デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2021.9.1

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

3章 商工業
28節 貿易
1款 日本輸出米商社
■綱文

第14巻 p.413-415(DK140045k) ページ画像

明治20年(1887年)

栄一、大倉喜八郎・安田善次郎・浅野総一郎等ト発起シ、資本金二十万円ヲ以テ、九州米ヲ精ラゲ外国ニ輪出セントスル日本輸出米商社ヲ創立ス。然レドモ経営宜シキヲ得ズ、二十二年ニ至リテ解散ス。


■資料

青淵先生六十年史 第二巻・第三二〇頁 〔明治三三年二月〕(DK140045k-0001)
第14巻 p.413 ページ画像

青淵先生六十年史  第二巻・第三二〇頁〔明治三三年二月〕
 ○第五十二章 各種商工業
    第二節 日本輸出米商社
日本輸出米商社ハ明治二十年青淵先生及大倉喜八郎・安田善次郎・浅野総一郎等ノ発起ニ係ル、其資本金弐拾万円ニシテ其目的ハ九州米ヲ精ラケ之ヲ外国ニ輸出セントスルニアリ、是ヨリ先キ政府ニ於テ紙幣消却ノ為メ正貨吸収ノ必要アリ、準備金ヲ運用シテ米穀ノ輸出ヲ企テ大ニ販路ヲ開キタルヨリ、神戸・岡山・四日市等各地ニ精米所ノ創立ヲ見ルニ至レリ
同社ハ事業経営頗ル其宜シキヲ得ス、明治二十二年解散セリ



