デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.2.19

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
2款 東京商工会
■綱文

第18巻 p.140-179(DK180016k) ページ画像

明治17年5月19日(1884年)

是日栄一、当会会頭トシテ先キニ農商務卿西郷従道ノ諮問セル同業組合規約制定ノ儀ニ就キ、規約制定ヲ希望スル旨ノ復申書並ニ同業組合設立ノ建議書ヲ上呈ス。十一月二十九日同業組合準則公布セラル。


■資料

東京商工会議事要件録 第一号・第七―四七頁 明治一七年二月一〇日刊(DK180016k-0001)
第18巻 p.140-143 ページ画像

東京商工会議事要件録  第一号・第七―四七頁 明治一七年二月一〇日刊
  第一臨時会 明治十七年一月十六日 午後四時四十分開会
    会員出席スル者 ○八十七名
○上略
次ニ会長 ○渋沢栄一ハ是ヨリ農商務卿ヨリ御諮問ノ件ニ就キ討議スベキ旨
 - 第18巻 p.141 -ページ画像 
ヲ告ゲ書記ヲシテ議案ヲ朗読セシム、即チ左ノ如シ
                      東京商工会
別紙問目書ノ件々其会ヘ及諮問候条遂審議報荅可致、此旨相達候事
  明治十六年十二月廿七日
                 農商務卿 西郷従道
    ○第一問目 ○略ス
    ○第二問目 ○略ス
    ○第三問目
一同業者相結ヒテ組合ヲナシ、規約ヲ定メテ以テ各自ノ福利ヲ進メ同業ノ公益ヲ謀ルハ生産上頗ル緊要ノ事タリ、今ヤ各地方漸ク同業組合ノ起ルアリ、然レトモ皆私約ニ成ルヲ以テ往々組合ノ効力ヲ完フスル能ハズ、随テ公益改進ヲ遂クル事ヲ得ザルノ憾アリト聞ク、今府下ノ商工同業組合ニ於テモ亦同憾アリテ其取締規則ノ制定ヲ望ムヤ如何
  但取締規則ノ要領ハ左ノ如シ
   一 組合ノ区域
   一 仲間加盟ノ義務
   一 加盟者ノ資格
   一 組合ノ目的
   一 組合ノ権限
   一 組合ノ事務
   一 仲間取締ノ特権
   一 仲間破約人ノ処分
   一 賦課金ノコト
   一 組合規約ニ掲出スヘキ事項
   一 組合合併及解約ノ時ノ心得方
○中略
八時三十分一同着席、会長ハ更ニ第三問目即チ組合取締法ノ議ヲ開ク旨ヲ告グ
十六番益田克徳曰、質問シテ可ナルヤ
会長曰ク、番外既ニ退席シ詳細ハ荅フルニ由ナケレトモ暫ク推測ノ荅弁ヲ為スベシ
十六番益田克徳曰ク、本案ニ記スル組合トハ例ヘバ大倉組ト云ヘルカ如キ通常ノ組合ナルヤ
会長曰ク、大倉組ト云フガ如ク資産ヲ合シテ商業ヲ営ムモノニ非ザルベシ、本案ノ所謂組合トハ府下ノ問屋組合ノ如キモノヲ謂フナラン、要領中ニ仲間取締ノ特権・賦課金ノ事等アルヲ見テモ明瞭ナルベシ
百四番大倉喜八郎曰ク、聞ク所ニ拠レバ其筋ニ於テハ目下頻リニ協会ノ事ヲ調査セラルヽト云フ、本案組合トハ右ノ協会ヲ指称セシモノカ
会長曰ク、所謂組合ノ意ヲ俗解スレバ彼ノ十組問屋ノ如キ者ナラン
十六番益田克徳曰ク、本案ノ主意ハ既設ノ組合ノ取締法ヲ設クルノ意カ、将タ新タニ取締法ヲ設ケテ凡テ商工業ヲ抱括規正セントスルノ意カ
 - 第18巻 p.142 -ページ画像 
会長曰ク、文意ニ由レバ蓋シ既設ノ組合ノ取締法ヲ設クルノ意ナルガ如シ
七番甲田卯三郎曰ク、本案要領中組合ノ権限、破約ノ処分等ハ如何ナル程度ニ及フベキモノナルカ、若シ之ヲシテ二十年前十組問屋ノ制ノ如ク政府ノ特許ヲ得テ恰モ専売法ノ如クナラシメバ可ナリ、否ラサレバ取締ノ効力ヲ完フシ難カラン
五十九番川原英次郎曰ク、此取締法ハ只府下ノミニ止マラズ汎ク全国ニ施行スルモノナルヤ
会長曰ク、然ルベシ
五十九番川原英次郎曰ク、然ラバ厳ニ此法ヲ設ケン事ヲ欲ス、組合外ニ立テ営業スル者ナカラン事ヲ要ス
六十四番柿沼谷蔵曰ク、本案ノ主意ハ至極可ナリト思考ス、但シ其法余リ密ニ過グル時ハ其害亦少ナカラズトス、宜ク委員ヲ撰ビテ適当ノ良法ヲ立案セシムベシ
二十五番柴崎守三曰ク、此取締法ノ制定ハ本員ノ渇望スル所ナリ、蓋シ維新以来組合ノ法廃絶セシヨリ自由競争ノ風起リ之ガ為メ弊害ヲ蒙ムル者尠シトセズ、現時組合法ノ往時ニ変ラザルモノ只一ノ油問屋アルノミ、其法寔ニ美ナリ、宜ク凡テノ商工業ニモ此法ヲ設クベシ
八十四番浅井幸右衛門曰ク、本員ハ奥川組薪炭問屋ノ一人ナルガ元来本品ノ日用品タル故ヲ以テ往時ハ幕府ニ於テ厳ニ之ガ取締法ヲ設ケタリシモ現時ニ至リテハ其効力漸ク薄弱トナリ、現ニ鉄砲洲八丁堀ニ於テハ全ク組合ナキ程ナリ、斯ノ如キハ法アリテ法ナキニ等シケレバ宜ク厳法ヲ設ケテ以テ組合外ニ立テ営業スル者無カラシメン事ヲ望マザルヲ得ズ
八番大塚藤平曰ク、二十五番ヲ賛成ス、然レトモ此法一トタビ興レバ組合外ニ立テ営業スル者ナキニ至ルハ必然ナリ、何トナレバ農商務省ヨリ厳ニ之ガ実行ヲ勉メラルベケレバナリ、只願ハクバ調査委員ヲ設ケテ之ガ適法ヲ制定セシメン事ヲ
六十番益田孝曰ク、本案ノ文意ヲ案ズルニ蓋シ既設ノ組合ノ取締法ヲ設クルニ止マリテ組合外ニ立ツ者ヲモ包括セントスルノ意ニ非ザルガ如シ、是固ヨリ然ラザルヲ得ズ、今此法ヲ拡充シテ組合ニ加入セザレバ営業スル能ハサルカ如キ法制ヲ設クルノ説ニ数名ノ賛成アリタレトモ、若シ如此クスルトキハ其組合仲間ニ取テハ大ニ利スル処アルベシト雖トモ、組合外ノ者ヨリ見レバ強ヒテ規約ニ屈従セシメラレ為メニ不便不利ヲ蒙ムル事少ナカラザル可シ、加之ナラズ組合仲間ハ自然専売特許ノ弊ニ陥リテ往時徳川時代ノ組合ノ有様ヲ再演シ、商工業ノ不利ヲ醸スニ至ラン事必セリ、聞処ニ拠レバ往時越前敦賀ノ船問屋ハ厳重ナル組合規則ヲ設ケテ組合外ニ立テ営業スル者ナキヲ期シ、遂ニ同業者ノ一団結ヲ作リテ以テ恣ニ荷主等ヲ苦メタレバ荷主ハ遂ニ敦賀ヲ去テ下ノ関ニ往クニ至レリ、之ガ為メ一時繁栄ヲ極メタル敦賀ハ倏忽ノ間ニ其富ヲ失ヒ、船問屋ハ組合規則ニ依テ利益セント欲シテ却テ意外ノ損失ヲ蒙リ、今日ノ衰凋ヲ来セリト云ヘリ、今此組合法ノ如キモ厳ニ之
 - 第18巻 p.143 -ページ画像 
ヲ行フテ組合外ノ者ヲモ包括規正セントスルアラバ安ンゾ敦賀ノ船問屋タラザルヲ得ンヤ、故ニ組合法ヲ設クルハ可ナリ、之ヲ厳ニスルハ本員ノ欲セザル所ナリ
百五番吉田幸作曰ク、六十番ノ説最モ可ナリ、本員ハ旧四大区ノ質屋営業者ナルカ、質屋組合中往々専横ノ弊アルヲ以テ一大区中スラ分離セントスル者アリ、故ニ取締法ハ此等ノ弊ヲ防グニ止マラン事ヲ望ムナリ
六十一番説田彦助曰ク、六十番ハ一部ヲ保護シテ組合外ノ者ヲ規正セザルノ精神ナレトモ本員ハ不同意ナリ、今一般ノ商工業ヲシテ尽ク組合ヲ設置セシムルトキハ、当会ニ加盟スル者増加シテ商況編纂上ニモ利益スルコト少ナカラザル可シ
卅七番中村利兵衛・四十九番川井忠兵衛ヨリ本案ニ就キ会長ヘ差出シタル意見書アリタレトモ、是ハ逐条ノ議論ニ渉リ総体議ニ関係ナキヲ以テ此ニ略ス
  ○是日番外出席者ハ農商務省一等属豊嶋住作、同判任御用掛首藤諒ノ両名ニシテ休憩中退出ス。


東京商工会議事要件録 第三号・第二四―四二頁明治一七年四月一〇日刊(DK180016k-0002)
第18巻 p.143-147 ページ画像

東京商工会議事要件録  第三号・第二四―四二頁明治一七年四月一〇日刊
  第三臨時会  (明治十七年三月六日午後五時三十分開会)
    会員出席スル者 ○七十三名
○上略
会長 ○渋沢栄一ハ是ヨリ同業組合取締規則ノ件ヲ議スヘキ旨ヲ告ゲ書記ヲシテ議案ヲ朗読セシム
○中略
一番(足助房太郎)曰ク、凡ソ商業ヲ営ム者ハ必ズ組合ヲ設置セシメタシ、否ザレバ取締ノ実効決シテ立タザルベシ
七番(甲田卯三郎)ハ一番ノ説ヲ賛成シ且曰ク、現ニ府下米屋ノ如キ多分ハ私約ヲ以テ組合ヲ組成セリト雖トモ、小売相場彼此区々ニシテ為メニ消費者ノ迷惑ヲ致ス等ノ弊アリ、是実ニ今日組合取締規則ノ制定ナクシテ申合ノ行届カザルガ為メナリトス、願ハクバ政府ニ取締規則ノ制定ヲ請フテ此等ノ弊ヲ規正セン事ヲ望ム
九十九番(堀江半兵衛)曰ク、是迄同業中ニ申合規約アルモ純然タル私約ナルヲ以テ行ハレザル事アリ、故ニ此御諮問ニ対シテハ十分取締規則ノ制定ヲ要望スル旨ヲ以テ答申スベシ
八十二番(山中隣之助)曰ク、取締規則ノ制定ヲ要スル勿論ナリト雖トモ、其方法厳密ニ過グルトキハ亦其弊害ナシトセズ、故ニ先ヅ委員ヲ撰ンデ此議案ノ要領ニ就キ意見ヲ立テシメテハ如何ン、抑モ農商務省ニ於テハ此等ノ要領ニ就キ確定セラレタル見込アリヤ
会長曰ク、蓋シ御諮問ノ主旨ハ同業組合アル者ノ約束ヲ規正スベキ法律ノ制定ヲ望ムヤ否ヤト云フノ点ニ在レバ、其細目ニ就テハ未ダ別段確定セラレタル見込アラズト推測ス
五十九番(益田孝)曰ク、抑モ農商務卿ヨリ御諮問ノ趣意ハ只既設組合ヲ保護スルノ制法ヲ望ムヤ如何ト云フノ一点ニ在リ、然ルヲ今数歩ヲ踰ヘテ組合ニ加入セザレバ営業スル能ハズト云フガ如キ制
 - 第18巻 p.144 -ページ画像 
法ヲ望ムノ論議アリ、是此御趣意ニ悖ルモノニ非ザル歟、蓋シ同業ノ福利ヲ進メン為メ各業組合ヲ組成スル事ハ余ノ固ヨリ望ム所ナリト雖トモ、只政府ノ干渉ニ依ルヲ以テ最モ不可ナリトス、故ニ此御諮問ニ対シテハ在来ノ私約ニテ十分ナリト荅申スベシ、夫レ私約ハ効力ナシト云フ者アレトモ其約束スル所正当ノ区域ニ止マル限リハ現今ノ法律ト雖トモ充分之ヲ保護スルニ足レリト信ズ尤モ独逸国ニ於テハ法律ヲ以テ営業ニ干渉スル趣ナルガ、英米ニ於テハ全ク如此法制ナク此等ノ事ハ総テ商工業者ノ自治ニ任スト云フ、然レトモ実際必要ナル場合ニ於テハ組合ヲ組成スル者多ク随テ商売ノ繁盛ヲ極メタリト云フ、余ノ望ム所ハ実ニ英米ニ在ルナリ
二十四番(松木平吉)一番ヲ賛成ス
六十四番(宮崎佐平)曰ク、本案中私約ト公約トアリ、如何ナル区別アリヤ
会長曰ク、此処ニ示ス所ノ公私ノ二字穏カナラザルガ如シ、但シ此処ニ所謂私約トハ人民相対ニテ私ニ結ブ所ノ契約ヲ云ヒ、公約トハ条例ニ準拠シテ結ブベキ契約ヲ云フノ意ナランカ
九十八番(吉田幸作)曰ク、余モ嘗テ五十九番ト同憂ヲ抱キタル事モアリシガ、今五十九番ノ述ベラレタル私約充分効力アリトノ説ニ就テハ余ハ全ク反対ノ見解ヲ抱ク者ナリ、抑モ余ガ組合ノ如キ其人員百八十名程アレトモ、近時追々退会セントスルノ姿アリ、是全ク申合規則私約ニ成ルガ為メニシテ其充分ノ効力ナキヲ証スルニ足レリ、若シ此儘ニ放任スルトキハ其組合遂ニ全ク潰散スルニ至ルモ知ル可カラズ、故ニ適当ノ条例ヲ定メテ之ヲ保護セン事余ノ深ク望ム所ナリ
八番(大塚藤平)ハ九十八番ヲ賛成シ且ツ曰ク、五十九番ノ憂フル所固ヨリ不可ナシト雖トモ、取締規則ノ定メ方ニ依リテハ決シテ往昔ノ如キ悪弊ノ生ズル恐ナシ、余ハ同業必ス組合ヲ組成スベシト云フノ制法ヲ望ム者ナリ、若シ夫レ否ザレバ米穀其他主要ノ貨物輸出入ノ調査ノ如キ其他同業者中有益ノ事業ト雖トモ遂ニ其成功ヲ望ム可ラザルナリ
二十番(大倉喜八郎)曰ク、組合設立ノ事ニ就テハ嘗テ明治十二年中旧東京商法会議所ヨリ其筋ヘ建議シタル事アリ、大体ニ於テハ無論之ヲ可ナリトス、而シテ私約ノ制ヲ公約ニ改ムルニハ農商務省ニ於テ新ニ登録局ノ如キモノヲ置カレ之ニ依テ其契約ヲ認可セラルヽモノトセハ容易ニ其目的ヲ達シ得ベキ歟、蓋シ取締規則寛厳其宜ヲ失スルトキハ共ニ其弊生ズ可レバ詳細ノ方法ハ委員ヲ撰ンデ調査セシムルヲ要ス、某会員ハ嘗テ敦賀衰頽ノ例ヲ引証シテ本案ニ攻撃ヲ試ミタレトモ、抑モ同港衰頽ノ主因ハ組合ニ在ラズシテ時勢ノ変遷之ガ原因ヲ成シタルモノナリ、聞ク日耳曼ノ如キ同業協会千ヲ以テ数フルト云ヘリ、今ヤ我ガ政府ハ税法・兵制等多クハ皆日耳曼ニ摸セラルヽノ時ナレバ、同国ノ制ニ傚フテ商工業ヲ保護セラルヽ亦可ナラズヤ
五十九番(益田孝)曰ク、余ハ固ヨリ組合ノ組成ヲ厭フニ非ズシテ只
 - 第18巻 p.145 -ページ画像 
政府干渉ノ弊害ヲ恐ルヽ者ナリ、今二十番其他ノ説ヲ聞テ稍々此恐ヲ軽減スルヲ得タリト雖トモ、猶此ニ一言シテ諸君ノ注意ヲ促サントス、夫レ商工業ノ種類数百ニシテ営業ノ形状亦各異ナルモノアリ、然ルヲ画一ノ法律ヲ設ケテ強テ之ヲ包括規正セントス、其弊害ノ及ホス等果シテ如何ゾヤ、蓋シ商況統計ヲ組合ノ成立ニヨリテ明詳ナラシム等ノ如キハ抑モ末ナリ、敢テ顧ミルニ足ラザルナリ、故ニ今本会ニ於テ此御諮問ニ荅申スルニ当リテハ最モ周密ノ思慮ヲ費サン事ヲ要ス
二十四番(松木平吉)曰ク、余モ五十九番ノ如ク別段法律ノ制定ヲ要セズト思考ス、蓋シ在来同業組合申合規則ハ府庁勧業課ニ於テ聞置カルヽ迄ニシテ其効力甚ダ薄少ナレバ、今後ハ農商務省ニ於テ聞届ケラルヽ様ノ手続ニ定メタシ
六十九番(中泰助)曰ク、取締法ノ制定ヲ要スルハ勿論ナレトモ其法ハ寛厳宜ヲ得ン事ヲ希望ス
四十三番(梅浦精一)曰ク、五十九番ハ深ク旧政府ノ下ニ成立シタル諸問屋ノ悪弊ヲ脳裏ニ記シ、而シテ之ヲ今日ニ再演スルコトナカランカト過慮セラルヽモノヽ如シ、然レトモ今ノ商業社会ハ昔日ヲ以テ論ズベカラズ、仮令同業者ガ団結シテ専売ノ利益ヲ隴断セントスルモ決シテ其目的ヲ達スル能ハザルヘシ、故ニ政府ヨリ只商工同業者ニ組合ヲ設立スベキ旨ヲ命ゼラレ、而シテ其規約ノ如キハ専売ノ約束仲間拘束等ノ法ヲ設クルノ場合ヲ除キ可成各組合ノ自治ニ任セラルヽモノトセハ決シテ昔日ノ如キ悪弊ヲ生スルノ恐ナカラン歟、若シ夫レ如此セハ御下問書中十一項ノ如キ要領ヲ以テ一般組合ヲ規正スルガ如キハ最モ不可トス、何トナレバ各地商工各其習慣ヲ異ニシ之ガ通則ヲ制定スル事最モ困難ナレバナリ
五十九番(益田孝)曰ク、四十三番ハ只今各地ノ商工各其習慣ヲ異ニスルト申サレタリ、是実ニ余ガ前説ヲ主張シタル所以ナリ、過刻二十四番ハ同業組合申合規則ヲ聞置カズシテ聞届クベレトノ説ヲ発セラレタリ、是大ニ余ガ意ヲ得タルモノナリ
百十番(勝部静男)曰ク、余ハ組合ノ事ニ就テハ全ク実験ナシト雖トモ熟々五十九番ノ説ヲ聞クニ其憂慮セラルヽ所亦一理ナキニ非ズ然レトモ手形取引ノ手続サイ未ダ詳知セザル商業者ノ事ナレバ幾分カ政府ノ指導ヲ要スル事モアラン歟、故ニ先ヅ政府ハ同業組合ヲ組成スベシト命令シ、其申合規則ノ如キハ総テ各組合ノ自治ニ放任スル事トシテハ如何
会長曰ク、各員御諮問ノ主意ニ拠リテ立論アラン事ヲ望ム、否ザレバ議事大ニ錯雑スルノ恐アリ、抑モ御諮問ノ主意ハ既設組合ニ就テ取締法ノ制定ヲ望ムヤ如何ト云フニ在レバ先ヅ此主意ニ応ズルノ復申ヲ為シ、別ニ本会ノ意見アラバ更ニ之ヲ建議スルモ可ナリ
二十番(大倉喜八郎)曰ク、同業組合ノ規約ヲ府庁ヘ届出ヅルノミニテハ其効力十分ナラズ、故ニ此御諮問ニ対シテハ農商務省ニ登録局ヲ置キテ総テ組合ノ規約ヲ登記セシメラレタキ旨ヲ以テ復申シテハ如何
七番(甲田卯三郎)曰ク、五十九番ハ深ク干渉ノ弊ヲ憂慮セラルレト
 - 第18巻 p.146 -ページ画像 
モ法律ヲ以テ同業者ヲ団結セシメタリトテ左程ノ弊害アラザルベシ、若シ夫レ取締法ヲ制定セザルトキハ既設ノ組合遂ニ全ク崩解センモ知ル可ラズ、故ニ余ハ取締法ノ制定ヲ必要ナリト思考ス、但シ商業ニ依リ厳法ヲ要スルモノハ厳ニスルモ可ナリ、要スルニ其制法ハ各種業体ニ応ジ寛厳宜ヲ得ン事ヲ望ム
五十八番(川原英次郎)曰ク五十九番ト雖トモ本案総体論ニ於テハ之ヲ賛成スルモノニシテ只其細目ニ於テ少シク異議ヲ抱クモノヽ如シ、故ニ百十番ノ説ノ如ク委員ヲ撰ンデ詳細ヲ調査セシムベシ
八十二番(山中隣之助)曰ク、余モ亦取締法ヲ設クルヲ可トス、但シ此要領中仲間加盟ノ義務ノ如キ其定限ノ如何ニ依リテハ大ニ弊害ノ生ズル事アルベケレバ、先ヅ委員ヲ撰ンデ寛厳宜ヲ得ルノ方法ヲ案出セシムベシ
百六番(辻粂吉)曰ク、我組合ノ如キモ取締規則立タザル時ハ遂ニ瓦解スルニ至ラン、但シ加盟者必ズ積金ヲ要スルト云フガ如キ事アリテハ弊害随テ生ズル事アラン、故ニ其法ハ極メテ寛大ナラン事ヲ望ム
五十九番(益田孝)曰ク、各員ノ説種々アリト雖トモ要スルニ皆組合ノ設立ヲ望ムモノヽ如ク余モ亦之ニ同意スルモノナリト雖トモ、只政府ノ干渉ヲ深ク恐ルヽナリ、故ニ本案ハ百十番ノ説ノ如ク委員ヲ撰ンデ調査セシムヘシ
九十四番(峯嶋茂吉)曰ク、九十八番ヲ賛成ス、抑モ余ガ本会ヘ加盟シタル所以ハ同盟組合ヲ鞏固ナラシメンガ為メナリ、然ルニ其規約全ク私約ナルガ為メ偶々組合ヲ脱セントスル者アルモ之ヲ防グニ道ナシ、故ニ余ハ是非取締規則ノ制定ヲ望ムナリ
四十三番(梅浦精一)曰ク、既ニ大体ノ議論一定シタルガ如クナレバ此上ハ委員ヲ撰ンデ其詳細ヲ調査セシメタシ
会長曰ク、既設ノ組合ノミニ就テ取締規則ヲ要スルトセバ只復申書ヲ以テ足レリトス、而シテ若シ総テ商工業ヲ抱括規正スルノ制法ヲ望ムトセバ別ニ本会ヨリ建議ヲ要スベシ、故ニ委員ヲ撰ブノ前先ヅ復申書ノミヲ以テ足レリトスルカ、将タ別ニ建議ヲモ要スルカヲ議定セラレタシ
七番(甲田卯三郎)曰ク、余ハ復申ト共ニ建議セン事ヲ望ム
ニ十番(大倉喜八郎)曰ク、余モ亦七番ト同感ナリ、但シ建議ニハ布達ヲ以テ組合ノ設立ヲ誘導セラレン事ヲ望ムヘシ、是ハ委員タル人ノ参考ノ為メ敢テ玆ニ一言ス
百五番(大川平三郎)曰ク、抑モ商業ハ自由競争ヲ重ンズルモノナレバ別段政府ノ干渉ヲ仮ルニ及ハザルナリ、故ニ本会ハ此諮問ニ対シテ復申スレバ足レリ、敢テ他ニ建議スルヲ要セザルナリ
二十番(大倉喜八郎)曰ク、復申ハ只御諮問ニ応ズルノミニテ足レリ本会別ニ見込ノ在ルアラバ之ヲ建議スルニ於テ何ノ不可カアラン
右ノ外猶多少ノ議論アリタレトモ要スルニ前議ノ外ニ出デズ、是ニ於テ会長ハ衆員ニ向ヒ復申並ニ建議ヲ要スルノ説ニ起立ヲ命ジタルニ、多数ナリシヲ以テ即チ右ニ決ス、而シテ会長ハ委員何名ヲ指名スベキヤノ旨ヲ各員ニ問ヒシニ七名ニテ可ナリトノ説多ク、即チ左ノ七名ヲ
 - 第18巻 p.147 -ページ画像 
指名シ、更ニ衆員ニ向ヒ復申書及建議書ノ草案ハ追テ此等ノ委員ヲシテ調査セシメタル上、次会ヲ期シ重テ議事ニ附スベキ旨ヲ告グ
              二十番   大倉喜八郎
              百十番   勝部静男
             四十三番   梅浦精一
             八十二番   山中隣之助
             二十四番   松木平吉
             五十八番   川原英次郎
             九十八番   吉田幸作
○下略


