デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.2.19

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
2款 東京商工会
■綱文

第18巻 p.102-138(DK180014k) ページ画像

明治17年5月2日(1884年)

是ヨリ先当会、農商務卿西郷従道ノ諮問ニ係ル工場傭主ト被傭者間及師弟間取締法ニ就キ調査中ナリシガ、是日栄一当会会頭トシテ右諮問案ノ答申書ヲ同卿ニ提出ス。


■資料

東京商工会議事要件録 第一号・第七―四〇頁 明治一七年二月一〇日刊(DK180014k-0001)
第18巻 p.102-108 ページ画像

東京商工会議事要件録  第一号・第七―四〇頁 明治一七年二月一〇日刊
  第一臨時会  明治十七年一月十六日午後四時四十分開会
    会員出席スル者 ○八十七名
○上略
次ニ会長 ○渋沢栄一ハ是ヨリ農商務卿ヨリ御諮問ノ件ニ就キ討議スベキ旨ヲ告ゲ、書記ヲシテ議案ヲ朗読セシム、即チ左ノ如シ
                      東京商工会
別紙問目書ノ件々其会ヘ及諮問候条遂審議報荅可致、此旨相達候事
  明治十六年十二月廿七日
                 農商務卿 西郷従道
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    ○第一問目 ○略ス
    ○第二問目
一工業上傭主ト被傭者トノ間及師弟ノ間ニハ種々ノ弊害若クハ苦情アルモノナレハ泰西諸国ニ於テハ特ニ之カ法律ヲ設ケ以テ双方ノ権利義務ヲ明ニセリ、本邦未ダ此等取締ノ法律アル事ナシ、而シテ傭主被傭者間及師弟ノ間ニハ往々弊害若クハ苦情ノ発スルアルヲ聞ク、今府下ノ工業者右取締法ヲ必要トシ之カ制定ヲ望ムヤ如何
  但取締法ノ要点ヲ掲クレハ左ノ如シ
 第一 傭主被傭者間取締法ノ要領
   一 傭役締約ノ際双方ノ心得方
   一 双方ノ権利義務
   一 被傭者随意ノ休業又ハ徒党等ノ禁制
   一 期限中解約ノ場合
   一 被傭者ノ証明状
   一 他人雇中ノ職人ヲ傭役スル者ノ義務
   一 童工女工使役ノ制限
   一 救済貯金ノ事
 第二 師弟間取締法ノ要領
   一 弟子ヲ引受ル者ノ制限
   一 契約書ノ事
   一 契約事項ノ制限
   一 双方ノ権利義務
   一 年季中双方解約ノ場合
   一 卒業証書ノ事
   一 脱走弟子ノ事
○中略
会長ハ是ヨリ第二問目即チ傭主被傭者間及師弟間ノ取締方ヲ議セン事ヲ求メ、且ツ曰ク、農商務卿ヨリ本案ヲ下問セラレタル主意ハ蓋シ傭主被傭者間及師弟間ノ取締法ヲ設ク可キヤ否ニ在ルベケレバ本会ニ於テハ先ツ其取締法ヲ設クルヲ望ムト否トニ就キ玆ニ其意見ヲ定メザルベカラズ、夫ノ傭役締約ノ際双方ノ心得方双方ノ権利義務等ノ細目ハ前記ノ大項定リタル上ニテ議定スベキモノナリ只殊ニ此細目ヲ掲ゲタルハ各員ノ注意ヲ喚起センガ為メノ意ナルベシ、各員之テ《(ヲ)》了セヨ、然而シテ尚本案ノ主意ニ糢稜ノ廉アレバ幸ニ農商務省官吏ノ臨席スルアリ、就テ質疑セラルベシ
百四番大倉喜八郎曰ク、蓋シ本案ノ主意ハ我邦従来徒弟ノ習慣ナキニ非ズト雖トモ之ガ成文法ナル者アル事ナシ、故ニ今日此法ヲ制定スルノ利害如何ト云フニ在ルベシ、然而シテ此案ハ重大ノ問題ニシテ容易ニ議了スベキモノニ非ズ、宜ク泰西ノ現行法本邦ノ習慣等ヲ精査参考シテ意見ノ在ル所ヲ陳セサル可ラズ、思フニ農商務省ニ於テハ既ニ本案ヲ当会ニ諮詢セラレシ程ナレバ、必ズヤ本案ニ関スル契約上ノ権利義務其他ノ要項ニ就キ参考スベキ諸書ヲ精査セラレシモノアラン、果シテ其草案アリヤ
番外二番首藤諒曰ク、本案ニ掲グル条目ノ如キハ傭主被傭者間取締法
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ヲ望ムヤ否ノ大項ヲ問フニ当リ、参考ノ為メ示シタル要領ニ過ギス、而シテ本省ニ於テ別段精査シタル草案アラズ諸君此旨ヲ了セラレヨ
四十二番梅浦精一曰ク、本案中泰西諸国ニ於テハ特ニ之ガ法律ヲ設ケ云々トアリ、聞ク所ニ拠レバ往時西洋諸国ニ於テ徒弟契約法ノ制度頗ル苛厳ヲ極メ、殊ニ仏国里昂ノ如キハ其法最モ苛殺ナリシモ今ハ其法制漸ク寛弛スルニ至レリト、蓋シ農商務省ニ於テハ本件ニ関シ各国ノ法例ヲ調査セラレタルモノアラン、冀クバ本案ヲ討議スルノ前ニ於テ各国法制ノ大要ヲ説示セラレン事ヲ
番外二番首藤諒曰ク、本省ニ於テハ特ニ主任ヲ置キ目下英・米・独・仏・墺ノ徒弟契約ニ関スル法例調査中ナリ、然レトモ今之ヲ詳明スルハ極メテ難シ、若シ其詳細ヲ知ラント欲セバ当省ニ於テ既ニ調査セル諸書ヲ貸与スベケレバ之ニ就キ参観アルベシ
八十一番荘田平五郎曰ク、農商務省ニ於テハ本邦従来ノ習慣如何ヲ調査セラレシヤ、若シ已ニ其事アラバ請フ之ヲ説示セラレン事ヲ
番外二番首藤諒曰ク、本邦ノ習慣ハ目下専ラ調査中ナリ、然而シテ本案下問ノ主意ハ会長既ニ述ベラレシ如ク只取締法ヲ設クベキヤ否ニ在ルナレバ、果シテ設クベシト定マリシ上ニテ委ク調ブルモ未ダ晩シト為サズト思考ス
十六番益田克徳曰ク、蓋シ本案ハ従来其取締法ナキガ為メ弊害アリ、故ニ其法制ヲ設ケテ之ヲ防ガントスルノ利害如何ト云フノ意ナラン、果シテ然ラバ従来其弊害トスル所ハ如何ナル点ニ在リヤ
番外二番首藤諒曰ク、弊害固ヨリ多シ、職工、業ヲ卒ヘズシテ猥リニ主家ヲ去ルアリ、伎倆未タ熟セザルニ東西利ヲ逐テ走ルアリ、而シテ主人モ亦徒弟ヲ酷待シ、甚シキハ罪ナキニ徒弟ヲ放逐スルアリ、凡ソ此等ハ弊ノ大ナルモノニシテ其他一々枚挙ニ遑アラズ
番外一番豊嶋住作曰ク、唯今番外二番ガ歴挙シタル諸弊ハ製糸場ニ於テ行ハルヽモノ多ク、殊ニ山梨県ノ製糸場ノ如キハ最モ盛ンナリト聞ケリ、然レトモ此等ノ諸弊ハ僅ニ書面ニテ了知セシ者ノミ、其実際ノ弊ニ至リテハ各員具サニ之ヲ知ラルヽナラン、抑モ本案ヲ下問シタル所以ハ此等実際ノ弊ヲ諸君ニ聴カンガ為メナリキ
会長ハ稍々質疑ノ尽キタルヲ視テ是ヨリ意見ヲ述ブヘシト告グ
百四番大倉喜八郎曰ク、徒弟契約法ハ到底之ヲ設ケザル可ラズ、此事ヤ明治十三年旧商法会議所ニ於テ既ニ之ヲ討議シテ建議シタル事アリ、思フニ当時此事ヲ議定シタルニ契約法ナキガ為メ実際弊害多カリシニ因ルモノニシテ、爾来今ニ至ルモ其弊曾テ減シタル事ナシ、故ニ今日此法ヲ設クルハ誠ニ本員ノ切望スル所ナリ、然リト雖トモ徒弟年限権利義務及賃銀等ノ如キ極メテ厳法ヲ設ケテ之ヲ規正スルトキハ、其厳法ヨリ生ズル弊害ハ却テ法ナキヨリ生ズル弊害ニ過グル者アラントス、英国ノ如キハ往時徒弟年限ハ概シテ七年以上ナリシモ、千八百十二年「ジヨルヂ」三世以後トナリテハ五年トナリ、三年トナリ、次第ニ其区域ヲ拡充シ、加之ナラズ徒弟契約法ノ如キモ大抵之ヲ師弟間ノ自治ニ放任スルニ至リシト聞ク、故ニ今回此契約法ヲ設クルニ就テハ宜ク寛厳其中ヲ採テ
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制定アラン事ヲ望ム、而シテ此等ノ事ハ固ト重大ノ事件ナレバ先ヅ之ガ調査委員ヲ選挙シ之ヲシテ農商務省ニ於テ調査シタル諸書ニ就キテ利害ノ在ル所ヲ考ヘ、以テ適当ノ原案ヲ草セシメ各員其原案ニ就テ討究スルアラバ庶幾クバ良法ヲ制シ得ンカ
七番甲田卯三郎・五十七番荒尾邦寛・百六番堀江儀兵衛等、賛成ノ説アリ
四十二番梅浦精一曰ク、調査委員ヲ撰定シテ之ニ立案ヲ任スルノ説ハ固ヨリ不可ナキニ非ズト雖トモ、調査委員ヲ撰定スルニ当リテ先ヅ其立案ノ主意如何ヲ定メザル可ラズ、依テ満場議員ニ其意見ヲ陳セシムルヲ可トス
百四番大倉喜八郎曰ク、本員ト雖トモ直ニ委員ヲ撰スルノ意ニ非ズ、満場ノ意見ヲ聴ク事最モ肝要ナリトス
七番甲田卯三郎曰ク、泰西ノ法、則ルヘキアリ、本邦ノ習慣鑑ルヘキアリ、彼我ヲ斜斟スルハ実ニ肝要ナリ、然レトモ此事最モ煩雑ノ業ナレバ今夕ハ只本案ノ大要ヲ議定シ、其細目ハ之ヲ委員ニ全任セン
右ノ外十三年旧商法会議所ヨリ内蔵両卿ヘ呈シタル建議書ヲ引キテ徒弟法ノ制定ヲ望ム者アリシニ付、会長ハ各員参考ノ為該建議案ヲ朗読セシメ(其書ハ参考部ニ在リ)且曰ク、唯今朗読シタル建議書ハ十三年十一月ニ起草シタルモノニシテ当時既ニ議論アリシガ如ク、我国徒弟契約ノ習慣ハ明治四五年頃娼妓解放令下リシヨリ次第ニ其効力ヲ失ヒタルハ各員既ニ弁明セラレタルガ如キアリ、而シテ当時旧商法会議所ヨリ其筋ヘ建議シタルノ主意ハ只タ簡単ナル法律ヲ設ケテ師弟間ノ契約ヲ保護セラレタシト云フニアリ、故ニ今日此法ノ制定ヲ望ムハ各員ノ既ニ同意セラルヽ処ナルベシト雖トモ予メ各員ニ於テ該法ノ寛厳如何ノ主義ヲ論定スルニアラズンバ調査委員タル者迷津スル事アルベシ、各員之ヲ諒シテ意見ノ在ル所ヲ悉スヘシ
四十二番梅浦精一曰ク、本員ハ傭主被傭者間ノ契約ヲ以テ双方ノ自治ニ任シ、法律ハ只其契約ヲ保護スルニ止マラン事ヲ望ム者ナリ、蓋シ此契約ハ固ト一個人ノ私約ニ属スルモノナレバ法律之ニ干渉スルハ却テ害ナキヲ免レズ、故ニ本員ハ同業組合ノ如キモノヲ設ケテ同業中協議ノ上其契約法ヲ確定シ、而シテ各同業組合ハ地形ノ便ニ因リテ一区若クバ両三区ヲ合シテ一組合ト為シ、毎月若クバ隔月ニ組合ノ行事又ハ組頭ナル者会合スルノ制ヲ設ケ、凡ソ組合中ニ生ジタル事件ハ直ニ此会合ニ於テ協議報告シ、且ツ傭主被傭者及師弟間ニ於テ生ジタル紛議ノ如キモ此会合ニ於テ其是非ヲ裁定シテ之ヲ組合中ニ報告スルノ制ヲ設ケン事ヲ望ムナリ、若シ果シテ此制ノ興ルアラバ契約違反ヨリ生ズル諸弊害ハ直ニ霧消ス可キナリ、然レトモ前述ノ同業組合法ハ第三問目ト連絡スル者ナレバ其組合法ノ興廃如何ハ未タ確カニ知リ難ケレトモ、本会果シテ該法ノ興立ヲ是認スルニ決セバ組合ノ規則ヲ以テ契約ヲ実行シ以テ十分ノ好結果ヲ得ル事難キニ非ザルベシト信ズ、之ヲ要スルニ契約ハ双方ノ自治ニ任シ、若シ同業者中此契約ヲ犯ス者アルトキハ同業組合ニ於テ之ヲ処分シ、政府ハ只法律ヲ以テ其契約ヲ保
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護スルニ止マラシメ、而シテ其契約法ニ至テハ勉メテ従来ノ習慣ヲ精査シ、又之ヲ各国ノ例ニ問ヒ成ルベク実行シ易カラン様之ヲ定メン事ヲ希望ス
十二番熊谷吉兵衛曰ク、各国法制ノ如キ農商務省ニ於テ既ニ調査セシモノアリト聞ケバ新タニ委員ヲ撰ンデ之ヲ調査セシムルハ却テ重複ニ属スル事アラン、故ニ農商務省ノ調査ヲ借用シテ其詳細ヲ参観シ、各員ヨリ直ニ意見ヲ陳ブルノ簡便ナルニ若カズ
会長曰ク、番外ノ説明ニ拠レバ農商務省ニ於テ調査シタル書類ハ未タ完キニ至ラザルモ、尚其部類浩澣ナレバ之ヲ印行シテ各員ニ頒布スルハ最モ困難ノ業タルノミナラズ、各員モ日々繁忙ノ身ニシテ一々其書ニ就テ精査スル能ハザル可ケレバ、調査委員ヲ設クルノ利便ナルニ若カザルベシ、故ニ其取締法ノ細目ニ至テハ調査委員ヲ定ムル後之ヲ調査シテ可ナリ、但ダ大体ニ就キ本会ノ意見ヲ定ムルヲ必要ナリトス
十二番熊谷吉兵衛曰ク、徒弟契約法ハ徒弟ヲ保護シテ師ヲ保護セズト云フガ如キニ非ズ、此法行ハルレバ師弟共ニ利シ、此法ナケレバ共ニ損スルモノナリ、斯ク双方ノ利害既ニ一致スル事明カナル以上ハ宜ク厳密ノ法ヲ設クベシ、何トナレバ厳ナレバ共ニ利シ寛ナレバ共ニ損スル事アル可ケレハナリ
百六番堀江儀兵衛曰ク、此法決シテ厳ナル可ラス、又決シテ寛ニ過ク可ラズ、唯其中ヲ採テ適宜ノ法ヲ設ケンノミ、而シテ此良法ヲ設クルハ委員五名ヲ撰ンデ之ニ委托スルニ若カザルガ如シ
十番村田治兵衛曰ク、十二番ハ契約法ノ厳酷ナラン事ヲ望マレタレトモ、本員ヲ以テ之ヲ観ルニ此法決シテ厳ナル可ラズ、厳ナレバ則チ職業ヲ妨害シテ法ヲ設クルノ精神ニ反スルノ結果アルベシ
十二番熊谷吉兵衛曰ク、本員ハ契約法ノ厳酷ナルヲ望ミシニハ非ズ、此法ハ師弟双方ノ為メニ設クルモノナレバ此法ノ調査ヲ精密ニセラレン事ヲ希望シタルニ過ギズ、本員ノ所謂厳密トハ精密ノ意ナル事ヲ了セヨ
二十五番柴崎守三曰ク、幹事ヲ調査委員ニ撰任スベシ
百五番吉田幸作曰ク、本員ハ商業ヲ以テ生計ヲ立ツル者ニシテ未ダ工業ノ実況ヲ熟知セズ、然レトモ嘗テ二三工業者ヨリ聞ク処ニ拠レバ従来我邦傭主被傭者間ノ契約ハ只口約束ニ成ルモノ最モ多シト云ヘバ、此法ノ寛厳ヲ議定スルニ当リテハ最モ周密ノ注意ヲ要ス今大工左官ノ如キ一丁字ヲ解セザル者ノ間ニ厳法ヲ実施スル時ハ必ズ其煩ニ堪ヘズ苦情百出セン事ヲ恐ル、故ニ此契約法ノ如キハ成ル可ク之ヲ双方ノ私約ニ放任シ、政府ハ只其契約ヲ保護スルニ止マレバ可ナリト思考ス
八十一番荘田平五郎曰ク、凡ソ法律ハ弊ヲ防グヲ以テ精神ト為ス、利ヲ興スガ如キハ法律ノ知ル所ニ非ザルナリ、往昔尭舜ノ民無為而化ト云ヘバ法ヲ設クルノ弊却テ法ナキノ弊ニ過グル事アルヲ知ルベシ、故ニ今徒弟取締法ヲ設クルニ於テモ、成ル可ク実際ノ弊害ヲ詳知スル者ヲ委員ニ撰ビ、只弊害ヲ除クヲ以テ制法ノ規準トスヘシ
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十番村田治兵衛、八十一番ヲ賛成ス
十六番益田克徳曰ク、法ハ必要ナキニ設クルヲ好マズ、故ニ徒弟法ノ如キモ成ルヘク簡単ナラン事ヲ欲ス、夫レ之ガ法律ヲ定メント欲セバ徒弟中途ニシテ主家ヲ逃亡スルノ弊ヲ防ギ若クバ傭主其逃亡ノ徒弟ヲ使用スルノ弊ヲ防グ等二三ノ法ヲ設クレバ可ナリ、夫レ斯ノ如クンバ一法起テ万弊熄マン、何ゾ必ズシモ苛法ヲ要センヤ
四番林賢徳曰ク、既ニ委員ヲ撰定スルニ決スル以上ハ其法ノ寛厳総テ委員ノ見ル所ニ全任セン、否ラサレバ委員ノ思想ヲ抑制スルノ恐アラン歟
六十番益田孝曰ク、八十一番ノ説実ニ可ナリ、本員モ今此ニ一言シテ委員タルベキ人ノ参考ニ供セン、夫レ本案ヲ調査スルニハ猥リニ海外ノ法制ニノミ是レ拠ルベカラズ、専ラ我国各地ノ慣習ヲ調査スルヲ以テ緊要トス
五十九番川原英次郎曰ク、悉ク弊害ヲ調査シテ法律ヲ定メザレバ決シテ其効ヲ望ム可ラズ、今此弊害ノ一二ヲ挙ゲン、本員ノ如キ少シク工業ニ関シ嘗テ摸造品ヲ製造シタル事アリ、初メ事業ニ着手スルニ当リ職工ニ約スルニ製法ノ秘密ヲ他ニ洩ラサヾラン事ヲ以テス、然ルニ其後漸ク製品ヲ発売スルニ至レバ世間已ニ同品ヲ販グ者アリ、是レ蓋シ職工ガ契約ニ背キテ秘密ヲ他ニ洩シタルニ因ルモノナリ、然レトモ之ヲ法庭ニ訴フルトキハ所謂手間損タルヲ免レザルヲ以テ不得止之ヲ放棄スルニ至ル、又商家ニ於テモ年季小僧ナル者漸ク成長シテ手代トナルニ及ンデ、自ラ其ノ才力ヲ負フテ遊蕩ニ耽リ、或ハ月給ノ増額ヲ強請シ遂ニ主家ヲ去テ他家ニ転ズル等ノ弊アリ、然リト雖トモ此契約法厳密ニ過グル時ハ随テ生ズル弊害多カルベケレバ可成寛法ヲ設ケテ以上ノ諸弊ヲ匡正セン事ヲ望ム
十二番熊谷吉兵衛曰ク、調査委員ハ本会幹事ニ任シ而シテ各会員所見アラバ之ヲ詳記シテ委員ニ示スベシ、然ル時ハ庶幾クバ完全ノ結果ヲ見ンカ
十六番益田克徳曰ク、本員ハ幹事ノ一人ナレトモ敢テ此任ニ当ルノ力ナシ、会長別ニ五名ノ委員ヲ指名スルヲ以テ至当トス
四十二番梅浦精一曰ク、本員モ十六番ト同説ナリ、此調査ノ如キハ最モ実験ニ富メル者ヲ挙ケテ其任ニ当ラシメン事ヲ望ム
百四番大倉喜八郎曰ク、正副会頭及幹事ノ五名ヲ以テ調査委員ニ任ゼン
七番甲田卯三郎曰ク、此処ニテ委員ヲ撰定センヨリハ第三問目ノ議事ヲ了リテ之ヲ撰ブベシ、然ラズシテ第三問目ニ至テ復タ委員ヲ撰ブ事アレバ二重ノ委員ヲ生ジテ混雑セン事ヲ恐ル
会長ハ議ノ稍々尽キタルヲ見テ調査委員ハ五名ニスベキカ、将タ七名トスベキヤヲ問ヒシニ七名ノ説多数ナリシカバ、即チ之ヲ指名セリ、其指名者ハ左ノ如シ
               百四番   大倉喜八郎
               十六番   益田克徳
               八十番   阿部泰蔵
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               九十一番  谷敬三
               百五番   吉田幸作
               十二番   熊谷吉兵衛
               十番    村田徳兵衛
会長曰ク、指名者ハ皆其任ヲ諾セラレタリ、然ル上ハ申ス迄モナケレトモ各員ノ望ム所ハ可成寛大ノ法ニ在ルナレバ宜ク苛殺ニ失セザラン事ヲ希望ス、是ニ於テ会長ハ第二問目ノ議事終リタレバ暫時休憩ヲ命ズ、時ニ八時ナリキ、此時番外両員ハ事故アル旨ヲ以テ会長ニ請フテ退散ス
○下略


