デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

6章 対外事業
1節 韓国
1款 韓国ニ於ケル第一銀行
■綱文

第16巻 p.22-34(DK160004k) ページ画像

明治17年2月24日(1884年)

第一国立銀行、韓国政府トノ間ニ同国海関収税事務取扱ノ条約ヲ締結ス。栄一当行頭取トシテ之ニ与ル。


■資料

青淵先生伝初稿 渋沢同族会編 第九章下・第七七―八一頁大正八―一二年刊(謄写版)(DK160004k-0001)
第16巻 p.22-23 ページ画像

青淵先生伝初稿 渋沢同族会編 第九章下・第七七―八一頁大正八―一二年刊(謄写版)
明治十六年一月、韓国仁川港の開港せらるゝや、同国政府は税関を設置せんとし、総税務司独逸人モルレンドルフ専ら其局に当りて準備せり。此時釜山在留の我が商人は、韓銭取扱の不便を感じ、第一国立銀行の支店に、当座又は振出手形にて預入を請ふ者尠からず。かくて銀行手形の市場に流通するもの増加せんとする傾向ありしかば、先生は関税の収入に此手形を使用せば、商業上の便宜多かるべしとて、同年六月書を外務省に呈し、同国各開港場に設立する税関に於て、其輸出入の貿易品に対して、日本商人より徴収すべき税金は、総べて第一国立銀行の手形を以てせんことを請へり。政府之を納れ、同国政府と交渉して其承諾を得たれば、第一国立銀行とモルレンドルフとの間に仮条約を締結せり。然るに韓国政府之に異議を挟みたれば、先生は交換
 - 第16巻 p.23 -ページ画像 
問題として、韓国政府へ関税抵当にて墨銀二万四千弗貸付の交渉に応ずると共に、仮条約案に多少の修正を加へて其調印を了したるは、十七年二月二十四日なりき。此条約によれば、朝鮮の開港場たる仁川・釜山・元山の三海関へ徴収する関税手数料・罰金等は、悉く三港にある第一国立銀行の支店、又は分店に於て、税務司の指揮に従ひて取扱ひ、銀行の預手形を以て海関へ完納するものとす。よりて先生は韓国支店に命じ、掛員を設けて各海関へ出張せしめ、銀行手形の流通も為に範囲を拡張し、公私取引上の便宜を得たること尠からず。十九年十二月前条約を廃し更に新条約を締結せり。之によれば、「仁川・釜山・元山港海関長の取立つべき輸出入税及び噸税は、総べて三港にある第一国立銀行に於て徴収し、銀行は之に対して税券を発行す。而して輸出入税金は墨銀・日本円銀又は第一国立銀行の手形を限る。又海関長の取立つべき罰金・手数料・其他諸雑費等は、各海関長の都合により第一国立銀行へ払入るゝことあるべし」と規定せり。爾来第一国立銀行は韓国の海関銀行として其任務に就けり。