東京商工会官衙諸達並上申書綴(DK180016k-0003)
第18巻 p.147 ページ画像

東京商工会官衙諸達並上申書綴   (東京商工会議所所蔵)
兼而農商務卿ヨリ商工会ヘ諮問相成候問題中商工同業組合法之義ハ既ニ同会於テ決議相成候哉之旨経済雑誌等ニ相見ヘ候得共、若果シテ決議済ニ候ハヽ他ノ問題ニ拘ハラス右御荅議案丈ケ先ニ御上達相成候運ニハ至リ申間敷哉、右ハ本局調査之都合モ有之候間、可成速ニ御上達相成度此段及御依頼候也
  三月廿八日               富田冬三
    渋沢栄一殿
(案)
兼テ農商務卿ヨリ東京商工会ヘ御諮問相成候同業組合法ノ義ニ付昨日云々被仰越候趣謹承仕候、右組合法ノ義ニ付復申書ハ昨夜調査委員会ニ於テ調成仕候付、此上猶一応総会議ノ可認ヲ経テ上達仕候手順ニ御座候間、追テ可認ノ上ハ他ノ問題ニ拘ラズ直チニ上達可仕候、先ハ此段御回報申上候也
  三月廿九日               渋沢栄一
    富田冬三殿
 尚々次回臨時会日未定ニ御座候間、追テ確定次第表向御届申上候様可仕候、此段為念添テ申上候也
  ○右ハ明治十七年ト推定サル。富田冬三ハ当時農商務省工務局長タリ。


