デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
1款 東京商法会議所
■綱文

第17巻 p.214-237(DK170023k) ページ画像

明治12年11月22日(1879年)

是日当会議所、議員平野富二ノ建案ニ基キ、西洋形船舶船員試験課程ヲ改正サレタキ旨内務卿伊藤博文ニ建議ス。栄一会頭トシテ之ニ与ル。


■資料

東京商法会議所要件録 第八号・第五―九丁 明治一二年九二二日刊(DK170023k-0001)
第17巻 p.214-216 ページ画像

東京商法会議所要件録  第八号・第五―九丁 明治一二年九月二二日刊
  第十定式集会 明治十二年九月九日午後六時三十分開場
    議員出席スル者 ○二十一名
    西洋形商船々長免状ノ儀ニ付建議
 四拾九番(平野富二)ハ前議ノ了ルヲ俟チ本件ニ付キ議場ニ建言セント欲スル旨ヲ述ベ、会頭 ○渋沢栄一ノ許諾ヲ得其概要ヲ陳述セリ、則チ明治九年六月太政官第八十二号ノ布告ニ拠レバ明治十年一月一日以降ハ西洋形一百噸以上ノ船舶ニシテ船長ノ試験免状ヲ受領セザルモノハ航海ヲ停止スト、然ルニ政府ハ此規則ノ未ダ実際ニ適応セザルヲ洞知セラルヽノ故歟、終ニ本年八月十六日ニ至ル迄之ヲ延期シ更ニ同日ヲ以テ該規則実施ノ期ト定メラレタリ、然リト雖トモ、此規則ノ果シテ実行セラルヽ事アラバ我沿海運輸上ニ異常ノ妨碍ヲ生スヘキヲ憂慮シ、窃カニ其延期ヲ冀望シ、又ハ公然歎願シタルモノアルモ政府ハ之ニ拘ラズ依然其規則ヲ変更セザリシヲ以テ、運輸ノ道頓ニ壅塞シ大ニ物貨流通ノ便ヲ失シタルヨリ、荷主及問屋等ニシテ苟モ其営業ノ船舶ニ関スルモノハ殆ンド名状スベカラザルノ疾苦ヲ蒙リ、恕嗟《(マヽ)》ノ声ヲ発セザルモノナキニ至レリ、余大ニ之ヲ憂ヒ窃ニ当局者ニ向テ痛論スル事玆ニ数次、今又不肖ヲ顧ミズ敢テ卑見ヲ陳ジテ以テ諸君ノ可否ヲ仰ガント欲スト(本件ノ詳細ハ参考部ニ付ス)
十五番(益田孝)曰ク、今四十九番ノ処説切ニ実事ニ適スルヲ以テ更ニ喋々ノ陳説ヲ要セザルモノヽ如シト雖トモ、聊カ余ガ実撿スル所ニ付一二ノ所見ヲ陳ゼント欲ス、夫レ此海員試験ノ事タル単ニ法律ノ一方ヨリ之ヲ観スレバ極メテ客易ナルガ如シト雖トモ、其実際ニ至テハ甚ダ困難ナルモノアリ、其困難ノ実況ハ船舶ヲ所有スルモノ皆之ヲ熟知セン、然ルニ駅逓局ノ云ハルヽ処ヲ以テセバ今回試験ノ如キハ三則中其一則ヲ熟知スルモノニハ此免状ヲ付与セリ、而シテ已ニ今日ニ至ル迄之ヲ付与スル者七拾余名ニ及ベリト、然レトモ此七十余名ノモノニシテ未ダ七十艘ノ船ヲ運転スルヲ聞カザルナリ、故ニ三菱会社ノ如キモ余輩ガ曾テ想像ノ如クナラズシテ海員ニ乏シ
 - 第17巻 p.215 -ページ画像 
キヲ以テ現ニ其船舶ヲ運転スル事克ハズ之ヲ港湾ニ繋留スルモノアリ、是レ其試験ノ厳密ナルヲ以テ仮令数十年来航海ニ実験アルモノト雖トモ適試験官ノ威厳ニ畏縮シ其答ヲ失スル事アレバ遂ニ是ヲ得ル事克ハズシテ止ム、又西洋人ニシテ試験ヲ受ル者十有余人ニ及ベリト雖トモ及第スルモノ僅ニ三名ニ過キズ、夫レ如此今日ニ在テ海員ニ乏シキヲ以テ已ニ免状ヲ得タル者ハ傲慢不遜徒ラニ高給ヲ貪リ偶々之ヲ雇入スルモ遂ニ之ヲ制馭スル事克ハザルノ弊ヲ生セン事ヲ恐ル、又現今ニ於テハ試験官ニ乏シキヲ以テ其試験ヲ要スルモノハ東京ニ来リ、又大坂ニ馳スルモ会々試験官ノ出張セザルニ遇ヘバ空ク船ヲ港湾ニ繋留セザルヲ得ズ、既ニ此試験官ニ乏シク又海員ノ要求ニ応ズルニ足ルモノ少キノ時ニ於テ強テ此法令ヲ設クルハ実際ニ不適当ト云ハザルヲ得ズ、然ルニ今日ニ於テハ水夫輩ニシテ巧ニ其履歴ヲ陳ジ、倖ニ其答宜キヲ得レバ免状ヲ付与セラルヽモノアルガ如シ、已ニ余ガ所有ノ船舶ニ属スル海員ニシテ頃日其試験ヲ受クル者二名アリ、其一名ハ学業経験並ニ一名ニ優レルニ何ソ図ラン適其答ヲ失スルヲ以テ遂ニ及第スルヲ得ザリシ、然ルニ他ノ一名ハ却テ其免状ヲ付与セラレタリ、然レトモ余ガ要スル処ノモノハ其人ニ非ズシテ其免状ニ在リ、故ニ今日ニ於テハ実業ト経験トノ二者ヲ買ハズシテ一ニ免状ヲ雇ハントスル弊ヲ生ゼリ、是レ政府ガ中途ニシテ其試験法ヲ寛ナラシムルニ根ズル弊害ト云ハザルヲ得ンヤ、故ニ当会議所ハ進ンデ四十九番ノ建議ヲ賛正シ以テ前陳ノ弊害ヲ矯正セン事ヲ望ム
十一番(福地源一郎)四十九番ノ発議及ビ十五番ノ説明両ナガラ至当ノ言ナリト云フベシ、該試験免状ノ事タルヤ実ニ世間ノ喋々スル所ニシテ恕嗟《(マヽ)》ノ声尤甚シ、曾テ惟ラク、今回試験ノ挙アルモ三菱会社ノ如キハ船長ニ乏シカラザルベシト、然ルニ聞クガ如クンバ該社ニ於テモ其人ニ乏シク、空ク船舶ヲ繋留スルモノアリト、抑政府ガ此規則ヲ設ケテ以テ海員ヲ試験スル所以ノモノハ西洋形船舶ノ本邦ニ増加セン事ヲ企図スルニ在リ、然ルニ今日ノ如ク船長其人ニ乏シク空ク有益ノ船舶ヲシテ港湾ニ繋留シテ無用ニ属セシムルニ於テハ終ニ西洋船舶ヲシテ減少シ日本形ノ小船ヲ増加スルノ傾向アルヲ保スベケンヤ、試ニ今日ノ試験規則ヲ以テ之ヲ医師ノ試験ニ譬ヘンニ政府専ラ西洋医家ヲ増加セント欲シテ力メテ西洋医ノ試験ヲナシ、却テ漢方家ヲシテ益多カラシムルノ結果ヲ見ルト一般ナリ、其実況已ニ如此シ、豈当会議所ニシテ之ヲ黙黙ニ付スベケンヤ、然レトモ本員ハ船舶航海等ノ事ヲ熟知セザルヲ以テ運輸船舶委員諸君ニ於テ実際其利害ノアル処ヲ考ヘ得失ノ係ル処ヲ究メ、然シテ之ガ建白案ヲ草シ、更ニ各員ノ詳議ヲ経テ之ヲ其筋ヘ上申セラレン事ヲ望ム
於是会頭 ○渋沢栄一ハ四十九番建議ノ趣旨並ニ十五番賛成説ノ要領其他十一番譬喩ノ其当ヲ得タル旨ヲ概陳シ、而シテ此建白案ヲ当会議ニ於テ採用スルヲ可トスル者ニ起立ヲ命ジタルニ総員起立スルニ依リ之ヲ可決シ、而シテ既ニ之ヲ其筋ヘ建白スルニ決セバ其草案調査等ノ事タル拾一番所説ノ如ク、本件ノ実際ヲ熟知セザレバ能ク事情ヲ詳悉シ得ザルガ故ニ、運輸船舶委員並ニ十五番議員(益田孝)ヲ選挙シ、此調査
 - 第17巻 p.216 -ページ画像 
ヲ任スルニ決シ、次ニ会頭ハ四十九番ヲシテ其建白案ヲ朗読セシメタルニ衆皆之ヲ領スルニ依リ、尚ホ会頭ハ議場ニ報告ヲ要スル事アルモ既ニ例刻ニ過グルヲ以テ之ヲ後会ニ譲ルベキ旨ヲ述ベ散会ス、時ニ九時十五分


