デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
2款 東京商工会
■綱文

第18巻 p.317-323(DK180032k) ページ画像

明治18年7月6日(1885年)

是日栄一、先ニ東京府知事芳川顕正ヨリ諮問サレタル搾粕製造ニ関スル意見ヲ当会会頭トシテ東京府知事渡辺洪基ニ具申ス。


■資料

渋沢栄一書翰 萩原源太郎宛 (明治一八年五月カ)三一日(DK180032k-0001)
第18巻 p.317 ページ画像

渋沢栄一書翰  萩原源太郎宛 (明治一八年五月カ)三一日  (萩原英一氏所蔵)
○上略
北海道〆粕圧搾之事ハ矢張会議ニ付し候方と存候、併是ハ大坂ニ無之而ハ相分リ兼可申歟と存候、余リ急場ニ無之ニ付次会ニ廻し候方可然存候 ○中略
  三十一日
                     渋沢栄一
    萩原様


東京商工会議事要件録 第一二号・第二二―三六頁 明治一八年六月二九日刊(DK180032k-0002)
第18巻 p.317-321 ページ画像

東京商工会議事要件録  第一二号・第二二―三六頁 明治一八年六月二九日刊
  第十一臨時会  (明治十八年六月四日午後六時三十分開会)
    会員出席スル者 ○四十四名
○上略
会長(渋沢栄一)ハ是ヨリ第二号議案ヲ議スベキ旨ヲ告ゲ書記ヲシテ之ヲ朗読セシム
第二号議案
    ○〆糟製造ニ関スル東京府ヨリノ諮問
                   東京商工会
 商品荷造改良ノ義ハ目下ノ急務ナリト雖トモ、又商品製造ノ改良ヲ図ルハ最緊急ノ要務ニシテ、北海道及ビ各地ニ産スル〆粕ハ慣行ニヨレバ其散布シタルモノヲ筵ニテ包装セシニ其運搬及ビ取扱上ノ不便アルノミナラス往々漏出散落ノ弊アリ、已ニ旧開拓使ニ於テハ之
 - 第18巻 p.318 -ページ画像 
ヲ改製シ、欧米ノ法ヲ勘酌シ圧搾器ヲ以テ之ヲ固結セシメ其貯蔵法ニ至ルマデ試験セラレシ趣別紙試験始末書ノ通ニ有之、由是観之荷嵩ノ減縮及虫付腐黴等慣行ノ製造ニ比スレバ便益ヲ見ルガ如シ、然レトモ其製産者及消費者ハ其旧慣ニ泥ミ漫ニ新製ヲ排斥シ、商賈ハ売買上或ハ故ナク不便ヲ唱フルノ虞ナキニ非ズ、就テハ其利害得失ノアル所其会ニ於テ研究シ具申可致此旨相達候
  明治十八年五月七日
              東京府知事 芳川顕正
(別紙)