東京商工会々外諸向往復文書 別冊(DK180014k-0002)
第18巻 p.108-109 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 別冊 (東京商工会議所所蔵)
 会内ヘ通知案  栄一 《(孝)》 《(萩原)》
兼テ農商務卿ヨリ御諮問有之候問目中第二問目即チ工業上傭者被傭者間取締法ニ関スル件ハ去十六日臨時会ニ於テ議決ノ通リ其後委員集会相開キ答申ノ手続等致審議候処、衆議ノ上先ヅ重立タル各工業ニ就キ傭者被傭者間実地ノ弊害ヲ取調ベ、然上ニテ更ニ考案相立候事ニ相決シ、依テ来二月四日重テ委員集会相催シ、右弊害取調候筈ニ付貴殿御関係ノ何業ニ於テモ前陳ノ弊害有之候ハヾ詳細御取調被下、当日午後四時委員集会ヘ御出席ノ上十分御陳述相成候様致度此段及御通知候也
                  東京商工会々頭
  明治十七年一月廿九日          渋沢栄一
      渋沢喜作殿 (製糸)
   有恒社
      伴資健殿  (製紙)
   時計商
      野村玉志殿 (時計製造)
   地本錦画商
      森本順三郎
           殿(地本錦画製造)
      松木平吉
   筆墨硯問屋
      牧野彦八
           殿(筆墨硯製造)
      吹田与助
   団扇問屋
      村川惣右衛門
            殿(団扇製造)
      小山半五郎
   石材問屋
      青木庄太郎殿(石材職)
   左官職
      太田次郎殿 川島福之助殿
      荒井万平殿 杉山清吉殿
尚々本文調査ノ義ニ付当日可成御繰合御出席相成度存候得共、自然御差支モ有之候ハヾ本文ノ弊害書面ニ御書取、当日迄本会書記ヘ御送致被下度此段申添候也
   ○川崎造船所
 - 第18巻 p.109 -ページ画像 
      川井田平蔵殿(造船業)
      清水九兵衛殿(畳職)


東京商工会々外諸向往復文書 第一号(DK180014k-0003)
第18巻 p.109 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 第一号
                  (東京商工会議所所蔵)
会外ヘ依頼状案  栄一 《(孝)》 《(萩原)》
今般西郷農商務卿ヨリ府下ノ工業者ニ於テ傭主被傭者間取締法ノ制定ヲ望ムヤ否ニ就キ本会ヘ御諮問有之候ニ付、本会ニ於テ不日右取締法ノ制定ヲ要望スル旨答申仕度、就テハ此際制法上御参考ノ為メ従来各工業上傭主被傭者間ニ行ハルヽ実地之弊害調査ヲ遂ゲ、併テ同卿ヘ捧呈仕度候間何卒貴殿御関係ノ何製造上ニ於テ前陳ノ弊害有之候ハヾ詳細御示シ被下度、此段及御依頼候也
                  東京商工会々頭
  明治十七年一月廿九日         渋沢栄一
   起立工商会社
      松尾儀助殿    (蒔絵・銅器・陶器)
   新燧社
      清水誠殿     (摺附木)
   芳町口入所
      千束屋《チツカ》 (各種雇入)


東京商工会議事要件録 第二号・第二五―二七頁 明治一七年三月一三日刊(DK180014k-0004)
第18巻 p.109 ページ画像

東京商工会議事要件録  第二号・第二五―二七頁 明治一七年三月一三日刊
第二臨時会
       (明治十七年二月十七日午後一時三十分開会)
第一定式会
    会員出席スル者 ○八十名
○上略
会長 ○渋沢栄一曰ク ○中略 続テ傭主被傭者間及師弟間ノ取締法ニ関スル議事ヲ開ク可キ筈ナレドモ、元来本件御下問ノ主意ハ傭主被傭者及師弟間ニ於テ現下弊害ノアル所ヲ詳カニスルニ在リテ、而シテ其弊害ヲ取調ブル事頗ル至難ナルガ為メニ、委員ニ於テモ数回ノ会ヲ開カレタレトモ未ダ議決ニ至ラザル由ナレバ此件ハ後回ノ会議ニ譲ル可シ、但其委員取調ノ顛末ハ委員益田孝氏ヨリ報告アラン事ヲ望ム
五十九番(益田孝)ハ会長ノ請求ヲ諾シ其顛末ヲ報道シテ曰ク、本件取調ノ顛末ハ唯今会長ノ説明ニテ尽キタレトモ尚一言ヲ陳ズ可シ抑モ本件ノ主意ハ傭主被傭者間師弟間ノ弊害ヲ下問セラルヽニ在ルナレバ、委員ハ其後二回ノ議ヲ開キテ切リニ弊害ヲ取調ベ、殊ニ会外ノ者ニシテ能ク其弊害ヲ暗知スル人々数名ヲ招シテ其談話ヲ聴キシ事モアリシト雖モ、商ヤ工ヤ其業体同ジカラザルモノ多ク、随テ其習慣及弊害モ亦各々趣ヲ異ニスルガ故ニ既ニ幾多ノ日子ヲ費スモ尚未ダ完キヲ告ゲズ、故ニ委員ハ来ル二十日更ニ会合シテ是迄委員ノ取調ベタル弊害ヲ一括シ、彼此ヲ参酌シテ復申書ヲ起草スルニ議定シタレバ、次ノ臨時会迄ニハ各員ノ依托ヲ完了スルニ至ル可シ
 - 第18巻 p.110 -ページ画像 


