デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2017.12.19

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

3章 商工業
25節 取引所
1款 東京株式取引所
■綱文

第13巻 p.262-280(DK130028k) ページ画像

明治10年12月28日(1877年)

是ヨリ先、諸公債証書ノ売買日ニ増シ、就中、明治九年八月国立銀行条例改正ニ伴フ国立銀行ノ簇生、明治十年二月西南役ノ勃発等ヨリシテ需給激増シ、之ガ売買ヲ円滑ナラシムベキ公開市場ノ成立一日モ早キヲ要請セラルルニ至ル。玆ニ於テ栄一等、一方ニハ株式取引所条例ノ改正ヲ建言シ、他方ニハ東京ニ株式取引所ヲ創立センコトヲ出願シ、是日、大蔵卿大隈重信ノ允准ヲ受ク。但シ定款及申合規則ハ詮議ノ次第アルヲ以テ他日ノ指令ヲ俟ツベキ旨達セラル。


■資料

東京株式取引所第一期営業報告 第六―七頁 明治一七年四月(DK130028k-0001)
第13巻 p.262-263 ページ画像

東京株式取引所第一期営業報告 第六―七頁 明治一七年四月
    第一款 総況
○上略
爾来諸公債証書ノ売買ハ日一日ヨリ其数ヲ増加シ、九年八月是月銀行条例改正ノ命アリ以降十年ニ迨ヒ国立銀行各地方ニ続起シ、銀行紙幣抵当公債証書ノ給需ヲ繁多ナラシメ、其売買高愈々増加スルニ従ヒ確乎タル取引ノ市場ナキカ為メニ大ニ売買ノ不便ヲ覚ヘシムルニ至レリ、当時渋沢栄一・小松彰等ノ諸人時機ノ既ニ至ルヲ察シ、同志ヲ四方ニ募集シタルニ翕然同意ヲ表スル者無慮百名ニ近カリキ、然ルニ顧テ取引所条例ヲ観レハ、其条款中較々時事ニ適切ナラサルモノアリ、仲買人ノ身元金(五百円)及其証拠金(売買約定高ノ四分一)ノ如キハ其尤ナル者トス、抑々取引所ハ仲買人ノ集合ト売買利便トノ二者ヨリ成立ス、然ルニ其負担斯ノ如ク苛重ナルトキハ、仮令ヒ設シ許可ノ命ヲ得業務ヲ開
 - 第13巻 p.263 -ページ画像 
始スルモ来テ売買ヲ営ム者寡少ニシテ、其取引所ヲ盛大ニシテ其便益ヲ社会ニ与フル能ハサル可シ、是ニ於テカ条例更正ノ企望ヲ懐キ其理由ヲ陳シテ当局者ノ採択ヲ請ヒ、且其十二月廿六日ヲ以テ創立証書定款及ヒ申合規則ヲ大蔵卿ニ捧呈スルニ至レリ、越エテ廿八日創立許可ノ命ヲ賜ハリシカ、其定款及ヒ申合規則ハ詮議ノ次第アルヲ以テ之ヲ准許セス他日ノ指令ヲ待ツ可キヲ達セラル○下略


東京株式取引所第一期営業報告 第九七頁明治一七年四月(DK130028k-0002)
第13巻 p.263 ページ画像

東京株式取引所第一期営業報告 第九七頁明治一七年四月
    第三款 定款及ヒ申合規則之事
○上略
十年八九月ノ交始メテ定款及ヒ申合規則ヲ起草スルニ当リ、我国従来斯ノ如キ規約ヲ起シタル者ナク、随テ旧例ノ憑拠ス可キ者ナキヲ以テ暫ク米商会所ノ規約及ヒ米国紐育株式取引所ノ規約等ヲ参考シ、我取引所条例ニ準拠シテ之ヲ編纂シ、同年十二月廿六日ヲ以テ創立証書ト共ニ之ヲ大蔵省ニ捧呈シタリ○下略


諸願伺届案決議 明治一〇年自一二月明治一一年至一二月(DK130028k-0003)
第13巻 p.263 ページ画像

諸願伺届案決議 明治一〇年自一二月明治一一年至一二月 (東京株式取引所所蔵)
  (彰)
   株式取引所創立ニ付願書
私共発起ヲ以テ当府下第一大区十五小区兜町六番地ニ於テ株式取引所ヲ創立仕度奉存候ニ付、別帋大蔵省ヘノ願書ヘ御庁ノ奥書官印ヲ差加ヘ被下度、此段奉願候也
  明治十年十二月廿五日
           株式取引所創立発起人総代
              東京第
               長野県士族  小松彰
              東京第
               東京府平民  渋沢栄一
    楠本東京府知事殿
   ○「第一国立銀行便箋」ト印刷セル罫紙ヲ用フ。


諸願伺届案決議 明治一〇年自一二月明治一一年至一二月(DK130028k-0004)
第13巻 p.263-264 ページ画像

諸願伺届案決議 明治一〇年自一二月明治一一年至一二月 (東京株式取引所所蔵)
    株式取引所創立願書
株式取引条例ハ明治七年十月十三日太政官第百七号ヲ以テ公布相成、爾来、諸公債証書ノ売買取引モ相増シ、且官准ノ銀行諸会社ノ如キモ追々増殖ニ付テハ、其取引所開設ハ即今ノ商況ニ対シ至要ノ業務ト奉存候、於玆ニ私共発起致シ当府下第一大区十五小区兜町六番地ニ於テ株式取引所創立仕度、別紙創立証書並定款申合規則ノ草案相添創立御許可奉願候也
  明治十年十二月廿六日          渋沢喜作
                      不在ニ付代印 渋沢栄一
                      福地源一郎
                      小松彰
                      木村正幹
                      不在ニ付代印 益田孝
 - 第13巻 p.264 -ページ画像 
                      小室信夫
                      三野村利助
                      益田孝
                      三井養之助
                      三井武之助
                      渋沢栄一
                      深川亮蔵
    大蔵卿 大隈重信殿
  追白別紙定款並申合規則中御頒布ノ条例ト聊抵触候件モ有之候得共、目今商況ノ実際ニ於テ不得已事項ト奉存候間、当今ノ際特別ノ御詮議ヲ以テ草案ノ通御准許被下度、此段奉願候也
 前書之通相違無之候条奥印候也
  明治十年十二月廿六日
            東京府知事 楠本正隆


自明治十一年至同廿六年 書類其一(DK130028k-0005)
第13巻 p.264-265 ページ画像

自明治十一年至同廿六年 書類其一 (大阪株式取引所所蔵)
    東京株式取引所創立証書
明治七年十月十三日大日本政府ニ於テ制定セラレタル株式取引条例ニ基キ、株式取引所ヲ創立シ、其商業ヲ経営セント謀リ、此証書第五条ニ連署シタル者協力結社シ、左ノ創立証書ヲ取極メ候也
    第一条
当取引所之名号ハ東京株式取引所ト称スベシ
    第二条
此取引所ハ東京第一大区十五小区兜町六番地ニ取建ヘシ
    第三条
当取引所之営業年限ハ開業之日ヨリ満五ケ年間タルヘシ
    第四条
当取引所ノ資本金ハ拾五万円ニシテ一株ヲ金百円ト定メ、之ヲ千五百株ト為シ、其内発起人ニテ所持スベキ株数並其属籍住所姓名ハ左ノ如シ