〔参考〕日本輸出米商社株金請求之件 控訴審判始末大意(DK140045k-0002)
第14巻 p.413-415 ページ画像

日本輸出米商社株金請求之件       (渋沢子爵家所蔵)
控訴審判始末大意
    日本輸出米商社株金請求之件
    控訴審判始末大意
一十月十二日長崎控訴院ヘ答書ヲ提出ス、猶ホ更ラニ要ス可キ書類生シタルヲ以テ之ヲ調整シ、翌十三日ハ日曜休暇ナルニ付十四日之ヲ提供シ且ツ特別急速ノ審判ヲ乞フ、可成速カニ沙汰ス可キヲ達ス、待ツコト数日未ダ沙汰ヲ得ス、依テ又同月十八日始審爾来急訴ノ旨ト覊旅中ノ訴件ナル等ノ理由ヲ詳述シ審判ヲ乞フ、前同様ノ沙汰ヲ得タリ、同月廿一日又更ラニ理由ヲ加ヘ審判ヲ請求シ出テタルニ、対手代言人ヨリ書類取寄セ中ニ付凡ソ十日間審判ノ延期ヲ乞フ可キ書面ヲ出セリ受付課ヨリ之ヲ示シ為メ審判ノ場合ニ至リ難キ旨ヲ達シタルヲ以テ、書面ヲ出シテ面会ヲ乞ヒ、書記ニ遇フテ控訴人ノ地位ニシテ未ダ書面ダモ取揃ハスト云フ不当ヲ述ヘ、且ツ其必要ナリト云フ会社定款ノ如キハ当方ノ手ニ其本紙ヲ所持スレハ貸渡スモ可ナル訳ニ付至急ノ開廷アリタシト請求セリ、書記ハ主任官ニ議シタル上当方ノ申立ヲ容レ、廿三日正午十二時ヨリ開廷ノ旨ヲ達シタリ、依ツテ同日ハ刻限前出廷シタルニ対手代言人ヨリハ医家ノ診断書ヲ添ヘ病気ノ旨ヲ以テ壱週間ノ延期ヲ出願セリ、依テ又書記ニ面シ対手方ハ一ツニ日延策ヲ構フル
 - 第14巻 p.414 -ページ画像 
モノニテ其病気ノ如キハ受取難キ旨ヲ述ヘタルニ、書記ハ対手方当日代人ニ対シ押シテ明後日出頭ス可ク場合ニ依テハ臨撿スルコトアル可キ旨ヲ達シ、廿五日午前八時開廷ノコトトナレリ、同日ハ又刻限通リ出廷シタルニ当日モ亦対手代言人ハ出廷セス、一葉ノ電信紙即チ荒木ノ長男亨一ナル者ノ福岡ヨリ発送シテ、二十八日迄ノバセ往クト云フ文意ノモノヲ添ヘ、病気モ未ダ平治セサルヲ以テ廿九日迄ノ延期ヲ乞フトテ出願セリ、依テ又充分ニ対手方ハ常ニ卑屈ノ策略ニ出ツルコトヲ述ヘ、廿九日猶亦本人モ来ラス代言人ノ出廷モ成リ難キトキハ欠席ノ儘裁判トナルモ異議無キ旨ノ受書ヲ差出サセンコトヲ請求シ、玆ニ始メテ廿九日ノ審判ニ決ス、廿九日午前八時出廷シタルニ始メテ代言人ノミ出廷シ、乙号証拠書トシテ商社定款並ニ小倉株主惣会ノ決議書ヲ提出セリ、而シテ当日ハ裁判所ノ差閊アルヲ以テ翌三十日開廷ノコトニ決シタリ
三十日午前第八時出廷シタルニ対手代言人モ出廷シ居リテ正午十二時ニ至リ始メテ開廷審判ノ場合ニ至レリ、評定官三名並ニ書記着席、裁判長ハ例ニ依ツテ双方本人並ニ代言人ノ旅籍住所《(族)》ヲ問ヒ、終ツテ先ツ被控訴人ヨリ一定ノ申立並ニ事実ノ陳述ナス可キ旨ヲ告ク、於是乎左ノ大要ヲ弁陳セリ
 初審ノ裁判ハ相当ナルヲ以テ之ヲ速カニ認可サレンコトヲ望ムト云コトヲ一定ノ申立トシ、商社ノ組職《(織)》ヨリ業務ノ開始、控訴人等ヲ理事会計役トシ、事務ノ全般ヲ任シタルコト、彼等ノ職ニ堪ヘスシテ僅々数月間二五万円ニ近キ負債ヲ生セシメタルコト、明治二十二年十二月東京株主総会ニ於テ一旦営業ヲ中止シ残務委員ヲ置テ第二回株金ヲ募集シ控訴人等ノ生シタル負債ヲ弁済整理スルニ決シタルコト、此際控訴人荒木・小沢ノ両人ヨリ商社ヲ自己ニ引受ケ度旨申出遂ニ履行シテ其約束ヲ果ス能ハサル依リ、本年二月ヨリ三月一日ヘ掛ケ又候小倉ニ於テ株主惣会ヲ開キ、最前東京決議ノ如ク第二回株金ヲ募集スルコトニ再決シ、控訴人等ヨリ延期ノ証書ヲ差入レナカラ猶ホ果スコト能ハサルヨリ不得止急訴ニ及ヒシ顛末ヲ詳述ス
控訴代言人ハ左ノ如ク申立タリ