東京商工会議事要件録 第四号・第三七―六三頁 明治一七年五月二四日刊(DK180016k-0004)
第18巻 p.147-154 ページ画像

東京商工会議事要件録  第四号・第三七―六三頁 明治一七年五月二四日刊
  第四臨時会  (明治十七年四月廿六日午後第五時四十分開会)
    会員出席スル者 ○六十名
○上略
会長 ○渋沢栄一ハ是ヨリ第二号議案即チ第三問目復申書案並ニ右ニ付建議書案ヲ議スベキ旨ヲ告ゲ、書記ヲシテ先ヅ復申書案ヲ朗読セシム、即チ左ノ如シ
○第二号議案
    第三問目復申書案
御諮問書第三問目同業者組合ヲ立テ其規約ヲ設ケ候儀ハ、知識ノ交換事物ノ改良ヲ首トシ諸般ノ公益少ナカラズ頗ル緊要ノ儀ニ候処、其私約ニ成ルノ故ヲ以テ組合ノ効力ヲ完クスル能ハザル者有之候ハ実ニ御下諭ノ如ク本会ニ於テモ固ヨリ遺憾トスル所ニ候、但取締規則ノ御制
 - 第18巻 p.148 -ページ画像 
定ヲ仰グヤ如何ノ御諮問ニ至リテハ、殊ニ条例等ヲ以テ詳細ノ法度ノ御制定ヲ仰ガズシテ寧ロ其組合ノ自ラ規約ヲ設クルニ任ゼラレン事ヲ希望仕候、故ニ問目但書十一ケ条ノ如キモ規約条項ノ標目トシテ御垂示相成候者トシ其取舎増減ハ其組合ノ実況ニ従フ事ヲ得セシメラレ、且之ヲ規則或ハ約款ト称シ其組合ニ長タル者モ頭取若クハ元締行司ト呼ブノ同異及其組合区域ノ広狭ノ如キモ皆各自ノ議定スル所ニ任セラレ、独リ害他利己壟断ヲ私セント欲スル者及巨額ノ課金ヲ以テ新ニ加盟セントスル者ヲ防拒スルガ如キ者ヲ御制止相成候迄ニテ可然事ト奉存候、若シ然ラズシテ一定ノ準則若クハ条例等ヲ以テ一般ノ取締規則ヲ御制定相成候ハヾ、各種ノ商工彼ニ便ニシテ此ニ便ナラズ甲ハ御保護ヲ感戴スルモ乙ハ窃ニ拘束ヲ蒙ルノ想ヲ懐キ却テ其不便ニ苦ムノ恐無之トモ難申哉ニ奉存候、而現今既立ノ組合ヨリ其規約ヲ府庁ヘ具申スル者ハ御聞置ノ御指令相成候処、元来私約ニ出ル者ニシテ之ヲ官庁ニ達スルモ只御聞置ニ止メラレ候ヲ以テ規約ノ効力猶薄弱ナルノ感覚ナキ能ハサルニ付、向後ハ同業組合規約ハ所管庁ヘ具申セシメ其筋ニ於テ御審査ノ上、更メテ御認可ノ御指令ヲ下サレ候事ニ定メサセラレ候ヘバ、従来ノ私約是ニ於テ公約ノ力ヲ生ジ組合随テ鞏固ナルヲ得ベシト奉存候、本件ニ付テハ別ニ建議書上呈仕候間御参観被成下度候、右ハ本会ノ決議ヲ以テ此段荅申仕候也
                  東京商工会々頭
  明治十七年四月             渋沢栄一
    農商務卿 西郷従道殿
会長曰ク、此復申書案ハ前会議決ノ主意ニ基キ起草シタルモノニシテ其要旨ヲ約言スル時ハ本会ニ於テハ組合ヲ撿束スル為メ適当ノ制度ヲ望ムト雖トモ、若シ細項ニ渉リ条例ヲ設ケテ画一ニ諸組合ヲ規正セラルヽトキハ却テ種々ノ不都合ヲ生ズベキガ故ニ規約ノ如キハ公益改進ヲ害スベキ条款ヲ除クノ外可成各組合ノ議定スルニ任セラレタシ、而シテ各組合ノ規約ハ是迄全ク私約ニ成リタレトモ、自今ハ地方庁ニ於テ認可ノ手続ヲ鄭重ニ取扱ヒ此規約ヲシテ公約ノ力ヲ有セシメラレタシト云フニ在リ、尤モ右認可ノ手続ニ就テハ会員中登録局ヲ設ケテ之ヲ司ラシムベシトノ論議モアリタレトモ、余リ立入リテ上陳スルハ聊カ僭越ノ嫌アランカト思慮シタルニ由リ、此件ニ関シテハ特ニ復申書中ニ指陳セザリシモノナリ、各員猶此案ニ就テ不審アラバ、調査委員タル百十番(勝部静男)ニ質問セラレヨ
時ニ六十三番(柿沼谷蔵)ヨリ此復申書案ハ建議書案ト連帯シテ審議シタキ旨ヲ請求シタル@@リ、会長ハ書記ヲシテ建議書案ヲ朗読セシム、即チ左ノ如シ
    同業組合ノ設立ヲ要スル儀ニ付建議
今回御諮問ノ第三問目ニ対シ本会ガ審案熟議ノ次第ハ既ニ復申書ニ縷述仕候得共、尚玆ニ本件ニ付数言ヲ上申シテ以テ閣下ノ採択ヲ乞ハザル可ラザル者有之、蓋シ同業組合ハ商工業上頗ル緊要ノモノタルハ論ヲ待タザル儀ニシテ、苟モ同業者其利害ヲ共通シ各自ノ福利ヲ増進シ随テ世間公衆ニ其利用ヲ及ボサン事ヲ期センニハ適当ノ区域ニ随ヒ一
 - 第18巻 p.149 -ページ画像 
府一県若クハ一郡区内ノ同業者ヲ挙ゲテ其組合中ニ加盟セシムルノ必要モ可有之儀ニ御座候処、目下東京府下ノ如キ既ニ同業者相謀リ府庁ニ稟請シテ組合ヲ設立シタル者有之、又ハ府庁ヘ届出デザルモ各自其申合規約ヲ設クル者有之、或ハ新ニ創設ヲ期図スル者モ有之候得共、多クハ皆同業有志者一部分ノ結合ト云フニ過ギズ、加之既ニ其組合ニ加盟スル者ト雖トモ偶々私情ニ制セラレテ脱盟ヲ謀ル者有之、或ハ同業者中一二不同意ヲ唱フル者アルガ為メ仮令有益緊要ノ組合ト雖トモ終ニ其成立ヲ期スル事能ハズシテ空シク止ム者亦寡シトセズ、而シテ其之ニ加盟セザル者ハ恰モ秦人ノ越人ニ於ケルガ如ク利害相関セザルノ状アルノミナラズ、甚ダシキニ至リテハ却テ組合ノ利益ヲ毀損セント謀ル者ナシトセズ、想フニ全国各府県下ノ商工業者ニ於テモ亦此類ノ憾ナキニシモ非ザルベシト奉存候、苟モ商工業者ノ間此等ノ憾ナカラシムルノ方法ヲ設クルニ非ザレバ組合ノ公益同業ノ福利得テ収ム可ラサル儀ニシテ、之ガ為メ遂ニ全般商工業ノ進歩ヲ渋滞致候儀モ可有之ト奉存候
本会熟々其方法ヲ按ズルニ特ニ法律ヲ設ケラレ、之ニ由リテ以テ商工業者ヲ規正拘束セラルヽ時ハ御保護ノ盛意翻テ不便ヲ来タスノ恐ナキヲ保セザル義ニ付、単ニ行政上ノ御処分ヲ以テ商工業ヲ営ム者ハ同業組合ヲ設クベキ旨ヲ布達セラレ、而シテ其規約ノ如キハ同業専売ノ弊若クバ仲間拘束ノ法ヲ設クルノ場合ヲ除クノ外可成各商工業者ノ自治ニ任ゼラレ、其之ヲ認可セラルヽノ手続ニ至リテハ復申書ニ上陳スルガ如ク制定セラルヽニ至ラバ則チ十分ノ効力可有之儀ト確信仕候、然レトモ凡ソ商工ノ業体大小各々其形状ヲ異ニスルガ故ニ各般ノ商工皆悉ク其組合ノ設立ヲ要スルモノトシ、又ハ各種雑業ヲ営ム者悉ク其営業ノ種類ニ随テ組合ニ加盟スベシト云ハヾ実際或ハ不便ヲ生ズル事ナキヲ保セズ、故ニ各地方ニ於テ組合ノ設立ヲ要スベキ商工業ノ種類及其他ノ細項目ニ至リテハ地方長官ニ於テ之ヲ審案調査セラレ、凡ソ一府一県下ニ於テ重要ノ商工業ト認ムル者ニ非ザレバ強テ之ガ組合ヲ設ケシムルノ弊ナカラン事本会ノ切ニ希望スル処ニ御坐候
若シ夫レ前陳ノ趣旨ニシテ幸ニ採択セラルヽヲ得バ、組合ノ利益漸ク増進シ随テ全般商工業ノ進歩ヲ輔賛スベキ儀ト奉存候間、猶復申書ト御参照ノ上本会意見ノ在ル所篤ト御賢察アラセラレ、本儀御採用被成下候様仕度此段建議仕候也
                  東京商工会々頭
  明治十七年四月             渋沢栄一
    農商務卿 西郷従道殿
会長曰ク、抑モ此建議書ノ要旨タル全ク前会決議ノ主意ニ従フモノナリ、然レトモ只法律ヲ以テ各商工業ニ組合ヲ設立セシメタシト云フニ止リテハ、或ハ必要ナラザル商工業ニ至ル迄強テ組合ヲ設ケシムルノ憂ナキヲ保セス、是レ委員ニ於テ其実地ノ方法ヲ案出シテ斯ク立案シタル所以ナリ、蓋シ委員ハ前会ニ於テ此等ノ細目ニ関シ逸々委托ヲ受ケザリシト雖トモ、要スルニ其考案ハ全会ノ希望ニ悖ラザルヲ信ズルナリ、猶此建議書案ニ就テ不審アラバ調査委員タル四十三番(梅浦精一)ニ質問セラレヨ
 - 第18巻 p.150 -ページ画像 
十二番(熊谷吉兵衛)問テ曰ク、復申書ニ在ル其筋トハ何レヲ指スヤ
百十番(勝部静男)答テ曰ク、上ハ太政官ヨリ下ハ地方庁ニ至ル迄ヲ指スナリ
十三番(熊谷吉兵衛)問テ曰ク、若シ他府県ト連合シテ組合ヲ設クベキ場合アラバ如何スル見込ナルヤ
百十番(勝部静男)答テ曰ク、夫迄ノ事ハ未タ思慮セザリシガ若シ斯ル場合アル時ハ当局者ニ於テ必ズ適宜ノ方法ヲ設ケラルベシ、故ニ今本会ニ於テ其方法ヲ具シテ上陳セザルモ実際不都合ナカルベシト想察ス
十六番(益田克徳)問テ曰ク、建議書ニ就キ質問スベキ事アリ、書中「本会熟々其方法ヲ按ズルニ特ニ法律ヲ設ケラレ、之ニ由テ以テ商工業者ヲ規正拘束セラルヽトキハ云々」トアリ、此主意ニ由ルトキハ政府ノ法律ハ不必要ナリ、行政上ノ処分ヲ以テ布達セラルレバ足レリトノ意ナルガ如シ、果シテ然ラバ凡ソ同業組合取締規則ノ制定ハ挙テ之ヲ地方長官ニ一任スルノ主意ナルヤ
四十三番(梅浦精一)答テ曰ク、抑モ委員ガ特ニ法律ノ制定ヲ望マズシテ只布達ヲ望ム所以ハ、要スルニ精細ノ事項ニ渉リ組合条例ヲ定メテ商工業者ヲ拘束セズシテ只政府ヨリ組合ヲ設立セシムベシト云フノ布達ヲ発セラルレバ足レリトノ考案ニ過ギザルナリ、斯クシテ若シ各商工業者ガ此布達ニ基キ組合ヲ設ケテ其規約ヲ地方庁ヘ具申スルニ当リテハ地方長官ヲシテ詳密ニ之ヲ審査セシメ、以テ之ガ取締ヲ立テシムル見込ナリ
十六番(益田克徳)問テ曰ク、然ラバ組合設立ヲ必要トスル商工業ノ種類ヲ定ムルハ一ニ地方長官ノ方寸ニ任セントスルノ主意ナルヤ
四十三番(梅浦精一)荅テ曰ク、然リ
十六番(益田克徳)問テ曰ク、同種ノ商工業ト雖トモ地方ニヨリテハ其重要ノ度ヲ同フセザルモノアラン、此等ハ地方長官ノ見込ヲ以テ適宜ニ之ヲ定ムルノ意ナルヤ
四十三番(梅浦精一)荅テ曰ク、固ヨリ然リ、甲県茶ノ製造ヲ重要ナリトセバ之ニ組合ヲ設ケシメ、乙県陶器製造ヲ重要ナリトセバ亦之ニ組合ヲ設ケシムルノ類ナリ、建議書中地方長官ニ於テ審案調査セラレ云々トアルハ即チ之ガ為メナリ
十六番(益田克徳)問テ曰ク、地方長官ノ見込ヲ以テ商工業ノ重要ナルト否トヲ定ムルハ了解セリ、然ラバ立案者ハ府下ニ於テ如何ナル商工業ニ組合ヲ設ケシムルノ見込ナルヤ、今其二三ノ例ヲ聴キタシ
四十三番(梅浦精一)荅テ曰ク、幕政ノ時ヨリ今日ニ至ルマデ尚営業セル商工業アリ、又維新後新タニ起リタル商工業モアリ、委員ニ於テハ此中ニ就キ一々重要ナル商工業ノ種類ヲ調査シテ参考ノ為メ当局者ニ上陳スルノ考案ナリシガ、少シク都合アリテ遂ニ之ヲ見合ハセタリ、今其必要ト認メタル商工業ノ種類ヲ陳述スルハ容易ナレトモ、徒ニ時間ヲ消費セン事ヲ恐ル、願ハクバ後刻調書ニ就テ一覧アラン事ヲ
会長曰ク、四十三番ノ荅弁ニ一言敷衍セン、抑モ法律ヲ以テ重要不重
 - 第18巻 p.151 -ページ画像 
要ノ限界ニ就キ一定ノ義解ヲ確示スルハ甚タ難シト雖トモ、実際ニ於テハ容易ニ此分別ヲ為シ得ベシト信ズ、例ヘバ鶏卵買《タマゴカイ》・豆腐商ノ如キハ重要ナラザル部類ニシテ銀行・委托販売商・取引商・其他藍玉商・酒商ノ如キハ皆悉ク重要ナル部類ナリ、故ニ今委員ガ此建議書中地方長官ニ於テ組合設立ヲ要スベキ各商工業ノ種類等ヲ精査セラレン事ヲ望ムモ実際決シテ不都合ナカルベキナリ
六十三番(柿沼谷蔵)問テ曰ク、同業組合ヲ設クルニハ適当ノ区域ナカル可ラズ、建議書中区域ノ事ヲ述ベザルヲ見レバ此等ハ地方長官ニ一任スルノ見込ナルヤ
四十三番(梅浦精一)荅テ曰ク、同業組合区域ノ如キハ地方長官実業者ニ諮詢シテ然ル後之ヲ定メラルヽナラン、本会之ヲ指定セザルモ可ナルノ見込ナリ
八十七番(浅井幸右衛門)問テ曰ク、建議書中「各種雑業ヲ営ム者悉ク其営業ノ種類ニ随テ組合ニ加盟スベシト云ハヾ云々」トアリ、其理由如何ン
四十三番(梅浦精一)荅テ曰ク、雑業者ヲシテ悉ク其営業ノ種類ニ随テ組合ニ加盟セシムルトキハ一身ニシテ数種ノ組合員トナリ、為メニ煩累ヲ来スノミナラズ負担金亦寡カラザルベシ、是即チ不便ナリトスル所以ナリ、故ニ委員ハ此等ノ場合ニ於テハ其雑業中首トシテ営ム所ノ同業組合ニ加盟セシムレバ可ナルベシトノ見込ナリ
六十三番(柿沼谷蔵)問テ曰ク、他日幸ニ本議採用セラルヽヲ得バ同業組合ハ全国ニ興立スルノ見込ナルヤ
四十三番(梅浦精一)荅テ曰ク、果シテ全国ニ隆興スルヤ否ハ未ダ之ヲ確言スル能ハズト雖トモ、府下ノ如キハ夙ニ同業組合規則ノ制定ヲ要望スル者多キガ故ニ、本議採用セラルレバ忽ニシテ興ルニ至ラン、各府県ニ於テモ府下ト希望ヲ同クスル者多カル可ケレバ続々興立スヘシト想察ス
会長曰ク、質疑略ボ尽キタレバ是ヨリ逐条議ヲ開カン、元来復申建議ノ両案ハ互ニ連帯セルモノナレトモ可成ハ復申書ヨリ順ヲ逐フテ議セラレン事ヲ望ム
二十番(大倉喜八郎)曰ク、復申書中「特ニ条例等ヲ以テ詳細ノ法度ノ御制定ヲ仰ガス云々」トアリ、又建議書中「単ニ行政上ノ御処分ヲ以テ云々」トアリ、此文面ニ由テ之ヲ見ル時ハ本会ガ取締規則ヲ要望スルノ精神甚ダ薄弱ナルガ如シ、夫レ同業組合ハ実ニ公益改進上ノ一大要具ニシテ殊ニ内国ニ於テ殖産ノ道ヲ開キ、外国ニ対シテ商権ヲ争ハンニハ之ヲ設立スルニ若クモノナシ、故ニ余ハ本案ヲ修正シテ更ニ農商務省ニ於テ登録局ヲ設ケ、自今組合ノ規約ヲ登録セシメラレタキ旨ヲ上陳シテ以テ熱望ノ精神ヲ表セン事ヲ望ム、若シ夫レ此修正ヲ以テ政府ノ組織上マデヲ指陳スルノ嫌アリトセバ責メテハ口上ヲ以テ此宿意ヲ上達スルニ決シタシ
十六番(益田克徳)曰ク、復申書ノミナラバ別ニ異存ナシト雖トモ、若シ之ヲ建議書ト併行セシムルモノトスルトキハ聊カ意見ナキ能ハズ、抑モ各商工業ヲシテ組合ヲ設立セシメンニハ必ズ此組合ヲ
 - 第18巻 p.152 -ページ画像 
撿束スベキ一定ノ準則ヲ設ケザル可ラズ、然ルニ今此建議書ノ主意ヲ案ズルニ一方ニ於テハ各商工業ヲシテ組合ヲ設立セシメヨト要望シナガラ、一方ニ於テハ却テ法律ヲ以テ之ヲ撿束スベカラズト云フ、是少シク権衡ヲ失シタルモノニ非ズヤ、若シ夫レ組合ヲ撿束スベキ一定ノ準則ヲ設ケズシテ之ヲ設立セシムルト否トヲ以テ一ニ地方長官ニ全任スル時ハ、或ル地方ニ於テハ重要ノ商工業ニ組合ヲ設立セシメズ、或ル地方ニ於テハ重要ナラザル商工業ニマデ組合ヲ設立セシムルノ恐ナキヲ保セズ、且ツ其規約ノ如キ総テ各組合ノ自由ニ放任シテ毫モ之ヲ規正セザル時ハ勢遂ニ公益ヲ害スルノ弊ヲ生ゼンモ知ル可ラズ、故ニ余ハ一方ニ於テ組合ヲ設立セシメヨト要望スル上ハ之ト同時ニ準則ヲ設ケン事ヲ望マザルヲ得ザルナリ、蓋シ利ニ迷フテ理ヲ忘ルヽハ世間ノ常情ニシテ現ニ本会ノ如キハ府下同業組合ヨリ組織シタルモノナレバ会員中或ハ斯カル制度ノ自己ニ直接ノ利益アルガ為メ未然ノ弊害ヲ顧慮セザル人モアル可ケレトモ、苟クモ一制度ノ創設ヲ政府ニ建議スル場合ニ於テハ先ヅ身ヲ局外ニ置キテ充分其得失ヲ考察セザル可ラズ、故ニ余ハ斯ル不権衡ノ建議ヲ呈センヨリハ寧ロ復申書ノ一方ニ止メント迄ニ希望スルナリ
五十八番(川原英次郎)曰ク、余モ立案委員ノ一人ナレバ玆ニ十六番ノ説ヲ弁セン、十六番ハ此建議書中組合撿束法ヲ望マザルハ不都合ナリト述ベラレタレトモ、抑モ復申書及建議書中同業専売並仲間拘束ノ弊云々トアルヲ見レバ撿束法ヲ望ミタル事明カナリトス又総テノ商工業ニ尽ク組合ヲ設ケシメザル事ハ兼テ委員ノ精神トスル処ニシテ、建議書中組合設立ヲ要スル商工業ノ種類等ハ地方長官ヲシテ審案精査セシメント云フモノ実ニ此主意ニ基クモノナリ、然ラバ復申建議ノ両案ニ於テ決シテ十六番ノ述ベラルヽ如キ不都合アラザルナリ
二十番(大倉喜八郎)曰ク、十六番ノ説ハ過慮ニ失スルモノナリ、其故ハ仮令組合ヲ好マルヽ地方長官アリトスルモ猥ニ無要ノ商工業ニ組合ヲ設クルノ愚ヲ学バザルベク、又地方ノ商工業者モ組合設立ヲ必要トセザル場合ニ於テハ其事由ヲ忌憚ナク地方長官ニ開陳ス可ケレバナリ、然ラバ建議書ト復申書ヲ併具シテ上陳スルモ別段不都合ナカルベキナリ
百十番(勝部静男)曰ク、十六番ノ説ハ前途ヲ過慮セラルヽヨリ出デタルモノナリ、余ハ今十六番ノ説ヲ一個ノ動議ト見做シテ之ヲ駁撃スベシ、抑モ地方長官ノ賢愚ニ由テ同業組合ニ利害ノ影響ヲ及ボスベキハ十六番ノ説ノ如キモノアラント雖トモ、地方ノ商工業者中ニモ着実温行《(厚)》ノ者アリテ必ズシモ奸猾人ノミニ非ザルガ故ニ地方長官ヲ誑誘シテ無用ノ商工業ニ組合ヲ設ケシムル事ナカルベク、又地方長官如何ニ愚昧ニシテ組合ヲ好ムノ人ナリトモ奸猾人ノ言ヲ容レテ不必要ノ組合ヲ設クル事無カルベキハ余ノ固ク信ジテ疑ハザル所ナリ、凡ソ一利一害ハ事物ノ数ナリ、若シ組合ノ利益ヲ挙ゲズシテ只ダ其弊ノミヲ指摘スル時ハ日モ亦足ラザルベシ畢竟十六番ノ説ハ極端論ト見做シテ可ナランノミ
 - 第18巻 p.153 -ページ画像 
十六番(益田克徳)曰ク、決シテ極端論ニ非ズ、余ノ述ブル所ノ弊害ノ如キハ必ズ前途ニ起ルベキモノナリ、夫レ百十番ノ説ノ如ク一利一害ハ事物ノ数ナレバ同業組合既ニ大利アル以上ハ必ズ之ニ伴フベキ大害ナクンバアラズ、夫ノ物価ヲ制シテ専売ヲ事トシ新規加盟者ニ不当ノ賦金ヲ課スルガ如キハ弊ノ大ナルモノナレバ苟クモ組合ヲ設立セシメンニハ予メ此等ノ大害ヲ防グノ方法ヲ定メザル可ラズ、然ルニ其方法ヲ説カズシテ只組合取締法ヲ希望スルハ前途豈ニ危カラズヤ
四十三番(梅浦精一)曰ク、先刻ヨリ十六番ハ復申書ノミナラバ異存ナシ、之ヲ建議書ト併行セシムルトキハ彼此予盾シテ不都合ナリトノ議論ヲ発シタレトモ、是蓋シ建議書ヲ熟読セザルヨリ起リタルノ謬説ナラン、若シ十六番ニシテ此建議書中「同業専売ノ弊若クバ仲間拘束ノ法ヲ設クルノ場合ヲ除クノ外云々」ト記スルヲ見レバ両案別ニ矛盾スル所ナキヲ発悟スルニ足ラン、然ルニ尚其矛盾ヲ喋々セラルヽハ文意簡単ニシテ意味了解シ難キガ故ナランカ
二十四番(松木平吉)曰ク、条例ヲ設ケテ以テ商工業者ヲ規正拘束セラルヽノ不必要ナル事ハ前会ニ於テ一決セシ処ナルニ、今復十六番ハ条例ヲ設ケザレハ弊害百出セン事ヲ論ジ以テ前回ノ決議ヲ平翻セントスレトモ、余ハ前会縷々述ベタル如ク特ニ条例ヲ設ケザルモ同業専売若クバ仲間拘束ノ弊害等ハ充分之ヲ防止シ得ベキヲ信ズルナリ
二十六番(柴崎守三)曰ク、余ハ十六番ト同憂ヲ抱ク者ナレトモ建議書中同業専売若クハ仲間拘束云々ノ言アル以上ハ別段異存ナキナリ、何トナレバ同業者若シ専売若クバ仲間拘束ノ組合法ヲ設ケントスルモ当局者ニ於テ之ヲ認可セザル可ケレバナリ
十六番(益田克徳)曰ク、復申書中特ニ条例ノ御制定ヲ仰ガズ云々トアリテ其主意大ニ政府ノ干渉ヲ厭フガ如シ、左レバ若シ此制度ニ従フ時ハ地方長官ニ於テ規準ヲ得ザルガ為メ組合規約ヲ認可セラルルニ当リ不知不識専売ノ弊ヲ見逃ガス等ノ恐ナキヲ保セズ、是余ガ政府ニ於テ予メ組合ヲ撿束スベキ一定ノ準則ヲ設ケラレン事ヲ希望スル所以ナリ
会長曰ク、十六番ハ先刻ヨリ建議書及復申書ノ主意彼此権衡ヲ得ザルトテ種々論弁セラレタリト雖トモ、元来此両案ハ委員ガ前会決議ノ趣意ニ基キテ之ヲ起草シタルモノナレハ今更ニ之ヲ翻案スル迄ニ及ハザルベシ、固ヨリ字句ノ上ニハ聊カ権衡ヲ得ザル所ナキニ非ザレトモ之ガ為メ別段ノ不都合アラザルベシト信ズ、何トナレバ仮令本会ガ特ニ条例ノ制定ヲ要セズト開陳スルモ是只ダ本会希望ノ主意ヲ表スルニ過ギズシテ政府ニ於テ果シテ本議ヲ採択シテ斯カル制度ヲ施設セラルヽニ当リ若シ条例ヲ必要ト認メラルヽ時ハ此希望ノ主意ニ従テ適宜ニ之ヲ制定セラル可ケレバナリ
右ノ外猶各員ノ間二三ノ議論アリタレトモ、要スルニ皆前記ノ外ニ出デズ、是ニ於テ会長ハ更ニ衆員ニ向ヒ十六番ノ動議ハ賛成ナキヲ以テ消滅シタル事勿論ナリト雖トモ、猶熟々再考スルニ復申書並ニ建議書ノ字句少シク権衡ヲ得ザル所ナキニ非ザレバ此等ハ最前ノ起草委員ニ
 - 第18巻 p.154 -ページ画像 
托シテ之ヲ修正シ、直チニ農商務卿ヘ進達シテハ如何トノ旨ヲ問ヒシニ衆員異議ナク之ヲ可決シタリ
○下略


