デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治19年3月26日（1886年）

是日栄一、当会会頭トシテ売薬免許期限ヲ廃止センコトヲ内務大臣伯爵山県有朋ニ建議ス。十一月二十五日勅令第七十二号ヲ以テ該期限ヲ廃止スル旨布告セラル。

渋沢栄一書翰　　萩原源太郎宛　（明治一八年）一一月一〇日　　　（萩原英一氏所蔵）
○上略
薬種屋之建議ハ十二日之会ニて幹事等へも披露し此次之臨時会ニ廻し候方可然と存候　○中略
　　十一月十日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　萩原源太郎様

東京商工会議事要件録　　第一八号・第五四―六一頁　明治一九年四月刊
　　第十八臨時会　　（明治十九年三月九日午後六時十五分開会）
　　　　会員出席スル者　○五十四名
○上略
 - 第18巻 p.465 -ページ画像 
於是会長（渋沢栄一）ハ不景気復申案ノ議事全ク終リタルニ付、更ニ引続キ第二号議案ヲ議スヘキ旨ヲ告ゲ書記ヲシテ之ヲ朗読セシム
　　（第二号議案）
　　　　政費ヲ省ク一斑トシテ売薬規則ニ刪除ヲ要スル建議
　近来民間ノ経済タルヤ多出少入ノ有様ニシテ国庫費地方費ノ論ナク省略シ得ヘキモノハ苟モ省カン事ヲ企望致シ候、蓋シ一ヲ省略シテ一ノ欠点ヲ呈ス如キナカラン事ヲ要ス事ニ御座候
　就テハ明治十年太政官第七号売薬規則ヲ按スルニ、其第二条及第五条ノ明文ニヨリ正当ノ手続ヲ経以テ自己製剤ニ関ルモノヲ営業ト云ヒ鑑札ヲ下附セラレ、又他人ノ製剤ヲ受売スルニ係ルモノヲ受売ト云ヒ鑑札ヲ下附セラレ、以テ各々就業仕候事ニ御座候、蓋シ此鑑札ハ総テ満五年間ヲ以テ期限トシ、尚ホ引続キ其業ヲ営マントセハ更ニ鑑札下附ヲ出願スルモノナリ、而シテ熟ラ此鑑札ノ要点ヲ按スレハ免許品タルヲ明カニスルト収税ノ目安トニ在ルノミ、故ニ其開廃業ノ手続アレハ充分事足ル所ニシテ五年間毎ニ鑑札書換ノ手数ハ全ク徒労ニ属スルモノト謂ヘシ、加之ナラス其業者ニ於テ若シ鑑札ノ期間ヲ誤リ経過セシモノヲ所持センカ忽チ罰ヲ受クル所ニシテ、此等ノ事情ヲ推考スレハ此鑑札期限ノ一条項ハ官民共ニ徒労アリテ毫モ益ナキノミナラス唯タ其業者ノ過誤アラハ罰金ヲ科スルニ止ルモノニ御座候
　今無益徒労有害ナル此鑑札書換ノ徒費ヲ想算スルニ、中央衛生局ヨリ地方庁及ヒ郡区役所ニ於テ紙筆ヲ費シ当路者ノ取扱上ノ費ノミニテモ数万円ナルヘシ、其他過誤者アレハ司法当路者ヲ煩ハスヘシ、又其業者ニ於ケル之カ為メ出願ノ紙筆ヨリ其煩労ハ少々ナラサルナリ、夫レ此ノ如キ事実ノ徒費ハ国庫ヨリ出ツルモ地方ヨリ出スモ究竟民間ノ膏油ヨリ出スモノニ他ナラス、故ニ売薬業者ハ減税ヲ唱フルニアラス、敢テ自己主利ヲ張ルニアラス、却テ自己ニ無益有害ナル事柄ニモ拘ハラス他民間ノ膏油ヲ徒費スルヲ懼ルヽト云フヘシ、右ノ事情ニ付テハ売薬規則中営業受売ノ論ナク鑑札書換期限ノ条項ハ総テ刪除セラルヽニ於テハ政費ヲ省ク一斑ニシテ、独リ売薬業者ノミナラス一般民間ノ休養ニ基ク事ナルヘシ、是小事ト認做シ玉ハス貴会ノ議題トシ御集議ノ上、其筋ヘ建議アラン事ヲ此段建議致シ候也
