デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
1款 東京商法会議所
■綱文

第17巻 p.83-104(DK170011k) ページ画像

明治12年3月4日(1879年)

是ヨリ先当会議所、内務省勧商局ノ諮問ニ係ル商標条例制定ノ儀ニ就キ審議シ来リシガ、是日栄一会議所ヲ代表シテ条例制定ノ時期尚早ナル所以ヲ商務局長河瀬秀治ニ回陳ス。


■資料

東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 一(DK170011k-0001)
第17巻 p.83-89 ページ画像

東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 一
                  (東京商工会議所所蔵)
雑百六拾五号《(朱書)》         東京商法会議所
別冊商標条例追テ御施行可相成積ヲ以テ、当局於テ草按取調置候ニ付及下附候条、其会議所於テ実際ノ便否篤ト協議ノ上見込之次第追テ可申立事
            勧商局長
明治十一年十一月十二日
             内務大書記官 河瀬秀治
(別冊)
商標条例
 例言
 商標トハ諸般ノ産出人・製造人及商人等其物品ヲ販売スルニ各自其
 - 第17巻 p.84 -ページ画像 
物品ノ紛レナキ事ヲ表別スル為メ名号・目印・花押・印章・紋印・文字又ハ模様・図画等ヲ該品又ハ其上包又入物等ニ書認メ、印刷シ塗入レ、彫刻シ又ハ其他ノ仕方ヲ以テ誌記シ、又ハ紙・木綿・絹布等ノ小切ニ誌記シ、其品ニ諸般ノ仕方ヲ以テ附弐スルモノヲ総称ス
第一条 産出人・製造人及商人等其売品ニ商標ヲ用フルハ各自ノ勝手タリト雖トモ、其商標ヲ専用セント欲スル者ハ此条例ヲ遵奉シテ内務卿ニ願出其認許ヲ受ヘシ、而シテ認許ヲ受ケタル商標ハ其認許ノ日ヨリ十五箇年ノ間之ヲ専用スル事ヲ得ヘシ
  但薬名及書物・新聞紙ノ表題ノ如キ已ニ売薬免許又ハ出版免許ヲ受タルモノト雖トモ、此条例ヲ遵奉シテ認許ヲ受クルニアラサレハ認許商標ト做スヘカラス
第二条 左ニ掲クル商標ハ認許ヲ受クル事ヲ得ス、而シテ一旦認許ヲ受クルモノト雖トモ若シ其商標左ノ事項ニ触ルヽトキハ其認許無効タルヘシ
 第一 他人現ニ用フル商標又ハ世間ヲ欺ク程之ニ類似スル商標
   但種類異ナリタル物品ニ用フル為メノモノハ此限ニアラス
 第二 願人ノ姓名又ハ社名又ハ地名又ハ普通ノ物名等而已ノ商標
   但細工モノ及ヒ彫刻モノ等ノ其物品ニ製造人自記ノ姓名又ハ号字等而已ヲ用フルハ此限ニアラス
 第三 一般ノ禁制ニ属スル事物ヲ記シタル商標
第三条 二人以上同時ニ同商標又ハ相似タル商標ヲ同種類ノ物品ニ用ヒン為メ願出ル者アルトキハ、内務卿ハ其孰レカニ之レカ表別ヲ立シメ、然ル後之ヲ認許スヘシ
第四条 内務卿ハ其便宜トスル所ニ於テ認許商標簿ヲ備ヘ置キ、認許シタル商標之ヲ用フル物品ノ種類及物名及其用方及所用人ノ属籍・営業地・其姓名又ハ社名等ヲ登録シ、庶人ノ縦覧ニ供シ、且毎月末認許商標要略録ヲ作リ其月中認許シタル商標ノ要略ヲ記シ、之ヲ各地方庁ヘ頒布シ、各地方庁ノ便宜トスル所ニ於テ庶人ノ縦覧ニ供セシムヘシ
第五条 認許ヲ受タル者ハ認許商標ノ四文字、及其所用人ノ姓名又ハ社名及地名ヲ其商標ニ附記スヘシ
  但細工物及彫刻物等ノ其物品ニ諸般ノ仕方ニテ直チニ誌記スル商標、及書物・新聞紙ノ表題等ニハ必シモ之ヲ附記スルヲ要セス
第六条 認許ヲ受タル者ハ、其商標ノ雛形、之ヲ用フル物名、及其用方等ヲ認許ノ日ヨリ后三週間、毎週一日以上、其土地又ハ近傍及ビ東京ノ新聞紙ニ於テ広告スヘシ
第七条 左ニ掲クル事項ヲ犯ス者ハ金七円五十銭ヨリ少カラス金百円ヨリ多カラサル罰金ヲ科シ、其干犯ニ係ル商標ヲ用ヰアル物品ノ売代金及未売ノ現存品及ヒ偽商標ヲ製スルニ依テ得タル金額ハ取上ケ其被犯人ニ給ス可シ
 第一 認許商標ヲ偽造スル者、又ハセシムル者及偽認許商標ヲ用フル者
 第二 事情ヲ知テ偽認許商標ヲ彫刻シ、又ハ印刷シ、又ハ其他諸般ノ仕方ニテ製スル者
 - 第17巻 p.85 -ページ画像 
   但其罰本犯人ノ罰ニ過キサルヘシ
 第三 世人ヲ欺ク程認許商標ニ類似シタル商標ヲ同種ノ物品ニ用フル者、及ヒ他人已ニ用ヒタル認許商標ヲ取リ再ヒ商標トシテ之ヲ用フル者
   但類似商標ト雖トモ犯シテ認許商標主ノ姓名又ハ社名ニ及フ者ハ其用フルト未タ用ヒサルトヲ論セス認許商標偽造ヲ以テ処分スヘシ
 第四 事情ヲ知テ第一又ハ第三ノ干犯ニ係ル商標用ヒアル物品ヲ販売シ又ハ販売セントスル者
第八条 認許ヲ受ケサル商標ニ認許ノ文字ヲ仮冒スル者ハ罰金七円五十銭ヲ科シ、其用ヒアル商標ハ除去セシメ、未タ用ヒスシテ現存スル商標ハ官ニ没スヘシ
第九条 第七条ノ事項ヲ犯サレタル認許商標主ハ、其犯行後全三ケ年ノ内ハ告訴スル事ヲ得ヘシ、但期限内ト雖トモ犯行発覚ノ后全一ケ年ヲ過レハ告訴ノ権ヲ失フヘシ
第十条 商標専用ノ権ハ譲渡ス事ヲ得、譲受ク者ハ六十日以内ニ其登録ヲ内務卿ニ願出ヘシ
  但本条ノ場合ニ於テモ専用権ノ年限ハ最前登録ノ日ヨリ之ヲ算スヘシ
第十一条 認許商標主若シ死没スルトキハ商標専用ノ権ハ其相続人ニ相伝フル者トス、而シテ相続人ノ之ヲ用フルハ登録ヲ要セス
第十二条 認許商標ヲ他ノ物品ニ兼用又ハ転用シ、尚其兼用又ハ転用ニ於テ専用権ヲ有セント欲スル者ハ、並ニ内務卿ニ願出、更ニ其兼用又ハ転用ノ認許ヲ受ク可シ
第十三条 認許ノ満期ニ至リ尚其専用権ヲ続有セント欲スル者ハ、満期以前六ケ月内ニ更ニ内務卿ニ其認許ヲ願出ヘシ
第十四条 認許年限内ト雖トモ其本業ヲ止ムルトキハ則商標ノ権廃絶スルモノトス、然レトモ其有権中他人ニ犯サレタル事件ニ就キ告訴スルノ権ハ第九条ノ通タルヘシ
  但政府ヨリ其業ヲ禁セラレ、又ハ三箇年以上其業ヲ休止スル事等ハ其業ヲ止ムルノ証跡ト見做スヘシ
第十五条 此条例ヲ遵奉シテ認許ヲ受ケント願フ者ハ左ノ定額ノ手数料ヲ納ムヘシ
   第一 商標認許ノ手数料     金三円
   第二 譲受登録ノ手数料     金一円五十銭
   第三 兼用又ハ転用認許ノ手数料 金一円五十銭
   第四 二回以上ノ認許ノ手数料  金一円五十銭
第十六条 此条例ヲ遵奉シテ内務卿ニ願出ルノ手続ハ追テ内務卿ノ定ムル規則ニ依ルヘシ

