デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

3章 商工業
25節 取引所
1款 東京株式取引所
■綱文

第13巻 p.514-522(DK130043k) ページ画像

明治20年6月6日(1887年)

是ヨリ先本月一日、取引所条例施行細則モ発布セラレタルヲ以テ、是日栄一、大倉喜八郎・三野村利助・中野武営・朝吹英二・早川勇・小川為次郎等ト坂本町銀行集会所ニ会シ、取引所創立ニ関シ売買取引法、創立費募集方法ソノ他ヲ協議、中野武営・小川為次郎ヲ規約起草員ニ、渋沢喜作・朝吹英二ヲ起草相談員ニ指名ス。


■資料

中外物価新報 第一五五三号〔明治二〇年六月八日〕 ○取引所創立の協議会(DK130043k-0001)
第13巻 p.514-515 ページ画像

中外物価新報 第一五五三号〔明治二〇年六月八日〕
○取引所創立の協議会 一昨日午後六時頃より、渋沢栄一・大倉喜八郎・三野村利介《(三野村利助)》・中野武営・朝吹栄二《(朝吹英二)》・早川勇・小川為次郎の七氏が坂本町の銀行集会所へ参集して東京取引所創立の件に付協議会を開かれたる由なるが、聞く所に拠れハ第一売買取引法、第二創立費募集方法其他諸般の事柄共、先つ最初に於て充分討議の上目的を定め一旦出願して中途に跡戻りを為すが如き不都合なき様にとの注意にて、予め左の五項に就て協議を遂けられ、畢て中野・小川の両氏を規約起草員に渋沢(喜作)朝吹の両氏を起草相談員に指名し、不日規約の脱稿を
 - 第13巻 p.515 -ページ画像 
俟て更に協議会を開く筈にて午後九時頃一同退散されたる由、因に記す、河野敏鎌氏ハ不快にて同夜ハ出席されさりし由
 一会員に自から取引を為さしむるの利弊
 一立会競売買の慣習を襲用すべき哉、又ハ相対取引(俗にザラ場と云ふ)の法に依るべき哉
 一証拠金徴収の手続
 一創立費募集の法案


中外物価新報 第一五四一号〔明治二〇年五月二五日〕 ○取引所条例の細則(DK130043k-0002)
第13巻 p.515 ページ画像

中外物価新報 第一五四一号〔明治二〇年五月二五日〕
○取引所条例の細則 同細則のことは一寸前号の紙上へも記載せしが右原案は去る二十二日内閣より元老院へ差廻されたる由なれば、同院の議事を経て愈よ発表の運びに至るも蓋し近日中にあるべしと云ふ



