デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
2款 東京商工会
■綱文

第19巻 p.115-129(DK190016k) ページ画像

明治21年10月3日(1888年)

先ニ第三回内国勧業博覧会開設ニ際シ、同会副総裁伯爵井上馨ヨリ参考品陳列ニ就キ当会ニ意見ヲ求メラル。是日栄一当会会頭トシテ、我邦ヨリ欧米ニ輸出スベキ商品ニ関スル調査乃至模範トスベキ欧米商品ニ関スル調査等ヲ復申ス。


■資料

中外物価新報 第一九二八号・明治二一年八月三一日 内国勧業博覧会に関する諮問(DK190016k-0001)
第19巻 p.115 ページ画像

中外物価新報  第一九二八号・明治二一年八月三一日
    内国勧業博覧会に関する諮問
農商務書記官柳谷謙太郎氏ハ来年五月仏国にて開設する万国大博覧会の事務委員として来月十六日出発同国へ赴かるゝ筈なるが、名にし負ふ仏国ハ啻に絹織物の名産地なるのみならず事々物々華美を以て世界に誇れる文明国なれば、今回の大博覧会にハ定めて万国より種々の精巧美麗なる品々を出品することなるべく、又有用なる新規発明の物件をも数多蒐集することなるべければ、其筋にてハ右万国数多の出品中に就き我邦の実業家に示して大に参考となるべきものあれば之を購入して来る二十三年上野にて開設する内国勧業大博覧会の参考室に陳列せんとの見込あるを以て、凡そ海外より購入して我邦大博覧会の参考品に為すべきものハ何等の種類を択ハんかとの諮問案を一両日前井上博覧会副総裁より東京商工会へ下附したり ○下略


