デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.2.19

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
1款 東京商法会議所
■綱文

第17巻 p.660-695(DK170053k) ページ画像

明治14年7月13日(1881年)

当会議所、大蔵省商務局ノ依頼ニヨリ十四年二月以降船舶運輸ノ景況ニ付調査ス。栄一理事本員トシテ調査ニ参与シ、是日当会議所会頭トシテ右調査書ヲ農商務省商務局長河瀬秀治ニ提出ス。


■資料

東京商法会議所要件録 第二二号・第五―六頁 明治一四年二月一八日刊(DK170053k-0001)
第17巻 p.661 ページ画像

東京商法会議所要件録  第二二号・第五―六頁 明治一四年二月一八日刊
  第十九定式会議 明治十四年二月九日午後第七時開場
    議員出席スル者 ○二十七名
○上略
次ニ会頭(福地源一郎)ハ議員川崎八右衛門・岸田吟香両氏ノ退会ヲ報告シ、右終テ更ニ本月五日商務局ヨリ船舶運輸ノ景況ニ関シ下問アリタル旨ヲ報告シ、其全文ヲ朗読ス(下問書ハ参考部ニ付ス)、時ニ渋沢君ハ右下問ノ次第ヲ演述シテ曰ク
 抑モ此下問書ニ拠テ之ヲ見ルニ此度政府ガ運輸ノ景況ニ就キ斯ル調査ヲ要望セラルヽハ蓋シ沿海運輸ノ益々拡張ヲ図ラルヽニ出ヅルモノニシテ、実ニ軽々ニ付ス可ラザルモノトス、但シ本件ニ就テハ去ル五日特ニ商務局ヨリ主務ノ役員出張セラレ、此調査雛形ニ拠レバ実ニ容易ノ業ニ非ルヲ以テ之カ全成ノ難キガ為メ此調査ヲ挙テ拒絶セラルヽガ如キ事ナキヲ希望シ、暫ラク其要項ヨリ之ニ着手シ、漸次ニ復申セン事ヲ要スル旨ヲ懇談アリ、且ツ之ヲ運輸船舶事務委員益田孝君ニ諮リタルニ、同氏モ亦之ヲ承諾スルハ是レ本会ノ義務ナルベシトノ見込ニテ之ガ調査ノ考案ヲ申シ置カレタレトモ、斯ハ他日ニ譲リ聊カ玆ニ此下問ニ就キ余ガ取扱フタル手続ヲ報道シテ以テ更ニ諸君ノ考案ヲ促カス事爾カリ
於是会頭(福地源一郎)ハ之ヲ承諾スベキヤ否ヲ問フタルニ、各員異議ナキヲ以テ、本議ハ理事本員及運輸船舶委員等ニテ之ヲ調査シ、猶及バザル所アレバ随時自余ノ議員ニ謀リテ其助成ヲ求ムル事アルベシト云フニ決ス


東京商法会議所要件録 第二二号・第三五―三六頁 明治一四年二月一八日刊(DK170053k-0002)
第17巻 p.661 ページ画像

東京商法会議所要件録  第二二号・第三五―三六頁 明治一四年二月一八日刊
    参考部
沿海運輸之便否ハ内外商業上ニ大関係ヲ有スルモノニ有之候処、或者船舶之不足ナルヨリ物質之運費過多ナルノミナラズ、之ガ為メニ往々貨物販売之時機ヲ失スルニ至ルモノ不尠哉ニ相聞候得共、未タ実際諸港出入之船数・頓数其他積荷数量及運賃割合等詳報ヲ得ルニ由ナク茫洋ニ附シ有之候折柄、若之ヲ瞭知スルヲ得ハ官民共ニ便利頗ル多カルベシト被察候、就テハ其会議所ニ於テ右事項可成丈調査ヲ遂ケ御報道有之候様致度、乃別紙調査箇条書相添此段申入候也
  明治十四年二月五日          河瀬商務局長
  東京商法会議所会頭
    渋沢栄一殿
 追而別紙調査箇条書差進候得共差当リ右之如ク細密ニハ一時ニ行届難キ義トモ被存候間、其全成ハ漸次ニ期シ、調査行届之分不取敢復報有之度此段申添候也
   ○別紙調査箇条書ハ要件録ノミナラズ官衙諸達並上申書綴ニモ見当ラズ。


東京商法会議所要件録 第二四号・第三―八頁 明治一四年三月一二日刊(DK170053k-0003)
第17巻 p.661-663 ページ画像

東京商法会議所要件録  第二四号・第三―八頁 明治一四年三月一二日刊
  第一委員総会 明治十四年三月七日午後六時卅分開議
 - 第17巻 p.662 -ページ画像 
○第二 大蔵省商務局ヨリ下問ニ係ル船舶運輸之景況調査手続協議之件
抑モ本件ハ去二月五日商務局ヨリ下問セラルヽモノニシテ、爾後同月九日第十九定式会ニ於テ之ヲ議事ニ付シタルニ、本件ノ如キハ我国海運ノ開進上ニ就テ実ニ忽ニスベカラザルノ問題ナレバ兎ニ角其下問ニ応ズベシト云フニ決シタリシガ、蓋シ同局ヨリ調査ヲ要望セラルヽ所ノ要項ヲ挙グレバ
 第一 日本沿海ニテ西洋形船舶ノ寄泊スルヲ得ベキ港湾之数
 第二 本邦人ノ雇使スル外国船ノ数、噸数並ニ本邦人ガコレヲ雇使シテ内地沿海ヲ通航スル度数
 第三 本邦人ガ直貿易ノ為メ雇使シタル外国船ノ数、噸数並ニ其航海ノ度数
 第四 外国人カ其船ヲ以テ互市開港場ノ間ニ其貨物ヲ運搬シタル船数並ニ噸数
 第五 内外運賃ノ比較
以上五項ノ調査タル其区域甚ダ広漠ニシテ頗ル至難ノ事業ナレバ、今会此調査ノ手続ヲ議スルニ当リ各員ノ間其論議ハ一ニシテ足ラザリシガ、到底其考案ハ渋沢・平野両君ノ説ニ帰シタリ、渋沢君ノ説ニ曰ク以上五項ノ調査タル其区域ハ独リ一港一都ノ間ニ止ラズ普ク全国ニ渉ルモノトス、是レ蓋シ本会ガ調成スルコト能ハザルノ事業ナラン歟、然リト云トモ止ヲ得ズンバ東京ヨリ重ニ貨物ヲ運出シ、ヤヽ当地ト親密ナル関係ヲ有スル各地ノ港湾ヲ調査シ、其貨物運送ノ多寡ヲ以テ之ヲ区別シ、以テ其海運ノ景況ヲ上申スルニ止リ、其他各地方ノ細況ニ至テハ能ク実際ニ調査シ得ザルヲ以テ之ニ答フルモ可ナラン歟、之ヲ要スルニ第二項《(一カ)》ヨリ第五項迄ノ調査ハ所謂思想上ノ見解ヲ以テシ、本会ノ考案凡ソ斯クノ如シト云フニ止ラシメバ或ハ此下問ニ応ズル事能ハザルニアラズト雖トモ、斯ク簡単ナル調査ヲ以テセバ亦確実ナラザルノ嫌アルヲ恐ル、然ラバ細密ノ調査ヲ求メン乎是レ本会ノ得テ任シ難キ所ナリ、何トナレバ本会ノ如キハ只東京一都府ノ景況ヲ調査スルヲ得ベシト云トモ全国運輸ノ細況ノ如キハ之ヲ調査スベキノ責任ヲ有セズ、否ナ之ヲ実際ニ調査スル事能ハザルヲ如奈ンセンヤト、平野君ノ説ニ曰ク、抑モ商務局ニ於テ如此調査ヲ要セラルヽモノハ其精神安クニ在ルカ、夫レ此調査ノ如キハ普ク全国ニ渉ルモノナリ、而シテ同局ハ能ク全国ノ商務ヲ管理セラルヽノ官衙ナルニ非ズヤ、然ルニ同局ニ於テ調成シ能ハザル事項ヲ以テ之ヲ本会ニ付ス、其全成ヲ期シ難キ論ヲ待タズ、是ヲ以テ本会ハ先ツ同局ニ向テ其能ハザルモノハ之ヲ能ハザルヲ以テ答ヘ、然シテ後本会ハ其調査ヲ得ベキモノニ就キ其方法ヲ審議シ先ツ全国各地ニ向テ調査ヲ要スベキ事項ヲ表記シ以テ雛形ヲ作リ之ヲ同局ヘ献シ、広ク地方ヨリ其細況ノ報告ヲ求メラルベシトノ議ヲ建テ、而シテ此中東京一地方ニ係ル調査ハ右ノ雛形ニ準ジテ本会之ヲ担当スベキモノトセバ如何ト、此説タル稍々適実ナルガ如シト云トモ、是レ或ハ其速成ヲ望ミ難キノ恐アレバ各員ハ猶以上ノ五項ニ就キ交々論議ヲ尽クシタレトモ、到底今会ニ之ヲ決シ難ケレバ渋沢君ハ各員ニ向ヒ本件ノ調査タル甚ダ難事ニシテ能ク今夕ニ之ヲ議究スベキ
 - 第17巻 p.663 -ページ画像 
ニ非ラズ、且商務局長ノ此下命アル、想フニ頗ル緊要ノ意見ヲ寓セラルヽモノヽ如シ、然ルニ理事本員中殊ニ関係多キ益田孝君ハ現ニ旅行中ナルヲ以テ追テ同君ノ帰京ヲ期シ、更ニ臨時本課ノミノ委員会ヲ開キ商務局長若クハ代理官吏ノ臨席ヲ請ヒ猶之ヲ審議スルモノトセバ如何ト云フニ他皆之ニ同意ナルヲ以テ、本件ハ次会ニ譲リ更ニ其調査方法ヲ議スベキニ決ス
  ○第一委員総会ニ出席セル議員ハ渋沢栄一・大倉喜八郎・清水九兵衛・丹羽雄九郎・平野富二・野中万輔・条野伝平・柴崎守三ノ八名ナリ。


渋沢栄一書翰 梅浦精一宛 (明治一四年)三月二一日(DK170053k-0004)
第17巻 p.663 ページ画像

渋沢栄一書翰  梅浦精一宛 (明治一四年)三月二一日   (土肥脩策氏所蔵)
益田君も帰京ニ付彼船取調一件も一日相催し申度、是ハ益田氏と河瀬君ヘ御都合御聞合可被下候
○中略
  三月廿一日               渋沢栄一
    梅浦様


東京商法会議所要件録 第二六号・第一―一三頁 明治一四年四月一一日刊(DK170053k-0005)
第17巻 p.663-666 ページ画像

東京商法会議所要件録  第二六号・第一―一三頁 明治一四年四月一一日刊
  運輸船舶事務委員会 明治十四年三月卅一日午後第五時開議
本日特ニ此委員会ヲ開キタル所以ハ本月七日委員総会ノ議定スル所ニ由ルモノニシテ、来会スル者理事本員渋沢栄一・益田孝、該課委員益田克徳・平野富二・野中万輔ノ五名ニシテ、商務局長河瀬君ハ属官一名ト共ニ此会ニ臨マル即チ午後第五時本議ヲ開ク、時ニ渋沢君ハ各員ニ向ヒ先ツ去七日委員総会ノ決議ニ基キ本日特ニ此会ニ向テ商務局長ノ御臨席ヲ望ミタル所以ヲ述ベ、且ツ前会議事ノ要領ヲ演述シテ曰ク蓋シ前会ニ於テ各員ノ討議スル所ヲ聞クニ、平野君ノ如キハ此御下問ニ応シテ之ヲ調成セントスルハ本会ノ得テ能クシ難キノ事情ナキニ非ズ、故ニ其能ハザルモノハ具サニ其事由ヲ上陳シ、然シテ後本会ハ独リ其調査ヲ得ベキモノニ就キ其方法ヲ審議シ、先ツ全国各地ニ向テ調査ヲ要スベキ事項ヲ表記シ、以テ雛形ヲ作リ之ヲ商務局ニ献シ、広ク地方ヨリ其細況ノ報告ヲ求メラルベシトノ議ヲ建テ、而シテ此中東京一地方ニ係ル調査ハ右ノ雛形ニ準シテ本会之ヲ担当スベシトノ説ナレトモ、余ヲ以テ之ヲ見レバ今其調査ヲ将来ニ期スルモノトセバ是レ或ハ可ナリト雖トモ此御下問ニ応ジテ運輸ノ実況ヲ求メントセバ此方法タル啻ニ其速成ヲ望ミ難キノ恐アルノミナラズ、或ハ却テ其目的ヲ達ス可ラザルノ嫌ナキニアラザル乎、然ラハ此下問ノ要項ニ就キ所謂思想上ノ見解ヲ以テシ、全国運輸ノ実況斯ノ如シト云フニ止ラシメバ得テ能クシ難キニ非ルヘシト雖トモ、其調査ノ細況ニ渉ラサル或ハ亦御下問ノ趣旨ニ抵触スルノ嫌ナキニ非ズ、故ニ止ムヲ得ズンバ各地方中東京ノ商線ニ当リ貨物出入ノ最モ多クシテ常ニ親密ノ関係ヲ有スル港湾ヲ調査シ、其船舶出入ノ多寡、貨物運送ノ大小ニ依リテ之ヲ区別シテ以テ東西互市ノ運賃高低如何ヲ察シ又之ヲ欧米諸国ニ在テ沿海航路ノ運賃如何ニ比準シ、此比例ヨリシテ漸ク実際ノ景況ヲ求メバ、我国ノ船舶果シテ内外貿易ノ需用ニ供スルニ足ル乎否ヤノ考案ヲ喚起スルノ資料ヲ得ベキ歟、然レトモ全国各地運輸ノ細況ヲ挙テ本会其調査ヲ
 - 第17巻 p.664 -ページ画像 
企ツルガ如キハ到底能クシ難キノ恐アルヲ以テ、寧ロ此類ニ至テハ其調査ヲ官権ニ求ムルノ確実ニシテ且ツ速成ヲ得ルニ若カザル乎ト愚案ヲ陳述シタリシガ、猶他ニ此調査ヲ全フスベキノ良法ナキカト百方審案ヲ尽クシタレトモ要スルニ其方法ハ前陳ノ如クニシテ他ニ良案ナケレバ、兎ニ角次会ヲ以テ更ニ審議スベシト云フニ依リ遂ニ今会ニ於テ河瀬君ノ御臨席ヲ仰ギ、我輩ガ此ニ討議スル所ニ就キ猶御下問ノ要旨ヲ審ニセン事ヲ要シタル所以ナリト
益田孝君先ツ説ヲ発シテ曰ク、蓋シ此下問ニ応スルノ調査タル其極メテ難キハ渋沢君ノ云ハルヽガ如シト雖トモ全ヲ以テ之ヲ考フレバ決シテ其方法ナキニ非ルナリ、然リ而シテ其調査ヲ官ニ求メバ税関ト云ヒ各地船舶ノ出入ト云ヒ、一層之ヲ詳ニスルヲ得ベキハ固ヨリ論ヲ竢ザルベシト雖トモ、葢シ商務局ヨリ之ヲ当会ニ下問セラレタル趣意ヲ察スルニ我輩運輸ノ実業ニ従事スル者我国海運上ニ就キ果シテ如何ナル意見ヲ抱ク乎、若シ実務者ノ所見ヲ取テ之ヲ官ノ調査ニ照ラセバ必ズシモ実際ヲ探リ事実ヲ知ルノ証左ト為スニ足ラン、是レ商務局ガ此下問アリシ所以ナラン歟、果シテ然リトセバ我々ハ勉テ実際ト事実トニ就キ其証左ヲ求メテ以テ我国運輸ノ便否ヲ講究セザルベカラズ蓋シ商業ノ隆替ハ要スルニ運輸ノ便否ニ関スルヤ大ナリ、此運輸ニシテ振ハザレバ商業ハ益々萎靡衰頽ニ帰セン耳、今ヤ幸ニ官此ニ注念セラルヽノ機運ニ際会シタレバ我輩業ニ之ニ任ズルモノハ鋭意其調査ヲ尽クシテ以テ益々其振起ヲ冀ハサルベカラズ、余ガ考案ヲ以テセバ仮令此御下問ナキモ我商法会議所ノ如キハ全国船舶運輸ノ景況如何ニ至リテハ之ヲ知ラザル可カラザルナリ、而シテ其之ヲ知ルノ方法ヲ講スルハ亦本会至当ノ義務ニ非ル乎、況ンヤ已ニ此下問アルニ於テオヤ、固ヨリ其調査タル委員ノ見込ニ依リ或ハ御下問書中ニ掲載セラルヽガ如クナラザル所アルヤモ知ルベカラズト雖トモ、要スルニ我国ノ海運ハ内外貿易ノ需メニ応ズルニ足ル乎否ヤヲ事実ニ求メ実際ニ徴スルニ過ギザルベケレバ今此御下問ノ要項中其二項ニ分カルヽモノヲ一項中ニ包括シ、又ハ一項ヲ二項ニ分チテ之ヲ調査スルモ敢テ妨ケナカルベキヲ信ズ、今聊カ此要項ニ就キ余ガ調査ノ考案ヲ述ベンニ第一項(日本沿海ニテ西洋形船舶ノ寄泊スルヲ得ヘキ港湾之数)ノ如キハ先ツ暫ラク東京ヲ中心ト仮定シ、是ヨリ東西ニ分レテ沿海諸国ノ港湾ニ就キ其大小深浅及ビ船舶ノ難易等ヲ撿スベシ、例ヘバ甲港ハ四季常ニ風波ノ害ナク船舶安全ニ碇泊シ得ルト云トモ、乙港ハ間々風浪ノ妨害多ク船舶ノ寄泊ニ便ナラザル等ヲ察シ以テ其地形及ヒ航海ノ安危ヲ調査シ、我輩ノ未タ見聞セザル所ハ之ヲ実務者ニ諮詢セバ全国各地中西洋形船舶ノ寄泊スルニ足ルベキ港湾ハ何ケ所ナルヤヲ知ルハ容易ナルベシ、又第二項(本邦人ノ雇使スル外国船ノ数、噸数並ニ本邦人ガ之ヲ雇使シテ内地沿海ヲ通航スル度数)第三項(本邦人ガ直貿易ノ為メ雇使シタル外国船ノ数、噸数並ニ其航海ノ度数)ノ如キハ外国船ノ使用ニ内外ノ別コソアレ之ヲ雇使スルモノハ同シク日本物品ヲ運送スルモノニシテ、其船ハ斉シク外国船ナレバ此類ニ至リテハ我物産ノ外国船ヲ以テ輸出スルモノヲ調査セバ可ナラン歟、而シテ第二項ノ本邦人ガ内地運送ノ為メ雇使スル外国船ハ従来ノ規則ニ拠レバ日本人外国船ヲ雇入シテ之ヲ内国沿海某港ニ差送クル時ハ、税関ニ至リ先ツ其税金ヲ預ケ納メ切手ヲ得テ之ヲ某港ニ送クレバ其港税関ヨリ之ヲ差出
 - 第17巻 p.665 -ページ画像 
地ノ税関ニ向テ送付シ、其税金ヲ傭主ニ返還スルノ例ナルガ故ニ今之ヲ各港ノ税関ニ就テ之ヲ調査セバ其員数並ニ噸量ヲ知ル事ヲ得ベシ、又第四項(外国人ガ其船ヲ以テ互市開港場ノ間ニ其貨物ヲ運搬シタル船数並ニ噸数)ノ調査ハ外国人ヨリ税関ニ差出シタル送品届書ヲ求メバ其互市各港場ノ間ニ運搬スル貨物ノ大数ヲ得ベシ、而シテ第五項ニ掲クル内外運賃ノ比例ヲ得ントスルニハ、先ツ支那沿海ノ運賃ヨリ英米ニ及ボシ、各国ノ運賃ヲ挙テ之ヲ内国各地ノ運賃ニ比較シ、其高低ノ如何ヲ察シ、且ツ英米諸国ニ於テ海外貿易ニ使用スル船舶ハ其数幾千ニシテ我国ニ於テハ何程ト云フヲ挙ゲ、内外相対照スルニ至ラバ其運貨之《(賃)》ヲ外国ニ比較シテ果シテ高直ナルヤ否ヤ、及我国ノ船舶ヲ外国ノ船舶ニ比較其多寡如何ヲ観察スルニ足ラン歟、而シテ其運賃果シテ高貴ナリトセバ其高貴ナル所以ハ船舶寡少ナルニ由ル乎、将タ物品ノ多キガ為メ乎ヲ推究スルハ亦容易ノ業ナルベシ、若シ夫レ其事実ヲシテ以上ノ調査ニ就キ明晰ナラシムルヲ得バ今日海外ヘ輸出スルニ足ルベキ品物ニシテ其輸出ヲ得ザルモノハ其理由如何ン、又斯ク運賃高貴ナルニモ拘ラズ船舶ヲ新造スル者寡少ナルハ其原因如何ン等ハ自ラ之ヲ観察スルヲ得ベキ乎、是レ余ガ切ニ此調査ヲ本会ニ望ム所以ナリト、於是平野君ハ全国各地運輸ノ景況ヲ調査センニハ前会ニ陳述スルガ如ク、一定ノ雛形ヲ以テ東京並ニ各地ヨリ一年若クバ二年前ニ遡リテ其調査ヲ求ムベシ、然レトモ運賃其他貨物ノ数量等ニ至テハ全国運輸ノ過半ヲ掌握スル彼ノ三菱会社ノ取扱ヲ見ザレバ到底実況ヲ得難シト云ヒ、益田克徳君ハ益田孝氏ノ説ヲ賛成シ且ツ運賃並ニ貨物出入ノ調査ハ之ヲ船主ニ求メサルモ貨主能ク之ヲ知ルガ故ニ其大数ハ貨主ニ就テ之ヲ調査スルノ道アリト云ヘ、其他細項ニ渉リテハ猶一二ノ説モアリシガ、各員ノ討議稍々定ル時、河瀬君ハ此下問ヲ発シタル趣旨ヲ述ベテ曰ク、抑モ商務局ガ此調査ヲ貴会ヘ望ミタルハ要スルニ諸君ノ論セラルヽガ如クニシテ、我国物貨運賃ノ高貴ナルモノハ果シテ船舶ノ不足ニ原因セザルヲ得ザル之ヲ事実ニ徴シテ明カナルガ如シト雖トモ、其之ヲ証明スベキ資料ナキガ故ニ船舶ノ不足ト云ヒ運賃ノ高貴ト云ヒ、茫洋トシテ其原因何レニ在ルヤハ未ダ之ヲ確定スベカラズ、故ニ若シ夫レ諸港出入ノ船数・噸数其他貨物ノ数量及運賃ノ割合等之ヲ実際ニ調査スルヲ得テ果シテ我国船舶不足ナルガ為メ運賃高貴ヲ及シ随テ殖産貿易ニ障害アリトノ実蹟ヲ挙グルヲ得バ民間有志者ハ益々造船事業ノ忽ニスベカラザルヲ知リ政府モ亦之ヲ保護スルノ策ヲ怠ラザルベシ、如此官民共ニ力ヲ造船ノ事業ニ尽クシ益々海運ノ拡張ヲ図ラバ物産ノ興起商業ノ振起ハ期セズシテ自ラ其功ヲ見ルニ至ルベシ、是レ此調査ヲ数会《(貴カ)》ニ委托スル所以ナリ、且ツ夫レ此調査事項ノ中船舶寡少ノ実蹟ヲ証明スルニ足ル限リハ敢テ下問之指示ニ拠ラザルモ可ナリ、而シテ此等事項ノ中、官ニ於テ調査シ得ベキモノアリトセバ商務局ハ決シテ其周旋ヲ怠ラザルベシ、望ラクハ諸氏此意ヲ諒シテ其方法ヲ議定セラレン事ヲ
於是渋沢君ハ各員ニ向ヒ余ガ此調査ヲ難シト云フモノハ、前ニ陳述スルガ如ク其調査ノ区域甚ダ広漠ニシテ能ク其実数ヲ得難キヲ恐レテナリ、然レトモ今益田孝君ノ所説ヲ察スルニ敢テ全ク其途ナシト云フベカラズ、且ツ又河瀬君ノ演説ヲ拝聴スルニ同君ノ要望セラルヽ所モ亦
 - 第17巻 p.666 -ページ画像 
此一点ニ外ナラザルガ如シ、依テ此御下問ノ事項ハ先ヅ益田孝君ノ考案ニ拠テ之ヲ調査スル事ト定メ、而シテ当講委員《(該カ)》ハ此大綱ニ準シテ其細目ヲ調査シ、猶官ノ手ヲ仮リテ調査スベキモノアラバ之ヲ商務局ニ請フトセバ如何、ト云ハレタルニ各員皆之ニ同意ナルヲ以テ、本議ハ終ニ此ニ決シ散会シタルハ午後十一時ナリ


