デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

3章 商工業
21節 瓦斯
2款 東京府瓦斯局
■綱文

第12巻 p.491-518(DK120061k) ページ画像

明治14年7月27日(1881年)

是日東京府区部会本局ノ払下ゲヲ決議シ、翌十五年六月ニ至リテ其処分方法ヲ定ム。浅野総一郎等之ヲ廉価ニ払受ケントシタルモ、栄一其議ヲ斥ケテ応セズ。為メニ本局払下ゲノ事熄ム。


■資料

東京府布達全書 明治十四年(DK120061k-0001)
第12巻 p.491 ページ画像

東京府布達全書 明治十四年(東京府文庫所蔵)
○甲第七拾壱号 伊豆七島小笠原島ヲ除ク 五月廿六日
明治十二年当庁甲第五拾四号布達ヲ廃シ、十五区一般ニ係ル共有財産ノ処分ハ自今区部会ノ議ニ付シ候条、此旨布達候事
   ○明治十二年東京府布達甲第五拾四号ハ十五区一般ニ係ル共有財産ノ処分ニツキ、十五区ヨリ選出セル府会議員ノ会議ニ附シ議定スベキコトヲ定ム。
    本款明治十二年十月二十四日ノ条(第四四九頁)参照。


東京府布達全書 明治十四年(DK120061k-0002)
第12巻 p.491 ページ画像

東京府布達全書 明治十四年(東京府文庫所蔵)
○甲第九号 一月二十八日
東京十五区共有財産処分会ノ議ニ付スヘキ事件有之、明二十九日ヨリ本府議事堂ニ於テ臨時会相開候条、此旨布達候事