  株数          属籍    住所            姓名
弐百株此金弐万円     長崎県士族 東京永田町         深川亮蔵
百五十株此金壱万五千円  東京府平民 〃深川福住町四番地     渋沢栄一
百弐拾株此金壱万弐千円  京都府平民 〃兜町五番地        三井養之助
百弐十株此金壱万弐千円  京都府平民 〃深川西大工町八番地寄留  三井武之助
百株此金壱万円      東京府平民 〃北品川宿百六拾番地    益田信孝《(マヽ)》
百株此金壱万円      東京府平民 〃深川西大工町八番地    三野村利助
百株此金壱万円      高知県士族 〃矢ノ倉町弐番地      小室信夫
八十株此金八千円     山口県士族 〃深川清住町十番地     木村正幹
五十株此金五千円     長ノ県士族 〃西ケ原村十二番地     小松彰
五十株此金五千円     東京府平民 〃下谷茅町二丁目十六番地  福地源一郎
三十株此金三千円     東京府平民 〃南茅場町         渋沢喜作
 合計                             合計十一人

株数千百株会員十一万円
 - 第13巻 p.265 -ページ画像 
    第六条
当取引所之株主及仲買人ハ内国人ニ限ルヘシ
    第七条
此証書ハ株主一同之利益ヲ謀ルタメ取極メタル証拠トシテ一同姓名ヲ自記調印致シ候、追テ加入候者ハ順次連署セシメ可申候也
    年 月 日             深川亮蔵
                      渋沢栄一
                      三井養之助
                      三井武之助
                      益田孝
                      三野村利助
                      小室信夫
                      木村正幹
                      不在ニ付代印 小松彰
                      福地源一郎
                      渋沢喜作
                      不在ニ付代印 渋沢栄一


