デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2017.6.14

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
2款 東京商工会
■綱文

第18巻 p.5-20(DK180001k) ページ画像

明治16年9月22日(1883年)

是年五月十六日太政官第十三号布達ヲ以テ各地ニ勧業諮問会並ニ勧業委員ヲ設置スルヲ得ル旨公布セラル。是ニ於テ是日東京府知事芳川顕正、東京市中ノ商工業者代表ヲ木挽町旧明治会堂ニ招集シ聯合商工業会ノ設立ヲ誘導ス。栄一席上創立委員ニ推薦セラル。


■資料

渋沢栄一書翰 松田道之宛 (明治一六年)四月六日(DK180001k-0001)
第18巻 p.5 ページ画像

渋沢栄一書翰  松田道之宛 (明治一六年)四月六日    (大塚透氏所蔵)
○上略
曾而申上候商業議会之事ハ如何御座候哉、商法会議所之方も余り延引候而ハ一同気抜可致と心配仕候、去リ迚右様之集会今日ニして廃絶するハ実ニ残念千万ニ御座候、何卒府下之為メ今一段之御高配奉仰候
○中略
  四月六日
                     渋沢栄一
    松田府知事閣下


法令全書 明治十六年 内閣官報局編 明治二四年三月刊 第十三号(五月十六日 輪廓附 農商務卿連署)○太政官布達(DK180001k-0002)
第18巻 p.5-6 ページ画像

法令全書 明治十六年 内閣官報局編  明治二四年三月刊
○第十三号(五月十六日 輪廓附 農商務卿連署)○太政官布達
(欄外記事) [農商務省第八号達参看
各地方ノ便宜ニ従ヒ左ノ条項ニ照準シテ勧業諮問会並勧業委員ヲ設置スルコトヲ得
第一条 諮問会ハ各府県勧業事務ニ付府知事県令ノ諮問ニ備フルモノトス
第二条 諮問会員ハ府知事県令ニ於テ管内農商工事ニ名望アル者ヲ選テ之ニ充ツ、其人員並ニ処務ノ順序等総テ府知事県令適宜之ヲ定ム可シ
第三条 諮問会員ノ旅費日当ハ地方税中勧業費ヲ以テ支弁ス可シ
第四条 勧業委員ハ区町村若クハ聯合区町村ニ於テ勧業ノ事ヲ担任シ又ハ区郡長戸長ノ諮問ニ備フルモノトス
第五条 勧業委員ノ人員選挙方法及ヒ処務ノ順序等ハ区町村会又ハ聯合区町村会ニ於テ之ヲ評定シ府知事県令ノ裁可ヲ受ク可シ
(欄外記事) [農商務省第十一号達二十一年法律第一号参看
第六条 区町村若クハ聯合区町村ニ於テ農業会・商業会・工業会又ハ農商工ヲ併セタル勧業会、其他同業会ヲ設置スルトキハ勧業委員ヲ
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シテ会員タラシムルコトヲ得
第七条 府知事県令ニ於テ勧業委員ノ設置及第六条ノ各会設立ヲ要用ト認ムルトキハ誘導シテ之ヲ設置セシムルコトヲ得、此場合ニハ農商務卿ニ稟議シテ認可ヲ請クヘシ
第八条 勧業委員ノ旅費日当及第六条ノ各会諸費ハ区町村及聯合区町村ノ協議費ヲ以テ支弁シ又ハ関係各業者ニ於テ協議支弁スルコトヲ得、但有志者ヲ以テ組織スル者ハ此例ニ非ラス
第九条 農商務卿及主務ノ官署ハ各地方勧業上ノ件ニ付諮問会又ハ第六条各会ノ意見ヲ問フコトアル可シ、諮問会又ハ第六条ノ各会ハ勧業上公益ノ件ニ付農商務卿及主務ノ官署ニ意見書又ハ報告書ヲ呈スルコトヲ得
右布達候事


回議録 東京商工会 明治一六年(DK180001k-0003)
第18巻 p.6 ページ画像

回議録  東京商工会 明治一六年          (東京府文庫所蔵)
今般太政官第十三号御布達ニ拠リ聯合商工業会設置之義府知事閣下ヨリ御諮問之儀有之候ニ付、当集会所委員ノ内二名来ル二十二日午前第十時木挽町旧明治会堂ヘ参集可仕旨御通達之趣承知仕候、此段御請申上候也
  明治十六年九月十八日      東京銀行集会所
    東京府勧業課
         御中


回議録 東京商工会 明治一六年(DK180001k-0004)
第18巻 p.6 ページ画像

回議録  東京商工会 明治一六年          (東京府文庫所蔵)
去ル十五日附ヲ以テ御通達之趣ニ拠リ来ル二十二日当集会所ヨリ出会可仕人名左之両名ニ有之候間、此段御承知置被下度候也
              委員  渋沢栄一
              委員  山中隣之助
  明治十六年九月廿日       東京銀行集会所
    東京府勧業課
         御中


