂本学校トナリシ所ノ会議所ニ出テヽ、当時ノ議員諸君ニ面晤シ、先ツ其共有金ノ景況ヲ承知シタルニ、曩キニ交付セラレシ六拾七万円ノ額ハ、各種ノ要費ニ供セシヲ以テ殆ント瑣少ノ額ヲ剰スノミナリシ、其節愚考スル所モアリテ、其筋ノ人ト相談シタルコトモアリシガ、尋テ八年五月ニ至リ、連々其費途モ嵩ミ来リ、遂ニ現金乏キヲ告ルニ近キコトアリテ、一時第一銀行・三井銀行等ヨリ一万円ツヽノ立替金ヲ得テ、僅カニ支弁スルノ有様ナルニ付、如此景況ニ立至リテ稍々心付キ、将来此金ノ散ラヌ様ニ保存ナシタ
 - 第12巻 p.453 -ページ画像 
ク、現ニ会議所所有ノ地所ハ若干アレトモ、地代ノ上リモ悪ルケレハ、之ヲ売ルニ如カズト決シ、府庁ニ建議シ、許可ヲ得テ、終ニ同年七月ヨリ悉ク所有地ヲ売却シ、乃チ四十七万円余ノ額ヲ得タリシナリ
 又此間ニ一事ヲ挿ミテ演述スベキコトアリ、会議所ノ議員ハ官選ニシテ現ニ政府ノ一部分ノモノナリ、官選ノ人ニシテ民有ノ財産ヲ議シ得べキニ非ス、宜ク体裁ヲ一変シテ新タニ真成ノ民会ヲ起スヘシトテ其法案ヲ設ケ、反復詳議シ、之ヲ府庁ニ請願セシカ、久シク其許可ヲ得サリキ、然ル上ハ無拠今日ノ性質ニテハ何分不十分ナルモノ故ニ、更ニ建議シテ、其体裁ヲ改正シ、縦令其議員ハ官撰ニ出ルモ、聊カ議事ノ体面ヲ具ヘ、規則ヲ設為シテ真ノ議会ヲ開カンコトヲ欲シ、其議員ノ増選ヲモ府庁ニ建白シテ、幸ニ其許可ヲ得タリ、其節マテハ、猶瓦斯灯現華灯商法講習所等ノ事務ヲ取扱ヒ居タリシガ、是ニ於テ議事ト行務トノ分界ヲ設ケ、更ニ其専任ヲ分課シタリシナリ
 九年ノ春更ニ議場ノ意見ヲ以テ、其行務ハ悉ク府庁ヘ還納シ、只会議ノ一事ニ止ルヘキニ決シ、之ヲ府庁ニ具申シ、其許可ヲ得タルニ付、同年五月廿五日ヲ以テ行務ニ属スル各項ハ都テ之ヲ府庁ニ納致シタリ、此時ガ乃チ当知事公赴任ノ際ナリキ
 此還納ニ際シ、計算ノ概略ハ玆ニ開申スベケレトモ、府庁ノ報告トハ稍々合ヌ所アルベシ、乃チ左ノ如シ
    収入ノ部
一金百拾六万五千〇拾円七拾九銭六厘
     内
  金六拾七万〇百三円拾壱銭九厘     正金及ヒ証書
  金四拾七万四千百六拾三円拾六銭九厘  地所売払代
  金弐万〇七百四拾四円五拾銭八厘    附属地売払ノ分
一金四万〇〇五拾八円三拾五銭八厘     利足勘定○按文参照
  此利息ハ第一国立銀行及三井組ヨリ一時借入金ノ利息ナリ
一金六万七千三百拾壱円五拾銭弐厘     附属地々料
一金七百弐拾三円八拾八銭七厘       附属地売払違約金等
一金四万九千五百弐拾四円三拾八銭     府庁ヨリ道路修繕ノ為下付高
  此内金四万九千百七拾壱円七拾七銭七厘ハ道路修築ノ支払
 合計金百三拾弐万弐千六百弐拾八円九拾弐銭三厘
     内
  仕払金合計金五万千四百三拾壱円九拾三銭弐厘
  差引残惣計金百弐拾七万千百九拾六円九拾銭壱厘
   支出之部
一金弐拾万七千弐百八拾五円六拾八銭三厘  学資金トシテ府庁ヘ納付高
     内
  金三万七千五百弐拾八円五拾弐銭五厘  芸妓賦金其他ニテ府庁ヨリ下付金
  差引金拾六万九千七百五拾七円拾五銭八厘府庁ヘ納メタル分ナリ
一金三拾四万九千七百六拾八円八銭四厘   道路営繕ノ為メ府庁ヘ上納高
 - 第12巻 p.454 -ページ画像 
     内
  金弐万千七百弐拾八円九拾弐銭五厘   府庁ヨリ漸次下付金
  差引金三拾弐万八千三拾九円拾五銭九厘
   此額ハ決議ノ上ニテ道路ノ為メニ支出セシ分ナリ
一金五万三千百弐拾六円七拾八銭八厘   養育院設立ヨリ九年五月マテ窮民賄ヒ諸費
     内
  金三万七百四拾壱円五拾九銭四厘   府庁ヨリ下付高
  差引金弐万弐千三百八拾五円拾九銭四厘
一金四万百四拾三円六拾八銭壱厘     墓地開墾諸費
     内
  金弐万九千弐百弐拾四円八拾四銭六厘 墓地売払代
  差引金壱万九百拾八円八拾三銭五厘
一金拾七万五百五拾六円六拾五銭八厘   瓦斯局建築及石炭買入其他支払高
     内
  金六千三百拾円九拾七銭       府下人民ヨリ取立タル分
  差引金拾六万五千弐百四拾五円六拾八銭八厘
一金三万六千四百三円弐拾六銭五厘    礦油灯建築費及石油代其他雑費
一金八千弐百八拾五円          現華灯器械買入代
一金八千五百弐拾五円八拾九銭弐厘    商法講習所諸費
     内
  金四千百六拾五円拾七銭       府庁ヨリ下付高及生徒授業料
  差引金四千三百六拾円七拾弐銭弐厘
一金九万弐百三拾七円九拾八銭弐厘    小野組預金滞残及消防人足半纏代其外口口立替金
一金七万千六百〇五円七拾弐銭壱厘    会議所起立以来役員給料其外諸雑費仕払高
 仕払合計金百〇三万六千九百三拾八円七拾五銭四厘
     内
  収納金拾弐万九千七百円〇三銭
 差引総計金九拾万七千弐百三拾八円七拾弐銭四厘
   外ニ
一金三拾壱万円             三井組及ヒ第一国立銀行ヘ定期預ケノ分
一金三万三千弐百拾三円六拾八銭七厘   第一国立銀行ヘ当座預ケ金高
一金弐万七百四拾四円五拾八銭      附属地売払残見積金高
  比較総計金百弐拾七万千百九拾六円九拾九銭壱厘
右之通ニテ収支差引ナシナリ、身代調ハ持参セサレトモ総高三拾万円以上四拾万円ニ近カルヘシ、之ニ瓦斯原資其他残地所等ヲ加ヘナハ凡七八拾万円ナルヘシト考フ、是ガ府庁ヘ還納スル時ノ勘定洗ヒ上ケノ処ナリ、其節之ヲ保存スル為メニ三ケ条ノ建白ヲナシタリ、第一ハ議事ノ体裁、第二ハ行務還納ノ手続キ、第三ハ資財保存ノ方法ナリ、既ニ是等ノコトヲ完了セシ後、会議所ハ単ニ府庁ノ下問ニ応シテ府下公共ノ利害ニ関スルコトヲ議スルノ一項ニ止マリ、其職分ヲ怠ラサリシガ、九年十二月ニ至リテ区総代選挙法ヲ布達セラレシニ付、始テ真成ノ民会創起ノ端緒タルヲ察知シ、閏位ヲ以テ永ク此会議ニ従事スベカラサルノ議ヲ決シ、同月廿日ヲ以テ府庁ニ上申シ、翌年二月ニ至リ其允許ヲ得テ之ヲ解散シタリ
 - 第12巻 p.455 -ページ画像 
曩ニ会議所ヨリ還納セシ各課ノ事務及共有金保存ノコトハ、爾来府庁ニ於テ調理ノ宜キヲ得、而シテ其民会ハ当時会議所議員ガ建言セシ如ク、遂ニ明治十一年ノ公布ニ依リテ始テ本年ノ府会ヲ起スニ至リ、且今日此十五区総代会議ヲ以テ共有金ノ議事ヲ開クニ当リテ、余ガ玆ニ従前ノ沿革ヲ当議員諸君ニ縷述スルノ栄ヲ得ルハ、実ニ良因好果トモ云フ可キコトニテ、旧会議所議員ノ歓喜何物カ之ニ加フベキ、是殊ニ余ガ旧議員一同ニ代リテ深ク諸君ニ謝スル所ナリ、若シ夫レ前ニ演述シタル事務ト計算トニ於テ、今日ヨリ之ヲ観レハ或ハ其宜キヲ得ザルモノナキヲ必トス可カラストイヘトモ、此ハ是時時勢《(衍)》ノ然ラシムルニ依ルモノニシテ、当時ニ在テハ勉メテ其完善ノ計ヲ尽シタリト信ゼシナリ、然リトイヘトモ、若シ其計算ノ不当ナル、処務ノ不順ナル等ノコトアリトセハ、請フ細カニ推問スル処アレ、余ハ喜テ弁明ヲ尽シ、詳悉ヲ厭ハサルベシ、但シ前ニモ言ヘル如ク、明治五年以前ニ係ル計算ノ如キハ知ルニ由ナキヲ以テ、或ハ之ヲ推問セラルヽモ遺憾ナガラ其答弁ハ致シ難ケレハ、諸君幸ニ其意ヲ諒セラルヘシ
余ハ共有金ノ沿革ヲ陳述スルコトハ玆ニ止リ、乃チ是ヨリ瓦斯局ノ始末ヲ概説スヘシ
抑モ瓦斯局ノ設ケ其起原ハ、明治五年ニ在リトイヘトモ、其実ハ明治四年二月瓦斯器械ヲ購求セシニ始リ、当時ノ知事由利公ノ命ニ由リ、新吉原町ニ設立スルノ目的ニテ外国ヘ注文シ、其器械ノ到着ナシタルトキハ已ニ前ノ詮議ハ変シテ建設スル能ハス、只深川ノ倉庫中ニ保存シ置キシカ、六年十二月ニ至リ、会議所ニ於テ、空シク之ヲ埋没スルハ惜ムベシ市中ニ建設シテ町々ヲ明クスルニ如カズトノ決議ニテ、点火費取立方等ヲ戸長ヘモ相談ナシタリ、其頃ハ色々ノ灯具アリテ、鉱油灯現華灯ナトヽテ各其便利アルトノコトナレバ、先ヅ之ヲ試ムヘシトテ、瓦斯灯ハ高島嘉右衛門ニ托シ、七年ノ半ニ至リ始テ府庁ヨリ瓦斯局敷地トシテ、芝浜崎町ノ地ヲ下付セラレタリ、又鉱油灯ハ松本金兵衛ナル者ニ任シ、東西仲通ヨリ通油町辺ニ四百八拾基ヲ設ケ、現華灯ハ只器械ヲ備ヘシノミ、着手ハ七年後マテ遷延シ、遂ニ建設スルニ及ハズシテ止ミタリ
