デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

3章 商工業
21節 瓦斯
3款 東京瓦斯株式会社
■綱文

第12巻 p.661-666(DK120085k) ページ画像

明治34年1月16日(1901年)

是日栄一病気ノタメ当会社株主定時及ビ臨時総会ニ欠席ス。右総会了リテ株主ノ提議ニヨリ、栄一ノ授爵ヲ祝スルタメ、栄一ニ記念品ヲ贈ルコトヲ決議ス。


■資料

渋沢栄一 日記 明治三四年(DK120085k-0001)
第12巻 p.661-662 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三四年
一月十六日 晴
此日ヨリ全ク病褥ヲ去ル○下略
  ○十日以前ヨリ発熱病臥ス。是日痛褥ヲ離レタルモ外出セズ。
四月二十日 曇又ハ雨
午前大橋新太郎来ル、八時末松内務大臣ヲ訪ヒ瓦斯製造ノコトニ関シテ請願ヲ為ス○中略十一時警視庁ニ抵リ、総監安楽氏及松井部長ニ面会シテ水性瓦斯工場設置ノ許可ヲ請求ス○下略
五月十日 曇午後雨
○上略 午餐後内務省ニ抵リ、大森総務長官ニ面会シテ瓦斯工場建設ノコ
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トヲ依頼ス○下略
七月十六日 稍晴
○上略 十一時佐藤三吉氏来診ス、下痢ハ稍愈ルモ口中ニ痛所アルヲ以テ同氏ノ診察ヲ請ヘタルナリ、午後瓦斯会社株主総会アリシモ病ノ為メ出席スルヲ得ス


(東京瓦斯株式会社)事業報告書 第三二回明治三四年上半期(DK120085k-0002)
第12巻 p.662 ページ画像

(東京瓦斯株式会社)事業報告書  第三二回明治三四年上半期
一定時総会 一月十六日第三十一回株主定時総会ヲ東京市麹町区有楽町一丁目東京商業会議所ニ於テ開会ス、出席株主(委任状共)三百二人此株数三万四千四十八株ニシテ、取締役ヨリ提出ノ明治三十三年下半期ニ於ケル事業報告書・財産目録・貸借対照表・損益計算書・利益分配計算書及之ニ対スル監査役ノ報告ヲ議定セリ
一臨時総会 同日定時総会閉会後引続キ株主臨時総会ヲ開キ、取締役大橋新太郎・渡辺福三郎・監査役西園寺公成・渡辺朔・浅野彦兵衛任期満了ニ付改選々挙ヲ行ヒシニ孰レモ重任ヲ希望スルノ動議アリ、満場一致ヲ以テ之ニ決セリ
右了リテ株主仲万兵衛氏ヨリ取締役会長渋沢栄一氏ノ授爵ヲ祝スル為メ相当ノ祝意を表シタキ旨ヲ提議セラレ、協議ノ末金五百円ヲ支出シ物品ヲ贈呈スルコトヽシ、其方法ハ重役ニ一任スルコトニ決議セリ
二月二十六日新株募集ニ関スル事項報告ノ為メ本社ニ於テ株主臨時総会ヲ開ク、出席株主八十二名此株数二万三百九十三株ニシテ取締役報告書並ニ監査役調査報告書ヲ全会一致ヲ以テ承認スルコトニ決セリ
  ○栄一授爵ハ明治三十三年五月。



〔参考〕竜門雑誌 第一五二号・第二六頁〔明治三四年一月二五日〕 ○東京瓦斯会社の総会(DK120085k-0003)
第12巻 p.662 ページ画像

竜門雑誌  第一五二号・第二六頁〔明治三四年一月二五日〕
    ○東京瓦斯会社の総会
東京瓦斯株式会社にては去十六日午後一時より東京商業会議所に於て定式総会を開きたるが出席株主(委任状共)二百六十四人株数二万三千九百六十五株、社長たる青淵先生病気に付、取締役浅野総一郎氏会長席に着き、事業報告・利益金分配案等を議事に付したるに異議なく原案に決し、次で臨時総会に移り、取締役二名、監査役三名満期に付改選をなしたるに孰れも再撰重任することゝなり、同二時三十分散会したるが、今此配当金及積立金等を表出せんに左の如し
                     円
 一、当期純益金      一九六、五八八・七一八
 一、株主配当金      一割七分
 一、準備積立金       一〇、〇〇〇・〇〇〇
 一、積立金         二五、〇〇〇・〇〇〇
 一、別途積立金       一五、〇〇〇・〇〇〇
 一、前期繰越金       三二、九〇四・〇一四
 一、後期繰込金       三四、九一七・七三二


