デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

3章 商工業
22節 電気
1款 東京電灯株式会社
■綱文

第13巻 p.15-19(DK130003k) ページ画像

明治23年2月24日(1890年)

是ヨリ先、当会社日本電灯会社ヲ合併シ大日本有限責任東京電灯会社ト改称ス。是日栄一、株主臨時総会ニ於テ相談役ニ選バレ、翌二十四年二月十五日之ヲ辞ス。


■資料

(東京電灯会社)考課状 第七回明治二三年一月(DK130003k-0001)
第13巻 p.15-16 ページ画像

(東京電灯会社)考課状 第七回明治二三年一月
                  (東京電灯株式会社所蔵)
    第七回 実際報告
○上略
一十二月十四日同廿六日東京商工会ニ於テ株主臨時総会ヲ開キ、日本電灯会社ト合併ノ事ヲ議ス、抑々此両社ヲシテ合併セントスルノ根源ハ東京府知事ノ勧告ニ基因シタルモノナリ、而テ其十四日ノ総会ニ提出シタル議按ハ六ケ条ニシテ、其議事ノ要領ハ日本電灯会社ト合併セントスル条ハ異議ナシト雖トモ、其合併ノ方法中、或ハ該社資本金確定外ノモノヲ加ヘントスルカ如キ、或ハ株金払込ヲ先キニセントスルカ如キ、或ハ社名ヲ更ニ撰定セントスルカ如キ、一モ彼ヨリ譲ル処ナシトノ議多数ニシテ、即チ左ノ如ク修正議決セリ
  第一条(原按)日本電灯会社ト合併スルコト
  第二条(修正)日本電灯会社確定ノ資金弐拾五万円ヲ合併スルコト
  第三条(修正)株金ノ払込ハ日本電灯会社ノ確定株弐拾五万円ニ対スルモノニシテ、本社ノ新株ト同様ナラシムルコト
  第四条(原按)合併ノ上ハ東京日本両電灯会社ノ株金ニ区別ヲ立テス、払込ミタル金高ニ日割ヲ以テ利益ヲ配当スルコト
  第五条(修正)社名ハ東京電灯会社ノ名称ヲ存スルコト
  第六条(原按)合併後定款ノ編纂委員ヲ旧両社ヨリ大倉喜八郎・川村伝衛・山中隣之助三氏ヘ委任スルコト
 然ルニ日本電灯会社ニ於テモ亦合併ノ大体ニ於テハ異議ナキモ、我カ修正ノ議決ニハ応シ難シト決定シ、互ニ相容レサルコトトナリタルニ、尚又府知事ヨリ神田日本橋本所ノ三区長立会ヲ以テ頗ル懇切ノ勧諭アリタリ、玆ヲ以テ互ニ歩ヲ譲ルノ按ヲ建テ、再ヒ同月廿六日ノ総会ヘ之ヲ発シタリ、其一ハ日本電灯会社株金ハ三拾万円ヲ以テ之ヲ合併スルコト、其二ハ右三拾万円ノ株金払込ハ本社ノ新株ト同様ニ募集スルコト、其三ハ社名ハ府知事及神田日本橋本所ノ三区長ノ撰定ニ任スルコトノ三ケ条ナリシニ、種々討議ノ末、衆議原按ニ可決セリ、然ルニ尚日本電灯会社ハ資本金参拾七万五千円ニアラサレハ合スル能ハスト、修正議決シタル趣通知シ来レルヲ以テ、最早合併ノコトハ断念セサルヲ得サルニ立至レリ、即チ両社ヨリ府知事ニ此顛末ヲ具状シ、而シテ本社ハ十二月廿八日合併ノ儀不調ノ旨
 - 第13巻 p.16 -ページ画像 
各株主ヘ通牒セリ、畢竟此不調ハ主トシテ日本電灯会社ノ議不熟ニ之レ由ルヲ以テ、府知事ヨリ又々該社ヘ懇諭アリシ由ノ処、遂ニ原按通リニテ合併致シ度旨、該社ヨリ申出タル趣、神田日本橋ノ両区長ヲシテ本社ヘ示諭アリタリキ、本社ハ既ニ再議ノ旨ニヨリ一旦不調ノ報道ヲナシタリト雖トモ、今復議ヲ改メ、原按ニ復ストノコトナリシカ故ニ、敢テ異議スル処ナク、速ニ示諭ノ旨ヲ領シ、乃チ両社合併ノ運ヒニ取掛ルヘキ旨、同三十日付ヲ以テ各株主ヘ直報ニ及ヒタル次第ナリ