東京商工会議事要件録 第三四号・第二九―四八頁 (明治二一年一〇月)刊(DK190016k-0002)
第19巻 p.115-121 ページ画像

東京商工会議事要件録  第三四号・第二九―四八頁 (明治二一年一〇月)刊
  第三十一臨時会  (明治廿一年九月八日開)
    会員出席スル者 ○四十一名
○上略
次ニ会長(渋沢栄一)ハ是ヨリ第二号議案ヲ議スヘキ旨ヲ告ゲ書記ヲシテ之ヲ朗読セシム
(第二号議案)
 来ル明治廿三年第三回内国勧業博覧会開設ニ際シ、参考品陳列ノ一館ヲ設ケ海外産出ノ物品ニシテ尤我国ノ需用ニ適シ製産上改良ノ模範トナルヘキモノ或ハ将来輸出ヲ増進スルノ目的アルモノ等ヲ陳列シ、当業者ノ耳目ヲ開発セシメントス、因テ其会ニ於テ見込ノ物品モ有之候ハヽ該品目及価格ノ目的相立候モノハ右価格共可成至急報答有之度此段及下問候也
  明治廿一年八月廿九日
 - 第19巻 p.116 -ページ画像 
      第三回内国勧業博覧会副総裁 伯爵 井上馨
    東京商工会会頭従四位 渋沢栄一殿
次ニ会長(渋沢栄一)ハ本件ニ就テハ去ル五日幹事会ヲ開キ概略品目ヲ調ヘ置キタリトテ更ニ書記ヲシテ之ヲ朗読セシム
      第一類
 一家具一式
  椅子・卓・寝台及寝室備品・衣裳箪笥其他仏国ニテ所謂家具ト称スルモノヽ範囲内ニ属スルモノ
 一飲食器一式
  金属製
   スープ鉢・菓子鉢其他スプーン・ホーク・ナイフ・コーヒースプーン類一式
  陶磁器製
   スープ鉢・肴鉢・野菜鉢其他客用大中小揃並ニ通常ノ食器具・コーヒー茶具其他一式
  硝子製
   薬味入・酢漬入・各種ノコツプ其他一式
  木製
   サラツド用匙・ホーク其他一式
 一支那向ノ食器
  大菜・中菜ト称スル丼皿類ノ揃及茶湯呑・通常用ノ品類一式
 一室内装飾品一式
  窓飾・敷物・置物・壁紙・壁飾リ棚類其他
 一食堂装飾品一式
  花卉ヲ盛ル鉢類・食器棚・燭台其他
 一庖厨用具一式
  鍋類・竈其他
 一文房具一式
  墨壷・ペン・ペン盆・ペン架ケ・状差・書翰紙挟ミ・紙切・文鎮其他書斎用飾文房具・旅行用及画工用ノ什器
 一婦人ノ装飾品並ニ携帯品一式
  化粧道具・胸飾リ・腕飾リ・指輪・手袋及靴ノ鈕掛ケ・靴ベラ・手袋伸張器・扇子・手提ゲ及以上ノ各品ヲ入ルヽ函類其他
 莨道具一式一
  巻莨入・巻莨立・刻ミ莨入・懐中莨入・マツチ立・マツチ入・灰皿類其他
      第二類
 一時計
  柱時計・置時計ノ類、但シ本邦人ガ製造シテ内地ノ需用ニ供シ、且ツ海外ヘ輸出シ得ルノ望アルモノ
 一生糸
  伊・仏其他ノ製造ニ係ル練糸及綛糸
 一絹織物
  縮緬・郡内・琥珀、羽二重ノ類、ハンゲチーフ地又ハハンゲチー
 - 第19巻 p.117 -ページ画像 
フノ類、支那・印度製ニ係リ欧米向ニ仕立テタル薄絹類
 一旅行用携帯品一式
  カバン・手提ゲ化粧道具其他
 一靴傘
  雨靴・上靴・常用靴・軍用靴・馬上用靴・日傘・雨傘、但シ男女ニヨリテ区別アルモノハ男女両用共
 一馬具
  平常用・競馬用・軍用・馬車用・荷車用
 一煖炉及附属品
  本邦ノ如キ木製平家ノ室内ニ適当シ従来ノ巨燵又ハ火鉢ニ代用シ得ベキモノ
      第三類
 一学術用器械
  寒暑計・晴雨儀・験液器・針盤其他
 一麦藁細工
  各種ノ製品及其材料タル各種組真田ノ類
 一竹又ハ蔓細工
  紙屑籠・提籠類・棚・椅子其他
 一金属器
  室内造作用ノ金具類・蝶遣ヒ・錠前・帽子掛ケ其他
 一陶磁器
  建築用ノ装飾類
 一荷車
  内地ノ運搬ニ適用スヘキモノ
      第四類
 一美術工業用ノ細工器械
  剪刀・鑿・鉋・鍛金・槌・磨革・小刀ノ類ニテ重ニ美術工業上ニ用ユルモノ
 一農業用器械
  鋤・鍬・鎌・犁・耙等ノ耕作具・連耞・籾摺臼・簸車等ノ収穫具糸・綿・油・茶・糖・麻・烟草ノ製造具
 一木工用器機
  鋸・鉋・鑿・錐・木ヲ蒸シ又ハ其腐蝕ヲ防グ器機類其他
 一鉱業用器械
  石炭・銅・銀・錫・アンチモニー等ノ採掘・洗鉱・焼鉱・製練・運搬等ニ用ユル器械類
 以上四種ノ器械ハ重ニ各人ノ手工ヲ助クルヲ目的トシテ製作シタルモノニシテ、能ク我国現状ニ適シ直チニ実地ニ応用シ得ルモノアラン事ヲ要ス
会長(渋沢栄一)曰ク、此品目ハ前回ノ幹事会ニ於テ、重ニ五十八番(益田孝)四十二番(松尾儀助)二十五番(丹羽雄九郎)ノ意見ニヨリテ取調ヘタルモノニシテ、其趣旨ハ要スルニ此等ノ参考品ヲ購入セラルヽニ当リテハ可成実地ニ効能アルモノヲ撰択セラレタシト云フニ在リテ、例ヘバ家具・飲食器ノ如キ元来我国ノ工業
 - 第19巻 p.118 -ページ画像 
