デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治30年4月2日（1897年）

是日栄一、米国人モールスト会見シ、京仁鉄道敷
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設権譲渡ノ正式交渉ヲナシ其ノ応諾ヲ得。因リテ外務大臣伯爵大隈重信ニ請ヒ、六日其官邸ニ岩崎弥之助等財界ノ有力者十五名ヲ招キテ、該鉄道引受ニ関スル第一回協議会ヲ開ク。八日更ニ第二回協議会ヲ開キ、一ノ引受組合ヲ組織シ、其契約案並ニ譲受契約案ノ起草ハ栄一ニ一任スルコトニ決ス。

朝鮮鉄道史　朝鮮総督府鉄道局編　　第二二―二四頁　大正四年一〇月刊
　○第一期　第一章　京仁鉄道
　　　　第二節　京仁鉄道引受組合
○上略
　明治三十年二月モールス米国ヨリ渡来シ次テアルウヰンヨリモールストノ直接談判ヲ慫慂シ来リシカハ、委員竹内綱ハモールスヲ横浜ニ訪ヒ其ノ希望ノ概要ヲ聴取シタル後直ニ委員会ヲ開キテ協議スル所アリ、終ニ委員数名ハ四月一日大隈外務大臣ヲ訪問シ、具ニ京釜鉄道発起以来ノ経過ト這般京仁鉄道引受ノ希望トヲ陳述シテ其ノ賛同ヲ得タルヲ以テ、翌二日委員渋沢栄一ハモールスヲ招キ正式ノ交渉ヲ開始セシカ、モールスハ条件ニシテ適当ナルヲ得ハ其ノ事業ヲ譲渡スルニ異議ナキ旨答ヘタリ、仍テ渋沢栄一・前島密等数名ノ委員ハ即日外務大臣ヲ訪ヒモールストノ会見始末ヲ述ヘ譲受方法ニ就キ凝議シタル結果同月六日外務大臣ハ京浜及ヒ大阪ノ有力者ヲ官邸ニ招キテ、本鉄道引受ノ計画ヲ諮詢シ、渋沢委員亦従来ノ経過ト将来処理ノ方法トヲ陳述シ、出席者各自其ノ意見ヲ吐露セシカ結局之ニ賛同スルニ決シ、詳細ハ更ニ会合シテ之ヲ議スルコトトセリ、当日ノ出席者ハ左ノ十六名ニシテ是ヲ本鉄道ニ関スル我有志者第一回ノ会合トス
　　　岩崎弥之助　　原善三郎　　　大谷嘉兵衛
　　　大倉喜八郎　　大江卓　　　　尾崎三良
　　　竹内綱　　　　中野武営　　　中上川彦次郎
　　　安田善次郎　　前島密　　　　益田孝
　　　三井髙保　　　荘田平五郎　　渋沢栄一
　　　森村市左衛門
次テ八日上記十六名ハ帝国ホテルニ第二回ノ会議ヲ開キ、組成問題ニ関シ協議ヲ凝シタル末、遂ニ同志者間ニ一ノシンヂケートヲ組織スルニ決シ、之ニ関スル契約案及ヒモールストノ譲受契約案ノ起草ハ挙ケテ之ヲ渋沢栄一ニ一任セリ
○下略

京釜鉄道経営回顧録　竹内綱著　　第一二頁
同年○明治三〇年三月五日「デエソン《（デニソン）》」ヨリ尾崎ニ「モールス」近日譲渡交渉ノ為メ渡来スベシト報ジ来リ、二十日「モールス」横浜着ノ報ヲ得テ、余ハ廿一日同氏ヲ横浜ニ訪ヒ、譲受ケノ交渉ヲ開始シ、同氏ハ数回東京ニ来リ渋沢委員長ト交渉シ、四月五日京仁鉄道譲受ケ条約ヲ締結セリ、其条約ノ要項ハ、京仁鉄道ノ敷設並ニ運輸営業ノ設備ヲ完成
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シ、然ル後特許権並ニ鉄道ニ属スル全財産ヲ京仁鉄道組合ニ譲渡スベシ、譲渡総額金弐百万円トシ、内弐拾万円ヲ譲渡シ、条約交換ト同時ニ「モールス」ニ寄托シ、其余ハ工事ノ進行ニ従ヒ支払フモノト規定セリ
　　○右「京釜鉄道経営回顧録」ニ京仁鉄道譲受条約締結ノ日ヲ四月五日トスルハ誤リ、五月八日ナリ。或ハ「モールス」ノ内諾決定ノ日ヲ云フカ。又同書譲渡条約締結ト同時ニ二十万円「モールス」ニ寄託ノコトモ該契約第二項（イ）ニヨレバ合衆国金貨五万弗（邦貨約十万円）トアリ。