デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治13年5月1日（1880年）

是ヨリ先四月十二日当行外務省ニ申牒シ、元山津ニ当行支店ヲ設置スベキヲ以テ、同港領事館金銀出納取扱ヲ命令セラレンコトヲ稟請シ、是日允准セラル。

爾来当行支店・出張所韓国内ニ設置セラルルモノ多シ。栄一頭取トシテ指揮頗ル努ム。

第一国立銀行半季実際考課状　第一三回・第一三頁明治一三年一月刊
　　　　○営業事務要件ノ事
○上略
一曩ニ花房代理公使朝鮮ニ到リ新港ヲ咸鏡道元山津ニ開設セラルヽニ当リ、当行釜山浦支店ヨリ役員一名ヲシテ同公使ニ随行シ、同津ノ形勢ヨリ人情風俗ニ至ルマテ其概略ヲ訪察セシメタリ、他日着手ヲ得ルニ至レハ順次其事情ヲ報告スヘシ
○下略

第一国立銀行半季実際考課状　第一四回・第一三頁明治一三年七月刊
　　　　○諸御達並願伺之事
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○上略
一朝鮮釜山浦支店ヨリ元山津ニ出張所ヲ開設スヘキ為メ昨年行員ヲ遣シテ視察セシメタル一節ハ前回既ニ報告セシカ、遂ニ其開設ノ儀ヲ定メ、本年五月総領事赴任ノ際行員之ト同行シテ同津ニ到リ、出張所経営ノ為メニ従事セリ
○下略

第一国立銀行半季実際考課状　第一四回・第二―七頁明治一三年七月
　　　　○諸御達並願伺之事
一大蔵省ニ申牒（一月）シ朝鮮国貿易ノ事ヲ陳シ、新銅貨三万円ヲ拝借シテ韓銭ノ乏少ヲ補助セン事ヲ乞フ、既ニ釜山浦支店ニ拾万円ノ拝借ヲ允許セラレタルヲ以テ准サレス、尚再ヒ申牒シテ貿易上ノ得失ヲ覼述シ、其乞フ所元山津ノ新市上ニ流通スヘキヲ以テ遂ニ壱万円ノ拝借ヲ允准セラレタリ
○中略
一四月十二日外務省ニ申牒シ、本行支店ヲ朝鮮元山津ニ開設スヘキヲ以テ同港領事館金銀出納取扱ヲ、釜山浦支店ニ在テ管理官庁ノ金銀出納ニ従事スルニ準シテ命令セラレン事ヲ稟請シ、五月一日請ノ如ク允准セラレタリ
○下略