者ガ海外ノ事情ヲ知ラズシテ濫ニ之ヲ製造スルヨリ茶卓ノ図案ニヨリテ珈琲皿ヲ作ルガ如キ不都合往々アリテ、之ガ為メ充分ニ其販路ヲ海外ニ拡張スルヲ得サルノ実況アリ、故ニ此等ノ品類ハ欧米諸国ニ於テ日常便用《(使)》スルモノ一式ヲ陳列シ、我ガ当業者ヲシテ欧米ノ習俗ヲ知ラシメタシ、又例ヘバ農業器械ノ如キ、元来我国ノ農業ハ区々手力ヲ仮ルノ小農事ニシテ現ニ麻ノ皮ヲ剥取スル場合ノ如キ逸々人手ニ頼ルヲ以テ無益ノ手数ヲ要スルニ付、現今欧米諸国ニ行ハルヽ農業器械類ノ中我国ノ農業ニ適用スベキモノアラバ之ヲ陳列シテ我ガ当業者ノ参考ニ供シタシト云フノ意ナリ、而シテ此等ノ要旨ハ追テ書記ヲシテ調査セシメ復申案中ニ記入セシムル見込ナレトモ、先ヅ以上掲記スル品目ニ就キ加除ヲ要スル品種モアラバ各員充分ニ其意見ヲ陳述セラレタシ
五十八番(益田孝)曰ク、頃日柳谷事務官ニ面謁シテ承リタル処ニ拠レバ抑モ井上副総裁ヨリ此諮問案ヲ下附セラレタルノ御趣意ハ、此度仏国巴里ニ於テ開カルヽ万国博覧会ノ出品中ニハ参考上必須ノ物品少カラザルベキニ付、今般我ガ政府ヨリ事務官ヲ派出セラルヽニ当リ其中ヨリ緊要ノ物品ヲ購入シ若クハ交換シ、之ヲ来ル二十三年ノ内国勧業博覧会ニ於テ参考品トシテ陳列セラレタシトノ事ナリ、扨余ガ前回ノ幹事会ニ於テ望ミタルハ重ニ器械類ニシテ現ニ農業器械ノ如キハ是迄海外ヨリ輸入シタルモノモアレトモ如何セン其装置宏壮ニ過キテ我国ノ如キ従来小農事ヲ主トスル国柄ニハ何分適当セサルノ憾アリ、余ガ嘗テ伊国ニ滞留中該地ノ農業博覧会ヲ一覧シタル事アリシガ玆ニ陳列セル農業器械ノ中ニハ其装置稍ヤ小ニシテ我国ノ農業ニ適用スヘキモノ頗ル多カリシト覚ユ、左レバ此等ノ器械類ヲ購入セラルヽニハ我国ノ現状ヲ参酌シ直チニ我ガ農業ニ適用スヘキモノヲ撰択セラレタシ、又鉱業機械ノ如キモ亦必要ニシテ元来我国ニ於テハ各種ノ鉱山ニ富ミ、石炭・銅・錫・アンチモニーノ如キハ近来漸ク海外ニ販路ヲ開キ又石油・硫黄ノ如キモ将来大ニ望アリ、左レバ此等モ我国ノ鉱業ニ適スヘキモノヲ撰ンデ之ヲ陳列セラルヽ時ハ其効能不少ト信ズ、又余輩ガ此等ノ参考品ヲ要望スルノ趣意ハ只多種ヲ蒐集シテ博覧ニ便スル為メニアラズシテ要スルニ之ニヨリテ実地ノ効能ヲ致サントスルニ在リ、故ニ之ヲ購入セラルヽニ当リテハ第一ニ「内国ニ於テ其原質ニ富ムモノ」第二ニ「内国ニ於テ需用ノ多キモノ」第三ニ「海外ニ於テ需用ノ多キモノ」ヲ標準トシテ撰択セラレタシ、而シテ猶此等ノ趣旨ニ就テハ復申案中ニ充分其説明ヲ加ヘン事ヲ望ム
四十九番(日下部三之介)曰ク、教育用図画器械類ノ如キモ頗ル模範ヲ要スルモノニ付、其品目中ニ加ヘン事ヲ望ム
四十二番(松尾儀助)曰ク、美術工芸ハ我国特有ノ長技ニシテ特ニ我国ニ於テハ銅・陶磁・竹木・麦藁其他玉石ニ至ル迄一トシテ其原質ニ富マサルハナシ、故ニ我ガ美術品ニ改良ヲ加ヘ海外ニ向テ益益其販路ヲ拡張スルハ特ニ緊要ナリトス、然ルニ我ガ当業者ガ欧米ノ習俗ヲ知ラサルヨリ往々彼ノ需用ニ適セザルノ物品ヲ製造ス
 - 第19巻 p.119 -ページ画像 
ルハ甚ダ遺憾ナリト謂フヘシ、嘗テ独逸ニテ日本人ガ平素生計上ニ要スル諸器具類ヲ調査シタルニ其数八十余種アリタリト云フガ今我ガ美術品ノ販路ヲ海外ニ拡張セントスルニハ先ヅ我ガ当業者ヲシテ欧米人ガ平素生計上ニ於テ如何ナル諸器具類ヲ要スルカ、例ヘバ家具ノ如キ客間ニハ如何ナル種類ヲ用ヒ居間ニハ如何ナル種類ヲ用ユルカ、又飲食器ノ如キ大揃ハ何人前ニシテ如何ナル種類ヲ用ヒ中揃ハ何人前ニシテ如何ナル種類ヲ用ユルカ、要スルニ欧米ノ習俗ヲ知ラシムル事必要ナリトス、又陶磁製建築用ノ装飾類及金属製蝶遣ヒ・錠前ノ如キハ今後我国ニ於テ家屋ノ建築改良スルニ従ヒ内地ノ需用益々増加スベキニ付、此等モ其模範ヲ蒐集シテ我ガ当業者ノ参考ニ供セラレタシ、又器械類ノ如キハ敢テ完備ヲ求ムルヲ要セズ、重ニ我ガ工業者ノ手工ヲ補助スベキ種類ヲ撰択シテ陳列セラレタシ
二十五番(丹羽雄九郎)曰ク、此等参考品ヲ要スル趣旨ハ只今五十八番(益田孝)及四十九番(松尾儀助)ノ説明シタル如クナルガ、猶余ノ気附キタル所ヲ玆ニ一言センニ元来家具・飲食器ノ如キ是迄内国ノ市場ニ販売スルモノモ不少シテ、我ガ当業者ハ既ニ其模範ヲ知ルガ如クナレトモ、要スルニ此等ノ物品ハ重ニ欧米ニ於テ中人以上ニ位スル一部ノ人々ガ使用スル所ニ係リ、随テ其需用ニ至リテハ甚ダ狭隘ナルモノアリ、左レハ今此等ノ参考品ヲ購入セラルヽニ当リテハ彼ノ国中人以下ノ使用スル所ニ係リ其需用ノ極メテ広濶ナルモノヲ撰択セラレン事ヲ望ム、果シテ然ル時ハ例ヘハ我ガ竹箒ヲ以テ烟突ヲ掃除スル道具ニ代用シ、或ハ我ガ竹ノ皮ヲ以テ麺包ヲ盛ルノ器ニ適用スルト云フガ如ク、要スルニ我ガ製産品ノ販路ヲ海外ニ拡張スルニ於テ望外ノ成蹟ヲ呈スル事アルベシ、又余ガ嘗テ前年欧洲滞留中農業ノ景況ヲ視察シタル事アリシガ、農民ガ毎日仕事ヲ終リテ帰宅スルヤ其馬ヲ小屋ニ牽キ入レ、之ヲシテ此ニ装置シアル階子様ノ器械ヲ踏マシメ以テ麺包粉ヲ製造スルヲ目撃セリ、是ハ只巧ニ馬ノ休息時間ヲ利用スルニ過キズシテ敢テ馬力ヲ困憊セシムル程ニアラザレバ独リ製産上ニ利益アルノミナラス馬ノ健康ヲ保持スル為メニモ便利アリ、此事タル小事ナリト雖トモ広ク我ガ農業者ヲシテ之ヲ実施セシムルニ於テハ其国家経済上ニ与フル利益少カラザルベシト信ス