商標認許願手続規則
第一条 商標ノ認許ヲ願出ル者ハ、第七条書式第一ニ傚ヒ願書及詳解書各三通ヲ作リ、毎通捺印シ、其営業地ノ地方官ヘ差出スヘシ、地方官ハ其各二通ニ奥書鈐印シテ郵便日数ヲ除キ三日内ニ之ヲ当省ヘ
 - 第17巻 p.86 -ページ画像 
差出スヲ則リトス○認許ノ上ハ願書及詳解書各一通ニ当省ノ印章ヲ鈐シ、認許状ヲ添ヘ之ヲ地方官ヘ交附スヘシ、而シテ地方官ハ手数料ト引替ニ之ヲ其願人ニ下附スヘシ○若シ認許セサルトキハ其理由ヲ願書ニ記載シ、地方官ヲ経由シテ之ヲ願人ニ還附スヘシ
第二条 商標専用権譲受ノ登録ヲ願フ者ハ、第七条書式第二ニ傚ヒ、譲渡人・譲受人連印シ、認許状ヲ添ヘ願出ヘシ、登録ノ上ハ願書ニ当省ノ印章ヲ鈐シ且認許状ニ裏書ヲ為シ之ヲ下附スヘシ、其他願出及下附ノ手続ハ第一条ニ同シ
第三条 兼用又ハ転用ノ認許ヲ願フ者ハ第七条書式第三ニ傚ヒ、認許状ヲ添ヘ願出ヘシ、認許ノ上ハ願書及ヒ詳解書ニ当省ノ印章ヲ鈐シ且認許状ニ裏書ヲ為シ之ヲ下附スヘシ、其他願出及下附ノ手続ハ第一条ニ同シ
第四条 盗難・水難・火災又ハ過誤等ニテ認許状ヲ失ヒ、再度認許状ヲ請ケント願フ者ハ第七条書式第四ニ傚フヘシ、其願出及下附ノ手続ハ第一条ニ同シ
第五条 認許満期ニ至リ更ニ認許状ヲ請ント願フ者ハ第七条書式第五ニ傚フヘシ、其他願出及下附ノ手続ハ第一条ニ同シ
第六条 地方官ニ受取タル手数料ハ出版免許料等同様之ヲ取扱フヘシ
第七条 書式ハ左ノ通リタルヘシ
 第一書式
    商標認許願
  私又ハ私共又ハ当何会社儀、別紙詳細書ニ記載ノ商標ヲ新規ニ相用度、又ハ去何年ノ頃ヨリ相用来候処、同商標ハ勿論右ニ類似ノ商標ヲ同品又ハ同種ノ物品ニ相用候者他ニ無之段保証致候間、何卒御登録ノ上認許状御下渡被下度此段奉願候也
                          何府県地名居住寄留営業
                           何族又ハ平民
                           何品産出又ハ製造又ハ商人
    年 月 日                     姓名
                           肩書前同断
                              何組合
内務省割印   又ハ             姓名
                              姓名
                           肩書前同断
               又ハ         何会社社長社印
                              姓名
   内務卿某殿
 前書之通願出候ニ付進達候也
   年 月 日               何府知事又ハ県令某
第一書式附
   商標詳解書
 一商標雛形此処ニハ用ヒント欲スル商標ノ真写ヲ書認メ又ハ印刷シ又ハ印刷セルモノヲ張付スベシ《(太字ハ朱書)》
 - 第17巻 p.87 -ページ画像 
  一此商標ハ正中ニ何ノ図又ハ形又ハ文字ヲ何色ニテ何様ニ誌記シ其上又ハ下ニハ何ノ図形又ハ文字
   其左右及ヒ角又ハ脇ニハ何ノ図形又ハ文字
   其周囲又ハ外辺ニハ何ノ図形又ハ何ノ罫線ヲ何色ニテ何様ニ描キ又ハ画シ
   其何ノ処ニハ私又ハ私共ノ姓名又ハ当会社ノ社名及地名ヲ何色ニテ何様ニ附記致候以上総テ用ヒント欲スル商標ニ附記スル所ノモノヲ一々詳拳スヘシ
   右ノ内何ノ図形又ハ文字又ハ色ハ該商標ヲ用フル物品ノ品等ニ従ヒ、又ハ何々ノ都合ニ依リ何々ト変換致候所存ニ有之此処ニハ変換スル訳及ヒ変換ノ仕方ヲ許記スヘシ御認許相成候上ハ右何ノ処ヘ認許商標ノ四字ヲ何色ニテ何様ニ附記致スヘク
  一此商標ヲ用候物品ハ左ノ通ニ有之候則チ
   一当何機械所製造何種何品但上等中等下等又ハ何国産出何種何品此処ニハ該商標ヲ用フル物品ノ名及其製造又ハ産出所及品物ノ等級ヲ記載スヘシ
  一此商標ノ用方ハ凡竪何寸横何寸ノ紙又ハ何々ニ書認メ又ハ印刷シ、右何品何程毎ニ又ハ何程ノ上包又ハ器物ノ上面又ハ側面又ハ何々ノ処ヘ直ニ張付又ハ結付又ハ附弐シ、或ハ右何品何程入ノ何器ノ何ノ処ヘ書認メ又ハ印刷シ又ハ彫込ミ又ハ何様ニシテ誌記シ、又ハ其品物入物等ノ大小ニ依リ商標ヲ伸縮相用候此処ニハ成タケ詳密ニ該商標ノ用方ヲ記載スヘシ
 右商標雛形及前条詳解ノ廉々ハ総テ私又ハ私共又ハ当何会社ヨリ御認許奉願候商標ノ真写及其所用ノ事実ニ相違無之候也
内務省割印  年 月 日    肩書及人名等ハ総テ請願書式ニ同シ
 第二書式
    認許商標譲受登録願
  何誰又ハ何会社譲渡シ人ノ名去ル何年 月 日御認許相受ケ爾後引続専用罷在候何品ニ用フル何々標名ノ商標ヲ、本年又ハ去何年月日ヨリ何誰又ハ何会社譲受人ノ名ヘ譲渡シ申候、就テハ向後右何誰又ハ何会社譲受人ノ名ニ於テ本商標詳解書ノ通専用可致候、何卒御登録ノ上認許状ヘ御裏書被成下度本認許状相添此段奉願候
   尤モ右商標面何誰又ハ何会社及某処ノ人名及地名ハ何誰又ハ何会社及某処ト変換可致候、是亦併テ申上置候也
                 肩書ハ第一書式ニ同シ
    年 月 日          譲渡人 姓名
                 又ハ何組合
                       姓名
                       姓名
内務省割印     又ハ何会社々長社印
                       姓名
                 肩書同上
                   譲受人 人名同上
  宛名及地方官奥書第一書式ニ同シ
 - 第17巻 p.88 -ページ画像 
 第三書式
    認許商標共用又ハ転用願
  私又ハ私共又ハ当何会社儀、去何年 月 日何品ニ用ユル何々標名ノ商標ニ付御認許相受爾後引続専用致居候処、今後同商標ヲ別紙詳解書ノ通更ニ何品ニ共用又ハ転用致シ、本認許残期中ハ尚該品ニ付テモ専用致度、尤右ト同商標ハ勿論右ニ類似ノ商標ヲ今度共用、又ハ転用致ス物品ト同品又ハ同種ノ物品ニモ相用居候者他ニ無之段保証致候間、何卒御登録ノ上認許状ヘ御裏書被成下度本認許状相添此段奉願候也
内務省割印  年 月 日  肩書人名及宛名及地方官奥書ハ総テ第一書式ニ同シ
 第三書式附
    共用又ハ転用商標詳解書
 一商標雛形    第一書式附ニ照準スヘシ
 一此商標ハ    以下第一書式附ニ照準スヘシ
 一此商標ヲ共用又ハ転用致度物品ハ左之通ニ有之候
          以下第一書式附ニ照準スヘシ
 一此商標用方ハ  以下第一書式附ニ照準スヘシ
 右商標雛形及前条詳解ノ廉ニハ《(々カ)》、総テ私又ハ私共又ハ当何会社ヨリ共用又ハ転用御認許奉願候商標ノ真写及其所用ノ事実ニ相違無之候也
内務省割印   年 月 日  肩書人名共第一書式附ニ同シ
 第四書式
    商標認許状焼失又ハ流失又ハ紛失ニ付再下願
  私又ハ私共又ハ当何会社儀、去何年 月 日何品ニ用フル何々標名ノ商標ニ付御認許相受爾後引続専用致居候処、本年又ハ去何年   月 日何火災又ハ何水難又ハ盗難又ハ失誤ニ係リ認許状ヲ紛失致シ、十分捜索ヲ遂候得共相見ヘ不申候、又ハ焼失又ハ流失致候、何卒右認許状再度御下附被成下度此段奉願候也
    年 月 日  肩書人名及宛名及地方官奥書ハ総テ第一書式ニ同シ
 第五書式
    商標第二又ハ第三期幾回ニテモ其期数ヲ記載スヘシ認許願
  私又ハ私共又ハ当何会社儀、去ル何年 月 日御認許又ハ第何期御認許相受爾後引続専用罷在候何品ニ用フル何々標名ノ商標来ル何年又ハ本年 月 日ニテ年期相満チ候処、尚従前ノ如ク引続専用致度候、何卒御登録ノ上第何期認許状御下渡相成度此段奉願候也
内務省割印   年 月 日  肩書人名宛名及地方官奥書ハ総テ第一書式ニ同シ
 第五書式附ノ一
 - 第17巻 p.89 -ページ画像 
    譲受認許裏書ノ式
認許状裏面


主任局長割印何年 月 日何誰又ハ何会社買主又ハ譲受人ノ名ヘ表面ノ商標ヲ譲受ケタル旨承認候事
              年 月 日   内務卿某


 第五書式附ノ二
    共用又ハ転用認許裏書ノ式
認許状裏面


主任局長割印何年 月 日ヨリ表面ノ商標ヲ第何号詳解書ノ通更ニ何品ヘ共用又ハ転用致ス旨認許候事
              年 月 日内務卿某


 第六書式


主任局長割印第何号
             商標専用認許之証
            一標名何々       何府又県何族籍
            一物名何             願人名
商標専用認許之印
           右者明治 年 月ヨリ向十五年専用認許候也
             年 月 日        内務卿某



東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 一(DK170011k-0002)
第17巻 p.89-90 ページ画像

東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 一
                  (東京商工会議所所蔵)
雑第百七拾七号《(朱書)》  渋沢
今般及下附候商標条例之法案ヲ商議之為メ明後廿八日午後四時ヨリ臨時会議有之候ニ付、右法案説明之者一名出席之義御申越致了承候、即チ一等属神鞭知常ニ出頭申付候間此段及回答候也
  十一年十一月廿六日    勧商局長 河瀬秀治
    福地源一郎殿
 追伸 出席之義知常ニ申付候付而者別紙命令状写之通リ指示置候間此段為御心得申進置候也
(別紙)
    命令状
  東京商法会議所ニ於テ商標条例討議ノ節、説明者トシテ出張申付候、付テハ左ノ件々篤ト相心得詳細復命可致事
一該商法会議所ヘ出頭ノ上議長ノ尋問ニ応シ、本按起草ノ主旨ヲ説明可致事
一討議中若シ議員本按ノ主意ヲ誤認スルトキハ一応議長ニ請求シ許諾ノ上其主意ヲ説明スヘシ、然レトモ討議ニ対シ相弁論シテ下問ノ旨趣ニ悖戻セサル様注意可致事
一右二項之外臨時ノ諸事ハ総テ議長ノ差図ニ従ヒ不都合無之様可致事
  明治十一年十一月       勧商局長 河瀬秀治
 - 第17巻 p.90 -ページ画像 
    一等属 神鞭知常殿