自明治十一年至同廿六年 書類其一(DK130028k-0006)
第13巻 p.265-272 ページ画像

自明治十一年至同廿六年 書類其一 (大阪株式取引所所蔵)
    東京株式取引所定款
明治 年 月 日大蔵省之允准ヲ得当株式取引所ヲ創立シタルニ付、其営業之繁盛ヲ謀リ爰□株主一同協議決定《(ニカ)》シタル条々左之如シ
  第一章
    営業之事
第一条 当取引所ハ政府之諸公債証書及官准ヲ得タル銀行又ハ諸会社之株券売買之取引ヲ為ス所ナリ、而シテ当取引ニ加入之株主ニ列スル人々ハ創立証書及此定款並申合規則ニ承諾セシ証拠トシテ必ス記名調印スベシ
第二条 当取引所ニ於テ売買取引ヲ為スヲ得ルハ、政府ヨリ発行スル諸公債証書及官准ヲ得テ創立シタル諸銀行又ハ諸会社之株券ニシテ売買ヲ允許セラレタルモノニ限ルベシ、且之ヲ売買取引スル規程ハ必ス此定款並ニ申合規則ニ照準スベシ
第三条 当取引所ニ於テ執行スル売買取引ノ事務ハ此定款並申合規則ニ従ヒ之ヲ頭取及肝煎ニ委任スベシ、故ニ頭取肝煎ハ其売買之約定ヲ監護シ取引ヲ確実ナラシメ且取引所一切之責ニ任スベシ
第四条 大蔵省又ハ地方官庁ニ於テ新タニ公債ヲ募リ其売買ヲ下命セラルヽ時ハ其公債之名称種類金額年限約束利息割合及実価ニ至ルマテ明細之報知ヲ乞ヒ、頭取肝煎ハ臨時集会ヲ以テ之ヲ議定シ公ニ売買ヲ為スベシ
第五条 此新債ヲ発行スル事政府ノ急務ナルトキハ新募公債書込証書又《(申カ)》ハ月賦入金請取書タリトモ公ニ之ヲ売買スルコトアルベシ
第六条 此新債之集募ヲ若シ他ノ銀行之類ニテ引受ケ、其官衙ト約定ヲ結ヒテ後ニ之ヲ発行スルトキハ、其達書及約定書等之正写ヲ請取リ議席之考案ニ備フヘシ
 - 第13巻 p.266 -ページ画像 
第七条 官准ヲ得タル銀行及諸会社ヨリ新株式之売買ヲ依頼シ来ルトキハ、其依頼スル人(頭取取締役ノ類)ヨリ直ニ之ヲ発行スルト他ニ引受ケノモノアルトヲ論セス総テ其旨趣ヲ書面ニ認メ、左之証書類ヲ添ヘテ当取引所ニ差出サシメ、頭取肝煎ハ臨時集会ヲ以テ其応否ヲ議決スヘシ
 一新設会社之要件略記会社創立ノ目的発起人入金之株数資本金ノ総額入金月賦割募金見込ミ高ニ達セサル時之処分方明細ニ記載セルモノ
 一政府ノ条例或ハ其許可之写
 一会社之定款或ハ申合規則之写
 一株手形
 一頭取支配人調印之株式帳
 一書込済之株数ト書込未済之株数トヲ明細ニ記シタル書
 一得意之銀行ニ預ケタル金額(若之アラハ)
  右ノ書類ニハ其会社之発起人又ハ頭取支配人等(若シ之アラハ)一々之レニ調印スベシ
第八条 前条之手続ヲ経タル上ハ其株式入金未済ノモノト雖モ之レヲ売買セシムルコトアルベシ
第九条 他ノ依頼ニ因リ其株式之売買ヲ認許スル前ニ当リ頭取肝煎ハ精密ナル探偵ヲ遂ケ、事宜ニ因リ検査員ヲ派遣シ、其会社之業体ヲ検査セシムヘシ、而シテ其入費ハ頭取肝煎之差図ニ随ヒ依頼人ヨリ之ヲ取立ツ可シ
第十条 若シ諸銀行又ハ諸会社之頓ニ破産ニ及ヒタルトキハ其株式無価ノ廃物タルト幾分ノ価位ヲ保ツトヲ問ハス、当取引所ニ於テハ都テ其約定ヲ解カシメ証拠金ヲ返付スヘシ
  但平穏鎖店之手続ヲ以テ其社ヲ解カントセハ四ケ月前ニ於テ之ヲ当取引所ニ報知セシムベキニ付、既ニ取組ミタル約定ハ必ス了結セシムベシ
第十一条 当取引所営業年限満期之上尚永続ヲ望ムトキハ更ニ允許ヲ請ヒテ此業ヲ接続スヘシ
  第二章
    資本金之事
第壱条 当取引所営業之確実ナルヲ保証スル為メ資本金ノ三分ノ二即チ拾万円ハ日本政府之公債証書ニ換ヘ之ヲ大蔵省又ハ官准之銀行ニ預ケ、其三分ノ一即チ五万円ヲ以テ取引所之所用ニ充ツ可シ
第二条 当取引所之資本金ハ各自受持株高之半数ヲ開業之日マテ入金シ、他ノ半高ヲ其翌月ヨリ五ケ月之月賦ニシテ入金シ了リテ後、其株高ニ応シタル株式券状ヲ渡スベシ
第三条 株主此半高之入金ヲ怠レハ頭取肝煎ハ速ニ之ヲ除名シテ他ノ入社人ヲ募ルヘシ、又其月賦入金ヲ怠ルモノハ入金済之高ヲ併セテ競売セシメ買得人ヲシテ其欠員ニ充ツヘシ
第四条 右半高ノ入金及月賦入金ヲ怠ル者アルニ付買得人ヲ募ルニ之レニ応スル者ナキトキハ、他ノ株主ニ割合ヒ其持株ヲ増加セシメテ金額ニ充ツヘシ
  但此場合ニ於テハ既済之入金ハ之ヲ没収スヘシ
 - 第13巻 p.267 -ページ画像 
第五条 当取引所之資本金高ヲ増減スルハ株主ノ集会ニ於テ之ヲ決定スヘシ、而シテ其増減ノ許可ヲ得テ之ヲ施行スルノ方法モ亦株主ノ衆議ニ因ルヘシ
  第三章
    役員之事
第一条 当取引所之役員ト称スル者左ノ如シ
  頭取     一人
  副頭取    一人
  肝煎     三人
  支配人    一人
  副支配人    人
  書記方     人
  勘定方     人
  簿記方     人
 右之役員ハ其職務ニ対シ取引所ニ於テ定メタル給料ヲ受クヘシ
第二条 当取引所之肝煎ハ投票ヲ以テ三十株以上ヲ所持シタル株主之中ヨリ撰挙シ其人員ハ五名ト定ムヘシ、而シテ撰挙之初集会ハ発起人之差定ムル時日場所ニ於テスヘシ
第三条 此撰挙ニ応シタル肝煎ハ同僚之内ニ於テ投票ヲ以テ頭取一名副頭取一名ヲ撰任スヘシ
第四条 頭取肝煎之撰挙ハ毎年一月之中旬ニ於テ株主一同取引所ニ集合シ投票ヲ以テ定ムヘシ、而シテ其集会之時日ハ少クトモ十日以前ニ頭取ヨリ之ヲ報知スヘシ
  但株主之居所遠路隔絶若シクハ事故アリテ出席シカタキトキハ委任状ヲ以テ与ヘタル名代人ヲ出ス可シ
第五条 此投票ヲ以テ撰挙セラレタル頭取肝煎ハ其上任之日ニ当リ各誓詞ヲ為シ、取引所之為メ能ク規則ヲ奉シ制限ヲ守リ詐偽軽忽等ノ挙動ナキ旨ヲ表シ、之ヲ取引所ニ蔵置スベシ
第六条 頭取肝煎ノ在職期限ハ一ケ年間トス、故ニ衆議ニ因テ放免セルノ外ハ必ス勤務スベシ、若シ期限中不時ノ欠員アルトキハ仍ホ同僚中及ヒ株主ノ衆議ヲ以テ之レガ代人又ハ補員ヲ命スベシ
第七条 肝煎中ヨリ一名ツヽ月番ヲ以テ検査職ヲ置キ、取引所営業之景況及金銀出納ノ事務ヲ点検スヘシ
第八条 当取引所支配人以下之役員ハ肝煎之衆議ヲ以テ株主之中又ハ社外之人ヨリ適宜ニ之ヲ撰任スヘシ、而シテ奉職期限ハ一ケ年間トス、其重年勤続ヲ命シ或ハ期内放免スルモ亦頭取肝煎之衆議ニ由ルベシ
