デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

3章 商工業
21節 瓦斯
2款 東京府瓦斯局
■綱文

第12巻 p.564-602(DK120073k) ページ画像

明治18年3月19日(1885年)

今ヤ本局経営ノ基礎ヲ固メ相当ノ収益ヲ見ルニ至レリト雖モ、一般ノ瓦斯需用ノ増加ニ応ゼンニハ徒ニ府庁ノ制規ニ拘束セラレ適宜ノ処置ニ出ヅル能ハズ、然ルニ、既ニ本局ヲ公売ニ付スルモ之ニ投ジタル共有金原資ヲ回収スルニ難カラザルニヨリ、之ヲ売却シテ民営ニ移シ斯業ノ伸張ヲ図ルベキ時期ニ到達セリ。是日栄一、本局公売ノ儀ニツキ公売方法ヲモ具陳シテ東京府知事芳川顕正ニ建議ス。仍テ東京府区部会臨時会ヲ開キ本局売却ノ件ニツキ議定シ、是年七月一日、東京府庁本局ヲ所属地所建物諸器械埋布管共払下グベキ旨払下手続ヲ付シテ府民ニ広告ス。


■資料

瓦斯局書類 明治十八年会計課(DK120073k-0001)
第12巻 p.564-571 ページ画像

瓦斯局書類 明治十八年会計課 (東京府文庫所蔵)
    瓦斯局公売ノ儀ニ付建議
当瓦斯局ハ明治ノ初メ一時偶然ノ考案ニ拠テ府下人民ノ共有金ヲ以テ其器械ヲ英国ヨリ購入シ、尋テ本局ヲ此地ニ創始セシカ、固ヨリ匆卒ノ起案ニシテ用意周密ナラサルニ付、建築ノ工事モ亦以テ不完全ヲ極メタリ、明治七年ノ末ニ至リテ始テ街灯ノ点火ヲ為スヲ得ルト云トモ当時府下ノ人民ハ未タ瓦斯ノ効用ヲ知ラサルヲ以テ其延用点火ヲ望ム者極メテ稀ナルニ付、損益ノ計算ニ於テハ只相償ハサルノミナラス常ニ巨額ノ損耗ヲ生シテ其維持ニ苦ムノ景況ナリキ、明治九年ニ至テ再ヒ器械増大ノ議ヲ決シテ更ニ諸器械ヲ欧洲ヨリ購入シ、明治十二年七月ヨリ本局ヲ東京府会ニ承継シテ其増築及百般ノ事務ヲ処理スト云トモ其計算ニ於テハ猶毎年若干ノ損失ヲ見ルニ止レリ、明治十三四年ノ交ヨリ瓦斯ノ需用者ハ漸ク其数ヲ増シ、曩ニ計画セシ増築ノ挙モ竣功スルヲ以テ其営業ハ聊カ当初ニ優ル処アルカ如シト云トモ、当時諸物価ノ騰貴ニ際スルヲ以テ損益ノ計算ハ僅ニ相償フモ其余裕ヲ見ル能ハス、故ニ本局維持ノ目的モ未タ確立スルヲ得サリキ、明治十五年ノ初ニ当リ電気灯ノ説世上ニ伝唱スルヲ以テ其本局ノ営業ニ関係スル頗ル大ナルニ付、早ク之レカ処置ヲ為サンコトヲ議シタリシカ、当時本局
 - 第12巻 p.565 -ページ画像 
ヲ挙ケ公売ニ付スルモ僅ニ経費ノ半額タニモ満タサルノ摸様ナリシニ付、公売ノ案件ハ只之レヲ議スルニ止リテ実施スルニ及ハサリシ、爾来本局ハ殊ニ其工業ヲ精励シ専ラ省費殖益ヲ事トシ黽勉怠ラサリシヲ以テ大ニ其業務ヲ進捗シ、加フルニ諸物価漸ク低廉ナルニ付十五年以降ハ稍々相当ノ利益ヲ見ルニ至レリ、是レ本局当初ヨリ以テ今日ニ至ルノ概況ニシテ此間工業ニ計算ニ艱難辛苦スル実ニ名状スヘカラサルモノアリ、然リ而シテ現今本局維持ノ目的ニ於テハ既ニ確立スル所アルカ如シト云トモ、熟ラ既往ニ就テ将来ヲ審案スレハ未タ以テ完全ノ方法ニ帰セリト云フヘカラサルモノアリ、惟フニ本局営業ノ順序ハ毎歳諸要費ヲ調査シ、各其課目ニ従テ之レカ予算ヲ按シ、之レヲ府庁ニ上申シ、府会ノ議決ヲ得テ遵守経営スヘキノ制ナリ、而シテ其営業タル一般ノ工業ト毫モ逕庭アルコトナケレハ其法制ニ束縛セラレテ業務暢達セサルモノ蓋シ亦多シト云ヘシ、加之其計算ノ整理ニ於ルモ本局ハ府庁ノ管理ヲ受ケ、府庁ハ更ニ之レヲ府会ニ報道スルノ制アルヲ以テ其間或ハ徒労冗費ナキヲ免カレス、是ヲ以テ縦令本局ノ業務ヲシテ更ニ之レカ拡伸ヲ謀ラント欲スルコトアルモ遽カニ之レヲ処スル能ハスシテ却テ其計画ヲ誤ルコトナキ能ハス、是其法制ニ職由スルモノニシテ而シテ本局営業上ノ不利実ニ限リナキモノアリ、今ヤ本局ノ殖益ハ既ニ相当ノ点ニ達スルヲ得タリ、今日ニシテ之レカ公売ヲ謀ルモ決テ爾来共有金ヨリ本局ニ支出シタル資金ノ回収ヲ得ルニ難カラサルヘシ、苟モ然ラハ早ク之レヲ公売ニ付シテ府会ハ其公売代価ヲ得テ別ニ之レカ殖益ヲ謀リ、本局ノ業務ヲシテ更ニ伸張暢達スル所アラシムルハ実ニ適正ノ処置ナリト信ス、依テ其公売ニ付スルノ方法ヲ具陳シテ謹テ建言仕候也
                 東京瓦斯局長
  明治十八年三月十九日
                    渋沢栄一
    東京府知事 芳川顕正殿

(別紙)
    東京瓦斯局公売方法
瓦斯局ヲ売却セント欲セハ先ツ其営業ニ付テ生スヘキ利益ノ予算ヲ精査セサルヘカラス、故ニ現今ノ景況ヲ以テ将来ヲ審案シ、明治十八年已降ノ収益ヲ別紙第一表ノ如クニ仮定セリ
右ノ収益ヨリシテ地所家屋器械等ノ消却ヲ要スルニ付其消却方法ハ別紙第二表財産調書(明治十八年一月卅一日実際表ニ拠ル)ニ拠リテ之ヲ按算シ、各種ノ消却年度ニ応シテ消却スヘキモノト定メ、其合計毎年金五千九百六拾六円余トナルニ付之ヲ前項収益金ヨリ引去リ、更ニ又役員職工賞与金ヲ収益高ノ一割トシテ之ヲ引去ルモノトスヘシ
起業資ノ外ニ石炭其他ノ物品及諸役員諸職工ノ給料瓦斯売掛代金等ニ充ツルノ営業資ナカルヘカラス、故ニ之ヲ概算シテ弐万円ト見積リ其利足金弐千円ヲモ前ノ収益ヨリ引去ルモノトスヘシ
以上ノ各項ヲ第一表ノ収益金ヨリ引去ル時ハ、其残額ハ弐万四千九百四拾八円余トナルニ付、此収益予算ニ応シテ、売却原価ヲ定ムルヲ得ヘシ
右ノ収益ニ応シテ玆ニ其原価ヲ按定スレハ、金弐拾四万円ヲ以テ適当
 - 第12巻 p.566 -ページ画像 
ノ割合トス(但原価ニ対スル利益割合ハ年一割四厘ニ当ル)而シテ此原価ハ現在瓦斯局ニ存スル地所家屋竈細大ノ埋布管点火諸器械諸什器類及家内取付用物品等ノ起業ニ関ルモノ一切ヲ含有スル代価ニシテ、石炭コークテール及瓦斯代売掛物品等ノ営業資ハ算入セサルモノタルヘシ
原価金弐拾四万円ノ納入割合ハ之ヲ四回トシ、最初売買結約ノ時ニ其四分ノ一ヲ納入シ、其後ハ六ケ月毎ニ四分一宛ヲ納入スルモノトスヘシ(例ヘハ十八年七月ニ売買ヲ結約スレハ二十年一月ニ至リテ皆納スルノ割合ナルヘシ)而シテ初回ノ四分一ヲ納入セシ時ニ於テ瓦斯局ノ工業ハ一切買受人ニ引渡シ、其以降ノ損益ハ都テ買受人ノ負担トスヘシ、但向後三回ノ代価皆納ニ至ルマテハ瓦斯局ヲ他ノ抵当ニ供シテ借用金ヲ為スヲ禁シ置クヘシ
営業資金ハ前項引渡ノ時ニ於テ現在高ニ応シ一時即納セシムヘシ(現今ノ景況ニヨリテ之ヲ按算スレハ本年七月ニ至テハ此営業資金即納ヲ要スルモノハ凡ソ弐万円前後トナルヘキ見込ナリ)但瓦斯代売掛等ノ如キハ買受人ノ都合ニヨリテ之ヲ引受ケサルモ随意タラシムヘシ
公売ノ事決定スルニ於テハ其方法ヲ明示シテ世間ニ公告スヘシ、且其買受ヲ望ム者ニハ本局ニ来リテ現況ヲ観察シ及計算ヲ質問スルコトヲ許スヘシ、而シテ其買受ヲ望ム者ハ公売期限内千円以上何程ニテモ望ミニ任セテ申出ルコトヲ許スヘシ(但百円以下ノ端数ハ禁止スヘシ)若シ此買受ノ申込高公売原価ニ超過スレハ公平ノ割合ヲ以テ其申込高ヲ減却シテ(但端数ヲ生スル場合ニ於テハ府庁ニ於テ適当ノ割合ヲ為スコトアルヘシ)其割付ヲ為シ買受人ヲ定ムヘシ
右ノ方法ニ拠リテ割付ラレタル買受人等ハ、将来本局ノ持主タルニ付更ニ相集テ瓦斯会社ヲ組織スヘシ
若シ又此公売期限内申込ヲ為ス者公売原価ニ満タサルモ其半額以上ニ充レハ合本者ト見做シ、不足額ハ共有金管理者ヲ以テ之カ株主トナシ合本会社ヲ組織シ、毎年ノ計算ニ於テ生スル処ノ純益ハ其出金高ニ割合ヒ配当スヘシ、万一申込者公売原価ノ半額ニ充タサレハ此公売ヲ中止スヘシ
右ノ割合ヲ以テ本局ヲ公売スルトキハ共有金ニ対スル計算ハ別紙第三表ノ如クナルニ付、共有金ハ此瓦斯局創建ニ付テハ明治十七年度ノ立替瓦斯代ヲ収入スルモノトセハ差引概算金弐万千百九拾四円八拾六銭七厘程ノ利益ヲ見ルモノト云フヘシ
右ハ瓦斯局公売方法ノ概略ニ候、就テハ此売却ノコトヲ議決スルニ於テハ、尚御審案ノ上相当ノ公売広告案御調査相成度候也

第一表
    明治自十八年七月至十九年六月損益予算書
      収入之部
一金壱万七千六拾四円    街灯四百基点火料
               此燃失瓦斯五百六拾八万八千立方尺
                 壱基壱ケ月瓦斯燃失料
                 金三円五拾五銭五厘
一金五万六千八百八拾円   各家引用瓦斯代
               此容積千八百九拾六万立方尺
                千立方尺金三円
 - 第12巻 p.567 -ページ画像 
一金千七百三拾弐円     テール四百三拾三石代
               壱石金四円
一金千九百五拾円      コークス弐百六拾噸代
               壱噸金七円五拾銭
一金六百円         家内取付利益
     合計 金七万八千弐百弐拾六円
      支出之部
一金弐千百六拾円      頭取取締給料
一金三千六百円       局員給料
一金六千円         雑給
一金弐万弐千八百五拾七円  瓦斯製造用高島石炭三千三噸壱噸金七円
              石炭英壱斤ノ産出瓦斯容積四立方尺ノ積
              蒸気缶用唐津石炭弐百七拾噸壱噸金六円八拾銭
一金千五百円        製造用雑費
一金四千弐百円       諸器械修繕費
一金三百円         家屋修繕費
一金千円          雑費
     合計 金四万千六百拾七円
収支差引
 金三万六千六百九円    利益
      内
  金六千円        積立
  金弐千円        営業資金弐万円ノ利子
                壱ケ年壱割
  金三千六百六拾円九拾銭 賞与
               利益百分ノ拾個
 再差引
  金弐万四千九百四拾八円拾銭

第二表
    明治十八年六月財産調書
一金三拾万七千三百七拾四円四拾八銭八厘
      内
  金五万千六百円七銭    明治八年ヨリ同十七年迄
                    拾ケ年間償却金
差引残
 金弐拾五万五千七百七拾四円四拾壱銭八厘
     壱ケ年保存償却
      金五千九百六拾六円三拾四銭壱厘宛
       償却年間四拾三年間

    明治十八年六月財産調総計書

  科目   費用金額       償却金額     費用金額      償却金額
 地所     四三九四・〇一八   九四・六三四   二六五・四五九  一三・二七三
 家屋    三四三八五・八四四  六七一・一三八  四五五五・二一五  四五・五五二
 製造場   六二六九三・七一〇 一七二五・九四九 二〇〇八六・六三六 七四七・五〇九
 点火諸器 一七七四二〇・二九三 二六六八・二八六
  合計  二七八八九三・八六五 五一六〇・〇〇七 二四九〇七・二一〇 八〇六・三三四

 - 第12巻 p.568 -ページ画像 
    明治十八年六月財産調
      地所之部

図表を画像で表示明治十八年六月財産調 地所之部

 創立ヨリ明治十六年六月迄               明治十六年七月已降増築  名称     費用金額   保存年限 償却金額   費用金額      償却金額  土地     二七五・〇〇〇 南側石垣   一一一・三四四 北側石垣   一四三・六八六 北横堀浚   一一四・七五〇 局地々平均 一九八九・〇〇〇 角柵下門   三一九・三八五 拾年 上水井戸   四五五・〇〇〇 弐拾年         二六五・四五九  一三・二七三 同上      七一・二七五 同 堀井戸    二九一・〇〇〇 同   一四・五五〇 井戸流    三七七・〇〇二 下水流     二九・二五〇 拾年   二・九二五 桟橋      三九・七四〇 五年   七・九四八 附属地角柵門  八三・一二〇 弐拾年  四・一五六 同上水     五二・八七五 同    二・六四四 同下水     四一・五九一 拾年   四・一五九 合計    四三九四・〇一八     九四・六三四  二六五・四五九  一三・二七三  



    明治十八年六月財産調
      家屋之部

図表を画像で表示明治十八年六月財産調 家屋之部

 創立ヨリ明治十六年六月迄                    明治十六年七月已降増築  名称   費用金額     保存年限  償却金額 事務所   六三六三・〇〇〇 五拾年 一二七・二六〇 構内附属舎 一五五一・五一五 同    三一・〇三〇 竈石室  一一三八八・三八一 百年  一一三・八八四 石室             同                三八一〇・八〇九  三八・一〇八 器械室   五四八一・二七五 六拾年  九一・三五四 倉庫    一三七二・九一三 同    二二・八八二 石炭庫   四七五九・〇〇〇 四拾年 一一八・九七五 職工場   二四四四・五四八 弐拾年 一二二・二二七 粘土煉並 大工小家   一八三・二〇〇 同     九・一六〇 石炭仮小家  一一六・五八三 弐拾年   五・八二九 門番所    一四四・〇〇〇 五拾年   二・八八〇 雪陰      四〇・〇〇〇 拾年    四・〇〇〇 附属地属舎  一七九・〇一五 弐拾五年  七・一六一 同上     三六二・四一四 同    一四・四九六 庇              百年                七四四・四〇六   七・四四四  合計  三四三八五・八四四     六七一・一三八      四五五五・二一五  四五・五五二 



 - 第12巻 p.569 -ページ画像 
    明治十八年六月財産調
      製造場之部

図表を画像で表示明治十八年六月財産調 製造場之部

 創立ヨリ明治十六年六月迄                   明治十六年七月已降増築  名称   費用金額     保存年限  償却金額      費用金額       償却金額 壱区竈   三八七一・三〇五 弐拾年 一九三・五六五 弐区竈  一二〇五四・二六九 同   六〇二・七一二 三区竈            同               一二一五二・三四一  六〇七・六一七 烟突    二二五四・〇〇〇 百年   二二・五四〇 接続管   一〇〇二・二五九 同    一〇・〇二二       五八一・〇三九    五・八一〇 冷縮器   一二四八・五七九 同    一二・四八六      二五一八・一〇八   二五・一八一 エキゾーストル蒸気インゼクトル       三七二八・七六二 拾八年 二〇七・一五三       九五五・七三九   五三・〇九七 冷縮器  オードイレ 五七七・二六五 五拾年  一一・五四五 磨刷器    九五九・二五七 八拾年  一一・九九一      二九〇四・五一五   三六・三〇六 清浄器   二八九八・三六七 五拾年  五七・九六七       九七四・八九四   一九・四九八 計量器    五六八・一七四 三拾年  一八・九三九 器械組立  二九一九・三五五 五拾年  五八・三八七 第壱溜器  八七八〇・四四一 六拾年 一四六・三四一 第弐溜器 一九〇三九・九八四 同   三一七・三三三 流通自在器  七九五・四四四 五拾年  一五・九〇九 圧力試器   三八六・九五一 百年    三・八七〇 開閉弁    八二三・三〇〇 四拾年  二〇・五八三 水溜器    六七四・四九三 五拾年  一三・四九〇 タール溜   一一一・五〇五 百年    一・一一五  合計  六二六九三・七一〇    一七二五・九四九 



    明治十八年六月財産調
      点火諸器之部

図表を画像で表示明治十八年六月財産調 点火諸器之部

 創立ヨリ明治十六年六月迄                    明治十六年七月已降増築 名称   費用金額      保存年限   償却金額      費用金額  償却金額 本管  一六九一〇二・七八〇 八拾年  二一一三・七八五 枝管    八三一七・五一三 拾五年  五五四・五〇一 合計  一七七四二〇・二九三      二六六八・二八六 



    明治十八年六月財産調

図表を画像で表示明治十八年六月財産調

 創立ヨリ明治十六年六月迄                    明治十六年七月已降増築 名称   費用金額      保存年限  償却金額       費用金額  償却金額 器械   三五七四・三一三 



    明治十八年六月財産調

図表を画像で表示明治十八年六月財産調

 創立ヨリ明治十六年六月迄                 明治十六年七月已降増築 名称     費用金額      保存年限  償却金額  費用金額  償却金額 計畳器    五九二・七七七 流通自在器  三二九・三二〇 物品    三四三四・四六九  合計   四三五六・五六六 