渋沢栄一書翰　大橋半七郎宛（明治一四年）四月二日　（大橋半七郎氏所蔵）
其後ハ多忙ニ紛れ出状も不仕候得共貴方毎便之御状ハ一々拝見仕候、然者元山津出店維持ニ付外務省へ出願之義ハ外務卿へも其次第丁寧申立、花房・近藤両君ニも種々心配いたし呉候得共、大蔵省之方中々思ふ様ニハ御承知無之、終ニ㝡前拝借金之中銀貨七万円を向後三ケ年延期相願、銅貨之分ハ一時返納いたし候、尤銀貨之分も未タ許可之命無之候得共、是ハ間違なく行届可申存候、其外ニも何か外務省ニて銀行相応之御用有之候ハヽ御下命被下度と相願候得共、何分同省ニハ貸下金等之事ハ出来兼、差向銀行ニ対し特典付与候方法無之ニ付、追而何か考案相立申出候ハヽ出来得へき事ハ聞届可申との事ニ候間、尚御考之上同省へ出願すへき事共御考付候ハヽ御申越可被下候
佐藤忠一も、此間静岡より帰京ニ付、今日之郵船ニて出立為致度と存候処、弟ニ不身持之もの有之家事片付兼候よし、旁以今少々滞京本月十日頃ニハ出立、下旬迄ニ貴地着之積申付候、又同人と同行ニて木下清兵衛と申者此度新ニ派出申付候、是ハ兼而貴方より御望有之候故手堅きものニて人撰せしものニ候、余リ事務ニ習熟ハ無之候得共手馴候ハヽ往々用立可申と存候、右木下ハ其弟栄二郎と申者永年小生之手ニて東京府養育院之世話ニ尽力いたし居候、其縁ニて兄清兵衛も相談せし事ニ候
仁川港出張之事ハ品ニ寄増田ニても差出可申と存候得共、引続き釜元両地も不景気ニ付此末仁川とても何か格別之事ハ無之と存候間、強而経費を支消候も如何と先今年ハ見合可申存候、併貴方之都合ニより幸便ニも有之候ハヽ貴兄一応立帰りニ一覧之為出張候而も可然と存候、
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右等ハ尚両三日中ニ近藤書記官ニ面会之上開港之手順等問合、佐藤出張之際詳細可申進と存候、御含可被下候
貴地も引続き不景気之由、本邦も同様春来頓と引立不申、金融ハ閑慢ニて利足も引下ケ、公債抵当ハ年壱割も借人少き有様ニ候、其上為替割引等も商売不振之為望人薄く、当坐預りハ各地ともニ増加し、銀行も利足収入よりハ支払ニ苦む姿ニ相成申候、要するニ此不景気之原因ハ紙幣其価を復するニ関係いたし候間中々永続可致と被存候ニ付、先以各地勉而節倹を主とし辛抱いたし候外無之候、本年ハ各地支店支配人を一時出京申付、三月八日頃より会同し種々之事共会議之上大概取究候間、廿八日頃ニ大坂西京神戸之人々ハ帰店仕候、是ハ百事打合之為メ年々例として此会同為致候積ニ候、右会議取究候件々ハ役場より申進候間御承知可被下候
右者毎々来状之回答旁近況申上度如此御坐候、何れ次便佐藤出張之時尚詳細可申上候　匆々
　　四月二日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　大橋半七郎殿
　尚々前田総領事ハ御出京之由承知仕候間、書状も差出不申候、もしも御駐釜ニ候ハヽ宜御伝声可被下候、竹添公使ヘハ次便佐藤出張便に托し一書さし上候積ニ御坐候

渋沢栄一書翰　大橋半七郎宛明治一四年七月二一日　（大橋半七郎氏所蔵）
　　明治十四年七月廿一日
其後殊ニ呈書も不致候得共店務之要領ハ常々役場状ニて詳悉いたし不相替御勉強之段承知仕候、先頃来増田氏も出京留守中百事御担任別而御勤労之義と察上候、爾来貴境之商情ハ米穀之輸出内国相場下落之為不引合と相成、又輸入品も円限相場未《（銀）》タ充分低下ニ至らさる故売捌不宜其為メ売買共不景気之由、さもあるへき事と遥察仕候、本邦とて諸商業ハ上半季ニ於て都而静穏ニて、銀行業ニ取りても時々資本閑却之姿ハ有之候得共、内地各店共幸ニ従来勉強せし為替割引之事業ハ相応ニ有之候故、総会之利益計算も㝡上之割合を得、株主も満足し無滞相済申候、貴方之如き右売買之寂寥なるニ引替へ充分之純益を得候も諸君御尽力之致す処と別而陳謝仕候
釜元両港之景状及将来仁川開港之見込も増田ニ承リ候後花房公使御帰朝、時々相伺候次第も有之、到底仁川ハ来年九月後と予定之由ニ付真之着手ハ十六年春ニ相成候哉と存候、然時ハ夫迄之商売ハもし今日之如く輸出入不引合ニ候ハヽ可成堅固ニ維持之策相立候方専一と存候、今日之如く商情委靡いたし候ハヽ自分抵当品ニて借用望人又ハ当座過振等多く相成自然本店差引尻相増可申と存候間、勉而御拒絶被成、貸付不相嵩様ニ可被成候、総而銀行之資金ハ可成丈ケ運動資本ニ供し常ニ出納之繁なる様御心掛専一ニ候、夫故荷為替又ハ一時之短期貸ハ相勉候とも据置ニ相成候貸金ハ堅く御断可被成候
増田も来便ニハ帰釜いたし候様可相成候得共、品ニ寄当分貴方之事務ハ貴兄ニ托し、同人ハ再帰国候様可致と存候、是ハ他之一店ニ主任を
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要し候と貴方も仁川開店迄ハ先保守専一ニ付貴兄御主任被成候而充分差支無之と存候故ニ候、右等ハ尚増田再赴之節委細可申上候
来遊之韓人一行も先日拙宅ニ一会を開き、公使其外外務少補《（輔）》ニも臨席有之候、且魚允中・洪英植抔ハ時々来訪、聊経済談も講習仕候、近藤領事殿へ其段御伝声可被下候
当用ハ役場状ニ譲り近況一報如此御坐候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一渋沢
　　　　大橋半七郎殿
　尚々大暑中ニ候得共本年ハ内地冷気勝ニて米作ニハ懸念不少候也