〔参考〕竜門雑誌 第一五八号・第一七―二一頁〔明治三四年七月二五日〕 東京瓦斯会社福島甲子三氏の瓦斯業談(DK120085k-0004)
第12巻 p.662-666 ページ画像

竜門雑誌  第一五八号・第一七―二一頁〔明治三四年七月二五日〕
    東京瓦斯会社福島甲子三氏の瓦斯業談
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 東京瓦斯会社は青淵先生の久しく経営せられつゝある東京市唯一の事業会社なるが、青藍生一日同社に福島支配人を訪ひ、瓦斯事業の現況及将来の画策等を聞き得たれば今其重なる項目を
  一、薪炭の代用品として瓦斯の効力
  二、瓦斯副産物精製事業
  三、水性瓦斯の併用
 の三者に分て談話の要領を掲載せん
東京瓦斯会社は青淵先生の御配慮に依て今日の盛況を致すこととなりましたが、東京市民の之れを使用することは全人口の二十分の一に足りなゐ位です、仮に東京市の戸数を二十五万戸とすれば、瓦斯を利用して点火又は炊事及煖炉等に用ゐて有るのは一万二三千に《(し脱カ)》か過ぎないので、其内の八割までは点火用でありまして、炊事とか製造用とか云ふものは二割しかないのです、而し之を此会社払下げの時代に比すれば非常なる進歩で、此頃では到底従来の設備のみでは供給の不足を告げ、大に事業を拡張することとなりました、其拡張の内で最も注意すべきは水性瓦斯の製造でありますが、之は従来の石炭を燃消して跡に残るコークスの熱せるものに、石油の原油みた様なものをかけ、之に蒸汽を注入して作るもので――技師の説明もあれば後に差上げますが――水性瓦斯を此の十一月から愈々石炭瓦斯の内へ三分の一丈け混入して供給することとなりました点であります、之が出来る様になれば今日の様に供給の不足を感すると云ふことはなくなります、次の事業拡張はコール・タールを蒸溜精製して、石炭酸とか煉炭の元料たるピツチとか防腐剤のクレオソート油及染料等を製造することでありますが、之は随分資本を用することであり、今日までコール・タールのままで売捌きましたるも、近々に精製に取り係ることとなりました、経済界の困難なる際事業の拡張を為すは無謀の様でありますが、需要の増進に伴ふ供給の不足と東京市が道路の改良を為す前に管を埋設する必要もあり、旁々拡張の已を得ぬこととなり愈々実行致しました、元来瓦斯事業は専売事業となり居れば随分利益も得られ、不景気不知との御想像もありましようが、一は此の事業が公共的性質を帯ひるもので、必ずしも自己の算盤珠のみで損得をきめると云ふ解に参らず、可成御得意様の便利々々と思ひ、僅の使用料を取る様の所まで管を布設して居りますが、将来は兎も角今では収支相償はぬ所もあります、且つ一時一夜にても点火に不都合があつてはならぬものにて、中々責任が重くありますが、電灯の流行する時に方り点火用として瓦斯の進歩大なると共に、点火以外用として其の利用甚だ大なる余裕あることを思へば働き甲斐もあり、又只今の拡張設備も直ぐ不十分となるでありましよふ
    △薪炭の代用品として瓦斯の効力
英国の如きに於ては点火用として電灯と相伴ふて瓦斯使用者の増加する外、炊事其の他の小工場用として石炭の領分を奪ふこと頗る多く、瓦斯の需要高は最近十年間に驚くべき進歩を為したと云ひますか我国に於ても将来の為め最も注目すべきは炊事用及工場製造所用としての瓦斯の使用であります、英国当りとは国情も異なり、従来如何なる家