第三表
    明治十八年一月三十一日実際調書
一金六拾弐万七千弐百弐拾四円五拾四銭四厘 明治十八年一月三十一日迄受取高
 - 第12巻 p.570 -ページ画像 
一金壱万六百弐拾六円弐拾壱銭壱厘     増築費残受取ヘキ高
 合計金六拾三万七千八百五拾円七拾五銭五厘
      内
 金三拾四万六百九円五拾七銭九厘     明治十八年一月三十一日迄上納高
差引残
 金弐拾九万七千弐百四拾壱円拾七銭六厘
      内
 金弐拾六万九千六百六拾五円三拾九銭四厘 起業資
 金弐万七千五百七拾五円七拾八銭弐厘   営業資
      内
 金弐百八拾六円六拾銭          十五年度瓦斯代滞貸
 金八百九拾三円四拾弐銭壱厘       十六年度同上
 金八百八円六拾三銭           同タール代
 金千四百弐拾弐円            十七年度街灯点火料
 金壱万弐千九百三拾三円七拾八銭壱厘   同各家引用瓦斯代
 金千七百六円四拾銭           同タール代
 金千八拾四円三拾五銭          同コーク代
 金百八拾三円五厘            同雑入
 金四千百三拾七円五拾九銭五厘      石炭在高
 金四千百弐拾円             レトルト耐火煉化石竈其佗修繕用物品
    明治十八年二月已降調書
一金壱万四千八百四拾壱円八拾六銭八厘   明治十八年二月ヨリ同年六月迄五ケ月間営業費トシテ受取ヘキ分
一金弐万八千七百四拾三円八銭壱厘     同上売払代上納スヘキ分
差引
 金壱万三千九百壱円弐拾壱銭三厘     上納高
    明治十八年六月調書
一金六拾五万弐千六百九拾弐円六拾弐銭三厘 明治十八年六月迄受取高
一金三拾六万九千三百五拾弐円六拾六銭   同上上納高
差引残
 金弐拾八万三千三百三拾九円九拾六銭三厘
      内
 金弐万七千五百七拾五円七拾八銭弐厘   営業資
再差引残
 金弐拾五万五千七百六拾四円拾八銭壱厘  起業資
      内
 金三万六千九百五拾九円四銭八厘     明治七年十二月ヨリ同十年二月マテ街灯点火料滞貸
三差引残
 金弐拾壱万八千八百五円拾三銭三厘    明治十八年六月残高
 金弐万千百九拾四円八拾六銭七厘     公売利益高
 合計金弐拾四万円
    明治十七年七月ヨリ十八年六月マデ損益調書
      収入之部

  科目    自明治十七年七月     自明治十八年二月     小計
        至同十八年一月 実際   至同十八年六月 見積
 街灯点火料     九九五四・〇〇〇   七一一〇・〇〇〇  一七〇六四・〇〇〇
 - 第12巻 p.571 -ページ画像 
 各家引用瓦斯代  二八五三四・〇六四  一九九七三・八三六  四八五〇七・九〇〇
 テール代      一七〇六・四〇〇    七五五・六〇〇   二四六二・〇〇〇
 コーク代      一〇八四・三五〇    七三三・六五〇   一八五八・〇〇〇
 雑入         一八三・〇〇五    一二九・九九五    三一三・〇〇〇
  合計      四一四六一・八一九  二八七四三・〇八一  七〇二〇四・九〇〇

      支出之部

  科目    自明治十七年七月     自明治十八年二月     小計
        至同十八年一月 実際   至同十八年六月 見積
 俸給        一四四九・七〇〇   一〇五三・八〇〇   二五〇三・五〇〇
 雑給        三四七九・九〇二   二七三四・〇九八   六二一四・〇〇〇
 石炭費       九一三二・四五四   七一九一・二一〇  一六三二三・六六四
 製造雑品費      四〇二・〇〇一    五七三・九九九    九七六・〇〇〇
 局費         四二九・八三八    三〇〇・五六二    七三〇・四〇〇
 修繕費       三三〇九・五九五   二五五〇・四〇五   五八六〇・〇〇〇
 枝管費        五六二・二〇六    四三七・七九四   一〇〇〇・〇〇〇
  合計      一八七六五・六九六  一四八四一・八六八  三三六〇七・五六四

差引残
 金三万六千五百九拾七円三拾三銭六厘   利益
      内
 金三千六百五拾九円七拾三銭三厘     賞与
                      但利益金百分ノ拾個
再差引残
 金三万弐千九百三拾七円六拾銭三厘    純益


瓦斯局書類 払下ゲ 明治十八年会計課(DK120073k-0002)
第12巻 p.571-573 ページ画像

瓦斯局書類 払下ゲ 明治十八年会計課 (東京府文庫所蔵)
瓦斯局処分案別紙之通及御送致候条区部会御下附之儀例之通可然御執計有之度候也
 追而右取調方之儀者別冊瓦斯局長意見書第一表ニ掲クル利益金之内ヨリ積立金及賞与金ヲ控除シ、純益金弐万七千円ト算出候儀ニ有之候、則該局長意見書相添候也
  明治十八年三月廿九日 会計課
    調査課
       御中

区部共有金号外議案
    瓦斯局処分案
一瓦斯局敷地建物附属諸器械類悉皆代価金弐拾四万円ヲ以テ売却セントス
一売却金額ハ明治十八年ヨリ同二十年迄四回ニ分チ還納セシムルモノトス
一前項売却金ノ半額マテハ区部共有金ヨリ払出シ、更ニ新設スヘキ瓦斯会社ノ株主ニ加入スルコトヲ得ルモノトス
  但払下望ノ者売却金ノ半額以内ナル時ハ之ヲ中止スルモノトス

    自明治十八年度至明治二十年度区部共有金収入予算議案
 - 第12巻 p.572 -ページ画像 
一金弐拾四万円       瓦斯局売却代
      此訳
    金六万円      十八年度収入額
    金拾弐万円     十九年度収入額
    金六万円      二十年度収入額
説明
 瓦斯局売却方ハ去ル明治十四年度区部会ニ於テ業已ニ之ヲ議決シタルモ、当時電気灯ノ業将ニ振興セントスルノ勢ニシテ大ニ瓦斯局ノ営業ニ関係アリ、為ニ姑ク売却ノ事ヲ止メ延テ今日ニ至レリ、然ルニ該局ノ事業ハ漸次伸張シ曩ニ計画セシ極度ニ達スルモ猶且需求者陸続絶エス、殊ニ現今御造営ノ皇居ニ許多ノ瓦斯引用ノ設計アリ、今其概計ノ灯觜ニ就キ瓦斯代ヲ算出セハ巨額ノ金員ニシテ瓦斯局ニ於テ最大ノ利益ヲ得ル所ナレハ、之ヲ挙行セント欲シ今方ニ協議中ニ在リ、然リト雖其需求ニ応センニハ更ニ瓦斯製造所ヲ増築シ諸器械類ヲ弁置シ以テ之カ供給ヲナサヽル可ラス、其費額ヲ計算スルニ金拾数万円ヲ要ス、加之瓦斯引用家ノ数日ヲ逐テ増加スルノ勢アリ遂ニ之ヲ全府ニ及ホシ屡々増費ヲ要スルハ必然ナリ、於是熟々瓦斯業務ノ得失ヲ考フルニ旧貫ニ仍リ府庁ニ於テ管理スル時ハ制規ニ拘束セラレ諸事官庁ノ体裁ニ準シ之ヲ処理セサルヲ得ス、随テ之ニ応スル費用ヲ要スルモ之ヲ私会社ニ委スル時ハ会社ノ例習ニ依リ便宜ノ方法ヲ設ケ処理スルヲ得、自カラ多少ノ費用ヲ減省シ業務暢達スルノ利益亦少ナカラサルヘシ、蓋シ該局ノ業務タル一般ノ工業ト異ナルニ非ス、固ヨリ私会社ノ性質ニ適スルモノナレトモ曩時瓦斯ノ効用ヲ知ル者少ク得失相償ハス私会社ノ能ク維持スヘキニアラサルヲ料リ、創業ヨリ以還今日ニ至ルマテ区部共有金ヨリ其費用ヲ払出セシト雖現時該局ノ収支ヲ比較スルニ既ニ払出シタル資本金ニ対シ稍々相当ノ利益ヲ見ルニ至レリ、且前述ノ如ク瓦斯供給ノ為メ目前製造所増築等ヲ要スルニ際シタレハ該局ヲ挙ケテ私会社ニ委スヘキ時機到来セリト謂フヘシ、然リ而シテ之ヲ一二ノ望人ニ売渡スハ処置其宜ヲ得ルモノニ非ス、依テ該局売却ノ事ヲ広ク公衆ニ示シ一ノ営業会社ヲ組織シ株券ヲ発行シテ其株主ヲ募集セシメントス、抑々該局創設以来区部共有金ヨリ支出ノ金額六拾弐万五千百余円ニシテ其内同局ヨリ返戻ノ金三拾六万九千三百余円並明治七年十二月ヨリ同十年二月マテ街灯点火料収入未済金三万六千九百余円ヲ扣除スレハ、共有金ヘ返戻未済金弐拾壱万八千九百余円ナリ、依テ該局売却金高ヲ計較スルニ現今凡一ケ年ノ収入金七万八千弐百余円ニシテ、其内経費金四万千六百余円並積立金賞与金営業資金利子金合セテ金壱万千六百余円ヲ扣除スレハ純益金殆ト弐万五千円アリ、此純益金ヲ以テ壱ケ年壱割強ノ利益ト看做ストキハ即チ元金弐拾四万円ヲ得、之ニ基キテ以テ売却金高ヲ算出シ其当ヲ得ルニ庶幾カルヘシ、依テ其売却金高ヲ弐拾四万円トシ、此金高ヨリ共有金ヘ返戻未済額ヲ扣除スレハ、金二万千百余円ノ過剰ヲ生ス、故ニ金弐拾四万円ヲ以テ売却目途金高ト予定シ、其金額相当ノ株券ヲ発行シ、而シテ其株券ハ競売法ニヨリ株金定限タトヘハ一株百円若クハ多少増額ヲ以テ株主タラン者ヲ募集セントス、
 - 第12巻 p.573 -ページ画像 
其募ニ応スル者売価ノ半額以上ニ至テ止マル時ハ其全額ニ満ルマテノ金員ヲ区部共有金ヨリ払出シ、其株主ニ加入セントス、若又売価金高ノ半額ニ至ラサル時ハ已ヲ得ス売却方ヲ中止スルモノトス、但其募ニ応スル者代価払込ノ割合ハ之ヲ四回トシ、十八年九月ニ四分ノ一、其後ハ十ケ月毎ニ四分ノ一宛ヲ払込マシメ、十八十九二十ノ三年度ニ分チ収入スルモノトス