東京府通常会議事録 十四年 自四拾壱号至四拾八号(DK120061k-0003)
第12巻 p.491-501 ページ画像

東京府通常会議事録 十四年 自四拾壱号至四拾八号
                    (東京府文庫所蔵)
東京府通常会議事録第四十二号
 明治十四年七月二十七日午後第四時三十分開議
                      竹内正志記
      闕席
           酒井忠彰     大貫伝兵衛
           羽田均      川島喜三郎
           和久井久次郎   坪内定益
           喜谷市郎右衛門  轟道賢
           升本喜兵衛    青木庄太郎
           塩谷良幹     水野徳右衛門
           山中隣之助    青地幾次郎
           鈴木唯一     関岡孝治
           小疇次郎兵衛   小暮直次郎
           梅川忠兵衛    伊藤定七
 区部会
○議長芳野世経曰 本日議長ハ意見アル趣ナレハ本員代理タリ、之レヨリ二号議案ノ第三次会ヲ開クベシ
  書記朗読
 第弐号議案
 - 第12巻 p.492 -ページ画像 
 明治十四年度瓦斯局収支予算
   収入ノ部
一金四万六千八百六拾四円
     内訳
  金壱万七千六拾四円      街灯点火料
   但灯数四百基一基ニ付一ケ月金三円五拾銭五厘
  金弐万七千円         各家引用瓦斯代
   但売却高九百万立方尺ノ積一千立方尺ニ付金三円
  金弐千八百円         コークテール其他売却代
   支出ノ部
一金三万九千五百七拾三円五拾三銭
     内訳
  金三千九百二拾四円      俸給
  金六百円           幹事月給
   但月給金五拾円
○番外一番渋沢栄一曰 幹事月給ノ事ニ付キ一応申シ述ヘタシ、之ヲ五十円トセラレシハ費用ノ節減ヨリナランガ人ヲ得ルニ難キカ故ニ一言セサルヲ得ス、昨年議事ノ趣キヨリ申スガ、最初ハ五百円ニテ仏人ヲ傭ヒシモ費用多キヲ以テ昨年十一月限リ之ヲ止メ、而シテ未タ日本人ノミニテハ実際不都合ノ事モアルヘケレハ必要ノ節ハ臨時ニ之ヲ雇ヒ入ルコトニセリ、故ニ可及善キ人ヲ得サレハ幹事ハ其代リナレハ事ヲ執ル訳ニ参ラサルベシトテ、昨年百円内外ノ人ヲ得ントテ如此セルナリ、七十円ニ非ラサレバ出来ズト云ハサレトモ余程是ハ六ケ敷モノニテ、先ツ第一機械ノ事ヲ心得、舎密術ヲ心得テ石炭ノ元質ヲ見分ケ、又火度ノ程限、瓦斯分ノコト、弾力ノコト、立方尺ノ割合等ヲモ承知セル者ナラデハ之ニ従事スル訳ニハ参ラズ、実ニ一種ノ専門ナリ、且ツ職人ヲ使ヒ廻シ又会計ヲ担任スル等中々其事務ハ困難ニシテ且ツ繁忙ナリ、右等ノ人ハ安クハ得ラレヌ故ニ昨年モ請求シテ百円内外ト決シタリシニ、幸ニ七十円ニテ得ラレシガ之ハ決シテ高キ給金ニハアラサルヘシ、若シ幹事ニシテ其人ヲ得ズンバ、自然其局ノ損失ヲ醸シ、其損失ヨリ起ル迷惑ハ七十円ヲ五十円トシタリトテ購ヒカタカルヘシ、故ニ諸君ニモ此辺ニ注意アリテ、何卒原案ノ如ク据ヘ置レンコトヲ希望ス
○三十七番馬場半助曰 唯今番外ハ幹事ノコトニ付キ請求セラレシカ之ハ作年《(昨)》モ熟議ノ上ニテ百円内外ト定メラレタルコトナリ、然ルニ今年ハ五十円ト修正ニナリシガ、本員ハ少シ増スヘキナリト考ヘシニ、之レヲ減ジテハ勉励ノ精神ヲ挫クヘシ、且外国人ヲ廃シ其代リヲナス以上ハ百円ニテモ可ナル位ナリ、已ニ慰労金モ減シタルヲ以テ、諸君モ前ノ事ヲ考省シテ七十円ニ賛成アリタシ、実ニ番外ノ求メハ当然ノコトナリト信ス、給金ヲ減セハ其事務ニ勉励セサルモノナリ
○十番町田今亮曰 三十七番ヲ賛成ス、二次会ニ於テ二十円減シタルハ実ニ急激ナリト云フベシ
○四十九番福地源一郎・二十三番益田克徳・六十五番小原勝五郎・三
 - 第12巻 p.493 -ページ画像 
十五番津久井市兵衛並曰 三十七番ヲ賛成ス
○議長曰 五人ノ賛成者ヲ得タレハ議題トナレリ
○七十三番鳥海清左衛門曰 番外ノ云ハルヽ如ク局ノ利益ニモ関係アルコトナレハ元ノ如ク七十円トスベシ
○三十一番須藤時一郎曰 番外ハ要用ノ点ヲ述ヘラレ、完全ナル人ヲ得ント望マルヽカ其ニモ及ハス、且ツ外人ヲ廃シタルハ此幹事ヲ置ク以前ナリ、又七十円ノ人ニアラサレバ出来サル程ノ術ニアラス、舎密学ト云フモ普通ノ舎密家程ノコトニアラス、又今七十円ヲ俄カニ廃スルト云フモ、昨年ハ五十円ニテ事済ミ七十円ハ当年カラニテ寧ロ五十円ヨリ突然七十円トナリタルナリ、又果シテ番《(外脱カ)》カ述ヘラルル如キ人ナレハ七十円ニテ瓦斯局ニハ来ラサルヘシ、他ノ五十円三十円ノ人カ何ニモ出来サル訳ナレハ幹事ノ七十円モ相当ナルヘキガ此等ノ人モ其位ノ事ハ心得居ルナルヘシ、既ニ局長ニハ慰労金モナク無給ニテ使役スル位ニアラスヤ、局長アル上ハ幹事ハ其差図ヲ受ケテ働クノミニテ可ナリ、然ラハ五十円ノ人ニテ出来ザルノ理ナシ
○四十九番福地源一郎曰 本員ガ議場ニ乞フハ我々ハ我々ノ決議シタルコトヲ記憶ナシテ居リタシ、凡ソ議員タル者ハ其時欠席セル故知ラザリシトハ申サレマジ、此事ハ三十七番ヨリモ述ヘシ如ク十一月ニ議シ、議会ハ百円内外ノ人ヲ許シタルナリ、唯今三十一番ハ何故ニ当時五十円ト議決セサリシカト責ムルカ如キモ、既ニ我々ハ百円内外トシ之ヲ許シ、理事者ハ其決ニ従ヒテ七十円トセシナリ、理事者ハ議決ニ依テ外人モ止メタルナリ、其レニテハ昨年十一月ノ議決ヲ取消スト同シコトナルベシ、雇ハルヽ人モ其約束ニテ来リシニ減スルトイヘハ暇トナリ若シ事務ニ差支ヘ起レハ如何スルヤ、其罪ニ任スヘキ者ハ誰ナルヤ、理事者ヲ責ムヘキカ、左様ニモ行クマジ、又三十一番ハ局長ノ無給ニテ働クコトヲ以テ議論ノ根拠トスルモ、自ラ無給ニテ勤ムルト云フ間ハ其ニテ可ナリ、然ラハ之レハ当テニナラズ、此方ヨリ給料ヲモ出サズシテハ独リ重キヲ局長ノミニ任カセ難シ、左レハ之レ専ラ責ニ任スルハ幹事其人ナリ、即チ三十七番ノ説ハ幹事ニ責任ヲ負ハシムルノ説ナリ、故ニ七十円ヲ相当トシタリ、依テ昨年ノ決議ノ主意ヲ以テ七十円ト改メ、事務ニ差シ閊ヘナキ様致シタシ
○番外一番渋沢栄一曰 弁明ノ不充分ナル所アリシカ、三十一番ヨリシテ駁サレ、五十円ニテ相当ナリ、三十円ニテモ「テール」ノ事位ハ心得居ルヘシ、三十円ノ者カ其事ヲ知リ居ル位ナレハ五十円ニテ沢山ナリ、又学術ノ充分ニ出来ルモノハ七十円ニテハ来ラズ、或ハ局長ノ慰労金ヲ止メタル故ニ幹事モ薄給ニテ可ト云ヒ、外国人ハ七十円ノモノヲ置カサル以前ニ廃シタリト云フ、想フニ三十一番ノ説ハ他ノ職人ニテモ知ルコトナレハ五十円テモ出来ルナルベシ、其レヨリ上ナレバ七十円ニテモ出来ズトノ意ナル如シ、外人ヲ止メシモ同時ニアラズ、又局長モアレバト申サルレトモ、出来ル極点ハ何事モ知ルトシ、又知ラザルノ極点ハ全ク無学ナリトセルナリ、併シ此人ハ学術モ事務モ出来ル人ヲ要シ、若シ幹事カ悪クハ此局ノ損失トナルナリ、今石炭監定《(鑑)》ノ一事ニ付キテ申サンニ、高島ノ石炭ハ一噸
 - 第12巻 p.494 -ページ画像 
ニ付四立方尺ノ瓦斯ヲ生シ得ルモ、三池ノ石炭ハ四立方尺三ナレトモ硫黄ノ気強クシテ炊キ口ガ爛レル為メ「メイトル」カ狂フ、左レハ之レニハ唐津ヲ交ヘルト云フ如キハ能ク其性質等ニ通暁シ化学術ニモ明カナラサルベカラズ、日本ニハ未タ完全ナル免許ヲ得タル人ハ普通ニハナクシテ迚モ之レヲ一通リ解スルコトモ難シ、尤モ少々位ハ職人ニテモ知リ得ベキ者モアランガ、石炭ノ原質ヲ知ルト知ラサルトニ依テ起ル損得ノ関係ハ甚タ大ナルモノニアラスヤ、故ニ大ニ損失ヲ来タサヽル位ノ人ハ是非之ヲ得タシト思フナリ、又鉄管トテモ然リ、寸尺ハ人足モ知レトモ考ヘハ学術ニ依ラザルベカラズ、又外国人ノ雇ヲ解クト幹事ヲ置クト同月ニハアラサレトモ、此外人モ月ニ二三度来タルコトト定テ約束ヲ解キシナリト、外国人ヲ廃スルニ付キテハ其レニ代ル丈ケノ相当ノ人物ヲ得テ、安心ノ出来ル様ニトテ、昨年ハ百円ヲ相当トシ之ヲ与ヘシニアラズヤ、然ルヲ今年ハ七十円ニテ先ツ之ヲ雇ヒ置クナリ、又局長ノ慰労ニハ関係ナシ、事業上ニ安全ナル人ヲ得ルガ肝要ナルヘシ、唯々安キヲ好ムヨリ事業上ニ不都合起リテハ却テ損ナラスヤ
○三十一番須藤時一郎曰 第一ニ四十九番ハ昨年ノ決議ヲ記セヨト云フ、三十一番ハ昨年ニ関セズ当年ニ議スルカ当然ナリトスルナリ、又局長ハ給金ナケレハ責ハ幹事ニ負ハスベシト云フ、驚クベキコトナリ、有リテモ無クテモ可トナレハ置クニ及バズ、寧ロ之レヲ廃スヘシ、頭ニ局長アル以上ハ責ハ局長ニアルヘキナリ、今番外ハ鉄管位ハ人足モ知ルガ安心ノ出来ルモノハ幹事ナルカ如ク云ハレタリ、左レハ三十一番ハ五十円三十円以上ノモノカ余リ木偶人ノ如クニ思ハルヽナリ、又瓦斯局ノ事務トテ左程六ケ敷ニアラズ、総高カ四五万円ノコトナリ、会計トテモ格別繁雑ナルニアラズ、必ラズ七十円ヲ出サヽレハ局ガ維持出来ズト云フ程ニハアラサルベシ、又石炭ノ事ハ番外自ラ弁明ノ出来ル位ニアラスヤ、五十円ノ機関士以下三十円ノモノモ皆高島ノ石炭ハ三立方尺ナリ、三池ノ石炭ハ幾分取レルト云フ位ハ従来ノ経験ニテ知リテ居ル筈ナリ、敢テ舎密学ト云フ程ニハアラサルヘシ、又昨年ノ議決ヲ消ス様ナリト云フモ、若シ不可ナリト心付カバ直ニ之ヲ止メルコトヲ発言ナシテ可ナリ、已ニ施療院モ講習所モ不可ナレバコソ廃シタルニアラズヤ
○二十三番益田克徳曰 三十一番ハ頻リニ駁スルカ、尤モトハ思ハレス、高カ四万円位ト云ヘトモ随分骨ノ折レル仕事ニテ、何レノ会社ニテモ此位ノ資本金アレハ幹事ハ七十円位ハ給セサルヲ得ス、本員ハ七十円ニテハ寧ロ安キ方ナリト信ス、安クスルハ誰レモ望ム所ニテ五十円ヨリハ三十円、三十円ヨリハ二十五円ト致シタキモ人ヲ得ルコト出来ザレハ致シ方ナシ、此相場ハ高シトハ思ハレズ、又昨年ノ議決ハ当年如何様トモナルニ相違ナケレトモ、一旦七十円トシタレハ之ヲ減スルト云ハヾ何カ弊害ニテモアルニアラザレハ出来ズ、三十一番ノ論モ必竟減節ノ点ニアルカ如シ、五十円ニテ得ラルヽトナレハ四十円ヲ以テ適当トスル説モ起リ際限ノナキコトナリ、凡ソ瓦斯ノコトハ番外モ云フ如ク学術ハ左迄上達ヲ要セサルモ締メ括リハ一通リ心得テ居ル人ニアラザレバ不都合ニテ、事務ノ総轄ハ随分
 - 第12巻 p.495 -ページ画像 
困難ナルモノナリ、総体ノ統轄ヲスル人ハ相応ノ人ヲ得タキモノナリ、而シテ斯ル人ハ容易ニハナシ、其レモ百円二百円ナレハ格別、七十円テ《(ニ)》テ稍ヤ満足スル程ノ人アルナレハ、強テ之ヲ減スル迄モナシ、一局ヲ預ケルニ相当ノ給金ヲ払フハ却テ其局ノ経済ナルヘシ、減スルノミガ経営ニアラス、括リヲスル人ハ可及良キ人ヲ置クガ可ナリ、給金ニハ二十円ノ減却アルモ瓦斯一立方尺ノ差アリテハ損失ヲ購ハザルベシ、併シ従来ノ所ハ少シク役所然タル所モアレハ此等ハ局長又ハ幹事ニテ注意アリ漸次弊風ハ改良シ、入費ハ可及節減スル様イタシタキモノナレトモ、幹事ハ先ツ七十円カ相当ト思フナリ
○十一番牧山源兵衛曰 本員モ幹事ノ月給ハ二次会ノ時モ原案維持説ナリシガ、十番ノ云フ如ク「よもや」ト思ヒシニ遂ニ減額説カ勝利ヲ得タリ、已ニ四十九番三十七番ヨリモ述ヘラレシ如ク、昨年ハ百円内外ノ決議ニテ先ツ約束ト云フテ可ナル位ナレハ七十円トナシタシ
○三十七番馬場半助曰 三十一番ノ説モ深切上ヨリ起リシコトナリ、至極尤モナレトモ昨年モ七十円ニシテ本年更メテ七十円ニ上リタルニアラズ、昨年ヨリ百円内外ト決シタルナリ、区役所ノ如キモ長ハ百円ニテ代理書記ハ四十五円ナリ、而シテ区長ハ毎日唯鬚ヲ撫テ一事ヲ為サヾルモ月給ハ百円ナリ、下ニ居ル書記ノ仕事ハ実ニ繁忙極マルモノナルモ月給ハ少シ、是レ其取締ハ困難ナルカ故ニシテ勢ノ然ラシムル所ナリ、故ニ三十一番モ「大まけにまけて」旧原案ニ復スコトトセラレタシ
○四十九番福地源一郎曰 最早弁スル迄モナケレトモ三十一番ハ殊勝ニモ我々ニ駁撃ヲ試ミラレ、已ニ施療院モ講習所モ廃シタル位ナリト手柄顔ニ申サレシカ之ハ手柄ニアラス、本員抔ハ止ムヲ得サルニ出テタルモノナリ、我々ハ忍ンテ之ヲ廃シタリ、凡ソ議場ニハ必ス道理ノ勢力ヲ得ルモノト予メ定ラサルモノアリ、不条理ナル所以カ判然セハ五十円モ可ナルカ、別ニ其理由ハ聞カズ、又責メハ局長カ負ヘトイヘドモ、局長ハ之レニ付キ切リノモノニアラズ、其レ共三十一番ハ局長ハ朝夕鑵ノ側ニ黒クナリテ詰メ切ルヘシト云フカ、若シ然ラサレハ一方ニハ局長カ責ヲ負ハスルモノヲ置カサルベシ、故ニ之ヲ与フルニ何ノ不可アランヤ、而後三十一番ハ四万円位ノ資本ナリト云ヒシカ、之ハ二十三番カ既ニ委シク述ヘラレタリ、三十一番ノ説ハ金額ノ多少ニ依テ其賢愚ヲ表スルカ如シ、甚タ謂ハレナキ説ナリ、見ヨ銀行抔ニハ資本金ノ額ハ甚タ大ナルモノアリ、左レバ之ヲ管理スル人物ハ賢明秀抜ノ人ナリヤ、未タ必スシモ然ラサルヘシ、又本員ノ社抔ノ出納ハ至テ少ナシ、左レハ之ヲ管理スル我輩ハ実ニ仕方ノナキモノナルヘシ、又石炭ノコト位ハ現ニ番外モ承知スルニアラズヤト云ハルヽモ、成程本員トテモ器械舎密ノ事ハ少々ハ心得居レリ、若シ望マルヽナレハ二時間位ハ其講釈ヲモナスヲ得ヘシ、併シ実地ニハ行カズ、殆ンド油ノ差方スラ知ラサル位ナリ、五十円ノ人ニモ知ルコトハ知ルナルベケレトモ、其取締ヲスル人ハ共ニ之レニ通暁セザレバ不都合ナルヘシ、到底三十一番ノ説モ節倹主義ヨリ出テタリト雖トモ小慾却テ損失トナルコトアリ、若シ果シテ
 - 第12巻 p.496 -ページ画像 
経済論ナラシメハ減ゼザル方却テ其益アルベシ