東京商法会議所要件録 第二三号・第一―三八頁 明治一四年三月六日刊(DK170011k-0003)
第17巻 p.90-98 ページ画像

東京商法会議所要件録  第二三号・第一―三八頁 明治一四年三月六日刊
  第三臨時会 明治十一年十一月廿八日午後五時開場
各議員並ニ番外一番即商標条例法案説明者着席ス、時ニ会頭 ○渋沢栄一ハ本日開会ノ趣旨ヲ略陳シ、書記ヲシテ其全按ヲ朗読セシメ、了ツテ会頭ハ更ニ衆議員ニ向ヒ本按ニ就テハ親ラ意見ノ陳スベキモノアルヲ以テ、議事規則第十二条ニ準ヒ副会頭ヲシテ会頭タラシメン事ヲ述ベ、之ヲ第一・第二副会頭ニ請ヒシニ同シク発言セント欲スルヲ以テ之ヲ辞ス、因テ会頭ハ廿五番議員(竹中邦香)ニ向ヒ己レニ代ラン事ヲ乞ヒ、其諾スルヲ竢チ之ニ会頭席ヲ譲ル、而シテ二十五番ハ会頭ニ代リ其席ニ臨ミ、衆員ニ向ヒ此法按ニ就キ説明ヲ要スルノ廉アラバ之ヲ番外一番ニ質問スベキ旨ヲ述ブ
二十九番(清水卯三郎)商標ノ二字ニ就キ本邦ノ慣例ヲ以テ之ヲ推スニ丸大印・丸越印等ノ如キハ是レ家ニ属スルモノニシテ、剣菱・男山等ノ如キハ是レ其商品ニ属スルノ名目ナリ、故ニ今此商標ナル文字ハ家号ニ属スベキモノトスベキ歟、将タ商品ニ属スルモノトスベキ歟
番外一番(神鞭知常)丸大印或ハ丸越印ノ如キハ家号ニ関スルモノニシテ商品ニ属セズ、又男山・剣菱等ノ如キハ該品物ノ名称ナレバ寧ロ商標ニ近キガ如シ、到底此商標トハ家号・暖簾ノ印等ニ非ズシテ則チ売品ニ就キ其紛レナキヲ保スルノ標目ヲ云ナリ
十一番(福地源一郎)今番外ノ説明スル所ニ因レバ此法案ハ果シテ実際ニ適切ナラズ、其不都合ノ尤モ大ナルヲ発明セリ、其故何トナレバ丸大印・丸越印等ノ如キ吾人共ニ信ヲ置クノ厚キ遂ニ普通ノ標目トナリ、日本ニ於テハ最モ貴重スベキ家ニ属スル所ノ商標ニシテ、即チ法案例言中其上包又ハ入物等ニ書認メ、又ハ紙・木綿・絹布ノ小切等ニ誌記ス云々トアルニ拠レバ紙ノ小切ニ記シタル商標ニ適当スル者ナリト云ハザルヲ得ズ、然ルニ若シ果シテ番外一番ノ説明ノ如クナルトキハ此ノ法案ハ商家従来ノ商標ナルモノヲ破却スルニ似タリ、此義如何
番外一番 十一番ノ説理アルニ似タリト雖トモ、丸大印又ハ丸越印ノ如キハ是レ其家ノ目印ト云フニ過ギズ、故ニ若シ其目印ヲ以テ某商品ニ附用セン事ヲ請ヒ、認許ヲ得タル以上ハ即チ商標ナルベシト雖トモ、否ラザレバ即チ一家ノ目印、則チ暖簾ニシテ決シテ商標ニ非ルナリ、例之我羽織ノ紋ハ之レ我家ニ属スル目印ニ止マルモ、若シ我家ノ売品ニ此紋ヲ附用セン事ヲ請フテ認許ヲ得ルニ於テハ則チ該品ノ商標トナルガ如シ、又剣菱・男山等ノ如キモ之ヲ其酒ニ専用シテ以テ其認許ヲ得バ是レ亦同ジク商標タルベキナリ
二十九番(清水卯三郎)説明ノ如ク丸大印又ハ丸越印ノ如キハ家号ナルモ之ヲ商品ニ付スル時ハ即チ商標ト為スベシト雖モ、剣菱・男山等ノ如キハ到底其酒名ニ止マルヲ以テ之ヲ商標トナスベキモノニ非ズ、如何トナレバ酒ノ如キハ時々其名称ヲ変更シテ時好ト遷移スルモノナルガ故ニ若シ之ヲシテ商標トナサバ民間甚ダ不都合ヲ醸成セ
 - 第17巻 p.91 -ページ画像 
ザルナキヲ保スベカラズ、今之ヲ角力ニ例センニ境川・綾瀬川等ノ名称ノ如キ独リ東京区中ニ在テハ他ノ力士其名ヲ借用スル事能ハズト雖トモ、既ニ東京ノ区域ヲ離ルレバ境川ト云ヒ綾瀬川ト云ヒ其好ム処ノ名目ヲ以テス、故ニ東京中ニ於テ某商標ヲ保護スルハ得テ能シ難キニ非ズト雖トモ、日本全国ニ渉ル時ハ其区域ノ広濶ナル物品ノ無数ナル争カ能ク其名称ノ異ナルモノヲ認ムルヲ得ン、是レ小生ノ大ニ疑フ所ニシテ曩ニ説明ヲ要シタル所以ナリ
三十一番(渋沢栄一)二十九番及ビ十一番質問ニ対シ番外一番ノ説明アリト雖トモ、商品中数多類似ノモノヲ生ズルガ故ニ一概ニ其説明ノ如クナシ難キモノアリ、例之一塊ノ銅面ニ住友ノ極印ヲ鈐シ以テ自家商売ノ目標トナス、是レ則チ該家ノ商標ナルベシ、故ニ此類ニ至テハ須ラク熟議ヲ要セザル可ラズト雖モ、十一番及廿九番ノ質問ノ如キハ此法案ノ総体議ニ関スルガ故ニ其逐条質問ヲ了セバ復タ自ラ解スル所アルベシ
十一番(福地源一郎)三十一番ノ説或ハ可ナリト雖トモ、各議員ノ最モ注意ヲ要スベキモノハ此例言ニアリ、若シ夫レ此例言ヲ了解セザレバ総体或ハ逐条議ニ渉リタルノ時ニ方リ、甚ダ不都合ナキヲ保セズ、例バ昔時専ラ金銀ヲ通用シタルノ日ニ於テ唯ニ其上包ニ確実ナル両替屋ノ封印ヲ鈐スレバ、其包内ノ如何ヲ問ハズ封金ノ儘ニテ之ヲ通用セリ、小生ハ其封印ノ商標ト云フベキヤ否ヤヲ知ラズト雖トモ其効用ハ即チ商標ノ望ム所ニ適宜スベシ、然バ則チ反物ノ符牒モ林木ノ極印モ俵包ノ銘印モ、又三十一番ノ引例セシ住友ノ極印モ僉ナ物品ノ紛レナキヲ表証スルノ標印ニシテ従前ヨリ一般用ヒ来リタル日本ノ商標ナリト信ゼリ、故ニ各議員ハ此法案ノ逐条ニ説明ヲ乞フノ前ニ於テ、先ヅ其如何ナルモノヲ指シテ商標ト云フベキヤヲ具サニ質問セラレン事ヲ緊用ナリトス
七番(成嶋柳北)此商標条例ノ如キハ日本従来固有ノ商標ヲ一変セザレバ到底実行スル事能ハザルベシ、即チ住友ノ銅、剣菱・男山ノ酒樽ニ於ル挙ナ該物品ニ就キ普通ノ目標ナルモ、却テ此例言ニ合準セザルヲ奈何セン、故ニ従来慣用ノモノヲ一般商標ト見做スヘキ様此例言ヲ脩正スルヲ要スト雖トモ、先ヅ三十一番説ノ如ク逐条質問ノ後ニ於テ発言スルヲ可トス
十五番(益田孝)番外一番ノ説明ニ拠レバ物品ノミニ止マリテ家号・名称等ニ関セザルモノヽ如シ、而シテ小生ノ考フル所ハ十一番ノ如クナルヲ以テ大ニ番外ノ説ト径庭セリト雖トモ、先ヅ三十一番説ノ如ク逐条ニ就キ質問スルヲ佳トス
於是会頭ハ十一番説ト三十一番説トヲ分チ、先ヅ三十一番説ノ賛成者ニ起立ヲ命ジタルニ起立者二十二人多数ニ因リ逐条質問スベキニ決ス
十一番(福地源一郎)第一条ノ但書中出板免許ヲ受ケタルモノト雖トモ云々ハ、出板届ヲナシ其免許ヲ得レバ仮令板権ヲ得ズト雖トモ認許商標ヲ得ラルベキ乎
番外一番 板権免許ハ著書内部ノ文言ニ関シ、商標ハ其外面ノ標目ニ関ス、故ニ其標目ニ就キ紛レナキヲ表セン為メ商標認許ヲ願出ルトキハ之ヲ許スベキ者トス、故ニ徒然草ノ如キハ一種特別ノ名称ニシ
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テ他ニ疑似ノ書名ナキヲ以テ不都合ヲ醸成セザルベケレトモ、日本地誌ト云ヒ日本地誌略ト云ヒ名称類似ノ書籍比々世ニ行ハルヽニ至ルモ此条例ナキ時ハ之ヲ保護シテ以テ著述者ヲ利スルヲ得ス、例バ此ニ曙新聞又ハ国史略等ノモノアリテ広ク江湖ノ愛顧ヲ博シタルニ際シ、人アリ標題類似ノ新聞或ハ書籍ヲ出版スル時ハ啻ニ該著述者自家ノ利益ニ妨害ヲ与フルノミナラズ、買客モ亦タ之ニ因テ欺偽セラルヽニ至ルベク、又更ニ売薬ニ就テ之ヲ説ンニ宝丹ノ如キ声価ヲ世上ニ得大ニ其利益アルヲ羡ミ、他ニ同名ノ売薬ヲ為スモノアルモ売薬免許ハ其種類ノ可否善悪ヲ検閲スルニ過ギズ、其標目ニ関セザルヲ以テ同名ノ薬品世上ニ流布シ、遂ニ其発売者ノ利益ヲ障害スルノミナラズ随テ消費者ヲ眩惑スルニ至ルベキヲ以テ、此間特ニ区別ヲ設ケントセバ即チ商標ノ外之ヲ保護スベキモノナカルベキナリ
四十四番(井関盛艮)書籍ノ如キハ表紙ノ裏面ニ著述者ノ印章アリ、又宝丹・精錡水等ノ如キハ往々奔馬ニ跨リタル人物ヲ目標トシテ新聞紙上ニ広告スル者アリ、此等ハ即チ商標ト見認ムベキモノナレバ之ニ因テ以テ認許ヲ得ラルベキ乎
番外一番 宝丹・精錡水ノ奔馬人物ニ於ケルハ是レ新聞紙上ニ於テ人ノ注目ヲ促スベキ為メナレバ、恰モ新聞紙上ニ大書ヲ以テ広告スルガ如ク啻ニ世人ニ報告スルニ止マル、又書籍ノ著述者印章ニ於ケルハ何某蔵板ヲ表スルニ過ギズシテ買者ハ皆其標題ニ依テ之ヲ購求スレバ之レ共ニ商標ト見認ムベカラズ、故ニ何ニテモ其商品ノ目標トナルベキモノヲ定メテ以テ其認許ヲ受クベキモノトス、例之各地甘草ヲ産スルモ玆ニ人アリ其培養ノ法ヲ得、大ニ世上ニ美名ヲ博シタルガ故ニ他品ト判別セン事ヲ要シ、之ニ八文字ヲ付シ、其認許ヲ得ルトキハ世人之ヲ称シ八文字甘草ト唱ヘン、即チ八文字ハ商標ニシテ甘草ハ普通ノ品名ナリ
三十五番(津田仙)書物出板ノ如キハ免許ヲ要スル者ニアラズ、其発兌毎ニ御届ヲ為スノミ、果シテ十一番ニ対スル説明ノ如クナラバ出板免許ト板権免許ノ区別如何
番外一番 是レ出板スル免許ヲ受ケタル物ト云フ意ナリ、然レトモ其文字ノ修正如何ハ議員諸君ノ衆議ニ任スヘキナリ
三十六番(岸田吟香)認許ノ文字ヲ用ヰザレバ商標ハ勝手ニ用ユルヲ得ヘキ乎
番外一番 認許ヲ受ケザレバ保護ヲ得ザルノミ、其保護ヲ要セザルモノハ勝手ノ標印ヲ用ユルモ妨ゲナカラン
二十番(朝吹英二)第二条第二項中普通物品トハ日本文明史ノ如キ日本一般ノ開化ヲ論ズルモノニシテ、是レ普通ノ名目ナリ、其他地理誌ノ如キモ亦然リ、然レトモ徒然草又ハ津田真道ノ著セル如是我観ノ如キハ世間普通ノ書名ニアラザルヲ以テ如此モノハ宜ク認許ヲ得ルニ足ルベキモノト為スヘキ乎
