デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
2款 東京商工会
■綱文

第19巻 p.165-177(DK190026k) ページ画像

明治22年6月20日(1889年)

是日栄一、当会会頭トシテ千葉松兵衛外二名ノ建案セル煙草税則及同施行細則改正ノ儀ニ就キ、大蔵大臣伯爵松方正義ニ建議ス。


■資料

東京商工会議事要件録 第三九号・第二―二五頁 (明治二二年七月)刊(DK190026k-0001)
第19巻 p.165-173 ページ画像

東京商工会議事要件録  第三九号・第二―二五頁 (明治二二年七月)刊
  第三十五臨時会  (明治二十二年六月十三日開)
    会員出席スル者 ○十九名
 - 第19巻 p.166 -ページ画像 
○上略
会長(益田孝)ハ開会ノ趣旨ヲ告ゲ書記ヲシテ議案ヲ朗読セシム別紙ノ事項何卒本会ノ意見トシテ其筋ヘ建議相成度、此段建議候也
              二十四番会員 千葉松兵衛 印
  明治廿二年一月十日   十七番会員  田中佐次兵衛 印
              十八番会員  若松源八 印
  東京商工会々頭 渋沢栄一殿
    煙草税則及其施行細則ニ改正ヲ要スル儀ニ付建議
謹テ現行ノ煙草税則及其施行細則ヲ案スルニ其実施ノ方法頗ル繁雑ニシテ当業者ノ不便ヲ感スル条項少シトセス、蓋シ租税ヲ負担シテ国費ヲ支持スルハ国民ノ本分ナルニ付今日煙草営業者ヨリ租税ヲ徴収セラルヽハ固ヨリ当然ノ御挙措ナルベシト雖モ、只其徴税ノ手続上ヨリ営業者ヲシテ空シク困難ヲ蒙ラシムルハ本員等ノ深ク遺憾トスル所ナリ故ニ今差向右税則及其施行細則中御改正ヲ要スル事項ヲ左ニ開陳仕候
一現行煙草税則第八条中「定価ノ文字ヲ」卸売定価ト改正セラレ度、而シテ若シ此改正ニシテ実施シ難キノ事情アラバ責メテハ問屋仲買小売商カ商況ノ都合ニ依リテ其煙草ヲ兼テ製造人カ想定シタル定価以上ニ販売スルヲ要スル場合ニハ、自ラ其不足ノ印紙ヲ増貼スルニ於テハ之ヲ許可セラレ度事
  現行ノ煙草税則第八条ニ「煙草製造人煙草ヲ製造シタル時ハ其定価十分ノ二ノ割合ヲ以テ煙草印紙ヲ貼用スヘシ」トアリテ、即チ製造人ガ煙草ヲ製造スルニ当リテハ其刻ミ烟草ト巻烟草トニ論ナク総テ其定価十分ノ二ノ印紙ヲ貼用セザルベカラズ、夫レ酒類ノ如キ醤油ノ如キ若クハ菓子ノ如キ、既ニ相当ノ租税ヲ国庫ニ納ムル以上ハ今烟草ニ於テ定価十分ノ二ノ租税ヲ課セラルヽモ亦固ヨリ不得已所ナリト雖トモ、只当業者ガ其烟草ヲ販売スルニ当リ如何ナル場合ヲ問ハズ必ズシモ製造人ノ想定シタル定価ヲ標準トシ其以上ノ価ヲ以テ之ヲ販売スルヲ得ズトスルハ豈甚タ困難ナルニアラスヤ、蓋シ旧税則ニヨル時ハ凡ソ煙草ノ税ハ卸売定価ヲ標準トスルノ制ナリシヲ以テ、例ヘハ長崎ノ製造人カ地方ヘ輸出スルノ目的ヲ以テ煙草ヲ製造スルニ当リ、其卸売ノ定価百匁ニ付廿五銭未満ナル時ハ之ニ四銭ノ印紙ヲ貼用スル訳ニテ(旧税則第十三条ニ拠レバ百匁玉ノ卸売定価廿五銭以下ナル時ハ四銭ノ印税ヲ要スル割合ナリ)既ニ一旦其製産地即チ長崎ニ於ケル製造人ガ卸売定価ニヨリテ相当ノ印紙ヲ貼用シタル上ハ其煙草ガ何レノ地方ヘ輸出セラレ如何ナル相場ニテ販売セラルヽモ印紙ヲ増貼スルニ及ハザル訳ナリシニ付当業者ハ甚タ便利ヲ得タリト雖トモ現行ノ税則ニヨル時ハ煙草ノ税ハ販売ノ定価ヲ標準トスルノ制ナルガ故ニ例ヘバ長崎ノ製造人ガ東京ヘ輸出スルノ目的ヲ以テ煙草ヲ製造スルニ当リテハ予メ東京ニテ販売スベキ定価ヲ想定シテ之ニ応シテ印紙ヲ貼用セザルヲ得ズ、而シテ長崎ノ製造人ガ百匁ニ付廿五銭ノ卸売定価ヲ以テ東京ノ問屋ヘ煙草ヲ売渡スニ当リテハ此廿五銭ヲ標準トシテ印紙ヲ貼用スルヲ得ズシテ、例ヘバ長崎ヨリ東京迄ノ運賃其他ノ諸掛五銭ヲ要スルトキハ此廿五銭ニ五銭ヲ加ヘ即チ
