デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2017.12.19

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

3章 商工業
23節 土木・築港
5款 門司築港会社
■綱文

第13巻 p.207-210(DK130022k) ページ画像

明治22年3月(1889年)

是ヨリ先、九州鉄道敷設計画ノ進捗ニ伴ヒ其起点タル福岡県企救郡門司港開築ノ要アリ。仍テ初メ同県当局ニ於テ之レヲ企テシモ其経費支弁ニ苦ム所アリテ、豊前六郡ノ有志者斎藤美知彦等相謀リ会社事業トシテ之レヲ経営セントス。栄一・大倉喜八郎等其協議ニ与リ、是月資本金二十五万円ノ株式会社ヲ創立ス。栄一、当会社相談役タリ。


■資料

青淵先生六十年史 (再版) 第二巻・第一四五―一四八頁 〔明治三三年六月〕(DK130022k-0001)
第13巻 p.207-208 ページ画像

青淵先生六十年史(再版) 第二巻・第一四五―一四八頁〔明治三三年六月〕
 ○第三十二章 築港業
    第一節 門司築港会社
門司ハ豊前国企救郡ニ属スル一町ニシテ元文字ケ関村ト称シ、其開港ノ以前ニ在リテハ実ニ寥々タル一小村落タルニ止マリ、纔ニ古跡トシテ知ラレシノ外一モ見ルヘキモノナク、鶏犬遥ニ聞ユル所三五ノ茅屋隠見シ、沙煙斜ニ靆ヒク処五六ノ蜑戸相並ヒ、含哺鼓腹時康ヲ楽ミ魚蝦ノ生計年華ヲ度リシニ過キサリシカ、明治二十二年始メテ同港ヲ特別輸出港ニ指定セラレテヨリ以来大ニ面目ヲ刷新シ、千年ノ遺跡ヲ止メシ文字ケ関路ハ海士ノ塩焚煙ト消ヘ、漁樵ノ歌ハ海陸汽笛ノ声ト変シ、十年前ノ一小漁村ハ熱閙ナル繁華ノ地ト化シ去リヌ、抑モ同港ノ進歩此ノ如ク速ナリシハ、之レ天然地利ノ然ラシムル所多シト雖トモ彼ノ港湾改築ヲ企テ、船舶碇泊ノ便ヲ開キ、塩田及海面ヲ埋築シテ大厦高楼ノ建築ヲ促シタル築港会社ノ事業ノ如キ人為ノ功亦与リテ大ニ力アリト云ハサルヘカラス
門司港誌ニヨレハ、同港ヲ以テ特別輸出港トナスノ条例未タ公布セラレサルニ先チ、九州鉄道布設ノ計画アルト同時ニ門司港ノ三字ハ忽チ具眼者ノ為メニ認知サレ、福岡県知事安場保和主トシテ此ノ港湾改良ノ端緒ヲ開カントシ、明治十九年ノ県会ニ向ツテ企救郡大里ヨリ門司港ノ国道三千七百五十一間九分ノ開通費弐万六千八百弐拾四円ノ支出ヲ求メタリ、蓋シ東京長崎間第四号ノ国道線路山口県赤馬関ヨリ企救郡大里ニ接続シ、是レヨリ小倉ニ通セシモ、此ノ間ノ海峡潮流急湍ニシテ航路最モ嶮悪ナルカ為メ、道ヲ門司ニ延長シ其海湾ヲ利用シテ貨客交通ノ運搬ニ便セントシ、此ノ土木ヲ設計シタルナリ、然レトモ同年ノ県会ハ終ニ知事ノ企望ヲ容レス、断然之ヲ否決セリ
夫レ国道改通ノ企図此ノ如ク一蹶シタルモ、九州鉄道ノ計画ハ着々トシテ其歩武ヲ進メ、其起点ヲ門司ニ定ムルコト既ニ疑フ可クモアラス門司港ノ経営日一日ニ接迫シ、安場知事以下書記官土木課長ノ諸氏熱心調査スル所アリ、豊前三郡長熊谷直候・津田維寧・清水可正ノ諸氏之レカ為ニ周旋シ、彼ノ国道延長ニ先チ港湾改良ノ測量ニ着手シ、明
 - 第13巻 p.208 -ページ画像 
治十九年十二月土木課員陣野伍ヲ主任トシ、門司ニ出張ヲ命シタリ
明治二十年八月内務省雇技師ムルドル、内務技師古市公威、石黒五十二等馬関海峡測量ノ為メ出張ス、土木課長小山改蔵以下主任ノ官吏共ニ与ニ三氏ヲ訪ヒ、門司港湾改良上ノ協議ヲ遂ケ併セテ測量ノ足ラサルモノヲ再調ス、偶内務技手相良常雄福岡県ニ転任シ、途次馬関ニ来リテ此ノ一行ニ会合シ直ニ測量ニ着手セリ、後十一月小山、相良二氏相伴フテ第六土木監督署ニ出頭シ、更ニ署長石黒技師ニ打合ハスル所アリ、工事ノ設計始メテ玆ニ完成シ左ノ如ク定メタリ
 築港工事ヲ三区ニ分チ、第一区第二区ヲ海岸埋築工事トシ、第三区ヲ塩田内ノ工事トス
 其工費ハ第一区ヲ金六万七千二百五十九円六十五銭、第二区ヲ金九万四千七百三十九円六十八銭、第三区ヲ金二十三万七千八百三十六円トシ、合計金三十九万九千八百三十五円二十八銭トス
工事ノ設計ハ稍々確定スルニ至リタリト雖モ、其経費支弁ノ方法ニ苦ム所アリ、此ニ於テ豊前六郡ノ有志者斎藤美知彦等相謀リ、会社事業トシテ経営シ、工費ハ地所埋築ノ利益ヲ以テ償却スルノ方法ヲ按シ、東京ニ来リ青淵先生・大倉喜八郎等ニ協議シ、其賛成ヲ得テ株式会社ヲ組織シ、明治二十二年三月政府ノ特許ヲ得、工事ハ日本土木会社ト契約シ、着々進行シ、明治三十年中ニ完了シタリ、而シテ会社ハ予定ノ利益ヲ得、門司ノ繁昌ハ頗ル加ハリタリ
青淵先生ハ同会社ノ相談役ナリ