東京商法会議所要件録 第八号・第一四―一八丁 明治一二年九月二二日刊(DK170023k-0002)
第17巻 p.216-217 ページ画像

東京商法会議所要件録  第八号・第一四―一八丁 明治一二年九月二二日刊
 ○参考部
    西洋形商船船長免状之儀ニ付建議書
予方今商法会議所船舶委員ノ列ニ加ハルヲ以テ、自己ノ不肖ヲ不顧敢テ一言ヲ呈シ各議員ノ高評ヲ得ント欲スルアリ、則本年二月内務省第二号ノ公布ニヨレバ明治十二年第二月十六日以往西洋形壱百噸以上ノ船舶ニシテ船長ノ試験免状ヲ受領セザル者ハ航海ヲ停止スル云々是レナリ、抑モ我国ハ海運ノ道甚ダ不便ニシテ三菱・郵便両会社ノ滊船及ビ少数ノ帆走船アルノミナリシニ、明治十年西南ニ事アルノ際該船舶ハ概ネ皆大政府ノ御用船トナリシヨリ運輸ノ道頓ニ壅塞シ、大ニ貨物ノ渋滞ヲ生シ、随テ又物価ノ騰貴ヲ来タシ、内国商売ノ景況名状スベカラザルニ至リ、殊ニ荷主及ヒ問屋等ハ殆ンド困難ニ陥リ、不得止和船ノ一ニ依頼シテ貨物ノ運搬ヲナスト雖トモ、其疾駛及ヒ利便遥カニ洋舶ニ劣ルヲ以テ遂ニ商況ヲ振作スルヲ不得、為メニ大ニ発覚スル所アツテ京坂ノ荷主及ヒ問屋等同心協力シテ明治十年五月ヨリ盛ンニ欧米摸形ノ船舶ヲ製造シ、或ハ外国船ヲ購求シ以テ其回航ヲ始メシヨリ弥ヨ西洋形船舶ノ便利ナルヲ知覚シ、始テ船長等モ航海ノ傍ラ外舶運用ノ術ヲ学ブニ至レリ、然リト雖トモ未ダ三年ノ星霜ヲ経ズ、且積年ノ習俗ニ因リ概ネ皆無学ニシテ甚シキニ至リテハ筆ヲ採リ自ラ名ヲ記シ能ハザル程ノ輩アリ、故ニ今日ニシテ制規ノ免状ヲ得ントスルモ到底能クシ得ベカラザルハ明ニシテ、殊ニ此輩ヲシテ試験場ニ臨マシムルヤ固ヨリ言語応答ニ慣レザルヲ以テ司験官ノ威厳ニ威縮シ、平常暗熟セシ事マデモ答ヘ得ザルニ至ラン、然リト雖ドモ其人物タル数年実地ノ練磨アルヲ以テ船舶ヲ進退シ、帆綱等ヲ使用スルハ毫モ暗熟セザルモノナク、仮令和洋船舶ノ製異ナリト雖ドモ到底海上ヲ走馳スルノ船舶ニ外ナラズ、素ヨリ霄壌ノ差異アルニ非ズ、況ヤ一層利便ナル洋舶ヲ進退スルモ更ニ難キニアラズ、又況ヤ敢テ外国ニ航スルニアラズ唯日本内地ヲ航行スルニ止ルヲ以テ是迄幾多ノ年月来往実ニ其数ヲ知ラズ、之ヲ机上ノ学術ヲ以テ自ラ許スノ航士ニ比スレバ其航測ノ学術及規律ノ論弁等ハ素ヨリ及バズト雖ドモ、暗記ノ航路ヲ回航シ風浪ヲ凌ギ運航ヲ経歴セシ実学ハ勝ルトモ敢テ譲ラザル所アリ、微聞スル所ニヨレバ曩日外国人ノ試験ヲ乞フ者十有三人アリシモ及第セシモノハ僅少三四名ニ過キズト、然レドモ其落第者ノ中又前述ノ如ク必ラズ実地研究者無シトモ保証シ難カラン、聞ク所ニヨレバ方今開明ヲ以テ誇ルノ英国此試験ノ施行ハ今ヲ逝ル十七八年前ニシテ試験料ハ英貨一二「ポンド」ニ過ギズ、殊ニ内地航行ノ船舶ハ別段ノ試験アル事ナシト英国尚ホ如此、況ヤ航海幼稚ノ我国ニ於テヲヤ、必ラズ実際適応ノ方法ヲ設ケザルベカラズ、若シ我国ノ船主ヲシテ云ハシメバ本則免状所有ノ船長ニ船舶ヲ委托スルヨリハ、寧ロ無学ト雖ドモ積年ノ信任ヲ以
 - 第17巻 p.217 -ページ画像 
テ使用シ来ル者ニ委托スルニ不如ト云ハン、如何トナレバ其本則免状ヲ所有スル船長ヲ傭得ントセバ勢ヒ旧来船長ノ給料ト異ナリ幾層ノ高料ヲ給与セザルヲ不得、然ル時ハ忽チ営業上ノ画筭ヲ失フヲ以テナリ強テ之ヲ実施セント欲セバ、纔カニ洋船ノ便利ヲ知覚セシ船主モ遂ニ西洋形船舶ヲ製造セント企望スル念ヲ絶シ、再ヒ海運ノ道退縮シ、不得止貨物ノ運輸ヲ外国船ニ依頼スルニ至ラバ、啻ニ眼前ノ国益ヲ失フノミナラズ到底我国ノ海運ハ皇張ノ期ナカルベシ、因玆当分ノ間、数年実地航海ヲ研究シ是迄回航ノ際聊カ過誤ナキヲ認ムル者ハ左ノ試験課程ノミヲ試験シ、五百噸以内ノ船舶ヲ以テ内地運行スルハ応分ノ免状ヲ附与アラン事ヲ乞フ、尚細密ニ陳述セント欲スルノ事情アレドモ三井物産会社ノ物価表ニ其利害得失ヲ論シ、大概其事情ヲ尽シアルヲ以テ敢テ贅セス、故ニ該表ヲ添呈シ、各議員ノ高覧ヲ乞フ、多数ノ賛成アラバ猶大坂府下及ヒ兵庫県等モ船主尠カラザルヲ以テ該地会議所ヘモ照会ノ上内務卿ヘ建言アラン事ヲ冀望ス 敬白
  明治十二年第九月九日
                      平野富二
  東京商法会議所会頭
    渋沢栄一殿
    試験課程
一内国運用船舶船長及ヒ運転手等ハ西洋形或ハ和船ヲ論セス五年以上海上ニ在テ一ケ年以上実地其職ヲ司リシ確実ナル履歴アルモノ
一港内出入ノ心得
一船舶運用法
一海上衝突予防法
一航海地図応用
一水測器ノ用法
一羅盤ノ用法
一颶風ノ心得
一航海日誌
一定航海通路中灯台及ヒ浮標ノ心得
一船内ヘ荷物積入制限法
   以上
右件々検官ノ究問ノ際答弁セシメ試験合格ノモノヘ免状附与セシムヘキ事
   ○右文中「則本年二月内務省第二号ノ公布ニヨレバ明治十二年第二月十六日以往」云々トアルハ、「本年二月太政官第九号布告ニヨレバ明治十二年第八月十六日」ノ誤ト推定セラル。蓋シ明治十二年内務省第二号ハ全ク別種ノ内容ヲモツ布告ニシテ(法令全書)且ツ後掲ノ商法会議所ノ建議書ニモ「……西洋形商船々長運転手機関手試験規則ハ一時延期被仰出、更ニ本年二月第九号御布告ヲ以テ西洋形商船海員雇入雇止規則ト共ニ八月十六日ヨリ実施候旨被仰出候」トアレバナリ。