五十八番(益田孝)曰ク、猶此ニ参考品ノ中ニ加ヘラレタキ二三ノ品類ヲ挙グレバ第一ニハ紙製品ナリ、夫レ紙ハ我国ニ於テ其ノ原質ニ乏シカラス特ニ壁紙ノ如キハ今後海外ノ需用益々増加スベキ見込アレハ現今欧米諸国ニテ需用スル各種ノ紙製品ヲ購入シテ我ガ当業者ニ其模範ヲ示シタシ、是本品ヲ要スル所以ナリ、第二ニハ麻ノ製造器械ナリ、蓋シ繊緯ノ強キ植物ハ近来欧米諸国ニ於テ最モ其裁培ニ力ヲ尽ス所ニシテ、麻ハ其繊緯極メテ強ク時ニ我国ニ於テハ頗ル其栽培ニ適スルガ故ニ今後之ガ製造ノ進歩ヲ図ルハ甚ダ緊要ナリト是本品ヲ要スル所以ナリ、第三ニハ鉱業用器械ナリ是迄我ガ鉱業者ガ砂金ヲ陶汰スル場合ノ如キ重ニ手力ニ頼ルガ故ニ無益ノ手数ヲ要スル事アリ、此等ノ場合ニ於テ更ニ器械ヲ利用
 - 第19巻 p.120 -ページ画像 
セシムル時ハ経済上ノ利益少カラサルヘシ是本品ヲ要スル所以ナリ、第四ニハ水産ノ貯蔵鑵詰又ハ魚油製造ニ関スル器械ナリ、我国ノ各種水産ニ富ムハ蓋シ天恵ニ出ヅルモノニシテ今後之ヲ貿易品トシテ益々海外ヘ輸出スルハ甚ダ緊要ナリトス、然ルニ其器械概シテ不完全ナルハ実ニ遺憾ニ堪ヘサルナリ、是本品ヲ要スル所以ナリ、蓋シ魚油ノ如キハ海外ノ需用頗ル多クシテ特ニ大切ナル商品ナレバ其原油ハ勿論其製造法ノ如キモ可成之ヲ詳査シテ併テ陳列セラレン事ヲ望ム、其他麦酒ノ如キ氷ノ如キモ近来内国ノ需用益々増加スルノ勢アルニ付此等ノ製造器械モ亦陳列セラレタシ
二十五番(丹羽雄九郎)曰ク、我国ニテハ石ヲ磨研スル事拙劣ニシテ欧米ノ如ク石ヲシテ美麗ナル光沢ヲ発セシムルヲ得ス、目下我国ニ於テ土木工事ノ追々流行スルニ際シ此等磨石器械ノ如キモ参考品ノ中ニ加ヘラルヽ時ハ其便益少カサルヘシ
九十三番(松木平吉)曰ク、過刻五十八番(益田孝)ハ壁紙ノ事ヲ申サレタルガ余モ大ニ同意ナリ、而シテ更紗ノ如キモ元来我国人ニ取リ必要ナル日用品ナルニ其形附法ノ不完全ナルヨリ不得已海外ノ供給ヲ仰グノ情況アリ、故ニ若シ適当ノ形附器械アラハ此等モ参考品ノ一ニ加ヘラレン事ヲ望ム、又聞ク所ニヨレハ前年仏国ニテ亜鉛板ヲ以テ我ガ百人一首ノ絵ヲ模造シ之ニ大日本東京製ノ文字ヲ附シテ販売シタルニ頗ル売行宜シカリシト云フ、此等モ当業者ノ参考ニ供スル時ハ其便益少カラサルヘシト信ス
会長(渋沢栄一)曰ク、染物ノ事ニ就キ過刻柳谷事務官ヘ卑見ヲ開陳シタル事アリシガ、近来我国ガ染工輩ノ中ニハ印度産ノ藍《インヂゴー》ヲ使用スル者漸ク増加セルヨリ舶来品ノ輸入年々多ヲ加フルノ勢アリテ、之ガ為メ内国ノ製造者ハ大ニ困難ヲ感ゼリト云ヘリ、左レバ此等モ亦参考品ノ一ニ加ヘラレ、而シテ其原質ハ勿論製造法ノ如キモ可成之ヲ詳査シテ併テ当業者ノ参考ニ供セラレン事ヲ望ム
五十八番(益田孝)曰ク、仏国巴里ニハ各種器械ノ雛形ノミヲ集メタル場所アリテ、工芸ニ関スル器械類ハ大抵其雛形ヲ陳列セリト覚ユ、而シテ参考品ノ中ニ加ヘラルヘキ諸器械類ハ可成現品ヲ陳列セラレタキ事勿論ナレトモ、若シ其中現品ヲ得難キモノモアラハ雛形若クハ図式ニテモ可ナリ
二十三番(岩谷松平)曰ク、石鹸ハ近来我国ニ於テ其製造頗ル進歩シタリト雖トモ、其器械ノ不完全ナル為メ其品質未ダ舶来品ト拮抗スルヲ得サルハ甚ダ遺憾ナリ、故ニ此等製造器械モ参考品ノ中ニ加ヘラレン事ヲ望ム
十四番(小川為次郎)曰ク、我国工業ノ規摸ヲ広大ニスルハ恰モ産業《プロダクシヨン》ヲ進ムルガ如クナレトモ、熟々分配ノ上ヨリ考フル時ハ前途聊カ懸念ナキヲ得ス、現ニ織物事業ノ如キ神奈川県下小仏峠ノ手前ニ在リテハ稍ヤ製造所ノ仕組トナリ居レトモ、夫ヨリ先ハ多クハ手工ニヨルノ情況ナレハ今諸器械類ヲ購入セラルヽニ当リテハ我国ノ現状ヲ参酌シ、大仕掛ケニシテ滊力ヲ要スルモノヨリハ寧ロ小仕掛ケニシテ各人手力ヲ以テ運用スヘキモノヲ撰択セラレタシ
三番(梅浦精一)曰ク、西洋蝋燭ノ如キモ近来我国ニ於テ其製造頗ル
 - 第19巻 p.121 -ページ画像 
進歩セリト雖トモ、猶之ヲ舶来品ニ比スルニ一歩ヲ譲ラサルヲ得ス、故ニ此等製造器械モ亦参考品ノ中ニ加ヘラレタシ
右ノ外猶衆議ニヨリテ本案ノ御諮問ニ対スル復申書ハ更ニ理事本員ニ於テ各員ノ意見ヲ参酌シテ充分之ヲ再調シ、且ツ各品目ニハ逸々之ヲ要スル所以ノ説明ヲ附シ直チニ之ヲ井上副総裁ヘ進達スルニ決ス(此復申案ハ其後理事本員ニ於テ之ヲ再調シ十月三日附ヲ以テ之ヲ井上副総裁閣下ヘ進達シタルニ付其全文ハ参考部第二号ニ掲グ)