 小官等開拓使奉職中親シク取扱タル収税品ノ内、鯡搾粕及胴鯡等ノ肥料ハ一般荷造ノ粗悪ナルヨリ運搬中漏出ノ量甚ダ多ク、時トシテハ二割以上ニ及ヒ少クモ一割ニ下ラズ、且現品ノ斤目ニ比スレバ其俵粗大ナレバ普通貨物ノ割合ヲ以テ之ヲ仕払フモ極メテ不廉ノ運賃トナリ経済上不便ヲ極メタリ、従来莚改良等種々注意アリタレトモ到底北海全道ノ漁民ニ関スル事ナレバ改良実施ハ容易ニ非ラス、依テ先ツ収税品ノミニテモ漸次ニ改良ヲ施サントノ目的ヨリ試ニ荷嵩ヲ減縮セント欲シ、旧赤羽工作分局ニ至リ仮リニ在来ノ水搾器ニ煉化石突キ出シニ用ル鋳鉄ノ角臼等ヲ仕付搾圧法ヲ施セシニ(但其圧搾ノ度ハ〆粕及胴鯡ニ含有スル処ノ油分ノ少シク外面ニ湿ヒ出ルヲ以テ度トシ十分圧搾セス)搾粕ハ普通俵ノ積ニ比スレバ凡ソ五分ノ三ヲ減シ(凡一尺一寸角位ニシテ長サ二尺五寸位ナリ)胴鯡ハ凡十分ノ六以上ヲ減ゼリ、依テ尚保存ノ如何ヲ撿スル為メ、函崎町ナル旧開拓使物産取扱所内ニアル鯡類貯蔵庫ノ最下部ニ貯ヘ置キ、凡ソ一ケ年ヲ経テ其虫付及黴等ノ摸様ヲ点撿セシニ外面ヨリ凡一寸位ノ処ニ止リ内部ニ発セス、普通ノ俵造ニ比スレバ其損敗甚ダ少キヲ覚ヘ、且漏出ノ患ヒナケレハ運搬上洪益ヲ生ズルハ疑ヲ容レズ、故ニ荷造改良ハ一日モ忽諸ニ付ス可カラザルヲ信ズ、然レトモ玆ニ一ノ難事アリ、需用者ノ信不信ナリ、否ナ需用者ニ数倍スル難事アリ、仲買商是レナリ、彼等ノ慣習ヲ聞クニ種々ノ悪弊アリテ、甚ダシキハ土砂ヲ混同シ其ノ量目ヲ増加セシムルニ至ルト云フ、然ルニ其物品固形ノ儘ナルトキハ右等ノ奸策ヲ施スニ困難ナレバ、彼等ノ欲スル処ニアラザルハ必然ニシテ種々障碍ヲナスモ知ルヘカラス、故ニ大坂市場等ノ実況ヲ経験セザレバ容易ニ荷造改良ヲ施シ難ク、夫是経験中廃使置県ニ際シ、税品ハ大蔵省ノ直轄ニ帰シ小官等ハ本省ニ転任セシニ付試売ノ実況ヲ察スルヲ得ズシテ改良試験ノ結果ヲ得サリシハ実ニ遺憾ナリ
右ハ過日御尋ニ付概略及御答候也
            北海道事業管理局
              管業課長
  明治十八年三月十三日        真崎健
    品川商務局長殿
八十四番(荘田平五郎)問フテ曰ク、売捌方ノ如何ハ是迄実験シタル事ナキヤ
番外(関口良礼)答テ曰ク、其貯蔵法等ニ就テハ是迄充分ノ試験ヲ遂ゲタレトモ其売捌方ニ就テハ嘗テ実験シタル事ナシ
 - 第18巻 p.319 -ページ画像 
五十九番(益田孝)問フテ曰ク、大阪ノ仲買ニハ如何ナル弊害アリヤ
番外(関口良礼)答テ曰ク、大阪ノ仲買ニハ余程ノ弊害アリトノ事ナレトモ未ダ実験ヲ経ザルヲ以テ其詳細ヲ知ルニ由ナシ
会長(渋沢栄一)曰ク、質問終リタル上ハ調査ノ手続如何ニ就テ発言アリタシ