 - 第19巻 p.167 -ページ画像 
東京ニテ販売スベキ定価ヲ仮リニ三拾銭ト想定シテ之ニ定価十分ノ二即チ六銭ノ印紙ヲ貼用スル訳ナルガ、偖テ東京ノ問屋ガ之ヲ仕入レ来リテ当初製造人ガ想定シタル定価即チ三拾銭以下ニ販売スル場合ニハ敢テ差支ヲ生ズル事ナシト雖トモ、商況ノ都合ニヨリテハ之ヲ三拾銭以上ニ販売セザルヲ得ザルノ場合アリ、特ニ東京ノ問屋ガ之ヲ仲買ニ売渡シ仲買ガ之ヲ小売商ニ売渡シ、小売商ガ更ニ之ヲ消費者ニ売渡ス場合ニ於テハ此等ノ仲買小売商ハ夫々相当ノ口銭ヲ収受セザルヲ得ザルニ付、必ズシモ当初製造人ガ想定シタル定価ノ範囲内ニテ販売スル事ハ実際期シ難キ所ニシテ、時トシテハ之ヲ三拾五銭若クハ三拾八銭ニ販売スル事ヲ要スル場合モ少カラズ、然ルニ此等ノ場合ニ於テ仲買小売商ガ其煙草ヲ当初製造人ガ想定シタル定価(三拾銭)以上即チ三拾五銭ニ販売センカ是脱税ノ所為ナリトシテ其筋ヨリ禁ゼラルヽヲ如何セン、然ラハ即チ仲買小売商ハ更ニ其不足ノ印紙ヲ増貼シテ販売センカ是亦其筋ヨリ禁ゼラルヽヲ如何セン(此等ノ所為ハ税則中禁止ノ明文ナシト雖トモ実際ニ於テハ之ヲ禁止セラルヽナリ)左レバ此等ノ場合ニ於テ仲買小売商ガ当初製造人ノ想定シタル定価以上ニ販売セントスル時ハ更ニ其煙草ヲ製産地ノ製造人ニ引戻シ、其製造人ヲシテ不足ノ印紙ヲ増貼セシムルノ外他策ナキナリ、然リト雖トモ斯ヽル迂遠ノ事ハ本来機敏ヲ要スル商業上ニ於テ為シ難キ所ナルニ付、現今各地方ノ問屋ガ製産地ノ製造人ニ煙草ヲ注文スルニ当リテハ可成定価ヲ最高度ニ見積ラシメ、例ヘバ東京ノ問屋ガ長崎ノ製造人ヘ煙草ヲ注文スルニ当リ、東京ニテ三拾銭ニ販売スベキ見込ノモノモ兼テ其販売ノ定価ヲ三拾五銭若クハ四拾銭ニ見積ラシメ、余分ノ印紙ヲ貼用セシムルヲ常トセリト云フ、是蓋シ前陳ノ如キ場合ニ於テ仲買小売商ガ商況ノ都合ニヨリ其煙草ヲ高価ニ販売セントスルニ当リ、印紙不定ノ為メ不時ノ差閊ナカラシメンガ為メ予メ余分ノ印紙ヲ貼用セシメ置ク訳ナリ、夫レ商況ノ変動ニ応ズル為メニ必要外ノ印紙ヲ負担スルガ如キハ当業者ノ最モ困難トスル所ナルニ付、何卒第八条「定価」ノ文字ヲ「卸売定価」ト改正セラレ、恰モ旧税則ノ如ク一旦製造人ガ卸売定価ニヨリテ相当ノ印紙ヲ貼用シタルノ煙草ハ何レノ地方ヘ輸出セラレ如何ナル相場ニテ販売セラルヽモ差支ナキ様ニセラレ度、若シ万一此事ニシテ実施シ難キノ場合モアラバ責メテハ問屋仲買小売商ガ商況ノ都合ニヨリテ其煙草ヲ兼テ製造人ノ想定シタル定価以上ニ販売スル事ヲ要スル場合ニハ、自ラ其不足ノ印紙ヲ貼用スルニ於テハ之ヲ許可セラレン事ヲ望ム
一現行煙草税則第九条ニ拠レバ製造煙草ハ一定ノ包裹ヲ施シテ必ズ之ヲ密封セザルベカラズ、然レトモ全ク之ヲ密封シテ外部ヨリ其包裹中ノ現物ヲ撿定シ難キ様ニ為ストキハ販売ノ際大ニ不便アルニ付、其包裏ノ差閊ナキ部分ニ小孔ヲ穿ツ事ヲ許可セラレタキ事
  現今煙草税則第九条ニ「製造煙草ハ一定ノ包裹ヲ施シテ之ヲ密封シ自己ノ印章ヲ以テ其貼用印紙ニ消印スベシ」トアリ、抑モ斯ノ如ク製造人カ煙草ヲ製造スルニ当リ之ヲシテ必ズ其煙草ヲ密封セ
 - 第19巻 p.168 -ページ画像 