○三十一番須藤時一郎曰 格別云フニ及バズト雖トモ四十九番ハ金ノ多少ニ依テ智恵ヲ計ルハ不条理ト云ヘトモ之ハ当然ノ事ナリ、然ラハ十五銀行ハ人物ナルヘキニ、高ハ多キモ借主カ一人故ニ之ヲ管理スル者ハ極テ迂濶ナリ、又今一段ハ道理ナクシテ五十円トスルニ及ハスト云ヘハ道理ナクシテ七十円トスルニハ及ハスト云ハンノミ、局員ハ幹事カナクハ人形ノ如クセラルヽガ分ラザルナリ、創業ノ際ナレハ格別ナレトモ既ニ大体ガ分ル以上ハ追々減節スル方ナレハ七十円ノ人ニアラサレバ総轄出来スト云フコトナシ、四十九番ハ幹事ヲ以テ追々局長トスル積リナリヤ、局長カ日々出勤セザル位ノコトハ三十一番モ承知セリ、先刻ヨリ種々道理ヲ述ベタレハ最早決ヲ取ラレタシ
○番外一番渋沢栄一曰 三十一番ノ云フコトハ分ラズ、追々局長ノ稽古ヲサスル様ニ思ヒ居ルカ如シ、番外ハ左様ナルコトヲ請求セシニアラズ、其レハ三十一番ガ唯心ニ自ラ考ヘタルコトヲ発言シタル迄ノコトナルベシ、到底其言ノ如クンハ場所ニ付キテ損ナルコトト思ハル、出納ノ多少ハ、以テ人ノ愚ヲ察スルヤ否ヤニ付キ議論アリシカ、出納ハ今日ニ少シト雖トモ段々増加センコトヲ欲スルナリ、利益ノ増加シテ収支ノ巨大ヲ望ムハ此会社ノ主意ナリ、已ニ之レニハ二十八万円ノ資金ヲモ下シタリ、若シ利益ノ多キヲ図望セズンハ段段給金ヲ安クスベシ、併シ我々ノ考ハ、追々盛大ヲ期スルニ在ルナリ、差図スル幹事カ何ニモ知ラスト云フテハ困ルコトナラズヤ、之レ七十円ヲ要スル所以ナリ、且ツ争点ハ僅カニ二十円ノ相違ニシテ一体ハ百円ヲ支給セント考ヘタル位ナルニ、五十円ト云ハヽ半額ナリ、今七十円ニテ出来レハ幸ト云ハザルベカラズ、又三十円ノ者ハ木偶人ノ如ク思ハルヽト云ヘトモ外ニ局員カ大勢アルカ故ニ之ヲ監督スル幹事ハ五十円ニテ不適当ナリト申スナリ、故ニ諸君モ此辺ヲ篤ト一応勘考アリテ請求ノ通リ七十円ニ復サレンコトヲ冀望ス
○議長曰 決ヲ取ルヘシ、三十七番ノ増給説ニ同意ハ起立
  四人ノ外総起立
 乃チ七十円ニ決シ、之レニテ俸給ノ高ハ四千百六十円ト改マルベシ
  書記朗読
   金八百四拾円         幹事月給
    但月給金七拾円
   金三千三百弐拾四円      局員月給
      此訳
   金六百円           月給五拾円壱名
   金三百六拾円         同三拾円壱名
   金三百円           同弐拾五円壱名
   金四百八拾円         同弐拾円弐名
   金三百六拾円         同拾五円弐名
   金百五拾六円         同拾三円壱名
   金百四拾四円         同拾弐円壱名
   金六百円           同拾円五名
 - 第12巻 p.497 -ページ画像 
   金三百弐拾四円        同九円三名
  金四千七百五拾八円五銭     給与
     内
   金三千九百六拾六円《(マヽ)》  諸傭給
     此訳
    金百弐拾円            竈焚方一人 月給拾円
    金百弐円             同一人 月給八円五拾銭
    金三百八拾四円          同四人 月給八円
    金三百六拾円           同四人 月給七円五拾銭
    金百六拾八円           同二人 月給七円
    金弐百四拾円           蒸汽鑵焚方二人 月給拾円
    金百八拾円            同二人 月給七円五拾銭
    金百弐円             点消方一人 月給八円五拾銭
    金六百三拾円           同七人 月給七円五拾銭
    金百六拾八円           同弐人 月給七円
    金弐百四円            鍛冶方一人 月給拾七円
    金九拾円             同一人 月給七円五拾銭
    金三拾円             同一人 月給弐円五十銭
    金百四拾四円           人足小頭一人 月給拾弐円
    金六拾六円            土練一人 月給五円五拾銭
    金百弐拾円            門監兼夜回リ二人 月給五円
    金百弐拾円            小使二人 月給五円
    金七拾八円            定用人足一人 月給六円五拾銭
    金六百円             大工石工煉化職 人足其他雇賃
   金六百六拾円          諸手当
     此訳
    金三百八拾円           幹事以下局員勉励手当
    金弐百八拾円           定雇ノ者前同断
   金七拾弐円五銭         諸賄料
     此訳
    金弐拾五円五拾五銭        局員宿直賄料一賄金 三銭五厘
    金三拾六円五拾銭         門監小使宿直賄料一 賄金弐銭五厘
    金拾円              臨時賄料
   金百弐拾円           被服費
     此訳
    金百円              印付半纏
    金弐拾円             雨笠及桐油ノ類
  金弐万八千拾弐円四拾八銭     製造費
     内
    金弐万七千円           石炭弐千弐百五拾噸 一噸金拾弐円積
    金三百円             精気薬及粘土
    金百五拾円            サイミ及古布代
    金弐百五拾円           清浄器枠代
    金三拾円             石炭運送籠代
 - 第12巻 p.498 -ページ画像 
    金三拾壱円六拾八銭        焚方手袋代
    金拾円八拾銭           街灯用布巾代
    金六拾円             器械場用薪炭費
    金拾円              同場用蝋燭費
    金九拾円             点灯及器械場用水油費
    金八拾円             雑費
   金四百弐拾九円        局内需用費
     内
    金九拾円             諸用紙費
    金三拾円             諸帳簿費
    金三拾円             筆墨費
    金百弐拾円            薪炭費
    金九円              油蝋燭費
    金六拾円             備品費
    金六拾円             雑費
○番外二番小林六等属曰 此項ニ付キ一応請求ス、旅費ハ此処ニ加フヘシトテ二次会ニ削ラレシカ、玆ニ至リテ遂ニ消滅セシカ、必ス横浜ヘ行キテ鉛真鍮管等ヲ買ハザルベカラズ、此方ヨリ呼ヒ寄シテ買フコトハ甚タ不都合ナリ、故ニ此項ハ何卒百円トセラレタシ
○十番町田今亮曰 此項ハ委員会ノ節左様ニ決セシカ蒸滊車賃ヲ刪ルトキニハ起シテ之レヲ増ストキニハ少数ナリキ、今番外ノ請求ハ尤モナリ、故ニ六十円ヲ百円トセント欲ス
○四十五番佐藤正興曰 番外ハ横浜行ノ費用ハ雑費ヨリ支弁シタリト云ヒシ、故ニ刪除ニ賛成セシカ今一応詳細ノ説明ヲ乞フ
○三番小松崎茂助曰 本員モ今一応承ハリタシ
○番外二番小林六等属曰 追々火口カ増加スルニ従ヒ横浜行モ屡トナレハ、別ニ旅費ノ項ヲ掲ケシナリ
○三十一番須藤時一郎・四十六番藤本精一・三十五番津久井市兵衛・三十七番馬場半助・四十九番福地源一郎並ニ曰 十番ヲ賛成ス
○三番小松崎茂助曰 番外ハ唯今火口カ増シタル故別ニ旅費ノ項ヲ掲ケタリト云ハルレトモ、四百本モ五百本モ格別ノ相違ハナカルベシト思フ故、別ニ掲クルニ及ハズ
○三十一番須藤時一郎曰 雑費ノ中ト云ヘトモ昨年ハ六十円ニテハナカリシナラン
○番外二番小林六等属曰 昨年モ器械ノ方ニ六十円モアリシカ、百円ノ方ニモアリ、事業カ増セハ五十円ノモノハ八十円ト段々ニ入費モ増加スルコトト知ルヘシ
○四十五番佐藤正興曰 昨年ハ局内需用費カ別ニアリキト思フ
○番外二番小林六等属曰 昨年ハ局内需用費ノ内ニ筆紙墨アリ、又旅費モ此内ニアリシカ、当年ハ之レヲ小分ケセシノミ
○二十三番益田克徳曰 筆紙墨モ増セシガ、今年ハ昨年ニ比シテ何許位増シタルヤ
○番外二番小林六等属曰 昨年ハ総体ニテ三百拾六円ナリシカ、今年ノ増シハ百六十一円ナリ
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○議長曰 決ヲ取ルベシ、十番ノ報道ニ同意ハ起立
  起立十九人
 過半数ニ付キ増額ニ決シ、需用費ノ高ハ四百六十九円ト改ムルヘシ
  書記改メテ朗読
    金百円            雑費
    金拾円            郵便電信料
    金弐拾円           地租及地方税車税永賦金
   金弐千円           器械修繕費
   金四百五拾円         営繕費
 収支差引
  金七千十円四十七銭 益金
○議長曰 此修正ニヨリ総親高ハ三万九千八百五十三円五十三銭ト改マルヘシ
○六十一番田口卯吉曰 全体ニ付キ一応申シタシ、乃チ他ノ事ニアラズ、此瓦斯局ハ将来民間ノモノニ致シタシ、固ト之レハ民間ノ営業ナレハ全ク商買上ノ仕組ニセサレハ利益ヲ見ルコト能ハサルヘシ、或ハ見ルコトヲ得ルモ至テ少々ナルヘシ、尤モ其仕組ハ唯今区部会ニテ議スルモ充分ニハ行クマジケレドモ、現ニ七千円ノ利益アルモ之ヲ民間ノ事業ニセバ七万円以上ヲ得ルニ至ルヘシ、故ニ望ム人アレハ譲ルコトニナシタシ、明日ヨリ望ミ人出ツルモ予メ之ヲ区部会ニ於テ定メ置カザレハ不可ナリ
○三十七番馬場半助曰 突然ト其事ヲ云ハレテハ迷惑ナリ、確定ノ後ニスヘシ
○議長曰 先ツ議案ノ確定後ノコトニスヘシ、確定ニ同意ハ起立
  三人ノ外総起立
○議長曰 最早時刻ナレハ一時休息スベシ
  午後第七時着席
○議長福地源一郎曰 瓦斯灯費ヲ地方税ヘ繰リ込ム事ハ内務大蔵両省ヘ具上セシ所裁定サレタリ、此段報道ス
○六十一番田口卯吉曰 先刻発議セシカ既ニ昨年ノ会ニ於テ其事ニ決シ居ルト承ハレハ、本員ノ説ハ取消スヘシ、此上ハ速ニ新聞紙ヘ広告シテ其望人ヲ求ムヘシ
○二十三番益田克徳・十番町田今亮・五十六番松田秀雄・三十五番津久井市兵衛・五番前田長善並ニ曰 六十一番ヲ賛成ス
○四十五番佐藤正興曰 六十一番ニ質問スヘシ、買ヒ手カアレハ金高等ハ如何スルヤ
○六十一番田口卯吉曰 其ハ未タ定マラズ、果シテ買手ノアリシ時ニ決スルモ可ナルヘシ
○三番小松崎茂助曰 六十一番ノ説ハ尤モナレトモ、売リ買ヒノ手続キ又約束等ハ府会ニテ議決セサルベカラス、此等ノ事ヲ先ツ決定シテハ如何
○六十一番田口卯吉曰 約束ハスヘケレドモ詳細ハ望ミ人アル時ニ理事者ヨリ議案ヲ出サレル方ナルヘシ、唯今是非定メサレハ不都合ト云フコトハナカル可シ
 - 第12巻 p.500 -ページ画像 
○三十七番馬場半助曰 六十一番ノ考ハ至極可ナレトモ、新聞ニ出スナレハ価カ分リ居ラズハ不都合ナルベシ、故ニ代価ヲ定ムルカ第一ナリ、直ニ新聞ニ広告スルコトハナルマジ、此ハ余程混雑セシコトナレハ会ノ終ニテモ篤ト討論ノ上代価ヲ定メタシ
○三番小松崎茂助曰 三十七番ハ代金ヲ見積リタシトイヘトモ其レニモ及ハズ、予メ広告スルカ肝要ナリト信ス、而シテ望ミ人アリシ時ハ直ニ府庁ニテ議案ヲ作リテ其手続キヲ議会ニテ定メタシ
○三十七番馬場半助曰 矢張同説ナリ、広告ハ後ニシ討論ノ上定ムル方可ナルヘシ
○四十五番佐藤正興曰 之レヲ売ルハ賛成ナルカ、買人ヲ見付テ代金ヲ定ムルハ三十七番ノ云ハルヽ如ク不可ナリ、代金ト何年間ニ払フト云フコトヲ定ムルハ肝要ナリ、決心丈ケヲ聞キ置キタシ
○六十一番田口卯吉曰 代金ハ定メサルベカラズト雖トモ、議会ニテ定ムルハ不可ナリ、利息相場ナレハ一割ノ利益ナレハ資本何十万円故何程ニ買フト云フコトハ大体定マリ居ル様ナルモノナリ、望ミ手ノ方ヲ先ニスヘシ
○議長曰 左スレハ先ツ公告シ望ミノ者ハ府庁ヘ申シ出ツヘシ、又実際ハ瓦斯局ヘ行キテ勘定帳ヲ見タル上ニテ何程ト云フコトヲ買人ニ申シ出サシムルヲ可ナリト云フ説ナリヤ
○六十一番田口卯吉曰 然リ
○七十番条野伝平曰 本員モ其通リノ意ナリキ、予メ代価ヲ定メズトモ可ナリ、約束年限ニ依テ代価ニ差モアルベシ
○三番小松崎茂助曰 其ハ不都合ナリ、瓦斯ハ持チモノナレバ能ク約束セ子バナラズ、局ヘ行キテ帳簿ヲ買人カ調査スルハ不可ナリ、予シメ代金ヲ定ムルカ要用ナリ、一体木製家屋ニハ瓦斯ヲ引用致サセタクナキナリ
○議長曰 説ハ二ツニシテ、六十一番ハ先ツ広告スヘシ、左レハ望ミ人ハ代価モ約束モ府庁ヘ申シ出ツベシト云ヒ、今一ツ三十七番ハ新聞紙ヲ止メ先ツ議会ノ終リニ代価モ定メ後ニスヘシト云フ、先ツ六十一番ノ説ニ同意ハ起立
  起立十七人
 過半数ナルヲ以テ乃チ之レニ決ス
○議長曰 広告案等ハ如何スルカ
○六十一番田口卯吉曰 其ハ理事者ニ任スベシ
   ○明治十四年度瓦斯局収支予算ハ是年七月二十五日東京府通常会区部会ニ提出セラレ、同日第一次会第二次会ニテ審議ノ結果、原案中支出之部俸給ノ中幹事月給七十円トアリシヲ三十一番須藤時一郎ヨリ五十円ニ減額修正説提起セラレ、第二次会ニ於テ過半数ヲ以テ其修正説可決セラル。(東京府通常会議事録第四十号参照)仍テ栄一第三次会ニ出席シ原案復活ヲ要求セラレシナリ。
   ○上掲議事録中田口卯吉ノ発言ニ「既ニ昨年ノ会ニ於テ其事(瓦斯局売却ノ事)ニ決シ居ルト承ハレハ云々」トアレドモ、売却決定ノ記録明治十三年府会議事録中ニ見エズ。然レドモ瓦斯局売却ノ事ハ明治十二年以来府会及ビ区部会ノ議事ニ屡々発言セラレタリ。(明治十二年四月十八日府会議事録第十七号荒木政樹ノ発言、明治十二年十一月四日東京十五区会議事録第五号馬場半助ノ発言、明治十三年三月二十二日東京十五区会議事録第十四
 - 第12巻 p.501 -ページ画像 
号安田善次郎ノ発言等)