渋沢栄一書翰 梅浦精一宛 (明治一四年)四月五日(DK170053k-0006)
第17巻 p.666 ページ画像

渋沢栄一書翰  梅浦精一宛 (明治一四年)四月五日   (土肥脩策氏所蔵)
○上略
又船舶調之義も大要ハ先日之小集ニ相決し候得共、調査手続を起草し受持相定申度ニ付、是又明後日迄ニ御調被下度候、併是ハ文飾ニ及不申只廉書様ニ御取調被下候方可然と存候、譬ヘハ各港湾取調手続此方法ハ云々又支那其外船舶運賃取調此方法ハ云々と申位ニテ可然奉存候尚益田ニも説有之哉ニ候得共、兎ニ角御起草可被下候
右申上度 匆々白
  四月五日                渋沢栄一
    梅浦精一様


東京商法会議所要件録 第二七号・第一―四頁 明治一四年四月二一日刊(DK170053k-0007)
第17巻 p.666-667 ページ画像

東京商法会議所要件録  第二七号・第一―四頁 明治一四年四月二一日刊
  第二委員総会 明治十四年四月十二日午後第六時開議
    ○商務局下問運輸船舶ノ景況調査之件
渋沢君ハ去月卅一日運輸船舶事務委員之討議スル所ニ基キ草定シタル調査手続書ニ就キ各員ノ意見ヲ求メタルニ、或ハ輸出入品ノ原価ヲ以テ日本人ガ使用スル外国船ノ員数並ニ噸数ヲ求ムルモ、貨物ノ種類ニ依リ、其形量小ニシテ其価格大ニ、其価値ハ廉ナルモ其容量ノ大ナルモノアリ、且ツ欧米ニ輸送スルモノハ概スルニ其容量小ニシテ其価高貴支那地方ニ輸出スルモノハ其形体ハ粗大ニシテ其価低廉ナルモノトス、然ルニ今其原価ヲ以テ各国輸出入上船舶使用ノ多寡ヲ知ラントスルモノ寧《(衍)》ロ其確実至当ノ比例ヲ得ザルベシト云ヒ或ハ又原価ヲ以テ之ガ標準ト為スヲ不適当ナリトセバ我国輸出入品ニ就キ之ヲ国分ケシ其数量ノ大小ヲ概算シテ以テ其運賃ヲ筭定セバ如何ン、仮令バ樟脳ハ支那ニ十万斤英国ニ五万斤トセバ、之ニ其運賃ヲ乗ジテ以テ各国総体ノ運賃ヲ筭出スルガ如クセバ、其方法ハ異ナルモ其調査ノ結果后《(即カ)》チ我国船舶ノ多寡如何ヲ観察スルニハ相一ナルベシト云ヒ、或ハ又税関ニ就キ輸出入品ノ数量ヲ調査シ之ニ依テ其考案ヲ定ムルノ確実ナルニ若カズト云ヒ、猶各員ノ間討議アリシガ、要スルニ本邦人ノ内地通商及ヒ直貿易ノ為メ傭使スル外国船ヲ調査スルノ目的ハ日本ノ物産ヲ運送スルガ為メ何程ノ船舶ヲ外国ニ資リタルヲ観察スルニ在レバ、先ヅ横浜税関ニ詢カリテ其之ヲ知ルノ方法ヲ求ムルニ若カズ、横浜ニシテ果シテ此調査ヲ得レバ自余各港モ亦同一ノ調査ヲ得ベキガ故ニ、先ヅ之ヲ該所税関ニ諮問スベシト云フノ説ニ多数ノ同意者アリシヲ以テ、益田孝氏ハ委員中ヨリノ推薦ニ依リ右諮問委員タルニ決ス
次ニ商務局ヨリ下付セラレタル商用地図ニ就キ沿海港湾ノ種類ヲ調査スルニ当リ、委員ハ先ヅ其標目ヲ定メテ四トス、即チ大小如何ナル船舶ニテモ安全ニ碇泊シ得ル港ヲ第一トシ、季節ニ依リテ而已碇泊ノ安
 - 第17巻 p.667 -ページ画像 
全ナル港ヲ第二トシ、小船ハ入港シ得ルト雖トモ大船ハ沖繋リノ港ヲ第三トシ、小船ニテモ沖繋リニテ入津シ能ハザル港ヲ第四トシ、此四等ニ依テ先ヅ之ヲ区別シ、猶次会衆議審案ノ上其当否ヲ定ムベシト云フニ決シ、其他運賃ノ調査ニ至リテハ其海外各地ニ関スルモノハ之ヲ商務局ニ求メ、其内地ニ係ルモノハ委員之ヲ担当シ、而シテ互市港場ノ間其里程幾千ニシテ航海費何程貨物揚卸ノ時日何程荷役何程ニシテ其運賃若干ト云フガ如キ迄ニ調査スベシト云フノ説同意者多ク、野中万輔君其主任者タルニ決ス
   ○本会議ニ出席セル議員ハ渋沢栄一・益田孝・福地源一郎・大倉喜八郎・清水九兵衛・丹羽雄九郎・野中万輔・平野富二・柴崎守三・松尾儀助・原六郎ノ十一名ナリ。


東京商法会議所要件録 第二八号・第一―二頁 明治一四年五月二一日刊(DK170053k-0008)
第17巻 p.667 ページ画像

東京商法会議所要件録  第二八号・第一―二頁 明治一四年五月二一日刊
  第三委員総会 明治十四年五月十日午後第六時開場
    ○商務局下問運輸船舶ノ景況調査ノ件
前会ニ於テ委員ノ推薦ニ依リ専ラ此調査ヲ担任シタル益田孝・野中万輔・平野富二ノ三名ハ各其調査ノ顛末ヲ報道シ、委員ハ猶之ニ就キ各其考案ヲ陳述シタリシガ、終ニ彼ノ航海費・荷役・運賃並ニ沿海港湾ノ種類ノ如キハ野中万輔・益田克徳・平野富二・丹羽雄九郎ノ四名ニ於テ、先ツ野中君ノ調査書ニ基キ商務局ノ調査ニ係ル商用地図説明書ヲモ参観シ、猶之ヲ審査スベシト云フニ決シ、又彼ノ益田孝氏ガ横浜税関ニ依頼シタル調査事項ノ如キハ、果シテ当局者ニ於テ其実ヲ得難シトセバ更ニ同関ニ向テ明治元年以降内外貨物揚卸手続沿革ノ調査ヲ求メ、之ニ因テ以テ内外船舶ノ需用如何ヲ窺フベシト云フニ決シタリ而シテ各員ハ更ニ荅申ノ手続ヲ協議シタルニ終ニ渋沢君ノ発議ニテ以上ノ事項粗調成ノ後ハ先ツ商務局ノ下問ニ対シ逐条之ニ荅申シ、而シテ猶本会ノ考案ヲモ十分之ニ附加シテ上陳スベシト云フノ説ニ同意者多ク、本件ハ則チ右ニ決シタリ
  ○本会議ニ出席セル議員ハ渋沢栄一・益田孝・大倉喜八郎・野中万輔・益田克徳・平野富二・原六郎・松尾儀助ノ八名ナリ。


渋沢栄一書翰 梅浦精一宛 (明治一四年)五月一四日(DK170053k-0009)
第17巻 p.667 ページ画像

渋沢栄一書翰  梅浦精一宛 (明治一四年)五月一四日 (土肥脩策氏所蔵)
○上略
船舶之調査も夫々御配算被下候事と奉存候、可成御手繰被下候方可然奉存候、乍序申上候 奉復
  五月十四日
                      渋沢栄一
    梅浦盟台


東京商法会議所要件録 第三○号・第四―五頁 明治一四年六月一四日刊(DK170053k-0010)
第17巻 p.667-668 ページ画像

東京商法会議所要件録  第三○号・第四―五頁 明治一四年六月一四日刊
  内外貿易運輸船舶事務三課委員会議 明治十四年五月卅日 午後六時四十五分開会
    ○商務局ヨリ下問ニ係ル船舶運輸ノ景況調査之件
本件ハ曩キニ商務局ヨリ下問セラレテヨリ数回ノ会議ニ附シ、其手続ヲ審議シタルニ終ニ運輸船舶事務委員ニ於テ先ツ之ヲ調査シ、然シテ
 - 第17巻 p.668 -ページ画像 
後之ヲ衆議ニ附スベキニ決シ、爾後委員ハ更ニ討議ノ上下問ノ要項ニ対シ逐条調査ヲ悉クシ、漸ク答申案ヲ草定スルニ至リタリ、是ヲ以テ今会右調査ノ主任者タル益田孝君ヨリ其顛末ヲ各委員ニ報道シ、其意見ヲ問フ筈ナリシガ、同君ハ今夕開議前退散セラレタルヲ以テ渋沢君ハ書記梅浦精一ヲシテ其起草ニ係ル答申案ニ就キ其調査ノ結果並ニ手続ヲ演述セシメタリシカ、各員審議ノ末其答申案ニ一二ノ修正ヲ加ヒ次回臨時会ニ於テ之ヲ全会ニ報道スベキニ決シタリ
  ○本会議ニ出席セル委員ハ渋沢栄一・益田孝・大倉喜八郎・丹羽雄九郎・益田克徳・清水誠・津田仙・平野富二ノ八名ナリ。但シ益田孝ハ事故アリテ開議前ニ退去セリ。


渋沢栄一書翰 梅浦精一宛 (明治一四年)六月六日(DK170053k-0011)
第17巻 p.668 ページ画像

渋沢栄一書翰  梅浦精一宛 (明治一四年)六月六日   (土肥脩策氏所蔵)
船舶調査書類ハ昨日熟覧少々認入候処有之候右ニて益田ニ異見無之候ハヽ、最早全会報道之都合ニ仕度候間浄書御取計可被下候
○中略
  六月六日               渋沢栄一
    梅浦精一様