渋沢栄一書翰　大橋半七郎宛明治一四年八月二四日　（大橋半七郎氏所蔵）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（朱書）
　　明治十四年八月廿四日　　　　　　　　　　　　　九月十八日着
貴方七月三十一日附貴翰十一日ニ到手拝見仕候、然者先便申入候増田氏他之支店へ転任之事ハ此度役場状より申進候通ニ付、兎ニ角一応同人渡韓ハいたし候得共、向後貴店之事務ハ貴兄ニ御担任之段申進候義ニ付何分ニも御尽力可被下候、尤往々仁川港開市之都合も有之、其間とても臨時用向有之候ハヽ増田ハ当分貴方掛之名を存し便宜派出之筈ニ付、常務さへ整頓いたし候ハヽ臨機之事ハ御相談相手ハ有之訳ニ候間御懸念なく御引受可被下候
貴地商況ハ毎便之役場状ニて一覧、さして異状無之候得共不相替閑散之由、且元山之方諸商持越品多く出張店より貸金返入も不捗取よし、是ハ精々取立方宇都宮へ申遣し貴方差引尻相嵩不申様御注意可被下候
韓政府貸金之内話ハ今日金融逼迫之際ニハ望無之義ニ付、委細之事情増田へ打合置候、其中花房公使へも引合ハ可致と存候
増田も此便ニ間ニ合兼候ニ付次便ニハ無相違出立之筈ニ候、資金送付等も暫時延引候間委細ハ本日役場状ニて御承知可被下候
志賀氏ハ帰国之志願ニ候よし、不本意之至ニ候、拙生過日一書差送リ候得共、同様帰情決定之様子残念千万ニ候、もしも尚在勤ニ再思候ハハ大ニ都合ニ付、無屹度御忠告可被下候、兎ニ角増田出張之節貴店詰役員壱人を撰定同行之筈ニ候、右等回答旁可得御意如此御坐候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一印
　　　　大橋半七郎殿

渋沢栄一書翰　大橋半七郎宛明治一四年九月二七日　（大橋半七郎氏所蔵）
　　明治十四年九月廿七日
拝啓然者先便を以増田渡韓延引之義も申進候処、弥明後廿九日之郵船ニて発程候間百事同人着御聞取可被下候、且同人ハ貴方引継事務相済候ハヽ帰国直ニ西京ニ相任候筈ニ御坐候間、何卒其跡之御引受万々御依頼申上候
役場状之用向ハ委細回報候間右ニて御承知可被下候
魚允中ニ講授仕候銀行創設順序ハ写壱冊増田持参之筈ニ付御一覧可被下候、且近藤領事ヘ可然御申述可被下候、韓政府ヘ貸金云々ハ本行ニハ望無之候得共、先方相望候ハヽ我政府之内援を借リ、何とか工夫し少々も取扱申度、其事情意味合も増田ニ丁寧打合申候、御聞取可被下
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候業務ハ何分引立不申由、何れ緩々心掛候事ニ付、一時之盛衰ニ頓着無之様可被成候、右一書申上度　匆々
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一印
　　　　大橋半七郎殿