〔参考〕法令全書 明治二十年・第五〇―六一頁 ○農商務省令 第三号(DK130043k-0003)
第13巻 p.515-521 ページ画像

法令全書 明治二十年・第五〇―六一頁
○農商務省令 第三号
本年五月勅令第十一号取引所条例施行細則左ノ通相定ム
  明治二十年六月一日 農商務大臣 伯爵 山県有朋
取引所条例施行細則
    第一章 総則
第一条 取引所ヲ設立セントスル者ハ設立願書ニ左ノ事項ヲ詳記シ、創立員各自署名調印シ地方官庁ニ差出スヘシ
 一 取引所ノ名称及位置
 二 設立ヲ要スル事由
 三 取引所ノ部分ケ及其各部ニ於テ売買取引スヘキ物件ノ種類
 四 会員タルヲ得ヘキ商人ノ概数及其差入ルヘキ身元保証金額
 五 各部仲買人ノ差入ルヘキ営業保証金額
 六 売買取引スヘキ物件集散ノ実況及将来売買取引高ノ目算
 七 取引所設立ニ関スル費用ノ予算額及徴収ノ方法
第二条 地方長官前条ノ設立願書ヲ受ケタルトキハ其要否ヲ考ヘ、創立員ノ身元ヲ糺シ、意見ヲ具シ農商務省ニ進達スヘシ
第三条 農商務大臣取引所ノ設立ヲ特許シタルトキハ特許状ヲ下付スヘシ
第四条 取引所設立ノ特許ヲ得タルトキハ、創立員ニ於テ其創立員中ヨリ委員ヲ撰定シ、其氏名ヲ農商務省ニ届出ツヘシ
 委員ハ仮ニ役員ノ事務ヲ執行シ取引所設立ノ特許ヲ得タル旨ヲ官報又ハ其地方重モナル新聞紙ヲ以テ広告シ、取引所ヲ開クニ付必要ノ準備ヲ為スヘシ
第五条 会員ノ員数第一条第四項概数ノ十分ノ一以上ニ達スルトキハ総会ヲ開キ役員ヲ選挙スヘシ
 役員ハ取引所ノ業務ヲ経理スル為メ規約ヲ作リ、農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第六条 規約ニハ左ノ事項ヲ記載スヘシ、但自余ノ事項ト雖モ必要ト認ムルモノハ掲載スルコトヲ得
 - 第13巻 p.516 -ページ画像 
 一 取引所ノ名称及位置
 二 取引所各部ノ名称
 三 会員入退及除名ニ関スル規程
 四 会員ノ権利義務
 五 会員組合ニ関スル規程
 六 会員ノ手代入場ニ関スル規程
 七 役員ノ員数及其選挙ノ方法
 八 役員ノ職務章程
 九 仲買人開廃業及営業停止禁止ニ関スル規程
 十 仲買人組合ニ関スル規程
 十一 仲買人ノ補助員入場ニ関スル規程
 十二 仲買口銭ニ関スル規程
 十三 身元保証金及営業保証金ニ関スル規程
 十四 売買取引スヘキ物件ノ種類
 十五 新株式売買挙行ニ関スル規程
 十六 直取引及定期取引ニ関スル規程
 十七 売買取引受托ニ関スル規程
 十八 証拠金ニ関スル規程
 十九 売買取引ノ結了ニ関スル規程
 二十 市場整理ニ関スル規程
 二十一 休暇日及市場開閉時刻ノ定限
 二十二 公定相場ニ関スル規程
 二十三 会議ニ関スル規程
 二十四 帳簿及記録ニ関スル規程
 二十五 取引所ノ経費収支ニ関スル規程
 二十六 仲裁ニ関スル規程
 二十七 違約処分ニ関スル規程
第七条 役員規約ノ認可ヲ得タルトキハ農商務省ニ届出ノ上売買取引ヲ開始スヘキモノトス