回議録 東京商工会 明治一六年(DK180001k-0005)
第18巻 p.6-12 ページ画像

回議録  東京商工会 明治一六年           (東京府文庫所蔵)
    聯合商工業会誘導演説筆記
明治十六年九月廿二日府知事ハ聯合商工業会設立誘導ノ為メ、府下重立タル商工業組合並ニ会社ノ総代ヲ木挽町ナル旧明治会堂ニ招集セリ会スル者百二十人、午前第十時府知事臨席乃チ起テ該会設立ヲ誘導スル所以ヲ演説セラレタリ、其大要ハ左ノ如シ
 今日諸君ヲ此ニ会シテ相談ヲ要スルモノハ此度太政官第十三号布達ニ基キ諸君ヲシテ府下ニ一ノ聯合商工業会ヲ起サシメントスルカ為メナリ、抑々東京ハ商工業ヲ以テ成立ツ所ノ都会ナレハ其盛衰ハ広ク全国ノ経済ニ関スル所ナリ、然ルニ従来府下商工人ノ団結シテ一体ヲ成スモノナク、随テ其利害得失ニ於テモ衆望如何ヲ知ルニ途ナ
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シ、是レ拙者カ常ニ遺憾トスル所ナリ、尤モ是迄府下ニ東京商法会議所ナルモノアリテヤヽ商工人ノ輿論ヲ代表シタル如クナルモ、其実有志者ノ私会ナルカ故ニ未タ充分ノ効能ヲ致サシムルヲ得サルノ憾アリ、是拙者カ今回ノ布達ニ基キ聯合商工業会ノ設立ヲ諸君ニ誘導スル所以ナリ、而シテ今此会ヲ設立センニハ其会員ハ如何ナル方法ヲ以テ撰挙スヘキヤ、拙者熟々之ヲ考フルニ府県会議員撰挙法ノ如ク府下各区ヨリ若干ノ代議人ヲ撰挙シテ之ニ充ツルトセハ其名公共ノ義ニ適フカ如シト雖トモ、実際甚タ難事ナリトス、何ントナレハ方今未タ民法商法ノ制定ナキニ際シ、商人非商人ノ区別甚タ渺漠タル折柄、各商工総体ニ通シテ撰挙被撰ノ分ヲ定ムルハ極メテ為シ難キ事ニシテ、枉ケテ之ヲ為スモ却テ適当ノ人物ヲ得難キノ恐レナシトセス、依テ先ツ十五区内重立タル各商工業組合中ヨリ其大小ニ応シ適宜ノ総代人ヲ出サシメ之ヲ以テ会員ニ充ツルノ制トナサバ、其撰挙法便宜ヲ得、随テ又適当ノ会員ヲ得易カラント信スレハナリ然ラハ此会ハ実ニ商工人一般ノ輿論ヲ写スノ鏡ニシテ、例ヘハ政府ニ於テ海関税其他商工業ニ関スル諸税法ヲ設ケラレ、又ハ全般商工業ニ関スル諸法令ヲ制定セラルヽニ臨ミ、其利害ヲ此会ニ下問セラルヽノ場合アルトキハ勿論、拙者カ府政上ニ就キ現ニ府民ノ営業ニ関スル諸布達ヲ発スルニ当リ、其得失ヲ此会ニ諮問スル等ノ事アラハ其会員タル人々ハ元各商工人カ撰挙シタル総代人ナレハ其利害ヲ深切ニ考究スルハ言ヲ待タサル事ニシテ、其得失ニ就テハ遠慮ナク意見ヲ復申スヘシ、然ル時ハ政府ハ斯々ノ件ハ人情ニ背馳スルヲ以テ之ヲ止ムヘシ云々ノ事ハ我府民ノ望ム所ナルヲ以テ之ヲ興スヘシト一々此鏡ニ照ラシテ商工人ノ輿論ヲ知ルヲ得、官民ノ便利ヲ輔翼スル実ニ鮮少ナラサルヘシ、而シテ此会ノ設立ニヨリテ得ル所ノ利益独リ之ノミニ止ラス、苟モ従来ノ法規ニシテ商工業ニ不便アリトスル時ハ其取捨如何ヲ其筋ニ建白シ、又ハ其便益ヲ振起スルニ足ルヘキ新按アルトキハ之カ施設ヲ望ム事ヲ得ヘシ、又諸商品製造販売ノ景況及ヒ運輸金融ノ景況等ヲ調査シテ之ヲ公告スル事ハ一般商況ノ盛衰ヲ察シ、経済ノ消長ヲ知ルノ要具ニシテ実ニ欠クヘカラサルノ事ナリト雖トモ、固ヨリ各業者聯合ノ力ニ依テ始テ行ハルヘキモノニシテ一人一個ノ能ク企及シ得ヘキモノニ非サルハ敢テ拙者ノ陳述ヲ要セサル所ナリ、而シテ全府商工業者ノ利ヲ起シ害ヲ除テ公共ノ福利ヲ増スハ特ニ此会ノ設置ニアルハ拙者深ク之ヲ信シテ疑ハサルナリ
 去リナカラ経費ノ此会ニ於ケル最重大ナル関係ヲ有スルニ付キ、苟モ斯会ヲ設立スルニハ毎年幾許ノ費額ヲ要スルヤヲ予メ講究イタシヲカサルトキハ折角ノ論談モ或ハ画餅ニ属スルノ恐レナキヲ保タス故ニ拙者試ミニ之ヲ現在ノ会議所ニ徴シテ各人ノ将来負担スヘキ費額ヲ筭出スルニ其甚タ夥多ナラサルヲ見ル、今玆ニ招集シタル組合ノ数ハ五十八、会社ノ数ハ十五、合シテ七十三トナル、先ツ各会社ヨリハ一人ノ会員ヲ出シ、各組合ヨリハ平均二人ツヽノ会員ヲ出スモノトスルトキハ会員ノ数即チ百三十一人トナルナリ、今此経費ヲ一ケ年三千円ト見積リテ之ヲ会員ノ人頭ニ割付クル時ハ一人ノ会員
 - 第18巻 p.8 -ページ画像 
ヲ出スモノハ金二十二円九十銭一厘ヲ負担シ、二人ノ会員ヲ出スモノハ金四十五円八十銭二厘ヲ負担スルノ割合ナリ、此割合ニ依リテ見ルトキハ出金高相応ニ多キカ如シト雖トモ、更ニ此金高ヲ組合員ノ人頭ニ割当ツルトキハ甚タ小額タリ、試ミニ此三千円ヲ今日招集シタル組合ノ総人員八千百三十二人ヘ平等ニ割当ツルトキハ一人ニ付一ケ年負担スヘキ金高三十六銭九厘ニシテ、毎月各自纔ニ三銭一厘ヲ出セハ可ナリ、勿論各組合人員ノ多寡ニ依リテ各自ノ負担スル処多少ノ差異アルヘキ筈ナリ、例ヘハ諸組合ノ中其人員二十名以下ノ小組合十八アリ、此十八小組合ノ総人員ヲ尽ク合筭平均スルトキハ一組合ノ人員十人ニ当ル、今此等ノ小組合ヨリ各一人ツヽノ会員ヲ出スモノトシ前記会員一人分ノ賦金二十二円九十銭一厘ヲ以テ更ニ其組合ノ人員十人ニ割付クルトキハ、一人一ケ年ノ出金高二円廿九銭ニシテ、即チ一ケ月ノ出金十九銭一厘ニシテ可ナリ、尤モ此等ノ組合ハ其人員小数ナルヲ以テ出金高モ右ノ通リナレトモ、概スルニ各組合ノ人員ハ大抵三四十人若クハ五六十人位ノモノ多キヲ以テ其人員ノ多キニ随ヒ其出金高モ随テ減少スヘキ筈ナリ、例ヘハ諸組合中材木問屋仲組・薪炭問屋・両替屋等ノ組合ニ至リテハ、皆ナ尽ク多数ノ人員ニシテ、此等組合人員ノ負担スヘキ金高ハ、一ケ月纔カニ一銭ニモ当ラサル程ナルガ、今先ツ人員百名以上ノ大組合十八アリ、此十八大組合ノ総人員ヲ合算平均スルトキハ、一組合ノ人員三百八十六人ニ当ル、今此等ノ大組合ヨリハ仮リニ会員三人ヅヽヲ出スモノトシ、而シテ此会員三人ノ負担スヘキ金六十八円七十銭三厘ヲ其組合人員三百八十六人ニ割当ルトキハ、一人一ケ年ノ負担高僅カニ十七銭八厘ニシテ、即チ毎月ノ出金高一銭五厘ニ過キサルナリ、由是観之各自ノ出金高ハ甚タ小額ニシテ諸君カ容易ニ之ヲ負担シ得ヘキモノナルハ亦タ拙者深ク之ヲ信シテ疑ハサル所ナリ
      経費年金三千円ノ予算