渋沢栄一書翰 大橋半七郎宛明治一六年八月八日(DK160004k-0002)
第16巻 p.23-26 ページ画像

渋沢栄一書翰 大橋半七郎宛明治一六年八月八日 (大橋半七郎氏所蔵)
                (朱書)八月十五日着
  今般本店帳面方末川軍吉を貴店詰申付本月八日上海行郵船を以当地出立いたし候ニ付而ハ、長崎ニ於て更ニ貴地ヘ之便船ニ乗替本月中ニハ貴地着可致ニ付、兼而書状ニて申進置候事柄及向後御注意を要する件々等篤と同人へも申含候得共、尚左之廉書を相添候ニ付御熟覧御領意可被成候
    第一 税関手形之事
税関手形之義ニ付而ハ貴地ニて竹添公使ヘ差上候書面一覧之後、右ニてハ其文字も不整理ニて意味も貫徹いたし兼候故、不取敢外務省ヘ罷越、吉田大輔・宮本大書記官等ヘ相伺候処、兎ニ角書面さし候方可然《(出脱カ)》との内意ニ付、先頃さし上候写之如く表方書面進達仕候、乍去其後外務卿殿之考ニてハ事柄は至極宜敷候得共、公使より表立候談判ハ不都合ニ付懇親談話之際相話し候様との義ニて、其旨本省より公使ヘ御書通相成候由ニ候、而して公使之考案も恰も同様ニて例之独乙人モルレンドルフニ御談話相成候義ニ付、此上ハモルレンドルフ氏之意念を動かし同意賛成ニ相成候様之心配方専一と存候、且同氏ハ元山より貴方迄巡回之由ニ付、㝡早御面話ニも相成候哉、其時ハ定而夫々御心得ニ申進置候廉々をも申入充分御接遇被成候事と存候、もし未タ来着無之候ハヽ来港之節接待之見込御熟案被成置候様致度存候
幸ニ右之企望相達し候ハヽ税関ハ仁川・釜山・元山之三店ニ設立可相成、故ニ当方出張所も同様三店を要し可申、依而其時期ニ至らは右場処撰定方及人員之用意等前以考案相立置申度候
朝鮮政府より受取るへき手数料も此場処と人員との要費ニ引足候ハヽ可然と存候、且其手数料ハ勉而節減之見込相立高き故ニ此事柄引受不相成様之義ハ無之様ニいたし度候
手形ハ尚当方ニても緩々相考候上、文案雛形等も取極可申進候得共、愚案ハ可成丈ケ普通之振出手形同様ニいたし、追々此手形日本商人間ニハ流通候様心掛度候、併是ハ大蔵省銀行局抔ニてハ議論を生し可申
 - 第16巻 p.24 -ページ画像 
ニ付、先表向ハ取りも直さす滊車場之切符之如きものと申立、弥以被相行候ハヽ終ニハバンクノート之姿ニいたし度事ニ候、故ニ貴方ニても右将来之企望ハ先公言無之簡単たる引換切符之積ニ御申立可被成候此手形之取扱向ハ至而簡易ニ可出来と存候、先日本商人ハ平生当行より此手形を受取置(代リ金を振込)税金納付之節之を持参せハ朝鮮之収税吏ハ其税額ニ応して之を受取るまてと存候、併もし端金差引勘定等之面倒あるニより常ニ我行員を収税吏之側ニ出役せしめ、其受取方を取扱候様彼レより被相望候ハヽ夫ハ引受候而可然候、其時ハ此手形を振出候為メ別ニ出張店ハ要用ニ無之、手形ハ平日支店又ハ出張店ニ於て日本商人之望ニ応して振出し、右之出役ハ恰も諸官省ヘ之出納方出役之如く日々手形ニて税金を受取り、其日之清算を為し之を収税吏ニ引渡す手続ニて相済可申候、而して可成ハ手形を振出す為メ別ニ出張店等を設けず、支店ニて振出し出役ニて之レを受取候方法ニ仕度事ニ御坐候
手形と正金との引替方ハ毎月二回もしくハ三回位ニ税関と約束いたし置、手形を受取リ正金を引渡し候而可然、且夫ニ付而ハ双方之間ニ帳簿等相備候義も官省之甲乙帳之如くニて可然と存候(支店内之簿記ハ振出手形勘定之一口を設候ハヽ可然候)
此手形之金額ハ税金本位之貨幣なるニ付(譬ヘハ壱厘銭又ハ新銀銭等之類)日本商人より振出手形相望候節もし紙幣又ハメキシコ弗等之類なれハ支店ハ之を時価ニて切替、手形ハ右之本位貨幣ニいたし候義ニ候、故ニ此交換相場ニハ随分日々注意を要し候事ニて、此手形取扱ニ付而之心配ハ先此事と存候、もし韓銭と相成候ものと仮定せハ、韓銭ハ此末日々相場下落之恐有之候ニ付、其買入方ニ大ニ損得有之候、併是ハ今日予定いたし兼候ニ付只其心掛有之度と申事ニ候
手形ニ贋造相生候時之注意も亦御心得有之度候、夫ニ付而も税関ニて受取候ハ当行員を出役せしめ候様取究度事ニ候、もしも朝鮮之収税吏ニて受取候ものとせハ、此贋造手形なれハ当方ハ引受不申事ニ取極候外無之と存候、右様ニ将来之手順迄申進候得共、兼而申進候如く、未タ税額之御談判も不相定、且何時より収税候とも決し不申義ニ付、詰リ前書之心配ハ只向来実地相運候時之御注意迄ニ止り、今日之急務ハ可成丈其出来候様手配有之度事ニ候
    第二 朝鮮貨幣之事
朝鮮貨幣ハ是迄旧壱厘銭を以通用貨幣と致し候処、此度新壱厘銭・五厘銭及銀銭即壱銭・弐銭・三銭之三種を発行いたし候ニ付而ハ、物品之相場ニ大ニ影響を来し可申ハ必然と存候、現ニ旧壱厘銭之相場一時ハ三拾割迄も引上候処、今日京城ニてハ弐拾四割ニ迄引下候と申ハ其一証ニ候、此上尚低下ハ無疑事ニて発行増加之度ニ応し相場低落するハ尚我邦紙幣増発之時と同様と存候間、此際ニ於て営業いたし候ハ其大体ニ注目いたし候義肝要ニ候、其上右銅銭及銀貨とても未タ其実物之価格何程有之と申処さへ貴方ニてハ御詳知無之様子ニ付、右ニてハ将来之見込も相立兼候義ニ付、早々右各種之地金怔合を取調、其目方と純分とニよりて譬ヘハ韓銭弐拾四割なれハ其純銅又ハ鉛ハ何程有之ニ付、我紙幣ニて今日之実価何程有之と申処充分ニ熟知し、且銀銭ハ
 - 第16巻 p.25 -ページ画像 
其壱厘銭と何程之割合ニて通用せハ其銀分何程有之ニ付我紙幣ニ対し若干と申事迄御調査被成御申越可被下候
右ハ即今不急之取調ニ相見へ候得共、追而税関手形ニても振出し候時ハ時々メキシコ銀又ハ我紙幣と朝鮮貨幣と交換を引受候様可相成、其節ハ殊更此見込ニよりて適実之損益を識得可申義ニ候
韓銭追々下落と確信仕候義ハ尚一証を申述候ハヽ現今仁川之相場と元山之相場と大ニ相違いたし候ニても相分リ申候、是ハ増発之韓銭京城ニ多き故ニ先其㝡寄より低下し、追々と遠方へ及し可申理ニて、尚我明治十二年頃東京大阪辺ニて紙幣下落之景況を現せしと同様之姿と存候、能々御注目可被成候
    第三 仁川荷為替之事
現今仁川ヘ向て荷為替多く有之候ハ右新銭鋳造等ニて日本より買入品多き故ニ相生し候義ニて、真之商売繁昌ニ赴き候義ニハ無之と存候、然時ハ又俄ニ寂寥といたし候事も可有之ニ付、此間ニ従事之商人ハ余程用慎無之而ハ終ニ損毛を引起し可申、併是ハ商人身上之義ニ付当方より干渉ハ難致候得共、既ニ右様懸念有之候仕事ニ付此往返之荷為替取扱候ニハ其貸金之割合可成丈時価より減額し万一相滞候とも損毛無之様御取斗可被下候、且此荷為替ハ往返ともニ取扱候義ニ付、往荷之為替金割合高き時ハ戻リ荷之割合も同様之筈ニ付、別而御心附可被成候
右荷物仁川着之後一航海間相待返リ荷為替と相成候趣ニ付而ハ其間荷物之取締方如何御手配被成候哉、其荷主之自儘抔ニいたし候義ハ万無之事と存候
    第四 仁川出張店之事
仁川出張店ハ終ニ入用なるハ申迄も無之候得共、兼而御申越も有之候如く、三江又ハ両山抔之便地ハ往々開市場とも可相成歟、然時ハ今日仁川之出店ハ可成丈仮りニ経営仕度、就而ハ公使領事館等ヘ相願即今間ニ合せ之家屋拝借ハ出来不申哉、御心配可被成候、西京増田より申来候ニハ協同商会ニて此度同地ヘ支店新設ニ付夫ヘ申談借家候而ハ如何との事ニ候得共、可成ハ取引先之商估ヘ借家等相頼候義ハ不好次第ニ候、もし不得已此借家法ニ被成候ニハ余程約束を厳重ニし、其為メニ荷為替品取締向等迄不注意ニ相成候様之弊無之処御取究可被成候
    第五 仁川詰合人員之事
仁川詰合員ハ即今一人ハ必要と存候、就而ハ木下を以て此定詰員ニ宛候様可被成候、且貴兄も釜山店之都合を計り時々出張可被成候、貴方七月三十日附来状ニも手代リ有之候ハヽ貴兄出張之積と有之候間、幸末川着之上ハ今一度貴兄御出張有之度候、且又末川ハ至極健康之体質と難申ニ付仁川出張ハ御見合被成、多く釜山店ニ従事為致候様御配意可被成候
    第六 元山店之事
元山店ハ今日之処其為メニ御保護も相願候際ニ付、先維持せさるへからさる訳ニ候得共、税関手形之事ももし相行れ不申、又追々と商人ハ退散いたし事実仕事も無之候様相成候ハヽ、昨年中之考案之如く官金取扱丈ケといたし他之事務ハ相止メ候方得失之支弁を得可申と存候、自然其場合ニいたし候時ハ佐藤ハ引上鳥井ニて間ニ合可申と存候
 - 第16巻 p.26 -ページ画像 
    第七 諸方往復之事
貴方より各地ヘ之出状ハ其度数至而少く候間、取調物抔逓送候ニハ前以心配いたし御差立可被成候、各地之情況詳悉ならされハ銀行業ハ別而差支候ものニ付、之を詳知するニハ貴方より之出状ニ入念無之而ハ終ニ本店との往復のミと相成、他之模様ニ疎く相成可申ニ付別而御心掛可被下候、就而ハ此度派出之末川抔ニも右出状之事迄為取扱(簿記之事ハ勿論)可成通信綿密ニ相成候様御心配可被成候
右等幸便ニ托し貴方必須之件々廉書ニて申進候間、御熟覧御勉務可被下候也
  明治十六年八月八日
                    渋沢栄一(印)
    大橋半七郎殿