東京商法会議所要件録 第九号・第一―五丁 明治一二年一二月一七日刊(DK170023k-0003)
第17巻 p.217-219 ページ画像

東京商法会議所要件録  第九号・第一―五丁 明治一二年一二月一七日刊
  第八臨時会 明治十二年十一月廿日午後六時廿分開場
    議員出席スル者 ○十八名
 - 第17巻 p.218 -ページ画像 
    同病気旅行又事故アルニ因リ欠席スル者三拾八名
会頭(渋沢栄一)ハ今会議事ニ付スベキ二項ノ件、即チ前会ニ於テ運輸船舶委員平野富二氏ノ建議ニ出デ全会ノ所決ヲ得タル海員試験課程ニ改正ヲ要スル建白按並ニ九月十八日ヲ以テ東京府知事ヨリ下問セラレタル日本橋区魚市場分離移転ノ儀ヲ議決センガ為メ本会ヲ開キタル所以ヲ告ゲ、先ヅ前項建白按ニ就キ議事ヲ始ムル旨ヲ述ベ、書記ヲシテ之ヲ朗読セシム
朗読了リタルトキ会頭ハ更ニ各員ニ向テ曰ク、抑モ此原按ノ起原タル前陳ノ如ク平野氏ノ建議ニ出デ全会ノ賛成スル所ト為リ、而シテ十五番ハ其事ニ通暁ナルヲ以テ選ンテ之レカ立按者ト為リ、以テ此按ヲ成スニ至レリ、然ルニ船舶委員タル者ニシテ内一名ハ意見ノ協ハザルヲ以テ頭初ヨリ此議ニ与ラザリシ故ニ、専ラ之ニ従事シタルモノハ十五番及四十番(川崎正蔵)四十九番(平野富二)ノ三氏トス、就中十五番ノ如キハ立按ノ際大ニ与テ力アルヲ以テ、各員原按中質議ヲ要セラルヽモノアラバ同員ニ就テ弁明ヲ乞ハル可シト
六番(大倉喜八郎)原按ノ全体ニ就テハ敢テ間然スル所ナシト雖モ但タ各地枢要ノ地ニ試験場ヲ置カン事ヲ要スルモノニ至テハ少シク疑ナキヲ得ス、抑モ今日ノ試験場ハ何レノ地ニ在リテ如何ナル不便アリヤ、聊カ其弁明ヲ乞フ
十五番(益田孝)今日ニ至ル迄ハ東京或ハ函館ニ試験場ヲ設クル而已而シテ現況ヲ以テ之ヲ観ルニ政府ニ於テハ司験官其人ニ乏シキノ状アリ、何トナレバ今日東京ニ司験官タル者明日ハ神戸ニ行キ、又ハ函館ニ移リ、随時処ヲ転シテ受験者ノ需ニ応ス、然ルニ受験者ノ如キハ平素海上ニ在テ更ニ定居ナキヲ以テ、今越後ニ在ルモノハ試験ヲ受ケンガ為メ故ラニ東京ニ来タリ、又ハ函館ニ到ルノ不便ナシトセス、況ヤ今日ニ在テハ常時試験ヲ受クベキ地ハ独リ東京而已ナルニ於テオヤ、受験者ニ不便ヲ被ムル夫レ如此、是レ各地枢要ノ地ニ試験場ヲ設ケン事ヲ要スル所以ナリ
十一番(福地源一郎)抑モ此建白タル本員ノ賛成スル所ニシテ、此原按ニ就テハ喙ヲ容ルヽ処ナシト雖モ今之ヲ上申スルニ先チ一二ノ質問ヲ要スルモノアリ、草案試験課程中、水測器用法並ニ航海地図用法ト云フガ如キ、本員ヲ以テ之ヲ考フルニ尚ホ此試験ニ於テ難キ所アルガ如シ、此水測ト云ヒ航海地図ト云フハ如何ナルモノヲ云フカ
四十九番(平野富二)航海地図ノ如キハ英国グリレウヰツチニ於テ編製シタルモノヽ外日本ニ於テハ未タ見ルベキモノナシ、但タ醍醐氏ノ編纂シタル日本沿岸地図ナルモノアリテ今ノ試験ヲ為スハ多ク此ニ拠レリ、而シテ其用法トハ此地図ニ依テ沿岸ノ景状暗礁ノ位地等ヲ指示スルニ過キス、又水測器ト云フカ如キモ浮子ヲ以テ進行ノ遅速如何ヲ測ル事アルノミ、依テ其課程ニ於テハ敢《(ローフ)》テ難キト為ス可キノ恐ナシ
十一番(福地源一郎)四十九番ノ解説ハ今之ヲ聴領セリ、然レトモ日本ノ舟子タル古来山ニ依テ航海ノ方向ヲ定ムルモノナルガ故ニ、若シ山ヲ見失フトキハ百ノ地図アリト雖トモ決シテ其用ヲ達スル事能ハズ、依テ航海地図用法ノ一項ハ之ヲ除クヲ可トス
 - 第17巻 p.219 -ページ画像 
十五番(益田孝)此航海地図ノ一項ニ於テハ立按者ノ大ニ審議ヲ尽クシタル所ニシテ、今日ニ在テハ舟子偶マ颶風ニ遇フテ其方向ヲ失スルトキハ地図ト「セキスタント」ニ依テ稍々其進路ノ方向ヲ定ムルノ益アルヲ知ルニ至レリ、既ニ地図ノ舟子ニ欠クベカラザルヲ知ルニ於テハ其物ナカル可ラズ、是レ此一項ヲ加フル所以ナリ
四十九番(平野富二)十五番陳説ノ如ク「セキスタント」ト地図トヲ使用スルトキハ偶マ颶風ニ遇フテ其方向ヲ失スルモ進行速力ノ如何ハ得テ之ヲ測知ス可シ、殊ニ多年海上ニ在ツテ航海ニ練熟セル船頭ニ至テハ地図ノ文字ヲ読ム事能ハザルモ其形状ニ依テ場所ノ何タルヲ知ル故ニ此二項ハ之ヲ除カザルヲ要ス
十一番(福地源一郎)十五番並ニ四十九番ノ陳述ノ如クナレバ之ヲ除カザルヲ可トスト雖トモ、其用法ト云フニ至テハ其試験ニ於テ尚ホ難キ所アルガ如シ、依テ二等運転手ノ試験課程中羅針ノ用法・海上衝突予防法・水測器用法並ニ一等運転手ノ課程中航海地図用法ハ総テ大意ノ二字ヲ加ヘン事ヲ欲ス
於是四十九番ハ海上衝突予防法ニ於テ敢テ大意ト云フヲ要セザル旨ヲ述ヘタレトモ、十五番ハ欧洲ニ於テモ予防法概則ナルモノアルヲ以テ之ヲ加フルヲ可トスルニ依リ、会頭ハ起立ヲ命シタルニ全会之ニ可決ス、又十一番ハ建按ノ結文ニ於テ区々以下顧ミス迄十八字ヲ刪除シ、之ニ交フルニ依之ノ二字ヲ加ヒ、且ツ一葉ノ裏面卑見ヲ意見ト改メン事ヲ発議シ、又会頭ハ二葉ノ裏面頃日来ヲ示来ト脩正シ、又三十五番(津田仙)ハ七葉ノ裏面又不幸ニシテノ六字ヲ刪除セン事ヲ発議シタルニ各員之ニ可決ス、又四十九番(平野富二)ハ二葉ノ裏面ニ於テ免状ヲ受領スル者甚タ其人ニ乏シ云々トアレトモ今日ニ至リテハ既ニ免状ヲ得タル者其人尠カラズ、依テ少シク文字ヲ脩正シテハ如何ト発議シタルニ、会頭ハ此文中前日ノ試験ヲ受クル者ハ難ク今日ハ易キ云々ノ文字アルヲ以テ敢テ脩正セザルモ不都合ナキ旨ヲ述ヘタルニ全会之ヲ可トスルニ依リ、原按中以上ノ脩正ヲ加ヘ速ニ之ヲ上申スルニ決ス


東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 二(DK170023k-0004)
第17巻 p.219-222 ページ画像