東京府臨時区部会議事録 第一号明治一八年(DK120073k-0003)
第12巻 p.573-580 ページ画像

東京府臨時区部会議事録 第一号明治一八年 (東京府文庫所蔵)
  明治十八年六月二十二日午後第四時三十五分開議
    闕席 松南宏雅○外九名略ス
    出席 四十五員
  渡辺東京府知事臨場アリテ之レヨリ臨時区部会ヲ開ク旨ヲ告ケ、右畢リテ議員書記着席、副議長芳野世経議長席ニ上リ議事ヲ開ク
○議長芳野世経曰 本日ヲ以テ臨時区部会ヲ開カレタリ、其議案ハ予テ諸君ニ配布シ置ケルニヨリ、之レヨリ先ツ共有金収入予算議案ノ第一次会ヲ開カントス○中略
  書記朗読
    自明治十八年度至明治二十年度区部共有金収入予算
一金弐拾六万千円 瓦斯局売却代
    内
  金弐拾四万円 売却代
  金弐万千円 同上年賦金利子
    内訳
  金八万七千円 十八年度収入額
  金八万九千八百円 十九年度収入額
  金八万四千弐百円 二十年度収入額
説明
 瓦斯局売却ノ儀ニ付テハ先年来既ニ其議アリシト雖モ未タ之ヲ挙行スルノ場合ニ至ラス、延テ今日ニ至レリ、然ルニ該局ノ事業ハ漸次伸張シ需求者陸続絶ヘス、業已ニ最初予期ノ事業極度ニ達セシノミナラス殊ニ現今御造営ノ 皇居ニ許多瓦斯引用ノ設計アルニ遭遇セリ、今其需求ニ応センニハ素ヨリ相当ノ利益アルヘシト雖モ、之ニ応スルニ付テハ更ニ瓦斯製造所ヲ増築シ、諸器械類ヲ弁置シ以テ其供給ヲナサヾルベカラズ、其費額凡金拾数万円ヲ要スヘシ、加之瓦斯引用者ノ数逐日増加スルノ勢ナレハ、其遂ニ之ヲ全府内ニ普及スルニ至ル迄ハ其間屡々増費ヲ要スルコト是亦必然ナリトス、於是熟々瓦斯業務ノ得失ヲ考フルニ、旧慣ニ仍リ府庁ニ於テ管理スルトキハ制規ニ拘束セラレ、諸事官庁ノ体裁ニ準シ之ヲ処理セサルヲ得ス、随テ多費且不便ノ憾ナキニ非ラス、之ヲ私会社ニ委スルトキハ会社ノ例習ニ依リ便宜ノ方法ヲ設ケ処理スルヲ得、自ラ多少ノ費用ヲ減省シ業務暢達スルノ利益亦誠ニ少小ナラサルヘシ、蓋シ該局ノ業務タル一般ノ工業ト異ナルニ非ス、固ヨリ私会社ノ性質ニ適スルモノナレトモ曩時瓦斯ノ効用ヲ知ル者少ク其得失相償ハス私会社ノ能ク維持スヘキニアラサルヲ以テ、創業ヨリ以還今日ニ至ル迄区部
 - 第12巻 p.574 -ページ画像 
共有金ニテ其経済ヲ維持セシト雖モ、現時瓦斯局ノ収支ヲ比較スルニ既ニ払出シタル金額ニ対シ稍々相当ノ利益ヲ見ルニ至リ、且前述ノ如ク瓦斯供給ノ為メ目前製造所増築等ヲ要スルニ際シタレハ該局ヲ挙ケテ私会社ニ委スヘキノ時機到来セリト謂ツヘシ、今該局創設以来区部共有金ヨリ支出ノ金額ヲ計算スレハ金六拾弐万五千百余円ニシテ、其内同局ヨリ返戻ノ金三拾六万九千三百余円、並ニ明治七年十二月ヨリ同十年二月マテ街打点火料収入未済金三万六千九百余円ヲ控除スレハ、共有金ヘ返戻未済金弐拾壱万八千九百余円ニ過キス、而シテ該局売却代価ヲ案スルニ現今一ケ年ノ収入金凡七万八千弐百余円ニ上リ、其内経費金四万千六百余円並積立金賞与金営業資金利子合テ金壱万千六百余円ヲ扣除スルモ尚純益金弐万四千余円アリ、此純益金ヲ一ケ年壱割強ノ利益ト看做ストキハ即チ元金弐拾四万余円ヲ得、之ニ基キ以テ売却代価ヲ算出セハ其当ヲ得ルニ庶幾カルヘシ、依テ瓦斯局売却ノ事ヲ広ク公衆ニ示シ、金弐拾四万円ヲ以テ該局ヲ売却セント欲ス、果シテ此代価ヲ以テ売却スルヲ得ハ其金員ニテ彼ノ共有金返戻未済金ヲ清償シタル上尚且金弐万千百余円ノ過剰ヲ生スルナリ、而シテ該売却代価納期ハ之ヲ六回ニ分チ明治十八年度ヨリ同二十年度迄ニ還納セシムルモノトシ、其第一回分ハ売却ノ際納付セシメ第二回ヨリ第六回ニ至ル迄ハ一ケ年七分ノ割合ヲ以テ利子ヲ徴シ、元金払込ノ都度之ヲ納付セシム、若シ又払下ヲ望ムモノ其金額売却金高ノ半数以上ニ至ルモ全額ニ充タサルコトアルトキハ、其不足金ハ相当ノ利子ヲ徴シ且ツ抵当ヲ要シ区部共有金ヨリ払受人ヘ貸与スルコトアルヘシ、但石炭又ハ「レトルト」耐火煉化又ハ「コークス」「タール」ノ類ハ其時ノ現存高ニ応シ相当代価ヲ以テ別ニ払下ケ、其代金ハ該局引渡ノ際即納セシムルモノトス
○十六番高梨哲四郎曰 此議案ニ対シテ余ハ反対ノ意見ヲ有セリ、元来原案ヲ発布セラレタル所以ハ要スルニ瓦斯局ノ売却ヲ為サヽルヘカラズト云フニアルモノナルガ、今其説明書ニ付キ其趣意ノアル所ヲ尋ヌルモ今日ニ於テ之レガ売却ヲ要スルノ必要アルヲ見出サヽルナリ、抑モ当議会ハ此共有金ニ向テハ随分粗雑ノ支出ヲ為シ之ヲ取扱フニ当リ少ナカラサル不親切ヲ為シ来レリ、故ニ我々ハ窃カニ謂ラク当議会ハ此ノ共有金ヲ積ミ立タル祖先ニ対シテ殆ント面目ナカルヘシト、夫レ瓦斯局ノ収支ヲ議スル如キハ我カ府会ニ取リテ所謂附属ノ権利アルモノニシテ当議会カ之ヲ管理スルニアラサレハ他人ノ得テ之レニ当ルヲ得ヘキモノニアラズ、故ニ議会ノ之ヲ所有スルハ固ヨリ当然ノコトニシテ決シテ不都合アルモノニアラスト雖モ、夫レ之ヲ売却シテ共有金ノ収入ヲ増加スルトセン乎之ヲ保存スル方略ノ未タ確定シアルコトヲ聞カズ、然ラハ実ニ当議会ノ之ヲ管理スヘキ当然ノ権利ヲ捨テヽ未タ方略ノ定マラサルノ場合ニ於テ共有金ノ収入ヲ増加シ置カントスルハ我々其趣意ノアル所ヲ見ル能ハサルナリ、且ツヤ此瓦斯局ハ現ニ一割余ノ利益ヲ得ヘキノ事業ナリ、然ルヲ今之ヲ売却スルヤ年賦払下ケト為シ而シテ年賦金利子ノ如キハ七朱ノ割合ヲ以テセントス、此売方モ亦何ソ妙ナルヤ、説明書ニ拠レハ皇居ノ御造営ノアルヲ以テ瓦斯ノ需用ヲ増加シ之レガ為メニ私
 - 第12巻 p.575 -ページ画像 
立会社ト為サヽレハ不都合ナルカ如キ趣意ナレトモ相当ノ利益アルコトナラハ製造所ヲ増築スルモ可ナラン、諸器械ヲ弁置スルモ亦可ナラン、必ラス之ヲ売却セサルヘカラスト云フノ理由ハ果シテ何クニアルヤ、之ヲ要スルニ十六番ノ精神ハ共有金ノ保存方ニシテ未タ確定セサルノ場合ニ於テ斯ル利益アルノ事業ヲ廃シ、而シテ共有金ノ収入支出額ヲ妄リニ左右セントスルハ不可ナリト云フニアルナリ
○二十五番尾崎行雄曰 十六番ト同意ナリ、今一割四五分ノ利益アルモノヲ以テ年賦払下ケト為シ、而シテ年賦金利子ハ七分ノ割合ヲ以テセントナラハ利益ノ割合ニ於テ七分ノ減少ヲ来タスナリ、故ニ果シテ之ヲ売却スルトキハ金額ノ上ニ於テ壱万円ノ損耗ヲ受クルモノナリ、実ニ妙ナ考案ト云ハサルヲ得ス、殊ニ今日ノ如キ金融ノ悪シキ場合ニ於テ決シテ斯ル売却ヲ為スヘキ時節トハ思ハレス、想フニ之ヲ売却シテ金員ヲ獲収スルヤ其保存ヲナスノ術ハ公債証書ヲ買入ルヽ位ノコトナルヘシ、果シテ然ルモノトスルカ、決シテ一割四五分ノ利益ヲ生セシムル能ハサルナリ、若シモ今日ニ於テ金額ノ収入スルヲ必用トスルノ事アラハ或ハ強ヒテ売却ヲ為サヽルヘカラサルヘシト雖モ別ニ金額ヲ要スルコトナクシテ徒ラニ売却ヲ為ストハ解セサル次第ナラスヤ、皇居ノ御造営アルニヨリ云々ト云ヘルモ若シ皇居ニ於テ必ラス瓦斯ノ供給ヲ得ントナラハ其レニ対シテ要スル所ノ費用ニ向テハ随分下附金ヲ請求スルモ可ナラン、決シテ其レカ為メ売ラネハナラスト云フノ理由ナキコトナラン、本員ハ眼前ニ其損耗ノ甚シキヲ見テ之ヲ売却セントスルハ飽マテ不可トスル所ナリ
○四十八番角田真平曰 共有金ヲ保存スルコトニ付テ大切ニセネハナラスト云フニ如何ニモ好キ考案ナラン、然リト雖モ其レハ瓦斯局ニ対シテ関係ナキコトナルヘシ、決シテ之レカ為メ瓦斯局ノ売却ヲ拒ムノ理由トハナラサルコトヽ信ス、元来瓦斯局ノ如キ商売ニ属セル事業ハ府庁ノ為スヘキコトニアラサルハ今更ラ云フマテモナキコトナルヘシ、然シ《(衍)》ルニ反対論者ナル両議員ノ説ニ拠レハ之レヲ売却スルハ利益ニアラズト云フニアルガ、若シ利益ノ点ヨリスルナラハ議会ハ猶ホ他ニ為スヘキノ事業アルヘシ、然リト雖モ官府ニシテ斯ル商売ヲ為スノ不可ナルハ衆多ノ熟知スル所ナレハ利益ノ如何ニ拘ハラズ之ヲ売却スルハ相当ノコトヽ認ムルナリ、説明書ニモ掲クル如ク此事業タルヤ私立会社ノ従事スヘキモノナリト雖モ、最初瓦斯ノ功用ヲ知ルモノ少ク其得失相償ハサルノ場合ニアリテハ府庁ノ之ニ干渉スルハ固ヨリ已ムヲ得サルニ出シコトニシテ、今日ニ至リ事業ノ拡張ヲ期スルニ至リ之ヲ売却スルハ至当ノ所置ナリ、決シテ利益ノ点ノミヨリシテ論断スヘキニアラズ、諸君ノ之ヲ売却セサレハ幾許ノ利益アリト云ハルヽハ詰リ商売心ヲ有シタル上ノ咄ナルヘシ、成程商売上ノコトナラハ之ヲ公債証書ニ換ヘ置ク如キハ不利益ナルニ相違ナカルヘシト雖モ、我々ハ信ス、此議会ハ正当ノ理由ヲ以テ正当ノ決議ヲ為スヘキモノニシテ利益ノ如何ヲ計較シテ錙銖ヲ争フヘキモノニアラスト、且ツ第一次会ナレハ可成速ニ決議ヲ要セラレンコトヲ企望スルナリ
○十六番高梨哲四郎曰 原案ヲ賛成スルノ論者モアルガ、試ミニ諸君
 - 第12巻 p.576 -ページ画像 
ニ問フ、第一ニ一昨年ニ於テ四万有余円ヲ費シテ堀ヲ堀リ、本年ハ一万余円ヲ抛テ砕石道路ノ試験ニ着手セントス、斯ノ如ク巨額ノ共有金ヲ支消スルハ果シテ利益アルノ事業ト認メラルヽヤ、想フニ堀ヲ堀リタルトテ府民ノ幸福ヲ増進セルモノ幾何ソヤ、其等ノ利害ニ就キ充分ノ考案ヲ下タサスシテ斯クマテ共有金ヲ減少スルニ至リシハ我々当議会ヲ以テ之レマテノ所為ハ府民ニ対シ不信切ナルモノト云フモ敢テ不当ニアラサルヘキヲ信スルナリ、然ルヲ第三ニ至リ充分ナル利益ヲ生スルノ事業タルニモ拘ラス今日ニ於テ瓦斯局ノ売却ヲナサヽルヘカラスト云フハ如何ナル理由ナルヤ、其レトモ保存スヘキ方略ノ確カナルアラハ之ヲ売却シテ共有金トナスモ妨ケナカルヘシト雖モ、其レニ対シテハ何ノ考モナク唯タ売却ヲ急カルヽハ何事ソ、畢竟之ヲ売却セントスルノ趣意ハ之ヲ私立会社ト為サハ経費ヲ減シ以テ改良ヲ計ルヘシトノコトナルヘシ雖モ、此等ノ考ハ之ヲ例言スレハ今一商家アリ、其主人ノ愚ニシテ家事ヲ幹旋シ家業ヲ拡張スル能ハサルヲ以テ、其主人ヲ入レ換ヘント欲スルモノヽ如シ、安ンゾ為スヲ得ヘキコトナランヤ、而シテ彼ノ瓦斯局ノ所有主即チ主人タルモノハ我々東京市民ナリ、今其事業ノ改良ヲ計ラント欲シテ其所有権ヲ移サントスルハ恰モ一商家ノ主人ヲ入レ換ヘント欲スルモノト一般ナラズヤ、且ツ政治上ヨリ之ヲ考フルモ将来地方自治ヲ期スルハ当然ノコトナレハ、斯ル共有財産ノ如キハ宜シク其増加ヲ計ラサルヘカラサルヘシ、然ルニ此利益アル財産ヲ売却スルアラハ若シ府民ノ之ヲ非難スル者アルニ当リ如何ナル答弁ヲ為スヲ得ルヤ、況ンヤ共有金ヲ減スル如キアラハ当初之ヲ積立タル祖先ニ対シテ相見ルノ顔ナキニ於テオヤ、殊ニ怪ム、瓦斯局ノ利益タルヤ原案ニモ掲ケタル如ク既ニ一ケ年一割強ノ多キヲ見ルヘキモノナリ、然ルヲ之ヲ売却スルヤ七朱ノ利子ヲ附シテ年賦ノ払下ヲ為サントスルニアリ、若シ共有金ヲ以テ瓦斯局ニ使用スルハ之レヲ以テ公債証書等ニ為シ置クニ比スレハ不安全ナリトノコトナレハ格別ナルヘキモ瓦斯事業ノ今日ニ危険ナラサル所以ト之ヲ公債証書ノ利子ニ比シテ利益ノ大ナル所以ハ明瞭ノ事実ニシテ諸君ノ熟知スル所ナルヘシ、然ルヲ猶ホ之ヲ売却スルト云フハ何ソヤ、皇居御造営ニ付キ製造器械ノ増加ヲ要スルカ故ニ之ヲ私立会社ト為サヽルヲ得サルガ如キ説モアレトモ、如何ニ皇室ノコトナレハトテ我々府民ニ利益ノナキ事業ニ向ツテ資本ヲ出サネハナラヌト云フノ理由ナカラン、故ニ我々ハ何レノ点ヨリ考フルモ之ヲ今日ニ売却セネハナラストスルノ趣意ヲ見出ス能ハサルナリ
○六十一番田口卯吉曰 唯今十六番ヨリ長々ト原案ノ廃棄説ヲ述ヘラレタルガ、詰リ其論旨タルヤ、要点ヲ誤リタルモノト云ハサルヲ得ス、今其第一例トシテ堀ヲ堀リ道路ヲ改修スルカ為メニ共有金ヲ支消セルヲ挙ケテ議会ノ不信切ナルヲ云ハルヽモ、之レハ余程違ヒタルノ例ナラン、何トナレハ彼ノ道路堀割ノ如キハ共有金ノ全額ヨリ幾分ヲ消費セルモノナレトモ、此瓦斯局ヲ売却スルニ至リテハ其代金ヲ以テ公債証書等ニ換ヘ置クコトナレハ決シテ資本ノ減スルト云ヘルモノニアラサレハナリ、若シ十六番ノ精神ノ如ク果シテ共有金
 - 第12巻 p.577 -ページ画像 
ヲ大切ニ思ヒ其保存ヲ確実ナラシメサルヘカラストナラハ、之ヲ公債証書ト為シ置クハ却テ賛成ノ方ナルヘシト思ハルヽナリ、且ツ十六番ノ迷ト云フハ瓦斯局ノ利益ハ現在一割以上ノモノナルニ当リ、之ヲ売却スルヤ年賦トナシ又其利子ヲ卑クスルハ不可ナリト云フコト是レナリ、如何ニモ原案ノ調ヘ通リナラハ利子ハ七朱ナルヘシト雖モ、我々議員ハ之ヲ以テ不当ト認ムルアラバ或ハ之ヲ高カラシムルモ又之ヲ低カラシムルモナシ得ヘシ、決シテ修正ヲ加フヘカラサルモノニハアラサルナリ、本員ハ二次会ニ於テ其等ノ修正説ハ充分ニ提出スル所アラントスルノミ、殊ニ二十五番ノ如キハ今日ノ時勢ハ不景気ノ際ナレハ斯ル売却ハ為スヘキ時ニアラスト云ハルヽカ、其レハ頗ル見込ミ違ヒタル説ナラン、何トナレハ世間カ不融通ナルニ準シ斯ル安全ナル事業ニ向テ資本ヲ下サント欲スルモノ多キヲ致スモノナレハナリ、現ニ今日公債証書其他ノ株式ノ代価騰貴セル所以ノモノハ之ヲ証明スルノ事実ナラスヤ、故ニ不景気ノ時勢ナレハトテ決シテ売却ヲ為ス能ハサル如キコトアラサルナリ
○二十五番尾崎行雄曰 元来原案ニ於テ其利益一割強ト云ヘルモノハ売却代弐拾四万円ヲ算出スルカ為メニ仮定シタル割合ニシテ、若シ実際瓦斯局ノ利益ヲ調フルトキハ壱割四五分ノ利益アルナリ、果シテ其割合ヲ以テ売却代ヲ算出スルアランカ原案ニ比スレハ余程ノ増加ヲ見ルニ至ルヘシ、縦令二次会ニ於テ修正ヲ加フヘシトスルモ壱割四五分ノ比例ヲ以テ高価ナル売却代ト為シ得ヘカラサルナラン、又世間ノ人ハ少シク学問ノ片端ヲ聞キタル弁トシテ動モスレハ学問上ノ理屈ヲ並ヘ商業ニ属スル如キモノハ官衙ノ管理スヘキモノニアラズナドヽ云ハルレトモ、大政府カ民間ノ事業ニ手ヲ出ス如キコトナラハ格別、我カ区部会位ハ斯ル事業ニ従事セシトテ何程ノ差支アルヤ我々ハ却テ其相当ナルヲ認ムルナリ、故ニ今日之ヲ売却スヘシトスルノ説ハ本員ノ甚タ取ラサル所ナリ
○三十八番木寺安敦曰 之ヲ売却セントスルハ賛成スル所ナレトモ其代価ノ弐拾四万円ト云フハ如何ニモ低価ト考ヘラルヽナリ、該局ノ創設以来共有金ヲ支出スル総金額ハ六拾弐万余円ニシテ、其内該局ノ返戻ニ係ルモノ三拾六万余円ナリト云フモ、其返戻セル金額ハ之レマテ営業セル利益ヨリ生シタルモノナレハ、今日瓦斯局ノ財産ハ猶ホ六拾余万円ニ価スルコトヽ考フルナリ、然ルニ之レヲ売却スルニ当リ最初此事業ニ下シタル資本ト其返戻セルモノヽミヲ見テ売却代ヲ定メ、営業ノ際利益アリシ為メニ財産ノ増殖セルヲ顧ミサルハ何事ゾヤ、本員ハ少クモ之レハ六拾余万円ニ売却シテ相当ナリト考フナリ、然ルヲ僅カニ弐拾四万円ヲ以テ売ラントナラハ買手ノ方ハ余リ甘キ話シナラスヤ、故ニケ様ナル代価ナラハ売却セヌ方得策トスルヲ以テ、此場合ニ於テ十六番ノ説ヲ賛成ス
○四十三番大貫伝兵衛曰 私モ早晩此瓦斯局ハ売却セサルヘカラサルモノト認ムルモ今日之ヲ売ルノ時節ト考ヘサルナリ、詰リ本員ハ此売却ヲ延期スルノ考ヘヲ以テ十六番ノ説ヲ賛成ス
○四十一番牧山源兵衛曰 本員モ十六番ノ説ヲ賛成ス
○四十五番佐藤正興曰 私ハ四十八番ヲ賛成ス、廃棄論者ノ説ヲ聞ク
 - 第12巻 p.578 -ページ画像 
ニ売却代ハ賤シト云ハルヽガ、其コトナラハ二次会ニ於テ如何様ニモ修正スルヲ得ヘシ、決シテ原案ノ調ニ拘泥スルニ及ハサルナリ、若シ又公債証書ヲ買入レ置クハ危険ナリトカ不利益ナリトカ考ヘラルヽナラハ、寧ロ地方税負担ノ道路橋梁費ニ消費スルモ可ナリ、然カスルトキハ冥々ノ裏ニ地方税ヲ救フノ利益随分大ナルコトヽ考ヘラル
○四十三番大貫伝兵衛曰 成程四十五番ノ説ノ如ク之ヲ売却スルト決スル以上ナラハ、二次会ニ於テ修正ヲ加ヘ以テ其売却代ヲ高カラシムヘシト雖モ、本員ノ考ニテハ、今日ニ於テ之ヲ売却スルノ時節ト認メサルニヨリ其期ヲ待タント欲ス
○五十六番松田秀雄曰 最早諸君ノ主張スル所ノ論点ハ充分ニ了解セリ、然リト雖モ府庁ノ斯ノ如キ事業ヲ管理スヘキモノニアラサルハ本員等モ左袒スル所ナリ、十六番二十五番ハ事新シク之ヲ論セラルルモ、此問題タルヤ前年来議会ノ論シ尽セル所ニシテ今日マテモ其売却ヲ為サヽルハ如何ナル故ナルヤヲ疑フ程ノ事柄ナレハ、私ハ今日ニ於テ必ラス其売却為サヽルヘカラズト信スルナリ、三十八番ハ之ヲ売却スルノ精神ナリト明言シ、而シテ其代価ヲ高カラシメント欲シテ十六番ヲ賛成スルトハ近頃不思議ノ発議ナルカ如シ、若シ十六番ノ説ニシテ多数ノ賛成ヲ得ンカ此議案ハ廃案ニ属シ、二次会ヲ開クノ期ナカルヘシ、然ラハ三十八番ノ精神ハ何レノ場合ニ於テ之ヲ貫カントスルヤ
○五十二番高雄琢磨曰 之ヲ売却スヘシト云フハ本員ノ取ラサル所ナリ、熟ク々々議会ノ有様ヲ見ルニ之マテ当議会ハ兎角ニ共有金ヲ支消スルノ傾キヲ有シ、其費途ノ劇シキ道路橋梁ハ勿論港湾ノ修築ト云ヒ溝渠ノ開鑿ト云ヒ概ネ此共有金ニ向テ其支弁ヲ仰カサルモノナキカ如シ、然リト雖モ今日ニ至ルマテハ幸ヒニ瓦斯局ノアルアリテ其利益ノ莫大ナルカ為メニ共有金ノ収入トナルモノ多キニヨリ随分補充ヲ為シタルコトナレハ、共有金ヲシテ著シキ減額ニ至ラシメサルヲ得タルノミ、斯ル有様ナレハ若シ今日ニ於テ之ヲ売却セン歟再ヒ利益ノ収入スヘキモノナキニヨリ、以後共有金ヲ支消スルアルモ果シテ何ヲ以テ其補充ヲ為シ得ルヤ、唯タ共有金ヲ支消セルノミニテ之ヲ補フノ道絶ユルアラハ終ニ著シキ減額ヲ来シ、他日共有金ニ向テ其支弁ヲ仰カサルヘカラサルモノ生出スルモ之ヲ如何トモスル能ハサルヘシ、然ラハ其結果事業ノ衰頽ヲ見ルニ至ラン、反対論者ハ頻リニ斯ル事業ハ府会ノ管理シ居ルヘキモノニアラスト云フモ、其レ丈ケノ議論ナラハ決シテ今日ニ売却セネハナラスト云フノ理由トナラサルナリ、依テ本員ハ十六番ノ説ヲ賛成ス
○六番藤田茂吉曰 私ハ瓦斯局ヲ売却スルハ至当ノコトヽ考フルナリ抑モ此コトタルル《(衍)》ヤ十五六年ニ於テ議会ノ決議ヲ以テ其売却ヲ為スヘキモノトナシ、既ニ広告マテモ為セシ位ノモノナリキ、元来此事業ハ利益ノアリシモノニアラス、然ルヲ二三年以来漸ク其利益ヲ見ルニ至ルモ、若シ今日ノ組織トナシ官府ノ体裁ヲ備ヘ置カハ勢ヒ規則ニ拘束セラルヽニヨリ営業ノ間、機会ヲ失シテ其利益ヲ失フモノ大ナルヘシ、殊ニ今日ノ利益ハ何時マテモ継続スヘキモノヽ様ニ考
 - 第12巻 p.579 -ページ画像 
ヘラルヽ方モアルヘシト雖トモ、民間不景気ノ今日ナレハ家内引用需用ノ如キ今後幾多ノ減少ヲ見ルナシトセス、然ラハ利益ヲ見ルコト余程困難ナルヘシト考フルナリ、十六番ハ共有金ノ保存スヘキヲ思ヒ之ヲ売却スルノ不可ナル所以ヲ主張セラルヽモ、果シテ其精神ナレハ之ヲ売却シテ更ニ公債証書ヲ買入レナハ別ニ危険ノ恐レモナク又世間ノ利益トモナルナシ、現ニ十五六年度ニ於テハ殆ント之ヲ棄テ売リニ為サントスル程ノモノナリシカ、今日ニ於テ相当ノ代価ヲ以テ之ヲ払下ルヲ得ハ如何ニモ都合ノ好キコトナラスヤ、本員ハ原案ヲ以テ恰当ノモノト認ルナリ
○十六番高梨哲四郎曰 之レマテ種々議論モアリタルカ六番ニ至リ初メテ我カ反対論者ヲ得タリト云フヘシ、六番ハ之ヲ売却スレハ世間ノ利益トナルヤニ云ハルヽガ、其レハ本案ニ関係ナキコトナレハ敢テ之ヲ売却スルノ理由トナラサルヘシ、而シテ六番ノ其説ヲ為シタルハ詰リ枝葉ノ言ニシテ、其根本トスルハ不景気ノ時節ナレハ今後瓦斯ノ需用者ヲ減シテ利益ヲ見ル能ハサルヘシト云フニアレトモ、我々ノ考ナレハ元来瓦斯ヲ需用スル程ノモノハ裏店住居ヲ為ス如キ貧民ニアラサレハ決シテ不景気ノ影響ヲ被ラサルヘシ、殊ニ皇居御造営ノ場合ナレハ却テ其需用ノ増加スルヲ期スヘキモ、其減少スヘキカ如キハ思ヒモ寄ラヌ次第ナリ、現ニ原案ノ調モ需用ノ増加スルニヨリ之レカ売却セサルヘカラストノコトナレハ、六番ノ原案ヲ維持スルハ理事者ト其精神齟齬セルモノト云ハサルヲ得サルナリ、元来此瓦斯局ハ我々府民ノ宜シク之ヲ保続スヘキノ責任ヲ有スルモノナルヘシ、然ルヲ之ヲ売却シテ公債証書ト為スヘシト云フハ抑モ何事ソヤ、六番ハ如何ニ公債証書ハ安全ノモノニシテ之ヲ瓦斯局ニ比スレハ危険ナラスト主張セラルヽモ、今日ノ代価ハ確乎不抜ノモノニアラス、金融ノ如何ニヨリ公債証書ノ代価ニ変動ヲ生スルハ諸君ノ熟知スル所ナルヘシ、然ラハ今日ノ有様ヲ見テ公債証書トナサハ安全ナリト偏信スルハ頗ル怪ムヘキナリ、此レ等ヲ顧ミス六番等ノ之ヲ売却セントスルハ府民ニ対シ甚ク不信切《(親)》ナリト云ハンノミ
○番外一番銀林大書記官曰 今日瓦斯局ヲ売却スルヲ以テ不適当ナリト云フノ論モアルガ、全体皇居御造営ノ為メニ要スル所ノ瓦斯ハ其量凡ソ今日現ニ世間ニテ需用スルト殆ント同量ナルニ近シ、斯ル大量ノ瓦斯ヲ製造セントスルニ於テ是非拾数万円ノ費用ヲ要シテ器械ノ弁置等ヲ為サヽルヘカラス、若シ府庁カ左程ニ大金ヲ費シ瓦斯局ヲ維持セントナラハ此事業ヲ以テ永ク府庁ノ管理スヘキモノト決心ヲ定メサルヘカラザルナリ、之レニ反シテ若シ皇居ノ需用スル所ノ瓦斯ハ此瓦斯局ヲシテ製造セシメサラントスルカ、宮内省ハ必ラス之レヲ他人ニ命シ其製造ヲ為サシムルナルヘシ、果シテ然ラハ府下ニ二ケ所ノ瓦斯局ヲ生スルモノニシテ其間ニ競争起リ終ニ利益ヲ失フニ至ルヤ明ナリ、且ツ此事業タル商売上ノ性質ヨリスルモ随分危険ノモノナリ、例ヘハ瓦斯管ノ破損セル如キアリテ其点火ニ差支ヲ生スルアランカ、引用者ニ向テ其損害ヲ弁償セサルヘカラサル等ノコトアリ、余リ安心ノ出来ルモノトハ思ハレス、故ニ府庁カ原案ヲ発セル第一ノ原因ハ皇居御造営ニアリト云フモ其他ノ事情ニ於テモ
 - 第12巻 p.580 -ページ画像 
之ヲ売却スルノ相当ナルヲ認メタルニヨルナリ、又利益ニ就ヒテ議論アルカ、一寸考フルトキハ壱割六厘程ナルカ如シト雖モ現在ノ敷地代トシテ六千円ハ予算外ニ払ハサルヲ得サルニヨリ、実際壱割壱厘位ニ過キス、右ノ次第ナレハ之ヲ売却セント欲セハ先ツ皇居ニ要スルノ瓦斯ハ之ヲ受負ハントスルヤ否ヤニ付キ決スル所ナカルヘカラズト考ヘラルヽナリ
○四十三番大貫伝兵衛曰 番外ノ説モアルカ今壱割有余ノ利益アル事業ナラハ強ヒテ之ヲ売却セントモ可ナラン、若シ皇居御造営ニ付キ拾数万円ノ増費ヲ要スルト云フモ敢テ利益ノ減スルト云フニアラサレハ、他日之ヲ売却スルニ於テ何ノ差支アルヤ、我々ハ今日必ラス之ヲ売ラントスルハ其理由アルヲ見出サヽルナリ
○議長曰 最早議論尽キタルモノト認ムルニヨリ決議ヲ要スヘシ、本案ノ為メニ第二次会ヲ開クヘシトスルモノハ起立アレ
  起立二十九人
 又曰 過半数ナルヲ以テ第二次会ヲ開クコトニ決セリ、其開期ハ追テ報道スヘシ、之レヨリ更ニ府庁舎建築費ノ第一次会ヲ開クヘシ