渋沢栄一書翰　大橋半七郎宛明治一四年一一月二三日　（大橋半七郎氏所蔵）
　　明治十四年十一月廿三日
貴地本月十三日附御状廿一日到手拝見仕候、増田帰朝後貴店一同御清栄之条拝賀、宇都宮・志賀元山店交代之事も了承仕候、爾来貴方之商況兎角引立不申由、別ニ致方無之候間先以心永く時機相待候外無之候韓地ヘ之輸入品相減候時ハ韓銭割合引上候との義ハ恰も横浜ニて舶来品輸入多き時ハ銀円騰貴候と同理合ニて実貨幣之価位ニ関し候影響と存候、夫故紙幣国之商業ハ危変多きものと常ニ覚悟を要し候事ニ候
旭会社との結約ハ不都合無之事と存候ニ付、少々字句ニ改正案相添役場状より回答仕候、可然御取扱可被下候
韓政府より借用金之話ハ其後何とも申出無之由、是ハ曾而増田ヘ申談候事情ニ付、敢而従当方好候事ニハ無之候
○中略
朝鮮信使も来朝中ニ付、近日大倉と申合、王子拙宅ニて書画会之如く一会相催し候筈ニ候、時々来客多きニハ困却仕候、先頃之魚允中ハ当節上海より天津ヘ旅行之由上田より申来候、中々諸方奔走被致候事ニ候
廟上之更迭ニ付而ハ外邦御聞込如何哉と存候得共、別ニ御懸念被成候事も無之候、各省卿も夫々御懇意之方々ニ付営業上何も差響無之と存候、御安心可被下候、併此度之変化ニてハ国会政談家ハ少々気勢を挫かれ候姿ニて、新聞屋ハ閉口之様子ニ候
本店及各支店とも平穏ニて営業も順当ニ候、御降意可被下、繰廻しも恰好ニ候間可也之結果と被存候、増田も西京ニ勉強いたし候、志賀之事委細承知、追而帰京候ハヽ又相談も可致と存候得共、可成貴方之都合を謀リ貴店を退き候様御申合可被下候
右等回答旁如此御坐候　匆々
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　大橋半七郎殿

渋沢栄一書翰　大橋半七郎宛明治一四年一二月七日　（大橋半七郎氏所蔵）
　　明治十四年十二月七日
一翰啓上仕候、然者先便出状後未タ来信ハ無之候得共貴方店務ハ不相替堅固ニ御取扱と存候、兼而増田より申聞有之貴兄も一時迎妻之為御出京云々ハ尤之義ニ付、貴方跡取締向充分御手配被成暫時立帰リ御出京可被成候、志賀・佐藤抔へも能々用向御申置専一ニ御心掛可被下候先日信使を王子弊屋へ招待し一日盛会を開き、其節花房公使ニも例之韓政府融通金之話承合候得共、何分政府上之事ニハ慥ニ相望候様子も無之由ニ候、尚近藤君ニ御聞合可被下候、信使も未タ用事不相済帰国ハ取究不申由、多くハ金川開港之談判《（マヽ）》ニも有之哉と相察申候
店務ニ付神戸より荷為替云々増田西京より申来候得共、是ハ元山之方ニ付
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又貸方相増候恐も有之候ニ付同人へも申遣し候、目下本邦も金融世話敷（生糸葛藤ハ和解仕候得共跡売込方不進ニ付）候間、貴方貸越ハ可成節減仕度ニ付其御経営専一ニ御心配可被下候
本店各支店とも無事随分世話敷営業仕候、政府上ニハ変更有之候得共店務ニ関係無之候、是又御省念可被下候
匆忙中右等一言申上度如此御坐候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一印
　　　　大橋半七郎殿
　　志賀其外へも宜敷御伝声願上候也

第一国立銀行半季実際考課状　第一三回・第七―八頁明治一三年一月刊
　　　　○営業事務要件ノ事
○上略
一朝鮮釜山浦支店ヨリ同地管理官庁ノ出納取扱ヲ稟請スルヲ以テ、外務省ヨリ該出納ハ目今些少ノ金額ナルニ因リ無手数料ニテ奉承スヘキ旨ヲ命ス、然レトモ他日多数ノ出納ヲ取扱フニ至テハ必ス其手数料ヲ受ケサルヲ得ス、因テ之ヲ稟議シ未タ決定ニ至ラス
○下略

第一国立銀行半季実際考課状　第一四回・第三頁明治一三年七月刊
　　　　○諸御達並願伺之事
○上略
一大蔵省ニ申牒シ（二月）朝鮮貿易日ニ開クルニ当リ彼ノ産出スル所ノ金銀錠塊及砂金ノ如キ之ヲ本邦ニ購求セハ大ニ利益ヲ得ヘキヲ以テ、分析試験ノ為メ其適当ノ人一員諸器械ヲ併セテ同省ヨリ在韓地本行支店ニ貸渡サレン事ヲ稟請シ、未タ批准ヲ蒙ムラス
○下略

