デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治29年6月（1896年）

星野錫・大川平三郎・藤山雷太等王子製紙株式会社ノ深川・横浜両分工場ヲ譲受ケ東京印刷株式会社ヲ設立ス。栄一株主ニシテ相談役タリ。

青淵先生六十年史　（竜門社編）　第二巻・第一三八頁明治三三年二月刊
　○第三十章　製紙業及印刷業
　　　　第四節　東京印刷会社
東京印刷株式会社ハ星野錫・大川平三郎・藤山雷太等ノ発起ニ係リ、王子製紙株式会社ノ取締役ト協議シ、同両分社ヲ引受ケ、明治二十九年六月ヲ以テ設立シタルモノニシテ、其資本金ハ十五万円ナリ
同社ハ分社ヲ深川及横浜ニ置キ、事業何レモ皆繁盛ナリ、青淵先生ハ同社ノ株主ニシテ又相談役ナリ

第三課文書類別　会社十一明治二十九年　　　　　（東京府庁所蔵）
　　　　進達願
今般私共株式会社組織ヲ以テ東京印刷株式会社ヲ発起出願致度候ニ付別紙申請書並ニ起業目論見書・仮定款相添候間、何卒主務省ヘ御進達被成下度奉願上候也
　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区浜町二丁目十四番地
　　明治廿九年三月九日　　　　　発起人　星野錫(印)
　　　　　　　　　　　　東京市深川区島田町九番地
　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　鹿島岩蔵(印)
　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区本町三丁目八番地
　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　大橋佐平(印)
　　　　　　　　　　　　東京市深川区島田町九番地
　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　真田滝三郎(印)
　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区浜町二丁目十四番地
　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　星野鏡三郎(印)
　　　　東京府知事　三浦安殿

　　　　東京印刷株式会社発起認可申請書
今般私共株式組織ヲ以テ、東京印刷株式会社ヲ発起致シ、諸製版・印刷・製本及写真ノ業ヲ相営ミ度奉存候間御認可被成下度、依而目論見書及仮定款相添、此段奉申請候也
　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区浜町二丁目十四番地
　　明治廿九年三月九日　　　　　発起人　星野錫(印)
　　　　　　　　　　　　東京市深川区島田町九番地
　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　鹿島岩蔵(印)
 - 第15巻 p.327 -ページ画像 
　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区本町三丁目八番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大橋佐平(印)
　　　　　　　　　　　　東京市深川区島田町九番地
　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　真田滝三郎(印)
　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区浜町二丁目十四番地
　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　星野鏡三郎(印)
　　　　農商務大臣　子爵　榎本武揚殿

第三課文書類別　会社十一明治二十九年　　　（東京府庁所蔵）
明治廿九年三月三十日受日出　内務部第三課主任属
　知事(印)　　　　参事官(印)
　　内務部長(印)　　　第三課長(印)　　　農商掛(印)
　　東京印刷株式会社設立発起認可
　　申請書進達按
内三丙第一六七二号ノ五
当府下東京市日本橋区浜町二丁目拾四番地星野錫外四名ヨリ、東京印刷株式会社設立発起認可申請書進達方出願ニ付、予テ御内訓ノ事項ニ基キ調査ヲ遂ケ、左ニ意見ヲ前紙書正及進達候也
　　年　月　日　　　　　　　　　　知事
　　　　農商務大臣書《（宛）》
一法律命令ニ違反セス
一公安公益風俗ヲ害スル虞ナシ
一本社設立ノ為メ何レノ階級ノ人民ニ於テモ其生計及営業上ニ傷害ヲ被ムルノ虞ナシ
一就業者ノ健康安全ヲ害スル虞ナシ
一発起人ハ資力稍々相当ナルモ、概シテ経験者ニ乏シキヲ以テ、信用ノ程度ハ果シテ其企業ニ適スルヤ否ヤハ明言シ難シ
一企業ハ実際ノ需用ニ応シ好結果ヲ得ヘシト認ム
一資本ノ金額ヲ募集シ得ルト認ム
一資本金ハ企業ノ目的ヲ達シ又法令ヲ遂行シ能フト認ム
理由　明治廿六年農商務省内訓丁第百三十号ニ基キ本按ヲ以テ進達相成可然願

