デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
1款 東京商法会議所
■綱文

第17巻 p.532-542(DK170040k) ページ画像

明治13年12月14日(1880年)

是日栄一、当会議所会頭トシテ野中万輔ノ建案ニ係ル商家師弟間ニ契約ヲ設クルノ儀ヲ内務卿松方
 - 第17巻 p.533 -ページ画像 
正義・大蔵卿佐野常民ニ建議ス。


■資料

東京商法会議所要件録 第一八号・第一―八丁 明治一三年一一月二九日刊(DK170040k-0001)
第17巻 p.533-536 ページ画像

東京商法会議所要件録  第一八号・第一―八丁 明治一三年一一月二九日刊
  第九臨時会議 明治十三年十一月九日午後第六時十分開場
    議員出席スル者 ○二十名
会頭(渋沢栄一)ハ本日ノ臨時会ハ去ル五日定式会ノ議題タルベキ諸職工師弟間契約法制定ヲ要スル義ニ付政府ヘ建白案以下二件ヲ議スルガ為メ特ニ之ヲ開キタル旨ヲ述ベ、且ツ曰、野中万輔氏ガ商家ノ奉公人ニモ亦此契約ノナカルベカラザルノ実アルヲ以テ之ヲ前建言中ニ加ヘン事ヲ要スルノ建議ハ、前会ニ於テモ一二議員ノ発議スル処ナリシガ、其商家ニ必用ナラザルヲ云フ者アリト云トモ亦強テ之ヲ拒ミタル者ナキガ如シ、故ニ今此建白案ヲ議スルニ方リテハ別ニ商家奉公人ノ契約方ヲ此建言中ニ加フルト否トニ就キ先ヅ各員之ヲ審議セラルベシト、即チ書記ヲシテ議案ヲ朗読セシム(議案ハ参考部ニ附ス)
益田 ○益田孝曰ク、余ヤ前定式会ニ於テ職工師弟間契約ノ事ヲ議スルニ方リテ商ハ工ト自ラ異ニシテ敢テ特殊ノ技術ヲ要スル者ニ非ズ、其主従ノ関係亦職工師弟ノ関係ト同ジカラザルガ故ニ、商ニ取リテハ別ニ契約法ヲ設クルヲ要セザルモノト思惟シタルヲ以テ聊カ卑見ヲ陳述セシガ、猶退テ府下従来ノ慣習ヲ熟考スルニ商工各々其業ヲ異ニスト雖トモ其主従ノ関係ニ於テ猶職工師弟ト其性質ヲ同フスルガ如キモノアリ、故ニ今前説ノ非ナルヲ正シ更ニ此建議ヲ賛成シテ共ニ之ヲ政府ヘ建議セン事ヲ欲ス、蓋シ商ナル者ハ特殊ノ技術ヲ要セズ其業ヲ転ズルノ容易ナルガ故ニ其盛衰ノ倏忽ナル事遥カニ工ノ右ニ出ヅルモノアリ、是ヲ以テ当初奉公人ガ望ヲ属シテ主家ニ就クモ、或ハ其主家ノ転業若クバ廃業ノ為メ其望ヲ達セザル者ナキヲ保セズ故ニ商ニ在リテハ殊更ニ制限ヲ設ケ其主従間ニ結了スル契約ハ若シ一タビ其主家ノ転業或ハ廃業スル時ニ於テハ無効トスルノ一条ヲ加ヘバ主家ノ圧制ヲ抑ヘ奉公人ヲ保護スルニ足ルベシ、且ツ此商家主従ノ契約ノ如キ単ニ主家ノ圧制ヲ助成スルノ嫌アルガ如シト雖トモ其実主従ノ利益ヲ保護スルノ良法ナリ況ンヤ契約ヲ結ブト否トハ主従相互ノ随意ニ在リ、必ズシモ之ヲ結了セシムルト云フニ非ルヲヤ
松尾 ○松尾儀助曰ク、商ハ工ノ如ク特殊ノ技術ヲ要セズト云トモ所謂株ナルモノアリ、又特殊ノ商業アリ、同シク専修ヲ要スルモノ多シ、故ニ之ヲ年季奉公ト云ハヾ古来慣習ノ然ラシムル所、或ハ束縛ノ意ヲ示スガ如シト云トモ、若シ之ヲ専門修業ト云ハヽ其事タルヤ同一ニシテ、其言ハ美ナリ、商家年季奉公ノ如キモ亦所謂専門修業ノ一ナリ、故ニ本案ノ如キハ余ノ最モ同意スル所ナリ
井関 ○井関盛艮曰ク、益田君ノ商ニ在リテ殊更ニ一項ヲ添ルノ説ハ余ノ思ヒ当ラザリシ所ナルガ、要スルニ余モ亦本案ヲ賛成ス、願クバ前議ト併テ挙行セラレン事ヲ望ム
大倉 ○大倉喜八郎曰ク、野中君建議ノ主旨最モ可ナリ、然レトモ商ノ業タル工ト大ニ異ナリ、或ハ恐ル此議ノ実際ニ行ハレ難カラン事ヲ、是ヲ以テ本議ノ如キハ他日ニ譲リ、猶十分討議ヲ尽クシ、更ニ之ヲ建議スルモ未ダ晩シトセズ、若シ夫レ軽忽前議ト并テ之ヲ建議シ、本儀《(議)》
 - 第17巻 p.534 -ページ画像 
ノ実行シ難キガ為メ前議ノ主重ナルモ共ニ之ヲ放棄セラルヽニ至ラバ悔トモ及ハス、寧ロ之ヲ珠別《(殊)》ニ議スルニ如カザルナリ