第一国立銀行半季実際考課状 第二一回・第八―九頁明治一七年一月刊(DK160004k-0003)
第16巻 p.26 ページ画像

第一国立銀行半季実際考課状 第二一回・第八―九頁明治一七年一月刊
    ○諸御達及願伺届之事
○上略
一同○明治一六年一〇月廿九日外務卿ヘ当行ト朝鮮政府ト協議ヲ以テ同国海関収税ノ事務ヲ当行ニ於テ取扱ヘキニ付、同地支店ニ於テ仮ニ取結ヒタル約定書及更ニ修訂スヘキ本条約案ヲ開呈シ允准セラレン事ヲ稟請セリ
○下略


第一国立銀行半季実際考課状 第二二回・第七―八頁明治一七年七月刊(DK160004k-0004)
第16巻 p.26 ページ画像

第一国立銀行半季実際考課状 第二二回・第七―八頁明治一七年七月刊
    ○諸御達及願伺届之事
○上略
一同月○明治一七年三月十七日外務卿ヘ這回当銀行ト朝鮮政府ト当銀行釜山浦支店・仁川・元山等出張所ニ於テ朝鮮海関税収納ノ事務ヲ代理スヘキ条約ヲ修結シタル旨ヲ開申セリ
一同日又大蔵卿ヘモ其旨ヲ上申セリ
○下略