中外商業新報 第二三七八号〔明治二三年二月二七日〕 大日本東京電灯会社株主臨時総会(DK130003k-0002)
第13巻 p.16 ページ画像

中外商業新報 第二三七八号〔明治二三年二月二七日〕
    大日本東京電灯会社株主臨時総会
去る二十四日木挽町商工会議事堂に開会せし同会議の模様を聞くに、当日出席者は六十余名にて矢嶋作郎氏会長席に着き、書記をして旧日本・東京両電灯会社の合併したる計算報告を為さしめ、夫より新に編制したる定款(十三章五十ケ条)の討議にかゝり多少の議論ありて何れも原案に決せり、今定款中重なる箇条を挙れば、総資本額を一百三十万円一株五十円券二万六千株に分割し、重役は委員七名、相談役三名にて、委員中より社長及び常務委員各一名を撰挙し、其他技師長・支配人・技師・副支配人・書記・技手は重役に於て定むる事、重役の在職年限は二箇年として満期改撰を行ふ事、利益金配附の割合は、起業消却資本積立金として機械器具家屋代価及創業費の百分の二より五迄、役員報酬賞与金として利益金百分の十より十五迄、株主配当金は右二項を控除したる純益金を以て株主の衆議に拠り其割合を定む、又株主配当年一割以上に超過するときは衆議に拠り割合を定めて配当平均準備積立金を置き、尚配当一割五歩以上を超過する場合には其割合を定めて別途積立金を置くこと等にして、定款第十条により役員を撰挙せしに、矢嶋作郎・大倉喜八郎・菊地治郎兵衛・山中隣之助・柏村信・小西義敬・馬越恭平の七氏委員に、渋沢栄一・原六郎・安田善二郎《(安田善次郎)》の三氏相談役に当撰せしが、当日の当撰者中には欠席者もありたるにより其諾否を問ひたる後社長及び常務委員を互撰する筈の処、其諾否等は昨日に至るも未た判然決定せざりしと云ふ


(大日本有限責任東京電灯会社)考課状 第八回明治二三年八月(DK130003k-0003)
第13巻 p.16-17 ページ画像

(大日本有限責任東京電灯会社)考課状 第八回明治二三年八月
                   (東京電灯株式会社所蔵)
    第八回実際報告
明治廿三年一月ヨリ六月迄六ケ月間、本社ニ於テ施行シタル事務ノ顛末及諸勘定ノ要領ヲ精査シ、株主各位ニ報告スル左ノ如シ
    営業之事○略ス
    株主総会委員会及両社合併ノ事
○上略
一旧東京電灯会社ト旧日本電灯会社ト合併ノ儀双方ノ協議結了シ、一月十三日ヲ以テ合併ノ儀ヲ東京府庁ヘ出願シ、同十五日認可ヲ得、且社名ノ件ハ一月廿日ニ於テ府知事高崎氏ヨリ左ノ如ク命名セラレタリ
 - 第13巻 p.17 -ページ画像 
                 大日本
                  有限責任東京電灯会社
○中略
一二月廿四日初メテ本社株主臨時総会ヲ商工会々堂ニ開キ、旧両者合同資産負債ノ要領ヲ報道シ、定款ヲ議定シ、次ニ該定款ニヨリ社長委員ノ俸給額ヲ議定シ、次ニ委員相談役ノ撰挙ヲ行ヒタリシニ、委員ニハ、矢嶋作郎・菊地治郎兵衛・大倉喜八郎・山中隣之助・柏村信・小西義敬・馬越恭平、相談役ニハ渋沢栄一・原六郎・三野村利助当撰ト定マリタリ
一新定款認許ノ儀東京府庁ニ出願シ、三月廿日認可ヲ得タリ○下略
明治二十三年一月一日ヨリ六月三十日迄、上半季間営業実際報告、右之通ニ御座候也
             東京市京橋区新肴町十五番地
               大日本
                有限責任東京電灯会社
                 支配人  谷村小作
                 相談役  三野村利助
  明治廿三年七月        相談役  原六郎
                 相談役  渋沢栄一
                 委員   馬越恭平
                 委員   小西義敬
                 委員   柏村信
                 委員   山中隣之助
                 委員   大倉喜八郎
                 常務委員 菊地治郎兵衛
                 社長   矢嶋作郎
    株主各位御中
   ○日本電灯会社ハ明治二十二年資本金二十五万円ヲ以テ丘譲二・馬越恭平・菊池治郎兵衛・河村伝衛等主唱ノ下ニ設立セラレ、日本橋本所両区ヲ其ノ主タル供給地域トナセリ。


