デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

3章 商工業
21節 瓦斯
2款 東京府瓦斯局
■綱文

第12巻 p.518-530(DK120063k) ページ画像

明治14年9月27日(1881年)

是日本局ノ職制及ビ事務章程改正ノ義ニツキ上申ス。栄一局長トシテ之ニ与ル。


■資料

瓦斯局書類 明治十四年同十五年会計課(DK120063k-0001)
第12巻 p.519-521 ページ画像

瓦斯局書類 明治十四年同十五年会計課(東京府文庫所蔵)
(朱書)
第三百弐号
    職制及事務章程御改正相成度義ニ付上申
本局事務章程先年伺済之上制定相成候得共、聊冗長ニ失シ候廉モ有之候ニ付、此度更ニ改定仕度、就而は職制ニ於テモ同様御改定ヲ要シ候ニ付、仍チ職制ハ別紙甲号、事務章程ハ乙号之通御允裁被下度候、且又本局事務分科之義ハ是ヲ二部四掛ニ分置シ、各掛ニ係ル分掌手続は丙号之通規定可仕と奉存候、依而甲乙丙号草案相添此段奉伺候也
  明治十四年九月廿七日
            瓦斯局長 渋沢栄一東京瓦斯局長之印章
    東京府知事 松田道之殿
(朱書)
甲号
    (三字朱書)(印)
    瓦斯局職制
局長       一員
  本局百般ノ事ヲ統理ス
幹事       一員
  局長ノ命ニ依リ二部四掛ノ事ヲ管理シ部員ノ勤惰ヲ監視シ局務ヲ整頓スルノ責ニ任ス
  局長事故アルトキハ其代理ヲナスヲ得
局務ヲ分ツテ左ノ二部トス
  工事部  理事部
工事部      定員ナシ
  瓦斯ノ製造諸器具ノ製作其他諸般ノ工事ヲ執リ蒸滊機関ヲ掌リ職工ヲ指揮督励スルノ責ニ任ス
理事部      定員ナシ
  局内ノ庶務ヲ担任シ、簿冊ヲ調整シ、金銭物品ノ出納ヲ詳明ニスルノ責ニ任ス
局中ノ事務府庁ノ允可ヲ経テ執行スヘキモノハ左ノ各款トシ、其他ハ局長直チニ之ヲ処分スルヲ得
 一経費ヲ予算シ一歳ノ常額ヲ定ムルコト
 一瓦斯製造所ヲ変換スルコト
 一瓦斯主管ノ線路ヲ変更シ又ハ新ニ主管ヲ布置スルコト
 一瓦斯ノ価格ヲ高低スルコト
 一定額外ニ渉ル費用ヲ支出スルコト
 一月給金拾円以下ノ者ヲ雇入ルヽコト
 一経費定額中大科目ヲ流用スルコト
(朱書)
乙号
    瓦斯局職務章程
第一条 工理二事部ノ業務ヲ整理スル為メ下条ノ如ク分担セシム
第二条 工事部中製造工作ノ二掛ヲ置ク
第三条 製造掛ハ瓦斯製造ニ関スル諸事業ヲ担任シ、製出瓦斯ノ純雑多寡ヲ験案シ光力ヲ査定シ圧力ヲ加減シ其製出及漏散高ヲ詳記シ、諸管中ノ漏泄等ヲ察知スルコトヲ掌ル
 - 第12巻 p.520 -ページ画像 
第四条 工作掛ハ瓦斯製造ノ器械各種ノ器什灯具ヲ製作修繕シ、諸輸送管ノ線路ヲ測定シ其図ヲ調製シ、其管ヲ埋布シ、蒸滊機関ノ運用ヲ掌ル
第五条 理事部中、庶務会計ノ二掛ヲ置ク
第六条 庶務掛ハ諸物品ヲ購買シ其出納ヲ詳ニシ、往復文書ヲ立案シ書類ヲ編纂シ、所属地内ノ修繕及諸税等ニ関スル諸務ヲ掌リ、門監以下ヲ監督シ出勤簿ヲ監査ス
第七条 会計掛ハ経費並ニ工費其他一切ノ費用ヲ予算及決算シ、出納ヲ精確ニシ帳簿ヲ詳明ニシ、月計及年計表ヲ調製スルヲ掌ル
(朱書)
丙号
工理二事部分掌
  工事部分掌
工事部ハ日常工事ノ需用品ハ勿論埋管及瓦斯供給ノ為メ所要ノモノ及ヒ準備トスヘキモノヽ員数ヲ調査シ、之レヲ理事部ニ報告シ、規定ニ拠リ之レヲ請取リ各其工事ヲ為ス所ナリ
    製造掛
第一 製造掛ヲ左ノ三科ニ分ツ
第二 煆竈方 竈下ヲ煆熱シ装炭ノ適否ヲ計リ熱度ノ高低ヲ察シ「レトルト」内ノ装塡排除ヲ適度ニシ、使用ノ石炭ト製出瓦斯ノ分量ヲ詳記ス
第三 浄明方 第一第二室ニ装置セル諸品ノ運用ニ注意シ、凝縮器ノ掃除精気薬ノ配合及ヒ掃浄器精薬用品ノ更装等、総テ製造場ニ関スル事業及街灯ノ点消並ニ掃浄ヲ掌ル
第四 点査方 瓦斯線路ヲ巡視シ街灯ノ毀損灯嘴ノ不整及瓦斯ノ漏泄等ヲ点撿シ之レヲ工作掛ニ通知シ、又司圧器撿圧器及各家使用ノメートルニ注意シテ之レニ適量ノ水ヲ加注シ、埋布管ノ瀦水ヲ吸除シ椻機ノ開闔ヲ掌ル
    工作掛
第五 工作掛ヲ左ノ三科ニ分ツ
第六 鍛冶方 諸鉄器ノ製作及ヒ修理ニ従事ス
第七 飭具方 諸器械什具ノ製作修繕主支管ノ布置灯具ノ装附及街灯嘴ノ整理ニ従事ス
第八 機関方 蒸気機排気機ニ関スル諸般ノ業ニ従事ス
  理事部分掌
理事部ハ工事部ニ於テ需用ノ諸物品ヲ点査調整シ、之レカ授受ヲ明ニシ及其会計簿記記録編纂等ヲ処弁スル所ナリ
    庶務掛
第九 庶務掛ヲ左ノ三科ニ分ツ
第十 雑務方 受附事務ヲ取扱ヒ往復文書ヲ立案シ諸達書ヲ回達シ、諸書類ノ結局セルモノハ逐次編輯シ、又所属地家屋ノ修繕諸税区費等ニ係ル諸務ヲ取扱、瓦斯線路罹災ノ際出張員ニ弁当ヲ給シ出勤簿ヲ監査シ門監小使ヲ監督ス
第十一 調度方 工事部ニ於テ日常需用及準備トスル所ノ諸物品ノ買入レヲ掌リ且ツ保存ノ方法ヲ案ス
 - 第12巻 p.521 -ページ画像 
第十二 倉庫方 買入レ諸物品ノ受授ヲ詳カニシ其現在品ヲ明カニシ毎月一覧表ヲ製ス
    会計掛
第十三 会計掛ヲ左ノ三科ニ分ツ
第十四 計算方 経費ノ予算決算及ヒ工事部ニテ調整セシ書面ニ基キ諸種管具ノ代価ヲ予算シ、亦之レヲ精算シテ代金請取ノ手順ヲ為シ又月計及年計ヲ調整スルコトヲ掌ル
第十五 出納方 出納規程ニ依テ現金ヲ出納シ、瓦斯代其他収納物貸金ヲ取立テ現金ヲ管守スルヲ掌ル
第十六 簿記方 簿記並報告ハ規程ニ依リ諸会計帳簿ヲ管理シ現金出納ノ順序ヲ経タルモノハ之レヲ帳簿ニ明記シ、諸勘定ノ年月計表ヲ製ス