東京商工会議事要件録 第四号・第五―三六頁 明治一七年五月二四日刊(DK180014k-0005)
第18巻 p.110-117 ページ画像

東京商工会議事要件録  第四号・第五―三六頁 明治一七年五月二四日刊
  第四臨時会  (明治十七年四月廿六日午後五時四十分開会)
    会員出席スル者 ○六十名
○上略
次ニ会長 ○渋沢栄一ハ是ヨリ第一号議案、即チ第二問目復申書案ニ就キ議事ヲ開クベキ旨ヲ告ゲ、書記ヲシテ議案ヲ朗読セシム、即チ左ノ如シ
○第壱号議案
    第二問目復申書案
昨年十二月廿七日附ヲ以テ御諮問有之候第二問目工業上傭主被傭者間及師弟間取締法ノ制定ヲ要望スルヤ否ヤノ義ニ就テハ、其後数回ノ会議ヲ開キ、篤ト審案討議ノ末先ツ府下重立候工業即チ製紙業・時計製造・石工・地本錦絵製造・筆墨硯製造・団扇製造・造船業・畳職・蒔絵職・銅器製造・陶器製造・摺附木製造・染工・西洋仕立職・活板印刷職・鼈甲職・大工職・左官職・指物職・塗師職・石板職・銅板職・経師職・硝子製造等ノ各種ニ就キ、従来傭主被傭者間及師弟間ニ行ハレ候弊害ヲ調査仕候処、固ヨリ其類不少候得共其重要ナル者ヲ挙グレバ即チ別紙甲号ニ記載仕候通リニ有之、而シテ其中形跡ノ最モ著シク且ツ各種工業上ノ通弊トモ称スベキモノハ傭主被傭者間弊害第一第二ノ両条及師弟間弊害第一条ニシテ、其詳細ハ以上三条ノ末ニ説明致候通ニ御座候、尤往時幕府ノ治下ニ在リテハ工業ノ種類ニ依リ同業者相連合シテ所謂講中若クハ仲間組合ナルモノヲ組成シ、職工不正ノ所為アル時ハ講中若クハ仲間組合ヘ報告シテ互ニ之ヲ傭役セザル等、其他種々ノ慣習アリテ幾分カ之等ノ弊害ヲ防キ候事モ有之候得共、近来百事改進ノ風潮ニ制セラレ右等慣習漸ク消滅シ、他ニ全ク撿束ノ途無之ヨリ現今ニ至リテハ此等ノ弊害益々増長ノ勢ヲ呈シ、今ニシテ之ヲ救済セサレバ将来我国ノ工業上大ニ衰頽ヲ来シ候恐モ可有之奉存候、以上陳述仕候通リノ次第ニ付政府ニ於テ前陳ノ諸弊ヲ防グノ法律御制定相成候義ハ今日府下工業者ガ素ヨリ切望スル所ニ御坐候、今本会熟々此等ノ弊害ヲ防グノ方案ヲ考フルニ特ニ精細ノ条例ヲ御制定相成候迄モ無之只別紙乙号ニ記載仕候趣意ヲ以テ簡単ナル法令ヲ御制定相成候ハヽ此目的ヲ達スルニ充分ノ効力可有之確信仕候、蓋シ欧米諸国ニ於テハ傭主被傭者間及師弟間取締ノ為メ現ニ厳密ナル法律ヲ設ケ候向モ有之趣ニ承知仕候得共、元来我国工業ノ進度ハ欧米諸国ト同シカラズ一工場ニシテ数十百人ノ職工ヲ傭役仕候者ハ全国ノ首府タル東京府下ト雖トモ僅ニ指ヲ屈スル程ニ過ギズ、随テ其弊害モ未ダ欧米諸国ノ如ク甚シキニ至ラザルノ状況ニ御坐候得バ、其法令ハ単ニ当面ノ弊害ヲ防グヲ目的トシテ御制定相成、細目ニ至リテハ可成人民相対ノ自由ニ御放任相成候方却テ今日ノ実際ニ適応シ、之ガ為メ傭主被傭者間及師弟間ニ於テ充分ノ取締相立可申ト奉存候、依テ此段別紙甲乙両号相添復申仕候也
  明治十七年四月         東京商工会々頭
                      渋沢栄一
    農商務卿 西郷従道殿
 - 第18巻 p.111 -ページ画像 
(別紙)
甲号
    工業上傭主被傭者間ノ弊害
第一 甲傭主ノ傭役スル約定期間中ノ職工逃走シテ乙傭主ニ傭役セラルヽノ弊
第二 甲傭主ヨリ給料ヲ借越シタル職工逃走シテ乙傭主ニ傭役セラルルノ弊
  以上ハ傭主被傭者間弊害中其形跡最モ著シク、且ツ各種工業上ノ通弊トモ称スベキモノニシテ従来我国各種工業上此等ノ弊害屡々有之候、例ヘバ甲傭主ガ二年間ノ期限ヲ定メ職工ヲ傭入ルヽ時ノ如キ、前一年間ハ職工未熟ノ為メ其収益甚ダ多カラザルモ後一年間ハ其熟練ヲ利用シテ前ノ不足ヲ補充セント予期スル事有之、或ハ初ヨリ熟練ノ職工ヲ傭入ルヽモ甲傭主ニ於テ常ニ日切ノ注文ヲ受負フ事有之、或ハ甲傭主ニ於テ都合ニヨリ職工ニ給料ヲ貸越ス事有之、此時ニ際シ其職工不時ニ逃走シテ乙傭主ニ傭役セラルヽ時ハ之ガ為メ甲傭主ノ損害実ニ少カラズ、此時ニ当リ仮令乙傭主ガ情ヲ知リテ其職工ヲ傭役スルノ事跡判然タルモ、従来全ク此点ニ関シ取締法ノ存セザルガ為メ平生甲乙間ニ特別ノ契約ヲ結ブカ若クバ情誼ノ存スル事ナキ以上ハ、乙傭主ニ於テ甲傭主ニ対シ毫モ責任ヲ負ハザルヲ以テ甲傭主ハ其損害ヲ要償スル為メ、不得已直チニ其逃走シタル職工若クハ之ガ請人タルモノニ談判セザルヲ得ズ、然カルニ此等ノ職工及請人タル元来無資無産ノ徒多クシテ甲傭主ハ仮令法庭ノ裁判ニ依リテ其権利ヲ伸張スルヲ得ルモ到底其損害ノ実額ヲ補償スルニ足ラズ、又甲傭主ガ此等ノ職工ヲ引致シテ強テ前約ヲ履行セシメントシ、或ハ労役ヲ以テ其義務ヲ果タサシメントスルモ其職工ハ故意ニ懶情ヲ極メ其職ヲ尽サズシテ遂ニ傭主ヲシテ不得已己ヲ放逐セシムル事アリ、是今日傭主ノ地位ニ立ツ者ノ大ニ困苦スル所ニ御坐候
第三 職工約定ニ背キ秘法ヲ他ニ伝フルノ弊
  此弊ハ製紙・摺附木製造、或ハ薬剤ノ製練等苟クモ秘法ヲ要スル工業ニハ往々コレアル所ニシテ、例ヘバ某工業者ガ某品製造ノ新法ヲ発明スル時ノ如キ初メ其事業ニ着手スルニ当リ、職工ニ約スルニ製法ノ秘密ヲ他ニ洩サヾラン事ヲ以テスルモ其後漸ク製品ヲ発売セントスルニ当リ世間已ニ同品ヲ販ク者アリテ大ニ利益ヲ損ズル事有之、是全ク職工ガ約定ニ背キ秘法ヲ他ニ伝フルニ因ルモノニシテ、其背跡判然タルモ既ニ前条ニ於テ説明スルガ如ク、此等ノ職工タル多クハ無資無産ナルヲ以テ傭主ハ其損害ヲ補償スルノ途ナキニ苦シメリ、若シ此時ニ当リ傭主怒ニ乗ジテ之ヲ放逐センカ職工ハ喜ンテ他ニ傭主ヲ求メ、其傭主又喜ンテ之ヲ傭役スルノ情アリ、故ニ此等ノ職工ハ其背約シタルガ為メニ毫モ実地ノ損害ヲ感ズル事ナクシテ傭主ハ結局其損害ヲ補償スル事能ハザルナリ是亦弊害ノ頗ル大ナルモノニ御坐候
第四 傭主約定ノ給料ヲ与ヘザルノ弊
  傭主ガ被傭者ヲ苦シムル事其例少カラズ、例ヘバ甲傭主ガ工業上
 - 第18巻 p.112 -ページ画像 
ノ都合ニヨリ職工ヲ要スル場合ニ際シ多分ノ賃銀ヲ以テ乙傭主ノ傭役スル職工ヲ誘引シ、若シ不用トナル時ハ其窮迫ヲ顧ミズ直ニ之ヲ放逐スル等是ナリ、然レトモ其最モ甚シキモノハ傭主約定ノ給料ヲ職工ニ払ハザルノ一事ニ有之候、元来被傭者ノ地位ニ立ツ者ハ概ネ無智無識ニシテ法庭ニ向テ其正理ヲ訴フルノ道ヲ知ラス随テ其権力極メテ薄弱ナルガ為メ此等ノ場合ニ於テハ常ニ傭主ノ抑圧ヲ甘受スル者多ク有之候
第五 官立ノ工場ト民有ノ工場トハ職工雇入ニ付申合ノ行届キ兼ヌルヨリ生ズルノ弊
  官立ノ工場ト民有ノ工場トハ全ク其性質ヲ異ニシ職工取締ノ法ニ於テモ彼此其趣ヲ同フセズ、故ニ仮令其事業ハ彼此同種ナルモ其職工雇入等ノ事ニ就テハ民間同業者ガ互ニ相一致スルガ如ク双方申合行届キ兼ヌルノ勢アリ、是ヲ以テ偶々民有ノ工場ニ傭役スル職工逃走シテ官立ノ工場ニ傭役セラルヽガ如キ事アルモ、此民有ノ工場ハ談判ヲ遂グルノ途ヲ得ス、遂ニ其損害ヲ蒙ル事有之、又民間同業者ガ職工雇入等ノ事ニ就キ互ニ規約ヲ結バントスル場合ニ於テ、官立ノ工場ヲシテ之ニ加盟セシムル事能ハザルガ為メ其規約遂ニ行届カザルガ如キ憾モ有之候
    工業上師弟間ノ弊害
第一 年季中他ノ誘引ヲ受ケ或ハ自ラ逃走シテ他ノ師ニ就キ或ハ他ノ傭主ヲ求ムルノ弊
  弟子年季中漸ク其職業ヲ修熟シヤヽ一人前ノ職工タルヲ得ルニ及ビ、父兄又ハ他人ノ誘引ヲ受ケ或ハ自ラ其才力ヲ恃ンデ逃走シ窃カニ他ノ師ニ就キ、或ハ他ノ傭主ヲ求メ候事有之、然レトモ傭主被傭者間ニ於ケル場合ノ如ク師タル者其損害ヲ補償スルノ途ナキニ苦シムノ憾有之候、是師弟間弊害中最モ大ナルモノニ御坐候
第二 年季中師ノ秘密ヲ奪ヒ其営業ヲ妨グルノ弊
  弟子年季中漸ク其職業ヲ習熟スルニ当リ師ノ秘密法ヲ奪ヒ、自ラ師ノ製造ニ摸擬シタル物品ヲ製シテ私ニ之ヲ販売シ大ニ師ノ営業ヲ妨害スル事有之、現ニ府下ニ於テ此弊害ノ為ニ破産シタル工業者モ有之趣聞及候
第三 師弟子ヲ職業上ニ使役セズシテ家事上ニ使役スルノ弊
第四 師タルノ伎倆無キ者漫ニ弟子ヲ引受クルノ弊
  師タル者弟子ニ職業ヲ教授スルヲ怠リ専ラ之ヲ家事上ニ使役シ甚シキハ全ク之ヲ奴隷ノ如ク役スル事有之、又己レノ伎倆不充分ニシテ漫ニ弟子ヲ引受クル事有之、此等ノ場合ニ於テハ特ニ才智ニ富ムノ弟子ハ幸ニ其自力ニ依リテ職業ヲ習熟スルヲ得ルモ尋常中才ノ弟子ハ幾年ヲ経ルモ其職業ニ熟達スルヲ得ザルノ憾有之候
乙号
    傭主被傭者間取締法要領
第一 傭主被傭者間ノ契約ニハ左ノ数項ヲ記載スベキ事
  一 契約人双方ノ姓名
  一 身元引受人ノ姓名
  一 結約ノ年月日
 - 第18巻 p.113 -ページ画像 
  一 雇期限
  一 給料
  一 雇ハルベキ職業
  一 病気ノ時ノ約束
  一 解約ノ時ノ約束
第二傭役期限ノ有無ニ関ラズ甲傭主ニ借越アル被傭者タルヲ知リテ乙傭主ニ於テ傭役スル時ハ、乙傭主ハ甲傭主ニ対シテ其被傭者ノ借越ヲ弁償スルノ責ニ任スベキ事
第三甲傭主ニ対シテ傭役期限未ダ終ラザル被傭者タルヲ知リテ乙傭主ニ於テ傭役スル時ハ、其被傭者ノ甲傭主ニ対スル責ハ乙傭主之ヲ負担スベキ事
  抑モ甲傭主ノ傭役スル職工ガ約定期限中逃走シ、或ハ給料ヲ借越シテ逃走スルニ至ルモノハ、畢竟其ノ容易ク乙丙ノ傭主ニ就クヲ得ルガ為メニシテ、若シ其職工ヲシテ甲傭主ニ対スル義務ヲ果タサヾル限リハ決シテ乙丙ノ傭主ニ就ク事能ハザルノ地位ニ在ラシメバ職工逃走ノ弊害蓋シ制セズシテ止ムニ至ラン、而シテ此目的ヲ達セントスルニハ只其逃走シタル職工ヲシテ損害補償ノ責ニ当ラシムルニ止メンヨリハ、寧ロ之ヲ傭役スル乙丙ノ傭主ヲシテ此責任ヲ負担セシムルニ若カザルナリ、何トナレバ若シ法律ヲ以テ斯ノ如ク制定スル時ハ乙丙ノ傭主容易ニ此等ノ職工ヲ傭役セザルカ故ニ勢自ラ其逃走ノ弊害ヲ防止スルヲ得レバナリ、是即チ第二及第三条ノ主意ヲ以テ立法ノ要義トセラレンコトヲ要スル所以ニ御座候、又従来傭主被傭者間ニ苦情ノ生スルハ双方約束ノ不充分ナルニ起因スルモノ最モ多ク、殊ニ前記職工逃走ノ場合ノ如キ甲傭主ヨリ乙丙傭主ニ向テ損害ヲ要償スルニハ先ヅ其逃走シタル職工ガ己レニ対スル責任ノ限界ヲ証明スルヲ要スルニ付、其契約ハ充分明瞭ナラザルベカラズ、是第一条ニ於テ傭主被傭者間ノ契約ニ掲記スベキ事項ヲ指定セラレン事ヲ要スル所以ニ御坐候
第四左ノ場合ニ於テハ傭主ニ於テ約定期限中ノ被傭者ヲ解傭シ得ル事
  一 被傭者窃盗其他刑法ニ触レタル場合
  一 被傭者身体異変ヲ生シ其職業ニ堪ヘザル場合
第五左ノ場合ニ於テハ被傭者ニ於テ解約シ得ル事
  一 被傭者身体異変ヲ生シ其職業ニ堪ヘザル場合
  一 傭主不法ノ所行ニ誘フ場合
  一 傭主給料ヲ払ハザル場合
  一 傭主窃盗若クバ重罪ノ刑ニ処セラレタル場合
 右両条ニ就テハ特ニ説明ヲ要スルモノ無之、但シ第四条ニハ被傭者窃盗其他刑法ニ触レタル場合ト記シ、第五条ニハ傭主窃盗若クバ重罪ノ刑ニ処セラレタル場合ト記スルモノハ、本来傭主ト被傭者トハ自ラ其資格ヲ同フセザルガ為メ斯ク其権衡ヲ定メタルニ過ギズシテ其間別段ノ趣意ハ無御坐候
第六被傭者兵役ニ就キタル時ハ傭主被傭者ノ中、一方ノ望ニヨリテ解約スルヲ得ベキ事
  兵役ハ国民ノ義務ニシテ一般人民ノ負担セザルヲ得ザル所ナリ、
 - 第18巻 p.114 -ページ画像 
故ニ被傭者約定年限中偶々兵役ニ就ク時ハ勢双方ニ於テ共ニ其契約ヲ履行スル事能ハザル事アリ、是本条ニ於テ此場合ニ当リテハ双方ヲシテ随時解約スルノ余地ヲ得セシメン事ヲ要スル所以ニ御座候
    師弟間取締法要領
第一師弟間ノ契約ニハ左ノ数項ヲ記載スベキ事
  一 契約人双方ノ姓名
  一 父母若クバ後見人ノ姓名
  一 契約ノ年月日
  一 年季ノ期限
  一 職業
  一 衣服食料
  一 給料
  一 病気ノ時ノ約束
  一 解約ノ時ノ約束
第二年季期限ハ十ケ年ヲ超過スヘカラザル事
第三弟子年季中其約定ニ背キ解約ヲ望ム時、或ハ逃走シテ他ノ師ニ就キ又ハ他ノ被傭者トナル時ハ、結約ノ日ヨリ解約或ハ逃走ノ時迄ノ食料及ヒ給料ヲ師ニ弁償スベキ事
第四甲者ニ対シテ年季契約中ノ弟子ト知リテ乙者ニ於テ年季ノ契約ヲ結ビ或ハ之ヲ傭役スル時ハ、其弟子ノ甲者ニ対シテ弁償スベキ責ハ乙者之ヲ負担スベキ事
  以上四条ノ中第一及第四ノ両条ハ傭主被傭者間取締法要領第一・第二・第三ノ三条ニ就キ説明シタル趣意ニ基キ候モノニ有之候、蓋シ師弟ノ関係タル傭主被傭者ノ関係ト同シカラズ、其契約モ彼此自ラ其趣ヲ異ニスルモノ有之、例ヘハ傭主被傭者間契約ノ要旨ヲ約言スレバ只被傭者ハ傭主ノ為メニ或ル時ノ間労役シ、傭主ハ之ニ向テ相当ノ代銀ヲ払フト云フニ過キスシテ双方同等ノ地位ニ立テ契約スルモノナレトモ、師弟ノ関係タル恰モ父ノ子ニ於ケルガ如クシテ同等ノ地位ニ立テ契約スルモノニ非ズ、殊ニ師ガ年季中弟子ニ給与スル食料又ハ給料ニ於テ費ヤス所ハ、弟子ヤヽ職業ニ習熟スルニ及ビ之ガ熟練ヲ利用シテ始メテ之ヲ償フノ姿ナレバ弟子若シ中途ニシテ解約シ或ハ逃走スル場合ニ於テハ、師ノ蒙ルベキ損害傭主ノ被傭者ニ於ケル場合ヨリ更ニ甚シキノ理ナリトス是第三条ニ於テ双方契約ノ有無ニ拘ラズ年季中弟子解約シ或ハ逃走スル場合ニ於テハ、特ニ弟子ヲシテ其時迄ノ食料及給料弁償ノ義務ヲ負ハシメン事ヲ要スル所以ニ御坐候
  又農工業習熟ノ年限ハ、明治五年十月太政官第二百九十五号ノ御布告ヲ以満七年ニ過グベカラズト制定セラレタリト云トモ、抑モ蒔絵・彫刻其他美術ニ関スル工業ニシテ特ニ精工熟練ヲ要スルモノニ於テハ之ヲ習熟スルニ七年以上ヲ要スルモノ多ク有之、現ニ蒔絵・銅器製造職等ニ於テハ其習熟年限少クモ十年ヲ要スルト云トモ右御布告ニ抵触セン事ヲ恐レ不得已師ガ弟子ヲ引受クルニ際シ初三年間ハ年季ヲ定メズシテ己レノ職業ヲ見習ハシメ然シテ後
 - 第18巻 p.115 -ページ画像 
初テ七年ノ年季ヲ契約スル者モ有之候、是第二条ニ於テ更ニ其年限ヲ十年迄ト定メラレン事ヲ要スル所以ニ御坐候、但シ本条ハ特定ノ弊害ヲ防グノ趣意ニ無之候得共、従来工業者ニシテ右御布告ノ制限ヲ不便トスル者不少ニ付玆ニ併テ其改定ヲ要スルモノニ御坐候
第五左ノ場合ニ於テハ弟子ニ於テ解約スルヲ得ベキ事
  一 師ノ死去シタル場合
  一 弟子ノ身体ニ異変ヲ生シ其職ニ堪ヘザル場合
  一 師弟子ヲ職業上ニ使役セズシテ専ラ家事上ニ使役シ、又ハ之ヲ虐使スル場合
  一 師不法ノ所業ニ誘フ場合
  一 師窃盗若クバ重罪ノ刑ニ処セラレタル場合
第六師ハ自己ノ都合ニヨリテ解約スルヲ得、但シ此場合ニ於テハ弟子ヲシテ食料及給料ヲ弁償セシムルヲ得ザル事
  右両条ニ就テハ特ニ説明ヲ要スルモノ無之、但シ師弟間ノ契約ハ前陳ノ如ク傭主被傭者間ノ契約ト異ニシテ之ヲ解約スル場合ニ於テハ師ハ最モ損害ヲ蒙リ、弟子ハ毫モ不利ヲ感セザルノ傾向有之是第六条ニ於テ特ニ師ヲシテ随意ニ解約スルヲ得セシメ、以テ双方ノ権衡ヲ保持セン事ヲ要スル所以ニ御坐候
第七年季結約ヨリ三ケ月間ハ師又ハ弟子ノ中一方ノ望ニ依リテ解約スルヲ得ベキ事
  師弟間ニ於テ苟クモ年季ヲ以テ契約スルニ当リテハ師ハ予メ弟子ノ能力能ク其職業ヲ習熟スルニ堪フルヤ否ヲ撿セザルベカラス、又弟子ハ予メ其師ノ伎倆能ク其ノ職業ヲ教授スルニ足ルヤ否ヲ察セザルベカラズ、若シ否ラズシテ双方軽忽ニ契約ヲ結ブ時ハ到底双方ノ利益ヲ保全スル能ハズ、是本条ニ於テ結約ヨリ三ケ月間ハ一方ノ望ニ依テ解約スルヲ得セシメ、以テ充分双方ニ余地ヲ与ヘン事ヲ要スル所以ニ御坐候