渋沢栄一書翰 萩原源太郎宛 (明治一七年)四月二八日(DK180016k-0005)
第18巻 p.154 ページ画像

渋沢栄一書翰  萩原源太郎宛 (明治一七年)四月二八日   (萩原英一氏所蔵)
昨夜ハ御粗末申上候、然者同業組合設立之義ニ付建議案修正之分昨日御廻しニ付篤と一覧仕候処、商務局之見込とも適合いたし居差支無之と存候間是ニて早々御進達可被下候
府知事へも写壱本差出候義ハ至極宜敷と存候、是又早々御取斗可被下候
集会所通信録之事も御取扱之由拝謝仕候、右書中申上候 勿々
  廿八日                 渋沢栄一
    萩原様


東京商工会議事要件録 第五号・第六四―七〇頁明治一七年六月七日刊(DK180016k-0006)
第18巻 p.154-156 ページ画像

東京商工会議事要件録  第五号・第六四―七〇 頁明治一七年六月七日刊
 ○参考部 同業組合取締規則ノ義ニ付農商務卿ヘ復申書
      並ニ同業組合ノ設立ヲ要スル義ニ付同卿ヘ建議書
     ○第三問目復申書
昨年十二月廿七日附ヲ以テ御諮問有之候第三問目、即チ府下ノ商工同業組合ニ於テ其取締規則ノ制定ヲ望ムヤ如何ノ義ニ就テハ、其後数回ノ会議ヲ開キ篤ト審案討議ヲ遂ゲ候処、元来同業者組合ヲ立テ其規約ヲ定メテ以テ同業ノ公益ヲ謀リ各自ノ福利ヲ進メ候義ハ、実ニ御下諭ノ如ク頗ル緊要ノ義ニシテ既ニ是迄府下商工同業者ニ於テハ往々其組合ヲ設ケ規約ヲ定メ候者モ其数不少候得共、畢竟私約ニ成ルノ故ヲ以テ規約ノ効力ヲ完フスル能ハズ、随テ公益改進ヲ遂グルヲ得ズ、是府下商工同業者ノ夙ニ遺憾トスル所ニ御座候間此際政府ニ於テ右等取締ノ為メ適当ノ御制法御施設相成候義ハ本会ニ於テモ深ク切望罷在候
蓋シ従来結合仕候商工同業組合ノ義ハ其業務ノ異ナルニ従ヒ各々組織ヲ同フセザルモノ不少、殊ニ甲乙両組合共ニ同種ノ商工業ヨリ成ルモノト雖トモ土地ノ模様ニヨリテ大ニ其状況ヲ異ニスルノ場合モ有之候得バ、今精細ノ事項ニ渉リ画一ノ通則ヲ設ケテ右等各種ノ商工同業組合ヲ御規正相成候時ハ、或ハ甲種ニ便ナル所乙種ニ便ナラザルアリテ結局御保護ノ盛意翻テ望外ノ結果ヲ来スノ恐モ可有之奉存候間、先ツ問目但書ニ御列記相成候要領十一ケ条ノ如キハ各組合規約条項ノ標目トシテ御告示相成候迄ニ止メサセラレ、其規約ノ要項ハ組合多数ノ集合力ヲ以テ害他利己若クハ専売ノ趣意ヲ包含シ、又ハ巨額ノ課金ヲ以テ新ニ加盟セントスル者ヲ防拒スル等総テ公益改進ノ目的ニ悖リ候条款ヲ堅ク御禁止有之、其他ノ細則ハ可成各組合ノ取捨ニ御放任相成候様仕度奉存候
従来府下各商工業組合規約又ハ申合規則ノ類ハ只府庁ニ於テ御調査ノ上御聞置ニ相成候迄ニ候得共、既ニ前陳相当ノ御制法ヲ御施設相成候義ニ候ハヾ、右規約又ハ申合規則ノ類ハ其御筋ニ於テモ一層鄭重ニ御調査被成下、不相当ノ義無之モノニハ改メテ御認可ノ御指令有之度候果シテ右ノ御例規被為立候ハヾ其組合ノ約則ハ始メテ公約ノ効力ヲ有
 - 第18巻 p.155 -ページ画像 
シ各自随意ニ変更スルガ如キ弊害モ無之様相成可申奉存候、猶本件ニ就テハ本会特ニ意見ノ次第有之、別ニ建議書上呈仕候間御参観被成下度候、此段復申仕候也
  明治十七年五月十九日
                  東京商工会々頭
                      渋沢栄一
    農商務卿 西郷従道殿
    ○同業組合ノ設立ヲ要スル儀ニ付建議
先般御諮問ノ第三問目ニ対シ本会ガ審案熟議ノ次第ハ既ニ復申書ニ縷述仕候得共、尚玆ニ本件ニ付数言ヲ上申シテ以テ閣下ノ採択ヲ乞ハザル可ラザル者有之、蓋シ同業組合ハ商工業上頗ル緊要ノモノタルハ論ヲ待タザル儀ニシテ、苟モ同業者其利害ヲ共通シ各自ノ福利ヲ増進シ随テ世間公衆ニ其利用ヲ及ボサン事ヲ期センニハ、適当ノ区域ニ随ヒ一府一県若クハ一郡区内ノ同業者ヲ挙ゲテ其組合中ニ加盟セシムルノ必要モ可有之儀ニ御座候処、目下東京府下ノ如キ既ニ同業者相謀リ府庁ニ稟請シテ組合ヲ設立シタル者有之、又ハ府庁ヘ届出デザルモ各自其申合規約ヲ設クル者有之、或ハ新ニ創設ヲ期図スル者モ有之候得共多クハ皆同業有志者一部分ノ結合ト云フニ過ギズ、加之既ニ其組合ニ加盟スル者ト雖モ偶々私情ニ制セラレテ脱盟ヲ謀ル者有之、或ハ同業者中一二不同意ヲ唱フル者アルガ為メ仮令有益緊要ノ組合ト雖トモ終ニ其成立ヲ期スル事能ハスシテ空シク止ム者亦寡シトセズ、而シテ其之ニ加盟セザル者ハ恰モ秦人ノ越人ニ於ケルガ如ク利害相関セザルノ状アルノミナラズ、甚シキニ至リテハ却テ組合ノ利益ヲ毀損セント謀ル者ナシトセズ、想フニ全国各府県下ノ商工業者ニ於テモ亦此類ノ憾ナキニシモ非ザルベシト奉存候、故ニ本会ニ於テハ更ニ一歩ヲ進メ、商工業者ノ間此憾ナカラシムル為メ適当ノ御制度御施設相成度切ニ希望仕候
本会熟々其方法ヲ案ズルニ特ニ法律ヲ設ケテ商工業者ヲ規正セラルヽニ及バズ、単ニ行政上ノ御処分ヲ以テ其御筋ヨリ地方長官ハ凡ソ生産及商工業ノ進歩ヲ図ルニ必要ト認ムル場合ニ於テハ適当ノ区域ニ従ヒ其所管内ノ商工同業者ヲシテ組合ヲ設立セシムルヲ得ル旨ノ御布達ヲ発セラレ、而シテ向後此御布達ニ基キテ新ニ結合スル組合ノ取締法及其規約御認可ノ手続等ハ総テ別紙復申書ニ開陳仕候通リ御取扱相成候テ可然存候、尤此御制度ニヨル時ハ各地方ニ於テ或ハ重要ナラザル商工業ニ至ル迄強テ組合ヲ設ケシムルノ恐無之トモ難申ニ付、凡ソ組合ノ設立ヲ要スベキ商工業ノ種類ハ先ツ地方長官ニ於テ審案調査セラレ其御筋ノ裁可ヲ経テ後之ヲ定メラレ候様仕度奉存候
若シ夫レ前陳ノ趣旨ニシテ幸ニ採択セラルヽヲ得バ組合ノ効力益々完キヲ得、随テ全般商工業ノ進歩ヲ輔賛スベキ義ト奉存候間、猶復申書ト御参照ノ上本会意見ノ在ル所篤ト御賢察アラセラレ、本議御採用被成下候様仕度此段建議仕候也
  明治十七年五月十九日
                  東京商工会々頭
                      渋沢栄一
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    農商務卿 西郷従道殿


東京商工会議事要件録 第六号・第四―九頁 明治一七年九月二二日刊(DK180016k-0007)
第18巻 p.156 ページ画像

東京商工会議事要件録  第六号・第四―九頁 明治一七年九月二二日刊
  第三定式会
         (明治十七年八月二十二日午後五時四十分開会)
  第六臨時会
    会員出席スル者 ○六十二名
会長 ○渋沢栄一ハ衆員ニ向ヒ本日ハ兼テ通知シタルガ如ク定式臨時ノ両会ヲ開クベキ筈ナルガ先ヅ定式会ヨリ始ムベキ旨ヲ告ゲ、即チ規程第五章第二十条ニ依リ本年一月ヨリ六月ニ至ル半季間事務ノ成跡ヲ報告ス
  自明治十七年一月至同六月 半季間事務ノ報告
○中略
    政府ヨリノ下問   四件
○中略
○同業組合取締規則ノ義ニ付農商務省ヨリノ下問
  本件モ前件ト同シク明治十六年十二月二十七日附ヲ以テ西郷農商務卿閣下ヨリノ御諮問ニ係リ、其要旨ハ府下ノ商工同業者其組合ノ効力ヲ全フスル為メ之ガ取締規則ノ制定ヲ望ムヤ如何ト云フニ在リ、即チ本年一月十六日第一臨時会、二月十七日第二臨時会及三月六日第三臨時会ニ於テ之ヲ審議シタルニ、遂ニ之ガ取締法ノ制定ヲ望ムノ旨ヲ以テ荅申スベシト云フニ決シ、且ツ其荅申案ハ委員ヲ撰ンデ之ヲ立案セシムベシト云フニ議決シタルニ付、会長ハ左ノ七名ヲ委員ニ指名シタリ
             二十番   大倉喜八郎
             百十番   勝部静男
             四十三番  梅浦精一
             八十二番  山中隣之助
             二十四番  松木平吉
             五十八番  川原英次郎
             九十八番  吉田幸作
  此等ノ委員ハ其後三月十二日及同月二十八日ニ集会ヲ開キテ荅申案ヲ調査シ、更ニ四月二十六日第四臨時会ノ可決ヲ得、五月十九日附ヲ以テ之ヲ農商務省ニ進達シタリ
○下略


東京商工会官衙諸達並上申書綴(DK180016k-0008)
第18巻 p.156-157 ページ画像

東京商工会官衙諸達並上申書綴   (東京商工会議所所蔵)
(案)         栄一    《(萩原)》
    商務局長ヘ照会案(用紙中奉書半切)
昨年十二月廿七日附ヲ以農商務卿閣下ヨリ御諮問有之候府下ノ商工同業組合ニ於テ其取締規則ノ制定ヲ望ムヤ如何ノ義ニ就テハ、其後再三会議ヲ開キ篤ト審議ヲ遂ケ候処、府下商工業者ニ於テハ一般ニ其取締規則ノ御制定ヲ渇望致居候ニ付、此際相当ノ御制法御施設相成度旨本年五月十九日附ヲ以別紙甲号ノ通リ復申仕、且ツ本会ノ見ル所ニヨレバ既設ノ組合ニ対スル取締法丈ニテハ其効力猶未ダ充分ナラズト奉存候ニ付、更ニ一歩ヲ進メ其御筋ヨリ行政上ノ御処分ヲ以テ地方長官ハ
 - 第18巻 p.157 -ページ画像 
凡ソ生産及商工業ノ進歩ヲ図ルニ必要ト認ムル場ニ於テハ、適当ノ区域ニ従ヒ其所管内ノ商工同業者ヲシテ組合ヲ設立セシムルヲ得ル旨ノ御布達ヲ御発付相成度旨別紙乙号ノ通リ併テ建議仕置候処、右上陳ノ趣旨ハ其後如何ノ御評議ニ相成居候哉、右組合取締規則御制定ノ義ハ目下府下商工業者一般ニ只管切望罷在候ニ付其御評議ノ御模様心得迄ニ拝承仕置度、依テ何卒其辺御内示被成下候様仕度、此段別紙両通相添上陳仕候也
  十七年十一月八日        東京商工会々頭
                      渋沢栄一
  商務局長 品川忠道殿

        十一月九日入手」《(別筆)》 《(萩原)》 栄一
客年十二月廿七日附農商務卿より御諮問相成候府下之商工同業組合ニ於テ其取締規則之制定ヲ渇望致居候趣ヲ以テ本年五月十九日附御復申相成、且御建議之次第も有之候ニ付、其後之模様如何相成居候哉御承知被成度旨御紙表之趣拝承致候、右は目下専ら評議中之事故其模様如何とも差向御内示致兼候次第ニハ候得とも、可成速ニ取運ひ候様可致積ニ有之候間右様御了諾相成度、尚委細御面話相尽し可申上不取敢御報まて 早々頓首
  十七年十一月八日            品川忠道
  東京商工会々頭
    渋沢栄一殿
 追テ過日御面話致置候倉庫営業之件ハ、不日農商務卿より下問相成候様可致積、乍序申遣置候也


東京商工会議事要件録 第二三号・第三〇―三三頁 明治二〇年三月二二日刊(DK180016k-0009)
第18巻 p.157-158 ページ画像

東京商工会議事要件録  第二三号・第三〇―三三頁 明治二〇年三月二二日刊
  第十二定式会  (明治二十年二月廿六日午後四時三十分開会)
    会員出席スル者 ○五十六名
○上略
次ニ会長(渋沢栄一)ハ是迄本会ヨリ諸官衙ヘ建議又ハ復申シタル事項ニ就キ特別ニ其成跡ヲ報告ス
    ○東京商工会建議又ハ復申事項ノ成跡
明治十六年十一月本会創立以来今日ニ至ルマデ各官署ヘ建議又ハ復申シタル事項中、其筋ニ於テ既ニ本会ノ意見ヲ採用セラレタルモノ又ハ現今特ニ審査中ノモノハ左ノ如シ
○中略
○同業組合取締規則ノ義ニ付農商務卿ヘ復申並ニ建議
  明治十六年十二月二十七日附ヲ以テ西郷農商務卿閣下ヨリ、府下ノ商工同業者其組合ノ効力ヲ全フスル為メ之ガ取締規則ノ制定ヲ望ムヤ如何ノ旨諮問セラレタルニ付、其後審議ヲ遂ゲ翌十七年五月十九日附ヲ以テ取締規則ヲ要スル旨ヲ答申シ、併テ建議書ヲ上呈シタリ
  ○中略
  然ルニ其後農商務省ニ於テ同業者組合準則ヲ定メラレ、同年十二
 - 第18巻 p.158 -ページ画像 
月二十九日同省達第三十七号ヲ以テ各府県ヘ左ノ如ク令達セラレタリ(同業者組合準則ノ写ハ之ヲ略ス)
○下略


法令全書 明治十七年 内閣官報局編 明治二四年三月刊 農商務省達 第三十七号(十一月二十九日)府県(DK180016k-0010)
第18巻 p.158 ページ画像

法令全書 明治十七年 内閣官報局編  明治二四年三月刊
農商務省達 第三十七号(十一月二十九日)        府県
同業者組合ヲ結ヒ規約ヲ定メ営業上福利ヲ増進シ濫悪ノ弊害ヲ矯正スルヲ図ル者不尠候処、往々其目的ヲ達スル事能ハサル趣ニ付、今般同業組合準則相定候条向後組合ヲ設ケ規約ヲ作リ認可ヲ請フ者アルトキハ、準則ニ基ツキ可取扱、此旨相達候事
 但認可ノ都度当省ニ届出ツヘシ
同業組合準則
第壱条 農工商ノ業ニ従事スル者ニシテ同業者或ハ其営業上ノ利害ヲ共ニスル者組合ヲ設ケントスルトキハ、適宜ニ地区ヲ定メ、其地区内同業者四分ノ三以上ノ同意ヲ以テ規約ヲ作リ、管轄庁ノ認可ヲ請フ可シ
第弐条 同業組合ハ同盟中営業上ノ弊害ヲ矯メ其利益ヲ図ルヲ以テ目的ト為ス可シ
第参条 同組合ノ規約ニ掲クヘキ事項ハ左ノ如シ
 第壱項 組合ヲ組織スル業名及組合ノ名称
 第弐項 組合ノ地区及事務所ノ位置
 第三項 目的及方法
 第四項 役員ノ選挙法及権限
 第五項 会議ニ関スル規程
 第六項 加入者及退去者ニ開スル規程
 第七項 費用ノ徴収及賦課法
 第八項 違約者処分ノ方法
 右ノ外組合ニ於テ必要トナス事項
第四条 組合ノ設アル地区内ニ於テ組合員ト同業ヲ営ム者ハ其組合ニ加盟スヘシ
  但事業ノ規模及趣向ヲ異ニスルカ為メ加盟シ難キカ或ハ加盟ヲ拒ムヘキ事情アルトキハ、管轄庁ニ申立テ其認定ヲ請フ可シ
第五条 同業組合ハ同業組合ノ資格ヲ以テ営利事業ヲ為ス事ヲ得ス
第六条 同業組合ハ総テ其事蹟及費用決算表ヲ毎年管轄庁ニ報告ス可シ
第七条 規約ヲ改正スルトキハ更ニ認可ヲ請フ可シ
第八条 分立又ハ合併スルトキハ更ニ規約ヲ作リ認可ヲ請フ可シ
第九条 同業組合ニ於テ聯合会ヲ設ケ其規約ヲ作ルトキハ管轄庁ノ認可ヲ請フ可シ
  但其聯合二府県以上ニ渉ルトキハ開会地管轄庁ヲ経由シテ農商務省ノ認可ヲ請フ可シ



