デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

3章 商工業
25節 取引所
1款 東京株式取引所
■綱文

第13巻 p.495-502(DK130038k) ページ画像

明治20年5月14日(1887年)

是日取引所条例発布セラル。依ツテ栄一、渋沢喜作・原六郎・大倉喜八郎・安田善次郎・三野村利助・西村虎四郎・川崎八右衛門等ト共ニ発起人トナリ、府下有力商賈ニ対シ、十七日坂本町銀行集会所ニ取引所創立協議会ヲ開催スベキ旨、招請状ヲ発ス。


■資料

法令全書 明治二十年・第四四―四八頁 【朕取引所条例ヲ裁可シ…】(DK130038k-0001)
第13巻 p.495-498 ページ画像

法令全書 明治二十年・第四四―四八頁
朕取引所条例ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
  御名御璽
    明治二十年五月十四日
             内閣総理大臣 伯爵 伊藤博文
             農商務大臣  伯爵 山県有朋

勅令第十一号
  取引所条例
    第一章 総則
第一条 取引所ハ商業上ノ取引ヲ便利ニシ市価ヲ平準ニシ商業上公正真実ノ風ヲ養成シ商業上ノ慣習ヲ統一維持シ須要ノ報道ヲ伝播シ及取引所会員ノ間ニ生スル争論ヲ仲裁スルヲ以テ目的トシ、商業上便宜必要ノ地方ニ於テ其地方ノ商人農商務大臣ノ特許ヲ得テ設立スルモノトス
第二条 取引所ニ於テ売買取引スヘキ物件ハ重要ノ商品公債証書証券株式等ニシテ創立員又ハ取引所ノ出願ニ依リ農商務大臣ノ認可シタルモノニ限ル
第三条 取引所ヲ設立スルニハ東京大阪ニ於テハ三十人以上、其他ノ地方ニ於テハ十五人以上、会員タルヲ得ヘキ者創立員トナリ、地方官庁ヲ経テ農商務大臣ニ願出ヘシ
 - 第13巻 p.496 -ページ画像 
第四条 取引所ハ其売買取引スヘキ物件ニ就キ之ヲ各部ニ分チ、又ハ数物件ヲ合セテ一部トシ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第五条 取引所ノ創立ニ係ル費用及之ヲ維持スルニ必要ナル費用ハ会員之ヲ負担スヘシ
 取引所ハ前項ノ費用ヲ補充スル為メ売買取引ニ就キ相当ノ手数料ヲ領収スルコトヲ得、其手数料ノ割合ハ役員之ヲ議定シテ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
 前項ノ手数料ハ之ヲ分配スルヲ得サルモノトス
第六条 農商務大臣ハ取引所ヲ監督シ地方長官ヲシテ之ヲ監視セシメ其売買取引法律命令ニ違反シ或ハ公衆ノ安寧ニ妨害アリト認ムルトキハ、其全部又ハ幾部ヲ停止若クハ禁止シ其売買取引ニ関渉シタル役員ヲ罷負《(免カ)》シ仲買人ノ営業ヲ停止若クハ禁止シ及会員ヲ一時若クハ永久ニ除名スルコトヲ得
第七条 農商務大臣ハ必要ト認ムルトキハ取引所ノ規約ヲ改正セシメ又ハ決議及処分ヲ停止禁止若クハ取消スコトヲ得
第八条 農商務大臣ハ必要ト認ムルトキハ取引所ニ対シ委員ヲ命シ其一般ノ事務ヲ監察シ取引所ニ関スル法律命令ノ施行ヲ監視シ且其役員ノ集会ヲ整理セシムルコトヲ得
第九条 取引所ハ毎日一定ノ時間ニ於テ商業上ノ集会ヲ開キ其時間外ハ売買取引ヲ為スコトヲ許サス
第十条 本条例施行ニ関スル細則ハ農商務大臣之ヲ定ム
第十一条 取引所ノ売買取引ニ関スル税則ハ別ニ之ヲ定ム
    第二章 会員
第十二条 会員タルコトヲ得ル者ハ其取引所所在ノ地ニ居住スル商人ニシテ会員タルノ義務ヲ尽スコトヲ得ル者ニ限ル、会員ニ非サレハ取引所ニ集会シ売買取引ヲ為スコトヲ得ス
第十三条 会員タル者ハ身元保証金三百円以上三千円以下ヲ差出スコトヲ要ス
第十四条 左ニ掲クル者ハ会員タルコトヲ得ス