図表を画像で表示経費年金三千円ノ予算

 計 会社 組合 組合並会社 七三 一五 五八 組合並会社ノ数 同一ケ月 一人ニ付一ケ年      一三一 一五 一一六 議員ノ数 一、九〇八 円 二二、九〇一 円 同一ケ月 一人ニ付一ケ年       八、一三二 八、一三二     組合員ノ数 凡 三、一 銭 凡三六、九 銭 




小組合ハ会員壱名ヲ出スモノトシ、大組合ハ三名ヲ出スモノト仮定ス
二十人以下ノ小組合十八、其総人員百八十人平均壱組合人員十人
 右一人ニ付一ケ年二円廿九銭、一ケ月十九銭一厘
百人以上ノ大組合十八、其総人員   平均一組合人員三百八十六人
 右一人ニ付一ケ年十七銭八厘、一ケ月壱銭五厘
以上陳述スル所ヲ以テ諸君ハ此聯合商工業会ヲ設立スルノ必要ナル理由ヲ諒セラレタルナラン、果シテ然ラハ其大体ニ於テハ諸君亦同意ヲ表セラルヘシト雖トモ其細目ニ至リテハ猶宜ク諸君ノ衆議ヲ以テ之ヲ決定セラルヘシ、依テ今此会設立ノ要旨ヲ掲ケテ以テ諸君ノ考案ヲ諮問スル事左ノ如シ
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    第一項 本会之組織
聯合商工業会ハ東京府下ニ於テ一箇所ノ設立ヲ許シ、各商工全般ニ関係スル利害得失ヲ会議シ得ルノ場トス
聯合商工業会ノ会員ハ東京府下十五区中重立タル商工業組合中ヨリ成立ツモノトス
聯合商工業会設立ノ後ニ於テ同業組合ノ規約ヲ定メタルモノモ亦会員ヲ出スヲ得ル
同業組合ノ設ケナキ商工業会社タルモ其業務大ニ全般ニ関係アルモノハ其会社ノ役員ヲシテ会員タラシムルヲ得ル
    第二項  会員撰挙法及其資格
会員ノ撰挙ハ同業組合中ノ公撰ヲ以テ之ヲ定メ府知事之ヲ認可ス、同業組合ナキ諸会社ヨリ会員ヲ出ストキハ其撰挙ハ会社ノ適宜ニ任スト雖トモ、等シク府知事ノ認可ヲ経ヘキモノトス
会員ノ任期ハ一ケ年間トシテ期ニ至テ更ニ撰挙スヘキモノトス、但再撰重任ヲ許ス
会員ノ人数ヲ同業組合ノ多少ニヨリテ斟酌スヘシト雖トモ概ネ百名以上二百名ヲ以テ之ヲ限ル
同業組合中ヨリ会員ヲ出スノ割合ハ、総員ノ多寡ト其組合員ノ多寡トニ応シテ適宜ニ之ヲ定メシム
会員タルヲ得ルモノハ東京府下ニ住居(本籍寄留ヲ問ハス)シテ現ニ商工業ヲ営ミ相当ノ資産ヲ有シ、年齢二十歳以上ノ者ニ限ル
    第三項 本会ノ規程
本会々員ノ公撰ヲ以テ会頭副会頭各一名ヲ置クヘシ、而シテ商工業委員又ハ会計委員等ハ本会ノ衆議ヲ以テ其挙措ヲ定ムヘシ、但シ書記計算又ハ調査等ニ要スル吏員ハ会頭ノ撰任ニ任スヘシ
聯合商工業会ノ規程及ヒ議事規則等ハ本会ノ衆議ヲ以テ之ヲ論判シ府知事ノ認可ヲ経テ決定スルモノトス、但規程及議事規則等ハ此要旨ニ牴触スヘカラス
    第四項 本会ノ事務
聯合商工業会ノ事務ハ左ノ三項トス
 第一項 議事
  本会ノ意見又ハ会外ヨリ寄贈サレシ考按ヲ本会ノ同意ニヨリテ本会ノ意見トシ、農商務省又ハ主務ノ官衙ニ建議スルモノ及ヒ農商務省又ハ其他ノ官衙ヨリ本会ヘ諮問セラレ之ニ復申スルモノ等ヨリ開クモノトス
 第二項 調査
  前項議事ノ摸様ニヨリテ実際ノ事情ヲ詳明スルカ為メ臨時之ヲ要スルモノ、及ヒ報告ノ材料ニ供スル為メ常ニ之ヲ要スルモノヲ含有ス
 第三項 報告
  之ヲ大別シテ左ノ四項トス
   第一 商業ノ景況
   第二 工業ノ景況
   第三 金融ノ景況
 - 第18巻 p.10 -ページ画像 
   第四 運輸ノ景況
  以上ノ四項ハ毎月又ハ毎半年トシ適当ノ時限ヲ定メ其提要ト細節トヲ附記スルモノトス、但シ議事ノ摸様ニヨリテ特ニ報告ヲ要スルモノハ此例外タルヘシ
    第五項 経費ノ支弁
