デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治38年7月1日（1905年）

是ヨリ先、六月五日、京城本金庫ハ貨幣整理事務処理法ヲ定メ、是日度支部内ニ京城交換所ヲ設ケテ白銅貨ノ交換ヲ開始セリ。爾後平壌・仁川等ニモ交換所設置セラレ、旧白銅貨ノ整理進メラレタリ。

韓国ニ於ケル第一銀行　第一銀行編　第八一―八三頁　明治四一年八月刊
　○第三章　韓国貨幣整理始末
　　　　第八節　旧貨引上ト経済市場
韓国経済界ヲ紊乱セシメタル最大原因ハ白銅貨ノ濫発ニアルハ前ニ述ベタルガ如シ、之ヲ以テ貨幣整理ヲ実施スルニ及ンデハ此等旧白銅貨ノ還収ヲ以テ急務トシ、光武九年六月度支部令第一号ヲ以テ交換ノ標準価格等ヲ定メラレタリ
　　　　旧白銅貨交換ニ関スル件　光武九年六月二十四日度支部令第一号（訳文）
　第一条　旧白銅貨交換ニ関スル事務ハ金庫ヲシテ処理セシメ度支部大臣之ヲ監督ス
　第二条　交換ノ為メニ提供セル旧白銅貨ハ総テ貨幣鑑定役ヲシテ此
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ヲ鑑定セシム
　　貨幣鑑定役ハ度支部大臣之ヲ任命ス
　第三条　旧白銅貨ノ品位・量目・印像・態形等正貨ニ準ズルヲ得ベキモノハ毎個ニ対シテ金弐銭五厘ノ比価ヲ以テ新貨ト交換スベシ前項ニ合当セザル不正旧白銅貨ハ毎個ニ対シテ金壱銭ノ比例ヲ以テ政府ヨリ買収ス、右買収ヲ望マサルモノニ対シテハ政府ヨリ切断シテ以テ還交ス可シ、但シ形質粗ニシテ貨幣ト認メ難キモノハ買収スル限ニアラズ
　第四条　前条ニ依テ交付スル代金ノ種類ハ、本年一月勅令第三号及第四号ニ依リテ新貨幣・第一銀行券及日本通貨ノ中ヲ以テ金庫ヲシテ適宜此ヲ定メシム
　第五条　貨幣交換所ハ先ツ左ノ場所ニ此ヲ設置ス
　　京城　平壌　仁川　群山　鎮南浦
　　但京城交換所ハ来七月一日ヨリ開始スレトモ、其他ノ処所ニ在ル交換所ノ開始ハ追テ告示ス
次デ度支部令第二号ヲ以テ交換ノ処理順序ヲ規定シ、同第三号・第七号・第八号及第十号ヲ以テ左ノ如ク交換所開始ノ日ヲ定メラレタリ
　　　平壌交換所　　　七月二十四日
　　　仁川交換所　　　七月二十六日
　　　群山交換所　　　九月一日
　　　鎮南浦交換所　　同上
是ヨリ先キ旧白銅貨ノ交換開始ノコト発表セラルヽヤ、世人皆其交換方法・価格等ニ対シテ疑念ヲ抱キ、一月初ニ於テ二百三四元ナリシ白銅貨ノ時価ハ漸次低落シテ六月末ニ至リテハ二百二十四元ニ下ルニ至レリ、而シテ七月一日ニ至リ愈々交換事務ノ開始セラルヽヤ、標準正確ニシテ代価ハ遅滞ナク交付セラルヽヨリ白銅貨ノ価格ハ再ヒ著シク上騰セリ、但シ交換開始ノ当時ハ請求一時ニ輻輳シテ、請求書提出後数十日ヲ経ルニアラザレバ実際代価ヲ受クル能ハサル状況ナリシヲ以テ、七八月頃ハ時価低落シテ二百三四十元ニ至リタレドモ之レ一時ノ現象ニ過ギズシテ、爾後漸次ニ騰貴ノ形勢ヲ持続シテ十月ニ至リテハ二百元トナリ、之ヨリ価格漸ク一定シテ法定価格ニ近接シ、貨幣価格ノ変動ヨリ生ズル物価ノ変動ハ永ク之ヲ免ルヽヲ得タリ
○下略

韓国ニ於ケル第一銀行　第一銀行編　第九〇―九三頁　明治四一年八月刊
　○第三章　韓国貨幣整理始末
　　　　第九節　整理事務ノ進捗
白銅貨ノ交換ハ京城ニ於テハ光武九年○明治三八年七月一日ヨリ平壌ハ同七月二十四日、仁川ハ同月二十七日鎮南浦及群山ハ同九月一日ヨリ事務ヲ開始セルハ前ニ述ベタル如シ、初メ京城交換所ニテハ一日約五万元ノ交換予定ヲ以テ設備セシガ、愈々其交換事務ヲ開始スルヤ請求者甚多クシテ開業後僅カニ五日ニシテ要求額既ニ七百三十五万余元ニ上レルヲ以テ、度支部令第三号ニ依リテ一時右請求書ノ接受ヲ中止シテ一方ニ事業設備ノ拡張ヲ計画シテ事業ノ進捗ヲ図リ、九月一日ニ於テ再
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ビ交換ヲ開始セリ、此時ニ至リテハ旧銅貨ノ市場ニ在ルモノ頗ル減少セルヲ以テ交換請求者モ大ニ減ジ、後ニハ旧白銅貨ノ還収ハ納税及買上ヲ以テ主トナスニ至レリ、平壌・仁川・鎮南浦・群山等ノ交換所ハ概スルニ平穏ニ交換ヲ継続シテ旧白銅貨ノ流通減少スルト共ニ請求者モ次第ニ減ジ、仁川ノ如キハ同年十一月三十日ニ於テ交換ヲ中止スルヲ得ルニ至レリ
抑々旧白銅貨ノ還収ハ交換及納税ニ依ルヲ原則トナセシト雖モ、又市場ノ状況ニ応ジテ整理資金ヲ以テ買収ヲナセシコトアリ、而シテ明治三十八年七月交換開始以降四十年六月ニ至ル二箇年間ニ於テ回収シタル総額七百九万五千余円ニ達セリ、其詳細ヲ挙グレバ左ノ如シ

備考一、換算価格ハ一枚ニ付甲種二銭五厘、乙種一銭（丙種無償）ナリ
　　二、甲種交換算額ヲ対比スルニ金三万三千七百十三円八十一銭ノ差アルハ買入価格ノ一定セザリシモノアルニ由ル
旧銀貨及白銅貨ハ前節ニ述ベタル如ク其鋳造額ノ多カラザリシノミナラズ、白銅貨下落ノ為メ他ニ駆逐セラレテ市場ニ流通セルモノ少ナク只金庫開始ノ時度支部ヨリ受入レタル少額ト及ビ宮内府ヨリ買受ケタル四十万円アルノ外金庫ニ還収セラレタルモノハ殆ド云フニ足ラズ
葉銭ハ令達発布ノ当時ハ壱銭一二毛《（厘カ）》ノ時価ナリシガ、後銅相場騰貴ノ為メ二厘内外ニ上騰スルニ至リタルヲ以テ一厘五毛ノ公定価格ヲ以テ納税ニ使用スルモノナク、又新貨ノ流通セザル地方ニテハ葉銭ヲ以テ納税スルモノアルモ郡守ハ之ヲ新貨ト交換シテ国庫ニ納付スルヲ以テ還収セラルヽモノ甚ダ少シ、次デ明治三十九年十一月ニ至リ更ニ買上交換ノ途ヲ開キ納税ト同ジク十五割ノ換算率ニテ交換ニ応ゼシモ其目的ヲ達スル能ハズ、四十年二月遂ニ交換率ヲ高メテ十八割五分トシ、次デ三月ニ至リ更ニ二十割ニ変更シテ時価ニ適合セシメタルヨリ回収高著シク増進セリ
右ノ外葉銭ハ銅価騰貴ノ為メ自然ニ輸出ヲ誘致セラレテ海外ニ流出セルモノ甚多ク、市場流通額ハ之ガ為メ減少セルコト著シキモノアリ

第一銀行五十年史稿　巻五・第九七―九九頁　大正一二年刊
　○第二編　第五章　日清戦後の発達
　　　　第三節　韓国中央金融機関
○上略
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貨幣整理事務も其開始に先ちて諸般の準備を整へしが、明治三十八年四月十七日大蔵省は韓国貨幣製造に関する取扱手続を制定し、其第二条に於て「第一銀行は韓国貨幣整理に関し韓国政府の依託を受けたるに依り、韓国貨幣製造に関する一切の取扱を為すべし」と規定せり。
新貨幣の鋳造は凡て日本の造幣局に委託するが故に、同日本行は造幣局と新貨鋳造に就きての契約を締結せり、新貨幣は上文に述べたる貨幣条例に多少の改正を加へ、金貨に二十圜・十圜・五圜の三種、銀貨に半圜・二十銭・拾銭の三種、白銅貨に五銭、青銅貨に一銭・五厘の二種あり、皆日本の幣制を模倣せるものなり、かくて京城本金庫は六月五日を以て「貨幣整理事務処理法」を定めて各支金庫に通達し、整理に関する一般方針を指示せる後、七月一日京城交換所を度支部内に設けて、まづ白銅貨の交換を開始し、尋で平壌・仁川・鎮南浦・群山にも交換所を設けたり、然るに従来同国政府の行へる貨幣の引上げ交換等ある毎に、私財没収の嫌ありしを以て、今回の交換に際しても韓民疑懼して流言を放ち、之が為に白銅貨の価格大に下落したれども、本行が交換事務の確実公平且敏捷に行はれしより、次第に信用を恢復し、十一月以後は価格殆ど一定して民心平穏に帰し、同年回収を為し得たるもの実に二億五百五十四万六千余枚、四百九十七万一千余円に上れり。白銅貨は交換によるの外、別に国庫金の収納に使用するを許し、且一個二銭五厘の比例にて買収をもなせり、葉銭及び旧銀貨・旧銅貨については旧白銅貨の如く特に交換の方法を設けず、国庫の収納によりて自然の回収を待つことゝなしたり。是銀貨・銅貨は其流通せるもの多からざれども、葉銭は韓民久しく使用に慣れて愛着の念深く良貨よりも却て之を喜ぶ風ありて、整理極めて困難なるのみならず、其弊害も白銅貨の如く甚しからざるが故に、白銅貨の回収を先にして葉銭を後にせしなり。是を以て葉銭の整理回収は日露戦役後に於て行はれたり。
○下略