シメラルヽモノハ畢竟脱税ヲ予防セラルヽガ為メナルベシト雖トモ、元来消費者ガ煙草ヲ購入スルニハ必ズ先ヅ其現物ヲ試吸シ、之ニ満足スルノ後始メテ之ヲ購入スルノ慣例ニシテ、殊ニ近来煙草ノ価騰貴シタル為メ或ハ之ニ野薔薇若クハ蓮葉ヲ混和シタルモノ往々市場ニ現出スル事アリテ購入ノ際現物ヲ試吸スル必要ハ益益其程度ヲ強ムルニ至レリ、然ルニ今本条ニ示サルヽガ如ク必ズ之ヲ密封スルモノトスル時ハ消費者ハ現物ヲ試吸スルヲ得ズシテ販売上大ニ差閊アリ、尤税則施行細則第十五条ニ拠レバ煙草営業者ハ煙草見本トシテ毎種刻煙草五匁・紙巻煙草十本・葉巻烟草五十本ニ超ヘザル包裹ヲ切リ披キ之ヲ店頭ニ陳列スル事ヲ得ル訳ナレハ左迄差閊ナキガ如シト雖トモ、抑モ烟草ハ其品種極メテ多ク中ニハ同一ノ原葉ヲ以テ製シ同一ノ名称ヲ附スルモノト雖トモ其製造ノ加減ニヨリテハ彼此大ニ其風味ヲ異ニスル事アリテ見本ニ拠リテ現物ノ品位ヲ定ムルニハ実際甚タ難シトスル所ナリ、現ニ秦野・松川・茂木《モテキ》・山根刻ミト称スル種類ノ如キ其製造区々ニシテ随テ一函(百匁包六十個入)ノ中ニテモ数人ノ製造ニ係リタルモノヲ合包セル場合アリ、此等ノ烟草ハ総テ同一ノ名称ヲ附スルモ其品質甚ダシク相違セルモノアリ、由是観之売買ノ際烟草品位ヲ撿定スルニハ見本ニ頼ルヲ得ズシテ到底現物ヲ試吸スルノ外他策ナキナリ、然ラハ煙草ノ包裹ヲ切リ披キテ消費者ヲシテ現物ヲ試吸セシメンカ若シ幸ニ消費者ノ満足ヲ得ルニ於テハ差閊ナシト雖トモ、若シ否ラザルトキハ其改装ノ費用ハ販売者自ラ之ヲ負担セザルヲ得ザルナリ、左レハ本条ニ示サルヽガ如ク一定ノ包裹ヲ施シテ之ヲ密封スル事ハ固ヨリ不得已ト雖トモ、只其包裹ノ差閊ナキ部分ヘ凡ソ一寸四方ニ超ヘザル小孔ヲ穿ツ事ヲ許可セラレ、以テ売買ノ際購入者ヲシテ現物ヲ試吸スルノ余地ヲ得セシメラレン事ヲ望ム、果シテ然ルトキハ一方ニ於テハ取締ノ実効充分ニ立チ一方ニ於テハ販売上大ニ便利ヲ得ベシト信ズ、而シテ若シ此事項ニシテ幸ニ実行セラルヽヲ得バ細則第十五条ニ示サルヽ商品見本ヲ店頭ヘ陳列シ得ル条項ノ如キハ寧ロ之ヲ廃止セラルヽモ妨ゲナキナリ
一煙草税則施行細則第九条ニ示サルヽ定量ハ多種ニ過ギテ不便アルニ付今少シク其種類ヲ減少セラレ度事
  細則第九条「製造煙草ノ包裹毎一個ノ定量種々ハ左ノ制限ニ従フベシ」トアリテ即チ其種類ハ左ノ如シ
               百匁入
               八十匁入
               六十匁入
               五十匁入
               四十匁入
   刻煙草毎一包(函)ニ付
               三十匁入
               二十匁入
               十五匁入
               十匁入
               五匁入
 - 第19巻 p.169 -ページ画像 
               二百本入
               百本入
               五十本入
   巻煙草毎一包(函)ニ付
               二十本入
               十本入
               六本入
  此制限ニ拠ル時ハ刻煙草十種・巻煙草六種ニシテ其定量多数ニ過ギ営業上繁雑ノ手数アリ、蓋シ刻煙草ノ中六十匁入・二十匁入・十五匁入ノ如キハ共ニ実際ニ必要ナキモノナリ、若シ仮ニ之ヲ必要ナリトスルモ例ヘハ刻煙草三十匁入二個ヲ以テ六十匁入ニ当テ十匁入二個ヲ以テ二十匁入ニ当ツルト云フガ如キ便法ナキニアラザレバ、以上数種ノ如キハ仮令之ヲ設ケ置カザルモ敢テ不都合ヲ生ゼザルナリ、殊ニ巻煙草六本入ノ如キハ既ニ十本入ノ種類ヲ設クル以上ハ実際ニ於テ決シテ其必要ナシト信ズ、故ニ此制限ハ更ニ左ノ如ク改正セラレン事ヲ望ム
               百匁入
               八十匁入
               五十匁入
   刻煙草毎一包(函)ニ付 四十匁入
               三十匁入
               十匁入
               五匁入