 聯合商工業会ノ経費ハ同業組合中即会員撰挙人ノ協議費ヲ以テ之ヲ支弁セシム、但シ一会社ヨリ会員ヲ出スモノハ其会社ヲシテ之ヲ支弁セシム
 聯合商工業会ノ経費ハ毎年予算ヲ設ケ本会ノ衆議ヲ以テ之ヲ定ルモノトス
 経費賦課法ハ予算合計ヲ会員ノ人当ニ割付ケ(例ヘハ一ケ年ノ経費予算三千円ニシテ総会員百五十人ナレハ一員ニ付金二十円ツヽヲ醵出ス)之ヲ其年ノ始ニ於テ出金セシム、而シテ各同業組合中ニ於テノ配賦方法ハ其組合ノ協議ニ任ス
 農商務省又ハ其他ノ官衙ヨリ諮問ノ事ニ付其詳細ヲ調査スルカ為メ特ニ要スル経費及其議按又ハ復申書等ニ要スル印刷費ノ類ハ其官衙ニ向テ之ヲ請求スルヲ得ル
右畢テ其主意書一本ヲ各自ニ附与ス、時方サニ正午ナルヲ以テ会員ニ午餐ヲ饗シ暫シ休息セシム、食後府知事ハ更ニ本会設立ノ可否ヲ諮問シタリ
○壱弐番組砂糖問屋惣代曰ク、至極結構ナリ、速カニ御施行アラン事ヲ期望ス
○綿問屋惣代曰ク、賛成ナリ
○銀行集会所惣代曰ク、先刻来知事公ノ御演説ヲ承リタルニ御誘導ノ趣至極御尤ナリ、速カニ設立アラン事ヲ希フ、因テ爰ニ御同意ヲ表ス
○東京米商会所惣代曰ク、知事閣下ヨリ御演説ノ趣至極美事ナリ、賛成ス
○栄藍社惣代曰ク、誠ニ結構、早々設立アラン事ヲ期望ス
○醤油問屋惣代曰ク、賛成ス
○薬種問屋惣代曰ク、私モ賛成
○酒問屋惣代曰ク、大体ハ賛成、細目ハ尚上申セン
○両替商惣代曰ク、私ハ無論賛成ス、乍去本業ノ如キハ多人数ナルヲ以テ仲間一統ノ御決答ハ一週間ヲ期シ上申スヘシ
○下リ糠問屋惣代・陶器問屋惣代・西洋小間物問屋惣代・川崎造船所惣代・石灰問屋惣代・地廻酒問屋惣代・石材問屋惣代並ニ曰ク、賛成
○質屋惣代曰ク、多クノ仲間ナレハ急ニ相談届キ難シ、希クハ二週間ノ御猶予ヲ得タシ
○正開組帋問屋並ニ干鰯問屋惣代曰ク、賛成
○栄藍社惣代又曰ク、原按ハ無論賛成ナル事ハ先キニ述ヘタルカ如シ併シ仲間数名アルヲ以テ尚退テ仲間ニ謀リ、一週間内ニ御決答仕ルヘシ、尤モ原按ハ速カニ施行アラン事ヲ望ム
○筆墨問屋惣代曰ク、至極ノ事ナリ
 - 第18巻 p.11 -ページ画像 
○東京株式取引所惣代曰ク、先刻ノ要旨按ハ之ヲ拝見スル未タ熟セサルニ付尚篤ト相考ヘ御答仕ルヘシ
○回漕問屋惣代・絵具問屋惣代・銅鉄問屋惣代・下リ塩仲買惣代・麻苧問屋惣代・正開組・帋問屋惣代並ニ曰ク、賛成
○廻米問屋惣代並ニ同商会惣代曰ク、至極設立ヲ期望ス、尚其手続キ等ハ各組合協議ノ上相定メタシ
○銃炮弾薬免許商惣代曰ク、私ハ賛成、尚仲間中ヘ聞ケタル上ノ一週間内ニ其意見ノ次第ヲ上申スヘシ
○内国通運会社惣代曰ク、賛成
○共同運輸会社惣代曰ク、大分賛成多シ、最早決ヲ取ラレン事ヲ期ス
○河舟問屋惣代曰ク、尤モ賛成ナリ
於是府知事ハ会員ニ告ケテ曰ク、然ラハ決ヲ取ルヘシ、先刻来ノ御発言ヲ聞クニ或ハ直チニ賛成ト云フモアリ、或ハ私ハ賛成ナレトモ尚仲間ニ相談スヘシト云フモアリ、或ハ尚一二週間ノ猶予ヲ得テ決答スヘシト云フモアリ、詰リ意見ノ分岐スル所ハ此ノ三種ニ外ナラス、因テ之ヲ起立ニ問フ今直チニ本会ノ設立ヲ可ナリトスル者ハ起立アルヘシ
 三人ヲ除クノ外惣起立
即チ多数ナルヲ以テ直チニ本会ヲ設立スヘキ事ニ決ス
○栄藍社惣代曰ク、幹事或ハ議長ヲ投票スルガ為メ一週間ノ猶予ヲ求メタシ
○両替商惣代曰ク、多クノ組合ナルヲ以テ警視ヨリ触出スモ頭取ナリ故ニ委員ヲ設クヘシトスルモ通知方等ハ尚定メタシ
○唐糸問屋惣代曰ク、既ニ本会ガ立ツモノニ定リタル上ハ委員ヲ一人出ストカ二人出ストカ定メタシ
○陶器問屋惣代曰ク、頭取幹事ハ後ニスルモ善ハ急ゲト云フ話モアレハ先ツ委員ヲ定メラレン事ヲ期望ス
○質屋惣代曰ク、本日ハ呼出ヨリ間モナキヲ以テ只知事公ノ御演説ヲ承リニ参リタルノミ、仲間モ三千有余軒ノ多キアルヲ以テ尚賛成ノ御決答ハ二週間ノ御猶予アラン事ヲ望ム