東京商工会議事要件録 第三四号・第五九―七八頁 (明治二一年一〇月)刊(DK190016k-0003)
第19巻 p.121-126 ページ画像

東京商工会議事要件録  第三四号・第五九―七八頁 (明治二一年一〇月)刊
 ○参考部
(第二号)
    ○(博覧会参考品ノ義ニ付井上副総裁ヘ復申書)
去ル八月二十九日附ヲ以テ来ル明治二十三年第三回内国勧業博覧会ヲ開設セラルヽニ当リ其参考品トシテ陳列セラルヘキ物品ノ種類御諮問有之候ニ付、本会ニ於テハ去月八日臨時会ヲ開キ篤ト審議ヲ遂ゲタルニ其品目別紙ノ通リ議定仕候ニ付不取敢復申仕候、尤各品目ニ就キ之ヲ要スル所以ハ夫々別紙ニ略陳セリト雖トモ猶本会ノ特ニ希望スル点ヲ左ニ一言仕候、抑モ我ガ当業者ヲシテ外国ノ製造品ヲ参考セシムルハ内国勧業上ノ利益少カラサルヘシト雖トモ、就中我国人ガ之ヲ製造シテ将来内外国ノ需用ニ応スヘキ望アルモノヲ陳列シ、当業者ニ其摸範ヲ示スハ最モ緊要ナル所ニシテ今回本会ヘ諮問セラレタル御趣旨モ亦玆ニ外ナラサルヘシ、故ニ今此等参考品ヲ蒐集セラルヽニ当リテハ第一ニ内国ニ於テ其原質ニ富ムモノ、第二ニ内国ニ於テ需用ノ多キモノ、第三ニ海外ニ於テ需用ノ多キモノヲ標準トシテ其種類ヲ撰択セラレ度希望仕候、又別紙第四類及第五類ニ掲グル諸器械類ハ特ニ必須ノ参考品ニ付此等ハ可成現物ヲ陳列セラレ度、而シテ万一多分ノ費用ヲ要スルカ又ハ搆造巨大ニシテ現物ヲ得難キノ事情モアラハ、責メテハ其雛形ヲ陳列シ以テ其運用法ニ当業者ヲシテ容易ニ理会セシメ度希望仕候、又別紙各品目ノ価格ハ逸々之ヲ想定シ度奉存候得共、中ニハ其区域極メテ広濶ニシテ其種類ヲ指定シ難キモノアリ、或ハ輓近ノ発明品ニ係リ未ダ市場ニ上ラサルモノアルヘク何分見込難相立ニ付新是《(マヽ)》ハ不得已省略仕候、此段併テ上陳仕候也
  明治廿一年十月三日    東京商工会々頭 渋沢栄一
    第三回内国勧業博覧会副総裁 伯爵 井上馨殿
      ○第一類(海外ノ需用ヲ主トスルモノ)
一家具一式
  椅卓・卓・寝台及寝室備品・衣裳箪笥其他仏国ニテ所謂家具ト称スルモノヽ範囲内ニ属スルモノ
一飲食器一式
  金属製
   スープ鉢・菓子鉢其他スプーン・ホーク・ナイフ・コヒースプーン類一式
  陶磁製
   スープ鉢・肴鉢・野菜鉢其他客用大中小ノ揃並ニ通常ノ食器具コヒー茶具其他一式
 - 第19巻 p.122 -ページ画像 
  硝子製
   薬味入・酢漬入・各種ノコツプ其他一式
  木製
   サラド用匙・ホーク其他一式
一支那向ノ食器
  大菜・中菜ト称スル丼皿類ノ揃及茶湯呑通常用ノ品類一式
一室内装飾品一式
  窓飾・敷物・置物・壁紙・壁飾・棚類其他
一食堂装飾品一式
  花卉ヲ盛ル鉢類・食器棚・燭台其他
一庖厨用具一式
  鍋類・竈其他
一文房具一式
  墨壼・ペン・ペン盆・ペン架ケ・状差・書翰紙挟ミ・紙切・文鎮其他書斎用飾文房具・旅行用及画工用ノ什器
一婦人ノ装飾品並ニ携帯品一式
  化粧道具・胸飾・腕飾・指環・手袋及靴ノ鈕掛ケ・靴ベラ・手袋伸張器・扇子・手提ゲ及以上ノ各品ヲ入ルヽ函類其他
一莨道具一式
  巻莨入・巻莨立・刻ミ莨入・懐中莨入・マツチ立・マツチ入・灰皿類其他
 以上各種ノ中ニハ是迄海外ヨリ輸入シ来リテ現ニ内国ノ市場ニ販売スルモノ不少、然ルニ今本会ガ特ニ其陳列ヲ要望スルモノハ要スルニ我ガ当業者ヲシテ欧米ノ習俗如何ヲ熟知セシメンガ為メナリ、蓋シ近来我国ニ於テ此等ノ品種ヲ製造シテ海外ヘ輸出ヲ試ムル者頗ル多クシテ、中ニハ其工技妙巧ヲ極メ往々欧米人ノ賞賛ヲ得ルモノナキニアラスト雖トモ、未ダ海外ニ向テ充分ニ其販路ヲ拡張スルヲ得ザルモノハ畢竟我ガ当業者ガ欧米ノ習俗ヲ研究セスシテ濫リニ之ヲ製造スルニ因ラスンバアラス、故ニ現今欧米ニ於テ中等ノ身分ヲ有シ一家ヲ成ス者ガ平素使用スル家具器具ノ類一式ヲ一堂ノ中ニ陳列シ其生計ノ現況ヲ示シ、以テ我ガ当業者ヲシテ例ヘハ家具ノ如キ客間ニハ如何ナル椅子・卓ヲ要シ居間ニハ如何ナル種類ヲ要スルカ飲食器ノ如キ客用ニハ如何ナル揃ヲ要シ常用ニハ如何ナル種類ヲ要スルカ、室内装飾品ノ如キ客間ニハ如何ナル窓掛ヲ要シ居間ニハ如何ナル種類ヲ要スルカ等仔細ニ欧米ノ習俗ヲ熟知セシムル事極メテ緊要ナリト信ス、又此等品種ニ於ケル製造販売ノ景況ハ我ガ当業者ノ特ニ参考ヲ必須トスル所ナルニ付其製造地・販売地名・製造費・売買価格ハ勿論何国ニ於テハ如何ナル形状ヲ嗜ミ何国ニテハ如何ナル摸様ヲ好ム等ノ事項ハ可成之ヲ詳査セラレ、併テ当業者ノ参考ニ供セラレン事ヲ望ム
      ○第二類(内国ノ需用ヲ主トスルモノ)
一学術用器械
  寒暑計・晴雨儀・験液器・針盤其他
一教育用ノ図画
 - 第19巻 p.123 -ページ画像 
  修身教授用図画・初学者ニ教授スヘキ図画製図ノ種類・博物・地理・歴史等ノ教授ニ供スヘキ図画
一同摸形
  動物・植物ノ摸形・人身ノ解剖等製作ノ摸様例ヘハ泥作・紙塑・木製ノモノ
一同器械
  物理学用ノ器械・化学用ノ器械・楽器・遊戯具
 以上器械ノ簡単ナルモノニシテ普通一般ノ理ヲ解スルニ足ルモノ
一家庭ノ教育及ビ幼稚園ニ使用スヘキ玩具・器具・摸形恩物等《(マヽ)》ノ摸様図画ノ種類
一旅行用携帯品
  カバン・手提ゲ・化粧具其他
一靴傘
  礼服靴・体操靴・雨靴・上靴・常用靴・軍用靴・馬上用靴・日傘雨傘、但シ男女ニヨリテ区別アルモノハ男女両用トモ
一馬具
  平常用・競馬用・軍用・馬車用・荷車用
 以上各種ノ中ニハ近来其製作頗ル進歩シテ現ニ内国ノ製造ニ係リ我国人ノ需用ヲ充スモノ其数不少、然リト雖トモ其形状装置及実用ノ諸点ニ於テ不完全ナルモノアリテ未ダ舶来品ト市場ニ対峙スルヲ得ズ、元来此等ノ品種ハ今後社会ノ改良スルニ従ヒ内国ノ需用益々増加スベキモノナレハ、其際我ガ当業者ニ其摸範ヲ示シ之ガ製造ノ改良ヲ企図スルハ甚ダ急務ナリトス、蓋シ此等ノ品種ハ重ニ内国ノ需用ヲ主トスルモノナレトモ中ニハ其製作ノ如何ニヨリ濠洲其他印度地方ヘ販路ヲ開キ得ベキ見込ノモノナキニアラザルナリ
一室内造作具ノ類
  煖炉及附属品・金属製蝶遣ヒ・錠前帽子掛其他造作具・陶磁製建築用ノ装飾類
 以上ノ各種ハ今後我国ニ於テ家屋ノ改良スルニ従ヒ益々其需用ヲ増加スベキハ必然ニシテ、特ニ金属陶磁ノ如キハ我国ニ於テ共ニ其原質ニ富ムヲ以テ、此際我ガ当業者ニ摸範ヲ示シ以テ其製造ノ興起ヲ奨励スルハ甚ダ必要ナリト信ズ、蓋シ我国ハ元来木材ニ富ムノ国柄ニシテ建築ノ材料トシテ木材ヲ使用スルノ慣習ハ今後容易ニ消滅スル事ナカルベキニ付、煖炉及附属品ノ如キハ重ニ木造家屋ニ適応スベキモノラ《(ヲ)》撰択シテ之ヲ陳列セラレン事ヲ望ム