韓国ニ於ケル第一銀行 第一銀行編 第五―三一頁明治四一年八月刊(DK160004k-0005)
第16巻 p.26-34 ページ画像

韓国ニ於ケル第一銀行 第一銀行編 第五―三一頁明治四一年八月刊
    第二章 韓国海関税ノ取扱
釜山ヲ通ジテ日韓貿易ノ行ハルヽコト久シト雖モ、此地ニ於ケル我国ノ通商貿易ニ関シ条約ヲ以テ規定セラレタルハ、明治九年二月日韓修好条約ヲ以テ始メトス、次デ同条約ニ依リテ同十三年五月元山津ヲ開キ、同十六年一月仁川ヲ開港シテ爾後通商ノ便大ニ加ハリ日韓貿易著シク発展ノ運ニ向ヘリ
仁川開港ノ前後ヨリシテ韓国政府ニ於テ税関設置ノ問題漸ク起リ、総税務司独人「モルレンドルフ」主トシテ其局ニ当リ、之レヲ実施スルニ付種々準備スル所アリキ、此時ニ当リ釜山ノ諸商人ハ韓銭受授ノ不便ヲ感ジテ本行支店ニ当座又ハ振出手形ニテ預入レヲ請フモノ漸ク多ク、従テ右銀行手形ノ市場ニ流通スルモノ増加セントスルノ傾向アル
 - 第16巻 p.27 -ページ画像 
ヲ以テ之ヲ関税納付ニ用ユルニ至ラバ商人ノ便宜少ナカラザルベシトナシ、明治十六年六月本行ハ外務省ニ左ノ請願書ヲ呈出セリ
 今般朝鮮政府ニ於テ日韓ノ貿易品ニ対シ其条約面ニ照シテ課税セラルヽニ就テハ、彼邦各開港場ヘハ追々税関ノ設立モ可有之事ト奉存候、就テ熟考仕候ニ元来彼邦ノ貨幣ハ是迄ハ唯銅銭ノ一種ニ止マリ候ニ付、通商以降ノ景状ニヨリテ之レヲ観察スレバ彼我貿易ノ頻繁ト沈静トニ従テ彼銅銭ノ価格我通貨ニ対シテ俄然騰上低落ノ変化ヲ生ジ、常ニ我商估ヲ困却セシメ候、尤モ近頃彼邦ニ於テモ更ニ銀銭ヲ増鋳発行ノ挙有之候趣ニハ候得共未ダ純然タル彼邦ノ通貨ト看做スベキ程ノ供給モ無之哉ニ相見ヘ候間、向後右ノ課税ニ付我商估ヨリ彼税関ヘ向テ納税致シ候ニモ一層ノ迷惑ヲ引起シ候恐無之トモ難申儀ト奉存候、況ヤ新創不整頓ナル税関ニ向ヒ言語不通ノ日本商人ヨリ日々瑣少ノ税銀ヲ納付スルハ其交収ノ際ニ於テモ我商估ノ困難ハ今日ヨリ想像仕候事ニ候、就テハ弊銀行ニ於テハ現ニ朝鮮各港ヘ出店モ致居候ニ付、右収税ノ取扱方ヲ彼政府ヨリ都テ弊銀行ヘ付託相成候様御談判被成下度候、然ルトキハ弊銀行ヨリ相当ノ行員ヲ派遣シ瑣少ノ手数料ヲ収受シテ其取扱ヲ為シ、而シテ税銀交収ノ際ニ当リテ我商估ノ便宜ニ任セテ本邦通貨ト朝鮮貨幣トノ交換法ヲ設為シ、独リ其価格昂低ノ変動ヲ制スルノミナラズ極テ簡便ノ手続ヲ以テ無用ノ時間ヲ費スノ患ヲ除キ、聊以テ彼我貿易増進ノ一助トモ相成候様可仕奉存候、依テ其取扱方見込書相添此段奉願候也
  明治十六年六月 日         第一国立銀行
    外務卿 井上馨殿
    収税取扱方見込書
 第一、朝鮮国各開港場ニ設立スル税関ニ於テ其輸出入ノ貿易品ニ対シテ日本商人ヨリ交収スベキ税金ハ都テ日本第一国立銀行ノ手形ヲ以テ受取ルベキ事
 第二、第一国立銀行ニ於テ右ノ手形ヲ製スルハ極テ精密ナル印刷法ヲ用ヒ勉テ贋造ノ弊ヲ防ギ其見本・印影・手鑑等ハ前以テ朝鮮税関ヘ差出シ置クベキ事
 第三、朝鮮税関ニ於テ右ノ手形ヲ以テ税金ヲ受取ルトキハ其手形ノ紙質及印影・手鑑等ヲ鑑定シテ後収受スベキ事
 第四、右ノ税金ハ朝鮮政府ニ於テ定メタル貿易場ノ本位貨幣ニ限ルベシト雖モ、第一国立銀行ニ於テ其交換ノ便宜ヲ得ルニ於テハ随意他ノ貨幣ヲモ当日ノ時価ヲ以テ収受スベシ、尤モ追テ税関ニ向テ手形ト引換ニ現貨幣ヲ納付スルハ本位貨幣ヲ以テスベキ事
 第五、第一国立銀行ハ右ノ取扱ヲ為スニ就テハ各開港場税関設立ノ地ヘハ其支店ヲ設ケ便宜其税金ヲ収受シテ手形ヲ振出スベシ、尤モ税関又ハ第一国立銀行ノ都合ニヨリテハ協議ノ上其手形振出所ヲ税関場内ニ設クル事モアルベキ事
 第六、税関ニ納リタル第一国立銀行ノ手形ハ双方ノ協議ヲ以テ相当ノ時日ヲ定メテ其高ノ突合セヲ為シ置、而シテ後其現貨幣ノ納付ハ毎月一回又ハ二回ト定メテ手形ト引換ニ現貨ヲ交収スベキ事
 第七、此方法ニヨリテ第一国立銀行ヘ収受セシ貨幣ニ贋物又ハ不足
 - 第16巻 p.28 -ページ画像 
等アルモ、都テ第一国立銀行ニ於テ之レヲ負担シテ其手形ノ金額ヲ弁償スベキ事