番外一番 其区別ニ至テハ専ラ商標認許主任ノ者ノ判別スル所ニシテ其意中ニ存スヘキガ故ニ敢テ之ニ答フルヲ好マズト雖トモ、先ゾ小生ヲ以テ之ヲ見レバ文明史・地理誌等ノ如キハ世間普通ノ名目ト云フヘキガ如シ
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十一番(福地源一郎)同条第二項但書中細工物以下云々ノ意ヲ以テセバ陶器師道八ノ如キ塗師橋市ノ如キ其細工品ニ認許商標何某ト記スル時ハ大ニ其雅致ヲ損スルヲ以テ、如此モノハ認許商標下記スルニ及バザルト云フノ意乎
番外一番 道八ト云ヒ橋市ト云ヒ、其細工人ニシテ認許商標ヲ願ヘバ正条ノ通ニ記誌スベキ筈ナレトモ、十一番ノ説ノ如ク其雅致ヲ損セン事ヲ慮リテ活用法ヲ設ケ自記姓名及ビ号字ノミ云々ト記載セシナリ
三十一番(渋沢栄一)小生ガ曩ニ陳述スル所ノ銅ニ住友ト印スルモノノ如キハ天下普通ノ名目ニシテ、外国市場ニ於テハ単ニ住友ト称スレバ其銅ナルヲ知ル、果シテ然ラバ此項ニ抵触セザルモノト為スベキ乎
番外一番 住友ノ如キハ其但書内ニ加フベカラザノモノトス《(ル)》、何ントナレバ但書中細工モノ及ビ彫刻物云々ト掲グレバナリ
十一番(福地源一郎)第三項ハ何ヲ指示スル乎
番外一番 日本ニ於テ菊ノ紋ヲ用ユルヲ許サズ、即チ此類ヲ指スナリ
七番(成島柳北)第二条中若シ以下二十四字ヲ存スルトキハ大ニ実際上抵触障礙スルノ患ナキヲ免カルベカラズ、故ニ之ヲ刪除スルモ立案ノ意ヲ害セザルベキ乎、如何
番外一番 商標ヲ認許スルニ当リテハ其実行上条例ニ抵触セザルヤ否ハ認許主任者ハ勿論出願人モ亦勉メテ注意ヲ要スベシト雖トモ、全国ノ広闊ナル種類ノ万般ナル彼此抵触セザルヤ否ハ内務卿ニ於テモ亦之ヲ保スベカラザルモノヽ如シ、故ニ此文字ハ此条例中至重ノ関係ヲ有スルモノニシテ法理上ニ於テモ亦此文字ナカラザルベカラザルナリ
十一番(福地源一郎)第五条但書中、書画ノ字ナシ雖トモ是等ハ第二条第三項ニ於テ説明ヲ乞フタルモノト斉シク菊池容斎ノ画キタル画図ニ免許商標云々ト書スルトキハ大ニ其雅致ヲ損スルニ至ルヲ以テ書画ノ如キモノニ至テハ勿論之ヲ書スルヲ要セザルモノトスルカ、如何
番外一番 書画ハ其技ヲ売售シテ以テ生計ヲ為スモノニ非ザルノ性質ナルガ故ニ、此条但書中ニ含蓄スル処ニアラズ
三十一番(渋沢栄一)本条但書ノ精神ヲ聞クニ彫刻物及細工物ヲ除クノ外ハ普ク世上ニ流布スル商標、即チ酒ノ正宗ノ如キ、正宗ト単称スルモ何地何人ノ製造酒ナル事ヲ知ルベキモノト雖トモ、必ズ本条ヲ履行セサルベカラサルカ
番外一番 普通ノ物品ト雖トモ本条ヲ履行シテ不都合ヲ生ズベキ品類ノ如キハ勉メテ制限ヲ設ケ、其不都合ヲ除クヲ可トスト雖トモ細工及彫刻物ノ如キハ其不便他ノ物品ニ比較スレバ更ニ大ナルヲ以テ特ニ此但書ヲ設ケタル也
三十五番(津田仙)第六条中雛形ヲ広告スベシトアレトモ、現ニ小生ガ発売スル雑誌ノ如キハ一部ミナ雛形ナリ、今之ヲ新聞紙ニ広告セントスル能ハザルニ非ズ、之ヲ如何スベキ歟
番外一番 商標ノ如キハ物品ニ付シテ使用スルモノナレバ重モニ紙上
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ニ書キ或ハ画クヲ得ルトス、然レトモ三十五番ノ如ク雛形ノ二字ニ就テ自家ノ商品ニ関シ実際ニ不都合アリトセバ此二字ハ脩正アルモ亦可ナリ
三十一番(渋沢栄一)第七条中其干犯ニ係ルモノ云々ハ政府ニ於テ干犯者ヲ捜索スベキ乎、将タ被犯人自ラ之ヲ告訴スベキ乎
番外一番 政府ニ於テハ干犯ニ係ルヤ否ヲ捜索セズ、仮令世間ニ干犯者アリト雖トモ勧商局ニ於テハ決シテ之ガ処分ニ関係スル事ナシ、要スルニ之ヲ告訴スベキ者ハ只被害者ニシテ其他ノ者ハ敢テ之ヲ為スヲ得ザルモノトス
三十一番(渋沢栄一)本条第三項中ニ掲グル世人ヲ欺ク程云々ハ、其事情ヲ知ラズシテ之ヲ行フタルモノト雖トモ亦此罰ニ照スモノトスル歟
番外一番 其事実ニ於テ世間ヲ欺クモノナレバ其情如何ヲ問フ事ナシ
六番(大倉喜八郎)本条第三項但シ書中、類似商標云々ニ就テハ例之ハ世上ニ声価ヲ得タル〓万印ノ醤油アリテ、其未ダ商標ヲ出願セザルニ先チ、更ニ東京ニ於テ之ニ類似シタル八角万印ヲ以テ他製ノ醤油ニ商標認許ヲ受ケタルトキハ、他日其本人印ノ認許ヲ出願セルモ之ヲ許サヾルヤ否
番外一番 即チ第二条第一項ニ照シ、其事実ヲ探究シテ以テ其許否ヲ決センノミ
十三番(中山譲治)商標ノ偽造ト類似ト其罰金ニ軽重ナキハ甚ダ不都合ナリ、其区別如何
番外一番 本条第三項但書ノ処分スベシトアルハ、是レ裁判官ニ於テ其罰ノ軽重深浅ヲ斟酌判別シテ以テ之ヲ処スベキモノトス、故ニ敢テ其区別ヲ答弁シ難シ
三十一番(渋沢栄一)第七条ニ於テ質問シタリシ時、若シ被害人ヨリ告訴スル事ナケレバ罰ヲ課スルナシト説明アリシニ拠レバ、第八条中ノ発覚ハ果シテ何人ニ依テ発覚スルモノトスル乎
番外一番 是レ即チ被犯人ノ発覚ニ係ル
十五番(益田孝)政府ニ於テ其干犯ヲ捜索スル事ナク其発覚ハ独リ被害者ニアリトセバ、何レノ時ヲ以テ発覚ノ期ト定ムベキヤ
番外一番 是レ裁判官ノ其事実上ニ就テ推究証明スル所ノ期ナリ、抑モ立按者ガ其発覚ノ後全一ケ年ト定メタル所以ハ、被犯者中或ハ干犯者ノ偽造商標其他売品代価等ノ己ノ有ニ帰スベキヲ以テ之ヲ増大ナラシメン事ヲ欲シ、徒ニ発覚ノ期ヲ緩漫ナラシムル者アル時ハ復タ一個ノ弊害ヲ醸生ス、故ニ之ヲ全一ケ年ト定メテ以テ予メ其患ヲ防ギタルモノニシテ、是レ立按者ノ注意ヲ要シタル所ナリ
四十九番(平野富次)三ケ年中若シ発覚シ難キモノアルニ於テハ之ヲ如何セン歟
番外一番 犯行最後ノ日ヨリ三ケ年間ハ之ヲ訴フル権アルモノトスレバ、其ノ期短シト云フニ非ズ、故ニ若シ三ケ年間発覚セザレバ政府ニ於テハ全ク犯行者ナキモノト見傚スベキナリ
三十五番(津田仙)情ヲ知ラズシテ偽造商標ヲ買ヒ、三ケ年ヲ経テ之ヲ売ラントスルニ当リ発覚シタルトキハ情ヲ知ラズシテ買フタル者
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ノ損失タルベキ歟、将タ偽造者ノ損失タルベキ歟
番外一番 如此場合ニ於テハ売ラントスルモノハ之ヲ没収スルニ止マラザルベシ、而シテ被害人ニ於テハ三ケ年ヲ経タルヲ以テ告訴ノ権利ナシトス、故ニ是レ敢テ此条例ニ関係スル事ナシ
十三番(中山譲治)被犯者ハ干犯者ヲ発覚スルト雖トモ已ニ三ケ年ヲ経過スレバ敢テ告訴スル事能ハザルモノトセバ干犯者ハ依然トシテ之ヲ犯スモ妨ゲナキ乎
番外一番 三ケ年ト云モノハ干犯最後ノ日ヨリ起算スルモノニシテ、幾年ノ久シキニ渉ルモ現ニ犯干スルモノハ決シテ告訴スル事能ハザルニ非ザルナリ
三十一番(渋沢栄一)第十一条相続人云々ニ於テハ社名或ハ人名ノ異アルモ相続人ハ之ヲ届ケ出テ更ニ登録ヲ請ハザルモ差支ナキヤ
番外一番 逸々登録ヲ願出ツルガ如キハ中人以上ノ文字ヲ知ルモノニハ甚ダ易事ナリト雖トモ、一丁字ダモ解セザルモノニ至テハ極メテ難事トス、故ニ勉メテ其手数ヲ省略スルヲ要スルノ意ニ出テタルモノニシテ、其相続人ニ詐造アルヤ否ハ実事上ニ於テ之ヲ推知スベキナリ
六番(大倉喜八郎)第十二条ノ兼用転用トハ例ハ東京某商会ヨリ西京西陣ニ注文スルニ一種ノ絹布ヲ以テシ、之ニ西陣ノ商標ヲ附セシメズ我家ノ商標ヲ付用スルトキハ是レ我家ノ商標ヲ転ジテ他ノ製品ニ使用スルノ理ナレバ之ヲ兼用転用ト云フベキ歟、現ニ我商会ノ物品ヲ英国ニ注文スルニ何々ノ目標ヲ附用セヨト命ズルノ例アリ
番外一番 今一製造所ニ於テ甲乙ノ二品ヲ製造シタルニ、従来甲ニ用ヒタル商標ヲ以テ復タ乙ニモ之ヲ用ヒントスルハ兼用ニシテ、其甲ニ用ヒタルモノヲ廃シ更ニ之ヲ乙ニ用ヒントスルハ転用ナリ、今六番ノ質問ノ如キハ恰モ注文人ト下タ職トノ相対関係ニシテ之レ即チ注文人ノ為メニ注文ノ商標ヲ織出スモノナレバ之ヲ使用スルモ妨ケナカルベシ
三十六番(岸田吟香)玆ニ人アリ、一商標ノ認許ヲ得ルトキハ之ヲ自家ノ発売スル万般ノ品物僉ナ之ヲ附用スル事ヲ得ル乎
番外一番 縦令一家ノ発売ト雖トモ一商標ヲ以テ各般ノ品物ニ附用セント欲スルトキハ、即チ第十二条兼用ノ手続キヲ履行セザル可カラザルナリ
三十五番(津田仙)甲乙丙ノ三品共同商標ヲ用ヒント欲シ、商標中甲乙丙ノ品名ヲ記入シ之ヲ願出ヅル時ハ認許ヲ与フベキ乎、将タ一品ニ止ツテ若干品ニ通用スル事能ハザル乎
番外一番 将ニ認許ヲ受ケントスルノ時ニ方タリ商標中各品名ヲ記入シテ出願セバ、一認許商標ヲ以テ若干品ニ通用スルヲ得ン
二十七番(松本専蔵)陶器・金物・薬品類其他数千種アルモノニ至テハ単ニ陶器・薬品ノ名称ヲ以テ一商標ノ認許ヲ得ラルベキ乎、将タ其幾千種ノ名目ヲ一々記入スルカ若クハ商標ヲ幾千個ニ分タザレバ認許ヲ得可ラザル乎
番外一番 其種類ノ広狭多寡ハ姑ラク之ヲ置キ、先ヅ其各種類ニ就テ之ヲ判別シ認許ヲ請フヲ便トス、而シテ其種類ノ判別方ノ如キハ之