      ○第三類(原質ノ儘又ハ之ニ製造ヲ加ヘテ海外ニ輸出スベキモノ)
一生糸及絹織物
  伊・仏其他ノ製産ニ係ル練糸及綛糸・縮緬・郡内・琥珀・羽二重ノ類、ハンケチーフ地又ハハンケチーフノ類、支那印度製ニ係リ欧米向キニ仕立タル薄絹類
一麦藁細工
  各種ノ製品及其材料タル各種組真田ノ類
一竹又ハ蔓細工
 - 第19巻 p.124 -ページ画像 
  各種ノ製品及其材料
一紙細工
  各種ノ製品及其材料
 以上ノ各種ハ近来欧米ニ於テ益々其需用ヲ増加スルノ景況アリ、特ニ此等ノ品種ハ我国ニ於テ共ニ其原質ニ富ムヲ以テ将来益々之ガ製産ノ振興ヲ図ルハ実ニ目下ノ一大急務ナリト謂フベシ、故ニ現今欧米ニ於テ最モ需用多キ各種ノ製品並ニ之ガ原質ヲ陳列シ以テ当業者ニ参考ノ便ヲ与ヘン事ヲ望ム
      ○第四類(各種製造器械)
一藍製造器械
一魚油製造器械
一水産ノ貯蔵及鑵詰ニ関スル器械
一麦酒醸造器械
一綿布・絹布及メレンス類ノ形附器械
一壁紙形附器械
一石鹸製造器械
一西洋蝋燭製造器械
一製氷器械
 以上ノ各種ハ共ニ重要ナル商品ニシテ将来内国ノ需用益々増加スベキハ勿論中ニハ海外輸出ノ見込アルモノ亦不少、然ルニ其製造器械ノ不完全ナルガ為メ重ニ内国ノ需用ヲ主トスル藍・麦酒・形附綿布及メレンス・石鹸・西洋蝋燭ノ如キ内国ノ製品ヲ以テ之ニ応ズルヲ得ズシテ不得已海外ノ供給ヲ仰クノ情況アリ、又重ニ海外ノ需用ヲ主トスル魚油・各種ノ水産・壁紙ノ如キ其製法宜ヲ得スシテ未ダ海外市場ニ於テ充分其声価ヲ得ル能ハス、抑モ此等ノ品種ハ我国ニ於テ共ニ其原質ニ富ムヲ以テ此際其製造ノ振興ヲ企図スルハ甚ダ肝要ナリト信ス、故ニ現今欧米ニ行ハルヽ製造器械ノ中我ガ製造ニ応用スベキモノヲ陳列シテ当業者ニ参考ノ便ヲ与ヘラレン事ヲ望ム、蓋シ此等品種ノ製造ニ関スル細況ヲ知ルハ亦当業者ノ最モ希望スル所ナルニ付以上各種ノ器械ヲ陳列セラルヽニ当リテハ其原質物ヲ蒐集セラルヽハ勿論、其製造ノ順序及方法ニ至ル迄可成之ヲ詳査セラレ併テ之ヲ当業者ノ閲覧ニ供セラレン事ヲ望ム
      ○第五類(手工ヲ補助スベキ器械)
一美術工業用ノ細工器械
  剪刀・鑿・鉋・鍛金・槌・磨革・小刀ノ類ニテ重ニ美術工業上ニ用ユルモノ
 美術工業ハ我国特有ノ長技ニシテ其手術ノ巧妙ナルハ夙ニ欧米人ノ賞賛スル所ナリ、然ルニ其細工器械ノ中ニハ往々迂遠ナルモノアリテ当業者ガ物品ヲ製作スルニ当リ、無益ノ時間ヲ要シ未ダ其製造費用ヲ減省スルヲ得ザルハ実ニ我ガ工業上ノ一大欠点ト謂フベシ、目下海外ニ於テ我ガ美術工業品ノ需用ハ益々増加スルノ傾向アリ、此際ニ当リ其器械上ニ一層ノ改良ヲ加フルハ甚ダ必要ナリト信ス、故ニ現今欧米諸国ニ行ハルヽ適当ノ器械ヲ陳列シ以テ我ガ当業者ヲシテ改良ノ方針ヲ得セシメン事ヲ望ム
 - 第19巻 p.125 -ページ画像 
一農業器械
  鋤・鍬・鎌・犁・耙等ノ耕作具・連耞・籾摺臼・簸車等ノ取獲具糸・綿・油・茶・糖・麻・煙草ノ製造具
 我国ハ元来気候穏和地味膏腴ニシテ各種ノ農産殆ド皆其成育ニ適セザルハナシ、而シテ其播種栽培ノ法ノ如キ逐年漸ク進歩スルノ勢アリト雖トモ元来我邦ノ農業ハ区々手力ニ頼ルノ小農事ニシテ、欧米諸国ニ行ハルヽ器械耕作ノ慣習ナキニ付未タ充分其発達ヲ期スルヲ得ズ、例ヘハ麻ノ皮ヲ剥取スル場合ノ如キ専ラ人手ニ依頼スルヲ以テ其製造上ニ無益ノ手数ヲ要スル事アリ、又菜種油ヲ搾取スル場合ノ如キヤヽ器械力ヲ応用スル事ナキニアラスト雖トモ其搆造粗大ニシテ猶労力ヲ浪費スル事ヲ免カレス、其他各種農産ノ耕作又ハ収獲ノ場合ニ於テモ之ニ類スル事少カラス、若シ此際我カ当業者ヲシテ更ニ適当ナル器械ヲ利用セシムル時ハ之カ為メ大ニ労力ヲ減省スルヲ得テ我国経済上ニ与フル利益実ニ鮮少ニアラザルベシ、故ニ現今欧米諸国ニ行ハルヽ農業用器械類ニシテ我国ニ適用スベキ見込ノモノアラハ之ヲ陳列シテ我当業者ノ参考ニ供セラレン事ヲ望ム、唯我邦ノ農業ハ其規摸極メテ狭少ナルヲ以テ装置宏壮ニシテ大農事ニ使用スベキ器械ハ之ヲ実用シ難キノ恐アリ、現ニ伊国ニ於テ使用セル農具類ニハ我小農事ニ最適当スルモノアルヲ聞ケリ、左レバ今前陳ノ器械類ヲ購入セラルヽニ当リテハ我国ノ現状ヲ斟酌セラレ装置簡便ニシテ重ニ小農事ニ適スルモノヲ撰択セラレタシ
一木工用器械
  鋸・鉋・鑿・錐ノ類
 我国ノ木工ヲ業トスル者ノ中ニハ多年ノ経験ニヨリテ其手術頗ル上達スルモノ不少、然ルニ従来其使用スル器械ハ概シテ不完全ニシテ製作ノ際貴重ノ労力ヲ徒費スル事多シ、蓋シ我国ハ元来木材ニ富ミ従テ家屋ハ勿論家具食器ノ類ニ至ル迄其原質ニハ木材ヲ用ユル事極メテ多ク、現ニ木工ハ我ガ工業中ノ一大要部ヲ占ムルノ実況アリ左レバ此際其器械上ニ改良ヲ加フル事ハ我国経済上ノ一大要件ナリト信ズ、故ニ現今欧米ニ行ハルヽ木工用器械類ノ中改良ノ模範タルベキモノアラバ之ヲ陳列シ以テ当業者ニ参考ノ便ヲ与ヘラレン事ヲ望ム、又欧米諸国ニハ木地ヲ蒸シテ其腐蝕ヲ防止スルノ法行ハルヽ趣キナルガ此等ハ我ガ木工ヲ業トスル者ノ最モ参考ヲ要スルモノト信ズルニ付、可成之ヲ詳査セラレ前陳ノ器械ヲ陳列スルニ当リ併テ当業者ノ閲覧ニ供セラレタシ
一鉱業用器械
  石炭・銅・銀・錫・アンチモニー・石油・硫黄等ノ採掘・洗鉱・焼鉱・製練《(錬)》・運搬等ニ用ユル器械類
 我国ハ元来各種ノ鉱山ニ富ミ現ニ石炭・銅・錫、アンチモニーノ如キハ近来漸ク海外ニ向テ其販路ヲ開キ、又石油・硫黄ノ如キモ将来大ニ望ヲ属スベキモノナリ、然ルニ其器械進歩セスシテ現ニ今日砂金ヲ陶汰スル場合ノ如キ多クハ手力ニヨルヲ以テ無益ノ手数ヲ要セザルヲ得ス、尤前陳各種鉱物ノ採掘・洗鉱若クハ焼鉱・製練等《(錬)》ノ場合ニ於テハ器械ノ力ヲ仮ルモノ全クナキニアラスト雖トモ、要スル
 - 第19巻 p.126 -ページ画像 
ニ其搆製不充分ナルモノ多クシテ労力ヲ徒費スル事少カラス、此際若シ其器械上ニ改良ヲ加フル時ハ之ガ為メニ労力ヲ減省スルヲ得因テ生スル利益実ニ少々ナラザルベシ、故ニ現今欧米諸国ニ於テ用ユル鉱業用諸器械類ノ中我ガ鉱業上ニ利用スベキモノアラハ之ヲ陳列シテ当業者ノ参考ニ供セラレン事ヲ望ム
一磨石器械
一荷車
 此二種ノ如キハ今後土木盛ニ行ハレ運輸開通スルニ従ヒ共ニ其需用ヲ増加スベキモノナリ、然ルニ従来我国ニ於テ使用スル所ハ其搆造甚タ不完全ニシテ随テ労力ヲ徒費スル事少カラス、故ニ此等モ改良ノ摸範タルベキモノヲ陳列シテ当業者ノ参考ニ供セラルヽ時ハ亦敢テ小補ナキニアラスト信ス