 第八、万一非常ノ事アリテ第一国立銀行ハ其収受シタル税金ヲ保護シ能ハザルトキハ朝鮮政府ニ請求シテ其防禦ヲ乞フベシ、故ニ此防禦行届カズシテ税金ヲ損耗スルトキハ第一国立銀行ハ其責ヲ免ルベキ事
 第九、朝鮮政府ハ此取扱ヲ第一国立銀行ニ付託スルニ就テハ大ニ税関ノ煩雑ヲ減ジ、日韓両国ノ貿易ヲ便利ナラシムルノ方法タルニ付第一国立銀行ニ対シテ相当ノ手数料ヲ付与セラルベキ事
 第十、朝鮮政府ヨリ此取扱方ヲ第一国立銀行ニ付与セラルヽニハ相当ノ年限ヲ定メテ条約ヲ締結スルヲ要ス、而シテ朝鮮政府ニ於テ右ノ税金ヲ一時手形ヲ以テ第一国立銀行ニ預託シ置クニ就テ懸念アラバ第一国立銀行ハ其望ニ応ジテ相当ノ抵当物ヲ提供スベキ事
 右ハ大略ノ見込ニ候得共幸ニ彼政府ヘ御談判被成下調整ノ都合ニモ相成候ハバ、尚ホ実地ニ就テ可成丈ケ彼我ノ便益ヲ主トシテ其取扱方ノ節目ヲモ相定メ候様可仕奉存候也
当時支那招商局其他二三ノ支那商人等ノ関税取扱ヲ希望スルモノアリシモ、本銀行ノ信用ト我当局者ノ尽力ハ遂ニ其効ヲ奏シ、右税金取扱ニ関シ「モルレンドルフ」ト本行トノ仮条約ノ締結ヲ見ルニ至リ、同年十月二十九日本行ハ我外務・大蔵両卿ヘ左ノ願書ヲ呈出シ、同年十一月両省ノ承認ヲ得タリ
    朝鮮海関税取扱条約ノ儀ニ付上申
 朝鮮三口輸出入税及其外ノ納金トモ当銀行手形ヲ以テ取扱ノ儀ニ付本年六月中廉書ヲ以テ相願置候処、今般右方法ニ基キ統理衙門協弁穆麟徳ト当銀行釜山浦支店主任ノ者ト別紙ノ通仮条約取結候ニ付、此際更ニ別紙草案ノ通本条約取結可申ト存候間右御認可被成下度、且右条約ノ義ハ新創ノ事業ニ有之殊ニ外国ニ関係仕候義ニ付、別シテ御本省ノ御保護相願不申候ハデハ十分履行難仕奉存候、就テハ同国公使館又ハ領事館等ヘモ御本省ヨリ可然御通達被成下候様仕度此段奉願候也
  明治十六年十月二十九日       第一国立銀行
    外務卿 井上馨殿
 願聞届
  明治十六年十一月二日         外務省
    朝鮮海関税取扱ニ付手形発行ノ義願書
朝鮮国開港場ニ於テ海関税徴収可相成ニ付、右納税ノ義当銀行同地支店ノ手形ヲ以テ取扱申度旨兼テ外務省ヘ稟候致シ置候処、今般朝鮮統理衙門協弁穆麟徳釜山ヘ罷越同処支店主任大橋半七郎ト別紙写ノ通リ仮条約取結ヒ候旨申越候ニ付、更ニ外務省ノ御認可ヲ得別紙草案ノ通リ本条約取結ヒ申度奉存候、就テハ右約条草案ニ記載仕候通リ朝鮮支店ニ於テ別紙雛形ノ如キ預リ手形発行仕度、尤モ内地ニ於テハ振出手形発行ノ御規定モ有之候得共、海外ノ貿易上ニ於テ内国人民一般ノ便益ト相成候義ニモ有之且当銀行ノ名誉ニモ関係仕候義ニ付、特別ニ御允許被成下度別紙相添此段奉願候也
 - 第16巻 p.29 -ページ画像 
  明治十六年十月二十九日       第一国立銀行
    大蔵卿 松方正義殿
 願之趣聞届候事 大蔵省
  明治十六年十一月二日
    朝鮮海関税取扱条約之義ニ付副申
 朝鮮三口輸出入税金其外ノ納金トモ当銀行手形ヲ以テ取扱ノ義ニ就テハ別紙書面ヲ以テ御認可願請仕候得共、右本条約ノ為ニハ当行釜山支店支配人大橋半七郎ト申ス者ヲ直ニ京城又ハ仁川港ヘ差出シ、彼国ノ官吏ト談判ノ上之ヲ締結可致ノ見込ニ付、其委任状及条約ニ付要旨説明書等迄別紙ノ如ク同人ヘ相渡シ派出致候儀ニハ候得共、外国政府ニ関スル条約ニモ有之、殊ニ言語・人情不案内ノ土地ニ付右談判ノ模様ハ彼地御駐在ノ公使又ハ領事ニ於テ特別ニ御世話被成下相当ノ締結出来候様仕度、又其約書支那文ノ如キモ篤ト御閲了相願妥当ノ字句ヲ得候様仕度、殊更若シ彼国政府ノ企望ニヨリテ当行ニ預リ候税金額ヲ保証致シ候事ヲ要求被致候ハヾ、其額ニ対スル公債証書ヲ御本省ヘ上納可仕候ニ付領事館ヨリ保信状御差遣被下候義モ予メ御允許被下度、将又此条約書ニハ可相成ハ領事館ニ於テ立会証人トシテ御加印被下候ハヾ将来双方ノ恪奉ヲ厚ク致シ候義ト存候間是又御聞届被下度候
 右等ノ件々御允許被下候上ハ其段彼地公使館又ハ領事館ヘ御本省ヨリ公文御照知被成下候様仕度此段奉副願候也
  明治十六年十月二十九日        第一国立銀行
    外務卿 井上馨殿
 願之趣聞届候事
  但保信状ノ儀ハ税額ニ対スル相当ノ公債証書ヲ当省ヘ差出候得バ当省又ハ領事館ニテハ右ニ対スル預リ証書ヲ其銀行ニ附与スベキニ付、其銀行ヨリ之ヲ彼政府ニ差出保証ト可致儀ト可相心得事