東京商法会議所要件録 第三二号・第八―一八頁 明治一四年七月三○日刊(DK170053k-0012)
第17巻 p.668-670 ページ画像

東京商法会議所要件録  第三二号・第八―一八頁 明治一四年七月三○日刊
  第十四臨時会 明治十四年六月廿五日午後七時廿分開場
   議員出席スル者 ○二十一名
○上略
次ニ会頭 ○渋沢栄一ハ是ヨリ乙号議案ヲ議スベキ旨ヲ述ベ、先ヅ其大要ヲ説明シテ曰ク
抑モ乙号議案ハ甚ダ長文ニシテ且ツ事項モ多端ナレバ可成其要略ヲ摘デ之ヲ陳述センニ、此船舶運輸ノ景況タル当初商務局ヨリ御下問ノ趣旨ニヨレバ本邦各港出入ノ船数、噸数其他積荷数量及運賃割合等ノ詳査ヲ求メラルヽモノナリトヘトモ《(雖)》、是レ全国各地ニ渉ルモノニシテ到底其調査ノ得難カラン事ヲ慮カリシカ、当時商務局ヨリ特ニ主務官吏ノ出張アリ、右調査ノ区域広漠ニシテ迚モ差向キ完備ハ期シ難キガ故ニ先ヅ
 第一項 日本沿海ニシテ西洋形船舶ノ寄泊スルヲ得ヘキ港湾ノ数
 第二項 本邦人ノ雇使スル外国船ノ数、噸数並ニ本邦人ガ之ヲ雇使シテ内地沿海ヲ通航スル度数
 第三項 本邦人ガ直貿易ノ為メニ雇使シタル外国船ノ数、噸数並ニ其航海ノ度数
 第四項 外国人ガ其船ヲ以テ互市開港場ノ間ニ其貨物ヲ運送シタル船数並ニ噸数
 第五項 内外運賃ノ比較
ノ要項ニ就キ調査ヲ悉クシ、調成ノ分ヲ追々上申スヘシトノ事ニテ爾来運輸船舶事務委員並ニ理事本員ハ数次会集シテ其手続ヲ議シ、今日ニ至リ漸ク其大要ヲ調悉シタリ、而シテ此間委員ハ屡々横浜ニ出張シ或ハ諸官衙ニ往復シ其苦心実ニ想フヘキナリ、就中此調査ニ於テハ益田孝・野中・益田克徳・梅浦ノ諸君最モ以テ尽力セラレタリ、今議事
 - 第17巻 p.669 -ページ画像 
ノ紛雑ヲ避ケンガ為メ第一項ヨリ遂次審議《(逐)》ヲ悉サントス、抑モ第一項ニ就キ商務局ノ望マルヽ所ハ日本沿海ニテ西洋形ノ寄泊スルヲ得ベキ港湾ノ数ヲ求ムルニ在リ、而シテ此項ニ就キ委員中日本全国ノ港湾ヲ尽ク挙ゲ其湾形ノ大小、港渠ノ深浅等ニヨリ之カ等級ヲ定メ上申スベシトノ説モアリタルガ、想フニ港湾ノ景況ヲ詳査スルニ東西経緯ノ度数若クバ港渠ノ深浅ヲ測量スル等学術上ニ渉ル事ノ如キハ本会ノ任ズベキ所ニ非ザルヲ以テ、只実業者ノ経験上ヨリ航海ノ難易、貨物出入ノ多寡、荷役日数ノ遅速等専ラ余輩商人ニ密附ノ関係ヲ有スル事項ヲ調査シ、其港湾ヲ類別シ以テ之ヲ上陳スルノ考案ヲ定メ、則チ全国港湾ヲ五類ニ分別シタル事議案ニ表示スルガ如シ、諸君此項ニ就キ異見アラバ十分之ヲ述ヘラレン事ヲ望ムト
於是各員ハ本項中新タニ左ノ港湾ヲ添加セン事ヲ発議シタリ、即チ
 越中ノ中 金石《カナイワ》印第四類ニ属ス (清水誠君ノ発議)
 肥前ノ中 伊万里石炭陶器ヲ産ス ○印第一類ニ属ス      (丹羽君ノ発議)
 紀州ノ中 北港密柑ヲ産ス 印第四類ニ属ス (井上君ノ発議)
又原案記載ノ港湾ノ下ニ新タニ産物ヲ加フルモノ
 泉州岸和田ノ下 密柑(井上君ノ発議)
 紀州田辺ノ下  松烟(牧野君ノ発議)
 讃州田度津ノ下 砂糖(清水九兵衛君ノ発議)
 土州高知ノ下  樟脳(山中君ノ発議)
 原案ニ唐津ニ陶器ヲ産ストアレトモ、松尾君ノ注意ニテ之ハ省クニ決ス
而シテ委員中専ラ本項ノ調査ヲ担任シタル野中君ハ、壱岐・対馬二国ニ於テ其港湾ヲ挙ゲザルモノハ余ガ調査ノ未ダ完カラザルニ由ルモノナレバ更ニ諸君ノ明示ヲ要スト述ベタルニ、終ニ衆議ノ上益田孝君ノ発議ニ依リ猶伊能某ノ著述ニ係ル日本沿海諸港ノ海図、並ニ其附録ヲ参照シ、其加除脩正ハ之ヲ理事本員ニ任スト云フニ決ス
次ニ会頭ハ是ヨリ他ノ要項ヲ議スヘキ旨ヲ述ヘ且ツ曰ク、第二項ト第四項トハ船舶ヲ使用スル者ニ内外人ノ別アリト云トモ其内地沿海ヲ通航スルニ於テハ即チ一ナリ、故ニ委員ハ便宜此両項ヲ連帯シテ一項トナシ、先ツ沿海運輸ノ為メ使用シタル外国船ノ数及噸数ヲ得ルヲ肝要トシ、横浜税関ニ就テ之ヲ求メタルニ其数実ニ稀ニシテ且ツ之ヲ調査スルノ手数甚ダ煩雑ナレハ之ヲ掲ゲザルニ決シタリ、蓋シ商務局ニ於テハ特ニ沿海通航外国船数等ノ調査ヲ要望セラルヽモノヽ如シト云トモ、前陳ノ如ク其数甚ダ稀少ニシテ絶無ト云フテ可ナル程ナレバ之ヲ省クモ実際甚ダシキ不都合ナカルヘキヲ信ズ、而シテ第三項本邦人ガ直輸ノ為メニ使用シタル船数等ヲ調査スルニ当リ委員ハ又横浜税関ニ就テ之ヲ求メタルニ能ク其綮肯ヲ得難キヲ以テ不得已委員ハ輸出入ニ就キ其金額並ニ其船舶ノ総数ヲ算出シ、而シテ猶輸出入額ヲモ国分ケ表記シ此原価ノ一割ヲ以テ運賃ト定メ、右ノ船数ヨリ噸数ヲ算出シ以テ内外船数ノ比準ヲ得タリ、蓋シ貿易額ノ一割ヲ以テ運賃ト仮定シタルモノハ明治十二年中関税局ノ下問ニヨリ輸出入品原価ニ対スル運賃ヲ算出シタルニ、平均其原価ノ一割内外ニ当リタレバ即チ之ヲ準拠トシタルニ由ル、抑モ此調査ノ如キ寧ロ想像ノ考案ニシテ其確算タルヲ
 - 第17巻 p.670 -ページ画像 
保スヘカラスト云トモ、想フニ商務局御下問ノ要旨タル只運輸ノ実況ヲ観察スルニ在ルヘケレハ、委員ガ斯ク考案ヲ立テタルモ敢テ不当ニ非ルノミナラズ此目的ヲ達スルニ於テ亦幾分ノ稗補アルヲ信スルナリ而シテ第五項内外運賃ノ比較タルヤ甚ダ容易ナルガ如シト云トモ、其比較ノ正例ヲ得ルハ実ニ難シトス、故ニ此一項ハ他日ニ譲リ差向キ先ツ前項ノ調査ヲ答申セントス、以上諸項ハ御下問ニ対スル答議ニシテ委員ハ猶現今海送ノ実況ニ就キ本会ノ意見ヲ上陳スルハ亦無用ニ非ズト考定シタルヲ以テ、此ニ以上ノ諸項ニ就キ更ニ本会ノ意見ヲ副陳セントス、是諸君ガ已ニ熟覧セラレタル所ナレバ右件々ニ就キ意見アルノ諸君ハ之ヲ発言セラレン事ヲ希望ス
益田孝曰ク、余モ調査委員ノ一ナリ、想フニ此草案タル之ヲ精察スル時ハ猶未ダ尽クサヾル所少シトセス、希クバ諸君十分取捨ヲ加ヒララレン事《(衍)》ヲ
井上曰ク、此議案タル徹頭徹尾異見ノ加フヘキナク実ニ完璧タルモノナレバ本員ハ此儘進達セラレン事ヲ望ム
益田孝曰ク、今此ニ一二気付キタル事アレハ敢テ脩正説ヲ呈セントス抑モ我国船舶ノ寡少ニシテ運賃ノ騰貴スル所以ハ已ニ草案中ニ明示スル所ナリ、然レトモ熟々之ヲ考フルニ船舶寡少ナルガ為メ通商上不容易損害ヲ生スル亦其例少カラス、例之ハ神戸ニ於テ砂糖ノ供給乏シク之ヲ琉球ノ産地ヘ通センニ二月乃至三月ヲ経ザレバ其砂糖ノ送達ヲ見ル能ハズ、然レトモ若シ之ヲ電信ニテ香港ニ通センニ多クモ十日ヲ出デズシテ其供給ヲ得ルニ至ラン、其他木綿糸ト云ヒ米ト云ヒ一トシテ皆然ラザルハナシ、是皆船舶寡少ノ致ス所ト云ハザルヲ得ザルナリ、此事ヤ大抵草案中ニ其精神ヲ含ムガ如シト云トモ、未ダ文面ニ明カナラザレバ更ニ此意味ヲ追加セン事ヲ欲ス
会頭曰ク、貨物同価ナル時ニ於テ速達ヲ要スルハ是人情ナリ、例ヒバ白水ト唐津ノ如キ石炭ノ原価ニ一割ノ差違アルモ、却テ運送ノ便利ナル唐津ニ其供給ヲ求ムル事アルガ如シ、益田君ノ修正案至極適切ナルガ如シト、即チ之ヲ取ルベキヤ否ヤヲ各員ニ問フタルニ、皆異議ナキニ依リ之ニ可決ス
次ニ益田君ハ第六十八ペーヂノ首メニ我国沿海諸港ノ形状云々造船ノ利夫レ先ヅ小船ニ在ラン歟トアルハ寧ロ刪除スヘシトノ脩正説ヲ発セラレタルガ、是モ異議ナク之ニ可決ス、次ニ又益田君ハ同ペーヂノ末三菱会社ノ持船清国ヘ定時来往スルモノ七艘ノ噸数ヲ扣除シ、残噸数ハ僅カニ一万九千二百九十五噸トアレトモ、猶之ヲ精察スレバ此等ノ船舶ハ概ネ古形ニシテ其運送力ハ遥カニ新造ノ船ニ劣ルモノトス、左レバ正味ハ蓋シ七八千噸ニ過ギザルヘシ、是故ニ一層論拠ニ勢力ヲ附センガ為メ此一事ヲ詳説セバ如何ントノ説ヲ発セラレタリシガ、各員審議ノ末此一事ハ前ニ附加スルニ及バザル事ニ定メ、其他全体ニ就テハ別段異議ナキヲ以テ本案ハ猶運輸船舶事務委員並ニ理事本員ニ於テ更ニ加除脩正之上直チニ之ヲ進達スルニ決ス


東京商法会議所要件録 号外・第一―三頁 明治一四年七月二五日刊(DK170053k-0013)
第17巻 p.670-671 ページ画像

東京商法会議所要件録  号外・第一―三頁 明治一四年七月二五日刊
  第四委員総会 明治十四年七月十二日午後六時四十分開
 - 第17巻 p.671 -ページ画像 
    ○商務局下問ニ係ル船舶運輸之景況調査上申案
渋沢君ハ各員ニ向テ本件ハ去月廿五日臨時会ニ於テ衆議ヲ以テ一二ノ修正ヲ加ヒ、猶運輸船舶事務委員並ニ理事本員ニ於テ篤ト撿閲ノ上之ヲ上申スル事ニ決シタリシガ、即チ爾来理事本員ハ十分之ニ修正ヲ加ヒタルヲ以テ今回之ヲ委員ノ閲覧ニ供スル旨ヲ述ベ、且ツ草案第七十五ペーヂ、殊ニヨリ以下ノ文章ハ仮令其事実ヲ詳説シタルモノニモセヨ其語勢稍々過激ニシテ特ニ他ヲ攻撃スルノ嫌ナキニ非レバ此処ハ刪除スル方ナラント云ハレタルニ、益田孝君ハ抑モ此辺ハ全篇ノ主眼ニシテ其事実モ亦判然タル事ナレバ別ニ刪除スルニモ及バズト述ベラレ其他野中・原・丹羽・条野ノ諸君モ此事タル全ク想像ニ出ヅルモノトセバ之ヲ刪除スル固ヨリ可ナリト雖トモ、苟クモ委員諸君ニ於テ其実跡判然タルトノ考案ナラバ之ヲ上陳スルニ何ノ顧慮スル所アランヤトノ意ヲ以テ益田君ヲ賛成シ、猶渋沢君ハ更ニ之ヲ刪除スベキ所以ヲ再陳セラレシガ、終ニ各員審議ノ上本案中字句ノ過激ニ渉ルノ嫌アルモノハ之ヲ修正シ、其精神ノ在ル所ハ之ヲ文中ニ存スベシト云フニ決シ即時協議ノ上其草案ヲ修正シテ直チニ之ヲ上申スルニ決ス(上申案修正ノ分ハ之ヲ次号要件録ニ掲載スベシ)
  ○本会議ニ出席セル委員ハ渋沢栄一・益田孝・原六郎・丹羽雄九郎・条野伝平・野中万輔ノ六名ナリ。


渋沢栄一書翰 梅浦精一宛 (明治一四年七月)一二日(DK170053k-0014)
第17巻 p.671 ページ画像

渋沢栄一書翰  梅浦精一宛 (明治一四年七月)一二日   (土肥脩策氏所蔵)
船舶之調査御出来御廻し被下尚一覧候処末条ニ他を攻撃之意味ハ益田君之発言も有之候得共、各員之説ハ之を除候方と相決し候様覚居候、其上新聞にも掲候上ハ瑣少之字句ニて妙な感想を起さしめ候様相成候而ハと例之娑心削去仕候
又調印誤而倒置候間前文壱枚更ニ御認置可被下候、何れ後刻罷出再調印可仕候
○中略
  十二日
                      渋沢栄一
    梅浦老兄


東京商法会議所要件録号外附録 第一―八一頁 明治一四年八月二○日刊(DK170053k-0015)
第17巻 p.671-692 ページ画像

東京商法会議所要件録号外附録  第一―八一頁 明治一四年八月二○日刊
    船舶運輸之景況調査上申書
本年二月五日ヲ以テ沿海運輸之景況御観察之為メ沿海諸港出入之船数其他積荷数量及運賃割合等調査復申可致旨右調査箇条書ヲ副ヒ御下問之趣ハ、実ニ我国内外商業上ニ至大ノ関係ヲ有スルモノニシテ忽諸ニ付スベカラザル事項ト奉存候ニ付、不取敢同月九日ノ定式会ニ於テ全会ニ報道致候処、議場ノ衆議ハ右調査ヲ以テ理事本員及運輸船舶事務委員ノ担当ニ付スルニ決定シ、依之委員ハ右調査ノ手続ヲ議定スルガ為メ爾来数次相会シテ審案討議ヲ尽クシ候処、内国諸港出入船舶ノ如キ及其噸量ノ如キ只一進一市《(マヽ)》ノ間ニ止ラズ、汎ク全国各港ニ渉リ調査ヲ要スベキ義ニシテ、如此ハ是本会ノ一朝得テ能クスベキノ事業ニ無之ニ付、此等ノ調査ハ暫ラク漸次ニ期シ差向キ御指定ノ要項五条ニ就
 - 第17巻 p.672 -ページ画像 
キ夫々調査ヲ悉クシ候処第二・第三・第四ノ三項ノ如キハ何分準拠スベキモノ無之、其実数ヲ得ルニ由ナキニ付、不得已輸出入表其他ニ拠リ概数ヲ算出仕候モノニシテ、十分御下問ニ応シ兼候廉モ有之、且ツ第五項内外運賃比較調之義ハ彼我港湾ノ良否貨物搭卸ノ便否及貨物出入ノ多寡皆此運賃ノ貴賤ニ関係ヲ有スルモノニシテ、此等諸般ノ条項ヲ以テ彼此相対較シテ其高低ヲ算スルニ非ルヨリハ比較其当ヲ得難キ義ト奉存候ニ付、此一項ハ猶篤ト調査之上答申可仕候得共、先以調成之分別冊ヲ以テ上陳仕候、尤今回御垂問之要旨タル我国海運ノ実況御観察之為メニシテ必ズシモ御指定之要項ニ限リ候義ニハ無之ト奉察候間、現今海運ノ景況ニ就キ聊カ本会ノ意見ヲモ副記シテ奉供御参考候猶調査ノ行届カサル所ハ追テ整頓ノ上重テ上陳可仕、此段先以上申仕候也
  明治十四年七月十三日    東京商法会議所会頭
                      渋沢栄一
  商務局長
    農商務大書記官 河瀬秀治殿