東京商工会議事要件録 第三七号・第四―九頁 (明治二二年三月)刊(DK190016k-0004)
第19巻 p.126 ページ画像

東京商工会議事要件録  第三七号・第四―九頁 (明治二二年三月)刊
  第十九定式会  (明治廿二年二月廿三日開)
    会員出席スル者 ○三十二名
○上略
次ニ会長(渋沢栄一)ハ是ヨリ本議ヲ開クベキ旨ヲ告ゲ、先ヅ規程第五章第二十二条ニヨリ明治二十一年下半季定式事務ノ成跡ヲ報告ス
  自明治廿一年七月至同年十二月 半季間事務報告
○中略
    政府ヨリ諮問   一件
○第三回内国勧業博覧会参考品ノ義ニ付同会副総裁ヨリノ下問
  本件ハ明治二十一年八月二十九日附ヲ以テ井上第三回内国勧業博覧会副総裁閣下ヨリノ諮問ニ係リ、其要旨ハ来ル明治二十三年該博覧会開設ニ際シ参考品陳列ノ一館ヲ設ケ緊要ナル海外産出ノ物品ヲ陳列セラルヽニ付、該品目及価格ヲ調査シテ報荅スベシト云フニ在リ、依テ翌九月八日第三十一臨時会ニ於テ審議ノ末理事本員ニ於テ最モ必要ナル品目三十七種ヲ撰ビ之ニ其必要ノ理由ヲ附記シ、翌十月三日附ヲ以テ之ヲ同副総裁閣下ヘ進達シタリ



〔参考〕第三回内国勧業博覧会事務報告 第三四九―三五五頁 明治二四年三月刊(DK190016k-0005)
第19巻 p.126-129 ページ画像

第三回内国勧業博覧会事務報告  第三四九―三五五頁 明治二四年三月刊
    ○参考館(建築ノ項参観)
参考館ノ設置ハ亜細亜大博覧会ノ設計ニ胚胎ス、該会組織取調委員ノ報告ニ拠レハ貿易・考古ノ二館ヲ設クルハ其要項ノ一ナリシカ亜細亜博覧会開設ノ議竟ニ行ハレス、更ニ第三回内国勧業博覧会ヲ挙行シ傍ラ貿易館ヲ設ケ締盟各国ノ出品ヲ列スヘキ旨ヲ訓令セラル、尋イテ農商務・大蔵両省ニ於テ委員ヲ設ケ審議ノ後貿易館ヲ特設スルノ一事ハ之ヲ止メ純然タル内国勧業博覧会ヲ開設シ、傍ラ経費ノ弁シ得ヘキ範囲内ニ於テ欧米諸国製産品ノ我カ耳目ヲ開発スルニ足ルヘキモノヲ購入シ、貿易館ニ代フルニ参考館ヲ以テスヘシトナスニ至レリ、是レ各国ノ出品ヲ許スニ於テハ仮令ヒ品種ヲ限ルモ尚ホ其規模計画自ラ宏大ヲ要シ、其費支エ難シ、若シ強テ実行セント欲セハ百事姑息ニ流レテ内外共ニ完備ヲ得サルノ憂アリト云フニ在リ、参考品蒐集ノ方法ハ本
 - 第19巻 p.127 -ページ画像 
会規則第八条ニ在リ、然ルニ其採集費額ハ金弐万円ニ限レリ、之ヲ以テ物産改良上模範トナルヘキ内外国物品ヲ網羅スルハ固ヨリ難事ニ属シ且帝国博物館ハ本会ト相併セテ開観シ内国ノ物品ハ既ニ其館ニ備ハルヲ以テ単ニ外国品ニシテ主トシテ学理ヲ応用シ、我カ模範トナスニ足ルヘキモノ及ヒ取テ以テ将来輸出ヲ増進スルノ資トナスヘキモノヲ撰集スヘキニ決シ、二十二年仏国巴里大博覧会若クハ製産地ニ就テ之ヲ購求シ且我カ政府ヨリ該会ニ出陳スル物品(非売品ヲ除キ)ヲ以テ交換スヘシトナシ、二十一年八月品種ノ撰定ヲ貿易協会及ヒ東京商工会ニ諮問シタリ
越テ十二月貿易協会幹事長及ヒ東京商工会々頭ノ答案ニ接セリ、即チ是レニ依リ取捨折衷シ農産物五十八点、海産物四十六点、工芸品二百三十九点、器械及ヒ図書類八十六点、諸工原料四十三点、合計四百七十二点ヲ撰択シ、各相当ノ品種数量ヲ購入シ、荷造運搬費及ヒ保険料等ヲ合セ金壱万七千円ヲ以テ支弁スルノ目途ヲ立テ、其購買ノ事ヲ将テ仏国大博覧会副総裁帝国全権公使子爵田中不二麿ニ依頼セリ、副総裁ハ我カ派遣ノ事務官ヲシテ其事ニ当ラシメ、二十三年二月事務官帰朝ノ前後ニ物品ヲ舶致セリ、之ヲ列挙スレハ左ノ如シ