認第七七九号
農商務省指令商第四七八八号
　　　　　　　　　　　　東京府東京市
　　　　　　　　　　　　　日本橋区浜町二丁目十四番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　星野錫外四名
明治廿九年三月九日付申請東京印刷株式会社発起之件認可ス
　　明治廿九年四月十七日
　　　　　　　　　農商務大臣　子爵　榎本武揚印

第三課文書類別　会社十一明治二十九年　　（東京府庁所蔵）
 - 第15巻 p.328 -ページ画像 
　　　　進達願
今般東京印刷株式会社設立出願致度候ニ付別紙申請書・定款・目論見書・公証人ノ認証シタル株式申込簿・発起認可証謄本相添ヘ候間、何卒主務省ヘ御進達被成下度奉願上候也
　　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区浜町二丁目十四番地
　　明治廿九年五月十六日
　　　　　　　　　　　　　発起人総代　星野錫(印)
　　　　東京府知事
　　　　　　侯爵　久我通久殿

　　　　東京印刷株式会社設立認可申請書
拙者共儀明治廿九年四月十七日ヲ以テ発起認可ヲ得タル東京印刷株式会社ノ義、今般創業総会ヲ開キ定款・目論見書及役員撰挙ヲ議決シ株式申込結了シタルニ付、会社設立御認可被成下度、別紙定款・目論見書及公証人ノ認証シタル株式申込簿・発起認可証謄本相添ヘ、此段及申請候也
　　明治廿九年五月十七日　　　　　発起人　　星野錫
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区浜町二丁目十四番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　　鹿島岩蔵
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市深川区島田町九番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　　大橋佐平
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区本町三丁目八番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　　真田滝三郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市深川区島田町九番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　　星野鏡三郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区浜町二丁目十四番地
　　　　農商務大臣　子爵　榎本武揚殿
（別紙）
　　　　東京印刷株式会社定款
　　　　　　第一章　総則
第一条　当社ハ東京印刷株式会社ト称ス
親二条　当社ハ本店ヲ東京市日本橋区兜町二番地ニ、分店ヲ神奈川県横浜市太田町六丁目十四番地《（九脱）》ニ設置ス
第三条　当社ノ目的ハ諸製版・印刷・製本及写真ノ業ヲ営ムモノトス
第四条　当社ノ資本金ハ拾五万円ニシテ之ヲ参千株ニ分チ壱株ノ金額ヲ五拾円トス
第五条　当社ノ営業年限ハ設立免許ノ日ヨリ満五十個年トス、期限満了ノ際株主総会ノ決議ヲ以テ営業ヲ継続スルコトヲ得
　　　　　　第二章　株式ノ事
第六条　当社ハ壱株毎ニ株券一通ヲ作リ株主ニ交付ス
第七条　株券ヲ毀損汚穢シタル者ハ株券ニ請求書ヲ添ヘ新株券ト更換スルコトヲ得
第八条　株券ヲ紛失シタル者ハ其事由ヲ詳記シタル請求書ニ証人二名以上連署シテ新ニ株券ノ交付ヲ請求スルコトヲ得、此場合ニ於テハ当社ハ請求者ノ費用ヲ以テ三日間新聞紙ニ広告シ、三十日ヲ経テ故障ヲ生ゼザル時ハ其請求ニ応ズベシ