朝吹 ○朝吹英二曰ク、夫レ商ハ工ト異ニシテ其業必ズシモ習テ後ニ得ベキモノニ非ズ、是故ニ商家主従契約ノ如キハ単ニ其主従相互ノ間ニ任スベシ、抑モ余ガ前会ニ於テ松尾君ノ建議ニ同意シタルモノハ、其精神我国ノ工業ノ萎靡セントスルヲ救済スルノ点ニ在ルガ為ナリ、今本儀精神《(議)》ノ在ル所ヲ察スルニ商業ノ衰頽ヲ挽回スルヲ名トシ、其実主家ノ私益ヲ保護スルノ看ナシトセズ、故ニ余ハ亦大倉君ノ説ノ如ク本議ヲ附属セバ為メニ前議ノ精神ヲ害セン事ヲ恐ルヽナリ
益田曰ク、商家従来ノ慣習ヲ案ズルニ年季奉公人ノ主家ニ於ケル猶学生ノ商学校ニ於ケルガ如キモノアリ、此年季修業ノ法タル商業ヲ学ブニ欠クベカラザルモノナリ、故ニ其主従ノ契約ヲ鞏固ニスル仮令利アルモ決シテ害ナキナリ、且ツ本議ノ如キハ主家ノ圧制ヲ助クルモノヽ如シト雖トモ、其望ム所ハ只主従ノ間ニ於テ確実ナル契約ヲ結了スルニ非レバ裁判上効力ナキモノトスルノ一条ニ在リ、而シテ此契約ヲ結ブト否トハ固ヨリ主従ノ自由ニ任ズルモノナレバ、事実ニ於テ決シテ不都合アラザルベキナリ
佐藤礼三曰ク、商人ノ如キハ工人ト異ニシテ当初年季ヲ十年ト定ムルモ或ハ主家ノ都合ニヨリテ七年ニテ終ルモノアリ、或ハ奉公人ノ中途ニシテ其約ヲ解カント欲スルモノアリ、如此ク主従ノ都合ニヨリテ年季ヲ短縮シ得ルノ実アレバ職工ノ修業上定期アルモノヽ如ク必ズシモ契約ヲ行ハシムルニ及バザルベシ
中山 ○中山譲治曰ク、職工ノ如キ其技術ハ練熟精巧ナル者アルモ之ヲ商人ニ比スルニ概ネ不学ニシテ実ニ一丁字ヲ解セザル者多シ、故ニ此如キ無学ノ徒ニコソ契約上一般ノ定款ヲモ要スベケレ、商人ノ如キ少シク智識アル者ニ取リテハ別ニ定款ヲ設クルニ及ハザルモノトス、故ニ本議ヲ以テ前議ト聯絡スルノ議ハ余其不可ナルヲ信ズ
会頭曰ク、此議案ノ精神ヲ論ズル時ハ朝吹君ノ云ハルヽ如ク前者ハ其事重且大ニ、後者ハ軽且小ナルガ如シト雖トモ、要スルニ其政府ニ求ムル所ハ二者共ニ契約ニ効力ヲ附スル事ヲ要望スルニ過ギズ、故ニ商ト云ヒ工ト云ヒ格別逕庭アルモノニ非ルベケレバ、之ヲ併テ建言スルモ敢テ妨ケナキニ似タリ
丹羽 ○丹羽雄九郎曰ク、商ハ特殊ノ技術ヲ要セズ工ト大ニ異ナル所アルガ如シト雖トモ、深ク之ヲ考究スル時ハ商ニ於テモ簿記其他掛合向等ニ至リテハ猶特殊ノ技術ヲ要スルモノナレバ、本議ノ如キ前議ト併テ之ヲ建議スルモ敢テ軽重ノ別ナキヲ信ズ
柴崎 ○柴崎守三曰ク、商人ノ如キハ工人ト異ニシテ其奉公見習等ノ年間ニ至リテハ二三年ニシテ可ナルモノアリ、其修業ノ難易固ヨリ同ジカラズ故ニ本議ヲ以テ前議ト并テ建議スルノ説ハ余ガ取ラザル所ナリ
益田曰ク、米商ト云ヒ唐物商ト云ヒ、苟クモ其商売ヲ専業トスルモノハ其実大ニ職工ニ類スルカ如キモノアリ、故ニ本議ヲ并セテ建議スルモ蓋シ不都合ナカルベシト信ズ
朝吹曰ク、只是レ一区ニ施行スルモノトセバ猶可ナリト云トモ苟クモ之ヲ全国ノ法律ト定メバ無乃不可ナラン乎、故ニ本案ノ議決ニ就テ
 - 第17巻 p.535 -ページ画像 
ハ須ラク熟慮ヲ要セザルベカラズ
益田曰ク、年季ナル語ハ慣行ノ久シキ之奴隷ノ別名ト考フル者アリト云トモ、此年季タル取リモ直サズ商業ヲ習熟スルノ期限ナリ、其主従間ニ約束ヲ行ハシムル何ノ不可アランヤ、且ツ夫レ本議ノ主旨タル契約ニ効力ヲ附スルノ意ニ過ギズ、況ンヤ契約結了ノ事タル主従相互ノ利益ヲ保護スルニ於テヲヤ、余ハ本議ニ就テ未ダ其不可ナルノ点ヲ見ザルナリ
井関曰ク、本議ノ要旨タル従来契約ノ鞏固ナラザルモノヲシテ之ニ効力ヲ附シ之ヲ履行セシムルニ在ルモノナリ、而シテ約束ヲ践行セシムルハ最モ以テ美事ナリトス、敢テ之ヲ不可視スルノ理ナシ、抑モ余ガ本議ヲ賛成シタル所以ハ則チ此ヲ出テザルナリ