第九条 頭取肝煎ハ其所有之株式中ニテ拾株丈ケノ券状ヲ当取引所ニ預ケ置クヘシ、取引所ハ禁受授ノ印ヲ押シテ保護預リ証書ヲ渡スヘシ
  第四章
    役員職務上ノ責任権限之事
第一条 頭取ハ取引所ノ事務ヲ総轄シ、他ノ役員ヲ指揮シ、取引所一切ノ責ニ任スヘシ
 - 第13巻 p.268 -ページ画像 
第二条 頭取ハ肝煎分掌之事務ヲ定ムル権アルベシト雖モ、新タニ事ヲ起シ或ハ既済之規定ヲ改正シ又ハ之ヲ廃止スル等ノ事之如キハ、肝煎之協議ニ由ラサレハ之ヲ専決スベカラズ
第三条 副頭取ハ常ニ頭取之事務ヲ翼成シテ、時トシテ其代理之任ニ当ルベシ
第四条 肝煎ハ衆議ヲ以テ支配人已下之役員ヲ撰挙シ、其分掌之課程権限給料等ヲ定メ、社中差縺之事ヲ判決シ、金銀之出納ヲ管理シ及凡百之施設上ニ付其順序ヲ立テ議案ヲ草シ之ヲ頭取ニ申□シ《(陳カ)》、社中一般之疑問ニ答弁シ又ハ□□□《(三四字不明)》衆議ヲ取ランカ為メ臨時集会ヲ催スノ権アルヘシ
第五条 肝煎ハ支配人以下之役員ヲ撰定スルニ付身元引受人ヲ約スベシ、若シ犯者アレバ相当之責罰ヲ行ヒ又ハ引受人ニ迫リテ其償ヲ要求スヘシ
第六条 肝煎ハ仲買人ノ入社退社ヲ許シ又ハ拒止シ及ヒ申合規則ニ照シテ其事務ヲ処分スベシ
  但以上之三件トモ第七条之事情アルニアラサレハ其決ヲ頭取ニ取リテ後ニ施行ス可シ
第七条 肝煎ハ其同僚中又ハ頭取ニ於テ職任不適当ノ行為アルトキハ株主臨時会議ヲ催シ、無名投票ヲ以テ三分ノ二以上之説ニ従ヒ之レヲ退職セシムベシ
  第五章
    株主権利制限之事
第一条 株主ハ取引所之本主ニシテ、入金高ニ応シタル株券ヲ所持シ株数相当之権利ヲ有シ営業上ノ損益ヲ負担スル者ナルカ故ニ、時々ノ景況ニ着目シ金銀出納及諸帳簿之検閲ヲ求ムルノ権アルベシ
第二条 株主ハ頭取肝煎之事務取扱上ニ於テ不適当ノ事アルト認ムルトキハ、何時ニテモ肝煎之義ニ加ハリテ之ヲ弁論スルヲ得ヘシ
第三条 株主ハ社中之総会ニ於テ発言投票ヲ為スニ当リ其所持ノ株数拾ケ迄ハ壱株毎ニ一説、拾壱株以上百株迄ハ五株毎ニ一説、百壱株以上ハ拾株毎ニ一説ヲ吐クノ権利アルベシ
第四条 役員ニアラサル株主ハ肝煎之承認ヲ経テ売買本人又ハ仲買人ト為ルコトヲ得ヘシ、而シテ其初次請求之手続ハ別ニ証人ヲ要セスト雖モ、自余之諸件ハ一般仲買人同様タルベク、且売買上ニ於テハ都テ之ヲ仲買人ト称ス可《(マヽ)》ヘシ
第五条 株主ハ何等ノ事故アルトモ取引所解散之期ニ至ラサル時間ハ其株金ヲ取戻スコトヲ得ス
第六条 株主ハ第六章之手数ヲ了ルニアラサレハ其所持ノ株式ヲヲ《(衍)》譲与スベカラス、又其株式ヲ質入抵当トナシタル者ハ人撰及議事ニ関渉シ肝煎以上ニ撰挙セラルヽヲ得サルベシ
  第六章
    株式譲引及質入抵当之事
第一条 当取引所ノ株式ハ頭取肝煎之許可ヲ受ケ当取引所之簿冊ニ引合セタル上ニテ之ヲ売買譲与スルコトヲ得ヘシ、尤モ其株式券状之書替ヲ為サヽル時ハ、右取引之損益ハ其株式券状之名前人ニ負担セ
 - 第13巻 p.269 -ページ画像 
シムベシ
第二条 株主等其所有之株式ヲ質入ニナサント欲ス《(マヽ)》セハ書面ヲ以テ肝煎ニ申立其承諾ヲ受ク可シ
第三条 定式集会之前後十五日ヨリ多カラサル時時《(マヽ)》ハ株式ノ売買授受ヲ停止シ株式帳ノ書改ヲ為サヽルベシ
  第七章
    仲買人入社退社之事
第一条 当取引所ニ於テ自ラ株式売買取引ヲ為シ、又ハ他人之依頼ヲ受ケテ仲買トナリ之ニ従事スル者ヲ以テ総テ仲買人ト称スヘシ、此仲買人ハ当取引所ニ於テ定メタル規則ヲ確守スヘシ
第二条 当取引所ノ仲買人タラン《(ト脱カ)》欲スル者ハ書面ヲ以テ肝煎ニ申出ツ可シ、此書面ニハ姓名宿所年齢ヲ詳記シテ之レニ調印シ、且二名以上証人之連印ヲ要スヘシ
第三条 此書面ヲ落手セハ肝煎ハ会議ニ於テ其加入之可否ヲ決定シ、差支ナシト思量スルトキハ一週日間之レヲ取引《(所脱カ)》ニ張出シ、他ノ故障ナキヲ認メ、身元金並証人連印之証書ヲ受取リ入社ヲ許スヘシ
  但シ此身元金ハ当取引所之株券又ハ公債証書之類ニテモ本条之額ニ充ル金高ヲ差入ルヽニ於テハ妨ナカルベシ、尤モ其株券又ハ公債証書ヨリ生スル利子ハ所持人之所有タルヘシ
第四条 仲買人之身元金ハ一名毎ニ三百円トス、此身元金ハ取引所ニ於テ使用スルコトナキカ故ニ利息ハ払ハサルヘシ
第五条 仲買人入社之期限ヲ一ケ年トス、故ニ接続入社セントスルトキハ期限三週日間前ニ肝煎ヘ申出ツヘシ、肝煎ハ之レヲ受ケテ一週日間取引所ニ張出シ置キ他ノ故障ナキヲ認メテ之ヲ許スヘシ
第六条 期限退社及臨時退社ヲ望ムトキハ前条ノ手続ニ拠リ当取引所ニ連滞シタル勘定其他之関係ナキヲ認メタル後ハ其退社ヲ許シ、身元金ヲ返付シテ証人ノ責任ヲ解クベシ
第七条 仲買人若当取引所又ハ社中之各人ニ対シ不正ノ所業アルヲ以テ之ヲ除名スベキ場合ニ至リテハ、肝煎之衆議ニヨリ其証人ヲシテ相当之過怠金ヲ差出サシムルコトアルベシ
  第八章
    仲買人手代之事
第一条 仲買人タルモノ其名代トシテ手代ヲ取引所ニ出サント欲スルトキハ、書面ヲ以テ之ヲ肝煎ニ申出ツベシ、此書面ニハ本人及ヒ其手代之宿所姓名取扱フベキ事務金銀取引之権之有無等ヲ細記スベシ
第二条 肝煎ハ此書面ヲ一週間取引所ニ張出シ置キ、他之故障ナキヲ認メタル上衆議ヲ以テ之ヲ許スベシ、此許諾ヲ得サル前ハ決シテ手代ヲ取引所ニ出スベカラズ
第三条 手代ノ姓名ハ其主人之姓名ト共ニ取引所ニ掲示シ、其主人ト同一之遇待ヲ為ス可シ、故ニ其主任之権ヲ解カントスルトキハ直ニ書面ヲ以テ肝煎ニ報知スベシ、肝煎ハ其報知ヲ取引所ニ掲示シ其姓名ヲ削去スベシ
第四条 其主人之除名セラルヽモノハ手代之任随テ消滅スベシ、若シ手代違約人トナリ取引ヲ為スコトヲ禁セラルヽトモ、其主人ニ於テ
 - 第13巻 p.270 -ページ画像 
違約ノ弁償ヲ為シタ《(マヽ)》了リタルトキハ主人ハ尚ホ仲買人タルコトヲ得ベシ
  第九章
    社中差縺取扱方之事
第一条 社中仲買人之間取引上ニ於テ起リタル差縺レハ他ノ仲人ヲ命シテ之ヲ和解セシムベシ、モシ和解ニ至ラサル《(トキ脱カ)》ハ肝煎之衆議ヲ以テ可成丈ケ之ヲ和解スルコトヲ勉ムベシ