〔参考〕農商務卿第二回報告 明治一五年 第三九頁 刊(DK180016k-0011)
第18巻 p.158-159 ページ画像

農商務卿第二回報告 明治一五年  第三九頁 刊
  商務局
 - 第18巻 p.159 -ページ画像 
    事務大要
○上略 輓近人文稍々開進シ、商事亦随テ信任ヲ増スヘキニ際シ、却テ軽慓ノ風ヲ販鬻社会ニ移スニ至リ、之ヲ既往ニ考レハ或ハ疇昔仲間組合ヲ設ケ其規約ヲ踏ミ交市方ニ盛ナリシ日ニ劣ルノ状ナキ能ハス、苟モ商業ヲ勧誘スルモノ克ク今古ヲ鑑シ得失ヲ徴シ之カ方針ヲ開示セサルヘカラサルヲ以テ、古者商業組立《(合カ)》ノ遺法ヲ京坂地方及ヒ著名ノ各港ニ就キ之ヲ査理シ以テ掌務ノ参勘ニ供セリ
○下略



〔参考〕農商務卿第三回報告 明治一六年 第五三―八三頁 刊(DK180016k-0012)
第18巻 p.159 ページ画像

農商務卿第三回報告 明治一六年 第五三―八三頁 刊
  商務局
    事務大要
○上略 古往商業ノ慣例ヲ溯究シ以テ仲間組合ノ遺制ヲ講明シ ○中略
  工務局
    事務大要
○上略 已ニ労役法・師弟契約法・工場規則及同業組合条例ノ編纂ニ著手シ ○下略



〔参考〕農商務卿第四回報告 明治一七年 第一三二―一三五頁 刊(DK180016k-0013)
第18巻 p.159 ページ画像

農商務卿第四回報告 明治一七年 第一三二―一三五頁 刊
  工務局
    事務大要
○上略 同業組合法ヲ設クルノ目下ニ急務ナル則同業組合準則ヲ編成シ其十一月ヲ以テ之ヲ発布セリ
○中略
    東京商工会下問
一昨十六年東京商工会ニ下問スルニ同業組合法ノ要否ヲ以テセシニ、客歳五月之ニ対スル答申書ヲ呈セリ ○下略