 商社ノ組織並ニ営業ノ年月日控訴人等ノ役員トナリタルコト、並ニ五万円計リノ負債生シタルハ被控訴代言人陳述ノ如クナルモ、負債ハ控訴人ノ失職ニ依ツテ生シタルニ非ス、米価ノ変動ト器械ノ不良ト器械到達ノ遷延ニ依ルモノニテ、寧ロ当時ノ顧問タリシ被控訴人ノ失職ナリ、且ツ商社ハ既ニ解散シタルモノナリ、衆株主ハ器械並ニ家屋ヲ売却センコトヲ望ミ、之ヲ控訴人等ニ依頼セルヲ以テ控訴人ハ既ニ之ヲ引受ケ其販路ヲ求ムルノ際、突然此訴求ニ遇ヒタルハ寔トニ意外ノ事実ニテ、其原因ハ株主中ノ重立チタル福島良助ナル者此節九州炭坑ニ手ヲ着ケ控訴人等ト競争セサルヲ得サルヨリ、大倉ト謀リ控訴人ヲ倒サント斯クハ起訴ニ及ヒタルモノナリ云々
右双方ノ陳述了リテ裁判長ハ尋問ヲ為セリ
 裁判長控訴代言人ニ問フ
  甲第一元了証ハ差入レタルモノニ相違無キヤ
 代言人
 - 第14巻 p.415 -ページ画像 
  答相違無シ
 問フ果シテ相違無クンハ東京並ニ小倉ノ株主総会ハ第二回株金ノ募集ニ決シ之ヲ差入レタルモノニアラズヤ、今之ヲ無効トスル理由如何、今一層判明ニ申立テヨ
 答一旦ハ第二回株金募集ニ決シタレトモ、其実衆株主等ハ商社ノ再興ハ見込無キヲ以テ之ヲ欲セサルモノニテ解散ノ談合トナリタルモノニテ、該証ハ錯誤ノ証書ナリ
 問然ラハ之ヲ取戻シ得可キモノナリト云フヤ
 答否取戻サヽルモ無効ノモノナリ
裁判長ハ又被控訴代言人ニ問
 問商社ハ目下営業ヲ為シ居ルヤ
 答目下ハ休業中ナリ、併シ毎月一回若クハ二回ハ器械ノ完全ヲ保ツ為メ運転ヲ為セリ
 問商社ノ理事委員顧問支配人等ノ役員ハ今猶ホ在リヤ
 答商社ノ理事支配人等ハ有給ノ役員ナレバ休業中ハ之ヲ置クノ必要無キヲ以テ無シ
 問諸物品等ヲ既ニ売払タルヤ
 答控訴人等カ漫リニ質入等為シ置キタル蔵入米即商品等ハ既ニ売払ヒタル分アルモ、其他ノ器械等ハ一品モ売払ヒタルコト無シ
右之外二三ノ尋問了リ、控訴代言人ヨリ左ノ如ク弁論セリ
 商社ハ既ニ散解ニ至リタルモノニテ決シテ営業ヲ持続スルノ念慮無キモノナリ、其訳ハ果シテ営業スルモノトセハ理事支配人等ノ役員無カル可カラサルニ其之レ無キハ一ツノ証拠ナリ、又決議録第六ニ諸物品並ニ蔵入米ハ何時ニテモ売却シ能フ可キ手続ヲ為スコト云々トアリ、是亦解散ノ証ナリ、其他何時ニテモ小沢・荒木ノ両氏ニ於テ引受ヲ望ムトキハ更ラニ相談ス可シトアルコト及ヒ残務委員ナルモノノアルハ解散ノ証ナリ、既ニ解散ニアル商社ニ対シテハ株金ヲ払込ムノ義務無シ云々
右弁論ニ対シ左ノ如ク駁論セリ
 控訴人ハ口ヲ開ケハ漫リニ解散々々ヲ唱フレトモ商社ハ何ノ日何ノ時ニ解散シタルヤ、始メ僅カニ全資本ノ十分ノ三ヲ募リ今又十分ノ二半ヲ募リツヽアルモノナレハ決シテ解散ス可キニ非ス、東京及ヒ小倉ノ総会ハ第二回株金ノ募集ヲ議決シタルモノニテ、決シテ解散等ノコト無キハ控訴人ノ差入レタル甲号証並ニ其自カラ提スル決議録ノ冒頭ニ著名ナリ、株主総会ノ第二回株式募集ニ決シ既ニ他株主ノ払込ミヲ為シ了リタル今日商社負債ノ原因ヲ為シタル控訴人等唯トク払込ミノ義務無クシテ可ナランヤ、仮リニ商社ハ解散ニ至リタルモノナリトスルモ、株主総会ニ於テ未済ノ株金ヲ募集シ負債ノ弁償ヲ決シタルトキハ、其商社維持目的如何ニ関セス之レカ株主タルモノ払込ミヲ為サル可カラサルハ看易キノ義務ナリ云々ヲ論出シ、猶ホ控訴人カ弁論ニ対シテハ逐一駁論ヲ為シタリ、特《(殊カ)》トニ炭坑競争云々ノ申立ノ如キハ其邪推ノ深キヲ駁シテ余サス
右了ツテ結審ヲ告ケタリ
              此筆記ハ極々要領ノ一部ノミナリ