第二条 肝煎ハ社外之人ト社中之人ト之間ニ起リタル差縺レニハ一切関係スルコトナカルベシ、尤モ社中之仲買人社外之人之為メニ仲買ヲ為シ退社逃亡死去等ノコトアル場合ニ当リ其売買本主ト相手タル社中之仲買人トノ間ニ差縺レアルトキハ此限ニアラサルベシ
第三条 此場合ニ於テ社外之売買本主ヨリ肝煎之処決ヲ請求セルトキハ其売買本主ヲ社中之仲買人同様ニ見做シ、之レヲシテ肝煎之処決ヲ守リ決シテ違背セサルベキ旨之誓詞ヲ為サシメ、然ル后之レカ処決ヲ為ス可シ
第四条 取引所ニ於テ取結ヒタル取引約定ハ他之依頼ヲ受ルト否トヲ論セス都テ其仲買人ノ売買ト看做シ、之ニ関スル一切之責ハ皆仲買人ニ帰スベシ、故ニ取引所ニ於テハ依頼ヲナシタル本人ト直接之関渉ヲ負フノ理アルコトナシ
第五条 仲買人売買取引之事ニ付テ取引所ニ向ヒ申陳スベキ事件ハ本人親カラスルカ又ハ予メ肝煎之承認ヲ経タル手代人ニ限ルベシ
  第十章
    役員禁令之書
第一条 取引所ノ役員タル者ハ売買取引ノ本人又ハ仲買人トナル事ヲ禁ス
第二条 取引所之役員ハ売買証拠金及ヒ仲買人之身元金ヲ使用スベカラス、其他之有金ヲ私用ニ供スベカラス、且預リ金之他之証書とも取引所之印証ナキ各自一判之証書ヲ用ユルヲ禁ス
第三条 取引所之役員ハ取引所之名号ヲ仮冒シテ商業ヲ営ミ自己ノ利益ヲ謀ルベカラス、若シ之ヲ犯ストキハ何様ナル事情アリトモ不正之事ト為シ相当之罰ヲ命スベシ
第四条 取引所ノ頭取肝煎ハ故意ニ出タル不適当之処為アリテ其取計ヨリ損毛ヲ生スルトキハ自ラ之ヲ償弁スベシ
  第十一章
    株主集会之事
第一条 肝煎撰挙及ヒ定款並申合規則之加除改正等凡ソ社中一般ニ関係シタル事件ハ総会ニ於テ評議決定シ、三日以内ニ之ヲ大蔵省ヘ申稟スベシ
第二条 総会ノ決議ハ衆議ヲ採ル、故ニ病気其他已ムヲ得サル事故アリテ欠席スル人々ハ必ス委任状ヲ授ケタル代人ヲ出シ、而シテ此代人ハ社中之人ヲ用ユルヲ要ス、若代人ヲ出サス決議之後ニ至リ更ニ異論ヲ発スルモ一切採取セサルベシ
第三条 株主遠隔之地方ニ住スルカ又ハ旅行ヲ為シテ議事招集ノ期ニ会シ難キ懸念アルトキハ、右二条之場合ニ於テ差出スベキ代人ヲ予
 - 第13巻 p.271 -ページ画像 
メ委任シ之ヲ取引所ニ届ケ置ク可シ
第四条 凡ソ総会ハ之ヲ定式臨時之二様トス、定式総会ハ毎年一月七月之両度之ヲ開キ、臨時総会ハ頭取肝煎之適当ナリト思考スル場合ニ於テハ何時ニテモ招集スルコトヲ得可シ、又人員十名ニ下ラス其所持之株数当取引所総株之五分ノ一ニ下ラサル株主等ヨリ書面ヲ以テ臨時総会ノ請求アルニ於テハ、何時ニテモ招集セサルコトヲ得サルベシ
第五条 右ノ請求書ニハ此総会ヲ要スル事件目的ヲ記載ス可シ、若シ頭取肝煎ニ於テ十五日間以上謂ハレナク其手続ヲ怠リタル時ハ、請求人自ラ之レヲ招集スルヲ得ベシ
第六条 総会ノ議長ハ頭取之ニ当ルヲ常例ト為スト雖トモ、肝煎又ハ株主之請求ニ依テハ別ニ之ヲ撰挙スルコトアル可シ
  第十二章
    純益金配当ノ事
第一条 毎年両度其半季内ニ取立タル手数料之合高其他之利益ヲ合算シ、営業上諸般之費用ヲ引去リタル残高及公債証書之利益ヲ以テ純益金ト為シ、株高ニ応シテ之ヲ割渡スベシ
  但役員之給料及賞与配当金等ノ割合ハ営業実際之景況ニ依リ株主総会ノ衆議ヲ以テ定ム可シ
第二条 此割合ハ毎年両度之定式集会ニ於テ頭取肝煎ヨリ半季営業之報告ヲ明細ニ為シタル上ニテ分賦スベシ
第三条 此純益金壱ケ年壱割(即チ百分ノ十)以上ニ当ルトキハ割賦高之十分一ヲ引去リ、之ヲ積立テ以テ非常之準備金ト為ス可シ
  但此積立金之高資本金額之弐割ニ充ル之後ハ之ヲ積立ルトモ又ハ之ヲ割賦スルトモ其時ノ決議ニ任スベシ
第四条 此準備金ハ頭取肝煎之決議ヲ以テ公債証書ニ換置クコトヲ得ベシ
第五条 若当取引所ニ損失アリテ資本金不足ヲ生スルトキハ、頭取肝煎ヨリ其顛末計算ヲ株主一同ニ公告シ、其後得ル所之利益ヲ以テ其不足ヲ補ヒ了ル迄ハ配当ヲ止ムルコトアルベシ
  第十三章
    報告並検査之事
第一条 公債証書株式等日々之建相場ハ之レヲ取引所ニ掲示スベシ
第二条 頭取肝煎ハ取引所之簿記ヲ明瞭ニシ、日表月表年表ヲ製シ毎月及毎半季ニ於テ之ヲ大蔵省ニ申報スベシ、故ニ各株主之検閲ヲ望ムトキハ何時ニテモ差支ナク開示ス可シ
  第十四章
    印章及ヒ簿記日表記録等之事
第一条 取引所ニ用ユル印章ハ左ノ各顆ノ如シ
   ○印影記載ナシ
第二条 取引所之印章並頭取以下諸役員之印章ハ其印鑑ヲ大蔵省ニ差出シ、改刻スルトキハ時々之ヲ申陳スベシ
第三条 取引所之簿記日表其他之計算書類ハ極メテ精確簡明之法ヲ要スルヲ以テ別ニ記程表式ヲ定メ、其主任者ヲシテ一切之ヲ遂行セシ
 - 第13巻 p.272 -ページ画像 
ムヘシ
第四条 取引所之定款申合規則及其他之規程、肝煎撰挙、社中集会等之諸件ハ一切之ヲ記録シ、頭取肝煎記名調印シテ以テ後日之証据参観ニ備フベシ
第五条 官府ニ対スル諸願届伺又ハ官私ニ対スル証書約条書往復文書等ニ至ル迄当取引所之称号ヲ用ヒ、社印ヲ押シ、頭取肝煎之中ニテ之ニ記名調印スベシ
  第十五章
    規則改正之事
第一条 此定款ハ株主ノ衆議ニ依リ大蔵省ノ許可ヲ得テ之ヲ増減更正スルコトアルベシ
右之条々ヲ取極メタル証拠トシテ各姓名ヲ記シ調印致シ候也
  明治十年十二月廿六日
                      深川亮蔵
                      渋沢栄一
                      三井養之助
                      三井武之助
                      益田孝
                      三野村利助
                      小室信夫
                      木村正幹
                      不在ニ付代印 益田孝
                      小松彰
                      福地源一郎
                      渋沢喜作
                      不在ニ付代印 渋沢栄一