韓国貨幣整理報告書　第一銀行編　第五一―一一〇頁　明治四二年刊
　○第四章　旧白銅貨ノ整理
　　　　第一節　交換所並ニ交換手続
旧白銅貨ノ流通額ハ、度支部並ニ大蔵省ノ調査ニ依レハ、旧典圜局ニ於テ製造発行シタルモノ一千七百万元、私鋳偽造ニカヽルモノ六百万元、合計二千三百万元ナリトス、此額ハ正確ノ数ニ非ルノミナラス、私鋳偽造ニカヽルモノ、如キ固ヨリ推測ニ過キスト雖モ、今日迄ノ経過ニ依リ考フレハ甚シキ違算ナキモノナルカ如シ
二千三百万元ト云ヘハ其額余リ大ナラサルカ如シト雖モ、当時韓国通貨全体ノ半以上ヲ占ムルモノナルヲ以テ、其整理ノ遅速ハ経済上ニ至大ノ関係ヲ有スルノミナラス、旧白銅貨ハ元来補助貨ニシテ表記価格ニ比シ実価甚タ少キモノナルカ故ニ年々価格ノ下落ヲ来シ、人民ニ多大ノ損害ヲ蒙ラシムルヲ以テ、先ツ第一ニ之カ整理ニ力ヲ尽スヲ要シ又其還収ニハ真偽ノ鑑定ヲ要スルカ故ニ特ニ交換所ヲ設ケ、鑑定役ヲ置キテ鑑定計算ニ関スル事務ヲ司ラシメ、且其取扱ニ付テハ厳重ナル
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監督ヲ為シ、人民ヲシテ一点ノ疑惑ヲ起サシメサルヲ要スルヲ以テ、光武九年六月度支部令第一号ヲ以テ之ニ関スル規定ヲ設ケラレタリ、其全文左ノ如シ
　　　　旧白銅貨交換ニ関スル件（部令第一号）光武九年六月二十四日
　　　○前掲（第二七一頁）ニツキ略ス。
同日又度支部令第二号ヲ以テ旧白銅貨交換処理順序ヲ定メラレタリ、其全文左ノ如シ
　　　　旧白銅貨交換処理順序（部令第二号）光武九年六月二十四日
　第一条　旧白銅貨ノ交換ヲ請求セントスルモノハ休日外毎日午前九時ヨリ正午十二時迄ニ旧白銅貨ヲ交換所ニ持来スヘシ
　第二条　旧白銅貨ハ二百五十元又ハ五百元毎ニ堅牢ナル櫃ニ盛リテ持来スヘシ、但シ此ニ充タサル数ハ堅牢ナル櫃又ハ袋ニ入レテ其表面ニ個数ヲ示明スヘシ
　第三条　旧白銅貨ノ個数ハ交換所ニテ計算セル所ニ依ル
　第四条　交換ヲ請求スルトキハ交換所ニ備置ケル附属書式第一号ノ請求書ニ居住・姓名ト請求年月日・旧白銅貨個数ト容器個数ヲ記入シテ旧白銅貨ト共ニ呈出スヘシ
　第五条　請求書ニ旧白銅貨ヲ添ヘテ交換ヲ請求スルモノ有ル時ハ接受所掌ハ此ヲ接受シテ計算所掌ニ送交スヘシ
　第六条　計算所掌ハ請求書ノ到著次序ニ依リテ号数ヲ記入シ、甲号ト乙号間ニ符印ヲ押シタル後此ニ記載セル事項ヲ登記シ、請求書ニ附属セル任置票ニ符印ヲ押シタル後此ヲ切断シテ請求者ニ交付スヘシ
　第七条　計算所掌ハ前条ノ順序ヲ経タル後請求書ノ甲号ト乙号ヲ切断シテ乙号ハ旧白銅貨ト共ニ鑑定所掌ニ送交スヘシ、但シ旧白銅貨ニハ請求書ノ号数及容器ノ個数ヲ示明セル札ヲ付スヘシ
　第八条　鑑定所掌旧白銅貨ヲ受ケタル時ハ鑑定人ヲシテ此ヲ鑑定セシメ、甲種及乙種ヲ各嚢袋ニ盛納シテ此ノ請求書ノ号数ト容器個数ヲ示明セル札ヲ付シテ倉庫所掌ニ交付スヘシ
　第九条　鑑定所掌ハ乙号請求書ニ鑑定ノ結果ト白銅貨ノ個数ト容器個数及号数ヲ記入シテ此ヲ計算所掌ニ送付スヘシ
　第十条　鑑定所掌カ其受納セル旧白銅貨中其日内ニ鑑定ヲ終了セサルモノアルトキハ、仮リニ此ヲ倉庫所掌ニ越交シテ翌日更ニ倉庫所掌ヨリ此ヲ受納シ、前載ノ順序ニ依リテ鑑定スヘシ
　第十一条　前条ノ鑑定ヲ終了セサル旧白銅貨ヲ倉庫所掌ニ越交スル時ニハ、此ニ伴ヘル乙号請求書ハ此ヲ計算所掌ニ送付シテ翌日鑑定セシムルニ際シ更ニ此ヲ受納スヘシ
　　計算所掌カ前項ノ送付ヲ受ケタル時ハ、此ヲ倉庫所掌ニ権交セル旧白銅貨ニ対照スヘシ
　第十二条　計算所掌カ鑑定所掌ヨリ鑑定ヲ畢リタル旧白銅貨ニ対スル乙号請求書ヲ領受シタルトキハ、此ヲ甲号ト対照シテ成績欄ニ交付スヘキ代金ノ額ヲ記入シ、成績欄ニ記録セル事項ヲ登記シテ請求者ニ任置証ト引換ニ附属書式第二号ノ支撥票ヲ交付スヘシ
　　第十三条　支撥票ノ交付ハ正午十二時ヨリ午後四時迄トス
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　第十四条　計算所掌カ支撥票ヲ交付スル時ハ、此ヲ倉庫所掌ニ通知シテ之ニ対スル旧白銅貨ハ各種毎ニ各其備置セル嚢袋ニ盛納セシメ、此ニ封印ヲ施シテ他者ヲシテ混同セシメサル様保管セシムヘシ　（書式省略）
右二箇ノ部令ニ依リテ交換ノ標準手続等交換ニ必要ナル事項ハ悉ク明定セラレタリト雖モ、第一銀行ハ交換取扱者ノ便宜ノ為ニ、又交換請求者ノ参考ノ為、各諸規則ノ説明書ヲ公ニセリ、其全文左ノ如シ
　　　　貨幣交換ニ関スル諸規則説明
　今回韓国政府ニ於テ弥々光武五年ノ勅令第四号貨幣条例ヲ実施スル事トナレリ、同条例ニ依レハ本位貨幣ハ金ニシテ我国ノ本位貨幣ト其単位ヲ同フスルノミナラス、補助貨ノ種類及其通用制限額等殆ント我国ノ幣制ト異ルナク、又本年勅令第三号ニヨリテ之ト量目品位ノ均シキ外国貨幣ハ其通用ヲ許サレタルヲ以テ、我国ノ貨幣ハ当然韓国ニ於テモ通用スル事トナレリ、故ニ若シ同条例ニシテ完全ニ行ハルヽヲ得ハ、独韓国諸般取引ヲシテ円滑ナラシムルノミナラス、両国経済上ノ関係ヲシテ一層親密ナラシムルハ云フヲ待タサル所ナリ、然レトモ右実施ニ伴フ大困難ハ従来ノ幣制頗ル紊乱セルコトナリ、此紊乱セル幣制ヲ整理スルニ非レハ如何ナル良法モ遂ニ実行スルヲ得サルヘシ、是今回貨幣条例実施ト共ニ貨幣整理ヲ実行セントスル所以ニシテ、其主眼トスルトコロハ、従来過多ニ失シタル補助貨ヲ引上ケ適当ノ度ニ減少スルト同時ニ、濫造濫発ノ為ニ信用ヲ失墜シタル旧白銅貨ハ全然之ヲ引上ケテ、代ユルニ本位貨幣ト適当ナル補助貨トヲ以テセントスルニアリ、旧白銅貨ハ其流通額甚タ多キノミナラス其全部ヲ交換シテ代フルニ新貨幣ヲ以テスルモノナルヲ以テ、其実行ノ方法如何ハ経済上ニ至大ノ関係ヲ及ホスヘシ、是レ世人カ早ク之ニ付テ聞ク所アラントスル所以ニシテ、当局者亦最モ苦心シ最モ慎重ニ研究スル所アリタル所以ナリ、今左ニ今回発布セラレタル旧白銅貨交換ニ関スル諸規則ニ付説明スル所アラントス、旧白銅貨交換ノ事ハ本年勅令第四号ニ依リテ定メラレ、今回発布セラレタル諸規則ハ其細則ヲ定メタルモノニシテ、第一旧白銅貨交換ニ関スル件、第二旧白銅貨交換処理順序、第三京城交換所ニ於ケル旧白銅貨交換請願ニ関スル件ノ三ナリトス、右ノ内第一ハ交換ニ関スル重要ナル条件ヲ定メ、第二ハ交換ニ関スル手続ヲ定メ、第三ハ京城交換所ニ特別ナル事項ヲ定メタルモノナリ、今前諸規則中ニ規定セル重ナル事項ニ付テ説明セン
　　　　第一　交換ノ取扱者
　交換ノ取扱ハ第一銀行カ金庫ノ資格ヲ以テ之ヲナスモノナレトモ、一々政府ノ指揮監督ヲ受クルモノニシテ、銀行ハ唯実行ノ責ニ当ルノミナリ、又鑑定役ノ如キ重要ナル職務ハ特ニ政府ノ任命シタルモノヲシテ之ニ当ラシメ、務メテ実行上ノ公平ヲ保タントセリ
　　　　第二　交換ノ標準及価格
　従来流通ノ白銅貨ニシテ形像・品質正貨ニ準スルヲ得ヘキモノハ法定ノ価格ヲ以テ交換スルコトヽナレリ、而シテ如何ナルモノカ正貨ニ準スヘキモノナルヤハ事実ノ問題ニシテ、鑑定者ノ鑑定ニ委スノ
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外ナシ、然レトモ鑑定者ノ任意ニ鑑定セシムルニ非スシテ、日本造幣局ノ分析其他ノ方法ニヨリテ数十回ノ研究ヲ重ネ、実物ニツキテ正確ナル標準貨幣ナルモノヲ定メ、之ヲ標準トシテ鑑定セシムルナリ、故ニ鑑定者ニシテ正否疑ハシキモノアル時ハ此標準貨幣ニ対照シテ正否ヲ決スルナリ
　正貨ト認メタルモノヽ交換価格ハ二銭五厘ナルコトハ已ニ定マレル所ニシテ、正貨ト認メサルモノハ実価ヲ給シテ買上クヘキモノナリ而シテ其実価ハ精密ニ云ヘハ一個一個異ルヘキモ、斯クテハ評価ニ困難ナルノミナラス、一般民人ノ損害大ナルヘキヲ以テ、当局者ハ此点ヲ酌量シ、其価格ヲ一般ニ一個一銭ト定メタリ
　　　　第三　代リ金ノ種類
　交換ニ依リ交付スヘキ代リ金ノ種類ハ、政府ノ適宜ニ定ムル所ニシテ、新貨幣・第一銀行券又ハ日本貨幣ノ内孰レヲ交付スルモ自由ナレトモ、前述ノ如ク補助貨ハ之ヲ減少スルノ方針ナルヲ以テ、可成之ヲ払出サヽルノ予定ナリ、又出来得ル丈ケハ請求者ノ期望ヲモ参酌スル筈ナリ
　　　　第四　交換ノ場所
　交換ノ場所ハ京城・仁川・平壌・鎮南浦・群山ノ五個所ニ定メラレタリ、然レトモ交換ヲ完全ニ行フニハ予想外ノ準備ヲ要シ、夫レカ為メ各交換所同時ニ交換ヲ開始シ得サルヲ以テ、先七月一日ニハ京城交換所ニ於テノミ開始シ、準備ノ整理スルニ従ヒ漸次他ニ及ホス事トナリ居レリ、京城ニ於ケル交換所ハ度支部内ニ之ヲ設備セリ
　　　　第五　交換ノ手続
　　　　　　一　交換ノ申込
　交換ノ請求者カ一時ニ輻湊シタルトキハ非常ナル混雑ヲ来シ、甲ノ分ト乙ノ分ト互ニ混淆スルカ如キ事ナシトセサルノミナラス、受取ノ際其箱ニ一々札ヲ附セサルヲ得サルヲ以テ、是等ノ為ニ手間取リ其日ノ中ニ受取得サルトキハ、請求者ハ一旦持参セル現品ヲ空シク持帰ラサルヲ得サルカ如キ事ナシトセス、此ノ如キトキハ相互ノ不便誠ニ甚タシキモノアリ、故ニ現品ヲ持参シテ請求ヲナス前ニ先ツ一応書面ヲ以テ交換請求高ヲ申込マシメ、交換日指定票ヲ交付シ、其票ニ記載セル日ニ指定ノ現品ヲ持参シテ請求ヲ為スノ手続トナレリ、而シテ右ノ申込ハ本月二十九日ヨリ度支部内交換所受付係ニナスコトヲ得（午前九時ヨリ十一時迄ノ間）、申込書ハ交換所ニ備ヘアルヲ以テ申込人ハ之ニ金額・氏名ヲ記入シテ差出スナリ
　然レトモ七月・八月及ヒ九月ノ三箇月内ハ申込額千円以上壱万元以下ニ制限セラレタリ、此ノ如ク多額ノ分ヲ先ニシタルハ、多額ノ分ハ本位貨ノ用ヲナスモノニシテ独リ所有者ノ困難ノミナラス、一般経済上ノ関係モ大ナレハ、公益上之ヲ先ニスルハ至当ナリト認メタルニ依ルナリ、然レトモ其最上額ニ制限ヲ置カサル時ハ、多額ノ申込アリタル場合ニハ一人ノ分ノ為ニ数日ヲ費ヤシ、他ノ分ハ一時交換ヲ見合ハサヽルヲ得サルカ如キ場合ヲ生スヘキヲ以テ、可成公平ニ可成多数ノ人ヲシテ利益ヲ得セシメントシタルニ依ルモノナリ
　以上ノ如キ制限ハ各地ノ状況ニヨリテ其限度ヲ異ニセサルヲ得サル
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ヲ以テ、先ツ京城交換所ノミニツキ規定ヲ設ケ、其他ハ其開始ト共ニ各其地ノ状況ニ応シテ適当ノ規定ヲ設クル方針ナリ
　　　　　　二　交換ノ請求
　前述ノ如ク交換ノ申込ヲ為シ交換日指定票ヲ受取タルモノハ、其票ニ記載セル日（午前九時ヨリ同十二時迄ノ間）ニ現品ヲ交換所ニ持参シテ交換ノ請求ヲ為スナリ、夫ニハ計算其他取扱ノ便宜ノ為ニ二百五十元又ハ五百元毎ニ箱ニ容レテ持参スルヲ要ス、又箱ハ十分堅牢ナルモノニ非レハ破損等ノ為メ甲乙混交スルノ恐アルヲ以テ之ヲ受取ラサルコトモアルヘシ、可成紙包トナサスシテ「バラ」ニテ箱ニ容レ持参スル方交換ノ取扱上便利ナルヘシ
　交換所ニ持参シタル現品ハ其枚数ヲ検査セス、其儘ニ受取預リ証ヲ交付シ置キ、後ニ交換所ニ於テ計算ヲナシ、其実数ヲ確定スルナリ是ハ誠ニ止ムヲ得サルニ出テタルモノニシテ、受取ノ際ニ一々枚数ヲ計算スルコトハ非常ノ手数ニシテ為ニ多数ノ便利ヲ計ル能ハサルニ至ルヘキヲ以テ、枚数ハ一々交換所ノ計算スルトコロニ依リテ定ムルコトヽナレリ、其代リ交換所ノ設備ハ整正完全ニシテ其取扱ハ十分厳重ナル取締ヲナシ、毫モ誤謬粗漏ノ取扱ヲナサヽルヘシ
　　　　　　三　鑑定
　交換所ノ内部ノ取扱ニ就テモ種々規定ヲ設ケタルモ是等ハ皆内部ノ事ナレハ其最モ重要ナル鑑定ノ事ニ付テ説明スル事トセン、即チ請求者ヨリ現品ヲ受取リタル時ハ之ヲ記帳シタル後伝票ヲ附シテ鑑定役ニ引渡スナリ、其伝票及現品ニハ唯番号ニヨリテ何某ノ分ナルコトヲ明カニシ其姓名ヲ鑑定係ニ示サス以テ鑑定者カ万一ニモ人ニヨリ取扱ヲ異ニスルカ如キコトヲ防クナリ、鑑定人ニハ一定ノ事務服ヲ著用セシメ其服ニハ「カクシ」ヲ附セス、又毎日作業ノ前後ニ更衣セシメ窃取等ヲ予防セリ、又鑑定者ノ取締ハ此道ニ経験アルモノヲ政府ニテ任命シ厳重ニ取締リ且ツ鑑定者ノ素行ヲ探知シ万一ノ場合ヲ予防セントス、又計算ニ就テモ計算者ニ一任セス、計算シタルモノヲ一定ノ数量ヲ容ルヘキ箱ノ中ニ列ヘシメ、監督者ニ於テ検査ノ上容器ニ容レシムル等、出来得ル限リノ取締ヲナシアルナリ
　鑑定ノ結果ハ一々伝票ニ記入シ、鑑定役証印ノ上計算係ニ送付シテ記帳シ、又現品ハ封印ノ上倉庫係ニ渡シテ保管セシムルコトニナリ居レリ
　　　　　　四　代リ金ノ支払
　已ニ鑑定ヲ終リタルトキハ、計算係ハ其結果ニ依リテ交付スヘキ代リ金ノ額ヲ算出シ、請求者ノ請求ニ依リ前ニ渡シアル預リ証ト引換ニ支払票ヲ交付ス、受取人ハ其支払票ヲ第一銀行支店内ノ中央金庫支払部ニ持参シテ、支払票ト引換ニ現金ヲ受取ルナリ
　尚玆ニ説明ヲ要スルハ正貨ト不正貨ノ区別ナリ、蓋シ旧白銅貨ハ私鋳偽造ノ混入入多キタメ政府ノ収納ニ於テモ民間ノ取引ニ於テモ鑑定人ヲシテ鑑定セシメ、悪貨ハ之ヲ排除シ良貨ノミヲ撰取スルノ慣習アルヲ以テ、今回ノ引上ニ当リテモ正貨ト不正貨ヲ区別シテ還収価格ヲ異ニシタルハ至当ノ事ニシテ、度支部令第一号第三条ニハ「旧白銅貨ノ品位・量目・印像・形体カ正貨ニ準スルモノハ毎箇ニ対シテ金弐銭五厘
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ノ比価ヲ以テ新貨ト交換スル事」トアリ、又同第二項ニ「前項ニ合当セサル不正旧白銅貨ハ毎箇ニ対シテ金壱銭ノ比例ヲ以テ政府ニ買収ス右買収ヲ望マサル者ニ対シテハ政府ヨリ切断シテ還交スル事、但形質ノ麁粗ニシテ貨幣ト認ムヘカラサルモノハ買収スル限ニアラス」ト規定セルハ之カ為ナリ、然レトモ其区別ニ就テハ従来明カナル標準アリシニ非ラス、唯鑑定人カ慣習ニ依リテ鑑定スルニ過キサルヲ以テ、実行上極メテ困難ナル問題ニシテ、又民人権利上ニ重大ナル関係ヲ有スルヲ以テ、従来ノ慣習ヲ基礎トシテ学理的ノ研究ヲ遂ケ、民人財産上ノ影響ヲ避クルト同時ニ、鑑定人ニ対シ一定ノ標準ヲ与フル事ヲ期セリ、今其順序ヲ挙クレハ左ノ如シ
　一、各地方ヨリ若干宛ノ見本白銅貨ヲ取集メテ旧貨ノ鑑定ニ錬熟ナル者ヲシテ鑑定セシメ、其結果ニヨリ之ヲ数等ニ分チ成績表ヲ作レリ
　一、鑑定ニ依リテ分類セル各種貨幣ノ鑑定成績表ヲ添付シテ此ヲ日本大阪造幣局ニ送リ分析試験ヲ依頼シタルニ、其成績ハ左表ノ如ク大概前鑑定ノ結果ト一致シテ鑑定ノ正確ナルヲ明確ニセリ
　一、因リテ更ニ鑑定ニ繝熟セルモノ数人ヲシテ、右分類ヲ基礎トシ一般流通ノ状況ヲ斟酌シテ、普通市場ニ於テ故障ナク流通スルモノト否トニ両分セシメ、前者ヲ甲種トシ後者ヲ乙種トス
　一、甲種中最下級ニ属スル者数百枚ヲ選取シテ此ニ極印ヲ附シテ標準貨トシ、此ト同等或ハ此ヨリモ良好ナル者ヲ以テ甲種トシ、其以下ハ此ヲ乙種トス
　一、形質ノ麁粗ニシテ貨幣ト認ム可カラサル者トハ、白銅以外ノ物質ニテ鋳造セルモノ、極印ノ無キ者等、凡眼ヲ以テ直ニ貨幣ニ非ル事ヲ判断スルヲ得ヘキモノニシテ、此ヲ丙種トス
　　　　韓国白銅貨分析成績
　　百枚以上見本ヲ有スル者即×印ヲ付シタル者ハ其半数ヲ合併鎔解シ、其他ハ二枚乃至五枚ノ平均試験ヲ為セリ