朝吹曰ク、前議ノ要旨タル我国工業ノ衰頽ヲ挽回スルニ在リ、然レトモ本議ノ精神タル商業ノ開進ヲ企図スルニ在ラズシテ只主家ノ私利ヲ助クルニ止ルガ如シ、如此性質ノ稍同シカラザルモノヲ以テ之ヲ官ニ建言シ、且ツ之ヲ世間ニ公示セバ或ハ輿論ノ攻撃ヲ免ガレザラントス、且ツ大倉君ノ配慮スルガ如ク併テ本議ヲ建義シテ若シ本議ノ容レラレザルガ為メ前議モ併テ放棄セラルヽガ如キ事アツバ其遺憾如何《(ラ)》ゾヤ、到底之ヲ分テ建議スルニ如カザルナリ
益田曰ク、朝吹君ハ本議ノ容レラレザルガ為メ前議モ併テ放棄セラレン事ヲ憂フルガ如シト云トモ、政府ト雖トモ固ヨリ具眼者ナキニ非ズ、豈如此ノ軽挙アランヤ、採ルベキハ之ヲ採リ捨ツベキハ之ヲ捨テ、其之ヲ用捨スルニ於テ蓋シ十分鄭重ヲ加ヘラルヽハ余ガ疑ハザル所ナリ、要スルニ之ヲ採ルト否トハ、之ヲ併議スルト別議スルニ関セザルモノニシテ、只各項ノ利害得失ニ在ルモノナルガ故ニ、前議ト併セテ之ヲ建言スルモ何ノ不可カ之レアランヤ
原 ○原六郎曰ク、商ト云ヒ工ト云ヒ其間著シキ差違アルニ非ズ、今前議ヲ建議スルニ当リ併セテ本議モ建議スルモノトセバ大ニ再議ノ煩ヲ省クニ至ラン、然レトモ是レ必ズ併議スベシト云フニ非ズ、別ニ建議スルモ亦敢テ異存アルニ非ズ、只余ハ建議者ノ精神ヲ賛成スル者ナリ、其之ヲ併議スルト別議スルトハ固ヨリ諸君ノ意見ニ任ズ
野中 ○野中万輔曰ク、従来ノ慣習ニテ商家ニ奉公人ヲ雇入ルヽ時ニハ先ツ目見ヘヲ行フヲ例トス、此法タル主家ニ於テ初メ特約ナクシテ奉公人ヲ雇入レ、一二月ヲ経過シ、其奉公人ノ性質並ニ行状ノ如何ヲ試察シタル後始テ請人ヲ立テヽ年季ヲ約スルモノトス、而シテ主家ノ奉公人ヲ養フ恰モ親ノ子ニ於ケルガ如シ、読書筆筭ヨリ店向掛引其他百般ノ事ニ至ル迄皆之ヲ教フルモノトス、然ルニ其奉公人稍長シテ十七八才ニ至ルニ及ビ、予約ノ年季中随意ニ其身ヲ転ズル者近来益多ヲ加フルニ至ル、此事タル只ニ主家ノ迷惑ヲ致スノミナラズ結局其身ノ方向ヲ誤ルモノ少シトセズ、如此ニシテ荏苒経過セバ自ラ府下一般ノ商業ヲ衰頽セシムルノ不幸ナシト云フベカラズ、故ニ今ニシテ適宜ノ取締法ヲ設ケズンバ其弊害ノ及ブ所少々ナラザルベシ是レ余ガ此議場ニ本議ヲ発シタル所以ナリ
松尾曰ク、余ハ現ニ職工数十人ヲ雇使スル者ナリ、其契約ヲ履行シテ修業シタル者ト契約ヲ等閑ニシテ修業シタル者トヲ対比スルニ其勤
 - 第17巻 p.536 -ページ画像 
惰固ヨリ同一ニ非ズ、由是視之契約ヲ履行セシムルハ只ニ師弟ノ利益ヲ保護スル而已ナラズ精勤ノ美風ヲ養成スルノ傾向アリ、已ニ工ニシテ如此ノ好果アリ、商家豈又之ニ異ナルノ理アランヤ、要スルニ本議ノ如キ余ノ熱心賛成スル所ナリ
会頭曰ク、諸君中本議ヲ他日ニ譲ルベシトノ説アリタレトモ、本議ヲ全ク非トスルノ動議ナシ、其帰着スル所前議ト併テ建議スルト他日別ニ之ヲ建議スルトノ両説ニ止ルガ如シ、故ニ先ツ此両条ニ決ヲ取リ然シテ後他議ニ渉ルヲ要ス
益田曰ク、本議ヲ他日ニ譲ルベシトノ説アリ、思フニ此発議者ハ已ニ本議ヲ非トスルノ精神ヲ含ム者ノ如シ、余ガ本議ヲ前議ト併セテ建議セント論ジタルハ其精神専ラ本議ヲ賛成スルニ在リテ、其主トスル所必ズシモ両議ヲ併テ建議セントスルニ在ラズ、若シ満場本議ノ精神ヲ可決シタルモノトセバ或ハ本議ヲ他日ニ譲ルモ余ニ於テハ敢テ異存アルニ非ズ、故ニ今政府ヘ建議スル手続ヲ議決スルノ前ニ於テ本議精神ノ可否ヲ議決セン事ヲ要ス
於是会頭ハ更ニ各員ニ向ヒ本議精神ノ可否ヲ問フタルニ皆異存ナキ旨ヲ荅フルヲ以テ、猶之ヲ建議スルノ順序ヲ各員ニ問フニ別ニ之ヲ建議セントスルノ説ニ不同意ヲ唱フル者ナキヲ以テ、本議ハ建議者ヨリ政府ヘ建白案ヲ調査シ、猶次会ニ於テ衆議ニ附スルニ決シタリ、次ニ会頭ハ職工師弟間契約ノ事ニ付政府ヘ建議スベキ文案ニ就キ各員ニ其意見ヲ問ヒタルニ、衆皆異存ナキヲ以テ本案中一二妥当ナラザル所ヲ修正シテ理事本員ヨリ直チニ之ヲ政府ヘ建議スルニ決ス ○下略