自明治十一年至同廿六年 書類其一(DK130028k-0007)
第13巻 p.272-276 ページ画像

自明治十一年至同廿六年 書類其一   (大阪株式取引所所蔵)
    東京株式取引所申合規則
 明治 年 月 日大蔵省之允准ヲ得爰ニ株式取引所ヲ設立シタルニ付、売買上緊要之事項ニ於テ総員確守スベキ規程ヲ議定シタル条々左ノ如シ
  第一款
    売買並約定之事
第一条 当取引所之売買ハ秩録新公債証書及諸株式トモ額面百円ヲ以テ切手一枚ト定メ、一枚以上何枚ニテモ売買約定ヲ為スコトヲ得可シ
  但其実価現ニ五十円未満ノモノ(旧公債証書ノ類)ハ数箇ヲ併セ凡ソ百円ニ当ルヲ以テ切手一枚ト定ムベシ
第二条 定期売買之約定ハ毎月末之日十二月ハ二十五日ヲ以テ仕切日ト定メテ其期限ハ三仕切即チ三ケ月ヲ踰ヘサルベシ
第三条 売買スル公債証書及株式ハ東京府内ニ存在スルモノヲ以テ基本ト為スト雖モ、第七款第四条ノ手続ニ依リ、各地ニ在ルモノモ亦同一ノ取引約定ヲ為サシム可シ
第四条 株式取引ノ代金ハ日本政府ニ於テ制定セラレタル通用貨幣ニ
 - 第13巻 p.273 -ページ画像 
限ルベシ
第五条 当日之売買ハ本場限リ帖入トシテ本場引後ノ売買ハ翌日ノ本場ニテ帳入ト定ムベシ
  但定期又ハ現場とも帳入勘定ハ相対取組直段ヲ以テスベシ
第六条 約定期限内甲ヨリ乙ニ売リシ株式ヲ乙ヨリ甲ニ買戻シ、又甲ノ乙ヨリ買ヒシ株式ヲ甲ヨリ丙ニ売渡ストキハ其時々売買授受ノ手続ヲ了シ損益決算ヲ為スベシ、而シテ其期日マデ解約セサル分ハ期限ニ至リ必ス其受渡ヲ為スベシ
  第二款
    立会刻限並休日之事
第一条 当取引所営業之時間ハ毎日午前八時ヨリ午後五時マテト定メ左ノ如ク区別ス可シ
  朝場 午前第八時立会
  本場 午後第一時立会
  引後 本場立会畢リタル後午後第五時マテ
  但談合相場ハ其日本場売買直段之平均ヲ以テ掲示スシ
第二条 立会刻限ハ日之長短又ハ金銀出納之便宜等ニ由リ伸縮スルコトアルベシ
第三条 休業ハ連月日曜日並定式之祝日祭日ニ限ルベシ
第四条 臨時之休会又ハ定例之休暇ヲ変更スルトキハ時々之ヲ掲示スベシ
  第三款
    売買証拠金之事
第一条 売買双方ヨリ差入ベキ証拠金ハ左之四抹ニ定メ毎日定刻之カ出納ヲ為スベシ
  第一本証拠金分テ左之二種トス
   一 実価五十円以上七十五円未満之モノハ 三円
   一 実価七十五円以上ノモノハ      五円
  但本日売買高切手拾枚マテハ翌日正午十二時ヲ限リ之ヲ差入ベシ
  第二半証拠金  本証拠金之半額
  但連日之売買差引切手十枚以内ハ差入ルニ及ハス、十枚以外之分ハ即日午後四時マテニ之ヲ差入ル可シ
  第三追証拠金  本証拠金ノ半額
  但売買約定直段ヨリ、本証拠金ノ半数ニ当ル相場之昂低アルトキハ、其損方ヨリ此割合ヲ以テ幾回ニテモ追証拠金トシテ翌日正午十二時マテニ之ヲ差入ベシ、且其日之相場ニ荒高下アリテ実価七十五円以上ノモノニ四円、同以上ノモノニ二円マテノ昂低ヲ生スルトキハ其損方ヨリハ此追証拠金ヲ即日午後四時マテニ差入ベシ尤此追証拠金ハ相場其元直段ニ復スルトキハ亦之ヲ差戻スベシ
  第四増証拠金  本証拠金ト同額
  但約定期日前十日ニ至レハ前ニ売買取結アル枚数ニ対シ之ヲ差入ベシ
第二条 相場非常ノ昂低アルカ又ハ仲買人中不穏当之売買ヲ為スト認ムルトキハ頭取肝煎ハ決議之上特ニ増証拠金ヲ差入レシムルコトア
 - 第13巻 p.274 -ページ画像 
ルベシ
  但此増証拠金ハ頭取肝煎ニテ相当ト思量スル高ヲ定メ即日之ヲ差入シムベシ
第三条 仕切期限前十日内ニ於テ新タニ売買約定ヲ為ス者ハ、本証拠金並同額之増証拠金ヲ一時ニ差入ベシ
  第四款
    手数料並仲買口銭之事
第一条 当取引所定期売買之手数料ハ当分之内株式額面百円即切手一枚ニ四銭ト定ム可シ
第二条 現場ニテ売買ヲ為シ証拠金ヲ差入サル前ニ売買戻シヲ為シタル手数料ハ額面百円即切手一枚ニ当ル高ニ付弐銭ト定ムベシ
第三条 現物直取引之手数料ハ額面百円即切手一枚ニ当ル高ニ付弐銭ト定ムベシ
第四条 仲買口銭ハ其仲買人ト依頼人ト之示談ニ任スト雖トモ取引所ニ領収スル手数料ニ応シ之ヲ取極メ前以テ肝煎ニ申出テ承認ヲ受クベシ
第五条 此手数料並口銭ハ決算之時ニ至リ売買取引ニ関スル他之債主ニ先タツテ之ヲ収受スルコトヲ得ベシ
  第五款
    仲買人心得方之事
第一条 仲買人等既ニ売買ヲ為シ畢ラハ其約定高及直段之相違等之レナキ様注意スベキハ勿論ニ付、必ス銘々之手帳ト取引所之帖記トヲ引合セタル上退場スベシ、若シ之ヲ怠リ後ニ苦情ヲ申出ルトモ一切取上ケサルベシ
第二条 仲買人ハ他人之依頼ヲ受ケ売買ヲ為スニ当リ其本人ヲシテ取引所ニ定メタル規則ヲ熟知セシメ、他時差縺レ之生セサル様注意スベシ
  第六款
    証拠金預リ切手ノ事
第一条 当取引所ヨリ売買人ニ渡スベキ証拠金ノ額ハ切手ハ都テ其約定ヲ為シタル仲買人ノ名宛タルベシ
  但此切手ヲ抵当トシテ金銭之融通ヲ為スコトヲ許サス
第二条 証拠金預リ切手ハ売買決算之節必ス取引所ニ返付スベシ、若シ此切手仲買人手元ニテ紛失セハ速ニ取引所ニ届ケ出ツベシ、取引所ニ於テハ其趣ヲ詳記シテ掲示ヲ為シ置キ約定ノ期限ニ至リ尚発見セサルトキハ、仮令後日発行スルトモ反古タル旨之証書ヲ取リタル上決算出納ヲ為スベシ
  第七款
    定期売買受渡之事
第一条 定期約定之公債証書及株式ト通貨トノ受渡期日ハ毎月末ニ於テシ、十二月ハ二十五日ヲ以テスベシ
第二条 売買双方ハ右期日之正午十二時ヲ限リトシ、売方ハ約定ノ公債証書又ハ株式之皆高、買方ハ約定直段ニ応スル代金之皆高ヲ取引所ニ差出スベシ
 - 第13巻 p.275 -ページ画像 
第三条 取引所ハ期日ニ於テ売買双方ヨリ差出シタル公債証書又ハ株式ト代金トヲ預リ、即日役員立会ニテ其受渡ヲ為サシムベシ
第四条 官庁並諸会社之成規ニ於テ公債証書株式等ノ書替ヲ停止シタル時間ニ取結フ現場取引ハ、其売人ヨリ買方之相当ト思量セル即取引所ニ成例アル文体之利子割賦金等請取代理之委任状及公債証書株式書替委任状並諸会社之成規ヲ践ミタル手続書類ヲ添テ之ヲ取引所ニ差出スベシ、其定期約定ニシテ書換停止限内期日之至ルモノモ亦同様之手続タルベシ
  第八款
    臨時休会之事
第一条 当取引所非常之変災ニ罹ラハ七日以内ニ仮取引所ヲ設ケ接続売買ヲ為サシムベシ
第二条 右事故ニ由リテ休業スルトモ日数七日以内ハ(休暇日ヲ加算ス)休業前之取組ニ接続シテ売買スベシ、万一八日以外ニ至ルトキハ既ニ売買約定ヲ為セル高ニ対シ本証拠金同額之増証拠金ノ双方ヨリ差入レ置カシムベシ
  但休業中双方之示談ニテ売買戻シヲ為スハ妨ナシト雖トモ必ス取引所之承認ヲ受クベシ
  第九款
    証拠金差入方違約処分之事
第一条 売買主ニ於テ若シ定期之諸証拠金ヲ怠リ定刻ニ差入サルモノハ之ヲ違約人ト看做シ、肝煎ハ次ノ二十四時間ニ他ノ仲買人ヲシテ売方之違約ナレハ其株式高ヲ取引所之市場ニ於テ買求メサセ、又買方之違約ナレハ之ヲ市場ニ於テ売払ハセ、其不足金並夫カ為メ蒙リタル相手方之損失ヲ合セ其者之身元金ヲ以テ之ヲ償ハセ尚相手方満足セサル時ハ被損者ヨリ違約人ヲ相手取公裁ヲ仰クベシ、此者前キニ既ニ証拠金ヲ差入アル定期約定アレハ都テ之ヲ上文之手続ニ付シ其相手方ヘ対シ前之諸証拠金並身元金ヲ併セテ其償ヲ為サシメ、尚余金アレハ未タ証拠金ヲ差入レザル相手方ヘ配賦スベシ
  但仲買人半証拠金ヲ差入ルニ及ハサル株式高ヲ一日之内ニ幾度モ売買ナシ自然損金ヲ生シ之ヲ差入レサルモノハ身元金限リ相手方ヘ配賦シ、之ヲ満足セサルモノハ本条ノ如クナルベシ、又違約人之兼テ差入アル証拠金ニテ相手方ノ損害ヲ償ヒ余金アレハ差戻シ身元金ハ取引所ニ没入スベシ、又半証拠金ヲ差入ベキ当日ニ之ヲ差入スシテ違約人トナリタルトキ取引所之市場時間相後レ本条之措置ヲ為シ難キ実況ナルトキハ翌日ノ本場マテニ之ヲ為サシメ、其計算上若シ相手方之損毛トナラスシテ本人ニ利金アルトキハ之ヲ返付スベシト雖トモ其者ハ違約人ノ処分ニ及フベシ
  第十款
    期日株式通貨受渡違約処分之事
第一条 定期受渡定刻ニ至リ其株式通過之差出方ヲ怠リ違約人トナリタルトキハ其相手方ニ於テ之カ為メ失ヒタル利益ト蒙リタル損耗トヲ合算シ其者之証拠金身元金ヲ以テ償ハシメタル上之ヲ除名シ且身元金残余アレハ没収スベシ、若シ相手方ニ於テ満足セサルアレハ公
 - 第13巻 p.276 -ページ画像 
裁ヲ仰クベシ、又之ヲ双方ニ於テ怠ルトキハ其約定ハ効ナキモノト為スト雖トモ共ニ之ヲ除名シテ其身元金ハ没収スベシ
  但仲買人ハ売買約定ナセシ時依頼人ヲ取引所ヘ届ケ置ベシ、現物授受之際ニ至リ違約ナセハ前以テ届ナキ分ハ一般其仲買人ヲ違約人トナス、尤モ依頼人ヲ届置タル分ハ区別シテ受渡ヲ為サシム可シ
  第十一章《(款)》
    直取引違約処分之事
第一条 現物直取引ハ其日之朝場ニ取組タル売買高ヲ午後二時限リ本場立会之節取組タル売買高ヲ翌日之午後二時限リニ受渡ヲ為スベシ若シ此定刻ヲ延滞スル者ハ額面百円即切手一枚ニ当ルモノニ付金五十銭ヲ違約人ヨリ取立相手方ニ渡ス可シ
  但此償金ヲ差出サヽルモノハ身元金ヲ没入シテ其償ニ充ツベシ
  第十二款
    私約売買処分之事
第一条 仲買人相対ヲ以テ取引所之売買帳ニ記載セス私ニ約定ヲ結ヒ発顕シタル時ハ其者ヲ除名シ且身元金ヲ没収スベシ、若シ又前ニ定期約定売買アルトキハ第九款第一条違約人之例ヲ以テ処分シタル上身元金之残余アレハ之レヲ没収スベシ
  第十三款
    規則遺漏之件及増減更正之事
第一条 此申合規則ニ掲載スル条件実際不便ナルコトアルカ又ハ遺漏之件アルトキハ肝煎之衆議ヲ以テ之ヲ補正シ官之許可ヲ得テ施行スベシ
右取極メタル申合規則ハ当取引所営業上何レモ確守スベキ証拠トシテ株主並仲買一同記名調印致シ候也
  明治十年十二月廿六日
                      深川亮蔵
                      渋沢栄一
                      三井養之助
                      三井武之助
                      益田孝
                      三野村利助
                      小室信夫
                      木村正幹
                      不在ニ付代印 益田孝
                      小松彰
                      福地源一郎
                      渋沢喜作
                      不在ニ付代印 渋沢栄一