明治十八年臨時会議事録(DK120073k-0004)
第12巻 p.580-583 ページ画像

明治十八年臨時会議事録 (東京府文庫所蔵)
東京府臨時区部会議事録第壱号 上遠野富之助記
    書記瓦斯局売却代ヲ朗読ス
○議長曰 右ノ内売却代弐拾四万円ニ付キ発議アレ
○三十四番〓村宗伯曰 番外ニ伺フ、此代価ハ十四年度ヨリ十七年度ニ至ルノ利益金ニヨリ算出セルモノナルヘキガ今一時ニ原案ノ金額即チ弐拾六万九千円ヲ上納スルモ売下ケラルヽヤ、又即金ヲ以テ払下ケヲ請フトキハ幾分カ代価ヲ減セラルヽヤ、或ハ商法ノ考ヲ以テ出願スルモノナキヲ期セサレハ其辺ヲ伺ヒ置キタキモノナリ
○番外一番銀林大書記官曰 売方ノ順序ニ就ヒテハ未タ決定セサレトモ、大体原案ノ通リトナシ以テ広告セントスル積リナル、凡ソ原案ノ代価ヨリハ高価ニ引請ルモノアルマジトノ見込ナリ
○三十四番〓村宗伯曰 本員ノ伺フ所ハ若シ一時ニ代価ヲ上納スルモ払下ケラルヽヲ得ルヤ否ヤニアルナリ
○四十五番佐藤正興曰 其レナラハ強ヒテ番外ニ問フニ及ハサルヘシ其代価ヲ増減スルハ議会ノ決次第ナラン、猶ホ一寸番外ニ問フガ、街灯点火料収入未済金三万六千九百余円ハ損失シタルモノト心得テ可ナルヤ
○番外一番銀林大書記官曰 四十五番ノ質問セル街灯点火料ハ質問ノ通リナリ、三十四番ノ問モアルガ既ニ原案ノ通リニ広告スルモノトセハ、其レヨリ高価ニハ買手ナキコトヽ考ヘラルヽナリ
○六十一番田口卯吉曰 原案ノ取調ナラハ弐拾四万円ノ売却代トナシ而シテ貸金ノ割合ヲ以テ之ヲ年賦ニスルモノナルガ、斯ル議案ナレハ之レヨリ高ク売却スルコトヲ得サルベシ、今若シ此瓦斯事業ニシテ果シテ利益多ク銀行株券若シクハ公債証書ヨリハ之ヲ望ムモノアランカ、百円ノ株ハ或ハ百五拾円ノ高価ニ上ルヤヲ保セサルナリ、然ルヲ原案ノ如クンハ最初ニ申込ミタルモノニシテ原案ノ金額ニ満
 - 第12巻 p.581 -ページ画像 
ルアレハ後ニ之ヲ買ハントスルモノハ縦令高価ヲ以テスルモ之ヲ得ル能ハサルカ如シ、凡ソ物品ノ相場ハ競争ノ如何ニヨリ予メ定メ難キモノナレハ、斯ル売方ニテハ到底相当ノ代価ヲ得ル能ハサルコトト考フルナリ、依テ之ヲ修正シテ仮リニ弐拾四万円ノ代価ト定メ、若シ之ヲ買ハント欲スルモノ多キトキハ各其増シ打ヲナスニ準シ、己レノ欲スル丈ケヲ買ヒ得ル如キ仕組トナサント欲スルナリ、即チ説明書ニ於テ弐拾四万円ヲ弐千四百株ト別チ一株ヲ百円ト予定シ、若シ之ヲ買ハント欲スルモノハ増シ打ヲ為ストキハ幾万円ナリトモ己レノ欲スル丈ケノ株主トナリ得ルコトヽナスヘシ、斯クスルトキハ始メテ相当ノ価格ヲ以テ売却スルヲ得ルニ至ルヘシト雖モ、若シ原案ノ仕組ナレハ到底公平ノ代価ト云フ能ハサルナリ
○議長曰 然ラハ六十一番ノ説ハ別ニ原案ヲ修正セスシテ其売方ヲ改メントスルノ意ナルヤ
○六十一番田口卯吉曰 然リ説明書ニ於テ之ヲ改メントスルナリ
○五十二番高雄琢磨曰 六十一番ト同一ノ趣意ナルカ此瓦斯局ハ今日ノ有様ニテモ既ニ壱割余ノ利益アル事業ナレバ、若シ之ヲ私立会社トナスアラハ、其利益ハ弐割余ニ至ルヘキハ疑フヘカラサルコトナリ、之ヲ弐拾四万円トシテハ少シク低価ト考フルニヨリ本員ハ三拾万円ト見積リ、一株百円トナシ以テ三千株トナサントス、尤モ其払込ノ如キハ六十一番ノ趣意最モ至当ナリト考フルナリ
○五十番志摩万次郎曰 原案ノ弐拾四万円ヲ以テ払下ケントスルモノハ現品大凡何程ノモノナルヤ、且ツ此ノ事業ハ不景気ニモ左マテ影響ナキ様ニ考ヘラルヽカ大抵危険ナリトスルノ度合ハ如何ナルヤ、次ニ皇居御造営ニ付キ需用スル所ノ瓦斯ヲ供給セントスルニハ凡ソ幾何ノ資本ヲ要シテ応シ得ルヤ、番外ノ弁明ヲ煩ハシタシ
○四十五番佐藤正興曰 之ヲ売却スルトキハ、通常会ニ於テ議決セル家内引用瓦斯小器械取付資金壱万弐千余円ハ別ニ共有金ヨリ支出スルニ及ハサルヤ
○三十一番須藤時一郎曰 原案ニテハ其レハ弐拾四万円ノ内ニ籠メテ売却スル調ナレトモ、常置委員ニ於テ別ニ一項ヲ設ケテ更ニ之レヲ掲ケタリ、尚ホ其場合ニ至リ詳細ニ報道スヘシ
○番外一番銀林大書記官曰 五十番ヨリノ質問ナルカ瓦斯局ノ財産トスル現物品ノ代価一々精ハシキ取調ナキヲ以テ分ラス、次ニ皇居御造営ニ付キ瓦斯ヲ製スルモノトスルモ幾多ノ資本ヲ要スルヤ未タ調ヘサレハ之レモ分ラス、又此事業ニ伴フ所ノ危険ノ度合ト云フモ天変地異ニ関スルコトナレハ別ニ其調ナシ
○五十番志摩万次郎曰 精シキ調ナクハ大抵ノ処ニテ差支ナキカ故ニ皇居ノ方ニ幾多ノ資本ヲ要スレハ需用ニ応スヘキヤ、又危険ノ場合ハ之レマテ何ニモナカリシヤ否ヤ一寸伺ヒタキモノナリ
○五十九番山中隣之助曰 六十一番ノ説ノ如ク株券トナシ之ヲ分ツナラハ如何ニモ都合好キコトナルヘシ、実際差支ナク之ヲ為シ得ルヤ番外ノ弁明ヲ伺ヒタシ
○三十一番須藤時一郎曰 本員等モ最初株別ケニセントスルノ考ヲ持チタリシモ、若シ株券トナストキハ(レトルト)又ハ(コークス)
 - 第12巻 p.582 -ページ画像 
(タール)代ノ如キモノハ何分之ヲ株分ケノ中ニ込ル能ハサルヲ以テ已ヲ得ス原案ノ儘トセシナリ
○六十一番田口卯吉曰 三十番ヨリ株分ケニスルトキハ差支アリテ出来スト云ハルヽガ、弐拾四万円丈ケヲ株券トナシ、其他ノ(レトルト)等ノ類ハ説明書ニ掲ケアル如ク其時ノ現存高ニ応シ相当代価ヲ以テ払下クルモノトスレハ少シモ差支ナカラン
○五十九番山中隣之助曰 本員モ三十一番ノ如ク考フルナリ、若シ六十一番ノ説ニヨリ之ヲ株分ケニナストキニ当リ株券ノ満タサル如キアラハ何如スルヤ、若シ売レサル如キアラハ却テ不利益ナルニアラスヤ、殊ニ七分ノ利子ハ決シテ賤シキモノト云フヲ得ス、例ヘハ今日マテハ府庁ノ管理スルモノナレハ道路敷ヲ掘上ル如キアリテモ別ニ面倒ナルコトモアラサリシカ、若シ私立会社トナランカ土木課等ノ非難モ受ケサルヘカラス、ナカナカ之レマテト違ヒ事業上余程ノ困難ヲ感スルコトアルヘシト考ヘラルヽナリ
○四十番沼間守一曰 此儀ニ付テ充分諸君ノ注意ヲ仰カサルヲ得ス、今此瓦斯局ヲ売却セントスルニ当リ四十番ナドノ意ナレハ余程ノ高価ニ売ラントスルモノナルガ、其レニ付キ種々差支ノコトノミナルニハ殆ント苦シミ居ルナリ、今此事業タルヤ年一割有余ノ利益アリトノコトナルガ、而シテ之ヲ管理スルモノハ誰レナリヤトスレハ、東京府ノ官吏ナリ、抑モ官吏ノ斯ル商売上ニ関シテ下手ナリト云フハ分リ切リタルコトナルニ、其官吏ノ管理シ居ルサヘ猶ホ此レ程ノ利益アルト云フハ実ニ好キ事業ト云ハサルヲ得ス、能クハ記臆セサルカ之レヲ三ケ年賦ニ買受クルトキハ初年ハ二割、二年目ハ一割三分、三年目ニ一割一分ノ利益アリトノコトナリ、斯ル事業ナレハ原案ヨリ実ハ今少シク高価ニナサント欲スルモ、如何センヤ買手ノ之ヲ欲セサルヲ殆ント其手段ナキニ苦シムナリ、六十一番ハ之ヲ競売ニ掛ケントノ説ナレトモ、其レモ到底行ハレサルコトヽ考フルナリ何トナレハ此事業タルヤ余リ世間ニ知レ悪キモノナリシヨリ自然之レニ手ヲ出スモノ少カルヘシトスレハナリ、到底之レハ諸君ノ熟考ヲ要シテ之ヲ高クスルノ工夫ヲ求メサルヘカラス、先刻来種々論議アリシ府庁舎建築費ノ如キモノナラハ大攫ミナル議論ヲナスモ不可ナカルヘシト雖モ、実ハ此事業ニ付ヒテハ将来ノ関係モアレハ熟考ノ上ニ熟考ヲ要セサルヘカラサルコトヽスルヲ以テ、其決議ヲ延ヘ明日マテニ諸君ノ工夫セラレンコトヲ望ムナリ
○四十五番佐藤正興曰 街灯点火料ハ原案ニ見込アルヤ
○番外一番銀林大書記官曰 然リ籠リ居レリ
○五十番志摩万次郎曰 我々ハ此議案ニ対シテ充分ノ考察ヲ要セサルヘカラサルコトヽ思フナリ、五十九番等ノ説モアルガ此事業タルヤ他ニ種類ナキ好事業ニシテ、殆ント専売特権ヲ有シ他ノ競争ヲ受ケサルモノナリ、殊ニ皇居御造営ト云フ動カスヘカラサル得意ヲ得ルコトナレハ年々弐三万円ノ利益ハ眼前ニ横ハリ居ルナル、斯ル利益アルモノナレハ三拾万円ノ代価ヲ有スルハ云フマテモナキコトニシテ、若シ買手ナシトスルトキハ之ヲ維持セシトテ決シテ損耗ヲ生スルノ恐レアルニアラス、故ニ之ヲ売却スルニ付テ充分ニ考ヘ狼狽シ
 - 第12巻 p.583 -ページ画像 
テ安売ヲナス如キコトナキ様ニセサルヘカラサルモノト考フルナリ
○議長曰 尚議論モアルニヨリ決議ヲ延ハシ、今夕ハ之レニテ散会スヘシ
  于時午後第八時