東京商法会議所要件録 第一八号・第一六―一七丁 明治一三年一一月二九日刊(DK170040k-0002)
第17巻 p.536-537 ページ画像

東京商法会議所要件録  第一八号・第一六―一七丁 明治一三年一一月二九日刊
  ○参考部
    ○商家年季奉公人契約取締方之義ニ付建議
 去ル十日定式会議ニ於テ工業事務委員松尾儀助氏ヨリ議場ヘ建議相成候諸職工師弟間契約法御制定方之義ニ付政府ヘ建議スベキノ議ハ其節種々討論之末衆議一決致、右建白案更ニ御調査之上次会ニ於テ可否御議決可相成筈相成居候処、右ニ付キ本員退テ熟考仕候ニ、諸職工師弟間ニ鞏固ナル契約ノ成存セサルヨリ往々紛紜ヲ生シ、夫ガ為メ前途工業ノ進歩上ニ於テ損害不少義ハ嘗テ本員モ同様憂フル所ニシテ、右矯正之方法御講究相成候ハ至極御同意ニ御座候、然ル処右之弊害ハ独リ諸職工ノ間而已ニ止ラス従来府下各商問屋其外大店等ヘ商業見習トシテ年季奉公ニ住込候者ハ、今日諸会社銀行米商会所仲買等ノ稚丁ノ如ク月給若クハ日給ヲ以テ被雇候者ト其約束ヲ異ニシ、幼少之頃ヨリ相当ノ衣食ヲ給与シ且ツ筆算其外店向諸事漸々ニ為見習年季明ニ相成候上ハ相当ノ資本ヲ貸与シ、若クバ若干ノ金員ヲ投与シテ更ニ商業ヲ為営候者モ有之、又店向商業掛引等熟達致候上ハ相応ノ年給ヲ支給シ、而シテ年季明キノ上ニハ二三ケ年ノ礼奉公ヲ為致候約束モ有之、其外主従ノ間種々ノ申合慣習モ有之候処右年季奉公人ノ中近頃契約ノ十分ナラザルヨリ中途ニシテ其奉公先ヲ逐転シ、或ハ年季間ニ在リト云トモ種々口実ヲ搆ヒ、之ヲ去リテ自身ニ同業ヲ営ム等啻ニ其主人ニ迷惑ヲ相懸ケ候而已ナラス、遂ニ
 - 第17巻 p.537 -ページ画像 
己レガ方向ヲ誤候者不少、今日ニシテ右等之取締不相立時ハ益々前陳之弊害ヲ増長シ、自ラ商業衰廃之基トモ可相成ト奉存候間、前会福地源一郎君ヨリ御発議之通リ今般諸職工師弟間契約法御制定之儀ニ付建言中、右商家年季奉公人契約取締方モ併テ御制定ニ相成様致度、幸ニ議員諸君ニ於テ御賛成被下候ハヽ商業社会一般之幸福トモ可相成義ニ付、此段敢テ建議仕候也
  十三年十月三十日      東京商法会議所議員
                    野中万輔
東京商法会議所会頭
     渋沢栄一殿