第一国立銀行半季実際考課状　第一四回・第三三―三五頁明治一三年七月
　　　　○本支店景況之事
○上略
一朝鮮釜山浦支店ノ景況ハ全ク内地ト其趣ヲ殊ニシ、内地金融必迫ノ時ニ当テ彼地ニ在テハ敢テ痛痒スル所ナク営業ノ節目皆尽ク前季ヨリ進歩セリ、是蓋新市日ニ開クルニ際シ当店勉焉ト従事スルノ結果ナリ、然而シテ当半季間ノ営業ハ昨年十二月以来一月ニ入リ極メテ繁劇ニシテ、輸入物品大ニ消售シ、是カ為メ我ニ得ル所ノ韓銭莫大ノ高ヲ成シ、其相場モ大ニ低落セリ、二月ニ至リ漸ク閑暇ニ向ヒ、三月ヨリ四月ニ入リ次第ニ貿易ノ衰兆ヲ現ハシタル者ハ、蓋韓人ノ衣食ヲ貯ルハ概ネ旦夕ノ給ニ過キズ、又道路険悪ニシテ運送ニ不便ナルカ為メニ、昨年以来今年ニ連リ我消售スル所ノ品ハ速ニ各道ニ分布スルヲ得スシテ、皆商賈ノ手ニ在テ釜山附近ノ市邑ニ滞積シ、彼已ニ購求ヲ欲セサルニ因レリ、然レトモ是ハ本港貿易ノ常套ナルヲ以テ決シテ恐ルヽニ足ラサル所ナリ、独韓銭ノ交換ニ至テハ其価格ノ時々高低スルヲ以テ、宜シク良法ヲ設ケテ売買ノ権衡ヲ平定セ
 - 第16巻 p.17 -ページ画像 
サルヘカラサル者トナスヲ以テ我商賈ノ相共ニ注意スル所ナリ、元山津開港ノ挙モ業既ニ着手シ当店ノ分業モ経画既ニ成リ方今行店ノ新築ニ従事セリ、前陳ノ事情ナルヲ以テ其収益モ昨年半季ニ比シテ大ニ超過スルヲ得タリ

第一国立銀行半季実際考課状　第一四回・第七―八頁明治一三年七月刊
　　　　○諸御達並願伺之事
○上略
一四月十六日租税局ニ上申シ釜山浦支店ニ在テハ向ニ官准ヲ得テ証券印紙ノ売捌ヲ担当シ、大ニ便利ヲ得ルニ因テ尚又訴訟用罫紙ヲ売捌カン事ヲ請ヒ、五月十一日允准セラレ、且該地領事館ニ乞フテ其招牌ヲ収領スヘキ旨ヲ指令セラレタリ
○下略

第一国立銀行半季実際考課状　第一五回・第五頁明治一四年一月刊
　　　　○諸御達並願伺之事
○上略
一同○明治一三年八月十日朝鮮領事館ヨリ当行釜山浦支店ハ前ニ許可セラレタル官庫壱棟払下ノ事ヲ廃止シ、更ニ該庫無年期ニテ貸与セラルヘキヲ以テ何時ヲ論セス官用物ヲ保護シ常ニ破損ヲ修繕スヘキ旨ヲ指令セラレタリ
○下略

第一国立銀行半季実際考課状　第一五回・第九頁明治一四年一月刊
　　　　○諸御達並願伺之事
○上略
一同○明治一三年一二月十八日外務省ヨリ清国上海、朝鮮元山・釜山両港等領事館預ケ金命令書ヲ交附セラレタルニ因リ即日領命書ヲ上申セリ
○下略

第一銀行五十年史稿　巻三・第五九―六〇頁　大正一二年刊
　○第一編　第三章　営業の拡張
　　　　第三節　海外発展
○上略
明治十三年五月、同国元山津の開港するや、直に出張所を置き、其領事館の官金出納事務並に上海領事館の為替事務をも取扱ひしが、十五年一月仁川の開港するに及び、十一月を以てまた出張所を設け、京城公使館及び仁川領事館の官金出納の事に任じたりき。かくて本行の支店出張所は釜山・元山津・仁川の三港相鼎立して金融の便を図り、且つ我国の貨幣を流通せしむることに努力したるが、釜山・仁川は形勢の地を占めたるがゆゑに、業務盛大に赴きたれども、元山津は産物多からず、資力ある商人の居住するもの尠く、発達遅々たれども、地金銀の買収に従事するなどあらゆる方法を講じて以て其永続を図れり。此の如くにして、朝鮮における本行の経営は次第に歩を進めたれども
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なほ創業の時代に属し、事業の見るべきは寧ろ十七年以後にあり。