明治十八年臨時会議事録(DK120073k-0005)
第12巻 p.583-597 ページ画像

明治十八年臨時会議事録         (東京府文庫所蔵)
東京府臨時区部会議事録第二号        中野光享記
  明治十八年六月二十三日午後第四時四十分開議
      闕席
           松南宏祚     松南宏雅
           永井直哉     永井尚弼
           小原勝五郎    菅谷政勝
           青地四郎左衛門  山口謙
           柳沢徳忠     佐藤正興
           稲田政吉     高梨哲四郎
           渡部温      関岡孝治
           小林猶右衛門   鳥海清左衛門
           一色健郎     藤田茂吉
           近藤孝行
      出席 三十六員
○議長芳野世経曰 昨日ニ継キ瓦斯局売却案ノ第二次会ヲ開キ金弐拾四万売却代ノ項ニ付審議アレ
○四十八番角田真平曰 此瓦斯局組織等ノ事実ヲ当四十八番等ハ能ク心得サレハ詳シク番外ニ伺ヒ置カサルヲ得ス、抑モ此原案ノ仕組ハ弐拾四万円ノ内現金幾分ヲ出シ払下ヲ望ムモノアル場合ハ瓦斯局ノ所有権ハ買受人ニ移リ、設ヘハ建築等ノ計画アルニ際シ買主自身ニ於テ随意ニ挙行シ得ルモノニシテ、総テ買主ノ負担ニ属シ、別段当区部会ノ決議ヲ要セス、区部会ハ単ニ年賦金ヲ貸金証文トシテ之レヲ取立ルノミニ止ルヤ如何
○番外一番銀林大書記官曰 然リ質問ノ如シ
○四十八番角田真平曰 然レハ今一ツ六十一番ニ問ハン、昨日六十一番ハ之レヲ株券トシテ売却スル方都合宜シトノ発議アリシカ、之レヲ株券ニナシ巧ミニ競売セハ不知不識高価ニ売リ得ルナランカ、所有権ノ結果ハ原案仕組ノ如クニナルヘキヤ、玆ニ株主拾弐万円ニ達セシ場合ハ即チ売却代ノ半額ナルニヨリ、瓦斯局利害ノ半ハ区部会ニ於テモ負担スルコトニナルヤ、果シテ然レハ建増ヲ要スルトキハ其費途ノ半ハ区部会ヨリ出サヾルヲ得ス、又瓦斯局焼失等ノ災害アレハ区部会モ倶ニ其損害ヲ被ルコトニナルヘシ、或ハ又株券ニナスモ小生ノ考ヘ通リ全額ニ充タサルモ、之ヲ売渡スト同時ニ所有権ヲ其払下人ニ移スノ考ヘナルヤ如何
○六十一番田口卯吉曰 四十八番ノ憂慮ハ株金ノ募リ高ニ応スルモノ寡ク弐拾四万円ノ半額ニ充タサルノ場合ナリ、此場合ニ在テ則チ原案説明ノ末ニ「払下ヲ望ムモノ其金額売却金高ノ半数以上ニ至ルモ全額ニ充タサルコトアルトキハ其不足金ハ相当ノ利子ヲ徴シ且抵当
 - 第12巻 p.584 -ページ画像 
ヲ要シ」云々トアル此手続ニ因テ処分スル故其結果ハ原案モ本員ノ精神モ同一ナリ、要スルニ本員ノ説ハ便利ノ為メ之レヲ株ニ分チ其株主ノ団結シタルモノヲ即チ借主トナスニ止ルノミ
○五拾七番末吉忠晴曰 本員ハ成ルヘク高価ニ売却セント欲スルニ由リ、六拾壱番ノ説ヲ賛成スルノ精神ナレトモ、昨日番外ハ弐拾四万円ト定ムレハ夫レヨリ超過セヌ如ク説明アリシカ、之レヲ広告ナシ弐拾四万万《(円カ)》ニテ払下ケヲ請願スルモノアリ引続キ一二時間ヲ後レ或ハ弐拾七八万円位ニテ払下ヲ望ムモノアルモ、高価ノ方ヘハ払下ケスシテ先願者ニ払下ル見込ナルヤ、或ハ又広告後何日間トカ期限ヲ定メ、其期限内ニ望人数多之レアラハ其内最高価ノ望人ニ払下ル見込ナルヤ、番外ノ説明ヲ乞フ
○番外一番銀林大書記官曰 広告ノ期限ヲ定ムル等ハ皆売払ノ順序ニ属スルモノニシテ、其辺ノ手続キハ未タ確定シ居ラサルナリ
○五十九番山中隣之助曰 六拾壱番ニ質問スヘシ、六十一番ノ考案通リトナスモ売却金額ニ充タサル場合ハ原案説明末段ト同一ト云ハルルカ、其ハ悉皆払下クルニアラサレハ行ハレマシ、之レヲ株券トシ払下ナハ株数ハ望ミ次第ナルユヘ若シ弐拾万円ハ望人アルモ残リ四万円丈ケ望人之レナキ場合ハ、矢張リ瓦斯局ハ区部会ノ所有ニシテ増築其他ニ一々区部会ノ決議ヲ要スルナラン、然ルニ弐拾万円丈望人アラハ残リ四万円ハ貸付ケ弐拾万円ハ株主ヘ総テ瓦斯局ヲ引渡スノ考ヘナルヤ
○六十一番田口卯吉曰 五十九番ニ答フヘシ、第一ノ質問ハ本員ノ考案モ其点ニ至テハ原案ノ仕組ト更ニ異ルコトナシ、只タ原案ハ百円ハ百円ニ払下クル方法ニシテ、本員ノ考察ハ百円ノ株ヲ百弐三円《(脱アルカ)》ニ競ラシムルニ外ナラス、原案ト雖トモ之レヲ壱人ニ売払フノ意味ニアラス、必ス事実ハ数多ノ望人カ団結ナシテ府庁ニ申出ルニ相違ナシ、而テ之ヲ株券ニナセハ公平ノ価ヲ得ルノ利益アリテ仮令望人株数ニ満タサルモ広告期限ニ至レハ府庁ヨリ其株主ヲシテ団結セシメ頭取ヲ選マシメ、之レヲ瓦斯会社トシ払下ル故其結果原案ト同一ナリ、第二ノ質問ハ四拾八番ヘ答ヘシ如ク、貸付証文ヲ取置キ相当ノ利子ヲ払ハシムル見込ナリ
○三十四番〓村宗伯曰 番外ニ問フ、先年瓦斯事業研究ノ為メ上海ヘ派出セシメシ工師ハ、瓦斯局ト倶ニ払下人ヘ引度サルヽヤ
○番外一番銀林大書記官曰 瓦斯会社トナレハ府庁ニ於テ局員ハ解傭ナスニヨリ、相対協議ノ上雇フコトニナルヘシ
○四十八番角田真平曰 倩ラ六十一番ノ説ヲ考フルニ至極結構ナル趣向ナリ、最初ハ弐拾万円丈株主アレハ、残リ四万円ノ株主ハ当区部会ナラント思ヒシモ、六十一番ヨリ詳シキ説明ヲ得テ了解セリ、扨之ヲ原案ノ仕組ニテ払下ヲ欲スルモノアル場合ハ已ニ望人ノ多キ時ナル故株券トセハ壱人ニシテ数株ヲ望ムナラン、左スレハ何分カ競上リ価ヲ増セシ丈ハ区部会ノ貰《(儲カ)》ケトナリ、而シテ若シ売却高ニ株主充タサレハ瓦斯局ヲ抵当トシテ株主ヘ貸付クルト云フニ依リ、六十一番ノ説ハ区部会ニ於テ毫モ損ヲセサル仕方ニシテ誠ニ良案ト考フナリル、只玆ニ注意スヘキハ之レヲ株ニナシ万一毎月二ツ三ツ位宛
 - 第12巻 p.585 -ページ画像 
漸次ニ申込ム如キコトアリテハ両三年モカヽルヘシ、其間ノ建築其他瓦斯局一切ノ経費ニ付区部会ノ厄介ニナラサル様確ト定メ置カサルヘカラス、故ニ之レ等ノ点ヲ六十一番ニ於テ府庁ニ打合サレ、判然取極メラルヽ見込ナレハ全ク六十一番ノ説ヲ賛成スヘシ
○五十二番高雄琢磨曰 本員ハ株券等ノコトヲ能ク心得ヘサルカ、之レヲ株券ニセハ弐拾四万円ニ充タサルモ百円ノ株券カ競争ヨリ百拾円ニモ至ルヘキヤ、六十一番ニ問フ
○六十一番田口卯吉曰 其ハ弐拾四万円ニ充タサレハ打分ハ出テサルカ通例ナレトモ、或ハ最初ヨリ良価ヲ出シテ望ムモノナシトモ保シ難シ
○五十九番山中隣之助曰 六十一番ノ説ハ詰リ高価ニ売ラント欲スルノ精神ニ外ナラス、故ニ此方法ハ別ニ改メサルモ之レヲ弐拾四万円以上ニ売却スルコトニ決シ、売却方法ニ於テ成ルヘク高価ニ売払フ仕組ニナサハ六十一番モ異論ナカルヘシ、就テハ之レヲ弐拾四万円以上ニ売却スルコトニ決シ置キテハ如何
○五十二番高雄琢磨曰 之レヲ株券ニテ売払トシ、其金額弐拾四万円ニ充タル上ハ如何セハ増打分ヲ生スルヤ、競売ノ大略ヲ伺ヒタシ
○四十番沼間守一曰 曩キニ三十四番ヨリ番外ニ対シテノ質問ハ本案ニハ余程ノ関係ヲ有スルモ之レハ左ノミ心配ナスニ及ハス、此技術生ハ瓦斯「インチニール」トシテ用フレハコソ月給五十円ノ価アルモ、之レヲ他ニ用フルトキハ化学士ナルニ由漸ク三四拾円位ナルヘシ、故ニ払下人ニ於テ此工師ヲ雇フコトハ容易ナリ、扨又五拾弐番ハ頻リニ競売ニ付懸念セラルヽカ、六十一番ノ云ハルヽ競売方法ハ先頃政府ニ於テ日本鉄道公債ヲ発行セラレシト同一ナリ
○番外一番銀林大書記官曰 府庁モ最初之ヲ競売ニナス考ヘモアリテ能ク取調ヘタルニ、日本鉄道公債ハ五百万円以上ヲ募ルニ壱銭ヨリ拾五銭迄ノ打分ニシテ申出タル額面ハ弐拾壱万円ニ過キストナリ、如斯ニテハ競売ニナセシ効ナキノミナラス第一競売ヲナストキハ株主ノ団結ヲシテ完全ナラシムル能ハス、遂ニ恒産ナキ輩ノ株主トナル如キ嫌ヒアリ、必竟スルニ此瓦斯会社タランモノハ将来府庁トノ関係ヲ有スルニ由リ、確実ノモノヽ団結シタル会社ヘ譲リ渡シ立派ニ組織セシメント欲シ、競売ヲ止メシナリ、最モ売却方法ノ如キ細キ手続ハ本案決定ノ後チ夫々常置委員ヘ諮問ナス積ナリ
○四十番沼間守一曰 番外ヨリ説明アリシカ我々常置委員モ成ルヘク競売ニナスノ考ヘニテアリキ、仮令議場ニ於テ如何ニ審査ヲ尽スモ到底適当ノ価ハ得難シ、正当ノ価ヲ得ンニハ競売ニ如カスト思ヒシカ、玆ニ恐ルヘキハ、競売トナシ株主ハ漸ク百五六拾人ニシテ其金額五六万円ニ過キスト云フ場合ニ至リ終ニ売リ損フト云フ懸念アリ元来価ノ公平ヲ得ルハ競売ニ如カスト雖トモ、日本人ノ常トシテ些細ナル事柄ヲ気ニ懸ケ妙ナル意気地ヨリ払下ノ時機ヲ誤リ、一方ニハ増築ヲ要スルニ株主ハ未タ拾万円ニ充タスト云フ結果ニ得サルヤノ懸念ナキニアラス、六十一番ニ於テ夫レ等ノ考ヘハアルカハ知ラサレトモ、之レハ見切ノ附ケ所ナレハ諸君モ充分熟慮セラレンコ下ヲ企望ス
 - 第12巻 p.586 -ページ画像 
○五十番志摩万次郎曰 之レハ相当ノ価ヲ定メテ買手アレハ直チニ払下クルコトニ決シ置ケハ可ナリ、本員ハ情実メキタルコトハ勿論又六十一番ノ如ク錯雑ナル方法ヲモ欲セサルナリ、要スルニ瓦斯局売却代ハ三拾万円以上、年賦ハ五ケ年以内、利子ハ年八朱ト大体ヲ決シ置キ望人ニ入札セシメ、実際売却ノ場合ニ於テ其方法ハ常置委員ニ諮問ノ上宜シク所置セシムルコトニナスヘシ、且ツ之レハ必ス本年度ニ売却セ子ハ成ラスト云フ理由モアラサル故相当ノ買手ナクハ売却セサルモ可ナリ、良シヤ皇居ヘ瓦斯引用ノ計画アリト雖トモ其費用タル拾万円内外ニ止リ、殊ニ相当ノ利益ヲ生スル事業ナレハ其原資ハ共有金ヨリ一時支出シテ妨ケナシ、一体当年ハ世間一般不景気ノ為メ金持ハ金ニ困ルト云フ折柄ナルニヨリ、或ハ相当ノ望人多キモ知ルヘカラス、此議会ハ大体ヲ決シ置キ売却方法ハ宜シク常置委員ニ托スヘキナリ
○番外一番銀林大書記官曰 五十番ハ皇居ノ瓦斯ヲ引受シハ余程利益ノアル如ク申サルヽカ、左程利益ナキモ之レハ瓦斯局ニ於テ引受ケサレハ他ニ一ノ瓦斯会社起リタランニハ互ニ競争ヲナス如キコトアリテ大ナ不利益ヲ来スノ恐レアリ、故ニ損益ニ拘ラス是非引受ケサルヘカラス、扨テ之ヲ引受ルトセハ瓦斯埋布管ニ四万五千円又瓦斯局持ノ増築等ニ八万円ヲ要シ、而テ皇居ノ点灯数ハ弐千八拾八嘴ナルモ、実際点灯ノ数ハ六百三拾四嘴、此瓦斯代金弐万千六拾三円ナリ、又総数ヲ点スルコトハ平均月ニ壱回アリトシテ此瓦斯代金千三百三拾七円、都合壱ケ年ノ収入額金弐万弐千四百円ニ過スシテ、此事業ヲ起スニ拾数万円ヲ要セリ、然ルニ其純益ハ漸ク一ケ年八千円ニ充タサルノミナラス、之モ瓦斯製造方ノ巧拙ニ関係アリテ余リ割合ノ好キモノニアラス、故ニ瓦斯業務ノ得失ヲ熟考セハ当年内ニ売却ナス方得策ナリトス
○六十一番田口卯吉曰 番外ハ之レヲ競売ニナスモ其効ナシトシテ其例ニ起業公債ヲ挙ケラレシカ、瓦斯局ノ株ト公債証書トハ同一ニ論シ難シ、彼ノ公債証書ハ其相場稍ヤ定リ居ルモ此瓦斯事業ハ夫レト異リ専売ノ姿ニテ今日相場ノ分カラサルモノナレハ、之レヲ株券ニナシ競ラシメナハ百円ノ株モ其相場ハ百五拾円トナルモ知ルヘカラス、現ニ日本鉄道会社ノ株券ハ極度弐円ト思ヒシニ豈計ン其翌日ハ四円迄ニ騰リシニアラスヤ、必竟スルニ之レヲ競売トシ公平ノ価ヲ得テ売却セハ、其沽価ハ安クモ当議会ハ府民ニ対シ面目ヲ失フ恐レナシト雖トモ、之レニ反シ原案ノ如ク弐拾四万円ト定メ望人ヘ払下ケ、万一其望人ヨリ幾分カノ高価ニ転売ナス如キコトアリナハ我々ハ府民ニ対シ面目ヲ失フヘシ、故ニ之レハ競売方法ヲ以テ適当ノ価ヲ得テ売却スルニ如カス、然カセハ当議会ハ府民ニ対シ毫モ耻サル所置トナルヘシ
○一番益田克徳曰 本員モ最初ハ競売ノ考ヲ起セシカ、先刻来六十一番ヨリ頻リニ競売方法ヲ以テ之レヲ売却センコトヲ主張セラルヽト雖トモ、其説タル別ニ良案ノアルニアラス、本員ノ思想ト更ニ異ナル所ナシ、只今六十一番ハ公債証書ト異ナル所以ヲ説カレ、之レヲ株ニ競セナハ百円ノ株モ百五十円ニナルモ知ルヘカラス云々ト申サ
 - 第12巻 p.587 -ページ画像 
レシカ、其ハ瓦斯局ノ価格一旦定リ相場所ニ出シテ競ラシムルノ場合ナラン、元来相場ニ依テ株券ノ騰貴スルモノハ其望人中彼ノ「山師」アリテ競ルガ故ナリ、抑モ之レヲ売払フニ付テ最モ我々ノ注意スヘキハ此瓦斯ノ相続人トナルヘキモノハ相応ノ資力ヲ有シ後々迄モ維持シ得ヘシト認ルモノヘ払下ルカ必要ニテ、瓦斯ノ効能ヲ継続スヘキ人ヲ望マサルヲ得ス、若シ之レヲ競売ニセハ会社全体ノ団結力薄クシテ株主タルモノ瓦斯事業ノ伸暢ヲモ計ラス傍観スルノ恐レアリ、六十一番ハ之レヲ払下ケ而ル後価ノ増サンコトヲ憂慮セラルルカ、今日其点ヲ憂慮ナサンヨリハ寧ロ着実ニ之ヲ維持スル人ヲ選ミ、相当ノ価ニ売渡シ、其レニテ満足スルニ如カス、且之レヲ払下ルニ当リ壱割余ノ利益ナクハ蓋シ望人モアルマシ、況ヤ皇居ヘ瓦斯引用ノ計画モアリテ此他ニ巨万ノ資本ヲ要スルコト目前ニ顕シ居ルニ於テオヤ、加之石炭ノ相場抔ハ著シキ高低アルモノ故平均壱割以上ノ利益ヲ得ンニハ容易ノ事ニアラサレハ、相場ノ定リ居ル公債証書ヲ購求ナスヨリ幾分カ割合宜クナクハ払下ケヲ望ムモノ之レナシト信ス、旁本員ハ原案ヲ可トナスナリ
○三十一番須藤時一郎曰 諸君ハ頻リニ競売ニナスト云ハルヽカ、六十一番ノ申サルヽ競売ハ公告ナシテ入札払トシ、高価ニ落下スト云フ考ヘナラン、已ニ然レハ原案ト其精神ハ同一ナルヘシ、如何トナレバ説明書ニ瓦斯局売却ノ事ヲ広ク公衆ニ示シ云々トアレハナリ、真ノ競売ハ価格弐拾四万円ナレハ之レヲ弐千四百株ニ分チ、株式取引所ヘ出シテ競ラシムルモノナレトモ、其ハ到底競売方法ニ因テ売却ナスコトハ出来能ハマシ故ニ三十一番ノ説モ原案ノ精神モ同一ト考フルナリ
○四十八番角田真平曰 之レハ実着ニ論セサルヘカラスト思慮スルニ依リ一言スヘシ、或議員ハ身元確立ナルモノヘ払下ケネハナラヌ如ク申サレシカ、其ハ甚タ解シ難シ、已ニ所有権ヲ一旦払下人ヘ移セシ以上ハ其払下人ニ於テ不利益トシテ瓦斯事業ヲ止ルモ其ハ致シ方ナシ、当四拾八番ノ考ヘハ年賦金未納ノ間ハ能ク規則等ヲ整頓セシメ、破産セサル様注意ヲ要スト雖トモ、之レヲ償却セシ上ハ府庁ハ関係スルニ及ハストナスナリ、如何トナレハ彼レニ損失アルモ此区部会ハ補助モセサルニ濫リニ立入ルハ宜シカラサレハナリ、扨六十一番ノ説ニ依テ之レヲ競売ニナシ、若シ三千株以上ノ申込ミアラハ此瓦斯局ハ三拾万円以上ニ売却シ得ヘシ、而テ之レカ株主タランモノハ如何ナル種類カト云フニ理事者ノ行為ニ因テ察スレハ、府下ニ有名ナル某々ノ如キ有力者ヨリ数多ノ株ヲ申込ムナラン、元来此株主タラント欲スルモノハ瓦斯事業ニ利益ノアルヲ知ラサレハ望ムモノアラサルヘシ、左レハ後来迄左程苦慮スルニモ及ハサラン、又三十一番ハ六十一番ノ説ハ原案ノ精神ト同一ノ如ク申サレシカ、原案ハ総額ヲ以テ売却スルノ仕組ニシテ、六十一番ノ説ハ之レヲ細分シテ売ルノ考ヘナリ、故ニ稍ヤ其売却方法ヲ異ニセリ、而テ事実ノ上ヨリ考レハ、細分シテ売ラント云フ六十一番ノ説ガ至極得策ノ如ク思ハルヽナリ