 一 婦女及未丁年者
    但婦女ノ代理人未丁年者ノ後見人ハ会員タルコトヲ得
 二 公権剥奪若クハ停止中ノ者
 三 身代限ノ処分ヲ受ケ未タ弁償ノ義務ヲ終ヘサル者
 四 第六条第十五条ニ依リ除名セラレタル者
第十五条 会員ニシテ不当ノ挙動ヲ為シ為メニ取引所内ニ於テ紛擾争論ヲ醸スカ法律命令及規約ニ違反シタル不正ノ契約ヲ為スカ又ハ故意ニ其商業上ノ責任ヲ果サヽルトキハ、役員ノ決議ヲ以テ百円以内ノ過怠金ヲ科シ、一時若クハ永久ニ之ヲ除名スルコトヲ得
    第三章 役員
第十六条 取引所ニ役員ヲ置クコト左ノ如シ
 一 理事長
 一 理事
 一 常置委員
第十七条 役員ハ一箇年ヲ以テ任期トシ会員中ヨリ投票ヲ以テ選挙シ
 - 第13巻 p.497 -ページ画像 
農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ、但理事長及理事ハ会員ノ決議ニ由リ会員外ヨリ選挙スルコトヲ得
 役員任期中ト雖モ其職務ヲ尽サヽルカ又ハ不正ノ所為アルトキハ、会員ノ決議ヲ以テ農商務大臣ノ認可ヲ受ケ退職セシムルコトヲ得
第十八条 理事長及理事ハ取引所ニ於テ売買取引ヲ為スコトヲ許サス
第十九条 役員ハ法律命令ノ範囲内ニ於テ、農商務大臣ノ認可ヲ経、其業務ニ関シ規約ヲ定ムルコトヲ得
    第四章 仲買人
第二十条 取引所ニ仲買人ヲ置ク、仲買人ハ他人ノ委托ニ由リ売買取引ヲ為スヲ以テ業トシ、自己ノ為メニ売買取引ヲ為スコトヲ得ス
第二十一条 仲買人ノ営業ハ一部ニ限リ、数部ヲ兼ヌルコトヲ得ス
第二十二条 仲買人タラント欲スル者ハ、農商務大臣ノ免許ヲ受クヘシ、之ヲ受ケタルトキハ免許料金五十円ヲ納ムヘシ
第二十三条 仲買人タルヘキ者ハ会員ニシテ営業保証金一千円以上二万円以下ヲ差出スコトヲ要ス
第二十四条 仲買人ニシテ第十五条ニ掲クル所為アルトキハ、役員ノ決議ヲ以テ、二百円以内ノ過怠金ヲ科シ、其営業ヲ停止若クハ禁止スルコトヲ得、但営業ヲ禁止スルトキハ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第二十五条 仲買人ハ自ラ取引所ノ売買取引ニ従事スヘシ、代理人又ハ手代ヲ使用スルコトヲ得ス
第二十六条 仲買人口銭ノ額ハ役員会議ニ於テ議決シ、農商務大臣ノ認可ヲ得テ之ヲ定ム
    第五章 売買取引
第二十七条 取引所ニ於テ為ス所ノ売買取引ハ直取引及定期取引ノ二様トス、其方法ハ農商務省令及取引所ノ規約ヲ以テ之ヲ定ム
第二十八条 取引所ニ於テ売買取引スヘキ物件ノ種類ニヨリ、農商務大臣ハ、取引所外ニ於テ取引所ノ売買取引ト同一又ハ類似ノ方法ヲ以テ売買取引ヲ為スヲ禁止スルコト得
第二十九条 取引所ニ於テ売買取引シタル物件ノ相場ヲ以テ公定相場トス
    第六章 仲裁
第三十条 取引所ニ於テ為シタル売買取引ニ関シ争論ヲ生スルトキハ役員ニ申告シテ仲裁ヲ受クヘシ、但代言人ヲ出スコトヲ得ス
第三十一条 前条ノ場合ニ於テハ常置委員ノ多数決ヲ以テ其争論ヲ仲裁スヘシ
第三十二条 法律上ノ見解ニ関スルモノヲ除クノ外、前条ノ仲裁ニ対シテ裁判所ニ上訴スルコトヲ得ス
    第七章 罰則
第三十三条 第五条第三項・第九条・第十八条・第二十条及第二十五条ヲ犯シ、又ハ第二十七条ニ依リ農商務省令ヲ以テ定メタル売買取引法ニ違ヒ売買取引ヲ為シタル者ハ、二十円以上五百円以下ノ罰金ニ処ス
第三十四条 第二十八条ニ依リ農商務大臣ノ禁止シタル売買取引ヲ為
 - 第13巻 p.498 -ページ画像 
シ又ハ第二十九条ノ公定相場ヲ偽リタル者ハ、十円以上二百円以下ノ罰金ニ処ス
    附則
本条例ハ明治二十年九月一日ヨリ施行ス、但米商会所条例及株式取引所条例ハ米商会所及株式取引所ノ営業満期ヲ待ツテ廃止スルモノトス