渋沢栄一書翰 梅浦精一宛 (明治一三年)一二月五日(DK170040k-0003)
第17巻 p.537 ページ画像

渋沢栄一書翰  梅浦精一宛 (明治一三年)一二月五日   (土肥脩策氏所蔵)
拝啓今日是非出勤之積ニ候処昨夜より風邪気ニて夜ニ入寒風ニ冒され候ハ実ニ難渋ニ付残念ながら欠席仕候 ○中略
商家子弟年限議案ハ些冗長ニ過候様被存候、併趣意ハ右ニて異案無之候、衆議可然御取究可被下候
○中略
  十二月五日                      栄一
    梅浦様

渋沢栄一書翰 福地源一郎宛 (明治一三年)一二月五日(DK170040k-0004)
第17巻 p.537 ページ画像

渋沢栄一書翰  福地源一郎宛 (明治一三年)一二月五日 (土肥脩策氏所蔵)
○上略
商家子弟之事ハ前会大意ハ議決ニ候得共、建言文案些冗長ニ過候様被存候、御再案可被下候
○中略
  十二月五日                      渋沢栄一
   福地老兄


東京商法会議所要件録 第一九号・第九―一〇丁 明治一四年一月三一日刊(DK170040k-0005)
第17巻 p.537 ページ画像

東京商法会議所要件録  第一九号・第九―一〇丁 明治一四年一月三一日刊
  第十臨時会議 明治十三年十二月九日第六時三十分開場
   議員出席スル者 ○十八名
○上略
次ニ会頭 ○渋沢栄一ハ各員ニ向ヒ第二議案(参考部ニ付ス) ○商家師弟間ニ契約ヲ設クル議ヲ議スベキ旨ヲ陳述シ且ツ曰ク、本議ハ前会ニ於テ其筋ヘ建議スルニ決シ、前日已ニ議案ヲ刷行シテ諸君ニ閲覧ヲ乞フタリシガ、思フニ本案ハ曩キニ政府ヘ建議シタル職工師弟間契約ヲ要スルノ議ニ附随スベキモノニシテ、其案文少シク冗長ニ失スルノ恐アルヲ以テ更ニ簡短ナル一案ヲ編製シタリト、乃チ書記ヲシテ此再稿議案(参考部ニ付ス)ヲ朗読セシメ、各員ノ意見ヲ問フタルニ衆皆異議ナキヲ以テ、本議ハ之ヲ其筋ヘ建議スルニ決ス


