デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

3章 商工業
25節 取引所
1款 東京株式取引所
■綱文

第13巻 p.549-551(DK130051k) ページ画像

明治20年9月27日(1887年)

東京取引所ノ創立モ、現行株式取引所、米商会所トノ接続ニ関シ遅々トシテ進マズ。前農商務大臣土方久元コレヲ憂ヘ栄一ニ一段ノ尽力ヲ慫慂ス。ヨリテ栄一、是日一個人ノ資格ニ於テ、銀行集会所ニ河野敏鎌・大倉喜八郎・川崎八右衛門・安田善次郎・朝吹英二・佐野常樹及ビ青木貞三ヲ招キ新旧取引所ノ接続方法ヲ議ス。然レドモ取引所条例並ニ同施行細則中ノ疑義ニ対スル当局ノ解釈モ未ダ明ラカナラザルヲ以テ、議整フニ至ラズ散会ス。


■資料

中外物価新報 第一六三三号〔明治二〇年九月九日〕 ○東京取引所(DK130051k-0001)
第13巻 p.549-550 ページ画像

中外物価新報 第一六三三号〔明治二〇年九月九日〕
    ○東京取引所
同取引所創立の事も兎角遅々せる有様にて創立委員中には頻りに此事を遺憾に思ひ、何とかして一日も早く諸般の準備に取掛らんとせらるるも如何せん、去月五日附を以て条例細則中の疑義に亘る廉々を書面
 - 第13巻 p.550 -ページ画像 
に認めて其筋へ伺出られしに、今に何等の沙汰もなく、又米商仲買人より申出ある身元保証金減額の議及其他同取引所創立に関する事柄を協議せん為め、昨今創立委員一同の集会を開かんとの話しもありたれど、目下創立委員中の大半は所要或は保養の為め他出中なる故不日諸氏が帰京さるゝを待て一同の集会を催すことになりたりと云ふ


中外物価新報 第一六三四号〔明治二〇年九月一〇日〕 ○東京取引所(DK130051k-0002)
第13巻 p.550-551 ページ画像

中外物価新報 第一六三四号〔明治二〇年九月一〇日〕
    ○東京取引所
曩日に渋沢・河野・大倉・安田・川崎・早川等の紳商諸氏が相合同して東京取引所設立の義を願出て疾くに其特許を得たるに就ては、爾後規約定款抔の起草委員も定まりて着々其歩を進めんとするが如くなるも、何分にも種々の事情あるが故にや兎角思ふ様に捗取らず、殊に株式取引所・米商会所とも尚営業延期出願中なりかたかた其準備も自然遅々するの形状あるが如し、左れば其筋に於ても種々心配せらるゝ趣なれども何分已に取引所条例も発表ありて最早本月一日より実行せらるゝ事となり、又現在の米商会所並に株式取引所は其営業満期を俟て消滅に帰すべき筈なれば今更延期と云ふ事は其筋に於ても到底許可し難かるべしと思はるゝなり、尤も米商株式両所の延期願は同一なれども能く其実情を分析すれば大に其趣を異にせるものあるが如し、其故如何と云ふに株式取引所の営業は近来非常に昌盛を極め現に本年上半季に於ける売買手数料収入高は十八万六千二百二十一円余、之に預金利子・株券書替手数料等の収入を加ふるときは実に二十万三千三百四十五円余の多きに達し、半季の配当は一株に付き四十五円即ち年九割の利益配当を為したるも、之に反して彼の米商会所の営業は甚だ盛んなりと云ふを得ず、其会所へ収入したる絶粋《(純カ)》の手数料は僅かに五千三百七十二円余にして半季の配当は一株に付き漸く金四円(即ち年八歩)の利益割賦を為したる位なれば、設令営業延期は許さるゝとも其売買税率を軽減せられざる以上は格別有難き程の事もなしと云ふが目下の実際にはあらざるやと岡目ながらも思はる位なれば、寧ろ新条例に依て取引する方が優る所あらんと云ふものありとか聞けり、是れ両所が其延期願を一にして其趣を異にする所ありと云ふ所以なり、其事情の異同は兎もあれ角もあれ到底延期願は許可せられざるものとすれば、条例に悖らず新旧双方相協和して其損害を軽減するの方法あれば之を行ふて妨げなかるべきのみならず、商業社界の円滑を謀る為めには必用の事なるべしとて先日来種々の議あるが中にも、或は両所の株金を以て土地を買入家屋を建築して之を新取引所に貸渡し其年々の収入を株主に配当するか、或は又新取引所は負債を起して両所の株を平均直段にて買上げ其負債は年々の手数料収入を以て之を償還すべしとの二策を立てたるものあれど、孰れも感服するに足らざるのみならず到底折合ふ望みなき方案ならんとの事は去る一日の中外物価新報に記載せしが、今又聞く所に拠れば東京株式取引所同米商会所は来年五月三十一日限り消滅に属すべきものゆへ、新東京取引所は則ち其六月一日より営業するの権利あるものなれども双方の折合を附くるが為め、且つは新取引所家屋建築にも余程の時日を要すべければ篤と協議の上にて
 - 第13巻 p.551 -ページ画像 
一年半乃至二ケ年位は両所の家屋を借受け、其の間は特別の義を以て売買税を除くの外は是迄通りの手数料口銭を収入せしめ之を以て其損失を償ふ事とせば万事円滑に又条例の精神にも敢て背く所なかるべしとの一案ある由、成程此の考案の詳細は未だ審らかならざれども三策中に於ては先づ最も良案なりと思はるれば、米・公債・株式を初め其他綿・油・肥料等の会員達の間にも能く折合の附く以上は双方互に譲合いて一日も早く其相談を纏めたきものになん