   部類      点数  部類        点数
 一   一      九  一    三    八九
 同   二    一一二  同    四     四
 同   五    一二一  同   一六     一
 同   六      一  二    二     三
 同   七     七六  同    三     二
 同   八      二  同    四     四
 同   九    一〇七  三    一    八四
 同  一〇     五五  同    三     七
 同  一一    二六〇  四    一    二四
 同  一二    三四五  五    一    一六
 同  一三    三四七  六    一     六
 同  一四     一一  計       一七二六

又我カ事務官及ヒ仏国人ヨリ参考品ヲ寄贈スルモノアリ即チ左ノ如シ

    部類     点数   寄贈者
 一   一     二八  成島謙吉
 同   五      一  仏国巴里 ハル、ドヲスン
 同   七      一  成島謙吉
 同  一一     九一  仏国里昂商法会議所外六名
 同  一二     一九  中出哲 成島謙吉
 同  一三      五  仏国人クレペール外四名
 三   一     二八  仏国巴里商品取引所長並和蘭国アムステルダム府ジスクート
 六   三     一二  仏国巴里ホープルジユタンプル町廿二番ホーベル商会及製造人ジミラートル
 計        一八五

右物品ノ中殊ニ顕著ナルハ室内粧飾具・織物・服飾類・文房具・陶磁器・紙類及穀物染料ノ見本・魚介鑵蔵等ニシテ、総テ舶来ノ飾箱ニ充テ参考館内ニ陳列シタリ、既ニシテ閉後ニ迨ヒ農商務大臣ハ商工標本
 - 第19巻 p.128 -ページ画像 
トシテ其引続ヲ請求シ宮内大臣モ亦其前帝国博物館ニ寄贈セン事ヲ請求セラレタルニ依リ帝国博物館総長ト協議ヲ悉シ竟ニ農商務省ニ引続キタリ、此ヨリ前印刷局事務長ノ照会ニ依リ紙類ノ中陳列残余二葉以上ノ者ハ各一枚ヲ割キ計二百三十枚ヲ該局ニ贈付シタリ
斯ノ如ク参考品ハ専ラ本局ニ於テ蒐集スル所ナリト雖モ、尚ホ其旨趣ヲ拡張シ二十三年一月左ノ内規及ヒ心得ヲ定メリ
      参考品取扱内規
第一条 参考品ハ特ニ本局ニ於テ蒐集陳列スルモ、内外国ノ製品ニシテ本会ノ為メニ最モ裨益アルモノヲ出品セン事ヲ願出ル者アルトキハ本局ハ熟議ノ上特ニ之ヲ許可シ、参考館其他ニ出陳セシムル事アルヘシ
第二条 参考品ヲ出品セントスル者ハ目録・図面及ヒ明細ノ説明書ヲ添ヘ其地方庁ヲ経テ本局ニ出願セシムヘシ
第三条 参考品出品許可スルトキハ左ノ心得書ヲ下附スルモノトス心得書
其一 参考品出品ノ許可ヲ得タル者ハ本局ノ指定スル場所ニ於テ主任事務官補ノ指揮ニ従ヒ陳列付箋等ヲ為シ且時々拭掃ヲ行フ可シ
其二 参考品出品者ハ必ス出品物ニ明細書ヲ添附スヘク、又搬出及ヒ陳列ハ規則第二十三条ニ拠ル可シ
其三 陳列飾台・飾箱・其他粧飾等ニ要スル物品並ニ諸費ノ如キハ規則第十四条・第十五条ニ拠ル可シ
其四 出品許可ヲ与ヘタル参考品ニシテ参考館其他ニ陳列スルモノヽ保護ハ規則第十七条ニ拠ル可シ
前項ノ内規ニ拠リ出品ヲ許可セシ者左表ノ如シ

    部類     点数   出品者府県名  氏名及会社名
 一   一      四   東京府    渋谷嘉助
 一   五      三   同      高田商会
 一   九      一   同      同
 一  一五      一   同      同
 五   一      一   同      同
 六   二      三   同      同
 六   三      一   同      同
 七   六      三   同      同
 七   七      一   同      同
 七  一〇     一五   同      帝国摸型船倶楽部
 計         三三

前ニ掲クル参考品寄贈者ノ内中出・成島ノ両名ヘハ東京府知事ニ於テ成規ノ褒賞ヲ施行スヘキヲ通知シ、海外人拾五名ニ対シテハ左ノ数言ヲ仏訳セシ謝状ヲ交付セリ
  拝啓陳者客年中巴里博覧会ヘ派遣ノ事務官ヲ以テ過ル四月一日ヨリ東京ニ於テ開設候第三回内国勧業博覧会ヘ何々品何種寄贈相成本会ノ幸福ノミナラス最モ当業者ノ利益ト相成候段誠ニ感佩ノ至リニ不堪候、依テ玆ニ謝意ヲ表シ併セテ足下ノ万福ヲ祈ル
   年 月 日             副総裁
 - 第19巻 p.129 -ページ画像 
    宛名