  明治十六年十一月二日          外務省
    海関税取扱条約文案○略ス
本行ハ右条約案ニ拠リテ韓国政府ニ交渉ヲ進メシガ談判容易ニ纏マラズシテ一時ハ殆ンド不調ニ帰セントセリ、爾後更ニ交換問題トシテ同国政府ヘ関税抵当ニテ墨銀二万四千弗ノ貸付約条ヲ結ビ且右ノ草案ニ多少ノ修正ヲ加ヘテ商議漸ク整フニ至レリ、即チ其海関税取扱条約ハ左ノ如シ
 朝鮮統理交渉通商事務衙門委派征搉司協弁穆麟徳与日本第一国立銀行ノ委任ヲ有スル釜山浦支店主任大橋半七郎ノ間ニ於テ
 朝鮮国通商三港ノ海関税金取扱方ヲ締結スル条款ハ左ノ如シ
    第一条
 朝鮮通商三港仁川・釜山・元山ノ海関ヘ徴収スル所ノ関税・手数料罰金等都テ右三港ニ在第一国立銀行支店又ハ分店ニ於テ税務司ノ指揮ニ遵ヒ之ヲ取扱フベシ
    第二条
 今回右三港ノ関税・手数料・罰金等ノ取扱ヲ約束スルニ付、朝鮮政府ハ右関税・手数料・罰金等ヲ都テ第一国立銀行支店又ハ分店ヘ納
 - 第16巻 p.30 -ページ画像 
メシメ、該銀行ノ預リ手形ヲ以テ海関ヘ完納スル事ヲ各条約国ノ人民ヘ布達シ一般ニ承知セシムベシ
    第三条
 第一国立銀行支店又ハ分店ハ各条約国ノ人民ヨリ納ムル所ノ関税・手数料・罰金等ヲ受取リタルトキハ其金額ニ相当スル預リ手形ヲ発付スベシ
    第四条
 凡ソ用ユル処ノ預リ手形用紙ハ成丈精密ナル印刷法ヲ以テ贋造ノ弊ヲ防ギ前以テ預リ手形ノ印鑑・書法等ヲ税務司ヘ差出シ置クベシ、故ニ税務司ニ於テハ其預リ手形ノ紙質・印鑑・書法ヲ詳査シテ後之ヲ受取ルベシ
    第五条
 凡ソ関税・手数料・罰金等ハ都テ朝鮮国通商章程ニ照ラシ朝鮮銅銭日本銀貨及墨哥加銀ヲ以テ収納スベシ、故ニ第一国立銀行支店又ハ分店ニ於テハ其受取ル所ノ種類ヲ預リ手形面ニ記載シ置キ、後日海関ヘ交付スルハ均シク預リ手形面ニ記載シタル原収ノ銅銭・銀貨ヲ以テスベシ
    第六条
 各港海関ニ於テ受取ル所ノ諸条約国人民ヨリ完納スル第一国立銀行支店又ハ分店ノ預リ手形ハ、之ヲ各海関ヨリ緩急適宜ノ期日ヲ定メ該銀行支店又ハ分店ヘ引渡シ、該銀行ニ於テハ其預リ手形ノ金額ヲ明細ニ取調都テ通帳ニ記載シ捺印ノ上海関ヘ差出シ以テ引合ノ証拠ト為スベシ
    第七条
 第一国立銀行支店又ハ分店ハ此約条ニ照シ受取ル所ノ関税・手数料罰金等ヲ二箇月毎ニ海関ヘ完納シ、第六条ニ記載スル通帳ニ税務司ノ捺印ヲ請ヒ其受取ノ証拠ト為スベシ、若シ税務司二箇月内ニ於テ預ケ金ノ幾分ヲ受取ラント欲スル時ハ、期限ニ拘ラズ之ヲ受取ルヲ得ベシ
    第八条
 第一国立銀行支店又ハ分店ニ於テ受取タル関税・手数料・罰金等ノ銅銭・銀貨若シ贋造仮物或ハ不足アラバ都テ該銀行ニテ負担シテ海関ニ於テ関係ナカルベシ、又海関ニテ受取タル該銀行預リ手形ノ内若シ贋仮物アルモ均シク海関ニテ負担シテ第一国立銀行支店又ハ分店ニ関係ナカルベシ
    第九条
 若シ人事・天災等不測ノ変アリテ第一国立銀行支店又ハ分店ニテ受取タル関税・手数料・罰金等ヲ保護スル能ハズト思惟スル時ハ直ニ海関ニ其次第ヲ報道シ救援ヲ請フベシ、若シ該海関此報道ヲ聞クモ速ニ救援セザルカ又ハ救護未ダ及バザルノ時間ニアリテ終ニ損失ニ至ラバ、其失フ処ノ金額ハ該銀行ニ於テ充分尽力防禦シタル事実双方ニ証明スルニ於テハ其保護ノ責ヲ免ルベシ
    第十条
 朝鮮政府ハ関税・手数料・罰金等ノ取扱方ヲ第一国立銀行ヘ委托ス
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ルニヨリ預高総額ノ千分ノ二分五厘ヲ給与シ以テ委托ノ手数料ト為スベシ、而シテ該手数料ハ第七条ニ於テ関税等ヲ海関ヘ完納スル時ニ之ヲ差引クベシ、但海関ハ実収シタル数ヲ以テ計算ヲ為スニ付其未ダ実収セザル者ニハ差引ヲ為スヲ得ズ
    第十一条
 第一国立銀行ハ朝鮮政府ニテ徴収スル関税・手数料・罰金等ヲ正確ニ預リタル為メ二箇月間預ル所ノ総高ニ相当スル公債証書ヲ日本外務省ニ預ケ置キ本省ノ預リ金ノ保証トスベシ、若シ徴収スル処ノ税金ニ増減アラバ此抵当モ随テ増減スベシ
    第十二条