瓦斯局書類 明治十四年会計課(DK120061k-0004)
第12巻 p.501-502 ページ画像

瓦斯局書類 明治十四年会計課     (東京府文庫所蔵)
明治十四年八月廿五日出    三等属 岡田信英(印)
    (松田)                 (印)会計課(印)
 知事     書記官(印)(印)
                         (印)租税課(印)
瓦斯局之儀望人有之節は売却スヘキ積、過日区部会ニ於テ議決相成候ニ付テハ、右敷地之有無ニ依リ沽却方ニ甚関係有之候間、相当価格ヲ以テ地所御払下之儀其筋江御請求相成度、就而は其趣不日常置委員会江附セラレ可然哉、御下附案左ニ相伺候也
    按
 瓦斯局建家及諸器械類望人有之節は売却スヘキ旨本年通常区部会ニ於テ議決相成、然ルニ右敷地之儀ハ左之調書之通従来官有地ナルヲ是迄借地料ヲ納メス致借地居候得共、一体該局ノ如キハ許多ノ資金ヲ擲チ巨大ノ機関ヲ設置セルヲ以テ容易ク他ニ移転スヘキ事業ニアラサレハ、其土地ヲ有スルヲ緊要トス、然ルヲ此敷地ヲ除キ独リ建家ノミヲ売却セントスルモ必ス其望人ハ稀少ナルヘク、加之価格ニ於テモ幾分ノ逓減ニ至ルヘシ、故ニ是迄借用地ノ坪数四千百九拾四坪弐勺今回相当価格ヲ以テ払下ケ之儀其筋江致請求、許可於有之は払下ケ代金ハ区部共有金ヲ以テ支出致シ可然ト存候
    敷地坪数調
 四千百九拾四坪弐勺    芝区浜崎町三番地
          払下ケ請求スヘキ分
     外
 三百拾七坪九合九勺    同区同町四番地
          従前ノ通官有地借用ノ分
 百三拾坪         同区湊町十六番地
          是ハ先年共有金ヲ以テ買入敷地内ニ籠リ居候分
                     (東京府庁回議用用紙)