    御下問ノ要項調査ノ始末上申
第一項 日本沿海ニテ西洋形船舶ノ寄泊スルヲ得ベキ港湾ノ数
  按ズルニ我国沿海諸国ニ於テ其地形能ク西洋形大舶巨船ノ入港繋泊スルニ足ルベキ港湾ハ其数少カラサルベシト雖トモ、詳カニ物産ノ分配気候ノ順逆上ヨリ其運輸ノ便否ヲ観察スル時ハ真ニ良港ト称スルニ足ルモノハ其数蓋極テ罕ナリトス、然レトモ委員ハ勉テ調査ノ精確ナラン事ヲ欲シ、広ク之ヲ実業者ニ詢カリ仮ニ東京ヲ中心ト定メ是レヨリ東西沿海ノ港湾ニ就キ其大小、深浅及ヒ碇泊ノ安危、入港ノ難易等ヲ参照シ、其調査ノ便宜ヲ計カランカ為メニ之ヲ左ノ如ク類別セリ
  第一類 如何ナル船舶ニテモ安全ニ碇泊シ得ル港(左ニ揚グル港湾ノ冒頭ニ○印ヲ付スルモノハ第一類ヲ表ス)
  第二類 季節ニ依リテ安全ニ碇泊シ得ル港(△印ヲ付スルモノハ第二類ヲ表ス)
  第三類 大船ノ沖繋ニシテ小船ノ入津シ得ル港(印ヲ付スルモノハ第三類ヲ表ス)
  第四類 小船ノミ安全ニ碇泊ヲ得ル港(印ヲフスルモノハ第四類ヲ表ス)
  第五類 小船ニテモ沖繋ノ港(印ヲ付スルモノハ第五類ヲ表ス)
  以上ノ五港ニ依リ調査ヲ悉シタルニ、凡ソ全国ノ港湾ニシテ西洋形若クバ日本形船ノ通航シ得ベキモノハ大小合テ百七十六ケ所ニシテ、其中第一類七十二港、第二類四十八港、第三類二十二港、第四類二十一港、第五類十三港ヲ得タリ、而シテ第三・第四・第五ノ三類ハ大船巨舶ノ入津碇泊シ難キ港湾ニシテ、第一・第二類ノ如キモ其地勢物貨出入ノ多キヲ得ベカラザルト季節ニ依リ風浪ノ害アルトニ依リテ真ニ良港タルノ実ナキカ故ニ、現ニ西洋形ノ出入繋泊スルモノヲ挙クレハ品川・横浜・折ケ浜・宮古・青森・二見港・伏木・三国・境・下ノ関・博多・長崎・鹿児島・兵庫・神戸・大坂・高知・四日市・清水・函館等ニ過キス、故ニ以上百六十九港ノ中大船ノ寄泊シ能ハザルモノ其過半ニ居ル以テ見ルベ
 - 第17巻 p.673 -ページ画像 
キナリ、今玆ニ右ノ五類ニヨリ沿海諸国ノ港湾ヲ挙クレバ即チ左ノ如シ
武蔵国部
○品川港            良港ニシテ四季共大小ノ船舶数艘碇泊スルヲ得、但シ西洋形船舶ノ出入常ニ少カラズシテ、其輸出品ハ輸入品ノ凡ソ四分ノ一ニ居ル
○横浜港            同上
安房国部
館山      此港ハ小船ト雖トモ沖繋ニシテ、夏季ハ碇泊安全ナリト雖トモ冬季西風ノ時ハ碇泊シ難シ、当時小蒸気船常ニ出入ス其産物ノ重モナルモノハ鮮魚ノミ
△新港             港内暗礁多シ、而シテ夏季東風ノ時ハ碇泊シ難シ、西洋形船舶ハ航行セス、其此ニ出入スルモノハ小船ノミニシテ少シク鰯ヲ産出ス
△小港             同上
上総国部
△興津             小船ハ奇泊《(寄)》スルヲ得、港内暗礁多シ、夏季東風ノ時ハ碇泊シ難シ、西洋形船舶罕ニ碇泊スル事アルモ積荷極メテ少シ物産ハ干鰯魚類ノミ
△勝浦             同上○少シク干鰯ヲ産出ス、西洋形船ハ航行セス
下総国部
銚子港    河港ニシテ小船ハ碇泊スルヲ得、河口暗礁多ク且ツ夏季東風ノ為波浪烈シ、西洋形船罕ニ航行スル事アリ、其産物ハ干鰯・醤油・銚子縮等ナリ
常陸国部
△那珂港            小船ハ冬季碇泊スルヲ得、夏季ハ東風ノ害アリ、且ツ暗礁多シ○少シク干鰯・材木ヲ出産ス、当時小蒸気船航行スル事アルモ西洋形大船ハ甞テ航行スル事ナシ
△平瀉             同上○同上
磐城国部
△小名浜            小船ハ冬季碇泊スルヲ得、夏季ハ東風ノ害アリ○白水産石炭ヲ出ス、西洋形船時々航行ス
△中ノ作            小船ハ冬季碇泊スルヲ得、夏季ハ東風ノ害アリ○少シク海産物及材木ヲ産出ス、西洋形船ハ航行セス
△久ノ浜            冬季ハ沖繋碇泊スルヲ得、夏季ハ東風ノ為メ碇泊ニ害アリ○同上
△諸戸             同上○同上
△原釜             小船ハ碇泊スルヲ得、夏季ハ東風ノ為メ碇泊スルヲ得ス○同上
△荒浜             冬季ハ沖繋碇泊スルヲ得、夏季ハ東風ノ為メ碇泊ニ害アリ○米及海産物ヲ出ス、西洋形船舶罕ニ航スル事アリ
陸前国部
○(寒風沢石浜         大小船共安全ニ碇舶スルヲ得、港内狭クシテ数船ヲ泊シ難タシ、且ツ港口狭隘ニシテ港外暗礁多シ、隣国ノ米糓ヲ輸出シ仙台・山形等ノ需用ニ供スル貨物ヲ輸入ス、西洋形船舶常ニ出入ス
△野蒜港            当今築港中、冬季ハ沖繋ニヨシ○米・大豆其他雑貨ヲ輸出ス、西洋形船常ニ出入ス
                河港ニシテ河口砂洲多シ、西洋形船舶ノ出入ニ便ナラス、
 - 第17巻 p.674 -ページ画像 
○石ノ巻            和船ヲ舶スルニヨシ、米・大豆ヲ主トシ其他ノ雑品ヲ輸出ス、西洋形船舶常ニ出入ス
○折ケ浜            良港ニシテ数艘ヲ舶スルヲ得、夏季ハ南風ノ為メ少シク害アリ
○荻ノ浜            良港ニシテ四季共ニ碇泊ニヨシ、但港内狭クシテ数艘ヲ泊スルヲ得ス、此二港ハ石ノ巻ヨリ僅カニ六マイル内外ニシテ石ノ巻□航スル西洋形船ハ此二港ニ碇泊シテ貨物ノ積卸ヲナスヲ例トス
○気仙郡            此海岸ハ良港多シト雖トモ僅カニ海産及材木類ヲ輸出スルノ西洋形船舶罕ニ航行スルアリ
陸中国部
○釜石             良港ニシテ四季共ニ数艘ヲ碇泊スルヲ得、港口ニ暗礁アレトモ浮標ノ設ケアリ、其輸出ニ係ルモノハ海産及精鉄・銑鉄ノ類ナリ、西洋形船常ニ出入ス
○山田             良港ニシテ安全ニ数船ヲ碇泊スルヲ得、入口ニ磯一ケ所アリ○少シク海産ヲ輸出ス、西洋形船泊常ニ航行ス
○宮古             最良ノ港ニシテ安全ニ数艘ノ船ヲ碇泊スルヲ得○海産物多ク及氷・材木等ヲ出ス、西洋形船舶常ニ出入ス
陸奥国部
△(八ノ戸鮫ケ浦        冬季ノ外碇泊ニヨシ、大小船共大黒島ノ西南ニ繋泊ス○海産多ク其他大豆・氷等ヲ産ス、西洋形船常ニ航行ス
○(安渡大港          良港ニシテ数艘ノ船舶碇泊スルヲ得
(河内原ノ沢  大船ハ沖繋ニシテ小船ハ入港スルヲ得
○野辺地            良港ニシテ大小如何ナル船舶モ安全ニ碇舶スルヲ得○米・大豆等ヲ輸出スレトモ西洋形船航行スル事極メテ罕ナリ
○青森             同上○米・大豆・材木多シ、西洋形船常ニ出入ス
△鰺沢             夏季ハ安全ニ沖繋碇泊スルヲ得、冬季ハ西北風ノ為メ碇泊ニ害アリ○米・大豆ヲ出ス、西洋形船舶罕ニ航行ス
△深浦             同上○米ヲ出ス、未タ西洋形船ノ航行セシヲ聞カス
羽後国部
野代      河港ニシテ大船ハ沖繋リ、小船ハ港内ニ碇泊スルヲ得○深浦ニ同シ
△船川             夏委ハ碇泊スルヲ得、冬季ハ西風ノ為メ害アリ○秋田米多シ、又銅ヲ出ス、西洋形船常ニ出入ス
土崎      河港ニシテ小船ハ碇泊スルヲ得、大船ハ夏季ノミ沖繋ニシテ冬季ハ西風ノ為メ碇泊スルヲ得ズ、米ヲ輸出スレトモ和船ノミニテ西洋形船舶航行セス
酒田      河港ニシテ小船ハ碇泊スルヲ得、大船ハ夏季沖繋ヲ得ルモ冬季ハ西風ノ為メ害アリ、米ヲ出ス、西洋形船舶航行ス
△飛島             季節ニヨリ島ノ東岸ニ数船碇泊スルヲ得○西洋船舶風浪ノ模様ニヨリ時々泊スル事アルモ、其産物ハ海産アルノミニシテ其産出極メテ少シ
△粟島             同上○同上
羽前国部
荒川      河港ニシテ小船ハ碇泊スルヲ得、大船ハ夏季ノミ沖繋スルヲ得ルモ冬季ハ西風ノ為メ害アリ、僅カニ米ヲ出ス、西洋形船舶ハ航行セス
越後国部
新潟港     河港ニシテ小船ハ碇泊スルヲ得ルモ大船ハ夏季ニ沖繋シテ冬季ハ西風ノ為メ碇泊ニ害アリ○米・茶・石油・糸・縮・
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酒等ヲ輸出ス、西洋形船舶常ニ出入ス
佐渡国部
○蛭子港            良港ニシテ大小如何ナル船舶ト雖トモ四季共ニ碇泊スルヲ得○米・干鰑・鱈・赤玉等ヲ出ス、西洋形船航行ス
○二見             同上○同上
小木港     四季小船ハ安全ニ碇泊スルヲ得、大船ハ沖繋スルニヨシ○同上
越中国部
○伏木港            四季大小船数艘碇泊スルヲ得○多ク米ヲ出ス、西洋形船常ニ航行ス
金石《カナイハ》小船ハ入津スルヲ得ルモ大船ハ沖繋ニテ貨物ヲ搭卸ス
能登国部
○七尾             四季大小船数艘ヲ碇泊スルヲ得○物産ハ少ナシ、西洋形船ノ航行スル事極メテ罕ナリ
加賀国部
△大聖寺            季節ニヨリ碇泊スルヲ得、冬季ハ西風ノ為メ害アリ○米ヲ出ス、西洋形船ハ航行セス
越前国部
三国      河港ニシテ小船ハ碇泊スルヲ得、大船ハ夏季沖繋ニシテ冬季ハ西風ノ為メ害アリ○米及海産物ヲ出ス、西洋形船舶常ニ航行ス
○敦賀             良港ニシテ如何ナル船舶ト雖トモ数艘ヲ泊スルヲ得○同上
若狭国部
小浜      小船ハ安全ニ碇泊スルヲ得○米ヲ出ス、西洋形小船罕ニ航行ス
丹後国部
○宮津             良港ニシテ如何ナル船泊ト雖トモ数艘ヲ泊スルヲ得○米ヲ出ス、西洋形船罕ニ航スル事アリ
但馬国部
因幡国部 三国共港湾ナシ
伯耆国部
出雲国部
○三保ケ関            良港ニシテ如何ナル船泊ト雖トモ安全ニ碇泊スルヲ得○米・木綿・人参ヲ出ス、西洋形船常ニ出入ス
○境              良港ニシテ如何ナル船舶ト雖トモ安全ニ碇泊スルヲ得○三保ケ関ニ同シ
隠岐国部
○目貫             良港ニシテ如何ナル船舶ト雖トモ数艘ヲ泊スルヲ得○干鰑其他海産物ヲ出ス、西洋形船罕ニ航行ス
石見国部 港湾ナシ
長門国部
○ハヘドマリ          良港ニシテ四季共ニ数艘ノ船舶ヲ泊スルヲ得○物産ナシ、西洋形船常ニ碇泊スルノミ
○下ノ関            同上○米及雑品ヲ出ス、当所ハ諸国ノ産物輻輳シ商販頗ル盛ナリ、西洋形船常ニ出入ス
○福浦             同上○物産少シ、西洋形船泊スルノミ
筑前国部
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若松      小船ト雖トモ沖繋ノ港ナリ○石炭・米穀ヲ出ス、西洋形船罕ニ航行スル事アリ
蘆屋浦     小船ト雖トモ沖繋ノ港ナリ○米穀ヲ出ス、西洋形船時々航行ス
○博多             良港ニシテ数船ヲ碇泊スルヲ得、但陸地ヨリ七八丁沖ニ泊ス○米・蝋多シ、其他博多織・絞等ヲ出ス、西洋形船舶常ニ出入ス
肥前国部
○唐津             良港ニシテ如何ナル船舶ト雖トモ数艘ヲ泊スルヲ得、石炭多シ、西洋形船舶常ニ出入ス
○呼戸             同上○西洋形船風ノ方向ニ依リ碇泊ス、産物ニ乏シ
○平戸タスキ          同上平戸瀬戸ノ入口ニシテ良港ナリ○物産ナシ、西洋形船此ニ碇泊スルノミ
松島      小船ノ碇泊ニヨシ○同上
○長崎港            良港ニシテ如何ナル船舶ト雖トモ数艘ヲ碇泊スルヲ得○多ク高島□石炭ヲ出ス、西洋形船舶常ニ出入ス
樺島      小船ノ碇泊ニヨシ○物産少シ、西洋形船繋泊スルノミ
○口ノ津            良港ニシテ数艘ヲ碇泊スルヲ得○多ク蝋ヲ出ス、西洋形船此港ニ航シテ三池ノ石炭ヲ積載ス
島原ノ港     小島数多並列シテ其間ヲ港トス、小船ノ碇泊ニヨシ○多ク蝋ヲ出ス、西洋形船罕ニ航行スル事アリ
○伊万里            良港ニシテ大小ノ船舶碇泊スルヲ得○陶器ヲ産スル事最多シ
壱岐国部
○印通寺浦           良港ニシテ四季共ニ数艘ノ船舶ヲ泊スルヲ得○鰤及ビ錫《(鰑)》ヲ多ク出ス
対馬国部
○府中港            良港ニシテ四季共ニ数艘ノ船舶ヲ安全ニ泊スルヲ得、但シ此港ハ朝鮮ヘ航行スル船舶多ク寄泊ス○鰤及錫《(鰑)》ヲ出ス
○浅茅浦            良港ニシテ四季共ニ数艘ノ船舶ヲ碇泊スルヲ得○産物前ニ同シ
五嶋ノ部
○福江             良港ニシテ大小船数艘ヲ碇泊スルヲ得○干鰑多シ、其他材木・鹿・猪ヲ出ス、西洋形船時々航行ス
筑後国部
若津      大船ハ沖繋ニシテ小船ハ河港ニ入津スルヲ得○米・茶・蝋多シ、西洋形船常ニ出入ス
肥後国部
百貫      大小船共沖繋ノ港ナリ○米・大豆・菜種・烟草・蝋多シ、此港ハ熊本ノ川港ニシテ西洋形船舶熊本輸出入品ノ為ニ此ニ泊ス
八ツ城     同上○米・大豆・菜種・材木・烟草・密柑ヲ出ス、西洋形船舶航行ス
天草富岡     小船ノ碇泊ニヨシ、早崎瀬戸ノ西方ニ当リ沖間ニ洲アリ○カラスミ・ウニ・石炭少々アリ、西洋形船風ノ方向ニヨリ投錨ス
○崎ノ津            良港ニシテ大小船数艘ヲ碇泊スルヲ得○少シク石炭・砥石アンチモニー・礦石等ヲ産ス、未タ西洋形船ノ航セシヲ聞カス
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○牛深             良港ナレトモ数艘ノ大船ハ碇泊スルヲ得ス○鰹節ヲ出ス、西洋形船碇泊スルノミ
薩摩国部
○アクネ            良港ニシテ大小船数艘ヲ泊スルヲ得○鰹節ヲ出ス、西洋形船罕ニ航スルノミ
○山川             良港ニシテ数船ヲ碇泊スルト雖トモ港口甚タ狭マシ○同上
○鹿児嶋            良港ニシテ大小船数艘ヲ泊スルヲ得○鳥モチ・莨・鰹節・櫓木等ヲ産スルモ其量極メテ少ナシ、西洋形船常ニ出入ス
琉球諸嶋部
○那覇港            良港ニシテ西洋船舶常ニ出入ス、物産夥多ナリ
○大嶋             同上砂糖多シ
大隈国部
内浦      大小船共沖繋ノ港ナリ○鰹節ヲ出ス、西洋形船ノ航スル事罕ナリ
日向国部
○外ノ浦            良港ニシテ大小船数艘ヲ泊スルヲ得○鰹節ヲ出ス、西洋形船罕ニ航スル事アリ
佐土原     小船ハ碇泊スルヲ得○鰹節・材木・紙・麻ヲ産ス、西洋形船罕ニ碇泊ス
○細島             良港ナレトモ数船碇泊スルヲ得ス○海産アレトモ僅少ナリ西洋形船□寄泊スル罕ナリ
廷岡《(延)》  河港ニシテ小船ハ碇泊スルヲ得ルモ大船ハ河口ニ洲アルヲ以テ入津スルヲ得ス○茶・紙・麻・材木・炭・天草等ヲ出ス、西洋形船舶ヲ以テ積取ル事ナシ、但大坂ヨリ小蒸気船時々航行ス
○島ノ浦            良港ナレトモ港内甚タ狭クシテ数船ヲ容ルヽ能ハス○海産アレトモ其産出僅少ノミ、西洋形船罕ニ航スル事アリ
豊前国部
中津      大船ハ沖繋ニシテ小船ハ入津スルヲ得○米.蝋ヲ出ス、西洋形ハ小蒸気ノ外航行セス
鵜ノ島     大小船共沖繋ノ港ナリ○同上
○田ノ浦            良港ニシテ大小船数艘ヲ泊スルヲ得○物産少シ、西洋形船舶ハ碇泊スルノミ
豊後国部
佐伯      大船ハ沖繋ニシテ小船ハ入港スルヲ得○海産物及茶・材木炭・椎茸多シ、西洋形ハ小蒸気ノ外航行セス
臼杵      大小船トモ沖繋ノ港ナリ○米・大豆・石炭・椎茸・菜種・蜜柑等ヲ出ス、西洋形ハ小蒸気ノ外航行セス
○下ノ江            良港ニシテ、数船ヲ泊スルヲ得、港口ニ暗礁多シ○物産少シ、西洋形船ハ航セス
○坂ノ関上浦《(ウハ)》下浦《(シタ)》共ニ良港ニシテ数船ヲ碇泊スルヲ得○海産物ヲ出ス、西洋形船ハ時々碇泊ス
杵築      小船ニテモ沖繋ノ港ナリ○七島表多シ、西洋形ハ小蒸気ノ外航行セス
姫島      同上○物産少シ、西洋形ハ航セス
竹田津     大船ハ沖繋ニシテ、小船ハ入津スルヲ得○同上
周防国部
○三田尻            良港ニシテ数艘ノ船舶ヲ碇泊スルヲ得○塩多シ、西洋形船
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舶時々航行ス
室積     良港ナレトモ大船ヲ泊シ難シ、只小船ヲ碇泊スルヲ得ルノミ○物産少シ、西洋形船舶時々碇泊ス
中ノ関    同上○同上
○(室津上ノ関         良港ナレトモ、大船ハ二三艘ヲ泊スルニ過キズ○同上
安芸国部
厳嶋     港内水浅クシテ大船ヲ泊シ難シ、只小船ノ碇泊スルヲ得ルノミ○鉄・米・革等多シ、西洋形小蒸気船常ニ航行ス
○御手洗            良港ニシテ数艘ノ大小船ヲ泊スルヲ得○物産少シ、西洋形船ハ碇泊スルノミ
備後国部
○鞆津             良港ニシテ大小船数艘ヲ泊スルヲ得○多ク畳表・綿・米穀等ヲ出ス、西洋形船常ニ出入ス
尾ノ道     大船ハ沖繋ニシテ、小船ハ港内ヘ碇泊スルヲ得○同上
備中国部
玉島      大小船トモ沖繋ノ港ナリ○米穀・綿多シ、西洋形船時々航行ス
備前国部            小港多シト雖トモ西洋形船碇泊スルヲ得ズ
播磨国部
室津      小船碇泊安全ナリ○革細工類ヲ出ス、西洋形船舶時々航行ス
△高砂            大小船共冬季ハ沖繋ニシテ夏季ハ東南風ノ為メ安全ナラス○米・醤油・大豆多シ、西洋形船時々航行ス
摂津国部
○兵庫             良港ニシテ大小船数艘ヲ泊スルヲ得○酒・油・醤油・御影石多シ、西洋形船舶常ニ出入ス
○神戸港            同上○同上
○大坂             河港ニシテ小船ハ港内ニ入リ大船ハ天保山沖ニ碇泊スルヲ得レトモ、夏ハ西風ノ為メ荷物ノ積卸ニ困難アリ○酒・油硫酸・醤油・白蝋多シ、西洋形船舶常ニ出入ス
淡路国部
由良      小船ノ碇泊ニヨシ○物産少シ、西洋形時々航行ス
讃岐国部
高松      小船ト雖トモ沖繋ノ港ナリ○米ヲ出ス西洋形船常ニ航行ス
多度津     大船ハ沖繋ノ港ニシテ、小船ハ入津スルヲ得○砂糖・米ヲ出ス、西洋形船常ニ航行ス
伊予国部
今治      大船ハ沖繋ニシテ、小船ハ入港スルヲ得○物産少シ、西洋形常ニ航行ス
△ミツガ浜            夏季ハ沖繋スルヲ得ルモ冬季ハ西風ノ為メ碇泊スルヲ得ス○同上
八幡浜     大船ハ沖繋ニシテ小船ハ入津スルヲ得○同上
土佐国部
○高知             河港ニシテ大小船トモ安全ニ数艘ヲ泊スルヲ得、港外ハ岩石ノ為メ碇泊ニ便ナラス○紙・樟炭・材木・鰹節多シ、西洋形船常ニ出入ス
○須崎             安全ナル良港ニシテ数艘ヲ碇泊スルヲ得○高知ニ同シ
甲浦      大船ハ沖繋ニシテ小船ハ入津スルヲ得○物産少シ、西洋形
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           時々投錨ス
○橘              良港ニシテ大小船数艘ヲ碇泊スルヲ得○同上
阿波国部
津田      大船ハ沖繋ニシテ小船ハ入津スルヲ得○藍玉ヲ出ス、西洋形時々碇泊ス
和泉国部
堺       大船ハ沖繋ニシテ小船ハ入津スルヲ得○酒・油多シ、西洋形船舶常ニ航行ス
岸和田      同上○蜜柑・穀物ヲ出ス、西洋形小船時々航行ス
紀伊国部
△和哥ノ浦            出島ノ東側ニ碇泊ス、冬季ハ碇泊ニヨシ、夏季ハ南風ノ為メ碇泊ニ宜シカラス○蝋燭・棕櫚皮・塗物多シ、西洋形小船常ニ航行ス
△塩津浦            夏季ハ碇泊ニヨシ、冬季ハ北風ノ為メ碇泊ニ害アリ○同上
賀田浦     小船ノ碇泊スルニヨシ○産物少シ、西洋形時々泊ス
大崎      小船ハ安全ニ碇泊スルヲ得ルモ、港内狭小ナリ○蝋燭・塗物・蜜柑多シ、西洋形小船常ニ航行ス
○由良             良港ニシテ数艘ノ船舶ヲ泊スルヲ得○海産物ヲ出ス、西洋形罕ニ航行ス
田辺      港内狭クシテ大船ヲ容レ難シ小船ノ碇泊ニヨシ、且ツ港内暗礁多シ○炭・材木・松烟・海産多シ、西洋形罕ニ航行ス
周参見     港内狭ク、大船一艘ヲ泊スルニ過キス、小船ノ碇泊ニヨシ○同上
○大島             良港ニシテ大小船数艘ヲ碇泊スルヲ得○産物少シ、西洋形常ニ繋泊ス
シングウ     河港ニシテ冬季ハ大船ノ沖繋ニ宜シク、小船ハ入津スルヲ得、夏季ハ東南風ノ為メ少ク害アリ○炭・材木多シ、西洋形船時々航行ス
北港      小船ハ安全ニ碇泊シ得ルモ大船ハ入津シ難シ○重モニ蜜柑ヲ産ス
志摩国部
○浜島             良港ニシテ数艘ノ船舶ヲ碇泊スルヲ得○産出少シ、西洋形常ニ繋泊ス
○的屋             良港ニシテ数艘ノ船舶ヲ碇泊スルヲ得、但港口ニ暗礁アリ○同上
○鳥羽             同上、但港口ニ二個ノ暗礁アリ○同上
伊勢国
○四日市            良港ニシテ数艘ノ船舶碇泊スルヲ得○茶・米・油・陶器・材木等多シ、西洋形船常ニ出入ス
津       大小船トモ沖繋ニシテ夏季東風ノ時ハ少ク害アリ○産出少シ、西洋形罕ニ投泊ス
桑名      此河港ハ大船ハ沖繋ニシテ、小船ハ入津スルヲ得○米・材木・陶器等ヲ出ス、西洋形船罕ニ航行ス
尾張国部
宮       大船ハ沖繋ニシテ、小船ハ入津スルヲ得○米・油・綿ヲ出ス、西洋形船舶時々投泊ス
○師崎             良港ニシテ、数艘ノ船舶安全ニ碇泊スルヲ得○酒・綿・陶器多シ、西洋形船常ニ航行ス
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(半田亀崎    大小船共安全ニ沖繋スルヲ得
三河国部
遠江国部            此国ノ海岸ハ総テ季候ニヨリ沖繋ニヨシ、夏秋東南風ノ為メニ碇泊ニ害アリ○茶・米・材木多シ、西洋形船舶常ニ航行ス
△地頭方相川良崎        季候ニヨリ沖繋碇泊スルヲ得、夏秋東南風ノ為メ碇泊ニ害アリ○同上
駿河国部
○清水             良港ニシテ数艘ノ船舶安全ニ碇泊スルヲ得○茶・紙・塗物多シ、西洋形船常ニ航行ス
伊豆国部
戸田      小船ハ安全ニ碇泊スルヲ得○海産及伊豆石ヲ出ス、西洋形船舶時々投泊ス
○下田             良港ニシテ数艘ノ船舶ヲ碇泊スルヲ得、但南風ノ時ハ少ク害アリ、港外ニ暗礁多シ○同上
△網代             季候ニヨリ碇泊スルヲ得、夏季ハ波浪ノ為メ碇泊スルヲ得ス○同上
伊豆七嶋部            港ナシ、小船ハ風ノ方向ニ依リ海岸ニ繋泊ス
相摸国部
○横須賀            良港ニシテ如何ナル船舶ト雖トモ安全ニ碇泊スルヲ得○産物少シ、西洋形船舶常ニ碇泊ス
○浦賀             安全ナル港ナレトモ、港内狭小ナルヲ以テ数艘ノ船舶ヲ泊シ難シ、港口ハ巽風ノ為メ碇泊ニ害アリ○同上
渡嶋国部
○函館港            良港ニシテ四季共ニ安全ニ数艘ノ船舶泊スルヲ得
△江差             小船ハ四月ヨリ十一月頃迄碇泊スルヲ得
△ハラウタ            同上
△松前             同上
後志国部
△銭函             小船ハ四月ヨリ十一月頃迄碇泊スルヲ得
△小樽             大小船共四月ヨリ十一月頃迄碇泊スルヲ得
△手宮             小船ハ四月ヨリ十一頃迄碇泊スルヲ得《(月脱)》
△高島             同上
△忍路             同上
△与市             同上
△岩内             大小船共四月ヨリ十一月頃迄碇泊スルヲ得
△磯谷             小船ハ四月ヨリ十一月頃迄碇泊スルヲ得
△寿都             同上
△哥寿都            同上
天塩国部
 天塩川            季候ニヨリ小船ノミ碇泊スルヲ得
北見国部            此国ノ海岸ハ四月ヨリ十一月頃迄ハ小船ノミ碇泊スルヲ得
根室国部
△根室             夏季ハ碇泊ニヨシ
△西別川            同上
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釧路国部
△釧路             八月ヨリ十一月頃迄碇泊スルヲ得、但東風ノ時ハ甚タ碇泊ニ害アリ
△厚岸             四月頃ヨリ十一月頃迄碇泊スルヲ得、但冬季ハ海水結氷シテ航行スルヲ得ス
△浜中             四月ヨリ十一月頃迄碇泊スルヲ得、但東風ノ時ハ碇泊スルヲ得ス
十勝国部            港ナシ、船舶沖繋ニシテ貨物ヲ搭卸ス
日高国部           静内・浦川ヲ除クノ外ハ大抵皆沖繋ナリ○産物ハ重モ混布《(昆)》・鰯・鮭等ナリ
胆振国部
○室藺              良港ニシテ、四季共ニ数艘ノ船舶ヲ泊スルヲ得
△門別              気候ニヨリ碇泊スルヲ得、西南風ノ時ハ碇泊ニ害アリ
第二項 本邦人ノ雇使スル外国船ノ噸数並ニ本邦人ガ之ヲ雇使シテ内地沿海ヲ通行スル度数
第三項 本邦人ガ直貿易ノ為メニ雇使シタル外国船ノ数、噸数並ニ其航海ノ度数
第四項 外国人ガ其船ヲ以テ互市開港場ノ間ニ其貨物ヲ運搬シタル船数並ニ噸数
  以上三項ノ中按スルニ第二・第四、二項ノ如キハ沿海互市場ノ間内外人ガ其貨物ヲ運搬スルガ為メ幾千ノ外国船ヲ要スルヤヲ観察スルガ為メナレハ、其貨物運送人ニハ内外ノ別アリト雖トモ其使用スル船舶ハ斉シク外国船ナリ、故ニ委員ハ此二項ヲ区別セスシテ之ヲ一頂《(項)》ト見傚シ、先ヅ沿海運輸ノ為メ使用シタル外国船ノ数及噸数如何ヲ求ムルヲ肝要ナリトシ、此調査ヲ税関ニ求メ之ヲ出入貨物ノ届書其他ノ書類ニ就キ詳カニ之ヲ撿スルニ横浜港ノ如キ本邦人ガ外国船ヲ雇使シテ内地沿海ヲ通航スルモノ近年ニ至テハ甚タ稀ニシテ絶テ其事ナシト云フモ敢テ不可ナキヲ発見シタリ、之ニ由テ之ヲ推考スル時ハ他ノ諸港ト雖トモ亦其雇船ナキハ猶横浜港ノ如クナルベシ、或ハ偶々長崎港ヨリ横浜・函館等ニ石炭ヲ運送シ又ハ北海道海産物ヲ以テ横浜・神戸等ニ運搬スルニ当リ、外国船ヲ雇使スル事ナキニ非ズト云トモ其事ヤ亦甚ダ稀ニシテ敢テ之ヲ玆ニ挙示スルニ足ラザルノ少数而已、抑モ如此近年ニ至リ外国船ヲ雇使スルモノ益々減少シテ今日ニ至リタルモノハ、我政府夙ニ海運事業ノ隆進ヲ図ラセラレ大ニ其業ヲ保護セラレタルヲ以テ、内国滊船数十隻ハ我沿海ノ航路ニ立チテ大ニ外国船ト競争シ、加之内地不開港場ハ外国船ニ向テ航海ヲ許サヾルノ制ハ固ク之ヲ維持シテ其主義ヲ変セラレザリシガ故ニ、互市開港場ノ間外国船ヲ以テ我物産ヲ運輸スルモノ亦彼ノ雇船ノ減少ト共ニ其跡ヲ絶ツニ至レリ、是政府ガ内国船ニ向テ特ニ保護ノ厚キニ由ルト云ハザルヲ得ザルナリ、又第三項ノ本邦人ガ海外直輸云々ノ調査ニ向テ同関ニ就テ本邦人ガ直輸入ニ係ル品物ノ届書ヲ閲スルニ其品種及原価ヲ掲グル事明瞭ナリト云モ、数量ニ至リテハ品種ニヨリ個数ヲ以テ記スルモノアリ、又ハ俵数ヲ以テ記スルモノアリ、而シテ一個ト云ヒ一俵ト云ヒ共ニ其斤量尺度ヲ同フセザルガ故ニ之
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ヲ統計通算シテ其噸数ヲ得ルハ蓋シ実際ニ能クシ難シトス、又仕向地方ノ如キモ支那某港ト記スルモノニシテ英国ニ輸送スルモノアリ、英国ト記スルモノニシテ支那ニ輸送スルモノアリ、是故ニ航海度数ノ如キ又其船数ノ如キ実数ヲ得ルハ共ニ難キヲ求ムルノ類ニシテ到底其能クシ難キヲ発見セリ、故ニ委員ハ第三項直輸云云而已ニ就キ答申スルノ老案《(考)》ヲ廃シ、更ニ調査ノ区域ヲ拡メ姑ラク明治十二年度ニ係ル輸出入表ニ拠リ其輸出入ノ金額ヲ各国ニ分区シ、又之ヲ内外商経営高ノ二項ニ区別シ之ヲ定率トシテ内外各之ニ対スル船数、噸数及運賃等ノ割合ヲ算出シタリ、蓋シ此船数噸数ノ如キハ出入総船数及噸数ヲ以テ輸出入総額ニ割当テ之ヲ各国ニ配算シタルモノニシテ、又運賃ノ如キハ貿易額ノ一割ト見積リ(明治十二年大蔵省関税局ヨリ下問ニ依リ輸入品運賃及諸費ノ元価ニ対スル割合ヲ調査シタルニ各品其割合ヲ異ニスト雖トモ其平均ニ至リテハ一割前後ニ在リ是其標準ヲ以テ一割ト定ムル所以ナリ)之ヲ算出シタリ、是固ヨリ概算ニ出ツルモノニシテ此要項御垂問之趣旨ニ副ハサラン事ヲ恐ルト雖トモ本会熟々之ヲ案ズルニ其要旨タル我国ノ物産ヲ海外ニ運出シ、及本邦需用ノ貨物ヲ彼ヨリ輸入スルニ其外国船ヲ仰クノ数若干ニシテ、之ニ向テ払渡ス所ノ運賃幾干ナルカヲ観察セン事ヲ要セラルヽニ在ルベキカ故ニ、此統計表ノ如キ亦以テ此目的ヲ達スルニ足ルベキヲ信スルナリ、是レ本会カ此調査ヲ以テ独リ第三項ニ指示セラルヽ所ニ止メズ、更ニ之ヲ拡充シテ内外全般ノ貿易上ニ就キ要スル所ノ船数運賃等ニ及ボシテ以テ之ニ答申スル所以ナリ