瓦斯局書類 明治十四年同十五年会計課(DK120063k-0002)
第12巻 p.521 ページ画像

瓦斯局書類 明治十四年同十五年会計課(東京府文庫所蔵)
明治十四年十一月 日受月五日出 六等属 林深造(印)
(松田)
(印)(印)    (印)
 知事     書記官 会計課(印)
                 (印)
瓦斯局職制章程改正之儀過般同局長ヨリ伺出候ニ付、篤ト取調其条項中当課意見ヲ附シ同局長ヘ及協議候処、右意見ニ依リ更ニ改刪之上別紙之通伺出候間尚取調候処右ニテ実施上差支無之ト存候間、御判決之上ハ左案之通同局ヘ御達相成可然哉、此段相伺候也
    御達案
                        瓦斯局
瓦斯局職制並職務章程別冊之通相定候条此旨相達候事
                       長官
    別冊瓦斯局伺職制並職務章程之通
  但本文瓦斯局長ヨリハ伺書トシテ差出候得とも上申ト見做シ先例ニ依リ御達ニ取調候、依テ御指令不相成シテ可然哉添テ申上候也
                       (東京府庁回議用)
   ○十一月十四日第六百五拾六号ヲ以テ下達ス。


瓦斯局書類 明治十五年会計課(DK120063k-0003)
第12巻 p.521-522 ページ画像

瓦斯局書類 明治十五年会計課(東京府文庫所蔵)
明治十五年三月 日受月廿七日出 御用掛 服部敏(印)
(松田)
 (印)(印)    (印)会計課(印)(印)(印)
知事       書記官
                 (印)職務掛
瓦斯局職制客年十一月中改正之義御達相成、随テ従来辞令書ヘ相認メ候事務掛又ハ製造掛等之名称ハ該局長適宜ニ分掌ヲ命シ候成例ニ相変シ候間、本府ヨリ之辞令書法其儘ニ難据置ニ付、既ニ今回水野西陰御採用ニ就テハ、更ニ新例ヲ設ケ瓦斯局傭申付云々之辞令相成候処、其他前々より勤続キノ者ハ旧例之通事務掛製造掛ト相成居、水野西陰トハ同職異称ニテ不相当ニ付、本府ヨリ辞令書相渡候者ニ限リ一般ニ瓦斯局傭之名称ニ改正之義為心得左案之如ク御達相成可然哉、此段相伺候也
 但幹事ハ従前之名義ニ据置変更無之、其他諸職工之義ハ月給之多寡
 - 第12巻 p.522 -ページ画像 
ニ拘ラス該局長ヨリ辞令書相渡、追々届出候成例ニ付、本文之限ニハ無之候事
     按
                        瓦斯局
客年十一月中其局職制更正ニ付テハ従前事務掛製造掛ト相達候局員ハ都テ瓦斯局傭ト可相心得、此旨相達候事
  但幹事及諸職工ハ従前之通可心得事
  年 月 日                  長官
                        (東京府庁回議用)
   ○四月一日第百六号ヲ以テ下達ス。
   ○明治十四年七月二十日太政官ヨリ従来府庁ニ於テ監督ニ当リタリシ瓦斯製造所ハ自今警視庁ニ於テ管理スベキ旨達セラレ、府庁ヨリ瓦斯局業事ノ概要並ニ瓦斯供給家調書ヲ回送ス。此資料左ニ参考トシテ掲グ。



〔参考〕瓦斯局書類 明治十四年会計課(DK120063k-0004)
第12巻 p.522-523 ページ画像

瓦斯局書類 明治十四年会計課(東京府文庫所蔵)
(朱筆)
「内閣書記官局令第四号」
                         警視庁
                         東京府
別紙ノ条件自今警視庁ニ於テ管理スヘシ此旨相達候事
  明治十四年七月二十日
               太政大臣 三条実美
(別紙)
一瓦斯製造所及貯蔵場
一焦煤製造所及貯蔵場
一諸タール製造所及貯蔵場
一テレピン油製造所及貯蔵場
一ペツチ製造所及貯蔵場
一魚油製造所及貯蔵場
一塩〓硝〓硫〓其佗揮発劇烈《(酸)》ノ舎密物等製造所及貯蔵場
一獣類脂肪筋骨化製所
一製皮所
一膠製造所
一肥料製造所
一マツチ製造所
一焼酎亜爾挌爾醸溜所
一諸鋳造所
一諸溶鉱所
一玻璃製造所
一石炭置場
一煉化瓦類陶造所
一石膏及石灰製造所
一蛎殻灰製造所
一紙漉所
一襤褸精化所
一陶器製造所
 - 第12巻 p.523 -ページ画像 
一石鹸製造所
一澱粉製造所
                     (東京府用紙)


〔参考〕瓦斯局書類 明治十四年会計課(DK120063k-0005)
第12巻 p.523 ページ画像

瓦斯局書類 明治十四年会計課        (東京府文庫所蔵)
明治十四年十月六日出        御用掛 服部敏(印)
     (松田)
 知事  書記官(印)   (印)会計課(印)
警視庁ヨリ瓦斯製造所書類之儀別紙通知ニ付、左ニ御回答相成可然哉相伺候也
      案
    警視総監宛              長官
瓦斯製造所等自今御庁ニ於テ管理之儀御達ニ付テハ、従前営業之者其人名及関係之書類回送可致旨御照会ニ付、別冊瓦斯局業事之大概並瓦斯供給家調書相添、此段及御回答候也
                     (東京府庁回議用用紙)
(別紙)
三千四百十九号
瓦斯製造所等自今当庁ニ於テ管理スヘキ旨去ル七月廿日太政官ヨリ御達相成候ニ付テハ、従前御庁ノ允許ヲ得テ営業之者ハ其人名及右ニ関スル書類ハ悉皆御交付有之度、此段及御照会候也
  明治十四年八月一日      警視総監 樺山資紀
    東京府知事 松田道之殿
                       (東京府用紙)