○四十番沼間守一曰 之レハ入リ込ミタル事柄ナルニ由リ六十一番及
 - 第12巻 p.588 -ページ画像 
ヒ三十一番ノ説ヲ一概ニ呑ミ込レ匆卒ニ決議セサル様注意セラレタシ、第一ニ六十一番ニ承リ度ハ六十一番ノ云フ競売ハ只今三十一番ヨリ陳ヘラレシ如キ意味ナルヤ、或ハ株式取引所ヘ出シテ競ラシムル考ナルヤ、第二ハ番外ノ説明中此売却代ヲ弐拾四万円ニ決スレハ其決議額ヨリ高価ニ払下ケヲ望ムモノアルモ高価ノ方ニハ払下ケヌ如キ口気アリ、四十番ハ望人アラハ無論高価ノ方ヘ払下ル考ヘナリ扨テ又之カ払下ヲ望ムモノハ如何ナル種類ノ人カヲ考ヘサルヘカラス、何レ之ヲ引受ルモノハ瓦斯局ニ縁故ノアル人カ否ラサレハ従来関係アル人ト懇意ノ者カ或ハ石炭ヲ売込ムトカ云フモノニアラサレハ望ムマシ、然ルニ之レヲ競売トナシ詰ラヌ意気地ヨリ若シ瓦斯ニ関係ノ人々ハ株主タルヲ忌嫌スル如キ挙動アリナハ、其価ヲ落スノミナラス蓋シ望人ハ出サルヘシ、兎角日本商人ノ癖ニテ斯ルコトハ往々アルコトナリ、今一ツハ資産ニ乏キ者多ク株主トナリ僅カ三年モ経過セサルニ未納金ノ為メ裁判ヲ仰ク如キ結果ヲ得タランニハ甚タ困難ナルニ因リ、予メ之レ等ノ点ヲ宜シク考慮セサルヘカラス
○六十一番田口卯吉曰 本員ハ素ヨリ之レヲ株式取引所ヘ出シテ競売ニナス考ニアラス、本員ノ憂慮ナス点ハ原案ノ方法ハ弐拾四万円ヲ超過セサル仕組ナレハナリ、抑モ原案ノ精神ハ弐拾四万円ニ充レハ売渡ス方法ナルニ由リ、此方法ヲ改メ弐拾四万円ヲ充ツルモ尚ホ増シ打分ヲ出スモノアラハ高価ノ方ヘ株主ノ推理ヲ与フルトシ、成ルヘク良価ニ売払フ考ナリ、最モ株式取引所ヘ出シテ競ラシメナハ公平ノ価ヲ得ヘキモ、其ハ実事行ヒ難シト信ス、故ニ望人ニ結社セシメ価ヲ競ラセント欲スルナリ
○四十番沼間守一曰 然レハ六十一番ノ考案ハ敢テ害ナキモ、四十番ハ先刻五十九番ヨリ陳へラレシ如ク之レヲ弐拾四万円以上トシテ決シ置ク方ヲ望ムナリ、六十一番ハ之レヲ弐千四百株ニ細分シテ競ラシムル考ヘナランカ、其ハ煩労ナルノミナラス瓦斯局ヲ売却ナスニ付テ万一今日ノ当局者へ妙ナ感シヲ惹起セシメナハ終ニ売却ノ機ヲ失シ折角ノ望モ水泡ニ属スルナラン、殊ニ此瓦斯局タル未タ資本モ定リ居ラサル場合ナレハ株ニ分ツコトハ難カルヘシ、已ニ四十番モ最初ハ株ニ分ツ考ヘヲ起シ資本ノ調ヘヲ要メシニ、当局者ハ今日資本ヲ調フルハ容易ニアラスト云ヒ強テ之レカ調ヘヲ欲セハ自身ニ瓦斯局ヘ三四ケ月モ詰切テ調ヘサルヘカラス、或ハ資本ハ概算ニ定ムヘシトノ説モアルナランカ、概算ニテ資本ヲ定ムルコトハ得策ニアラス、故ニ今日株ニ分ツト云フハ実事困難ナルニ由リ若シ六十一番ノ説ヲ可トセハ其精神ヲ以テ此売却方法ハ宜シク常置委員ニ托スヘシ、否ラサレハ総額ノ上ニ付テ幾何ヲ以テ売却ナスト決シ置クノ外ナカルヘシ
○六十一番田口卯吉曰 四十番ノ説ハ如何ニモ最ナルニ依リ自説ヲ引キ、更ニ四十番ノ説ヲ賛成スヘシ、本員ハ元来之レヲ株券トシテ売却スルノ意ニアラサリシモ、遂ニ其所ニ至リシナリ、唯タ之レヲ細分シテ売却セハ第一売渡スニ便利ニシテ且ツ価格ヲ増スナラント思惟スルヲ以テ細分シテ競ラシメント欲セシカ、只今四十番ノ云ハルル如ク当議会ヨリ売却方法ヲ常置委員ニ托スルコトニナリナハ売却
 - 第12巻 p.589 -ページ画像 
金額弐拾四万円以上ト決シ置テ可ナリ
○五十番志摩万次郎曰 四十番ノ云ハルヽ如ク之レヲ弐拾四万円以上ニ払下ヲ望ムモノアラハ売却ナストセハ広告後何十日ト云フ予メ申出ノ期限ナカルヘカラス、就テハ四十番ノ見込ハ其期限ヲ二三ケ月トシ、其期限内ニ申出タルモノヽ内高価ノ方ヘ払下ル考ヘナルヤ
○四十番沼間守一曰 理論ハ然ルモ二三ケ月トセハ些ト永キニ失スルナラン
○番外一番銀林大書記官曰 売却方ノ順序方法ハ常置委員ヘ諮問ニナルナランカ、原案ハ瓦斯局払下ヲ望ムモノアラハ必ス弐拾四万円ニテ売却ナスノ趣意ナリ、仮令ハ買主共ノ申合セモ行届キ弐拾四万円ニ纏メテ払下ヲ申出レハ其会社ヘ払渡ス見込ナリ、然ルニ漠然ト弐拾四万円以上ト修正ニナリテハ取扱上不都合ナリ
○四十番沼間守一曰 番外ハ我々ノ説ヲ誤解サレシナラン、之レヲ弐拾四万円以上ト決シ置クモ実事差支ハナキ筈ナリ、弐拾四万円以上ニ売却ナスト決シアレハ売却方法ヲ常置委員ニ於テ定ムルノ場合ニ株ニ分チ得レハ決議ノ精神ニ基キ株数ヲ定メ得ヘシ、又総額ニテ売却ナスコトニナルモ玆ニ弐拾四万ト弐拾五万円ト二種ノ申出アレバ無論高価ノ方ヘ売却シ得ルナリ、左レハ番外ノ云ハルヽ如ク必ス弐拾四万円ト究屈ニ極メ置クニモ及フマシ、故ニ議会ハ弐拾四万円以上ニ払下ルト決シ置キ聊カタリトモ高価ノ方ヘ売払フニ如カストスルナリ
○五十二番高雄琢磨曰 四十番ニ問フ、弐拾四万円以上ト決セハ広告文ニ弐拾四万円以上ヲ以テ売却ナスコトニ掲載ナス考ナルヘヤ《(マヽ)》、而テ弐拾四万円ニテ払下ヲ望ム者三四組モ申出タル場合ハ如何ナス見込ナルヤ
○三十一番須藤時一郎曰 要スルニ原案ハ弐拾四万円ヨリ以下ハ壱厘減シテモ払下ケサル精神ナリ、又弐拾四万円以上トナリ居レハ幸ヒニシテ望人多ク三組モ四組モ申出タル場合ニ其中最モ高価ノ方ヘ払下ケ得ルト云フニ止ルナリ
○五十九番山中隣之助曰 之レハ弐拾四万円以上ト決シ置キ便宜方法ヲ設ケ、タトヒ百円タリトモ高価ノ方ヘ売ルニ如カス、就テハ番外ニ於テモ必ス弐拾四万円ト主張シテ其額ヲ超過セシメサル如キ口気ハナキ様ニナシタシ
○議長曰 売却方法ニ付テ説アラハ、第一ニ其点ヲ決スルトナシテハ如何
○四十番沼間守一曰 之レハ余程入リ込ミ居リテ諸君ノ内漸ク六十一番ノ説ヲ解シ得ラレシ位ナレハ、決議ハ休息後ニ延サレタシ
○議長曰 然レハ休息スヘシ
  午後第六時三十分着席 出席三拾壱員
○議長芳野世経曰 休息前ニ継キ発議アレ
○三十八番木寺安敦曰 本案ニ付テハ昨日来諸君ノ説ヲ承リ能ク了解シ得タルニ由リ別段発議ハ要セサルモ、唯タ一二ノ疑団アルヲ以テ其疑団ヲ一言陳ヘ置クヘシ、第一ハ此売却代弐拾四万円ト云フハ如何ニモ低価ノ如シ、然ルニ番外ハ弐拾四万円ハ相当ノ代価ナリトシ
 - 第12巻 p.590 -ページ画像 
之レヨリ高価ニハ払下ケスト恰モ之レヲ議案トシテ発布セラルヽ以前已ニ契約アリテ其価定マリテ今日ハ毫モ動スヘカラサルモノヽ如ク維持セラルヽカ、凡ソ物ヲ売ルニ売主ニ於テ沽価ヲ定メ、此価ヨリ高価ニ買ハント望ムモノアルモ己レノ定メシ価ナラテハ売ラスト云フハ甚タ解シ得サルナリ、抑モ議会ハ之レヲ成ルヘク高価ニ売却シ聊カタリトモ府民ノ富ヲ増殖セント欲シ、熱心其方法ヲ討議スルニ当リ何故ニ番外ハ原案額ヨリ高価ニ売却スルヲ非ナル如クニ云ハルヽヤ、蓋シ此点ハ衆多ノ傍聴人モ訝シク思フナラン、余モ亦怪訝ニ堪ヘサルナリ、第二ハ此払下人ハ既ニ定リ居リテ、若シ之レヲ原案ニ決セサレハ其払下人ニ対シ気ノ毒ト云フ如キ説モアリシカ、苟モ堂々タル当議会ニ於テ斯ル挙動アリテハ議会ノ体裁ニ関シ我々カ折角議場ヘ昇リシ甲斐ナカルヘシ、右ノ二点カ本員ノ疑フ所ナルニ依リ一応吐露シ置キ、而テ起立ニ至テハ低価ト認ムル原案ニ同意ヲ表スル考ヘナリ
○五十番志摩万次郎曰 三拾八番ノ疑念ハ無理ナラサルモ、若シ三十八番ニ於テ原案ニ不同意ナラハ宜シク修正セラルヘシ、余ハ此金額ヲ修正シテ三拾万円以上トシ、其売却方法ハ期限ヲ定メ其期満タル後最モ高価ノ方ヘ売却ナスト云フ四拾番ノ説ニ同意ヲ表セント欲ス元来四十番ノ説ハ必ス弐拾四万円ニテ払《(下脱)》クルト云フ趣意ニアラサルユヘ、三十八番ノ憂ヘラルヽ如キ情実心ヲ以テ決スル抔ト云フ訝リノナキコト明白ナリ、而テ議長ニ望ムハ金額ハ第二段ニ決スルトシ兎ニ角売却方法ヲ決スルコトニナシタシ
○番外一番銀林大書記官曰 売却期限ハ何レ相当ノ日限ニ定メ其期限内ニ申出タル者ヘ払下ル考ヘナリ、而テ三十八番ハ沽価ヲ売主ニ於テ定ムルハ不都合ノ如ク云ハレシカ、物ヲ売ルニ当リ買主ト売主ト商議シテ価ヲ定ムルト売主自ラ沽価ヲ定ムルトノ二種アリテ、本案ハ即チ売主ニ於テ価ヲ定メ、弐拾四万円ヲ以テ瓦斯局ノ払下ヲ望ルモノアラハ売渡ス仕組ナリ、又払下人ハ已ニ定リ居ル如ク申サレシカ、事実左様ノコトハアラサルユヘ、斯ル疑念アリテハ甚タ宜シカラス
○四十三番大貫伝兵衛曰 番外ハ期限内ニ申出ルモノヘ払下ルト云ハルヽカ、本員ハ只今五十番ノ陳ヘラレシ如ク期限満ルヲ待テ申出中高価ノ方ヘ払渡スコトニナシタシ
○議長曰 五十番ハ金額ヲ三拾万円以上ト修正ナス意ナルヤ
○五十番志摩万次郎曰 金額ハ後ニ極ルトシ、先ツ売却方法ヲ決スルコトニナシタシ
○四十三番大貫伝兵衛曰 五十番ト同感ナリ
○六十一番田口卯吉曰 五十番ハ四十番ノ説ニ賛成ヲ表サレナカラ只今売却方法ヲ決セント望マレシカ、四十番ノ説ハ売却方法ヲ常置委員ニ托シ、金額ハ弐拾四万円以上ト決シ置クニ止ルナリ
○五十番志摩万次郎曰 六十一番ノ言ノ如ク総テ売却方法ヲ常置委員ヘ托スルコトニナリテハ弐拾四万円ニテモ売却シ得ルナリ
○六十一番田口卯吉曰 否弐拾四万円以上ヲ以テ売却スルト決シアレハ其懸念ハアラサルナリ
 - 第12巻 p.591 -ページ画像 
○五十番志摩万次郎曰 唯弐拾四万円以上トノミ決シ置キテハ総テ常置委員ヘ托スル主意ナルニ依リ、之レヲ株券ニ細分シテ売却ナスカ或ハ総額ヲ以テ売却ナスカ此二途ニ基キ最モ高価ノ方ヘ払下クヘシトシ、大体ノ方法ハ議会ニ於テ決シ置キ詳細ノ所ヲ常置委員ヘ托セントス
○五十九番山中隣之助曰 五十番ハ議会ニ於テ方法ヲ決シ置カント望マルヽカ、売却方法ハ常置委員ニ托シ、議会ハ単ニ弐拾四万円以上ヲ以テ売却スルト決シ置キテ妨ケナカルヘシ
○五十番志摩万次郎曰 成程五十九番ノ説ノ如クセハ或ハ便利ナルカハ知ラサレトモ、本員ハ飽迄方法ハ二ケ条ニ定メ金額ハ三拾万円以上ト修正センコトヲ主張ス、番外ハ皇居ノ需用ニ応セント《(ニ)》ハ更ニ瓦斯製造所増築等ノ為メニ巨万ノ資金ヲ要シ、其純益ハ漸ク八千円ニ過キス、去リトテ之レヲ辞セハ他ニ之レヲ引受ルモノ出テヽ瓦斯製造所二ケ所トナリ互ニ競争シテ瓦斯ノ価ヲ落ス恐レアリト説明サレシカ、実事拾七八万円ノ資本ヲ出シ瓦斯事業ヲ競争スルモノハ万々之レナカルヘシ、且ツ第一原案ノ説明書ニ因テ考フレハ瓦斯局払下ノ挙ハ皇居ヘ瓦斯引用ノ計画アル為メニアラス、良シ其レカ為メトスルモ商売上ノ点ヨリ論スレハ皇居抔ヘ売込ハ第一ノ買客ナルカ故此一事ニテモ瓦斯局ノ価値ヲ増スナルヘシ、然ルニ却テ番外ハ之カ為メ価ヲ落ス如クニ云ハルヽハ甚タ不都合ナリ、依テ本員ハ最低価ヲ三拾万円トシ、売却方法ヲ定メテ常置委員ヘ托セント欲スルナリ
○四十三番大貫伝兵衛曰 五十番ハ売却方法ヲ大略定メテ常置委員ニ托スト云ハルヽカ、然カナシタランニハ其決議ニ拘束セラレ常置委員ハ実事困却スルナラン、故ニ之レハ五十九番ノ云ハルヽ如ク売却方法ハ宜シク常置委員ニ托スヘシ、而テ速ニ決議アランコトヲ望ム
○議長曰 五十番ノ説ニハ暫クスルモ賛成者アラサルニ依リ議題ニナラス、就テハ四十番ノ説ニテ売却方法ヲ常置委員ニ托スルト云フ、之レニ同意者ハ起立アレ
  起立弐拾六人
 又曰 過半数ナルヲ以テ右ニ決シ之レヨリ金額ヲ議スヘシ
○四十三番大貫伝兵衛曰 五十番ハ三拾万円以上ト修正スルノ説ヲ提出サレシカ、本員モ其説ト同感ナレトモ一歩モ《(ヲ)》譲リ弐拾八万円以上ト決シ置カンコトヲ望ム
○五十二番高雄琢磨曰 本員ハ昨年株券ニシテ売却ナス説ニ左袒セシカ、其賛成ヲ引キ更ニ三拾万円以上トナス五十番ノ説ヲ賛成ス
○二十三番林忠蔵曰 金額ニ付テハ先刻来種々ノ説アレトモ之レヲ弐拾四万円以上ト決シ置ケハ、弐拾八万円ハ愚カ望人アラハ三拾万円以上ニモ売却シ得ルニ依リ、本員ハ弐拾四万円以上トナス四十番ノ説ヲ賛成ス
○五十番志摩万次郎曰 此金額ハ当議場ニ取リテハ大関係ヲ有スルニ因リ二十三番ノ如キ単簡ノ考ヲ以テ粗漏ノ決議ヲナス勿レ、本員ハ最低価ヲ三拾万円トシ其以上ニ売却セント欲スルナリ
○四十四番堀江半兵衛曰 四十三番ノ説ニ賛成ス
○四十三番大貫伝兵衛曰 弐拾四万円以上トアレハ三拾万円以上ニ売
 - 第12巻 p.592 -ページ画像 
リ得ラルヽハ勿論ナリト雖トモ、或ハ弐拾四万円ニナルモ知レス、故ニ余ハ最低価ヲ弐拾八円トナス考ヘナリ、諸君モ篤ト此点ヲ熟慮セラレタシ
○番外一番銀林大書記官曰 頻リニ此金額ヲ増スノ説アレトモ売却代ヲ高クスルノ説ハ恰モ瓦斯局ヲ売ラスト云フニ均シ、大概世間一般会社ノ振合セモアリテ斯ル危険ノ会社ヲ左様ニ不当ノ価ヲ以テ払下ント欲スルモノハ決シテ之レアルマシ、今一ツハ議案ニ何拾万円以上トスル如キ漠然タルコトハ施行ニ不便ナルノミナラス之レ迄モ左様ナル例アラサルユヘ、金額ノ下ヘ以上ノ文字ヲ加ヘラレテハ不都合ナリ
○五十番志摩万次郎曰 番外ハ瓦斯局ヲ危険ト云ハルヽカ之レハ決シテ危険ニアラス、元来瓦斯ノ買客ハ概ネ富有者ニシテ毎ニ買客定マリ居ルノミナラス、目前ニ皇居ノ需給モアリ殊ニ今日ハ自然ニ専売権ヲ有スル姿ト云ヒ実ニ結構ナル会社ナリ、今日世間ニ最モ信用ノ厚キ第一銀行ノ株スラ年八九朱ニ止リ壱割ニ当ル株ハ甚ク少シ、然ルニ此瓦斯局ヲ仮ニ三拾万円ニテ払下ケ私立会社ニ於テ便宜処理スルヲ得ハ、必ス壱割以上ノ利益アルニ相違ナシ、左レハ之レヲ三拾万円以上トナスニ何ノ不可ナルコトアランヤ