此時府知事ハ更ニ会員ニ告ケテ曰ク、委員ヲ置クニ付二ノ説アリ、一ハ直チニ之ヲ置クヘシト云ヒ、一ハ之ヲ他日ニ譲ルヘシト云フナリ、因テ之ヲ起立ニ問フ直チニ委員ヲ置クヲ可トスル者ハ
起立アルヘシ
 起立八十五人
即チ多数ナルヲ以テ直チニ委員ヲ置クヘキ事ニ決ス
○倉庫会社惣代曰ク、中ニハ知ラサル人アルヲ以テ投票ニ苦ムナリ、故ニ知事ノ御目鏡撰定ヲ乞フ
○石材問屋・綿問屋・陶器問屋・両替商ノ諸総代皆曰ク、知事ノ御目鏡撰定ヲ乞フナリ
○唐糸問屋惣代曰ク、先ツ仮会頭ヲ置クヲ望ム、委員ハ其人ニ托シ撰定セシムヘシ
府知事又会員ニ告ケテ曰ク、委員ヲ撰挙スルニ両説アリ、一ハ知事ニ撰定ヲ乞フヘシト云ヒ、一ハ仮会頭ヲ置キ該撰定方ヲ其人ニ托スヘシト云フナリ、因テ之ヲ起立ニ問フ、知事ニ創立委員撰定方ヲ頼ムヘシトスル者ハ起立アルヘシ
 - 第18巻 p.12 -ページ画像 
 二人ヲ除クノ外惣起立
即チ多数ナルヲ以テ府知事ハ直チニ七名ノ委員ヲ撰定セリ、其人名ハ左ノ如シ
                三菱会社惣代
                    荘田平五郎
                銀行集会所総代
                    渋沢栄一
                海上保険会社惣代
                    益田克徳
                倉庫会社惣代
                    梅浦精一
                両替商惣代
                    柴崎守三
                四日市魚市場惣代
                    渡辺治右衛門
                共同運輸会社惣代
                    小室信夫
○唐糸問屋惣代曰ク、委員ハ如何ナル事ヲスルヤ
府知事之ニ答ヘテ曰ク、既ニ委員ノ定リシ上ハ右等ノ如キ細カノ相談ハ尚委員ニ向ヒ為スヘシ
○委員渋沢栄一曰ク、委員迚モ未タ腹按ナシ、元来吾々ハ今日ハ某々ノ会若クハ組合中ヨリ罷出テシ者ナリ、故ニ何ヲスルニシテモ尚之ヲ仲間ニ問ヒシ上ナラテハ能ハサルヘシ、況ンヤ会員中或ハ仲間相談ノ上ニ非サレハ決答シ難シト云フ人モアルニ於テヲヤ、思フニ喩ヘハ設立要旨ノ第二項会員撰挙方ハ如何スヘキヤ、又同第三項ノ規程ハ如何定ムヘキヤ、是等ハ皆ナ委員ノ起草スヘキ方按タルヘシ、依テ委員ノ相談ハ如何ナル処ヨリ始ムヘキヤ、之ヲ委員ニ謀ル
○唐糸問屋惣代曰ク、各自ノ会社若クハ組合ニ就テハ吾々各自ニ其委員ナルヘシト思フ、果シテ然ルヤ否ヤ、之ヲ渋沢委員ニ問フ
○栄藍社惣代曰ク、本員ハ未タ委員トナラス、本日ハ急ナル御呼出シアルヲ以テ不取敢罷出テシナリ、未タ公撰抔ヲ受ケシニ非サルナリ
此時委員七名ハ堂ノ一隅ニ小集シ相謀ル所アリシカ、稍々アリテ渋沢栄一演台ニ登テ述ヘテ曰ク、私ハ委員中ヨリ指名サレ代リテ此場ニ登リ一言ス、委員ハ二週間ヲ期シ規則書ヲ草シ御一同ヘ御協議致スヘシ諸君中仲間ヘ相談シ一週乃至二週間内ニ決答スヘシト陳ヘラレタル向モアリ、其方々ハ右期限内ニ府庁勧業課ヘ申出テラレタシ
○栄藍社惣代曰ク、二週間ノ猶予ハ至極結構ナリ
○委員渋沢栄一又曰ク、果シテ議員トナルハ誰ナルヤ、公撰ノ後ニ非サレハ分リ難シト雖トモ委員カ此二週間中ニ取調ヘタル者ヲ送ルニハ今日会シタル方々ニ送ルヘシ
斯クテ委員ト会員ノ相談モ略々相整ヒタルヲ以テ、府知事ハ更ニ会員ニ向ヒ告ケテ曰ク、今日ハ意外ノ好結果ヲ得テ拙者甚タ満足セリ、是レハ諸君ニ謝ス、此上ハ速カニ本会設立手続ノ完結セン事ヲ期望スト於是一同退散ス、于時午後第二時三十分ナリ
 - 第18巻 p.13 -ページ画像 