東京商法会議所要件録 第一九号・第一二―一八丁 明治一四年一月三一日刊(DK170040k-0006)
第17巻 p.537-540 ページ画像

東京商法会議所要件録  第一九号・第一二―一八丁 明治一四年一月三一日刊
 ○参考部
    ○商家師弟ノ間ニ契約法ノ制定ヲ要スルノ建議案
 - 第17巻 p.538 -ページ画像 
謹テ惟ミルニ商業ノ盛衰ハ一国隆替ノ関スル所、固ヨリ農工業ニ譲ルベカラズ、苟クモ一国ノ殷富ヲ企図スル者之ヲ軽視ス可カフザルナリ然リ《(ラ)》而シテ之ヲ振起スル亦適当ノ保護勧奨ナカルベカラズ、蓋シ我国従来商家ノ慣習ヲ案スルニ父兄タル者初メ其子弟ヲシテ商業ヲ修習セシムルニ当リ他ニ之ヲ教フベキ学校ノ設立ナキヲ以テ、父兄ノ撰ム所若クハ子弟ノ志ス所ノ商家ニ托シ、所謂年季奉公人ノ名目ヲ以テ其商業ヲ習熟セシムルヲ以テ常トス、之ヲ簡説スレバ大店向ニ於テ数多ノ丁稚ヲ抱ヘ置クハ恰モ今ノ商業学校ニ於テ数人ノ学生ヲ教育スルガ如ク、其所謂年季ナルモノハ則チ今ノ学期ナリ、然リ而シテ此等商家ニ於テ其教授スル所ヲ見ルニ、日常筭筆ノ道及店向掛引等ノ事ニ過ギズシテ其不完全ナル事ハ固ヨリ言フヲ待タズ、未ダ適当ニ商業学ト名称スルニ足ルモノ成立セズト雖トモ、古来習慣ノ久シキ其商範ノ斯ク完全ナラザルニモ拘ラズ其子弟ガ放恣無頼ニ流レ軽佻浮薄ニ趨ルノ弊ナク、平生学ヒ得タル所ノ知識ヲ以テ後来能立身ノ大計ヲ定メ、終ニ繁華都城ノ中央ヲ占メ巨肆ヲ張リ暖簾ヲ掲ケテ以テ其商売ノ規摸ヲ拡張スル者多キヲ致スハ抑モ何ゾヤ、往時ノ教育法今日ノ教育法ヨリ尽セル所アリトスル歟、否ナ往時ノ商範ハ現今ノ商範ニ若カザルナリ、将タ昔年ノ子弟皆今日ノ子弟ヨリ敏達ナリトスル歟、何ゾ夫レ然ラン、其ノ却テ愚鈍ナルモ決シテ敏達ナルニ非ザルナリ、然ラバ則チ其原因果シテ何レニ在リトスルカ、想フニ此等ノ大店巨肆ニ在テハ従来各家格アリテ父祖ノ計画スル所ノ商業ヲ因襲伝承スル者其多キニ居リ、之ヲ要スルニ売買ノ摸範自ラ定マリアリテ其商業上必須トスル所ノ知識経験モ亦今日ノ如キヲ要セザル等ニ因縁スルモノ極メテ多カルベシト雖トモ、其原因中ニ在リテ最モ重要ノ部分ヲ占領スベキモノハ蓋シ往時商家師弟ノ間ニ十分契約ヲ重ンスルノ美習成存シ、而シテ当初丁稚即チ学生ガ商業ヲ学ブニ当リテ其師家ト予約スル年期即チ学期中ニ於テ漫リニ其方向ヲ転ゼザル事是ナリ、凡ソ其業ノ何タルヲ問ハズ之ヲ習修スルニ其心ヲ専ラニスル時ハ其進度速カニシテ特殊ノ熟練ヲ養成スルノ傾向アルハ争フ可ラザルノ通理也、今商業ヲ学ブニ於テモ豈又此通理ニ外ナル事有ラン哉、熟々従来我国商家ノ慣例ヲ案ズルニ其当初丁稚ヲ抱ヘ入ルヽニ当リテヤ必ズ先ツ目見ヲ挙行スルヲ常トス、此法タル商家ニ於テ初メ特約ナクシテ丁稚ヲ抱ヘ入レ、一二月ヲ経過シタル後其性質並ニ行状ノ如何ヲ鑑識シ始テ請人ヲ定メテ年季ヲ約スルモノトス、而シテ商家ノ其丁稚ヲ遇スル親ノ子ニ於ケルガ如ク、筆筭其他店向掛引等ニ至ル迄苟クモ其商業ニ必須トスル所ノ事項ハ一トシテ之ヲ伝授セザルハナシ、而シテ其年季明キ即チ卒業ノ後ニ至リテハ之ニ貸与スルニ相当ノ資本ヲ以テシ、若クハ又暖簾ヲ分与シ屋号ヲ譲リテ之ガ立身興家ノ計ヲ資クルヲ例トス、是故ニ其相互ノ関係タル其名ハ主従ニシテ其実ハ寧ロ尋常師弟ヨリモ親密ナルモノアリ、其子弟カ方向ヲ誤ラス専心其業ヲ習修シ終ニ能ク前途ノ大望ヲ達スルヲ得ルモノ豈亦偶然ナラン哉
今熟々我国商業社会ノ現状ヲ通観スルニ商家師弟ノ間契約ヲ忽視スルノ風習ヲ醸成シ、其丁稚ナル者漸ク成長シテ齢十七八才ニ達シ稍々伴頭ノ実務ヲ摂スルヲ得ルニ至ル時ハ未ダ予約ノ年季即チ学期内ニ在リ
 - 第17巻 p.539 -ページ画像 
テ全ク其業ヲ卒ラスト云トモ、毫モ己レニ便益アル時ハ早ク已ニ一己未熟ノ独力ヲ恃ンデ恣ニ其地ヲ換フル者アリ、或ハ其家ヲ棄テヽ顧ミザル者アリ、甚シキニ至リテハ其師家ノ営業ヲ妨害セントスル者アリ而シテ其父兄タル者亦前途ノ大計ヲ思ハズ目前ノ小利ヲ慕フノ情アリ只ニ其子弟ヲ訓戒セザル而已ナラズ或ハ内心其挙動ヲ喜ブ者ナシトセズ、已ニ弟子ニシテ其師家ヲ親視セズ師家豈其弟子ヲ子視スル事ヲ得ン哉終ニ其弟子ヲ虐使スルノ弊ニ陥ルハ亦人情ノ通則ナリト云ヘシ