               二百本入
               百本入
   巻煙草毎一包(函)ニ付 五十本入
               二十本入
               十本入
一煙草税則施行細則第十八条ハ全ク之ヲ刪除セラレ度事
  細則第十八条ニ「煙草製造人仲買人ニシテ葉煙草ヲ買入レ又ハ預リタル時ハ一俵・一叺・一束毎ニ其葉ノ種類・量目及買入預リタル番号・年月日・売リ預リ主ノ住所・資格・氏名ヲ記シタル票札ヲ附置クベシ」トアリ、然ルニ製造人・仲買人カ葉煙草ヲ買入ルヽニ当リ其現物ニ逸々前陳ノ事項ヲ細記シタル票札ヲ附スルガ如キハ実ニ容易ノ手数ニアラズシテ、是機敏ヲ要スル商人輩ノ最モ困難トスル所ナリ、殊ニ其現物ニ売リ主ノ住所氏名ヲ附ケ置ク事ノ如キハ独リ手数ヲ要スルノミナラズ商売ノ駈引上ニ容易ナラザル障碍アリ、例ヘハ府下ノ甲仲買人ガ乙仲買人ヨリ葉煙草ヲ買入レ更ニ之ヲ丙仲買人ヘ売渡サントスルガ如キ場合ニ於テ、先ヅ丙ハ甲ノ店ニ至リ現物ヲ一見シテ直組ヲ定メントスルニ当リ、其現物ニ売主即チ乙ノ住所氏名ヲ附ケ置ク時ハ丙ハ甲ヨリ買受クル事ヲ見合セ更ニ乙ノ店ニ至リテ之ヲ買受ケントスベシ、然ルトキハ甲ノ地位ニ立ツ者豈甚タ迷惑ナルニアラズヤ、之ヲ要スルニ本条ニ定メラルヽ所ノ手続ノ如キハ取締上左迄ノ効能ナクシテ只当業者ノ困難ヲ来スニ過ギザルニ付、何卒本条ハ全ク之ヲ刪除セラレン事ヲ望
 - 第19巻 p.170 -ページ画像 
ム、而シテ若シ万一全ク之ヲ刪除シ難キノ事情アラハ責メテハ本条票札ニ記スヘキ要項中売リ預リ主ノ住所・資格・氏名丈ニテモ之ヲ除カレン事ヲ望ム
一煙草税則施行細則第二十一条送状ニ記載スベキ事項ハ繁蕪ニシテ当業者ノ不便不少ニ付、今少シク其事項ヲ減少セラレ度事
  細則第二十一条ニ「煙草送状ニハ左ノ事項ヲ記載スヘシ」トアリ其事項ハ即チ左ノ如シ
   葉烟草(種類・番号・荷物ノ区別・箇数・量目・荷数・荷送受主ノ氏名住所)
   製造烟草(種類・包裹ノ区別・箇数・荷送受主ノ氏名住所)
  右ニ掲グル事項中荷物ノ区別・箇数(葉煙草)・包裹ノ区別(製造煙草)ノ如キハ敢テ取締上必要ナルニアラズシテ之ヲ送状ニ記載セシムルハ只当業者ノ煩累ヲ致スニ過キズト思考スルニ付、此等ノ事項ハ何卒之ヲ除却セラレン事ヲ望ム
一煙草税則施行細則第二十七条中「書類」ノ文章ヲ刪除セラレ度事
  細則第二十七条ニ「煙草税則及此規則ニ掲クル帳簿書類ハ三ケ年間保存スベシ」トアリ、蓋シ営業上ノ帳簿ヲ三ケ年間保存セシメラルヽハ固ヨリ取締上必要ニシテ敢テ当業者ノ苦情ヲ云フベキ限リニアラザルベシト雖トモ、其他一切ノ書類ヲ必ズ三ケ年間保存スベシトスルハ其手数実ニ容易ニアラズシテ是当業者ノ甚タ困難トスル所ナリ、故ニ何卒本条中書類ノ文字ハ之ヲ除却セラレン事ヲ望ム
以上開陳ノ趣旨ニシテ幸ニ採用セラルヽヲ得ハ独リ当業者ノミナラス消費者モ亦之カ為メ大ニ便利ヲ得結局一般ノ利益ト可相成奉存候、依テ此段建議仕候也
二十四番(千葉松兵衛)曰ク、本案ハ去ル三日幹事会ニ於テ審議ヲ遂ゲタルガ、其中第一項即チ定価ヲ卸売定価ト改ムベシトノ一項ハ幹事ノ勧告モアリ且ツ建議者ニ於テモ更ニ充分ナル調査ヲ遂ゲタク思考スルニ付、本項ハ暫ク原案ヨリ取除カレン事ヲ望ム
会長(益田孝)ハ之ヲ了諾シ且ツ曰ク、各員不審アラバ建議者ニ質問セラレタシ
四十九番(赤阪亀次郎)曰ク、本案ニハ詳細ノ説明アリテ毫モ質問ノ必要ナシ
九十番(橋本辰三郎)問テ曰ク、原案第二項ニ烟草ノ包裹ニ小孔ヲ穿ツベシトアルガ、現今烟草ヲ買フニハ試吸スルヲ得ザル訳ナルヤ
二十四番(千葉松兵衛)荅テ曰ク、従来烟草ヲ買フニハ試吸スルヲ得タレトモ改正税則施行以来之ヲ密封スル事トナリタレバ試吸スルヲ得ズ、但シ別ニ包裹ヲ切リ開キタル見本ヲ置ク事ヲ得レトモ、現品ト見本ト一致セザル事往々アリ