会長曰ク、此復申書案ハ是迄委員ガ数回ノ会議ヲ開キ審按熟議シテ漸ク調成シタルモノニシテ、即チ先ヅ第一ニ傭主被傭者間及師弟間ニ存スル弊害ノ著シキモノヲ掲ケ、次ニ之ヲ防グノ方法ヲ示シ、其主意トスル所ハ専ラ当面ノ弊ヲ防グヲ精神ト為シタレバ前会議決ノ主旨ト毫モ矛盾スル所ナキヲ信ズルナリ、而シテ本案ニ就キ不審アラバ調査委員タル十六番(益田克徳)ニ質議セラレタシ
百十番(勝部静男)曰ク、少々質疑スベキ事アリ、(第一問)乙号傭主被傭者間及師弟間取締法要領中、傭主被傭者間並ニ師弟間ノ契約書ニ記スベキ条項ヲ記載セラレタルガ、此条項ハ単ニ契約ノ大要ヲ示シタルモノナルヤ、将タ此条項以外ノ事ハ一切契約書ニ記セシメザルノ見込ナルヤ、(第二問)乙号第四条ニ被傭者身体異変ヲ生ジ云々トアルハ単ニ癈疾不具等ニテ其職ニ堪ヘザル場合ノミヲ指示シタルモノナルヤ、将タ契約期限中偶々己レ一家ノ相続人トナリテ其年季ヲ卒フル能ハザル場合ノ如キモ此中ニ包含スルノ意ナルヤ、(第三問)甲号ニ於テ被傭者ガ傭主ノ秘法ヲ他ニ伝フルノ
 - 第18巻 p.116 -ページ画像 
弊害及弟子ガ師ノ秘法ヲ奪フノ弊害ヲ特記シ、乙号ニ於テハ之ヲ防グノ法ヲ示サザルハ何故ナルヤ
十六番(益田克徳)荅テ曰ク、(第一問)契約書ニ記スベキ項目ハ只ダ其大要ヲ掲ゲシニ過ギズ、若シ契約ノ場合ニ際シ双方必要ト認ムル条項アラバ適宜ニ之ヲ添加シテ可ナルノ見込ナリ、(第二問)身体異変云々ハ癈疾不具者トナリテ其職ニ堪ヘザル場合ノミヲ云フナリ、契約期限中相続人トナリテ就職シ難キ場合ノ如キハ特別ノ契約アルニ非ザレバ決シテ解約セシメザル見込ナリ、(第三問)秘法ニ関スル弊害ヲ防グノ法案ハ委員之ヲ顧慮セザルニ非ザレトモ凡ソ傭主被傭者間及師弟間ニ存スル最モ著大ナル弊害ハ、傭主被傭者間弊害第一第二ノ両条及師弟間弊害第一条ニシテ、若シ此等ノ大弊ヲ防グノ道ヲ得ル時ハ前記秘法ニ関スル弊害ノ如キハ自ラ熄ムニ至ルノ見込ナリ、是レ此弊ヲ防グノ法ヲ掲ケザル所以ナリ
二十六番(柴崎守三)問フテ曰ク、甲傭主ニ借越シアル職工タルヲ知ラズシテ乙傭主之ヲ傭役セル場合ニ於テハ之ヲ如何スベキ見込ナルヤ
十六番(益田克徳)荅テ曰ク、甲傭主ヨリ其貸越シアル職工タル事ヲ乙傭主ニ通知シ、乙傭主猶之ヲ傭役セントスル時ハ始テ弁償ノ責ニ任ゼシムルノ見込ナリ
百十番(勝部静男)問フテ曰ク、然ラバ貸越アル職工タルヲ知ラズシテ傭役シタルトキハ乙傭主ニ其責任ナシトスルカ
十六番(益田克徳)荅テ曰ク、然リ
一番(足助房太郎)問フテ曰ク、甲号傭主被傭者間弊害第五条ニ官立ノ工場ト民有ノ工場云々ノ事アリ、此取締法ハ官民ノ工場ヲ通ジテ汎ク実行セントスル見込ナルヤ
十六番(益田克徳)荅テ曰ク、然リ
二十四番(松木平吉)問フテ曰ク、甲号中師弟間弊害第四条ニ記スル師タル伎倆ナキ者漫ニ第子ヲ引受クルノ弊ハ何分之ヲ防グノ道ナカルベシト思考ス、委員ノ考案果シテ如何ン
十六番(益田克徳)荅テ曰ク、此条ハ只ダ其弊ヲ示シタルニ過ギズ、委員ニ於テハ到底此弊害ヲ防グノ方法ヲ案出スル能ハザルナリ
八十七番(浅井幸右衛門)問フテ曰ク、傭主被傭者間契約ノ場合ニハ身元引請人アリテ師弟間契約ノ場合ニ之ナキハ如何ン
十六番(益田克徳)荅テ曰ク、師弟間契約ノ場合ニハ父母若クバ後見人アルヲ以テナリ
於是会長ハ各員ノ質疑全ク尽キタルヲ以テ是ヨリ更ニ逐条審議ニ取掛ルベキ旨ヲ告ゲ、先ヅ書記ヲシテ甲号書面ヲ逐条朗読セシメタルニ、傭主被傭者間弊害第三条ニ至リ五十八番(川原英次郎)ヨリ輸入品模造ニ就テモ秘法ヲ他ニ伝フルノ弊害甚ダ多キヲ以テ本条説明中「薬剤ノ製煉」ノ下ヘ「輸入品模造」ノ五字ヲ挿入スベシトノ動議ヲ発シ、四十三番(梅浦精一)ノ駁論モアリシガ終ニ十六番(益田克徳)ノ発議ニヨリ本条説明中「薬剤ノ製煉」ノ下等ノ一字ヲ其他諸製造ノノ文字ニ改メ「苟モ秘法ヲ要スル」ノ下工業ノ二字ヲモノノ二字ニ改ムルニ決シ、其他ハ尽ク原案ニ可決シタリ
 - 第18巻 p.117 -ページ画像 
次ニ会長ハ書記ヲシテ乙号書面並ニ復申書案ヲ逐条朗読セシメタルニ乙号師弟間取締法要領第四条ニ至リ百十番(勝部静男)ノ発議ヲ以テ其説明中「其年限ヲ十年迄ト定メラレン事ヲ要スル所以ニ」ノ下御坐候但シ本条ハ特定ノノ十一字ヲシテ特ニノ四字ニ改ムルニ決シ、同第五条ニ至リ百十番(勝部静男)ノ発議ヲ以テ弟子兵役ニ就ク場合ト云フノ一項ヲ添加スルニ決シ、即チ之ヲ第三項ト為シタリ、而シテ同第七条ニ至リ百六番(辻粂吉)ヨリ前条ニ於テ師ハ自己ノ都合ニヨリテ解約スルヲ得ト定ムル上ハ、本条ニ於テ師ノ解約シ得ル旨ヲ特記スルニ及バズトノ発議アリシガ、猶衆議ノ上乙号ニ掲グル各条ハ本来法律ノ草案トシテ開陳スルモノニ非ザレバ原案ノ儘ニテ妨ゲナシト云フニ決シ、其他ノ各条並ニ復申書案ニ至リテハ各員異議ナク総テ原案ニ可決シタリ
○下略


東京商工会議事要件録 第五号・第四一―四四頁 明治一七年六月七日刊(DK180014k-0006)
第18巻 p.117-118 ページ画像

東京商工会議事要件録  第五号・第四一―四四頁 明治一七年六月七日刊
 ○参考部 傭主被傭者間取締規則ノ義ニ付農商務卿ヘ復申書
    ○第二問目復申書
昨年十二月廿七日附ヲ以テ御諮問有之候第二問目工業上傭主被傭者間及師弟間取締法ノ制定ヲ要望スルヤ否ヤノ義ニ就テハ、其後数回ノ会議ヲ開キ篤ト審案討議ノ末、先ツ府下重立候工業即チ製紙業・時計製造・石工・地本錦絵製造・筆墨硯製造・団扇製造・造船業・畳職・蒔絵職・銅器製造・陶器製造・摺附木製造・染工・西洋仕立職・活版印刷職・鼈甲職・大工職・左官職・指物職・塗師職・石板職・銅板職・経師職・硝子製造等ノ各種ニ就キ、従来傭主被傭者間及師弟間ニ行ハレ候弊害ヲ調査仕候処、固ヨリ其類不少候得共、重要ナルモノヲ挙グレバ即チ別紙甲号ニ記載仕候通リニ有之、而シテ其中形跡ノ最モ著シク且ツ各種工業上ノ通弊トモ称スヘキモノハ傭主被傭者間弊害第一第二ノ両条及師弟間弊害第一条ニシテ其詳細ハ以上三条ノ末ニ説明致候通ニ御坐候、尤往時幕府ノ治下ニ在リテハ工業ノ種類ニ依リ同業者相連合シテ所謂講中若クハ仲間組合ナルモノヲ組成シ、職工不正ノ所為アル時ハ講中若クハ仲間組合ヘ報告シテ互ニ之ヲ傭役セザル等、其他種々ノ慣習アリテ幾分カ此等ノ弊害ヲ防キ候事モ有之候得共、近来百事改進ノ風潮ニ制セラレ右等ノ慣習漸ク消滅シ他ニ全ク撿束ノ途無之ヨリ現今ニ至リテハ此等ノ弊害益々増長ノ勢ヲ呈シ、今ニシテ之ヲ救済セザレバ将来我国ノ工業上大ニ衰頽ヲ来シ候恐モ可有之奉存候、以上陳述仕候通リノ次第ニ付政府ニ於テ前陳ノ諸弊ヲ防グノ法律御制定相成候義ハ今日府下工業者ガ素ヨリ切望スル所ニ御座候、今本会熟々此等ノ弊害ヲ防グノ方案ヲ考フルニ特ニ精細ノ条例ヲ御制定相成候迄モ無之、只別紙乙号ニ記載仕候趣意ヲ以テ簡単ナル法令ヲ御制定相成候ハヽ此目的ヲ達スルニ充分ノ効力可有之確信仕候、蓋シ欧米諸国ニ於テハ傭主被傭者間及師弟間取締ノ為メ現ニ厳密ナル法律ヲ設ケ候向モ有之趣ニ承知仕候得共、元来我国工業ノ進度ハ欧米諸国ト同シカラス一工場ニシテ数十百人ノ職工ヲ傭役仕候者ハ全国ノ首府タル東京府下ト雖トモ僅ニ指ヲ屈スル程ニ過ギズ、随テ其弊害モ未ダ欧米諸国ノ
 - 第18巻 p.118 -ページ画像 
如ク甚シキニ至ラザルノ状況ニ御座候得バ、其法令ハ単ニ当面ノ弊害ヲ防グヲ目的トシテ御制定相成、細目ニ至リテハ可成人民相対ノ自由ニ御放任相成候方却テ今日ノ実際ニ適応シ、之ガ為メ傭主被傭者間及師弟間ニ於テ充分ノ取締相立可申ト奉存候、依テ此段別紙甲乙両号相添復申仕候也
  明治十七年五月二日        東京商工会々頭
                       渋沢栄一
    農商務卿 西郷従道殿
  ○甲号乙号トモ前掲第四臨時会ニテ修正可決セルモノト同一ナル故略ス。


東京商工会議事要件録 第二三号・第三〇―三一頁 明治二〇年三月二二日刊(DK180014k-0007)
第18巻 p.118 ページ画像

東京商工会議事要件録  第二三号・第三〇―三一頁 明治二〇年三月二二日刊
  第十二定式会 (明治二十年二月廿六日午後四時三十分開会)
    会員出席スル者 ○五十六名
○上略
次ニ会長(渋沢栄一)ハ是迄本会ヨリ諸官衙ヘ建議又ハ復申シタル事項ニ就キ特別ニ其成跡ヲ報告ス
    ○東京商工会建議又ハ復申事項ノ成跡
明治十六年十一月本会創立以来今日ニ至ルマデ各官署ヘ建議又ハ復申シタル事項中、其筋ニ於テ既ニ本会ノ意見ヲ採用セラレタルモノ又ハ現今特ニ審査中ノモノハ左ノ如シ
○傭主被傭者間取締規則ノ義ニ付農商務卿ヘ復申ノ件
  明治十六年十二月廿七日附ヲ以テ西郷農商務卿閣下ヨリ従来工業上傭主被傭者間ニハ種々ノ弊害アリ今府下ノ工業者ニ於テハ此等ノ弊害ヲ防ク為メ取締法ノ制定ヲ望ムヤ如何ノ旨諮問セラレタルニ付其後本会ニ於テハ各種工業上実地ノ弊害ヲ調査シ且ツ傭主被傭者間取締法要領六項師弟間取締法要領七項ヲ審案シ、翌十七年五月二日附ヲ以テ答申案ヲ上呈シタルガ、明治十九年十月中本会ヨリ其成跡ニ就キ其筋ヘ伺出デタルニ右ハ現今農商務省ニ於テ審査中ノ趣、明治二十年一月中高橋商務局長閣下ヨリ内示アリタリ
○下略