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ヲ認許スル主任者ノ指揮ニ因ルベキノミ
十一番(福地源一郎)第十五条ノ趣意ニ関シテ問フベキ事アリ、蓋シ外国人ニハ此商標認許ヲ与ヘザルベシ、此ニ外国製三角印ノ麦酒アルハ世間一般ノ知ル所ナルモ、人アリ内国ニ於テ麦酒ヲ製シ之ニ三角印ノ商標ヲ附記セン事ヲ出願スルトキハ内務卿ハ内国中他ニ類似ノ商標ナキヲ以テ之ヲ許サヾルヲ得ズ、然バ則チ現ニ外国ノ三角印ヲ售売シテ以テ生営ヲ為ス者ハ偽拠ヲ認許セラレタルガ為ニ妨害ヲ被ラザルヲ得ズ、如此ハ如何
番外一番 第二条ノ第一項中他人現ニ用フル商標云々ノ事アレバ縦令ヒ外国商標ト雖トモ現ニ内国售売スルモノハ之ヲ許サヾルベシ、或ハ商標ナル者ハ一国中所有物ニ非ズシテ万国普通ノ共有即チ我言語衣服ノ如クナルモノニシテ、彼ノ板権等ト其性質ヲ異ニスル論アリト雖トモ、今此条例ニ就テハ更ニ外国商標ニ相関係セザルモノト為シテ之ヲ答ヘザルヲ得ズ
会頭ハ逐条質問ノ了リタルヲ以テ番外一番ニ向ヒ随意ニ退席アリテモ差支ナキ旨ヲ通知セシニ、番外一番ハ命令状ヲ提出シ、若シ議員中法案ノ意ヲ誤解スルモノアラバ更ニ会頭ニ請ヒ之ヲ説明スベシトノ命ヲ奉ジタレバ尚ホ此場内ニ一席ヲ仮リ、発言説明ヲ許サレン事ヲ望ム、依リテ会頭ハ旧ノ如クニ番外席ニ着座アラン事ヲ乞ヒ、席定ルノ後チ会頭ハ更ニ総体議ニ渉ルベキ旨ヲ述ブ
十一番(福地源一郎)小生ガ曩キニ逐条質問ニ渉ラザルニ先ダチテ商標ノ文字ニ就キ熟議ヲ為サント欲セシモノハ、此商標条例ノ精神何レノ点ニ在ルヲ了解セントスルニ在リ、而シテ今逐条質問了リテ全按ノ趣旨ヲ通観スレバ此条例ノ如キハ実ニ我国ノ今日ニ適切セザルモノト云フベシ、抑モ我国ノ情態ト西洋諸国ノ形況ト黒白相異ナルハ論弁ヲ要セズシテ瞭々タリ、然ルニ今漫ニ西洋ニ行ハルヽ所ノ者ヲ取テ直ニ之ヲ我国ニ転施セントス、是レ其実際ニ適当ナラザル所以ニシテ之ヲ実行スルトキハ必ズ万般ノ弊害ヲ醸成スル者ナリ、故ニ小生ヲ以テ之ヲ論ズレバ商標条例尚ホ早シト云ハンノミ、夫レ如此論下スルトキハ恰モ商標ノ保護ヲ要セザルモノヽ如シト雖トモ小生ハ決シテ之ヲ無用ナリトスルニハ非ズ、唯其認許ト云ヒ不認許ト云ヒ厳格ナル規則ヲ以テ之ヲ処スルトキハ異常ノ妨害ヲ来サン事ヲ恐レテナリ、夫レ此商標ナルモノハ専売免許ト相持シテ而シテ始メテ行ハルヽハ、尚ホ夫ノ妻ニ於ケルガ如ク相離ルベカラサルモノトス、要スルニ専売免許ハ智術ヲ保護スルノ要具ニシテ、商標ハ其商品ヲ保護スルノ要器ナリ、然ルニ今専売免許ナク単ニ商標アルトキハ恰モ書物ニ商標表題アリテ板権免許ナキガ如シ、近ク之ヲ例センニ銀座町ニ秋葉大助ト云ヘル人力車製造所アリテ、今盛ニ人力車ヲ售売スルヲ以テ、商標ノ保護ヲ得テ利益ヲ収取スベシト雖トモ、其発明者ハ未ダ専売免許ナキヲ以テ利益モナク空シク他ガ富有ヲ羡ムノミ、故ニ単ニ商標ヲ以テ之レヲ保護スルモ其基礎タル智術ヲ保護スルモノナキ事奈何セン、是レ実ニ平仄ノ整ハザル者ナリト云ハザルヲ得ズ、又日本固有ノ商標ハ多ク物品ニ属セズシテ家名ニ属シ暖簾ニ属ス、即チ二十七番ノ質問ノ如ク薬品ト云ヒ、又二十九番ノ質
 - 第17巻 p.97 -ページ画像 
議ノ如ク太物ト云ヒ、皆其家名暖簾ニ属スル者也、殊ニ陶器ノ如ハ一ケ村挙テ一標ヲ用ルノ例アリ、然ニ今此例ヲ以テ此等ニ実施セバ日本従来ノ慣習ヲ破ルノ弊害ヲ生センノミ、若シ試ニ之ヲ逸々印刷シテ以テ各地共郡区役所ニ交付シ、人民ノ縦覧ヲ許スモ誰カ来テ之ヲ翻閲スルモノアランヤ、或ハ偶々来リテ翻閲スルモノアリト雖トモ千万ノ商標ニ於テ如何ゾ我ニ類似スルノ標アリヤ否ヲ分明スルヲ得ンヤ、又此条例ニ準ヒ認許ノ商標ノ字ヲ誌記スルヲ以テ之ヲ偽造スルヲ得ズト云ハヽ即チ認許ノ二字ヲ誌記セザルモノハ之ヲ偽造スルモ其禁ナシト云フノ意ナリ、然ルニ彼ノ五郎三ノ如キ橋市ノ如キ蔵六・是真ノ如キハ其細工品ニ認許商標ト誌記セザルモ妨ケ無シトスルハ何ゾヤ、縦令ヒ其美術ノ技工ト政府トノ間ニ取リ結ビタル認許約束アリト雖トモ一般ノ世人ハ認許商標ノ四字ナケレバ固ヨリ之ヲ知ルニ由ナシ、而シテ若シ之ヲ偽造スレバ、便チ犯罪者トナルベシ、是レ一方ニ向テハ保護ヲ揚言スト云ヒナガラ他方ニ於テ陥阱ヲ設クルモノニ似タリ、如何ゾ之ヲ世間ニ妨害ヲ醸成スルモノニ非ズト為スヲ得ンヤ、前陳ノ如ク西洋ニ於テ商標ハ物品ニ属シ我日本ニ於テハ家号ニ属ス、今若シ家ニ属スルモノヲ以テ物品ニ属セシメント欲スルハ所謂方枘円鑑ヲ免カレザルナリ、又我国商標ノ如キハ醤油・油・酒等ニハ樽上ノ印様ヲ以テシ、太物類ハ符牒ヲ以テシ、其類一ニシテ足ラズ、今若シ偽符偽標ノ法律ヲ設ケバ何ゾ其偽造アルヲ患ンヤ、既ニ旧幕府ノ時ニ於テハ板権ノ制ナカリシト雖トモ重板ヲ訴レバ必ズ之ヲ罰スルノ例アルガ如ク、暖簾ヲ偽リタル者ハ被害者ノ訴ニ由リテ之ヲ処分シタル事アリキ、然ルニ維新以来万般ノ規則ヲ制定シタルニ拘ラズ却テ此等ノ慣習ヲ破却シタルハ甚タ遺憾ト云フベキナリ、若今又此厳密ナル条例ヲ以テ従来ノ慣習ヲ一撃スルニ至ラバ徒ニ妨害ヲ生ズルニ足ツテ毫モ営業者ニ実利ヲ与フル事ナカラン、現ニ認許商標ナシトモ橋市ノ如キ道八ノ如キ挙ナ普ク世間ニ通用スルノ名標タリ、故ニ強テ之ヲ付与スルモ其関係ハ政府ト認許ヲ得タル者トノ間ニ止リテ其効能ハ敢テ他ニ及フ事ナカラン、又外国人ノ内国ニ於テ販売スル商品ヲ以テ日本人之ヲ偽造スルモ妨ゲナシト云ハヾ論玆ニ尽クルガ如シト雖トモ、徳義上ヨリ之ヲ論スルトキハ甚ダ不快ノ所為ニ非ルナキヲ得ンヤ、故ニ此条例ノ今日ニ実旋スル尚ホ早キヲ以テ到底専売免許ノ行ナハルヽニ非レバ之ヲ実行スベカラザルヲ信ズルナリ、故ニ議事規則第十六条第五項ニ準ヒ理事委員並ニ書記中ヨリ立按委員ヲ選挙シ、簡短軽易ヲ主トシ、認許ト不認許トニ論ナク一般普通ノ標目ニ保護ヲ被ラシムル様更ニ本会意見ノ法按ニ改正シテ以テ之ヲ議決シ、其筋ニ上申セン事ヲ是レ切ニ小生ガ冀望スル所ナリ
三十一番(渋沢栄一)此法案ノ為メ十一番説ニ向テ駁撃ヲ試ミント欲スレトモ此条例ノ実際ニ適当ナラズシテ之ヲ実行スルニ於テハ幾多ノ妨害ヲ醸生スルノ恐レアルヲ以テ、却テ十一番説ヲ徹頭徹尾賛成セザルヲ得ザルヲ奈何セン、抑モ此条例中第二条ニハ認許無効タルベシト云フヲ以テ認許願手続中其願書ニ無相違旨ヲ証明スル云々ノ字ヲ塡セシムルハ遁辞ヲ設クルニ便ナリト雖トモ、彼此撞着抵触ス
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ルニ至テハ宝《(実)》ニ甚シキモノト云フベシ、夫レ其出願ノ際ニ於テハ固ヨリ其手続ノ如ク無相違云々ト書スルモ商標無慮数万ノ多キニ渉ラバ主任者ト雖トモ一々前後ヲ対照スル事能ハザルベシ、況ンヤ下人民ニ於テヲヤ、且ツ其認許不認許ト言フガ如キハ実ニ当時ノ状態ニ適セザルノ甚シキモノト云ハザルヲ得ズ、故ニ逐条議ハ勿論総体議ニ渉ルノ可否ヲ問フニ論ナク断然十一番説ノ如ク更ニ立案委員ヲ選定シ以テ本会意見議案ヲ作ラン事ヲ欲スルナリ
十五番(益田孝)此条例ヲ単ニ一読過セバ是レ米国英国等ノ法律ニ成リタルモノ多キガ故ニ頗ル能ク条理ニ適フルモノノ如シト雖トモ、直ニ之ヲ我国ニ移樹実施セバ実業上万般ノ妨害ヲ醸成スベキハ十一番並ニ三十一番ノ説明ノ如シ、故ニ実際ニ適切ナル軽易簡短ノ草按ヲ製シ然ル後此法按ト比較シテ以テ其可否ヲ決スルヲ可トス
二十九番(清水卯三郎)他ノ商品ヲ偽造スルノ不善行タルハ従来世間一般ノ熟知スル所ニシテ、昔日ハ極メテ寥々タリシガ維新以来其弊漸ク盛ナルヨリ是レ今日ニ至リ此条例ノ立按ヲ促シタル所以ナラン然レトモ偽造スル者多ケレバ却テ其真物ニ勢力ヲ与ヘ繁昌ヲ見ハスハ吾人ガ実視スル処ナリ、故ニ今数万ノ品物皆尽ク此条例ヲ以テ保護スルモノトセバ、却テ実業者ニ利益ヲ与ヘズ妨害ヲ生ズルニ至ラン、依テハ先ヅ専売免許ノ世ニ行ハルヽニ至ルマデハ第一動議ノ如ク精密ナル商標条例ヲ設クルハ不可ナルベシ
其他尚二三ノ説ナキニ非ズト雖トモ槩ネ皆ナ十一番ノ説ヲ賛成スルニ帰スルヲ以テ、会頭ハ其ノ尽クルヲ見テ十一番ノ説ニ起立ヲ命ジタルニ総員起立スルニ因リ、更ニ会頭ハ立案委員ノ選挙ヲ命ス、即チ其選ニ当リタル者左ノ如シ
 (投票数三十)福地源一郎(同二十七)益田孝
 (同二十二) 渋沢栄一 (同十一) 成島柳北
 (同二十五)書記 梅浦精一
於是会頭ハ更ニ日ヲトシ委員ト会議ヲ開キ、草按ヲ編成セン事ヲ述ベ各員ニ退場ヲ命ズ、時ニ午後十一時十五分ナリキ
   ○「東京商法会議所要件録第一号」ハ明治十二年一月二十日第五定式集会ノ記事ヲ以テ開始サレ、ソノ以前即チ明治十一年度ノ議事ハ要件録ニ転載サレザリシモノノ如シ。故ニ明治十一年十一月二十八日第三臨時会ニ於テ行ハレシ本議事ノ如キモ普通ナレバ見ル能ハザリシモノナルガ幸ニモ明治十四年二月再ビ商標条例制定ノ議興リシヲ以テ其記事ト共ニ「要件録第二三号」ノ結尾ニ参考トシテ収録セラレタルヲ以テココニ掲示スルヲ得タリ。