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    項目                           輸出                                                        輸入         貨物原価       此内訳右外商        此運賃見積        此船数見積     此噸量見積         貨物原価       此内訳右外商       此運賃見積       此船数見積       此噸量見積 国分ケ                   左内商                                                           左内商                円           円           円        隻            噸              円       円               円        隻            噸 支那     五、八〇七、〇二七   四、七九一、八二一    四七九、一八二・一〇〇  一〇九・二四五  一〇九、二四五・一七一   五、七三四、三三四   五、六一七、二八七    五六一、七二八・七〇〇   九九・六八〇   九七、三一七・九〇八                    一、〇一五、二〇六    一〇一、五二〇・六〇〇   二三・一四五   二三、一四四・九二八                 一一七、〇四九     一一、七〇四・九〇〇    二・七七〇    二、〇二七・八四〇 合衆国   一一、二四二、二八八  一〇、四一六、四二一  一、〇四一、六四二・一〇〇  二三七・四七六  二三七、四七六・二七八   二、九二七、二八四   二、八八六、一〇八    二八八、六一〇・八〇〇   五一・二一四   五〇、〇〇一・〇〇四                      八二五、八六七     八二、五八六・七〇〇   一八・八二八   一八、八二八・三二九                  四一、一七六      四、一一七・六〇〇      七三〇      七一三・三六二 仏蘭西    五、七九〇、一六一   五、五五一、八二〇    五五五、一八二・〇〇〇  一二六・五七二  一二六、五七一・八二四   三、七二八、〇五七   三、六九八、一二五    三六九、八一二・五〇〇   六五・六二四   六四、〇六八・九六九                      二五八、三四一     二三、八三四・一〇〇    五・四三四    五、四三三・七五九                  二九、九三二      二、九九三・二〇〇      五三一      五一八・五六三 大不列顛   四、〇一二、一八四   三、六九二、一四七    三六九、二一四・七〇〇   八四・一七五   八四、一七四・五二〇  一九、一五八、五〇〇  一八、七一四、六八二  一、八七一、四六八・二〇〇  三三二・〇九七  三二四、二二六・五七二                      三二〇、〇三七     三二、〇〇三・七〇〇    七・二九六    七、二九六・二八六                 四四三、八一八     四四、三八一・八〇〇    七・八七五    七、六八九・〇二一 伊太利      五〇一、一一一     九六三、三〇二     九六、三三〇・二〇〇   二一・九六二   二一、九六一・六〇七     一五四、一四七     一五三、九三六     一五、三九三・六〇〇    二・七三一    二、六六六・八九七                       三七、八〇九      三、七八〇・九〇〇      八六二      八六一・九七九                     二一一         二一・一〇〇      〇〇三        三・六五五 魯西亜       七一、〇五七      六一、九九五      六、一九九・五〇〇    一・四一三    一、四一三・三七八       五、九三五       三、八九三        三八九・三〇〇      〇六九       六七・四四五                       一〇、〇六二      一、〇〇六・二〇〇      二二九      二二九・三九六                   二、〇四二        二〇四・二〇〇      〇三七       三五・三七七  以下p.683 ページ画像  東印度暹邏    一四二、四三八     一三五、三六七     一三、五三六・七〇〇    三・〇八六    三、〇八六・一三一   二、〇一二、九六三   一、九八九、三三〇    一九八、九三三・〇〇〇   二五・〇五八   三四、四六四・五七九                        七、〇七一        七〇七・一〇〇      一六一      一六一・二〇六                  二三、六三三     二三、六三三・〇〇〇      四一九      四〇九・四三五 和蘭         四、三二二       二、一八七        二一八・七〇〇      〇五〇       四九・八五九      二二、二五八      二一、九九五      二、一九九・五〇〇      三九〇      三八一・〇五七                        二、一三五        二一三・五〇〇      〇四九       四八・六七四                     二六三         二六・三〇〇      〇〇四        四・五五六 豪斯多剌利亜   一一六、九五一     一一四、八三三     一一、四八三・三〇〇    二・六一八    二、六一七・九九二      三五、五八七       八、三九六        八三九・六〇〇      一四八      一四五・四五八                        二、一一八        二一一・八〇〇      〇四八       四八・二八六                  二七、一九一      二、七一九・一〇〇      四八二      四七一・〇七六 日耳曼       三八、九四八      三八、四七五      三、八四七・五〇〇      八七七      八七七・一六二   一、六六六、六八〇   一、六五七、〇二五    一六五、七〇二・五〇〇   二九・四〇四   二八、七〇七・四八九                          四七三         四七・三〇〇      〇一一       一〇・七八三                   九、六五五        九六五・五〇〇      一七一      一六七・二七〇 澳地利       三五、七八七      三五、五七七      三、五五七・七〇〇      八一一      八一一・〇九三      一〇、七一四       九、六一八        九六一・八〇〇      一七〇      一六六・六二九                          二一〇         二一・〇〇〇      〇〇五        四・七八七                   一、〇九六        一〇九・六〇〇      〇一九       一八・九八七 布哇           一八三         一〇三         一〇・三〇〇      〇〇二        二・三四八                           八〇          八・〇〇〇      〇〇二        一・八二三 丁抹                                                                     一三、九三二      一三、六七二      一、三六七・二〇〇      二四二      二三六・八六三                                                                                       二六〇         二六・〇〇〇      〇〇四        四・五〇四 西班牙                                                                    二八、六八八      二六、〇〇四      二、六〇〇・四〇〇      四六一      四五〇・五一一                                                                                     二、六八四        二六八・四〇〇      〇四七       四六・四九九 瑞典及諾威                                                                   八、七六〇       一、五九八        一五九・八〇〇      〇二八       二七・六八九                                                                                     七、一六二        七一六・二〇〇      一二七      一二四・〇七九 土耳格                                                                       五七九         五七九         五七・九〇〇      〇一〇       一〇・〇三一  葡萄牙                                                                     三、〇三三       三、〇三三        三〇三・三〇〇      〇五三       五二・五四五  白露                                                                        八〇八         八〇八         八〇・八〇〇      〇一四       一三・九九八  白耳義                                                                   一八八、五五二     一八八、四一六     一八、八四一・六〇〇    三・三四三    三、二六四・二五三                                                                                       一三六         一三・六〇〇      〇〇二        二・三五六 瑞土                                                                    五三二、三四一     五三二、二一五     五三、二二一・五〇〇    九・四四四    九、二二〇・四七四                                                                                       一二六         一二・六〇〇      〇〇二        二・一八二 其他諸州      七五、五〇一       九、二〇二      七、五二〇・二〇〇    一・七一四    一、七一四・四七四      五七、九六五      五七、五五六      五、七五五・六〇〇    一・〇二一      九九七・一四一                          二九九         二九・九〇〇      〇〇七        六・八一六                     四〇九         四〇・九〇〇      〇〇七        七・〇八五 合計    二七、八三七、九六五  二五、八七九、二五〇  二、五八七、九二五・〇〇〇  五九三・〇〇〇  五九〇、〇〇一・八二三  三六、二九一、一一五  三五、五八四、二七二  三、五五八、四二七・二〇〇  六三一・四五六  六一六、四八七・四四八                    一、九五八、七一五    一九五、八七一・五〇〇   四六・〇〇〇   四四、六五五・二九〇                 七〇六、八四三     七〇、六八四・三〇〇   一二・五四四   一二、二四六・七二一 