(別紙)
八月二十九日右御下附相成候処、常置委員会議決之大意
 共有金支出ノ儀ハ当会ニ於テ議決シ難キニヨリ、臨時区部会開設ノ期モ之レアラハ其節下附之レアリタシ、併本案敷地払下ケノ趣旨ニ於テハ最モ可然儀ト思考スルニヨリ、先以テ府庁ヨリ其筋ヘ請求之アランコトヲ企望ス
                         (東京府用紙)
   ○常置委員ニ就イテ。明治十三年太政官第十五号布告ヲ以テ、府県会規則ニ、新ニ「府県会議員中ヨリ五名以上七名以下ノ常置委員ヲ選任スベシ」ト規定セラレ、翌十四年三月太政大臣ノ示達ニ基キ知事ハ区部会・郡部会ニ対シ各別ニ五名以上七名以下ノ常置委員ヲ選任スベキ旨下達アリシニ依リ、同日区部会並ニ郡部会ニ於テ区部常置委員ハ定員七名、郡部常置委員ハ定員五名トスル件ヲ議決ス。明治三十二年七月常置委員廃セラレ、之ニ代リテ参事会設置サル。常置委員ハ通常府県会議ノ初メ委員会議ニ於テ議決シタル事件ノ要領ヲ報告シ、且通常会ト臨時会トヲ論ゼズ府知事県令ヨリ発スベキ議案ヲ前以テ請取リ会議ニ向ツテ其意見ヲ報告スベキ職責アリ
 - 第12巻 p.502 -ページ画像 
従ツテ府庁ヨリノ諮問ニ応ヘテ決議ヲナス。任期二箇年。委員左ノ如シ。
    区部会常置委員人名

    明治十四年三月八日 十五年七月二十六日 十七年五月十三日
     沼間守一   同上     同上
     福地源一郎  藤田茂吉   同上
     田口卯吉   同上     同上
     藤本精一   同上     犬養毅
     芳野世経   同上     同上
     町田今亮   田中耕造   益田克徳
     松波宏祚   須藤時一郎  同上



瓦斯局書類 明治十五年会計課(DK120061k-0005)
第12巻 p.502-503 ページ画像

瓦斯局書類 明治十五年会計課(東京府文庫所蔵)
明治十四年九月一日出 三等属 桑木愛信(印)
                (印)租税課(印)(印)
 知事   (印)(印)書記官
                (印)会計課(印)(印)
芝浜崎町瓦斯局敷地払下請候儀、過般伺済之通常置委員ニおゐて異議無之ニ付、内務省江左之通御稟議相成可然哉、相伺候也
 但払下代価ハ一昨十二年中芝区長申出ニ係ル(印)
 内務卿代理宛                長官
    瓦斯局敷地払下之儀伺
府下芝区浜崎町三番地
一地坪四千百九拾四坪弐夕
   此相当代価金三千三百五拾五円弐拾壱銭六厘
          但壱坪ニ付金八拾銭
府下芝区芝浜崎町瓦斯局之儀、本年通常区部会ニおゐて将来該事業望人有之候ハヽ建家及諸器械等売却ス可キ旨議決致し候、然処該敷地ハ官有第三種之地ニ而、明治十二年九月廿九日付を以該局使用中は特別を以無借地料ニ而可貸渡旨御指令ニより、以来無地料ニ而貸渡置候得共、向後一己人民江払下候節ハ、該事業之如き尋常製造所等之比ニ無之、許多之資金を擲チ巨大之機関等ヲ設置セルヲ以テ容易ク他ニ移転ス可き事業ニ無之ニ付、仮令使用中返地等為致候儀は万々無之共、借地ニ而は何分安ンセサル事情も有之、売却之際望人之稀少ナルハ勿論価額ニおゐても随テ逓減ニ至ル可クハ必然ニ有之、旁議会ニおゐても此際払下請置度希望致し候間、前書代価を以払下申度、尤同局使用地之内同町四番地之方ハ機関等据付無之且
離宮接近之地ニも有之候間、是迄之通り官有地ニ据置候積ニ有之候、別紙図面○略ス相添此段相伺候也
                     (東京府庁回議用用紙)
                     (印)
瓦斯局敷地払下ケ請求之儀、常置委員会議決之趣意別紙之通有之且其筋江請求可致トノ長官御趣旨も有之候間、上申方可然御取計有之度、此段及御照会候也
  八月三十日               会計課
    租税課
                     (東京府用紙)
 - 第12巻 p.503 -ページ画像 

(別紙)
    瓦斯局拝借地払下之儀伺
府下芝区芝浜崎町三番四番地瓦斯局拝借地改正合坪四千五百拾弐坪壱夕ハ、今般共有金を以御払下相願瓦斯原価ニ組入置度旨該局事務担当之者より申出候、依而取調候処右瓦斯局之儀ハ素より人民共有物ニは有之候得共、一時設置候工場等之比ニ無之ニ付、今般地方税ヲ以継続致候儀ニ相定候儀ニ而、当府下之儀ハ外地方トモ相異リ、離宮及官庁ハ勿論各国公使館等ニ至迄使用方逐日相増候ニ付、随而器械其他ニ至ル迄是又準拠不致テハ難相成、容易ニ移転等可致事業ニ無之ニ付、到底該地ヲ根基ト可相定処、拝借地ニテハ前途之計画甚不都合ニ有之候間、此際民有地ニ払下相願候事情尤之次第ニ相聞候旁願意聞届申度、就而は是迄莫大之経費ヲ要シ該事業創起致候為官庁其他一般之便宜を得候儀ハ目下瞭然致候儀ニ付、四番地之儀ハ離宮ヘ密接シ且僅々之地坪ニも有之候旁民有地ニ相成候而は将来不都合と存候間右ハ相除き、三番地之方ハ四千百九十四坪弐夕ハ特別之訳を以府下人民共有地トシテ無代価ニ而御下渡相成度、別紙図面○略ス相添此段相伺候也
  明治十二年六月七日         東京府知事
    内務卿
(朱書)
「書面之趣ハ使用中特別ヲ以テ無借地料ニテ貸渡可申事
  明治十二年九月廿九日          内務卿」
                      (東京府用紙)
別紙地所現今実地売買比較可相成地無之ニ付近傍之者ヘ尋問候処、金七十五銭より金八十銭位ニて売買可相成候趣ニ付、此段及回答候也
    十二年五月十九日          芝区長
                       (東京府用紙)


明治十五年 東京府通常会議事録 自第廿一号至第卅号(DK120061k-0006)
第12巻 p.503-504 ページ画像

明治十五年 東京府通常会議事録 自第廿一号至第卅号(東京府文庫所蔵)
東京府通常会議事録第二五号 河田烋記
 明治十五年六月二日午後第四時三十分開議
      闕席
           吉川長兵衛    田中耕造
           酒井忠彰     水野忠幹
           水野徳右衛門   伊藤定七
           福地源一郎    犬養毅
           田島安太郎    関博直
 区部会出席四十二員

午後第六時三十分着席
○議長芳野世経曰 区部号外議案瓦斯局売却処分ノ一次会ヲ開クヘシ
  書記朗読
区部共有金号外議案
    瓦斯局売却処分
 - 第12巻 p.504 -ページ画像 
瓦斯局敷地建物附属諸器械等悉皆売却スルニ付其処分方法ヲ定ムル左ノ如シ
一瓦斯局ノ売却公売ニ附スルカ望人ニ払下ルカノ方法ヲ定ムルコト
一瓦斯局ノ資産地所建物附属諸器械並埋布管街灯等ニ属スル物ト需用石炭家内引用瓦斯器械ノ類ニ属スル物トヲ分チ、其売却ノ方法ヲ定ルコト
一売却代価ヲ定ムルコト
一売却金額ヲ一時或ハ年賦トナシ、其年賦トスルトキハ利息ノ有無ヲ定ムルコト
一街頭点火料ノ金高及年限ヲ定メ其約定ヲナスコト
右各項常置委員ノ会議ヲ経テ府庁ニ於テ之ヲ処分スルモノトス
説明
 瓦斯局売却方新聞紙ヘ広告ノ儀昨十四年度通常区部会ニ於テ議決セシ処、該局敷地払下ヲ内務省ヘ請求セシト他ニ売却ノ得失ニ関係スヘキ事件ノアリタルトニヨリ姑ク時機ヲ見計ヒ、竟ニ延テ今日ニ至レリ、而シテ今ヤ敷地払下ハ既ニ允許ヲ得、得失ニ関係スヘキ事件ハ深ク恐ルヽニ足ラサルモノヽ如シ、然レハ売却ノ詮議ヲ起スノ時機正ニ来リタリト謂フヘキ乎、且熟々同局ノ現状ヲ視ルニ、其事務ハ悉ク当府ニ属シ、議会ノ決議ヲ経ルニ非サレハ瑣末ノ事業ヲモ施シ得サル法則ニシテ、局員モ亦自ラ官事ヲ取扱フノ姿ナキ能ハス、事業ノ実際ニ於テハ営業ト一般ナル性質ニシテ、如此ノ組織ニテハ之ヲ永久ニ持続シ充分ノ利益ヲ得ル能ハサルモノアリ、故ニ曩ニ議決セシ如ク此ヲ売却シテ以テ一ノ営業私社トナスノ允議ナルニ如カス、然リ而シテ客歳ノ議決ノ如ク、予シメ広告シ望人之アル時ニ至テ臨時区部会ヲ開キ売却方法売価等ヲ議定スルトキハ、買受望人ノ身分ヲ公議シ、其栄誉ニ関スルコトアルヘク、或ハ事ヲ鄭重ニスル為ニ売買ノ時機ヲ失スルコトアルヘク、又望人ニ対シテ其維持方売買価格ノ増減等ヲ示談セルニ便ナラサルモノアルヘシ、因テ本案ノ如ク売買方法価格街灯点火料ノ約条等ハ常置委員ノ会議ヲ経テ売却処分ヲナサントスルナリ
○三十番松波宏祚曰 大体ハ常置委員ニ於テ異論ナシ
○議長曰 直ニ決ヲ取ルヘシ、二次会ヲ開クニ同意ハ起立
  六人ノ外惣起立
   ○右議案審議ノタメ十五年六月七日区部会ニ於テ第二次会第三次会開催セラレ、結局
    (1)第五項ヲ削ル
    (2)第三項ニ「但区部会開期中ナレハ之レヲ本会ニ付スヘシ」ト但書ヲ加フノ二点ヲ修正シ、他ハ原案ノママ可決セラル。(東京府通常会議事録明治十五年第二十七号参照)