○五十九番山中隣之助曰 之レハ番外ノ云ハルヽ如シ、此売却代価ヲ増サント云フ論者ハ瓦斯局ノ実況ヲ能ク知ラレサルヨリ必竟廉価ト思ハルヽナラン、抑モ今日瓦斯局ニ於テ販売スル瓦斯附属ノ諸器械ハ非常ノ高価ニテ仮令ハ百円ニ売却スル物品ハ他ヨリ購求セハ七拾円以内ナリ、元来今日迄ハ世間ニ其価ノ当否ヲ知ルモノ少キヨリ幸ニ左迄ノ影響ヲ及サヽリシカ、最早現在ノ姿ニ差置キナハ他ニ瓦斯事業ヲ起スモノナシトモ保シ難シ、況ヤ皇居ハ需用ノ挙アルニ於テオヤ、若シ私立会社ニ之レヲ払下ケ今日ノ沽価ヲ以テ瓦斯小道具ヲ販売セント欲スルモ誰レモ之レヲ講求セサルヘシ、然レハ勢ヒ三割以上価格ヲ減セサルヲ得ス、之レカ価格ヲ減セハ従テ利益モ減スルニヨリ今日迄ノ計算ヲ以テハ一概ニ論シ難シ、故ニ余ハ原案ノ弐拾四万円ハ決シテ賤価ニアラスト信ス、併シ以上ノ文字アレハ万一之レヨリ良価ニ払下ヲ望ムモノ之レアル場合ニ便ナルヘシ、依テ弐拾四万円以上トナシ置カンコトヲ望ム
○四十番沼間守一曰 本案ニ対シテハ其実事ニ当リ居ラル六十八番ヨリ腹蔵ナク瓦斯局ノ実況ヲ陳ヘラルヽ方コソ願ハシケレ、四十番ノ聞ク所ニ依レハ近頃大阪府ニ於テ新タニ瓦斯会社建設ノ計画アリシニ殆ント三拾万円以内ニテ我カ瓦斯局ニ譲ラサル製造所ヲ建設シ得ルトナリ、成程原案ノ表面ヨリ見レハ此瓦斯局タル頗ル利益アル如シト雖トモ抑モ此瓦斯局ニ費セシ資本ハ大約六拾有余万円ニシテ、今原案ノ如クニテ之レヲ売却スルヲ得ハ差引弐万余円ハ利益アル姿ニナリ居レトモ若シ当初ヨリ費シタル金額ヨリ見レハ未タ其利益アルヲ知ラサルナリ、玆ニ諸君ノ注意ヲ乞フヘキハ当初瓦斯局ヲ設置セシヤ頗ル混雑ニテ取締上充分ナラス、設ヘハ拾万円ニテ購求シ得ヘキ物品モ拾五六万円ヲ費シ、或ハ左ノミ必要ノナキ物品ヲ多ク買入ル抔種々雑多ノ冗費アリシト聞ケリ、然レハ到底之レ迄ニ支消シ
 - 第12巻 p.593 -ページ画像 
タル金額ニ基キ此売却代ハ定メ難カラン、必竟夫レ等ノ点ヨリシテ原案者モ純益ヲ目的ニ売却代弐拾四万円ト見積リシモノナラン、左リナカラ又一方ヨリ考フレハ今日ノ瓦斯点火料ハ非常ニ高ク第一民立ノ会社ニ払下レハ差詰メ瓦斯代価ヲ何割カ下ケサルヲ得ス、瓦斯代ヲ下クレハ従テ純益ニ影響ヲ及シ原案者ノ見込ヨリ幾分カ純益減少スルニ由リ其辺ノ考ヘモナカルヘカラス、若シ利益ノミヲ挙ケ価ヲ定メナハ或ハ売損シモアルナラン、元来此瓦斯局ヲ依然ト府庁ニ管理セシメ、年々議場ニ於テ収支予算ノ当否ヲ論スルハ余リ得策ニアラサルヘシ、扨之レヲ払下クルトセハ利益ノ如何ニ拘ハラス独リ売主ノミ己レノ随意ニ価ヲ定メ高価ニ払ハント欲スルモ実事買主ナキヲ如何セン、故ニ最低価ヲ弐万円《(拾四脱)》ト決シ置カハ幸ニ望人ニ見込アラハ三拾万円以上ニ払下クルモ知ルヘカラス、良シ三拾万円以上ニナラサルモ実地公平ノ価ヲ得ルナラント思惟スルナリ
○四十三番大貫伝兵衛曰 之レ迄高キモノヲ購求ナシテスラ壱割ノ利益アレハ之レヲ私立ノ会社ニ払下ケ買入方ニ注意セハ壱割五分以上ノ利益アルヤ疑ヒナシ、左レハ弐拾八万円以上トナスカ相当ナリ、而テ番外ハ此売却代ヲ増スハ不当ト申サレシカ本員ハ増スヘキカ相当ト信スルニ因リ飽迄前説ヲ主張ス
○五十九番山中隣之助曰 四十三番ハ価ノアルモノヲ安ク払下ル如ク云ハルヽカ、其実価ノナキモノヲ高価ニ売ラント望マルヽハ甚タ無理ナル望ト云ハサルヲ得ス
○五十番志摩万次郎曰 五十九番ハ之レ迄瓦斯局ノ処置宜シカラス甚タ不取締ニテアリシト申サレシカ、其説果シテ信ナレハ速ニ五十九番ヨリ当局者ヘ忠告セラルヘキニ何故之レ迄放擲シ置カレシヤ、五十九番ノ説タル毫モ取ルニ足ラス、又二十四万円以上ト決シ置ケハ三拾万円以上ニ売ルルモ知レストノ説アレトモ、其ハ万一ノ僥倖ニテ、二拾四万以上ト決シ置カハ先ツ最低価ニ売リ払ハルヽト考ヘサルヘカラス、且又瓦斯局ヲ依然ト府庁ノ管理ニ属シ置カハ不可ナリトスル論者アレトモ、俄然今日ニ之ヲ売却セ子ハ成ラストノ理由モ見出サヽルナリ、今一ツハ他ニ皇居ヘ需給ノ瓦斯製造ヲ引受ルモノアリテ競争スル如キ挙動アルヲ恐ルトノ説アリシカ、今日数十万円ヲ出シ経験ニ乏キ瓦斯事業ヲ起スモノハ万之ナシ、已ニ然ラハ、先刻来縷述スル如ク随分利益ノ多キ事業ナルニ依リ最低価三十万円トシテ売却スルヲ適当トス、其価ニテ望人ナクハ最早之レヲ売却スルニ及ハサルナリ
○議長曰 最早論旨モ尽タルト認ムルニ依リ決ヲ取ルヘシ、金額ニ付テハ三ツノ動議アリ、第一五十番ノ説ニテ三十万円以上ニ売却スヘシト云フ、之レニ同意者ハ起立アレ
  起立七人
 又曰 少数ニ付五十番ノ説ハ消滅ニ属ス、次ハ四十三番ノ発議ニテ弐拾八万円以上ニ売却スヘシト云フ、之レニ同意者ハ起立アレ
  起立七人
 又曰 之モ亦少数ニ付消滅ニ属ス、次ハ二拾四万ヲ以テ最低価トスル四十番ノ説ニ同意者ハ起立アレ
 - 第12巻 p.594 -ページ画像 
  起立二十七人
 又曰 多数ニ依テ右ニ決ス
  書記年賦金利子ノ項ヲ朗読ス
○五十九番山中隣之助曰 本員ハ此利子ヲ六朱ノ割ニ減セント欲ス、近時利子ハ追々減シテ確実ナル抵当アレハ大概六朱ナリ、故ニ利子ヲ減シ成ルヘク高価ニ売却センコトヲ企望ス
○五十番志摩万次郎曰 余ハ五十九番ト反対ノ考ヘヲ有シ即チ一朱ヲ加ヘ八朱ノ割ニ修正センコトヲ望ム、仮令ハ公債証書ヲ買フモ七朱以上ニ当レリ、七朱以下ノ利子ハ世間ニナキ筈ナリ、依テ日本銀行ノ利子ニ傚ヒ年八朱ノ割ニ修正ナシタシ
○四十三番大貫伝兵衛曰 五十番ノ説ハ如何ニモ至当ト考フルニ依リ八朱ノ割ニ修正センコトヲ望ム
○四十八番角田真平曰 五十九番ノ説ヲ賛成ス
○三十一番須藤時一郎曰 本員ハ原案ヲ可トス、此利子ヲ上レハ勢ヒ売却代価ヲ落ス結果ヲ生スルニ由リ利子ヲ高クスルノ説ハ甚タ非ナリ、去リトテ敢テ之ヲ減スルニ及ハス即チ原案ノ七朱カ適当ナリ
○五十番志摩万次郎曰 五十九番ハ六朱ト修正スルノ説ヲ提出サレシカ、公債証書ノ利子ヨリ安クナスハ甚タ不可ナラスヤ
○五十九番山中隣之助曰 五十番ハ世間ノ実況ヲ知ラスシテ本員ノ説ヲ駁サレシカ、之レ迄ハ貨幣ノ制度定マラサルニ由リ利子モ高カリシカ、近時ハ世間一般利子ハ低落シ、殊ニ此利子ヲ高クナストキハ自然売却代価ヲ落スコトニナルヲ以テ、此利子ヲ六朱ノ割合ニ減セント欲ス、且又五十番ハ本員ニ於テ瓦斯局ノ不取締ヲ知リナカラ何故放擲シ置キタリトノ論難セラレシカ、本員ハ決シテ放擲シ置カサルナリ、現ニ明治十四年度ニ在テ瓦斯局全体ノ事業ヲ調査セシ場合ニ其調査委員ニ対シ充分取締方ヲ忠告セリ、其詳細ハ載テ当時ノ議事録ニアリ、請ハクハ之レニ就テ知ラルヘシ、要スルニ此利子ハ六朱ニ減シ以テ元金ヲ高ク売却ナス方得策ナリト信ス
○五十番志摩万次郎曰 五十九番ハ利子ヲ安クシテ元金ヲ速ニ取上ル考ヘナランカ、利子ヲ安クスレハ元金ヲ早ク納ムルモノナカルヘシ又今日ハ非常ニ利息低落セシト云ハルヽカ、確実ナル抵当ヲ出スモ年七朱ニテ金ヲ貸スモノナキハ蔽フヘカラサルノ事実ナリ、而テ十四年度ニ瓦斯局調査委員ヘ該局不取締ノ点ヲ忠告サレシトナレトモ其ハ如何ナル顛末ニテアリシヤ承リタシ
○議長曰 議題外ノ討論ハ差止ムヘシ、而テ決議ヲ要セン、利子ニ付テハ五十九番ト五十番トノ二説アルニヨリ、先ツ五十番ノ動議ニテ年八朱ノ割合ニ修正セント云フ、之レニ同意者ハ起立アレ
  起立四人
 又曰 少数ニ付消滅ニ属ス、次ハ五十九番ノ説ニテ六朱ノ割ニ減セント云フ、之ニ同意者ハ起立アレ
  起立五人
 又曰 之レモ亦少数ナルヲ以テ原案ニ決ス
○三十一番須藤時一郎曰 常置委員ハ此次ヘ金八千円家内引用瓦斯小器械売却代ノ一項ヲ加ヘタリ、之レハ本年通常会議案ニ家内引用瓦
 - 第12巻 p.595 -ページ画像 
斯器械取付資金壱万弐千百三拾弐円九拾八銭九厘ト所載シアリタル諸器械類ナルニ由リ、瓦斯局払下ヲ望ムモノヘ添テ払下ル考ヘナリ而テ壱万弐千百三拾弐円九拾八銭九厘ト云フハ銀貨壱円弐拾銭ノ見積リニテアリシヲ今度ハ壱円トシ、且ツ此器械中ニハ全ク売品ニナラサルモノモアリ、且ツ買入方ノ過当ナルモノモアリ、夫レ之レヲ計算ナシ、八千円ナレハ相当ナラント認メ右一項ヲ加ヘシナリ
○五十九番山中隣之助曰 瓦斯小器械ハ只今三十一番ヨリ報道アリシ如ク果シテ売品ニナラサルモノ之アルヤ、且ツ今日之レヲ売却スルトキハ幾何ニシテ又買入代価ハ幾何ニテアリシヤ、番外ヨリ詳シク説明アリタシ
○三十一番須藤時一郎曰 五十九番ノ質問ニ対シテハ番外ハ答弁ニ苦マルヽナラン、一体府庁ハ此物品ヲ瓦斯局払下人ヘ無代価ニテ引渡ス見込ミナリシカ、無代価ニテ引渡スニモ及ハス、相当代価ヲ以テ売渡スヘシトシ、常置委員自ラ現品ヲ調査シ八千円ト見積リシモノニテ、此通常会ニ於テ決議シタル金額トノ差違アルハ専ラ銀貨壱円弐拾銭ノ見込ヲ壱円ニ引直セシニ因レリ
○四十番沼間守一曰 五十九番ヨリ瓦斯小器械売却代ニ付現時ノ相場ヲ質問アリシカ、其大略ハ三十一番ヨリ報道アリシ如ク第一銀貨ノ低落ヨリ余程ノ差ヲ生セリ、而テ瓦斯局ニ向テ此物品代価ヲ尋子シニ大約五千円位ト答ヘタレトモ、此答弁タル信偽ヲ判定スルニ苦メリ、実ハ四十番等モ瓦斯局ニ到リ現品ヲ調査シタルニ多クハ鉛管或ハ棒鉄又ハ家内引用瓦斯取付ケ装飾等ノ類ニシテ、常置委員中価ノ当否ヲ知ルモノ之レナシ、必竟一時ニ売ラントスレハコソ瓦斯局モ廉価ニ云フナラン、之レヲ漸次需用ニ従テ売却セハ適当ノ価ヲ得ルナラント考慮セシカ、然カナシタランニハ府庁モ其出入ニ一々立合ヲ要ストカ又ハ土蔵ヘハ番人ヲ付ルトカ頻リニ手数懸リ又買主モ其都度願出ヲ以テ府庁ヘ願出ル等種々面倒ナル手続ヲ要セリ、元来商売上斯ル手数ハ成ルヘク省略シタシト四拾番ヨリ当座ノ番外ヘ一応望ミタレトモ、官府ノ事務ハ便利ノミニモ依リ難シト申サレ第一ノ目的ハ果ス能ハサリキ、依テ第二ノ考ヲ以テ銀貨ノ差ヲ見込シ、且ツ販売ニナラサル物品ノ価ヲ斟酌シテ金額八千円トシ年賦割払ノコトニ修正ヲ加ヘタルナリ、但シ当時ハ抜ケ目ナキ見積リト思ヒシカ退テ今日ニ至リ熟考セハ或ハ廉価ニテハナキカノ感覚ナキニアラス
○六十一番田口卯吉曰 内訳ノ年賦割払ニ付テハ聊カ意見ヲ有スルモ家内引用瓦斯小器械売却代ハ常置委員ノ説ヲ賛成ス
○議長曰 別ニ説ナクハ金八千円家内引用瓦斯小器械売却代ノ一項ヲ加フル常置委員ノ説ヲ可トスルモノハ起立アレ
  総起立
 又曰 全会一致ナルヲ以テ右ノ一項ヲ加フルコトニ決ス
  書記十八年度収入額以下三項ヲ朗読ス
○三十一番須藤時一郎曰 常置委員ハ此末金弐千六百六拾五円二十一年度収入額、金弐千六百六拾五円廿二年度収入額、金弐千六百七拾円廿三年度収入額ノ三項ヲ加ヘタリ、右ハ只今決議ニナシ家内引用瓦斯小器械売却代ヲ三ケ年賦ニ収入スル見込ナレハナリ
 - 第12巻 p.596 -ページ画像 
○六十一番田口卯吉曰 此年賦収入ニ付テハ二ツノ修正説アリ、第一ハ常置委員ノ意見ニテ二十一年度以下三ケ年度ニ収入スルト云フ、八千円ハ十八年度ヨリ二十年度マテノ三ケ年ニ割合収入セント欲ス余リ年限ヲ永メルトキハ瓦斯会社ト区部会トノ関係永クナルハ好マシカラサルユヘ、永クモ二十年度限リ議会トノ関係ヲ断ツコトニナシタシ、第二ハ瓦斯局売却代ヲ弐拾四万円以上ト決議セシ上ハ、其増打分ノ金員ハ多少ヲ問ハス十八年度ニ取纏メ収入スルコトニ決議ナシ置タシ
○三拾九番椙江新兵衛曰 番外ニ問フ、年賦払下ヲ望ムモノアル場合ハ何ヲ抵当ニ取ラルヽ見込ナルヤ
○番外一番銀林大書記官曰 抵当ノ所ハ未タ確定致シ居ラサレトモ、先瓦斯局ヲ抵当トスルノ考ヘナリ
○三拾一番須藤時一郎曰 増打分ヲ十八年度ニ於テ一時ニ収入スルハ当然ナレトモ、小器械売却代ノ八千円ハ命令シテ売付ルモノナレハ之レヲ六十一番ノ云フ如ク二十年度限リ収入セント望ムハ無理ナルヘシ
○四十八番角田真平曰 番外ニ説明ヲ請フ、売却代弐拾四万円以上ノ意味ヲ以テ決議セシニ付テハ、実際弐拾五万円ニ払下ヲ望ムモノアリ、其者ヘ払渡セシ場合ハ自然此内訳ノ収入額モ其割合ニ改ムルト承知シテ可ナルヤ
○五十九番山中隣之助曰 増打分ヲ十八年度ニ収入スルコトハ六十一番ト同感ナルモ、瓦斯器械売却代八千円ノ年賦割ヲ減縮シ二十年度迄ニ収入スルコトニセハ此払下ハ御免ヲ蒙ルモノアルヘシ、先刻四十番ハ常置委員ノ見積リ緩ナル如クニ説明サレシカ、此代価タル或ハ瓦斯局ノ見積リ即チ五千円カ相当ナルモ知レス、依テ常置委員ノ意見ヲ可トス
○議長曰 六十一番ノ第二ノ説ハ増打分ヲ悉ク十八年度ヘ加ヘント望マルヽヤ
○六十一番田口卯吉曰 然リ、其主意ヲ以テ決議シ置カント欲ス
○四十番沼間守一曰 六十一番ノ説ハ一寸考フルト至極都合ノ宜キコトナレトモ現場ニ臨ミ或ハ差支アルモ知ルヘカラス、就テハ増打分ノ収入抔ハ臨機ニ処置スルトシ常置委員ヘ托サレテハ如何、又瓦斯小器械売却代ニ付テハ五十九番ノ説アレトモ、実際ヲ調ヘシニ随分壱万円位ノ物品ヲ五千円位ニ記帳シアル如シ、一体現金五千円ナラハ直ニ買入ルヽト瓦斯局担任ノモノ申セシ位ユヘ之レヲ八千円トシ二十年度迄ハ据置キ二十一年度ヨリ三ケ年賦ヲ以テ払渡セハ計算上弐千円ハ貰《(儲)》カルト思ヒシカ、篤ト金利ヲ計算シタルニ即金五千円ニ売払フト常置委員ノ修正通リナストノ差ハ漸ク七八百円ニ過キス、然レハ六十一番ノ云フ如ク二十年度迄ニ之レヲ収入ナスモ敢テ不可ナルコトナシ
○六十一番田口卯吉曰 四十番ハ増打分ノ収入抔ハ常置委員ニ托セト云ハルヽカ、之レハ無論初年ニ払込ムヘキモノナリ、且又常置委員ノ意見ニ依テ加ヘタル八千円ヲ二十年度迄ニ収入ナシタリトテ決シテ苛酷ナラス、若シ買主ニ於テ其価過当ト認ムレハ増打分ヲ減スル
 - 第12巻 p.597 -ページ画像 
ニ依リ此年賦年限ハ減縮シテ妨ケナシ
○五十番志摩万次郎曰 増打分ノ収入方ニ付テハ四十番ノ説ヲ賛成ス
○四十三番大貫伝兵衛曰 本員ハ両説共六十一番ノ説ヲ賛成ス
○議長曰 最早決議ヲ要スヘシ、扨テ六十一番ノ発議ハ二説共議題ニナリ居ル故、先ツ第一ニ増打分ノ金額ハ多少ヲ問ハス十八年度ニ於テ一時ニ収入スト云フ、之レニ同意者ハ起立アレ
  起立二十人
 又曰 過半数ニ依テ右ノ意見ニ決ス、次ハ家内引用瓦斯小器械売却代金八千円ヲ十八年度十九年度二十年度ノ三ケ年度ニ割合収入スト云フ、之レニ同意者ハ起立アレ
  起立十五人
 又曰 正半数ナルニ依リ念ノ為メ常置委員ノ意見ヲ可トスルモノハ起立アルヘシ
  起立十五人
 又曰 之レモ亦正半数ナリ、就テハ議長ノ意見ニ依テ決スルトシ、即チ常置委員ノ説ニ決スヘシ、之レニテ第二次会ノ終リヲ告ク、本案ノ為メ第三次会ヲ開クヘシトスルモノハ起立アレ
  総起立
 又曰 三次会ハ明日ニ譲リ今夕ハ之レニテ散会スヘシ
  于時午後第八時十分