東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 二
                   (東京商工会議所所蔵)
    西洋形五百噸以下商船々長試験課程
    御改正ヲ要スル儀ニ付建白按
明治九年六月第八拾二号・同九拾四号・同十二月第百五拾三号・同第百五拾七号ヲ以テ漸次御公布相成候西洋形商船々長・運転手・機関手試験規則ハ一時延期被仰出、更ニ本年二月第九号御布告ヲ以テ西洋形商船海員雇入雇止規則ト共ニ八月十六日ヨリ実施候旨被仰出候、右ハ本邦ノ海運ヲシテ更ニ振興セシムルノ御趣意ニ候儀ト奉存候得共、私共ノ審按考査スル所ヲ以テセバ其実際ニ於テハ却テ多少ノ障碍ヲ生ジ或ハ内国一般ノ商況ニ其影響ヲ及サンモ亦識ル可ラザル事ト顧慮仕候ニ付、玆ニ実際ノ状況ヲ提記シ併セテ二三ノ意見ヲ左ニ具陳仕候
惟ルニ本邦海運ノ開クルヤ日タル尚ホ浅ク、人心ノ船体改良ニ帰向シタルハ曩キニ西南ノ変アルニ際シ、貨物運輸ノ便一時渋滞ヲ生ジタルヨリ漸ク西洋形船舶ノ疾駛利益アルヲ知覚シタルニ是レ由ルモノニシ
 - 第17巻 p.220 -ページ画像 
テ、当時西洋形船舶ヲ造リ和船ニ交ヘテ其航行ヲ図ル者ハ、航海技術ニ長ジタル者ヲ得ルニ難キヲ以テ、不得止多年和船ニアリテ練磨セシ者或ハ外国船ニ傭使セラレテ実務ニ馴練スル者ヲ召集シ、之ニ船長ノ任ヲ授ケ使用致シ来候儀ハ、畢竟船主ノ期スル所ハ其実益ヲ得ルニ在ルヲ以テ、其雇使セル海員ハ唯其実地ニ通暁シ航海ニ練磨セル以上ハ姑ク学術ノ如何ヲ問フニ及バザルモノト自信セシニ由ル儀ニシテ、而シテ此海員ノ如キハ皆多年実地ノ研究ニ富ミ、船舶ノ進退、綱具ノ使用等悉ク之ヲ暗知致シ居候者ニ有之、然ルニ如何セン此輩ニシテ文筆応対等ニ馴レ候者ハ甚稀ナルヲ以テ、今日司験官ノ前ニ出デ其問題ニ答フルニ方テハ語次渋滞前後錯乱、常ニ熟知致シ居候事モ其答ヲ失シ落第致シ候者不尠、右ニ付今日ニ至ル迄免状ヲ受領致シ候者甚其人ニ乏シク、偶マ其人アルモ目下海員ニ乏シキヲ奇貨トシ高給ヲ要求致シ候ヨリ、五百噸以下ノ船主ニシテ薄資ノ者ニ至テハ之ヲ傭入スル能ハズ、仮令ヒ之ヲ傭入スルモ得失ノ相償ハザルヨリ遂ニ其船舶ヲ港湾ニ繋駐スル者有之趣ニ候、現状斯ノ如キヲ以テ政府ニ於テモ御洞察セラルヽ所アルカ爾来海員試験上ニ於テハ大ニ寛恕ヲ与ヘラレ候趣、果シテ然バ政府ガ実業者ノ困難ニ着意アラセラルヽノ一点ニ至テハ私共窃ニ感喜ノ至ニ御座候得共、退テ其実際上ヲ顧レバ又大ニ憂慮ニ堪ヘザルモノ有之候、蓋シ政府ガ寛恕法ヲ海員試験ニ行ハセラルヽハ明治九年十二月第百五十三号ノ追加布告ニ拠リ司験官ノ見込ヲ以テ其職ニ適フ者ト認ルトキハ仮令試験課程ニ適合ナラザルモ之ヲ及第者ト見傚シ応分ノ免状ヲ下付セラルヽニ在ルベシト雖モ、右ノ如クナルトキハ前日試験ヲ受クル者ハ及第スルニ難ク、今日ハ及第スルニ易キノ理ニシテ試験上頗ル不公平ヲ生ズルノミナラズ、今ヨリ後試験ヲ出願スル者ハ徒ラニ此寛法ニ慣レテ敢テ学術ヲ研究スル者ナキノ弊風ヲ醸生スルニ至ラン、而シテ又唯ニ此弊害ヲ生ズベキノ恐アル而已ナラズ、実際上ニ於テハ更ニ之レヨリ甚シキ不都合ヲ惹キ起サンモ亦識ル可ラズ、何ントナレバ海員ニシテ仮令免状ヲ受領スルモ、既ニ寛恕法ニ拠ルモノトセバ素ヨリ其学術ト練磨トヲ知ルニ由ナキヲ以テ、船主ハ其人ヲ要セズシテ其免状ヲ雇ヒ、而シテ船舶ノ運転ニ至テハ従来信任シタル船頭輩ニ委スルニ至ラン、若シ如此ナレバ政府ガ冀図セラルヽ処ノ御主意ハ毫モ貫徹セザルノミナラズ、却テ名実背馳ノ弊害ヲ生スベキ儀ト深ク憂慮仕候
右ノ如ク三則試験ヲ実施セラルヽヨリ前陳ノ障碍ヲ来タシ併セテ将来ノ弊害ヲ生スルニ至ラバ、第一海運御改良ノ御趣意ニ反シ大ニ国家商運ノ衰頽ヲ醸生スベキニ付、右三則試験規則中第三則ノ試験課程其他一二ノ条件ニ於テ少シク御改正被為在度奉存候ニ付、左ニ所見ヲ排記シ上聞仕候
海員試験規則一則二則ハ従来ノ如ク実施セラレ、而シテ其三則試験課程ノ儀ハ一層簡易ニ御改正アラセラレ、沿岸航行ノ西洋形船舶五百噸以下ノ船長・運転手ニシテ其試験ニ及第スル者ニハ此三則免状ヲ付与セラルヽ様致度、但シ朝鮮国等ノ如キ従来我国ノ舟子比々来往シ、且其航海聊カ内地沿岸ノ航行ニ異ナラサルモノヽ外都テ外国航海ノ船舶ニ至ツテハ其噸数五百噸以下ニテモ本免状ヲ有スル船長ヲ置クベキモ
 - 第17巻 p.221 -ページ画像 
ノト定メラレ度、右ニ付其課程ノ改正ヲ要スルモノ概略左ノ如シ
  二等運転手ノ受験人ハ年齢二十歳ニ満チ、五ケ年以上海上ニ在ツテ、内少クモ壱ケ年間西洋形商船ニ乗リ込ミ運転ノ職ニ従事シ、且ツ本人実地ノ業前二等運転手ニ当ルベキ船長ノ保証状ヲ有スル者ニテ左ノ試験ニ合格ナルモノトス
   一羅針ノ用法 大意
   一航海定路ニ当ル灯台礁標浮標ノ位置心得
   一船内ヘ荷物積入方心得
   一海上衝突予防法 大意
   一水測器用法 大意
  一等運転手ハ年齢二十一歳ニ満チ、六ケ年以上海上ニ在リテ、内少クモ壱ケ年以上ハ西洋形商船ニ乗リ込ミ運転手ノ職ヲ執リ、且本人実地ノ業前一等運転手ニ当ルベキ船長ノ保証状ヲ有スル者ニテ二等運転手試験課程ノ外ニ左ノ試験ニ合格ナルモノトス
   一航海日記 但シ書記ヲ置キ之ヲ担任モシムルモ妨ケナシ
   一航海地図用法 大意
   一帆ヲ掛ケ帆ヲ仕舞フ事
   一港内出入ノ心得
  船長ハ年齢二十五歳ニ満チ、七ケ年以上海上ニ在ツテ、内二ケ年以上西洋形運転手タリシ者ニテ、一等運転手ノ任ニ堪ユベキ船長ノ保証状ヲ有シ試験ニ於テ其課程ニ合格ナルモノニ限ル可シ
以上試験法ヲ以テスレバ、其課程ハ現行ノ御規則ニ比スレバ大ヒニ簡易ニシテ而シテ船長・運転手ノ年齢並ニ其海上ニアツテ実業ヲ執ルノ年限等ニ至リテハ却テ更ニ数等ノ慎重ヲ加フ、是レ即チ私共ニ於テ今日ニ切望スル処ノ要趣ニシテ、姑ク学術ノ如何ンヲ問ハスシテ専ラ実地ノ研究ヲ重スル者有之候、且又今日ニ於テハ机上ノ学術者ヲ得ルニ難クシテ実際ニ練磨セシ者ヲ求ムルノ易キハ私共ノ深ク信認スル処ニ有之候ニ付、此課程ヲ以テ自今西洋形五百噸以下ノ帆走船々長・運転手ニ適用セラレ度切望仕候
其改正ヲ要スルモノ独リ前陳ノ一項ニ止ラズ、其試験料ニ至テモ亦多少ノ御改正被為在度儀ハ私共ノ倶ニ企望スル処ニ候、即チ現行第三則試験料ノ如キハ一則二則ノ試験ニ於テ落第ノ者ニ其半ヲ返還セラルヽノ特典アルニ比スレバ極メテ厳苛ニシテ、且落第ノ都度之ヲ収領セラルヽニヨリ、薄資微力ノ船頭ハ仮令多年航海ノ実験ニ富ムモ落第ヲ恐レ肯テ試験ヲ出願セザルモノモ多ク有之由、右ニ付第三則試験料ニ於テハ更ニ寛恕ノ方法御施設有之度候
現行ノ方法ヲ以テセバ海員試験所ハ僅ニ東京ノ一所ニ限ルガ如シト云トモ、是レ大ニ実際ニ不便ヲ来シ候、抑モ海員ノ如キハ平素海上ニ在ツテ更ニ定居スル処ナキヲ以テ、特ニ其試験場ヲシテ一所ニ定ムルトキハ船主ハ勢ヒ其船舶ヲ敢テ要セザルノ地ニ送ルノ困難ヲ免カレズ、故ニ此試験場ハ東京・大坂及各開港場ノ如キ枢要ノ地ニ於テシ、広ク受験者ノ為メニ便宜ヲ与ヘラレ候ハヾ自ラ合格ノ海員ヲ増加スルノ御誘導トモ可相成儀ニ奉存候、聞ク処ニ拠レバ欧米諸国ニ於テハ港湾首府ノ有ル処ハ如何ナル地ト雖トモ必ズ司験官ヲ置キ、免状ヲ授与シ、
 - 第17巻 p.222 -ページ画像 
且其試験料ノ如キモ一等船長ニシテ一二磅ニ過ギスト、是蓋シ受験者ニ便利ヲ与ヘ専ラ之ヲ誘導スルノ趣意ト被存候
以上具陳ノ件々篤ト御洞察被為在、他日我邦ノ船体更ニ改良シ海員ノ学術一層進歩ニ趣キ、果シテ現行第三則ノ試験ヲ施シテ実際ニ障碍ナキヲ認定セラルヽノ日ニ至ル迄ハ、本免状ト小形免状トノ間ニ此第三則簡易ノ課程ヲ以テ当分ノ間其試験ニ適合ノ免状ヲ付与セラレ、且ツ其試験料ニ寛典ヲ加ヘ、各地ニ試験ノ制ヲ設ケラルヽニ至ラバ、我邦ノ海運ハ今ヨリ益々開達シ、全般ノ商況ハ、愈々旺盛ニ至ルベク儀ト奉存候、若シ上聞ノ件々御採用在ラセラレザルトキハ、実業者ハ実ニ云フベカラザルノ困難ニ陥リ、政府ニ於テ鋭意海運ノ進歩ヲ冀図セラルヽモ其結果ハ却テ西洋形商船ヲ減少スルニ帰シ、運輸ノ道之レヨリ漸ク壅塞シ、内国一般ノ商況萎靡衰頽ニ趣クハ必然ノ勢ト深ク憂慮仕候ニ付、依之此段建白仕候也
  明治十二年十一月廿二日《(朱書)》        東京商法会議所
   ○右ハ印刷セラレタル建白按ニ議事ニヨル修正ヲ加ヘタルモノナリ。


東京商法会議所要件録 第一〇号・第一二丁 明治一三年一月一九日刊(DK170023k-0005)
第17巻 p.222 ページ画像

東京商法会議所要件録  第一〇号・第一二丁 明治一三年一月一九日刊
 ○参考ノ部 東京商法会議所年報
    議場建議ノ諸項
○上略
西洋形商船々長試験規則改正ノ議
 本議ハ九月九日定式集会ニ於テ議員平野富二君ノ建議ニ出ツルモノニシテ、全会之ガ立案者ヲ撰定スルニ決セリ、而ルニ其撰ニ当リタル益田孝君並ニ運輸船舶事務委員ハ爾来数々会議ヲ開キ、遂ニ其草按ヲ稿シ、十一月廿日ニ及ンテ為メニ臨時会ヲ開キ、衆議之ヲ可決シタルニ依リ同廿二日ヲ以テ之ヲ内務卿ニ捧呈セリ



〔参考〕法令全書 明治九年 内閣官報局編 明治二三年三月刊 ○第八十二号(六月六日輪廓附)(DK170023k-0006)
第17巻 p.222-228 ページ画像