右ノ如ク街灯ノ制ハ三科ニ分テ追々設置セシモ、其点火費徴収ノ方法ハ創建ノ始ニ於テ正確ナル調査モナカリシ故、已ニ点火スルニ及テ其費用ヲ課出スルニ由ナク、加之鉱油現華ノ両灯ハ将来ノ得失ニ於テ充分ノ計算ヲ得サルニ付、九年五月事務還納ノ前ニ、会議所ノ決議ヲ以テ右両灯ハ廃シタレトモ、瓦斯ノ一科ハ既ニ拾三万円ヲ費シタレハ、之ヲ併セ廃スルハ遺憾ノコトトテ更ニ増築シテ瓦斯元ノ製造ヲ多クシ、且其点火費ヲ低折シテ往々家内ノ私用ニ供シ、若シ尚不充分ナレハ郭内諸官省マテ引用ヲ請ヒ、以テ将来ノ維持ヲ図ランコトヲ稟請シテ、而シ《(テ脱カ)》点火費徴収法ハ街灯ヲ建置シタル町々ヨリ七分、他ノ町々一般ヨリ三分ヲ賦課シテ之ニ充用センコトヲ建議シタリキ
此時瓦斯局ノ経費ハ凡ソ金拾七万千五百五拾六円六拾七銭八厘ニシテ、乃チ行務還納ノ際ノ総計ナリ、還納ノ後ニ於テ鉱油現華両灯ヲ
 - 第12巻 p.456 -ページ画像 
廃シテ増瓦斯ノ工業ヲ起スコトハ稍々其緒ニ就クトイヘトモ、点火費徴収ノ方法ハ未タ以テ挙行スル能ハサリキ、既ニシテ十年一月ニ至リテ、地租減額地方費制限ノ聖詔アルニ当リ、点火費徴収ノ遂ニ行フヘカラサルヲ察シ、余ハ行務還納ノ後モ特ニ府庁ノ命ニ依リテ瓦斯局事務ニ関スルヲ以テ、為メニ府知事ニ建白シテ増瓦斯ノ挙ヲ廃セント欲セシナリ、是レ蓋シ当時家内引用ハ実ニ望人モ乏シク、街灯ノ点火費ハ到底徴収ス可ラサレバ、従令増築スルモ其費途回収ノ期ナカランコトヲ慮リテナリ、然レトモ府知事ハ別ニ深ク洞察セラルヽ所アリテ、増瓦斯ノ挙ハ前議ノ如クニ施行セラレ、街灯費ノ如キハ姑ク府税ヲ以テ瓦斯製造ノ実費ヲ補償シテ、一時其維持ヲ助ケ、且勉メテ家内引用ノ増加ヲ謀ルヘキトノ命アリ、因テ余モ飽クマテ引用ノ増進ニ尽力スヘシト答ヘタリキ、然リトイヘトモ当時府下ノ情状ハ、瓦斯ハ他ノランプ等ニ比較スルニ、頗ル費用モ多ケレハ、之ヲ厭フテ絶テ引用ノ為メニ求需ヲ増スノ景況ニ至ラサルヲ以テ、百方其需用ヲ増サシムルコトヲ勉メ、十年ニ至リ、今金・新富座・日報社等ニテモ引用シ漸々ニ増加シ、九年ノ思想トハ大ニ其趣ヲ異ニセリ、猶之ヲ勧奨センガ為メ、同年三月ヨリ瓦斯代価一千立方尺ニ付三円七拾五銭ノ処之ヲ減折シテ三円廿五銭トナシ、且家内引用ノ為メ取付ル支管其他ノ費用ハ月賦納ノ制ヲ設ケ、而シテ懇々瓦斯ノ功用ヲ説キ拮据黽勉怠ラザリシカバ、次第ニ家内引用ノ額ヲ増シ、今日ニ於テハ最初引用ノ数ニ比較セハ殆ト拾四倍ノ多キニ及ヒ、増築工業ノ未タ竣功セサルニヨリ却テ其需ニ応スル能ハサルノ実況ヲ見ルニヨリ、大ニ増瓦斯着手ノ晩ソカリシヲ、悔ルノ有様ナリ、家内引用瓦斯増加ノ比較ハ乃チ左ノ如シ
 明治八年三月一ケ月家内引用瓦斯
     弐万五千五百弐拾七立方尺
 同 九年
     五万八千八百八拾五立方尺
 同 十年
     拾壱万八千八百九拾六立方尺
 同 十一年
     弐拾四万五千〇弐拾立方尺
 同 十二年九月一ケ月
     弐拾八万七千六百三拾三立方尺
此十二年ニ至リ増加ノ少ナキハ、瓦斯元釜ノ造出ニ限リアレバ此上ニ超ル能ハザレバナリ、又此瓦斯局ノ計算ハ行務還納ニ際シテ供用スル原資ハ前ニ述ルカ如シト難《(雖)》トモ、明治十年三月マテハ街灯費ノ徴収ニ苦心セシ程ナリシニ、此時ヨリ実費ハ府税ヲ以テ補償セラレ且ツ家内引用ハ前ニ演ル如ク其収入高ヲ増シタレハ、其計算ハ乃チ左ノ如シ
 明治九年六月ヨリ十二月迄   金千八百三拾六円拾銭
 明治十年一月ヨリ十二月迄   金四千八百三拾八円四拾壱銭六厘
 明治十一年一月ヨリ十二月迄  金九千六百九拾円七拾三銭四厘
 明治十二年一月ヨリ六月迄   金六千弐百三拾八円三拾弐銭四厘
 同年七月ヨリ九月迄      金三千四百六拾六円五拾弐銭六厘
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 明治十二年六月迄一切ノ原資計算ハ、府庁ヨリ報告セラレシ如ク実ニ弐拾六万円余ノ巨額ニ上リ、而シテ増瓦斯竣功ニ至ルマテハ更ニ弐万円余ヲ要ストイヘトモ、此弐万円余ト云フハ最初増瓦斯ノコトヲ決シタル時ノ概算ニ依ルモノニシテ、爾来諸物貨ノ価位大ニ差異ヲ生シタレハ、当初ノ概算ハ已ニ其当ヲ失ヒ、且増瓦斯ハ郭内諸官省ニ引用セントノ見込ナリシニ、其後市中各家引用増加ノ景況アルト、郭内ヘ配置スルノ考案ハ故アリテ改正セザルベカラザルノ理由アルトニヨリ、今日ニシテ増築瓦斯竣功迄ノ費途ヲ予算セバ、其伏管ノ改増及ヒ各家取付ノ枝管手当等迄モ見積リ、更ニ五万円若シクハ六万円ノ増費ヲ要スヘク、而シテ此増築全ク竣ルハ大抵十三年二三月ノ頃ナルヘシト思考スルナリ、右ノ予算ニ依レハ其原資ハ更ニ増加シテ殆ント三拾五万円ニ満ルト云ヘトモ、此増築竣功ノ後ニ於テ、先ツ引用増加ノ数ト街灯在来ノ数トヲ合セテ毎月弐百万立方尺ヲ売却スルト見積リ、此弐百万立方尺トスル所以ハ、器械製出高ハ弐百七拾万立方尺ナレトモ漏出其他ノ減失ヲモ見込テ仮リニ此高ト立タルナリ、左スレバ街灯費ノ一基ニ付金三円八拾五銭余ヲ要スヘキ分ハ、既ニ府会ノ決議ニヨリテ地方税ヨリ徴収スルヲ得、而シテ各家点火費モ素ヨリ其徴収ニ懸念スル所ナキヲ以テ其計算ハ総金三拾五万円ニシテ、毎年収入スル点火料金七万八千円ト見積リ、内製造費用金三万九千円内石炭四千五百噸一噸ニ付凡八円五拾銭ナリ、主ニ高島ヲ用ヒ或ハ石狩又ハ庄内ヲモ用フ、他ハ用ニ適セズ、此代金壱万四千四百円、給料四千弐百円、通常営繕費ヲ差引金弐万〇四百円ヲ一ケ年ノ純益トス、又外ニコーク《(ル)》タール売払代三百円ヨリ五百円迄ナリ、然シ「レトルト」ノ営繕又ハ蒸気清浄器「メートル」等ノ修復ニ壱万円ヲ要ストスレバ、総差引全ク純益ハ金壱万千円内外ナルべシ、此方法ヲ以テ幸ニ維持ヲ誤ラサレハ、凡三拾五年ニシテ原資金全ク償還シ得ルノ割合ナリ、右ノ如ク計算ニ余裕ヲ得テ、曩キニハ其措置ニ苦ムノ瓦斯灯ナリシカ、今ハ通常ノ工業場タルヲ得テ其将来ニ利益ヲ見ルニ至リシハ、実ニ明治十年三月ニ於テ、当知事閣下ガ勇断シテ増瓦斯ノ挙ヲ経費困難ノ際ニ施行セラレ、且街灯費ヲ府税中ヨリ補償セラルヽト、及ヒ今春府会議員諸君ガ能ク此節ノ現状ヲ斟酌シテ、街灯費ヲ地方税ヨリ支弁スルニ決議セラレシノ二挙ニ籍ルモノニシテ、而シテ余ハ爾来此事ニ従ヒ、幸ニシテ今日営業計算共充分ノ見込アル演説ヲ為スヲ得ルハ、余ガ不敏トイヘトモ亦与リテ微労アルガ如キノ状ヲ呈スルニ付、之ヲ府知事閣下ト府会議員諸君ニ謝セサルヲ得ス、然リ而シテ後来此瓦斯局ヲシテ永ク府下ノ共有物トスルト、或ハ之ヲ売却シテ他ノ工業会社タラシメ其代価ハ共有金ニ加ヘテ更ニ公共ノ洪利ヲ謀ルトノ問題ハ、総代議員諸君宜シク熟慮セラルヽ所アルヘキヲ以テ、余ハ演説ヲ玆ニ止メ他ニ論及セサルベシ
 右ニ述ル所ヲ以テ共有金瓦斯局ノ沿革ハ已ニ其概ヲ尽シタリト存スアマリ長口上ニテハ却テ諸君ノ耳ヲ煩ハスヘシト玆ニ止メタリ、猶疑ヒアラハ質問アリテ可ナリ
○十七番福地源一郎曰 唯今渋沢氏ノ演説ニヨリテ、此共有金ナルモ
 - 第12巻 p.458 -ページ画像 