五十九番(益田孝)曰ク、抑モ肥料ノ容積ヲ縮小シ運送ヲ便ニスルハ余ノ夙ニ熱望スル所ニシテ、此改良法ハ只不要分ヲ除却スルノミニシテ毫モ要分ヲ減損スル事ナケレバ、其有益ナル事固ヨリ論ヲ待タザルナリ、然リト雖トモ若シ之ガ需用者タル農家ニ於テ之ヲ厭忌スルノ情念ヲ懐ク時ハ之ヲ実施スルハ実ニ容易ノ事ニアラズ現ニ我国肥料ノ分析表ヲ見ルニ其要分即チ窒素ノ割合鯡〆粕ハ一割二分、鰯〆粕ハ一割、干鰯ハ七分ナルニ付市場ニ於テハ鯡〆粕最モ高価ヲ保ツベキ筈ナレトモ、農家ハ在来ノ慣習ニヨリ特ニ鰯〆粕ヲ重ンズルガ故ニ実際ニ於テハ鰯〆粕最モ高価ヲ保テリ、然ルニ近来ニ至リ農家ニ於テ漸ク鯡〆粕ヲ重ンズルニ至リタレトモ其価格ハ猶鰯〆粕ニ比シテ稍ヤ低度ニ在ルノ姿ナリ、又其量目ノ如キモ三十五六貫目ノモノヲ二十五六貫目ニ改ムル時ハ運送ノ便利極メテ多ク、結局需用者ノ利益タルベシト雖トモ農家ニ於テ其改良ヲ喜バザル情況アルガ為メ遂ニ今日ニ至ル迄其実行ヲ期スルヲ得ザリキ、而シテ仲買ノ弊ノ如キハ独リ大阪ノミニ止マラズ東京ニ於テモ往々其痕跡ナキニ非ズト雖トモ、是畢竟農家ノ思慮浅薄ナルヨリ醸生スル所ナレバ、今此改良法ヲ実行セントスルニハ先ヅ農家ノ智識ヲ養成シ以テ肥料ノ成分等ヲ詳知セシムルニ如カザルナリ、聞ク所ニ拠レバ欧米諸国ノ中ニハ肥料ニ必ズ分析表ヲ附セシメ、此表ヲ附セザルモノハ之ヲ売買セザルノ慣習アリト云ヘリ、我国ニ於テモ斯ル方法ヲ参酌シテ之ヲ行フ時ハ庶幾クハ其実効ヲ期スルヲ得ベキカ
五番(喜多村富之助)八番(大塚藤平)共ニ五十九番ヲ賛成ス
二十番(大倉喜八郎)曰ク、真崎君ノ試験成跡ニ拠レバ此改良法ハ実ニ甚ダ緊要ナリト思考ス、而シテ之ヲ実施スルニハ先ヅ各地方ノ勧業会ノ如キモノヲシテ一般ニ人民ヲ誘導セシメテハ如何ン、然ル時ハ幾分ノ実効ヲ奏スル事アルベシ
八十四番(荘田平五郎)曰ク、嘗テ此事ニ就テハ旧開拓使ヨリ北海道ノ漁民ニ誘導シタル事アリタレトモ漁民ニ於テハ漁業ノ季節ニ際シ全ク余閑ヲ得ザルカ為メ未ダ此方法ヲ試ムルニ至ラザリシト聞ケリ、蓋シ此改良法ヲ実行スルニハ先ヅ農家ノ智識ヲ養成スル事固ヨリ肝要ナリト雖トモ、近時各地方ニ於テ鯡〆粕ガ鰯〆粕ヲ凌駕シタル跡ニ就テ之ヲ見レバ、若シ資本ヲ投ジテ此改良品ヲ試売スル者起ルニ至ラバ必ズ其販路ヲ拡張スルヲ得ベシト思考ス
五十九番(益田孝)曰ク、前ニモ述ベシ如ク余ハ夙ニ肥料ノ改良ニ就キ熱望ヲ抱ク者ナルガ、抑モ我国ノ農事ニ就テハ事実上ノ進歩ハ甚ダ著シト雖トモ学問上ノ進歩ニ至リテハ極メテ不充分ナルモノアリ、是蓋シ我国ニ於テ実際家ト学者ト密接セザルガ為メナリ、故ニ今肥料ヲ改良セントスルニハ先ヅ各農区ニ於テ夫々適当ノ化
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学士ヲ招聘シ、其地方ノ地質ヲ詳査シテ之ヲ農家ニ公示シ、然ル後更ニ肥料ノ成分ヲモ分析シテ共ニ之ヲ農家ニ公示スベシ、果シテ然ル時ハ農家ハ其土地ノ地質ニヨリテ肥料ヲ適用スルヲ得ベキガ故ニ実験学問相須テ始メテ完全ノ進歩ヲ期スルヲ得ベキナリ