 此約条ヲ履行スル年限ハ朝鮮暦甲申正月二十八日日本暦明治十七年二月二十四日ヨリ向フ満二箇年ヲ以テ限リトス、若シ年限中第一国立銀行或ハ朝鮮政府ニ於テ此条款ヲ改正増補セント欲セバ、必ズ三箇月前ニ其旨ヲ一方ヘ通知シ朝鮮政府及ビ第一国立銀行双方協議更正スル事ヲ得ベシ
    第十三条
 朝鮮政府及ビ第一国立銀行ニテ若シ期限二箇年ノ後此条款ヲ廃停セント欲セバ、期限六箇月前ニ通シテ廃停スベシ
 以上ノ約条ハ各訳文日本文ノ弐通ヲ製シ各之ニ記名調印ノ上双方ニ交収致シ以テ締約ノ証拠トナス
      朝鮮協弁統理交渉通商事務征搉司 穆麟徳
      日本第一国立銀行釜山浦支店主任 大橋半七郎
  明治十七年二月二十四日
   朝鮮開国四百九十三年正月二十八日
    統理交渉通商事務衙門
 又墨銀ノ貸付条約ハ左ノ如シ
 朝鮮統理交渉通商事務衙門委派征搉司協弁穆麟徳与日本第一国立銀行ノ委任ヲ有スル釜山浦支店主任大橋半七郎ノ間ニ於テ
 朝鮮政府ノ借用スル墨哥加銀弐万四千弗ノ約条ヲ為ス左ノ如シ
    第一条
 朝鮮政府ハ第一国立銀行支店又ハ分店ヨリ借用スル処ノ墨哥加銀合計弐万四千弗ハ朝鮮三港海関ノ使用スル所ニシテ、右金額ノ内仁川海関ニ於テ毎月弐千弗、釜山・元山両海関ニ於テ毎月弐千弗則チ一箇月四千弗ノ高ヲ超過セザレバ何時ニテモ該銀行ヨリ之ヲ取出スヲ得ベシ
    第二条
 右ノ約条ヲ為スニ付第一国立銀行支店又ハ分店ハ朝鮮三港海関ヘ兼テ通帖ト小切手ヲ渡シ置クニヨリ、各海関ニ於テ該銀行ヨリ受取リタル小切手ヲ以テ随意之レヲ受取ルヲ得ベシ、故ニ該銀行ハ小切手ノ金額ニ対シ仕払タル処ヲ以テ貸付金ノ証拠トスベシ
    第三条
 朝鮮三港海関ヨリ第一国立銀行支店又ハ分店ヘ返金スルハ墨加哥銀或ハ金銀塊ヲ以テスルト雖モ、各海関ノ都合ニヨリ時価ヲ以テ朝鮮銅銭ヲ返金スルヲ得ベシ
    第四条
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 各海関ヨリ右ノ返金ヲ為スニ付テハ第一国立銀行支店又ハ分店ヨリ兼テ海関ヘ渡シ置キタル通帳ヘ記載捺印ノ上海関ヘ交付シ受取済ノ証拠トスベシ
    第五条
 朝鮮三港海関ニ於テ第一国立銀行支店又ハ分店ヨリ借用スル処ノ墨哥加銀ニ対スル利息ハ、百弗ニ付年壱割ノ割合ヲ以テ該銀行ニ於テ日々差引、残高ニ対シ利息ヲ算当ス、海関ハ其算当通リ二箇月毎ニ該銀行ヘ払渡スベシ
    第六条
 朝鮮政府ハ第一国立銀行支店又ハ分店ヨリ朝鮮三港海関ニ借用スル墨哥加銀ニ対シ右三港ノ海関税金ヲ抵当ト為スベシ、但朝鮮政府ノ都合ニヨリ該税金ノ内ヨリ時々返金スベシ
    第七条
 朝鮮三港海関ニ於テ第一国立銀行支店又ハ分店ヨリ借用スル処ノ墨哥加銀ハ満一箇年朝鮮暦乙酉正月初九日日本暦明治十八年二月二十三日ヲ限リ全数返金スベシ若シ朝鮮政府ノ都合ヲ以テ此一箇年内時々返金為スモ妨ゲナシ
 右ノ約条締結シタル証拠トシテ各自記名調印スルモノ也
      朝鮮協弁統理交渉通商事務征搉司 穆麟徳
      日本第一国立銀行釜山浦支店主任 大橋半七郎
  明治十七年二月二十四日
  朝鮮開国四百九十三年正月二十八日
   統理交渉通商事務衙門
次デ明治十七年三月外務大蔵両省ニ左ノ上申ヲナシ其允認ヲ得タリ
 朝鮮開港三口海関税取扱条約之儀先般稟候仕其節御允認被成下候条約案ヲ以テ彼国官吏ト協議致シ、且京城公使館ニ於テモ夫々御取扱被下、右条約ノ外別ニ当銀行ヨリ彼国政府ニ向ヒ貸付可致事件等一併商議相整ヒ、本年二月二十四日両件共別紙写ノ通リ結約仕候ニ付テハ将来此約定ニ対シ候テハ、御省ハ勿論彼国公使館及各国領事館等ニ於テ厚ク御保護被成下候様仕度候、依之結約之次第開申旁々此段奉願候也
  明治十七年三月十七日        第一国立銀行
    外務卿 井上馨殿
 朝鮮開港三口海関税取扱条約ノ儀ニ付先般上申仕候処、爾後彼国官吏ト協議致シ右条約ノ外別ニ当銀行ヨリ彼国政府ニ向ヒ貸付可致事件等一併商議相整、本年二月二十四日両件共別紙之通結約仕候ニ付此段尚又上申仕候也
  明治十七年三月十七日        第一国立銀行
    大蔵卿 松方正義殿