　　明治十八年十一月八日　　　　　　　百八番
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　喜谷市郎右衛門
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　百九番
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　森島松兵衛
　　東京商工会々頭
　　　　渋沢栄一殿
七十四番（鳥海清左衛門）先ヅ原案ヲ賛成シ、八番（大塚藤平）六十三番（牧野彦右衛門）二十七番（伊沢鍵之助）皆之ニ同意ス
二十四番（松木平吉）曰ク、建議案ニ記スルガ如キ弊害ハ独リ売薬営業ノミニ止マラズシテ、他ノ商業ニモ亦此弊アルヲ見ル故ニ此等ヲ調査シテ併テ之ヲ建議セン事ヲ望ム
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四十三番（梅浦精一）曰ク、建議者ハ現ニ鑑札書換ノ為メニ損害ヲ受クルガ故ニ本議ヲ提出シタル事ナラン、然ラバ殊更ニ他ノ営業上ノ弊害ヲ調査シテ併セテ之ヲ建議スルノ必要ナシ、余ハ原案ノ主意ノミニテ可ナリト思考ス
十六番（益田克徳）問テ曰ク、鑑札ノ書換ハ収税ニ関係アリヤ
二十二番（森島松兵衛）答テ曰ク、鑑札ノ書換ハ全ク収税ニ関係ナシ且ツ此鑑札書換ノ為メ当局ニ於テ筆墨紙料其他雇吏員ノ給料ニ空費スル金額僅小ニアラズ、試ニ東京府下ノミニ就テ之ヲ算スルモ数千円ニ下ラズ、全国ニ就テ之ヲ通算スル時ハ蓋シ十万円ニ止ルベシト思考ス、左レバ今此鑑札書換ヲ廃止スル時ハ之ガ為メ当業者ノ手数ヲ省クノミナラズ又大ニ政費ヲ省クヲ得ベシ
二十五番（丹羽雄九郎）曰ク、余ハ本案ヲ賛成ス、而シテ猶文章ハ理事本員ニ於テ相当ニ修正セン事ヲ望ム
二十二番（吉田幸作）曰ク、唯今二十四番（松木平吉）ノ修正説アリタルガ本議ハ先ヅ原案ノ主意ニ止メ、追テ他ノ商業上ニ同様ノ弊害アル時ハ別ニ之ヲ建議シテ可ナラン
七十九番（山中隣之助）曰ク、聞ク所ニヨレバ売薬受売者中免許満期ニ至リ鑑札書換願ノ手続ヲ怠リタル為メ罰金ニ処セラレタル者少カラザル趣ナリ、此等ハ故意ニ其手続ヲ怠リタルニアラズシテ情実憐ムベキモノアルニ付、本案ハ政費ヲ省クノ点ヨリ建議セズシテ寧ロ此困難ノ点ヨリ建議スル方可ナラン
本案ニ就テハ別段異議ナク遂ニ之ヲ可決シ、猶其草案ハ理事本員ニ於テ之ヲ調査シ直ニ其筋ヘ建議スルニ決ス
○下略

渋沢栄一書翰　　萩原源太郎宛　（明治一九年）三月一二日　　　（萩原英一氏所蔵）
○上略
売薬規則ニ付建議ハ御立案御廻し可被下旨承知仕候　○中略
　　三月十二日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　萩原様

東京商工会議事要件録　　第一九号・第五九―六五頁　明治一九年四月二〇日刊　