時事新報 第一五八九号〔明治二〇年五月一六日〕 取引所条例の発布(DK130038k-0002)
第13巻 p.498 ページ画像

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中外物価新報 第一五三三号〔明二〇年五月一五日〕 取引所設立願の下相談(DK130038k-0003)
第13巻 p.498 ページ画像

中外物価新報 第一五三三号〔明二〇年五月一五日〕
○取引所設立願の下相談 府下の紳商にて昨年来其筋へブールス設立の事を主張されたる人々ハ、取引所条例の発布も近きにあるべければ愈々発令となりたらハ同条例を遵奉して早々取引所設立の事を出願せんとて、特に指名を以て府下の重立たる商業家を、明後十七日午後一時より銀行集会所へ招集し、会員又ハ仲買人に加入するや否やの下相談を遂けらるゝ由


朝野新聞 第四七一七号 〔明治二〇年五月一五日〕 ブールス設立願(DK130038k-0004)
第13巻 p.498 ページ画像

朝野新聞 第四七一七号〔明治二〇年五月一五日〕
○ブールス設立願 久しく世間の一大問題となり居たる夫のブールスは愈々設立することに決し、一両日中には其条例を発布せらるべしとのことなるが、米商会所及び株式取引所の株主及び仲買にて身元ある人々五十余名は、条例発布の上は之を遵奉して、ブールスの設立を願ひ出づべしと、已に連署して願書を認め居る由なれば、同条例発布の日には此願書と、予てよりブールスの設立を熱望し居れる紳商連の願書と、都合二通の願書が同時に其筋へ出るならんと云へり。
 - 第13巻 p.499 -ページ画像 