〔参考〕工場法論 岡実著 改訂版・第一―九頁 大正二年刊(DK180014k-0008)
第18巻 p.118-121 ページ画像

工場法論 岡実著  改訂版・第一―九頁 大正二年刊
  第一編 日本工場法
    第一章 工場法制定ノ沿革
 明治四十四年三月二十八日ヲ以テ制定公布セラレタル工場法ハ「其ノ条文僅ニ二十五箇条、大正五年八月二日ヲ以テ公布セラレタル施行令(四十二箇条)及施行規則(三十一箇条)ヲ合スルモ、其ノ法条僅ニ九十八条ニ過キス。然レトモ此等ノ法規カ制定セラルル迄ニハ実ニ約三十箇年ノ星霜ヲ積ミ、此ノ間主務大臣ノ交迭ヲ重ヌルコト二十三回、工務局長又ハ商工局長トシテ主任者ヲ換フルコト十五人、稿ヲ更ムルコト亦実ニ百数十回ニ及ヒタルモノナリ、以下其ノ沿革ノ大要ヲ述フヘシ。
     第一節 第一期(自明治十四年至明治三十一年)
 農商務省ノ内務省ヨリ分離シタルハ実ニ明治十四年四月ニシテ、翌
 - 第18巻 p.119 -ページ画像 
年工務局内ニ調査課ヲ設ケ、労役法及工場条例ニ関スル材料ヲ集輯センカ為メ、各府県ニ移牒シテ職工及工場ニ係ル現在ノ状態及慣習等ヲ調査報告セシム、翌十六年ニ至リ諸般ノ参考材料ニ依リ労役法・師弟契約法及工場規則ノ立案ニ着手スルト共ニ、之ニ関スル意見ヲ東京商工会ニ諮問シタルニ、工業上傭主被傭者間及師弟間ノ取締ヲ必要ト認ムルヲ以テ速カニ適当ノ法律ヲ制定セラレンコトヲ希望ストノ答申ニ接シタリ。
 翌十七年ニ至リ当時農商務省ノ諮問機関トシテ特設セラレタル勧業諮問会ノ第一次会合ニ際シ、更ニ工業上傭主被傭者間並師弟間ノ取締法制定ノ可否ニ付意見ヲ諮問シタルニ、同諮問会ハ各地ノ慣習同シカラスト雖、近来種々ノ弊害ヲ生シタルヲ認ムルヲ以テ各地旧来ノ慣習ニ基キ完全ナル取締法ヲ発布セラレタシト答申セリ。
 明治十八年ハ労役法・師弟契約法・職工並徒弟条例ニ関スル大体調査ヲ継続シ、翌十九年二月第三次勧業諮問会ヲ開キ、工業上傭主被傭者間並師弟間ノ権利義務ノ規定及傭役ノ制限等ニ関スル事項ヲ諮詢スルト共ニ、各地方ノ状態慣例ヲ詳カニスルコトヲ努メタリ。
 明治二十年六月ニ至リ職工条例及職工徒弟条例案一ト先ツ脱稿ス、前案ハ総則・未丁年ノ職工・徒弟・工場製造所及罰則ノ五章四十六条ヨリ成リ、後案ハ総則・職工・徒弟及罰則ノ四章三十一条ヨリ成ル、左ニ其ノ要領ヲ掲ケン。
 職工条例案規定事項ノ要領
      第一章 総則
  一職工ト工業製造人ノ関係ハ合意契約ニ依リ定マルコト
  一此等二者ノ人権及物権ニ関スル契約ノ条件ヲ制限セサル場合ハ民法ノ規定若ハ地方ノ慣例ニ依ルコト
  一工業製造人及職工ノ定義
  一水火力ヲ用フル生産所、礦物ノ分析淘汰、礦坑、普請場及造船所等ハ工場製造所トシテ本条例ヲ適用スルコト
  一雇傭契約ノ解除ニ関スルコト
  一工業製造人ノ職工ニ対スル契約ノ不履行、及職工ノ工業製造人ニ対スル契約違反ニ因ル損害賠償ノコト
  一工場製造人ハ職工ノ解職ニ際シ、其ノ請求ニ応シ無報酬ニテ勤務証書ヲ交附スルコト、又修業ヲ目的トスル者ニハ卒業証書ヲ交附スルコト
  一工業製造人ト職工トノ間ノ紛争ハ商業会議所ニ於テ仲裁スルコト
  一工業製造人ハ職工ニ物品ヲ売渡シ、物品又ハ金銭ヲ貸付ケ利益ヲ収ムルコトヲ得サルコト
  一職工ノ賃銀ハ帝国ノ通貨ヲ以テ払渡スコト
      第二章 未丁年ノ職工
  一未丁年ノ職工ハ日曜日及大祭日ニ労役セシメサルコト
  一公権ヲ剥奪セラレタル者ハ未丁年ノ職工ヲ使用スルコトヲ得サルコト
  一履歴書ヲ所持セサル未丁年者ヲ職工トシテ使用スルコトヲ得サ
 - 第18巻 p.120 -ページ画像 
ルコト
  一工業製造人ハ未丁年職工カ違約行為ヲ以テ退業スルトキハ其ノ履歴書ヲ留置スル権ヲ有スルコト
  一就学義務ヲ了ヘサル者、又ハ就学猶予ヲ得サル児童ヲ職工ニ使用スルトキハ工業製造人ハ一定ノ時間ヲ設ケテ通学セシムル義務アルコト
      第三章 徒弟
  一徒弟ハ工業製造人ノ家族ニ附属シ、其ノ業法ノ伝習ヲ受ケン為メニ使用セラルル職工ナルコト
  一徒弟ト工業製造人ノ契約ニハ通例一箇月以上三箇月以内ノ試験期間ヲ設クルコト
  一工業製造人カ徒弟ノ承諾ヲ得スシテ解約シ得ル場合ノ規定(七項)
  一徒弟カ工業製造人ノ承諾ヲ得ルヲ要セスシテ其ノ契約ヲ解キ得ル場合ノ規定(五項)
  一徒弟ノ契約ハ徒弟又ハ父母、後見人ヨリ其ノ営業ヲ変更スルノ事由ヲ以テ解除ヲ求メタル日ヨリ、三十日間ノ経過ニ由テ消滅スルコト、又此ノ事由ヲ以テ解約シタルトキハ其ノ解約後一箇年間ハ前契約者タル工業製造人ノ承諾ヲ得スシテ同一ノ営業ニ使用セラルヽコトヲ得サルコト
  一徒弟又ハ徒弟ノ父母、後見人ヲ勧誘シテ退業セシメタル者、及他ノ徒弟タルコトヲ知テ之ヲ使用シタル者ハ徒弟ト連帯ニテ損害賠償ノ義務アルコト
      第四章 工場製造所
  一工場・製造所ニ於テハ年齢十歳未満ノ児童ヲ職工トシテ使用スルコトヲ得サルコト、但シ徒弟ハ此ノ限リニ在サルコト
  一年齢十四歳未満ノ者ハ一日六時間、十七歳未満ノ者ハ一日十時間以上使役スルコトヲ得サルコト
  一幼年職工ニハ毎日喫食時間ノ外二回以上一定ノ休憩時間ヲ与フヘキコト
  一婦女及十四歳未満ノ職工ヲ夜間使用スルコトヲ得サルコト
  一工場・製造所職工ノ賃金ハ日給トスルコト、日給金ハ前渡又ハ後払ヲ為シ得ヘシト雖、前渡ハ三十日分、後払ハ十日分ノ賃金額ヲ越エシメサルコト
  一工場・製造所ノ便宜ノ為メ職工ノ住居及其ノ日用品買取場ヲ指定スルコトヲ得ス、職工ノ便宜ノ為ニスル場合ニハ其ノ管理規則ヲ定メ、地方長官ヲ経テ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘキコト
  一農商務大臣ハ職工ノ使用方法カ健康又ハ品行其ノ他経済ノ発達ヲ害スト認ムルトキハ特別ノ制限ヲ加ヘ又ハ職工ノ使用ヲ禁シ得ルコト
 職工徒弟条例案規定事項ノ要領
      第一章 総則
  一傭主・職工及徒弟ノ定義
  一八歳未満ノ者ハ職工徒弟トシテ使役スルコトヲ得サルコト
 - 第18巻 p.121 -ページ画像 
      第二章 職工
  一傭役契約ハ書面又ハ口上ヲ以テスルコト、口約ノトキハ立合証人アルヲ要スルコト
  一傭役書ニハ傭主、職工及職工カ未丁年者ナルトキハ其ノ監督権ヲ有スル者ノ族籍・住所・氏名・年齢、傭役ノ職業・期限・賃銭及其ノ仕払方法、解約予告ノ日限、職工カ疾病ニ罹リタルトキノ約定等ヲ記スヘキコト
  一解約予告日限ノ約定ナキトキハ三十日前タルヘキコト
  一傭主又ハ職工ノ一方ヨリ他方ニ対シ解約ヲ求メ得ル事由ノ規定
  一解約ニ当リ職工ノ結約並解約ノ年月日、使役ノ職業ヲ記載シタル証明書ヲ与フルコト
  一職工ガ傭主ノ職業上ノ秘訣ヲ漏洩シタル場合、其ノ他不法ノ退職、及他人ノ雇傭中ノ職工ノ誘拐ニ対スル賠償ノ規定
      第三章 徒弟
  一徒弟修業約定ハ一期十年ヲ超ユルコトヲ得サルコト
  一二十八歳ニ満サル者、又ハ破廉恥罪ノ刑ニ処セラレタル者ハ刑期満限後五年間徒弟ヲ養フコトヲ得サルコト
  一修業約定書ニ記載スヘキ事項ノ規定
  一十六歳未満ノ徒弟ニハ授業者ヲシテ読書・習字及算術ヲ授ケシムルコト
  一解約ノ予告ハ三ケ月前トスルコト、授業者又ハ徒弟ノ一方ノ申出ニ依リテ解約シ得ル事由ノ規定
  一徒弟解約後二年間ハ前工芸者ノ承諾ヲ得スシテ同職業ニ従事シ得サルコト、又他人情ヲ知テ其ノ徒弟ヲ傭入ルヽコトヲ得サルコト
 前記二法案中、前者ハ職工及工場ニ関スル一般規定ニシテ、後者ハ職工及徒弟ヲ主トシテ規定シ、試ミニ二様ニ立案シタルモノナリ。此等両種ノ法案ハ遂ニ発表スルニ至ラサリシモ、以テ当時ノ立案者ノ意志ノ那辺ニ在リシヤヲ窺フニ足ルヘシ。而シテ職工徒弟条例案ハ参事官会議ニ於テ修正ノ後、関係各局ニ合議シタルニ、此ノ法案タル民業ノ消長、慣習ノ存廃ニ関スルコト大ナルヲ以テ各局ノ意見一致セス、遂ニ廃案ニ帰シタルモノヽ如シ。
○下略