第九条　第七条・第八条ノ場合ニ於テハ請求者ヨリ手数料トシテ株券
 - 第15巻 p.329 -ページ画像 
一通ニ付金弐拾銭ヲ徴収スベシ
第十条　当社ハ株主名簿ヲ備ヘ置キ各株主ノ氏名並ニ所有株式ノ数及株券番号払込ミタル金額、株式ノ取得譲渡ノ年月日等総テ明瞭ニ登記スベシ
第十一条　株式ヲ売買譲渡セント欲スル時ハ其株券ノ裏面ニ売買譲受渡人記名捺印シ、之ニ当社所定ノ様式証書ヲ添ヘ当社ニ差出シ登記ヲ請フベシ、当社ハ之ヲ名簿ニ登記シ取締役其株券ニ記名捺印シテ株式移転ヲ証ス可シ、此登記料トシテ株券一通ニ付金五銭ヲ請求者ヨリ徴収スベシ
第十二条　株主ノ死去・破産・婚姻ニ因リ又ハ其他法律ノ作用ニ因リ其株式ノ所有権ヲ得タル者其事実ヲ証明スレバ株主トシテ之ヲ登記スベシ
第十三条　売渡・譲渡若クハ其他ノ方法ヲ以テ株式ヲ取得シタル者ハ其登記ノ了リタル時ヨリ従前ノ株主ト同一ノ権理ヲ有シ、義務ヲ負フベシ
第十四条　株主其住所若クハ姓名ヲ変更スル時ハ必ズ会社ニ届出ヅベシ、此届出ニ依リテ株主名簿ニ其旨ヲ記載シタル後ニ非ザレバ利益配当ヲ受ケ又ハ総会ニ於テ投票スルコトヲ得ズ
第十五条　株式売買譲与ノ登記ハ、通常総会ノ前ニ於テ三十日以内之ヲ停止スルコトアルベシ
　　　　　　第三章　取締役及監査役ノ事
第十六条　当社ハ通常総会ニ於テ参拾株以上ヲ有スル株主中ヨリ取締役三名、監査役二名ヲ撰挙スベシ
第十七条　取締役ノ任期ハ三個年、監査役ノ任期ハ一個年トス
　　但シ其任期満了ノ後再撰セラルヽ事ヲ得
第十八条　取締役又ハ監査役在職中不時ノ欠員アル時ハ臨時総会ヲ開キ其補欠員ヲ撰挙スベシ
　　但シ補欠員ノ在職期限ハ前任者ノ任期ヲ超ユルヲ得ズ
第十九条　取締役ハ其所有ノ株式参拾株ヲ当社ニ預ケ置クベシ、当社ハ封緘ノ上之ヲ保管シ融通ヲ禁ズル旨ヲ明記シタル預リ証ヲ交付スベシ
第二十条　取締役ハ当社一切ノ業務ヲ総括シ之ヲ施行スルノ権ヲ有ス然レトモ法律・命令・定款及総会ノ決議ヲ遵守スルヲ要ス
第廿一条　取締役ハ同僚中ノ一名ヲ撰デ専務取締役トス
第廿二条　取締役ハ株主中名望アル者一名ヲ撰挙シテ業務ノ相談役ニナスコトヲ得ベシ
第廿三条　取締役会ノ議事ハ多数ヲ以テ決ス、可否同数ナル時ハ会長自己ノ投票権ノ外ニ決票ヲ為スコトヲ得
第廿四条　監査役ハ取締役ノ業務施行ガ法律・命令・定款及総会ノ決議ニ適合スルヤ否ヤヲ監視スベシ
第廿五条　監査役ハ計算書・財産目録・貸借対照表・事業報告書・利息又ハ配当金ノ分配案ヲ撿査スベシ
第廿六条　取締役及監査役報酬ハ総会ノ決議ヲ以テ之ヲ定ム
　　　　　　第四章　株主総会ノ事
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第廿七条　株主総会ハ通常総会・臨時総会ノ二種トス
第廿八条　通常総会ハ毎年一月及七月ニ招集シ、臨時総会ハ取締役又ハ監査役ニ於テ必要ト認ムル時、又ハ総株金ノ五分ノ一以上ニ当ル株主ノ請求アリタル時招集ス
第廿九条　総会ノ招集ハ時日・場所・会議ノ目的及事項ヲ記載シタル書面ヲ以テ、会日ヨリ少ナクモ十五日以前ニ各株主ニ通知スベシ
第三十条　株主ヨリ臨時総会ノ招集ヲ請求スル時ハ、総会ヲ招集スル目的ヲ明記シテ当社ニ差出スベシ
第三十一条　総会ニ於テ出席株主定数ニ充タザレバ仮ニ決議ヲ為シ十五日以内ニ再ビ総会ヲ招集ス可シ、其通知ニハ第一総会ノ決議ヲ明告スヘシ、且ツ第二ノ総会ニ於テ出席株主議決権ノ多数ヲ以テ第一総会ノ決議ヲ認メタル時ハ之ヲ有効ト為スベキ旨ヲ明告スベシ
第三十二条　総会ノ議長ハ専務取締役之ニ任スベシ、若シ出席セザレバ他ノ取締役代テ議長トナル可シ、又取締役出席セザレバ株主中ノ一名ヲ推シテ議長ト為スベシ
第三十三条　総会ノ議長ハ会議ヲ延期シ会場ヲ転スルコトヲ得
第三十四条　総会ニ於テハ予メ株主ヘ通知シタル事項ノ外他ノ議事ニ渉ルコトヲ得ズ
第三十五条　定款ノ変更、任意ノ解散ニ付テノ臨時総会ニハ、総株主ノ半数以上ニシテ総株金ノ半額以上ヲ有スル株主（代理ヲ加ヘ）出席シ其議決権ノ過半数ニヨリ決議ス