蓋シ此悪弊タル維新革命ノ際ニ濫觴シ、明治五年十月第二百九十五号ノ公布 ○人身売買禁止令発スルノ後ニ氾濫シ、爾後因襲風ヲ為シ竟ニ今日ニ至リテハ其勢殆ド底止スル処ヲ知ラザルモノヽ如シ、思フニ此第二百九十五号ノ公布タル畢竟政府ガ売奴ニ類スル所業ヲ禁止スルノ精心ニ出デタル徳音ニシテ、商工業ヲ習修スル者ハ其限内ニ非ル事ヲ明示スルニ非ズヤ、然ルニ世人ガ自由ト放恣ヲ混同シテ商家ノ弟子ガ其師家ニ尽クスベキ正当ノ義務ヲ放棄スルヲモ猶之ヲ自由ノ範囲内ニ在リト誤認スルニ至リ、其弊相伝承シテ竟ニ今日ノ現状ヲ漸成シタルモノナルベシ、今ニシテ此悪弊ヲ匡済スルノ道ヲ講ゼザレバ我国ノ商業ハ只ニ軽佻浮薄ノ一方ニ偏重シ、終ニ復タ其権衡ヲ挽回スベカラザルニ至ランモ亦知ルベカラズ、苟クモ今日一国ノ殷富ヲ企図スル者豈之ヲ黙視スベケン哉、当会議所熟々之ガ救治ノ策ヲ案ズルニ、他ナシ則チ曇《(曩)》キニ当会議所ガ職工師弟間契約ノ義ニ付建議シタルガ如ク、商家師弟ノ間ニモ亦同様ノ振合ヲ以テ予メ先ヅ適当ノ契約定款ヲ設ケラレ、若シ之ニ準拠セザレバ其契約ハ裁判上無効トスルノ法律ヲ制定セラルヽニアルヲ信ス、或ハ曰ク商業ハ工業ト其性質ヲ異ニシテ敢テ恃殊《(特)》ノ技術ヲ要スルモノニ非ラズ、之レヲ学ブノ難易固ヨリ相均シカラザルモノアリ、其ノ師弟ノ関係亦職工師弟ノ関係ト同ジカラズ、故ニ商ニ在リテハ別ニ契約法ヲ要セズト、此ノ言ヤ商家ノ師弟ニ主従ノ別名アリテ然シテ後ニ来タス所ノ迷説ニシテ、蓋シ其ノ当ヲ得タルモノト言フベカラザルナリ、夫レ商ト云ヒ工ト云ヒ之レヲ学ブニ難易ノ同ジカラザルアリ、随テ其卒業ニ要スル学期ニ長短ノ差別コソアレ同ジク是レ専門ノ学業ナリ、工業ニ特殊ノ技術ヲ要スレバ商業ニモ亦特殊ノ練熟ヲ要スル者ナシトセズ、豈商家ニ此契約法ヲ要セズト為サンヤ、想フニ此言タル方今諸会社銀行新聞社若クバ米商仲買等ノ丁稚ノ如ク月給若クバ日給ヲ以テ一時ノ傭使ニ応ズル者ヲ見テ発シタルノ説ナラン、果シテ然ランニハ更ニ此ニ一言ノ弁解ヲ要スルモノアリ、何ゾヤ、抑モ此等ノ丁稚ノ如キハ仮令其年齢ハ猶幼稚ナルニモセヨ一タビ若干ノ給料ヲ得テ其職ヲ勤メン事ヲ約スル以上ハ是レ其傭主ニ対シテハ被傭人ノ位地ニ居ル者ナリ、商業ヲ学ブノ弟子ニ非ザルナリ、故ニ其相互間ノ関係ハ商業ヲ伝承スルノ師弟ニ非ズシテ而シテ是レコソ所謂主従ナル者ナリ、主従ノ間ハ固ヨリ此契約法ヲ要望スルノ限外ナリ、豈尋常商家ノ師弟ヲ以テ工人師弟ト異ナリトセン哉、或ハ又曰ク、商家師弟間ニ契約ヲ実施セシムルハ商家ノ師タル者ヲシテ其弟子ヲ束縛スルノ機会ヲ得セシムルモノナリト、是亦一隅ニ偏シテ全局ヲ察セザルノ説ノミ、其惑フヤ亦甚シト云フベシ、抑モ本議ノ要旨トスル所ハ商家ノ子弟間ニ必ズシモ契約ヲ結了セシムルト云フニ非ズ、只予メ相当ノ制
 - 第17巻 p.540 -ページ画像 
限ヲ示シ此ニ準拠セザルノ契約ハ裁判上無効トスベシト云フノ意ニ過ギズ、之ヲ要スルニ人民ヲシテ契約ノ忽ニスベカラザルヲ悟ラシムルニ外ナラズ、若シ師家ヲシテ其弟子ニ追《(迫カ)》テ此制限外ナル無法ノ契約ヲ強結セシメ、以テ之ヲ束縛スルノ余地ヲ師家ニ与ヘタリトセンカ、其契約ハ法律ヲ以テ制定スル所ノ限外ナリ、裁判上効力ナキモノナリ、効力ナキノ契約ハ以テ其弟子ヲ束縛スルノ具ト為スベカラザルナリ、況ンヤ其契約ヲ結ブト否トハ其師弟間ノ自由ニアリテ法律ノ得テ制禦スル所ニ非ルヲヤ、猶之ヲ約言セバ只予メ云々ノ定款ヲ示シ、之ニ準拠セザルノ契約ハ裁判上無効ナリト云フニ過ギズ、此制限外ノ契約ヲ禁ズルト云フノ酷意ヲ包含セザルナリ
若シ果シテ前陳ノ如ク当会議所ガ要望スル法律ヲ制定セラルヽニ至ラバ、自是後商業社会ニ在リテハ漸ク契約ヲ重ンズルノ美習ヲ養成シ、商家ノ師弟各々相信ジ只ニ師家タル者因テ損害ヲ免カルヽヲ得ル而已ナラズ其弟子モ亦方向ヲ誤ルノ憂ナク、商業社会ノ秩序整然トシテ其宜ヲ得、我国商運ノ針路ハ復タ軽佻浮薄ニ向フノ弊ニ陥ラズシテ而シテ真正着実ノ一方ニ漸進シ、終ニ我国致富ノ一大基本ヲ確立スルニ至ラン事ハ当会議所ガ固ク信ジテ疑ハザル所ナリ、伏テ希クハ閣下明鑑ヲ賜ヒ本義ヲ採択セラレン事ヲ 頓首謹白