〔参考〕勧業会工務部日誌 勧業諮問会編 第一―八三頁 明治一七年刊(DK180014k-0009)
第18巻 p.121-134 ページ画像

勧業会工務部日誌 勧業諮問会編 第一―八三頁 明治一七年刊
勧業会工務部日誌
本会ハ明治十七年□月三十一日ヲ以テ開キ□月二日ヲ以テ閉タリ
    問題及解説
○中略
第二項 工業上傭主被傭者間並師弟間ノ取締法
 工業者ト職工トノ間及師弟ノ間ニハ種々ノ弊害若クハ苦情アルモノナレハ泰西諸国ニ於テハ特ニ之カ法律ヲ設ケ以テ双方ノ権利義務ヲ明ニセリ、本邦未タ此等取締ノ法律アル事ナシ、而シテ傭主被傭者間及師弟ノ間ニハ往々弊害若クハ苦情ノ発スルアルヲ聞ク、今各府
 - 第18巻 p.122 -ページ画像 
県下ノ工業者右取締法ヲ必要トシ之カ制定ヲ望ムヤ如何
  但取締法ノ要点ヲ掲クレハ左ノ如シ
 第一 傭主被傭者間取締法ノ要領
   一 傭役締約ノ際双方ノ心得方
   一 双方ノ権利義務
   一 被傭者随意ノ休業又ハ徒党等ノ禁制
   一 期限中解約ノ場合
   一 被傭者ノ証明状
   一 他人傭中ノ職人ヲ傭使スル者ノ義務
   一 童工女工使役ノ制限
   一 救済貯金ノ事
 第二 師弟間取締法ノ要領
   一 弟子ヲ引受クル者ノ制限
   一 契約書ノ事
   一 契約事項ノ制限
   一 双方ノ権利義務
   一 年季中双方解約ノ場合
   一 卒業証書ノ事
   一 脱走弟子ノ事
○中略
    会員
  会頭
   農商務権大書記官       富田冬三
 主務員
   農商務省御用掛        高橋是清
   同              山本五郎
   同              高峰譲吉
   同              荒川新一郎
   農商務三等属         福原譲蔵
   農商務省御用掛        首藤諒
   工務局雇           吉田健作
 書記
   農商務三等属         中出哲
   農商務六等属         吉川二介
   同  八等属         長岡往来
   同  十等属         弓場重光
 理事
   農商務三等属         斎藤隆
   工務局雇           仙波貞信
   同              沼沢久徳
 府県会員番号及氏名
一番     東京府五等属     井野辺真幸
二番     京都府五等属     淵胤栄
三番     大阪府御用掛     吉良亨
 - 第18巻 p.123 -ページ画像 
四番     神奈川県一等属    増田知
五番     兵庫県二等属     加藤正義
六番     長崎県三等属     川崎胖
七番     新潟県四等属     瀬戸口宗明
八番     函館県八等属     東虎雄
九番     埼玉県五等属     岡田長道
十番     群馬県七等属     滝埜寿茂
十一番    千葉県一等属     中村衡平
十二番    茨城県一等属     高畑千畝
十三番    栃木県六等属     樺山喜平次
十四番    三重県五等属     新谷貞信
十五番    愛知県三等属     渡辺平四郎
十六番    静岡県三等属     大塚義一郎
十七番    山梨県七等属     中田亮平
十八番    滋賀県一等属     高谷光雄
十九番    岐阜県四等属     奥富雄三郎
二十番    長野県五等属     吉松集躬
二十一番   福島県二等属     原純
二十二番   宮城県五等属     荒木正脩
二十三番   岩手県五等属     東静夫
二十四番   青森県四等属     稲田栄勝
二十五番   秋田県三等属     高木守久
二十六番   山形県六等属     久留就敦
二十七番   石川県六等属     宮崎豊次
二十八番   富山県三等属     岩田忠益
二十九番   福井県九等属     新部栄太郎
三十番    島根県八等属     藤岡直蔵
三十一番   鳥取県七等属     吉田清音
三十二番   岡山県一等属     野崎万三郎
三十三番   広島県一等属     十文字信介
三十四番   山口県五等属     岩波美篤
三十五番   和歌山県二等属    平田綱一郎
三十六番   徳島県八等属     堤乾已
三十七番   高知県七等属     西内義顕
三十八番   愛媛県五等属     古河覚五郎
三十九番   福岡県二等属     小山改蔵
四十番    大分県三等属     中村幸蔵
四十一番   佐賀県一等属     渡並竧
四十二番   熊本県一等属     指山延貞
四十三番   宮崎県七等属     木佐貫重節
四十四番   鹿児島県三等属    白野夏雲
四十五番   沖縄県六等属     石沢兵吾
四十六番   札幌県五等属     岩崎行親
四十七番   根室県御用掛     伊吹鎗造
 - 第18巻 p.124 -ページ画像 
十七年□月三十一日午前九時開会
○中略
    第二項
一工業上傭主被傭者並師弟間ノ取締法
二十九番(福井県)本項ハ本邦未曾有ノ件目ニテ泰西諸国ト雖モ是等ノ法則ハ民度ノ消長ニ拠リテ成立チタルモノニシテ是レヲ我邦今日ノ民度ニ照セハ尚早シト思ハルヽナリ、猶一歩ヲ退テ之ヲ実施スルモノト仮定スルモ実際上此ノ如キハ適セサルヘシ、否ナ従ハシメントスルモ行ハレサルヘキヲ信スルナリ、夫ノ大工左官ノ如キ素ヨリ権利義務ノ何タルヲ知ラスト雖トモ、自ラ古来習慣ノアルアツテ乾児ハ常ニ親分ナルモノヽ指揮ヲ受ケ服従シ来リ法則等ノ設ナキモ差支ノ姿ナシ、又傭主被傭者ハ相待テ互ニ生活スル者ナレハ故ラニ其取締法ヲ設ケサルモ実際上差シタル不都合アラザルヘシ、独リ師弟間ノ事ニ至リテハ輓近人心澆季ニ流レタルノ風アルヲ以テ此取締法ハ尤モ設ケ置クヲ望メトモ、傭主被傭者間ノ項ハ敢テ設クルニ及ハサルヘシト思考ス、亦童工女工就学云々ノ説明アレ共現行教育令中ニ於テハ苟モ学齢子弟ハ十三月間ハ普通小学ヲ修メザルヲ得サル事故説明ノ如キ杞憂ニ及ハサルヘシ
三番(大坂府)此取締法ハ必要ナリトス、職工条例制定ノ事ハ本府ヨリ曾テ上申セシカ、府下ニ於テ尤モ困難ヲ極ムル工場ハ、硫酸・製紙・紡績・製銅・製糖等ノ諸工場其著シキモノニシテ近年ノ不景気ニ連レ職工ノ悪弊実ニ名状スヘカラサルニ至レリ、今其一二ヲ挙クレハ傭主ヲ欺キ現工場ニ於テ賃金ノ前借ヲナシ置キテ他ニ転シ或ハ徒党ヲ為シテ傭主ヲ苦マシムル事アリシヨリ昨年夏季ニ於テ各工場集会ヲナシ、甲乙克ク申合ヲ定メ不都合アリタル職工ハ各工場ニ於テ互ニ使用セサル事ニ決シ、漸ク取締法ヲ設ケタレトモ工場ハ独リ大坂府下ノミニアラサルカ故ニ或ハ京都或ハ兵庫ト云フカ如ク他工場ノ職工ト互ニ気脈ヲ通シ、到底一地方ノ申合セノミニテハ充分ノ取締ヲ為シ難キモノアレハ此項ハ目下ノ急務ナリト信ス、故ニ速ニ制定アラン事ヲ希望ス、又タ師弟間ニモ同シク弊害アリ従来商工仲間規約ナルモノアリテ甲乙互ニ協議ヲ遂ルニ非ラサレハ去就ヲ許ササル旧法ナレトモ尚不充分ナリ、如何トナレハ少シク職ヲ覚ユレハ勝手ニ他ニ転シテ給金ヲ得ントスルモノアリテ師ハ常ニ無駄骨ヲ折ルカ如キ形トナリ、其養成ノ効ナケレハ遂ニ師モ教授ニ充分ノ力ヲ入ルヽ事ナク亦学フモノモ少シク其道ヲ知レハ直ニ他ニ転スルノ念アレハ年季ヲ費シテ之レヲ学フモノ少ナク故ニ精巧ノ職工ヲ得ルニ難シ、是レ甚タ患フヘキ所ナレハ各地方ノ情況ニ因リ其習慣ヲ取捨斟酌シテ速ニ御制定アラン事ヲ望ム
二月一日午前九時二十分開会
会頭 ○富田冬三刻限ノ事ニ付会員ノ意見ヲ問フ、多数ニヨリ明日ヨリ十二時ニ始メ午后五時三十分迄テト決ス
十七番(山梨県)我県下ノ重モナル工業即チ生糸・絹織物等ヲ製出スル所ノ景況ヲ見聞スルニ、傭主被傭者ノ関係ニ付テハ取締法ノ制定ハ最モ必要ナリト思惟ス、而シテ傭主ニ於テハ惨酷ノ使役・給料ノ
 - 第18巻 p.125 -ページ画像 
不渡等ハ甚タ稀ニシテ其咎ムヘキノ点ハ重モニ被傭者ノ一方ニ在ルモノヽ如シ、例ヘハ製糸工女ノ如キ初メ凡六ケ月許ハ其技術ノ拙劣ナルカ故ニ無賃ヲ以テ使役スルモ尚ホ傭主ノ損失鮮少ナラサレトモ後来成業熟練ノ日ニ於テ永ク雇用セントスルノ念慮アルカ故ニ最初ヨリ多少ノ給料ヲ与ヘテ之ヲ寛待ス、然ルニ其工女ハ大成ヲ異日ニ期スル事ヲ慮ラスシテ少ク技術ヲ覚トリ、辛フシテ衣食ヲ弁シ得ル程ノ給額ニ達スルトキハ忽チ過分ノ増給ヲ望ミ、若シ傭主ニ於テ之ヲ肯セサルトキハ最初ノ恩待ヲ忘レテ疾ヲ辞柄トシ、或ヒハ密カニ他ノ工場ト連絡ヲ通シ数人共謀シテ傭主ノ差支ヲ生セシムル等其放恣ノ悪弊実ニ言語同断ナリ、此故ニ直接ニハ傭主ニ損失ヲ与ヘ間接ニハ工業進歩ノ大障碍ヲ為ス事夥シキヲ以テ速ニ適当ノ規則制定アラン事ヲ希望ス、又タ師弟間ノ関係モ粗右ニ同ク、大工・左官・建具・足袋職等ノ如キハ就師ノ年限大約三ケ年乃至六年位ナリ、然ルニ例ヘハ六年ノ就師年限トスレハ其内最初ノ二年ハ師ニ仰クハ食事ノミニ止マリ、衣服小遣ノ如キハ概ムネ自弁ナリ、次ノ二ケ年ハ衣服小遣ノ中一ハ自弁ニシテ一ハ師ヨリ給与ス、此二期間ニ於テ稍職業ノ一端ヲ覚ユルカ故ニ最后ノ二ケ年ハ衣服小遣共師ヨリ支給スルヲ常トス、然レトモ其技術ノ難易及ヒ性質ノ才愚ニ応シ多少ノ差違アル事勿論ナリ、斯ク旧慣ハ定マリアレトモ風俗ノ菲薄ニ赴クニ随ヒ此等ノ習法ヲ甘諾履行シテ其卒業ニ至ルヲ待ツモノ少ナク、僅カニ学ヒ得ル所アレハ半途其師ヲ離レ忽チ去テ小成ニ安ンスルノ情況ナリ、唯其弊害ノアル所ヲ以テ前ノ傭主被傭者間ノ事ニ比スレハ頗ル軽微ナルニ似タレトモ、此二者ハ相待テ併ヒ行ハレ其効用ノ全キヲ見ルモノト思惟スルカ故ニ、此師弟間ヲ取締ルヘキ適宜ノ制法モ亦併セテ設ケラレン事ヲ望ム
十五番(愛知県)県下ニモ往々苦情ヲ生スル事アリ、第一鋳物職ニハ最モ多キ故ニ別段厳重ノ慣例モアリシカ、近来ハ自然其法モ破レタリ、鋳物師ハ子供ノ中ヨリ教込ムニアラサレハ其業ヲ得ル事能ハサル迚少年ノ時ヨリ仕込メトモ僅カニ其業ヲ覚ユレハ、元来類ノ少ナキ業ナルヲ以テ他ニ傭ハルヽトキハ相応ノ善キ賃銭ヲ得ルカ故ニ忽チ脱シ去ルノ弊アリ、又傭主互ニ其職工ヲ窃ムノ風アルニ因リ三州尾州其他ニ三ケ国丈ケハ同業集会シテ追々申合ノ上取締法ヲ結ヒ、稍行ハレントスルノ形情ナレハ今日ハ格別ノ事モナケレトモ、中ニハ未タ一両名加入セサル者モアリ、且ツ私約ノ事故何分十分ナラス機織モ稍同シキ弊起リテ少シク業ヲ覚ユルトキハ種々ニ手段ヲ回ラシテ他ヘ転シ傭主モ亦互ニ取リ合ノ勢ヒアリテ是レカ為メ苦情ヲ訴ヘシ事モアリシカ、現今ハ織物モ不景気ニテ職工ニ余リアル程故格別ノ事ハナケレトモ一時ハ実ニ困メリ、是等ニハ是非共一定ノ取締法アラン事ヲ要ス、師弟間モ同様ニテ殊ニ大工ノ如キハ他県下ニ比スレハ其人員モ多ク知多郡中ニテハ一村挙テ大工ヲ職トスルカ如キ所モアリ、然ルニ師弟間ノ風俗モ追々破レントスルヲ以テ昨年中県下ノ大工不残協議シテ規約ヲ設ケ、試験ノ等級ニ応シテ鑑札ヲ与ヘ賃銭ヲ定ムル等ノ事ヲ設ケタレトモ、猶十分ナリトハ為シ難シ、又童工女工使役制限ノ事ハ随分困難ナル者ニテ学務委員等ヨリ夫々心
 - 第18巻 p.126 -ページ画像 
配スル由ナレトモ、貧民ハ生活ニ逐ハレ不得已僅カノ賃銭ニテモ得セシメテ家計ノ助ケト為サントスル者モ少ナカラス、現ニ機場ノ管巻等ニハ多ク幼女ヲ使用スルノ風アリ、是等ノ事ハ尤モ深ク注意セラレテ完全ノ取締法方ヲ設ラレン事ヲ望ム
四十四番(鹿児島県)我県下今日微々タル工業上ニ於テハ各員ノ縷々陳述スルカ如キ曾テ悪弊ノ甚タシキ者ナシト雖トモ、其事業ノ稍大ナル水産業ニ至ツテハ傭主被傭者間ニ一大弊害ヲ生セシ事モアリテ自然是等ノ弊害ノ早晩他ノ工業上及師弟間ニ波及スヘキヤノ憂慮ヲ抱ク者アルノ場合ニ至リタレハ、本員ニ於テモ此取締規則ノ速ニ制定アラン事ヲ望ム
二十五番(秋田県)工業上傭主被傭者ニ著シキ弊害若クハ苦情等ヲ発シタルカ如キモノハ我県内ニ於テ未タ見聞シタル事ナシ、然リト雖トモ道路或ハ建築等ノ如キ半年若クハ一ケ年間ノ工事ニ被傭中賃銭ノ多寡等ニヨリ期限中ト雖トモ、遂ニ甲ノ約束ヲ破リ乙ノ工事ニ転シ甲ヲシテ大ニ困難ヲ生セシムル事往々尠カラス、然リト雖トモ此ノ如キハ未タ甚シキ弊害ト云フニ足ラサルモノナリ、其他百般ノ状況ハ各郡其趣キヲ異ニスト雖トモ、要スルニ明治十四年十月乙第百四十八号ヲ以テ工務局ヨリノ照会ニ対シ、同十五年四月五日付ヲ以テ差出シタル情況ト敢テ異ナル事ナキヲ以テ今之レヲ喋々スルヲ要セス、然レトモ此取締法ヲ設クルハ最必要ト認ムルカ故ニ是カ制定アラン事ヲ希望ス、師弟間ニ至リテモ亦敢テ著シキ弊害若クハ苦情等アルヲ聞カス、然リト雖トモ方今ノ形勢ヲ察スルニ道徳地ヲ払フニ至リシカ故ニ師弟間ノ義務従テ消滅シ、仮令期限中ト雖トモ少シク其業ヲ得レハ忽チ去テ他ニ至リ幾分ノ賃銭ヲ得ン事ヲ謀ルノ念アルヲ以テ自ラ其業ノ成熟ヲ勉メス、其レ此ノ如クナレハ将来遂ニ良工ヲ出ス能ハサルニ至ルヲ恐ル、此ヲ以テ是カ取締法ノ制定モ亦最モ必要ナリト考フ
五番(兵庫県)製糸・織物・マツチ等ノ職工ニハ少シク其業ニ熟スレハ他ニ転スルノ風アリテ往々傭主ヲ苦シマシムルノ弊アリ、又師弟間ニモ技術ノ一端ヲ学ヒ得テ忽チ独立ヲ企テントスルノ弊アリ、姫路ノ革細工、明石ノ刻烟草ノ如キ、是等ノ業ハ是モ精巧ヲ要スル事ナルニ往々此拙工ニ乱サルヽヲ以テ終ニ其声価ヲ墜セリ、二十九番ノ如キ是等ハ本邦ニ要用ナラスト陳ヘラレタレトモ、本員ハ最モ必要ナリト信ス、願クハ速ニ制定アラン事ヲ望ム
四番(神奈川県)五番ト同感、八王子地方ノ製糸・織物ニ於ケル傭主被傭者ノ間往々苦情アリ、是レ畢竟取締法ノアラサルカ為メニシテ規約アラハ双方ノ便宜ナルヘシト信ス、又童工ノ為メニハ十分教育ノ時間ヲ設ケサル可カラス
三十番(島根県)本県下ノ工業ハ大概一人一個ノ指頭ニ成ルモノナルヲ以テ敢テ価主被傭者間《(傭)》ニ取締法ヲ設クルノ必用ヲ見サルモ鉱山銅山ニ役スル工夫ニ至リテハ大ニ取締法ヲ望ムモノアリ、尤銅鉄業ノ事ハ坑法ノ支配ニ属スヘキモノナルヘシト雖モ、同法中目下是等ノ項目ナキヲ以テ暫ク普通ノ工業ト見做シテ聊カ鄙見ヲ述ヘントス、元来雲石両国ハ銅鉄ニ富ムヲ以テ此業ニ属スル坑夫則チ被傭者ノ数
 - 第18巻 p.127 -ページ画像 
無慮三万二千六百人、且其者等ハ昔時ニ在リテハ概ネ皆無籍無頼ノ徒ナレハ動モスレハ徒党シテ傭主ニ迫リ、或ハ給料ヲ前借シテ其義務ヲ了ヘス半途脱走シテ再ヒ他ニ雇ハルヽ等ノ事アルモ、元来条理ヲ弁セサル破廉恥者流ナレハ法ヲ以テ制スルヨリ外又如何トモスル能ハス、又師弟間ノ取締ニ至テハ大工左官等ノ如キハ一二ノ弟子ヲ養フ迄ナレハ未タ甚シキ弊害アルヲ聞カスト雖、凡ソ世ノ進ムニ随ヒ人事ノ繁忙ニ渉ルハ勢ヒ免レサル所ニシテ師弟間ニ於ケル取締法ノ如キモ広ク全国ノ上ヨリ見ルトキハ亦今日ニ必用ナラン
二十五番(秋田県)鉱山ノ事ニ付テハ秋田ニモ言フ可カラサル弊アリ表面ハ其金主ガ坑夫ヲ傭フ事ニ相違ナケレトモ従来坑夫ノ支配ハ其山ノ金工《(カナグ)》ニアルカ故、兎角傭主ノ令ハ行ハレスシテ終ニ坑夫ノ悪習ヲ改ムルコト能ハス、止ムヲ得スシテ目下旧慣ニ因ルモノ多シ
十六番(静岡県)四番・五番・十五番ノ有様ニ異ナラス、加フルニ静岡ノ漆器・竹細工職ハ別ニ工場アリテ職工ヲ使役スルニハアラス、職工銘々ニ皆家ニ在リナカラ其業ヲ執ルモノナレハ所謂下タ職ノ姿ナリ、例ヘハ十人ハ常ニ甲ニ傭ハレ弐十人ハ常ニ乙ニ傭ハルヽ者ナリトセンニ、甲乙同一ノ注文ヲ受ケテ其注文品ノ捌ケ方宜シキ時ニ当リテハ互ニ荷嵩ノ上ラン事ヲ貪リテ、甲ハ乙ヨリ賃銭ヲ加ヘ乙ハ甲ノ職工ヲ誘致セント企テ互ニ相妨ケテ顧ス、是等ノ如キハ確乎タル規約ノ取締法アルニアラサレハ制スル事能ハサルナリ
二十三番(岩手県)未タ本題ニ付キ甚シキ弊害ヲ見スト雖トモ、県下ニ有名ナル南部鉄瓶ノ如キ近来東京ヨリ来ルノ客頻ニ之ヲ注文スルモノアルモ、中ニハ粗製ノモノアリ又ハ約束ノ規限《(期)》ヲ誤ルノ弊アリ其原由ヲ聞クニ往々傭人ノ脱走又ハ他ニ転傭スル等ノ弊アルニヨルト、是等ハ取締法ノ制定アラン事ヲ望ムノ一ニシテ、師弟間ニモ亦弊アル事少ナカラス
 二十番(長野県)渾テ工業上傭主被傭者間ノ取締法ハ尤忽諸ニ付ヘカラサルハ論ヲ俟タサレトモ、就中本県ノ如キ差向取締ヲ要セサル可カラサルモノアリ、乃チ製糸ニ使役スル工女是レナリ、其工女ヲ養成スルハ随分骨折ノモノニテ之ヲ教ユルニ大概半ケ年間ノ日子ヲ費スナリ、然ルニ少シク之ヲ学ヒ得テ稍々用ヲ為スニ至レハ忽チ他ニ誘致セラルヽノミナラス、少シク傭主ニ不都合アレハ工女等申合テ工場ヲ去ントスルノ弊アリ、是レ完全ナル取締方ノナキニ由リテ然リ、師弟ノ間ハ格別ニ取締法ノ必用ナル事ヲ見スト雖トモ早晩之ヲ要スルニ至ルヘシト信ズ
十番(群馬県)傭主ノ苛酷ナルニ随ヒ被傭者モ亦之レヲ潜クルノ道ヲ求メリ、第一ハ年期傭ナリ、是レハ大概三年ヨリ五年位ノ極メニテ多クハ越後地方ヨリ傭ヒ来レリ(五年三拾円位ニテ)衣食共ニ皆傭主ノ給スル所ナリ、第二ハ一ケ年傭ナリ、是ハ一ケ年六七拾円ノ相場ニテ製糸・織物ニ多シ、第三ハ一季傭ナリ、是ハ養蚕ノ季節中若干日ト云ヘルカ如キモノニテ凡ソ養蚕ニハ二万人製糸ニハ壱万人以上モ他管下ヨリ入リ来レリ
 製糸工場ハ自カラ時間モ限リアリテ給金モ大概同一ナレトモ提糸造リニハ曾テ時間ノ定メモナク、工女少ナキハ五六人多キモ三十人ニ
 - 第18巻 p.128 -ページ画像 
過キサルカ故、朝ハ未明ヨリ暮ハ手許ノ見ユル迄之ヲ虐使シ而シテ又夜半迄揚返ヲ為サシムルアリ、実ニ牛馬ヲ駆使スルト一般ニテ他ヨリ見ルニ忍ヒサル有様ナルモ被傭者ハ之ヲ何共思ハサルカ如シ
 其年期傭ニ在リテハ、昨年来ノ如キ不景気ニ際スルトキハ工女ニ薪ヲ割ラシメ畑ヲ耕サシムルモノアリ、傭主ノ虐使如此ナルヲ以テ工女等ニ於テモ(桐生)昼間傭主ヨリ授ケラレタル糸ノ幾分ヲ隠シ置キ夜間臥床ノ中ニ於テ繰返シ窃カニ奸商ノ手ニ売却スルモノアリ、追々仲間組合ノ法立ツニ従ヒ此等ノ弊ハ稍ヤ薄ラキタルモ取締法ノ制定ハ最モ必要ナリト信スルナリ、又製糸工女ノ如キハ群馬県下トサヘ称スレハ他ノ未開ノ地ニアリテハ大ニ用ヒラルヽ事アルヲ以テ少シク得ル所アレハ忽チ他ノ地ニ赴キ去ルノ風アリテ、独リ県下ノ傭主ニ損害ヲ与フルノミナラス他ノ傭主ヲシテ不相当ノ給金ヲ払ハシムルノ弊アリ、製糸・織物ニ於テハ幸ニ他ヨリ入リ来ル者ノ為メニ欺カルヽニ至ラスト雖トモ、或ハ「マツチ」ヲ造ルトカ或ハ松根油ヲ製スルトカ云フ者ノ入来ルアリテ為メニ往々誘ハレ多分ノ損失ヲ蒙ル者少シトセス、取締法ノ制定セラルヽニ於テハ製糸ナレハ群馬県ニテ保証ヲナシ、他ノ工事ニハ其得意ノ地方ニテ之ヲ保証スル様ニ為シタキモノト思フナリ
二十七番(石川県)陶器・漆器・織物ヲ以テ県下ノ三大業トス、是レ等ノ業ニ於テハ概シテ取締法ノ制定ヲ望ム方ナリ、而シテ之ヲ望ムハ傭主及師ノ方ニテ最モ切ナリトス、何トナレハ被傭者若クハ弟子ニ於テハ其利害実ニ一身ニ止レトモ傭主ト師トニ於テハ其業体ニ大ナル関係ヲ有スレハナリ、製糸工女ノ徒党シテ傭主ヲ苦マシムルカ如キハ他ノ地方ト同一ナリ、又世ノ俄カニ変リタルニ就テハ往々工業者モ失敗ヲ蒙タル者少ナカラス、是等ノ為メニハ被傭者若シクハ弟子ヲシテ方向ニ迷ハシメタルモ亦タ多シ、要スルニ工業盛ナルトキハ傭主ト師トニ害多ク工業閑ナルトキハ被傭者ト弟子ニ害多シ、故ニ取締法ハ畢竟双方ヲ保護スルノ具トナルヤ知ル可キナリ