〔参考〕勧業会工務部日誌 勧業諮問会編 第一―五〇頁 明治一七年刊(DK180016k-0014)
第18巻 p.159-174 ページ画像

勧業会工務部日誌 勧業諮問会編  第一―五〇頁 明治一七年刊
勧業会工務部日誌
本会ハ明治十七年□月三十一日ヲ以テ開キ□月二日ヲ以テ閉タリ
    問題及解説
第一項 工業者同業組合法
 同業者相結ンテ組合ヲナシ規約ヲ定メテ以テ各自ノ福利ヲ進メ同業ノ公益ヲ謀ルハ生産上頗ル緊要ノ事タリ、今ヤ各地方漸ク同業組合ノ起ルアリ、然レトモ皆私約ニ成ルヲ以テ往々組合ノ効力ヲ完フスル能ハス、随テ公益改進ヲ遂クル事ヲ得サルノ憾アリト聞ク、今各府県下ノ工匠其取締規則ノ制定ヲ望ムヤ如何
  但取締規則ノ要領ハ左ノ如シ
 一 組合ノ区域
 一 仲間加盟ノ義務
 一 加盟者ノ資格
 一 組合ノ目的
 一 組合ノ権限
 - 第18巻 p.160 -ページ画像 
 一 組合ノ事務
 一 仲間取締ノ特権
 一 仲間破約人ノ処分
 一 賦課金ノ事
 一 組合規約ニ掲出スヘキ事項
 一 組合合併及解約ノ時ノ心得方
 ○中略
    会員
  会頭
    農商務権大書記官        富田冬三
  主務員
    農商務省御用掛         高橋是清
    同               山本五郎
    同               高峰譲吉
    同               荒川新一郎
    農商務三等属          福原譲蔵
    農商務省御用掛         首藤諒
    工務局雇            吉田健作
  書記
    農商務三等属          中出哲
    農商務六等属          吉川二介
    同  八等属          長岡往来
    同  十等属          弓場重光
  理事
    農商務三等属          斎藤隆
    工務局雇            仙波貞信
    同               沼沢久徳
    府県会員番号及氏名
  一番   東京府五等属     井野辺真幸
  二番   京都府五等属     淵胤栄
  三番   大阪府御用掛     吉良亨
  四番   神奈川県一等属    増田知
  五番   兵庫県二等属     加藤正義
  六番   長崎県三等属     川崎胖
  七番   新潟県四等属     瀬戸口宗明
  八番   函館県八等属     東虎雄
  九番   埼玉県五等属     岡田長道
  十番   群馬県七等属     滝埜寿茂
  十一番  千葉県一等属     中村衡平
  十二番  茨城県一等属     高畑千畝
  十三番  栃木県六等属     樺山喜平次
  十四番  三重県五等属     新谷貞信
  十五番  愛知県三等属     渡辺平四郎
  十六番  静岡県三等属     大塚義一郎
 - 第18巻 p.161 -ページ画像 
  十七番  山梨県七等属     中田亮平
  十八番  滋賀県一等属     高谷光雄
  十九番  岐阜県四等属     奥富雄三郎
  二十番  長野県五等属     吉松集躬
  二十一番 福島県二等属     原純
  二十二番 宮城県五等属     荒木正脩
  二十三番 岩手県五等属     東静夫
  二十四番 青森県四等属     稲田栄勝
  二十五番 秋田県三等属     高木守久
  二十六番 山形県六等属     久留就敦
  二十七番 石川県六等属     宮崎豊次
  二十八番 富山県三等属     岩田忠益
  二十九番 福井県九等属     新部栄太郎
  三十番  島根県八等属     藤岡直蔵
  三十一番 鳥取県七等属     吉田清音
  三十二番 岡山県一等属     野崎万三郎
  三十三番 広島県一等属     十文字信介
  三十四番 山口県五等属     岩波美篤
  三十五番 和歌山県二等属    平田綱一郎
  三十六番 徳島県八等属     堤乾已
  三十七番 高知県七等属     西内義顕
  三十八番 愛媛県五等属     古河覚五郎
  三十九番 福岡県二等属     小山改蔵
  四十番  大分県三等属     中村幸蔵
  四十一番 佐賀県一等属     渡並竧
  四十二番 熊本県一等属     指山延貞
  四十三番 宮崎県七等属     木佐貫重節
  四十四番 鹿児島県三等属    白野夏雲
  四十五番 沖縄県六等属     石沢兵吾
  四十六番 札幌県五等属     岩崎行親
  四十七番 根室県御用掛     伊吹鎗造
十七年□月三十一日午前九時開会
会頭(富田工務局長)会員諸君カ帰期ヲ急カルヽ趣ニテ会員総代ヨリ時日短縮ノ事ヲ請求セラレタルニ因リ不得止問題ヲ省縮シタル@主意ヲ演ヘ且ツ曰ク、□月七日迄ニ工商管船三局ノ談話ヲ終ハル事ト成リタルニ付テハ会員諸君ニ於テモ一層勉強アラン事ヲ望ム
会頭書記ヲシテ問題ノ第一項ヲ朗読セシム
    第一項
一工業者同業組合法
説明員(首藤)第一第二項ノ問題ノ要旨ハ各府県ニ於テ其組合法及取締法ノ制定ヲ望ムノ情況アリヤ否ヤヲ問フニ止マルヲ以テ、若シ是レヲ望ムトセバ其望ム所以ノ情態ヲ陳述セラレ併セテ其法ノ寛厳ノ度ニ付御意見モアラハ承知致シ度、其二項ノ各末段ニ掲クル要領事項ノ如キハ仮リニ立案ノ要目トスルモノヲ参考ノ為メ掲出セシモノ
 - 第18巻 p.162 -ページ画像 
ニテ、諮問ノ限リニ在ラサル事ヲ領解アラレン事ヲ乞フ旨ヲ陳述ス
十七番(山梨県)勧業会開設以来ノ経歴ニ就テ推考スルニ、此工務部ノ問題ニ対シ三日間ヲ限リ各員悉ク其意見ヲ陳述シ尽クス事ハ甚タ難事ナルヘシト思惟ス、何トナレハ彼ノ農務部ノ会ノ如キハ其問題ノ一項ヲ談議スルニ数日ヲ費ヤセシモ尚其尽クサヽルヲ遺憾トスルガ如キノ景況ナリキ、況シテ此工務部ノ問題ノ如キハ其項モ多ケレハ願クハ此問題ニ就テハ各員ヲシテ逐条ノ陳言ヲ止メテ全体ニ関スル意見ヲ述ヘシメラレン事ヲ希望ス
会頭 全体ニテハ錯雑ノ患アルガ故ニ逐条陳条《(述カ)》アラン事ヲ要ス
十七番(山梨県)我山梨県ノ工業ニ就テ概略ヲ陳述センニ其重モナルモノハ生糸並甲斐絹、其他絹織物及製紙等ニシテ其些細ナルモノヲ挙クレハ蓋シ数フルニ遑マアラス、而シテ該工業者ガ意向ヲ察スレバ概ムネ其取締規則ノ設ケアラン事ヲ望ムナルヘシ、従来此事ニ関シ私約ノ規則ヲ定メタル事無キニアラサレトモ、一二ノ異論者出ツル事アレハ宮府裁判ノ力ヲ欠クガ故ニ謹恪良質ノ工業者モ其違約者ニ蹂躪セラレテ奈何トモ致シ方ナキノ有様ニシテ其効力ヲ全フセシ事ナシ、故ニ従前ノ処ハ未タ曾テ完全ノ規約無シト云フテ可ナラン如斯ノ次第ナルヲ以テ言フニ忍ヒサルノ悪弊其間ニ顕出シテ啻ニ工業者カ直接ノ損害ヲ蒙ムルノミナラス工業ノ進歩上甚タ憂フヘキノ景況ナリ、今マ試ミニ県下大小ノ工業者総体ニ就テ概言スレハ、其三分一ハ速ニ取締法ノ制定ヲ希望シ其三分一ハ規則方法ノ何物タルヲ弁セス有無敢テ感覚ヲ起サヽル如キノ者ナリ、而シテ其余ノ三分一ハ制法規律ノ範囲内ニ良好ナル自由ノ存スル事アルヲ知ラス、却テ其制定ヲ厭悪スルノ徒ナラン、而レトモ若シ之ヲ其局ニ当レル県官若クハ郡吏ニ就テ其設否如何ヲ諮問スル事アラハ異口同音挙ナ其制定ノ一日モ早カラン事ヲ懇望スルナルヘシ、而シテ若シ政府ニ於テ之レカ取締規則ヲ制定セラルヽ事アラハ極メテ其大綱而已ヲ頒布セラレ、其細目ノ法則ニ至テハ地方ノ状況ニ従ヒ県庁限リ適宜之ヲ設定セシムルノ規律ナラン事ヲ欲ス
十五番(愛知県)我カ県下ハ陶磁器・扇子其他有名ノ物産モ尠ナカラス、然ルニ夫ノ同業組合ノ事ハ維新已降殆ント消滅ニ属シ自然勝手自儘ノ稼キトナリ、為ニ種々ナル悪弊ヲ生シ或ハ互ニ相鬩キ或ハ価ヲ相糶下シ、内ハ次第ニ疲弊ニ陥リ外ハ市場ノ声価ヲ墜シ、今日ノ光景ヲ以テ見レハ自由ハ却テ不自由ノ媒トナリ遂ニ産ヲ倒スニ至ル者比々皆是ナリ、中ニ有志ノ徒ハ深ク之ヲ憂苦シ百方力ヲ尽シ近年ニ至リ往々組合ヲ設ケ規約ヲ立ル者モ亦少ナカラスト雖モ、奈何セン私約ニシテ裁制ノ力ナキヲ以テ充分ニ其功ヲ奏スル事難シ、就中瀬戸ノ陶磁器、名古屋ノ扇子等海外輸出ニ係ルモノハ其同業組合法ナキカ為メニ最モ悪弊ヲ生セリ、瀬戸陶工ノ如キハ近年稍ヤ商事ヲモ兼ヌルモノアリテ横浜ヘ直送リ又ハ直注文ヲモ引受ルヨリ自カラ問屋トノ間モ相協ハス、加フルニ同工中例ヘハ甲者一ノ新形ノ注文ヲ引受ケ製造スルニ方リ、乙者陰カニ其形ヲ摸シ甲ノ未タ其注文主ニ送ラサル前キニ早ク已ニ低価ヲ以テ売出シ、或ハ見本品若クハ他人ノ発明等ヲモ一見シテ巧ミニ之ヲ窃ミ去ルカ如キ事アルヨリ其価
 - 第18巻 p.163 -ページ画像 
格モ自カラ破レ易ク随テ粗製濫造トナリ、為メニ愈世ノ信用ヲモ失ヒ販路ハ日ニ蹙マリ資本ノ活動ハ月ニ減却セントス、而テ其極困ニ至レハ俄カニ仲間申合ヲナシ問屋ニ哀請シテ其団結ヲ謀ルモ姑ラク他ニ流滑ノ道ヲ得レハ前議忽チニ破ル、如此キ既ニ幾回ナルヲ知ラス、然ルニ先年来同村陶磁器ノ改良進歩ヲ謀リ陶器館ヲ建設シ、汎ク古今各地ノ製品ヲ蒐集陳列シテ又精粗巧拙ヲ一目ノ下ニ鑑識セシメ以テ其進取ノ気象ヲ発育セン事ヲ企図セシニ、昨秋ニ至リ漸ク該館ノ落成ヲ告ケシカハ県令モ其開館式ニ臨ミ懇々説諭スル所モアリ又併セテ組合規約ヲ設ケサルノ弊等ヲ説キ示メシ其後為メニ課員モ出張種々力ヲ尽シ遂ニ漸ク行ハルヽ事ニハ至レトモ、是以固ヨリ充分ノ取締トハ言ヒ難シ、又名古屋扇子ハ浜神二港ニ輸出スルモノニテ之ニ従事スル問屋凡ソ六七軒アリシカ、是亦手工及問屋共ニ組合取締法ナキカ為メ問屋ハ皆残リナク昨年ニ至リ一時ニ倒産セリ、然ル所以ヲ問フニ彼曰ク、輸出ノ道開ケシヨリ爾来問屋ハ皆二港ニ出テ相争フテ外人ノ注文ヲ受ケルヨリ、例ヘハ甲者或外人ヨリ期限ヲ定メ十万本ノ注文ヲ取レハ乙丙モ亦然ス、而シテ甲乙丙ハ復之ヲ手工ニ嘱ス、時ニ手工等曰、注文多々アリ引受クヘカラスト、甲曰ク然ラハ価ヒ幾分ヲ増スヘシト、如此シテ乙ハ甲ヨリ丙ハ乙ヨリト互ニ価ヲ上糶スルヲ以テ原価ハ弥沸騰スル耳ナラス元来其注文ノ引受高ハ其産額ヨリ過当ナルカ故ニ其需メニ応シ難キ事、固ヨリ論ナキヲ以テ、甲乙皆其局ニ到レハ未タ乾燥セサル者、或ハ品質ノ不良ナル者ヲ加ヘ其数ヲ足シテ以テ之ヲ外人ニ致ス、故ニ外人之ヲ斥ケテ受ケス、事遂ニ違約ノ談判トナリ、或ハ価直ヲ格外ニ卑フシテ其罪ヲ償フ等ニ至ル、殊ニ此損失独リ甲乙ノ問屋ニ止マラス延ヒテ手工ニ及フヤ言ヲ俟タス、時ニ甲謂ラク、乙丙等ノ身代ハ意フニ若干ニ過キス、然ルニ彼等毎々ノ損失ヲ挙レハ無慮若干ヨリ下ラス必ラス其倒産近キニアルヘシ、我カ辛抱忍耐ハ唯此一時ニアリト、乙丙モ亦然リ、終ニ昨春ニ至リテ皆同時ニ倒産ス、此ニ於テ初メテ其迷夢ノ覚ルモ奈何セン其資力ハ已ニ尽キ再ヒ起ツヘカラサルヲ以テ一二ノ有志更ニ有力ノ者ヲ擁シ、向キノ問屋ナリシ者及手工ヲ合セ一ニ団結シテ新ニ一会社ヲ創立ス、今ノ名古屋扇会社ナルモノ即チ是ナリ、而レトモ私約ナルカ故ニ未タ此盟約ニ加ハラサル者モ少ナカラス甚ダ遺憾ト云フヘシ、管下工業ノ大略ハ概ネ如此、故ニ当務者ハ勿論各工業者ト雖トモ凡ソ事理ヲ弁スルモノハ規則ノ制定アラン事ハ実ニ切望ニ耐ヘサル所ナリ、其寛厳ノ如何ハ規則立案ノ後ニアラサレハ見込ハ立チ難シ、但書中組合ノ区域トハ一郡又ハ二三郡ノ同業ヲ纏テ一組合トナサシムル意カ、或ハ一市街一村落毎ニ組合ヲ設ケシムルノ意カ委員ノ説明ヲ望ム
説明員(首藤)一村若クハ二三村便宜ニ因リテ設クルトカ、若クハ類似ノ業ヲ併スルモ可ナルトカ謂ヘルカ如キ義ナリ、又寛厳ハ立案ノ后ナラサレハ見込立チ難シト云ハルヽハ尤モノ事ナレトモ、立案ニ就テ先ツ寛厳ノ例ヲ挙クレハ組合ヲ立ツルト否サルトヲ総テ人民ノ自由ニ任カスルトカ、又ハ同業者ヲシテ必ス組合ヲ立テシムルトカ又ハ持《(特)》ニ組合ヲ必要ト認ムル所ニハ県令ヨリ其組織ヲ命シ其他ハ自
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由ニ任ストカ、尤モ自由ノ設立ニテモ已ニ組合アル所ニテ開業スル者ハ必ス之レニ入ラシムルトカ、又違約者ヲ罰スルニモ罰ヲ重クスヘシトカ軽クスヘシトカ謂ヘルカ如キノ類ナリ
三番(大坂府)第一条ハ各府県下ノ商工自ラ之レカ制定ヲ望ムヤ否ヲ問ハルヽノ主意ナリヤ
会頭 然リ
五番(兵庫県)県下工業ノ重ナル者ハ播州ノ鋸、豊岡ノ柳行李及ヒ「マツチ」陶器ノ類ナレトモ、柳行李ハ同業相軋リテ遂ニ売リ崩シ、価格モ保チ難キカ故ニ規則ヲ設ケシ事アレトモ私約ナルヲ以テ之レヲ守ラシムルノ権ナク「マツチ」ノ如キハ一人之レヲ創メテ少シク利アルヲ見レハ、其近傍ニ続々之レヲ興スモノアリテ終ニ職工ノ乏キキニ苦シミ窃ニ其職工ヲ直奪テ互ニ倒ルヽモノ少ナカラス、故ニ是等ノ取締法ヲ県令ヨリ布令アラン事ヲ冀望スルモノアリト雖モ、多クハ漠トシテ知ラサルモノヽミ、然レトモ少シク識見アル輩ハ取締法ノナキニ苦ミ居ル所ナレハ概シテ望ムト称スルモ可ナランカ、又寛厳ノ事ハ条例ヲ立テヽモ其組合ニ入ルト入ラサルトハ人民ノ自由ニ任カスカ如キ事ニテハ其効ナカルヘキニ付、其辺ハ確ト制定ヲ要スルナリ、依テ其法律ハ万般ノ工業ニ通シテ適用スヘキ所ノ組合法ヲ設ケラレ、而シテ其施行方ハ人民ニ於テ希望スル者及ヒ官ニ於テ其組合ノ設置取締ヲ必要ト認ムル部分ヨリ実施スヘキモノト為スヲ要スル也、其所以ハ工業ノ細大ヲ問ハス悉ク実施スヘキモノトセハ山間僻地ニ二三戸在ル者ニ至ルマテ適用セサルヲ得ス、徒ニ煩ヲ増シ其益ヲ見サル等頗ル窮屈ノ場合ヲ感スル事、実際ニ於テ免レサル所アレハナリ
三十五番(和哥山県)一項二項ハ連帯ノ関係アルモノヽ如クナレバ、併セテ之レヲ陳ヘン事ヲ望ム
三番(大坂府)第一条ノ問ニ就テハ本府従来ノ経験モアレハ請フ之レヲ陳ヘン、大阪府ハ従来仲間組合ノ法能ク整フテ大阪府中ノ同業者ハ必ス一致団結シ毎団皆規約アリ、旧幕ノ頃ハ其申合ノ規約モ公然同業者ノ間ニ行ハレテ殆ト法律ノ如キ効力アリシカ故ニ其頃ハ一人約ニ違ヘバ直ニ其株ヲ没収シテ営業スル事ヲ許サス、其法尤モ厳粛ナルヲ以テ終ニ今日ノ隆盛ヲモ致シタルナリ、然ルニ維新後一旦之レヲ破リシヨリ一時ハ言フ可カラサルノ情況トナリシカ、是レモ二三ノ奸商輩カ利己ノ主義ヨリ破却セシ事ニテ心アルモノハ皆之レヲ痛嘆シタリ、府庁モ其捨置ク可カラサルヲ知リテ十四年ノ頃ヨリ商工取締法ヲ設ケタリ、之レハ旧法ヲ斟酌シテ組立タルモノニテ即チ本府甲第弐百弐拾弐号ノ布達ナルモノ是ナリ、是ヲ以テ十中ノ八九ハ規約モ稍整ヒタレトモ、昔日ノ如キ抑圧ノ手段ハ是レヲ今日ニ存スル事ヲ欲セサルカ故ニ、往々放縦ノ患ニ苦ム事ナキニアラス、規約アルモノハ仲間互ニ吟味シ合フヲ以テ近頃ハ大ニ改マリタレトモ何分裁制ノ力ナキヨリ奸商等ハ之レヲ潜リテ遂ニ良民ニ損害ヲ与フル事アリテ、一人ノ不承知ノ為メ二百人ノ申合セヲ破ラシムルニ至ル事少ナカラス、成ルヘクハ充分ノ裁制力ヲ有スル所ノ規則ヲ制定アラン事ヲ望ム、組合区域ノ事ハ大坂四区ハ大坂四区ニ通シテ一組
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合ヲ設ケ、堺ハ堺ノ市街、奈良ハ奈良ノ市街ニ設クル様ニ為スヲ可ナリト思フナリ、要スルニ是等ハ地方ノ便宜ニ任セテ可ナラン
二十八番(富山県)第一項ノ工業者ト第二項解説中ノ工業者ト同一ノモノナルヘシ、果シテ然ラハ問屋商ニシテ職工ヲ傭使スルカ如キ商工相兼業ノ者ヲモ併セテ同キ組合ニ入レントリス事カ、説明ヲ請フ
説明員(首藤)兼業者モ無論同業者ト見做ス積ナリ
二十五番(秋田県)秋田県ハ工業者少クシテ県内三万人ニハ過キサルヘシ、又組合ノ如キハ曾テナキト云フモ可ナルカ如キ有様ナレハ工業者カ之レヲ望ムヤ否ヤト問フトキハ、寧ロ之レナシト云フヨリ外アラサレトモ甲乙互ニ相妨クルノ風モアレハ制定ハ望マシキモノナリ、而シテ厳ニ過レハ却テ毀ナフノ恐アレハ唯市街都邑ノミニ行フテ山間村落ニハ暫ク及ハサランヲ要ス、然レトモ其規約ニハ仲間破約ノ事ト解約ノ時ノ心得等ハ成ルヘク厳粛ナラン事ヲ望ム、右大綱ノ外取締細則ハ各地方限リ適宜制定スルモノトシテ然ルヘクト信ス
三十三番(広島県)第一項第二項ノ事タル最重大ノ件ニシテ一朝ノ能ク説キ尽ス所ニアラサルヘシト思フナリ、願クハ各地方ニ夫々工業ノ習慣ヲ推問シ而シテ海外商工ノ条例等ヲモ取捨参酌シ、徐ニ其法案ヲ設ケ置キテ本年十月ノ会ニ於テ更ニ諮問ニ付セラレタシ、故ニ今会ハ第一第二ノ問題ヲ措テ第三以下ノ意見ヲ御尋ニナル方可然此段敢テ建言ス、猶又一言ス、幸ニ我建議ヲ納採セラルヽナレハ海外各国ノ商工条例ノ如キモノヲ各員カ参考ノ為メニ一応演説アラン事ヲ希望ス
十五番(愛知県)三十番ノ建議ヲ賛成
説明員(首藤)従来ノ習慣ヲ取調フル事ハ既ニ本局ヨリ各府県ニ照会シタリ(十四年中)未タ回答ノナキ所アレトモ追々取調書ハ集レリ、然レトモ其取調書モ或ハ密ナルアリ、或ハ疎ナルアリテ猶夫ノミニテハ不十分ナルカ故ニ之レヲ問フ事トハナリシナリ、畢竟本項ノ問題ハ各府県下ノ工匠自カラ同業組合ノ取締規則アラン事ヲ望ムヤ否ヲ尋ル精神ナリ
会頭 過刻説明員ヲシテ問題ノ要旨ヲ陳述セシメタルトキハ三十三番ハ未タ出席ナカリシヲ以テ此発言アリシヤニ思ハルレトモ、此問題ノ要旨ハ単ニ組合法及取締法ノ制度ヲ望ムヤ否ヤノ現況ヲ問フニ止マリ但以下ノ事項ニ付意見ヲ問フモノニ非サレハ其旨ヲ諒セラレヨ
三十三番(広島県)然ラハ本県ハ之レヲ望ムモノナリ、例ヘハ宮島ノ一小島ハ弐百五拾戸ノ工業家(所謂宮島細工)ニ過キサレトモ一ケ年三万円ノ金ヲ得、広島区ニモ七千戸程ノ細工職アレトモ格別高尚ノ技芸ト云フニモアラサルカ故ニ、一年カ一年半ニシテ略ホ其職ヲ覚《(ユ)》コルトキハ又師ニ就クヲ屑トセスシテ往々詐偽ヲ逞スルノ弊アリ又広島ノ日傘ノ如キハ近来輸出ノ多キヲ以テ随テ粗濫ニ流レ忽チ其価格ヲ乱ル、是レ組合取締法ノナキニ依リテ然ルモノナリ、故ニ広島県ニ於テハ速カニ其規約ノ制定アラン事ヲ望メリ
二十九番(福井県)規則ハ先以テ輸出品ノ製造者ニ限リ尤モ厳ナラン事ヲ要ス
三十番(島根県)我地方ノ工業者ハ概シテ団結力ニ乏シク未タ組合取
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締規則ノ制定ヲ望ムノ兆ヲ見ス、然レトモ玆ニ一例ヲ挙ンニ木綿ハ従来出雲国ノ一大物産ナルニ寸尺短縮ノ弊漸ク生セリ、而シテ此弊ヲ矯正セントスルニハ同業者ヲ設ケテ互ニ規約ヲ践マシメサルヘカラス、既ニ組合ヲ要用トセハ必ラスヤ亦其取締規則ヲ設ケサルヘカラス、若今工業者に向テ組合取締規則ノ必要ナルヤ否ヤヲ問ハンニ心アルモノハ必ス其要用ナルヲ答ヘン、而シテ其規則寛厳如何ノ点ニ至テハ固ヨリ厳ナルヲ好マスト雖モ甚タ寛ナルヲ望マス、要ヲ取テ之レヲ言ヘハ組合者ハ必ス取締規則ヲ遵守セサルヘカラサルハ勿論、地方長官ニ於テモ何々ノ工業ハ組合ヲナスベシト命スレハ之ニ服従セザルヘカラサル程ノ効力ヲ有スルモノヲ制定アラン事ヲ望ム
十八番(滋賀県)概シテ望ムト云フテ可ナリ、然シ之レヲ望ムノ委曲ヲ詳悉セントスルトキハ先ツ実着ニ工業ノ本分ヲ尽サントスルモノハ皆ナ之レヲ望ムト雖モ、他ノ少部分ハ却テ之レヲ忌ムノ惰ナキ克ハス、敢テ説明員ニ問フ、本項問題ノ主意ハ他日民法ヲ制定スルトキノ材料ニ供セントスルノ意ナリヤ、又ハ目下人民ノ望ム所ナレハ此条例ヲ設ケントスルノ意ナリヤ
説明員(首藤)全ク目下人民ノ望ム所ナレハ、之レヲ設ケテ其私約ノ効ニ乏シキ点ヲ助ケント欲スルニアリ
十八番(滋賀県)果シテ然ラハ実ニ貴重ノ問題ニシテ我々モ亦之レヲ甚ダ望メリ、本県ノ如キ従来ハ可ナリ規約法モアリシ事ナレトモ、維新后ニ至リテハ皆ナ破レテ殆ト収拾スヘカラサルノ有様ナルニ付再ヒ之レヲ設クルモノモ多ケレトモ所謂私約ニシテ裁制力ナキガ故ニ随テ設クレハ随テ破ルヽニ付、有志者ハ皆ナ政府ノ条例ヲ発行セラレン事ヲ熱望セリ、就中麻布ノ如キハ万ヲ以テ数フル同業者故ニ曾テ規約ヲ設ケタル事アレトモ、去ル十五年ニ至リテ再ヒ破レタリ之レ其裁制力ノ非サルカ為メニ如何トモスル事能ハサルニ因リテナリ、寛厳ノ如何ハ細別シ難ケレトモ地方長官ノ認可ヲ受クル事ニサヘ決スレハ他ハ問フニ及ハサルヘシ(公利公益ニサヘ規約ヲ立ツレハ)敢テ政府ヨリ故ラニ寛厳ニ意ヲ用ヰス共之レヲ地方長官ニ任セテ十分ナリト信セリ
十四番(三重県)一般ニ望ムトハ言難ケレトモ私約ノ破ルヽハ常ニ資本流滑ノ時ニ在テ、其成ルハ同業悉ク不景気ノ日ニ存スレハ申合ノ規則ハ同業者ノ利益タル事ヲ知ラサルニ非ス其窮スル時ニ当リテ自然申合規約ノ成立ニ因リテ是レヲ観レハ、取締規則ノ制定ハ一般ニ望メル者ナリト云フモ誣言ニアラサルヘシ、今日ノ如キ有様ニテハ地方ノ保護モ行届兼ヌルニ付本員ハ切ニ之レカ制定ヲ希望ス
四番(神奈川県)県下ニハ(一般大工・左官ノ如キヲ概シテ云フニハアラス)織物生糸ノ如キモノニ取締法アラン事ヲ望ム、今日生糸ニハ申合規則アレトモ猶或ハ破ルヽ事アランヲ恐ルノ情況アリ、織物モ申合規則ヲ設ケント望ム者アレトモ所謂裁制力ノ地方庁ニアラサルガ為メニ官民共ニ之レニ苦メリ、願クハ速ニ取締法ノ制定アラン事ヲ望ム、寛厳ハ何レニシテモ裁制力ノ備フン事ヲ企望ス
十一番(千葉県)我県下ハ著シキ工業ナシト雖モ固リ本項ノ如キ取締法ノ制定アラン事ヲ望ム、然レトモ本項ノ精神ハ首ナル工業ニ就キ
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各府県同一ノ法ヲ布ク可キ意ナリヤ、工匠ト云フ以上ハ大工・左官何ニテモ同業組合ヲ設クル事ナリヤ、敢テ説明ヲ請フ
説明員(首藤)各府県同一ノ法ヲ設クルヤ否ヤハ今答弁スル能ハス、又工匠中同業者ノ多キ所ニハ之ヲ設クル積リナリ
十一番(千葉県)農家ノ製産物ト工業者ノ製造物ト区別シ難キモノアル様ナリ、何ヲ以テ之レヲ別ツカ
説明員(首藤)区別ノ仕方ハ判然答フル能ハス
