デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
2款 東京商工会
■綱文

第18巻 p.97-99(DK180012k) ページ画像

明治17年3月1日(1884年)

是日栄一当会会頭トシテ、質屋台帳印紙ノ件ニ就キ大蔵書記官浦春暉ニ回答ス。


■資料

東京商工会々外諸向往復文書 第一号(DK180012k-0001)
第18巻 p.97 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 第一号
                   (東京商工会議所所蔵)
(案)        栄一    《(萩原)》
拝啓過日御内問有之候質屋帳簿印紙ノ義ニ付、其後東京商工会々員ノ中質屋営業ノ者共一同ヘ問合候処別紙甲乙ノ両説有之、尤従来専ラ懇親上ヲ以テ営業致候者ハ乙説ヲ主張候者多ク、否ラザル者ニハ甲説ヲ主張候者多ク有之趣ニ御座候、依テ此段別紙相添不取敢御答申上候也
  明治十七年二月廿八日
                      渋沢栄一
    浦春暉殿
(別紙)
甲之説
 抑モ質屋ノ営業ハ普通貸借ト其趣ヲ異ニシ物品ヲ預ルヲ以テ主要トスルニ付、置主ガ物品ヲ質入スルニ当リテハ貸金ノ高及日限利子等ヲ契約シテ其物品ニ対シ通帳(若クバ小札)即チ預リ証ヲ交付スルモノトス、故ニ其質入ノ事実ヲ証明スベキモノハ此通帳(若クバ小札)ニ過グルモノナシ、而シテ明細帳ノ如キハ己レノ業務ヲ整理セン為メ備置ク所ノ元帳ナルニ付、若シ万一置主此通帳(若クバ小札)ヲ紛失シタル時ニ際シテ証拠トナルニ過ギズ、故ニ通帳若シクハ小札ニ印紙ヲ貼付スルニ於テハ元帳ニ印紙ヲ用フルハ詰リ二重ノ課税ニシテ必要ナラサルモノニ似タリ
乙之説
 質屋営業ノ性質普通貸借ト其趣ヲ異ニスルハ甚ダ見易キノ道理ナリト云トモ、従来ノ慣習ニ拠レバ置主タル者一丁字ヲ解セザル者多ク其物品ヲ質入スルニ当リテ通帳(若クバ小札)ヲ受取ルト云トモ、甚ダ之ヲ軽視シテ屡々之ヲ紛失スルノ場合アリ、此等ノ輩ハ都テ質屋ノ明細帳ヲ以テ無上ノ証拠トスルモノヽ如シ、情況如此ナルヲ以テ質屋ニ於テモ此明細帳ヲ以テ恰モ普通借用証文ノ綴込ト見做シ、通帳(若クバ小札)ヲ以テ附属ノ書類ト思考セリ、抑モ此慣習ニ応シテ取引スル時ハ質屋営業ノ手順甚ダ都合ヨキノミナラズ一般置主ノ為メニモ亦便利ヲ与フル事アラン、故ニ明細帳ニハ現行御規則ノ如ク必ズ印紙ノ貼付ヲ要スルナリ
 - 第18巻 p.98 -ページ画像 


