デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

3章 商工業
25節 取引所
1款 東京株式取引所
■綱文

第13巻 p.576-580(DK130054k) ページ画像

明治20年12月1日(1887年)

是日栄一会主トナリ、東京大阪ノ豪商十一名銀行集会所ニ会シ、商業上時事問題ニツキ懇談、取引所ノコトニモ及ブ。尋イデ栄一数次東京取引所創立委員会ニ出席シ斡旋頗ル努ム。コノ間農商務大臣黒田清隆特ニ栄一ニ諮問スル所アリ。


■資料

中外物価新報 第一七〇二号〔明治二〇年一二月三日〕 ○豪商の懇話会(DK130054k-0001)
第13巻 p.576-577 ページ画像

中外物価新報 第一七〇二号〔明治二〇年一二月三日〕
    ○豪商の懇話会
兼て本紙に記載したる通り一昨日午後五時より銀行集会所に於て渋沢
 - 第13巻 p.577 -ページ画像 
栄一氏が会主となり東京・大坂の豪商諸氏を招きて懇話会を開かれたり、当日招きに応じて出席したる人々は西村虎四郎・山中隣之助・安田善次郎・渋沢喜作・町野五八・小川為次郎・西園寺公成・佐々木勇之助(以上東京)土居通夫・田中市兵衛・田中太七郎(以上大坂)の十一氏にして、互に商業上に関する時事の談話を為せし末遂に取引所創立の事に移りしが、其際大坂商人某氏の説なりと云ふを聞くに、此程其筋より下渡されたる規約標準に随へば商品中公債株券を除くの外は皆悉く見本売買に限るの定めなれど、我邦は往古より銘柄売買の習慣あれば到底今日我邦に於て実際上見本取引の事は覚束なければ是非に銘柄売買を許可さるゝ様に請願し、其他条例細則中実際に不適当なる廉々の改正を請はんと云ふにありし由、尤も大阪取引所創立委員よりは過日既に右に関する一篇の意見書を其筋へ呈出したる由なるが其改正を請願する要領にして果して東京取引所創立委員の見込と相符合すれば今後是非に改正を許可さるゝ様相互に尽力すべし云々との話もあり、畢て林千次(碁打)の配膳にて晩餐の饗応あり、一同歓を罄して散会されしは同九時過なりし、又富田鉄之助・河野敏鎌・朝吹英二の三氏は臨時差支にて出席されざりし由


中外物価新報 第一七〇四号〔明治二〇年一二月六日〕 ○取引所創立委員会(DK130054k-0002)
第13巻 p.577 ページ画像

中外物価新報 第一七〇四号〔明治二〇年一二月六日〕
    ○取引所創立委員会
兼て報したる如く去る三日午後五時より銀行集会所に於て東京取引所創立委員会を開かれたり、当日の来会者は両渋沢・河野・西村・三野村・大倉・安田・町野・小川の諸氏並に三井物産会社長益田孝・大阪取引所創立委員田中太七郎の両氏も招待に依て出席し、最初先づ前回に引続き規約標準の討議に取掛りしが、右の内緊要の条項は大抵前回に於て議了し、其他概ね諸証書の雛形等にして敢て各自が解釈を下して互に考究を要すべき程の点もあらざる故標準の討議は玆に止め、夫より益田孝氏が過般欧米巡廻中実地に目撃されし彼国共同相場会所の組織方法及売買取引の現況に就て種々の談話ありて内外相場会所の事情も大に判明したるに付き、結局此程商務局より下渡されし規約標準は則ち其名の如く大体の標準と為し置き実際取引上に於て成るべく適当なる規約を編纂することとし、右規約編纂上標準に牴触する廉々は起草委員にて取調の節附箋を為し置き追て創立委員会の決議を経て農商務大臣へ具申すべしといふことに決定し、同十時過ぎ一同退散せられたり、又大阪取引所創立委員田中太七郎氏も大に此の決議に同意を表せられたる由、左れば過日来兎角遅々して運ばざりし東京取引所創立の準備も是よりは着々其歩を進むるなるべしと想はるゝなり


東京経済雑誌 第一六巻第三九七号・第七九三頁〔明治二〇年一二月一〇日〕 ○取引所創立委員の決議(DK130054k-0003)
第13巻 p.577-578 ページ画像