ノハ明治五年ニ至リ初メテ人民ノ議スル所トナリタリ、尤是トテモ十分ナル名代人ノ議スルニハ非サレトモ、旧会議所ニテ議シタル収支ノ顛末ハ明カニ了解ナリシト信ス、抑々此共有金ヲ議スルニ関係セシ者ハ大ニ困難シ、今日ヨリ見レバ或ハ彼ノ如クスルニモ及ハサリシト思ハルヽコトナキニシモ非サレトモ、当時ハ甚タ力ヲ玆ニ費セシモノナリ、又八十万人民ノ中ニハ或ハ当時議員ガ共有金ヲ私費シタルカノ疑ヒヲ存セサル人ナキニモアラサルヘシ、是モ亦敢テ其理ナシト云可カラズ、大体旧会議所ハ何ノ利益アリテ此金ニ関係セシヤ、今日ハ倶ニ議員タルノ栄誉ヲ負ヘハコソ此議場ニ登リテ議スルトイヘトモ、旧会議所ハ此栄誉アルニモ非ズ又利益アルニモ非ズ加フルニ讒謗交集ルノ有様タリ、併シナカラ具眼ノ人ハ自ラ其弁別モアルナルヘシ、扨明治四年以来旧会議所ニ於テ取扱ヒタルハ悉ク掃溜仕事ナレトモ、焉ソ知ラン、当時之ヲ保護セシニ非サレバ此金ハ悉ク水泡ニ帰スルアランモ計ル可カラス、已ニ之ヲ議スル権利モナク又之ヲ保護スルノ法律モナク、唯之ヲ維持スルハ府知事ノ精神ト旧会議所ノ精神相集リテ此議案ニ掲ル程ノ金額ヲ剰セシナリ、此金タルヤ先代ノ遺物ニシテ越中守ニ成立ツトイヘトモ、明治五年以来之カ番ヲスルモノナクハ今日アルニ至ルヲ得マシ、畢竟今日ハ旧会議所ノ賜物ヲ受クルノ時ナリ、前ニモ申ス如ク、十七番ハ関係スル所アルヲ以テ其演説ハナシ難ケレトモ、我々ハ賞罰ヲ分明ニスルガ主要ト存ス、万一不都合ナルコトアラハ之ヲ罰スルモ亦苦シカラス、幸ニ旧会議所ノ人モ今議員中ニアリ、遠慮ナク質問スベシ、一両人ニテ不足ナレバ幾人ニテモ呼出シテ可ナリ、若シ又其取扱ニ満足ナレハ、府下ノ名代タル我々ハ五ケ年間世話ニ預リタルヲ厚ク謝スルハ議員ノ職分ト存ス、尤拙者ハ与リテ主ナル分ニテ専ラ嫌疑ヲ避クレバ渋沢氏ニ向テ充分質問スベシ、玆ニ至リ旧会議所ノ人々モ大ニ安心スル所アルベシ、因テ併テ此儀ヲ演述スルナリ
○三十三番馬場半助曰 今日不計モ渋沢氏臨席アリテ、共有金沿革並ニ瓦斯局ノ顛末演説アリテ具サニ了解ナシタリ、追々番外ニ質間《(問)》スルコトモアレトモ此一事ハ真ニ満足ナリ、今日ニ於テハ深ク謝スル所ナリ
○十八番荒木政樹曰 本員是マテ此共有金ニ関係セサレハ其曲折ヲ心得サリシガ、唯今渋沢氏ノ演説ニテ初メテ其沿革ヲ承知シタリ、併シ是ハ数十年間ノ事ナレバ今日ノ演述ノミニテハ可否トモ申述ヘガタシ、金銀出納ノコト故明瞭ニアルベキハ勿論ナレバ、猶何トゾ明細ニ書抜キテ各議員ニ送付アリタシ
○番外一番銀林一等属曰 十八番ノ希望ハ、別ニ帳簿アレハ是ニ付テ見合セナハ具サニ了解セラルヽナラン、扨此共有金ハ、旧会議所ヨリ行務還納以来ハ府庁カ理事者トナリテ取扱ヒシナリ、此金ハ各員モ承知ノ通リ寛政以降凶荒ノ備ニ積立タルモノニテ、乃チ先祖ノ溜メタル遺金ナリ、当知事赴任ノ際還納トナリ、将来ノ維持方ニ深ク注意シ其消耗スルヲ惜ミ、ナルヘク之ヲ増殖スルノ見込ナレトモ其収入ハ全ク元金ヨリ生スル利子ノミナレバ、元金ヲ支出シナハ遂ニ空乏ニ帰スルヲ恐レ、其折ハ幸ニ民費ノ賦課モアリ随分都合モナル
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コトナレハ、在来共有金ヲ以テ成立《(セ脱カ)》シモノヲモ皆府税ニ移シテ其耗費ヲ救ヒシナリ、乃チ養育院・商法講習所・瓦斯局・墓地ハ共有金ニテ支弁セル主ナル仕事ニテ、其内養育院・商法講習所ヘハ多少府税ヲ下ケ渡シ置キシニ、今春府会ニテ地方税ニ転シ地方税科目中ニ引続キ、養育院ハ移転ノ後入院者ヲ増シ、此議案中二千円ノ補助金ヲ掲クトイヘトモ、此補助ハ此度限リノコトナリ、左スレハ常費ノ分ハ只瓦斯計リニテ、他ハ僅カノ数目ナリ、墓地費モ収入アリテ立換金ハ余程減シタリ、是迄成ルヘク新規ノ事ヲ起サス、会議ノ開クヲ待テ其方法ヲ議スル積リナリキ、又還納ノ金ハ、第一国立銀行ニ談シ六分ノ利ヲ七分弐厘ニ増シタレバ入額モ殖ヘタリ、而シテ取戻シタル金額ハ公債証書購求ノ見込、是ハ現金預ケヨリモ利子多ケレハナリ、先ツ如斯従前原資ヲ維持シ来リ、幾分カ支出ヲモ節制ナシタルハ議案ノ差引ニテ分明ナルべシ、帳簿モ沢山アリ、是ハ十八番ノ説ノ如ク遠慮ナク見合サルべシ
○四番大倉喜八郎曰 先刻ヨリ番外二番ノ演説シタル如ク瓦斯局ノ困難ハ固ヨリ、又十七番モ申述シ如ク共有金ノ有様ハ甚タ混雑セシモノナリシガ、当知事赴任以来大ニ保護ニ注意セラレ、旧会議所ハ乃チ今日アランコトヲ希望シ此好結果ヲ見ルヲ得タルハ実ニ可賀コトナリ、故ニ府民ニ代リ敢テ渋沢氏多年ノ苦心ヲ謝ス
○議長曰 番外ノ演述ハ已ニ了リタレトモ、議事規則未タ定マラサレバ議ニ臨テ不都合ナルベシ、故ニ食後ニハ右規則ヲ議定スべシ
○下略
  ○東京十五区会議ハ、明治十二年五月三十日、東京府布達甲第五十四号ニヨリ、府下十五区一般ニ係ル共有財産処分ニツキ自今十五区撰出ノ府会議員ノ会議ニ附シ議定セシムベキ旨達アリテ、コレニ基キテ招集、是日ソノ第一回会合ヲ開催ス、議事ハ
   (第一号)十二年度共有金原資収支予算
   (第二号)十二年度共有金収支予算
   (第三号)十二年度瓦斯局収支予算
   (第四号)恩賜金(七万円)及有志寄附金(二千八百六十円)ヲ衛生資金トシテ各区分配ノ件
   (第五号)養育院ヲ地方税ニ引継ク件
   (第六号)小野組預金ノ処分
   等ノ議案ノ審議ニシテ、アハセテ共有金従来ノ収支決算ヲ調査セリ、爾後明治十三年三月二十八日マデニ会合十六回、コレヲ議了ス。
   十三年度ヨリハ府会ノ区部会ト改ム。
  ○上掲栄一ノ報告演説ノ中
   『一金四万〇〇五拾八円三拾五銭八厘 利足勘定
     此利息ハ第一国立銀行及三井組ヨリ一時借入金ノ利息ナリ』
   ト云ヘルハ、後調査委員藤本精一ノ報告ニヨレバ「利足勘定トハ会議所起立ヨリ九年五月マテ預ケ金ノ利子ニテ、其内会議所ヘ借入レタル金ノ利子(二、二六〇円一五五。三井、第一国立両銀行ヨリ各一万円一時借入金利子)ヲ仕払ヒタル差引残ノ金額ナリ」トアリ(東京十五区会議事録第七号)。
  ○本款明治十三年三月二十二日ノ条(第四八一頁)参照。


東京十五区会議事録 自第六号至第九号 明治一二年(DK120057k-0005)
第12巻 p.459-461 ページ画像

東京十五区会議事録  自第六号至第九号 明治一二年 (東京府文庫所蔵)
共有金報告
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   瓦斯ノ部
○上略 瓦斯創設ヨリ十二年六月迄、経費総計金三拾壱万八千九百弐拾六円五拾八銭三厘、収入金五万八千六百円弐拾六銭壱厘、指引金弐拾六万三百弐拾六円三拾弐銭弐厘、是レ共有金ヨリ支出スル総額ナリ
瓦斯灯点火費ハ旧会議所及区戸長等協議シ、毎月費額ヲ折半シテ其線路ノ地主並表住居人ニ賦課セリ、然ニ八年六月マテ収入僅ニ金千百八拾九円七拾八銭五厘、其余ハ不納ニ属ス、故ニ到底此法ヲ以テ維持スヘカラサルヲ慮リ、追テ点火費賦課ノ良法ヲ得ルマテハ府税ヲ以テ支弁スヘキニ決シ、十年三月ヨリ十二年六月迄府税支出高金弐万六千六拾弐円拾八銭、竟ニ維持シテ今日ニ達シ、漸ク多少ノ贏利ヲ得テ負債支消ノ目途ヲ立ルニ至レリ
瓦斯増築ノ事ハ旧会議所ニ於テ議定セシ所ナリ、玆ニ増築ヲ要スル概由ヲ説ン、抑従前ノ建築ハ瓦斯五拾万立方尺ヲ製造スヘキ者ニシテ、目今街灯三百五拾基、此瓦斯四拾弐万千八百六拾立方尺ナレバ、実ニ街灯ノ用ニ供スルニ過ス、然ニ街灯需用ノ収入ノミヲ得テ此業ヲ維持スルハ頗ル困難ナリ、縦令姑ラク維持セラルヽ者トスルモ到底巨額ノ原費ヲ補償スルニ道ナシ、故ヲ以テ瓦斯弐百万立方尺ヲ製造スヘキ増築ヲナシ、専ラ各家ニ鬻クトキハ其贏利ノ増加スルニヨリ、為ニ原費ヲ補償シ、併セテ将来維持ノ道ヲ得ヘシ、是レ増築ノ起ル原由ナリ、抑瓦斯ノ光線ハ夐カニ鉱油ニ優リ危険ノ患尠ナキヲ以テ、人其効用ヲ熟知シ追々家内ニ引用センコトヲ希望ス、然ニ瓦斯局ニテハ多量ノ瓦斯ヲ製造スルモ、石炭ノ外別ニ費用ヲ要セサレバ、専ラ各家ニ鬻クノ贏利ト諸人ノ便益トヲ謀リ、漸次其量ヲ加ヘテ既ニ七拾四万九千五百四拾九立方尺街灯用四拾弐万千八百六拾立方尺家内用三拾弐万七千六百八拾九立方尺ノ製出ニ及ヘリ、其レ此ノ如ク五拾万立方尺ノ器ヲ以テ殆ント倍量ノ製造ヲナスカ為ニ、漏失ノ量モ亦頗ル夥多ニシテ、加ルニ危険ノ恐アレハ須曳モ猶予シ難キニヨリ、竟ヒニ瓦斯原併《(マヽ)》セテ弐百五拾万立方尺ニ増築ノ議ヲ決セリ、是ニ於テ将来街灯ヲ増設スルモ不足ナク、各家ニ鬻クモ亦余リアリテ、漸次原費ヲ支消シ、永遠維持ノ道ヲ得ルハ、専ラ此増築ニ期スル所ナリ、増築予算費額金拾万五拾八円三拾三銭、是ハ最初丸ノ内ヘ街灯建設ノ積ヲ以テ調査セル金額ナリ、然ニ猶又将来ノ便益ヲ慮リ其線路ヲ変更シ、為ニ金壱万五千円程モ減省スヘキノ処、瓦斯ノ器械ハ舶来ニシテ洋銀相場ノ非常騰貴及ヒ運送増費等ニヨリ、費額ノ超過ヲナスモ亦固ニ已ヲ得サル者ナリ、是ニ於テ線路変更ヨリ減省スル金員ト、洋銀相場ノ騰貴等ヨリ超過スル金員トヲ比較スレハ、竟ニ最前ノ目論見金高ニ復セリ