法令全書 明治九年 内閣官報局編  明治二三年三月刊
○第八十二号(六月六日輪廓附)
西洋形商船船長運転手機関手試験規則別冊ノ通相定候条此旨布告候事
 但試験所其他詳細ノ儀ハ受験志願ノ者ヨリ直ニ駅逓寮ヘ可伺出事
(別冊)
西洋形商船船長運転手及ヒ機関手試験免状規則
   此規則ハ船長運転手及ヒ機関手約定総則及ヒ試験免状章程ノ両款ニ分ツ
   此両款ハ航洋船ニ施行スルモノニシテ湖川・港湾・内海或ハ海峡中ニ限リ運用セル船ニ施行セサルモノトス
    船長運転手及ヒ機関手約定総則
第一条 明治第十年第一月一日ヨリ以後(海軍諸艦ヲ除キ)登簿噸数一百公称馬力五十以上ノ西洋形航洋船ノ船長運転手或ハ機関手タル者ハ何人タリトモ此規則ニ遵テ発出シタル免状ヲ受有スルニアラサレハ其職ヲ執ルヲ許サス
第二条 船長運転手及ヒ機関手ノ免状ヲ分ケテ甲乙両種トナス、即チ本免状・仮免状是ナリ
 - 第17巻 p.223 -ページ画像 
 (甲)本免状ハ後ニ記載セル本則ノ条款、或ハ内務卿ノ命令或ハ其他須要ナル順叙ニ従ヒ、試験ヲ了リタル人ニ授与ス
 (乙)仮免状モ亦後ニ記載セル仮則ノ条款ニ照シテ之ヲ授与ス、然レトモ明治十五年第一月一日以後ハ総テ之ヲ廃止スヘシ
第三条 第一条ニ記載セル日月以後ハ登簿噸数一百以上四百以下ノ航洋船ハ其等級ニ適セル本免状若シクハ仮免状ヲ受有スル船長及ヒ一等運転手ヲ乗組シメ、又登簿噸数四百以上ノ航洋船ハ其適等ナル本免状ヲ受有スル船長一等運転手及ヒ本免状若クハ仮免状ヲ受有スル二等運転手ヲ乗組マシメ、公称馬力五十以上一百以下ノ航洋汽船ハ適等ナル本免状若シクハ仮免状ヲ受有スル一等機関手ヲ乗組マシメ又公称馬力一百以上二百以下ノ航洋汽船ハ其ノ適等ナル本免状若クハ仮免状ヲ受有スル一等及ヒ二等ノ機関手ヲ乗組マシメ、又其船二百馬力以上ナレハ一等機関手ハ其適等ナル本免状ヲ受有シ二等機関手ハ本免状若シクハ仮免状ヲ受有スルモノヲ乗組マシメサレハ其出港ヲ許ス《(サ脱カ)》
 前ニ記載セル其適等若シクハ高等ナル免状ヲ所持セス或ハ所持シ能ハスシテ其職ヲ執リ出港セシモノ及ヒ此規則ニ遵テ要スヘキ免状ヲ所持スルヤ否又ハ所持シ能フヤ否ヤヲ推究認定セスシテ之レヲ使役スルモノハ、何人ヲ論セス弐百五拾円以内ノ罰金ヲ科スヘシ
第四条 内務卿ハ船長運転手及ヒ機関手試験ノ章程ヲ時々受験人ノ適度ニ随ヒ又其場合ノ肝要ナルニ応シテ改正シ、其司験官ヲシテ之ヲ実施セシムヘシ
第五条 受験人ハ試験章程ニ掲載セル手数料若クハ内務卿ヨリ其都度命シ定ムル所ノ金額ヲ納ムヘシ此金額ハ手数料ヨリ少ナキモノトス但シ是等ハ試験ノ前ニ其筋吏員ニ交付ス可シ
 若シ受験人落第セルトキハ既ニ納メシ手数料ノ半額ヲ還付スヘシ
第六条 後ニ記載スル条款ニ従ヒ受験人ノ試験ヲ完了シ、且技芸其等ニ応シ性質行状善良ナルノ明証アリ、其他各般皆所要ニ適セリト司験官ヨリ報告セハ、内務卿ハ第三条ニ記セル免状ノ階級ニ照シ、若干噸数若シクハ若干馬力航洋船ノ船長、或ハ一等若シクハ二等運転手、或ハ一等若クハ二等機関手タルヘキヲ証スル免状ヲ本人ニ授与スヘシ
 若シ同卿ニ於テ其報告ヲ未タ信実ナラスト思察スルトキハ、更ニ前度ノ司験官或ハ他ノ司験官ニ命シテ再ヒ之ヲ試験セシメ、且其受験人ノ証書及ヒ行状等ヲ審究シテ後之レニ免状ヲ授与スヘシ
第七条 内務省ハ簿冊ヲ製為シ授与セシ毎号ノ免状及ヒ司験官ノ氏名等ヲ登記シ他日ノ証ニ供ス
 船長其他若シ其受領セル免状ヲ亡失或ハ窃取セラレ、其自己ノ過失ニアラサル事ヲ証明シ得ルトキハ、簿記ニ照ラシ更ニ免状ヲ作テ之ヲ授与スヘシ
 更ニ授与セル免状ニハ再授ノ文字ヲ記スト雖トモ其効験ハ都テ原免状ト異ナルナシ
 此場合ニ於テハ本途試験料ノ半額ヲ納ムヘシ
第八条 船長若クハ船主其傭使スル海員船長ヲ除クノ外一切ノ船中乗組人員ヲ云フト取結フ
 - 第17巻 p.224 -ページ画像 
ヘキ傭入雇止約定書ヲ其掛リ吏員ノ眼前ニ於テ調印スルトキ、前ニ記載セル規則ニ照応シタル其船長運転手及ヒ(汽船ナラハ)機関手ノ免状ヲ其吏員ニ出シテ検査ヲ受クヘシ(雇入雇止規則ハ追テ制定布告スヘシ)
 此吏員之ヲ検シテ真正且充全ナリト思惟スルトキハ、則チ其検査証書ヲ作リ、之ヲ授与セル月日及ヒ海員雇入雇止約定満期ノ月日ヲ記載シテ其船長若クハ船主ニ授与スヘシ
 右約定期限中船長運転手(汽船ナラハ)機関手ノ交替アルトキハ、更ニ其船長若クハ船主ヨリ前節ノ如ク其免状ヲ其掛吏員ニ出シテ再ヒ検査証書ヲ受クヘシ
 各船出港免状ヲ請フトキハ税関官吏ヘ前記ノ証書ヲ出スヘシ、若シ此証書ヲ出サヽルトキハ税関官吏ハ出港免状ヲ授与スヘカラス
 若シ船長運転手等ノ交替アルモ、之ヲ其掛吏員ニ告知シテ書換証書(即チ検査証書)ヲ得ルヲ怠リ、或ハ税関官吏ニ此証書ヲ出ス事无クシテ出港スルトキハ、弐拾五円以内ノ罰金ヲ科スヘシ
第九条 自己或ハ他人ノ為メニ免状ヲ受ケンヲ謀リ、詐偽ヲ以テ之レヲ願請スル者、或ハ人ヲシテ之ヲ願請セシムル者、或ハ之ヲ助力スル者、或ハ免状ヲ贋造スル者、之ヲ助力スル者、及ヒ人ヲシテ贋造セシムル者、之ヲ助力スル者、或ハ故意ニ免状ヲ変更スル者、之ヲ助力スル者、又ハ人ヲシテ之ヲ変更セシムル者、或ハ贋造若シクハ変更或ハ取消シ若シクハ停止セラレシ免状ヲ故意ニ使用スル者、或ハ免状ヲ所有スルヲ得スシテ之ヲ使用スル者、或ハ免状ヲ他人ニ貸付スル者、或ハ他人ヲシテ之ヲ使用セシムル者ハ五百円以内ノ罰金ヲ科シ或ハ六月以内ノ禁獄或ハ懲役ニ処ス
第十条 内務卿ハ各船長運転手或ハ機関手ノ技芸劣等若クハ粗暴ナルカ或ハ不行状ニシテ其職務ヲ執ルニ不適当ト思案スルトキハ、直ニ之ヲ審究、或ハ審究セシムヘシ、而シテ左ニ掲クル場合ニ於テハ其免状ヲ取消シ或ハ一時其使用ヲ停止スヘシ
  第一 乱酔 不行状 粗暴 指揮ニ悖戻ス 職務ニ怠ル者
  第二 其失錯又ハ不良ノ所為ニ由テ船ヲ失ヒ或ハ捨テ或ハ之レニ大損害ヲ生シ、又ハ人命ヲ害ナヒ或ハ人ニ大傷痍ヲ被ムラシムル者
  第三 他ノ甚シキ罪科ヲ犯セシ者
 凡ソ船長運転手及ヒ機関手ヲ論セス一旦其免状ヲ取消シ或ハ一時其使用ヲ停止セラレタルトキハ、其免状ヲ内務省若クハ其筋ノ官庁ニ取揚ケ、且其失錯ニ就テ弐百五拾円以内ノ罰金ヲ科スヘシ
 其掛リ吏員ハ其免状ヲ取消シ、或ハ其使用ヲ停止セラレタル者ヲ一百噸以上又ハ五十馬力以上ノ航洋船ノ船長運転手若クハ機関手トシテ其職ヲ執ラシムヘカラス
 又何等ノ人タリトモ其免状ヲ取消シ、或ハ一時其使用ヲ停止セラレタル者ヲ船長運転手或ハ機関手トシテ其職業ニ傭使スルヲ許サス、若シ其情状ヲ知テ之ヲ使役スル者アラハ弐百五拾円以内ノ罰金ヲ科スヘシ
 一旦其免状ヲ取消サレタル者ト雖トモ爾後内務卿ノ適当ト思考スル
 - 第17巻 p.225 -ページ画像 
場合ニ於テハ再ヒ同等若クハ下等ノ免状ヲ授与スル事アルヘシ
第十一条 前ニ掲載セル犯罪者ハ裁判所若クハ其筋ノ官員ニ於テ之ヲ審断スヘシ
第十二条 裁判所若クハ其筋ノ官員相当ノ糺弾ヲナセシ上罰金ノ額ヲ決スルトキハ、現時或ハ他日本人ノ受ケ取ルヘキ給金若シクハ其他ノ金額ヨリ之ヲ納メシムル事アルヘシ、但シ船主若シクハ本人ヲ雇使スル者其裁判所若クハ其筋ノ官員ヨリ其旨ノ命令状ヲ受取ルニ於テハ、現時或ハ他日本人ニ渡スヘキ給料若クハ其他ノ金額中ヨリ其罰金ヲ引去リ之ヲ上納スヘシ
 船主若クハ傭主タル者、其傭使スル船長等ニ裁判スヘキ事件ヲ生スルトキハ其裁判未決ノ間ハ之レニ給料及ヒ其他ノ金額ヲ与フヘカラス、若シ其裁決ヲ終ヘサル間ニ故ナク、之レニ給料其他ノ金額ヲ与ヘ、又ハ命令状ヲ受取リタル上条理ナクシテ其罰金ヲ払フ事ヲ怠ルトキハ其弐倍ノ罰金ヲ科スヘシ
第十三条 犯罪者其処決ニ服セサル者ハ一般ノ規則ニ遵テ控訴上告スルヲ得ヘシ
    船長運転手及ヒ機関手試験免状章程
第一条 船長運転手及機関手ノ試験ハ東京ニ於テ毎月第一及ヒ第三ノ火曜日ニ執行スヘシ、又其事宜ニ由リ他所ニ於テモ之ヲ執行スル事アルヘシ、然ルトキハ其趣ヲ三十日以前ニ広告スヘシ
 前ニ記載シタル定日ノ外タリトモ別段手数料トシテ金五円ヲ納メ、臨時試験ヲ願フ者アレハ何日ヲ論セス司験官ノ都合ニ因テ之ヲ執行スヘシ、但其受験人落第スルトモ既ニ納メシ別段手数料ハ返附スル事無シ
第二条 受験人ハ其試験ノ日ヨリ少クモ一日以前ニ其氏名貫籍及ヒ其性質行状善良ニシテ実地経歴アルノ証書ヲ証人ヲ以テ差出スヘシ、其証書ナケレハ何人ニテモ試験ヲ許サス
第三条 受験人ハ其証書ヲ出ストキ左ニ掲載スル試験所ニ納ムヘシ《(料ヲカ)》
    第一則ニ従ヒ本免状ノ試験料
  船長                      金拾五円
  同上 既ニ一等運転手ノ本免状ヲ所持スルモノ   同拾円
  一等運転手                   同拾円
  同上 既ニ二等運転手ノ本免状ヲ所持スルモノ   同五円
  二等運転手                   同五円
  一等機関手                   同拾五円
  同上 既ニ二等機関手ノ本免状ヲ所持スルモノ   同拾円
  二等機関手                   同拾円
 第一則ニ従テ試験ヲ受ケタル者若シ落第スルトキハ其試験料ノ半額ヲ返附スヘシ
    第二則ニ従ヒ本免状ノ試験料
  船長                      金五円
  一等機関手                   同五円
    第三則ニ従ヒ仮免状ノ試験料
  船長                      金七円五拾銭
 - 第17巻 p.226 -ページ画像 
  一等運転手                   同五円
  二等運転手                   同弐円五拾銭
  一等機関手                   同七円五拾銭
  二等機関手                   同五円
 第二及第三則ニ従ヒ試験ヲ受ケタル者落第スルトモ其試験料ハ返附セサルヘシ
第四条 第一則ニ従ヒ上級ノ試験ヲ受ケ落第スルモ下級ノ試験ニ及第スルトキハ其応等ノ免状ヲ受ケ得ヘシ、然レトモ其試験料ノ一部分ヲモ返附セサルヘシ
第五条 船長及ビ運転手ノ受験人測量学ノ試験ニ落第スル事三回ニ及フトキハ、其最後落第ノ日ヨリ三箇月ヲ経サレハ再試ヲ許サス、又船具運用学ノ試験ニ落第スル三回ニ及フトキハ其最後落第ノ日ヨリ六箇月以上航洋船ニ乗組ミ実地修業スルニアラサレハ再試ヲ許サス
第六条 機関手ノ受験人紙上ノ問題ニ於テ落第スルモ爾後再試ニ堪ユヘキ学知ヲ充分セリト思考スルトキハ何時ニテモ其再試ヲ願ヒ得ヘシ、然レトモ実地作業上ノ試験ニ落第スルトキハ其落第ノ日ヨリ三箇月ヲ経サレハ再試ヲ許サス
第七条 船長及ヒ運転手ノ受験人ハ平生各自ノ熟知セル式及ヒ表ヲ用テ問題ヲ答ルヲ許ス、故ニ其席上ニ自己ノ書籍ヲ携帯シ得ヘシ
 第一則ニ従フ試験ニ於テ其答題ヲ為スノ時限ハ午前第十時ヨリ午後第三時マテ五時間ト定メ、第二及ヒ第三則ノ試験ハ二時間ト定ム、故ニ若シ此時限ヲ過テ其答題ヲ了ラサレハ則チ之ヲ落第者トナスヘシ
第八条 一等及ヒ二等機関手ハ特ニ後ニ記載スル条款且其本分ノ職務及ヒ其作業ニ就テ試験スルヲ緊要トス
 其受験人已ニ口上ノ試験ヲ能ク経了セハ、更ニ筆上ノ問題ヲ授ケ、各自ノ平生慣用セル方法ヲ以テ之ニ答ヘシムヘシ
 第一則ニ従ヒタル試験ハ午前第十時ヨリ午后第三時マテ五時間ヲ限リ、第二及ヒ第三則ニ従フ試験ハ二時間ヲ限リテ其答題ヲ了ヘシムヘシ
第九条 若シ他人ノ文案ヲ剽窃シ、或ハ他人ノ告知或ハ他人ト助力ヲ授受シ、其他如何ナル手立ニ依ルトモ試験時間ニ他人ト往復セシ事発覚スルニ於テハ則チ之ヲ落第者ト見做スヘシ
第十条 試験問題ノ応答ハ石版若クハ反古紙ヲ用テ記スヘカラス
 其答題ヲ記シ了ラサル間ハ決シテ試験室ヲ去ルヘカラス
第十一条 総問題ヲ定時間ニ正シク応答シ了ルトキハ、則チ之ヲ試験及第者トナスヘシ
第十二条 船長及ヒ運転手ノ受験人ハ計数ニ係ル問題ノ応答ニ於テ一里以外ノ誤算アルヘカラス
第十三条 機関手ノ受験人、若シ其筆上ノ問題ヲ定時間ニ応答シ能ハスト雖トモ其問題三分ノ二以上ヲ応答シ了リ、且口上ノ試験其願請セル階級ノ機関手トナルニ充分適当セリト司験官之ヲ思量スルトキハ則チ之ヲ及第者ト公許スヘシ
第十四条
 - 第17巻 p.227 -ページ画像 
  試験課程
   第一則 本免状ヲ受クヘキ受験人ニ要スル技芸
    ○二等運転手
二等運転手ハ必ス年齢十八歳ニ満チ、四箇年以上海上ニ在リ、或ハ二箇年以上海軍兵学寮或ハ三菱会社其他ノ商船学校ニ在テ修業シ、航海運用ノ学科ニ於テ適合ノ試験ヲ経テ後三箇年以上海上ニアリシ者ニテ左ノ試験課程ニ及第セルモノトス
     測量学
  通常往復文章ヲ作為シ得ルコト
  加減乗除十分分数及対数用法
  日課 航海日誌ニ記セル前日ノ正午ヨリ当日ノ正午マテノ船方向航程ニ羅針ノ偏差風圧等ヲ算入シテ本船所在ノ経緯度ヲ求ムル事
  起程已達両地ノ経緯度ヲ以テ其針路航程ヲ瑪氏航法及《メルカトルセーリング》ヒ中分緯度航法《ミツドルラチヽユードセーリング》ニ拠リテ算定スル事
  経度ヲ求ムル為メノ太陽赤緯《ソンスデクリネーシヨン》ヲ正ス事
  太陽子午線高度《メリチアンアルチヽユード》ニ依テ緯度ヲ算定スル事
  出没方位《アムプリチユード》ヲ測定シテ羅針ノ偏差ヲ求ムル事
  六分儀ノ用法ヲ熟知スル事
  航海日誌ヲ記ス事
     船具運用学
  索具取附方及ヒ取脱方
  船内荷物積納方
  沙漏時限及ヒ測程線測鉛線ノ尺度
  帆船及ヒ汽舶海上衝突予防規則及ヒ暗霧ノ信号
  各国普通商船用信号旗用法
    ○一等運転手
一等運転手ハ必ス年齢十九歳ニ満チ五ケ年以上海上ニ在リ、其内一ケ年以上二等運転手ノ職ヲ執リシ者ニテ二等運転手試験課程ノ外ニ左ノ試験ニ合格ナル者トス
     測量学
  平面三角法
  方位角《アシマツス》ヲ測量シ羅針ノ偏差ヲ算定スル事
  羅盤ニテ陸地ノ方位ヲ測リ、或ハ現船所在ノ経緯度ニ由テ海図上ニ船舶ノ位置ヲ記ス事
  潮時ノ算法
  時辰儀ヲ比較シ及ヒ其遅速ヲ定ムル事
  太陽高度ト時辰儀ニ依テ経度ヲ測定スル事
  子午線外ノ太陽高度一ヲ以テ緯ヲ算定スル事
  六分儀ヲ正ス事
     船具運用学
  䩻泊《ムーリング》ニ依テ船舶ヲ繋止メ又之ヲ解放チ安全ニ放泊スル事
  碇ヲ船外ヘ運ヒ出ス事
  円材及《@パアー》ヒ帆ノ取扱方
  檣及ヒ重荷ノ取入方及ヒ取出方
  帆ヲ掛ケ帆ヲ仕舞フ事
 - 第17巻 p.228 -ページ画像 
  暴風ノ時船舶ノ取扱方
  風下ノ陸地ヨリ船舶ノ避方
  日本及ヒ支那海灯台ノ位置
    ○船長
船長ハ必ス二十一歳以上ニシテ六ケ年以上海上ニ在リ、内一ケ年ハ一等運転手、一ケ年ハ二等運転手ノ職ヲ執リシ者乎、或ハ二ケ年以上一等運転手ニ在任シタル者ニテ一等運転手試験課程ノ外ニ左ノ試験ニ及第セル者トス
  星象ニ依テ緯度ヲ算定スル事
  地平儀ヲ用ヒテ測量シタル天体高度ニ依テ時辰儀ノ誤指日差ヲ定ムル事
  羅盤船内ノ鉄部ニ感動スルノ理
  太陽及ヒ遠隔シタル物体ヲ測リ、羅盤ノ自差ヲ算定スル事
  船舶ノ方位ヲ定メ、又ハ海図ニ記載セル浅深ト測鉛ヲ以テ測量シタル浅深ト比較スル為メニ、潮ノ満干方位等ノ定則ヲ了解シ得ル事
  破損等ニヨリ船舶ノ航海シ難キトキ仮ニ之ヲ補理スル事
  難破ノ節乗組救助ノ手立
  颶風ヲ避ル定規
  日本海岸ノ地勢(灯台礁浮標港湾ノ位置)ヲ熟知スル事
○下略