東京経済雑誌 第一六巻第三九七号・第七九三頁〔明治二〇年一二月一〇日〕
    ○取引所創立委員の決議
同委員は去三日午後五時より銀行集会所に於て前回に引続きての委員会を開き、渋沢・河野・西村・三野村・渋沢(喜作)・大倉・安田・町野・小川の諸氏並に益田孝・大阪取引所創立委員田中太七郎の二氏も招待に応じ来会ありて規約標準の討議に取掛りしが、既に緊要の点ハ
 - 第13巻 p.578 -ページ画像 
前回に議了したれば格別の議論もなく、到底商務局より下付ありたる規約標準に基き成る可く実際取引上に適したる規約を編纂し、尚ほ標準と牴触の件は創立委員の決議を経て農商務大臣に具申することに決したりと云ふ


中外物価新報 第一七一二号〔明治二〇年一二月一五日〕 ○東京取引所委員会(DK130054k-0004)
第13巻 p.578 ページ画像

中外物価新報 第一七一二号〔明治二〇年一二月一五日〕
    ○東京取引所委員会
東京取引所創立の件に関し此程農商務大臣○黒田清隆より渋沢栄一氏へ特に諮問せられたる事あるに付、同氏は昨日午後五時より、河野敏鎌・渋沢喜作・町野五八・小川為次郎等の諸氏を銀行集会所へ招きて種々込み入たる内談を遂げられ、又大阪取引所理事田中太七郎氏も臨席したる由



〔参考〕農商務省第七回報告 第一九八―二〇四頁〔明治二一年三月三一日〕(DK130054k-0005)
第13巻 p.578-580 ページ画像

農商務省第七回報告 第一九八―二〇四頁〔明治二一年三月三一日〕
    株式取引所
株式取引所ハ二十一年五月ニ至リ営業満期ヲ告クルモノハ東京ナリ、同年八月ニ至リ其期ノ満ルモノハ大阪ニシテ、此両取引所ハ何レモ営業期限ノ延期ヲ出願セシニ由リ各一箇年間東京ハ来二十二年五月マテ大阪ハ同年八月マテ延期ノ許可ヲ与ヘタリ
名古屋株式取引所ハ従前名古屋区下長者町弐丁目拾五番地ニ於テ営業セシカ同区塩町百七拾六番地ニ移転ヲ願出タレハ十二月之ヲ許可セリ
是ヨリ先キ五月中各株式取引所頭取東京ヘ会同シ共ニ営業上ノ事件ヲ討議シ、決議ノ上連署ヲ以テ上願書ヲ本省ニ上申シ、六月ニハ東京株式取引所、七月ニハ大阪株式取引所仲買人等一同連署ノ上孰モ営業年限延期ノ請願書ヲ呈出セリ
各株式取引所仲買人営業出願者ニ認許ヲ与ヘシモノハ七拾四名ニシテ此認許料弐千弐百弐拾円、之ヲ前年認許セシ九拾六名ニ比スレハ弐拾弐名ヲ減ス、又廃業ヲ届出タルモノハ三拾八名ナリ、今各取引所ニ就キ仲買人ノ現員ヲ挙レハ、東京ニ七拾名、横浜ニ五拾三名、大阪ニ四拾七名、京都ニ弐拾九名、名古屋ニ拾五名、合計弐百拾四名ナリ、而シテ之ヲ前年同時ノ人員ニ較レハ三拾六名ヲ増セリ、由是観之各株式取引所業務ハ米商会所ニ異ナリ稍々盛況ヲ現シタルモノヽ如シ
    取引所
二十年五月十四日勅令第十一号ヲ以テ取引所条例ヲ公布セラレタリ、抑々取引所条例ハ本局○商務局ノ起案ニ出ツ、而シテ其之カ起草ニ着手セシハ実ニ十九年九月一日ニシテ、爾来専ラ欧米相場会所ノ組織方法ヲ斟酌シ、其長短ヲ商量シテ之ヲ本邦ノ慣習ニ照シ、利害得喪ヲ弁析取捨シ、以テ条例案ヲ編成シ同年十一月之ヲ内閣ニ提出ス、然ルニ提出案ニ対シ修正ヲ要スヘキ事アリ、二十年ノ首ニ当リ更ニ討議修正ノ上二月二十八日ヲ以テ前案ト交換セリ、是レ即チ取引所条例案ノ提出ニ関スル事務ノ概要ニシテ、実ニ本局創設以来ノ一大事務ト云ハサルヘカラス、然リ而シテ取引所条例ノ公布セラルヽヤ本局ニ於テハ直ニ其施行細則ヲ立案シ、閣議ヲ経、六月三日省令第三号ヲ以テ之ヲ発布セ
 - 第13巻 p.579 -ページ画像 
リ、尋テ条例及細則ノ見解ヲ一定センカ為メ省議ヲ尽シ、其註釈ヲ作リ、又条例案起草ニ関スル事務ノ成績及調査セシ所ノ事項並輿論ノ賛否等ヲ記録シ、以テ永ク参考ノ資ニ供センカ為メ取引所条例起草ノ顛末ト題スル書冊ヲ編纂セリ
条例及施行細則ノ発布以来其趣旨ヲ遵奉シ各地方ヨリ取引所ノ設立ヲ出願スルモノ相踵キ、爾来其数凡ソ四拾壱箇所ニ至ル、而シテ既ニ設立ノ特許ヲ与ヘタルモノハ拾箇所、他ハ猶未タ処分詮議中ニ属ス、今其設立ノ箇所及特許年月日並処分詮議中ニ係ルモノヲ左ニ掲ク
    設立ノ箇所