    共有金ヨリ瓦斯局ヘノ貸金高
一金三拾壱万八千九百弐拾六円五拾八銭三厘 漸々貸附高
      内訳
 金拾三万三千六百六拾四円六拾五銭五厘   瓦斯局創立以来諸器械費
 金四千八百弐円弐銭六厘          同器械修繕費
 金七千六百六拾八円六拾壱銭六厘      同地所買入及家屋建築並営繕費
 金弐千四百三拾五円九拾弐銭弐厘      各家内ヘ引用メートル迄枝管埋込費
 金七万千五百拾弐円四拾八銭壱厘      創立ヨリ十二年六月マテ点火費
 - 第12巻 p.461 -ページ画像 
      此訳
  金三万九千六百九円拾五銭五厘      石炭費
  金千八百五拾六円四拾五銭        製薬費
  金壱万四千五百五拾円五銭七厘      役員給料
  金壱万千六百弐拾七円七拾六銭七厘    諸傭給料
  金三千八百六拾九円五銭弐厘       需要費
 金壱万九千三百三拾九円五拾銭       外国人傭給料
 金七万九千五百三円三拾八銭三厘      瓦斯増築費
一金五万八千六百円弐拾六銭壱厘      漸々償却高
      内訳
 金弐万六千六拾弐円拾八銭     明治十年三月ヨリ同十二年六月迄街灯点費府税ヨリ補助
 金三万弐千五百三拾八円八銭壱厘  創立ヨリ明治十二年六月マテ各家内ヘ瓦斯並テールコーク売払代
  指引
 金弐拾六万三百弐拾六円三拾弐銭弐厘
    外ニ
  金弐万五百五拾四円九拾四銭七厘    瓦斯増築費渡残
合計金弐拾八万八百八拾壱円弐拾六銭九厘  瓦斯局負債
   但此額ヲ漸々償還スルニ本年瓦斯局ノ益金壱万弐百七拾五円余ヲ以テスレハ、凡ソ二十七ケ年余ニシテ全消ニ至ルヘシ
    外
  金壱万四千百八十六円九拾弐銭六厘   瓦斯家内取付器械代一時繰替
  金壱万弐千弐百四拾七円弐拾九銭七厘  同 石炭代一時繰替


東京十五区会議事録 第四号(DK120057k-0006)
第12巻 p.461-463 ページ画像

東京十五区会議事録  第四号     (東京府文庫所蔵)
東京十五区会議事録第四号
 明治十二年十一月一日午後第四時二十分開議
      闕席   大槻東陽      山中市兵衛
           大倉喜八郎     渡辺治右衛門
           小木曾富蔵     酒井忠彰
           奥山長右衛門    福沢諭吉
      不参   丸山伝右衛門    山中松五郎
           安田善次郎     西村勝三
○中略
○議長曰 是ヨリ第三号議案ニ取掛ルベシ、委員ヨリ調査ノ趣ヲ報道スレバ其後ニ質問アルベシ
○三番辻純市曰 本員並ニ十八番十三番議員ハ瓦斯局調査委員ヲ命ゼラレ、一昨日来具サニ調査シタレバ其要略ヲ報道スベシ、但此原案トハ多少ノ差異アリ、其廉ハ帳簿ヲ撿査スルニ、先キニ渋沢氏ノ陳述ノ如ク弐百五十万立方尺ノ増瓦斯新築ノ折リ、其頃傭ヒ置キシ外国人「ペレゲレン」ノ見積リ諸費ハ乃チ金拾万五拾八円三拾三銭ヲ要シ、此金ヲ漸々ニ支出シ、尚残金弐万五百五拾四円九拾四銭七厘ノ額ヲ剰セリ、而シテ原案ニハ既ニ是ヲ渡シタルモノト見做シ、之ヲ除テ予算ヲ立テ、瓦斯局ノ帳簿ニハ未ダ受取ラヌ振ニ記載セリ、是其相違ヲ生ズルノ点ナリ、又共有金報告ノ末ニアル壱万四千百八
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拾六円九拾弐銭六厘並ニ壱万弐千弐百四拾七円弐拾九銭七厘ノ繰替金ハ、府庁ノ勘定ニテハ十二年度ニ繰リ越シ、瓦斯局ニテハ十二年度ニハ加ヘ置カズ、是又相違ノ点ナリ、如斯簿記ノ組方ニ異同アルモ、併シ実際ヲ算当スルニ決シテ相違ノ廉ナク確実ナルモノナリ、乃チ瓦斯局ニテ実際ノ計算ハ
  一金弐拾五万弐千弐百三拾八円七拾七銭七厘  元金勘定
  一金三万弐千五百八拾七円四拾九銭壱厘    府庁勘定
   二口合計金弐拾八万四千八百弐拾六円弐拾六銭八厘
  一金千百八拾九円七拾八銭九厘  市街ヨリ取立点火費府庁ヨリ各区ヘ下渡シ分更ニ損金ノ部ヘ記入
  一金四百七拾七円五拾銭〇八厘  六月分石炭代並ニ製薬代振替上納ノ分
  一金弐百六拾六円九拾八銭     右之外振替上納同断
 此三口ハ瓦斯局ニテハ七月分ナレトモ、府庁ノ調ハ六月ニ組込アリ
  総計金弐拾八万六千七百六拾円〇五拾四銭五厘
 是ハ乃チ瓦斯局ニテ十二年六月三十日マテ支出ノ精算ナリ
 此遣ヒ払ヒ巨細ハ左ノ如シ
  一金拾壱万三千四百八拾円弐拾弐銭壱厘 新旧竈二ケ所「レトルト」三区外ニ器械庫四ケ所雑庫二ケ所其他附属品
  一金九万七千四百九拾四円九拾三銭   点火諸器械
  一金九千四百四円六拾四銭六厘     家内引用小器械取付小管ランプ等
  一金弐百七拾五円           所有地券面
   此地券ハ瓦斯局総坪四千三百弐拾四坪弐合ノ内南隅切坪百三拾坪ハ乃チ同局ノ所有地ニシテ是其地券ナリ、余ハ悉ク無税拝借地トス
  一金百六拾弐円七拾銭         家具
  一金六千五百六拾七円         家屋 本局並附属地長屋門番所
  一金四拾弐円八十九銭五厘       器具
  一金壱万三千五百弐拾四円九拾九銭五厘 石炭石灰緑礬粘土鋸屑鉛巻肌現在品
  一金四千弐百弐拾弐円五拾弐銭七厘   家内取付貸金
  一金百五拾壱円拾弐銭五厘       瓦斯代未済
  一金千七百四拾九円拾五銭五厘     金銭有高
  一金三万七千七百五拾壱円弐拾七銭四厘 十一年繰越損金
    概略如此
 又十一年十二月ノ調損金高ハ三万八千六百九拾九円七拾七銭五厘ナリ、十二年六月ノ調ニ至リテハ三万七千七百五拾壱円弐拾七銭四厘トナリ、凡ソ九百四拾八円五拾銭〇壱厘ヲ減却セリ、其後七八九三ケ月ハ大ニ益アリ、九月ノ調ハ三万四千〇八拾五円三拾三銭九厘ニシテ、此三ケ月ノ益金三千六百六拾五円九拾三銭五厘トナル、斯ク大ニ利益ノ進ミシ所以ハ、当六月以前ハ全ク不足丈ケノ下ケ金ヲ府庁ヨリ請取リシガ、六月以後ハ地方税ヲ以テ、支弁スルニ依レルナリ、又同所ノ実際ヲ撿査スルニ、瓦斯弐百五拾万立方尺ヲ新築スルハ旧会議所ノ決議ニ出ツルノミニ非ス、渋沢西村両氏ヨリ維持方法ヲ建議シ、此上旧丸ノ内ヘ引ク目論見ニテ知事公ヨリ故内務卿ヘ伺ハレ内実聞済ニモナリシガ、其後詮議替リテ市中ニ売渡スコトニナリタルナリ、丸ノ内ヘ引クナレハ枝管ニテ事足レトモ、市中トナリテハ多量ノ瓦斯ヲ導クコト故ニ大管ヲ伏セ替ヘサルヲ得ス、因テ其
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実際ハ設ヘ不足金弐万五百円ヲ渡シタリトテ十分永続トハ見込ミカタシ、如何トナレハ「ペレゲレン」ノ積リハ、三ケ年以前ノコトニテ、第一諸色ノ価モ同シカラス、又枝管ト違ヒ大管ヲ用フルニハ其費用モ大ニ異ナレバナリ、故ニ今会議ニ掛クルモ更ニ一層上ノ工夫ヲ加ヘザレハ、全ク表面計リノ討論ナルヘシト存ス、併シ是ハ本員一個ノ見込ナリ、尚又渋沢氏ヘモ質問シタルニ、諸色ノ騰貴場所ノ変遷等ニテ莫大ノ入費ナレバ永続ハ所詮覚束ナシ、但シ弐百五拾万立方尺ハ已ニ落成シタレバ夫ニ従ヒ漸々管ヲ直サ子バナラズ、是ニモ若干ノ入費アルベシ、到底十万五百円ニテハ不足ト云フコトナリ先ヅ報道ノ趣キハ概略如斯トイヘトモ猶質問アラパ《(バ)》答弁致スベシ
○十七番福地源一郎曰 是ハ最初ノ積リノ悪シキニモアラズ、後来ノ変遷ニ依テ然ルモノナリ
○三番辻純市曰 然リ時勢ノ然ラシムルナリ、今是ヲ見切ルベキヤ否ヤト存ズルナリ
○十七番福地源一郎曰 議案上予算ノ通リ収入ハ相違ナクアルヤ