　品種　　　数量　　　　　　　　分析成績千分中　　　　　　　　　　　京城第一銀行ニ於テセル区別説明（鑑定人ノ鑑定成績）
　　　　　　　　　　　　　　　銅　　　　　　ニツケル　　　亜鉛及雑分　
京城ノ分
　　A 　　　四十二元　　　×　七五五、二　　二四一、二　　　　三、六　典圜局製ノ正貨ト称ス
　AノB 　　四元　　　　　　　七五八、八　　二三九、八　　　　一、四　同上火災ヲ被リタル者
　　B 　　　二元五十銭　　　　七七三、六　　二二三、四　　　　三、〇　準正貨
　　C 　　　三十銭　　　　　　七八一、七　　一九八、三　　　二〇、〇　私鋳上等
　　D 　　　三元　　　　　　　七五五、七　　二一七、三　　　二七、〇　悪貨中ノ上等
　　E 　　　三元　　　　　　　七五二、四　　二一三、六　　　三四、〇　悪貨忠清道ニテ通用ス
　　F 　　　四十五元　　　×　七四八、七　　一六七、五　　　八三、八　悪貨忠清道ニテ通用ス
　　G 　　　二十二元五十銭　　七八一、七　　一三二、三　　　八六、〇　悪貨黄海道ノミ通用ス
　　H 　　　十元　　　　　　　六四三、三　　一二五、九　　二三〇、八　粗悪
平壌ノ分
　　A 　　　三百三十五元　×　七七一、四　　二二二、七　　　　五、九　最上
　　B 　　　十五元　　　　×　七六九、八　　一九七、〇　　　三三、二　準白銅貨
　　C 　　　八元　　　　　×　七五八、五　　一七六、七　　　六四、八　偽造中ノ上等
　　D 　　　百三十元　　　×　七四二、一　　一一八、七　　一三九、二　数多正貨中ニ混入通用ス
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　　E 　　　四元　　　　　　　六五九、六　　一五六、六　　一八三、八　最悪貨
仁川ノ分
　　A 　　　百八十九元　　×　七七〇、六　　二二六、一　　　　三、三　最上
　　B 　　　五元五十銭　　×　七五六、八　　二三七、〇　　　　六、二　準白銅貨
　　C 　　　一元　　　　　　　七六七、一　　二〇八、七　　　二四、二　偽造中ノ上等
　　D 　　　二元五十銭　　　　七五四、〇　　一五七、二　　　八八、八　悪貨但多数ノ正貨中混入通用ス
　　E 　　　三十銭　　　　　　七四二、六　　一〇三、四　　一五四、〇　最悪貨
鎮南浦ノ分
　　○　　　四十七元　　　×　七六四、六　　一九七、〇　　　三八、四　市中無碍使用ス
　　×　　二十五元　　　　　　七一六、三　　一七〇、三　　一一三、四　偽造
　　△　　　三十元　　　　×　七五五、二　　二三四、一　　　一〇、七　電報局ニ於テ収入
群山ノ分
　　A 　　　三十八元　　　×　七六〇、一　　二三〇、九　　　　九、〇　正貨
　AノB 　　一元　　　　　　　七六五、四　　一九五、〇　　　三九、六　近於正貨者
　AノC 　　一元　　　　　　　七七一、九　　一二一、一　　一〇七、〇　劣等
　　B 　　　二十元　　　　×　七五二、〇　　一五八、六　　　八九、四　偽造中ノ上等
　　C 　　　二十八元　　　×　七四三、九　　一六二、九　　　九三、二　悪貨但多数貨幣中混入通用ス
　　D 　　　五元　　　　　　　六六九、四　　　九四、九　　二三五、七　最劣等

如右
　　明治三十八年四月二十八日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　造幣局〔印]
旧白銅貨ノ整理ハ主トシテ交換ニヨリテ還収スルノ計画ナリシモ、右ノ外税金其他国庫納付金ニ使用スルヲ許シ、其一旦国庫ニ収納シタルモノハ総テ之ヲ貨幣整理部ニ振替ヘ、還収ノ手続ヲ為スコトヽシ、之ニ依リテ還収シタルモノ少ナカラス、又市場ノ状況ニ依リ右二個ノ手続ニ依ラス整理部ニ於テ買収シタルモノアリ、此等ノ詳細ノ事項ハ以下数節ニ於テ之ヲ述ヘン
　　　　第二節　交換ノ状況
交換所ノ開始ハ光武九年六月度支部令第三号・第七号・第八号及第十号ヲ以テ定メラレタリ、即チ左ノ如シ
　　　京城交換所　　　　　七月一日
　　　平壌交換所　　　　　七月二十四日
　　　仁川交換所　　　　　七月二十六日
　　　鎮南浦交換所　　　　九月一日
　　　群山交換所　　　　　九月一日
今日ヨリ見レハ旧白銅貨交換還収ノ如キハ尋常一様ノ事項ニシテ左程困難ナル事業ニモ非ルカ如シト雖モ、当時韓国ノ事情ニ通スルモノ殆ト総テカ其事業ノ成効ヲ疑ヒシノミナラス、流説百出シテ人心安セス時ニ或ハ不穏ノ挙動アラントセシヲ見レハ、白銅貨ノ還収ハ一大難事業ニシテ、而シテ当局者ノ一大英断タリシ事ヲ思ハサルヘカラサルナリ、当時ノ状況ヲ見ルニ、不信ノ政令ニ対シ幾多ノ苦キ経験ヲ有スル韓人等ハ、白銅貨ノ交換ニ対シ果シテ相当ノ代リ金ヲ得ルヤ否ヤヲ疑ヒ、不慮ノ損失ヲ蒙ランコトヲ恐レ、蓄積セル白銅貨ハ可成早ク土地其他ノ物品ニ代ヘントスル傾向ヲ生シタルヲ以テ、白銅貨ノ価格ハ日日下落シ、而シテ価格ノ下落ハ益々人心ニ不安ヲ与ヘタリ、又一方ニハ日清ノ商人ハ此機ニ乗シ白銅貨ノ買占ヲ為シテ奇利ヲ博セントスル
 - 第16巻 p.281 -ページ画像 
アリ、加之代リ金トシテ交付スヘキ新貨幣条例ニ依ル新貨幣ハ未タ一般ノ信用ヲ博スルニ至ラス、代リ金交付後如何ナル状態ヲ来スヘキヤハ容易ニ計リ知ルヘカラサルモノアリシナリ
事情右ノ如クナリシヲ以テ、交換開始ノ結果ニ付テハ非常ノ苦心ト警戒トヲ以テ、七月一日兎モ角京城交換所ヲ開始シタルニ、交換ノ請求甚タ多ク、七月五日ニ至リテハ請求人員八百七十九名、請求金額七百三十五万三千六百九十五元ノ多キニ達シタルヲ以テ、度支部令第三号ニ依リ請求書ノ接受ヲ中止シタリ、是ヨリ先旧白銅貨ノ相場下落セシヲ以テ商人中買占ヲナスモノ少カラサリシカ、交換ノ開始セラレテ其標準及鑑定ノ正確ナルヲ知リテヨリ争フテ交換ノ請求ヲナシ、現ニ白銅貨ヲ所持セサルモノ迄単ニ権利ヲ得ル為ニ請求書ヲ提出シ、甚シキハ権利ヲ売買スルモノサヘアルニ至レリ、是レ蓋シ当局者ノ予メ警戒シタル処ニシテ、度支部令第三号第六項ハ此ノ如キ場合ニ請求書ノ接受ヲ一時中止スルヲ得ルコトヲ定メタルモノナリ
然ルニ世人ハ之ヲ以テ交換ヲ中止シタルモノト誤認シ、一犬虚ニ吠エテ万犬実ヲ伝ヘ、巷説紛々トシテ人心頗ル疑懼ヲ抱キ、百方弁明スル所アリト雖モ無智ノ細民容易ニ安セス、寧ロ事務ノ進捗ヲ計リ早ク請求書ノ接受ヲ開始スルノ必要ヲ認メタルヲ以テ、七月中旬ヨリ鑑定人ヲ増加シ事務員ヲ督励シ交換高ノ増加ヲ計リタルニ、十九日ニハ交換額一日十万元ヲ超過スルニ至リ、八月二十八日ニハ已ニ請求書ヲ接受シタル旧白銅貨全部ノ交換ヲ終リ、再ヒ請求書ノ接受ヲ開始セリ
是時ニ当リテ市場ニ在ル旧白銅貨ハ著シク減シタルヲ以テ、交換ノ請求モ大ニ減少シ人心安堵セリ、爾来旧白銅貨ノ相場モ亦漸次騰貴シテ法定ノ価格ニ達シ再ヒ変動ヲ見ス、交換モ亦何等故障ナク継続シテ一般ノ便宜トナル事少カラス、唯価格ノ一定シテ通用ニ便ナリシト流通高ノ漸次減少セシトハ交換ノ請求額ヲ著シク減少シ、白銅貨ノ還収ハ主トシテ納税買上ニ依ルコトヽナレリ
平壌ハ旧白銅貨流通ノ本場ニシテ其額甚タ多キノミナラス、偽造貨幣ノ混同流通スルモノ多キヲ以テ、交換ノ際ニ於ケル鑑定標準ノ寛厳ハ所有者ノ利害ニ大ナル関係ヲ有スルヲ以テ、交換開始前已ニ流説百出シ、或ハ通貨ノ大部分ハ不正貨トシテ乙種ニ編入セラルヽヲ以テ多大ノ損害ヲ蒙ルヘシト云ヒ、或ハ交換ノ信スヘカラスシテ猥リニ人ノ財貨ヲ奪フモノナリトナシ、交換所開始サルヽモ交換ヲ請求スルモノナク、往々ニシテ不穏ノ状況ヲ呈シ、或ハ又日本商人中正貨ヲ選取シテ買収スルモノアルヲ見テ日本人トノ取引ヲ拒絶セントスルアリ、交換ノ事容易ニ行ハルヘクモ見エサリシカ、財務官・交換所長等ノ熱心ナル尽力ニ依リ殆ント戸毎ニ説諭スル所アリ、漸ク交換ノ請求ヲナスモノヲ生シタリ、然ルニ交換ノ結果ハ極メテ良好ニテ、鑑定ノ標準能ク四囲ノ事情ニ適シ取扱亦正確ニシテ一点疑ヲ存スヘキ余地ナカリシヲ以テ、人心漸ク安シ、爾来平穏ニ交換ヲ継続セリ
仁川交換所ハ開始当時ニアリテハ一日約二万元ノ交換ヲ為シタルモ、交換ノ請求甚タ多ク、日々ノ請求額ニ応スルヲ得サル有様ナリシモ、交換ノ進捗スルニ従ヒ市場流通額減少シ、従テ交換ノ請求モ亦減少セリ、仁川ハ居住民ノ大部分日本其他ノ外国人ニシテ交換ニ就テモ誤解
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等アル事ナク、始メヨリ平穏ノ間ニ交換ヲ為スヲ得、光武九年十一月三十日交換ヲ中止スルニ至レリ
鎮南浦及群山交換所ハ最後ニ交換ヲ開始シタル地ナルヲ以テ、他ノ交換所ニ於ケル状況ノ已ニ明カナリシト、両地共ニ日本人ノ居住スルモノ多キ地ナルヲ以テ、是亦誤解ヲ生スルナク平穏ニ交換ヲ継続セリ
以上ノ如ク交換ハ其開始ノ初ニ当リテハ多少ノ故障ナキニ非リシモ、交換所ノ信頼スヘキコトノ明カナルニ及ヒテハ何レモ円滑ニ事務ヲ進捗スルヲ得タリ、而シテ其交換ノ成績ハ別表ノ通ニシテ、人民ニ多大ノ損害ヲ与フルコトナク、能ク当時ノ事情ニ適スルヲ得タリ
交換ノ額ハ左表ノ示ス通ニシテ、光武九年十月迄ハ其額甚タ多カリシモ十一月ヨリハ著シク減少セリ、是レ交換開始ノ初ニ当リテハ相場ノ下落ニ乗シ買占ヲ為シタルモノカ争フテ交換ヲ求メタルト、都会地ニ集積シテ本位貨ノ用ヲ為シタルモノハ不便甚タシキヲ以テ全速力ヲ以テ交換サレタルニ依ルモノニシテ、是レ実ニ交換ノ第一期ト云フ可キナリ、十一月以後ハ各地ニ散在シタルモノカ都会地ニ入来リ、日本商人又ハ日本商人ニ取引ヲ有スル韓商人ノ手ニ入リ、交換所ニ来レルモノナルヲ以テ其額非常ニ減少セリ、事情右ノ如クナルカ故ニ其交換高モ亦貨幣集散ノ時期ト一致シ、旧盆年末ト云フ如キ支払時期ニシテ地方ノ通貨カ都会地ニ集ル時ニハ交換額ハ増加シ、其反対ニ米穀ノ買入等都会ノ通貨カ地方ニ散布セラルヽ時期ニハ交換額モ亦減少スルコトヲ示セリ
交換額ハ其後漸次ニ減少シ来リ、隆熙二年五月ニ至リテ交換ハ全滅セリ、交換高ノ減少シタル理由ハ左ノ如シ
　一、流通高ノ減少シタルコト
　一、白銅貨ノ相場一定シタルカ為ニ交換セサルモ不便ヲ感セサルコト
　一、相場一定セルカ故ニ交換ヲ請求シテ幾分ニテモ乙種ヲ出ストキハ、夫レ丈ノ損失トナルヲ以テ交換ニ来ラサルコト
事情右ノ如クナルヲ以テ、交換ニノミ依頼スルヲ得サルヲ以テ買収ニヨリ還収スル事トナシ、且ツ交換ハ極メテ少キ為ニ特ニ交換ノ手続ヲナスハ煩ニ堪エサルカ故ニ、交換ヲ請求スルモノアルモ総テ買収トシテ取扱ヒタリ、故ニ隆熙二年五月以降ハ全ク交換ノ取扱ハ中止ノ姿トナレリ
今毎月交換額並ニ成績表ヲ掲クレハ左ノ如シ
　　　　毎月旧白銅貨交換額並ニ成績表