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前表ニ就テ之ヲ見ル時ハ
                       円
   輸出貨物ノ運賃    二、七八三、七九六・五〇
   輸入貨物ノ運賃    三、六二九、一一一・五〇
    合計        六、四一二、九〇八・〇〇
ナリ、此内日本船舶ノ海外ヘ航行スルモノヲ挙ゲ其運賃額ヲ扣除セザレバ其真ニ外国船ニ払フベキ運賃何程ナルヤヲ知ルニ由ナキガ故ニ今我国船舶ノ現ニ海外ヘ直航スルモノヲ撿スルニ
  三菱会社所有船ニシテ清国ヘ定時往復スルモノ
                         噸
         七艘 此登簿噸数    七、八六九
  三井物産会社所有船ニシテ清国ヘ航行スルモノ
     滊船  二艘
            此登簿噸数    一、五二一
     風帆船 一艘
   合計                九、三九〇
ニシテ、之ヲ一年十二回ノ航海ト見積ル時ハ其噸数合セテ十一万二千六百八十噸トナルベシ、然レトモ是只ニ登簿噸数ヲ掲クルノミニシテ未ダ以テ我国ノ船舶ヲ以テ運送スル出入貨物ノ実数ト為スベカラズ、仍之姑ラク実業者ノ胸算ニ拠リ輸入貨物ノ実数ヲ此登簿噸数ノ十分ノ五トシ、輸
出貨物ノ実数ヲ其十分ノ三ト見積リ、之ヲ算スル時ハ
               噸
   輸出実数   三三、八〇四    (登簿噸数十分ノ三ニ当ル)
   輸入実数   五六、三四〇    (同 十分ノ五ニ当ル)
    合計    九〇、一四四    (同 十分ノ六ニ当ル)
           
ニシテ、今一噸ノ運賃平均六円《(五)》ト見積ル時ハ其合計四十五万〇七百二十円トナル、是レ即チ日本船ヲ以テ収得スル所ノ運賃額ニシテ其求算敢テ不当ニ非ルヲ信ズ、左レバ前ノ輸出入貨物運賃ノ合計六百四十一万二千九百〇八円ノ中ヨリ我国人ガ収得スル運賃即チ此ノ四十五万〇七百二十円ヲ扣除スル時ハ、其残余五百九十六万二千百八十八円トナル、是我国人ガ貿易ノ為メ全ク外人ヘ払ハザルヲ得ザルノ金額ニシテ日本船ノ収得スル運賃ハ僅カニ其百分ノ七、五ニ過キズ、又試ニ我国ノ船舶ヲ以テ之ヲ英国ノ船舶ニ比スル時ハ其割合
  ○英国 千八百七十七年即チ明治十年ノ調査
              隻             噸
      風帆 一〇、六四二       六九八、一二四
沿海貿易用 滊船  一、三二三       二四一、二五三
      風帆  一、一六七       一七八、八七六
内外兼用  滊船    二五五       一〇八、八二五
      風帆  五、二九二     三、二六一、一四九
外国貿易用 滊船  一、六四〇     一、六二七、四一一
     合計  二〇、三一九     六、一一五、六三八
   ○日本 明治十二年度ノ調査
              隻             噸
沿海貿易用 風帆    一七四        二七、五五一
      滊船    一九〇        三三、八一六
 内外兼用 同      九         八、九四七
 日本形船一八、七一四隻此石数三、二八五六五六石、今計算ノ便宜ヲ求メ六石ヲ以テ一噸ト見積リ、之ヲ改算スル時ハ其噸数五
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四七、六〇九噸トナレトモ今他ノ滊船ト其効用ヲ比較スル時ハ其働キ三分ノ一ニ出テザルベシ、故ニ此中ヨリ六割ヲ引キ之ヲ算スレバ即チ其噸数下ニ記スルガ如シ             二一九、〇四七
     西洋形   三七二
  合計           一九〇、八七 二八九、三六一
     日本形一八、七一四
由是観之我国船舶ノ噸数ハ英国船舶噸数ノ百分ノ五ニ満タス、固ヨリ彼我物産ノ多寡及出入ノ繁閑等ニ就キ其実際ヲ査察スルニアラザルヨリハ我船舶彼ニ比シテ其数寡シト概言スベカラズト雖トモ、仮リニ彼ノ物産ハ我ヨリ饒多ニシテ其運搬モ亦遥カニ繁劇ナリトスルモ、猶其比例ノ懸隔スル如此夫レ甚タシ、況ンヤ彼ノ船舶ノ如キハ概ネ皆其構造ノ堅牢ニシテ且ツ駛行ニ便捷ナル我船舶ノ脆弱ニシテ且ツ其航行ノ遅漫ナルノ比ニ非ルオヤ、又況ンヤ我国近年物産増殖ノ進度ニ比スレバ船舶増加ノ割合極メテ小ナルオヤ、啻ニ其小ナルノミナラズ若シ夫レ西洋形船舶増加ノ噸数ヲ以テ之ヲ日本形船減少ノ石数ヨリ扣除スル時ハ、其総体ノ噸数ニ於テハ却テ前年ニ比スレバ若干ノ減少ヲ見ルヲヤ、亦以テ我国船舶其数乏シクシテ能ク百般貨物ノ運送ニ供スルニ足ラザルヲ証スベキナリ
以上各項御垂問ノ要項ニ対シ本会ハ其調査ノ顛末ヲ上申シ更ニ又我邦海運ノ現況ニ就キ左ニ其所見ヲ上陳シテ併テ閣下ノ瀏覧ヲ仰カントス抑モ海運ノ便否ハ国民貿易上ニ至大至重ノ関係ヲ有スルモノニシテ殊ニ我国ノ如キ四囲環海ノ邦土ニ在テハ沿海運輸ノ便外洋直航ノ利ヲ興シ、勉テ其拡張ヲ期図セサル可ラザルハ形勢上明カナル所ニシテ蓋今回閣下ノ御垂問ノ趣意モ亦此ニ外ナラザルベキナリ、惟ルニ我政府夙ニ此ニ見ルアリ主トシテ運輸ノ業ヲ保護シ造船ノ事ヲ奨励シテ海運ノ振起ヲ企図セラルヽヤ此ニ年アリ、民間有志者モ亦其趣旨ヲ体認シ大ニ海漕ノ業ヲ起シ、又近年ニ至リ協同一致共ニ資本ヲ合シテ以テ運輸造船ノ事業ヲ経営スル者慚《(漸)》ク各地ニ起ラントスルハ豈国家ノ為メニ慶賀セザルベケンヤ、即チ明治十二年駅逓局及租税局ノ調査ニ拠レバ艀漁船及海川小迥船ノ総数四十二万〇〇十三隻ヲ除キ、全ク我国沿海運輸ニ供スル船舶ハ西洋形船三百七十三隻、此噸数七万〇三百十五噸二二、日本形船壱万八千七百十四隻、此石数三百二十八万五千六百五十六石ニシテ、其合数壱万九千〇八十七隻ナリトス、而シテ之ヲ明治六年ノ調査ニ比スレハ日本形船ノ如キ漸ク減少ノ跡ナキニ非ズト云トモ之ニ反シテ西洋形船ニ至テハ滊船ト云ヒ風帆船ト云ヒ近年其数次第ニ多キヲ致シ、殊ニ風帆船ノ如キハ明治六年ニ於テハ其数僅カニ三十六隻ニ過ギザリシモ、明治十二年ニ至リテハ百七十四隻ノ多キニ達シ、僅々五六年間ヲ出テズシテ殆ド五倍ノ増加ヲ呈セリ、是豈海運上著シキ進歩ト云ハザルベケンヤ
蓋シ船舶ノ沿海諸港ノ間ニ通航来往スルヤ、苟クモ其数一ヲ増セバ運輸随テ其便ヲ加ヒ、運輸随テ其便ヲ加フル時ハ其運賃モ亦随テ低落ヲ致サヽル可ラサルハ猶物ニ供需ノ消長アリテ其市価ニ昂低ヲ生ズルカ如ク一般ナリ、今ヤ我国船舶ノ沿海諸港ニ来往通航スルモノ漸ク其数多キヲ加ヒ、運輸ノ便亦前日ノ比ニアラザルハ上ニ記スルカ如ク、船
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舶ノ増加ヲ以テ之ヲ徴スベキナリ、然ルニ此割合ヨリ我国今日運賃ノ割合ヲ推考スル時ハ仮令紙幣ノ下落、物価ノ騰貴今日ノ如キモ其割合ニ至テハ猶是ヲ之ニ比較シテ高貴ナリト云ハザルヲ得ザルナリ、蓋シ詳カニ其原因ヲ査察討究スル時ハ決シテ一二ニ止ラザル可シト雖トモ暫ラク本会カ考査スル所ニ拠レバ我国近年物産ノ繁殖之カ一大原因タリト云ハサルヲ得ザルナリ、今玆ニ其然ル所以ヲ証明センニ、我政府明治六年徴租ノ法ヲ改正シ、続テ同十年減租ノ令ヲ布キ其施政ノ方針ヲ専ラ勧農ノ一点ニ転向セラレタルヤ、古来農民収額《(税カ)》ノ苛重ニ苦シミタル者於是乎初テ休養ヲ得、爾来漸ク其富裕ヲ進メ、其蓄積ノ余財ヲ以テ新タニ荒蕪ヲ開墾シ、或ハ桑田ヲ闢キ或ハ茶園ヲ設クル等全国各地到ル処農産業ノ振作ヲ図ラザルモノ殆トコレナキニ至レリ、即チ地理局ノ調査ニ係ル統計表ニ拠レバ
 明治八年全国田畑ノ面積
  三百八十六万九千九百五十六町二反二畝二十四歩
     田二百〇五万五千二百八十九町一反〇二十八歩
   内
     畑百八十一万四千六百六十七町一反一畝廿六歩
 同十三年同
  四百四十七万二千百五十八町九反九畝二十一歩
     田二百六十二万三千六百七十七町〇三畝十四歩
   内
     畑百八十四万八千四百八十一町九反六畝七歩
前後相対照スレバ僅々数年ヲ出デサルニ其面積ノ増加スル事六十万〇二千二百〇二町七反六畝二十七歩ニ及ベリ、是我国農産ノ繁殖近年ニ至リ益々其進度ヲ加ヒタルノ明証ニシテ、就中米穀ノ如キハ其産出年年多ヲ加ヒ、且ツ其価格ハ漸ク其高度ヲ保チ農民皆其地味ヲ改良シ、其産力ヲ養フニ注念シ来レルヨリ大ニ肥料ノ需用ヲ増シ、随テ鯡・干鰯其他内地ノ肥料ニ供スベキ海産物ノ増加ヲ促シタル決シテ小額ニ非ズ、其他我国輸出品中重要ノ地位ヲ占ムル所ノ生糸・茶及木蝋・樟脳ノ如キモ亦共ニ然リトス、由是観之我国ノ物産近年次第ニ繁殖シタルハ決シテ掩フベカラザルノ実事ナルニ非スヤ、試ニ輸出品ヲ見ヨ、其価額ハ年々増減ナキニ非ズト雖モ要スルニ近年ニ於テハ漸ク増加ノ傾向ヲ現ゼリ、而シテ其増加ハ取リモ直サズ我国ノ購買力ヲ養成スルノ原動力ナルカ故ニ、其購買力ノ増進スルヤ、輸入品モ亦共ニ増加ヲ致セリ、即チ明治六年ヨリ同十一年度ニ至ル迄其増加ノ傾向ヲ表スル時ハ左ノ如シ

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 年次      項目  輸出           輸入           合計                  円            円            円 明治 六年   一五、三三五、二四九   二〇、七四二、九九四   三六、〇七八、二四三 同  七年   一二、六八二、一三九   一六、二八八、七二三   二八、九七〇、八六二 同 八年度   一二、四〇三、二二九   一九、四八〇、三三〇   三一、八八三、五五九 同 九年度   二一、三八三、七五二   二〇、一四九、三三八   四一、五三三、〇九〇 同 十年度   一七、〇五四、五六六   二四、七五七、三七九   四一、八一一、五四五 同十一年度   一六、三四一、七一六   二一、六〇四、四二一   三七、九四六、一三七 