第三十六条　株主総会ノ議決シタル事項ハ決議録ニ登載シ、取締役署名捺印ノ上之ヲ保存シ、其謄本ヲ作リテ各株主ニ送附スベシ
第三十七条　株主総会ニ於テハ其所有株式毎壱株ニ付壱個ノ議決権ヲ有ス
第三十八条　株主未丁年ナルカ若クハ瘋癲・白痴ナレバ後見人又ハ其他ノ正当ナル代理人之ニ代リ出席スルコトヲ得
第三十九条　株主自ラ総会ニ出席スルコト能ハザル時ハ、委任状ヲ以テ他ノ株主中ノ一人ヲシテ代理セシムルコトヲ得
　　　　　　第五章　計算ノ事
第四十条　当社ノ計算期ヲ二季ニ分チ、一月一日ヨリ六月三十日迄ヲ上半季トシ、七月一日ヨリ十二月三十一日迄ヲ下半季トス
第四十一条　取締役ハ事業年度ニ於テ、計算書・財産目録・貸借対照表・事業報告書・積立金額及利足又ハ配当金ノ分配案ヲ作リ通常総会ヘ提出シ認定ヲ求ムベシ
　　　　　　第六章　株金払込ノ事
第四十二条　当会社資本金拾五万円即チ参千株ノ払込期限ヲ定ムル事左ノ如シ
　　第一回　　金拾弐円五拾銭　　明治廿九年五月三十日
　　第二回　　金七円五拾銭　　　同　　　年十月三十日
　　第三回　　金参円七拾五銭　　同　　　年十二月廿五日
　　第四回　　金　五　円　　　　同　三十年三月廿五日
　　第五回　　金弐円五拾銭　　　同　　　年六月廿五日
　　第六回　　金弐円五拾銭　　　同　　　年十二月廿五日
 - 第15巻 p.331 -ページ画像 
　　第七回　　金弐円五拾銭　　　同　三十一年六月廿五日
　　第八回　　金弐円五拾銭　　　同　　　　年十二月廿五日
　　第九回　　金弐円五拾銭　　　同　三十二年六月廿五日
　　第十回　　金弐円五拾銭　　　同　　　　年十二月廿五日
　第十一回　　金弐円五拾銭　　　同　三十三年六月廿五日
　第十二回　　金弐円五拾銭　　　同　　　　年十二月廿五日
　第十三回　　金壱円弐拾五銭　　同　三十四年二月廿五日
　　但シ毎回払込ノ金額ト期日ハ三十日前ニ於テ各株主ニ通知スベシ
第四十三条　株金第一回ノ払込ヲ為シタル時ハ相当ノ領収証ヲ交付シ置キ、仮株券発行ノ上右領収証ト引換ヲ為スベシ、且ツ仮株券ハ払込ヲ為ス毎ニ其株券ニ入金額ヲ記入シ、取締役之ニ鈐印シテ領収ノ証トナスベシ
　　但シ最終ノ払込ヲ為シタル時ハ本株券ト交換スベシ
第四十四条　株金ノ払込ヲ怠ル時ハ其金高ニ対シ一日百円ニ付金四銭ノ延滞利息ヲ払ハシム、若シ延滞日数十四日ニ至ル時ハ其株主ニ催告状ヲ発シ、尚ホ三十日ヲ過ギテ払込ヲ為サヾル時ハ当会社ハ其株主ニ通知シテ其株式ヲ公売シ、買受人ヲシテ補欠員タラシムベシ
第四十五条　当社ハ前条ノ売得金ヲ以テ払込金及延滞利息並ニ之ガ為メ生ジタル諸費ヲ支払ヒ、余剰アル時ハ之ヲ其前持主ニ還付シ、若シ不足アル時ハ之ヲ前持主ヲリ徴収スベシ
　　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区浜町二丁目十四番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　発起人　星野錫
　　　　　　　　　　　　　同　深川区島田町九番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　鹿島岩蔵
　　　　　　　　　　　　　同　日本橋区本町三丁目八番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　大橋佐平
　　　　　　　　　　　　　同　深川区島田町九番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　真田滝三郎
　　　　　　　　　　　　　同　日本橋区浜町二丁目十四番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　同　　　星野鏡三郎