年月　甲種　乙種　合計　千分比例　甲種　乙種
枚　枚　枚
　光武九年
　七月　　　三八、二三七、一五二　　一四四、〇二五　　三八、三八一、一七七　　　九九六　　　四
　八月　　　六五、五三八、四六九　　六〇二、四二〇　　六六、一四〇、八八九　　　九九一　　　九
　九月　　　三五、〇八九、五三〇　　七一四、四三五　　三五、八〇三、九六五　　　九八〇　　二〇
　十月　　　一三、五一〇、六八三　　二五三、五七三　　一三、七六四、二五六　　　九八二　　一八
　十一月　　　三、一三五、〇〇六　　　一九、八一五　　　三、一五四、八二一　　　九九四　　　六
　十二月　　　　　　九一、六一五　　　　　　八〇〇　　　　　　九二、四一五　　　九九一　　　九
　光武十年
　一月　　　　　　八五八、六〇〇　　　　七、七一九　　　　　八六六、三一九　　　九九一　　　九
 - 第16巻 p.283 -ページ画像 
　二月　　　　　　九七五、五二九　　　　九、〇一一　　　　　九八四、五四〇　　　九九一　　　九
　三月　　　　一、四六四、〇四一　　　　五、九五六　　　一、四六九、九九七　　　九九六　　　四
　四月　　　　一、九二五、〇二九　　　　六、四二〇　　　一、九三一、四四九　　　九九七　　　四《（マヽ）》
　五月　　　　二、三五五、七四九　　　一二、九〇六　　　二、三六八、六五五　　　九九五　　　五
　六月　　　　　　四四一、六九二　　　　二、〇二八　　　　　四四三、七二〇　　　九九四　　　六
　七月　　　　一、三七六、二六七　　　一〇、三七四　　　一、三八六、六四一　　　九九三　　　七
　八月　　　　　　八一三、三五二　　　　三、〇四六　　　　　八一六、三九八　　　九九六　　　四
　九月　　　　　　七二六、七〇七　　　　一、四八八　　　　　七二八、一九五　　　九九八　　　二
　十月　　　　　　一八七、四八六　　　　　　四〇一　　　　　一八七、八八七　　　九九八　　　二
　十一月　　　　　　　九、九二一　　　　　　　七六　　　　　　　九、九九七　　　九九二　　　八
　十二月　　　　　　一四、二七八　　　　　　四一五　　　　　　一四、六九三　　　九七一　　二九
　隆熙元年
　一月　　　　　　　四一、三八六　　　　　　五〇一　　　　　　四一、八八七　　　九八八　　一二
　二月　　　　　　一七三、四二三　　　　　　五六五　　　　　一七三、九八八　　　九九七　　　三
　三月　　　　　　　六一、二六四　　　　　　　八九　　　　　　六一、三五三　　　九九九　　　一
　四月　　　　　　　六八、四三一　　　　　　五四三　　　　　　六八、九七四　　　九九二　　　八
　五月　　　　　　　五〇、九一三　　　　　　二〇〇　　　　　　五一、一一三　　　九九六　　　四
　六月　　　　　　　六六、六五二　　　　　　三八八　　　　　　六七、〇四〇　　　九九四　　　六
　七月　　　　　　　七七、五九四　　　　　　　　五　　　　　　七七、五九九　一、〇〇〇　　――
　八月　　　　　　　四四、九八七　　　　　　　一五　　　　　　四五、〇〇二　一、〇〇〇　　――
　九月　　　　　　　　七、九八一　　　　　　　一七　　　　　　　七、九九八　　　九九八　　　二
　十月　　　　　　　一八、三九〇　　　　　　　　九　　　　　　一八、三九九　一、〇〇〇　　――
　十一月　　　　　　　九、一九九　　　　　　　――　　　　　　　九、一九九　一、〇〇〇　　――
　十二月　　　　　　二九、一四〇　　　　　　　六四　　　　　　二九、二〇四　　　九九八　　　二
　隆熙二年
　一月　　　　　　五三、七七九　　　　　　　　三九　　　　　　五三、八一八　　　九九九　　　一
　二月　　　　　　一七、〇九八　　　　　　　　九五　　　　　　一七、一九三　　　九九四　　　六
　三月　　　　　　　五、六三五　　　　　　　三五九　　　　　　　五、九九四　　　九四〇　　六〇
　四月　　　　　　　一、九八六　　　　　　　　一四　　　　　　　二、〇〇〇　　　九九三　　　六
　五月　　　　　　一〇、〇〇五　　　　　　　　――　　　　　　一〇、〇〇五　一、〇〇〇　　――
　六月　　　　　　　　　　――　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　　――　　――
　七月　　　　　　　　　　――　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　　――　　――
　八月　　　　　　　　　　――　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　　――　　――
　九月　　　　　　　　　　――　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　　――　　――
　十月　　　　　　　　　　――　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　　――　　――
十一月　　　　　　　　　　――　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　　――　　――
　十二月　　　　　　　　　――　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　　――　　――
　隆熙三年
　一月　　　　　　　　　　――　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　　――　　――
　二月　　　　　　　　　　――　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　　――　　――
　三月　　　　　　　　　　――　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　　――　　――
　四月　　　　　　　　　　――　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　　――　　――
　五月　　　　　　　　　　――　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　　――　　――
　六月　　　　　　　　　　――　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　　――　　――
　七月　　　　　　　　　　――　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　　――　　――
　八月　　　　　　　　　　――　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　　――　　――
　九月　　　　　　　　　　――　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　　――　　――
 - 第16巻 p.284 -ページ画像 
　十月　　　　　　　　　　――　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　　――　　――
　十一月　　　　　　　　　――　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　　――　　――
　合計　一六七、四八八、九六九　一、七九七、八一一　一六九、二八六、七八〇　　　九八九　　一一

交換請求者ノ国籍ニ就テハ、初年特ニ交換ノ初数箇月ニ於テハ日本人ノ請求額多ク、清韓人少ナク、其後ハ清韓人ノ請求額日本人ヨリ多シ是主トシテ初期ニ於テ日本人ノ買占ヲナシタルモノアルニ依ルモノナリ、玆ニ惜ムヘキハ清国人ト韓国人トハ其姓名相似タルカ為ニ此両国籍ヲ区別スル事ヲ得サリシニ在リ、左ニ国籍別表ヲ掲ク


　　　　　　旧白銅貨交換請求者国籍別表

　　　　年月　　日本人口数　　　　同元数　　　　　　　　清韓人口数　　　　同元数　　　　　　　欧米人口数　　同元数　　　　　　合計口数　　　　　　合計元数
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　元　　　　　　　　　　　　　　　　　　　元　　　　　　　　　　　　　元　　　　　　　　　　　　　　　　　　　元
　　　光武九年
　　　七月　　　　　一五四　一、一二〇、一〇五・〇〇〇　　　一三五　　　九七六、四〇〇・〇〇〇　　七　七〇、〇〇〇・〇〇〇　　　二九六　二、一六六、五〇五・〇〇〇
　　　八月　　　　　三三一　一、八八三、五〇〇・〇〇〇　　　二三四　一、四九六、一〇〇・〇〇〇　　一　一〇、〇〇〇・〇〇〇　　　五六六　三、三八九、六〇〇・〇〇〇
　　　九月　　　　　二六三　　　八八五、六一〇・〇〇〇　　　二八六　　　七六五、六七六・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　五四九　一、六五一、二八六・〇〇〇
　　　十月　　　　　二三〇　　　三三四、三一四・七〇〇　　　二五五　　　三〇四、一五一・五〇〇　――　　　　　　　　　――　　　四八五　　　六三八、四六六・二〇〇
　　　十一月　　　　　五九　　　　六七、一二八・三〇〇　　　　一八　　　　　八、六一二・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　　七七　　　　七五、七四〇・三〇〇
　　　十二月　　　　　一二　　　　　一、二九〇・六〇〇　　　　一六　　　　　三、九二六・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　　二八　　　　　五、二一六・六〇〇
　　　光武十年
　　　一月　　　　　　四七　　　　一八、九三四・四〇〇　　　　四六　　　　三四、〇六六・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　　九三　　　　五三、〇〇〇・四〇〇
　　　二月　　　　　　六八　　　　三九、〇九〇・五〇〇　　　　二五　　　　一二、六九一・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　　九三　　　　五一、七八一・五〇〇
　　　三月　　　　　　九八　　　　四二、八七二・四〇〇　　　　六四　　　　四九、八三八・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　一六二　　　　九二、七一〇・四〇〇
　　　四月　　　　　　五三　　　　三五、二五九・〇〇〇　　　　九〇　　　　六九、三五四・〇〇〇　　一　　一、〇〇〇・〇〇〇　　　一四四　　　一〇五、六一三・〇〇〇
　　　五月　　　　　　八七　　　　四九、九七一・五〇〇　　　　八五　　　　四一、五九四・〇〇〇　　一　　一、三五〇・〇〇〇　　　一七三　　　　九二、九一五・五〇〇
　　　六月　　　　　　三一　　　　一〇、七六二・〇〇〇　　　　一七　　　　　四、六三二・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　　四八　　　　一五、三九四・〇〇〇
　　　七月　　　　　　七二　　　　二五、三〇六・〇〇〇　　　　八〇　　　　四七、三六七・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　一五二　　　　七二、六七三・〇〇〇
　　　八月　　　　　　五一　　　　一七、一七六・〇〇〇　　　　六一　　　　一七、四七四・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　一一二　　　　三四、六五〇・〇〇〇
　　　九月　　　　　　三一　　　　　九、〇八七・〇〇〇　　　　八一　　　　二六、一八四・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　一〇二　　　　三五、二七一・〇〇〇
 - 第16巻 p.285 -ページ画像 
　　　十月　　　　　　一〇　　　　　三、三四五・〇〇〇　　　　　四　　　　　　　六八〇・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　　一四　　　　　四、〇二五・〇〇〇
　　　十一月　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――　――　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　　　十二月　　　　　　一　　　　　　　七三五、〇〇〇　　　　――　　　　　　　　　　　　――　――　　　　　　　　　――　　　　　一　　　　　　　七三五・〇〇〇
　　　隆熙元年
　　　一月　　　　　　　二　　　　　一、四〇〇・〇〇〇　　　　　四　　　　　二、三七七・九〇〇　――　　　　　　　　　――　　　　　六　　　　　三、七七七・九〇〇
　　　二月　　　　　　　一　　　　　　　六〇〇、〇〇〇　　　　　九　　　　　七、一〇〇・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　　一〇　　　　　七、七〇〇・〇〇〇
　　　三月　　　　　　　四　　　　　一、七一〇・〇〇〇　　　　　二　　　　　　　六八〇・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　　　六　　　　　二、三九〇・〇〇〇
　　　四月　　　　　　　七　　　　　三、四五〇・〇〇〇　　　　――　　　　　　　　　　　　――　――　　　　　　　　　――　　　　　七　　　　　三、四五〇・〇〇〇
　　　五月　　　　　　　八　　　　　二、五五六・〇〇〇　　　　――　　　　　　　　　　　　――　――　　　　　　　　　――　　　　　八　　　　　二、五五六・〇〇〇
　　　六月　　　　　　　六　　　　　一、六七七・八〇〇　　　　　三　　　　　一、六七五・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　　　九　　　　　三、三五二・八〇〇
　　　七月　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　　四　　　　　三、八八〇・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　　　四　　　　　三、八八〇・〇〇〇
　　　八月　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　　五　　　　　二、二五〇・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　　　五　　　　　二、二五〇・〇〇〇
　　　九月　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　　一　　　　　　　四〇〇・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　　　一　　　　　　　四〇〇・〇〇〇
　　　十月　　　　　　　一　　　　　　　　一〇・〇〇〇　　　　　二　　　　　　　九一〇・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　　　三　　　　　　　九二〇・〇〇〇
　　　十一月　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　　二　　　　　　　四六〇・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　　　二　　　　　　　四六〇・〇〇〇
　　　十二月　　　　　　一　　　　　　　　七〇・〇〇〇　　　　　四　　　　　一、三九〇・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　　　五　　　　　一、四六〇・〇〇〇
　　　隆熙二年
　　　一月　　　　　　　二　　　　　　　　　六・〇〇〇　　　　　八　　　　　二、八八五・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　　一〇　　　　　二、八九一・〇〇〇
　　　二月　　　　　　　二　　　　　　　　六〇・〇〇〇　　　　　二　　　　　　　六〇〇・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　　　四　　　　　　　六六〇・〇〇〇
　　　三月　　　　　　　一　　　　　　　三〇〇・〇〇〇　　　　――　　　　　　　　　　　　――　――　　　　　　　　　――　　　　　一　　　　　　　三〇〇・〇〇〇
　　　四月　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　　一　　　　　　　一〇〇・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　　　一　　　　　　　一〇〇・〇〇〇
　　　五月　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　　一　　　　　　　五〇〇・〇〇〇　――　　　　　　　　　――　　　　　一　　　　　　　五〇〇・〇〇〇
　　　六月　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――　――　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　　　七月　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――　――　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――
 - 第16巻 p.286 -ページ画像 
　　　八月　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――　――　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　　　九月　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――　――　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　　　十月　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――　――　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　　　十一月　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――　――　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　　　十二月　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――　――　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　　　隆熙三年
　　　一月　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――　――　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　　　二月　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――　――　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　　　三月　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――　――　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　　　四月　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――　――　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　　　五月　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――　――　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　　　六月　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――　――　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　　　七月　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――　――　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　　　八月　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――　――　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　　　九月　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――　――　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　　　十月　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――　――　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　　　十一月　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――　――　　　　　　　　　――　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　　　合計　　　一、六二三　四、五五六、三二七・二〇〇　一、五四五　三、八八三、九五三・四〇〇　一〇　八二、三五〇・〇〇〇　三、一七八　八、五二二、六三〇・六〇〇