渋沢栄一書翰　大橋半七郎宛（明治一六年）一月一〇日　（大橋半七郎氏所蔵）
副啓然者元山店主任之事ハ役場より申上候如く佐藤と相定、一時同人帰朝せしめ再渡赴任為致度ニ付其積リニ御命し可被下候、又元山店之義ニ付総領事へ願書差出候義ハ次便ニ増田へも往復之上可相廻候得共、不取敢拙生より一書前田君へさし上置右願書之通徹候様仕度と存し別封相認封入いたし候間、一応御覧之上貴兄御持参被成篤と事情御申述可被成候、而して次便願書送付いたし候ハヽ兎ニ角前田君より表向外務省へ御取次被下候ハヽ、尚外務卿・花房君へも別而願請いたし何とか保護之工夫可相願と存候ニ付夫是可然御申立可被下候、此段副書申上候　匆々
　　一月十日　　　　　　　　　　　　　　　　　　栄一栄一
　　　　半七郎殿

渋沢栄一書翰　前田宛明治一六年四月九日　　（雨夜譚会所蔵）
　　明治十六年四月九日
益御清暢奉賀候、然者過頃懇願仕候弊行元山津店維持之義ニ付歎願之事ハ其後御本省へ歎願仕候処外務卿閣下ニも種々御心配被成下、大蔵省ヘ御照会被下多くハ㝡前之拝借金中幾分之高据置之義許可可相成奉存候、是ニてハ弊店之見込ハ余リ特典とハ不奉存候得共、何分外務御省よりハ別ニ御保護被下候途無之由致方無之候、併何か見込相立申上候ハヽ相叶候義ハ許可も可被下旨御示命も有之候ニ付、尚大橋抔へも申遣し考案も御座候ハヽ其中再願も可仕候間御含可被下候、併右様迄御本省御懇命を得候も全く老台下より御厚配御書通被下候故之義と別而難有奉存候、右ニ付元山之方ハ佐藤忠一と申者再応出張申付、又釜山之方も此度壱人大橋之手ニ属し候者派出申付、其中仁川へも一寸出張為致候積ニ御座候、何卒地方之情況とても不分明ニ候間時々大橋より相伺候節御垂示被成下候様奉願候
其後商況ハ萎靡いたし困却之至ニ候、其上仁川・京城辺ハ支那人頻ニ唐木綿抔売込方尽力之由、可憂之至ニ候、もしも此等之営業彼手ニ落候ハヽ㝡早我商人ハ閉業引払候外無之とも可申、然時ハ政略上如何ニ好模様を得候も実際之運歩ハ却而退縮候訳ニ付、呉々も御注目御揮搉被下度候、尚大橋等よりも可申上候得共、派出人之幸便ニ托し過頃之拝謝旁一書申上候　頓首
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一(印)
　　　　前田老台下
　　　○前田老台トハ前田総領事ナルベシ。

第一国立銀行半季実際考課状　第二〇回・第七―八頁明治一六年七月刊
　　　　○諸御達並願伺届之事
○上略
一三月二日外務卿ヘ当銀行朝鮮元山津出張所維持方法ノ議ヲ開申シタル処、右ハ大蔵省ヘ稟請スヘキ旨ヲ指令セラレタリ
 - 第16巻 p.19 -ページ画像 
○中略
一四月十六日大蔵卿ヘ朝鮮元山津出張所維持スヘキニ付、朝鮮支店通流資金返納延期ノ儀ヲ稟請セリ○下略

第一国立銀行半季実際考課状　第二一回・第八頁明治一七年一月刊
　　　　○諸御達及願伺届之事
○上略
一同○明治一六年一〇月十二日外務卿ヘ朝鮮京城公使館・仁川領事館御用金取扱方ヲ釜山・元山ノ例ニ準シ下命アラン事ヲ稟請シ、其廿七日仁川領事館御用取扱ヲ命セラルヘキ旨ヲ指令セラレタルニ付、受書ヲ上呈セリ○下略