〔参考〕瓦斯局書類 明治十四年会計課(DK120063k-0006)
第12巻 p.523-530 ページ画像

瓦斯局書類 明治十四年会計課(東京府文庫所蔵)
  瓦斯局業事之大概
                  瓦斯局 東京瓦斯局印
    瓦斯局業事ノ大概
瓦斯トハ気体ノ総称ニシテ其之レヲ燃焼シテ夜間照明ノ用ニ供スルモノ之レヲ照明瓦斯ト云フ、略シテ単ニ瓦斯ト通称ス、此気ハ石炭ノ乾餾ニ依テ成ル所ニシテ今爰ニ本局所用ノ器械ノ各種ヲ掲載スルニ大略其製造法ヲ記セサルヲ得ス、則其石炭ヲ乾餾スルニハ「レトルト」ト称スル器内ニ於テス、此器ハ鉄或ハ耐火粘土本局ニテハ粘土製品ヲ用ユヲ用テ製セル円壔形或ハ楕円形又ハ半円形ノ空筒ヲ火炉内ニ横置シ、爰ニ石炭ヲ装入シ密閉シテ炙熱ス、然ルトキハ石炭中所含ノ有機分剖解シテ一種ノ気体トナル、是レ則瓦斯ナリ、此気ノ発生スルヤ「レトルト」内ヲ謝シ、鉄管ニ依リ直チニ凝縮器中ニ至ル
○凝縮器《コンデルソル》 此器ノ用タル「レトルト」内ニ生出セル温熱ナル瓦斯ハ常ニ多量ノ油質分殊ニ瀝青分《テール》ヲ混有スルヲ以テ此器中ヲ通過セシメテ冷底シ、夫ノ強熱ニ依リ揮発混合セル諸物質ヲ爰ニ脱離セシムルモノニシテ其構造タル許多ノ鉄管ヲ直立セルモノヨリ成リ、其上部ハ一管ヨリ他ノ一管ニ互ニ相接続セシメ、下部ハ一大鉄箱ノ横置セルモノヽ蓋版ヲ貫キ、其内部ニ口ヲ開ケリ、此鉄箱ハ管ノ二個毎ニ隔板ヲ装シ、箱内ニ来ル所ノ瓦斯ハ次ノ管内ニ通リ他管ニ到ルヲ許サヽラシム、而シテ瓦斯ハ其「テール」分ノ大抵ヲ爰ニ遺残シテ此器ヲ謝シ、次テ又
 - 第12巻 p.524 -ページ画像 
掃除器ニ移入ス、但シ箱内ニ瀦留セシ瀝青ハ別ニ他処ニ流瀉スルノ道アリ
○瓦斯凝縮器ヲ経過スルヤ直チニ排気機《エキザウストル》ニ入ル、此機ハ、瓦斯ノ諸器械内ヲ通過セサルヘカラサルカ為メ其際各器ノ磨擦抗抵ニ依リ其流過ヲ防碍セラレ、随テ産気ノ根原タル「レトルト」内ニ圧力ヲ逞フシ、以テ其器ノ毀損ヲ促進スルノミナラス瓦斯ノ漏出ヲ増大シ、且畜気槽中《(蓄)》ニ流入スルノ勢力ヲ損耗ス、此ニ於テ其流動力ヲ助ケ圧力ヲ減シ漏失ヲ少フシ各器ノ抗抵ヲ破ラシムルニ供スルモノニシテ、則チ此器ハ一種ノ機関ヲ具ヘ、別ニ蒸気機関ヲ設ケ之レニ接続シ、其蒸気噴出ノ力ヲ以テ瓦斯ノ流動ヲ速カナラシムルモノナリ、故ニ此器ノ前後ニ瓦斯ノ圧力ヲ験計スルノ器アリ、之レヲ計圧器ト云フ、下条ニ詳説スヘクペロウゼ氏ノ凝縮器及ヒ変路開闔器ノ設ケアリト雖トモ爰ニ之ヲ略ス
○掃浄器《スクラツプル》ハ瓦斯中所含ノ「アンモニア」及ヒ「ナプタリン」等ノ諸雑物ヲ除去スルカ為メ冷水ヲ以テ瓦斯ヲ洗掃スル為ノ器ニシテ、大ナル円壔形ノ鉄筒内ニ骸炭《コーク》ノ塊ヲ充満セシメ、其頂部ニハ冷水ヲ〓キ、此ニ雨下セシムル如ク構造シ、瓦斯ヲシテ下部ノ口ヨリ入リ上部ノ口ヨリ出ツヘクス、今ヤ瓦斯此壔内ニ入リ満壔内ニ分散シ、骸炭塊ノ間隙ヲ通リ円壔ノ上部ニ達スルノ際上部ヨリ雨下スル所ノ冷水ニ遇ヒ、混有セル「アンモニア」及ヒ「ナプタリン」等ヲ溶融洗掃シ、而シテ此洗汚水ハ壔ノ下部ヨリ流出シ、瓦斯ハ大ニ清浄質トナリ上部ヨリ脱出シテ更ニ又精浄器内ニ移ル
○浄気器《ブリファイル》ハ瓦斯掃浄器ヲ経ルモ猶未タ純精ニ至ラスシテ種々ノ気体ヲ混有スルモ以テ此夾雑気ヲ除去シテ最終之レヲ精浄スルノ器ナリ、此器ハ鉄製方形ノ箱ニシテ内ニ数層ノ木格子ヲ架附シ、其格子上ニ布片ヲ敷キ其上ニ硫酸鉄緑礬ト生石炭《(灰)》ノ和剤ヲ木鋸屑ニ混スルモノヲ撒布シテ密蓋セルモノナリ、今ヤ瓦斯ハ此器ノ底部ヨリ入リ格子上ノ和剤中ヲ透過スルノ際夾雑スル所ノ硫化水素気ハ和剤中ノ硫酸鉄ノ鉄ニ「アンモニア」ノ一分ハ其硫酸ニ化合シ、一部ハ石炭ニ吸収セラレ、又炭酸分ハ石炭ニ化合シテ共ニ瓦斯中ヲ脱シ初メテ精浄ノ照明瓦斯ト為ル但シ此器ハ只一器ノミヲ以テ全ク其作用ヲ遂クヘキモノニアラサレハ本局ニ於テハ四回此作用ヲ遂ケシムルカ為メ常ニ其四器ヲ設ケ連接共用シ、瓦斯ヲシテ其甲ヨリ乙丙ヨリ丁ト順次相経過セシム、但シ其和剤ハ毎日之レヲ更換シテ使用セリ