第八条 取引所ノ位置ヲ移転セントスルトキハ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第九条 取引所ニ関スル一切ノ文書ハ所名ヲ署シ役員ノ印章ヲ捺スヘシ、但願伺届其他重要ノ文書ハ理事長之ニ署名調印スヘシ
    第二章 会員
第十条 会員タラント欲スルモノハ加入申込書ニ履歴書ヲ添付シ役員ニ差出スヘシ、役員ハ其履歴ヲ糺シ身元保証金ヲ差入レシメタル上加入ヲ承諾シ、会員名簿ニ記名調印セシメ会員ノ証ヲ交付スヘシ
第十一条 婦女ノ代理人若クハ未丁年者ノ後見人会員タラント欲スルトキハ、加入申込書ニ履歴書及委任状若クハ戸長ノ証認書ヲ添付シ役員ニ差出シ其承諾ヲ請フヘシ、但条例第十四条ニ触ルヽ代理人若クハ後見人ハ会員タルコトヲ得ス
第十二条 商社ノ名義ヲ以テ会員タラント欲スルトキハ、代表人ヲ定メ、加入申込書ニ商社ノ規約及代表人ノ履歴書ヲ添付シ役員ニ差出シ其承諾ヲ請フヘシ、但条例第十四条ニ触ルヽモノハ代表人タルコ
 - 第13巻 p.517 -ページ画像 
トヲ得ス
第十三条 会員退去セントスルトキハ其旨ヲ役員ニ申出ツヘシ、役員ハ十日間其旨ヲ市場ニ掲示シ売買取引其他計算上関係ナキヲ認メタル上承諾ヲ与ヘ身元保証金ヲ返付スヘシ
第十四条 会員ハ役員ノ承諾ヲ得手代ヲシテ入場セシムルコトヲ得
第十五条 会員ハ適宜人員ヲ定メテ組合ヲ為シ組合中ヨリ委員一名ヲ撰定シ役員ニ届置クヘシ
 委員ハ其組合会員ノ代議人トナリ取引所総会ニ列スルモノトス
    第三章 仲買人
第十六条 仲買人タランコトヲ欲スルモノハ営業願書ヲ役員ニ差出スヘシ、役員ハ役員会ヲ開キ過半数ノ同意ヲ得タル上地方官庁ヲ経由シテ其願書ヲ農商務省ニ進達スヘシ
第十七条 農商務大臣ニ於テ仲買人タルコトヲ免許スルトキハ役員ヲ経テ銀章ヲ下付スヘシ、役員ハ免許料及営業保証金ヲ差出サシメタル上之ヲ本人ニ交付スヘシ
第十八条 仲買人ハ取引所ニ於テ売買立会中銀章ヲ佩用スヘシ
第十九条 仲買人ハ自己ノ名義ヲ以テ売買約定ヲ為シ其売買取引上一切ノ責任ヲ負フヘシ
第二十条 仲買人ハ其部内同業者中適宜人員ヲ定メテ組合ヲ為シ組長一名ヲ撰定シ役員ノ認可ヲ受ケ組合中一切ノ取締ヲ為サシムヘシ、但組長ノ氏名ハ役員ヨリ農商務省ニ届出ヘシ
第二十一条 仲買人ハ其部ノ名称ヲ冠シ某部仲買人ト称スヘシ
第二十二条 仲買人ハ役員ノ承諾ヲ得一名若クハ二名ノ補助員ヲシテ取引所ニ於テ其業務ヲ補助セシムルコトヲ得、但補助員ハ売買契約ヲ為シ又ハ之ヲ執行スルコトヲ得ス
第二十三条 仲買人廃業セント欲スルトキハ其届書ヲ役員ニ差出スヘシ、役員ハ十日間其旨ヲ市場ニ掲示シ売買取引其他計算上関係ナキヲ認メタル上営業保証金ヲ返付シ、地方官庁ヲ経由シテ其届書ヲ農商務省ニ進達スヘシ
第二十四条 仲買人其資格ヲ失フタルトキハ本人又ハ相続人若クハ親族ヨリ役員ヲ経由シテ銀章ヲ農商務省ニ返納スヘシ