回議録 東京商工会 明治一六年(DK180001k-0006)
第18巻 p.13-14 ページ画像

回議録  東京商工会 明治一六年          (東京府文庫所蔵)
今般太政官第十三号御布告ニ基キ聯合商工業会設置可相成ニ付、本月二十二日御演舌之趣旨ニ拠リ去ル二十五日同盟銀行臨時集会之上協議仕候処、一同御誘導ノ旨ニ従ヒ該会創立之儀賛成仕候、依之左ノ両名議員トシテ同盟中ヨリ撰挙仕候ニ付、為念別帋同盟銀行名前書相添此段御届申上候也
          当集会所委員第一国立銀行頭取
    議員                 渋沢栄一
          当集会所委員第三十二国立銀行取締役
    議員                 山中隣之助
     已上
  明治十六年 月 日       東京銀行集会所
    東京府知事 芳川顕正殿
(別紙)
            同盟銀行名称
              第一   国立銀行
              第二   国立銀行
              第三
              第五
              第二十
              第二十七
              第三十三
              第六十
              第七十四
              第九十五
              第百
              第百十二
              第百十九
              第百三十二
              三井
              安田
              川崎
              丸家
              第四         支店
              第六         支店
              第十         支店
              第十三        支店
              第十四        支店
              第十九        支店
              第二十八       支店
              第三十二       支店
              第六十三       支店
              第八十九       支店
 - 第18巻 p.14 -ページ画像 
              第九十三       支店
              第百七        支店
              第百十三       支店
             当集会所委員
                第一国立銀行頭取
                      渋沢栄一
                第二国立銀行頭取
                      原善三郎
                第三国立銀行頭取
                      安田善四郎
                第三十三国立銀行頭取
                      川村伝衛
                第三十二国立銀行取締役
                      山中隣之助
      已上


東京経済雑誌 第八巻第一八二号・第四一一―四一三頁 明治一六年九月二九日 聯合商工会(DK180001k-0007)
第18巻 p.14-16 ページ画像

著作権保護期間中、著者没年不詳、および著作権調査中の著作物は、ウェブでの全文公開対象としておりません。
冊子版の『渋沢栄一伝記資料』をご参照ください。

東京経済雑誌 第八巻第一八二号 明治一六年九月二九日 商工業会の創立(DK180001k-0008)
第18巻 p.16-17 ページ画像

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集会録事 従明治十五年一月(DK180001k-0009)
第18巻 p.17-18 ページ画像

集会録事  従明治十五年一月     (東京銀行集会所所蔵)
    臨時集会録事
明治十六年九月二十五日午後第四時三十分ヨリ日本橋区万町柏木亭ニ於テ同盟銀行臨時会同ヲ開キ、去ル二十二日府知事閣下ヨリ諮問セラレタル商工業会設置ノ義ニ付、議員撰挙並醵集金等ノ事ヲ議決シ八時下退会セリ、詳録左ノ如シ
      会員
  委員第一国立銀行頭取           渋沢栄一
  委員第三国立銀行頭取           安田善四郎
  〃 第三十三国立銀行頭取         川村伝衛
  〃 第三十二国立銀行取締役        山中隣之助
  第五   ――支配人           市来広治
  第二十  ――頭取            富田恒一
  第廿七  ――支配人           安藤利助
  第六十  ――役員            玉生寛
  第九十五 ――役員            山下藤兵衛
  第百   ――副頭取           高田小二郎
  第百十二 ――頭取            田中菊二郎
  第百十九 ――頭取            村瀬十駕
  第百三十二――頭取            石関利兵衛
  三井   ――役員            今井友五郎
  川崎   ――役員            照山東作
  第二  差支有之旨ヲ以テ不参断アリ
  第七十四 ――役員            松尾好国
  安田   ――支配人           塩崎善郎
  丸家  事故出来ニ付不参断アリ
  第四   ――役員            大泉遵𧥮
  第六  不参
  第十   ――支配人           小野金六
  第十三  ――支配人           芦田順三郎
  第十四  ――支配人           太田宗七郎
  第十九  ――支配人           上平貞一郎
  第廿八  ――副頭取           青山宙平
  第六十三 ――支配人           横塚村次
  第八十九 ――支配人           深尾一二郎
  第九十三 ――支配人           高橋遊亀
 - 第18巻 p.18 -ページ画像 
  第三七  ――役員           和田徳蔵
  第百十三 ――役員           鈴木重恒
   已上何行
右列席ノ上委員渋沢氏ハ去ル十五日東京府庁ヨリ今般商工業会設立可相成ニ付、知事ヨリ諮問ノ義有之候条委員ノ内両名来ル二十二日旧明治会堂ヘ参集スヘキ旨通達有之ニヨリ、同僚中申合渋沢・山中両人参会可致段復申シ置タル処、山中氏旅行ニ付川村氏ヘ振替同氏ト共其招集ニ応タリ、而シテ当日府知事ヨリ演舌ノ旨意書ハ爰ニ一本ヲ存スト雖トモ普ク諸君ノ閲覧ニ供スル能ハザルヲ以テ今其要旨ヲ演舌セシトシテ《(ン)》之ヲ詳述シ、且此会設立ノ今日ニ必用ニシテ《(マヽ)》旨ヲ奉答シタル要旨ヲ告ケ左条件ニ付テ一同ノ意見ヲ問フ
 第一当銀行集会所ヨリ議員ヲ出スノ可否同其費用負担ノ事
 第二議員ヲ出ス事ニ決セハ同盟中ヨリ二名ヲ撰挙スル事
衆皆之ヲ肯了シ府知事ノ誘導ニ従ヒ議員二名ヲ出シ其費用負担ニ同意タル事ヲ表セリ、乃チ投票法ヲ以テ其議員ヲ公撰セシニ、渋沢氏廿六点・山中氏二十三点・川村氏六点・今井氏一点、多数ニ因テ渋沢・山中両氏当撰各承諾サレタリ
○中略
 十六年九月廿二日明治会堂諮問会ニ於テ商工業会創立委員ニ撰ハレタル者七名ニシテ其名面左ノ如シ
  銀行集会所       渋沢栄一
  三菱会社        荘田平五郎
  共同運輸会社      小室信夫
  倉庫会社        楳浦精一
  両替商         柴崎守三
  保険会社        益田克徳
  干魚商         渡辺治右衛門
    已上