○浄気器ノ和剤ヲ更換スルニ当リ四個ノ器中一時或ハ甲乙両器ノミヲ使用シ以テ丙丁ノ和剤ヲ更換シ、又丙丁ノミヲ使用シ甲乙ノ和剤ヲ更換スヘキヲ以テ瓦斯ノ通路モ亦タ毎回彼是変換セサルヲ得ス、此ノ如ク瓦斯ノ通路ヲシテ或ハ甲乙ヨリ丙丁ニ誘キ或ハ丙丁ヨリ甲乙ニ過ス等時々其通路ヲ変換セシムルカ為メ、一器ノ設アリ、之レヲ「変換開闔器《ツエンジバルプ》」ト云フ、此器ハ円壔形ノ鉄槽ニシテ内ニ少許ノ水ヲ納レ底部ヲ貫穿シテ数条ノ輸導管其水面ニ突出シテ口ヲ開ケリ、而シテ更ニ円壔形鉄箱ニシテ内部ヲ隔板ヲ以テ数区ニ区劃セル蓋槽アリ、之レヲ覆フ故ニ瓦斯導管ノ来往二口ヲシテ覆蓋下ノ一区劃内ニ在ラシムレハ、一器ヨリ一管ヲ経此ニ来ルモノ、復タ他管ニ依リ他器ニ移ルヘキハ勿論ナリ、然シテ各浄気器ヨリ導管ノ来往管口ハ総テ皆此器内ニ輻リ其口
 - 第12巻 p.525 -ページ画像 
ヲ開クヲ以テ、タトヘハ甲器ノ来管ト乙器ノ往管トヲ覆蓋ノ一区劃下ニ覆フモ、丙器ノ来管ト丁器ノ往管トヲ一区内ニ覆フコトヲモ為シ得ヘク造リシヲ以テ、甲浄気器ヨリ乙浄気器ニ輸リ、又丙器ヨリ甲器ニ輸ラスシテ直チニ乙器ニ移ス等亦タ随意タルヘキモノナリ、而シテ此器ハ「ブアルブ闔扉」ノ名アリト雖トモ尋常闔扉次ニ詳説スヘシトハ大ニ其形ト其用途ト共ニ異ナル所ナリ
○瓦斯ノ浄気器ヲ経過シ来ルヤ其質既ニ精浄ト成リシモノナレハ、之レヲ畜気槽《(蓄)》ニ輸リ爰ニ之レヲ貯フヘキモノナリト雖トモ、其製出量ノ容積ノ如キハ予メ蓄気槽ニ送ルニ先チ験知セサルヘカラス、故ニ浄気器ト畜気槽《(蓄)》ノ間ニ於テ其容積ヲ計ルノ器ナカルヘカラス、此器ヲ瓦斯ノ験容器《メートル》ト云フ、其装置タル円壔形鋳鉄槽ヨリ成リ、更ニ其内ニ鍍錫セル鉄葉ヲ以テ内槽ヲ造リ軸アリ外槽内ニ回転スヘクシテ此軸ニ薄鉄葉ヲ用テ造レル六片ノ翼アリテ斜ニ螺旋状ヲ為シ、各々一周ノ六分一ヲ回旋シテ内槽ノ内面ニ銲着ス、外槽ニハ嘴口ヲ具ヘ水ヲ注入スヘカラシム、此全槽ハ横臥セシメ常ニ其内積六分許ノ水ヲ注入シ翼車ノ中心ヲシテ常ニ水面下ニ没入セシム、又槽ノ後面ニハ瓦斯出入ニ管ヲ設ケ其送入管ハ水面下ヨリシ、輸出管ハ水面上ニ開口ス、而シテ翼車心軸ノ一端即チ外槽ノ前面ニハ母歯車アリテ数個ノ子歯車ヲ附シ各之レニ針盤ト指針トヲ設ケ以テ瓦斯ノ容積ヲ験定スヘクシ、此指針ハ十五立方尺積ヲ示スモノアリ、百立方尺積ヲ示スモノアリ、千アリ万アリ十万百万ノ六指針ヲ装附セリ、今ヤ瓦斯此槽内ニ来ルニ車翼ハ水面ヲ掩覆スルヲ以テ瓦斯ハ此翼ヲ圧上シ、之レヲ水面ヨリ分離セシメサルヲ得ス、此ニ於テ車翼圧上セラレテ回転シ、瓦斯水面上ニ来リ漸ク其積ヲ増シ翼車ヲシテ既ニ円形ノ六分一ヲ回転スルニ至レハ更ニ又他ノ車翼換リ来リテ水面ヲ掩フ、掩ヘハ復タ之レヲ圧上回転シ逐次此ノ如クシテ断ヘス翼車ヲ転回セシム、而シテ此翼車ノ回転ハ則チ瓦斯ノ立方積ヲ計量スルモノニシテ、其一回転ハ瓦斯ノ幾立方尺積ヲ許スヘキモノタルノ定則アリテ指針ヲ回転スルヲ以テ、乃チ指針ヲ験シ以テ送入瓦斯ノ容積ヲ詳識シ得ヘキモノナリ
○以上説ク所ノ験容器ハ本局内ニ限リ使用スルモノニシテ其積少ナ《カ脱》ラス、乃チ二十四時間十万立方尺積ノ瓦斯ヲ通過セシムヘキモノナリ、但シ此器ハ本局ニ於テ瓦斯ノ製出積ヲ計験スルモノニシテ別ニ又各供給家毎ニ其使用ノ容積ヲ計験スヘキ小形験容器アリテ其大小種類甚多シ、然レトモ其用途ト構造トニ至テハ別ニ異ナル所ナシ、故ニ之ヲ爰ニ贅セス
○瓦斯験容器ヲ通過シテ其容積ヲ詳記セシムレハ直チニ蓄気槽内ニ入ル、蓄気槽ハ乃チ製出瓦斯ヲ爰ニ貯蓄シ以テ各需要家ノ供給ニ備フルモノニシテ、復タ啻蓄気ノ用ノミナラス既ニ蓄フ所ノ瓦斯ヲシテ更ニ之レヲ市街諸営道ヨリ各処ノ供給家ヘ輸送派流セシムルカ為メ、覆蓋槽ノ重力ヲ以テ圧迫シテ之レヲ随処ヘ駆出セシムルモノナリ、而シテ其装置ハ極メテ管単《(簡)》ニシテ鉄版《(板)》ヲ以テ作造セル円壔形ノ外槽アリ半ハ水ヲ以テ充タシ、内ニ同シ鉄版ヲ以テ造レル有底ノ円壔槽ヲ倒ニ外槽内ノ水上ニ覆蓋ス、故ニ製出セル瓦斯ハ此覆蓋槽ヲ圧上シテ尽ク其槽内ニ聚ラシム、之レヲ以テ其構造ハ極メテ大ナラサルヲ得ス、本局設