三十六番(徳島県)我徳島県ニ於テモ此組合ヲ最モ望ムト考フ、既ニ農商連帯ノ藍玉製造ノ如キハ取締無キニ苦ミ曩ニ本省ヘ上申ノ末其取締法ヲ設ケタリ、又木綿織ニ於テモ一物産ナルヲ以テ同業者相謀リテ取締方法ヲ設ケシガ、程ナク破レシヲ以テ昨年十二月ニ至リ之レヲ再興ス、是等ハ即チ同業組合ヲ望ムノ一徴ナリ、然ルニ此法タル効力ノ乏シキカ故ニ違約者ノ処分ニ苦シム、是レ裁制力ノ薄キカ故ナリ、如此ナルヲ以テ実ニ其取締法ヲ切望ス、其寛厳ニ至リテハ厳ナル方可ナリトス、寛ナレバ狡滑者ノ免カルヽ憂モアリ五番会員ト同感ナリ
十二番(茨城県)管下ハ工業上専業ナク多クハ兼業ニシテ維新前ハ仲間申合セノ行ハレシ事アルモ維新後ハ解放ニ属セリ、爾後更ニ又再起ノ者アルヲ以テ見レハ其希望ノ点ニ至リテハ各員ト同感、其他五番・十八番ノ説アルヲ以テ同様ノ件ハ弁セサルヘシ
四十一番(佐賀県)本県ハ尋常大工・左官等ノ外更ニ工業ト称スヘキモノアル事ナシ只陶器ノ一品アルノミ、故ニ此陶器ニ就テ見聞スル所ノ情況ヲ陳ヘンニ、是迄組合ヲ為シ或ハ分離シ其間種々ノ事情モアリシ由ナレトモ、畢竟工業者工芸ノ進歩ニ熱中シ只管事業ノ隆盛ヲ企図スル実況ナレバ取締法ノ如キハ必希望スルナラント思ハル、其規則ノ寛厳ニ至テハ各員ノ陳ヘシ通ニテ別ニ異見ナケレハ陳セス
二十三番(岩手県)岩手ハ工業ニ乏シク管下ノ民情ニ於テハ茫乎トシテ之ヲ望ムモノ無キト云フモ可ナレトモ、勧業課ニテ将来ノ事ヲ推考スルトキハ此取締法ノアルヲ要ス、本県ニテ稍知覚ヲ具ルハ製糸家位ノモノニシテ其他ノ人民ハ之ヲ希望スルノ思想アルモノナシ、其法ノ寛厳ニ至リテハ余リ厳ニ過サルヲ可トス
三十五番(和歌山県)和歌山ニ於テハ工業者少シトセス、市街人口凡ソ二万戸ノ中其大部分ハ工業ニ従事スルモノニシテ、其重ナルモノヲ挙レハ織物及建具類ノ製作等トス、又市外ノ地ニ於テ重ナル工業ハ漆器・傘・足袋等枚挙ニ遑アラス、抑組合法ハ政府ノ制定セラルルニ非レハ工業上百般ノ事ニ関シ不取締少カラス、爰ニ一例ヲ挙レハ曾テ漆器業ノ者同業組合ヲ定メ協会ヲ設立シタリシニ、同職住居ノ地ハ元来一区域ヲ為シ居レハ(戸数凡ソ壱千有余)同業申合又ハ組合ヲ設ルニハ頗ル便利ナリト雖トモ、其組合申合セハ同業交互ノ私約ナルヲ以テ、之レニ従ハサルモノハ郡戸長ヨリ説諭ヲ加ル位ニ止リテ敢テ従ハサルモノアリトモ之ヲ責ムル能ハス、尤苟モ其契約ニ同意ヲ表シ加印シタルモノ万一其契約ニ背クトキハ、契約書中違約料云々ノ条項ニ対シ民事ニ訴ル事ヲ得レトモ加入セサルモノハ之レヲ如何トモスル能ハス、故ニ同業組合法ノ制定セラレン事ヲ万々
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企望ニ耐サルナリ
三十四番(山口県)工業者組合法ノ制定ヲ望ムハ各員ト同感ナリ、管下ニテモ製紙・織物業者等ニハ奸商ノ計策ヲ防カンタメ、同業者私約ヲ結ヒ改良ヲ図ルト雖トモ其裁制力ナキヲ以テ効験ヲ見ル事甚薄シ、希クハ速ニ制定アラン事ヲ望ム
二十二番(宮城県)本県仙台区ニ於テハ織物・筆・漆器等ノ製造アリ而シテ其間種々ノ弊害アルヲ以テ県庁ニテ誘導ヲナシ同業組合ヲ設ケシメタルモノモアリシカ、裁制ノ力ナキヲ以テ十分ニ行ハレス、故ニ法存スルモ其効用ヲナサス、昨年来生糸改良組合ヲ管内一般ニ設ケン事ヲ誘導中ナリト雖トモ是迚モ裁制力ノ乏シキハ同一ナリ、就テハ此条例ノ御制定ヲ望ムヤ否ヤノ点ニ至リテハ先ツ望ムト云テ可ナリ、中ニハ狡猾者ノ不同意ナル者幾分カアルヘキモ真正ノ工業者ハ必ラス希望スト考フ、本員ニ於テハ到底是等ノ条例御制定ナクテハ将来工業ヲ保護スル能ハスト思考スルカ故ニ最モ希望ニ堪ヘス其寛厳ニ至リテハ十八番会員ト同感ナリ
十六番(静岡県)組合法ハ必用ナリト考フ、県下ハ竹細工・紙・畳表漆器等ノ如キ物産ナレトモ最モ此法ヲ望ムハ竹細工・漆器ノ二種ニアリ、是マテ組合法ノ如キモノァラン事ヲ望メトモ、未タ曾テ設ケアリシ事ナケレハ百般ノ工業上種々ノ弊害少ナカラスト雖トモ、就中竹細工・漆器ノ如キハ多ク粗造ニ流レシヲ以テ外国ノ信用ヲ失ヒ其困難ナル事年一年ヨリ甚シ、此ノ衰況ヲ挽回セントスルニハ到底民間私約ニテハ行ハレ難キカ故ニ、是等ノ取締法ハ一日モ早ク御制定アラン事ヲ望ム、尤モ此他ノ工匠及山間村落ニ至ルマテ該規則ニ由リ組入レラルヽハ猶予アラン事ヲ望ム
三十九番(福岡県)本県下物産中十万円以上ノ産額アルモノヽ二三ヲ挙クレハ、博多織・久留米絞・甘木絞・久留米絣等ニテ三四年前同業組合ヲ設ケ大分取締法モ立チ精品ヲ製シ商標等モ付スルノ場合ニ至リシカ竟ニ破レタリ、是レ元ト私約ニ成リ立チ裁制力乏シキヲ以テノ故ナリ、依テ今日ハ右組合法有レトモ無キカ如シ、且近来ハ博多織モ漸ク粗造ニ流レタリ、元来旧藩ノ頃ハ織元僅ニ十一軒ノミナリシカ維新後ハ百二三十戸ニ及ヒ機数モ二百個ニ至リシカバ、曩ニ良品ヲ製セシ十一軒モ他ノ製造家ニ圧セラレ竟ニ粗品ヲ製スルニ至レリ、是故ヲ以テ此取締規則御制定ハ該営業人等ニ於テモ必ス望ムナラント考フ、其他大工・左官ノ如キモ曾テ私約ヲ立テシ事アリシカ遂ニ其儘ニ流ル、有志ノモノハ往々之レヲ望メリ、規則寛厳ニ至リテハ成法ノ上ナラテハ容易ニ得失ヲ陳述ナシ難ク其細目ノ如キハ固ヨリ各業体ニ因ルモノナレハ先ツ大体ニ就キ規則ノ御制定ヲ望ム
三十一番(鳥取県)工業者ハ乏シク多クハ兼業者ニシテ是迄組合等アリシ事ナク、其取締規則ノ制定ヲ望ムヤ如何ニ至テハ概シテ先ツ無感覚ノ景況ナリ、是レ民度ノ進マサルニ因テ然ルナラン、然レトモ当局者ニ於テハ素ヨリ切望スル所ナレハ一日モ早ク御制定アラン事ヲ欲ス、其寛厳ニ至テハ五番会員ト同感ナリ
三十七番(高知県)紙ハ本県著名ノ産ニシテ其製造モ頗ル盛ナリ、然レトモ未タ組合ノ如キモノアルナシ、曾テ紙専業ノ一村ニテ三四年
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前組合法ヲ設ケシ事アリシカ、他ノ組合ヲ欲セサルモノヽ為メニ竟ニ倒サレタルノ有様ナリ、依テ今日純粋ノ製紙家ハ孰レモ取締法ノ設ケアラン事ヲ望ムト考フ
四十四番(鹿児島県)本県管内ニ於テ著名ナル工業ト唱フヘキモノハ独リ薩摩陶器アルノミ、然シテ此業タル元来旧藩ヨリ其工人ヲ扶持シテ之ヲ保護シ其製品ハ全ク藩有ニ帰シタルカ如キ性質ナリシカ、廃藩後初メテ人民ノ私業ニ属シタリ、此変遷ニ際シ業務大ニ衰頽シ全ク地ニ墜タルノ景況ヲ顕シ、爾来今日ニ至ルモ微々トシテ振ハサルノ有様ナリ、此他紡績所モ亦旧藩ノ力ヲ以テ設立シタルモノナレハ随テ多数ノ職工ヲ使役シ器械モ極メテ盛大ナリト雖トモ、此工場ノ性質タル本項ニ於テ言フヘキモノニ非スト考フレハ、我県下ニ於テハ工業ノ以テ本項中ニ言フヘキモノ無キカ如シト雖トモ、工匠ト言ヘハ其区域頗ル広ク、即チ大工・壁塗・木挽・建具職・鍛冶・鋳物師・笠・傘・提灯張・塗師・差物・樋作・紺屋・紙漉・網差・莚織・素麺等其他枚挙ニ遑アラス、而テ又近来漸ク製茶・製糸ノ起ルアリ、然シテ是等ノ類中専業アリ、兼業アリ、或ハ農ヲ兼ネ或ハ商ヲ兼ヌル等錯雑極リナキハ地方辺土ノ免ル能ハサル常態ニシテ、其専業ヲ為スモノ僅々鹿児島ノ一市中二三ノ職業者アルノミニ過キサレトモ、暫ク之レニ就テ論セハ其十中ノ七八ハ未タ尚何等ノ感覚アラサルモノノ如ク、其二三ハ稍同業組合規約ノ制定ナカル可ラサルノ感覚ヲ惹起スルニ至レリ、此ノ如ク県下人民ノ意向其二三分ハ此域ニ進歩セシモノトスルトキハ、其何業ヲ問ハス是ヲ誘導シテ同業組合ノ規約ヲ結ハシメハ物産ノ増殖ヤ品位ノ改良ヤ代価ノ平均ヤ其益ヲ得ル蓋シ尠ナカラサル可シ、故ニ此同業組合規約ハ必要ナルモノト思考セリ、然シテ其規約制定ノ寛厳如何ニ至テハ本員輩ノ得テ測知シ能ハサルモノナリト雖トモ、暫ク本県目下ノ情況ニ付我一己ノ所見ヲ言ハヽ県令ハ太政官若クハ主務卿ノ命令ヲ得テ之ヲ管内ニ告諭シ、其工匠ノ同業組合取締ノ規約ヲ結ハント欲スルモノヨリ地方ノ便宜ニ応シテ同業ノ協議ニ成立タル規約ヲ差出スニ当リテハ之レヲ取捨斟酌シ、実地ノ情況ニ照シ許否スルヲ得ハ可ナラン
十番(群馬県)最モ規則ノ制定ヲ望ム、富岡製糸所・新町紡績所ノ如キ官設工場ハ規則充分ニ相整ヒ工男工女ノ取締法モ能ク立チ居レハ之レニ傚ハントシテ民立ノ製糸場ニモ一旦ハ規約ヲ立テタリシカ昨今ニ至リテハ製糸モ粗ニ流レ、或ハ甲ノ工女ヲ乙ヘ移シ、又ハ組合中犯則者アルモ元来其取締法タル私約ニ成ルヲ以テ効力薄キガ故ニ到底一般ノ取締規則立サレハ他ヨリ之ヲ制シ難シ、当時桐生織物ハ桐生会社ヲ立テ其商標ヲ付シ、伊勢崎太織縞ニ於テモ伊勢崎太織会社ヲ立テ夫々取締法ヲ設クレトモ、矢張私約ナルヲ以テ往々奸商ノ為メニ破ラルヽニ至ル、如此ノ情況ナルヲ以テ一日モ早ク組合取締条例ノ制定ヲ望ム
二番(京都府)同業組合法ノ事ハ我京都府ニ於テハ工商業隆盛便益ヲ計ル為メ客年府下ニ布達シ、工商ノ同業組合ヲ設ケント欲スル者ニハ規約書ヲ出サシメ不都合ナキモノハ認可ノ指令ヲ与フ事ト為シタリシカ、之レヲ望ムモノ頗ル多クシテ既ニ認可シタルモノ即今殆ト
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三十組ニ及ヘリ、如斯場合ナルヲ以テ大体ニ就テ云ハヽ同業取締法ハ工匠ニ在テモ之レヲ望ムト云フテ可ナラン、尤百般ノ工匠尽ク是ヲ望ムヤ否ヤハ知ル能ハス、其小部分ニ至リテハ先刻十八番ノ説モアレハ今又之レヲ贅セス
六番(長崎県)一二ノ工業ニハ今日官ノ検束法アラン事ヲ陽ニ欲スルノ勢況アレハ、他ノ工業者モ必ラス陰ニ之レカ設アラン事ヲ望ムアラント思考ス、併シ是マテ申合ヨリ成立タル組合会社ニハ往々破潰ノ例少ナカラサレハ、庶幾ハ其覆轍ニ陥ラサル様条例ノ御制定アラン事ヲ望ム、其寛厳等ノ度ハ希望スル所五番会員ノ説ノ如シ
三十八番(愛媛県)今日県下工業者ノ状態ヲ考レハ概シテ取締規則ノ制定アラン事ヲ望ムモノト信ス、元来我県下ハ著シキ工業少シト雖トモ高松ノ茶・日傘ノ如キハ近来外国ニ輸出セルヲ以テ時トシテハ格外夥多シキ注文ヲ受クル事アレトモ、工人資力乏キカ為メニ或ハ其需ニ応スル事能ハサルノ場合アリ、是レ畢竟同業組合ノ設ケナキニ由ル、丸亀ノ団扇・竹細工等ハ会社ノ組織ニシテ竹細工等ノ如キハ今日迄其法ヨク行ハルレトモ、他ニ組合ノ設ケアリシハ概ネ五六ケ月間ニシテ瓦解ニ至レリ、又伊予ニ紙・生蝋・織物等ノ産物アリ就中紙ハ年々粗製濫造ノ弊ヲ生シ随テ従来ノ良慣美習モ廃シタリシカ先年同業者ヲ誘導シテ稍回復セシモノアレトモ裁制力ナキカ故ニ又其事モ破レ竟ニ人ヲシテ人民相互ノ約束ハ到底其目的ヲ達スル事ヲ得サル者ノ如キ感ヲ惹起サシムルニ至レリ、故ニ此等取締規則ノ制定アラン事ヲ望ムナリ
二十一番(福島県)本県下ニ於テモ取締規則ノ制定アラン事ヲ望メリ尤モ之レヲ小別スレハ或ハ望ム者ト望マサル者トアルヘシト雖トモ要スルニ物産ノ改良蕃殖ヲ謀ラントスルニハ右ノ取締法ナカルヘカラス、但是迄ノ組合ナル者ハ人民相対ノ約束ナレハ十分其効ヲ奏スル能ハサルナリ、速ニ裁制法ノ制定ヲ望ム
四十番(大分県)本県下ハ工業ニ乏シ、然レトモ農家ハ琉球藺ヲ栽培シテ之レヲ莚ニ織立テ或ハ原料ヲ他ヨリ購買シテ織ル者アリ、旧藩ノ時ハ租税トシテ之レヲ徴シ又多クハ旧藩ニ於テ引受ケ之レヲ売払ヒタリ、且取締法モアリテ、莚ノ目方及寸尺ニ制限ヲ置キ其欠ケタルモノハ之レヲ売ル事ヲ許サヽリシ、置県後其制ノ解カレ粗製ニ流レタルヲ以テ明治十三年ニ於テ取締法ヲ設ケシカ、十五年ニ至リ一般商況ノ不活溌ナルカ為メ漸ク代価下落ノ傾向アリタルヲ以テ却テ其原因ヲ取締規則ニ帰シタリ、然レトモ又今日ニ及ヒテハ之レヲ欲スルノ情ナキ能ハス、又中津ニ団扇会社アリ、常ニ職工ヲ傭フテ之レヲ作ラシム、然ルニ其事ニ熟練ナル者ハ賃銀ノ多少厚薄ニヨリ或ハ去テ他ノ傭主ニ就ク者アルヲ以テ、会社ハ之レヲ患ヒ目下其取締方考案中ナリ、要スルニ本項取締規則ノ制定ヲ望ム者ト望マサル者トアルヘシト雖モ、当局者ニ於テハ之レヲ切望セリ、尤モ其規則中ニハ大区域ト小区域トノ別アラン事ヲ要ス、且ツ取締ヲ立ツルニハ是迄ノ如ク加入金若クハ身元金等ヲ出サシムルハ却テ其意ヲ縮ムルノ恐アリ、故ニ成ルベク出金ヲ要セスシテ勢力アル方法ヲ設ケラレン事ヲ望ム
 - 第18巻 p.171 -ページ画像 
三番(大坂府)各地民情異ナレハ一定ノ規則ヲ設ケテ之レニ因ラシメントスルハ難カルベシ、故ニ中央政府ニ於テハ唯大綱ノミヲ制定セラレ他ノ細目ニ至テハ、府知事県令ニ於テ其管内工業ノ進歩ヲ図リ其公益ヲ進ムルニ要用ト認ムルトキハ適宜組合ノ区域ヲ定メ、同業者一致団結仲間申合規約ヲ編成履行セシムル事トナシ、其申合規約中ニハ左ノ諸項ヲ編入スヘキ様イタシタシ
  第一 仲間信用ノ保護並不正ノ処業ニ関スル事
  第二 違約者処分ノ事
  第三 他ノ仲間ニ対スル措置方ノ事
  第四 自他ノ公害ヲ予防スル事
  第五 仲間取締人撰挙法並其権限・職掌及年限ノ事
  第六 仲間費用ニ関スル事
  第七 仲間名簿ノ事
  第八 件間会議《(仲)》ノ事
   前件ニ関シ府知事県令ノ布達・指令等ニ違背スル者ハ其地方違警罪ヲ以テ罰スベキ事
二十番(長野県)本県下産物ノ主ナル者ヲ掲クレハ生糸・元結・漆器鋸・紙等ナリ、今其概略ヲ陳セン、我県内ニ於テ取締法ノ制定ヲ望ム者ハ凡ソ四分、他ノ六分ハ漠トシテ痛痒相感セサル者ノ如シ、已ニ昨年中物産ノ景況視察ヲ命セラレ県内各地方ヲ巡回セシトキ工業者ニ向ヒ同業組合ノ必要ナル所以ヲ談セシモ其感覚至テ鈍シ、然レトモ全管内ニ於テ凡四分ノ熱望者アリ、既ニ四分ノ先覚者之レヲ望ム以上ハ殆ント管内ノ輿論ト言フモ敢テ不可ナルナカラン乎、到底物産ノ改良進歩ヲ図ラントスルニハ同業取締法ヲ確立セシムルニ在リト信ス、又取締法ノ寛厳如何ニ就キテハ少シク厳ナル方可ナラン何トナレハ此令ヲ発行セラレタル以上ハ是非共其令ニ随フテ組合ニ入ラシムヘキヲ要ス、又大工左官等ノ如キ小部分ハ組合ヲ立ツルニ及ハス、先ツ大部分ヨリ規則ヲ設ケラレン事ヲ要ス、余リ細密ニ渉ルトキハ無乃不可ナランカ
十九番(岐阜県)管下重大ノ物産タル紙・生糸・結城・縮緬・傘等ノ工業者ニハ組合ヲ設ケ取締法アルヘキハ必要ナリト信ス、紙ノ如キハ四五年前組合ヲ設ケシカトモ僅カ二三ノ奸商ノ為メニ破ラレ今日ハ大ニ困難セルノ有難《(様)》ナリ、生糸ノ如キハ昨年中工業者ノ重立タル者ヲ招集シテ意見ヲ問ヒシニ皆取締法ノ制定アラン事ヲ望ムノ景況ナリ、又結城・桟留・傘ノ如キハ未タ同業組合法アリシ事ナケレトモ到底此法ナケレハ将来成立スル事能ハサルヘシト考フ、故ニ速ニ取締法ノ制定アラン事ヲ望ム
二十八番(富山県)商工兼業者中ニハ是迄私約ヲ取結ヒタルモノ四五個アリタレトモ、純然タル工業者中ニハ未タ是等ニ心付ル様子モアラサレハ概スルニ無感覚ノ者多カルヘシ、左レトモ当局者ニ取テハ速ニ規則ノ制定アラン事ヲ望ム、果シテ此規則ノ発令セラレタル上ハ十六年太政官第十三号布達(地方勧業諮問会)ノ御主意ヲ施行スルニ於テ大ニ便宜ナルベシト信ス、尤モ其取締法ハ一地方ノ盛衰ニ関スルカ如キ主ナル業ノミニシテ一般ニ及フハ不可ナルヘキカ、或
 - 第18巻 p.172 -ページ画像 
ハ先ツ商業者ヨリ取締ヲ成シ来ル方却テ行ハレ易キ類モアルベケレハ商工相通スルノ各称《(名)》ヲ付セラレタシ、又同業者其区域ニ於テ組合ニ加盟スルト否トヲ各自ノ自由ニ任スカ如キハ不可ナリト信スレハ是丈ハ是非共遵守セシムルヲ要ス
三十二番(岡山県)我県下ニ於テ畳表ノ製造ハ一ケ年十万円以上ノ産額アリ、然ルニ近年其製造方粗悪ニ流レ或ハ寸尺ノ不足アル等ヨリシテ大ニ世間ノ信用ヲ失シタルヲ以テ両三年前始メテ之レカ取締法ヲ設ケタリ、左レ共之レハ問屋ノ改メル迄ニシテ其他ニハ未タ組合取締法ノ如キモノアリシ事ナクシテ同業組合ノ何タルヲ知レル者スラ少ナケレハ、今一般ニ於テ規則ノ制定ヲ望ムヤ否ヤト云フニ至テハ殆ト答弁ニ苦シムナリ、然レトモ深ク将来ヲ慮レハ何卒速ニ制定アラン事ヲ望ム、尤工匠取締ト云フトキハ其区域広クシテ同業ノ組合ハ必ナラス此区域ト定ラレテハ実際差支アリテ苦情困難ナキニシモアラサルヘシ、此点ニ就キテハ最モ注意アラン事ヲ望ム
七番(新潟県)新潟ニ於テ旧来ヨリ製スル所ノ畳・漆器・建具ハ其数頗ル巨多ニシテ首トシテ北海道ヘ輸送セリ、然ルニ近来職工ノ貧困ニ迫ルハ啻ニ其製品ノ粗悪ニ流レ信ヲ堕セシノミナラス奸商其間ニ害ヲ与ヘシニ由ルナラン、是レ畢竟同業組合法ナキノ然ラシムル処ナリ、其他織物・鍛冶(剪刀小刀等ノ細工)生糸等ノ産物アリ、已ニ栃尾紬ハ十四年頃県庁ヨリ説諭シテ取締組合ヲ設ケ織子ノ取締其他ノ法ヲ立ツル事ヲ促カシタリシニ、現今ニ至ル迄能ク継続セルハ畢寛早ク取締法アリタルヲ以テナラン、縮布産地《シキフ》ノ有志者亦栃尾ニ傚ヒ昨年取締法ヲ設ケタリ、是ニ由テ之レヲ看レハ同業取締規則ノ必要ナルハ論ヲ俟タス人民モ亦之レヲ望メルヲ知ルヘシ
 本員モ裁制権ヲ要スル事ハ勿論ナレ共、我県下ニ既設ノ組合規則中ニハ違約金過怠金ノ約束アルヲ以テ互ニ之レヲ黙守スルハ勿論、若シ違約者アルモ規則ニヨリ裁判所ニ向テ違約金過怠金等ヲ要求スルノ権利充分アルヲ以テ其裁制権ヲ要スルヲ先キンセス、只私約ニテモ組合ノ速ニ成ラン事ヲ望ムノミ、又民業ニ干渉シテ強テ法規ニ随ハシメントスルハ甚タ困難ナルヘシト考フレハ、要スルニ中央政府ヨリハ簡約ノ規則ヲ設ケテ必ラス之レニ拠ラシムル様御達アリタシ大工左官ニ迄及フヘキ事ハ無論ナリ
八番(函館県)我県ハ草創日尚浅ク百事未タ整ハス就中工業ノ如キハ最モ微々タリ、然レトモ海産物ハ夥多ニシテ昆布・煎海鼠・干鮑等ノ外国ニ輸出スル者甚タ多シ、然ルニ明治十四五年ノ頃ヨリ追々支那地方ニ声価ヲ落シ、従テ其販売ノ高モ減少スルニ至レリ、是レ全ク其品ノ粗製ニ流レタルト産出ノ過度ニ由ルナルヘシ、仍テ一昨年ヨリ百方諭示聊カ取締法ヲモ設タレトモ、日尚浅ク未タ其効ヲ見ルニ至ラス、又取締法ノ寛厳如何ニ至テハ別ニ意見ナシト雖トモ、只十分効力ヲ有スル法ノ制定アラン事ヲ望ム
二十六番(山形県)生糸・織物営業者ニ於テモ大ニ困難セルノ状況ナルカ故ニ同業取締規則ノ制定ヲ希望セリ
二十七番(石川県)明治十二年頃ヨリ同組合ノ事ニ就キテハ屡々諭達セシ事アリシカ、第一陶・銅・漆器ノ如キハ近年益売リ崩シ、其他
 - 第18巻 p.173 -ページ画像 
ノ弊続々生シ殊ニ輸出ニ係ル物品ハ大ニ外人ノ信用ヲ失シタルヲ以テ、明治十五年此弊害ヲ矯正センカ為メ有志同盟ヲ結ヒ追々改良ノ点ニ着手スルニ至レリ
 同業組合ノ取締法ニ至テハ兼テ現業者ニ於テモ欲セシ位ナレハ、取締ニ係ル規則ハ厳ニ近キモ寛ニ流レサル様制定アリタシ
四十二番(熊本県)各員ト同感ナリ、製糸ハ輸出品ナレハ荷造リ其他ニ至ルマテ同一ナラサレハ、海外ニ向ツテ信用ヲ失スルガ故ニ同業組合ヲ設ケタレトモ素ト私約ニ成リシモノナレハ遂ニ破レタリ、近来有志者頻リニ之レヲ再興セント計レトモ同業者其私約ノ効ナキヲ侮リテ之レニ応スルモノ乏シケレトモ是非共夫々規約ヲ設クルノ目的ナリ、又織物モ同様ノ申合ニテ二三ノ粗合《(組)》ヲ設ケタレトモ亦永続スルニ至ラス、製糸・織物ノ二業ハ後来ニ望ミアル物産ナレハ是等ノ業ニハ最モ規則ノ制定ヲ希望ス、且其組合取締ノ法制定ニ至ラハ自然各年製造額ノ統計等モ明了ナルニ至ルヘシ、実ニ目下製茶ノ如キ不整一ナル景況ニテハ遂ニ純良ノ品マテモ其名ヲ汚サルヽニ至ラン、故ニ此取締法ハ万々制定アラン事ヲ希望スル所ナリ
四十三番(宮崎県)我県下ニ於テハ別ニ著大ナル工業ハナケレトモ管内ニアル所ノモノヲ挙クレハ東京ニモ名称アル日向半切、日向半紙等種々ノ製紙アリ、然レトモ一家専業トスルモノ僅々ニシテ多クハ農民ノ余業ニナルモノナレハ組合取締等ノ如キハ之レヲ必要ナリトスルノ感覚未タ起ラサルナリ、此他樟脳・生糸・マツチノ枝材、製茶・織物ノ工業者アルモ僅少ノ工業ナリ、独リ製茶ニ至ツテハ組合アレトモ未タ其組合取締法ヲ必要トスルノ感覚アルモノハアラサルナリ
十八番(滋賀県)第一項ニ就キ各員ノ意見モ尽キタルモノヽ如クナレトモ第二項ニ移ル前尚一言申述タシ、幸ニシテ組合取締法制定ニ至ラバ先第一ニ取締無カルベカラサルモノハ織物ナリ、織物ハ我邦物産中尤モ貴重ニシテ最モ需用多キモノナレハ第一ニ望ム所ハ尺度ノ事ナリ、例ヘハ通常二丈八尺ヲ以テ定尺ト為スモノニテモ売買ノ際之ヲ問ヘハ大概二丈七尺位ハアルベシト言フガ如キ弊害之ナリ、此ノ如キハ是非一定ノ制規アリタシ、又第二ハ染色ナリ、価廉ナレハ其色必ス剥褪シ易シト雖モ売者敢テ之レヲ明言セス買者モ亦之ヲ咎メス、此ノ如キハ従来ノ習慣ニシテ亦止ムヲ得スト雖トモ尤悪シキ弊害ナレハ飽マテ防遏ノ法ヲ設ケタシ、又組合仲間鑑札ハ旧来行ハレ且地方官ノ見込ヲ以テ緊要ト認ムルトキハ随意ニ発行スルヲ得レトモ、近来漸ク任他主義ニ移リシヨリ遂ニ是マテノ旧慣迄モ廃絶シタル事多シ、就テハ此取締法中地方限リ要用ト認ムルトキハ地方官ノ見込ヲ以テ鑑札ヲ下付スル事ヲ得ル様ニ致シタシ、而シテ之レニ関スル諸般ノ経費ノ如キハ地方税ニ掛クル時ハ府県会ニ於テ直ニ破毀スルノ例モ少ナカラスシテ、営業者ヨリ取立ル方却テ易キノミナラス是レ公ケニ同業者タル事ヲ許スノ具トモ成ルヘシ、然リ而シテ此組合取締法ノ制定ハ当局者一般ニ望ム所ナレハ成ヘク一日モ早ク施行アリタシ
三十三番(広島県)政府幸ニ此法ヲ設ケラレナハ一ノ大ニ望ム所アリ
 - 第18巻 p.174 -ページ画像 
近来ノ工業タル若シ悪口ヲ以テ之レヲ言ハヽ左甚五郎ノ如キ瑣々タル指頭ノ小枝若《(技カ)》クハ農間仕事ノ如キニ止ルモノ多ク、此等ハ措テ問ハサルモ尤大ニ取締ヲ要スルハ硫酸並ニ「コークス」ノ如キ製造場ナリ、此ノ如キ工業ハ尤モ危険ナルモノナレハ宜シク其場所ヲ撰ミ又充分法律ヲ以テ取締アリタシ、又一ハ染物ナリ、化学的作用ノ人心ニ入リシヨリ其作用ヲ借テ不慣ノ染料ヲ妄用シ、却テ織布ノ原質ヲ害スルノ弊アリ、又麻苧ノ製造ノ如キモ薬品ヲ用ルカ為メニ大ニ其繊緯ヲ害ス、故ニ化学的ノ作用ヲ工業上ニ施スニハ最モ注意セサル可カラス、又夜中安眠ヲ害スル工業アリ是等モ他日取締法制定ノ際宜シク共ニ注意アリタシ、又一ハ鉱山ナリ、砂鉄湔採ノ如キ流末ノ地ニ害ヲ与フルモノナレハ是亦取締ノ精細ナルヲ希望ス
会頭 最早第一項ニ付各員ノ説モ大約尽タレハ第二項ニ移ルヘシト書記ヲシテ第二項ヲ朗読セシメ次テ主務員ヲシテ其要領ヲ説明セシム