明治十五年東京府通常会議事録 自廿一号至卅号(DK120061k-0007)
第12巻 p.504-511 ページ画像

明治十五年東京府通常会議事録 自廿一号至卅号(東京府文庫所蔵)
東京府通常会議事録第二十七号 中野光亨記
 明治十五年六月七日午後第五時十五分開議
      闕席
           永井直哉    喜谷市郎右衛門
           益田克徳    小西義敬
 - 第12巻 p.505 -ページ画像 
           水野徳右衛門  関博直
           福地源一郎   水野忠幹
           田嶋安太郎   須藤時一郎
           柳沢徳忠    伊藤定七
           松波宏祚    犬養毅
           久松定弘
           出席三十八員
 区部会
○中略
○議長曰 四十三番ノ請求ニ依リ土木費ハ休息後ニ譲リ、区部其有金号外議案瓦斯局売却処分案《(共)》ノ第二次会ヲ開クヘシ
  書記瓦斯局売却処分案ノ第一項ヲ朗読ス
○十一番牧山源兵衛曰 此案ニ対シ常置委員ノ意見アラハ承リタシ
○四十番沼間守一曰 常置委員ハ第五項目ヲ削リシ迄ニテ、其他ハ意見ナキヲ以テ別ニ報道セス
○議長曰 発言ナクハ全会一致ト見テ原案ニ据ル
  書記第二項第三項ヲ朗読ス
○議長曰 動議ナシ原案ニ据ル
  書記第四項ヲ朗読ス
○十二番青地四郎左衛門曰 四十番ニ問フ、此文面ニテハ何レニテモ定メ得ラルヽ如ク見ユレトモ之レハ先方ニテ取極ムルノ精神ナルヤ
○四十番沼間守一曰 十二番ノ不審ハ無理ナラサレトモ、実事ハ昨年ノ議会ニ於テ瓦斯局ハ売払フコトニ決シタルモ、未タ詳細ノ方法ハ決セスシテ、唯適当ノ望ミ人アラハ府庁ニ於テ相当ノ処分セラルヘシト云フニ過キス、然ルニ府庁モ自ラ専断ナスヲ危フミ、若シ望人アル場合ハ常置委員ニ於テ其方法等ヲ決シ得ルコトニナシ置キタシトテ、其レヲ本会ニ需メシ所以ナリ、故ニ望人アル場合ニ至ラサレハ、先方ニ於テ定ムルヤ将タ此方ヨリ指シ定ル方適当ナル哉ハ今日予メ定メヲキ難シ
○議長曰 他ニ説ナクハ原案ニ据ル
  書記第五項ヲ朗読ス
○四十番沼間守一曰 常置委員ハ此項ヲ削除セリ、其所以ハ何年間街灯ハ必ス点シ其金高幾何ヲ払フヘシト云フ如キ将来ノ約束ハ、常置委員ノ職権外ニ瓦ルヲ以テナシ能ハサルコトト認メタリ、如何ニ区部会ニ代テ決スルニモセヨ後々ノコトハ決シ得ルモノニアラス、若シ斯クノ如ク約束スレハトテ議会ハ年々議決スルノ権アルモノナレハ之レヲ破毀シ得スニアラス、又仮リニ破毀シ得ストスレハ之レ今年ノ会ニテ次年ノ議権ヲ束縛スルコトトナリ、彼此共ニ宜シキヲ得ス、若シ又今年限リトスル如キ斯々ル頼ミ甲斐ナキ約束ナレハ、誰レモ共ニ之レヲ取リ結フモノハアルマシ、玆ニ其適例ヲ挙クレハ本年ノ議会ニ於テ翌年ノ租税ハ議シ能ハサルヘシ、況ンヤ常置委員会ニ於テヲヤ、依リテコノ項ハ全ク削除セリ
○十一番牧山源兵衛曰 常置委員ヲ賛成ス
○六十一番田口卯吉曰 本員ハ常置委員ノ説ニ不同意ナリ、抑モ此瓦
 - 第12巻 p.506 -ページ画像 
斯局ヲ売却ナスニ付テハ此項ヲ以テ最モ必要ノ項ナリトス、凡ソ街灯ノ為メ若干ノ利益アリ、其レヲ何年間契約ナスニ由リ瓦斯局ハ幾何ヲ以テ引受ルト云フ玆ニ始メテ其価ヲ定ムル第一ノ目的ハ立ツヲ得ヘシ、然ルニ其目的タル街灯ハ確ト定メ難シトセハ到底瓦斯局ヲ売払フコト能ハサルニ至ルヘシ、今四十番ハ次年ノ支弁ハ本年ノ議会ニ於テ議決スルコトヲ得スト云ハレタレトモ、何レノ政府モ国債ヲ発スル如キ数年以後ノ契約ヲ代議政体ニテナシ居レリ、果シテ四十番ノ言ノ如ク議会ハ其年一年ノ事ヨリ議シ能ハストセハ、事実上余程不都合ヲ生シ国債ノ如キハ発スルコト能ハス、政府ヲ信用スルハ全ク一年限リトナルヘキニ実際然ラス、現ニ国債ヲ発シ居レリ、故ニ本員ハ随分議会ニ於テ数年以後ノ契約ハナシ得ルモノト信ス、又後チノ議員ニ於テモ前任議員ノ約束ハ守ルヘキ責任アリテ可ナリ猶ホ本員ノ聞ク所ニ依レハ泰西諸国ト雖モ、比々其例ハアル趣キナリ、旁此項存スルコトニナシタシ
○七十三番鳥海清左衛門曰 本員ハ六十一番ヲ賛成ス、若シ此約束ヲナシ能ハサルモノトセハ蓋シ瓦斯局ヲ買受クルモノアルマシ
○四十番沼間守一曰 此事ハ余程綿密ニ考ヘサルヘカラス、偖テ四十番ハ六十一番ノ説ニ対シ二ツニ分チテ之レヲ駁スヘシ、第一ハ泰西諸国ニ於テ現時国債ノ如キコトヲ行ヒ居ル所ヲ見テ六十一番ハ迷ヒヲ懐キ、我カ議会ト雖モ数年ノ契約ハ出来サルニアラス後任議員ハ宜シク前任議員ノ約束ヲ守ルヘシト云ハレタレトモ、之レ抑モ六十一番ノ迷ヒナリト云ハサルヲ得ス、成程代議政体ノ所ニ於テ国債ヲ発シ居レトモ、其大体ハ何レノ国ヲ問ハス皆ナ政府ヲ信スルハ全ク一年限リノモノニシテ実ニ不安心ヲ極ムルナリ、左レハコソ当路者ハ其信任ヲ得ンコトヲ勤ムルナラスヤ、是レ其妙理ノ在スル所ナラン、若シ政府ニ於テ決議ニ背ク処置ヲナサハ翌年ハ其租税ヲ出サスト云フコトアリテ、彼ノ陸軍ノ費用ノ如キ闕クヘカラサル費用ト雖トモ否決ナシ得ヌニアラス、之レ実ニ結構ノ制度ハ《(トカ)》云サルヲ得ス、左レハ専制政府ノ如キ政府ニ於テ受合ヲナスナレハ何年モ変セサルヲ得ヘキモ、凡ソ代議政体ノ国ニ於テハ公債ヲ発シ居ルハ全ク其方法宜シキヲ得ルニ依リ深ク信任アルカ為メ国会モ已ム得ストシ又従テ此公債モ信用アルナラン、必竟之レ等ハ徳議上ニ出シモノニテ理屈上ニテハナスヘキニアラス、故ニ若シ其方法宜カラサレハ必ス国会ニ於テ之レヲモ斥ケ償却処分ハセサルヲ得ルナリ、大政府ノ国債ニ於ケル尚オ且ツ然リ、況ンヤ我カ府会ノ如キハ未タ之レヲ常置委員ニ托シ後来ノ約束ヲナサシムル如キニ於テオヤ、又第二ハ六十一番ハ自ラ商業ニ暗キ所ヨリ街灯ノ約束ナクハ瓦斯局ヲ引受ルモノナカルヘシ又其価モ定メ難シト云ハルレトモ、街灯丈ケニテ瓦斯局ハ立行クト思ハルヽヤ、又家内引用ノ分モ約束ナスト云ハルヽヤ、其レハ決シテ六十一番自ラモナシ能ハサルコトトナスナラン、左レハ街灯而已確乎タル約束アリテモ人々用ヒ居ル家内引用ヲ止ムレハ如何ナスヤ、然レハ約束ナスモ街灯而已ニ止ルヘシ、元来商業社会ハ苛モ約束ヲ頼テ事ヲナスモノニ非ス、売方ノ方法宜シキ得レハ花主ハ次第ニ増殖シ繁盛ヲ極メ、方法宜シカラサレハ花主ヲ減スルニ至
 - 第12巻 p.507 -ページ画像 
ルヘシ、其理ハ「瓦斯屋」ト雖モ敢テ他ノ商業ト異ルナシ、殊ニ現時ノ実況ニ於テモ点火ノ数ハ街灯ヨリ家内引用ノ方多シ、已ニ然レハ瓦斯局ノ利益ハ街灯ヨリ家内引用ニ在リ、然ルモ街灯ニ約束ナクハ価ナシト云フ如キモノナレハ、蓋シ商業ノ道ヲ知ラス全ク政府ノ庇蔭ニ依頼シテ瓦斯局ヲ譲リ受ケントナスモノナル故、仮令之レヲ望ムモ我々常置委員ハ許サヽル考ヘナリ、且又何年間街灯何基ハ若干ニテ必ラス点火スヘシト契約セハ、如何ニ石炭ニ下落ヲ生スルモ其価ヲ下スコト能ハサルヘシ、之レニ反シテ非常ニ石炭ノ価騰貴セハ彼レニ於テ莫大ノ損ヲナスヘシ、苟モ商業上如斯契約ハナスヘカラサルコトナリ、左レハ純然タル商人ハ決シテ彼レヨリ契約ヲ望ムノ理ナシ、否ナナスヘカラサルコトナリ、若シ彼レ之レヲ望マハ純然タル商人ニアラサルニ由リ宜シク之レハ斥ケテ可ナリ、若シ又其時々ノ相場ヲ以テ支弁ナスコトニ契約ナストナレハ、必スヤ其時ノ議会モ相当ノ点火料ヲ支弁ナスニ相違ナシ、左レハ契約ハ全ク無益ニ属ス、故ニ此項ハアラサルモ瓦斯局ヲ売却ナスニ付聊カ差支ナシト信ス
○四十三番大貫伝兵衛曰 常置委員ノ説ヲ賛成ス
○議長曰 他ニ説ナクハ常置委員ノ削除説ニ同意ハ起立
  五人ノ外惣起立
 多数ニ依リ削除ニ決ス
  書記末項ヲ朗読ス
○議長曰 動議ナクハ原案ニ据ル、右ニテ二次会ハ議了セリ、此案ノ為メ三次会ヲ開クニ同意ハ起立
  惣起立
 此案ハ直ニ三次会ヲ開クヘシ
  書記朗読
区部共有金号外議案
    瓦斯局売却処分
瓦斯局敷地建物附属諸器械等悉皆売却スルニ付其処分方法ヲ定ムル左ノ如シ
一瓦斯局売却公売ニ附スルカ望人ニ払下ルカノ方法ヲ定ムルコト
一瓦斯局ノ資産地所建物附属諸器械並埋布管街灯等ニ属スル物ト需用石炭家内引用瓦斯器械ノ類ニ属スル物トヲ分チ、其売却ノ方法ヲ定ムルコト
一売却代価ヲ定ムルコト
○十五番田中耕造曰 此売却代ヲ定ムルト云ハ、今玆ニ望人アルニ際シ常置委員ハ何万円ニ売ルヤ否ヤノ方法ヲ定ムル迄ニ止リ、売払ヲナス場合ハ区部会ニ問ハルヽ積リナルヤ、将タ区部会開期中ト雖モ売払ノ価迄常置委員ニ於テ定ムルヤ如何
○番外一番荒木一等属曰 之レハ、元代価ノ調ヘモ出来ナシ居ルニ依リ、全ク売却代価ノ手続キ迄常置委員会ニ於テ決シ、本会ヘハ報道ニ止マル見込ナリ
○十五番田中耕造曰 然レハ瓦斯ニ限ラス共有物ヲ売却ナス手続キハ如何ナスヤ
○四十番沼間守一曰 十五番ヘ対シテ番外ヨリ答弁アリシハチト間違
 - 第12巻 p.508 -ページ画像 
居ルナラン、一体臨時ニ急施ヲ要スル場合ナレハ格別、否ラサレハ臨時区部会ヲ開カサルヘカラス、然レトモ其レカ為メニ費用ヲ要シ引合ハサルモノナレハ翌年ノ開会ヲ待テ可ナリ、万一至急ヲ要スレハ或ハ常置委員会ニ於テ決スル場合ナキニシモアラサレトモ、今番外ヨリ答弁アリシ如キハ四十番最モ不同意ナリ、元来瓦斯局売却処分ニ付テハ余程入組ミ居ルニヨリ四十番ノ考ニテハ或ハ望ミ人アルモ来年ノ今頃迄ニハ到底定マルマシト信ス、若又意外ニ良価ヲ以テ速ニ譲与ヲ望ムモノアル乎、或ハ遽ニ売却セサルヲ得サル場合ニ差迫リナハ、常置委員ニ於テ其責任ヲ受ケ実行ナシテ差支ヘアラサレトモ如斯コトハ万アルマシ、必ス臨時会ヲ開クカ或ハ翌年ノ開会迄延シ得ルナルヘシ、然レハ常置委員ニ於テ断然定ムヘキノ主意ニハアラサルヘシト信ス
○十五番田中耕造曰 自分ハ必ス臨時会ヲ開キ決定セサレハ不可ナリト云フニ非ス、都テ区部共有物売却処分ノ手続キヲ問ヒタル迄ニテ其処分方ハ通例四十番ノ言ノ如キ成規ナレハ其レニテ了解セリ、偖テ自分ハ此項ヲ斯ク修正ナシタシ、申サハ開会中ハ之レヲ本会ニ付スルコトニナシ、若シ事実急施ヲ要スル場合ハ常置委員ニ於テ之レヲ決スル乎或ハ臨時区部会ニ付スルコトニナス乎若シクハ翌年度ノ開会迄延ス乎ノ如キハ常置委員会ノ意見ニ任カシテ可ナリ、然カセサレハ仮令本会期中ト雖モ此文面ニ依レハ常置委員ニ於テ代価ヲ定ムルコトニナリ、甚タ不適当ト云ハサルヲ得ス、故ニ十五番ハ此項ニ開会中ハ本会ニ付スヘシトノ明文ヲ掲ケ置クコトヲ望ム
○三十八番木寺安敦・四十三番大貫伝兵衛・六十七番田村常吉・二十五番柴崎守三並曰 十五番ノ説ヲ賛成ス
○四十番沼間守一曰 十五番ノ説ハ至極尤モナレトモ実事ハ其如クナリ居ルナリ、故ニ区部会開期中ハ本会ニ付シ、否ラサレハ常置委員ニ於テ決スト、其レ而已文意ヲ明カニナシタランニハ玆ニ一ノ弊ヲ生スヘシ、何トナレハ則チ区部会閉会中ハ必ス常置委員ニ於テ決セサルヲ得サルニ至リ却テ不可ナリ、其明文ナクハ閉会中府庁ニ於テ常置委員会ノ決議ヲ望ムモ常置委員ハ臨時区部会ニ需ムルカ或ハ通常会ヲ待ツカ若シクハ直チニ決スルカ其場合ニ依テ常置委員ノ随意ニナシ得ヘシ、加之十五番ノ望マルヽ所ハ議事録ニ掲ケアルニ因リ旁開会中ハ必ス本会ニ付スルコトニナルヘシ、左レハ纔カ五字十字ヲ加ヘタル為メ他ニ闕点ヲ醸サンヨリ寧ロ本案ノ儘ニ据置キ而シテ其主意ニ決シ置ナハ敢テ差支ナカルヘシ
○十五番田中耕造曰 四十番ハ原案ニ据置クモ実事ハ本員ノ望ム如クナリ居ルト云ハルレトモ、其レハ四十番一己ノ考ヘニ止ルヘシ、現ニ番外ハ之レハ常置委員ニ於テ決シ本会ヘハ報道ナス迄ト答ヘシニアラスヤ、斯ク四十番ト番外ト見解ヲ異ニナスハ必竟文面ノ尽サヽル為メナルヘシ、元来自分モ番外ト同シ見解ヲ下シタル故修正ヲ加ヘント望ミシ所以ナリ、殊ニ四十番ハ之レ而已文意ヲ明カニセハ他ニ弊ヲ生スルト申サレタレトモ、其レハ弊ノ起ラサル様ニナシ可ナリ、然レトモ他ノ事ハ姑ク措キ本員ノ欲スル所ハ唯共有物売却処分ノ点ナリ、之レハ一体常置委員会限リニナス《(ベ脱カ)》キモノニアラス、苟モ
 - 第12巻 p.509 -ページ画像 
所有権ニ関スルヲ以テ、区部会ニ於テ議スヘキ性質ノモノナルニ依リ、本会開会中ハ之レヲ本会ニ付スヘキヲ以テ適当トナスナリ、且又四十番ノ憂ヒラルヽ点ハ文字上ニテ如何トモナシ得ヘシ、左レハ此文意ハ判然トナシ置クニ如カス
○三十六番笠井庄兵衛曰 十五番ノ説ヲ賛成ス
○四十番沼間守一曰 番外ハ十五番ニ対シ草卒ノ答ヲナシタル所ヨリ蓋シ十五番モ深ク危懼ヲ引起セシモノナルヘシ、向ニ番外ヨリ答ヘシ主意ハ全ク当然ノ場合ヲ答ヘシモノナリ、必竟常置委員会ニ於テ議スルトキハ之レニ依ルト云フニ外ナラス、左レハ本会開期中ハ無論府庁モ本会ヘ出スニ相違ナシ、然ルニ其文字ヲ載セ置クヘシト云ハ法律家ノ聞ヘアル十五番ニシテ不似合ナル論ト云ハサルヲ得ス、知ルヘシ、凡ソ法律ハ判然指定シアル為メニ物ヲ限ルコトニナルモノナリ(若シ此又ハ)ノ文字アル為メ終ニ其他ノ事柄ハ皆ナ常置委員ニ於テナシ得ルニ至ルヘシ、故ニ四十番ハ本案ノ儘ニ据置カンコトヲ望ム、殊更ニ「又ハ而シテ」ノ文字ヲ加フルトキハ臨時急施ヲ要セサルモ之レヲ急施トナシ、常置委員会ニ於テ決議ナスノ嫌ヒアリ、却テ原案ノ儘ナレハ其不都合ハナスヲ得マジ、何トナレハ常置委員ノ職権ニ於テ第一諮問ニ答フルト第二ハ臨時急施ヲ要スルモノニ限リ議決ナスニ止リ、其他ノ事柄ハ決シテナシ能ハサル筈ナレハナリ、若シ又濫リニ範囲外ノ議決ヲナサハ議会ハ充分常置委員ヲ責メテ可ナリ、然レハ纔カニ二三字ヲ加ヘ綿密ニナサントシテ不慮ノ弊ヲ引起サンヨリ寧ロ此儘ニナシ置キ実際ヲ正シクナスニ如カサルヘシ
○十五番田中耕造曰 成程法律ニ記載ナシテアルモノハ記載セサルモノヲ取除クトハ申スナレトモ、己ニ記載ナス以上ハ判然ト意味ヲ尽シ置クニ如カス、原案ノ文面ニテハ全ク区部会ニ関係ナキモノヽ如シ、若シ又全ク此規則ナクンハ或ハ四十番ノ説ノ通リ本会開期中ハ常置委員モ之レヲ本会ニ需ムルナランガ、既ニ本案ノ如ク掲ケアレハ他日ハ文面ニ基キ判断ヲ下シ、終ニ常置委員限リ処分ナスノ嫌ヒナシトセス、故ニ規則アル以上ハ判然トナシ置ク方ナリ《(可脱カ)》、又文字ヲ加ヘタル為メ曖昧ニナルハ文字ノ不可ナルニ坐ス、能ク其レニ注意セハ四十番ノ憂ヒラルヽ如キ害ハアラサルヘシ
○番外一番荒木一等属曰 向キニ十五番ニ対シ番外ヨリ答ヲナセシ主意ハ、今四十一番《(衍カ)》ヨリ申サレシ通リ此ノ原案ニ付テ答弁ナセシモノニテ、実際ハ常置委員ノ決議次第ニテ、区部会ニ付スルコトアルヘシ、併シナカラ売却代価ヲ定ムルニ至テハ或ハ区部会ニテ議シ難キ場合モアルナランカ、其ハ則チ其人ノ信用如何ニヨリ或ハ褒貶毀誉ニ渉ルノ嫌ヒモアリ、或ヒハ又買受人ノ都合ヲ以テ公ケニ議シ難キ場合モナシトセス、旁之レハ原案ニ据置カレンコトヲ望ム
○四十番沼間守一曰 番外ノ説ハ殆ト我々ハ迷惑ト云ハサルヲ得ス、果シテ他人ノ聞クヲ厭ヘハ傍聴ヲ禁シテ可ナリ、左レハ其点ハ少シモ気遣ナシ、而シテ十五番ノ説ハ止ムヲ得ス反対セサルヘカラス、何トナレハ果シテ十五番ノ説ヲ可トセハ苟モ我々ノ決議ハ少シモ功能ナキモノニ至リ後来ニ関係少ナカラサルヲ以テ此理ヲ一応陳ヘ置
 - 第12巻 p.510 -ページ画像 
クヘシ、若シ議事録ヲ以テ議場ノ精神ヲ果タサストセハ余程困難ヲ極ムヘシ、一体発議ヲ以テ議決セシモノハ其功力ヲ有スルモノニテ其精神ヲ知ラントセハ議事筆記ニヨラサルヘカラス、然ルヲ頻リニ十五番ハ文字ノ書キ方ニ由リ不都合ナシト云ハルヽモ其精神ヲ尽ク文字ニ写シ出スコトハナシ能ハサルヘシ、知ルヘシ、先刻来ノ意味ヲ一編ノ規則ヘハ載セ難カラン、既ニ然リ、故ニ政府ノ法令ト雖モ屡々闕漏アリテ追加増補ヲ要スルコトアリ、加之文法ノ整斉ナル彼ノ泰西諸国スラ猶且然リ、況ヤ未タ文法ノ定マラサル我国ニ於テヲヤ、玆ヲ以テ四十番ハ不完全ナル文字ヲ四五字掲ケンヨリハ其精神ヲ写シ出セル議事録ニ依ルニ如カスト云所以ナリ、且又後来ニ至リ常置委員其人ハ改ルモ議事録ハ依然ト存シ居レリ、議場トテモ深ク詮鑿ヲモ遂ケス決議ナスコトハ万アルマシキコトナレハ、今日我々ノ討議センコトハ他日ノ基本トモナリ其功力ハ少シモ例規ト異ナルナシ、尤モ之レニ二三字ヲ加ヘタリトテ敢テ害ハナキコトナレトモ又其レ程ノ益モアルマシ、必竟四十番ノ主トシテ論スル所ハ後来決議ノ如何ヲ知ルハ規則ヨリモ尚議事録ニ依ルトセハ強チ異議ハ唱ヘサルナリ
○十五番田中耕造曰 四十番ハ議事録ヲ以テ手順ヲ示ス所ノ規則ト同一ノ功力ヲ有スト云ハルヽモ、四十番ノ言ノ如ク一々議事録ニ依テ方法ヲ定ムルコトハナシ難カラン、其故如何トナレハ、一事ヲ議決スルハ多数決ニ依ルヲ以テ甲ハ彼レヲ採リ乙ハ之レヲ採リ、始メハ各々其点ヲ異ニナスモ終ニ賛成ノ多キ方ニ決スルモノニテ、或ハ其時少数ナルモ実事ニハ却テ適スルモ知レス、左レハ其レヲ以テ直チニ規則ト同一視ナスヲ得ヘケンヤ、且又四十番ハ文字ヲ加フレハ曖昧ニナル如ク申サルレトモ之レハ左様ニ六ケ敷モノニアラス、則チ自分ノ考ハ急施ヲ要スルモノハ常置委員ノ意見ニ委カストナス迄ニテ足レリ、而シテ如斯些々タル事柄ニ時間ヲ費スハ宜シカラサレハ速ニ決ヲ取ラレンコトヲ望ム
○四十番沼間守一曰 只今十五番ノ説ニテ即チ害ノアル所ヲ見出シタリ、急施ナレハ常置委員之レヲ決スルトナシタランニハ矢張リ十五番ノ望ミヲ果スコト能ハス、若シ理事者ニ於テ区部会ノ決議ヲ避ケントセハ、急施ト云テ常置委員ニ決議セシムルヲ得ヘシ、故ニ疎漏ニ文字ヲ加ヘナハ不測ノ弊ヲ招クニ至ルノ恐レアリ、若シ然ランニハ開会前ハ六十日以内トテモ日数ヲ限リ縦横ニ書尽サヽルヲ得ス、故ニ如斯ハ議事録ニ依リ以テ議決ノ精神ヲ知ルヲ可トセリ、殊ニ十五番ハ議事ニ種々論弁アリテ幾派ニモ分カレ終ニ同意ノ多数ニ決スルト云ルレトモ、其レハ道理ノ争ヒニテ事柄ハ必ス一ツニ纏マルニ相違ナシ、然レハ順序ヲ定ムル事柄ニ於テ充分ノ証拠トハナルヲ得ヘシ
○議長曰 十五番ノ説ハ未タ文字定マラス大意ノミニテハ修正モナシ難ク、且ツ時刻ナレハ暫時休息トスヘシ