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にても薪炭を使用し石炭を用ゐるものすら少なき有様なるも、今日薪炭及石炭相場の日に騰貴しつゝあるを思へば、瓦斯をして此等の代用を為さしむるを余程の徳用であります、薪炭及石炭は一旦点火したるものを用済の後消火し置くと云ふ様なことは殆んど出来ず、皆残余は灰燼に帰するのでありますも、瓦斯は最も火力の強く而も即時に消火することを得る者にて、此等の不利なく且つ其火は直く熱を起すと同時に何時にても同一の火力を保ち、火力を一局部にあつめず普く及ぼすを得へければ、おさんの飯炊にも製造業者の動力としても頗る軽便に用ゐられるのであります、現に炊事に用ゐつゝある家も大分出来、精細に勘定すると瓦斯の方が得であると申され、市内の菓子製造業者の如きは瓦斯は火力の平均を得るの容易なると其他種々なる理由より大に用ゐる様になりました、其他印刷業者の如きも之を用ゐ、今では工業用に供給するものが中々沢山あります、而し此等薪炭及石炭の代用として瓦斯の余程利便であると云ふことを世人が未だ知らず、一般に瓦斯は点火用のものであると思ふて居るのは大なる間違であります当会社では炊事とか煖炉とか西洋風呂とか工業用諸機械運転の動力とか菓子其他火力の最も用ゐる製造業等の為めに瓦斯を用ゐるの最も利便であると云ふことを示す為めに、只今御覧に入れました様に各種の品物を備付けまして随意の御縦覧を許すことと致しました、又此の炊事器具とか機械とかを買ふ費用を一時に出すことの困難なる向には、場合により極く安い損料で器具機械を貸附する様にも致します考で居ります
 因に記す 同会社に於ては、近頃欧米各国より各種新式の瓦斯ランプ、瓦斯利用の炊事器、瓦斯風呂、瓦斯煖炉等の輸入品並に同社に於て製造せし器物を備付け、且つ一々之に点火して使用の方法を示す陳列場を設けられ一般の縦覧を許す次第なるが、余も亦福嶋支配人の案内にて之を一覧したるに頗る軽便にして始末によく、彼の薪炭又は石炭を用ゐるが如く煙を以て家屋を不潔ならしむるが如きことなく、頗る清浄にして尚ほ且つ薪炭を用ゐるより精細の勘定を取れば徳用なりと云へり、就中本邦風炊事器に瓦斯利用の仕掛を為したるは最も面白き工風にして、薪炭の日々騰貴しつゝあり本邦家屋建築の石炭の使用に適せさる今日、我東京市民たるもの瓦斯利用の方針を取らば非常なる利便あらんか
    △瓦斯副産物精製事業
瓦斯製造の始めに於ては単に瓦斯を製造して点火の用を為きしむるに過ぎず、其副産物たるコール・タールすら採るを知らなんだのであります、而し世の進むに随ひコール・タールを採る様になり、更に進んでコール・タールからは種々なる染料薬品を採ることが出来けるのであります、聞く所によればコール・タールより百余種の色素を採ることも出来けるそふでありますが、斯る緻密なる組織はとても我国では望み難い事でありますなれば、今回ゴム溶解剤たるナフサ油、シミ抜油、溶剤軽油、防腐剤クレオソート油、染料の原料たるナフサリン、アンスラシン油、煉炭たるピツチ等を始め、石炭酸等を採取することを此の九月頃よりやるつもりであります、副産物精製所事業大要とし
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て別に書きたるものがありますから写して差上げます
    副生物精製所事業大要
    一、コールタール蒸餾
コールタールを蒸溜するときは左之各種を餾出す
 一、ナフサ油
   ゴムの溶解剤として護謨会社にて使用し、又西洋に於ては石炭瓦斯及水性瓦斯与光剤として使用す
 二、軽油
   シミ抜き油の溶剤として使用し、又其の内より多少の石炭酸を採集することを得
 三、クレヲソート油
   此の内より石炭酸を採集し、又木材の防腐剤として電柱電話柱又は鉄道枕木橋梁等の塗料として前途の需用頗る多望なり