〔参考〕法令全書 明治九年 内閣官報局編 明治二三年三月刊 ○第百五十七号(十二月十八日輪廓附)(DK170023k-0007)
第17巻 p.228 ページ画像

法令全書 明治九年 内閣官報局編  明治二三年三月刊
○第百五十七号(十二月十八日輪廓附)
本年六月第八拾弐号布告西洋形商船船長運転手機関手試験規則施行ノ儀ハ、同規則中船長運転手及ヒ機関手約定総則第八条ニ拠リ追テ雇入雇止規則制定布告候迄延期候条此旨布告候事
 但本年六月第九拾四号布告同規則追加ノ分ハ来明治十年六月三十日迄延期候事



〔参考〕法令全書 明治一二年 内閣官報局編 明治二三年九月刊 ○第九号(二月十九日輪廓附)○太政官布告(DK170023k-0008)
第17巻 p.228 ページ画像

法令全書 明治一二年 内閣官報局編 明治二三年九月刊
○第九号(二月十九日輪廓附)○太政官布告
西洋形商船海員雇入雇止規則別冊ノ通相定来ル八月十六日ヨリ施行候
条此旨布告候事
 (別冊)
  西洋形商船海員雇入雇止規則 ○略ス



〔参考〕法令全書 明治一四年 内閣官報局編 明治二三年一一月刊 ○第七十五号(十二月二十八日 輪廓附 農商務卿連署) ○太政官布告(DK170023k-0009)
第17巻 p.228-229 ページ画像