　　　　東京印刷株式会社起業目論見書
第一　当会社ハ株式組織トス
第二　当会社ハ諸製版・印刷・製本及写真ノ業ヲ営ムヲ以テ目的トス
第三　当会社ハ東京印刷株式会社ト称シ、本店ヲ東京市日本橋区兜町二番地ニ、支店ヲ神奈川県横浜市太田町六丁目九拾四番地ニ設置ス
第四　当会社ノ資本金ハ拾五万円トシ、之ヲ参千株ニ分チ、壱株ノ金額ヲ五拾円トス
第五　当会社資本金ノ使用及営業収支ノ概算ハ左ノ如シ
　　　　金弐万円　　　　　　　本店家屋
　　　　金弐千五百円　　　　　蒸滊機械壱式
　　　　金拾万弐千円　　　　　印刷製本其他諸機械壱式
　　　　金八千円　　　　　　　支店地所家屋
　　　　金壱万七千五百円　　　予備費
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　　　　　　合計金拾五万円

一金拾九万参千参百五拾八円七拾五銭四厘
　　　　　　　　　　　　　　　　壱個年　収入高
一金拾六万〇七百六拾参円拾五銭四厘
　　　　　　　　　　　　　　　　壱個年　収出高
　　差引
　　　　金参万弐千五百九拾五円六拾銭　純益
　　　　　　但資本金拾五万円ニ対シ年弐割壱分余
第六　当会社ノ存立期限ヲ設立免許ノ日ヨリ満五拾ケ年ト定ム
第七　発起人氏名住処及発起人各自ノ引受株数ハ左ノ如シ
　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区浜町二丁目十四番地
　　　　弐百株　　発起人　　　　　　　　　　　星野錫
　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市深川区島田町九番地
　　　　百株　　　同　　　　　　　　　　　　　鹿島岩蔵
　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区本町三丁目八番地
　　　　百株　　　同　　　　　　　　　　　　　大橋佐平
　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市深川区嶋田町九番地
　　　　百株　　　同　　　　　　　　　　　　　真田滝三郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区浜町二丁目十四番地
　　　　百株　　　同　　　　　　　　　　　　　星野鏡三郎
　　　　　　　　〆六百株
右之通相違無之候也
　　　　　　　　　発起人　　　　　　　　　　　星野錫
　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区浜町二丁目十四番地
　　　　　　　　　同　　　　　　　　　　　　　鹿島岩蔵
　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市深川区嶋田町九番地
　　　　　　　　　同　　　　　　　　　　　　　大橋佐平
　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区本町三丁目八番地
　　　　　　　　　同　　　　　　　　　　　　　真田滝三郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市深川区島田町九番地
　　　　　　　　　同　　　　　　　　　　　　　星野鏡三郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区浜町二丁目十四番地
　　　　定款訂正願
去ル四月十七日発起認可ニ相成候東京印刷株式会社仮定款中、創業総会ノ決議ヲ以テ別紙朱書之通リ訂正増加仕候ニ付御認可被成下度、此段奉願上候也
　　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区浜町二丁目十四番地
　　明治廿九年五月十七日
　　　　　　　　　　　　　　　発起人総代　星野錫
　　　　農商務大臣　子爵　榎本武揚殿
（別紙）
　第二十一条ノ次ヘ左ノ一条ヲ加ヘ順次繰下グ
　　（太字ハ朱書、以下同ジ）
　　第二十二条　取締役ハ株主中名望アル者一名ヲ撰挙シテ業務ノ相談役ニナスコトヲ得ベシ
第三十二条　総会ノ議長ハ会議ヲ延期シ会場ヲ転ズルコトヲ得
　　　但シ書ヲ削除ス
 - 第15巻 p.333 -ページ画像 
　第三十二条ノ次ヘ左ノ一条ヲ加ヘ以下順次繰下ク
　　第三十四条　総会ニ於テハ予メ株主ヘ通知シタル事項ノ外他ノ議事ニ渉ルコトヲ得ズ