〔参考〕松方家文書 第四六号・第三四文書 【取引所条例修正案】(DK130038k-0005)
第13巻 p.499-501 ページ画像

松方家文書 第四六号・第三四文書 (大蔵省文庫所蔵)
  取引所条例修正案
    第一章 総則
第一条 取引所ハ商業上ノ取引ヲ便利ニシ市価ヲ平準ニシ商業上公正直実ノ風ヲ養成シ商業上ノ慣習ヲ統一維持シ須要ノ報道ヲ発作伝播シ及取引所会員ノ間ニ生スル争論ヲ仲裁和解スルヲ以テ目的トシ、商業上便宜必要ノ地方ニ於テ其地方ノ商人農商務大臣ノ特許ヲ得テ設立スルモノトス
第二条 取引所ニ於テ売買取引スヘキ物件ハ重要ノ商品・公債証書・証券・株式等其他創立員又ハ取引所ノ出願ニ依リ農商務大臣ノ認可シタルモノニ限ル
第三条 取引所ヲ設立スルニハ東京大阪ニ於テハ三十人以上、其他ノ地方ニ於テハ十五人以上創立員トナリ、地方官庁ヲ経テ農商務大臣ニ願出ヘシ
第四条 取引所ハ其売買取引スヘキ物件ニ就キ便宜之ヲ各部ニ分チ、又ハ数物件ヲ合セテ一部トシ、農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第五条 取引所ノ創立ニ係ル費用及之ヲ維持スルニ必要ナル歳費ハ会員及仲買人之ヲ負担スヘシ、其創立ニ係ル費用ハ一時取引所共同ノ負債ヲ起シ償却ノ方法及年限ヲ定メ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
 前項ノ費用ヲ補充スルカ為ニハ各会員及仲買人ニ賦金ヲ課シ及各売買取引所ニ就キ相当ノ手数料ヲ徴収スルコトヲ得、其賦金及手数料ノ割合ハ役員之ヲ議定シテ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第六条 農商務大臣又ハ大蔵大臣ハ取引所ノ売買取引ニ於テ法律ニ違反シ或ハ公衆ノ安寧ヲ妨害スルト認ムルトキハ之ヲ禁止又ハ停止シ其売買取引ニ関渉シタル役員会員及仲買人ヲ除名スルノ権ヲ有ス
第七条 農商務大臣又ハ司法大臣ハ取引所役員ノ議定シタル細則・決議・規程及其他命令ヲ禁止停止又ハ取消スコトヲ得
第八条 取引所ニ於テハ日曜日其他法律上ノ休日ヲ除クノ外ハ毎日一定ノ時間ニ於テ商業上ノ集会ヲ開キ、其時間前後ニ於テハ売買取引ヲ為スコトヲ許サス
    第二章 会員
第九条 取引所ニ於テ売買取引ヲ為スコトヲ得ル者ハ其取引所々在ノ地ニ居住シ取引所ニ於テ売買取引スヘキ物件ノ一種若クハ数種ノ商業ニ従事シ、免許証ヲ得会員タルノ義務ヲ尽スコトヲ得ル者ニ限ル
第十条 左ニ掲クル者ハ会員タルコトヲ得ス
 一婦女及未丁年者
   但婦女ノ代理人、未定年者ノ後見人ハ会員タルコトヲ得
 二公権剥奪若クハ停止中ノ者
 三身代限リノ処分ヲ受ケ未タ弁償ノ義務ヲ終ヘサル者
 四第十一条ニ依リ取引所ニ於テ除名セラレタル者
第十一条 取引所ノ会員ニシテ不当ノ挙動ヲ為シ為ニ取引所内ニ於テ紛擾争論ヲ醸スカ法律命令ニ反シタル不正ノ契約ヲ為スカ又ハ故意
 - 第13巻 p.500 -ページ画像 
ニ其商業上ノ責任ヲ果サヽルトキハ、役員ノ決議ヲ以テ一時若クハ永久ニ取引所ヨリ之ヲ除名スルコトヲ得
 農商務大臣ハ相当ノ理由アルトキハ前項ノ決議ヲ取消スコトヲ得
    第三章 役員
第十二条 取引所ノ最上ノ監督権ハ農商務大臣之ヲ施行シ、警察又ハ地方ニ関スル事件ニ付テハ其地方官吏之ヲ施行ス