二十二番(笠井鉦太郎)問テ曰ク、原案第二項ノ精神ハ総テノ種類ニ尽ク小孔ヲ穿チ置クノ意ナルヤ
二十四番(千葉松兵衛)荅テ曰ク、否ラズ、只購入者ノ望ニ依リ随時之ヲ穿ツノ意ナリ
二十二番(笠井鉦太郎)問テ曰ク、原案第三項ニ細則第九条ニ示サル
 - 第19巻 p.171 -ページ画像 
ル定量ノ種類ヲ減ズベシトアルガ、此ニ列記スル製造烟草ノ種類ハ尽ク之ヲ備ヘ置クヲ要スルヤ
二十四番(千葉松兵衛)荅テ曰ク、否ラズ、然レトモ其種類多キニ過グル時ハ之ガ為メ帳簿記載上大ニ手数ヲ要スルナリ
六十一番(酒井泰)問テ曰ク、原案第四項ニ建議者ハ細則第十八条中票札ニ記スベキ事項ヲ削除スベシト云フガ、抑モ此等ノ事項ハ別ニ帳簿ニ登載スル訳ナルヤ
三十七番(田中佐次兵衛)荅テ曰ク、然リ、此等ノ事項ハ府令ニヨリ罫引帳簿ニ登載セザルヲ得ズ
時ニ二十四番(千葉松兵衛)ハ原案第五項ニ拠レバ送状ニ記載スベキ事項ノ中、葉烟草ニ於テハ荷造ノ区別及箇数ノ二項ヲ除キ製造烟草ニ於テハ包裹ノ区別ノ一項ヲ除クベシトア トモ、是ハ単ニ葉烟草ニ於ケル箇数ノミヲ除ク事ニ改メ、且ツ原案第六項ニ書類ノ文字ヲ除クベシトアレトモ是ハ書類ノ文字ヲ送状ニ改メタキ旨ヲ請求シ其修正文ヲ朗読ス
二十二番(笠井鉦太郎)問テ曰ク、第六項ニアル書類トハ如何ナルモノヲ指スヤ
二十四番(千葉松兵衛)荅テ曰ク、是ハ送状ハ勿論其他荷札ノ如キモノヲモ包含スルナリ
十六番(益田克徳)問テ曰ク、思フニ此書類ノ文字ハ重ニ送状ノ如キ緊要ノ書類ノミヲ指シタルモノナラン、併シ荷札ヲ保存セズシテ之ガ為メ罰セラレタル実例アリヤ
二十四番(千葉松兵衛)荅テ曰ク、其筋ノ官吏ノ説明ニヨレバ此書類ノ文字中荷札ヲモ包含スルトノ事ナリ
於是会長(益田孝)ハ最早質問終リタルニ付、是ヨリ逐条審議ヲ開クベキ旨ヲ告ゲタルガ、原案第一項ハ既ニ建議者ニ於テ之ヲ取消シタルニ付、会長(益田孝)ハ書記ヲシテ第二項ヨリ順次朗読セシム
(第二項) ○略ス
本項ハ各員全ク異議ナク原案ニ可決ス
(第三項) ○略ス
本項ニ就テハ九十番(橋本辰三郎)ヨリ凡ソ当業者ノ不便ハ之ヲ忍ビ得ル丈ハ可成忍ブ方可ナリ、今本項ニ記スル所ノ如キ当業者ノ不便ナル事ハ勿論ナルベシト雖トモ、之ヲ第二項ニ比スレバ其軽重固ヨリ同ジカラズシテ余ノ見ル所ヲ以テセバ其不便タル敢テ忍ビ難シト云フ程ニアラズ、故ニ本項ハ建議者ニ於テ可成之ヲ引戻サレ度旨ヲ勧告シ四十九番(赤阪亀次郎)モ之ヲ賛成シタルガ、建議者ニ於テモ敢テ甚シキ差支ナキ趣ヲ以テ本項ハ遂ニ之ヲ取除ク事ニ決ス
(第四項) ○略ス
本項ニ就テハ十六番(益田克徳)六十一番(酒井泰)ハ原案ノ如ク細則第十八条ヲ全ク刪除スベキモノトシ、説明ノ末文ニアル若シ万一以下ノ文字ヲ除クベシ(第一説)ト論ジ、四十九番(赤阪亀次郎)九十番(橋本辰三郎)及二十五番(丹羽雄九郎)ハ第十八条ヲ全ク刪除スベシト云ハズシテ只当業者ノ最モ困難トスル売リ預リ主ノ住所・資格・氏名丈ヲ刪除スル事ヲ望ムベシ(第二説)ト論ジ、双方ノ説ニ各々賛成
 - 第19巻 p.172 -ページ画像 
アリシガ会長(益田孝)ハ先ヅ一説ヲ賛成スル者ニ起立ヲ命ジタルニ多数ニ付遂ニ本項ハ細則第十八条ヲ全ク刪除スベキモノトシ、説明ノ末文ニアル若シ万一以下ノ文字ヲ除ク事ニ決ス
(第五項)
 一煙草税則施行細則第廿一条ニ記載スベキ事項ノ中葉煙草ノ箇数ハ之ヲ除却セラレ度事(本項ハ議案ノ原文ニ拠ラズシテ建議者ノ提出シタル修正文ニ拠ル)
本項ハ各員異議ナク全ク原案ニ可決ス
(第六項)
 一煙草税則施行細則第二十七条中「書類」ノ文字ヲ送状ニ改メラレ度事(本項ハ議案ノ原文ニ拠ラズシテ建議者ノ提出シタル修正文ニ拠ル)