東京株式取引所第一期営業報告 第一三五―一三六頁明治一七年四月(DK130028k-0008)
第13巻 p.276-277 ページ画像

東京株式取引所第一期営業報告 第一三五―一三六頁明治一七年四月
    第三款 定款及ヒ申合規則之事
○上略
 - 第13巻 p.277 -ページ画像 
此定款及ヒ申合規則ハ条例定ムル所ニ準拠シテ之ヲ編纂シタルモ其条項全ク条例ト異ナル処ナキ能ハサルモノアリ、蓋シ当時ノ条例ハ仲買人ノ責任ヲ重クスルコト其主眼タリシヲ以テ身元金ヲ五百円トシ証拠金ヲ売買条約ノ実価四分ノ一トシ、入社復社ノ事ヨリ手代等ノ書ニ至ルマテ頗ル厳格ヲ旨トセラレタリト雖モ当時ノ事情仲買人ノ責任ヲ軽クスルニ非レハ取引所ノ成立期ス可カラサルヲ信ジ、乃チ身元金ヲ三百円(定款第七章第四条)トナシ、証拠金ヲ売買条約高ノ凡ソ五分五朱弱(申合規則第三款第一条)トナシタリ、是レ右定款及ヒ申合規則中尤モ注目ス可キ条款ナリ、又条例ニハ官許ヲ得テ創立シタル商業工業ノ株式又ハ証券トアレトモ是亦未タ売買スルノ時運ニ到着セサルモノト察シタレハ定款中殊ニ証券売買ノ事ヲ掲ケサリシ是亦注目ス可キ事ナリトス、其他定款及ヒ申合規則中条例ニ適応セサルモノ少ナカラス、故ニ此定款及ヒ申合規則ハ遂ニ准可ヲ得ス、翌十一年条例ヲ改正セラルヽニ及ヒ大蔵省ハ五月七日ヲ以テ此稿案ヲ却下シ改正条例ニ准拠シテ改メテ開申ス可キ旨ヲ達セラル○下略


青淵回顧録 上巻・第四七七―四七八頁〔昭和二年八月〕(DK130028k-0009)
第13巻 p.277 ページ画像

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冊子版の『渋沢栄一伝記資料』をご参照ください。

自明治十一年至同四十年 沿革及統計(東京株式取引所編) 第六頁〔明治四一年一一月〕(DK130028k-0010)
第13巻 p.277-278 ページ画像

自明治十一年至同四十年 沿革及統計(東京株式取引所編)
                           第六頁〔明治四一年一一月〕
    東京株式取引所ノ起原及沿革
○上略
 - 第13巻 p.278 -ページ画像 
斯クテ明治十年ノ交ニ迨ヒ国立銀行続々各地ニ起リ従テ銀行紙幣ノ発行ニ対スル保証用トシテ国債証券ノ需求漸ク多キヲ加ヘ、一般社会モ亦之ヲ需求スルコト頻リナルヲ以テ其売買日一日ヨリ増加セリ、是ニ於テ世間初メテ取引ノ公開市場ナキカ為メ其売買上大ニ不便ヲ感スルモノアルニ至レリ
然ルニ明治七年十月発布ノ株式取引所条例ハ前述ノ如ク実地ニ適切ナラサルノ嫌アリシヲ以テ渋沢栄一・小松彰・益田孝・小室信夫・三野村利助・深川亮蔵・渋沢喜作等ノ諸氏相謀リテ一方ニハ取引所条例改正ノ意見ヲ具シテ当局者ノ採択ヲ請ヒ、他ノ一方ニハ大ニ同志ヲ四方ニ募集シタルニ天下翕然トシテ同意ヲ表スル者多シ、是ニ於テ乎資本金弐拾万円ヲ以テ株式取引所創立ノ議全ク調ヒ明治十年十二月二十六日ヲ以テ創立願書ヲ時ノ大蔵卿ニ進達シ、同二十八日創立許可ノ命ニ接シタリ、但シ定款及申合規則ハ同時ニ之ヲ准許セスシテ他日何等ノ指令ヲ与フヘキ旨ヲ達セラレタリ