壱銭印紙
　　　　割印　株式申込書
一東京印刷株式会社株式　弐百八株
右ハ貴社仮定款規則ヲ遵守シ前書ノ株式引請申度此段申込候也
　　　　　　　　　　　　　　住所
　　明治廿九年四月十七日　　　東京市深川区福住町四番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　東京印刷株式会社　御中

第三課文書類別　会社十一明治二十九年　　　　（東京府庁所蔵）
明治廿九年五月廿二日受日出　内務部第三課主任属
　知事(印)　　　参事官(印)
　　内務部長(印)　　第三課長(印)　　農商掛(印)
内三丙三九五三号ノ二
　　会社設立免許申請書進達ノ件
曩ニ発起認可相成候東京印刷株式会社発起人星野錫外五名ヨリ会社設立申請書提出候ニ付取調候処、不都合無之被存候条、仮定款訂正願書ト共ニ、設立申請ニ関スル書類及進達候也
　　年　月　日　　　　　　　　　　知事
　　　農商務大臣宛
農商務省指令商第七一三二号
　　　　　　　　　　　　東京府東京市日本橋区
　　　　　　　　　　　　浜町二丁目十四番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　星野錫　外四名
明治廿九年五月十六日付申請東京印刷株式会社設立ノ件免許ス
　　明治廿九年五月廿九日
　　　　　　　　　農商務大臣　子爵　榎本武揚印

　　　　受取証
一東京印刷株式会社設立御認可書
　　　　　　　　　　　　壱通
　右正ニ領収仕候也
　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区浜町二丁目十四番地
　　明治廿九年五月三十日　　　　　　　　星野錫(印)
　　　　東京府知事　侯爵　久我通久殿

第三課文書類別　会社十一明治二十九年　　　　　（東京府庁所蔵）
　　　　進達願
去ル四月十七日発起認可相成候東京印刷株式会社定款中別紙ノ通リ訂
 - 第15巻 p.334 -ページ画像 
正仕候ニ付、主務省ヘ御進達被成下度奉願上候也
　　　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区浜町二丁目十四番地
　　明治廿九年五月三十日　　発起人総代　星野錫(印)
　　　　東京府知事　侯爵　久我通久殿