四十三番(梅浦精一)曰ク、五十九番ノ説ハ多年ノ実験ニ出デ実ニ甚ダ適切ナルモノアリ、故ニ此諮問ニ対シテハ直チニ此趣意ヲ以テ復申シタシ
時ニ品川商務局長ハ番外席ニ就キ此改良ニ就テハ目下当局者ニ於テモ鋭意経画スル所ナレバ各員充分審議ヲ遂ゲ、其実行ノ方法ヲ調査シテ復申アリタキ旨ヲ懇諭セラル
四番(林賢徳)問テ曰ク、改良ノ費用ハ幾許ヲ要スルヤ
番外(関口良礼)答テ曰ク、改良ノ費用ハ未ダ調査ヲ遂ゲザルヲ以テ之ヲ知リ難シ
四番(林賢徳)曰ク、此改良ノ行ハルヽト否トハ畢竟其費用ノ如何ニ関スルモノナリ、若シ其費用充分引合フベキモノナラバ之ヲ実施スル事蓋シ難キニ非ザルベシ、故ニ其筋ニ於テハ先ヅ此改良ニ要スル費用等ヲ詳査シ、然ル後若シ果シテ引合フベキモノナラバ二十番ノ説ニヨリ之ヲ各地方ノ勧業会ニ通ジテ人民ヲ誘導セラレン事ヲ望ム
八十四番(荘田平五郎)曰ク、余ハ敢テ五十九番ノ説ヲ非難スルニ非ズト雖トモ抑モ此改良ノ行ハレザルモノハ畢竟現品ノ存セザルニ因ルモノナレバ、今之ヲ実施セントスルニハ先ヅ其現品ヲ試売スルノ道ヲ設クルニ如カズ、蓋シ此等ノ事ハ元来利益ヲ必期スベカラザルモノニ付之ヲ普通ノ商人ニ望ムハ実ニ甚ダ難事ナリトス
  故ニ当分ノ中政府ニ於テ先ヅ之ヲ試売スルノ道ヲ設ケラレン事ヲ望ム
五十九番(益田孝)曰ク、改良ニ二様アリ、一ハ肥料ノ要分ヲ増加スル事一ハ其容積ヲ縮小スル事即チ是ナリ、而シテ余ハ後者ノ改良ヲ望ムニ当リ併セテ前者ノ改良ヲ切望スルガ故ニ前説ヲ発シタルガ、今後者ノ改良ヲ実施スルニハ八十四番ノ説ク所大ニ嘉ミスベキモノアリ、蓋シ北海道産物ノ徴税法ハ現品ニテ産額ノ一割ヲ収入セラルヽモノナルガ故ニ、漁業者ニ於テハ之ヲ精製スルノ余閑ヲ得ザルヨリ自ラ其改良ヲ忽ニスルノ情況アリ、左レバ若シ此徴税法ヲ例ヘバ立網一ケ所ニ付金若干円ト云フガ如ク改正セラルヽ時ハ是亦此改良ヲ促スノ一端タルヲ得ベシ
会長(渋沢栄一)曰ク、五十九番ハ肥料ノ品質ヲモ併セテ改良シタシト云ヘ《(ヒ)》、八十四番ハ先ヅ改良品試売ノ道ヲ開クベシト云ヘ、二十番ハ各地方ノ勧業会ヲシテ人民ヲ誘導セシムベシト云ヘ、四番ハ先ヅ改良ノ費用ヲ詳査スベシト云ヘ、其説区々ニ渉ルガ如シト雖トモ要スルニ共ニ皆相悖ラザルノ説ノミナレバ、先ヅ此等ノ数説ヲ参酌シ、猶当業者ノ意見ヲモ諮詢シタル上復申案ヲ調査シテハ如何ン
右ノ外猶多少ノ議論アリシガ衆議ノ上遂ニ本案ノ御諮問ニ対シテハ理事本員ニ於テ五十九番・八十四番・二十番・四番等ノ説ヲ参酌シ猶当
 - 第18巻 p.321 -ページ画像 
業者ノ意見ヲモ問合セタル上復申案ヲ作リ直チニ之ヲ進達スベキニ決ス