 - 第12巻 p.526 -ページ画像 
置セルモノハ二個ニシテ其大ナルモノハ直経五十五尺高サ拾九尺内部ノ容積四万五千百四十立方尺ナリ、而シテ其小ナルモノハ現今常用ニ供セサレハ之レヲ爰ニ贅セス
○瓦斯ノ市街ニ流布スルハ蓄気槽ノ圧力ニ因ルモノタルハ既ニ説ク如クニシテ其槽ノ重量ノ如キハ素ヨリ変易ナシト雖トモ動モスレハ圧力ニ変易ヲ生スヘキモノナルヲ以テ圧力ニ変易ヲ生スル所以ハ下条ニ詳記ス之レヲ防クノ術ナカルヘカラス圧力ニ大小アレハ各供給家ニ於テ使用スル所ノ瓦斯灯ヨリ噴出スル所ノ勢ニ強弱ヲ生シ、従テ灯火ニ大小ヲ現シ使用ノ瓦斯量ニ多寡ヲ来シ以テ灯光ニ明暗ヲ致スヘキハ勿論ナリ此圧力ヲ均斉シ噴出瓦斯量ヲ同一ナラシムルカ為メ一器アリ、之レヲ制圧器ト云フ「レツシユール・ゴバルノル」圧力ヲ主宰スル器ノ義此器ハ其名ノ如ク各供給家ヘ派送スル瓦斯ノ圧力ヲ制限シ、絶ヘス同一力ナラシムルモノナリ、今此器ノ圧力ヲ制限スル機関ノ理ヲ説カサルヲ得ス、タトヘハ供給家ノ一処ニ於テ一時非尋多量《(常ニカ)》ノ瓦斯ヲ使用スルコトアレハ、其一方ニ於テ瓦斯ノ容積劇カニ減少スルカ為メ蓄気槽ニ抗抵スルノ力ノ損耗スヘキハ勿論ナリ、故ニ蓄気槽ニ於テハ為メニ其圧力増大シテ瓦斯ヲシテ管内ニ流布セシムルノ力強盛シ、随テ灯嘴ノ噴出ヲ甚タシクシテ灯火非常ノ長大ヲ来スヘク、又之レニ反シテ製造所又蓄気槽ニ事故アリテ圧力減少ノ因ヲ来ストキハ、瓦斯ノ流注緩漫トナルヘキヲ以テ灯嘴ヘ噴出ノ力モ亦タ随テ減シ、灯火ハ縮少或ハ消滅スルニ至ルヘシ、是レ則チ圧力ノ変易ニ出ツル所ノ成果ナリ、此ニ於テ乎圧力ヲシテタトヘ強弱ナルコトアルモ灯嘴ノ噴出瓦斯量ニ至テハ多少ナカラシメンコトヲ要ス、譬ヘハ管口一「インチ」直経ノモノヨリ噴出スル瓦斯ノ圧力験圧器ヲ以テ〇・一ナルヲ験スルトキハ其一時間ノ噴出量ハ六十七立方尺積ナルヘシ、今其圧力ヲ増大シ五・〇ナラシムルトキハ百五十一立方尺積ヲ噴出スヘキナリ、然ルニ又其圧力ハ〇・一ナルトキニ当リ同口経ノ灯嘴ヲ以テ一時間百立方尺積ヲ燃焼スヘキ灯光ヲ要セント欲スルモ、灯嘴ノ口経ト圧力ノ対称ヲ失スルカ為メ瓦斯ノ噴出其量ニ適セサルヲ以テ火身細小遂ニ所望ノ光力ヲ得ヘカラス、然レトモ更ニ今其噴出孔口ヲ大ニスルトキハ、復タ其希望ノ光力ニ達セシムヘシ、乃チ其孔経ヲシテ一「インチ」ト四分三余トスレハ、同圧力ニシテ同時間中所要ノ積、即チ百立方尺積ヲ噴出セシメ得ヘク、且ツ其灯火ニ於テモ随テ変易ナカルヘシ、是レ則チ此器構造ノ基ク所ナリ
○此器ノ結構ハ創製者ニ依テ種別アリト雖トモ其主旨タル皆一途ニシテ、銅或ハ鉄造ノ一槽ニ水ヲ盛リ之レニ同造ノ槽ヲ覆蓋シ水上ニ浮游セシム、但シ其覆槽内ノ下部ニハ自動弁アリテ瓦斯圧力ノ増減ニ従テ此槽或ハ浮上シ或ハ沈降シ以テ其弁ヲ上下シ噴口ヲ広狭シテ圧力ヲ制定ス、此弁タル別ニ一種ノ浮子ニ結着シテ水上ニ浮游スルモノナレハ今若シ瓦斯ノ流通劇シクシテ圧力旺盛スレハ浮槽ハ浮上シ槽内ノ水面ハ却テ下降スヘシ、然ルニ自動弁ノ浮子ハ水面ノ下降スルト槽ノ浮上スルカ為メ弁ト共ニ下降シ以テ噴孔ヲ縮少ス、又之レニ反シテ流通弱クシテ圧力減耗スレハ浮槽ハ下タリ水面ハ上ルヲ以テ、浮子ハ弁ト共ニ浮上シテ自ラ噴孔ヲ廓大シ瓦斯ノ流出量ニ不同ナカラシメ、以テ諸管内ヘ流布ノ圧力ヲシテ平均ヲ得セシムルモノナリ
○又本局内ニ限リ使用ノモノニシテ最モ欠クヘカラサル一器アリ、瓦
 - 第12巻 p.527 -ページ画像 