（別紙）
　　　　定款訂正届
去ル四月十七日発起認可相成候東京印刷株式会社定款中左記ノ通リ訂正仕候ニ付、此段御届仕候也
定款第十四条中（会社ヘ届）ノ下「出」ノ一字ヲ加フ
定款第三十一条中（明旨スベシ）トアルヲ「明告スベシ」ト訂正
定款第三十五条中（其議決）ノ下「権」ノ一字ヲ加フ
定款第四十二条中ノ第一回払込期限ヲ明治廿九年六月十五日ト改ム
　　　　　　　　　　　　東京市日本橋区浜町二丁目十四番地
　　明治廿九年五月三十日　　　　　　　　　星野錫(印)
　　　　農商務大臣　子爵　榎本武揚殿

（王子製紙株式会社）明治廿九年前半季考課状　明治二九年七月
　　　　株主総会
二月十日午後二時東京製紙分社ニ於テ株主臨時総会ヲ開キ、左ノ決議ヲ為セリ
　　一資本金増加ノ件
　　一増株募集方法及株金払込期限ノ件
　　一東京及横浜両製紙分社売却ノ件
　　一前項決議ノ結果ニ拠リ定款変更ノ件
　　　処務要件
六月三十日東京横浜両製紙分社ヲ東京印刷株式会社ヘ売却セリ

竜門雑誌　第九八号・広告　明治二九年七月
　　　　○東京印刷株式会社広告
当会社支店東京製紙分社及横浜製紙分社ノ儀、今般東京印刷株式会社ヘ譲渡シ一切ノ業務ヲ同社ヘ引継候間、従来ノ通リ御愛顧御引立被下度此段広告候也
　　明治廿九年六月　　　　　　　　　　　王子製紙株式会社
当会社ノ儀ハ今般王子製紙株式会社支店東京製紙分社及横浜製紙分社ヲ譲受ケ、両分社ニ於テ営業致居候活版・石版印刷・諸製版・製本・写真等ノ事業一切ヲ継承シ、更ニ分工場ヲ増設シ一層業務ヲ拡張シ、迅速精巧ヲ旨トシ廉価ヲ以テ御便利相計候間、倍旧御引立被成下候様奉願候、此段広告仕候也
　　明治廿九年六月　　　東京印刷株式会社
　　　　　　　　　　　　　　　専務取締役　星野錫
　　　　　　　　　　　　　本社　東京市日本橋区兜町二番地電話　二百〇五番
　　　　　　　　　　　　　分社　横浜市太田町六丁目九十四番地電話　四十七番
 - 第15巻 p.335 -ページ画像 

竜門雑誌　第一七一号・第五一頁　明治三五年八月
△東京印刷会社　同会社本年上半季の利益金一万千円にして、之に前季繰越金千四百円を加へ株主に向ては九千円（一割二分）の配当を為し、二千五百円の積立を為せり、其利益金分配案左の如し
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　円
　　本期利益金　　　　　　　　　　　　　一一、〇八七・六五三
　　前季繰越金　　　　　　　　　　　　　　一、四五四・七〇三
　　　合計　　　　　　　　　　　　　　　一二、五四二・三五六
　　　　内
　　　準備金　　　　　　　　　　　　　　　一、五〇〇・〇〇〇
　　　別途積立金　　　　　　　　　　　　　一、〇〇〇・〇〇〇
　　　配当金　　　　　　　　　　　　　　　九、〇〇〇・〇〇〇
　　　後期繰越金　　　　　　　　　　　　　一、〇四二・三五六

青淵先生公私履歴台帳　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
　　　　民間略歴　（明治二十五年以後）
明治二十九年
○上略
一東京印刷株式会社ノ成立ニ際シ相談役ニ挙ケラル
　　本会社ハ東京製紙分社ノ組織ヲ改メ、最モ完全ナル方式ニヨリテ印刷業ヲ起サントスルモノナリ、勧誘ニ応シテ其成立ヲ賛助シ、後相談役ニ挙ケラレ、引続キ其職ニアリ
○中略
一東京印刷株式会社相談役　卅七年十月辞ス
○中略
　　以上明治三十三年五月十日調

渋沢栄一　日記　明治四二年　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
六月十九日　雨冷
○上略　六時○午後　常盤屋ニ抵リ印刷会社ヨリノ饗宴ニ出席ス、星野錫氏ヨリ謝詞アリ、酒間種々ノ余興アリ○下略