十六番(益田克徳)曰ク、仕切状ノ如キモ頗ル緊要ナレバ此書類ノ文字ハ之ヲ送状及仕切状ト改メテハ如何ン
二十四番(千葉松兵衛)曰ク、仕切状ハ営業上緊要ノ書類ナレトモ収税上ニ必要ナシ、故ニ此書類ノ文字ヲ単ニ送状ト改ムル時ハ夫ニテ差支ナシ
二十五番(丹羽雄九郎)曰ク、細則ノ精神ヨリ考フル時ハ此書類ハ送状ノ如キモノヽミヲ指スナラン、故ニ是ハ一応其筋ヘ伺フテハ如何ン
二十四番(千葉松兵衛)曰ク、嘗テ税則改正ノ際此書類ノ定義ニ関シ其筋ヘ伺フタル事アリシガ其筋ニ於テハ此書類ハ荷札ヲモ包含スルト弁明セラレタリ
六十一番(酒井泰)曰ク、書類ノ文字ヲ単ニ送状ト改ムル時ハ其意義狭小ニ失スルガ如シ、彼ノ受取証ノ如キモ極メテ緊要ナル書類ナレバ今少シク其意義ヲ広クシ此等ノ書類ヲモ包含スル事トシタシ
二十五番(丹羽雄九郎)曰ク、斯ノ如キ細事ニ至ル迄一々其筋ノ干渉ヲ受クルニ於テハ当業者ノ迷惑少カラズ、故ニ先ヅ当方ヨリ之ヲ伺フニモ、例ヘバ此書類ハ送状若クハ仕切状ノ如キモノヽミヲ指スモノナルベシト雖トモ実際然ルヤ否ヤト云フガ如ク、要スルニ当方ノ見解ニ依リ其種類ヲ挙示シテ伺フ事トシタシ
九十番(橋本辰三郎)曰ク、二十五番(丹羽雄九郎)ハ書類ノ定義ニ関シ伺書ヲ出スベシト述ベタルガ余ハ試ニ折衷説ヲ述ブベシ、其折衷説ト云フハ即チ本項ノ趣旨ヲ改メテ細則中所謂書類トハ如何ナルモノヲ意味スルカ之ヲ指定セラレタシ、而シテ若シ果シテ其書類中荷札ノ如キモノヲモ包含スルモノトセバ之ヲ取除カレタシト建議シテハ如何ン
四十九番(赤阪亀次郎)ハ九十番(橋本辰三郎)ヲ賛成ス
三十七番(田中佐次兵衛)曰ク、昨年六月二十六日府下烟草問屋製造人及小売人等二百余名ガ本会ノ議事堂ニ於テ集会ヲ開キ、東京府租税監督大橋栄三・同撿査主幹梅津連ノ両君ニ臨席ヲ請ヒ税則並細則中ノ疑義ヲ質シタル事アリシガ、其節両君ノ弁明セラレタル所ニ拠レバ此書類ノ文字ハ荷札ヲモ包含スルトノ事ナリキ
二十二番(笠井鉦太郎)曰ク、過刻来書類ノ定義ニ就キ種々議論アリ
 - 第19巻 p.173 -ページ画像 
タルガ此書類ハ即チ細則中ニ掲ゲアル丈ノ書類ヲ指スモノニシテ今熟々細則ヲ閲スルニ其所謂書類トハ送状及荷札ニ限ルガ如シ、故ニ余ハ其筋ニ向テ此書類ノ定義ヲ問フヲ要セズ、寧ロ本項中ニ荷札ヲ三ケ年間保存スル事ヲ廃セラレタシト申ス方明白ナラン
十六番(益田克徳)曰ク、若シ無要ノ手数アルニ於テハ本会ヨリ其廃止ヲ建議スルニ於テ何カアラン、案ズルニ送状ハ必要ナルベシト雖トモ其他ノ書類ハ決シテ必要ナラズト信ズ、故ニ余ハ原案ヲ賛成ス
二十一番(林忠蔵)ハ十六番(益田克徳)ヲ賛成ス
四十九番(赤阪亀次郎)曰ク、余ハ敢テ議論ヲ好ムニアラズト雖トモ今一言ヲ試ムベシ、抑モ余ガ九十番(橋本辰三郎)ヲ賛成シタルハ畢竟荷札ノ如キモノハ此書類中ニ包含セズト思ヒタルガ為メナリ、然ルニ建議者ノ説明ニ拠レバ其筋ニ於テハ全ク荷札迄ヲモ包含スルモノト弁明セラレタル趣ナルガ、口頭ニテ伺フタルモノハ其効少キニ付更ニ書面ニテ伺フ方可ナリ、元来無要ノ手数ヲ省ク事ハ余モ十六番(益田克徳)ト同意ナリ、然リト雖トモ今此書類ノ文字ヲ単ニ送状ト改ムルハ甚ダ不可ナリ、何トナレバ彼ノ仕切状ノ如キモ亦極メテ緊要ナレバナリ
於是会長(益田孝)ハ議論ヤヽ尽キタルヲ以テ先ヅ原案ヲ賛成スル者ニ起立ヲ命ジタルニ多数ニ付本項ハ原案ニ可決シ、猶衆議ニヨリ本案ハ理事本員ニ於テ調成シ直チニ大蔵大臣閣下ヘ進達スルニ決ス
右終リテ会長(益田孝)ハ是ニテ本日ノ議事完了シタル旨ヲ告ゲ一同ニ散会ヲ命ズ、時ニ午後七時ナリ
 (本文烟草税則ニ改正ヲ要スル建議案ハ其後理事本員ニ於テ調成シ六月二十日附ヲ以テ大蔵大臣閣下ヘ進達シタリ、依テ其全文ハ之ヲ参考部ニ掲載ス)
   ○是日栄一欠席ス。