二十六番(山形県)傭主被傭者間ハ未タ格別ノ害アルヲ見サレトモ師弟ノ間ニハ往々弊害ノ顕ハルヽアリ、例ヘハ師ハ弟子ヲ束縛シテ凡一ケ年ニテ得ラルヘキ業ヲモ三ケ年ニアラサレハ伝ヘサルカ如キ事アルカ故ニ、弟子モ亦之ニ堪ヘス、或ハ半途ニシテ去ルニ至レリ、追々此弊ヲ蔓延スルニ及ンテハ工業上ノ進歩ヲ妨クルモ亦大ナルヘシト信ス、願クハ速ニ取締法ノ制定アラン事ヲ要ス
二十八番(富山県)二十七番ト大略同一ナレトモ猶一ツノ病アルカ如シ、思フニ世上ノ商況盛ンナルトキハ傭主ト師トカ互ニ其被傭者弟子ヲ窃ミ而シテ世上ノ不景況ナル時ニ被傭者弟子ヲ閑散ナラシムルモ亦傭主ト師トニ在リ、之レヲ除クノ法アリテ始メテ完全ナル取締法ト称スル事ヲ得ヘシト雖トモ、泰西諸国ニハ此場合ニ於テ如何ニスルカ願クハ主務員ノ説明ヲ請ハン
七番(新潟県)事実ニ就キ弊害ノ最著シキ者ヲ挙ケテ之ヲ述レハ本県モ亦二十番陳述ノ如ク即製糸工女ノ弊害最大ナリト云ハサルヲ得ス今其一例ヲ挙ンニ五泉ノ製糸場ハ県下著大ノ工場ニシテ地方人民カ未タ器械製糸ノ何者タルヲ知ラサルニ先チテ巨多ノ労費ヲ以テ之レ
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ヲ設立シ、八十余名ノ工女ヲ使役シテ明治七年ヨリ営業セルモノナルカ、地方ノ製糸家ハ其品位ノ美ナルヲ見テ之レニ做ハント欲スレトモ亦其器械ト工女トヲ得ルノ力足ラサルヨリ窃ニ之ヲ妬ミ、其近傍二三ノ製糸家互ニ申合セテ之レカ工女ヲ窃ミ去リ終ニ此ノ率先者ヲ苦シメタル事アリシ、是等ハ取締法ノ完全ナルモノナキカ為メナリト信ス、織物ニハ村松縞・小須戸縞(木織織物)亀田木綿等ノ織子ノ数七八千人ニ及ヘルヲ以テ往々其ノ賃銭ノ多キヲ羨望シ奸策ヲ回ラシ甲乙ニ転遷シ常ニ傭主ヲ苦シマシムルアリ、又師弟間ノ事ハ県下ヨリ年々他ノ地方(北海道及東京)ニ出稼スル大工及労役者ハ無慮三万人、然ルニ北海道ニハ職工ノ乏シキカ為メニ少シク其道ヲ識ル者アレハ莫大ノ賃銭ヲ得ヘキモノナリトノ流説ヲ偏信シ、其師ノ許シヲモ待タス窃ニ脱出シテ妄リニ彼ノ地ニ赴ケトモ拙工何ソ高給ヲ得ラルヘキ、終ニハ其初メ携帯セル所ノ衣服迄ヲモ失フニ至リテ帰リ来ル者多シ、又鍛冶ノ如キ(土地ニ要スル所ノ製作ハ僅々タレトモ他ニ出ツル者多シ)大概七年間位ノ年期ナルニ其久シキニ耐ヘスシテ、四五年モ従事スレハ皆其家ニ帰リテ独立ヲ図ラントスルカ故ニ竟ニハ師弟共ニ苦シムニ至レリ、是等ニ対シテハ速ニ完全ノ取締法アラン事ヲ切望ニ堪ヘサルナリ
二十二番(宮城県)本県ハ工業至テ少ナケレトモ、先ツ一二ニ就テ言フトキハ雄勝ノ石盤ノ如キ一ケ年百万枚以上ノ産額アルモノナレトモ、規約ノ十分ナラサルカ故ニ職工ノ転遷甚シクシテ為メニ産額モ意ノ如クナル能ハス、師弟間ニモ成法ナキヨリ往々甚シキ不都合ヲ生スル事アリ、又仙台区製造場抔ノ実況ヲ視ルニ少シク其業ヲ覚ユレハ去テ他ニ逝ク弟子モ儘多シ、故ニ取締法ノ制定ハ飽迄モ之レヲ希望ス
二十四番(青森県)各員ト同シク最モ制定アラン事ヲ望ム、亦本県下ニ於テ首ナル工業ハ津軽ノ漆器ノミナレトモ所謂津軽ノ馬鹿塗ト称セラルヽ位ニテ下地ヨリ全ク漆ノミニテ塗リ堅ムルヲ得意トセリ、然ルニ近来ハ飯粒等ヲ以テ下地ヲ作リ之レニ擬スルモノアリ、是等ノ点ニハ第一項第二項ノ取締法制定アラン事ヲ望ム
三十一番(鳥取県)取締法ノ制定セラルヽニ於テハ傭主ハ定メテ満足スル事ナラント考フ、師弟間ノ約束ハ従来自カラ存スルカ故ニ更ニ設クルニ於テハ却テ其弊ヲ招クノ恐アラン
三十五番(和歌山県)第二項ノ取締法ハ目下最モ必要ナリ、実際上ノ困難ニ付其一例ヲ挙レハ靴製造職工ト傭主トノ間ノ取締法ニハ尤モ苦シメリ、三四年前傭主被傭者間ニ契約ヲ結ハシメタリシモ何分実行ヲ得サリシ、何トナレハ職工ナル者ハ多ク薄資無識ノ徒ナルヲ以テ契約ノ重スヘキヲ知ラス、義理ヲモ顧ミス志ヲ得サルトキハ忽チ転シテ大坂ニ去レリ、蓋シ彼ノ輩ハ互ニ連絡ヲ通スル者ノ如クニシテ其職工ノ取戻ヲ大坂ノ工場ニ掛合テモ曾テ之ヲ戻セシ事ナシ、一般ノ職工皆ナ然リト云フモ可ナリ、故ニ傭主ニ於テハ只管恩ヲ以テ之レヲ懐クル事ヲ主トシ、凡ソ一ケ年位ノ給金ヲ前ヨリ貸与スルノ習慣ナリシカ前借ノ義務ヲ了セスシテ猶他ニ脱出スルモノアルヨリ或ハ一年半若シクハ二ケ年ノ給金ヲ前借セシムルニ及ヒシヲ以テ、
 - 第18巻 p.130 -ページ画像 
終ニ其前借ノ多少ニ拠リ去就ヲ定ムル者アルニ至レリ、又大工・建具職等、師弟ノ間ニ於テ従来ノ年期卒業ノ不文律ハ維新後全ク敗レタリ、是レ迄ハ約束ノ年期ヲ終リタル后礼奉公ト称シテ一年位ハ猶其師家ニ在リテ働クヲ通例トナセシカバ自ラ良工モ多カリシカ、今日ハ大工ノ如キ僅カニ敷居鴨居ヲ入ルヽヲ学ヒ得ハ則チ逃脱ヲ企ツルノ有様ナルカ故ニ、若此儘放過スルトキハ稍杞憂ニ似タレトモ恐ラクハ后来大建築ニ耐ユヘキ良工ヲ得ルノ難キニ至ン乎、速ニ問題ノ如キ取締法ノ発令ヲ望ム
十四番(三重県)被傭者ニハ年期傭・臨時傭ノ二様アリテ年期傭ハ何レモ約束アルニ相違ナケレトモ、要スルニ取締法ノ制定ナキニヨリ亦弊無キニアラザルヘシ、臨時傭ハ不景気ノ時不都合少シト雖、工業ノ盛ナルトキニハ被傭者ノ為メニ損害ヲ蒙ルノ憂ヒアリ、師弟間モ民情日々浮薄ニ赴クノ今日ニ於テハ取締法ノ制定ハ必要ナルヘシト信ス
一番(東京府)明治八年ノ頃ヨリ仲間組合ノ規約ヲ申出ツル者アリテ其主義ハ凡ソ傭主被傭者間ノ取締ニアリ、十三年十一月中組合ノ公認ヲ要スル者ハ願出ツヘシト令シタリシカハ出願ニ及フ者続々トシテ絶ヘス、以テ人民カ之ヲ希望スルノ点ヲ証スヘシ、又第一項ノ事ニ就テハ昨日ハ遂ニ間《(問)》ヲ得サリシカ為メ何事モ陳セサリシカトモ要スルニ之レヲ望ムノ点ニ於テハ各員ト同感ナリ
四十三番(宮崎県)我管内ニ於テ傭主被傭者ノ間ニ苦情アルハ常ニ聞ク所ナレハ其取締ハ必要ナリ、然レトモ師弟間ノ取締ハ敢テ要用ナラスト思考ス、抑モ傭主被傭者間ノ取締ヲ必要トスルモノハ其大ナルモノヲ挙クレハ木材ヲ伐出ス所ノ山子、薪炭ヲ製スル所ノ山子、椎茸及ヒ樟脳ヲ製スル所ノ山子、其他製茶製糸等ニ数多ノ人夫ヲ傭役スレハナリ、就中此ノ山子ト称スルモノハ諸方ノアフレ者ニテ傭主其人ニアラサレハ容易ニ其約ヲ完フセシムル事能ハサルナリ、故ニ実際ニ就キ逐一調査ヲ遂クルニ於テハ種々ノ弊害アルナルヘシ、之レヲ以テ傭主ノ取締法ノ制定ヲ望ムハ勿論本員モ亦希望スル所ナリ師弟間ノ取締ヲ要セサルモノハ大工等ノ如キ些々タルモノナレハナリ、併シ此亦精密ニ調査セハ其間ニ弊害アリテ為メニ取締法ヲ望ム者アルヤモ難計、又将来ニ於テハ必ス之ヲ要ス可シ、只目今ニ在リテハ之ヲ望ムノ形勢ナシ
六番(長崎県)各員ノ述フル所ハ被傭者弟子ノ弊ノミ多ケレトモ独リ被傭者弟子ノミニ止ラス、工業者ニ於テモ或ハ資金ノ乏シクシテ妄リニ多人数ヲ傭ヒ或ハ之レヲ苦役虐使スルノ点モアラン、今日ノ現況ニテハ傭主ノ方ニ権力ノ偏重アル風習ナレハ、俄カニ此ノ風ヲ変スルノ難キヲ看ルヘシト雖モ、希クハ双方平権ノ法ヲ設ケラレン事ヲ望ム、又師弟ノ間ニ於テモ人ノ師タル資格ヲモ具備セスシテ唯己レカ業務ノ手伝ヲ為サシムルカ為メ弟子ヲ取ルノ風アリ、是等ハ後進ノ子弟ヲ誤ルモノナレハ、最モ厳密ニ取締法ヲ設ケサレハ他日工業ノ進歩ニ妨ケアルヘシト信ス
三十九番(福岡県)本県ノ概況ヲ陳述センニ博多織・陶器・木綿織等ノ如キ工業者ハ多ク人ヲ傭ヒ入ルヽ部分ナリ、其他普通ノ大工左官
 - 第18巻 p.131 -ページ画像 
ノ如キ者モ是マテ大小ヲ論セス夫々契約アリシカトモ証書ヲ取換ハスハ稀レニシテ就レモ口頭ノ契約ニ止ルノミ、去リナカラ質朴ノ風アル故ニ是マテハ格別ノ差支ヲ生セサリシモ、近年ニ至リテハ各員モ述フル如ク大ニ弊害ヲ生シ困難ノ有様ナリ、然レトモ只相対ノ私約ヲ守ラサルノミニテ法律ニ触レタルニモアラサルカ故ニ此事ヨリシテ出訴ニ及ヘル者ハ未タアラサルナリ、中ニハ部落ニヨリ大工左官等ノ申合ヲ為シタルハアレトモ裁制力ナケレハ到底行ハレ難シ、本県ノ如キハ大工場モナク人民モ質朴ナレハ幸ニシテ格別ノ差支ヲ生セサリシカトモ、一般ノ為メニ取締法ヲ設ケラルヽハ必要ナルヘシ、故ニ政府ハ辺鄙ニモ差支サル様余リ厳ナラサル制法ヲ定メラレン事ヲ要ス、凡ソ法律ノ施行ハ民間弊風ノ起ラサル前ニ於テ施行スヘキ者ニアラスト思フ、就テハ取締法ノ制定ニ際シ都鄙ノ斟酌ヲ希望ス
八番(函館県)他日ノ利益ニハ制定ノ方必要ト認ム、県下ハ別段著名ノ工業ハナケレトモ独リ漁業ニ関スル工事即鯡・鮭其他ノ海産物製練ノ類ニシテ春ノ鯡漁、夏ノ昆布取リニハ青森岩手ヨリ数万人ヲ傭ヒ来リ従事スル等大ニ他ニ反スルノ風アリ、此ノ傭入レニ際シ傭人受宿ノ手ヲ経レハ他日ノ不都合モ少ナケレトモ、此手ヲ経ルトキハ多少ノ手数料ヲ要セラルヽカ故ニ之レヲ惜ムノ故ナルカ、或ハ信用ノ薄キカ故カ又ハ其数ノ少ナキ故カ、傭主自ラ青森其他ノ地方ニ至リテ直接ニ之レヲ傭ヒ連レ来リテハ終ニ逃亡ノ患ニ罹レリ、先ツ他県下ヨリ傭入テ函館ニ至ルマテハ不都合ナケレトモ、夫ヨリ百人乃至四十人ヲ傭主或ハ代人壱人ニテ督シ陸路ヲ率ヒテ漁場ニ赴カントスルノ途中ニ於テ被傭者等ハ互ニ申合セ故ラニ喧嘩等ヲ為シ事ニ托シテ逃走セリ、是レ己レカ前借即チ給料ノ半額ヲ掠取センカ為メナリ、此ノ如クニシテ尚ホ我郷里ニハ帰ラス又他ノ場所ニ至リ先キノ猾手段ヲ行フ事比々皆然リ、然レトモ今ニ受宿ノ手ヲ経テ傭入ルヽ者少ナケレハ其弊害ハ容易ニ止ミ難シ、又漁用建網ノ如キハ二三十人ニアラサレハ使用為シ難キモノ故十人不足スレハ忽チ網ヲ下スヲ得ス、此ノ場合ニ於テハ十人ノ給料半額ツヽノ損ハ左程ナラサレトモ其網ヲ使用スル事ヲ得サルノ損ハ実ニ巨額ナルヲ以テ傭主ニ於テモ止ヲ得ス他ヨリ逃亡シ来レルモノト知リナカラ之レヲ傭使セリ、是レ畢竟充分ナル取締法ナキニ因テ然リ、就テハ各地ノ情況ヲ酙酌《(斟)》ノ上是等ノ取締モ行届ク様制定アラン事ヲ望ム
三十六番(徳島県)速カニ御制定ヲ望ム、第一項ト連帯シテ行ハルヽモノト信ス、県下工業者実況ハ各員ノ陳述ニ異ナラス、先年御照会ニ応シ表式ニ傚ヒ夫々調書ヲ差出シ置ケハ其状況ハ別段陳述セス
十二番(茨城県)県下ニハ著シキ大工業モ無ケレハ弊害モ亦少ナケレトモ無シトハ断言シ難シ、到底事業ニハ大小アリトモ其情ハ同一ナレハ将来ハ必ス取締法ヲ要スヘキモノト考フ、尤モ政府ニテハ大綱ヲ制定シ其細目ニ至リテハ地方ニ任スル方可ナラン
四十二番(熊本県)弊害ハ各員ノ陳ル所ニ大同小異ノミ、県下ニ多ク人ヲ集ムル大工場ハ無ケレトモ大工左官ニハ往々弊害アリト聞ク、本県ニハ鎮台アリテ時々建築ノ受負仕事アリ、其日数ハ百日又ハ六
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十日ト厳重ノ約束アルモノ故ニ受負人ハ其日数ニ応シ夫々職工ヲ用意セリ、然ルニ職工ハ賃銀ヲ増サシメンカ為メ半途ニシテ病気ト称シ、或ハ其他ノ事故ニ託シ数人共謀シテ受負人ニ日限仕事ノ間ヲ欠カシムル等ノ事ヨリ終ニ受負人ハ違約ノ罰金ヲ徴収セラレ、夫レカ為メニ往々破産スルモノアリ、亦傭主ニモ非理アリテ受負ノ際他ヨリ低価ニ引受ケ着手ノ後チ仏《(払)》ヒニ差支テ賃銭ヲ下ケ渡サス、或ハ脱走シテ被傭者ニ数十日ノ労ヲ徒ラニセシムル等屡々耳ニ触ルヽ所ナリ、此ノ如キハ畢竟確乎タル取締法ナキヨリ起ルノ弊ニシテ受負普請流行ノ折柄ナレハ是レ等取締アラサレハ不可ナルヘシト信ス、師弟間取締法ニ於テモ同様ニシテ織物等ハ百人二百人ノ工女ヲ大概三ケ年ヲ目的トシテ傭入レ、年期中ハ師ヨリ食事ヲ与ヘ卒業ノ上ハ機械ヲ与ヘル向モアリ、凡初メ一ケ年半位ハ用ヲ為サスシテ却テ師ノ迷惑トナレトモ、後ノ一年半ニ於テ師モ先キノ費用ヲ取戻スナリ、然ルニ此年間ニ種々ナル故障アリテ或ハ病気ト称シ若クハ帰省シテ戻ラス、又ハ賃金ヲ貪ランカ為メ他ヘ転シ其去就如此、故ニ生徒モ業熟セス工場モ損ヲ為スノ類ニシテ頗苦情アル景況ナレハ、万々希望スルナラン、依テ速ニ取締法ノ御制定ヲ望ム
 四十番(大分県)本県下ノ団扇製造等ニハ大ニ望ム所ナリ、順次各員ノ陳述ノ如ク傭主ノ方ニモ賃銭ヲ払ハサル事アレハ被傭者ノ方ニモ義務ヲ欠ク事アリ、又一ニハ傭主其事ニ暗クシテ妄リニ業ヲ起スカ故ニ往々苦情ヲ惹キ起スト考フ、就テハ本項ハ第一項ト連帯シ速ニ其取締法ノ御制定アラン事ヲ望ム、鉱山ノ事ハ問題外ニ渉ルノ嫌アリト思ヒシカトモ曩ニ某会員ノ陳述モアレハ本員モ鉱山ノ事ニ付御参考ノ為メニ其弊ヲ一言セン、管下二十三ケ村総テ鉱業ノミニ従事セル所アリ、彼等ハ動モスレハ未熱ノ銀主ヲ誘フテ之レヲ瞞着シ銀主憤リテ停業セントスレハ却テ其違約ヲ責ムルノ勢ニテ畢竟約束ノ悪シキヨリ起ル事トハ雖モ実ニ悪ムヘキ風俗ナリ、故ニ近来彼等カ上達セシモノハ裁判所ニ出ルノ一事ノミナリト謂フモノアルニ至レリ
三十七番(高知県)県下ノ紙漉ハ傭人ニテ製造セサルカ故ニ毫モ弊害アルヲ認メス、此他工場ナキヲ以テ別ニ異見ハナケレトモ従来工業ノ未開ニシテ職工ニ乏シキカ故カ傭主カ職工ノ為メニ窘メラレ、或ハ職工カ傭主ニ束縛セラルヽ等ノ事ハ毫モアラサルナリ、此ノ点ハ全ク群馬県下ト反対ナリ、又師弟間ノ取締ニ至リテハ大工左官ノ如キハ自ラ慣行ノ良法アリシカ、今日ニ至リテハ其慣法モ行ハレス大ニ困難ヲ感スルニ至レリ、其困難ト云フハ即チ守ルヘキ所ノモノナキ故ニ職工ノ技ハ拙劣ニナリ、随テ細工モ粗糙ニシテ価高ク却テ他ヨリ輸入品ノ方廉ナルノ有様ナリ、此ノ良工ニ乏シキモ畢竟三十五番会員ノ述ヘシ如ク年季ヲ卒ヘテ尚ホ礼奉公ヲナスカ如キ敦厚ノ風廃セラレシニ因ルナリ、又今日ハ教育令徴兵令等アリテ幾分カ工業ノ進歩ニ害アリト雖トモ不得止義ナレハ御斟酌ノ上然ルヘキ法令ヲ布カレン事ヲ希望ス、尤モ上項下項即チ傭主被傭者間及師弟間ノ取締法共ニ御設ケアリタシ
十八番(滋賀県)細目ニ至リテハ各異同アレトモ其望ム大綱ハ殆ント
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輿論ト考フ、之レヲ実際ニ徴スルニ傭主被傭者間ニ規則アルモノハ西洋形船ニ乗ル海員ノミ、其海員ノ如キハ先ツ浦役場ニ至リ我カ履歴ヲ示シ保証書ヲ得、然ル后被傭者トナル事ニシテ、此ノ事タル極メテ繁ナレトモ其労ヲ厭ハスシテ一般此ノ手続ヲ為スモノハ一ハ以テ栄誉ヲ示シ一ツハ以テ相当ノ給料ヲ得ラルレハナリ、是レニ由テ之レヲ観レハ、被傭者ニ於テモ亦此ノ規則ノ制定ヲ望ムナラント信ス、凡ソ職工ハ先ツ七年ノ期ニテ傭入ルヽモノトスレハ、前三年半ハ不熱ナルモ後三年半ノ熟練ニ依リテ稍工場ノ経済ヲ保ツ位ナルニ被傭者独立スル能ハサル間ハ傭主ニ依ルト雖トモ、稍手術熟スレハ我儘ニ他ニ転移スルノ情態アルヲ以テ到底如此姿ニテハ工業ハ振ハサルヘシト思考ス、凡ソ百人ノ職工アル工場ナレハ内五十人迄ハ大概不熟ノ者ニシテ、跡二十五人ハ一人前ノ職工、二十五人ハ半成ノモノナレハ工場主ハ満場職工ノ労力ヲ平均シテ纔ニ其利ヲ収ムル位ノモノナルニ、今日ノ工場ハ恰モ職工伝習所ノ如キ有様ニテ、職工僅カニ熟スレハ即チ去テ他ニ適ク、其放肆ノ状悪ム可キモ傭主亦之ヲ如何トモスル能ハス、夫レ斯クノ如クナレハ何ニ由テ工業ノ利益ヲ保タン、依テ傭主被傭者間ノ権理義務ヲ整理セラレンカ為メ然ルヘキ規則ノ御制定ヲ望ム
二十九番(福井県)本員ハ聊カ会頭閣下ニ希望スル事アリ、現ニ山林部問題ノ如キ統計ニ属スル者多キモ尚七日ヲ費ヤシタリ、然ルニ今日此ノ如キ貴重ノ問題ニシテ僅々三日ニ省縮セラルヽハ甚タ遺憾ナリト思フナリ、当初閣下ノ御演説ニモ会員総代ノ請求アル故ニ無余議此ノ域ニ至ルノ語アリシト覚ユレトモ本員等ハ総代ヲ撰ヒシ覚モナケレハ所謂総代ナルモノハ純粋ノ総代ニハアラサルヘシ、果シテ然ルニ於テハ時日ノ伸縮ハ今一応会員ノ輿論ニ問ハレタシ
七番(新潟県)二十九番ト同感、会員ノ輿論ニ間ハレタシ
三番(大坂府)二十九番・七番ト同感、願クハ輿論ニ問ハレタシ
会頭 本部会ハ会昌総代ノ請求アリシニ因リテ不得已日数ヲ短縮セシニ、今ニ至リ其総代ハ真ニ総員ノ代理ニ非ストノ論駁アルハ意外ナリ、然レトモ其総代ノ資格名称ノ当否ハ会員相互ノ間ニ存スル事ニテ、此会場ニ於テ論ス可キ限リニ在ラサレハ之ニ関スル発言ハ停止ス可シ
十七番(山梨県)会場ノ景況ヲ見ルニ第二項ニ対スル各員ノ意見ハ最早尽キタルモノヽ如ク推察セラル、依テハ最モ愛惜スル処ノ時間故速ニ第三項ニ移リテ陳述セシメラレン事ヲ希望ス
四十七番(根室県)本県ハ国新シク人口モ少ナキヲ以テ工業ハ少ナケレトモ、八番会員カ述ヘタル如キ漁業者ノ事ニ付テハ本県モ昨年取締法ヲ設ケタリ、未タ其効ヲ見ルニ至ラサレトモ実ニ患フヘキモノハ此ノ取締方ナリ、又某会員ハ鉱山ノ弊ヲ陳ヘタリシカ管下ニ於テモ硫黄山三四ケ所アリ、其産出巨額ニシテ坑夫ハ内地各府県ヨリ来リ従事ス、亦種々ノ困難アリテ矢張逃亡等ノ事アルカ故ニ可然御布令ヲ望ム
十八番(滋賀県)日限ノ事ニ付一二ノ会員ヨリ建議モアリシカ本員モ日ヲ縮ムルヲ望ミシノ一人ナリ、十七号招集ノ御達面ニ付テハ電信
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等ヲ以テ伺ヒシ事モアリシカ、勧業課長ヲ招集スルノ意ニテ山林ノ事ハ地方ニヨリ他課ニ属スル向モアリ云々ト御示シニ付旨趣ハ多ク重立候モノナリト信シ、且ツ御達ニハ日限モアラサリシ故ニ不取敢会同セシニ、各局七日宛ト御内定ノ趣キニ承知セリ、左スレハ四局ニテ二十八日間内日曜日等ヲ除キ去レハ猶若干日ヲ要スヘク、然ルニ地方ニ於テハ法律ニ依リ三月ハ県会ヲ開カサルヲ得ス、其前ニハ本省ノ御達ニ依リ諮問会ヲ開クヘキ事ナレハ、其課長タルモノハ諮問及県会ヘ勧業費ノ議案モ提出ヲ要スルカ故ニ、折角ノ御招集モ山林農務ノ時ノミアリテ他ノ会ヲ措キ帰県スルハ我々カ最モ不本意ナルハ申迄モナケレトモ、御諮問ヲ要セラルヽ各局ニ於テモ同感ナラント推測シテ日ノ省縮ヲ希ヒ居タリ、然ルニ一二会員ヨリ日ヲ縮ムル事ヲ請ヒタル旨ヲ通知アリシ故ニ謝辞ヲ述ヘタル位ナリ、彼ノ総代ト称セシモ全ク希望スル者ニ対シテノ意ニテ此会一般ノ為メニ総代ト称スル程ノ事ニハアラサルヘシ、日ノ縮省ノ如キハ猶会頭ノ御詮議アラン事ヲ望ム
三十三番(広島県)十八番ノ説ノ如シ
十一番(千葉県)県下ノ工業ハ兼業多ケレハ実況ニ就キ別段述フル程ノ事ナケレトモ、一般ノ工業上ニ対シテハ取締規則ヲ設クルハ必要ナリト信ス(大工業アルノ地方ニハ)然レトモ大工左官ノ如キモノ迄モ及ホスハ難カラン、尤モ数百戸同業アルノ部分ニハ可ナルヘシ、又童工ノ事ハ某会員ノ説アレトモ畢竟大工場ヲ見サル人ノ考ニ付、工業ニ衣食セント志ス者ハ矢張早ク其業ニ就カシメ、傍ラ文学ノ教育ヲ加フヲ可トス、然ラサレハ師ノ恩義モ顧ミサルカ故ニ竟ニ放縦ニ流ル、是レ工業ノ整理セサル所以ナリ、又大工場ニハ工場中病室ノ設ケモアリテ職工病気アレハ直ニ病室ニ入レル等ノ運ビモ付キ居リ、其他諸般規則立チテ管理スルモノナリト聞ケリ、元来人民間工業ノ事ニ付テハ規則ナク、且ツ職人ハ多ク貧人ノ子弟ニシテ普通教育ヲモ卒ル能ハサル者ナレハ、壮年ニ至リテモ放蕩無頼其地位最モ下等ニ属セリ、是等ノ撿束法ハ反テ彼等ヲシテ利益ヲ得セシムルモノト信ス
会頭 会員諸君ノ請ニ応シ泰西諸国ノ習慣ヲ演述ナサシメントスルモ其時間ナケレハ明日ノ終ニ於テスヘキ乎、将本日ノ終ニ於テスヘキカ、会員過半数(二十二人)ノ希望ニヨリ明日午前九時ヨリ開演ノ事ニ決ス
会頭 第二項ノ論旨ハ略ホ尽キタレハ是ヨリ第三項ニ移ルヘシ、乃チ書記ヲシテ第三項ヲ朗読シ、主務員ヲシテ本項但書ノ主意ヲ略述セシム
○下略