第二十五条 仲買人銀章ヲ紛失シタルトキハ其事由ヲ詳具シ役員ノ保証ヲ得テ更ニ銀章ノ下付ヲ請フヘシ、但此場合ニ於テハ手数料トシテ金拾円ヲ上納スヘシ
    第四章 身元保証金及営業保証金
第二十六条 身元保証金及営業保証金ハ取引所ニ於テ其額ヲ定メ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ、農商務大臣ハ時宜ニ由リ其増額ヲ命スルコトアルヘシ
 営業保証金ハ各部ニ由リ其額ヲ定ムヘキモノトス
第二十七条 身元保証全及営業保証金《(金)》ハ左ニ掲クル証書ヲ以テ代用スルコトヲ得、但身元保証金ノ預リ証書ハ営業保証金中ニ合算スルコトヲ得
 現金ヲ以テ差入レントスルトキハ役員ノ指命スル銀行ニ預ケ入レ其預リ証書ヲ以テ役員ニ差入ルヘシ
 - 第13巻 p.518 -ページ画像 
 一預金局ノ預リ証書
 一公債証書
 一政府ノ保証アル会社ノ株券
 (公債証書ハ農商務大臣、株券ハ役員ノ指定スル価格ニ拠ルヘシ)
第二十八条 身元保証金及営業保証金ヲ差出シタルトキハ役員ハ預リ証書ヲ付与スヘシ、其証書ハ質入書入其他抵当ト為スコトヲ許サス
第二十九条 身元保証金ニ欠額ヲ生シタルトキハ之ヲ補塡スルニアラサレハ会員タルノ権利ヲ失フモノトス、又営業保証金ニ欠額ヲ生シタルトキハ之ヲ補塡スルニアラサレハ仲買人ノ業ヲ営ムコトヲ許サス
第三十条 営業保証金ハ之ヲ差入タル仲買人ニ於テ売買取引上ノ違約ヲ為シタルトキ損害弁償ノ用ニ供スルモノトス
 身元保証金ハ之ヲ差入タル会員ニ於テ其会員タルノ義務ヲ尽サヽルトキ弁償ノ用ニ供スルモノトス
第三十一条 売買取引上ヨリ生シタル損害ノ弁償ハ証拠金及営業保証金ヲ以テ充テ猶ホ不足アルトキハ被害者ヨリ弁償ノ責ニ当ル本人ニ対シ追求スルヲ得
    第五章 役員
第三十二条 理事長ハ理事ヲ率ヒテ取引所全部ノ事務ヲ総轄シ総会及役員会ノ議事ヲ整理シ理事ノ分掌ヲ定メ所属員ヲ任免シ及規約違反者ヲ処分スルノ権ヲ有シ、取引所一切ノ事務ニ付其責ニ任スルモノトス
第三十三条 理事ハ指揮ヲ理事長ニ受ケ各部ノ事務ヲ分掌シ及部下ノ属員ヲ指揮監督スルノ権ヲ有ス
第三十四条 常置委員ハ取引所全般ノ事務ニ付意見ヲ具シ理事長ヲ輔佐シ金銭ノ出納及他ノ諸役員ノ行為ヲ監視スルノ権ヲ有ス
第三十五条 理事ハ理事長事故アルトキ其事務ヲ代理スルノ任アルモノトス
第三十六条 会員外ヨリ理事長及理事ヲ撰挙シ農商務大臣ノ認可ヲ請フトキハ其願書ニ履歴書ヲ添付スヘシ
 会員外ヨリ撰挙シタル理事長及理事ハ会員同額ノ身元保証金ヲ役員ニ差出スヘシ
第三十七条 役員ノ印章ハ其印鑑ヲ農商務省ニ届出ノ上使用スヘシ
    第六章 売買取引法
第三十八条 取引所ニ於テ為ス所ノ売買取引ハ現物・見本品・銘柄ニ拠リ売買約定ヲ為スヘキモノトス
第三十九条 直取引ハ現物・見本品ハ銘柄ヲ以テ売買約定ヲ為スモノトス、約定ヲ為シタルトキハ売買双方ヨリ相手方ノ氏名・数量・直段等ヲ其部理事ニ届出テ取引所ノ帳簿ニ記入ヲ請ヒ五日以内ニ受渡ヲ為スヘシ