第十三条 農商務大臣ハ臨時至当ト認ムルニ於テハ取引所ニ対シテ委員ヲ命シ其一般ノ事務ヲ監察シ取引所ニ関スル法律命令ノ施行ヲ監視シ、且其役員ノ集会ヲ整理スルノ権利義務ヲ有セシムルコトヲ得
第十四条 取引所ニ役員ヲ置クコト左ノ如シ
  一理事長
  一理事
  一常置委員
第十五条 取引所役員ハ一箇年ヲ以テ任期トシ、会員中ヨリ多数投票ヲ以テ撰挙シ農商務大臣ノ認許ヲ受クヘシ、但理事長及理事ハ会員ノ協議ニ由リ会員外ヨリ撰挙スルコトヲ得
第十六条 役員ハ其在任中取引所ニ於テ売買取引ヲ為スコトヲ許サス
第十七条 取引所ノ役員ハ法律命令ノ範囲内ニ於テ農商務大臣ノ認可ヲ経其業務ニ関シ規約及細則ヲ定ムルコトヲ得
    第四章 仲買人
第十八条 取引所ニ仲買人ヲ置ク、仲買人ハ他人ノ委託ニ由リ売買取引ヲ為スヲ以テ業トシ、自己ノ為ニ売買取引ヲ為スコトヲ得ス
第十九条 仲買人タラント欲スルモノハ農商務大臣ノ免許ヲ受クヘシ之ヲ受ケタルトキハ免許料金五拾円ヲ納ムヘシ
第二十条 仲買人タルヘキモノハ取引所会員ニシテ営業保証金三千円以上二万円以下ヲ差出スコトヲ要ス
第二十一条 左ニ掲クル者ハ取引所ノ仲買人タルコトヲ得ス
  一婦女及未成年者
  二身代限リノ処分ヲ受ケ未タ負債弁償ノ義務ヲ終ヘサル者
  三取引所会員中ヨリ除名セラレタル者
  四一年以上禁錮ノ刑ニ処セラレ放免後未タ五箇年ヲ経サル者
  五賭博犯ノ処刑ヲ受ケ放免後未タ五箇年ヲ経サル者
第二十二条 取引所ノ仲買人ニシテ必要ノ資格ヲ失ウトキ又ハ其業務ヲ怠ルトキハ仲買人タルコトヲ差止ムヘシ
第二十三条 仲買人ハ自ラ取引所ノ売買取引ニ従事シ代理人又ハ手代ヲ使用スルコトヲ得ス
第二十四条 仲買人口銭ノ額ハ各取引所役員会ニ諮詢シテ農商務大臣ノ定ムル所ニ依ル
第二十五条 取引所ノ会員ハ其売買取引ニ付仲買人ヲ使用スルヲ要セス
    第五章 売買取引
第二十六条 取引所ニ於テ為ス所ノ売買取引ハ現物直取引及定期約定取引ノ二様トス、其方法ハ農商務省令及取引所ノ規約細則ヲ以テ之ヲ定ム
 - 第13巻 p.501 -ページ画像 
第二十七条 取引所ニ於テ売買取引スヘキ物件ノ種類ニヨリ、農商務大臣ハ取引所外ニ於テ取引所ノ売買取引ト同一又ハ類似ノ方法ヲ以テ売買取引ヲ為スヲ禁スルコトヲ得
第二十八条 取引所ニ於テ売買シタル物件ニ対シテハ公定相場ヲ付スヘシ
    第六章 仲裁
第二十九条 取引所ニ於テ為シタル売買取引ニ関シ争論ヲ生スルトキハ役員ニ申告シテ仲裁和解ヲ受クヘシ、仲裁ノ取調ヲ受クルトキハ代言人ヲ出スコトヲ得ス
第三十条 前条ノ場合ニ於テハ常置委員ノ多数説ヲ以テ其争論ヲ裁決調停スヘシ
第三十一条 法律上ノ疑問ニ関スルモノヲ除クノ外前条ノ裁決ニ対シテ裁判所ニ上訴スルコトヲ得ス
    第七章 罰則
第三十二条 第八条・第十六条・第十八条及第十九条ヲ犯シタルトキ又ハ第二十六条ニ違ヒ農商務省令及取引所ノ規約ニ遵ハスシテ窃ニ売買取引ヲ為シタルトキハ二十円以上五百円以下ノ罰金ニ処ス
第三十三条 第二十七条ニ依リ農商務大臣ノ禁止シタル売買取引ヲ為シタル者ハ十円以上二百円以下ノ罰金ニ処ス
第三十四条 第二十八条ニ違ヒ公定相場ヲ偽リタル者ハ二十円以上二百円以下ノ罰金ニ処ス
    第八章 雑則
第三十五条 本条例施行ニ関スル細則ハ農商務大臣之ヲ定ム
第三十六条 本条例ハ明治二十年 月 日ヨリ施行ス、但現ニ営業年限中ノモノハ其年限ノ満ツルヲ待テ之ヲ施行ス