　　　　第三節　国庫収納ノ状況
旧貨ヲ以テ政府ノ収納ニ充ツル場合ノ処置ニ関シテハ光武九年六月度支部大臣令達第一号ヲ以テ其取扱方ヲ命令セラレタリ、同令達第一条ニ曰ク
一般納人ヨリ旧白銅貨ヲ以テ国税其他ノ国庫金ヲ納付シタル時ハ、交換ノ請求アリタルモノト同シク貨幣整理部ニ於テ交換ヲナシタル後、其代リ金ヲ交付スル為ニ支撥スル支撥票ヲ納人ニ交付セス、直ニ出納所掌ニ送付シ国庫金収入ノ手続ヲ為スヘシ
金庫所在地ニ於テ納人カ直接ニ金庫ニ納付スル場合ニハ総テ之ニ依リテ取扱フモ、直接金庫ニ納入セス収入官吏ニ納付スル場合ニ関シテハ
 - 第16巻 p.287 -ページ画像 
同令達第四条ニ左ノ如ク規定セリ
　収入官吏カ旧白銅貨ヲ以テ国庫金ヲ納付スル場合ニハ一箇ニ付二銭五厘ノ割合ヲ以テ金庫ニ収納シタル後、直ニ之ヲ交換所ニ交付シテ新貨ト交換シ、交換所ノ設置ナキ処ニテハ京城交換所ニ送付シテ交換スルコト
金庫所在地外ニ於テ収入官吏カ現金ヲ取扱フ処ニテハ収入官吏カ相当ナル鑑定ヲ施シテ受入ルヽヲ以テ、金庫ニ於テ収入官吏ヨリ納付ヲ受クル場合ニハ総テ甲種トシテ受入ルヽモノナリ、金庫所在地ニ於ケル旧貨ノ流通減少シ、交換ノ額亦減少スルニ及ンテハ本条ニ依ル還収大部分ヲ占ムルニ至レリ
光武十年二月一日以後ハ統監府通信官署ニ於テ国庫金取扱ヲナスコトトナリシヲ以テ、其以後ハ収入官吏ノ現金ヲ取扱フ場合少クナリ、郵便局ヲ経テ還収スルモノ漸次増加セリ
国庫収納ニ依ル還収ノ額カ租税収入ノ時期ニ伴フハ自然ノ数ニシテ、光武十年初メヨリ五六月ノ交地税収入ノ際ニ増加シ、夏期ヨリ更ニ減少シタルハ全ク之カ為ナリ、且亦交換ト同シク市場流通高ノ減少スルニ従ヒテ漸次減少シ、隆熙元年夏期以後ハ著シク減少シ、九月以後ハ殆ント絶無トナリシヲ以テ、此少数ノ為ニ特ニ国庫収納トシテ取扱ヲ異ニスルハ不便ナルヲ以テ、隆熙二年ヨリハ総テ買収トシテ整理スルコトトナシタルヲ以テ、同年後国庫収納ハ中絶セリ
光武九年七月以来毎月国庫収納ニ依ル還収高ヲ示セハ左ノ如シ
　　　　毎月国庫収納額表

　　年月　　　　　　　　甲種　　　　　　　　　乙種　　　　　　　　　合計
　　　　　　　　　　　　　　　　枚　　　　　　　　　　枚　　　　　　　　　　　枚
　光武九年
　七月　　　　　　　二二七、四八〇　　　　　　　　　　〇　　　　　二二七、四八〇
　八月　　　　　一、五五六、四一七　　　　　　三、六二二　　　一、五六〇、〇三九
　九月　　　　　　　八一一、六五六　　　　　一二、三七四　　　　　八二四、〇三〇
　十月　　　　　二、四九九、三六六　　　　一六六、六九八　　　二、六六六、〇六四
　十一月　　　　　　七一三、四二三　　　　　四二、三一〇　　　　　七五五、七三三
　十二月　　　　　　五八一、七九七　　　　　四八、二〇二　　　　　六二九、九九九
　光武十年
　一月　　　　　二、一五九、七七六　　　　四三〇、六八六　　　二、五九〇、四六二
　二月　　　　　二、四四四、一三七　　　　一九一、四四九　　　二、六三五、五八六
　三月　　　　　六、三〇九、八〇一　　一、一三三、三七四　　　七、四四三、一七五
　四月　　　　一〇、八五一、七一一　　一、一一六、二二九　　一一、九六七、九四〇
　五月　　　　　八、〇二六、九八六　　　　八三三、三九五　　　八、八六〇、三八一
　六月　　　　　六、〇五五、〇〇八　　　　七三四、八一八　　　六、七八九、八二六
　七月　　　　　三、二一四、五八八　　　　三〇五、七六七　　　三、五二〇、三五五
　八月　　　　　二、八五二、三三二　　　　一七四、四六九　　　三、〇二六、八〇一
　九月　　　　　一、一七六、五七五　　　　　四〇、五四九　　　一、二一七、一二四
　十月　　　　　　　八九四、八八三　　　　　五二、九四四　　　　　九四七、八二七
　十一月　　　　　　二八七、五八五　　　　　一九、〇三四　　　　　三〇六、六一九
　十二月　　　　　　一四九、六三七　　　　　　三、五一三　　　　　一五三、一五〇
　隆熙元年
　一月　　　　　　　一二八、五五〇　　　　　　　　三三八　　　　　一二八、八八八
　二月　　　　　　　　四二、三七二　　　　　　三、一八九　　　　　　四五、五六一
　三月　　　　　　　一五八、五六一　　　　　　　　五二一　　　　　一五九、〇八二
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　四月　　　　　　　一〇八、八二二　　　　　　　　二二六　　　　　一〇九、〇四八
　五月　　　　　　　　三五、五二一　　　　　　　　　　三　　　　　　三五、五二四
　六月　　　　　　　　　四、八九二　　　　　　　　　　四　　　　　　　四、八九六
　七月　　　　　　　　　四、八一二　　　　　　　　　――　　　　　　　四、八一二
　八月　　　　　　　　　　　四一二　　　　　　　　　三四　　　　　　　　　四四六
　九月　　　　　　　　　　　　　一　　　　　　　　　　三　　　　　　　　　　　四
　十月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　十一月　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　十二月　　　　　　　　　　三四八　　　　　　　　　五三　　　　　　　　　四〇一
　隆熙二年
　一月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　二月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　三月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　四月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　五月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　六月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　七月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　八月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　九月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　十月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　十一月　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　十二月　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　隆熙三年
　一月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　二月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　三月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　四月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　五月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　六月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　七月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　八月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　九月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　十月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　十一月　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――
　　合計　　　五一、二九七、四四九　　五、三一三、八〇四　　五六、六一一、二五三

　　　　第四節　買収ノ状況
初メ交換ノ開始セラルヽヤ交換ノ請求甚タ多ク、唯ニコレノミニ依頼スルトキハ徒ラニ時日ヲ遅延シ、交換希望者ノ不便タルノミナラス、一般市場ノ不便タルヘキヲ以テ、公私ノ便宜ヲ計リ、旧貨所持人ノ意志ニ依リテハ相当ノ時価ヲ以テ之ヲ買収セリ、之カ為ニ旧貨ノ還収ニ便シタルコト少カラサリシモ、交換ノ請求減少スルニ及ヒテ一時買収ヲ停止セリ
其後旧白銅貨ノ相場騰貴シテ法定額ニ達シ変動ナキニ至ルヤ、前述ノ如ク交換ノ請求ハ却テ減少シ主トシテ国庫収納ニ依ルノ状況トナリシモ、之レノミニテハ急ニ還収ヲナスコト困難ニシテ特種ノ方法ヲ以テ積極的ニ還収ニ務メサルヘカラサルニ至レルヲ以テ、信用アル商人ニ
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依頼シテ貨幣整理資金ヲ以テ買収ヲ行ハシメタルモ、市場ノ流通高ノ減少スルニ従ヒ此方法ニ依ル買収額亦漸次ニ減少セリ
右ノ如ク普通ノ方法ニ依ル買収困難ナリシノミナラス銀行其他金融会社ニ於テ旧白銅貨ヲ受入レ、更ニ之ヲ金庫ニ納付スルトキハ悪貨混入ノ為ニ多少ノ損害ヲ受ケサルヲ得ス、為ニ旧貨ノ受入ヲ拒ムモノヲ生シ還収弥々困難ナリシヲ以テ、光武十年八月当局ノ認可ヲ得テ各銀行其他ノ金融会社ト協定シテ、右銀行及金融会社ニ於テ受入タル旧白銅貨ハ総テ一箇二銭五厘ノ比例ヲ以テ買収スルコトヽセリ、右各銀行会社トノ協定ハ左ノ如シ
　一、何々銀行（又ハ会社）ノ収納セル旧白銅貨ハ韓国中央金庫ニ於テ総テ一箇二銭五厘ノ比価ヲ以テ買収スルコト、但丙種ハ買収ノ限ニアラス
　一、右銀行（又ハ会社）ニ於テ旧白銅貨ヲ受入ルヽニハ相当ノ鑑定ヲナス事、若シ右銀行（又ハ会社）ニ於テ収納セル旧白銅貨ニシテ丙種又ハ丙種ニ非ルモ悪貨ノ混入多ク、鑑別上怠慢ノ弊アリト認メタルトキハ何時ニテモ右取扱ヲ停止スルコトアルヘキ事
隆熙二年二月、度支部令第四号ヲ以テ同年十一月三十日以後旧白銅貨ノ通用ヲ禁止スヘキコトヲ定メラレタルヲ以テ、右期限前ニ於テ出来得ル限リノ力ヲ尽シテ、旧白銅貨ノ還収ニ務ムルノ必要ヲ認メ、其一方法トシテ、各地商人ヲシテ適宜ニ組合ヲ設ケテ旧白銅貨ヲ市場ヨリ取入レシメ、金庫ニ於テ最モ便宜ナル方法ニ依リテ、之ヲ買収スルコトヽナシ、度支部ノ認可ヲ得テ之ヲ各支金庫ニ通達セリ、其全文左ノ如シ
　貨第六八号
　拝啓貴庫附近ニ於ケル地方金融組合ノ設置ナキ地方ニ於テ相当信用スヘキ商人有之候ハヽ、左記要項ニ依リ旧白銅貨交換組合ヲ組織セシメ、通用禁止期限迄ニ、出来得ル限リ多数ニ引上クル様致度候ニ付、右組合ヲ設置スヘキ御見込ノ地方及其他御意見有之候ハヽ至急御申聞被下度、此段得貴意候也
　　隆熙二年九月十九日
　　　　　　　　　　　　　　　　第一銀行韓国総支店
　　　　　　　　　　　　　　　　　　国庫部長　三島太郎
　　　　各支金庫出納役代理人宛
　左記
　　　　旧白銅貨交換組合設立要項
　一、組合員及組合代表者ヲ金庫ニ届出テ置ク事
　二、金庫ハ予メ右組合ニ旧貨ノ容器ヲ交付シ荷造ノ方法ヲ示シ置ク事、但シ容器運搬ノ為製作費以上ヲ要スルトキハ其地方ニ於テ製作セシメ、実費ヲ支給スル事
　三、組合ハ何時ニテモ交換シタル旧白銅貨ヲ金庫ニ持参シ代リ金ヲ請求スル事ヲ得
　四、金庫ハ前項代リ金ノ千分ノ十ヲ、手数料トシテ組合ニ交付スル事
　五、一回ノ持参高千円以上ナルトキハ手数料ノ外、尚其運搬費及中
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央金庫ノ定メタル付添旅費ヲ支給スル事
　六、組合ニ於テ交換シタル旧白銅貨千円以上ニ達シタルトキハ金庫ハ其通報ニ依リ金庫員ヲ派出シ、仮リニ其代リ金ヲ交付シ右旧貨ヲ引取ル事ヲ得、但シ金庫ノ都合ニ依リ派出員ヲ出シ難キ場合ハ此限ニアラス
　七、前項ノ旧白銅貨ハ金庫ニ於テ改数ノ上精算シ、第四項ノ手数料ヲ交付スル事
　八、鉛銭其他貨幣ト認メ難キモノニ対シテハ、代リ金ヲ交付セサル事
　九、旧赤銅貨ハ旧白銅貨ニ準シテ取扱フ事
右通達ト同時ニ、度支部ヨリモ同様ノ通達ヲ各財務監督局長其他ニ発シ、交換組合ノ設立ヲ勧誘セシメラレタルヲ以テ京城・仁川・開城・平壌・鎮南浦・群山・礼山・鳥致院ノ八箇所ニ於テ右交換組合ノ設立ヲ見、之ニ依リテ還収シタル額亦少カラストナス
右ノ外僻遠ノ地ニシテ還収ノ機関ナキ処ニアリテハ以上何ノ方法ニヨルモ尚還収甚困難ナルヲ以テ人ヲ各地ニ派出シ、又金庫ヨリ派出スルヲ不便トスル処ニアリテハ、農工銀行若クハ金融組合ニ依頼シテ可成市日ヲ選ヒテ人ヲ各地ニ派遣シ、以テ旧白銅貨ノ買収ヲナセリ
今光武九年七月以来毎月ノ買収高ヲ示セハ左ノ如シ
　　　　毎月旧白銅貨買収額表