青淵先生公私履歴台帳(DK130022k-0002)
第13巻 p.208 ページ画像

青淵先生公私履歴台帳          (渋沢子爵家所蔵)
    民間略歴 (明治二五年迄)
○上略
明治廿一年
一月 門司築港会社ヲ創立ス
 豊前門司ノ地タル九州鉄道線連絡ノ後ハ本邦人ノ一大良港タルヘキノ予想ヲ以テ、地方ノ人士海面埋立ノコトヲ計画シ、其賛成ヲ請求セラルヽニヨリ、終ニ此会社ヲ創設シ其相談役ニ任セリ
○中略
  以上明治二十五年五月十日調


渋沢栄一 書翰 斎藤峰三郎宛(明治二三年)一一月三〇日(DK130022k-0003)
第13巻 p.208 ページ画像

渋沢栄一 書翰 斎藤峰三郎宛(明治二三年)一一月三〇日
                    (渋沢子爵家所蔵)
門司築港会社之義ニ付過日会議之模様御申越承知いたし候、然処尚又清水より電報ニて払込之事申来候由、乍去尚大倉・浅野等承合之上ニて可然と存候ニ付、右電報ハ大倉氏へ御遣し可被下候
○中略
                         栄一
    斎藤殿


渋沢栄一 書翰 斎藤峰三郎宛(明治二三年カ)一一月二八日(DK130022k-0004)
第13巻 p.208-209 ページ画像

渋沢栄一 書翰 斎藤峰三郎宛(明治二三年カ)一一月二八日
 - 第13巻 p.209 -ページ画像 
                   (斎藤峰三郎氏所蔵)
門司築港会社之会同今日十一時ニ銀行へ参集之筈ニ候処、頃日来之風邪気未タ全快せす何分罷出兼候ニ付御一同へ宜敷御伝声可被下候
委員より来報之株主集合之事ハ無拠ニ付十二月中ニ払込之都合ニ取究候
外致方有之間敷、乍去地所売却之義者小生兼而申述候如く今一段直段引下ケ企望人有之候分ハ可成丈ケ売渡約束取結、皆金払不相成候とも弐三割以上内金受取跡金仕払之期を定め取立候都合ニいたし度と存候ニ付、今日之集会ニて其趣旨を議定し至急委員へ申通し度候
○中略
  十一月念八
                         栄一
    斎藤峰三郎様


渋沢栄一 書翰 斎藤峰三郎宛(明治二七年カ)一月二八日(DK130022k-0005)
第13巻 p.209 ページ画像

渋沢栄一 書翰 斎藤峰三郎宛(明治二七年カ)一月二八日
                   (斎藤峰三郎氏所蔵)
御細書拝見仕候、門司築港会社之来書ニ対してハ拙生之意見附箋いたし置候間早々大倉安田両氏之考案御聞合被成其上答議御差出可被下候
尤も大倉氏も両三日中ニハ帰京と存候間其上ニても可然と存候
高島氏もし訪問も有之候ハヽ愚案ハ同氏へ御話合可被下候
○中略
  一月廿八日
                      渋沢栄一
    斎藤峰三郎殿