右「モルレンドルフ」トノ条約締結セラルヽヤ、本行ノ韓国支店ハ店員ヲ増加シ掛員ヲ設ケ各海関ヘ出役セシメテ事務ノ敏活ヲ計リ、銀行手形ノ流通亦次第ニ其範囲ヲ拡張シ、公私取引上ノ便ヲ得タルコト少ナカラズ
次デ明治十九年十二月ニ至リ、十七年二月ノ条約ヲ取消シ更ニ新条約ヲ締結セリ
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其条約ノ全文左ノ如シ
    日本第一国立銀行ニ於テ収税金取扱ニ関スル条約
 海関総長「ヱチ・ヱフ・メヱーレル」氏ハ朝鮮国王陛下ノ政府ヲ代表シ、在朝鮮国仁川港日本第一国立銀行支配人沢木安次郎氏ハ該銀行ノ代理トシ、双方ノ間ニ左ノ条款ヲ結約ス
    第一条
 光緒十三年一月一日(明治二十年一月二十四日)ヨリ仁川・釜山及元山港海関長ノ取立ベキ輸出入税並ニ噸税ハ総テ該三港ニアル日本第一国立銀行ニ於テ徴収スルモノトス
    第二条
 右三港ノ海関長ハ輸出入税又ハ噸税金ヲ日本第一国立銀行ヘ払込マシムル為メ輸出入者並ニ船舶ノ代理人ヘ対シ税券ヲ発行スベシ
    第三条
 税券ヲ銀行ヘ持参シタルトキハ銀行ノ掛リ役員ハ右ニ記載スル所ノ輸出入税金又ハ噸税金ヲ受取リ、税券ヘ受取高ヲ記入シ、銀行ノ公印ヲ押捺スベシ、斯ク受取ヲ証シタル税券ハ之ヲ願人ヘ渡シ、又願人ハ再度之ヲ海関長ヘ返納スベシ
 海関長ハ日々前日海関ヘ納メタル税金受取証ノ表ヲ製シ銀行ヘ送致ス、又銀行ニテ勘定突合ヲナスニ必要ナルトキハ受取証モ共ニ送致スルコトアルベシ
 税金受取証ハ突合ヲ終リタル後再度之レヲ海関ヘ返附スベシ
    第四条
 銀行ニテ受取リタル輸出入税金ハ各港共通商監理ノ預金中ヘ記入シ取付ハ其自由ニ任ジ其都度之ヲ通知スルニ及バズ、噸税トシテ受取リタル金額ハ海関長預金中ヘ記入ス可シ
    第五条
 輸出入税金ハ墨洋銀・日本円銀又ハ日本第一国立銀行発行ノ手形ニ限リ払入ルル事ヲ得、銀行ハ其徴収シタル貨幣又ハ手形ノ純良ナルヲ保証シ、且贋造ニ係ル手形ヲ受取タルヨリ為ニ生ズル所ノ損失ハ総テ銀行ニテ償フベキノ責アリトス
    第六条
 銀行ハ其受取タル輸出入税金並噸税金純額壱千弗ニ付五弗ノ手数料ヲ受クベシ
 此手数料ハ各港海関長ヨリ毎朝鮮暦ノ月末ニ至リ其全月間銀行ヨリ発行シタル受取証ニ照シ払戻税額ヲ引去リ其残額ニ対シ払フベキモノトス
    第七条
 海関長ノ取立ツベキ罰金・手数料其他諸雑費等ハ各海関長ノ都合ニ依リ日本第一国立銀行ヘ払入ルヽ事アルベシ、然ルトキハ其払入タル金額ハ預金トシテ取扱、海関長勘定中ノ預金ノ部ヘ記入スベシ、右金額ヘ対シテハ手数料ヲ払ハズ
    第八条
 此条約ハ光緒十三年一月一日(明治二十年一月二十四日)ヨリ実施シ、双方又ハ其職務ノ継続者ヨリ解約ノ通知ヲ与フル迄継続スベキ
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モノトス
 又右ノ通知ヲ与ヘ之ヲ受ケタル後六ケ月ヲ経テ無効ニ属スルモノトス
    第九条
 一千八百八十四年二月二十四日附ナル日本第一国立銀行ヘ払入タル税金ハ各港海関長ノ預金タリトアル現行条約ハ此条約ノ施行ノ日ニ於テ消滅ス
 該条約ニアル六箇月間前ニ与フベキ通知ハ爰ニ双方ノ承諾ニヨリ取消スモノナリ
            於仁川 日本第一国立銀行支配人
  明治十九年十二月十八日調印       沢木安次郎
  千八百八十六年十二月二十七日於京城調印ス
                海関長総長 ヱチヱフメーレル
爾後総税務司ハ「シヨニツク」氏トナリ「モルガン」氏トナリ「ブラオン」氏トナリ、数次交替セシト雖モ、海関税ノ収入ハ引続キ本行ニ於テ取扱ヒ、韓国政府ニ於テ資金ノ需要アルトキハ右関税ヲ抵当トシテ時々貸付ヲ為セリ、下テ明治三十八年ニ至リ同国財政ノ改革ニ着手セラルヽヤ、本行ハ同国中央金融機関トシテ貨幣整理及国庫事務ヲ引受ケ、貨幣整理資金トシテ参百万円ヲ貸付スルニ当リ、海関税ノ収入ヲ其抵当トナシ、引続キ海関税ノ取扱ニ従事セシガ、明治四十一年二月二十二日ヨリ其徴収ハ国庫金出納事務ノ一部トシテ処理セラルヽニ至レリ