　　年　月　　　枚数　　　　　　　　　　　元数　　　　　　　　　　　　　　金額
　　　　　　　　　　　　　　枚　　　　　　　　　　元　　　　　　　　　　　　　円
　光武九年
　七月　　　四、四六六、五一一　　　二二三、三二五・五五〇　　　一〇〇、五七五・一八〇
　八月　　　八、九六三、七四三　　　四四八、一八七・一五〇　　　二〇二、二六八・二四〇
　九月　　　　　八九〇、〇〇五　　　　四四、五〇〇・二五〇　　　　二一、七二三・三九〇
　十月　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　十一月　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　十二月　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　光武十年
　一月　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　二月　　　　　一七〇、〇〇〇　　　　　八、五〇〇・〇〇〇　　　　　四、二〇七・九二〇
　三月　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　四月　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　五月　　　　　二六八、三七七　　　　一三、四一八・八五〇　　　　　六、六八一・九七五
　六月　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　　　――
　七月　　　一、二四〇、〇〇〇　　　　六二、〇〇〇・〇〇〇　　　　三〇、九三七・七四〇
　八月　　　一、八〇三、五四一　　　　九〇、一七七・〇五〇　　　　四四、九五三・六七五
　九月　　　　　二八八、六三三　　　　一四、四三一・六五〇　　　　　七、二一五・八二五
　十月　　　　　六三五、〇六九　　　　三一、七五三・四五〇　　　　一五、八六九・二二五
　十一月　　　　　　八、〇〇〇　　　　　　　四〇〇・〇〇〇　　　　　　　二〇〇・〇〇〇
　十二月　　　　　　四、〇三九　　　　　　　二〇一・九五〇　　　　　　　一〇〇・九七〇
　隆熙元年
　一月　　　二、〇二一、七五五　　　一〇一、〇八七・七五〇　　　　五〇、五四三・八七五
　二月　　　五、五二四、〇三九　　　二七六、二〇一・九五〇　　　一三八、一〇〇・九七五
　三月　　　五、四六一、八五八　　　二七三、〇九二・九〇〇　　　一三六、五四六・四五〇
　四月　　　三、八四三、六六一　　　一九二、一八三・〇五〇　　　　九六、〇九一・五二五
　五月　　　三、〇二四、六七九　　　一五一、二三三・九五〇　　　　七五、六一六・九七五
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　六月　　　二、一二八、六五三　　　一〇六、四三二・六五〇　　　　五三、二一六・三二五
　七月　　　二、〇〇三、二四九　　　一〇〇、一六二・四五〇　　　　五〇、〇八一・二二五
　八月　　　　　八〇五、一六七　　　　四〇、二五八・三五〇　　　　二〇、一二九・一七五
　九月　　　　　五五八、一二五　　　　二七、九〇六・二五〇　　　　一三、九五三・一二五
　十月　　　　　二七九、三六七　　　　一三、九六八・三五〇　　　　　六、九八四・一七五
　十一月　　一、六七七、九四二　　　　八三、八九七・一〇〇　　　　一一、二六八・六三〇
　十二月　　　　四四一、二〇四　　　　二二、〇六〇・二〇〇　　　　一一、〇三〇・一〇〇
　隆熙二年
　一月　　　一、九一一、〇八七　　　　九五、五五四・三五〇　　　　四七、七七七・一七五
　二月　　　一、九二一、〇二〇　　　　九六、〇五一・〇〇〇　　　　四八、〇二五・五〇〇
　三月　　　二、五二五、七二八　　　一二六、二八六・四〇〇　　　　六三、一四三・二〇〇
　四月　　　四、七三一、〇〇四　　　二三六、五五〇・二〇〇　　　一一八、二七五・一〇〇
　五月　　　五、八七七、二〇五　　　二九三、八六〇・二五〇　　　一四六、九三〇・一二五
　六月　　　五、四九一、三七三　　　二七四、五六八・六五〇　　　一三七、二八四・三二五
　七月　　　五、〇一六、五七六　　　二五〇、八二八・八〇〇　　　一二五、四一四・四〇〇
　八月　　　三、四三六、三六〇　　　一七一、八一八・〇〇〇　　　　八五、九〇九・〇〇〇
　九月　　　四、一〇七、八四八　　　二〇五、三九二・四〇〇　　　一〇二、六九六・二〇〇
　十月　　　六、六三二、四七〇　　　三三一、六二三・五〇〇　　　一六五、八一一・七五〇
　十一月　　七、一四五、五四五　　　三五七、二七七・二五〇　　　一七八、六三八・六二五
　十二月　一〇、九九七、六五八　　　五四九、八八二・九〇〇　　　二七四、九四一・四五〇
　隆熙三年
　一月　　　五、五二五、八九九　　　二七六、二九四・九五〇　　　一三八、一四七・四七五
　二月　　　三、六一八、五六三　　　一八〇、九二八・一五〇　　　　九〇、四六四・〇七五
　三月　　　三、九一三、五四六　　　一九五、六七七・三〇〇　　　　九七、八三八・六五〇
　四月　　　二、七九五、八五六　　　一三九、七九二・八〇〇　　　　六九、八九六・四〇〇
　五月　　　二、五〇七、一九六　　　一二五、三五九・八〇〇　　　　六二、六七九・九〇〇
　六月　　　一、六五七、八八八　　　　八二、八九四・四〇〇　　　　四一、四四七・二〇〇
　七月　　　一、六二六、九二二　　　　八一、三四六・一〇〇　　　　四〇、六七三・〇五〇
　八月　　　一、〇九四、三二一　　　　五四、七一六・〇五〇　　　　二七、三五八・〇二五
　九月　　　　　七九二、九九七　　　　三九、六四九・八五〇　　　　一九、八二四・九二五
　十月　　　一、二三三、六三三　　　　六一、六八一・六五〇　　　　三〇、八四〇・八二五
　十一月　　一、〇一九、六四六　　　　五〇、九八二・三〇〇　　　　二五、四九一・一五〇
　合計　一三二、〇八七、九五八　六、六〇四、三九七・九〇〇　三、二三七、八〇五・二二〇

　　　　第五節　還収ノ進捗
以上三種ノ方法ニ依リテ還収シタルモノヽ外、金庫開始ノ際ニ従来ノ度支部現金出納官吏ヨリ引継キタルモノアリ、又税関ヨリ引継ヲ受ケタルモノアリ、其額左ノ如シ
　一、二千三百六万五千五百六十三枚　度支部ヨリ引継
　一、三百五十九万七千九百十三枚　仁川税関ヨリ引継
　　　外ニ白銅円形四千四百二十六貫十九匁
　一、五十六万一千三百七十二枚　鎮南浦税関ヨリ引継
右ノ内仁川税関、鎮南浦税関ヨリ引継ヲ受ケタルモノハ、税関ニテ偽造貨ノ密輸入ヲ差押ヘ没収シタルモノニテ市場ニ流通シタルモノニ非ルカ故ニ之ヲ除キ、貨幣整理開始（光武九年七月）以来隆熙三年十一月二十日ニ至ル迄ノ間ニ於テ市場ヨリ還収セル額ヲ還収ノ方法ニ依リ区別シ比較対照スレハ左ノ如シ
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　　　　　　毎月旧白銅貨還収種類別表