　○参考部
　　　　売薬免許期限ノ廃止ヲ要スル義ニ付建議
謹テ明治十年一月二十日太政官第七号布告売薬規則ヲ案ズルニ、其第八条ニ営業鑑札・請売鑑札・行商鑑札ハ其鑑札記載ノ月ヨリ満五年ヲ以テ免許ノ期限トス、此期限ヲ過キ尚免許ヲ得ント欲スル者ハ旧鑑札ヲ返納シ更ニ新鑑札ヲ願受クベシト有之、抑モ売薬営業ノ如キハ大ニ衛生上ニ関係シ特別ノ御取締ヲ要スル事勿論ナレバ、該規則第二条・第五条及第七条ニ明示セラルヽガ如ク、売薬営業者・請売者ハ勿論行商ニ至ル迄夫々相当ノ手続ニヨリテ鑑札ヲ附与セラルヽ事固ヨリ至当ノ御制度ト奉存候得共、畢竟右鑑札ヲ附与セラルヽノ要タル其製剤ノ免許ヲ得タルヲ明ニスル迄ニシテ、既ニ該規則中製剤ノ薬味・分量・
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用法・服量・能書ヲ改正セント欲スル者ハ旧鑑札ヲ返納シテ更ニ新鑑札ヲ願受クベシ（第四条）一旦免許ヲ得タル後ト雖トモ有毒品ナル事ヲ発見スルガ如キ場合ニハ直チニ鑑札ヲ取上ケ発売ヲ禁止スベシ（第十条）営業者廃業シ若シクバ禁止セラレタル時ハ、本人ハ勿論請売者ニ於テモ総テ諸鑑札ヲ返納スベシ（第十五条）等ノ各条ヲ置カルヽ以上ハ御取締充分相立候儀ニシテ、該規則中免許期限ヲ定メ満期ニ至リ鑑札ヲ書換ヘシムルノ制ハ今日実際ニ於テ全ク必要無之モノト奉存候独リ其必要無之ニ止マラズ此免許期限ヲ定メラルヽ事ハ実ニ当業者ノ大ニ迷惑ヲ感ズル所ニ御座候
夫レ売薬請売者ガ請売免許鑑札ヲ得ルニ当リ、其年月ヲ逸々営業者ニ通知セザルガ故ニ営業者ニ於テハ多クハ其請売免許満期ノ年月ヲ詳知セズ、而シテ偶々請売者ガ其免許期限ヲ誤リタル為メ其余波連及シ営業者ニ於テ不慮ノ迷惑ヲ受クル事往々有之候、現ニ府下某営業者ガ明治十六年十二月中其製剤ヲ神奈川県下某請売者ニ売渡シタルニ際シ、其請売者ガ偶々免許期限ヲ誤リ鑑札書換願ノ手続ヲ怠リタルヨリ、右営業者ガ該規則第二十一条ニ所謂無鑑札者ヲシテ其製剤ヲ請売セシメタル者ナリトシテ処罰セラレタル事ノ如キハ実ニ其一例ニシテ其他之ニ類スル実例猶不少候、夫レ此等ノ請売者ガ鑑札書換願ノ手続ヲ怠リタルハ畢竟一時ノ怠慢ニ出ツルモノニシテ、地方税ノ如キ其鑑札ニ課セラルヽモノハ仮令書換願ノ手続ヲ怠リタリトスルモ当局者ニ於テハ此等ノ事ハ収税吏員ノ関スル所ニアラズトシテ其鑑札ヲ返納セザル限ハ常ニ徴収セラルヽ所タレバ、他ノ悪意ヲ挟ミテ脱税ヲ謀リ若クバ免許ヲ得ズシテ私ニ薬味・分量等ヲ改更スルガ如キ所業ニ比スレバ其情状ノ軽重固ヨリ日ヲ同フシテ語ルベカラズ、然ルニ此一時ノ怠慢ニヨリテ独リ其請売者ガ自ラ処罰セラルヽノミナラズ其余波営業者ニ連及シテ共ニ処罰ヲ蒙ルニ至ルハ是当業者ノ甚ダ迷惑トスル所ニ御座候