  明治十三年十二月      東京商法会議所会頭
                      渋沢栄一
    内務卿 松方正義殿
    大蔵卿 佐野常民殿


東京商法会議所要件録 第一九号・第一八―一九丁 明治一四年一月三一日刊(DK170040k-0007)
第17巻 p.540-541 ページ画像

東京商法会議所要件録  第一九号・第一八―一九丁 明治一四年一月三一日刊
 ○参考部
    商家師弟間契約方之義ニ付建議
先般諸職工師弟間契約法御制定相成度旨建儀仕候処@猶又退《(議)》テ熟考仕候ニ、従来商家大店向ニ於テ丁稚抱入候節ハ、当初目見ト名付一二ケ月間ハ其行状性質等ノ如何ヲ試ミ、果シテ見込有之者ト認候上ハ更ニ請人相立年季約束取結、若シ本人首尾能ク年季明相成候上ハ相当之資本ヲ貸与シ、暖簾ヲ分カチ屋号ヲ譲ル等総テ其営業向万端世話致候慣例ニシテ、右年季修業中ハ師弟相互ニ其契約ヲ守リ、師家ハ其丁稚ヲ遇スル親ノ子ニ於ケルガ如ク、筭筆其他店向売買掛引等苟クモ其商業ニ必須トスル所ノ事項ハ挙テ之ヲ教授シ、随テ丁稚ニ於テモ専心其業ヲ修習シ軽佻ニ趨リ候様之義無御座候処、近来此等ノ間ニ於テモ契約ヲ重ンゼザルノ弊風相生シ、商家丁稚タル者猶其修業年季中ニ在リト雖トモ目前之小利ヲ見テ恣ニ其身ヲ転シ候者間々有之、甚シキニ至リテハ其師家之営業ヲ妨害セントスル者モ有之、之ガ為メ只ニ師家ノ迷惑ヲ引起シ候而已ナラズ其身モ亦往々方向ヲ誤リ候者不少、此儘ニテ打過候ハヾ益々軽佻之風ニ推シ移リ商運衰頽之基トモ可相成深ク憂慮罷在候、就テハ先般当会議所ガ職工師弟間契約之義ニ付建議仕候同様之振合ヲ以テ、各商家師弟間ニ於テモ相当之契約法御制定相成候様仕度、尤近来銀行諸会社新聞社米商仲買等之丁稚ノ如キ給料ヲ得テ雇使ニ相応シ候者ハ其実商業ヲ脩習仕候者ニ無御座、此等ハ明治五年十月
 - 第17巻 p.541 -ページ画像 
中尋常年季奉公人雇入之義ニ付御布告相成候制限モ有之候ニ付、右成規ニ準拠仕候ハ勿論之義ニシテ此類ノ者ニハ別段契約法ノ御制定ヲ要望仕候義ニハ無御座候得共、前件各商家ニ於テ商業修習ノ為メ契約候者ハ其関係全ク職工師弟ト同様之義ニ御座候間何卒此辺御斟酌被成下此議前議ト併テ御採択相成候様仕度、此段猶又建議仕候也
                 東京商法会議所会頭
   明治十三年十二年十四日               渋沢栄一
     内務卿 松方正義殿
     大蔵卿 佐野常民殿


東京商法会議所要件録 第二一号・第二〇頁 明治一四年二月一〇日刊(DK170040k-0008)
第17巻 p.541 ページ画像

東京商法会議所要件録  第二一号・第二〇頁 明治一四年二月一〇日刊
  ○参考部 明治十三年東京商法会議所事務報告
 ○商家師弟間契約方之義ニ付内務大蔵両卿ヘ建議之件
   本議ハ十一月九日第九臨時会ニ於テ審議ノ末終ニ建議者野中万輔氏ヨリ政府ヘノ建白案ヲ製シ、次会ニ於テ衆議ニ附スベシト云フニ決シタリ、依テ十二月九日第十臨時会議ニ附シタルニ原案之通リ可決シ其十二日之《(マヽ)》ヲ内務・大蔵両卿ヘ建言シタリ



〔参考〕竜門雑誌 第六一五号・第四六―四七頁 昭和一四年一二月 東京商法会議所に就て(六)山口和雄(DK170040k-0009)
第17巻 p.541-542 ページ画像

著作権保護期間中、著者没年不詳、および著作権調査中の著作物は、ウェブでの全文公開対象としておりません。
冊子版の『渋沢栄一伝記資料』をご参照ください。