東京商工会沿革始末 同会残務整理委員編 第二二―三〇頁 明治二五年五月刊(DK180001k-0010)
第18巻 p.18-20 ページ画像

東京商工会沿革始末  同会残務整理委員編  第二二―三〇頁 明治二五年五月刊
    ○東京商工会ノ起因
此時ニ当リテヤ商法会議所ノ会員中ニモ現状是ノ如クナルヲ観テ『商法会議所已ニ実効ノ発達ヲ失ヒヌ、如何ゾ復東京市中商工一般ノ公利公益ヲ農商工諮問会ニ望ム可ケンヤ、若カズ傍観シテ以テ自然ノ結果ヲ俟タンニハ』ト思惟セル人モアリシ程ナレバ世上ノ所謂紳商名士ノ如キモ恬トシテ会議ノ存亡興廃ニ注意セザルガ如クナリキ、然ルニ商法会議所ノ会頭ヲ初トシテ委員ノ多数ハ頗ル玆ニ苦慮シ、第一ニハ商法会議所ガ是迄ニ発達シタル事業ヲ徒労ニ属セシメザル事ヲ冀ヒ、第二ニハ商法会議所ノ組織ヲ聊カ改更シテ農商工諮問会規則第二章ニ適合セシメン事ヲ冀ヒ百方思考ヲ費シテ討議ヲ重ネタリト雖トモ到底彼ノ区及聯合区町村農商工業議会ノ制ハ、或ハ一部ノ地方ニハ適応スルノ場合アルベキモ我東京ニ於テ之ヲ実施シ得ベキニ非ザル事分明ナリシニ付キ其冀望モ是ニ於テ断絶シタリキ、然リト雖トモ商法会議所ノ会頭委員及有志ノ会員諸人ハ尚之ヲ断念スル事ヲ敢テセズ、更ニ討議
 - 第18巻 p.19 -ページ画像 
ヲ尽テシ《(シテ)》云ク『現今我東京商業会議ノ挫折ヲ救ヒ其実効ヲ将ニ滅セントスルニ挽回センニハ、農商工諮問会規則ハ従来商法会議所ノ設立ナキ地方ニノミ実施スベキ旨ノ再布告ヲ請ヒテ我東京商法会議所ヲシテ該諮問会規則ノ外ニ独立セシムル歟、否ザレハ則チ該諮問会規則中ニテ実際ニ不適応ナル条項ノ改正ヲ請ヒ以テ会議ヲ更改組織シ得ベキノ道ヲ求ムルニ在ルノミ』ト、而シテ後説尤モ多数ナリシヲ以テ農商工諮問会規則第二章改正私案ヲ具シテ会頭ヨリ之ヲ当時ノ東京府知事松田道之ニ内稟シタリ、府知事ハ実際ノ事情ニ通暁ナリシガ故ニ此私案ニ対シテ大ニ同感ノ意ヲ表シ熟考ノ上ニテ之ヲ農商務卿ニ具申シタリ農商務卿モ亦此私案ノ趣意ヲ熟考シ其大要ヲ嘉納シ乃チ別ニ改正法案ヲ作リテ之ヲ参事院ノ調査ニ廻附セラレタリ、参事院ノ会議ニ於テハ議官中異議紛出シテ大ニ修正ヲ加ヘ更ニ之ヲ元老院ニ廻附セラレタリ其案ノ元老院ノ議場ニ上レルヤ已ニ最前商法会議所提出ノ改正私案トハ頗ル別色ニ変シタリシニ係ラス元老院ノ議事ニ於テ此改正案ハ全ク廃棄ニ議決セラレタレバ、商法会議所会頭委員諸人ノ苦心モ東京府知事ノ配慮モ農商務卿ノ考案モ一朝ニシテ挙テ画餅トハナリニキ
然レトモ商法会議所会頭委員諸人ハ此廃棄ニ遇フモ更ニ屈撓スル所ナク、如何ニモシテ当初ノ素志ヲ貫徹セント百方計画スル事ヲ怠ラザリシガ、此際其計画ニ最モ必要ナル府知事松田道之ノ卒去セラレタルハ不幸中ノ不幸ニシテ、其為ニ商法会議所ノ運動モ自ラ一時中止ノ状ヲ現ハシタリ、其後芳川顕正新ニ府知事ニ任セラレタルニ当リ会頭委員諸人ハ新知事ニ向テ前陳ノ意見ヲ開申シ、組織改正ノ極メテ今日ノ緊務タル所以ヲ述ベタルニ府知事ハ大ニ其意見ニ同意ヲ表シ、当路ニ向テ之ヲ弁論シ尽力アリシガ、同年十月上旬府知事ハ農商務大輔品川弥二郎・参事院議長山県有朋・其他参事院議官諸氏ヲ其邸ニ請シ会頭委員諸人ニ会セシメ、農商工諮問会規則改正ノ趣意ニ付キ胸襟ヲ披テ協議ヲ遂ケラレタリ、是ヨリシテ該規則ノ改正ハ当路ノ問題トナリ、終ニ翌明治十六年五月十六日ヲ以テ太政官ハ明治十四年五月第廿九号布告即チ農商工諮問会規則ノ廃止ヲ布告セラレ、同時ニ太政官第十三号布達ヲ以テ更ニ各地方ノ便宜ニ従ヒ勧業諮問会並勧業委員ヲ設置スル事ヲ得ル旨ヲ達シ、照準条項九ケ条ヲ標示セラレタリ、是ニ於テ乎商法会議所会頭委員諸人ハ始メテ年来ノ素志ヲ達シ、該会議所ノ組織ヲ更改シテ以テ布達ノ主趣ニ適合スルノ設立ヲ見ルベキノ時機ヲ得タリキ