東京商工会議事要件録 第一四号・第六一―六七頁 明治一八年八月二二日刊(DK180032k-0003)
第18巻 p.321-322 ページ画像

東京商工会議事要件録  第一四号・第六一―六七頁 明治一八年八月二二日刊
 ○参考部
    ○(〆粕製造改良ノ義ニ付復申書)
去五月七日附ヲ以テ御諮問有之候〆粕製造改良ノ義ニ就テハ其後会議ヲ開キ篤ト其利害得失ヲ審議致候処、右改良ノ義ハ漏出散落ノ憂ヲ除キ虫付腐黴ヲ防キ数年ヲ経ルモ減量少ク、殊ニ荷嵩ヲ縮少シテ運賃ヲ減スル等実ニ一大有益ノ事業ニ付、其実施ハ本会ノ深ク熱望スル所ニ御座候
蓋シ此改良ヲ実施スルニ二様ノ困難有之一ハ消費者ノ信用ヲ得ルニ難キ事、一ハ製産費用ヲ増加スルノ恐アル事即チ是ナリ、抑モ鯡〆粕ノ他ノ〆粕ニ比シテ最モ著シキ効験ヲ有スル事ハ学問上ノ道理ニヨリテ甚タ明カナル所ニ御座候得共、従来関東諸国ニ於テハ右鯡〆粕中ニ在ル数ノ子ヲ厭忌シ、専ラ小鯡粕(数ノ子ナキモノ)ヲ消費スルノ慣習有之、近来ニ至リ販売者ノ尽力ニヨリヤヽ鯡〆粕ノ販路ヲ開キタリト雖トモ今日之ヲ消費スル者ハ其数猶僅々ニ過ギズ、是畢竟消費者ガ旧慣ニ泥ミ謂レナク新製品ヲ嫌フヨリ致ス所ニ御座候ヘバ、今此改良品ヲ売弘メントスルニ当リ消費者ノ信用ヲ得ルハ実ニ容易ニアラズ、是此改良ヲ実施スルノ困難ナル所以ニ御座候、又従来関西諸国ニ於テハ専ラ鯡〆粕ヲ消費スルノ慣習有之抑モ此等ノ諸国ニ於テ鯡〆粕ノ特ニ其販路ヲ拡張シタルモノハ畢竟其効験ノ著シキニ因ルヘシト雖トモ他ノ〆粕ニ比シテ其ノ格安ナル事実ニ之カ特因ナリト想察仕候、然ルニ今若シ此改良品ヲ製造スルニ当リ圧搾機ノ買入又ハ製造ニ別段ノ手数ヲ要スル等ノ事情ヨリ製産入費ヲ増加スル時ハ、仮令消費者ヲシテ其効験ノ著シキ事ヲ感得セシムルヲ得ルトスルモ到底其販路ノ拡張ヲ期スルヲ得ザルベシ、是亦此改良ヲ実施スルノ困難ナル所以ニ御座候
情況如此ナルヲ以テ此改良ヲ実施スルニハ一方ニ於テ消費者ノ信用ヲ博シ、一方ニ於テ可成製産費用ヲ減スル事実ニ必要ナル手段ト奉存候今本会ニ於テ熟々其方案ヲ考フルニ先ツ別紙方案甲号ノ如ク、其御筋ノ御誘導ヲ以テ各地消費者ヲシテ充分其効験ヲ感得セシメ且ツ之ニ学問上ノ道理ヲ諭シテ実験ヲ助ケシメ候様御経画相成、次ニ乙号ノ如ク其御筋ニ於テ当分ノ中改良品ヲ試製セラレテ之ヲ試売スルノ道ヲ設ケラレ、且ツ製産者ヲシテ自ラ之ヲ試製セシメ候様、併セテ御誘導相成度希望仕候、斯クシテ両三年ヲ経過スル時ハ消費者ハ果シテ其効験ヲ感得スルヲ得ベキニ付製産者ハ必ズ令セズシテ此改良品ヲ製造スルニ至ルベク奉存候、尤現時仲買商ノ中ニハ種々ノ弊害モ有之候趣ニ付、或ハ此改良ヲ阻ムノ懸念無之トモ難申候得共、元来此等ノ弊害ハ畢竟消費者ノ思慮浅薄ナルヨリ招ク所ナレバ今先ヅ消費者ニ於テ充分其効験ヲ感得シ、益々此改良品ヲ需用スルニ至ラバ此等ノ弊害ハ深ク顧慮スルニ足ラズト奉存候、此段別紙方案書相添復申仕候也
                    東京商工会々頭
  明治十八年七月六日           渋沢栄一
 - 第18巻 p.322 -ページ画像 
    東京府知事渡辺洪基殿
    〆粕製造改良法実施ノ方案
(甲号)
一其御筋ヨリ各府県ノ勧業課ハ勿論各地方ノ勧業会若クハ農談会ノ類ヘ此改良ノ必要ナル所以ヲ詳報セラレ、可成各農家即チ需用者ヲシテ普ネク其実利ヲ感得セシメ候様御経画相成度候事
一其御筋ニ於テ各農区中重立タル地方ノ地質ヲ詳査シ且ツ肥料ノ成分ヲモ分析シテ之ガ応用法ヲ各農家ニ公示セラレ、以テ農家ヲシテ其地質ニ応シ肥料ヲ適用スルノ方法ヲ会得セシメ度、而シテ右地質調査ノ結果及肥料ノ分析応用法ノ如キハ各地方販売者ヘモ併セテ公示セラレ度候事
(乙号)
一其御筋ニ於テ当分ノ中先ツ毎年千乃至弐千個ノ改良品ヲ試製セラレ之ヲ各地ノ重立タル販売者ニ分配シテ相当ノ手数料ヲ以テ之ヲ試売セシメ度、而シテ此等ノ販売者ガ改良品ヲ売捌クニ当リ需用者ニ向テ其効能及使用法ヲ懇切ニ説明為致度候事
一右ノ外猶其御筋ニ於テハ左ノ如キ方法ヲ実施セラレ、製産者ヲシテ此改良品ヲ試製セシメ候様精々御誘導相成度事
 一当分ノ中改良品ニ限リ幾分カ減税セラルヽ等可成製産ノ費用ヲ省クヲ得セシメ、以テ需用者ヲシテ之ヲ廉買スルノ機会ヲ得セシムベキ事
 一当分ノ中製産者ノ望ニヨリ圧搾器ヲ無料ニテ御貸付相成、而シテ其製産者ガ専ラ之ヲ実用スルニ至ラバ相当ノ代価ヲ以テ之ヲ御払下可相成候事
 一北海道ノ産物税ハ現品ニテ御徴収相成候ヨリ製産者ニ於テハ之ヲ精製スルノ余閑無之、不得已其改良ヲ忽ニスルノ情況有之、依テ此税法ヲ例ヘバ立網一ケ所ニ付金若干円ト云フガ如ク改正セラレ製産者ヲシテ之ヲ精製スルノ余閑ヲ得セシムベキ事