東京商工会議事要件録 第三九号・第二六―三三頁 (明治二二年七月)刊(DK190026k-0002)
第19巻 p.173-175 ページ画像

東京商工会議事要件録  第三九号・第二六―三三頁 (明治二二年七月)刊
 ○参考部
    烟草税則及其施行細則ニ改正ヲ要スル儀ニ付建議
謹テ現行ノ烟草税則及其施行細則ヲ案スルニ其実施ノ方法頗ル繁雑ニシテ当業者ノ不便ヲ感スル条項少シトセス、蓋シ租税ヲ負担シテ国費ヲ支持スルハ国民ノ本分ナルニ付今日烟草営業者ヨリ租税ヲ徴収セラルヽハ固ヨリ当然ノ御挙措ナルベシト雖モ、只其徴税ノ手続上ヨリ営業者ヲシテ空シク困難ヲ蒙ラシムルハ本会ノ深ク遺憾トスル所ナリ、故ニ今差向右税則及其施行細則中御改正ヲ要スル事項ヲ左ニ開陳仕候
一現行烟草税則第九条ニ拠レバ製造烟草ハ一定ノ包裹ヲ施シテ必ス之ヲ密封セザルベカラズ、然レトモ全ク之ヲ密封シテ外部ヨリ其包裹中ノ現物ヲ撿定シ難キ様ニ為ストキハ販売ノ際大ニ不便アルニ付其包裹ノ差閊ナキ部分ニ小孔ヲ穿ツ事ヲ許可セラレタキ事
  現行烟草税則第九条ニ「製造煙草ハ一定ノ包裹ヲ施シテ之ヲ密封シ自己ノ印章ヲ以テ其貼用印紙ニ消印スベシ」トアリ、抑モ斯ノ如ク製造人カ煙草ヲ製造スルニ当リ之ヲシテ必ズ其煙草ヲ密封セ
 - 第19巻 p.174 -ページ画像 
シメラルヽモノハ畢竟脱税ヲ予防セラルヽガ為メナルベシト雖トモ、元来消費者ガ煙草ヲ購入スルニハ必ズ先ヅ其現物ヲ試吸シ之ニ満足スルノ後始メテ之ヲ購入スルノ慣例ニシテ、殊ニ近来煙草ノ価騰貴シタル為メ或ハ之ニ野薔薇若クハ蓮葉ヲ混和シタルモノ往々市場ニ現出スル事アリテ購入ノ際現物ヲ試吸スル必要ハ益々其程度ヲ強ムルニ至レリ、然ルニ今本条ニ示サルヽガ如ク必ズ之ヲ密封スルモノトスル時ハ消費者ハ現物ヲ試吸スルヲ得ズシテ販売上大ニ差閊アリ、尤税則施行細則第十五条ニ拠レバ煙草営業者ハ煙草見本トシテ毎種刻煙草五匁・紙巻煙草十本・葉巻煙草五十本ニ超ヘザル包裹ヲ切リ披キ之ヲ店頭ニ陳列スル事ヲ得ル訳ナレハ左迄差閊ナキガ如シト雖トモ、抑モ烟草ハ其品種極メテ多ク中ニハ同一ノ原葉ヲ以テ製シ同一ノ名称ヲ附スルモノト雖トモ其製造ノ加減ニヨリテハ彼此大ニ其風味ヲ異ニスル事アリテ見本ニ拠リテ現物ノ品位ヲ定ムルハ実際甚タ難シトスル所ナリ、現ニ泰野松川・茂木《モテキ》・山根刻ミト称スル種類ノ如キ其製造区々ニシテ随テ一函(百匁包六十個入)ノ中ニテモ数人ノ製造ニ係リタルモノヲ合包セル場合アリ、此等ノ煙草ハ総テ同一ノ名称ヲ附スルモ其品質甚ダシク相違セルモノアリ、由是観之売買ノ際煙草品位ヲ撿定スルニハ見本ニ頼ルヲ得ズシテ到底現物ヲ試吸スルノ外他策ナキナリ、然ラハ煙草ノ包裹ヲ切リ披キテ消費者ヲシテ現物ヲ試吸セシメンカ若シ幸ニ消費者ノ満足ヲ得ルニ於テハ差閊ナシト雖トモ若シ否ラザルトキハ其改装ノ費用ハ販売者自ラ之ヲ負担セザルヲ得ザルナリ、左レハ本条ニ示サルヽガ如ク一定ノ包裹ヲ施シテ之ヲ密封スル事ハ固ヨリ不得已ト雖トモ、只其包裹ノ差閊ナキ部分ヘ凡ソ一寸四方ニ超ヘザル小孔ヲ穿ツ事ヲ許可セラレ以テ売買ノ際購入者ヲシテ現物ヲ試吸スルノ余地ヲ得セシメラレン事ヲ望ム、果シテ然ルトキハ一方ニ於テハ取締ノ実効充分ニ立チ一方ニ於テハ販売上大ニ便利ヲ得ベシト信ズ、而シテ若シ此事項ニシテ幸ニ実行セラルヽヲ得バ細則第十五条ニ示サルヽ商品見本ヲ店頭ヘ陳列シ得ル条項ノ如キハ寧ロ之ヲ廃止セラルヽモ妨ゲナキナリ
一烟草税則施行細則第十八条ハ全ク之ヲ刪除セラレ度事
  細則第十八条ニ「烟草製造人仲買人ニシテ葉烟草ヲ買入レ又ハ預リタル時ハ一俵・一叭・一束毎ニ其葉ノ種類・量目及買入預リタル番号・年月日・売リ預リ主ノ住所・資格・氏名ヲ記シタル票札ヲ附置クヘシ」トアリ、然ルニ製造人・仲買人カ葉烟草ヲ買入ルヽニ当リ其現物ニ逸々前陳ノ事項ヲ細記シタル票札ヲ附スルガ如キハ実ニ容易ノ手数ニアラズシテ是機敏ヲ要スル商人輩ノ最モ困難トスル所ナリ、殊ニ其現物ニ売リ主ノ住所氏名ヲ附ケ置ク事ノ如キハ独リ手数ヲ要スルノミナラズ商売ノ駈引上ニ容易ナラザル障碍アリ例ヘハ府下ノ甲仲買人ガ乙仲買人ヨリ葉烟草ヲ買入レ更ニ之ヲ丙仲買人ヘ売渡サントスルガ如キ場合ニ於テ、先ツ丙ハ甲ノ店ニ至リ現物ヲ一見シテ直組ヲ定メントスルニ当リ其現物ニ売主即チ乙ノ住所氏名ヲ附ケ置ク時ハ丙ハ甲ヨリ買受クル事ヲ見合セ、更ニ乙ノ店ニ至リテ之ヲ買受ケントスベシ、然ルトキハ甲ノ地位ニ立
 - 第19巻 p.175 -ページ画像 
ツ者豈甚タ迷惑ナルニアラズヤ、之ヲ要スルニ本条ニ定メラルヽ所ノ手続ノ如キハ取締上左迄ノ効能ナクシテ只当業者ノ困難ヲ来スニ過キザルニ付、何卒本条ハ全ク之ヲ刪除セラレン事ヲ望ム
一烟草税則施行細則第二十一条送状ニ記載スベキ事項ノ中葉烟草ノ箇数ハ之ヲ除却セラレ度事
  細則第二十一条ニ拠レバ葉烟草ノ箇数ハ他ノ要項ト共ニ必ズ之ヲ送状ニ記載セザルベカラズ、然ルニ既ニ量目及荷数ヲ掲グル以上ハ此箇数ヲ記載セシムルハ敢テ取締上必要ナルニアラズシテ只当業者ノ煩累ヲ致スニ過ギスト思考スルニ付、此箇数ノ文字ハ何卒之ヲ除却セラレン事ヲ望ム
一烟草税則施行細則第二十七条中「書類」ノ文字ヲ送状ニ改メラレ度事
  細則第二十七条ニ「烟草税則及此規則ニ掲クル帳簿書類ハ三ケ年間保存スベシ」トアリ、蓋シ営業上ノ帳簿送状ノ類ヲ三ケ年間保存セシメラルヽハ固ヨリ取締上必要ニシテ敢テ当業者ノ苦情ヲ云フベキ限リニアラザルベシト雖トモ、其他荷札ノ如キ書類迄ヲモ必ス三ケ年間保存スヘシトスルハ其手数実ニ容易ニアラスシテ是当業者ノ甚タ困難トスル所ナリ、故ニ何卒本条中「書類」ノ文字ハ之ヲ送状ト改メラレン事ヲ望ム
以上開陳ノ趣旨ニシテ幸ニ採用セラルヽヲ得ハ独リ当業者ノミナラス消費者モ亦之カ為メ大ニ便利ヲ得結局一般ノ利益ト可相成奉存候、依テ此段建議仕候也
  明治廿二年六月二十日     東京商工会々頭
                      渋沢栄一
    大蔵大臣 伯爵 松方正義殿