東京日日新聞 第二〇九七号 明治一一年一一月三〇日 【兼て雑報に記せし如く…】(DK170011k-0004)
第17巻 p.98-99 ページ画像

東京日日新聞  第二〇九七号 明治一一年一一月三〇日
○兼て雑報に記せし如く東京商法会議所ハ一昨廿八日午後四時より商標条例法案を商議せんが為めに其臨時会議を開きたり、勧商局より原案答弁者として出張せられたる神鞭一等属ハ番外一番の席に就き、会頭渋沢栄一君ハ其意見を述んが為めに議長の座を竹中邦香君に譲りて自から議員の席に就き、先づ各議員より原案中疑がハしき廉々を答弁者に質問して其説明を請ひ、畢て第一次会即ち法案総体の会議を開きたるに、議員福地源一郎君は最初に動議を起し、抑も商標条例と専売免許とハ恰も人間の夫婦の如く相待て益をなすものなり、故に今や我
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邦に未だ専売免許の法あらずして先づ商標条例を設くるハ寧ろ其順序を失ふと云ハざるべからず、且つ欧米諸国の商標ハ各々其商品に存し此の原案ハ即ち其法に則とるものたりと雖ども、我邦に於てハ従来商標ハ或ハ其暖簾或ハ其家号又ハ其人、その姓名等に存して其商品に存するもの尠なけれバ、今日欧米の商標条例を摸擬し来て之を我邦に行ハんとするハ蓋し実際に適せざるべく、又た此の原案の商標にハ認許と不認許の差別ありて其法頗る細煩に渉るにより、若し之を今月に実行すれバ其成績ハ啻商標保護の美意と相ひ背馳して、却て商業の便利を実際に妨害するの憂なきを保し難く、之を要するに此原案の儘にてハ何分煩苛にすぎて今日の実際に不適当なること必然なり、去りながら商標の保護ハ固より我々が今日に熱望する所なれバ、此の法案を廃棄するハ亦た我々の本意に非らず、只願くハ玆に議員中より委員を選で此の法案を簡単に修正し、主として商標の何物たるを人民に示し、且つ認許・不認許を論ぜず一般に商標を保護するの簡便条例法案を草して当局者へ建議せんのみ(右は演説の要を撮みたるものなり)と開陳せられたり、之れに続いて渋沢栄一・益田孝その他数君の発議あり各々言論の少差ありたれども要するに第一の動議を賛成するに外ならざるに付き、会頭ハ第一の動議に同意の議員に起立を命じたるに、満場総起立にて遂に其法案を修正することに一決し、即ち議事規則に拠て委員五人を衆議員及び書記官中より投票を以て選挙せしめたるに、選票の多数ハ福地源一郎(三十)益田孝(二十七)梅浦精一(二十五)渋沢栄一(二十二)成島柳北(十三)なりしに付き此の五人を修正委員と定めて解散せられたり、時に午後十一時過ぎなりき。


