デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

6章 対外事業
2節 支那・満州
8款 営口水道電気株式会社
■綱文

第16巻 p.740-744(DK160124k) ページ画像

明治39年11月15日(1906年)

清国営口ニ於ケル水道及ビ営口・牛家屯間電気鉄道敷設ヲ目的トシテ、栄一、馬越恭平・益田太郎・岩下清周・大田黒重五郎・呉錦堂・麦少彭等日清両国人ニヨリ営口水道電気株式会社ヲ設立セントシ、是日創立総会ヲ開ク。栄一相談役トナル。


■資料

竜門雑誌 第二二二号・第四一頁 明治三九年一一月 ○青淵先生と新会社関係(DK160124k-0001)
第16巻 p.740 ページ画像

竜門雑誌 第二二二号・第四一頁 明治三九年一一月
○青淵先生と新会社関係 青淵先生が発起人又は創立委員として創立を賛成せられたる○中略左記の諸会社は既に成立を終へたると同時に、青淵先生は相談役又は顧問たることを承諾せられたりといふ
○中略
 一営口水道電気株式会社   相談役
○下略


青淵先生公私履歴台帳(DK160124k-0002)
第16巻 p.740 ページ画像

青淵先生公私履歴台帳         (渋沢子爵家所蔵)
  民間略歴(明治二十五年以後)
○上略
一営口水道電気株式会社相談役 三十九年十一月 同 ○同四十二年六月六日辞任
○中略
   以上明治四十二年六月七日迄ノ分調


竜門雑誌 第二二〇号・第三七―三八頁 明治三九年九月 ○営口水道電気鉄道会社設立計画(DK160124k-0003)
第16巻 p.740-741 ページ画像

竜門雑誌 第二二〇号・第三七―三八頁 明治三九年九月
○営口水道電気鉄道会社設立計画 営口水道及営口・牛家屯間電気鉄道敷設を目的として青淵先生・馬越恭平・益田太郎・岩下清周・中野武営・大田黒重五郎・牟田口元学・小田切万寿之助・大橋新太郎・呉錦堂・麦少彭・根津嘉一郎外十数氏の発起に係る同社に於ては、益田太郎・岩下清周・大田黒重五郎三氏を創立委員に選定し着々会社の設立を謀り既に水道及電気専門技師を営口に派遣し工事着手の設計に掛れりと云ふ、同社の資本金は水道部金百万円、電鉄部金百万円、都合金二百万円にして水道第一期工事予算金七十万円、電鉄部第一期工事予算金五十万円にして共に一割五分の配当を為し得る計算なりと云ふ元来営口の飲料水は遼河の濁水を用ゐ居留外人は勿論清人亦其悪水に苦み、且つ営口・牛家屯間の交通機関は彼支那馬車を用ゆる如き不完全のものなる故、今回同社の設立を聞き営口附近の清人は大に之を歓迎し株式の申込を為す者非常に多く同社は実に日清人共同事業の先駆をなせり、然れば同社の株式は発起人及清国人引受の株数にて同社事業発表前将さに満株に達せんとする勢なりと云ふ、尚ほ同社の創立事務所は日本橋区室町三丁目一番地三友倶楽部内に設けられ株式申込は
 - 第16巻 p.741 -ページ画像 
三井銀行・第一銀行及北浜銀行本支店にて九月十五日迄取扱ふ由なり


銀行通信録 第四二巻第二五二号・第五二七頁 明治三九年一〇月一五日 ○営口水道電気鉄道会社設立(DK160124k-0004)
第16巻 p.741 ページ画像

銀行通信録 第四二巻第二五二号・第五二七頁 明治三九年一〇月一五日
    ○営口水道電気鉄道会社設立
渋沢栄一・馬越恭平・益田太郎・岩下清周・中野武営・大田黒重五郎・牟田口元学・小田切万寿之助・大橋新太郎・呉錦堂・麦少彭等の諸氏は今回資本金二百万円を以て営口水道電気鉄道会社を設立せしが其目的は清国営口に水道を開設し、且つ営口・牛家屯間に電気鉄道を敷設するに在りて、株式の多数は発起人に於て引受け、他は九月十五日を限り日清両国人より之を募集せり