    ○東京商工会ノ組織
時機正ニ到レリ、東京府知事ハ明治十六年九月二十二日ヲ以テ東京市中ノ重立タル諸会社、又組合ノ総代百二十名ヲ京橋区木挽町明治会堂今ノ厚生館ニ召集シ、彼ノ第十三号布達第六条『区町村若クハ聯合区町村ニ於テ農業会商業会工業会若クハ農商工ヲ併セタル勧業会其他同業会ヲ設置スル時ハ勧業委員ヲシテ会員タラシム事ヲ得』同第七条『府知事県令ニ於テ勧業委員ノ設置及ヒ第六条ノ各会設立ヲ要用ト認ムル時ハ誘導シテ之ヲ設置セシムル事ヲ得、此場合ニハ農商務卿ニ稟議シテ認可ヲ受クヘシ』トアルニ由リ、府下十五区聯合商工業会ノ設立ヲ此諸人ニ誘導シ、且ツ曰ク『商人非商人ノ区別甚タ渺漠タル今日ニ於テ各商工総躰ニ通シテ選挙被選ノ分ヲ定ムルハ極メテ難シ、枉ケテ之ヲ
 - 第18巻 p.20 -ページ画像 
為スモ却テ適当ノ人物ヲ得難キノ恐ナシトセス、依テ先ヅ十五区内重立タル各商工業組合中ヨリ其大小ニ応シ適宜ノ総代人ヲ出サシメ、之ヲ以テ会員ニ充ツルノ制トナサバ其選挙法便且ツ宜ヲ得、随テ又適当ノ会員ヲ得易カラント信スルナリ、然ラバ此会ハ実ニ商工一般ノ輿論ヲ写スノ鏡ニシテ、例ヘハ政府ニ於テ海関税其他商工業ニ関スル諸税法ヲ設ケ又ハ全般商工業ニ関スル諸法令ヲ制定スルニ臨ミ其利害ヲ此会ニ下問セラルヽ場合アル時ハ勿論、府知事ガ府政上ニ就キ現ニ府民ノ営業ニ関スル諸布達ヲ発スルニ当リ其得失ヲ此会ニ諮問スル等ノ事アラバ、其会員タル人々ハ元各商工ガ選挙シタル総代ナレバ其利害ヲ深切ニ考究スルハ言ヲ待タズ、其得失ニ就テハ遠慮ナク意見ヲ復申スベシ、然ル時ハ政府ハ某件ハ民情ニ背馳スルヲ以テ之ヲ止ムベシ、某事ハ府民ノ希望ナルヲ以テ之ヲ興スベシト一々此鏡ニ写シテ商工ノ輿論ヲ知リ、官民ノ便利ヲ補翼スル実ニ鮮少ナラザルベシ、爾カノミナラズ苟モ従来ノ法規ニシテ商工業ニ不便アリトスル時ハ取捨如何ヲ其筋ニ建議シ、便益ヲ振起スルニ足ルノ新案アル時ハ之ガ施設ヲ希望シ又諸商品製造販売ノ景況及運輸金融等ノ景況ヲ調査シテ之ヲ公告スルハ一般商況ノ盛衰ヲ察シ経済ノ消長ヲ識ルノ要具ニシテ、各業者聯合ノ力ニ依テ行ハルヽモノナレバ全府商工業者ノ利ヲ起シ害ヲ除キテ公共ノ福利ヲ増スハ特ニ此会ノ設置ニ在ル也云々』一座ノ人々ハ皆一致シテ之ニ同意ヲ表シ、更ニ府知事ニ請フニ創立委員ノ指名ヲ以テシタルニ府知事ハ出席員中ニテ渋沢栄一・小室信夫・荘田平五郎・益田克徳・梅浦精一・渡辺治右衛門ノ六名ヲ推薦シタリ、依テ此六名ヲ創立委員ニ依嘱シタリキ
    ○本資料第十七巻所収「東京商法会議所」明治十四年七月二日(第六五七頁)明治十五年五月十六日(第八〇五頁)明治十六年十月十一日(第八三二頁)各条ヲ参照スベシ。


青淵先生公私履歴台帳(DK180001k-0011)
第18巻 p.20 ページ画像

青淵先生公私履歴台帳         (渋沢子爵家所蔵)
    民間略歴(明治二十五年迄)
明治十六年
○中略
 九月 東京商工会ノ創立ニ当リテ其委員トナル
  東京商法会議所ノ衰頽スルハ農商工諮問会規則ノ発布アリシニ起因ス、因テ其規則ノ改正ヲ請ヒ百方尽力シテ遂ニ十六年五月ニ至リ同規則ヲ廃止シ更ニ太政官第十三号ノ発布アルヲ得タリ、是ニ於テ九月二十日市内《(二脱)》ノ重立タル諸会社及組合等ノ総代ヲ会合シテ本会ノ設立ヲ議リ、其十月設立ノ許可ヲ得テ会頭ニ撰挙セラレ、爾後重任シテ会務ヲ処理ス、廿三年九月商業会議所条例ノ発布ニ依リ本会解散ノ事ヲ決シ、廿四年八月本会諸般ノ事務ヲ整理完了シテ之ヲ東京商業会議所ニ継続セリ