斯ノ性質光力ノ強弱ヲ験定スルモノ是レナリ、此器ヲ験光器ト云フ、凡ソ暗処ヲ照明スルハ発光体ノ性質ニ大関係ヲ来スヘキハ素ヨリ論ヲ俟タス、而シテ照明瓦斯ノ如キモ亦タ然リ、是レヲ以テ其光力ハ毎常一定セサルヘカラサルナリ、之レヲ定ムルニハ他ノ発光物ノ光力ニ比較シテ其強弱ヲ測定スルヲ法トス、而シテ其比較ヲ取ル所ノ物品亦タ種々アリト雖トモ近時ハ発光力ノ一定セル蝋燭ヲ製シ其燭幾個ノ光力ニ比較スルヲ常トス、一定ノ蝋燭トハ何ソ、某ノ時間ニ某ノ重量ヲ燃消スヘキ鯨脳油製ノ蝋燭是レナリ、本局ニ於テモ亦此法ニ従ヒ其光力ヲ一定ス、其方タル一時間五立方尺積ノ瓦斯ヲ噴出スヘキ「ヲルガント」灯此灯ノ構造ハ許多ノ細小孔ヲ具ヘ此孔口ヨリ瓦斯ヲ噴出セシメ点火スヘキモノニ点火シ此光力ヲ以テ前条言フ所ノ蝋燭幾個ノ光力ニ敵比スヘキヤヲ験定スルニアリ、而シテ通常十二燭光ニ対比スルモノヲ以テ之レヲ一位ノ瓦斯トセリ、故ニ其光力十二燭光ニ至ラサレハ光力弱キモノトシ、十二以上ニ達スルモノヲ幾分歟強キモノトス、其強キモノハ発光分ノ多キニ依リ弱キモノハ他ノ不燃性瓦斯或ハ燃性アルモ発光少ナキ瓦斯ノ混合ヨリ成ルモノナレハ即チ之レヲ除去セサルヘカラサルナリ、此器ノ本局ニ於テ常用スルモノハ最モ簡単ニシテ、其結構タル一杆アリ長サ四尺許、劃度線ヲ施シ燭数ニ対比スヘキ数字ヲ記シ、横置シテ其一端ニハ「ヲルガンド」瓦斯灯アリテ可験ノ瓦斯ヲ燃焼セシムヘク、又其一方ノ端ニハ蝋燭ヲ装附スヘクシ、其横杆上ニ直経三寸許ニシテ長サ五寸許ナル薄鉄葉ヲ用テ製シ黒色仮漆ヲ塗着セル無底円壔形ノ筒アリ、筒ノ中央部ニ白色紙片ノ中心部ニ油ノ一汚点ヲ附セルモノヲ夾入シテ中央ヲ隔離ス、而シテ又其前面ニ窓口アリテ中央ノ紙片ヲ其両側ヨリ熟視シ得ヘクシ、二物ヨリ発スル所ノ光線ヲシテ筒ノ両端ヨリ中央ノ白紙上ニ直射スヘクシ、且ツ此筒ハ杆上ニ於テ左右ニ移転スヘカラシム、今可験ノ瓦斯ト蝋燭トノ二光線ヲ以テ筒内紙片ノ両側ヨリ照明セシメ其汚点部ヲ点査シ筒ヲ左右移動シ遂ニ其汚点痕ヲ視察シ得ヘカラサルノ処ニ至ラシメ以テ杆上ノ劃度線ノ数字ヲ験シ、瓦斯光力ノ幾燭数ニ敵比スルヤヲ測定スルナリ、蓋シ此器ヲ以テ光力ヲ験定シ得ヘキノ理タル点油セル白紙ノ前後ヨリ同光力ヲ受ケシムルトキハ全ク其油点ヲ視認シ得ヘカラサルノ理ニ出ツルモノニシテ、タトヘハ油ノ一汚痕アル紙片ヲ取リ窓内ヨリ窓外ニ向テ之レヲ透看スレハ其汚痕部ハ透明ヲ為シ光線ヲ透過セシムヘシ、然ルニ又験者其身ヲ窓ニ背シテ之レヲ看レハ此汚痕部ハ却テ暗黒ヲ呈スヘシ、再ヒ此紙片ヲ窓ノ面ニ直角ニ保持シ窓ノ側部ヨリ之レヲ看レハ此汚点ハ遂ニ視認シ能ハサルナリ、是レ窓ニ向フトキハ戸外ノ強キ光線此油痕部ニ限リ透入スルヲ以テ此部透明ヲ為シ又之レニ反スルトキハ光線此部ニ限リ透過シ、他ノ汚痕ナキ部ハ却テ験者ノ眼中ニ反射スルニ依リ汚痕部ハ却テ黒色ヲ為シ、油痕ナキ部ハ白色ヲ呈スヘシ、然ルニ此紙片ヲ窓ニ直角ニ保持スルトキハ此紙片ノ前後光線ニ差異ナキヲ以テ其透過ト反射ト其光量ヲ同フスルヲ以テ遂ニ油ノ痕跡ヲ視認シ得サルナリ、而シテ本局製出ノ瓦斯ノ光力ハ此方ノ本位ニ基キ常ニ十二燭光ノモノヲ使用ス
○又一器アリ験圧器《フレツシユールゲージ》ト云フ、瓦斯ノ圧力ヲ験量スルノ器ニシテ其製又一様ナラスト雖トモ、本局内瓦斯輸導幹管ノ根基ノ処ニ於テ設置セル
 - 第12巻 p.528 -ページ画像 
モノハ前ノ制圧器ノ構造ニ斉シク水槽内ニ覆蓋槽ヲ倒マニ浮游セシメ瓦斯共覆蓋下ニ来リ其圧力ノ強弱ニ従テ之レヲ浮沈セシムヘクシ、而シテ此蓋槽ノ頭部ニ鉛筆ヲ固持セシムルノ一杆アリ、傍ラ白紙片ヲ装附シ以テ其圧力ヲ紙上ニ自記セシムヘク構造セリ、但シ瓦斯ヲシテ諸管内ニ派送セシムルニハ昼夜其圧力ヲ異ニセサルヲ得ス、故ニ此白紙ハ別ニ一個ノ円壔ニ巻附シ此円壔上ニ時辰儀ヲ置キテ其機関ノ作用ヲ以テ併セテ此壔ヲシテ一昼夜ニ一転回セシムヘクシ、又此白紙ニ継横《(縦)》ノ線ヲ設ケ経線ヲ以テ時間ヲ知リ緯線ヲ以テ圧力ヲ知ラシム、故ニ鉛筆ハ瓦斯ノ圧力ト時辰儀機関トノ為メ白紙上ニ迂曲蜿行状ノ線ヲ自記スルモノナリ、是レヲ以テ午前何時ニ於テハ幾許圧午後何時ニハ幾許圧力タリシヤヲ詳記シ得ルナリ
○前条掲載セル験圧器ハ本局内ニ限リ装置セルモノニシテ又別ニ一種最モ簡単ニシテ何処ニモ携帯シ得ヘキ小器アリ、此器ハ玻璃製ノ二条ノ管ヨリ成リ、此管ノ下部ハ互ニ相連合シテ一管ト為リ、上部ハ両端共ニ其口ヲ開放ス、傍ラ劃度ノ尺板アリテ附装セリ、今此器ヲ使用スルニ当テハ毎回此管ニ少許ノ水ヲ注入シ管ノ一端ハ「ゴム」管ヲ用テ可験ノ瓦斯管ニ接続シ一端ハ放開セシム、故ニ其水ハ瓦斯ノ圧力ニ依リ圧サレテ多少一方ノ管内ニ昇上シ二管ノ水面ニ差異ヲ来スヘシ、此差ハ則チ圧力ニ依ルモノナレハ副フル所ノ尺度ヲ看テ之レヲ験定スルナリ