○三番辻純市曰 相違ナシ、議案ニハ申分ナシ
○十二番藤本精一曰 贏余ハ実ニ是丈ケアルヤ
○三番辻純市曰 只今ノ形ニテハ是丈ケアリ
○十二番藤本精一曰 此局長慰労金ハ役員中ノ局長ナルカ、固ト役員中ニ含ムベキモノニハナキヤ
○三番辻純市曰 役員月給五拾円ノモノ壱名ハ器械師、壱名ハ取締ナリ、慰労金ハ別ニ尋問セザリシガ渋沢西村等ニ多少報フルモノト考フ、又「ペレゲレン」ノ傭ヲ解キタル後ハ、一日五円ニテ月ニ九日ツヽ英人壱人ヲ雇ヒ、乃チ四拾五円ヲ支払ヒ、是ニ相談スルトノコトナリ
○十二番藤本精一曰 局長ト役員トハ其人異ナルヤ
○三番辻純市曰 器械師取締ト局長トハ自ラ異ナリ
○十七番福地源一郎曰 金弐拾八万六千云々ト三十壱万云々ト収支差引合ハス、今一応詳カニ陳述アリタシ
○三番辻純市曰 金五万八千六百円弐拾六銭壱厘ハ漸々償却ニナリタル分、又壱万四千云々ト壱万弐千云々トハ、瓦斯局ニテハ借債ニ加ヘ、府庁ニテハ除キテ計算セリ、是差違ノ所以ナリ、先ツ三拾壱万八千九百弐拾六円五拾八銭三厘ノ内引ク五万八千六百円弐拾六銭壱厘、残リ弐拾六万三百弐拾六円三十弐銭弐厘、是ニ壱万四千百八拾六円九拾弐銭六厘並ニ壱万弐千弐百四七円弐拾九銭七厘《(拾脱カ)》ヲ加ヘ、合計弐拾八万六千七百六拾四銭五厘トナル、右ニテ合算ナリ
○十七番福地源一郎曰 具サニ了解セリ、委員ニ対シ深ク調査ノ労ヲ謝ス
○議長曰 他ニ質問ナキ様ナリ、本日ハ是ニテ散会
 時ニ午後第八時ナリ


東京十五区会議事録 第五号(DK120057k-0007)
第12巻 p.463-473 ページ画像

東京十五区会議事録  第五号     (東京府文庫所蔵)
東京十五区会議事録第五号
 明治十二年十一月四日午後第四時十五分開議
 - 第12巻 p.464 -ページ画像 
      欠席   堀田正養       福沢諭吉
           荒木政樹       大槻東陽
           渡辺治右衛門     大倉喜八郎
           奥山長右衛門     丸山伝右衛門
           轟道賢        比留間安五郎
           安田善次郎
      不参   山中松五郎      西村勝三
○三番辻純市曰 各員ニ報道ス、本日議長ハ妻室ノ所労ニ付出頭ナシ難キ趣、又副議長モ面部ノ腫物痛ミヲ発シ出頭叶ハサル趣申報アリ就テハ議事規則ヲ照ラシ仮議長選定ノ上、開議然ルヘシト存スルナリ
○二十番芳野世経曰 三番議員仮ニ議長席ニ着テ仮議長ノ選挙ヲ取扱フヘシ
○十一番川島喜三郎・二十二番酒井忠道・三十二番太田次郎並曰 前議ニ同意ナリ
 於是三番議員辻純市仮ニ議長席ニ上ル
○仮議長辻純市曰 本員ハ瓦斯局調査委員ナレバ仮議長選挙ニハ除カルベシ、右ノ心得ニテ各員投票アルベシ
  投票十九枚ノ内
    十五枚 藤本精一
○仮議長辻純市曰 十二番議員多数ニ因リ本日ノ仮議長タルベシ
 於是三番議員ハ十二番議員藤本精一ト相代
○議長藤本精一曰 各員ノ選挙ニ因リ本日ノ仮議長ヲ辱フス、扨本会ノ前ニ於テ報道スべキモノアリ、過日議長ヨリ府庁ヘ伺ハレシ廿五番議員山中松五郎ノ件、左ノ如ク府知事ヨリ達セラレタリ
  十五区撰挙議員山中松五郎儀其会招集ノ当日出頭不致旨届出ニ付取調候処、本人病気中家族ノ者招集書不相示為其不参致シ候儀ニテ、無故招集ニ不応訳ニ無之候条、此旨為心得相達候事
  明治十二年十月三十一日 東京府知事楠本正隆
 又曰、本日ハ第一号議案ヨリ始ムヘキ筈ナレトモ、都合アレハ先ツ第三号議案ノ第一次会ヲ開クヘシ、其総体ニ付質疑アラハ調査委員三番議員ニ問ハルヘシ
○三十二番太田次郎曰 調査委員ニ問フ、瓦斯局ノ地所四千三百弐拾四坪ノ内百三十坪ヲ引テ其外ハ無税トノコトナレトモ右ハ官有地ナリヤ
○三番辻純市曰 然リ、同所ハ官有地ト聞及ヒタリ
○三十三番馬場半助曰 瓦斯局ノコトハ前会調査委員ノ報道モアリシガ尚心得ニ問フヘキアリ、局長慰労金五百円ト云ハ役員月給五拾円二名ノ内ヘ給スルカ、又ハ二名ノ外ニ給スルカ、局長ト称スルハ何人ナルヤ
○三番辻純市曰 三十三番ノ問ヒ金五百円ノ慰労金ハ、乃チ渋沢栄一氏局長ナレハ是ニ給スルナリ、粗々説明書ニモ見ヘタリ
○三十三番馬場半助曰 然ラハ渋沢氏ハ義務ニテ局長ヲ勤ムル故カ
○三番辻純市曰 然リ
 - 第12巻 p.465 -ページ画像 
○三十三番馬場半助曰 支出ノ部給料三千百五拾円ノ役員ハ府庁ノ進退スル所カ、又ハ局長ノ進退スル所カ
○三番辻純市曰 府庁ヨリ命ゼラレシモノニハアラズト存ズ
○三十三番馬場半助曰 然ラバ渋沢氏ノ権限ニアルモノカ
○三番辻純市曰 役員ノ進退ハ調査ノ限ニアラズ、故ニ夫マデハ取調べズ
○三十二番太田次郎曰 番外ニ問フ、該地所ハ官有地ノ由、正租並ニ五分一ノ地方税ハ課セヌヤ、又百三十坪ニモ国税地方税ナキヤ
○番外一番銀林一等属曰 今ノ制度ニテハ課税ナシ、但地方税ハ七拾三円雑費ノ内ニ籠レリ
○九番多羅尾光応曰 五百六万弐千三百二十立方尺ノ瓦斯燃消高ハ一ケ年ノ総高カ
○三番辻純市曰 然リ
○三十二番太田次郎曰 指引残金壱万弐百余円ヲ全ク共有金ヘ償還シタル末ニ瓦斯局ハ如何ナルヤ
○番外一番銀林一等属曰 瓦斯局ヨリ負債ヲ共有金ヘ完償シ了レハ、該局ハ一箇純粋ノ共有物トナルナリ、年々借用ヲ返シ残ル所ガ乃チ該局ノ真価ナリ
○十一番川島喜三郎曰 番外ニ問フ、壱万余円ヲ償還スル様ナリシハ何年以来ナルヤ
○番外一番銀林一等属曰 乃チ本年ヨリ初メテ入ルナリ、此有余ハ当十二年ヨリ初メテ生シタルモノナリ
○十九番鹿島清四郎曰 指引残金壱万弐百余円ハ、前ノ報告ニ見ヘタル渡シ残弐万五百余円ヲ払ヒ切ラズハ此有余金ヲ生セヌカ
○番外一番銀林一等属曰 残費ヲ渡シ切リテ増瓦斯ハ悉皆成功スル筈ナリ、是ハ現時ノ計算ニテ成功以後ノ利益ハ未タ計算セズ
○三十三番馬場半助曰 共有金ヨリ瓦斯ヘ貸シタル合金二十八万余円ハ、余分ノ益金ヲ以テ返ストキハ必ス二十八年ヲ経サレハ全ク返セヌヤ
○番外一番銀林一等属曰 収入高今日ノ如クナレハ乃チ二十八年ヲ経過スル割合ナレトモ、此内ニハ増瓦斯ノ費額拾万五百円モ計入シタルモノナレハ、此増瓦斯ヲ売出セハ、局長ノ説ノ如ク今ノ五拾万ヨリ弐百万立方尺乃チ五倍ノ売高ナレハ七万八千円トナル、而シテ入費ハ左程ニハ掛ラス、焚方雇人等ハ少シ焚クモ多ク焚クモ同様ニテ必シモ増雇ニ及ハス、只石炭代ヲ増スマテノコトナリ、其利益ニ於テハ次第ニ進テ若干ノ数ニ至ルヘシ、但シ現時ノ計算ニテハ二十八年ヲ経レトモ、増瓦斯ノ売レ次第ニ年限ハ促ルト知ルヘシ、二十八年ノ後ニハ全ク二十八万円ノ一箇工業場ガ残リテ、十五区ノ共有物トナルナリ
○三十三番馬場半助曰 具サニ了解セリ
○番外一番銀林一等属曰 各員ノ為メニ更ニ説明スルコトアリ、此瓦斯前途ノ費用ハ物価ノ変遷モアレバ今ヨリ予定シガタケレトモ、過日渋沢氏ノ申述ベタル如ク、従前ノ瓦斯竈ハ五十万立方尺ニテ七十万立方尺ヲ焚キシナリ、然ルニ今新ニ二百万立方尺ヲ増築シタレト
 - 第12巻 p.466 -ページ画像 
モ、必ズ一時ニハ売消シ得マシ、若シ悉皆売消スレバ乃チ七万八千円トナル、其内石炭代三万九千円、役員給料壱万四千円、通常入費四千円ハ七万八千円ノ内ヨリ支出シ、引残リ弐万千円ナリ、此内又非常ノ変ニテ瓦斯竈ノ破損ヲ生シタル節ノ予備ニ壱万円ト見込ミ、全ク残壱万千円ガ乃チ純益ナリ、併シ増瓦斯ヲ悉ク売ルニハ、凡ソ三拾五万円ヲ全費トセザレバナルマジトハ局長ノ見込ナリ、主任者ノ見込ニテハ壱万千円ヲ利ト見レバ、年三分ノ利ニ当ルべシ、今石炭代壱万円ナレバ、之ヲ三倍スレバ三万円、給料モ倍、入費モ倍ト見テ凡ソ壱万三千円許ナルベシ、而シテ渋沢氏ノ云フ所壱万円ノ予備金ハ充分ヲ見込タルモノ故、是ヲ凡ソ四千円許ニテ事済ムモノトスレバ、六千円ノ残リ、都合三万五千円ノ利益トナル、乃チ元金ノ一割ニ当ル、右ハ前途ヲ見越シタル論ナレハ、必ス動カヌトハ云ヒガタケレトモ、家内引用ノ瓦斯次第ニ売増セハ、遂ニハ意外ノ利益モアルニ至ルヘシ、今ノ計算ニテハ二十八年ヲ経テ完償スル積リナレトモ、左マテ入費ヲ要セヌモノ、予備金モ《(壱脱カ)》万円ヲ要セヌモノトスレハ、其年限以内ニ已ニ若干ノ利ヲ見ルニモ至ルヘシ、主任者ノ見込ハ如此