 四、ナフサリン
   西洋に於ては人造藍の原料として需用多きも、本邦に於ては毛布、革等の防腐剤として供給するものなり
 五、アンスラシン油
   西洋に於ては主として染料製造の原料として用ゆるも、日本に於ては未だ染料製造業なきを以て、クレヲソート油とピツチとに混入し、目下アンスラシン油としては採集せす
 六、ピツチ
   煉炭製造の原料として必要品なり、煉炭は軍艦及水雷艇の焚料として其需用多きを以て、従てピツチも亦其の原料として使用せらるべし
 尚ほ以上の外ナフサ油より「ペンゾール」「トルヲル」及溶剤ナフサを製造し「クレオソート油」より石炭酸を製造するものにして、来る九月頃該機械到着すべきを以て、漸次是等の製造をも開始する筈なり
 「アンスラシン」油より「アンスラシン」を分取すべき装置既に備はるも未だ需用者なきを以て之が製造に着手せず
 当所設備のコールタール蒸餾釜二個を使用し、一日「コータール」四十五石を蒸餾するときは各種一ケ月の産出額凡そ左の如し
  ナフサ油     三十二石四斗
  軽油       十八石九斗
  クレオソート油  百六十二石
  アンスラシン油  十八石九斗
  ナフサリン油   十八噸八分
  ピツチ      百八十九噸
    二、硫酸アンモニヤ製造
 硫酸アンモニヤ製造に付ては目下瓦斯液の濃厚となすの準備中にして、第一製造所産出のものは略其の準備成り、第二、第三製造所に於ても其の設備完成せば、一日合計五十石の濃厚液を得るを以て、之れよりアンモニヤ千六百五十斤を製造し得るに依り、一ケ月の産出額凡そ二十噸、一噸に付金百参拾五円なり
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    △水性瓦斯の併用
今回愈々水性瓦斯を製造して現在のものに約三分の一位を混合して用ゐ、其供給を十分に致し、御得意様に向て遺憾のないよふに致す含みであります、此の工場も十一月には完備して瓦斯の供給を為すことを得る手筈となり居ります、此水性瓦斯は海外諸国に於ては盛に行はれて、使用上何等の害毒なく、而も石炭瓦斯に比すれば廉価に出来るから、追々瓦斯の代価を低落することを得ては御得意様の利便を計り、又新に之を使用する人々を増加し事業の拡張を計ることか出来るだらうと思ひます、水性瓦斯の如何なるものでありますが、之に就ては当会社の技師工学士水田政治君の意見書及工学士細木松之助君のウオーター・ガスに就て演説せるものゝ筆記がありますから参考までに差上けます
 附記す 水田技師の発光水性瓦斯製造に付意見書と題するものは次号雑録欄に於て紹介せん


〔参考〕竜門雑誌 第一五八号・第三五頁〔明治三四年七月二五日〕 東京瓦斯株式会社(DK120085k-0005)
第12巻 p.666 ページ画像

竜門雑誌  第一五八号・第三五頁〔明治三四年七月二五日〕
    △東京瓦斯株式会社
東京瓦斯会社は本月十六日午後二時より、東京商業会議所に総会を開き、出席者委任状共三百五十二名此権利数六万六百三株にして、青淵先生病気の為、浅野総一郎氏会長席に着き本年上半期の営業報告書を為したる後、貸借対照表・財産目録・利益金分配案を議し散会せるか其分配案左の如し
                  円
純益金        二二五、三二〇・五二三
前期繰越金       三四、九一七・七三二
 計         二六〇、二三八・二五五
準備積立金       一二、〇〇〇・〇〇〇
別途積立金       一二、〇〇〇・〇〇〇
配当金(年一割七分) 二一五、六七〇・〇〇〇
後期繰越金       二〇、五六八・二五五