東京経済雑誌 第五四巻第一三六五号・第一〇〇七頁 明治三九年一二月一日 △営口水力会社創立総会(DK160124k-0005)
第16巻 p.741 ページ画像

東京経済雑誌 第五四巻第一三六五号・第一〇〇七頁 明治三九年一二月一日
△営口水力会社創立総会 営口水力電気株式会社創立総会は去る十五日東京銀行集会所に於て開会、左の諸氏重役に就任する事となりたり
 取締役  益田太郎  渡辺亨  小田切万寿之助  岩下清周
      藩玉田  李序園  葉亮郷《(葉亮卿)》
 監査役  桑原政  村上太三郎  藤村義苗  趙水如
尚ほ互選の結果社長に岩下清周氏、専務取締役に渡辺亨氏就任する事に決定せる由



〔参考〕東京経済雑誌 第五四巻第一三六六号・第一〇四三頁 明治三九年一二月八日 ○営口の軍政撤廃(DK160124k-0006)
第16巻 p.741-742 ページ画像

東京経済雑誌 第五四巻第一三六六号・第一〇四三頁 明治三九年一二月八日
    ○営口の軍政撤廃
日本政府は本月一日を以て営口の軍政を撤廃し、同時に清国官憲に引渡を了したり、而して従来軍政官が公共の為めに経営せる衛生警察・教育・土木其他人民に許したる公益に関する建設事業は、清国地方官に於て之を使用継続する事に決定し、又軍政署に於て既に判決を与へたる裁判事項に付いては全然之を確認し、復申を許さゝるが故に、一般公衆各其途に安んじ、法規を遵守して司法行政の施行を便ならしむべしとの告示を出したるが、両国委員間に決定せられたる還附に関する引継き協定事項は大略左の如しと云ふ
 一、軍政官に於て保管したる営口東税関の税金中より営口の公益の為め企図せられたる諸般の施設に向て支出したる金額に付、清国委員は之れが支出を是認したる事
 二、我国が居留して特定したる青窪泥より牛家屯停車場に至る一帯の地域は南満鉄道の附属地域内に編入せらるゝ事
 三、遼河の護岸工事及道路橋梁の改修工事は我軍政官の方針を継承して完成すへき事
 四、同地の警務は今後我政府に於て推選しある顧問を聘用し我軍政時代の方針を継承すべき事
 五、軍政官に於て裁断したる訴訟事項は我国の威厳を尊重する為め還附後と雖も凡て覆審を許さゞる事
 六、衛生検疫の方法は我軍政時代の文明的施設を継承すべき事
 七、水道事業及其他一二の日清合同事業に対し軍政官の与へたる特許並に認可権は清国委員にて爾後に於ける其効力を確認したる事
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 八、其他学校医院に関する協定事項



〔参考〕東京経済雑誌 第五四巻 第一三六九号・第一一八五―一一八六頁 明治三九年一二月二九日 ○営口還附委員協定(DK160124k-0007)
第16巻 p.742-743 ページ画像