○議長曰 質問モ粗々尽キタラン、是ヨリ惣体議ニ取掛ルヘケレハ各員発議アルヘシ
 書記朗読
 第三号議案
  明治十二年度瓦斯局収支予算
   収入ノ部
一金弐万九千六百三拾壱円八拾九銭
   内訳
 金壱万六千四百五拾弐円      街灯三百五拾六基ノ点費地方税ヨリ収入
  但瓦斯燃消高五百六万弐千三百弐拾立方尺、壱千立方尺ニ付金
   三円弐拾五銭ノ割
 金壱万弐千七百七拾九円八拾九銭  家内瓦斯売払代
  但瓦斯燃消高三百九拾三万弐千弐百七拾立方尺ヲ以テ積算ス
   価同断
 金四百円            コークテール売払代
  支出ノ部
一金壱万九千三百五拾六円拾五銭六厘
   内訳
 金三千百五拾円         役員給料
     此訳
   金千弐百円          月給五拾円弐名
   金三百六拾円         同三拾円壱名
   金四百八拾円         同弐拾円弐名
   金弐百拾円          同拾七円五拾銭壱名
   金三百六拾円         同拾五円弐名
   金五百四拾円         同九円五名
 金弐千弐百弐円         定雇給料
 - 第12巻 p.467 -ページ画像 
      此訳
    金百弐拾円          焚方頭取壱人 月給金拾円
    金百弐円           同助壱人 同金八円五拾銭
    金三百八拾四円        焚方四人 月給壱人ニ付金八円
    金百八拾円          同並弐人 同金七円五十銭
    金百弐円           点消方頭取壱人 同金八円五十銭
    金六百三拾円         点消方七人 月給壱人ニ付金七円五十銭
    金弐百四円          鍛冶方頭取壱人 同金拾七円
    金九拾円           鍛冶方頭取並壱人 同金七円五拾銭
    金百拾四円          人足取締壱人 同金拾弐円五十銭
    金六拾六円          土練人足壱人 同金五円五拾銭
    金百弐拾円          門監並夜回リ弐人 同金五円
    金六拾円           小使壱人 同金五円
  金四百四拾六円弐拾弐銭五厘   諸雇給料 但大工石工鍛冶方人足等
  金六百四拾九円六拾弐銭四厘   需用費
      此訳
    金弐拾円           焚方手袋 九拾六組
    金六円            街灯用布代
    金百五円七拾八銭八厘     製造用綌布代
    金八拾五円九拾銭五厘     同枠及釘ノ類
    金拾五円八拾銭        石炭運送用籠類
    金弐拾五円八拾壱銭五厘    点消人雨桐油及笠ノ類
    金八拾三円三拾銭       同印半纏ノ類
    金三拾円四拾八銭三厘     製造用古布代
    金三拾八円九拾弐銭三厘    諸用紙
    金八拾四円五拾四銭八厘    焚炭ノ類
    金五拾七円拾八銭       水油蝋燭ノ類
    金拾八円弐拾五銭       夜回リ夜食料
    金七拾六円六拾三銭弐厘    諸雑費
  金百四円八拾銭         製薬費
  金九千七百八拾壱円八拾九銭三厘 石炭費
  金弐千六拾九円八拾五銭五厘   器械修繕費
  金五百円            局長慰労金
  金四百五拾壱円七拾五銭九厘   営繕費
 収支指引
  金壱万弐百七拾五円七拾三銭四厘  贏余
   但此額ヲ以テ共有金元資ヘ償還スヘシ
○三十三番馬場半助曰 瓦斯ノ事ニ付本員聊カ意見アリ今爰ニ陳述スヘシ、一体此共有金ハ寛政以来地主ノ積金ニテ瓦斯等ニ用費スヘキモノニハナカルヘキニ、最初旧知事由利公吉原ヘ建築ノ見込ニテ高島嘉右衛門ヘ委托シテ買入レラレタルヨシ、其以来大久保楠本二公ヲ経テ乃チ今日ノ景況トナリ、近時ハ又家内引用瓦斯モ次第ニ増ス姿トハナレトモ、実ハ大体ノ趣意柄ガ違ヒタルモノト存ス、然レトモ今更拠トコロナケレハ、何卒仕入レシモノヲ精々売リ捌キテ二十
 - 第12巻 p.468 -ページ画像 
八年ヲ経ヌ内ニモ共有金ヘ取戻シ、救恤ノ一途ニ帰センコトヲ希望スルナリ、扨先年廃セシ新シ《(衍)》橋外ノ町会所ハ、凶荒又ハ水火等ノ大災アル毎ニ此会所ヨリシテ施与物ヲ散給セラレタリ、其掛リハ十人衆ト唱ヘシモノニテ、其下ニ名主年番ヲ以テ出頭シ事務ヲ取扱ヒシナリ、其十人衆ト云ハ各々大家ノ戸主ナレハ自ラハ出頭セス、三十両又ハ二十両ノ給料ヲ与フル手代ヲ差出シテ代理セシメタレハ、此給料毎歳二三百円ヲ費シタルヨシ、而シテ町奉行所ヨリ十人衆ヘ賜ハル褒美ト云ハ年末ニ僅カ銀十枚ナレハ、今時ノ金ニシテ七円十六銭許ニモ当ルヘシ、如此性質ノ積金ヲ瓦斯ニ支用シ、二十八万ノ大額ヲ費シタルハ以ノ外ノコトナレトモ今日トナリテハ致シ方モナシ併シ幸ニ渋沢氏其外福地吉川以下諸氏ノ尽力ニテ、将来共有金ノ保存並ニ瓦斯ノ維持法モ立チタレハ何卒折角仕入レタル代物ヲ調整シ置キ、其末相応ノ望人ヲ見付ケナハ該局ヲ売却シタル方然ルヘキカト考ヘタリ、扨先例ヲ尋レハ、天明天保ノ饑年ニハ新橋ヨリ高縄迄ノ間ニ一日三十余人ノ餓莩アルニ至リシトノコトナレトモ、其節ハ僅カ米価百文ニ弐合半位ナリ、近来ノ米価非常ニ騰貴シタルガ為メニ昔時ヲ思ヒ遣リテ、終ニ町会所ヲ廃セラレシヨリ大切ノ積金ヲモ失ヒタル様ニ心得タルモノモ多シ、然ルニ此度本会ヲ開カレタルニ付テハ、猶又窮民賑恤ノ方法モ立ツヘクト予想シ居ルモノアリ、故ニ何卒此共有物ハヨキ頃ニ見切テ売却シ、其金ヲ以テ義金ヲ取立テ非常ノ予備ニ供シタキガ本員ノ精神ナリ
○議長曰 三十三番ハ本案ノ総体ニ付テハ異議ナキト云カ
○三十三番馬場半助曰 然リ、原案収支ノ委細ハ未タ熟知セサレトモ大凡ソ不可ナカルヘシ
○三十二番太田次郎曰 収入支出ヲ分ケテ議スヘキヤ如何
○議長曰 総体ニ係リシコトハ収支ヲ区分セスシテ可ナリ
○三十二番太田次郎曰 雑費七拾六円六拾三銭弐厘ノ内ニ地租五分一税モ混シ居ルトノコト、是ハ分別シテ費目ヲ立タル方然ルヘキ、然ラサレハ雑費ノ高多ク見ヘテ宜シカラス
○十三番山中市兵衛曰 国税地方税ヲ区分スルノ説ハ誠ニ少数ノコトナレハ雑費ニ組入レタルナルヘシ、原案ニ従テ差支ナシ
○三十二番太田次郎曰 大切ノ地租等雑費ニ混入スルハ不可ナリ、判然著ハシ置クヘシ、殊ニ弐百七十五円ナレハ少数ニモアラヌナリ
○十三番山中市兵衛曰 弐百七拾五円ハ買入代ナラン
○三番辻純市曰 然リ買入高ナリ
○九番多羅尾光応曰 原案収支トモ拠ナキモノト考ヘラル、且三十三番モ強チ瓦斯工業ヲ不可ト斥シタルニハアルマシ、只金ノ性質ニ於テ瓦斯ニ用ユヘキモノニアラスト云ヒシナラン、併シ三十三番売却ノ論ハ至極尤ナレハ賛成致スヘシ
○議長曰 三十二番ノ議ハ逐条ニ於テ発スヘシ
○十一番川島喜三郎曰 三十三番ノ意見ハ尤ナレトモ今更貸シタルモノヲ俄カニ売ルコトモナルマシ、且ツ瓦斯ハ都府ノ粧飾ニ設クルモノナレハ、地方税ヨリ支出シテ甚タ適当ト思ハル、但義倉ノ説ニ於テハ本員モ実ニ賛成ナリ
 - 第12巻 p.469 -ページ画像 
○十六番青地四郎左衛門曰 果シテ瓦斯局ヲ売却センニハ、余リ利害ヲ論シ誥《(詰)》メ評判ヲ落シタラハ自然望ミ人モ少ナカルヘシ、且ツ今日ノ現況ニテ考フレハ瓦斯モ左マデ不割ニモアルマシ、最初造立シタル人々モ此金ヨリ支弁スヘキモノカ支弁スマジキモノカト云位ノコトハ承知ノ上ノコトナルヘシ、然ルヲ今ニ至リ彼是論スルハヤヽ影響ニ渡ルニ似タリ、又積穀ノ説ハ所詮七十万ヤ八十万ニテ弁シ得ヘキコトニアラス、第一倉廩ノ造営ヨリ鼠食ヤ雨漏ヤニテ年々ニ消耗スルモ莫大ノコトナリ、其考ヘモナク着手シタリトモ凶歳予備ナトト唱ヘル程ノ蓄積ハ成シ得マシ、米穀ハ最モ保チ難キモノニテ、従前町会所ノトキハ積金数百万円モアリテ之ニ準シ貯穀モ相応ニアリシカ、当時モ余程持チアツカヒシコトナリ、若シ幸ニ望人アリテ瓦斯モ売レタラハ貯米モ設ケテ可ナラン、然レトモ前知事ノ創メタルモノヲ無体ニ廃スル様ニテモ宜シカラス、故ニ瓦斯ヲ売ルトモ年期ヲ定メズ望人アルトキヲ待テ処分ナシ然ルヘシ、今日ヨリ余リ率爾ナル論ニ渉ルヘカラス