又某県下ニ於テハ営業者ノ免許満期トナリテ鑑札ヲ書換フルニ際シテ請売者ノ免許満期トナラサルニモ拘ラズ必ズ其鑑札ヲ書換ヘシメタルノ実例有之候、夫レ売薬営業者ノ免許期限ト請売者ノ免許期限トハ必ズ一致スベキモノニ非ズ、其出願年月ノ前後ニヨリ満期ノ時ヲ同フセザルハ勿論ニシテ、請売者ハ営業者ガ廃業シ若クバ禁止セラレザル限ハ一旦正当ノ手続ニヨリテ請売免許ヲ得タル時ヨリ満五年間請売権ヲ有スベク、而シテ此間偶々営業者ノ免許満期トナリ其鑑札ノ書換ヲ為ス事アルモ請売者ノ免許満期トナラザル上ハ其鑑札ヲ書換ヘシムルニ及バザル義ニシテ、嘗テ御省ヨリ各府県ノ伺ニ附セラレタル指令文ヲ見ルニ売薬規則ノ精神亦当ニ然ルモノト奉存候、然ルニ某県下ニ於ケルガ如ク請売免許満期トナラザルニ其鑑札ヲ書換ヘシメラルヽ事アルハ是亦当業者ノ大ニ迷惑トスル所ニ御座候、蓋シ某県下ニ於テ此特殊ノ取扱アリタルハ其地方当局者ガ法律ノ見解ヲ異ニスルガ為メニシテ其見解ノ当否ハ固ヨリ玆ニ論スルヲ要セズト雖トモ、抑モ当業者ガ如此キ迷惑ヲ受クルニ至ルハ畢竟該規則中免許期限ノ制ヲ定メラルヽニ因ル義ト奉存候
以上陳述スル所ニ拠レバ売薬規則中免許期限ヲ定メラルヽノ制タル単ニ御取締上ニ於テ全ク必要無之ノミナラズ当業者ニ於テ大ニ迷惑ヲ感
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スル所ニ御座候間、何卒右免許期限ノ制ハ自今断然廃止セラレ度希望仕候、蓋シ此免許期限ヲ定メラルヽガ為メ鑑札書換ノ際関係諸官衙ニ於テ筆墨紙料其他諸雇吏員ノ給料等ニ要スル費額少カラス、試ニ東京府下ノミニ就テ之ヲ算スルモ一ケ年ノ費額恐ラクバ数千円ノ上ニ在リ全国ニ就テ之ヲ通算スル時ハ其額無慮数万円ニ下ラズト奉存候、左レバ今此免許期限ノ制ヲ廃止セラルヽニ於テハ之ガ為メ大ニ当業者ノ手数ヲ省クノミナラズ亦大ニ当局者ノ手数ヲ省キ結局官民共ニ便利ヲ得ル事不少奉存候、此段建議仕候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　東京商工会々頭
　　十九年三月二十六日　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　内務大臣　伯爵　山形有朋殿

東京商工会議事要件録　　第二一号・第六―九頁　明治一九年一〇月二〇日刊

　　　　会員出席スル者　○三十七名
○上略
次ニ会長（渋沢栄一）ハ明治十九年上半季間事務ノ成跡ヲ報告ス
　　自明治十九年一月至同六月　半季間事務ノ報告
○中略
　　　　政府ヘ建議　　　一件
○売薬免許期限ノ廃止ヲ要スル義ニ付内務大臣ヘ建議
　　本件ハ百八番喜谷市郎右衛門及百九番森島松兵衛ノ建議ニ係リ其要旨ハ現行売薬規則ニヨレバ売薬免許期限ヲ満五年ト定メ満期ニ至ル時ハ必ズ鑑札ヲ書換ヘシムルノ制ナレトモ、此書換ノ事ハ実際必要ナクシテ且ツ之ガ為メ頗ル費用ヲ要スルニ付前記売薬免許期限ノ義ハ全ク之ヲ廃止セン事ヲ其筋ヘ建議スベシト云フニ在リ即チ明治十九年三月九日第十八臨時会ニ於テ之ヲ審議シタルニ全会異議ナク之ヲ可決シタルニ付、其建議案ハ更ニ理事本員ニ於テ之ヲ調成シ同月廿六日附ヲ以テ之ヲ内務大臣閣下ニ進達シタリ