法令全書 明治一四年 内閣官報局編  明治二三年一一月刊
○第七十五号(十二月二十八日 輪廓附 農商務卿連署) ○太政官布告
西洋形船船長運転手機関手免状規則別冊之通改定来十五年一月一日ヨリ施行シ、九年六月第八十二号同年六月第九十四号同年十二月第百五十三号同年十二月第百五十七号十三年十二月第五十八号十四年二月第十三号同年三月
 - 第17巻 p.229 -ページ画像 
第十八号布告ハ同日ヨリ都テ之ヲ廃止ス
右奉 勅旨布告候事
 (別冊)
  西洋形船船長運転手機関手免状規則
   此規則ハ海軍諸艦ニ関セサルモノトス
   此規則中内国航船ト称スルハ支那朝鮮ノ間ニ於ケル鴨緑江ヨリ露領黒竜江ニ至ルノ沿岸及ヒ薩哦嗹諸港ニ航スルモノモ亦包含ス
第一条 船長・運転手・機関手ノ職ヲ執ル者ハ此規則ニ遵ヒ其職ニ応スル等級ノ免状ヲ農商務卿ヨリ受ケ之ヲ所持スヘシ
第二条 免状ハ甲乙及ヒ小形船機関手ノ三種トナシ、又甲乙ノ両種トモ船長・一等運転手・二等運転手・一等機関手・二等機関手ノ五ニ分チ各々試験規程ニ従ヒ及第セシ者ニ授与スヘシ
第三条 試験ノ規程ハ第壱号布達ニ拠ルヘシ
○下略



〔参考〕法令全書 明治一四年 内閣官報局編 明治二三年一一月刊 布達 ○太政官(DK170023k-0010)
第17巻 p.229-234 ページ画像

法令全書 明治一四年 内閣官報局編  明治二三年一一月刊
    布達 ○太政官
○第一号(十二月二十八日 輪廓附 農商務卿連署)
今般第七拾五号ヲ以テ西洋形船船長運転手機関手免状規則改定ニ付別冊ノ通試験規程ヲ定ム
右布達候事
 (別冊)
  西洋形船船長運転手機関手試験規程
第一条 凡此規程ニ従テ試験ヲ願フ者ハ、受験ノ当日ヨリ三日以前ニ其履歴書、及ヒ性行善良ナルノ保証書ヲ添ヘ願書ヲ試験所ヘ出スヘシ
  但シ願書用紙ハ試験所ヨリ附与スヘシ
第二条 定時試験ハ毎月第二火曜日東京試験所ニ於テ之ヲ開クヘシ、若シ開カサルトキハ農商務省ヨリ其旨ヲ十五日前ニ広告スヘシ
(改正)第二条 定時試験ハ内国人ハ毎月第一第三水曜日、外国人ハ毎月第二火曜日ヲ以テ東京試験所ニ於テ之ヲ開クヘシ、若シ開カサル時ハ農商務省ヨリ其旨十五日以前ニ広告スヘシ
第三条 試験願書ヲ出ストキ左ニ掲載セル試験料ヲ前納スヘシ
 甲種免状
   船長        七円
   一等運転手     五円
   二等運転手     三円
   一等機関手     七円
   二等機関手     五円
 乙種免状
   船長        五円
   一等運転手     三円
   二等運転手     二円
 - 第17巻 p.230 -ページ画像 
   一等機関手     五円
   二等機関手     三円
 小形船機関手免状
   小形船機関手    二円
第四条 定日外タリトモ別段手数料トシテ金五円ヲ納メ臨時試験ヲ願フトキハ、東京ニ限リ司験官ノ都合ニ因テ之ヲ許スコトアルヘシ
第五条 船長・運転手・機関手免状規則第八条ニ従ヒ甲種免状ヲ請願スル者ハ本途試験料ノ半額ヲ納ムヘシ
第六条 甲種免状ヲ受有スヘキ受験人ハ、左ニ記載セル各款ニ従ヒ履歴アルモノニシテ其試験問題ニ応答スヘシ
    二等運転手
 二等運転手ノ受験人ハ十九歳以上ニシテ、少クトモ四ケ年間西洋形航洋船ノ運航ニ従事セシ者、又ハ司験官ノ允当ト見認ムル学校ニ於テ航海運用学卒業ノ上少クトモ三ケ年間西洋形船ノ運航ニ従事セシモノトス
    試験問題
 ○通常文書ノ記載
 ○加減乗除及ヒ対数ノ用方
 ○航海日誌ニ記セル前日ノ正午ヨリ当日ノ正午マテノ鍼路、航程ニ羅鍼ノ偏差・自差・風圧・流潮ヲ加減シテ本船所在ノ経緯度及ヒ直航距離・方位ヲ知ルノ算法
 ○起程・已達両所ノ経緯度ヲ以テ瑪氏航法及ヒ中分緯度航法ニ拠リ鍼路・航程ヲ知ルノ算法
 ○太陽子午線高度ニ拠リ緯度ヲ知ルノ算法
 ○太陽出没方位ニ拠リ羅鍼ノ誤指ヲ知ルノ算法
 ○六分儀ノ用方
 ○航海日誌ノ記載方
 ○索具ノ取付及ヒ取脱方
 ○揚帆・卸帆・縮帆ノ方法
 ○順転・逆転及ヒ諸帆ヲ整頓スルノ方法
 ○船貨積載ノ方法
 ○測程線ノ尺度其用方及ヒ沙漏ノ時限
 ○大小測鉛ノ重量其線ノ尺度、符号及ヒ其用方
 ○万国信号法
 ○海上衝突予防規則
 ○海員雇入雇止規則
    壱等運転手
 一等運転手ノ受験人ハ二十一歳以上ニシテ、少クトモ一ケ年間登簿噸数一百以上ノ航洋船ニアリテ二等運転手ノ免状ヲ受有シ其職ヲ執リシモノトス
    試験問題 二等運転手ノ試験問題ヲ合セ
 ○太陽方位角ニ拠リ羅鍼ノ誤指ヲ知ルノ算法
 ○潮時ノ算法
 ○時辰儀ト太陽高度トニ拠リ経度ヲ知ルノ算法
 - 第17巻 p.231 -ページ画像 
 ○岬角・灯台等ノ方位ヲ測リ或ハ経緯度ニ拠リ海図ニ本船所在ノ位置ヲ記シ、又偏差・自差ヲ加減シテ鍼路ヲ定メ航程ヲ求ムルノ方法
 ○六分儀ノ動鏡・地平鏡等ノ位置ヲ正シ又太陽及ヒ地平線ニ拠リ器差ヲ求ムルノ方法
 ○覊泊・放泊ノ方法
 ○風潮ノ変化ニ際シ放泊船ヲ安全ニ所置スルノ方法
 ○出入港運転ノ方法
 ○檣ヲ立ルノ方法
 ○重貨積載ノ方法
 ○暴風ノ際船ヲ運転シ或ハ不慮ノ災害ニ臨ミ之ヲ処置スルノ方法
 ○日本海岸ノ地勢
    船長
 船長ノ受験人ハ二十三歳以上ニシテ、少クトモ一ケ年間登簿噸数一百以上ノ航洋船ニアリテ一等運転手ノ免状ヲ受有シ其職ヲ執リシモノトス
    試験問題 二等及一等運転手ノ試験問題ヲ合セ
 ○子午線ニ近キ太陽ノ高度ニ拠リ緯度ヲ知ルノ算法
 ○星象子午線高度ニ拠リ緯度ヲ知ルノ算法
 ○地平儀ヲ用ヒテ測リタル太陽高度ノ改正
 ○各種ノ方法ニ拠リ本位羅鍼ノ自差ヲ定メ及ヒ那氏ノ式ニ従テ其図ヲ製スルノ方法
 ○難破ノ際人命ヲ救助スルノ方法
 ○颶風ノ解明及ヒ之ヲ避ルノ方法
    二等機関手
 二等機関手ノ受験人ハ二十一歳以上ニシテ、少クトモ四ケ年間公称馬力五十以上ノ航洋船ニアリテ機関運転ニ従事セシ者、又ハ司験官ノ允当ト認ムル滊機製造所ニアリテ少クトモ三ケ年間滊缶及ヒ機関ノ製造又ハ修繕ニ従事シ、且少クトモ一ケ年間公称馬力五十以上ノ航洋船ニアリテ機関運転ニ従事セシモノトス
    試験問題
 ○通常文書ノ記載
 ○加減乗除及ヒ比例法
 ○機関室日誌ノ記載方
 ○馬力ノ解明及ヒ算法
 ○喞筒ニテ排出スル水量ヲ知ルノ算法
 ○安全弁ノ種類、効用及ヒ算法
 ○滊缶及ヒ機関ノ検査並所置
 ○滊缶各種ノ解明及ヒ其固定法
 ○弁嘴ノ効用及ヒ諸管接合ノ方法
 ○外輪及ヒ螺旋用高圧・低圧及ヒ聯成機関ノ解明、及ヒ其運転ノ方法
 ○滊缶及ヒ機関ノ損所ヲ修繕スルノ方法
 ○滊缶及ヒ機関ニ属スル諸器ノ効用及ヒ用法
 - 第17巻 p.232 -ページ画像 
 ○沸溢・擦熱ヲ起スノ原因ヲ熟知シ、及ヒ之ヲ回復スルノ方法
 ○験温器・験気器・験塩器ノ効用及ヒ用法
    一等機関手
 一等機関手ノ受験人ハ二十三歳以上ニシテ、少クトモ一ケ年間公称馬力五十以上ノ航洋船ニアリテ二等機関手ノ免状ヲ受有シ其職ヲ執リシモノトス
    試験問題 二等機関手ノ試験問題ヲ合セ
 ○面体ノ求積及開平法
 ○滊缶ノ強弱ヲ知ルノ算法
 ○膨脹力ノ効用及ヒ其算法
 ○指圧器ノ用方及ヒ之ニ拠リ実馬力ヲ知ルノ算法
 ○螺旋ノ勾配及ヒ其角度ヲ求ムルノ算法
 ○製造ノ為メ滊鑵及ヒ機関ニ於ル局部ノ製図
 ○加熱器ノ種類及ヒ其効用
 ○滑弁及ヒ車軸ノ位置ヲ正シ之ヲ装置スルノ方法
 ○滊鑵及ヒ機関ニ於ケル肝要ナル部分ノ割合
第七条 乙種免状ヲ受有スヘキ受験人ハ、左ニ記載スル各款ニ従ヒ履歴アルモノニシテ其試験問題ニ応答スヘシ
    二等運転手
 二等運転手ノ受験人ハ二十歳以上ニシテ、少クトモ六ケ年間海上ニアリテ船舶ノ運航ニ従事シ、内少クトモ三ケ年間西洋形航洋船ニアリシモノトス
    試験問題
 ○通常文書ノ解読
 ○加減乗除
 ○羅鍼ノ解明
 ○揚帆・卸帆及ヒ諸帆ヲ整頓スルノ方法
 ○船貨積載ノ方法
 ○測程線ノ尺度其用方及ヒ沙漏ノ時限
 ○大小測鉛ノ重量其線ノ尺度符号及其用方
 ○海上衝突予防規則
 ○海員雇入雇止規則
    一等運転手
 一等運転手ノ受験人ハ二十二歳以上ニシテ、少クトモ七ケ年間海上ニアリテ船舶ノ運航ニ従事シ、内少クトモ四ケ年間登簿噸数一百以上ノ航洋船ニアリシモノトス
    試験問題 二等運転手ノ試験問題ヲ合セ
 ○航海日誌ノ記載方
 ○航海日誌ニ記セル前日ノ正午ヨリ当日ノ正午マテノ鍼路航程ニ羅鍼ノ偏差・自差・流潮ヲ加減シテ本船所在ノ経緯度及ヒ直航距離方位ヲ知ルノ算法
 ○太陽出没方位ニ拠リ羅鍼ノ誤指ヲ知ルノ算法
 ○羅鍼ニ拠リ岬角・灯台等ノ方位ヲ測リ又ハ経緯度ニ拠リ海図上ニ本船所在ノ位置ヲ記シ及ヒ偏差・自差ヲ加減シテ鍼路ヲ定メ航程
 - 第17巻 p.233 -ページ画像 
ヲ測ルノ方法
 ○順転・逆転・縮帆及ヒ出入港運転ノ方法
 ○重貨積載ノ方法
 ○万国信号法
    船長
 船長ノ受験人ハ二十五歳以上ニシテ、少クトモ二ケ年間登簿噸数一百以上ノ航洋船ニアリテ一等運転手ノ免状ヲ受有シ其職ヲ執リシモノトス
    試験問題 二等及ヒ一等運転手ノ試験問題ヲ合セ
 ○太陽子午線高度ニ拠リ緯度ヲ知ルノ算法
 ○時辰儀ト太陽高度トニ拠リ緯度ヲ知ルノ算法
 ○六分儀ノ用法及ヒ動鏡・地平鏡等ノ位置ヲ正シ、太陽又ハ地平線ニ拠リ器差ヲ求ムルノ方法
 ○暴風ノ際船舶ヲ運転シ及ヒ不慮ノ災害ニ臨ミ之レヲ処置スルノ方法
 ○颶風ノ定則及ヒ之レヲ避ルノ方法
 ○日本海岸ノ地勢
    二等運転手《(機関)》
 二等機関手ノ受験人ハ二十二歳以上ニシテ、少クトモ五ケ年間船用機関運転ニ従事セシ者、又ハ司験官ノ允当ト認ムル滊機製造所ニアリテ少クトモ三ケ年間滊缶及ヒ機関ノ製造又ハ修繕ニ従事シ、且二ケ年以上船用機関運転ニ従事セシモノトス
    試験問題
 ○通常文書ノ解読
 ○加減乗除
 ○機関室日誌ノ記載方
 ○滊鑵及ヒ機関ノ検査並所置
 ○運転中滊鑵及ヒ機関ニ於ケル注意
 ○安全弁ノ種類・効用及ヒ其錘量ノ増減
 ○滊鑵及ヒ機関ニ属スル諸器ノ効用及ヒ用法
 ○弁嘴ノ効用及ヒ諸管接合ノ方法
 ○滊鑵及ヒ機関ノ部分ニ生セル損所ヲ仮リニ修繕スルノ方法
 ○沸溢・擦熱ヲ生セシトキ之ヲ回復スルノ方法
○験温器・験気器・験塩器ノ効用及ヒ用法
   一等機関手
一等機関手ノ受験人ハ二十五歳以上ニシテ、少クトモ二ケ年間公称
馬力五十以上ノ航洋船ニアリテ二等機関手ノ免状ヲ受有シ其職ヲ執リシモノトス
   試験問題 二等機関手ノ試験問題ヲ合セ
○馬力ノ解明及ヒ算法
○滊鑵各種ノ解明及ヒ安全弁ノ算法
○外輪及ヒ螺旋用高圧・低圧及ヒ聯成機関ノ解明、及ヒ其運転ノ方法
○膨脹力ノ解明及ヒ算法
 - 第17巻 p.234 -ページ画像 
 ○加熱器ノ効用及ヒ其種類
 ○滊鑵及ヒ機関中肝要ナル部分ノ割合
第八条 小形船機関手ノ免状ヲ受有スヘキ受験人ハ左ニ記載スル履歴アルモノニシテ其口上試験問題ニ応答スヘシ
    小形船機関手
 小形船機関手ノ受験人ハ二十一歳以上ニシテ、少クトモ三ケ年間船用機関運転ニ従事セシモノトス
    試験問題
 ○通常ノ読書
 ○滊鑵及ヒ機関ノ検査並所置
 ○運転中滊鑵及ヒ機関ニ於ケル注意
 ○安全弁ノ効用及ヒ其錘量ノ増減
 ○滊鑵及ヒ機関ニ属スル諸器ノ効用及ヒ用法
 ○滊鑵及ヒ機関ノ部分ニ生セル損所ヲ仮リニ修繕スルノ方法
 ○沸溢及ヒ擦熱ヲ生セシトキ之ヲ回復スルノ方法
第九条 乙種免状若クハ従前ノ仮免状ヲ受有シ既ニ一ケ年以上其職ヲ執リシ者ハ甲種ニ於テ同等ノ試験ヲ出願スルヲ得ヘシ
第十条 甲種ニ従フ試験ニ於テ其紙上ノ答ヲ為スノ時限ハ五時間ト定メ乙種ノ時限ハ三時間ト定ム、若シ此時限ヲ過キテ其答ヲ畢ラサレハ之ヲ落第者ト為スヘシ
第十一条 受験人ハ書籍、及ヒ書留類ヲ携帯シテ試験場ヘ入ルヲ許サス
第十二条 船長及ヒ運転手ノ受験人ハ平生各自ノ熟知セル算式及ヒ航海表ヲ用ヒテ問題ニ答フルハ妨ケナシ、故ニ自己ノ慣用セル表ニ限リ試験場ニ携帯シ得ヘシ
第十三条 受験人若シ他ノ受験人ノ文案ヲ窃取シ、或ハ助力ヲ授受シ其他如何ナル手段ニ拠ルモ出場中他ノ受験人ト往復セシコト発覚スルニ於テハ之レヲ落第者トナスヘシ
第十四条 紙上ノ問題ニ応答スルニ方リ其問題ノ総数三分一ヨリ以上ノ誤算アルモノ又ハ問題中ノ算法ヲ解シ得サルモノハ落第者トナスヘシ、然レトモ其誤算問題ノ総数三分一ニ止ルトキハ之ヲ改正セシメ其正算ヲ得ルモノハ紙上ノ試験ニ於テ及第者トナスヘシ
第十五条 受験人紙上ノ試験ニ落第スルコト三回ニ及フトキハ其最後落第ノ日ヨリ三ケ月以上ヲ経ルニ非サレハ再試ヲ許サス、又口上ノ試験ニ落第スルコト三回ニ及フトキハ、其最後落第ノ日ヨリ六ケ月以上実地修業セルノ確証アルニアラサレハ再試ヲ許サス
第十六条 受験人紙上及ヒ口上ノ問題ニ正シク答ヘ畢ルトキハ司験官ヨリ直ニ及第証書ヲ本人ニ附与シ其旨ヲ農商務省ヘ報告スヘシ
 農商務省ニ於テハ其報告ニ拠リ受験人及ヒ司験官ノ氏名ヲ簿冊ニ登記シ応答《(等カ)》ノ免状ヲ授与スヘシ