東京経済雑誌 第五四巻 第一三六九号・第一一八五―一一八六頁 明治三九年一二月二九日
    ○営口還附委員協定
営口還附の件に関し、本年十月日清両国政府間に成立したる前項北京協定に基き、之が実地弁理の為め、日本国委員と清国委員と営口に会同し、取極めをなしたるもの左の如し
一、北京協定第一条に営口地方日本軍隊未だ撤せざる以前に於て凡そ検疫防疫等に関する事は地方官に於て日本領事と章程を商訂すべしとあり、現に両国委員に於て商訂し当分の内日本軍政官の定めたる所の規則に依り弁理し、今後其必要を認むる時は地方官日本領事と会同して之が改正を為し、日本軍隊の撤去後は清国地方官に於て自ら主持弁理を行ふべし
一、北京協定第二条に凡そ軍政時代に於て着手せられ、又計画せられたるも未だ着手に至らざる公益事業は地方官に於て引続き之を執行し、或は其承弁を允准すべしとあり、日本軍政官は既に日清両国人の合同に係る株式会社に営口水道電車電灯電話の四業を経営することを許可せり、現に両国委員に於て商訂し、水道電車電灯は該会社に於て承弁せしむべし、但し該会社の規則類を北京当該部に送置し若し同部に於て右規則内に改正若しくは添削を要すべき点を発見するときは該会社は之を通照弁理すべし、電話は清国電報局に於て買収すべく該局及該会社より各々一員を派し会同し、該会社の営口に於て設備せる電話事業の財産を検査し評価の上購買す、若し双方の委員意見相合はざるときは該局及該会社に於て局外の公平なる人を選び、双方其定むる所の評価を遵守すべし、屠獣場は衛生局に於て接弁し其評価及購買の方法は電報局の電話を買入るゝ例に依る
 営口・牛家屯間の軽便小鉄道は電気鉄道工事落成を俟ち撤去す
 凡そ公共の土木事業にして日本軍政官に於て着手し、又は計画せられたるも未だ着手に至らざるものは清国地方官に於て引続き之を執行完成すべし
一、北京協定第三条に警察及衛生事務は清国地方官の管轄に帰し弁理務めて完美にして以て公共の治安を保つを期す、之が為め日本警察教習及医師を兼用すべし、若し未だ妥洽を尽さゞる所あれば日本領事より地方官に告知し、随時酌弁すべしとあり、現に両国委員商訂し日本警察教習及医師を雇用せり、俸給を除くの外は一切の契約均しく天津に於て日本警察教習及医師を応用せる例により弁理す、若し今後警察及衛生にして弁理妥洽を尽さゞる所あり、日本領事より通信するときは地方官は臨時酌弁すべし
一、凡軍政時代に裁判したる訴訟事件は清国地方官に於て再審することなし、裁判並に登記書類は軍官より地方官に引続き又は謄本一通を在営口日本領事館に備存すべし
一、北京協定第四条に海関鈔関の事務は応さに海関道の管理に帰すべし、清国政府は該両関の収入を当分の内正金銀行に預け置き将来戸部銀行分店開設の後は両銀行に預け入るべしとあり、現に両国委員
 - 第16巻 p.743 -ページ画像 
商訂し税金を営口正金銀行に預入るゝの弁法如何は当該地方官と正金銀行との間に取極をなすべし
一、営口日本軍政は明治三十九年十二月六日全部撤去すべし
営口地方は、実に此の協定に遵ひ、清国に還附せられたるものなりとす、因に慶親王は我林外相に対し、営口還附に関し左の如き感謝状を送れりと
 以書翰致啓上候、陳は営口還附の件に就ては曩に本部と閣下御面晤の上各専任の委員を派し期を定めて授受する事に取極め候処、本年十月二十三日盛京将軍及び北洋大臣の電報に依れば、山海関道梁如浩は貴国派する処の委員と授受に関する協約を締結し、本月二十日会同調印し、二十一日清国は営口の土地を授受管理する事と相成候今回営口を還附せられしは貴国が篤く邦交を念ひ、克く信義を敦ふするを見るべく、此より両国益親睦を昭にするは清国政府の深く感佩する所に有之候、右玆に閣下に及御照会候間貴国政府に転致せられ感謝の意を代達あらん事を致希望候、此段御照会得貴意候 敬具