第四十条 定期取引ハ見本品又ハ銘柄ニ拠リ期日ヲ定メテ売買約定ヲ為スモノトス
第四十一条 定期取引ノ約定ヲナシタルトキハ売主ヨリ其記名ノ売渡証書ヲ買主ニ交付スヘシ、但売買約定ノ高ニ応シ売渡証書ヲ数葉ニ
 - 第13巻 p.519 -ページ画像 
分割スルコトヲ得
 買受ケタルモノヲ他ヘ転売セントスルトキハ証書記名者ニ其旨ヲ通知シ、証書記名者ニ於テ更ニ証拠金ノ差入ヲ請求スルトキハ一定ノ証拠金額内ニ於テ証書記名者ノ満足スル証拠金ヲ差入レシムヘシ
第四十二条 定期取引ノ約定ヲナシタルトキハ売買双方ヨリ相手方ノ氏名・約定期日・数量及直段等ヲ詳記シタル書面ヲ以テ其部理事ニ届出テ取引所ノ帳簿ニ記入ヲ請フヘシ
第四十三条 定期取引ノ約定ヲ鞏固ナラシメンカ為メ売買主ノ一方ニ於テ証拠金ノ差入ヲ必要トスルトキハ相手方ノ其差入ヲ請求スルコトヲ得、此場合ニ於テハ其請求者モ亦同額ノ証拠金ヲ差入ルヘキモノトス、証拠金ノ最上額ハ役員ニ於テ予メ之ヲ定メ農商務省ニ届出ヘシ
第四十四条 定期取引ノ期限ハ役員之ヲ定メ、農商務省ノ認可ヲ受クヘシ
第四十五条 売買品ノ受渡ハ其部理事立会ノ上執行完結スヘシ
第四十六条 売買品ノ受渡ハ制法又ハ特許ニ依リ成立シタル倉庫ノ預リ手形ヲ以テ其用ニ供スルコトヲ得
    第七章 公定相場
第四十七条 公定相場ハ取引所ニ於テ日々売買取引スル物件ノ種類ニ依リ左ノ種別ニ従ヒ、直取引ト定期取引トヲ区画シ役員之ヲ調定シ表ヲ作リテ市場ニ掲示スヘシ
 寄付相場(売買立会ノ最初ニ売買取引シタル一口ノ直段ヲ云フ)
 大引相場(売買立会ノ最終ニ売買取引シタル一口ノ直段ヲ云フ)
 最昂相場(売買立会中最モ高キ直段ヲ云フ)
 最低相場(売買立会中最モ低キ直段ヲ云フ)
 平均相場(売買立会中相場ノ異ナルモノヲ加ヘ更ニ其数ニテ除シタル直段ヲ云フ)
    第八章 取引所経費
第四十八条 取引所ノ創立ニ係ル費用ヲ支弁スル為メ一時負債ヲ起スコトヲ得、此場合ニ於テハ償却ノ方法及年限ヲ定メ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
 取引所ノ経費ヲ支弁スル為ニ売買取引上ニ就キ手数料ヲ徴収スルノ外会員ニ賦金ヲ課スルコトヲ得
 取引所経費ノ予算額及其賦課徴収ノ方法ハ総会ニ於テ之ヲ議定シ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第四十九条 取引所ノ経費ハ毎年両度収支ノ決算ヲナシ会員一同ニ報告スヘシ
    第九章 会議
第五十条 会議ヲ分チ総会・役員会ノ二トナス
第五十一条 総会ハ委員一同集会シ毎年二回之ヲ開クモノトス
第五十二条 総会ニ於テ議スヘキ事項ハ左ノ如シ
 一 売買取引上ノ利害得失ニ関スル事項
 二 取引所経費ノ予算額及賦課徴収ノ方法
 三 取引所維持ニ関スル事項
 - 第13巻 p.520 -ページ画像 
 四 役員ノ選挙