東京商工会議事要件録　　第二三号・第三〇―四八頁　明治二〇年三月二二日刊
　　第十二定式会　　　（明治二十年二月廿六日午後四時三十分開会）
　　　　会員出席スル者　○五十六名
○上略
次ニ会長（渋沢栄一）ハ是迄本会ヨリ諸官衙ヘ建議又ハ復申シタル事項ニ就キ特別ニ其成跡ヲ報告ス
　　　　○東京商工会建議又ハ復申事項ノ成跡
明治十六年十一月本会創立以来今日ニ至ルマデ各官署ヘ建議又ハ復申シタル事項中、其筋ニ於テ既ニ本会ノ意見ヲ採用セラレタルモノ又ハ現今特ニ審査中ノモノハ左ノ如シ
○中略
○売薬免許期限ノ廃止ヲ要スル義ニ付内務大臣ヘ建議
　　明治十九年三月廿六日左ノ趣旨ヲ以テ山県内務大臣閣下ヘ建議シ
 - 第18巻 p.469 -ページ画像 
タリ
　　　現行売薬規則ニヨレバ売薬免許期限ヲ満五年ト定メ満期ニ至ル時ハ必ズ鑑札ヲ書換ヘシムルノ制ナレトモ、此書換ノ事ハ実際必要ナクシテ且ツ之ガ為メ頗ル費用ヲ要スルニ付、前記売薬免許期限ノ義ハ全ク之ヲ廃止セラレタシ云々
　　然ルニ同年十一月二十五日勅令第七十二号ヲ以テ此期限ヲ廃止スル旨左ノ如ク布告セラレタリ
　　　○勅令第七十二号
　　　朕売薬規則中営業免許期限廃止ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
　　　　御名御璽
　　　　　明治十九年十一月廿五日
　　　　　　　　　　　　　内閣総理大臣　伯爵　伊藤博文
　　　　　　　　　　　　　内務大臣　　　伯爵　山県有朋
　　　　　　　　　　　　　大蔵大臣　　　伯爵　松方正義
○下略

法令全書　　　明治十年　内閣官報局編　　明治二三年八月刊
○第七号（一月二十日輪廓附）　○太政官布告
売薬規則別冊ノ通相定候条此旨布告候事
（別冊）
　　　　売薬規則
　　　　　　第一章
第一条　此規則ニ称スル処ノ売薬トハ、丸薬・膏薬・煉薬・水薬・散薬・煎薬等家方ヲ以テ合剤シ販売スルモノヲ云フ
第二条　此売薬営業者ハ薬味分量用法服量功能ヲ詳記シタル書ニ族籍氏名ヲ記シ其管轄庁ヲ経由シテ内務省ニ願出免許鑑札ヲ受クヘシ
第三条　内務省ニ於テハ願書ヲ検査シ其製薬配伍ノ薬品劇毒微毒ニ拘ハラス取扱上失誤ヲ生シ易キモノ及ヒ毒薬取締ニ関係スルモノハ之ヲ許サヽルヘシ
第四条　第八条ニ記シタル期限中薬味分量用法服量能書ヲ改正セント欲スルモノ其由ヲ届出旧鑑札ヲ返納シテ更ニ新鑑札ヲ願受クヘシ
第五条　売薬ヲ請売セント欲シ其営業者ノ許諾ヲ得ルモノハ族籍氏名ヲ記シタル願書ニ営業者所持スル官許公文ノ写及ヒ営業者ト取結タル約定書トヲ添ヘ其管轄庁ヘ願出内務省ノ免許鑑札ヲ願受クヘシ
第六条　売薬営業者及ヒ請売者共必ス免許ノ看板ヲ掲クヘシ
第七条　売薬営業者及ヒ請売者ニ於テ自ラ行商シ又ハ売子ヲ派出シテ行商ヲ為サシメント欲スルトキハ其由ヲ管轄庁ヘ届出行商鑑札ヲ願受ケ行商スル時ハ必ス之ヲ所持スヘシ
第八条　営業鑑札・請売鑑札・行商鑑札ハ其鑑札記載ノ月ヨリ満五年ヲ以テ免許ノ期限トス、此期限ヲ過キ尚免許ヲ得ント欲スルモノハ旧鑑札ヲ返納シ更ニ新鑑札ヲ願受クヘシ