〔参考〕岩下清周伝 同君伝記編纂会編 第二八―二九頁 昭和六年五月刊(DK160124k-0008)
第16巻 p.743 ページ画像

岩下清周伝 同君伝記編纂会編 第二八―二九頁 昭和六年五月刊
 ○第二編 事業
    五 営口水道電気株式会社の事
 本会社は三十七・八年戦役後日支合弁を以て創立せられたるものにて、之が日支合弁事業の嚆矢である。当時我国の占領せる満洲地方に於いて、経済的特殊の地位を確立することの必要を君は同志と倶に唱へた。利権の獲得とか或は利権の確立とか云ふ事が盛に唱へらるゝ際に、君は早くも経済的特殊地位を確立することを唱へ、之が方法として日支両国民が出資し、合弁事業の範を示さんとしたのである。即ち日支の共存共栄を計るには両国民が利害得失を同うする合弁事業を計画し、以て両国民の親善なる友交を其の基本とするの最善最良の方法なることをその頃君は頻に説いてゐた。偶々営口に於いて水道敷設を日支共同事業として経営するの方案を提げて君に諮る者があつた。君之を見て自家の理想に合致せるものとして大に欣び、小村外相の意見を聴いた。然るところ外相は『君が責任の地位に立つ決心なら許可しやう』と云ふ内意を洩らしたので、其の手続を履んで許可を得、東西の実業家を説きたるに、渋沢男首め著名実業家続々之に賛成ありて玆に会社の創立を見るに至り、小村外相に対する前約を重んじ、君自ら社長として経営に任じたのである。
 本会社は其の経営宜しきを得て水道敷設を完成し、次で電気事業の経営をも全うし、日支親善、共存共営の実を経済的に挙げ得たのである。然るに其の後支那側に於て株の買占をなし、会社経営の権を其の手に収めんとしたることもあり、結局日本人の持株を満鉄にて引受け同社に於いて経営の責を負ふことになつた。



〔参考〕清国営口水道敷設調査報告 第一二―一四頁(DK160124k-0009)
第16巻 p.743-744 ページ画像

清国営口水道敷設調査報告 第一二―一四頁
○上略 山本滝四郎君乃ち右余の挨拶を訳述し、然る後左の要点に就き精敷説明の労を採られたり
 - 第16巻 p.744 -ページ画像 
 (一)余輩は当営口市公益の為め水道を敷設せんと企図し、曩日葉亮卿君並に岩下清周君等の賛成に依り、今此席に列せらるゝ林昌雄君の特許を得られたる当軍政署の指定に基き、大阪・神戸及び東京に於ける実業界の有力者と謀り其委任を受け、実地調査の為め出張したる次第なり
 (二)右水道調査の為め賛助したる者は二十有余名ありて而かも皆知名の士なり、今左に委員並に二三の人名を挙ぐれば左の如し
  神戸清商              呉錦堂君
  同                 麦少彭君
  三井物産会社            飯田義一君
  同                 福井菊三郎君
  北浜銀行頭取            岩下清周君
  住友家顧問             田辺貞吉君
  日本綿花会社々長          田中市太郎君
  桑原商店々主            工学士桑原政君
  関西鉄道会社々長          片岡直温君
 (三)余輩は前顕の人々より委任を受けたるに依り、極めて着実に事を謀らん志望なれば、先づ営口の現況を精査し将来の盛衰を熟慮推定せんと欲し、一面には可得出来的各方面の調査に着手し、又一面には測量器械を用ひ営口と水源地との実測に着手したる次第なり
 (四)原来本工事は営口市の公共事業に属する性質なれば唯営利事業とのみ観るべきに非らず、由て余輩は諸君と与に協力一致其成功を期待するに在り○下略
   ○右調査報告ハ明治三十八年九月工学士逵邑容吉に依リテ為サレタルモノナリ。



〔参考〕満洲十年史 伊藤武一郎著 第一九六―一九七頁 大正五年二月刊(DK160124k-0010)
第16巻 p.744 ページ画像

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