○議長曰 十六番ハ詰リ原案ヲ可トスルカ、但貯米ノコトハ当場ノ本議ニアラサレハ取上ケテ問題トナサス
○十六番青地匹郎左衛門曰《(青地四郎左衛門)》 原案ノ如クニテ宜シ
○三十三番馬場半助曰 本員モ強チ前輩ノ為シ置キタルコトヲ非トスルニハアラス、折角仕入レタルモノハ取付ケ置キ都合ノヨキ節ニ売ラント云コトナリ、且本員ノ発議ハ篤ト練リニ練タル持論ナリ、匆率ニ発シタルニハアラス
○三番辻純市曰 瓦斯局ノ件ニ付只今三十三番十六番ノ弁論アリ、三十三番モ敢テ瓦斯ヲアシキト云ニハアラザルヘシ、只共有金ヨリ支弁スマジキモノト云意ナレハモト親切ノ論ナリ、十六番ノ前知事云云ト云ハ卑怯ノ説ナリ、設ヘ前知事ノ始メタルコトニテモ悪シケレハ悪シト議スルガヨロシカラン、抑々此金ノ性質タル寛政中七分金ニ始リ、乃チ凶年ノ備トシタルハ無論ノコトナリ、然ルヲ由利公吉原ニ瓦斯灯ヲ作ルト云企テヨリ、大久保公ニ至リ其器械ノ棄レルヲ惜ミテ市中ニ建設セラレタリ、此飾リ物ヲ作ルニ其費用ヲ共有金ヨリ支出スヘキ筈ナク、且ツ其維持法ヲモ立テズニ着手シタレハ、今日ニ至リ猶納ムベキ貨物ナキニ蔵ヲ建テタルガ如ク甚タシキ不都合ヲ生シタリ、然ルニ幸ニ当知事公ノ相続セラレテヨリ維持法ヲモ立テラレ、局長モ雇外国人ヲ謝遣シ諸事永続ニ注意セラレタルハ本局ノ為メニハ大ニ喜フヘキコトナリ、但三十三番ノ説ノ如ク共有金ヲ以テ支弁スマジキモノト云所以ハ、此瓦斯ニハ時アリテ損失ト云モノアレハナリ、夫ヨリハ細クモ次第ニ増殖スル様ニナシ置キタシ、然レトモ公債ニ代ヘ置ケハ凶年ニ用ヲナサス貯米モ亦容易ノコトニアラス、故ニ此事ハ追テ熟議ノ上更ニ良法ヲ設クヘキコトナリ、但賢相楽翁公ノ遺物今日ニ残リテ府下人民其余沢ヲ被ムルトハ実ニ有リ難キコトナリ、我輩此収支ヲ議スルニ於テ卑怯ノ心ヲ抱カス、神経ヲ励シテ直論スルモ乃チ聊賢相ノ遺沢ニ報スルノ心ナリ、三十三番十六番ノ二説ヲ継テ其意ヲ補述スルコト如此
○議長曰 然ラハ三番ハ三十三番ニ同意ナルヘシ、但義倉ハ問題外
 - 第12巻 p.470 -ページ画像 
ノ事ナリ
○三十三番馬場半助曰 義倉ノコトハ附帯ノ説ト見做サルヘシ、瓦斯ヲ売ルト云モ固トヨリ時ヲ待テノコトナリ
○三番辻純市曰 三十三番ノ瓦斯ニ損アリト云ハ然ラス、過日報道シタル如ク近時ハ三ケ月ニ三千余円ノ益アルナリ
○三十三番馬場半助曰 其事ハ曾テ承知セリ
○議長曰 各員ノ議論誥《(詰)》リ総体ニ付テハ皆原案ニ同意ナリ、但三十三番ノ相応ノ相手アラハ売ラント云ハ少シ異説ナルノミ、本案ノ議此席ニ於テ直ニ決スヘキカ、又ハ後会ヲ待テ決スヘキカ各員ノ見込ハ如何
○十七番福地源一郎曰 只今議決シテ最モ然ルヘキ時節ト考フ
○九番三十三番並曰 十七番ニ同意
○議長曰 然ラハ決ヲ取ルヘシ、原案ニ同意者ハ起立アルヘシ
  起立十六人
 過半数原案ニ可決ス
○又曰 已ニ時限ニ及ヒタレハ休息スヘシ、扨休息後ハ第二次会ヲ開クヘキカ又ハ小会議ニ致スヘキカ
○十七番福地源一郎曰 直ニ第二次会ニテ然ルヘシ
○三十二番太田次郎曰 十七番ニ同意
○議長曰 然ラハ休息後ハ第二次会ヲ開クヘシ
  於是休息
 午後第六時三十分着席
○議長曰 是ヨリ第三号議案第二次会ヲ開クヘシ、但各員心得ノ為ニ申述フ、瓦斯局沽却等ノ事ハ、本日ハ勿論明日ノ第一二号ニ於テモ此説ヲ発言アリテハ甚タ不都合ナリ、故ニ此事ハ共有資産ノ調査ヲ了リシ後ニ時ヲ待テ説出アルヘシ
 書記朗読
    収入ノ部
一金弐万九千六百三拾壱円八拾九銭
     内訳
  金壱万六千四百五拾弐円      街灯三百五拾六基ノ点費地方税ヨリ収入
   但瓦斯燃消高五百六万弐千三百弐十立方尺
    壱千立方尺ニ付金三円弐拾五銭ノ割
○三十三番馬場半助曰 別ニ修正案モ見ヘス、原案ヲ可トスヘシ
○議長曰 決ヲ取ル迄モナカラン、次項ニ移ルヘシ
   金壱万弐千七百七拾九円八十九銭 家内瓦斯売払代
    但瓦斯燃消高三百九拾三万弐千弐百七拾立方尺ヲ以テ積算ス
     価同断
○九番多羅尾光応曰 調査委員ニ問フ、一千立方尺ニ金三円七拾五銭ハ乃チ相当ノ価ナルヘシ、前ノ街灯費ハ一般ニ対シ義務モアレハ廉ナルモ宜シカルヘシ、但家内ニ使用スルモノハ少シ引上ゲテモ然ルヘキカ如何
○十七番福地源一郎曰 九番ノ説ハ不可ナリ、廃スヘシ、外国ノ比例
 - 第12巻 p.471 -ページ画像 
ニテハ斯ク高価ナル瓦斯ハ聞キモ及ハス、日報社ナトハ冬夜ハ一ケ月八拾円位ヲ費シ、一月ナトハ百弐拾円、夏夜モ六拾円ヲ費スヘシ遥カニランプ石炭油ノ方廉ナリ、但ランプニ比スルニ罩ヲ損スルト罩ノ掃除代ヲ省クトノ差ナリ、併シ瓦斯ニハ取付ケ入費七百円モ掛レハ、此分ヲ出サレハ罩ノ損シ等ハアリテモ石油ノ方便ナリ、瓦斯ハ鼠ノ鉛管ヲ噛ミ破リシノ透ヨリ漏リヲ生セシノト云類余程ウルサシ、其上ニ瓦斯職人ハ甚タヅルクシテ呼テモ輙ク来ラス、弊社ナトニテハ所詮引合ハヌナリ、但失火ノ憂ナキガ安心ト云位ノ事ナリ、凡ソ瓦斯ト石油トノ割合石油ハ四割廉ナラン、故ニ瓦斯代ヲ増スコトハ該局ノ為メハトモカクモ引用スルモノハ割ニ合ハヌナリ
○九番多羅尾光応曰 本員其辺迄ハ不案内ニテ、街灯ノ方ハ廉価ナルモノト心得タル故ニ、家内用ハ差アリテ然ルベシト存ジタリ、前説ハ廃スべシ
○議長曰 瓦斯ハ一ツノ商業局故成ル丈ケ廉ニ売ルガヨキ様ナリ、是ハ説話マデノ事、発議ニハアラズ
 本項動議ナシ、原案ニ据ル
○中略
 原案ニ据ル
   金五百円 局長慰労金
○三十三番馬場半助曰 説明ニモアル如ク創立以来毎歳千円ヲ贈リタリヤ、其年限ヲ問フ
○番外一番銀林一等属曰 瓦斯局養育院ヲ府庁ニ引継キシ以来ト覚ヘタリ
○三十三番馬場半助曰 局長ハ日々出勤モアルマシキニ是ハヤヽ過当ト考フ、昔時ノ十人衆ハ一年ニ銀十枚ナリシニ五百円ハ余分ナルベシ、其内幾分ヲ減ジテ然ルベキヤ
○九番多羅尾光応曰 共有金ヨリ贈ルニハ成程過当ト考ヘラル、因テ三十三番ヲ賛成ス
○三十二番太田次郎曰 局長ノ勤労ハ許多ナルベケレトモ是ハ減ズル方ニ同意ナリ
○十九番鹿島清四郎曰 該局ヲ是マデ維持シタルヨリ考フレバ廉キモノト思ハル、尚此末局長ノ丹誠ヲ依頼スルナレバ原案ニテ不可ナカラン
○十七番福地源一郎曰 慰労金ハ明治九年以前ハ一銭モ遣ハサヾリシニ、知事公ヨリ下問アリテ初テ給セラレシニ十年中ト覚ヘタリ、凡ソ価ノ貴賤ハ人ニヨリテ云フべキナリ、千円ニテ廉キモアレバ五円ニテ貴キモアリ、且ツ彼ノ局長ハ人民ノ為メニヨクコソ千円位ニテ辛抱スルト思ハル、本員ナラバ千円位ハ自ラ差出シテモ断リヲ云方ナリ、扨本人ハ無給ニテモ局長ヲバ担当スべケレトモ、詰リ行政官ガ人ヲ使フニ使ヒニクカラン、無給ノ人ヲ使フハ中々使ヒニクキモノナリ、且今慰労金ヲ廃セバ将来無給ノ人ノ使ヒ方ニ響カント夫ヲ心配スルナリ
○九番多羅尾光応曰 敢テ其価ノ貴賤ヲ議スルニハアラス、大体カ共有金ナレバ斯クハ心付キシナリ
 - 第12巻 p.472 -ページ画像 
○番外一番銀林一等属曰 此慰労金ハ此方ヨリ熨斗ヲ付ケ謝詞ヲ述ベテ遣ハスモノナリ、然ルヲ此議場ニ於テ減ズルト云ハ面白カラヌ論ナリ、瓦斯局ノ今日ノ景況ニ至リシハ皆局長ノ尽力ナリ、且又局長ハ此金ヲ以テ使ハルヽ人ニアラズ、各員モ熟考ノ上討論アルベシ
○十七番福地源一郎曰 先年此事ニ付テハ局長モ余程受クルト否トニ論アリシナリ、其節本員ガ発言ニ、日耳曼ノ国会規則ニ、議員トナルモノハ給料ヲ辞スルヲ得ズト云コトアリ、是ハ一ハ議員ニ責任ヲ負ハスルガ為メ、二ハ議員ノ我儘ヲ制スルガ為メナリ、此事ヲ引テ無理ニ受ケサセタリシナリ、今取放シタリトモ面白カラヌコトデハナケレトモ、条理ニ於テ只人ヲ使フベキモノデナシ、又使ヒニクカラント存スルガ故ナリ、此所得ト考量アルベシ