明治十八年 臨時会議事録(DK120073k-0006)
第12巻 p.597-599 ページ画像

明治十八年 臨時会議事録 (東京府文庫所蔵)
東京府臨時区部会議事録第三号 川崎実記
  明治十八年六月二十四日午後四時五十五分開議
      闕席
           田島安太郎      角田真平
           永井真哉       酒井忠道
           永井尚弼       高雄琢磨
           青地四郎左衛門    松田秀雄
           近藤孝行       末吉忠晴
           高梨哲四郎      太田次郎
           林忠蔵        関岡孝治
           一色建郎       奥田達道
           松南宏祚       小原勝五郎
           苗村又右衛門     藤本精一
           牧山源兵衛      鳥海清左衛門
           佐藤正興
 出席員三十二員
○中略
○議長曰 諸君差支ナキ上ハ瓦斯局売却代ノ第三次会ヲ開クヘシ
  書記朗読
 一金弐拾六万九千円 瓦斯局売却代
    内
  金弐拾四万円 売却代
 - 第12巻 p.598 -ページ画像 
  金弐万千円 同上年賦金利子
○四十三番大貫伝兵衛曰 前会ノ決議ニヨレハ以上トアル筈、然ルニ以上トナキハ如何
○議長曰 其レハ最低限トスルノ意味ニテ決セリ、番外モ云ハレタル如ク是迄以上ト記スルノ例ナキカ故ナリ
  書記朗読
   金八千円        家内引用瓦斯
               小器械売却代
      内訳
   金八万七千円      十八年度収入額
   金八万九千八百円    十九年度収入額
   金八万四千弐百円    二十年度収入額
   金弐千六百六拾五円   廿一年度収入額
   金弐千六百六拾五円   廿二年度収入額
   金弐千六百七拾円    廿三年度収入額
○五十九番山中隣之助曰 家内引用瓦斯小器械売却代ハ前夜三ケ年度ニ割込ム常置委員ノ説ニ決セルガ、矢張リ之レハ二十一年度ニ於テ一時ニ収入スヘキモノナラン、故ニ左様ニ修正ナシタシ
○四十七番芳野世経曰 五十九番ノ説ハ至極穏当ナリ、二十一年度トナレハ最早皇居ニ引用モナスヘキカユヘニタトヒ八千円ヲ収入スルモ迷惑ヲ感セサルヘシ
○六十一番田口卯吉・二十五番尾崎行雄・六十六番笠井庄兵衛・三十五番津久井市兵衛並曰 五十九番ヲ賛成ス
○議長曰 五十九番ノ説ニ五名ノ賛成者アリ、議題トナレリ
 又曰 直ニ決ヲ取ラン、八千円ヲ二十一年度ニ於テ一時ニ収入セントス、即チ五十九番ノ説ニ同意ノモノハ起立
  起立二十五人
 又曰 過半数ナルヲ以テ修正ニ決ス
○三十一番須藤時一郎曰 諸君ノ注意ニ迄申スコトアリ、其ハ是迄ニ瓦斯代等ノ貸金アリシカ、常置委員ハ別ニ之ヲ収入シテ共有金ニ組入ルヽモノトセルナリ
○四十七番芳野世経曰 昨日番外ノ説ニヨレハ弐拾四万円ヨリ以上ニハ売却セズト云ヘリ、議会ハ最低限ト極メルモ議案ニ現ハレズ、因テ実際売却ニ際シ決議金額以上ハ勿論或ハ利子ヲ増加シ、或ハ年賦期限ヲ短縮シ、或ハ即納ニテ払下ヲ望ムモノアルトキハ、可成高価ノ方ヘ売却スヘキ見込ヲ上申書中ヘ加ヘタシ
○四十三番大貫伝兵衛曰 四十七番ノ説ハ至当ナリ、故ニ之ヲ賛成ス
○三十八番木寺安敦・六十六番笠井庄兵衛・六十九番藤田藤一郎・二十四番山口謙並曰 四十七番ヲ賛成ス
○議長曰 四十七番ノ説ニ五名以上ノ賛成者アリ、議題トナレリ
 又曰 直ニ決ヲ取ルヘシ、四十七番ノ説ニ同意ノモノハ起立
  起立二十八人
○議長曰 便宜ノタメ玆ニテ一事諸君ノ考ヲ承リタシ、常置委員ニテハ貸金取立方ハ之ヲ瓦斯会社ニ委托シ、其応分ノ手数料ヲ与フルコトヽセリ、右ニテ諸君ニ異存ハナキヤ
 - 第12巻 p.599 -ページ画像 
○六十一番田ロ卯吉曰 其貸金ノ額ハ凡ソ幾許ナルヤ
○四十七番芳野世経曰 六月三十日ノ調ニヨレハ四千七百弐拾壱円五拾五銭六厘ノ内、家内取付費八百三拾九円弐銭五厘、一時貸金四百六拾六円五銭九厘、証文ニテ貸金三千四百拾六円四拾七銭弐厘ナリ而シテ此内ニハ取立ノ見込ナキモノモ亦多キヨシナリ
○六十一番田口卯吉曰 貸金ハ矢張リ売却金ノ内ヘ込メテ譲リ渡ス方可ナルヘシト考フ、一体之ハ会社商店等ニ引用セルモノ、或ハ焼失シ或ハ閉店シタルカ為メ遂ニ貸付トナリタルモノナラン、是等ヲ府庁ニ於テ漸次ニ取立ルコトハ固ヨリ容易ニアラズ、左リトテ又会社ニ托シ取立テシムルモ自分ノ利益トナラサルヲ以テ勉強セサルナラン、僅カノ手数料ニテハ自然寛慢トナルノ弊アリ、到底取立得カタカルヘシ、想フニ斯ノ如キモノハ余程手強クセネハ取立テガタキモノナレハ、他ヘ托スルヨリハ売却代ニ組込ム方ナラン
○五十九番山中隣之助曰 四十七番ノ説ニヨレハ取立ノ見込ナキモノ多キヨシ、然ラハ之ヲ売却代ニ組込ムハ無理ナラスヤ、故ニ瓦斯局ヨリ当局者ニ詳細聞合セ、而シテ常置委員ハ割引ニテ譲ルトモ府庁ニ於テ取立テルトモ何レニセヨ常置委員ニ任セタシ、貸金ナレハ幸ヒニシテ取立テ得ルモ知レズ、何分利益アル処分アランコトヲ常置委員ヘ任スル方ナラン
○四十七番芳野世経曰 常置委員会ニ於テモ之レヲ売却代ニ組込ムノ説アリタレトモ、其価ヲ定ムルハ容易ナラサル事故遂ニ之ヲ会社ニテ取立セシメ其手数料ヲ払フトセリ、之レハ常置委員ニ托スルコトニ同意ス
○六十一番田口卯吉曰 常置委員ヘ托スルトナラハ五十九番ヲ賛成ス
○五十番志摩万次郎・六番藤田茂吉・二十五番尾崎行雄・三十五番津久井市兵衛並曰 五十九番ヲ賛成ス
○六番藤田茂吉曰 之レハ貸金処分方ニテ五十九番ノ説ニ賛成セサルヲ得サルコト明カナリシヲ、慢然トシテ賛成セサル如キアリテ妙ナ結果ヲ得ヘキニヨリ、諸君モ注意セラレタシ
○議長曰 五十九番ノ説即チ常置委員ヘ托スルコトニ同意ノモノ起立
  起立二十八人
 又曰 然ラハ右ニ決シ、此案ヲ以テ確定スヘシトスルモノ起立
  起立二十九人

    明治十八年度区部共有金支出予算追加議案
一金六千弐百九拾壱円三銭 瓦斯局敷地買入代
説明
 瓦斯局敷地ノ内四千百九拾四坪弐勺ハ、従来官有地ヲ借用シタリシモ、今ヤ同地ヲ払下ケニ付セラルヽニ当リ、同局ノ如キ機関ノ装置重大ニシテ容易ニ他ニ移転シ能ハス、之ヲ購ヒ置カサレハ将来不都合ヲ生スルノ恐レアリ、依テ比隣売買価格ニ比準シ壱坪ニ付金壱円五拾銭ノ積リヲ以テ之ヲ購入セントス


瓦斯局書類 敷地絵図 明治十八年会計課(DK120073k-0007)
第12巻 p.599-600 ページ画像

瓦斯局書類 敷地絵図 明治十八年会計課 (東京府文庫所蔵)
 - 第12巻 p.600 -ページ画像 
    区部常置委員会諮問
(朱書)
(第三号)
瓦斯局建家及諸器械類望人有之節ハ売却スヘキ旨本年通常区部会ニ於テ議決相成、然ルニ右敷地ノ議ハ左ノ調書ノ通リ従来官有地ナルヲ是迄借地料ヲ納メス致借地居候得共、一体該局ノ如キハ許多ノ資金ヲ擲チ巨大ノ機関ヲ設置スルヲ以テ容易ク他ニ移転スヘキ事業ニアラサレハ、其土地ヲ有スルヲ緊要トス、然ルヲ此敷地ヲ除キ独リ建家ノミヲ売却セントスルモ必其望人ハ稀少ナルヘク、加之価格ニ於テモ幾分ノ逓減ニ至ルヘシ、故ニ是迄借用地ノ坪数四千百九拾四坪弐勺今回相当価格ヲ以テ払下ノ儀其筋ヘ致請求、許可於有之ハ払下代金ハ区部共有金ヲ以テ支出致シ可然ト存候
    敷地坪数調
 四千百九拾四坪弐勺     芝区浜崎町三番地
    払下請求スヘキ分
  外ニ
 三百拾七坪九合九勺     芝区浜崎町四番地
    従前之通官有地借用之分
 百三拾坪          芝区湊町拾六番地
    是ハ先年共有金ヲ以テ買入敷地内ニ籠リ居候分
(朱書)
十四年八月廿九日議決シ本案ハ理事上ノ手続ニ属スルコトニシテ別ニ異存ナキモ、果シテ許可アル上ニテ金額ヲ出ストキハ本会ニ問ハルヽコトトナスコトニ決セリ(東京府)


瓦斯局書類 払下ゲ 明治十八年会計課(DK120073k-0008)
第12巻 p.600-601 ページ画像

瓦斯局書類 払下ゲ 明治十八年会計課 (東京府文庫所蔵)
    瓦斯局払下広告
今般芝区浜崎町三四番地ニ設置セル瓦斯局払下候条望ノ者ハ同局ニ就キ現場及ヒ払下手続等熟覧ノ上本月三十一日迄ニ当庁ヘ願出ヘシ、此旨広告ス
  明治十八年七月一日 東京府庁
    瓦斯局払下手続
第一条 芝区浜崎町三四番地ニ設置セル瓦斯局所属地所建物諸器械埋布管共別紙品目ノ通代価金弐拾四万円以上ヲ以テ払下ヘシ
第二条 右代価弐拾四万円ヲ分テ弐千四百口トシ一口ヲ呼価百円ト定ム、故ニ望ノ者ハ別紙雛形ニ依リ其所有セント欲スル口数及ヒ其買受ノ代価ヲ記載シ願出ヘシ
  但願出ノ金額弐千四百口以上ニ及フトキハ買受申込ノ高価ナルモノヨリ順次ニ之ヲ払下ヘシ、故ニ最低価ノ者ニハ願出ノ口数ニ準シ平等ニ逓減スヘシ
第三条 右代金上納ノ手続ハ左ノ二種トス
 一 一時ニ代価ヲ上納スル者
 二 三ケ年ニ分割シ左ノ如ク上納スル者
  明治十八年八月  呼価以上ノ金額及ヒ呼価六分ノ一
  同 十九年一月  未納金額ニ対シ年七分ノ利子及呼価六分ノ一
  同    七月  同上
 - 第12巻 p.601 -ページ画像 
  同 二十年一月  同上
  同    七月  同上
  同二十一年一月  同上
第四条 第三条第二項ノ手続ヲ以テ払下ヲ願出ル者ニ許可スル時ハ、上納金未済中ハ第一条払下ニ係ル物品ハ抵当トシテ当庁ニ差入置クヘシ
第五条 家内引用ニ供スル瓦斯小器械ハ別紙品目ノ通代価金八千円ヲ以テ払下ケ、無利息三ケ年置据、明治二十一年七月ニ至リ上納セシムルモノトス
第六条 第一条所属品ノ外石炭「タール」「コークス」「レトルト」耐火煉化石其他修繕用ノ物品類ハ払下ノ際現在品ニ応シ相当代価ヲ以テ払下、瓦斯局引渡ノ際即納セシムルモノトス
第七条 芝浜崎町三四番地官有地四千百九拾四坪弐勺ハ代価金六千弐百九拾壱円以上ヲ以テ瓦斯局払受人ヘ払下ケ、其代金ハ払下許可ノ翌日十分ノ一、残金ハ日数三十日以内ニ上納セシムル者トス
第八条 瓦斯局引渡前ニ属スル家内引用瓦斯代金ハ払受人ニ於テ取集メ、当庁ヘ上納スヘシ、但其三ケ月以上延滞ノ分、及ヒ家内引用取付費貸金ハ、其取集金高ニ応シ当庁ヨリ一割ノ手数料ヲ下付スルモノトス
第九条 数名申合セ一手ニ買受ント欲スルモノハ其買受ノ総金額及各自出金ノ金高等ヲ具記シ、第三条ノ手続ニ従ヒ来ル七月三十一日迄ニ願出ヘシ
第十条 前条出願ノ者アル時、第二条ノ方法ニ従ヒ願出タル総金額ニ比較シ高価ナル方ニ払下ヘシ
第十一条 払下出願者数種アル時ハ当庁ニ於テ代価金額ノ最高価ト認ムル者ニ払下ヘシ
(欄外記事)
 [四番地ノ方ハ払下ヘキモノ無之全ク誤謬
   ○別紙品目略ス。
   ○右瓦斯局払下広告ノ記録ハ「回議録」(第一類明治十八年)ニモ見ユ。
   ○右本局払下広告ニヨリ明治十八年七月三十一日栄一、藤本精一外五十二名ヨリ瓦斯局払下願ヲ府庁ニ提出ス。更ニ同年八月二十八日前願書ノ下戻ヲ乞ヒ再応ノ出願ヲナス。本巻所収「東京瓦斯株式会社」明治十八年十月一日ノ条(第六一三頁)参照。
   ○栄一等出願ノ外小林元位ノ払下願書ノ提出アリ次ニ掲グ。


瓦斯局書類 払下ゲ 明治十八年会計課(DK120073k-0009)
第12巻 p.601-602 ページ画像

瓦斯局書類 払下ゲ 明治十八年会計課 (東京府文庫所蔵)
    瓦斯局払下願
一金弐拾四万三千円也
  但明治十八年八月左記ノ金額上納、残金之義ハ、同十九年一月七月、同二十年一月七月、同二十一年一月ノ五回ニ分チ、一回ニ付金三万弐千円ツヽ及第二回目明治十九年一月上納ノ節ヨリ未納金ニ対シ壱ケ年七分ノ利子ヲ付シ上納
一金八万三千円也    呼価以上増金三千円
  但御払下ノ際一時上納
 - 第12巻 p.602 -ページ画像 
右ハ今般瓦斯局御払下ニ付書面代価ヲ以テ引受申度、左右ノ外総テ御払下手続書ノ趣遵守可仕候間、御許可被成下度此段奉願候也
                 麹町区土手三番町
                   三拾八番地
  明治十八年七月三十一日      士族
                     小林元位
    東京府知事渡辺洪基殿


瓦斯局書類 払下ゲ 明治十八年会計課(DK120073k-0010)
第12巻 p.602 ページ画像

瓦斯局書類 払下ゲ 明治十八年会計課 (東京府文庫所蔵)
今般瓦斯局御払下ケニ付御広告相成依テ右御払下ケ手続ニ従ヒ去月三十一日出願仕候処、拙者身元御取調之上御払下ケ出願ニ候ヘ共、身分不相応之金高ニ付金主有ヤ御尋ヲ蒙リ、尤金主有之旨御答ニ及候処、其名前之者可申出旨御下命ニ御座候ヘ共、少々都合有之金主名前之義ハ申上兼候ニ付、一時上納可仕段申上候処、皆金上納致シ候とも向来之処御懸念之趣、是非とも金主名前可申出旨御沙汰ヲ受ケ実以テ驚入候次第ニ御座候、如何トナレハ御払下ケ御趣意ニ従ヒ一時上納仕候ヘハ拙者之権利ニテ聊金主ニ関スル云ハレ無御座ト奉存候、向来之義ハ追々御尋問ニヨリ御契約申上不都合無之様可仕ハ言ヲ俟サル義ト奉存候、熟考仕《(候脱カ)》ヘハ唯々拙者御不信用ヨリ御疑ヲ蒙リ候義ト被存候、左程拙者義不都合之者ト御懸念ニ候ハヽ到底御払下ケ相成候とも後々不安義ト奉存候間、遺憾ニ不堪義ニは候ヘ共断然今度之義ハ御払下ケ不相願候間、此段一書ヲ以テ御答仕候也
  明治十八年八月廿三日
              麹町区
             土手三番町三拾八番地
              士族 小林元位(印)
    東京府知事渡辺洪基殿


東京経済雑誌 第二七七号〔明治一八年八月八日〕 ○瓦斯局の鹿何人の手に落つ可きか(DK120073k-0011)
第12巻 p.602 ページ画像

東京経済雑誌 第二七七号〔明治一八年八月八日〕
    ○瓦斯局の鹿何人の手に落つ可きか
中原の鹿でなく瓦斯局の払下は何人の手に落つ可きか未た知る可らされ共、頃日聞けは兼て渋沢栄一氏外数名にて廿四万円(東京府の定めは廿四万円以上なり)に入札せられけるに、頃日に至り麹町区の小林元位と云へる人より廿四万三千円に入札せしよし、されは僅か三千円の高価にても鹿は此人の手に落つ可き歟


瓦斯局書類 払下ゲ 明治十八年会計課(DK120073k-0012)
第12巻 p.602 ページ画像

瓦斯局書類 払下ゲ 明治十八年会計課 (東京府文庫所蔵)
明治十八年九月三十日出
  (洪基)     (印)
 知事(印)   書記官(印)      会計課(印)(印)
瓦斯局売却相成候ニ付、左之通新聞紙ヲ以テ三日間広告相成可然且官報ニも掲載致シ可然哉、広告案左ニ相伺候也
    広告
 当庁瓦斯局売却ニ付、本日ヨリ右事業ヲ払受人ニ継続セシム、此旨広告ス
  明治十八年十月一日 東京府庁