デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

6章 対外事業
1節 韓国
1款 韓国ニ於ケル第一銀行
■綱文

第16巻 p.34-36(DK160005k) ページ画像

明治17年(1884年)

是ヨリ先、韓国ニ於テ当五銭ノ鋳造ヲ起シ大イニ我国ノ銅塊ヲ購入セシガ、是年此ノ鋳造ヲ中止セシタメ、同国ニ於テ商人ヨリ銅塊ヲ抵当ニ取リタル第一国立銀行ハ大イニ損害ヲ蒙リ其善後処置ニ努メタリ。是ヨリ明治二十年前後ニ至ル迄第一国立銀行ノ韓国支店ハ営業不振ナリキ。


■資料

第一銀行五十年史稿 巻四・第四五―四八頁 大正一二年刊(DK160005k-0001)
第16巻 p.34-35 ページ画像

第一銀行五十年史稿 巻四・第四五―四八頁 大正一二年刊
 ○第一編 第四章 営業の満期
    第四節 朝鮮支店の発達
○上略
本行既に朝鮮海関銀行たるの契約を結びたれば、同国における事業の経営は玆に其歩を進め、金融界の重鎮として勢力を扶殖するを得たれども、不幸にしてこの前後数年間は営業の不振を免れざりき、明治十六七年の交我が内地の経済界が不況なりし時には、朝鮮においても亦同じく本行の支店が打撃を受けしこと尠からず、加ふるに朝鮮政府は明治十六年当五銭の鋳造を起し大に我国の銅塊類を購入せしかば、本行支店も荷為替を盛んにして商估の便を図りしに、十七年俄に之を中止したれば、我商估の輸入せる銅塊三十万斤は、忽ち売却の途を失へり、而して此銅塊は概ね本行支店の抵当品なるを以て、本行支店の蒙
 - 第16巻 p.35 -ページ画像 
れる損害また頗る大なり、故に貸附荷為替金は如何に督促するも入金の目途なければ返済するを得ず、之が善後の処分を講ぜんとする際、同年十二月京城の変ありて我が公使館は清韓兵の襲撃を受け、公使等僅に身を以て免るるの有様なりしが、十八年正月漢城条約締結せられたれば政界は旧に復したれども、銅塊の処分は依然として回復の途を得ず、同月の調査によれば此抵当品の不足勘定は四万五千八百余円に達したり、是に於て本行は此回復策を按じ、其貸附荷為替金取立の方法を講じたり、此措置の誤らざるにおいては二万円内外の不足たるべき予算なりしかば、滞貸損失補充の為め毎季の利益金中より積立金を設くる事、註文品の買付は物品の相場低落せば滞貸となる恐あるが故に、一口千円以上の引受を為すべからざる事、他の支店又は他店と取組みたる荷為替は朝鮮在留の商估等資産を有せざる為、一時に受払の出来ざるがゆゑに、已むを得ず内金を取り、其余の金額を貸付金に振替ふる習慣なれども、此の如きは甚だ危険なるを以て悉く之を中止し他の支店又は他店へ照会して予め其承諾を取り置くべき事、釜山支店の外は普通貸付金は取扱ふべからざる事、釜山支店取扱の貸付金の抵当品は砂金・銀塊・韓銭・丁銅・荒銅・米穀・金巾・寒冷紗・牛皮・布海苔・海参等に限るべき事、仁川・元山の両出張所にては、爾来一切の貸付金を見合せ、領事館及朝鮮海関の預り金出納を本務とし、為替並に荷為替の取扱に従事すべき事、韓銭振出手形は其準備に注意して流通せしむべき事の諸条を、釜山支店主任大橋半七郎・仁川出張所主任沢木安次郎に訓令せり、かく消極的の手段を講ずると共に、資本の運転自由ならざるが故に、かねて政府より借用せる釜山支店流通資本金の残額七万円の返納延期を再三大蔵省に請願したるが、遂に聴許せられざりき、以て当年における営業の困難を推知すべし。○下略


韓国貨幣整理報告書 第一銀行編 第五―六頁 明治四三年刊(DK160005k-0002)
第16巻 p.35 ページ画像

韓国貨幣整理報告書 第一銀行編 第五―六頁 明治四三年刊
    第一章 開国以来ノ幣制
○上略
同帝○太皇帝ノ十九年(西暦紀元一八八二年日本明治十五年)銀標ヲ作リ其翌年又当五銭ヲ作ル、銀標ハ正円無孔、大・中・小ノ三種アリテ、銭文ニ大東三銭・大東二銭・大東一銭トアリシカ、発行ノ翌年其鋳造ヲ停止セリ
当五銭ハ銭文旧銭ニ同シク裏面ニ当五ノ文字アリ旧銭五枚ニ通用セシメシモ実価之ニ伴ハス、其大サ旧銭ノ大ナルモノニ略ホ同シカリシヲ以テ遂ニハ旧銭ト混淆シテ使用スルモノヲ生シ、且ツ政令地方ニ及ハス、為ニ帝都附近ノ五両モ地方ニ於テハ一両視セラルヽノ奇観ヲ呈シ加フルニ盛ニ粗悪銭ノ鋳造セラルヽアリテ物価日ニ騰貴スルニ至レリ
○下略


第一国立銀行半季実際考課状 第二五回・第六頁明治一九年一月刊(DK160005k-0003)
第16巻 p.35-36 ページ画像

第一国立銀行半季実際考課状 第二五回・第六頁明治一九年一月刊
    ○諸御達及願伺届之事
○上略
一八月○明治一八年五日外務卿閣下ヘ当行朝鮮釜山浦支店ニ於テ収入シタル朝鮮新鋳当五銭交換方ヲ該政府ヘ要求シタリシカ、因依遷延シテ甚
 - 第16巻 p.36 -ページ画像 
タ迷惑ナルニ付、同地領事館ヨリ該政府ヘ厳重照会セラレム事ヲ稟請セリ
○下略