東京商法会議所要件録 第三号・第一―七丁 明治一二年四月一日刊(DK170011k-0005)
第17巻 p.99-101 ページ画像

東京商法会議所要件録  第三号・第一―七丁 明治一二年四月一日刊
  第五臨時会 明治十二年二月二十七日午後第五時四十分開場
    議員出席スル者 三十三名
    同 欠席スル者 二十三名
会頭 ○渋沢栄一曰、本会ヲ催シタル所以ハ昨年十一月二十八日ノ臨時会ニ於テ議定シタル商標条例草按ノ回陳案及ヒ曩ニ分布シタル東京府勧業課ノ下問ニ係ル各商賈問屋仲買小売ノ売徳分割ノ二項ニ在リ、而シテ先ツ其売徳分割ノ体ヲ議スベシ ○中略
会頭ハ右畢リテ商標条例回陳案ノ議ニ臨マントスル時、自ラ其立按委員ニシテ之ガ説明ヲ要スルヲ以テ十一番議員ノ己ニ代リテ会頭タラン事ヲ乞ヒ、番外一番席ニ就キ、其立按ノ順序ヲ説明シテ曰ク、抑モ去年十一月二十八日ノ臨時会ニ於テ旧勧商局ヨリ下付セラレタル商標条例原案ノ実際ニ適切ナラザルモノアルヲ以テ之ヲ脩正シテ其筋ニ復申スルニ議決シ、之ガ脩正立案委員ヲ選定セシヨリ余輩委員ハ日ナラズシテ小会議ヲ開キ、以テ立案ニ着手シ、爾来再々ノ議ヲ重ネテ以テ此ノ回陳案ヲ草スルニ決セリ、然ルニ今其紙数ヲ閲スレバ僅ニ二三葉ニ過ギザルガ故ニ、或ハ緩漫等閑ノ責ナキヲ保スベカラズト雖トモ、其日子ヲ費ヤシタル所以ノモノハ抑モ亦故アリ、当初委員ハ該会決議ノ趣旨ニ拠リ単簡ノ条例草案ヲ製シタルニ、旧勧商局ハ予テ此条例案ニ付テハ厚ク此ニ注念セラル処アリテ本局ノ意見ト委員等トノ思考トヲ
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シテ万一モ齟齬セザラン事ヲ要シ、之ガ立案ノ内閲ヲ要望セラレタルヲ以テ委員ハ速ニ其需メニ応シタリシニ、其草案中ノ字句又条款ノ要旨ニ就テ或ハ実際ニ履行シ難カラントノ諮詢アリテ為メニ再三ノ応答ヲ費ヤシタリト雖トモ終ニ妥議ニ至ラザリキ、是ニ於テ委員等ハ更ニ其考按ヲ翻シテ前ニ草定セシ草案ヲ停止シ、只当会場ニ於テ議決セシ意見ノ要点ヲ復申スルヲ以テ主トスベキモノトシテ再ビ此回陳按ヲ草スルニ至レリ、依テ各議員ニ於テ之ヲ可トセバ以テ直チニ主任局ヘ復申セント欲ス、而シテ小生ハ衆委員ニ代ツテ之ガ説明者タルヲ以テ此草按中疑問アラバ之ヲ質セラレン事ヲ望ム
会頭曰ク、番外一番ノ陳述ノ如ク此委員ハ初メ条例ノ草按ヲ作リ、後チ更ニ其考按ヲ翻シテ此回陳按ヲ製シタルモノニシテ大ニ日子ヲ費セリ、而シテ其字句ノ如キハ衆員ノ可否スル所ニ在リ、故ニ先ツ其総体ニ就キ之ヲ質問セラルベシ
二十二番(渋沢喜作)番外一番ノ説明ニ依リ詳ニ此立按順序ノ趣意ヲ了解セリ、而シテ小生ハ反覆之ヲ熟読シタルニ更ニ差支ノ廉ナキヲ以テ直チニ之ヲ賛成ス
会頭ハ已ニ其ノ不同意ヲ表スル者ナキヲ以テ之ヲ可決シ、更ニ第二次会ヲ開クベキ旨ヲ述ブ
三十九番(青木禎吉)符号ハ物品ニ属シ目標ハ商店ニ属スルモノナルガ故ニ、目標即チ符号ノ六字ヲ以テ其店ノ目標若クハ其品ノ符号ト脩正センコトヲ欲ス
番外一番 目標符号ハ共ニ其店若クハ物品ノ目印ニシテ即チ・男山・住友ノ如キヲ指称ス、是レ偏ニ本邦ニ於テ確乎タル商標ノ名詞ナキヲ以テ草按者ハ特ニ目標即符号ノ字ヲ下シテ文意ヲ丁寧ナラシメタル而已(於是三十九番ヨリ数回ノ討議アリタレトモ其要点ハ前記ノ如ク中間ニ若クハノ一字ヲ挿ミ之ヲ区別スルノ意ニ外ナラズ且此間符号ヲ符牒ト誤聴シタルニ付討議甚ダ錯雑ニ渉ル事アリト云トモ其要点ニ関セザルモノハ之ヲ略ス)
三十九番ノ脩正発議ヨリ甲乙是非スル所アリシモ、其討議已ニ尽キタルヲ以テ会頭ハ此脩正説ノ同意者ヲシテ起立セシメタルニ其少数ニ因リ之ヲ原按ニ決ス
四十六番(子安峻)小生ハ不幸ニシテ事故アルニ会シ、昨年十一月二十八日ノ臨時会ニ出席セザルヲ以テ其決議ノ趣旨並ニ委員諸君ガ此草案ヲ定立セラレタル順序等ヲ了知セズ、而レトモ今ニシテ其質問ヲ乞フハ甚前後スルヲ免カレザレトモ、幸ニ其責ヲ恕セラルヽヲ得バ此草案中原案第一条ノ如ク、認許不認許ヲ以テ専用権云々ノ意並ニ其認許ナクシテ犯罪人ヲ罰スルノ方法ハ之ヲ如何スベキヤ、一応其説明アラン事ヲ乞フ
番外一番ハ四十六番ノ質問ニ応シ昨年十一月ノ臨時会ニ於テ決議シタル趣旨、爾来委員ガ此草案ヲ設クルニ鋭意尽力シテ再三ノ会議ヲ開キ漸ク此回陳案ヲ草定シタル順序等ヲ挙テ丁寧反復之ヲ説明セリ
三十九番(青木禎吉)此草案中善良ノ慣習ヲ湮没スル云々ハ如何ナル意ゾ敢テ其解ヲ乞フ
番外一番 勧商局下附ノ原案ニ拠レバ商標ハ使用兼用及ヒ転用等アレ
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トモ挙ナ物品ニ属スルヲ以テ遂ニ本邦固有ノ家ニ属スル目標ヲ使用スルヲ得ザラシムルニ至ル、故ニ善良ノ慣習ヲ湮没スト云フナリ
六番(大倉喜八郎)此草案ノ末文ニ単簡ノ字ヲ用ユレトモ或ハ官ニ簡ニシテ人民ニ煩ナル等ノ恐アリ、故ニ其期限ヲ定メ例ヘハ精密ナル商標条例ハ来ル明治十五年ノ後ヲ以テ発行スベキモノトシテ、夫マデハ人民ヲシテ単ニ商標ノ何物タルヤヲ心得シムル位ノモノヲ発行スルヲ可トスト云カ如キノ意ヲ添ヘテ上申セン事ヲ望ム
番外一番 六番議員ハ深ク単簡ノ文字ニ着念スルモノヽ如シト雖トモ此回陳案ニ云フ処ノ単簡ノ字ハ旧勧商局ヨリ下付セラレタル原案ヲ根拠トシテ且其条款中ニ就テ整密ニ失スルノ項ヲモ論弁シタレバ其単簡ノ字ニ程度ナシト云可ラズ、而シテ其明治十五年後云々ノ如キハ前会ニ於テ決議セシ要旨ニアラザルヲ以テ今此ニ論ズベキニ非ズ
於是会頭ハ本案ヲ可トスル者ヲシテ起立セシメタルニ全会起立スルヲ以テ之ヲ其主任局ヘ上申スルニ決ス


東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 二(DK170011k-0006)
第17巻 p.101-102 ページ画像