○以上説ク所ノ諸器ハ最終ノ一器ヲ除クノ外皆局内限リ使用スル所ノモノニシテ、之レヲ他ニ携帯スルコト殆トアルコトナシ、然シ最終ノ一器及ヒ以下説ク所ノモノハ局ノ内外ヲ論セス使用スルモノトス
闔扉英語「ヴアルヴ」ト云ヒ仏語「ワンヌ」ト云フ此器ハ瓦斯ノ埋管内ノ流通ヲ閉止スルモノニシテ管路ノ岐岔、又ハ十字形ヲ為ス処或ハ適宜ノ距離或ハ之レヲ要セサルヘカラサルノ処ニ於テ毎常之レヲ設置シ、其岐出岔派等ノ管内ニ於テ異事アルトキハ即チ其一局部ヲ閉闔シ瓦斯ヲシテ爰ニ流入スル勿ラシムルモノナリ、但シ其異事タル天災火災或ハ水道修繕等ニ依テ埋布ノ管或ハ街灯等ニ摧折破毀ヲ来タセシトキ又ハ各供給家ニ於テ其管ニ毀傷ヲ生セシカ如キ等アルトキハ一時閉鎖シテ修繕ノ工事ヲ営為スル為メニス、又時トシテハ此闔扉ヲ全ク閉鎖セスシテ一分ヲ鎖シ、管径ヲ狭小ニシ以テ制圧器ノ作用ト斉シク瓦斯流通ノ度ヲ適宜ナラシムルコトアリ
○此器ノ構造ハ鉄製ノ平扁ナル箱様ノモノニシテ、此箱ノ両面ニハ接続スヘキ管ノ口経ニ斉シキ管形ノ一小部分ヲ設ケ、以テ他管ニ接続スルニ供シ、此箱中ニ闔扉アリ、闔扉ニハ螺旋又ハ歯車アリ、且ツ之レニ適合スヘキ線条アル一杆アリテ直立シ其上端ハ地ノ表面ニ近接ス、故ニ人地上ニ在テ転螺器ヲ以テ線条杆ヲ回転スルナリ、此ニ於テ闔扉ハ為メニ左右或ハ上下ニ進退シ、以テ流路ヲ開闔スルモノナリ、而シテ此器ハ前ニ説ク如ク非常ノ際欠クヘカラサルモノナレハ、之レヲ設置セル員数及其位置等ハ詳ニ下条ニ掲載スヘシ
○嘴栓英コツク仏ロビ子此器ハ枝派セル小瓦斯管ヲ栓塞スルノ器ニシテ其用殆ト闔扉ニ異ナラス、只其器ノ小ニシテ、細管ニ附装スヘキノ異アルノミ、則チ灯嘴ノ下部ニ装シテ灯火点消ノ際之レヲ開閉シ、又其回転ノ
 - 第12巻 p.529 -ページ画像 
度ヲ量リテ圧力ヲ制限シ、或ハ灯火ヲ大小スヘシ、而シテ其最モ大ナルモノト雖トモ供給家ノ戸外ノ一枝分管ニ装シテ闔器ノ作用ヲ主ト《(ナ)》ラシムルニ外ナラス
○此器ノ構造ハ又種々アリト雖トモ畢竟尋常ノ水出シ口ト異ナラスシテ管ニ直角ヲ為シ、一栓ヲ串通シ、此栓ニハ管ノ口径ニ斉シキ孔口ヲ穿テルヲ以テ平常瓦斯ノ流通ニ於テ異状アルコトナシ、但シ閉鎖ノ際此栓ヲシテ一周ノ四分一回転スレハ此栓管口ヲ遮断シテ全ク流通ヲ閉鎖スヘシ、故ニ其回転ヲシテ六分ノ一、八分ノ一等ナラシメハ以テ管口ヲシテ随意適宜ニ縮少シ得ヘキナリ、此器ノ大抵ハ指ヲ以テ回転シ得ヘク、又大ナルモノニ至テハ回転鑰ヲ要スベシ、而シテ前述ノ如ク其大ナルモノハ毎引用家ノ戸外ニ設ケ其一家内ニ関スル有事ノ際殊ニ火災ノ時ニ当リ之レヲ闔鎖スルモノナリ、故ニ之レヲ異名火災嘴栓《フアイアコツク》又護衛嘴栓《ポリスヲビネ》ト云フ
○瀦水器 英語「ウヲートルタラツプ」水ヲ落シ溜ル器ノ義 此器ハ瓦斯ノ蓄気槽ヲ出テ埋管内ヲ流通スルニ当テ、地熱ノ冷低ナルニ依リ瓦斯中所含ノ流動体ト為ルヘキ部分、殊ニ水蒸気ハ自ラ凝縮分離シテ管内ニ渚溜シ、為メニ瓦斯ノ流通ヲ妨害スルモノナリ、故ニ各種埋布ノ管ニ高低ノ処ヲ設ケヲキ、其最モ低キ部ニ就キ之レヲ設置シ、此水即チ他物ヲ溶解セシモノヲ排除シ得ヘクスルモノナリ、而シテ此水タル啻ニ地中ノ幹管及ヒ分枝管ノミナラス、各供給家内ニ細分布置セル小技管《(枝)》ト雖トモ其高低アル処ニ於テハ必ス水ノ幾分ヲ形成シテコヽニ瀦溜スルモノナルヲ以テ、又此ノ如キ処ニ於テハ其準備ナカルヘカラサルナリ
○前ニ説ク如ク此器ハ其附装スヘキ管ノ大小ニ随テ稍其形ヲ異ニシ、其埋布ノ幹管ニ装スヘキモノヽ如キハ密蓋セル鉄箱ノ上部ノ両側ニ輸送管ノ口径ニ斉シキ管形ノ一部分ヲ具ヘタルモノニシテ、其蓋ノ中央部ヲ穿チ、一小鉄管ヲ貫入シ殆ト箱ノ底部ニ達セシメ、鉄管ノ上部ニハ数条ノ螺旋線ヲ施コシ、平常ハ之レニ小冒蓋ヲ螺着シヲキ、水ヲ除去セントスル毎ニ此冒蓋ヲ除去シ換フルニ小喞筒ヲ以テ爰ニ螺着シテ其水ヲ吸除スルナリ、小枝管ニ具フルモノモ亦タ同理ナリト雖トモ、箱ノ両側ニハ別ニ管孔ヲ具ヘス、只其蓋ニ一ノ吸水管ト一ノ落水管ノ一分《部カ》トヲ具ヘシメ、瓦斯管ノ低部ニ当リ誘水ノ小枝管ヲ分派セシメテ此落水管ニ接続セシムル結構ナリトス