明治商工史 (渋沢栄一撰) 第一五三―一五五頁〔明治四四年三月〕(DK130028k-0011)
第13巻 p.278-279 ページ画像

明治商工史 (渋沢栄一撰) 第一五三―一五五頁〔明治四四年三月〕
○第十一章 株式取引所
    三 株式取引所の発達(東京商業会議所頭取東京株式取引所理事長 中野武営)
 社会の事物は概ね実際の必要より起る、豈に特り株式取引所のみ此の事例に背くことを得んや、今や本邦株式取引所の数、通計四、東京株式取引所は実に之れが嚆矢にして、其の創立明治十一年五月に在り是れより先き明治七年我が政府は初めて株式取引条例を制定し、其の第一条第一節に於て商業の為めに緊要なりとする地に於て、株式取引所を創立することを許可し、同第二節に於て日本政府より発行したる或は将来発行すべき公債証書、其の他官許を得て創立したる商業、工業の株式は都て此の条例を遵奉し、株式取引所に於て公に売買することを得べき旨、公布せられたり、然るに該条例たる素と外国取引所の規則を取捨参酌して定めたるものなるが故当時の国情に適せざる条項多々之れあり、就中証拠金を売買約定実価の四分の一として、厳然之れが制限を設けたるが如きは最も実情に適せざるものなり、今試に其の法文を挙示せんに、条例第二十六条第二節に曰く。
 証拠金ハ約定高ヲ当日ノ相場ニ見合実価ノ二割五分宛四分ノ一ヲ売主買主ノ双方ヨリ差入ルベシ、尤モ相場ノ高低ニ応ジ数度ニテモ増証拠金ノ追差ヲ支配人ヨリ相達シ常ニ二割五分宛ノ高ヲ減ゼシメサルベシ、例ヘバ
  某鉄道株手形     百株一株百円
   此原価       壱万円
  約定相場       壱株ニ付九十六円
   此実価       百株ニ付九千六百円
  此証拠金
   売主差入高     弐千四百円
   買主差入高     弐千四百円
 豈に愕くべき制限ならずや、蓋し此の一事は、当時の株式取引条例が、未だ完備を得ざる一例として示したるに過ぎず、其の他条文に就
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て仔細に吟味する時は、幾多の欠点存すること勿論なり、是の故に当時東京府下の紳商中、該条例に遵拠して株式取引所を新設せんことを企画したるものありと雖も、時機未だ熟せざるに尚且つ条例の不備なりしが為め、竟に成功を告ぐること能はざりき、既にして明治九年八月銀行条例の改正あり、尋で翌十年に及び国立銀行各地に続起し、従て銀行紙幣の発行に対する保証用として公債証書の需求漸く繁多なるのみならず、一般社会も亦頻りに公債を需求するに至りたるを以て、其の売買日一日に増加せり、是に於て乎世人始めて有価証券売買取引の公開市場なきが為め、実際上大に不便を感ずるに至れり。
 斯の如く社会の趨勢は公開の取引市場を要するに至りたるも、他の一方には取引条例の不備なるが為め、強て其の下に立ちて取引所を設立するも、実際上何等の便益を社会に与ふる能はざる嫌あり、是に於て乎渋沢栄一・同喜作・福地源一郎・木村正幹・深川亮蔵・小松彰・益田孝・小室信夫・三井養之助・同武之助・三野村利助の諸氏相謀りて、一方には取引条例改正の意見を具して当局者の採択を請ひ、他の一方に向ては取引所設立の時機既に熟せるを察し、同志を募集したるに賛同を表する者多し、斯くて株式取引所創立の議全く調うて、其の創立願書を時の大蔵卿大隈重信氏に提出したるは実に明治十年二月二十六日《(十二月)》にして、越えて同二十八日始めて創立許可の命に接したり。



〔参考〕日本取引所論 (田中太七郎著) 第一一二―一一五頁〔明治四四年七月〕(DK130028k-0012)
第13巻 p.279-280 ページ画像

日本取引所論 (田中太七郎著) 第一一二―一一五頁〔明治四四年七月〕
○第二章 沿革
    第三十三節 株式取引条例ノ改正
曩ニ株式取引所条例ノ発布セラレタルハ明治七年十月ナリシカ、其発布ノ目的ハ主トシテ当時限月米ノ売買取引ニ就キ種々ノ弊害ヲ暴露シタルヲ以テ、該条例ニ依リ其弊害ヲ芟除シ改善ヲ企図スルニアリシヤ明ナリト雖モ、亦一二ハ将来ニ於ケル公債ノ発行及ヒ株式組織ノ会社銀行ノ勃興スヘキコトヲ予期シ、延イテ株式取引所ノ設立ヲ促サントスルノ趣意ニ出テタルヤ言ヲ須ヒス、而カモ時運尚ホ早ク加フルニ該条例ハ欧米取引所制度ニ模傚シタルモノニシテ所謂会員組織ノ取引所ナレハ第一我邦経済界進歩ノ程度ニ合ハス、相場会所ノ習慣ニ反シ実際ニ適セサル条項多カリシ為メ、当時全国相場会所ノ模範タリシ堂島米会所ノ如キモ到底其実際ニ行ハレ難キ事情ヲ具申シテ再三実行ノ延期ヲ請願シ、政府ニ於テモ竟ニ其不適当ナル事ヲ認メテ明治九年八月更ニ米商会所条例ヲ制定発布スルニ至リシ事ハ、既ニ詳述スル所ノ如シ、蓋シ該条例発布ノ当時ニ在テ株式会社ノ存在セルモノハ、全国中僅々数個ノ国立銀行在ルノミ、又公債ノ如キモ僅カニ新公債旧公債ノ二種ニ過キサレハ素ヨリ株式取引所設置ノ必要ナカリシト雖モ、其後明治八年頃ヨリ巨額ノ秩禄公債及ヒ金禄公債ノ発行アリ、尋テ国立銀行条例ノ改正ニ依リ全国各地ニ百五十有余ノ国立銀行ノ設立ヲ見ルニ至リシヲ以テ、政府ハ当時民間ノ有力者タル渋沢、五代等ノ諸氏ヲ説キ切ニ株式取引所ノ設立ヲ勧誘シタリシト雖モ、前述ノ如ク取引所条例ハ到底我邦ノ実情ニ適セサルヲ以テ容易ニ之ヲ設立スルノ運ヒニ至
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ラサリキ
是ニ於テカ明治十一年五月、政府ハ株式取引所条例ヲ根底ヨリ改正セリ、然ルニ該改正条例ハ曩ニ発布シタル米商会所条例ニ模傚シタルモノナレハ、取引所ノ組織及ヒ売買取引ノ方法トモ総テ米商会所ノソレト同一ニシテ所謂株式組織ヲ以テ成リ、其ノ当業者ニ取リテ有利ナルコトハ米商会所ノ実例ニ徴シテ明白ナリシカハ有志者ハ喜ンテ創立ノ事ニ従ヒ、忽チニシテ東京・大阪・横浜ノ三ケ所ニ株式取引所ノ設立ヲ見ルニ至レリ、即チ東京ニ在テハ渋沢栄一氏等ノ発起ニテ資本金弐拾万円ヲ以テ設立セラレ十一年五月《(六)》ヲ以テ開業シ、大阪ハ五代友厚氏等ノ発起ニ係リ同シク資本金弐拾万円ヲ以テ同年八月開業シ、横浜ハ銀貨ノ売買取引ヲ主タル目的トシ資本金拾万円ヲ以テ少シク後レテ設立セラレタリ
株式取引所ノ組織其他ノ規定ハ大体ニ於テ米商会所ノソレト同一ナレトモ、今其少シク異ナル点ヲ挙レハ(一)有価証券ハ米穀ノ如ク標準売買ニアラスシテ総テ銘柄売買ナルカ故ニ代用品受渡ノ制ナキコト、(二)取引所ニ対スル課税ハ最初ハ米商会所ト同シク収入ノ十分ノ四ヲ徴セラレタレトモ間モナク十分ノ一ニ減額セラレタルコト、(三)監督庁ハ米商会所ハ最初ハ内務省ニ属シ後チ大蔵省常平局ニ移サレタレトモ、株式取引所ハ最初ヨリ大蔵省銀行局ノ管理ニ属セシコト(後チ双方トモ農商務省ニ移サル)等ナリキ
○下略