如此輸出入相共ニ増進スルヤ随テ之カ運送ニ供スル船舶ニ至テモ亦其需用ヲ増サヾル可ラス、彼ノ輸入品ノ如キ其消費者ハ広ク全国各地ニ
 - 第17巻 p.687 -ページ画像 
分散スルモノナルカ故ニ、其一タヒ開港場ニ入ルヤ早晩之ヲ各地ニ転送セザルヲ得ズ、而シテ其之ヲ各地ニ輸送スルヤ水運ニ依ルモノ十中ノ八九ニ居ルニ非スヤ、又北海道海産ノ増殖スルニ随ヒ塩ノ需用ヲ増ス事、猶肥料ノ米穀ニ於ケルカ如ク、各地塩竈ヲ築キ製塩ノ事業ヲ営ム者漸ク其数ヲ増ス、其運送繁忙ヲ加タル亦前年ノ比ニ非ザルナリ、其他石炭ノ如キ近年工作業各地ニ起リ、且ツ滊船ノ通航漸ク繁ヲ加フルニ随ヒ其消費モ亦月ヲ逐テ多ヲ告ゲ、猶日用ニ供スルモノヲ挙テ之ニ加フルトキハ其需用ハ決シテ少々ナラストス、而シテ此石炭ノ如キ其前年ニ在リテ全ク内地ニ其用途ヲ見サルモノニシテ、其需用今ヤ益益多カラントス、此一品ヲ以テスルモ近年内地沿海ノ運送漸ク其繁ヲ加ヘタルヲ明証スベクシテ其他近年乗客ノ増加シタルモ亦船舶需用ノ繋劇《(繁)》ヲ証スルニ足ルベキナリ
以上挙示スル処ノ例証ニ拠レバ今日船舶増加ノ割合能ク貨物増殖ノ進度ト比準ヲ得ザルハ甚タ明カナル所ニシテ、其勢運賃ノ高貴ヲ免カルベカラザルナリ、是ヲ以テ今ノ船主ハ之ヲ時トシテ其運賃ヲ意表ニ高貴スル事屡々コレアリ、然リト雖トモ本会熟々我邦運賃割合ノ高貴ナル所以ヲ察スルニ、独リ前条ニノミ止マラズシテ猶他ニ之ヲ助成スルノ原因アルヲ信ズルナリ、何ゾヤ、我国各地良港ニ乏シク航海ノ至難ナル事是ナリ、今試ニ第一項ノ御下問ニ対シ答申シタル調査書ニ就キ全国港湾ノ景況ヲ観察スルニ真ニ良港トモ称スベキモノハ横浜・神戸函館等其数僅カニ二三ニ過ギス、其他ハ概ネ皆船脚水底ニ膠シ巨船ヲ容ルヽ事能ハザルモノニ非レハ則チ風浪ノ害多ク安全ニ大船ノ碇泊スルコトヲ得ザルモノヽミ、是ヲ以テ其貨物ヲ運入送出スルヤ必ス艀舟ノ便ニ依ラザルヲ得ズ、例ヘハ北海諸港ノ如キ函館ノ一港ヲ除クノ外殆ント安全ニ碇泊得ル港ナシト云フモ不可ナキナリ、故ニ貨物積取ノ為メニ此ニ航行スル滊船並ニ風帆船ハ、常ニ海上数里外ニ投錨シテ能ク入津スル事ヲ得ズ、共貨物ヲ積出スヤ先ヅ沿岸各地ヨリ艀舟若クハ他ノ小船ヲ雇ヒ一タヒ之ニ搭載シテ復タ本船ニ移スヲ例トス、是故ニ啻ニ碇泊日数ノ多キヲ費ス而已ナラス又暴風怒濤ノ為メ損害ヲ被ムルモノ往々少カラズト為ス、之ヲ清国又ハ欧米各州ノ港湾ニ比照シ来タレハ船舶出入ノ便否豈啻ニ霄壌ノミナランヤ、其情勢已ニ如此是レ其運賃高貴ノ勢ヲ助成スルモノニアラズヤ、今試ニ横浜ヨリ神戸ニ至ル迄載貨一噸ノ海上運送費、艀賃及人足賃ヲ示セハ則チ
    ○滊船運賃 一噸ニ付四円八十銭
 東京ヨリ神戸マデ 海上一噸運送実費   金四円三十三銭壱厘
 東京積出シ           艀賃  同拾八銭八厘
 同               人足賃 同六銭
 神戸陸揚ケ           艀賃  同拾六銭壱厘
 同               人足賃 同六銭
   合計            金四円八十銭
    ○風帆船運賃 一噸ニ付二円六十八銭八厘
 東京ヨリ神戸マデ 海上一噸運送実費   金二円廿一銭九厘
 東京積出シ           艀賃  同拾八銭八厘
 同               人足賃 同六銭
 - 第17巻 p.688 -ページ画像 
 神戸陸揚ケ           艀賃  同拾六銭壱厘
 同               人足賃 同六銭
   合計            金二円六十八銭八厘
ニシテ滊船、風帆船共其貨物ノ搭卸ニ要スル艀賃人足賃ノ合計ハ四十六銭九厘ニシテ之ヲ滊船ノ運賃四円八十銭ニ対スレバ殆ント其一割ヲ占メ、風帆船ノ運賃二円六十八銭八厘ニ比スレバ其一割七分五厘ヲ占ルモノトス、今埠頭修築ノ為メ貨物搭卸ノ至便ヲ得タリト仮定スルトキハ碇泊日数ヲ短縮スルノ外此艀賃人足賃ノ合計四十六銭九厘ヲ全ク運賃額ヨリ減少シ得ベクシテ、即チ滊船ノ運賃ハ其海上運送実費四円三十三銭壱厘ニ止リ、風帆船ノ運賃ハ実費二円二十一銭九厘ニ止ルヘキナリ、夫レ東京・神戸ノ如キ地形ヨリ之ヲ云フトキハ全国良港中ノ上位ヲ占ムルモノナリ、然ルニ其貨物搭卸ノ難キ事猶如此ヲ見レバ我国良港ノ乏シキヨリ其勢艀賃等ノ費用ヲ増シ、随テ運賃ノ高貴ヲ致スノ理由ハ瞭然明知スルニ足ルベキナリ、今又玆ニ北海道産ニ依ル二三商品ヲ左ニ掲載シ、其産地ノ原価ト大坂及東京市場ノ売価ヲ比較シテ更ニ前段ノ理由ヲ証明セントス

 産地 品名  産地百石ニ付相場 販売地百石ニ付相場     差額
             円           円      円
 小樽身欠鯡     八五〇    東京 一、七〇〇    八五〇
 同 鮭     一、二三〇    同  二、〇〇〇    七七〇
 同 鯡〆糟     八五〇    大坂 一、三五〇    五〇〇
 浦河 同      七四〇    同  一、四〇〇    六六〇
 同 昆布      五三〇    同  一、〇〇〇    四七〇

  右ハ明治十三年九・十両月ノ相場ニ係ル
夫レ我邦沿海運賃ノ高貴ヲ助成スルモノ果シテ前条ノ如ク我邦良港ニ乏シク船舶航行ノ危険ナルト出入ノ不便ナルトニ在リトセバ、先ツ全国各地ノ港湾ヲ修築スルハ目下一大要務タル可シト雖トモ抑モ築港修埠ノ事タル至大至難ノ事業ニシテ其成功一朝ニ期スベキモノニアラズ況ンヤ今日ノ国勢ヲ観レハ之ヲ興起スル得テ能シ難キニ於テオヤ、然ラハ則チ運賃低下ノ策之ヲ他ニ求メザルベカラズ、蓋シ第一項調査書ニ就テ熟々我国港湾ノ現状ヲ察スルニ其十中八九ハ小船ノ寄泊スル事ヲ得ルモ、概ネ大船ヲ繋泊スルニ適当セザルモノナリ、是ヲ以テ大船巨舶ノ寄泊スル事アレバ其貨物ノ搭卸常ニ小舟ニ依ラザルヲ得ズ、夫レ大船ハ小船ニ比スレバ甚タ安全ニシテ大洋ヲ通行スルニ最モ利アリト雖トモ其沿海ヲ航行シテ屡々小港ヘ出入スルノ便利ハ小船ニ及バザル所ナシトセス、是レ今日内地諸港ノ間ニ往復シ貨物ヲ出入スルモノ日本形船舶ニ依ルモノ猶多キ所以ニアラズヤ、試ニ今日品川湾ニ出入スル船舶ヲ見ルニ日本形船常ニ総数十分ノ七八ニ居ル、是豈我国沿海運輸ノ便猶之ヲ小船ニ依ルノ故ニ非ズヤ、今試ニ明治十三年中東京品川湾ニ入津スル船舶ノ隻数ヲ挙テ此事実ヲ証明セン
                       隻
  滊船風帆船       入津   六、六八〇
  日本形船        同   一七、七六五
   合計             二四、四四五
夫レ日本形船ノ入津西洋形船舶ニ比シテ其数多キ事如此、現ニ東京ニ於テ消費スル塩・材木・石炭ノ如キ其輸入ハ亦多クハ皆日本形船舶ニ
 - 第17巻 p.689 -ページ画像 
依ラザルハナシ、由是之ヲ推考スル時ハ全国諸港中出入貨物ノ運送日本形船舶ニ依ルモノ其数蓋シ少カラザルベキナリ
抑モ近年西洋形船舶其数ヲ増スニ随ヒ日本形船減少シタルハ歴然之ヲ統計ニ徴スベシト雖トモ、其全石数ニ至テハ之ヲ西洋形船ニ比スレハ猶数倍ノ多キニ居ル、即チ駅逓局ノ調査ニ拠レハ明治十二年ニ於テ滊船風帆船ノ噸数七万〇三百十五噸二二、此石数四十二万千八百九十一石三二ニシテ、之ヲ明治六年ノ合計三万四千五百七十二噸二九、此石数二十万〇七千四百三十三石七四ニ比スレハ、石数ニ於テハ二十一万四千四百五十七石五八ヲ増加セリ、然ルニ日本形船ハ明治六年ニ於テハ三百七十万〇二千百六十七石ナリシガ、同十二年ニ及ンテハ其数三百二十八万五千六百五十六石ニシテ、此六年間ニ於テ減少スル事四十一万六千五百十一石ノ上ニ出タリト雖トモ、猶其全石数ヲ以テ之ヲ西洋形船ニ比照スレハ殆ント八倍ノ多キニ居ル、是レ我邦運輸ノ便猶多クハ日本形船ニ依ルノ明証ニアラズヤ
夫レ日本形船ガ沿海運輸ノ便ヲ補翼スルノ実証如此、此船舶ニシテ近年減少ヲ来タシタルハ前陳ノ如ク一時西洋形船ノ増築ニ制セラレタルニ由ルベシト雖トモ、其減少ノ度ハ西洋形増加ノ度ニ比スレハ強且大ニシテ其増減ヲ差引スルトキハ総体ノ上ニ於テ猶二十有余万石ノ減少ヲ呈出ス、固ヨリ滊船ノ如キ風帆船ノ如キハ駛行運転ニ便ニシテ航行ノ遅速便否上ヨリ之ヲ見レバ其一隻ハ殆ド数隻ノ日本形船ト其運送ノ効ヲ同フスルガ故ニ、石数ノ多少而已ヲ以テ能ク海運ノ消長ヲ概言スベカラズ、是ヲ以テ仮令全体ノ石数ニ於テハ斯ノ如ク減少ヲ呈スルモ運輸上ニ於テハ大ニ実効ヲ奏シタルハ本会ガ信ジテ疑ハザル所ナリ、夫レ西洋形船舶ノ増加スル此ノ如シ、然リト雖トモ其増加ノ割合ハ内地物産増殖、乗客増加ノ割合ト能ク相比準シテ其運送ニ供スルニ足レリトスルカ、本会決シテ其然ラザルヲ信スルナリ、試ニ三菱会社ノ所有船ヲ看ヨ、其総数ハ滊船風帆船ヲ合セテ三十九隻、此噸数二万七千百六十四噸ニシテ、此内支那上海香港ノ定時航船七隻此噸数七千八百六十九噸ヲ扣除スレハ専ラ沿海航行ニ使用スルモノハ三十二艘其噸数纔ニ一万九千二百九十五噸ニ過ギズ、其他人民所有ノ風帆船及滊船ノ清国ヘ航行スルモノ三艘此噸数千五百二十一噸ヲ除キ、其専ラ沿海運輸ニ供スルモノヲ以テ之ニ加フルモ其総噸数ハ六万壱千噸ノ上ニ出テザルベシ、然ルニ我国近年沿海運送ノ繁忙ヲ致シタルハ前述ノ如クニシテ猶且内外貿易額ノ如キ年々益々多キヲ加ヘントスルノ勢アリ、而シテ其輸出入物品ハ概ネ皆其運送ヲ外国船ニ仰クニ非ズヤ、之レガ為メ我国人ガ貿易貨物ニ向テ年々外人ニ払渡ス所ノ運賃総計ハ無慮数百万円ノ巨額ニ達ス、是レ畢竟我国未タ海外ヘ直航シテ貨物出入ノ運送ニ供スルニ足ルベキ船舶其数乏シキニ由ルト雖トモ豈又嘆ズベキニアラズヤ、蓋シ今日輸出入ノ不平均ヲ憂フル者世其人多シト雖トモ未タ此点ニ向テ深ク意ヲ傾注スル者ナキハ本会ガ大ニ怪シム所ナリ、今第三項ニ答申セル調査書概算書ニ記スル所ヲ以テ信憑スルニ足ルモノトセハ、其内外貿易貨物ノ運賃即チ輸出ニ於テ二百七十八万三千七百九十六円五十銭、輸入ニ於テ三百六十二万九千百十一円五十銭之ヲ合計スレハ六百四十一万二千九百〇八円ノ高額ニ達ス、其内海外航行ノ日
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本滊船及風帆船ノ収入スベキ運賃約ネ四十五万〇七百弐拾円ヲ扣除スルモ猶我国人ノ外国ニ向テ払渡ス所ノ運賃ハ五百九十六万二千〇八十八円ノ巨額ニ達スルニアラズヤ、今更ニ此概算ノ其当ヲ失セザルヲ示サンカ為メ輸出入重要ノ品種ニ就キ其運賃額ヲ条記スレハ

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   項目   輸出品種類   輸出斤量         此運賃見積リ 国分      斤              円 英      礦物      二、四七三、三九六   一噸ニ付卅五円之見込     五一、六一二・四一六        葉煙草     二、〇九三、八七八   同   四十円之見込     四九、八五四・二三八        米       四、五三四、九四〇   同   三十五円之見込    一三、四九六・二五〇 仏      生糸      一、八四五、三四〇   一斤ニ付十銭之見込     一八五、五三四・〇〇〇 米      茶      二五、七四五、三四〇   同   五銭之見込   一、二八七、二六七・〇〇〇 支那     石炭    一九七、七三五、四二九   百斤ニ付五十銭之見込    九八八、六七七・一四五        板刻混布   三〇、八八三、六八二   同   十八銭之見込     五五、五九〇・六二七 合計           二六五、三一二、〇〇五               二、六三二、〇三一・六七六   種類                綿布                              毛布                           毛綿布       輸入数量        運賃見積        百磅ニ付割合   輸入数量       運賃見積        百碼ニ付割合    輸入数量      運賃見積        百碼ニ付割合 国分               碼         円      円              碼         円      円              碼         円      円 英    八二、五〇四、七八一  五二一、五二四・四八六    六二四    一、三九六、〇二七   三八、二五六・五一五  二・七四〇   九、八八〇、九八一  一六二、一〇一・三七〇  一・六四〇 仏        八七、六九八      八八〇・三五七  一・〇〇三   一八、一〇五、四八一  二六七、六一〇・七四五  一・四七八     三四八、七四六    六、六〇五・九〇四  一・八九四 日耳曼     二三九、一三四    二、一六二・三一一    六〇四    二、八二四、五〇二   四〇、一五〇・八四八  一・四二一     二五五、二〇八    四、六八四・四八三  一・八三五 米       三四七、四五五    二、三九九・六八九    六九〇        五、四五九      二三四・三〇二  四・二九二      ・・・・・・・・・・・・       ・・・・・・・・・・・・    ・・・・・・ 運賃合計     ・・・・・・・・・・・・  五二七、九六六・八四三    ・・・・・・    ・・・・・・・・・・・・     三四六、二五二・四一〇    ・・・・・・     一七三、三九一  一七三、三九一・三五七    ・・・・・・ 