東京商工会議事要件録 第四〇号・第二―四頁 (明治二二年九月)刊(DK190026k-0003)
第19巻 p.175-176 ページ画像

東京商工会議事要件録  第四〇号・第二―四頁 (明治二二年九月)刊
  第廿一定式会
          (明治廿二年八月九日開会)
  第卅六臨時会
    会員出席スル者 ○二十五名
会長(渋沢栄一)ハ開会ノ趣旨ヲ報ジ先ツ定式会ヲ開クベキ旨ヲ告ゲ規程第五章第二十二条ニ拠リ明治二十二年上半季間定式事務ノ成蹟ヲ報告ス
  自明治廿二年一月至同六月 半季間事務ノ報告
○中略
    其筋ヘ建議   一件
○烟草税則及其施行細則ニ改正ヲ要スル義ニ付大蔵大臣ヘ建議ノ件
  本件ハ十七番会員田中佐次兵衛氏・十八番会員若松源八氏及二十四番会員千葉松兵衛氏ノ建議ニ係リ其要旨ハ、現行烟草税則第八条中定価ノ文字ヲ卸売定価ト改ムベシ(第一項)同則第九条中製造烟草ノ包裹ヲ密封スルノ制限ヲ緩メ之ニ小孔ヲ穿ツ事ヲ許可セラレタシ(第二項)同施行細則第九条ニ示サルヽ定量ハ多種ニ過グルニ付今少シク其種類ヲ減少セラレタシ(第三項)同細則第十八条ハ全ク之ヲ刪除セラレタシ(第四項)同細則第二十一条送状ニ記載スベキ事項ノ中葉烟草ノ箇数ヲ除却セラレタシ(第五項)
 - 第19巻 p.176 -ページ画像 
同細則第二十七条中書類ノ文字ヲ送状ニ改メラレタシ(第六項)ト云フニ在リ、即チ明治二十二年六月十三日第三十五臨時会ニ於テ審議シタルニ、第一項ハ建議者ノ請求ニヨリテ之ヲ取除キ、其他ノ事項ハ第三項ヲ除クノ外多少ノ修正ヲ以テ尽ク原案ニ可決シタルニ付、其後理事本員ニ於テ文案ヲ調成シ同月二十日附ヲ以テ之ヲ松方大蔵大臣閣下ニ進達シタリ
  ○本建議ノ各条項ハ概ネ実現セズ。詳細ハ「明治財政史」第六巻(第三六二頁以下)参照。



〔参考〕東京経済雑誌 第二一巻第五二三号・第七一八頁 明治二三年五月三一日 ○関東煙草営業者有志聯合会(DK190026k-0004)
第19巻 p.176 ページ画像

東京経済雑誌  第二一巻第五二三号・第七一八頁 明治二三年五月三一日
    ○関東煙草営業者有志聯合会
関西地方の煙草営業者は大阪に於て同業者の聯合大会を開き以て税則改正の建白を議せし由なるが、関東にても東京煙草問屋組合事務所が会主となりて、今度有志者の聯合会を開かんとて左の諸項を関東一府十六県の同業組合事務所へ通知したりと云ふ
 一建白の要領は印紙を廃し他の方法に依り課税せらるゝこと◎一渾て其方法は輿論の帰する処に任ずるものとす◎一各地方出席委員は其地方の輿論に基きたる税則改正方案を提携出席すること◎一東京に於て開く関東有志聯合会の期日は来る六月十日とす◎一同意の組合は二名若くは三名の委員を参会せしむること



〔参考〕東京経済雑誌 第二一巻第五二五号・第七八二頁 明治二三年六月一四日 ○関東煙草商の協議会(DK190026k-0005)
第19巻 p.176-177 ページ画像

東京経済雑誌  第二一巻第五二五号・第七八二頁 明治二三年六月一四日
    ○関東煙草商の協議会
兼て報道せしが如く関東一府八県の煙草商諸氏は煙草税則改正方案討議の為め委員を撰みて上京せしめたるを以て、四十余名の委員諸氏は去る十日江東中村楼に於て協議会を開き右了て懇親会を催うせり、当日協議会の次第は委員総代田中佐治兵衛氏先づ立ちて開会の趣旨を述べ、次に堀口昇氏各地の委員より提出せし意見書十一通の中に就いて其の趣意を大別して三種と為し之を朗読説明せり、其の趣意左の如し
 現行税則の大躰を賛成し単に其の箇条に就いて修正を望むの意見山梨・茨城の中水戸及び太田◎印紙を廃して葉烟草税に為さんとする者新潟・静岡及び関西組合者◎印紙税を廃して器械税に為さんとする者東京・福島・神奈川・埼玉・群馬
次に会員諸氏の指名を以て田中佐治兵衛氏会長席に着き、右三種の意見を折衷して更に原案を起草せしめんか為めに委員五名を撰挙すべしと報道し、選挙を行ひたるに田中佐治兵衛・千葉松兵衛・小沢芳兵衛鶴岡庄七・若松源八の五氏当選し、次に正副議長の選挙を行ひたるに議長には田中氏、副議長には千葉氏当選せり
又た翌十一日は木挽町商工会議事堂に於て協議会を開きしが其の原案は左の如し
 第一 印紙税を廃し器械税に改むる事、ゼンマイ一ケ年一台に付五十円、ミシン同七十五円、足踏同百五十円、カンナ切同百五十円、水力同三百円、火力同三百五十円、◎第二 煙草職工は雇主の製造場外に於て煙草を刻むことを得ず◎第三 納税期を一月・四月・七
 - 第19巻 p.177 -ページ画像 
月・十月の四期に別ち総て前納せしむるものとす◎第四 煙草製造人は現行税則の如く証約状を差出す可きものとす◎第五 製造営業税仲買営業税小売営業税を現行税則の通り据置く事◎第六 自家用料の為め烟草を耕作することを得ず◎第七 煙草耕作人は鑑札料一ケ年金一円を納む可き事◎第八 手切器械は爾来禁止の事◎第九 煙草器械は管庁の撿印を受くるものとす