渋沢栄一書翰 萩原源太郎宛 (明治一八年)七月九日(DK180032k-0004)
第18巻 p.322 ページ画像

渋沢栄一書翰  萩原源太郎宛 (明治一八年)七月九日   (萩原英一氏所蔵)
○上略
〆粕製造改良之義ニ付商務局長ヘ回答案ハ別紙之通ニて可然と存候間小印仕候、早々御進達可被下候
○中略
  七月九日                渋沢栄一
    萩原源太郎様


東京商工会議事要件録 第一五号・第四一―四五頁 明治一八年九月五日刊(DK180032k-0005)
第18巻 p.322-323 ページ画像

東京商工会議事要件録  第一五号・第四一―四五頁 明治一八年九月五日刊
  第十四臨時会
         (明治十八年八月十四日午後六時四十五分開会)
  第七定式会
    会員出席スル者 ○三十三名
○上略
次ニ会長渋沢栄一ハ是ヨリ定式会ヲ開クベキ旨ヲ告ゲ本年一月ヨリ六月迄半季間事務ノ成跡ヲ報告ス、即チ左ノ如シ
 - 第18巻 p.323 -ページ画像 
  自明治十八年一月至同年六月 半季間事務ノ報告
○中略
    政府ヨリ下問   三件
○中略
○〆粕製造法改良ノ義ニ付東京府知事ヨリノ下問
  本件ハ明治十八年五月七日附ヲ以テ芳川東京府知事閣下ヨリノ御諮問ニ係リ、其要旨ハ〆粕製造ノ改良ヲ図ルハ緊急ノ要務ナレトモ製産者消費者ニ於テ新製ヲ厭ヒ或ハ商賈ニ於テ不便ヲ訴フル事アリ、故ニ此改良ヲ実施スルノ方案ヲ研究シテ具申スベシト云フニ在リ、即チ同年六月四日第十一臨時会ニ於テ之ヲ審議シタルニ遂ニ理事本員ニ於テ先ヅ当業者ノ意見ヲ問ヒ復申案ヲ草シテ直チニ之ヲ上呈スベシト云フニ決シタルニ付、理事本員ハ其後当業者ノ意見ヲ諮詢シテ其文案ヲ草シ七月六日附ヲ以テ之ガ実施ノ方案ヲ具シテ之ヲ東京府知事閣下ニ進達シタリ
○下略