以上輸出入品十種ノ運賃ノミニシテ其額已ニ三百六十七万九千六百有余円ニ達ス、其他万種ノ品物ニ就キ逸々其運賃ヲ査察スルトキハ蓋シ復タ驚クベキ巨額ニ達スベキナリ
以上挙示スルガ如ク我国ノ貿易ハ年々其額多キヲ加ヘ、殊ニ近年海外直輸ヲ企ツル者踵ヲ接シテ各地ニ起リ、各々相奮テ其商権ヲ伸張セントス、於是乎内外航海ノ全権モ亦漸ク我ニ回収スベキニ今日ニ於テ猶我国船舶ノ海外ニ直航スルモノハ僅カニ支那一二ノ港ニ過ギズ、夫レ如此ク海外直航ノ事業ハ能ク内地物産ノ繁殖ト併行其進度ヲ保タズシテ貨物ノ運送益々急切ヲ告クルカ故ニ、船舶ハ常ニ其需用ニ応スルニ乏シク随テ貨物産地ニ停滞シテ販売常ニ其期ヲ失シ之ガ為メ商業上至
 - 第17巻 p.691 -ページ画像 
大ノ損害ヲ生ズルモノ其例少シトセズ、例之ヘバ今神戸ニ於テ砂糖ノ供給ヲ琉球産地ニ求メンニ少クモ二三ケ月ヲ経ザレバ其送達ヲ得ル能ハズ、然ルニ若シ之ヲ電信ヲ以テ香港ニ通スル時ハ多クモ十日間ヲ出デズシテ其供給ヲ得ルニ至ラン、其他木綿糸ト云ヒ米ト云ヒ皆夫レ然ラザルハナシ、是ヲ以テ内国産ヲ以テ使用ヲ弁ズルニ足ルモノト雖トモ、其送達ノ遅延ナル終ニ売買其期ヲ失セン事ヲ恐レ却テ之ヲ海外遠隔ノ地方ニ向テ其供給ヲ仰グニ至ル、是我国輸入増加ノ勢焔ヲ助クルノ一因ト云フモ決シテ不可ナキナリ、如此貨物ノ産地ニ停滞シテ船舶ノ之ヲ運搬スルモノ其数乏シキトキハ其勢ヤ亦運賃ノ高貴ヲ免カルベカラザルナリ、是豈内国産地ト海外市場ノ間能ク物価ノ平準ヲ得ザル所以ニアラザルヲ得ンヤ、夫レ市価ニシテ運賃高貴ノ為メ其割合ヲ昂騰セハ其需用モ亦随テ減少セザルヲ得ズ、今試ニ北海道産物ニ就テ此事実ヲ証センニ明治十年度開拓使函館支庁管内ヨリ内外各地方ヘ輸出ノ高ヲ撿スルニ
  内国各地方ヘ輸出  百六十六品
   此価額百六十四万八千四百九十四円五十九銭
  海外ヘ輸出     二十四品
   此価額六十四万弐千四百六拾八円三拾壱銭五厘
ニシテ其海外輸出高ハ内地販売高ノ約三分一余ニ過ギズ、蓋シ北海全道ノ年産額タル無慮数千万円ニ下ラズ、而シテ輸出入表ニ拠ルニ其明治十二年度間ニ於テ海産物ノ支那地方ヘ輸出スルモノ其高弐百三拾四万〇七百円ニ出デズ、其海産中支那人民ノ嗜好ニ適スルモノニシテ猶未タ輸出セザルモノ決シテ少シトセザルナリ、其他各地ノ製産品中生蝋ノ如キ樟脳ノ如キ其産額乏シカラズシテ猶未ダ十分ノ輸出ヲ見ザルモノ一二品種ニ止ラズ、其故何ゾヤ、是レ地ニ産力ナキノ故ニアラズ又海外ニ需用ナキノ故ニアラズシテ只之ヲ輸出ノ海外市場ニ廉売スル事能ハサルニ由ルノミ、是レ豈船舶ニ乏シク運賃高貴ノ致ス所ナラザルヲ得ンヤ、如此運賃ノ高貴ナルニモ拘ラス大ニ海漕ノ業ヲ起シテ以テ利益ヲ図ラントスル者其人寡キモノハ、想フニ我邦未ダ船体保険ノ制ナキガ故ニ数艘ノ船舶ヲ以テ海運ノ業ニ従事スル者ハ其危険ヲ平均スルノ自力ヲ有シ、能ク其業ヲ永続スルノ利アリト雖トモ纔カニ一二ノ船舶ヲ構造シテ以テ此業ヲ営マントスル者ハ巨万ノ金額ヲ投シテ徒ラニ危険ヲ冒スノ恐アルカ故ニ自ラ其志ヲ挫折セシムルノ憾ナシトセン、加之西洋形船舶ヲ造築セント欲スル者アルモ、其構造ノ堅罕脆弱《(牢)》ヲ判別シ且ツ其構造ノ己レカ註文ニ適当スル乎否ヤヲ鑑査スル事能ハス、而シテ官ニ於テモ未ダ其船体ノ堅強脆弱ヲ撿査シテ以テ之レカ等給ヲ定ムルノ制ナシ、故ニ多少ノ資本ヲ船舶ノ構造ニ投セント欲スル者アルモ前途ノ如何ニ掛念シ為メニ其意匠ヲ果サヾル者亦少シトセズ殊ニ我邦ノ現況ヲ以テセハ航海ノ力概ネ一方ニ重キヲ以テ自ラ其制セラレン事アルヲ恐レ、進ンテ此業ヲ取ルノ精神ヲ沮喪セラルヽ等ノ諸因ニヨラズンバアラザルナリ
或ハ運賃ノ高貴ヲ以テ物価騰貴ノ反響ニ帰スル者アリ、其説ニ云ク、我国ノ運賃ハ今日ノ物価ニ比準シテ其当ヲ得タルモノニシテ、決シテ高貴ト云フベカラザルナリト、是レ或ハ其理ナキニアラザルベシト雖
 - 第17巻 p.692 -ページ画像 
トモ直チニ物価ノ騰貴ヲ以テ之ヲ断言スベカラザルモノアリ、夫レ欧米各国ニ於テハ日用諸品ノ高価ニシテ各業経営ノ困難ナル決シテ我国ノ比ニアラズ、然ルニ欧米諸国ノ運賃ハ概ネ皆我国ヨリ低度ニ居ルニアラズヤ、由是観之我国運賃ノ割合ハ決シテ物価ニ比準シテ其当ヲ得タルモノト為スベカラザルナリ、或ハ又其因ヲ銀貨ノ騰貴ニ帰スルモノアリ、云ク、欧米諸国ニ於テ運賃ヲ算スルヤ総テ正貨ヲ以テ之ガ標準ト為ス、然ルニ我国ニ於テハ内国運賃ハ総テ紙幣ヲ以テ之ヲ収ム、而シテ其紙幣ヲ以テ銀貨ニ対スレハ今日ノ如ク著シキ差違アルニアラズヤ、是レ運賃ノ高貴ナルニアラズシテ紙幣下落ノ反響ナルノミト、然レトモ本会カ考査スル処ニ拠レバ是レ決シテ其実ヲ得タルノ説トナスベカラザルナリ、夫レ銀貨ノ騰貴ハ運賃上ニ多少ノ影響ヲ生ズル固ヨリ復タ其理ナキニ非ズト雖トモ、銀貨一円八十銭ノ高点ニ達スル今日ノ如キモ猶船主ニ得ル処ノ利益少カラズトス、由是観之銀貨ノ騰上タル只船主利益ノ幾分ヲ減殺スルニ過ギザルノミ、之ヲ要スルニ銀貨上進ノ如キ物価騰貴ノ如キ必シモ運賃上多少ノ影響ナキニアラザル可シト雖トモ、是レ其勢ヲ助成スルモノト云フニ過キザルナリ、而シテ只其真因ト云フベキモノハ即チ上ニ縷陳スルカ如ク、第一我邦近年物産増殖シテ能ク其運搬ニ供スルノ船舶寡少ナルト、第二沿海港多クハ船舶出入危険ニシテ貨物搭載ニ便ナラザルトニ在ルノミ、是本会カ以上調査スル処ニ就キ運賃割合高貴ノ原因ト断言スル所ナリ
以上ニ論スルカ如ク我邦運賃高貴ノ真因ヲ以テ果シテ本会カ考査スル処ニアリトセハ、勉メテ造船ノ事業ヲ振作シ運輸ノ便ヲ計画スル実ニ今日ノ急務ト云ハザルヲ得サルナリ、且ツ夫レ我邦ノ地位タル四囲環海ノ孤島ニシテ南ハ支那ニ接シテ一葦上海ニ航スベク、東ハ米国ニ隣リテ桑港ト相対ス、其地形上ヨリ之ヲ見ル時ハ東洋ノ中心ニシテ之ヲ彼ノ隣国ト土壌ヲ接シ境界相犬牙シ其貨物ノ送達一ニ陸運ニ依ラサルヲ得サルノ邦国ニ比スレハ、其天恵ノ厚薄果シテ如何ソヤ、夫レ欧米諸州ノ中水利ニ乏シク地形運輸ニ適セサルノ邦土ニ於テハ、間々巨万ノ資材ヲ抛チ峻嶺ヲ夷ケ深壑ヲ埋メテ以テ鉄道ヲ敷築スルモノハ其地形上不得止ニ出ツルノ工事ナリ、然ルニ我邦ノ如キ其地勢最モ能ク舟楫ニ適シ、現ニ内国各地ニ運送スル貨物ニシテ其十中八九ハ水運ニ倚ルニアラスヤ、如此舟楫ノ利運載ノ便ヲ具有スルニモ拘ラス内地沿海ノ通航スラ猶未タ足ラサル所アリ、而モ海外貿易ニ向テハ年々無慮数百万円ノ運賃ヲ外人ニ払ヘ其額タル輸出入不平均ノ額ニ頡頑シテ猶之レヨリ多カラントス、豈嘆ズヘキニアアラズヤ《(衍)》、今ヤ我邦運輸船舶ノ景況ニ係ル御下問ニ復申スルニ当リ本会深ク此点ニ向テ憂慮ニ堪ヘサルモノアリ、即チ敢テ其所見ヲ陳述シテ以テ閣下ノ高覧ニ供ス、冀クハ我政府亦深ク此ニ注念アラン事ヲ 頓首謹白


東京商法会議所要件録 第四一号・第七―九頁 明治一五年二月二八日刊(DK170053k-0016)
第17巻 p.692-693 ページ画像

東京商法会議所要件録  第四一号・第七―九頁 明治一五年二月二八日刊
 ○明治十四年東京商法会議所事務報告
    政府ヨリ下問  五件
船舶運輸之景況ニ就キ商務局長ヨリ御下問ノ件
 本件ハ明治十四年二月五日付ヲ以テ商務局長河瀬秀治殿ヨリ御諮問
 - 第17巻 p.693 -ページ画像 
ニ係ル、而シテ其御下問ノ要旨ハ沿海運輸ノ便否参考之為メ全国各港出入之船数噸数其他積荷数量及運賃割合等ヲ調査復申スヘシトノ趣意ニシテ蓋シ沿海運輸ノ拡張ヲ図ラセラルヽニ出ツルモノナリ、乃チ二月九日第十九定式会ニ於テ之ヲ衆議ニ付シタルニ、如此ハ是レ本会ガ宜ク尽クスベキノ義務ナレバ謹テ御下問ノ趣旨ヲ承諾シ理事本員及運輸船舶事務委員ニ於テ其調査ヲ担当スベシト云フニ決シ爾後此等ノ調査委員ハ御下問之要項ニ就キ数次委員会ヲ開キ其調査ノ手続ヲ議定シ、猶此間或ハ当局主任官吏ノ臨席ヲ請ヒ若クハ委員ヲシテ横浜ヘ出張セシメ、其他又実業者ノ考案ヲ諮詢スル等ノ為メニ数回ノ会議ヲ開キ、其後漸クニシテ之カ草案ヲ作クリ、更ニ六月廿五日第十四臨時会議ニ於テ全会ノ審案ヲ遂ケ、猶七月十二日委員総会ニ於テ之ヲ修正加除シ、終ニ同月十三日ニ至リ其草案ヲ完成シテ之ヲ商務局長ニ復申シタリ
○下略


東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 四(DK170053k-0017)
第17巻 p.693 ページ画像

東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 四
                   (東京商工会議所所蔵)
過日被差出候海運実況取調書之義ニ付質議致度件有之候間、掛リ委員若クハ書記之内都合次第本局ヘ出頭候様御取計有之度此段申入候也
  十四年八月十七日
              商務局長  河瀬秀治
  東京商法会議所会頭
    渋沢栄一殿


東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 四(DK170053k-0018)
第17巻 p.693-694 ページ画像

東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 四
                   (東京商工会議所所蔵)
    船舶運輸之景況御下問之条款調査費御下付之義ニ付願
本年二月五日ヲ以テ沿海運輸之実況取調上申可致旨御下問ヲ蒙リ、右ハ実ニ本邦内外商業上ニ至大之関係ヲ有スル緊重之事項ト奉存候ニ付不取敢御下問之趣旨ヲ奉シ衆議之末特ニ委員ヲ撰定シ、右調査ニ従事仕候処、七月初旬ニ至リ御下問之要項大約調査整頓仕候ニ付、更ニ之ヲ衆議ニ質シ、其可決スル処ヲ以テ同月十三日調査之顛末及本会ノ意見ヲモ併テ及上申置候処、去ル十七日書面御達之旨モ有之候ニ付不取敢書記差出候処、右調査之廉々ニ就キ懇到ナル御審問ヲ蒙リ候趣、是本会ガ予テ仰望スル処ニシテ又以テ閣下之我邦海運進捗上厚ク御注意被為在候段深ク感佩仕候、猶上申漏之分ハ目下夫々手配致置候ニ付追テ調査出来次第上呈可仕奉存候処、抑モ右御下問調査之義ハ二月以来殆ド半年有余ノ久キニ亘リ、其間委員ハ各自担当調査スル処ノ事項ヲ提出シテ臨時会ヲ開キタル事総会議・小会議ヲ合テ前後十数回ニ及ヒ且ツ議案ノ印刷ニ付シタルモノ此ニ七回、其他臨時書記ヲ傭入シタルガ如キ、横浜出張旅費ノ如キ、会議入費ノ如キ彼是莫大ノ費用ヲ要シ本会常費定額外月々多分ノ不足ヲ生シ候際、偶々保護金廃止之旨御達有之、旁会計上一層困難之場合ニ立至リ候得共、固ヨリ右調査之義ハ前述ノ如ク我邦目下緊重之問題ニシテ決シテ忽ニスベカラザルノ件ト
 - 第17巻 p.694 -ページ画像 
奉存候ニ付費用ノ多寡ニ拘着セズ十分調査ヲ悉クシ候義ハ本会之本分ニ可有之奉存候得共、何分右御下問之条款頗ル多岐ニ渉リ、随テ其調査ノ容易ナラザルガ為メ今日ニ至リテ猶未ダ全成ヲ告ゲザルモノモ有之候程ニテ、此数月間ニ要シ候費額ハ実ニ予想外ノ多キニ出デ殆ド困却仕候間、御時節柄請願仕候ハ甚ダ恐入候得共、何卒右相当之調査費御下附相成様仕度、尤本会議事規則ニ拠レバ印刷費ノ如キハ公私ヲ問ハズ申受候事ニ相成居候得共、已ニ昨年関税局ヨリ海関税則御改正之義ニ付御下問之際印刷費ヲ除キ調査費トシテ金五百円御下附相成候例モ有之候ニ付、何卒前陳ノ状況御洞察ノ上出格之御評議ヲ以テ本会規則ニ拠リ可申受印刷費ノ外右調査費トシテ相当之金員御下付相成様仕度此段奉願上候也
                  東京商法会議所会頭
  明治十四年八月二十日        渋沢栄一
  商務局長
    農商務大書記官河瀬秀治殿
(別紙張紙)
願之趣ハ採用難相成候事商務局印
  明治十四年九月廿四日


東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 五(DK170053k-0019)
第17巻 p.694-695 ページ画像

東京商法会議所官衙諸達並上申書綴 五
                   (東京商工会議所所蔵)
    印刷費御下付之義ニ付願
過般御下問相成候沿海運輸之実況調査費トシテ相当之金員御下付相成度旨及出願候処右願之趣採用難相成旨九月廿四日ヲ以テ御指令之趣謹承仕候、右ハ昨年関税局ヨリ海関税則御改正之義ニ付御下問之際別途調査費御下附相成候先例モ有之、殊ニ此度御下問之条項調査之義ハ本年二月以来七月迄殆ド半年有余ノ久ニ渉リ、其間委員之集会臨時総会等前後十数回之会議費、其他臨時書記写字生之雇入、横浜出張旅費、印刷費等ニテ月々本会常費定額外多分之費用ヲ要シ候義ニ付、御時節柄如何ト存候得共敢テ情願仕候義ニ御座候処、已ニ前書之通リ御採用難相成上ハ無余義事ト奉存候得共、右調査費中印刷部分ニ属スルモノ即チ写字生之傭入、連榻器之購入、其他右ニ関スル印刷費之義ハ公私ヲ問ハズ本会議事規則ニ拠リ可申受事ニ相成居候ニ付、即チ其分丈ケ別紙ニ取調差出申候間、何卒至急御詮議之上右之金員御下附相成様仕度、此段奉願上候也
                  東京商法会議所会頭
  明治十四年十月            渋沢栄一
  商務局長
    農商務大書記官河瀬秀治殿
(別紙)
    本会規則ニ拠リテ可申受入費
一金五拾五円            写字料
一同拾五円             連搨器
一同百四拾八円           印刷諸費
 - 第17巻 p.695 -ページ画像 
 合計金弐百拾八円

書面願之趣印刷費金百四拾八円之内金百弐拾円弐拾八銭及下附候条年度区分相立受取方会計局ヘ可申出事
 但右金百四拾八円ノ内金弐拾七円七拾弐銭ハ大蔵省会計局ヘ請求可致候事
 明治十五年二月十五日商務局印

    証
一金弐拾七円七拾弐銭        受取人 西田耕平
  但シ明治十四年中商務局ヨリ御下問相成候船舶運輸之景況調査之節印刷入費
右御下附相成正ニ受取候也
                東京商法会議所会頭
  明治十五年二月二十日          渋沢栄一
    大蔵省会計局御中

    証
一金拾九円〇八銭          受取人 西田耕平
  但シ明治十四年中御下問相成候船舶運輸之景況調査之節
    右印刷入費四月十二日より六月十日迄之分
御下附相成候
右正ニ受取候也
                東京商法会議所会頭
  明治十五年二月二十日          渋沢栄一
  農商務省
    商務局御中

    証
一金百〇壱円弐拾銭          受取人 西田耕平
  但シ明治十四年中御下問相成候船舶運輸之景況調査ニ付
    印刷入費七月十二日より八月八日迄之分
 御下附相成リ
右正ニ受取候也
                東京商法会議所会頭
  明治十五年二月二十日          渋沢栄一
  農商務省
    商務局御中