第九条　第八条ニ記シタル期限中第四条ノ改正発売ヲ願出之ヲ免許スル時ハ新鑑札記載ノ月ヲ以テ一期ノ初月トナスヘシ
 - 第18巻 p.470 -ページ画像 
第十条　免許期限内ト雖モ其製薬第三条ニ掲クル処ノ有毒品ナルヲ更ニ発見スル時或ハ営業者製薬ヲ粗悪ニスル等ノ事アル時ハ直ニ鑑札ヲ取上ケ発売ヲ禁止スル事アルヘシ
第十一条　営業者廃業スルカ又ハ禁止セラルヽ時ハ其請売者及ヒ売子共其販売ヲ許サス
第十二条　諸鑑札ヲ遺失シ又ハ水火盗難ニ因テ毀失シタル時ハ其仔細ヲ詳記シテ管轄庁ヘ届出再ヒ之ヲ願受クヘシ
第十三条　免許鑑札ヲ他人ニ譲渡サント欲スル者ハ双方連印ノ願書ヲ管轄庁ニ差出シ名前書換ヲ請フヘシ
第十四条　売薬営業者及ヒ請売者免許期限中其相続人ニ於テ之ヲ相続スル時ハ免許鑑札ヲ改ムルニ及ハスト雖モ其由ヲ届出ツヘシ
第十五条　売薬営業者廃業シ若シクハ禁止セラレタルトキハ営業者ハ勿論其請売者ニ於テモ総テ諸鑑札ヲ返納スヘシ
　　　　　　第二章
第十六条　売薬営業者及ヒ請売者ハ左ノ通税金並鑑札料ヲ上納スヘシ
　　売薬営業税　　　薬剤一方ニ付一枚　　　　金弐円
　　右鑑札料　　　　薬剤一方ニ付一枚　　　　金弐拾銭
第十七条　水火盗難ニ因リ鑑札ヲ毀失シ更ニ新鑑札ヲ願受ル時ハ其鑑札料ノ半高ヲ納ムヘシ
第十八条　税金ハ毎年両度ニ区分シ前半年分ハ七月三十一日限リ後半年分ハ翌年一月三十一日限リ鑑札料ハ其都度並ニ管轄庁ニ上納スヘシ
第十九条　税金ハ六月以前免許ノ者ハ全年分七月以後ハ半年分廃業ノ者ハ七月以後ハ全年分六月以前ハ半年分ヲ納ムヘシ
　　但第十条ノ有毒品ナルヲ更ニ発見セシ時ニ限リ月割ヲ以テ税金ヲ納メシムヘシ
　　　　　　第三章
第二十条　無鑑札又ハ鑑札ヲ借受ケ自ラ行商シ又ハ行商セシムル者及ヒ之ヲ貸ス者又ハ期限過タル鑑札ヲ以テ自ラ行商シ又ハ行商セシムル者ハ其鑑札ヲ取上ケ薬剤一方ニ付五円ノ罰金ヲ科スヘシ
第二十一条　無鑑札又ハ鑑札ヲ借受ケ又ハ期限過タル鑑札ヲ以テ請売スル者及ヒ無鑑札ノ者ヲシテ請売セシメ又ハ鑑札ヲ貸ス者ハ其鑑札ヲ取上ケ製薬ヲ没入シ薬剤一方ニ付拾円ノ罰金ヲ科スヘシ
第二十二条　免許ヲ受ケスシテ私ニ薬味分量用法服量能書等ヲ改更シ又ハ許可ヲ経スシテ無稽ノ妄説ヲ記載シ世人ヲ衒惑スル者ハ其鑑札ヲ取上ケ製薬ヲ没入シ薬剤一方ニ付拾円以上弐拾五円以下ノ罰金ヲ科スヘシ
第二十三条　無鑑札ニテ営業スル者ハ其製薬及ヒ売得金ヲ没入シ薬剤一方ニ付弐拾五円以上五拾円以下ノ罰金ヲ科スヘシ
第二十四条　諸鑑札ヲ偽造シ又ハ他人ノ売薬ヲ贋造シテ発売スル者ハ其製薬及ヒ其売得金ヲ没入シ薬剤一方ニ付五拾円以上百円以下ノ罰金ヲ科スヘシ
第二十五条　私ニ有毒薬ヲ配伍スル者ハ其鑑札ヲ取上ケ製薬及ヒ其売得金ヲ没入シ薬剤一方ニ付百円以上五百円以下ノ罰金ヲ科スヘシ
 - 第18巻 p.471 -ページ画像 
第二十六条　以上ノ犯則者ヲ見届ケ訴出ル者アル時ハ事実取糺ノ上相違ナキニ於テハ其賞トシテ其罰金ノ半高ヲ与フヘシ