○三十三番馬場半助曰 共有金ノ性質ニ付弁当費モ刪ル茶費モ刪ルト云三十二番ノ発議モアリシカバ、一時其言ニ惑テカク発言セルナリ今十七番ノ説明ヲ得テ成程尤至極ノコトナリ、議員タルモノハ府会以来数十日ノ間唯義務ニ由テ出会シ、弁当モ茶モ給セラレヌト云論スラアルホドノコト故ニ、本員前説ヲ発シタリシガ、右ハ本員ノ誤リナリ、前説ハ取消スヘシ
○九番多羅尾光応曰 三十三番発議ヲ廃シタル上ハ本員モ賛成ヲ廃スヘシ、但前説ハ共有金ヲ成丈減ズマシキト云フ精神ヨリ幾分カマケテモラハント存セシナリ
○三十二番太田次郎曰 一体瓦斯局ニ共有金ヲ用ヰタルガ不服ナレハ本員モ賛成シタリシガ、発論者発議ヲ引キシ上ハ賛成モ引クヘシ
○十七番福地源一郎曰 トカク各員ハ、共有金ハ窮民救助ノ金ナルニ瓦斯ヲ作リシノ修路ニ費セシト云論多シ、此心ヲ以テ会議所ノ帳簿ヲ取調ベナバ大ニ旧会議員ヲ憎ムノ念ヲ生ズベシ、去ル明治五年八月ノ命令ニ儼然、此金ハ公衆利益ノ為メニ支弁セヨト布達アリシナリ、於是初メテ道路橋梁瓦斯局養育院等ノコトニ用ヰタリシナリ、若シ其節救荒予備ノ外ニハ支弁ヲ許サズトナレバカクモアルマジキナレトモ右命令ニテ俄ニ金ノ性質ヲ変ジタルモノナリ、九年中ニ至リ府庁ヘ納メシトキ此金ハ将来道路橋梁ノ為メニ消費スルモノニアラズ、何卒救恤ノ一途ニ用ヰ度ト云ニ至リテヤヽ昔時ニ立戻リシナリ、且又前ノ行政官ヲ咎メテ彼是ト論ズル時ハ恐ラクハ一変シテ其人ヲ糺弾セント云ニ至ルモ難カラズ、是大ナル心得違ナリ故ニ念ノ為メニ一言スルナリ、扨又慰労金ノコト説明ニ千円ヲ折半シテ云々トアリ、然ラバ養育院ノ方ハザフサモナクマケテモラヒシモノナリ
○番外一番銀林一等属曰 養育院ノ方ハマケタテハナシ、未ダ定マラヌナリ、誥《(詰)》リ追テ幾許ヲ遣ハスコトニナルべシ、且又前ニ尋問アリシ石炭費ハ帳簿ヲ取調べタルニ千七十噸ノ代価ナリ、高島一噸ニ付九円十五銭積リ当三月買入ノ相場ナリ、因テ但書ヲ修正シテ但石炭千七十噸一噸ニ付九円十五銭ノ積ト改ムベシ
○議長曰 各員ノ説皆廃サレタレトモ多説混乱ノ末ナレバ、念ノ為メ原案ニ同意者ハ起立アルベシ
  総起立
  金四百五拾壱円七拾五銭九厘    営繕費
 - 第12巻 p.473 -ページ画像 
 原案ニ据ル
 収支指引
  金壱万弐百七拾五円七拾三銭四厘  贏余
   但此額ヲ以テ共有金元資ヘ償還スベシ
 原案ニ据ル
○議長曰 第三号第二次会ハ是ニテ結局シタリ、是ヨリ小会議ヲ開クベシ
 於是散会ス、時ニ第八時二十五分ナリ


東京十五区会議事録 第六号(DK120057k-0008)
第12巻 p.473-475 ページ画像

東京十五区会議事録  第六号      (東京府文庫所蔵)
明治十二年十一月五日午後第四時二十分開議
     闕席
          堀田正養      荒木政樹
          福沢諭吉      大槻東陽
          渡辺治右衛門    酒井忠彰
          酒井忠道
     不参
          丸山伝右衛門    太田次郎
          大倉喜八郎     西村勝三
          奥山長右衛門
○十七番福地源一郎曰 今日ハ議長副議長事故アリテ不参ナリ、依テ仮議長ハ本日モ亦十二番議員ニ依頼センコトヲ欲ス、但各員ハ如何
○九番多羅尾光応・三番辻純市・三十三番馬場半助並曰 十七番ノ説ニ同意ナリ
○十七番福地源一郎曰 然ラハ十二番議員仮議長タルヘシ
於是十二番藤本精一議長席ニ着ク
○議長藤本精一曰 本日ハ第一号議案ヲ議スルニ付、各員十分ニ発議アルヘシ
 書記朗読ス
 第一号議案
  明治十二年度共有金原資収支予算
○中略
    支出之部
 一金三万五百五拾四円九拾四銭七厘
      内
   金壱万円        瓦斯局原資補助
    但此補助金ハ専ラ家内瓦斯取付器械費ノ繰替ニ供ス、瓦斯ヲ各家ニ鬻クノ例ハ、是マテ線路接続ノ遠近ニヨリ其取付入費瓦斯局持ノ分本管ヨリ家内ニ備ルメートル迄ノ費些少ニシテ、該家持ノ分家内取付器械費金百円余ニ至ル、故ニ一ケ月弐千立方尺余ノ瓦斯ヲ燃消スル者ニ限リ、其望人ノ身元確実ナルトキハ其取付器械費ヲ繰替、六ケ月ヨリ十二ケ月マテノ間ヲ参酌シ月賦ヲ以テ返納セシム、但前年比較ト将来ノ景況トヲ斟酌シテ積算セシモノナリ
 - 第12巻 p.474 -ページ画像 
○九番多羅尾光応曰 此壱万円ノ補助ト云ハ少シ迷ヲ起スベケレバ、原資繰替ト修正ナシタシ
○十七番福地源一郎曰 九番ノ動議ニ従ヒ修成スルヲ可ナリトス
○十一番川島喜三郎・六番笠井庄兵衛・三十三番馬場半助並曰 同意
○議長曰 九番ノ説原資繰替ト修正スルニ同意ノ者ハ起立
  過半数
 修正ニ決ス
   金弐万五百五拾四円九拾四銭七厘 瓦斯増築費
    但予算決定高金拾万五拾八円三拾三銭ノ内、既ニ支出セル金
     七万九千五百三円三拾八銭三厘、差引残金額如斯
○十三番山中市兵衛曰 曾テ渋沢氏ノ説モアリシガ、当時ノ所ニテハ弐万円位ニテハ足ラス五六万円位ニ及フヘシトノコトナリ、如何
○三番辻純市曰 只今十三番ノ説ノ如ク弐万ヤ三万ニテハ瓦斯局ノ永続成リ難キハ前日モ述ヘシ通リナリ、到底永続ト否トノ説ハ乃チ第一期第二期調査ノ後ニ決スヘシ、今日ヨリ過額ヲ見込テ論スルノ理モナカラン、十三番モ其意ナルカ
○十三番山中市兵衛曰 明治十年ノ概算ニ由テ考フレハ、此所ニテ三万円ノ差ヲ生スレハ、洋銀ノ騰貴等ニテ十三年度ノ決算ニハ五六万円ノ差ヲ生スヘシ、後日ニテハ不都合ナラスヤ
○三番辻純市曰 十三番ノ疑ヒハ本員弁説ノ明了ナラサルニ由ルナレトモ、兎ニ角永続スルカ否カノ決定モナキニ此目ニ不足ヲ加フルノ理ナシト考フ、各員篤ト了知アルヘシ
○九番多羅尾光応曰 到底不足トノ説アレトモ此所ハ仮ニ永続スルモノト見テ議定スヘシ、二百五十万立方尺ヲ売ルニハ弐万円位デハ所詮不足ト過日調査委員ノ報道アリキ、但彼是差引ケハ十万五百円ニテ賄ヒ得ヘシトノ説モアリシト覚ヘタリ、果シテ然ラハ本員ハ異論ナシ
○三番辻純市曰 九番議員弁明ノ通リ、増築ノ分併セテ二百五十万立方尺ヲ鬻クトキハ到底不足ト思ハル、若シ此新築ノ瓦斯速ニ売レルモノナレハ、調査委員モ此予算ニテ必ス不足ナシト云コトハ明言シ難シ
○番外一番銀林一等属曰 此弐万円ハ拾万五百円ノ払残シナリ、増築已ニ落成ニ近キコトハ渋沢氏ノ報道モアリ、是ヨリ十分ニ二百万立方尺ヲ売ルトキハ更ニ線路等ノ費用モ若干アルト云フコトナリ、此弐万丈ケハ必支出ナクテハ叶ハサルモノナリ
○三十三番馬場半助曰 右ハ已ニ出来シタルモノヽ残払ナレハ、原案可然
○二十七番安田善次郎曰 十三番ノ問モ至極尤ナリ、立案者ノ意ハ十二年予算ノ所ニテ街灯ハ若干、家内用ハ若干ト云コトナリ、三番ノ見込ハ此上二百万立方尺ヲ売ルニハ猶五六万ヲ要スヘシト云コトナリ、今支出スル弐万ハ乃チ今日迄ノ事業ニ支消シタルモノナリ
○番外一番銀林一等属曰 二十七番ノ説ノ通リ此先ノコトニアラス、今日ノ姿ニテモ此金ハ必ス払フヘキ分ナリ
○二十七番安田善次郎曰 支出ノ部ヘ第二号議案ノ追加ヲ差加ヘテ可
 - 第12巻 p.475 -ページ画像 
然、乃チ会議諸費ナリ、但十二年度十三年度ヲ一度ニ支払フヤ
○番外一番銀林一等属曰 原案ノ主意ハ十二年度ノ会ハ本会ノ外、来十三年五月頃ニ更ニ一会アルヘキ見込ニテ、斯ク立タリ
○二十七番安田善次郎曰 今度ハ十二年度丈ケニテ宜シカラン、夫ナレハ半額三百円ニテ然ルヘシ
○番外一番銀林一等属曰 会議諸費ノ予算ハ第一号ノ収支ニアラス、乃チ第二号ノ収支ノ積リ、故ニ二度目ノ分モ十二年度ニ於テ議決スヘキモノナリ
○十七番福地源一郎曰 増築費原案ノ通リニテ聊カ差支ナシ
○議長曰 三十三番十七番九番抔ノ説モ大抵原案ノ通リナリ、念ノ為メ起立ヲ乞フ
  総起立
 乃チ原案ニ決ス