〔参考〕明治前期 財政経済史料集成 第一八巻・第八二―八三頁 昭和六年八月刊(DK180016k-0015)
第18巻 p.174 ページ画像

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〔参考〕明治前期 財政経済史料集成 第一八巻・第九三頁 昭和六年八月刊(DK180016k-0016)
第18巻 p.174-175 ページ画像

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〔参考〕明治前期 財政経済史料集成 第一八巻・第四四一頁 昭和六年八月刊(DK180016k-0017)
第18巻 p.175 ページ画像

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〔参考〕明治前期 財政経済史料集成 第二〇巻・第六七七―六八二頁 昭和八年一一月刊(DK180016k-0018)
第18巻 p.175-177 ページ画像

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〔参考〕東京経済雑誌 第一七巻第四一一号・第三七〇―三七一頁 明治二一年三月二四日 ○同業組合を論ず(DK180016k-0019)
第18巻 p.177 ページ画像

東京経済雑誌  第一七巻第四一一号・第三七〇―三七一頁 明治二一年三月二四日
    ○同業組合を論ず
去明治十七年十一月の末なりき、農商務省は第三十七号の布達を以て同業組合準則なるものを発布し、爾後同業者にして組合を設け規約を作り認可を請ふ者ある時は、此準則に基き取扱ふべき旨を各府県に達せられたり、是より先き農商務省は、同業組合に関する取締規則の制定を望むや否に就き、東京商工会の意見を諮問せられたるに、同会に於ては数々議事を開きて審議を尽し、遂に、在来同業者間に於て組合を設け規約を定めたる者少からずと雖ども、畢竟私約に成るの故を以て規約の効力を完ふする能はず、随て公益改進の目的をも遂ぐる能はざるの憾あるを以て、此際同業組合に関する取締規則を制定せられん事は最も希望に堪へざる処なり、但全国各商工業は土地の摸様によりて大に其情況を異にするものあれば画一の通則を設けて之を規制するが如きことなからんことを望む、との趣意を以て復申書を裁し、之を農商務省に捧呈したり、是に於て農商務省は猶ほ彼是の事情を参酌し遂に同業組合準則なるものを発布せられたることゝ思はる ○下略



〔参考〕東京府史 行政編第三巻・第六二七―六三一頁 昭和一〇年一二月刊(DK180016k-0020)
第18巻 p.177-179 ページ画像

東京府史  行政編第三巻・第六二七―六三一頁 昭和一〇年一二月刊
 ○勧業(二) 第七 第五章 同業組合
    一 同業組合法発布前の組合
○上略
 明治十七年十一月農商務省達第三十七号に基いて、本府は同十八年一月布達甲第二号を以て同業組合準則を発布し、尋いで農商工各業者に対して組合設置を促し、直に二三の組合を認可した。然るに同年八月同省第三十五号を以て組合準則は専ら管下重要物産の改良蕃殖に関するものに適用すべき旨の達があり、因つて同省に稟議して他管下より移入する物産と雖も同様の関係を有する品種を取扱ふ商業者には準則を適用することとし、該範囲に入る営業者を凡そ百五十二種と予定し、これを誘導した。
 玆に於いて在来の府下各種組合は、すべて右の準則に基いて規約を改正し、或は新たに設立して本府の認可を請ひ、明治十九年末には次のやうな同業組合が存在した。尚次表中六郡とあるは現在の隣接五郡
 - 第18巻 p.178 -ページ画像 
の地域である。
     同業組合一覧

  名称             設立年月     地区                組合人員
 赤坂区煙草営業組合       明治十八年四月  赤坂区                  三〇
 浅草区煙草営業組合       同 十八年六月  浅草区                 一四八
 千住煙草営業組合        同 十八年七月  千住南組中組外五ケ町           二五
 東京府下白米商組合       同 十八年五月  十五区六郡             二、四三〇
 東京米穀問屋組合        同 十八年五月  十五区六郡               二八三
 東京廻米問屋組合        同 十八年十二月 十五区六郡                二四
 酒類問屋組合          同 十九年四月  十五区                  一五
 東京府下菓子卸売商組合     同 十九年四月  十三区                  七三
 東京本所深川区菓子卸売営業組合 同 十九年十一月 本所区深川区               二一
 東京砂糖問屋組合        同 十八年十一月 十五区                  五八
 東京鶏卵問屋組合        同 十九年七月  十五区六郡               一六五
 東京売肉問屋組合        同 十九年七月  十五区六郡                六八
 東京牛肉商組合         同 十九年七月  十五区六郡               五〇五
 乾海苔商組合          同 十九年二月  荏原郡大森村               四三
 東京海草問屋組合        同 十八年七月  十五区                  一九
 東京材木問屋組合        同 十九年七月  十五区四郡               一八三
 千住材木問屋組合        同 十九年六月  北豊島郡南足立郡             一七
 東京材木仲買小売組合      同 十九年十一月 十五区                 三八三
 銅鉄物問屋組合         同 十九年五月  十五区                  四三
 東京打物砥石問屋組合      同 十九年十二月 十五区                  一〇
 東京石灰蠣灰問屋組合      同 十八年十二月 十五区                  二二
 東京壁用品営業組合       同 十八年四月  十五区六郡                三六
 東京畳表問屋組合        同 十九年二月  十五区                  一〇
 東京石灰組合          同 十九年六月  十五区六郡                三一
 東京土商組合          同 十八年六月  十五区                  七八
 薪炭問屋奥川組合        同 十八年五月  本所区深川区南葛飾郡           七五
 東京川辺薪炭問屋組合      同 十九年八月  神田区牛込区小石川区下谷区浅草区本所区  四七
 東京油商組合          同 十八年十二月 十五区六郡                七一
 東京油小売商組合        同 十九年八月  十五区六郡             一、五九〇
 東京蝋燭問屋組合        同 十九年十二月 日本橋区京橋区              一四
 東京傘問屋組合         同 十八年六月  日本橋区                 二四
 東京洋服商工業組合       明治十八年八月  十五区六郡               三二三
 東京糸問屋組合         同 十九年二月  十五区六郡                二二
 東京麹町区神田区呉服太物商組合 同 十九年十二月 麹町区神田区               六〇
 東京足袋股引類問屋組合     同 十九年四月  十五区                  二〇
 東京麻苧問屋組合        同 十九年八月  十五区                  一九
 東京塩瀬取組合         同 十八年七月  十五区                   九
 東京肥料問屋組合        同 十八年七月  京橋区深川区               一五
 経木問屋組合          同 十八年十一月 十五区                   九
 川舟貨物回漕組合        同 十八年十一月 神田区日本橋区京橋区浅草区本所区深川区 一一四
 東京絵具染料問屋組合      同 十八年十二月 十五区                  三九
 - 第18巻 p.179 -ページ画像 
 下駄甲良問屋組合        同 十九年二月  神田区日本橋区京橋区浅草区本所区南豊島郡 四〇
 麻布区絵具染料商組合      同 十九年四月  麻布区                  一〇
 東京肥料糠問屋組合       同 十九年五月  日本橋区京橋区浅草区深川区        一三
 東京藍商組合          同 十九年五月  十五区                  一五
 東京薬種問屋組合        同 十九年七月  神田区日本橋区京橋区           五八
 東京截落紙組合         同 十九年七月  十五区六郡                三七
 東京糠問屋組合         同 十九年八月  神田区日本橋区京橋区浅草区本所区深川区  一四
 東京西組絵具染料商組合     同 十九年十一月 麹町区赤坂区四谷区東多摩郡南豊島郡    二九

 越えて明治二十四年に至り、同業組合準則に拠るもの即ち重要物産の改良繁殖を目的とするもの及びこれに関係あるもので、設立認可をしたものは百五十一、準則外の組合即ちその目的及びその関係に係はらず営業の種類に依り組合と認めたるもので、出願を許可したものは二十二となつてゐる。