〔参考〕海運興国史 畝山鎮夫[畝川鎮夫]著 第一〇七九―一〇八〇頁 昭和二年七月刊(DK170023k-0011)
第17巻 p.234-235 ページ画像

海運興国史 畝山鎮夫[畝川鎮夫]著  第一〇七九―一〇八〇頁 昭和二年七月刊
    海員技術の発達
 西洋形船の輸入された当初には、多数の船舶に外国人を使用してゐ
 - 第17巻 p.235 -ページ画像 
た。明治九年六月西洋形船船長運転手機関手試験規則を設けて航洋船に乗組む者の試験を行ひ免状を附与することゝしたが、同年本免状受有者は七十四人あつて其中内国人四人外国人七十人で、仮免状を有つ者は内国人四十七人外国人四人、又小形船免状の受有者は全部内国人の百二十三人であつた。故に稍々遠き航海をする船舶の船長其他重要の職務を執るものは殆んど外国人に属したのである。即ち全体の免状受有者数から云へば内国人百七十四人に対し外国人七十四人であるが内国人の多数は小形船免状即ち小さな近い所のみを航海する船舶の職員に過ぎなかつたのである。
○中略
 其後も帆船や小型を除いた船舶の船長や機関長は依然殆んど外国人といふ状態であつた。即ち明治十八年現在の免状受有者は内国人二千四百九十二人、外国人四百六十二人であつたが、内容を解剖すれば重要なる職務は多く外国人が執り、殊に船長の免状を受有する者内国人五十五人、外国人百六十人の割合であつて、而かも内国人は概して仮免状乃至小形船免状を受有するに過ぎなかつた。



〔参考〕竜門雑誌 第六一三号・第四八―五〇頁 昭和一四年一〇月 東京商法会議所に就て(四)(山口和雄)(DK170023k-0012)
第17巻 p.235-237 ページ画像

著作権保護期間中、著者没年不詳、および著作権調査中の著作物は、ウェブでの全文公開対象としておりません。
冊子版の『渋沢栄一伝記資料』をご参照ください。