         出席三十四人
  午後第七時着席
 - 第12巻 p.511 -ページ画像 
○議長芳野世経曰 前会ニ続キ発言アルヘシ
○十五番田中耕造曰 最早喋々弁スルニモ及ハサレハ単ニ修正文ノミヲ陳フヘシ、則チ此但書ヘ「但シ区部会開期中ナレハ之レヲ本会ニ付スヘシ」ト加フルコトニナシタシ
○六十番関岡孝治曰 之レハ、到底常置委員限リ決スヘカラサルニ依リ、寧ロ此為メニハ区部会ヲ開クト云フコトニ決シ置キタシ
○議長曰 六十番此項ヲ削除ナス積リナルヤ
○六十番関岡孝治曰 否ナ売却代ヲ定ムルハ区部会之レヲ決ストナスナリ
○十五番田中耕造曰 然レハ全ク削ルコトニナルヘシ
○六十番関岡孝治曰 之レヲ削除ナシタランニハ、売却代価ヲ定ムル場合モ臨時急施ヲ要スルトテ常置委員会ニ於テ決スルコトニナルヘシ
○五十九番山中隣之助曰 六十番ノ説ハチト解シ難シ、寧ロ十五番ノ説ノ如ク修正ナス方ナリ、先刻番外ハ人ニ依リ或ハ売ルト否トアル如ク云ハレタレトモ、其言果シテ信ナレハ怪マサルヲ得ス、苟モ此瓦斯局ヲ望ムモノハ裏店ニ住居ルモノニハアルマシ、若又入札ヲナス以上ハ其人ヲ択ムハ甚タ宜シカラス
○番外一番荒木一等属曰 先刻番外ノ詞ノ足ラサル所ヨリ五十九番ハ妙ニ感触ヲ起サレタルカ決シテ五十九番ノ云ハレシ如キ意味ニハアラス、最前申シタル精神ハ、或ハ其人ノ栄誉ニモ関係スルコトモアルヘケレハ公然ト議場ニテ云ヒ難キ場合モナシトセス《(ト脱カ)》申シヽ迄ナリ
○五十九番山中隣之助曰 其心配ハ尠シモナシ、落札規則ヲ能ク定メ置カハ身元ナキ人ハ入札スルコト能ハサルヘシ
○六十番関岡孝治曰 之レヲ削ラハ至急ヲ要スルモノナリトテ常置委員会限リ決シ得ルナルヘシ、故ニ売却代価ヲ定ムルハ区部会ノ決議ニ依ルト判然規則ニ明文ヲ掲ケ置キタシ
○議長曰 暫クスルモ六十番ノ説ニハ賛成ナキヲ以テ消滅ス、而シテ十五番ノ但書ヲ加フル説ニハ賛成アリタレハ、之レニ同意ハ起立
  起立十八人
 過半数ナルニ依リ「但区部会開期中ナレハ之レヲ本会ニ付スヘシ」ト云フ但書ヲ加フルコトニ決スヘシ
  書記更メ朗読
  売却代価ヲ定ムルコト
    但区部会開期中ナレハ之レヲ本会ニ付スヘシ
 一売却金額ヲ一時或ハ年賦トナシ、其年賦トスルトキハ利息ノ有無ヲ定ムルコト
 右各項常置委員ノ会議ヲ経テ府庁ニ於テ之ヲ処分スルモノトス
○議長曰 右ニテ三次会ハ終リタリ、此案ヲ以テ確定スルニ同意ハ起立
   惣起立
 確定ノ趣キハ直チニ上申スヘシ、偖テ之レヨリ明治十四年度瓦斯局臨時営繕費支出案ノ第二次会ヲ開クヘシ
○下略
 - 第12巻 p.512 -ページ画像 


青淵先生六十年史 (再版) 第二巻・第八六―八七頁 〔明治三三年六月〕(DK120061k-0008)
第12巻 p.512 ページ画像

青淵先生六十年史(再版)第二巻・第八六―八七頁〔明治三三年六月〕
 ○第二十八章 瓦斯業
    第二節 東京瓦斯局
○上略
是ヨリ先キ東京府区部会ハ瓦斯局ノ維持困難ナルヲ以テ、望人アレハ廉価ニテモ之ヲ払下ンコトヲ欲スルノ意アリ、浅野総一郎等ハ将来其有望ノ業タルヲ見込、頻リニ先生ニ払下ヲ勧メタリ、先生固ク執テ聴カス、曰ク瓦斯業ハ将来有望ナリト信セシカ故ニ、会議所ノ時共有金ヲ支出シテ起シタルモノナリ、今日ハ尚ホ事業創始困難ノ際ニ属ス、故ニ之ヲ売却スレハ共有金ハ非常ノ損失ヲ蒙ラサルコトヲ得ス、若カス両三年ヲ持チ堪ヘ、業務ヲ整理シ、利益ヲ挙クルニ至レハ、必ス高価ニ払下クルコトヲ得、府民ノ損失ヲ免ルヽヲ得ント、依テ区部会ノ有力者ニ説ク、区部会先生ノ説ヲ是ナリトシ、為メニ払下ヲ延期ス、後チ果シテ先生ノ言ノ如シ、而シテ其高価ノ払下ヲ受ケタル者ハ先生モ其一人ナリ、人先生ノ公共ノ付托ヲ重シ事ヲ執ルノ廉直公平ニ服スト云フ
   ○浅野総一郎ノ本局払下運動ノ年月明ラカナラズ。又区部会第三次会ニ於テ決議シタル本局売却処分案ハ、如何ナル経路ヲ辿リテ廃案ニナリシヤヲ明カニセズ。上掲「青淵先生六十年史」文中「依テ区部会ノ有力者ニ説ク、区部会先生ノ説ヲ是ナリトシ、為メニ払下ヲ延期ス」トアルモ、他ニ之ヲ確証スベキ資料ヲ得ズ。東京府通常会議事録ニコノ件ニ関スル議事記載ナシ。区部会ノ議題トナルニ至ラズシテ握リ潰シニ了リタルモノカ。


瓦斯界 第一巻・第三号〔明治四四年八月二三日〕 瓦斯事業と東京市(男爵渋沢栄一氏談)(DK120061k-0009)
第12巻 p.512-513 ページ画像

瓦斯界 第一巻・第三号〔明治四四年八月二三日〕
    瓦斯事業と東京市(男爵渋沢栄一氏談)
○上略
    電灯来の大恐惶
我邦に電灯の入つて来たのは明治十五年である、其頃は電灯と云へば仏国あたりでも特種の場合に多く使はれて居たので、日本でも一種の装飾用として使用さるゝに過ぎぬと思ふ者が多かつたが、其使用法が段々進歩して、今にも瓦斯灯は廃滅に帰するだらうとの風説が盛んに起つて来た、電灯の前の瓦斯灯は月夜の蛍同然だと云ふ様な考えがズツと拡がつたので、瓦斯関係者は恰かも風声鶴唳である、瓦斯灯悲観説は口から口に伝へられた、非常なパニツクだ、是より先、法律によつて東京府会が置かれた、同時に従来の東京会議所は廃止となり私は其事務一切を府会に引続だが、瓦斯局は一種の行政部だから、是は私がやつて居つた、時の府知事は又変つて楠本正隆氏で、私にも是非府会議員になれと勧められたが、私は主義として決し《(て脱)》政治上の議員にはならぬと覚悟して居たので堅く之を断つた、そして会議所の事務、公有金取締等一切の事務を府会に引続き、専ら瓦斯局の管理にのみ当つた時に、前記の電灯来の大恐慌が持上つたのである。
    浅野氏の払下げ運動
電灯の為に大パニツクを蒙り、瓦斯灯は明日が日にも廃滅の運命に瀕したかの様に思はれた時に、突如として瓦斯局払下運動をしたのは浅
 - 第12巻 p.513 -ページ画像 
野総一郎氏である、浅野氏は瓦斯局に石炭を納めて居たので、瓦斯に付ても相当な知識を持て居たが、独り瓦斯事業の有望なる事を信じ、機敏にも府知事・府会・参事会○区部常置委員ノ誤を説破して大凡そ払下の相談を取纏め、さうして私の処へ相談に来たのである、其言によると瓦斯局払下の代金十五万円、内五万円を即金で納め、残り十万円は一年一万円宛即ち向ふ十ケ年賦で納めると云ふのである。之に附加えて今此機会に瓦斯局を払下げて置けば、将来必らず大なる利益がある、その利益は貴君と等分にするから、是非承諾して呉れとの事であつた、私は直に之を拒絶した、今まで多年の辛苦を積み、費した金も殆んど二十五六万円に及んで居る、此間には色々の故障困難もあつたが、兎に角今日まで堪忍んで来、今二三年もすれば漸う物にならうと云ふ処を、只の五万円即納で売払ふとは、余り市民に不親切である、成程浅野氏と相談して今此を払下げて置けば利益もあらう、割も宜らうがそれでは筋が違ふ、東京市に対して済まぬ、苟くも瓦斯局長たる自分が私利を図つて市民に損失を蒙らしては済ぬ、若し電灯の風説に脅かされて瓦斯局を売る位なら寧ろ此事業を廃した方がよい、高が五万円位の金が市民に何の役に立つか、十年賦の一万円抔は、頭から当にならぬ、そんな事断して不承知である、誰が何と云つても不承知であると断然拒絶し、府会にも府知事にも大に之を論したので払下けは遂に沙汰止みとなつた。
○下略