東京商工会々外諸向往復文書 第一号(DK180012k-0002)
第18巻 p.98-99 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 第一号
                   (東京商工会議所所蔵)
(案)        栄一    《(萩原)》
拝啓過日御内問有之候質屋台帳印紙ノ義ニ付テハ東京商工会々員中質屋営業ノ者共ニ於テ甲乙両説申出候ニ付其趣ハ不取敢去月廿八日附ヲ以テ開陳仕置候処、尚又其後右等ノ者共一同熟議ノ上一説ニ協和仕候趣ニテ此度別紙ノ通リ申出候、依テ頃日開陳仕候分ハ取消シ候間更ニ右申出ノ説ヲ以府下質屋全体ノ輿論ト御看做シ被下度候、此段別紙相添重テ上陳仕候也
  明治十七年三月一日
                      渋沢栄一
    浦春暉殿
(別紙)
拝啓陳ハ過ル廿日木挽町本会ニ於而質商印税御内問ニ付二説区々ニ申出甚タ同業中不熟議之段恐縮仕候、其際被仰聞候何レ二説之者不日御協議被成下候趣然而ハ同業之義ニ付如斯
尊君ヘ御煩労相掛候てハ多罪不過之候間再応審議仕如別紙一致議決具申仕候、此段御承領被遊可被下候、最モ具申中御不審之義モ候ハヽ三名中被仰越次第参上弁明可仕候、先は此義奉願上候也
  二月廿八日
                      笠井庄兵衛
                      吉田幸作
                      峯嶋茂吉
    渋沢栄一様
         尊下
(別紙)
貴君 過般同業吉田幸作ヘ質屋明細帳ヘ印紙貼用ハ二重税ニ相当ル哉其実質屋ハ明細帳ヘ貼印ノ方却テ慥カナラシム様推思致スヨシ其可否如何ノ御内問ニ付、同業商工会々員一同再応審議仕候処、質屋ハ営業税ヲ納メ明細帳ヘ二類印紙ヲ貼用シ、通帳ヘ一類印紙ヲ貼用シ来レハ御内問ノ如ク明細帳ヘ二類印紙貼用ハ他営業者一般ノ比例モ無之ニ付二重税ナル事推敲セリ、依テ御削除ヲ冀望ス、而シテ通帳ハ典主ノ面前ニ於テ貸金高並ニ物品ノ数種等ヲ記載相渡シ置モノナレバ、明細帳ノ割符ノ如キモノニシテ一目明細帳ノ公証ヲ〓然《(瞭)》タラシメン為メ取引上一般仕来候得共、其実典主ニ上中下ノ別有リ、下等典主ニ至ツテハ尽ク貧困者ニシテ朝夕典物ノ出入度ナク却テ通帳ヲ以テ不便ノモノト為シ、或ハ上中等ノ典主ト雖モ著名ヲ厭フノ実アリ、為ニ信用ヲ以テ取引致シ居ル者モ尠シトセス、故ニ通帳ヘ印紙貼用致ストキハ至然脱税ニ相成、同業中犯則ノ懼レモ有レバ通帳ハ貼用ノ一類印紙ヲ明細帳ヘ換用致ストキハ脱税ノ懼レモナク同業中犯則ノ憂モナシ、加之通帳印紙貼用 御検査ノ際繁雑ヲ省キ簡ニシテ脱税ナク易ニシテ質屋ノ実際ニ適シ度脇一決連名《(協)》ヲ以テ具申仕候
貴君幸ニ同業ノ実際ヲ御憐察被成下宜数御復申奉願上候也《(敷)》
 - 第18巻 p.99 -ページ画像 
  明治十七年二月
             壱弐参大区質屋 笠井庄兵衛《(質屋)》
               四大区同  吉田幸作 《(吉田)》
               六大区同  峯嶋茂吉 《(峯島)》
             壱弐参大区質屋 長塚甚兵衛
                  同  伊藤利助
                  同  手塚長八
                  同  植村市十郎
                  同  倉又右衛門
               四大区質屋 堀江儀兵衛
                  同  伊藤定七
                  同  福原円
                  同  堀江半兵衛
                  同  浅野彦兵衛
               六大区質屋 川名新六
                  同  森源右衛門
                  同  福嶋弥兵衛
                  同  後藤吉五郎
                  同  中川又兵衛
  商工会々頭
   渋沢栄一殿


東京商工会々外諸向往復文書 第一号(DK180012k-0003)
第18巻 p.99 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 第一号
                   (東京商工会議所所蔵)
(案)
御書翰拝読仕候、然ハ府下質屋業所用台帳印紙貼用ノ義ニ付過日御申聞ノ趣ニテハ両説ニ相成居候処尚御熟議ノ上一説ニ御協和相成候付其旨別紙ヲ以テ御申越被下委細拝承仕候、右ハ大蔵省掛リ官ヨリ懇親上ノ内話有之候故先日来度々御打合申上候義ニテ、其後前書両説ノ処ハ小生同省ヘ罷出丁寧開陳仕候処右ノ次第書面ニテ申出呉候様トノ依頼有之両三日前其書面差出候義ニ候、然処尚又貴方一説ニ御協同相成候ニ付テハ尚又御差越ノ別紙ニ其次第ヲ附録シ更ニ申立候様可仕ト存候詰リ即今印紙税等ニハ種々同省ニテ調査ノ都合有之其参考ニ問合セ候事ト存候間、此件ニ限リ殊更改正等ノ為メニハ無之ト存候、右等モ御含ニ申上候、尚近日会場ニテ御面話可申上候得共御答旁此段得御意候
                             匆々
  二月廿九日
                      渋沢栄一
    峯嶋茂吉様
    吉田幸作様
    笠井庄兵衛様