第五十三条 役員会ハ理事長・理事及常置委員集会シテ之ヲ開ク、其議スへキ事項ハ左ノ如シ
 一 取引所規約ノ改正
 二 仲買人ノ口銭額
 三 取引所事務ノ整理及売買取引ノ便否
 四 金銭取扱ノ方法
 五 臨時必要ノ事項
第五十四条 総会ハ委員三分ノ一以上ノ請求又ハ理事長ノ意見若クハ常置委員ノ衆議ニ依リ臨時開会スルコトヲ得
第五十五条 総会ハ議員ノ半ニ満タサレハ議事ヲ開クコトヲ得ス、但急遽ノ事件ハ此限ニアラス
第五十六条 会議ハ議員過半数ニ由テ決ス、可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第五十七条 会議ハ理事長之レカ議長トナルヘシ
  但条例第十七条後項ノ場合ニ於テハ議員中ヨリ議長ヲ選挙スルコトヲ得
第五十八条 臨時総会ヲ開カントスルトキハ開会ニ先チ議件ヲ詳記シ農商務省ニ届出ヘシ、農商務大臣ハ時宜ニ由リ開議ヲ差止メ又ハ中止スルコトアルヘシ
    第十章 報告
第五十九条 役員ハ左ニ掲クル件々ヲ農商務省ニ報告スヘシ
 一 毎日公定相場表
 二 毎月売買景況報告
 三 毎半季功程及計算報告
 四 毎半季会員入退報告
第六十条 取引所ニ於テ為ス所ノ売買取引上ニ異状アルトキハ其時々役員ヨリ農商務省ニ報告スヘシ
    第十一章 帳簿
第六十一条 役員・会員及仲買人ハ必要ノ諸帳簿ヲ備ヘ名目用法ヲ農商務省ニ届出ヘシ、其帳簿ハ記載ノ末日ヨリ満五ケ年間保存スヘシ
第六十二条 役員・会員及仲買人ハ毎日取扱タル事項及金銭ノ出納ヲ帳簿ニ詳記スヘシ、農商務大臣ハ時宜ニ由リ帳簿ノ補正ヲ命シ又ハ記載ノ方法ヲ指示スルコトアルヘシ
    第十二章 仲裁
第六十三条 仲裁ヲ請フ者アルトキハ理事長ニ於テ常置委員中ヨリ三名以上ノ掛員ヲ撰任シ、理事長之カ議長トナリ仲裁ヲ為スヘシ
 仲裁ハ一定ノ期日及時間ニ於テ其事実ヲ審理シ之ヲ為スモノトス
第六十四条 仲裁ヲ請フ者ハ口頭又ハ書面ヲ以テスルモ妨ナシ、但掛員ニ於テ必要ト認ムル場合ニ於テハ書面ヲ出サシムルコトヲ得
第六十五条 仲裁ヲ請フモノ其取調ヲ受クルトキハ自身出頭スヘシ、止ヲ得サル事故アルトキニ限リ会員ハ手代、仲買人ハ補助員ヲ以テ代理タラシムルコトヲ得
第六十六条 仲裁ノ言渡ヲ為ストキハ掛員一同其言渡書ニ記名調印ス
 - 第13巻 p.521 -ページ画像 
ヘシ、但細事ニ限リ口頭ヲ以テ言渡スモ妨ケナシ
第六十七条 掛員必要ト認ムルトキハ会員及仲買人中ヨリ証拠人ヲ召喚スルコトヲ得、此場合ニ於テ召喚セラレタルモノハ理由ナク之ヲ辞スルコトヲ得ス
第六十八条 掛員ハ其仲裁ヲ為シタル事件ヲ詳記シ之ヲ保存スヘシ
第六十九条 掛員ハ仲裁ニ関スル費用ヲ曲者ヨリ差出サシムルコトヲ得
第七十条 掛員ハ会員外ノ者ヲ以テ仲裁事件ノ顧問トナシ又ハ仲裁ノ席ニ参セシムルコトヲ得
    第十三章 違犯処分
第七十一条 本則ニ違犯シタル者ハ、条例ニ拠リ処分セラルヽモノヽ外、二円以上二十五円以下ノ罰金又ハ二日以上二十五日以下ノ禁錮ニ処ス