○前説ノ如ク埋管ニ装附セル瀦水器及ヒ闔扉又ハ嘴栓ノ如キハ、其瀦水ヲ吸除シ及ヒ開闔スルハ人地表ニ在テ地表下ノ管内ニ之レカ作用ヲ致サシムルモノナルヲ以テ、此器ノ装置処毎ニ市街ノ路上必ス其器ニ達スル孔穴ノ設ケナカルヘカラス、且其孔口ニハ土砂ノ没入スルヲ防クカ為メ毎孔必ス蓋器ヲ装附ス、此蓋ハ鋳鉄ヲ用テ製出シ開閉自在ナラシム、而シテ此蓋啻ニ土砂ヲ妨ク為メノミナラス此蓋ニ依リ此器ノ所在ヲ認定シ易カラシム、然シテ其員数ノ甚タ少ナラサルカ為メ瀦水器ノ蓋ト闔扉ノ蓋ト或ハ誤認スルノ恐ナキニシモアラス、故ニ本局ノ弁宜ニ依リ闔扉ト嘴栓ノ両者ナル瓦斯ノ通路ヲ閉鎖スヘキモノハ其蓋ヲ方形ニシ、瀦水器ニ在テハ其蓋ヲ円形ニシ、以テ之レヲ弁別シ易カラシム、但シ往日ハ之レカ区別ヲ為サヽリシヲ以テ今猶混淆スル処アリト雖トモ、目下改正中タルヲ以テ漸次此別ヲ明カニスヘシ
 - 第12巻 p.530 -ページ画像 
○抑モ本局営為ノ業事タル大ニ警官ノ保護ヲ要スヘキ事タルハ素ヨリ論ヲ俟タスト雖トモ、殊ニ注意ノ厚キヲ要スヘキハ闔扉及ヒ嘴栓ノ作置ニ在リ、夫レ此両者ノ如キハ前述ノ如ク非常ノ用ニ具備スルモノニシテ、殊ニ府下ノ如キハ冬時ニ当リ火災ノ難最モ少ナカラス、此際其局部ニ設クル所ノ闔扉或ハ嘴栓ヲ閉鎖セサルヘカラサルモノナルヲ以テ、毎常其際直チニ本局ヨリ人夫ヲ派出シテ之レヲ所置スルハ勿論ナリト雖トモ、火勢ノ速カナル或ハ其間ヲ得サルコトアリ、此時ニ当テハ毎引用家戸外ニ装附セルハ嘴栓ヲ閉鎖シ、瓦斯流通ヲ停止スルノ所為ニ在リ、依テ各引用家ノ町名番地等詳細下条ニ明記ス
○街灯 街灯ハ其灯柱ノ全長十四尺ニシテ、地内ニ埋没スルノ部四尺地上ニ出ツルノ部十尺、灯籠ハ其台ト共三尺六寸トス、而シテ灯柱ノ内部ヲ貫キ根底部ヨリ鉛管ヲ引キ灯籠内ニ至リ嘴管ヲ装シ点火ス、此ニ一小機関アリ、是レ街灯ニ限リ装附スルモノニシテ之レヲ制圧器《「ゴバルノル」》ト云フ、此器ハ前ニ記載セル局内装置ノ制圧器ト全ク其理ヲ一ニシ、最モ簡単ナルモノニシテ只此一種ハ街灯ノ嘴管ニ限リ使用スル小器タルノ差アルノミ、其製其用共ニ制圧器ニ斉シ、故ニ是レ亦タ制圧器ト云フ、其製種々アリト雖トモ今爰ニ本局最モ多ク用フルモノヲ掲ク、則チ街灯嘴管ノ中央大凡嘴口ヨリ下ルコト二寸許ノ処ニ於テ小円壔箱ヲ設ケ、輸送管ハ此槽ノ下底ヲ穿チ其端口ヲ箱ノ中半ノ処ニ開キ、箱中ニハ「グリセリン」少許ヲ納レ、此口ヲ覆フニ又一小倒槽ヲ用ユル等総テ前条制圧器ト同シ、而シテ此覆槽ノ底部即頂部ノ中央ニ短大ナル針状物突出シ傍ラ一小孔アリ管ヨリ噴出スル瓦斯此孔ヨリ出ツヘクス而シテ此箱ハ密蓋シ、此蓋ニ灯嘴ヲ螺着ス、故ニ通常圧力ニ於テハ下管ヨリ噴出スル所ノ瓦斯ハ此覆蓋槽ヲ僅カニ圧上シ肩部ノ小孔ヨリ逃出シテ蓋孔ヲ経テ嘴口ニ噴出ス、然ルニ若シ圧力強盛ナレハ倒槽ハ劇シク圧上セラレ其針蓋孔ニ突入シテ此孔ヲ狭小ニシ噴出ヲ大ナラサラシメ、圧力小ナレハ倒槽下降シテ蓋口ヲ広大ニシ噴出ヲ多カラシメ、以テ圧力ノ強弱ニ係ラス噴出ヲ正然タラシム、此器ノ街灯ニ限リ使用スル所以ハ夫ノ各人家ニ於テ使用スル気灯ノ如キハ夫ノ嘴栓ヲ具フルアリテ瓦斯噴出ノ多少灯火ノ大小共ニ各人好ム所ニ任セ之レヲ自由ニシ得ヘシト雖トモ、街灯ノ如キハ之レニ異ナリ人ノ之レヲ衛護スルモノナキヲ以テ此自動ノ機ヲ設ケ圧力ヲ制セサルヘカラサル所以ナリ
此ノ如キヲ以テ街灯ニ於テハ常ニ瓦斯ノ噴出量ニ定度アリテ其灯嘴ノ孔口ノ如キハ一時間三立方尺七分積ヲ噴出スルモノニシテ、其瓦斯ノ光力ハ既述ノ如ク十二燭光ニ斉シキモノナリ、而シテ街灯ヲ隔ツコト七十間ノ距離ニ於テ既ニ人影ヲ視認シ得ヘシ、但シ街灯一基ニ係ル光力ハ九燭光トス、何トナレハ既述ノ如ク一時間五立方ヲ燃消スル光力ヲ十二燭ニ比スルヲ則トスルヲ以テ街灯ハ三立方尺七ノ燃消積ナレハナリ
○下略