　　　　年月　　　　　　交換　　　　　　　　　　納税　　　　　　　　　　買収　　　　　　　　　度支部伝掌　　　　　　　　計　　　　　　　　　　　　額面金額
　　　　　　　　　　　　　　　　　　枚　　　　　　　　　　　枚　　　　　　　　　　　枚　　　　　　　　　　　枚　　　　　　　　　　　枚　　　　　　　　　　元
　　　光武九年
　　　七月　　　　三八、三八一、一七七　　　　　二二七、四八〇　　　四、四六六、五一一　　二二、〇一九、三六三　　六五、〇九四、五三一　　三、二五四、七二六・五五〇
　　　八月　　　　六六、一四〇、八八九　　　一、五六〇、〇三九　　　八、九六三、七四三　　　一、〇四六、六〇〇　　七七、七一一、二七一　　三、八八五、五六三・五五〇
　　　九月　　　　三五、八〇三、九六五　　　　　八二四、〇三〇　　　　　八九〇、〇〇五　　　　　　　　　　――　　三七、五一八、〇〇〇　　一、八七五、九〇〇・〇〇〇
　　　十月　　　　一三、七六四、二五六　　　二、六六六、〇六四　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　一六、四三〇、三二〇　　　　八二一、五一六・〇〇〇
　　　十一月　　　　三、一五四、八二一　　　　　七五五、七三三　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　三、九一〇、五五四　　　　一九五、五二七・七〇〇
　　　十二月　　　　　　　九二、四一五　　　　　六二九、九九九　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　　　七二二、四一四　　　　　三六、一二〇・七〇〇
　　　光武十年
　　　一月　　　　　　　八六六、三一九　　　二、五九〇、四六二　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　三、四五六、七八一　　　　一七二、八三九・〇五〇
　　　二月　　　　　　　九八四、五四〇　　　二、六三五、五八六　　　　　一七〇、〇〇〇　　　　　　　　　　――　　　三、七九〇、一二六　　　　一八九、五〇六・三〇〇
　　　三月　　　　　一、四六九、九九七　　　七、四四三、一七五　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　八、九一三、一七二　　　　四四五、六五八・六〇〇
　　　四月　　　　　一、九三一、四四九　　一一、九六七、九四〇　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　一三、八九九、三八九　　　　六九四、九六九・四五〇
　　　五月　　　　　二、三六八、六五五　　　八、八六〇、三八一　　　　　二六八、三七七　　　　　　　　　　――　　一一、四九七、四一三　　　　五七四、八七〇・六五〇
　　　六月　　　　　　　四四三、七二〇　　　六、七八九、八二六　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　七、二三三、五四六　　　　三六一、六七七・三〇〇
　　　七月　　　　　一、三八六、六四一　　　三、五二〇、三五五　　　一、二四〇、〇〇〇　　　　　　　　　　――　　　六、一四六、九九六　　　　三〇七、三四九・八〇〇
　　　八月　　　　　　　八一六、三九八　　　三、〇二六、八〇一　　　一、八〇三、五四一　　　　　　　　　　――　　　五、六四六、七四〇　　　　二八二、三三七・〇〇〇
　　　九月　　　　　　　七二八、一九五　　　一、二一七、一二四　　　　　二八八、六三三　　　　　　　　　　――　　　二、二三三、九五二　　　　一一一、六九七・六〇〇
　　　十月　　　　　　　一八七、八八七　　　　　九四七、八二七　　　　　六三五、〇六九　　　　　　　　　　――　　　一、七七〇、七八三　　　　　八八、五三九・一五〇
　　　十一月　　　　　　　　九、九九七　　　　　三〇六、六一九　　　　　　　八、〇〇〇　　　　　　　　　　――　　　　　三二四、六一六　　　　　一六、二三〇・八〇〇
　　　十二月　　　　　　　一四、六九三　　　　　一五三、一五〇　　　　　　　四、〇三九　　　　　　　　　　――　　　　　一七一、八八二　　　　　　八、五九四・一〇〇
　　　隆熙元年
　　　一月　　　　　　　　四一、八八七　　　　　一二八、八八八　　　二、〇二一、七五五　　　　　　　　　　――　　　二、一九二、五三〇　　　　一〇九、六二六・五〇〇
　　　二月　　　　　　　一七三、九八八　　　　　　四五、五六一　　　五、五二四、〇三九　　　　　　　　　　――　　　五、七四三、五八八　　　　二八七、一七九・四〇〇
 - 第16巻 p.293 -ページ画像 
　　　三月　　　　　　　　六一、三五三　　　　　一五九、〇八二　　　五、四六一、八五八　　　　　　　　　　――　　　五、六八二、二九三　　　　二八四、一一四・六五〇
　　　四月　　　　　　　　六八、九七四　　　　　一〇九、〇四八　　　三、八四三、六六一　　　　　　　　　　――　　　四、〇二一、六八三　　　　二〇一、〇八四・一五〇
　　　五月　　　　　　　　五一、一一三　　　　　　三五、五二四　　　三、〇二四、六七九　　　　　　　　　　――　　　三、一一一、三一六　　　　一五五、五六五・八〇〇
　　　六月　　　　　　　　六七、〇四〇　　　　　　　四、八九六　　　二、一二八、六五三　　　　　　　　　　――　　　二、二〇〇、五八九　　　　一一〇、〇二九・四五〇
　　　七月　　　　　　　　七七、五九九　　　　　　　四、八一二　　　二、〇〇三、二四九　　　　　　　　　　――　　　二、〇八五、六六〇　　　　一〇四、二八三・〇〇〇
　　　八月　　　　　　　　四五、〇〇二　　　　　　　　　四四六　　　　　八〇五、一六七　　　　　　　　　　――　　　　　八五〇、六一五　　　　　四二、五三〇・七五〇
　　　九月　　　　　　　　　七、九九八　　　　　　　　　　　四　　　　　五五八、一二五　　　　　　　　　　――　　　　　五六六、一二七　　　　　二八、三〇六・三五〇
　　　十月　　　　　　　　一八、三九九　　　　　　　　　　――　　　　　二七九、三六七　　　　　　　　　　――　　　　　二九七、七六六　　　　　一四、八八八・三〇〇
　　　十一月　　　　　　　　九、一九九　　　　　　　　　　――　　　一、六七七、九四二　　　　　　　　　　――　　　一、六八七、一四一　　　　　八四、三五七・〇五〇
　　　十二月　　　　　　　二九、二〇四　　　　　　　　　四〇一　　　　　四四一、二〇四　　　　　　　　　　――　　　　　四七〇、八〇九　　　　　二三、五四〇・四五〇
　　　隆熙二年
　　　一月　　　　　　　　五三、八一八　　　　　　　　　　――　　　一、九一一、〇八七　　　　　　　　　　――　　　一、九六四、九〇五　　　　　九八、二四五・二五〇
　　　二月　　　　　　　　一七、一九三　　　　　　　　　　――　　　一、九二一、〇二〇　　　　　　　　　　――　　　一、九三八、二一三　　　　　九六、九一〇・六五〇
　　　三月　　　　　　　　　五、九九四　　　　　　　　　　――　　　二、五二五、七二八　　　　　　　　　　――　　　二、五三一、七二二　　　　一二六、五八六・一〇〇
　　　四月　　　　　　　　　二、〇〇〇　　　　　　　　　　――　　　四、七三一、〇〇四　　　　　　　　　　――　　　四、七三三、〇〇四　　　　二三六、六五〇・二〇〇
　　　五月　　　　　　　　一〇、〇〇五　　　　　　　　　　――　　　五、八七七、二〇五　　　　　　　　　　――　　　五、八八七、二一〇　　　　二九四、三六〇・五〇〇
　　　六月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　五、四九一、三七三　　　　　　　　　　――　　　五、四九一、三七三　　　　二七四、五六八・六五〇
　　　七月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　五、〇一六、五七六　　　　　　　　　　――　　　五、〇一六、五七六　　　　二五〇、八二八・八〇〇
　　　八月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　三、四三六、三六〇　　　　　　　　　　――　　　三、四三六、三六〇　　　　一七一、八一八・〇〇〇
　　　九月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　四、一〇七、八四八　　　　　　　　　　――　　　四、一〇七、八四八　　　　二〇五、三九二・四〇〇
　　　十月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　六、六三二、四七〇　　　　　　　　　　――　　　六、六三二、四七〇　　　　三三一、六二三・五〇〇
　　　十一月　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　七、一四五、五四五　　　　　　　　　　――　　　七、一四五、五四五　　　　三五七、二七七・二五〇
　　　十二月　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　一〇、九九七、六五八　　　　　　　　　　――　　一〇、九九七、六五八　　　　五四九、八八二・九〇〇
 - 第16巻 p.294 -ページ画像 
　　　隆熙三年
　　　一月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　五、五二五、八九九　　　　　　　　　　――　　　五、五二五、八九九　　　　二七六、二九四・九五〇
　　　二月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　三、六一八、五六三　　　　　　　　　　――　　　三、六一八、五六三　　　　一八〇、九二八・一五〇
　　　三月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　三、九一三、五四六　　　　　　　　　　――　　　三、九一三、五四六　　　　一九五、六七七・三〇〇
　　　四月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　二、七九五、八五六　　　　　　　　　　――　　　二、七九五、八五六　　　　一三九、七九二・八〇〇
　　　五月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　二、五〇七、一九六　　　　　　　　　　――　　　二、五〇七、一九六　　　　一二五、三五九・八〇〇
　　　六月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　一、六五七、八八八　　　　　　　　　　――　　　一、六五七、八八八　　　　　八二、八九四・四〇〇
　　　七月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　一、六二六、九二二　　　　　　　　　　――　　　一、六二六、九二二　　　　　八一、三四六・一〇〇
　　　八月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　一、〇九四、三二一　　　　　　　　　　――　　　一、〇九四、三二一　　　　　五四、七一六・〇五〇
　　　九月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　　　七九二、九九七　　　　　　　　　　――　　　　　七九二、九九七　　　　　三九、六九四・八五〇
　　　十月　　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　一、二三三、六三三　　　　　　　　　　――　　　一、二三三、六三三　　　　　六一、六八一・六五〇
　　　十一月　　　　　　　　　　　――　　　　　　　　　　――　　　一、〇一九、六四六　　　　　　　　　　――　　　一、〇一九、六四六　　　　　五〇、九八二・三〇〇
　　　合計　　　一六九、二八六、七八〇　　五六、六一一、二五三　一三二、〇八七、九五八　　二三、〇六五、九六三　三八一、〇五一、九五四　一九、〇五二、五九七・七〇〇


右表ニ依レハ旧白銅貨ノ還収ハ之ヲ三期ニ分ツコトヲ得、則第一期ハ光武九年七月ヨリ同十二月ニ至ル迄ニシテ主トシテ交換ニヨリ還収シタル時期ナリ、第二期ハ光武十年一月ヨリ十二月ニ至ル迄ニシテ主トシテ国庫収納ニ依リ還収シタル時期ナリ、第三期ハ隆熙元年一月以後ニシテ主トシテ買収ニ依リテ還収シタル時期ナリトス、而シテ此ノ如ク時期ニヨリ還収ノ方法ヲ異ニシタルハ偶然ノ結果ニ非スシテ還収ニ対スル政策ノ結果ナルコトハ前ニ述ヘタル所ノ如シ
還収シタル旧白銅貨カ何レノ地方ニ於テ多ク何レノ地方ニ於テ少ナキヤハ旧白銅貨ノ流通シタル状況ヲ示スト同時ニ、又其地方ノ経済状況ノ一端ヲ知ルニ足ルヘキヲ以テ左ニ之ヲ挙ク、但シ、春川・忠州・公州・光州・寧辺・全州・海州・水原各地方ニ於テ初期ニ還収ヲ見サルハ初メ右各地ニハ金庫ナカリシカ為ニシテ、大邱・元山ノ如キ葉銭地方ニ於テ旧白銅貨ノ還収ヲ見ルハ、一ハ従来同地方ノ人民ハ絶対ニ旧白銅貨ノ授受ヲ拒絶セシモ金庫ニ於テ収納又ハ交換スル事ノ明カナリシ為ニ幾分ノ流入ヲ見タルト、一ハ郵便局ノ系統ノ関係上白銅地方ニ受入レタルモノヲ授受局タル大邱又ハ元山郵便局ニ逆送シ、同局ヨリ金庫ニ納入スルカ為ナリ、又鏡城ニ於ケル還収ハ会々一商人カ同地方ニ輪入シタルモノヲ買収シタルモノナリ
　　　○毎月旧白銅貨還収地方別表略ス。
　　　　第六節　通用禁止ノ発令
 - 第16巻 p.295 -ページ画像 
前節ニ述ヘタル如ク旧白銅貨ノ還収ハ意外ニ迅速ニシテ隆熙二年ノ初ニ於テハ已ニ其大部分ヲ還収シ、残存流通スルモノ甚シク減少セシト雖、其残存額ハ各地ニ広ク散布セラレ又各人ノ手ニ少許宛所持サルヽモノナルカ故ニ還収甚タ困難ナリ、然レトモ韓国現今ノ実情ト旧白銅貨新偽造ノ疑アルトハ長ク通用ヲ許サヽルヲ以テ、隆熙二年二月ニ至リ同年十一月三十日ヲ以テ通用ヲ禁止スヘキ事ヲ定メラレタリ、其全文左ノ如シ
　旧白銅貨交換期限ニ関スル件左ノ通リ定ム
　　隆熙二年二月二十一日
　　　　　　　　　　　　　　　　　度支部大臣　高永喜
　度支部令第四号
　光武九年勅令第四号第四条ニ依リテ旧白銅貨ノ交換ハ隆熙二年十一月三十日ニ之ヲ廃止シテ其通用ヲ禁止ス
　　但シ右期限後六箇月間ハ公約ニ用フルヲ得
右発令ト同時ニ期限内ニ於テ可成多額ノ還収ヲナサントシ大ニ務ムル所アリタル事ハ前節ニ述ヘタル所ノ如シ、而シテ度支部ニ於テモ深ク玆ニ意ヲ用ヰラレ八月及十一月ニ於テ左ノ告示ヲ発セラレタリ、亦以テ当時ノ事情ヲ推測スルニ足ルナリ
　度支部告示第十号
　本年二月度支部令第四号ヲ以テ発令セシ如ク旧白銅貨交換期限ハ本年十一月三十日限トシ、以後ハ其通用ヲ禁止スヘキニ付、右期限ヲ愆ル事ナク迅速ニ左記ノ金庫又ハ金融機関ニツキ交換ヲ請求シ、不測ノ損失ヲ招致スル事ナキヲ期図スヘシ
　　隆熙二年八月十三日
　　　　　　　　　　　　　　　　度支部大臣　任善準
　　　　大韓国中央金庫及各支金庫
　　　　各農工銀行本支店出張所
　　　　各地方金融組合
　度支部告示第十六号
　旧白銅貨ノ交換ハ本年二月度支部令第四号ニヨリ本月三十日以後ハ此ヲ廃止シ、其通用ヲ禁止シテ決シテ交換期限ヲ延期セサルニ付、所持者ハ違期セサル様、該期限内ニ金庫・銀行或ハ金融組合ニ就キ交換スヘシ
　　隆熙二年十一月四日
　　　　　　　　　　　　　　　　度支部大臣　任善準
以上ノ如ク全力ヲ尽シテ還収ニ務メタルニ拘ラス価格ノ一定シテ流通ニ不便ナキニ至リタルト、細民中尚慣習上旧白銅貨ヲ悦フノ傾アルト内地僻遠ノ地ニ完全ナル還収ノ機関ヲ設ケ難キ事情アルトニ依リ、還収意ノ如クナラス、此儘流通ヲ禁止スルトキハ細民ニ多少ノ損害ヲ与ヘサルヲ得サルカ故ニ、隆熙三年五月ニ至リテ同年十二月末日迄公納ニ使用スルコトヲ得ヘキ旨ヲ定メラレタリ、其全文左ノ如シ
　勅令
　勅令第五十八号
　朕旧白銅貨幣公納使用ノ件ヲ裁可シ玆ニ頒布セシム
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　御名　御璽
　隆熙三年五月二十日
　　　　　　　　　　　　　　　内閣総理大臣　李完用
　　　　　　　　　　　　　　　度支部大臣　任善準
　通用ヲ禁止シタル旧白銅貨幣ハ本年十二月三十一日迄公納ニ使用スルコトヲ得
　　　　附則
　本令ハ隆熙三年六月一日ヨリ施行ス
右発令ト同時ニ益々還収ニ務ムル方針ヲ以テ左ノ通牒ヲ発セラレタリ
　理国発第二四三号ノ三
　　隆熙三年五月二十九日
　　　　　　　　　　　　度支部次官事務代弁　鈴木穆
　　　　中央金庫出納役　市原盛宏殿
　今回　勅令第五十八号ヲ以テ旧白銅貨公納使用期間ヲ本年十二月三十一日迄延期相成候ニ就テハ、本期間内ニ於テ是非共全部ノ引上ヲ了シ度趣旨ヲ以テ、各財務監督局長及各農工銀行支配人ヘ別紙ノ通通牒致置候間右ニ御承知相成度、此段及通知候也
　別紙
　理国発第二四三号ノ一
　　隆熙三年五月二十九日　　　　　　　　　　度支部次官代弁
　　　　財務監督局長　前
　　　　旧白銅貨使用期間ニ関スル件
　本月二十一日勅令第五十八号ヲ以テ旧白銅貨公納使用期間ヲ本年十二月三十一日迄延期相成候ニ就テハ、再次延期ヲ見ルカ如キ事無之様本期間内ニ於テ是非共全部ノ引上ヲ畢了致度候ニ付、左記条項ニ依リ相当ナル御尽力相成度、尚且所管金融組合ヘモ左記条項ノ趣旨ニ依リ引上ニ従事スヘキ様御通達相成度候
　　左記
　一、財務署ハ旧白銅貨所持人ニ対シ期間内ニ於テ公納ニ使用スル事ヲ勧誘シ、公銭領収員ヲシテ可成此ヲ取集セシムル事
　二、公銭領収員ニ於テ取集シタル旧白銅貨カ夥多ニシテ、郵便官署吏員ニ於テ取納シ能ハサル場合ハ直接金庫ニ払込マシメ、金庫迄ノ運搬費用ハ財務署長ノ証明ニヨリ貨幣整理部資金ヨリ支出スルコト
　三、銀行及金融組合ハ其地方ノ市場ニ於テ時機ヲ計リ時々買上ヲ為スヘシ、又財務監督局ノ請求ニヨリ財務署所在等ノ地ニ出張買上クルコトヲ得、但此場合ニ於テハ其都度理財局ニ申報シ出張費用ハ貨幣整理資金ヨリ支出スルコト
　四、前項買上ニ要スル資金ハ、一個所ニ二千圜ヲ限リテ新貨ヲ以テ政府ヨリ貸与スヘキニ付必要ニ応シテ申出ル事、但買上手数料トシテ買上金額ノ百分ノ一ヲ交付スヘシ
　五、金融組合ニ於テ買上ノ場合ニ於ケル処理方ニ関シテハ昨年六月度達第五〇二号ニ依ルコト
理国発第二四三号ノ二
 - 第16巻 p.297 -ページ画像 
　　隆熙三年五月二十九日　度支部次官代弁
　　　農工銀行支配人　前
　　　　旧白銅貨使用期間ニ関スル件
　本月二十一日勅令第五十八号ヲ以テ旧白銅貨公納使用期間ヲ本年十二月三十一日迄延期相成候ニ就テハ、再次延期ヲ見ル如キコト無之様、右期間内ニ於テ是非共全部ノ引上ヲ了シ度候ニ付、左記条項ニ依リ相当御尽力相成度及通牒候
　一、旧白銅貨公納期間内ハ銀行所在地ノ市場ニ於テ時機ヲ計リ時々旧白銅貨ノ買上ヲナスヘシ、又財務監督局ノ請求ニヨリ財務署所在地等ニ出張買上ヲナスコトヲ得、但此場合ニハ其都度理財局ニ申報シ出張費用ハ貨幣整理資金ヨリ支出スヘシ
　二、前項買上ニ必要ナル資金ハ一個所ニ二千圜ヲ限リ新貨ヲ以テ政府ヨリ貸与スヘキニ付必要ニ応シ申出スヘシ、但買上手数料トシテ買上金額ノ百分ノ一ヲ交付ス可シ
　三、其他買上処理方法ニ関シテハ昨年三月度達第一三七号ニ依ル可シ
右期限ニ至ラサル前十一月二十日ヲ以テ第一銀行ハ其事務ヲ韓国銀行ニ引継タリ、思フニ右期限内ニ於テ多額ノ還収アルヘキモ、尚幾分ノ残存額ヲ免レサルヘシ、兎ニ角ニ旧白銅貨ハ其大部分ヲ還収シ、尚幾分ヲ存スルトスルモ最早大勢ニ影響ナキノミナラス、価格亦一定シテ経済上ノ障害トナラサルニ至レルヲ以テ整理ノ目的ハ殆ント達シ得タリト云フモ差支ナシト信ス