 所名    特許月日   特許状番号
桑名取引所  六月三日    第一号
高岡取引所  七月十八日   第二号
東京取引所  八月一日    第三号
新潟取引所  八月二日    第四号
金沢取引所  八月二日    第五号
神戸取引所  八月二日    第六号
名古屋取引所 八月二日    第七号
佐賀取引所  八月三日    第八号
大阪取引所  八月五日    第九号
大津取引所  八月六日    第十号
 合計             十箇所

    処分詮議中ニ属スル箇所

 県名   箇所         数
神奈川県 横浜          一
新潟県  直江津         一
岐阜県  大垣 岐阜       二
岡山県  岡山 玉島       二
山形県  山形 酒田       二
静岡県  静岡 清水       二
福岡県  博多 若津 若松    三
宮城県  石ノ巻         一
山口県  赤間関         一
広島県  広島 尾ノ道 福山   三
長崎県  長崎          一
愛媛県  松山          一
北海道庁 函館          一
三重県  四日市 津 松坂 上野 四
愛知県  岡崎 豊橋       二
富山県  富山 伏木       二
大阪府  堺           一
熊本県  熊本          一
 合計             三一

桑名及大津ノ両取引所ハ規約ヲ議定シ、桑名ハ八月、大津ハ九月其認可ヲ出願ス、然ルニ当時規約標準ヲ作リ各取引所ヲシテ之ニ則トリ規
 - 第13巻 p.580 -ページ画像 
約ヲ議定セシメントノ議起リ、特ニ委員ヲ設ケテ討議審査シ、規約標準ヲ編成シテ之ヲ各取引所ニ交付シ、桑名・大津両取引所ヨリ出願ノ規約ハ更ニ標準ニ拠リ議定セシムルコトヽセリ、其他東京・大阪・名古屋・金沢・新潟・高岡・佐賀等ノ七取引所ハ、猶開始ノ準備中ニ在リ、未タ規約出願ノ運ニ至ラス、惟リ神戸取引所ハ規約標準ニ則トリ議定出願セシニ依リ乃之ヲ認可セリ、又条例及施行細則ニ対シ東京取引所創立員ヨリ質疑十九条ヲ掲ケ、其見解ヲ伺出タルニ依リ調査ノ上之カ指令ヲ与ヘ、其他条例第十二条取引所所在ノ地ニ居住スル者云云ノ件ニ付神戸・金沢ノ両取引所及静岡・富山ノ両県ヨリ伺書ヲ提出シタレハ是亦其所在地区域ノ見解ヲ指令セリ
二十年八月十六日商務局次長佐野常樹及農商務省雇青木貞三、東京取引所委員ヲ命セラレシカ、十月十九日ヲ以テ免セラル
以上ハ取引所ニ関スル事務ノ概要ニシテ取引所ノ制度稍々成レルヲ見ルヘシ、然レトモ取引所ヲ設ケ商業ノ機関ヲ以テ之ニ托セントセハ須ラク倉庫ノ制ヲ確定シ、二者相俟テ其効用ヲ挙ケシムルニアラスンハ商品ノ運転ヲ円滑ニシ渋滞不動ノ憂ヲ絶ツ能ハサルナリ、是ヲ以テ二十年三四月ノ交、倉庫条例案ヲ編成シ、目今審議中ナレハ遠カラスシテ閣議ニ提出スルヲ得ヘシ