中外物価新報 第一六四八号〔明治二〇年九月二八日〕 ○新旧接続手続の協議会(DK130051k-0003)
第13巻 p.551 ページ画像

中外物価新報 第一六四八号〔明治二〇年九月二八日〕
    ○新旧接続手続の協議会
新取引所と旧取引所との接続法に関しては各その利害を異にする所あるを以て是迄も兎角其良法を得ざりしより新取引所創立委員諸氏にも種々に心を挫《(砕カ)》かれしが、右新旧取引所接続の手続に付きて協議する所あらんとて、渋沢栄一・河野敏鎌等創立委員の諸氏にはみなみな孰れも一個人たる資格を以て昨日午後四時より銀行集会所へ会し新旧接続の事に付相談を為し、同日は官撰委員たる佐野常樹・青木貞三の両氏にも矢張り一個人の資格を以て来会されたる由、右協議会の摸様等は次号に於て報道すべし


中外物価新報 第一六四九号〔明治二〇年九月二九日〕 ○新旧取引所接続に関する協議(DK130051k-0004)
第13巻 p.551 ページ画像

中外物価新報 第一六四九号〔明治二〇年九月二九日〕
    ○新旧取引所接続に関する協議
東京取引所創立の事も旧取引所・会所と接続の手続きに付き双方都合よき良法を得ざるより便々と長引き何時迄ぐずぐずに過ぎ行くやも料られざる景況なるを以て、前任農商務大臣には大に之を心配され何とかよき方便工風を以て双方の折合を付け、着々新取引所創立事務の歩を進むる様尽力ありたき旨懇ろに渋沢栄一氏へ勧告の儀もありしに付き、渋沢氏には全く創立委員たる資格を離れ一個人の資格を以て、河野・大倉・川崎・安田・朝吹等の人々を招き前号に記せし如く一昨日午後四時より銀行集会所に於て協議を遂げられたることなるが、今其日の摸様なりと云ふを聞くに、当日渋沢氏は新旧取引所の接続を円滑ならしむる為めに或る一種の考案(多分去る十日紙上に記せし第三策と大同小異の考案ならんと想像せらる)を提出し各々の意見を問はれたる所、至極の妙案なりしかば右考案に付きては何れも不同意はなかりし由なれども、兼て其筋へ伺ひたる指令もなく又其筋より発表さるべしと云ふ噂さのある規程準則等も未だ発表せず、旁以て新取引所の売買法も如何に定るべきや判然せす、随新取引所に於てするの売買高は如何程あらんといふ見極も付かざる訳なれば、渋沢氏が発議に対するの返答は不日其筋より何とか沙汰のありし上ならでは明白に申難く且又此事に付ては旧両所の株主とも相談を遂げたる上ならでは何分の確答もなし難しとて当日は孰れも夜九時四十分頃に散会したる由、又此日来会したる人々は河野・渋沢・大倉・安田・川崎・朝吹・小川・佐野・青木等の諸氏にて右に記せし外にも尚ほ多少の議論ありしやに聞けり、併し渋沢氏の意見といふは至極公平なりとの聞えもあれば大抵は其考案通り丸く纏るならんと云へり