渋沢栄一 書翰 八十島親徳宛(明治二八年)一一月五日(DK130022k-0006)
第13巻 p.209 ページ画像

渋沢栄一 書翰 八十島親徳宛(明治二八年)一一月五日
                    (八十島親義氏所蔵)
其後途中無事九州巡回も相済昨夕門司ニ帰着仕候、今朝ハ当地築港之場処一覧浅野セメント工場及内裏之地所迄も相廻リ、午前之中ニ馬関ニ罷越地方有志者之招宴ニ列し候都合ニ御坐候
○中略
  十一月五日
                        栄一
    親徳殿
   ○当会社設立年月、明治二十二年三月。営業ノ目的、門司港湾開築業。資本金、二十五万円、一株五百円。役員左ノ如シ。(明治二十八年)
     専務取締役 清水可正  企救郡小倉町
     取締役   豊永長吉  赤間関市阿弥陀寺町
     同     斉藤美知彦 企救郡小倉町
     監査役   桂弥市   長門・豊浦郡長府村
     同     熊谷直候  企救郡小倉町
     相談役   渋沢栄一  日本橋・兜町
     同     大倉喜八郎 赤坂・葵町
     同     安田善次郎 本所・横綱町
     技師    相良常雄

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〔参考〕東京鋳鉄会社営業収支予算書其他(DK130022k-0007)
第13巻 p.210 ページ画像

東京鋳鉄会社営業収支予算書其他 (株式会社第一銀行所蔵)
  門司築港会社定款第廿五条但書ノ趣旨ニ拠リ同会社委員ト相談役トノ間ニ於テ取極メタル条頃左ノ如シ
委員本会社定款ニ依リ事務ヲ処弁スルニ当テ、相談役ニ協議シ及ヒ報告スヘキ事項ハ左ノ如シ
一定款第二十条営業諸規則制定及改正ニ関スルコト
一株金収納額及其払込期限ノ事
一定款第拾一条株金払込怠納者処分ニ関スル事
一定款第拾六条ニヨリ他ニ向テ負債ヲ起スヘキ場合ニ於テ、其総額金五千円以下ナルトキハ委員ノ評議ヲ以テ決行シ、其総額金五千円以上ナルトキハ相談役ニ協議ノ上施行スヘシ
  但シ委員ノ評議ヲ以テ決行シタルモノハ直ニ其旨ヲ相談役ニ報告スヘシ
一定款第拾九条支配人並ニ技師ノ任免黜陟及其給料旅費賞与金配付等ニ関スル事
一定款第廿四条株主臨時総会開設ニ関スル事
一工事ノ方法着手ノ順序及其設計変更等ニ関スル事
一会社重要ノ件ニ付官府又ハ他向ニ対シ書面ヲ出シ又ハ約定ヲ取結フ事
前各項ハ其時々協議スヘキ事勿論ニシテ、其他臨時ニ起ル事件ニシテ重要ナルモノハ必ス之ヲ協議スヘシ
一委員会開設毎ニ其議決ヲ報告スルコト
一定款第五十五条計算表ノ内月表丈ケ毎月報告ノコト
一工事実際ノ形状毎月一回報告ノコト
右報告ノ順序ハ委員会録事ハ閉会ヨリ五日以内トシ、其他ノ月表及工事ノ形状ハ前月分ヲ翌月十日以内ニ報告スヘシ
一相談役ハ右ノ報告ヲ点撿シ質疑スヘキ件アレハ之ヲ問合せ又ハ其意見ヲ陳ルヲ得ヘシ
一前各項ノ協議及報告ハ相談役遠隔ノ地ニ在住スルトキハ郵便ヲ以テ之ヲ往復スヘシ
一相談後ハ右等ノ事務ヲ取扱フ為メニ臨時相当ノ書記ヲ雇入レ之ニ属スル費用ハ委員ト協議シテ会社ヨリ支出スヘシ
此ノ条項ハ会社委員ト相談役トノ協議ニヨリ之ヲ改正増減スルヲ得ヘシ
右ノ条項ヲ協議決定セシ証拠トシテ委員・相談役各其姓名ヲ記シ調印致シ候也
  年 月 日                 委員
                        相談役
   ○当会社ノ結末ニ就テハ資料ヲ得ズ。