〔参考〕添申録 農商課・東京株式取引所明治二〇年(DK130043k-0004)
第13巻 p.521 ページ画像

添申録 農商課・東京株式取引所明治二〇年 (東京府文庫所蔵)
第百三拾四号
    情願書差出願
当取引所仲買一同ヨリ、別冊情願書農商務大臣ヘ進達方之儀申出候ニ付、御庁ヲ経テ差出度此段奉願候也
              東京株式取引所頭取
  明治二十年六月四日 河野敏鎌(印)
    東京府知事 男爵 高崎五六殿


〔参考〕添申録 農商課・東京株式取引所明治二〇年(DK130043k-0005)
第13巻 p.521-522 ページ画像

添申録 農商課・東京株式取引所明治二〇年 (東京府文庫所蔵)
    営業年限延期情願書
謹テ奉情願候、私共東京株式取引所仲買ノ御允可ヲ得テ多年従事罷在候処営業日ヲ趁テ繁昌ニ赴キ候段偏ニ当局諸公御管護ノ致ス所ト一同銘感罷在候、就テハ此度勅令第十一号ヲ以テ取引所条例御発布相成従来ノ株式取引所ハ営業満期ヲ以テ廃止ノ事ニ相成候上ハ、私共従事罷在候株式取引所モ来ル明治廿一年五月限廃止相成候事ニ可有之、此儀偏ニ商業ノ発達ヲ御奨励被為在候御主旨ニ外ナラサル儀ト奉存候間、私共ニ於テモ此条例ヲ奉戴シ新取引ニ従事仕度希望ニ候得共、旧ヨリ新ニ移ルノ間其用意ヲ為シ得ルノ日月ヲ貸シ給ハスシテ満期后直チニ廃止セラレ候テハ何分営業上ニ於テ一同難耐事情有之候ニ付、左ニ営業延期ノ義ヲ情願仕度簡単ニ其理由ヲ陳述仕候
熟々新条例ノ組織ヲ考案仕候ニ、中ニハ泰西各国ノ成例ヲ御参酌相成候廉モ有之又タ我邦古来其例ナキ事件モ往々相見ヘ候様相心得候、右様ノ訳ナレハ条目中ニハ本邦古来商業ノ慣例トハ自然其手続方法ヲ異ニスル義モ可有之歟ト恐察仕候、果シテ右様ノ事ニ候ハヽ当業者ハ充分ニ其売買ノ事情手続ニ通暁致シ実地着手ノ時ニ方リ狼狽失錯等無之様心掛ケ可申ハ最モ必要ノ事ニ可有之義ト相考候、然ル処私共ハ積年ノ慣習ヲ襲用シ因襲ノ久キ知ラス識ラス其手続ニ泥ミ居候故乎兎角変通ノ智識ニ乏シク、為メニ遽ニ新条例ニ引移リ候義ハ甚タ困難ヲ感スルノミナラス、資産ノ上ヨリスルモ自ラ人々其経理ヲ要スル義ニ有之
 - 第13巻 p.522 -ページ画像 
然ルヲ新条例ノ売買手続及其営業ニ要スル方法ニ依ラサレバ営業ヲ接続スル能ハサル場合ニ立至リ、一同何共当惑仕リ進退維谷リ候事ニ相成痛心仕候折柄、頃日私共同業者会同仕リ深ク将来ノ成行ヲ討究仕候処、私共一同只管営業延期ノ義ヲ情願シ此延期中ヲ以テ各自新条例ニ関スル売買手続等ニ通暁シ其経理ノ道ヲ立テ然ル后新条例ノ下ニ従事営業仕度希望ハ全会一致ニ出テ候義ニ御座候
私共元来見聞ニ狭ク社会気運ノ向フ所ヲ知ラサルヨリ私カニ思考罷在候ハ、現時ノ取引所ノ組織モ世態ノ進修ニ伴ヒ漸次改良ヲ要セラルヽ所アルベキモ要スルニ多少ノ改正迄ニ止マルヘキ義ト一途ニ推考罷在候ヨリ其営業ノ方嚮目的ハ一ツニ之ニ依リテ経営仕居候処、今回新条例並施行細則御発布之事ニ相成一同前途ノ方嚮ニ迷ヒ互ニ其処理法ニ苦ミ候次第ニ有之候、且世上ノ噂スル所ニテハ取引所条例発布ノ為メニ株主ノ損害ハ至大ナルモ仲買ニ於テハ却テ利益アルガ如クニ認メ候モノモ有之哉ニ候得共、実際ノ事実ニテハ却テ株主ヨリモ私共カ被ル損害ハ夥多ニ有之、到底此儘ニテハ一同難立行誠ニ難渋仕リ候儀ニ御座候、将又新条例御施行ニ対シ殊ニ私共一同ノ業務ニ取リ困難ヲ覚ヘ候モノハ、各地取引所営業満期ノ時日ハ各々区々ニ相成候ヨリ彼是其手続ヲ異ニスルニ至ルヘク、而ルニ私共営業ハ単ニ一部一地方ニ局促致シ候義ニ無之、時ニ由リ各地方ノ同業者ト聯通致シ候義有之、此時ニ於テ彼是制度ヲ殊ニシ甲乙二様ノ手続有之候テハ営業上ニ困難致シ候義ハ著シキ事実ト信シ申候
上来陳述仕候通リ私共新条例ヲ奉戴シ旧業ニ引続キ取引ニ従事仕度義ニ候得共、何分一概ニハ手続方法ニ通暁仕リ兼候ノミナラス経理上ニ甚タ困難ヲ感シ候ニ付何卒私共一同ニ仮スニ数年間ノ日月ヲ以テセラレ、各地株式取引所最終ノ期限乃チ帝国内ニ於テ株式取引所条例ノ存スル限リハ営業継続ノ義御聴許被下度、然ル時ハ私共ニ於テモ略ホ其手続方法ニ通暁致シ可申、又予テ私共営業ノ目的方嚮モ其幾分ヲ結了仕リ可申、其他各地区々ノ取扱等モ無之様ニ相成旁私共一同ノ困難モ相免カレ可申候間、敢ヘテ延期ノ義ヲ悃願仕リ候次第ニ御座候、幸ニ閣下寛洪ノ仁慈ヲ垂サセラレ私共ノ衷情ヲ御洞察延期之儀御詮議被成下候様仲買一同連署ヲ以テ只管奉情願候也
          東京株式取引所仲買
             日本橋区堀江町壱丁目九番地
  明治二十年六月三日         岡本善七(印)
      以上               ○外六八名氏名略
    農商務大臣 伯爵 山県有朋殿