第一銀行五十年史稿　巻六・第六―一四頁　大正一二年刊
　○第二編　第六章　日露戦後の発達
　　　　第一節　韓国中央金融機関の譲渡
○上略
韓国の幣制改革に伴ふ旧貨幣の整理は重大事件にして本行の意を用ゐる所なりしが、其内白銅貨の整理は比較的円満且迅速に行はれたれば前章参照明治三十九年光武十年以来は著しく減少し、同四十一年六月隆熙二年に至りては全く交換の取扱を中止し、爾来主として納税及び買収によることゝなしたり、而して国庫収納による回収も意の如く進み、明治三十九年二月光武十年以後は統監府郵便官署において収入せる旧貨は総て之を金庫に送付して回収し、此方面の整理も漸次功を奏したり、買収による回収は、市場における流通額の減少に従ひて漸次減少するに至れるが、銀行其他金融会社にて旧白銅貨を受入れ、更に之を金庫に納付する時は悪貨混入の為に多少の損害を受くるの恐れあるがゆゑに、其受入を拒むものを生じたれは本行は当局の認可を得て各銀行其他の金融会社と交渉し、銀行及び金融会社にて受入れたる旧白銅貨は総て一箇二銭五厘の比例を以て買収する契約を結びたり、折しも同四十一年二月隆熙二年韓国政府は旧白銅貨の回収意外に好成績を得て残存流通せるもの多からざるを見て、同年十一月三十日限り其交換を停止し、其通用をも禁止する旨を公布し、且期限後六ケ月間は公納に用ゐるを許したり、是において本行は期限前に出来得る限り回収に務め、其手段として各地の商人をして適宜に組合を設けて旧白銅貨を市場より取入れし
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め、金庫に於ては相当の手数料を支払ひて之を買収するの議を定め、韓国政府の許可を得て各支金庫に通達せり、韓国政府もまた同様の通達を各財務監督局等に発して交換組合の設立を勧誘せしかば、其設立せられしもの京城・仁川・開城・平壌・鎮南浦・群山・礼山・鳥致院の八箇所に及べり、なほ僻遠の地方にして回収の機関なき場所には特に行員を派遣し、又或は農工銀行・金融組合等に依頼して買収せしめたれば、之によりて回収せる額も尠からざりき、然れども細民中には慣習上旧白銅貨を悦び、且僻遠地方は回収十分ならざるに直に流通を禁止すること困難なれば、韓国政府は同四十二年五月隆熙三年に至り、同年十二月末日まで公納に使用することを許し、本行も亦鋭意回収に務め、支金庫代理店を督し、各銀行・金融組合とも図り全部の引上を貫徹せんとす、此際十一月二十日本行総支店は韓国における業務を挙げて韓国銀行に引継ぎたれば其結局には至らざりしも、旧白銅貨の大部分は既に回収を了へたれば最早大勢に影響なきのみならず、価格亦一定して経済上の障害とならざるがゆゑに、整理の目的は殆んど達し得たるなり。
本行が韓国貨幣の整理を行ふや、弊害の最も甚しき旧白銅貨を先とし葉銭其他の回収は国庫の収納により自然の回収に任せ、別に交換の方法を設けざりしが、明治三十九年光武十年旧白銅貨の整理ほゞ了へたる時韓国政府は本行と協議の上之に著手することゝなしたり、其方法は左の如くなりき
　一、葉銭は補助貨にして、多額の取引に使用すべからざることを一般民衆に知らしむる事
　二、葉銭の相場をなるべく一定せしめ、其変動により生ずる商業上の障害を除く事
　三、新貨及び銀行券が合法貨幣にして最も信用すべきものなるを、一般民衆に知らしむる事
　四、右諸項の稍々実行せられたる後に、漸次葉銭の引上げに着手する事
　五、引上は国庫収納と買収との二方法による事
本行が「韓国貨幣問答」を編纂して各地方に頒布し、又商人に依頼して新貨及び銀行券の流通を図らしめたるも、一面には此方針に基ける施設なりき前章参照又本行は他の銀行と協議して、葉銭担保の貸付を廃止し、民衆の請求ある時に葉銭の買上げをなすなど、徐々回収を謀るの際、銅価の騰貴に基因せる葉銭の海外輸出は明治三十九年度を通じて盛に行はれ、之が為に其流通額に著しき減少を来し該貨の整理上に尠からざる便宜を得たり、本行は此機運に乗じて整理の歩を進めんと屡屡当局者と交渉を重ねしが、明治四十一年六月隆熙二年に至り、韓国政府は「葉銭通用価格は一枚に対し金二厘とし、五枚を以て一銭とす、葉銭は金一圜迄を限り法貨として其通用を認む」といへる勅令を公布し玆に始めて其価格と制限とを定め、且補助貨として通用することを公認し以て価格の一定を図り、回収の便宜に供したるに、会々銅の価格も漸次下落せしかば葉銭の相場も自ら低下し、殆んど公定価格と相同じきに至り、買収又は国庫収納によりて回収するもの次第に増加せし
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かば、準補助貨として市場に流通せしめんとする計画は其図に当り大に整理の便を得たり
旧銀貨及び旧銅貨の整理は比較的容易に行はれたり、玆に旧銀貨といへるは明治二十五年開国五百一年幣制改革の際発行せる一圜銀貨と同二十七年開国五百三年の新式貨幣発行章程により発行せる五両本位銀貨及び一両補助銀貨との事なるが、いづれも明治三十八年光武九年の勅令により銀十両に付新貨一圜の割合にて回収する筈なりしに、鋳造額の少き上に旧白銅貨濫発の結果市場より駆逐せられ、貨幣整理の際には市場に流通せるもの少く、稀に一両銀貨を見るに過ぎざりしかば交換又は国庫収納によりて回収せるは少額に止り、明治三十九年光武十年宮内府に於て保管せる旧銀貨を交換せることのやゝ多額なるものあるのみ、旧銅貨は新式貨幣章程により発行せられし五分赤銅貨及一分黄銅貨の二種あり、これも前述の勅令により銀十両に付新貨一圜、即ち赤銅貨は五厘、黄銅貨は一厘にて回収すべき筈なりしに、赤銅貨の流通多からず、且品質善良なるがゆゑに貨幣として甚しき弊害なきを以て国庫の収納による自然回収に任せたり、黄銅貨に至りては流通額更に僅少にして明治三十八年光武九年度支部保管の国庫金を本行に引継ぐに当り、多少の回収を為したる外には殆んど言ふに足るものなかりき、かくて旧銀貨・旧銅貨は共に整理を了するを得たり、明治三十八年七月以来四十二年十一月までに回収せる旧貨幣の枚数及び其金額は左の如し
　旧白銅貨　　　　　　　三八一、〇五一、九五四枚　　　一九、〇五二、五九七元
　葉銭　　　　　　　一、二〇五、九五七、五七八　　　　　二、三八三、七二六圜
　旧銀貨　　　　　　　　　　　　八三四、六七八　　　　　　　四〇一、〇六七
　旧銅貨（黄銅貨を除く）　一四、〇九〇、三二〇　　　　　　　　七〇、四五一
○下略

韓国ニ於ケル第一銀行　第一銀行編　第五二―五四頁明治四一年八月刊
　○第三章　韓国貨幣整理始末
　　　　第四節　白銅貨ノ濫発
円銀排斥ノ為メ貨幣ノ欠乏ヲ来セルノ機ヲ利用シテ明治三十一年ノ春頃ヨリ典圜局ハ盛ニ白銅貨ノ鋳造ヲ試ミタリ、当時ノ典圜局長李容翊ハ日本人増田信之等ノ手ヲ経テ原料ヲ輸入シ、三十一年一月ヨリ七月ニ至ル半箇年間ニ於テ其高既ニ拾五万七百余円ニ上レルノ状態ナルヲ以テ、同年五六月ノ交ヨリ補助貨漸ク市場ニ横溢スルニ至リシガ、三十二年ニ於テ典圜局ハ更ニ「ホームリンガー」商会ト契約シテ益々多量ノ原料輸入ヲ企図セリ、左ニ掲グル明治三十二年九月五日付西脇仁川支店支配人ヨリノ書状ハ以テ其当時ノ事情ヲ知ルニ足ル
　（前略）当地「ホームリンガー」商会（香港上海銀行代理店）ニテハ今回李容翊トノ間ニ白銅貨原料供給ノ約束ヲ致シ候由ニ御座候、其金額ハ白銅貨百五十万元トモ云ヒ又八拾万元トモ申候得共、拙生探知スル処ニテハ百五十万元ノ方事実ノ様被存候、而シテ其売買直段ハ白銅貨五千万個仁川着参拾七円五拾銭ノ割、外ニ手数料弐万円ヲ受取候約定ノ由聞込申候、此約定成立ニ付テハ各国人共々ニ反対ノ位地ニ立チ、日・英・米・独ノ公使連衡シテ韓廷ニ忠告為致候方
 - 第16巻 p.300 -ページ画像 
可然ト存ジ、昨日「タウセンド」「ウオルター」等ニ協議致候処、何レモ同意ニ有之候間今明日中ニ当地本邦人商業会議所ノ臨時会ヲ開キ建議書提出ノ筈ニ御座候（下略）
居留民ノ勧告モ其効ナク韓延ハ唯鋳造益金ヲ利センガ為メ濫鋳濫発年ヲ追フテ益々甚シク、従テ白銅貨ハ愈々其声価ヲ低落シ朝野ヲ挙ゲテ其害毒ヲ蒙ルニ至レリ
典圜局ニ於ケル白銅貨ノ濫発日ヲ追フテ益々甚シキヲ加フルノ時ニ当リ、民間ニ於テ私鋳偽造ヲ企ツルモノ亦盛ニ起リ、明治三十四五年ノ頃ニ至リテハ殆ンド其頂点ニ達シ市場ノ危害名状ス可ラズ、而モ韓廷有司ハ是等ニ対シテ何等ノ検束ヲ加ヘザルノミナラズ却テ黄白ノ為メニ之ヲ黙許シ、或ハ窃ニ典圜局ヨリ官鋳ニ使用スル刻印ヲ供給シテ私利ヲ計ル等殆ンド常識ヲ以テ律スベカラザルモノアリ、従テ初メハ詐偽師輩ノ私ニ小規模ノ偽造ヲナセルニ過ギザリシモ、終ニハ巨額ノ資金ヲ投ジテ精巧ナル器械及地金ヲ備ヘテ大計画ノ鋳造ヲナシ不正ノ巨利ヲ博スルモノ到ル処ニ簇生シ、各私鋳ハ其精粗ノ程度ニ依リ或ハ官鋳ト同等又ハ若干ノ差等ヲ以テ故障ナク世上ニ流通シ恰モ無政府ノ状態ヲ呈セリ
白銅貨流通価格ノ下落ハ益々物価ノ騰貴ヲ導キ、啻ニ民間ニ恐慌ヲ来セルノミナラズ財政亦窮境ニ陥リ、政府ハ其防禦策トシテ或ハ葉銭ノ流通地域ニ対シテ白銅貨ヲ以テ租税ヲ納付セシムルノ訓令ヲ発シ、或ハ各地軍隊ノ給料ヲ悉ク白銅貨ヲ以テ仕払フ等百方手ヲ尽シテ其流通ヲ強ユルモ、従テ散スレバ従テ濫発セラレテ実効ヲ奏セズ、加フルニ明治三十五年ニ至リテハ奸商ノ白銅貨密輸入ヲ企ツルモノ甚タ盛ニシテ幣政ノ紊乱底止スル所ヲ知ラズ、貨幣ノ信用ハ殆ンド地ニ落ツルニ至レリ
次デ同年十一月ニ至リ本邦ニ於テ白銅貨密輸入取締ニ関スル勅令発布セラレ、各税関及我警察ノ検束亦厳密ヲ加フルヨリ密輸入ノ弊ハ漸ク衰フルニ至リタレドモ、貨幣ノ下落国庫ノ窮乏ハ益々甚シク、爾後日露戦争ノ頃ニ至ル迄財界ハ全ク混乱ノ中ニ経過セリ