〔参考〕中外物価新報 第一五三三号〔明治二〇年五月一五日〕 ○ブールス説の実行将に近きに在るべし(DK130038k-0006)
第13巻 p.501-502 ページ画像

中外物価新報 第一五三三号〔明治二〇年五月一五日〕
    ○ブールス説の実行将に近きに在るべし
近来世間に喧伝せる取引所条例は既に元老院の議決を経て内閣に上申せられたれば其公布を見るも蓋し今明日の内にもあらんとの事は前号の紙上にも報道せし所なり、左れば今に及んで復び其利害を論ずるは最早無用の弁に似たる所あり、又之を弁明せざるも其商業上に便益あるは実業者の直ちに了解する処なるべしと雖も、動もすれば今尚其実施を阻礙して商業全般の発達を害し福利を傷けんと企つるものあり、是れ畢意惑《(竟)》へるの甚しきものなりと雖も、一般の実利の為めに之を黙過するに忍びず、吾輩は今最後の引導として復びブールス新設必要を弁じ、商業社会の前途に横はれる陰霧を払ひ且つ後年の記念として聊か其今日に至りたる沿革事情を略述し置かんと欲するなり
抑も我が政府の当局にブールス論の起りたる年月は果して何れの時に在りし乎吾輩の得て知る処にあらざれども、民間に於て始めて此議を唱へ現行株式組織の弊害を弁し之を改革して真に我が商業社会の機関たる効用を発揚せしむるには商業自然の取引法を円滑ならしめざるべからず、其之を為すには現行の株式組織を廃し実際の商人を結合し以てブールス組織に改正せざるべからずとは、蓋し吾輩が去る明治十八
 - 第13巻 p.502 -ページ画像 
年に唱へたるを以て嚆矢とするも亦敢て事実に相違する処なかるべしと信するなり、而して当時世人は頻りに相場会所の弊害を喋々し、何とかして之を善良の組織に変革し商業上に有用の機関たらしむべしとは寔に一般の希望なりしも、未だ吾社の説に首を傾くるもの乏しかりしかば、之を説くこと再三再四漸く世上の注意を喚起するを得、世の実業者は勿論識者を以て自ら任ずる人々も大に吾が説に同意を表し、為めに昨年の如きは之を新聞紙上に論載するものあるに至りしが、此際恰も好し我が東京に於て全国米商会所共同会の開設ありたれば、其筋よりは株式組織と仲買組織の利害を諮問されたり、依て同会議にては討議の上仲買組織は寔に善良の制度たるべきも我が商業の進度には時機尚早かるべしとの事にて遂に結局を告げたり、然るに其筋に於ては更に一般実業社会の希望を聞き且つ尊ら内外の事実に考へ道理に鑑み以て取引所条例の取調に着手せられたるやに聞けり、左れば是れよりして世人の相場会所の改革に注意すること漸く深きを加へ世上是非の議論甚だ喧しかりしと雖も、退て虚心平気に議論の派るゝ処を観察すれば、之が反対者は唯現行組織の存廃に依て直接の利害を有する一小局部のものか、然らざれば此等反対家が言論に巧みなるものを嘱使し以て種々の非難説を披露せしめ、若くは商業社会の実情を知らざる無智無識の白面書生論に過ぎざるべくして、而して其組織改革を主張するものは理論と実際に通したる識者にして、又之を希望したるものは一般の実業家なり、議論の当否は多弁を要せず此の一事を以ても予め判知するに足るべきなり
而して此のブールス論に付き殊に近頃の奇相として最も怪むべきの一事あり、开は何事ぞと云ふに、即ち明治十三四年の頃頻りに西洋文明の進歩を慕ひ、一も二もなく唯無茶苦茶に彼の制度に傚はんことに熱心し、政府に向ては遂に国会開設を請願し一時は世の急進者流と迄評されし輩が、焉ぞ図らん今日に至ては独り此の商業上に最も必要なる相場会所の改革に向ては同意を表せざるのみならず、嘗て吾輩のブールス説に公然と賛成を為したるもの迄も現に自説を改め相率ひて新取引所の設立を不可として痛く之を駁撃し、又新聞紙の種類も甚だ少なからざる数なれども吾が中外物価新報を除くの外は揃ひも揃てブールス新設を賛助したるものなく、而かも其の非難の論鋒は各社幾んど同一に帰着するの一事なり、世人が非ブールス論の囂々たるを怪みて兎角の疑を容れ、又政府が之を見て輿論とせず断乎として改革の主意を実行し、以て商業社会全般の希望に副はれんとするも亦決して偶然にあらざるを知るべきなり、左れば吾輩は今回の一挙を以て或る一種の事情に依りて人心の動き易きを実験し、且つ不理は到底必らず正理に勝つ能はざるべきを知ると同時に、吾輩が多年主張したるブールス説の弥よ事業の上に実行を見んとするを欣ぶものなり(以下次号)