東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 二
                   (東京商工会議所所蔵)
昨十一第十一月当商法会議所ヘ御下問相成候商標条例原按ニ付、去月二十七日を以て相催候臨時会ニ於て該場之所見、別帋之通り議決致候間此段上申仕候也
                東京商法会議所会頭
  明治十二年三月四日
                      渋沢栄一
  商務局長
    大蔵大書記官 河瀬秀治殿
(別紙)
 今般商標条例御頒布可相成ニ付其原案御草定ノ上昨十一年十一月当商法会議所ヘ御下問有之、爾来数回ノ会議ヲ開キ再々商議仕候処該場ノ所見ハ左ノ通決議仕候
 原案ノ御趣意ニ拠レハ其方法ハ現ニ欧米ニ行ハルヽ成則ニ準拠セラレ候様被存候得共、目下我邦ノ商估ハ未タ商標ノ何者タルヲ詳知スル者稀少ニシテ而シテ一旦其成法御施設ニ候ハヽ各自競フテ其権利ヲ要望シ、詰リ其習慣ハ無之シテ却テ専用ノ企欲ヲ増シ官民共ニ其煩累ニ堪兼候様相成可申候
 商標ノ理由ヲ弁知候商估ハ素ヨリ稀少ニ可有之候得共、現ニ本邦ニ於ル各商人間ニ相用候目標即チ其店ノ符号ハ稍商標ノ効用ヲ為シ居候処、原案ノ趣意ニ拠レハ其物品ニ就テ商標専用ヲ為サシムル方法ニ付右店々ノ目標等ハ自カラ其要旨ヲ異ニシ、殊ニ原案ノ方法ニ拠レハ一商標ヲ以テ他品ニ相用候ハ兼用ノ願済ヲ要シ候等ノ手数有之候ヨリ、終ニ従来所用ノ目標即チ符号等ヲ以テ商標ノ用ヲ成サシメタル善良ノ慣習ヲ湮没セシムル様相成可申候
 凡ソ物其完全ノ点ニ達スルハ自カラ順序有之筈ニ候処、前陳ノ如ク未タ商標ノ効用モ熟知セサルノ時ニ於テ直チニ整備ノ方法御頒布ニ相成候ハ第一右ノ順序ニ適シ申間敷候
 原案第一条ノ如ク認許不認許ヲ以テ専用権ノ有無ヲ御判別被成候ハ
 - 第17巻 p.102 -ページ画像 
法理ニ於テハ相当ノ御処置ト存候得共、既ニ其願人多キ事ト相考候上ハ、縦令認許セシ分ヲシテ其要略ヲ世間ニ縦覧セシムル御手段有之候共、能ク之ヲ記臆スル者ハ少クシテ、類似ノ商標頻リニ出願可有之ニ付、詰リ共煩ニ堪兼候様成行可申ト存候、既ニ右様ノ景状ニ可相成ト想像仕候ニ付テハ、原案第七条ノ第三款ニ有之候認許商標ニ類似ノ商標ヲ同種ノ物品ニ用フル者ノ罰則ニ於テハ、実ニ故造ノ意念無之シテ此科罪ヲ犯シ、意外ノ不幸ヲ引起シ候者夥多可有之ト存候
 右数条ノ障害ハ原案ノ御趣意ニ就テ条理上ヨリ之ヲ論スレハ一言下ニ其不便ナキ事ヲ弁明シ得ベキ哉ニ候得共、凡ソ法則ノ以テ実際ニ行ハルヽハ都テ言論ニテ講究候如ク容易ニ行届候事ハ無之ニ付テハ願クハ法理ノ体面ニ拘着セス厚ク実況ノ如何ニ御注意有之、秩序ヲ追テ其整備ノ域ニ至ル事ヲ御勉メ相成目下簡単ノ方法ヲ以テ只商標ノ効ヲシテ各商人ノ脳裡ニ醸成セシムヘキ御施設有之度候、依テ原案ヲ返呈シテ此段回陳仕候也


東京商法会議所要件録 第一〇号・第一三―一四丁 明治一三年一月一九日刊(DK170011k-0007)
第17巻 p.102 ページ画像

東京商法会議所要件録  第一〇号・第一三―一四丁 明治一三年一月一九日刊
 ○参考ノ部 東京商法会議所年報
    官衙御下問ノ諸項
○上略
商標条例草按ニ就キ勧商局ノ御下問
 昨明治十一年十一月十二日内務省勧商局長ヨリ同局ニ於テ調査セラレタル商標条例草按ヲ下付セラレ実際施行ノ便否等ニ就キ当会ノ意見ヲ諮詢セラル、是ニ於テ同月二十八日ヲ以テ為メニ臨時集会ヲ開キ該条例ノ利害得失等ヲ審按討議シタルニ遂ニ該草按ノ今日ニ適切ナラザルモノアルヲ以テ更ニ其意見ヲ回陳スルニ決シ、為メニ五名ノ立按委員ヲ撰挙セリ、而シテ爾来該委員ハ数次会議ヲ重ネ其回陳按ヲ草シ二月廿七日ノ臨時集会ニ於テ衆議可決シタルニ依リ三月四日ヲ以テ之ヲ同局ニ回陳セリ



〔参考〕中外物価新報 第一七四号 明治一二年三月一日 東京商況(DK170011k-0008)
第17巻 p.102-104 ページ画像

中外物価新報  第一七四号 明治一二第三月一日
    東京商況
一昨廿七日夜ハ東京商法会議所の臨時会議にて例刻より議員各席に着き、今般東京府より下問ありし四十八種商業の問屋仲買小売売徳取調の件にして其調査ハ各議員の分担する所となれり、次ハ昨年十一月中旧勧商局より下問ありし商標条例の件にして、会頭(渋沢栄一君)ハ其調査員なるを以て会頭席を十一番(福地源一郎君)に代らしめ自ら番外一番の席に着て下附の原案返呈の回陳書を草したる旨趣を演べ、議員中或ハ脩正の説もありたれど結局草案を可決し、次に卅一番(渋沢栄一君)ハ仲間組合を起すことを建議し、各議員或ハ之を賛成し、或ハ之を弁難し尚ほ後会に於て詳議すべしと望む者多きを以て後会に譲ると決し議会を閉す時に午後十時五十分なりき、詳細ハ不日発行する商法会議所要件録に就て諒知あらんことを乞ふ
吾輩ハ商標条例下問の時、即ち明治十一年十一月卅日の紙上に於て東
 - 第17巻 p.103 -ページ画像 
京商法会議所議員諸君ハ能く政府の望に副ひ吾輩商估の冀望に任すべきを信じ、委員の調査成るの日を待て再び報道する所あらんと約せしゆへ、今左に回陳書の全文を掲出し聊か卑見を陳せんと欲す
○中略
吾輩ハ再三之を熟読し調査委員の説明を聴き、衆議の此回陳を可決するを観て甞て議員諸君に冀望せし所に負かざるを悦バずんバあらざなり《(る脱)》、今其意を敷衍せんに商標保護のなかるべからざるハ素より論を竢たずと雖も、従来の慣習を一時に破却し遽かに文明国の成法に準拠するハ所謂楷梯を用ずして屋根に登らんとすると同しく蹉跌なきを保すべけんや、寧ろ其法ハ完美ならざるも従来慣用の目標即ち符号を以て商標の効を為し来りたる因習を斟酌し、認許・不認許等の別なく広く保護を与ふべしと謂ふに在り、現に吾輩の聞く所に拠れバ文明の巨擘と自ら誇り人も許るす英国の如きも、此法の完備せしハ誠に近年の事にしてなを実際或ハ行れざる所ありと、況や我が国の如き幼稚の人民を規するに其成法を用ひんとするに於てをや、論者或ハ云ん、認許・不認許の別なく広く保護せんとするハ甚だ邈然たる事なり如何にして之を為すやと対て曰く、若し吾輩をして其法を設けしめバ、只一言にして足らん、其自己従来の商標を他人に犯され為めに損害を蒙りしものハ其損償の訴へを為を得へしと云ふに外ならざるなり、而して其訴への起るに当らバ政府ハ双方の曲線を糺し曲者をして直者の損害を償ハしむべし、論者又云ハん、如此なれバ簡易にして便宜なるか如しと雖も、若し曲者巧みに言を設け、全く自己所有の商標なりと言ふ時ハ如何と、曰く、其商標所用の年月長短を以て判せんのみ、縦令曲者其所用の年月を以て直者の先に在りと云ふも双方取引先きの帳簿を撿せバ容易に其実否を判明し得へし、論者又云ハん曲者を判明するハ既に命を了せり、然りと雖も亦一の弊害なき能ハず例ヘバ東京に甲某なるもの三十年来用ひ来りし商標の頗る世上の信憑を得たるものあり、亦長崎に乙某なるもの五十年来同じ商標を用ふるものあり、其商売ハ甚だ僅少にして世人も陸々知らざる程なりとせん、然るに乙なるもの甲の信憑広きを奇貨として之に対して所用の年月を証し、若干の金を得バ自己の所用を廃し、甲に専用せしめ、若し之を肯ぜざれバ官に訴へて其所用を換へしめんとせバ甲ハ固より故造にあらざるも之を換るか或ハ金を与へて商標を買取らざるを得ず、奈何して之を防がんやと、是れ一理なきにあらずと雖も敢て顧慮を要せざるなり、如何となれば如此ハ絶へて無くして稀に有るものにして、もし之れあるも買ふ者ハ買ふに任せ、換るものハ換るに任せんのみ、畢竟皆な得失を計算して買ふ者ハ換るより得あるを以て金を出し、換るものハ金を出すより換る方益なれバなり、且商標なるものハ一旦之を換るときハ前きの信憑を再ひ得べからずと云ふにあらず、畢竟信憑の盛衰ハ商標の模様にあらずして物品の善悪正邪にあるものなれバ、仮令商標を換るも益々物品の善良に注意せバ信憑を得ざらんと欲するも世人ハ忽ち之を信憑するや必せり、故に如此き事ハ敢て顧慮を要せざるなり、或ハ又吾輩の説を駁して結局商標の保護を以て要用なりとせバ十分完全なるものに由て制定すべく、何ぞ故らに不完全なるものを施行せんやと、是れ吾
 - 第17巻 p.104 -ページ画像 
輩の甚だ取らざる所なり、抑商標の保護なるものハ則ち商売の保護なり、苟くも商売の保護を為さんと欲して遽かに従来の慣習を破り却て商估をして煩累に堪へさらしむるに至らバ保護の主意安にかある、我国維新以来開化を競ふの熱心より百事の変革往々此論者の言を用ひ、実際に背馳して軽進せしもの尠からず、而して其成跡を視て今日に至り大に悔悟するものあるにあらずや、凡そ保護なるものハ可成的其事業を掣肘せさるを要す、保護ハ主意にして認許・不認許等ハ、其方法即ち枝葉なり、枝葉の如きハ人智の開進時熱の遷移に随て変更し、漸を以て完全を期すべきなり、何ぞ初めより高上の論理を要せんや、古人言ハずや高きに登るハ必ず卑きよりすと