〔参考〕農商務卿第二回報告 明治一五年 第六三頁 刊(DK180014k-0010)
第18巻 p.134 ページ画像

農商務卿第二回報告 明治一五年  第六三頁 刊
  工務局
    事務大要
○上略 又労役法及ヒ工場条例ヲ集牒シテ之ヲ調査セシメ、既ニ其回答ヲ得ルモノ過半ニ及ベリ○下略
 - 第18巻 p.135 -ページ画像 



〔参考〕農商務卿第三回報告 明治一六年 第八三頁 刊(DK180014k-0011)
第18巻 p.135 ページ画像

農商務卿第三回報告 明治一六年  第八三頁 刊
  工務局
    事務大要
○上略 又職工及工場ノ慣習ヲ調査シ、且参考諸件概ネ備ルヲ以テ已ニ労役法・師弟契約法・工場規則及同業組合条例ノ編纂ニ著手シ ○下略



〔参考〕農商務卿第四回報告 明治一七年 第一三三頁 刊(DK180014k-0012)
第18巻 p.135 ページ画像

農商務卿第四回報告 明治一七年  第一三三頁 刊
  工務局
    事務大要
○上略 而シテ労役法・師弟契約法ハ既ニ昨年編纂ニ着手セシト雖モ、此洗案タル精細各地方ノ慣習ヲ調査セサル可カラサルヲ以テ客歳ハ専ラ其調査ニ従事シ未タ編成ニ至ラス ○下略



〔参考〕農商務省第五回報告 明治一八年 第一八七頁 刊(DK180014k-0013)
第18巻 p.135 ページ画像

農商務省第五回報告 明治一八年  第一八七頁 刊
  工務局
    事務大要
○上略 其他諸規則ニ就テハ労役法・師弟契約法・職工並ニ徒弟条例等、孰レモ其調査ヲ了セリ ○下略



〔参考〕農商務省第六回報告 明治一九年 第二二七―二三四頁 刊(DK180014k-0014)
第18巻 p.135-136 ページ画像

農商務省第六回報告 明治一九年  第二二七―二三四頁 刊
  工務局
    沿革及事務大要
○上略 而テ局務ノ成績ニ係ルモノヲ挙クレハ、二月第三次勧業諮問会ヲ開キ工業上傭主被傭者間並師弟間ノ権理義務ノ規程及傭役ノ制限等ニ関スル事項ヲ諮詢シ、以テ各地方ノ状態慣例ヲ詳ニセリ
○中略
    勧業諮問会
明治十九年二月第三次勧業諮問会ヲ開設シ、工業上傭主被傭者間並師弟間ノ権理義務ノ規定及傭役ノ制限等ニ関スル事項ヲ諮問セリ、其問題ノ要領左ノ如シ
 第一 傭主被傭者間及師弟間ニハ契約書ヲ要セシムヘキヤ
 第二 卒業証書又ハ解傭証書ノ制ヲ設クヘキヤ
 第三 約定期限中解約ノ予告日限ヲ定ムヘキヤ
 第四 約定期限ニ拘ハラス双方直ニ解約スルヲ得ヘキ場合如何
 第五 徒弟ヲ抱入ルヽ者ノ制限如何
 第六 職工又ハ徒弟年齢ノ制限如何
 第七 職工徒弟ノ其傭主授業者ノ職業上ノ秘訣ヲ他ニ漏スコトヲ禁スルノ可否
 第八 約定期限中ニ退去シタル者ノ義務
 第九 約定期限中ノ職工徒弟ヲ退去セシメタル者及情ヲ知テ之ヲ傭入レ抱入レタル者ノ義務
   ○第三次勧業諮問会ニ於ケル傭主被傭者間及ビ師弟間ノ取締ニ関スル諮問記
 - 第18巻 p.136 -ページ画像 
事ハ「第三次勧業会工務部日誌」(明治一九年三月刊・第一―二六八頁)ニ記載セラル。



〔参考〕明治前期 財政経済史料集成 第一八巻・第九二―九三頁 昭和六年八月刊(DK180014k-0015)
第18巻 p.136 ページ画像

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〔参考〕明治前期 財政経済史料集成 第一八巻・第四四二頁 昭和六年八月刊(DK180014k-0016)
第18巻 p.136 ページ画像

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〔参考〕明治前期 財政経済史料集成 第二〇巻・第六九一―六九二頁 昭和八年一一月刊(DK180014k-0017)
第18巻 p.136-138 ページ画像

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