星野錫翁伝　（同翁感謝会編）　第一一一―一一三頁昭和一〇年七月刊
　　　　十三　東京印刷株式会社創立
　此処に改めて言ふ迄もなく、明治廿七年より八年に跨つて行はれたかの日清戦役は、財界未曾有の好況を促し、所謂日本資本主義の礎を築いた。この時に当り、東京製紙分社は明治二十九年五月、王子製紙株式会社から独立し、且横浜分社をも合併して、此処に東京印刷株式会社と改称した。創立委員であつた翁は社長に挙げられ、爾来毎期継続して今日に至つて居る。
　　現在、印刷工場は深川区白河町並びに麹町区紀尾井町にあり、且丸の内日本興業銀行本店内の一部に於て出張作業を行つて居る。
　　同社の資本金は、その独立当時に於て拾五万円、四十二年に五拾万円となり、大正十二年七月、壱百万円に増資し、現在の払込金は
 - 第15巻 p.336 -ページ画像 
七拾六万余円である。
　而して、同社は言ふ迄もなく、東京製紙分社の後身に他ならないのであるから、唯その独立後数年間に於ける事歴のうち、得に興味あるもの、重要なるものについて一言するに留めやう。
　先づ日清戦役後満鉄総裁後藤新平伯の勧めにより、同社は三十三年大連市に於て満洲日々新聞を発刊し、以て満洲啓発に努めた。（因に当時翁は日支外交に大なる関心を抱き、自ら之が為に為すところあらんとして、多くの支那留学生に援助を惜しまなかつた。）越えて、日露戦争の開始を見るや、同社は、曾根大蔵大臣より、日本勧業銀行発行の五円貯蓄債券八十万枚を短時日内に上納せよとの内命を受けた。時に翁思へらく「之、国家の安危に関することであるから、如何なる困難をも排してこの事に当るべく決心しやう。仮令、従来の得意先の注文を全部打ち棄てても、この下命に服さねばならぬ。而して万一之が為め株主等に対し、迷惑を及ぼす様な事になれば、死して謝するの一途あるのみ」と。斯かる深き決意を以て、この仕事に全力を注いだ結果、翁は本下命を完ふする事を得たのみならず、天も翁の意中に同情を寄せたのであらうか、得意先は幸にして忽ち旧に復し、随つて会社の繁栄も旧日の如くなるを得たのであつた。
　その他、この戦役に際して、官報号外、恤兵部の承認状、勲記用紙の摺込、賞勲局の辞令用紙等は、特に同社に下命せられたものであつた。更に、同戦役に関聯ある印刷を挙げれば、参謀本部より日露戦史の印刷を下命されたが、之は本文拾巻、附図拾巻といふ大部の物であつたから、翁は、之を東京印刷同業組合所属の幾つかの大会社に責任を以て分担納入せしめたのであつた。この機に際し、同社は又、参謀本部の認可を得て、簡単明瞭なる日露戦史写真帖上下二冊を発行し、全国の希望者に頒つた。
　又、時の逓信次官小松謙次郎氏より日露戦役記念絵葉書の印刷を命ぜられ、その種類五十有余、総数約六百万枚を納入したのであつた。
（因に之は、前年赤十字社に納入せるアートタイプ写真入を見本として作つたものであつた。）
　斯くて、我が国文化諸般の急激なる発展に伴ひ、印刷会社も続出して、印刷界はその創始時代を経過したから、吾々は翁の印刷業界に於ける活動に関しては筆を擱き、他の方面に於ける翁の動静を跡づけることゝしやう。
　　　○栄一ハ製紙業ト共ニ印刷業ニモ留意シ、明治二十年製紙会社々員星野錫ヲ米国ニ派遣シ、アートタイプ製版術ヲ研究セシメシコトアリシガ、（本資料第一一巻第七一頁以下参照）同社分工場ヲ以テ東京印刷株式会社ヲ組織スルニ至リシモノナリ。