東京電灯株式会社五十年史稿本 第一〇八―一一一頁(DK130003k-0004)
第13巻 p.17-18 ページ画像

東京電灯株式会社五十年史稿本 第一〇八―一一一頁
               (東京電灯株式会社所蔵)
○上略 然るに合併後に於ても新旧役員間の軋轢絶えず、旧役員に対する帳簿不整理の声が漸次高くなつたので、二十三年八月十一日の定式総会に於て、仮りに現重役をして社務改良の任に当らしめる事としたのであるが、其後数ケ月を閲するも改良の実挙らず、株主は愈々疑惑の念を深めるに至り、終に同年十一月十五日に至つて、株主浦田治平氏外百四十余名よりの請求に依り臨時総会を開き、株主中より調査委員五名を選び、社務を調査せしめる事に決し、越えて十七日の臨時総会に於て安田善次郎外四氏を委員に任命した、○中略 かくて委員の請求に依り、翌二十四年一月十七日及十九日の臨時総会に於て右の調査成績を報告し、次て改革方按整理方按及定款方按を議し、資本減額委員を任命し、吉田幸作・武藤直中・深山小兵衛の三氏之に当撰した。次で
 - 第13巻 p.18 -ページ画像 
社務の調査も終り、定款を改正して整理略其緒に就かんとするに当つて、青天の霹靂当社の浮沈にも拘はる一大事が突発した。是乃ち明治二十四年一月廿日早暁の帝国議事堂の焼失である。これに関しては後に詳細を別項として述へるが、此の為宮中の電灯は御休止となり、皇族方を始め奉り一般需用家の電灯を廃止する者相踵ぎ、当社は訴訟を以て之を争ふも敗訴の厄に会ひ、又二十三年以来の不況により、吉原一帯に巨額の未収金が嵩み、株価は月に沈み日に沈淪し、収拾することの出来ぬ惨状を呈するに至つた、○中略 本社はこの悲境蹉跌の極に於て、他日の積極的躍進に備へる為め、二十四年二月二十七日(定款修正東京府より翌三月十一日認可)を以て先の資本減額取調委員の報告に基き、資本金四十二万五千円を切捨て八十七万五千円と為し、越えて七月二十一日の定式総会後の臨時総会に於て、株金の払込を延滞した新株七百八十七株を当社に没収し、再び資本金を減額して八十三万五千六百五十円とした、(定款修正八月五日東京府より認可)寔に本社五十年の永き歴史に於て此の如き再度迄資本金を減少せざるを得なかつたことはこの以外にはないのである。
この為め二月十五日を以て創立以来の社長であつた矢嶋作郎氏以下総役員は責を引いて辞職した○下略


東京電灯会社報告 第一〇回明治二四年七月(DK130003k-0005)
第13巻 p.18-19 ページ画像

東京電灯会社報告 第一〇回明治二四年七月 (東京電灯株式会社所蔵)
    ○第拾回事業報告書
明治二十四年一月ヨリ六月ニ至ル半季間、本社ニ於テ施行シタル事業ノ顛末ヲ精査シ、玆ニ其要領ヲ株主各位ニ報告スルコト左ノ如シ
   ○定式総会及臨時総会決議之事
○上略
一二月十五日定式総会ヲ銀行集会所ニ開会シ、前半季間ニ係ル営業ノ景況諸勘定ノ決算等ヲ報導シ、例ニ依リ重役改選ヲ行ヒ、畢テ臨時総会ヲ開キ、資本減額取調委員ノ報告ヲ聞キ、審議ノ上減額ノ仮決議ヲ為セリ
一二月二十七日臨時総会ヲ銀行集会所ニ召集シ、去ル二月十五日ノ仮決議ニ基ツキ、資本減額ニ対スル確定議ヲ遂ク○下略
   ○株金及株数減額之事
一株金百三十万円ハ二月二十七日総会ノ結果ニ依リ、四拾弐万五千円ヲ減シ、八拾七万五千円ト為レリ○下略
   ○役員及傭員淘汰之事
一明治二十四年二月十五日社長矢嶋作郎・委員柏村信・大倉喜八郎・山中隣之助・小西義敬・馬越恭平ノ諸氏其職ヲ辞シ、柏村信・安田善次郎・藤本文策・水野九郎・松下一郎右衛門委員ニ重任及新任シ浦田治平・仁杉英・高山権次郎監査役ニ上任シ、互選ヲ以テ柏村信委員会頭ト為ル○下略
明治二十四年一月一日ヨリ六月三十日迄、上半季間営業実際報告右之通ニ御座候也
             東京市京橋区新肴町十五番地
                東京電灯会社
 - 第13巻 p.19 -ページ画像 
                 幹事  皆川四郎
  明治廿四年七月十日      委員  松下一郎右衛門
                 同   水野九郎
                 同   藤本文策
                 同   安田善次郎
                 同   柏村信
    株主各位中
右明治廿四年上半季間実務施行及諸勘定ヲ精査候処、相違無之候也
                 監査役 浦田治平
                 同   高山権次郎
   ○栄一外二名ノ相談役辞任ニツイテハ上掲会社報告ニハ記載ナシ。然レドモ第九回報告マデハ毎回其ノ巻尾ニ相談役ノ連名アリシニ、第十回報告ニ及ンデ之無キハ、二十四年二月十五日社長以下役員連袂辞職ノ際共ニ辞職セルモノト見ルベシ。
   ○大日本有限責任東京電灯会社ハ明治二十四年一月二十七日有限責任東京電灯会社ト改称セリ。而シテ明治二十六年九月新定款ニ依リ東京電灯株式会社ト定ム。