浅野総一郎 (浅野泰治郎 浅野良三著) 第三八三―三九二頁〔大正一四年二月改訂版〕(DK120061k-0010)
第12巻 p.513-516 ページ画像

浅野総一郎(浅野泰治郎 浅野良三著)第三八三―三九二頁〔大正一四年二月改訂版〕
 ○第七章
    一六瓦斯(一)
 東京市最初の市営事業は、東京瓦斯局である。
 石の上にも三年といふ事がある、子供でさへ三年経てば、独りで歩む、三年は劣か、五年六年の歳月を経過しても瓦斯局許りは独り歩きが出来なかつた。例へそれが過渡期に際しての事業であつたとは言へ可成り重い市民の負担であつたに違ひない。渋沢さんが局長で、西村勝三氏が副長格、その下に筒井与八氏が、支配人として業務を総覧した。過去数年の間に費した資金が、市民の絞血二十一万円、世間ではポツポツ非難の声も聞えた、建設時代の当務者は、理想家よりも実地家が宜い、大人格者よりも寧ろ稼ぎ人が宜い、建設そのものが、楷段的なのだ、一段一段と積み上げられ、突き堅められてこそ、健実な楼閣は立つ、地堅めのない一足飛びの楼閣は、砂上の茅屋よりも危なかしい。
 瓦斯局は、家なれば立派な楼閣である、渋沢といふ大黒柱、筒井西村の両棟木、総檜造りの大御殿で、郡甍の上に、屹然と聳え立つ様は真に壮観なものであつたが、それが遺憾乍ら基礎を忘れた空中楼であつたのだ、噸九円の石炭を焚き、壱万壱千立方の瓦斯が製造されると仮定して、壱千立方の売価三円五十銭なら、九円の石炭で三十八円五十銭の瓦斯が取れる勘定だ、其外に石炭の残骸コークスは、五円位の
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価値があらう、瓦斯の儲からぬ理由は、怎うしても判らぬと言つて、惣一郎《ちゝ》は頸を捻つてゐた。
 瓦斯局の事業も、果然緩漫な処に利益を逃して居た、峻厳が必らずしも建設の謂ではない、然し緩漫の裏に尻の括りを忘れた応容さがあつたと仮定したら、それは建設といふよりも寧ろ破壊の道程を辿つてゐるとも言へよう、建設時代であらねばならぬセメント工場が、運転休止の破綻を、曝露して、払下げとなつた裏にも、官営の杜撰があつた。『若しや瓦斯にも?』と注目を怠らなかつた惣一郎の杞憂は、遺憾乍らそれは杞憂でなくて事実であつた。
『何卒、瓦斯局を年賦で払下げて頂きたい、爾うすれば、瓦斯を安くして市中を明るくします。』
 決慮一閃、平地に波瀾を起こさうとも、障害あらば粉砕して突貫するのが、惣一郎特有の性格である、市会議員の沼間守一、丸山伝右衛門氏等を歴訪して、瓦斯局整理の必要を述べ、民間経営が時代に適切なるを説いた。瓦斯局が実際過重な負担なるを痛切に感じてゐた矢先に、熱心に惣一郎に説破されたので、両氏は、無気に内諾を与へた、そして時日を期して再会を約したので、約束の当日、定刻惣一郎が再訪すると、当時市参事会員の地位にあつた、須藤・丸山・沼間其他二三の人達も見えてゐた、払下交渉は円滑に進渉して、市の出資二十一万円を、十ケ年の年賦償還とし、皆済の満期迄、瓦斯局は市へ抵当とする簡単な条件で、議員と惣一郎《ちゝ》との間に約定が成立した。
 市からは、直ちに府へ認可申請の手続きを執つた、同時に惣一郎は一度局長の渋沢さんにもお話して、内諾を得なければならぬ、それが自分として執るべき徳義上の順序であると考へたので、早速、福住町の当時の本宅に、渋沢さんを訪れた。時刻は早晨、軒並の家にも、未だ戸締りが多かつた。『多忙な人を訪問するのは、早朝に限る、早朝なれば、必らず面会出来る。』今日猶惣一郎は此方法をとつてゐる、『起きて居なければ門口に佇みても待つ』といふ、此日も一番に御面会したいものと、暁天の星の光りを頂いて訪れて来た、見ると、玄関に訪客の下駄一足、一番乗の功名を、人に仕て遣られたやうな感じを持ちながら、導かれて応接室に通ると、呆然と按座せる一人の男があつた、それは古河市兵衛氏であつた、古河氏とは渋沢さんの宅で度々出会する、古河氏同席で事業談を進めて見たが、今日迄一回も成功したものがない、釜石鉱山の如きも、漸く成功の端緒を攫んだかと喜んでゐると、それが後日の糠喜びであつたり、怎うも古河さんといふ人は、惣一郎のために悪い卜の卦であつた、お互に何処かに共鳴する性格者で、交際も厚誼であつたが、比較的無頓着な惣一郎でさへ、古河さんの顔を此朝此処に見て、『今日の卜が悪くなければいゝがなア。』と、今日の卜を案じたといふ一場の茶話がある。
 渋沢さんは、未だ前日の御疲れからか、小間使の話では、『まだ御目覚めになりませぬ。』といふ事であつた。
 待つ間程無く、渋沢さんは起き出でられた、古河氏の用談は寸時に終つた、続いて惣一郎が面会した。今日迄の市との交渉の顛末を説いて、
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『貴方も賛成して下さい、委員五名は既に同意してゐます、今日の様な有様では、貴方が如何に御骨折なすつても、仲々取締りも困難だし整理も充分に出来ますまい、又出来ないのが寧ろ当然だと思ひます、思ひ切つて、壱個人の者に之れを引渡したなら、自分の物として働きますから、自然冗費も省け、経費も収縮されます、従つて安い光りを市民に与へることとなり、一挙両得かと考へます、事業そのものから申しましても、私は非常に良い事業だと思つてゐます、従来石炭を収めてゐる関係から、内部の事情は、充分に承知してゐますが、私の計算から言へば、随分利益のある事業である、地面は市のもので無代使用が出来、石炭の煙が薪の代用となることの広告宣伝も、市の機関を使ふ、それでゐて使用方法を知らぬ人達が世間に多いのは、宣伝機関が怠けてゐるといふより外はありませぬ。貴方は局長でも、月に一度か、二度しか、見廻はれぬ多忙な御身体ですから、それで充分な取締りの出来よう筈が無い、自然調査も行届かぬといふものです、だから私に払下げて頂きたい、要するに瓦斯は、儲かる事業ですから、決して悪い仕事ではありません。』
 と、無遠慮に縷々述べ来つたら、渋沢さんは沸然色をなして憤られた。
『夫れやア、瓦斯の利益のあることは知つてゐる、利益の見込みがあればこそ、俺は多忙の中から、世話してゐる、丸山伝右衛門等では未だ判らぬぢや、過去数年、骨折つて来て漸く見込みが付いて、これから儲からうといふ処で、民間に払下げるといふことは、市に対して元金を損させるやうなものぢや、俺が預つてゐる以上は絶対に出来ぬ。』
『イヤ、損して下さいといふのではありません、年賦にして下さいといふのです、元金の利息も払ひませう。』
『イヤ駄目だ、そんなことは出来ない。』
 惣一郎は尚も執拗に追ひ縋つた。
『それでは何うして下さる。』
『何うも出来ない、そんな馬鹿な事は絶対に出来ない、将来の見えぬ連中が、そんな決議をして府知事に上申するなら、乃公は不同意だと言つて取消させる、市民に対して済まぬぢや、これから、市役所と府庁とに行つて断つて来る。』
 渋沢さんは断乎として拒絶された、其日渋沢さんは、例ののらくら馬車を駆つて、府庁へ知事を訪問された。時の知事は、芳川顕正氏であつた。
『何うも怪しからぬ、市の委員連が協議して、浅野に瓦斯局を売るといふことだが、以つての外である。』
 といふ硬論で、折角の瓦斯払下問題を打壊して終つた、後で惣一郎は、朝の卜が悪かつたと、頭を掻いて帰つた。
 然し、渋沢さんには渋沢さんとしての正当な主張があつた。官営の不満も認める、が、官営は民業の先駆である、そして利益を事実の上に示す事によつて、民業奨励の義務が果される、と共に、決して其資本も無利子で費はなかつた事実上の計算が、明確に発表される時機の到来まで、経営を持続してこそ、公金流用の意義が徹底される、然ら
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ずんば、局長としての自分の立場が無い、莫大の公金を、然かも無意義に固定さしたと言はれては、市民に顔向けがならぬ、渋沢の努力が市民に徹底さへすれば、瓦斯局必らずしも官営を固執しない、否寧ろ大いに民間に開放して、安価なる光りを市民に供給すべく協力戮心すべきものである。個人としての渋沢は何でもないが、瓦斯局長といふ肩書きが、今日を以つて、払下の時機と成し難いのぢや、と諄々と説いて公職の尊厳を重んぜられた。
 斯ういふいきさつで、瓦斯局払下は一時立消えとなつたが、
『瓦斯局の内幕は、充分注意して探査して置いて下さい。そして、自分の相談相手になつて頂きたい、其代償といふ訳ではないが、石炭丈けは一手で納めさせるから……。』
 といふ渋沢さんの話であつたから、
『併し、貴方に相談すると儲かりませんから、万事自分任せに願ひたいものです。』
 と惣一郎が無遠慮な例の論鋒を向けると、渋沢さんは、
『それは何故か?』
 と怪訝な顔付きをされた。
『何故?と言つて、そこに商売があるのですから、説明は出来ませんよ。』
と、戯談話で別れたが、其後瓦斯局問題に付いては、時々呼び出されて相談を受けた、惣一郎は斯うして、一歩一歩、瓦斯局要部に接近し行く様になつた。
   ○上掲記事ニハ誤記アリ、左ニ訂正ス。
    一市会議員ハ府会議員ノ誤。
    二市参事会員ハ府会区部常置委員ノ誤(定員七名)。
    三芳川顕正ノ府知事在職ハ明治十五年七月十九日ヨリ十八年六月十三日マデ。府知事ハ松田道之ナリ。
    四丸山伝右衛門ノ府会議員在職ハ十二年三月ヨリ十三年十一月二日マデ、常置委員トナラズ。
    五市役所ハ未ダ存セズ。


瓦斯局書類 明治十五年会計課(DK120061k-0011)
第12巻 p.516-517 ページ画像

瓦斯局書類 明治十五年会計課(東京府文庫所蔵)
明治十五年二月三日出 御用掛 服部敏(印)
 知事 書記官 会計課
瓦斯局払下之義塩谷良翰等ヨリ出願候所、本人共ニ於テ願書下戻度旨別紙之通願出候間御却下相成可然哉、付箋案共左ニ相伺候也
    按
申出ニ仍リ本書下戻候事
(別紙)
    願書御下願
一去ル一月廿二日附ヲ以テ瓦斯局御払下願書差出候処、都合有之一時御下戻奉願上追而再考之上出願可仕候、此段奉願上候也
  明治十五年二月三日       深川東大工町二十四番地
                  願人 塩谷良翰
                   代
                     鈴木亀吉
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     東京府
       御中


瓦斯局書類 明治十五年会計課(DK120061k-0012)
第12巻 p.517-518 ページ画像

瓦斯局書類 明治十五年会計課(東京府文庫所蔵)
明治十五年二月十日出      一等属 荒木功(印)
    (松田)
 知事  書記官(印)  会計課(印)(印)(印)
塩谷良翰外両名より別紙之通瓦斯局払下願出候処、右者既ニ区部会ニ於テ決議之趣モ有之、該局敷地払下之儀即今其筋御稟議中ニ付夫是取調済追而公ケ之入札法ヲ以払下可相成筈ニ候ヘ共、其払下方法及代価等更ニ該会ニ附シ、議定之上ナラテハ何分之御詮議難相成儀ト被存候間、先以前願ニ対シ左案之通御指令相成可然哉、此段相伺候也
    按
書面願之趣追而何分之儀可及指令事
    年号月日               長官
                (東京府庁回議用用紙)

(別紙)
    瓦斯局並ニ営業御払下願
謹而東京府尹公閣下ニ言ス、我輩兼テ欧洲各国ニ瓦斯灯ノ功用尠シトセス其便利大ニ国益ヲ為シ仏国巴梨ノ如キ其為メ国家ノ経済ヲモ保テリト聞ケリ、既ニ我東京府下ニ於テモ人民共有財産ノ中ヲ以テ資本金トシ瓦斯局ヲ設ケ該製造ヲ為シ市街便利ノ街灯ヲ建テ各家ノ要求ニ応シ瓦斯灯ヲ点火為スコト既ニ七年、益々瓦斯灯ノ便利経済ナルヲ知ラシメラル、然ルニ該業タルヤ共有金ヲ以テ為スベキ営業ナラザルハ府会各議員及ヒ衆論ノ帰スル処ニシテ、該局ノ営業希望者アレバ之ヲ払下ケラレンコトヲ議定アリシヲ承聴仕候、然リ而シテ該局ノ営業タルヤ一己ノ商業ヲ為ス会社ト異ナリ一時ノ私利ヲ図ル営業ナラス、若シ之ヲ誤ラハ各家ノ商業ヲ妨害シ瓦斯ノ便利信用ヲ失スル而已ナラス、年来共有金若干ヲ以テ設立為シタル功モ水泡ニ属スルニ至ルベシ、故ニ我輩此意ヲ躰シ其共有金ヲ以テ維持シ来レルノ誠心ヲ受ケ継キ永ク該業ヲ府下ニ維持シ市街一般ノ便利ヲ図ルヲ主旨ト為シ、相当ノ代価ヲ以テ該局ノ営業悉皆ヲ請受セン事ヲ願フ、冀クハ右ノ意旨深ク御洞察被成下御詮議ノ上願意速ニ御許容相成候様奉願上候也
  明治十五年二月九日
              深川区東大工町四十番地士族
                  願人 塩谷良翰
              浅草区向柳原町壱丁目廿四番地士族
                  願人 村上光雄
              南豊島郡角筈村百四十三番地士族
                  願人 岡谷繁実
 右願人共ニ於テ維持難相成節ハ、総テ本文ノ旨意ヲ確守シ保証人ニ於テ其責メヲ負担可仕候也
              神田区西小川町壱丁目壱番地華族
                  保証人 大関増勤
    東京府知事 松田道之殿
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   ○浅野総一郎本局払下願書ハ瓦斯局書類中ニ存セズ。未ダ出願ニ及バザリシカ。